開示の詳細な説明
本発明者らは、適切に空けられた時間間隔での、EGF様ドメイン含有ペプチド、例えば、グリア成長因子2(GGF2)またはその断片などのニューレグリンの不連続のまたは断続的な投与が、それを必要とする患者へ、EGF様ドメイン含有ペプチドの治療有効量を送達し、このような治療レジメンが、うっ血性心不全などの心疾患を予防するか、該心疾患を発病予防するか、該心疾患の進行を遅らせるか、該心疾患を改善するか、該心疾患を最小限にするか、該心疾患を治療するか、または該心疾患を回復に向かわせるために、有用であるという発見をした。
本開示は、上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを提供することにより、対象における心不全を治療するか、該心不全を予防するか、または該心不全の進行を遅らせるための方法を提供する。
ニューレグリン(NRG)は、erbB受容体へ結合する上皮成長因子に関連する成長因子である。それらは、心不全、心毒性および虚血の多数のモデルにおいて心機能を改善させることが示された。NRGはまた、脳卒中、脊髄損傷、神経ガス曝露、末梢神経損傷および化学毒性のモデルにおいて神経系を保護することが示された。
4つのNRG遺伝子(NRG-1、NRG-2、NRG-3、およびNRG-4)が存在する。NRG-1、NRG-2、NRG-3およびNRG-4遺伝子によってコードされるペプチドは、それらがErbB受容体へ結合しこれを活性化することを可能にするEGF様ドメインを有する。Holmesら(Science 256:1205-1210, 1992)は、EGF様ドメインは単独でp185erbB2受容体に結合しこれを活性化するのに十分であることを示した。従って、NRG-1、NRG-2、NRG-3またはNRG-4遺伝子によってコードされる任意のペプチド産物、または任意のニューレグリン様ペプチド、例えば、ニューレグリン遺伝子もしくはcDNAによってコードされるEGF様ドメイン(例えば、米国特許第5,530,109号、米国特許第5,716,930号、および米国特許第7,037,888号に記載される、NRG-1ペプチドサブドメインC-C/DもしくはC-C/D'を含むEGF様ドメイン;またはWO 97/09425に開示されるEGF様ドメイン)を有するペプチドが、心不全、例えば、うっ血性心不全を予防するか、該心不全を治療するか、または該心不全の進行を遅らせるために本開示の方法において使用され得る。米国特許第5,530,109号;米国特許第5,716,930号;米国特許第7,037,888号;およびWO 97/09425の各々の内容は、その全体が本明細書に組み入れられる。
いくつかの態様において、ニューレグリンは、以下を含むか、以下から本質的になるか、または以下からなる、遺伝子、遺伝子産物、またはそれらのそれぞれのサブ配列もしくは断片である:NRG-1、NRG-2、NRG-3、またはNRG-4。好ましい態様において、NRGサブ配列またはその機能的断片は、上皮成長因子様(EGF様)ドメインまたはその相同体を含む。EGF様ドメインペプチドのペプチド相同体は、構造的相同性を見出すことによって、またはErbB受容体に結合しこれを活性化することによるなどの機能的アッセイ法においてEGF様ペプチドが機能するように相同体ペプチドが機能することによって、決定される。NRGの機能的断片はErbB受容体に結合しこれを活性化する。好ましくは、NRGの機能的断片は、少なくとも40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、または420アミノ酸長である。
いくつかの態様において、本発明の方法において使用されるペプチドは、グリア成長因子2(GGF2)、例えば、組換えヒトGGF2、またはその機能的断片である。GGF2の機能的断片は、ErbB受容体に結合しこれを活性化し、SEQ ID NO: 1の、422アミノ酸またはそれ未満、例えば、422、420、418、416、414、412、410、408、406、404、402、400、398、396、394、392、390、388、386、384、382、380、379、378、377、376、375、374、373、372、371、370、369、368、367、366、365、360、355、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、55、50、45、40、35、30、25、20アミノ酸またはそれ未満を含む。例えば、GGF2の機能的断片は、SEQ ID NO: 1の372個のアミノ酸を含む。好ましくは、GGF2の機能的断片は、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を含む。
いくつかの例において、核酸配列、例えばcDNA、例えばクローンGGF2HBS5(例えば、参照により本明細書に組み入れられるUS 5,530,109を参照のこと)は、ヒト全長GGF2についてのコード配列を含有し、以下の配列:
を含み、n=任意のヌクレオチドである。
全長ヒトGGF2についての核酸、例えば、cDNA、コード配列を以下に提供する。
好ましい態様において、GGF2の機能的断片はGGF2の成熟形態を含む。例えば、GGF2の成熟形態は、N末端シグナル配列、例えば、上記の下線が引かれた配列を欠いている。ヒトGGF2ペプチドの成熟形態のアミノ酸配列を以下に提供する。
他の態様において、本発明のペプチドはGGF2の変異体である。例えば、GGF2の変異体は以下のアミノ酸配列のうちの1つを含む:
X=任意のアミノ酸である、
X=任意のアミノ酸である、
X=任意のアミノ酸である、
X=任意のアミノ酸である、
。
いくつかの態様において、本発明のペプチドは、GGF2の変異体の機能的断片を含む。GGF2の変異体の機能的断片は、ErbB受容体に結合しこれを活性化し、全長GGF2変異体タンパク質の422、420、418、416、414、412、410、408、406、404、402、400、398、396、394、392、390、388、386、384、382、380、379、378、377、376、375、374、373、372、371、370、369、368、367、366、365、360、355、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、55、50、45、40、35、30、25、20個のアミノ酸またはそれ未満を有し得る。
いくつかの態様において、本発明のEGF様ドメイン含有ペプチドは、NRG-1、NRG-2、NRG-3、またはNRG-4遺伝子、例えば、NRG-1遺伝子によってコードされるペプチドの断片を含む。例えば、本発明のEGF様ドメイン含有ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含む:
。
他の例において、本発明のEGF様ドメイン含有ペプチドは、EGFLドメイン1(EGFL1)、EGFLドメイン2(EGFL2)、EGFLドメイン3(EGFL3)、EGFLドメイン4(EGFL4)、EGFLドメイン5(EGFL5)、またはEGFLドメイン6(EGFL6)を含む。EGFL1-EGFL6のアミノ酸配列、およびこれらのペプチドをコードする核酸、例えばcDNA、配列を下記に示す。
EGFL1アミノ酸配列:
EGFL1は、以下の核酸、例えばcDNA、配列:
によってコードされる。
EGFL2アミノ酸配列:
EGFL2は、以下の核酸、例えばcDNA、配列:
によってコードされる。
EGFL3アミノ酸配列:
EGFL3は、以下の核酸、例えばcDNA、配列:
によってコードされる。
EGFL4アミノ酸配列:
EGFL4は、以下の核酸、例えばcDNA、配列:
によってコードされる。
EGFL5アミノ酸配列:
EGFL5は、以下の核酸、例えばcDNA、配列:
によってコードされる。
EGFL6アミノ酸配列:
EGFL6は、以下の核酸、例えばcDNA、配列:
によってコードされる。
いくつかの態様において、本発明のペプチドは、精製された組換えまたは化学合成ペプチドである。
本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンは、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と共に、患者、例えば、ヒト、獣医学的対象、または実験動物へ投与され得る。本開示の組成物は、単位剤形で提供され得る。治療製剤は、液剤または懸濁剤の形態であり得;経口投与について、製剤は、錠剤またはカプセル剤の形態であり得;鼻腔内製剤については、散剤、点鼻剤、またはエアロゾル剤の形態であり得る。
製剤の作製のための方法は、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」において見られる。非経口投与用の製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、または食塩水、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、植物起源のオイル、または水素化ナフタレンを含有し得る。本開示の分子を投与するための他の潜在的に有用な非経口送達システムとしては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、およびリポソームが挙げられる。吸入用の製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含有し得、または、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココラートおよびデオキシコラートを含有する水性液剤であり得、または、点鼻剤の形態でのもしくはゲルとしての投与用の、油性液剤であり得る。
本明細書に記載の状態または疾患、例えば心不全の治療、予防、または進行の遅延における薬剤としての使用のための、本発明の組成物、例えば、ペプチド、例えば、ニューレグリン、例えばGGF2またはその断片などのEGF様ドメイン含有ペプチドが提供される。本明細書に記載の状態、疾患、例えば心不全、の治療、予防、または進行の遅延用の医薬の製造における、本組成物、例えば、ペプチド、例えば、ニューレグリン、例えばGGF2またはその断片などのEGF様ドメイン含有ペプチドの使用もまた、本明細書において提供される。
ニューレグリンの半減期は、静脈内に送達された場合は4〜8時間であり、皮下に送達された場合は11〜15時間である。例えば、表14および15ならびに図1および2を参照のこと。従って、4日毎と同じ程度頻繁でないレジメンでの投与は、次の投与までの少なくとも3日間は検出可能なレベルを維持しない。このオーダーの半減期を有する化合物は、頻繁な投与レジメン、例えば、1日用量または複数回の1日用量に従って一般的には投与される。
本発明は、定常状態濃度を維持しないペプチドの投与についての投与レジメンによって、上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含むペプチドの治療的利益が達成され得るという観察に基づく方法を特徴とする。本発明者らは、狭い定常状態濃度を維持しないニューレグリン投与についての投与レジメンが、より頻繁な投与レジメンと同じ程度に等しく有効であることを本明細書において実証する。
本開示によれば、本明細書に記載のペプチドの断続的または不連続の投与は、投与されるペプチドの狭い定常状態濃度が維持されない投与レジメンを達成することに向けられ、それによって、哺乳動物が、投与されるペプチドの超生理的レベルを長期間にわたって維持することから生じ得る不都合な副作用を経験する可能性が減らされる。例えば、外因的に投与されるNRGの超生理的レベルに伴う副作用としては、神経鞘過形成、乳房過形成、腎症、精子減少(hypospermia)、肝酵素増加、心臓弁変化、および注射部位での皮膚変化が挙げられる。
好ましい態様において、本開示は、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの血清中濃度の変動を誘発するかまたは許容し、従って、ペプチドのより頻繁な投与に伴う有害な副作用についての可能性を減らす、断続的な投与レジメンに関する。従って、本開示の断続的な投与レジメンは、治療的利点を哺乳動物へ与えるが、ペプチドの定常状態治療レベルを維持しない。当業者によって認識されるように、断続的な投与を得るための本開示の種々の態様が存在し;これらの態様の利益は、例えば、投与がペプチドの定常状態治療レベルを維持しない、投与がより頻繁なNRGペプチドの投与に伴う有害な副作用についての可能性を減らすなど、様々に記載され得る。
一局面において、本発明は、哺乳動物における心不全を治療するための方法を提供し、方法は、上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含むペプチド、例えば、外因性ペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを哺乳動物へ投与する工程を含み、本明細書に記載の投与間隔で投与する工程は、哺乳動物におけるペプチドの投与に伴い得る任意の潜在的な有害な副作用を減らす。例えば、投与間隔は少なくとも48時間であり、この間隔での投与は、哺乳動物においてペプチドの定常状態レベルを維持せず、哺乳動物におけるベースラインレベルまたは投与前レベルへのペプチドの血清中濃度の用量内(intradose)変動を許容する。
実際に、本発明は、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上の、または、間隔/レジメンが少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上である限り、それらの任意の組み合わせもしくは増分の、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与間隔を提供する。ある態様において、本発明のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、少なくとも1ヶ月毎に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、または6ヶ月毎に1回の投与間隔で投与する。例えば、ペプチドを、少なくとも2週間、例えば、少なくとも2週間、3週間、または4週間の投与間隔で投与する。例えば、ペプチドを、4ヶ月超の投与間隔で投与する。
いくつかの態様において、治療有効量の本発明のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、48、72、96時間、またはそれ以上の投与間隔で哺乳動物へ投与する。好ましくは、投与レジメンは、治療有効量のペプチドを72、96時間、またはそれ以上の投与間隔で哺乳動物へ投与する工程を含む。従って、本方法は、哺乳動物への、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの断続的または不連続の投与(72〜96時間毎、またはさらに長い間隔)を必要とし、ペプチドの投与は、哺乳動物における心不全を治療するか、該心不全を予防するか、または該心不全の進行を遅らせるに有効な量である。定常状態濃度を維持しないニューレグリン、例えば、GGF2またはその機能的断片の投与についての投与レジメンは、より頻繁な投与レジメンと同程度に等しく有効であるにも関わらず、より頻繁な投与から生じ得る不都合、コストまたは副作用を伴わない。
本明細書において使用される場合、断続的または不連続の投与という用語は、少なくとも(または最低でも)24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上の、または、間隔/レジメンが少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上である限り、それらの任意の組み合わせもしくは増分の、間隔で投与するためのレジメンを含む。例えば、ペプチドを、少なくとも2週間、例えば、少なくとも2週間、3週間、または4週間の投与間隔で投与する。例えば、投与間隔は4ヶ月超である。
ある態様において、本明細書において、断続的または不連続の投与という用語は、少なくとも2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、1ヶ月毎に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、7ヶ月毎に1回、8ヶ月毎に1回、9ヶ月毎に1回、10ヶ月毎に1回、11ヶ月毎に1回、または12ヶ月毎に1回、投与するためのレジメンを含む。
本開示の投与レジメンのある態様において、本開示のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、毎月1回、1ヶ月おきに1回、3ヶ月毎に1回、3.5ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、4.5ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、7ヶ月毎に1回、またはより頻度の少ない投与間隔で投与する。
本開示の投与レジメンは、駆出率(EF)、左室駆出率(LVEF)、拡張末期容量(EDV)、収縮末期容量(ESV)、心容積、心臓重量、肝毒性、またはB型ナトリウム利尿ペプチド(B-type Natiuretic Peptide)(BNP)、N末端B型ナトリウム利尿ペプチド(NT BNP)、および/もしくはトロポニン-I(TnI)の心臓組織もしくは血液試料のいずれかにおけるタンパク質発現レベルの増加もしくは減少を含むが、これらに限定されない、様々な因子の評価で、開始され、確立され、または続いて改変され得る。本発明の投与レジメンはまた、心不全の1つまたは複数の症状、例えば、息切れ、運動不耐性、入院、再入院、死亡、および/または病的状態の評価、改善または好転で、開始され、確立され、または続いて改変され得る。これらの因子のうちの1つまたは複数の変化は、投与間の間隔が短すぎる、投与が頻繁すぎる、または投与経路が最適でない場合があり得ることを示し得る。他の場合において、これらの因子のうちの1つまたは複数の変化は、最適な用量および/またな投与間隔を達成し、任意で、これが維持され得ることを示し得る。
いくつかの場合において、肝毒性を、例えば規則的間隔で、モニタリングし、例えば、肝毒性を、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月毎に、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分で、評価する。
いくつかの場合において、例えば、対象の血漿、血清、または血液中のグルコースレベルを、規則的間隔でモニタリングし、例えば、肝毒性を、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月毎に、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分で、評価する。
例えば、肝毒性および/またはグルコースレベルを、本明細書に記載の任意の投与レジメンで、例えば、段階的増大投与レジメン、逓減投与レジメン、および/または、治療有効用量が維持される、例えば変更されない投与レジメンで、モニタリングする。
従来の薬学的実行が、好適な製剤または組成物を提供するために、およびこのような組成物を患者または動物へ投与するために、用いられる。任意の好適な投与経路、例えば、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経皮的投与、心臓内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、エアロゾル投与、経口投与、または、例えば、真皮を横断し血流に入ることができる製剤を含む粘着性パッチを提供することによる局所投与が用いられ得る。例えば、投与経路は静脈内注射/注入または皮下注射/注入である。例えば、本発明のペプチド、例えば、EGF様ドメイン含有ペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンは、本明細書に記載の経路による投与、例えば、静脈内注射/注入または皮下注射/注入に適している。他の例において、組成物は、カテーテル、ポンプ送達システム、またはステントによって送達される。
例えば、静脈内注射または皮下注射などの、注射によって投与される、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの用量レベルは、約0.001 mg/kg〜約4 mg/kg体重の範囲にある。例えば、ペプチドの用量レベルは、約0.001 mg/kg〜約1.5 mg/kg、約0.007 mg/kg〜約1.5 mg/kg、約0.001 mg/kg〜約0.02 mg/kg、約0.02 mg/kg〜約0.06 mg/kg、約0.06 mg/kg〜約0.1 mg/kg、約0.1 mg/kg〜約0.3 mg/kg、約0.02 mg/kg〜約0.75 mg/kg、約0.3 mg/kg〜約0.5 mg/kg、約0.5 mg/kg〜約0.7 mg/kg、約0.5 mg/kg〜約1.0 mg/kg、約0.7 mg/kg〜約1.0 mg/kg、約0.3 mg/kg〜約4 mg/kg、約0.3 mg/kg〜約3.5 mg/kg、約1.0 mg/kg〜約1.5 mg/kg、または約1 mg/kg〜約10 mg/kgの範囲にある。
いくつかの場合において、ペプチドの用量レベルは、約1.5 mg/kg体重に等しいかもしくはそれ未満、例えば、約0.8 mg/kgに等しいかもしくはそれ未満、または約0.756 mg/kg体重未満である。
例えば、ペプチドの用量レベルは、約0.007 mg/kg、約0.02 mg/kg、約0.06 mg/kg、約0.19 mg/kg、約0.38 mg/kg、約0.76 mg/kg、または約1.5 mg/kg体重、例えば、0.007 mg/kg、0.021 mg/kg、0.063 mg/kg、0.189 mg/kg、0.378 mg/kg、0.756 mg/kg、または1.512 mg/kg体重を含む。
いくつかの例において、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分の投与間隔で、約0.005 mg/kg〜約4 mg/kg体重の用量レベルで投与する。
他の例において、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分の投与間隔で、約0.007 mg/kg、約0.02 mg/kg、約0.06 mg/kg、約0.19 mg/kg、約0.38 mg/kg、約0.76 mg/kg、または約1.5 mg/kg体重の用量レベルで投与する。
いくつかの場合において、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分の投与間隔で、0.007 mg/kg、0.021 mg/kg、0.063 mg/kg、0.189 mg/kg、0.378 mg/kg、0.756 mg/kg、または1.512 mg/kg体重の用量レベルで投与する。
他の場合において、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分の投与間隔で、約0.35 mg/kg〜約3.5 mg/kg体重、例えば、約3.5 mg/kg、約1.75 mg/kg、約0.875 mg/kg、または約0.35 mg/kg体重の用量レベルで投与する。
いくつかの態様において、本明細書に記載のペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの治療有効量は、約0.06 mg/kg体重〜約0.38 mg/kg体重であり、投与間隔は、少なくとも2週間、例えば、少なくとも2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上である。例えば、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、約0.063 mg/kg、約0.189 mg/kg、または約0.375 mg/kgである。例えば、約0.063 mg/kg、約0.189 mg/kg、または約0.375 mg/kgの治療有効量のペプチドを、例えば、心不全を予防するか、心不全を治療するか、または心不全の進行を遅らせるために、静脈内注射または静脈内注入によって投与する。
いくつかの場合において、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、もしくはそれ以上、またはそれらの任意の組み合わせもしくは増分の投与間隔で、約0.056 mg/kg〜約0.57 mg/kg体重、例えば、約0.056 mg/kg、約0.1 mg/kg、約0.2 mg/kg、約0.3 mg/kg、約0.4 mg/kg、または約0.57 mg/kgの用量レベルで投与する。
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、記載される値プラスまたはマイナス別の量を指し;それによって、値の範囲が確立される。ある好ましい態様において、「約」は、ベース(またはコアもしくはリファレンス)値または量に対して、プラスまたはマイナス15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.75%、0.5%、0.25%、または0.1%までの範囲を指す。例えば、約とは、記載のレベル、例えば、用量レベルの+/- 5%下および上の範囲を指す。
本明細書に記載のペプチドの用量レベルは、上述の経路、例えば、静脈内注射/注入または皮下注射/注入によって投与される。
本開示のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの用量レベルは、皮下経路によって投与される場合、静脈内経路によって投与される場合と同じペプチドの用量レベルに等しくてもよいかまたはそれを上回ってもよい。さらに、静脈内経路と比較して、ペプチドが皮下経路によって投与される場合、投与間の間隔の長さは減少し得、または投与の頻度は増加し得る。ある態様において、静脈内経路によって本開示のペプチドを受容し、続いて、肝毒性を示す肝酵素の増加を示す対象は、等しいかまたはより多い用量のペプチドを使用して皮下経路によって治療され得る。
経皮用量は、注射用量を使用して達成されるのと同様であるかまたはこれよりも低い血中濃度を提供するように、一般的には選択される。
本発明のいくつかの投与レジメンにおいて、本明細書に記載のペプチド、例えば、ニューレグリン、例えばGGF2またはその機能的断片などのEGF様ドメインを含むペプチドの初回用量を対象へ投与し、続いての用量(例えば、第2の用量、第3の用量、第4の用量など)を、本明細書に記載の投与間隔で対象へ投与する。いくつかの場合において、初回用量は、1つまたは複数の続いての用量と同じである。例えば、初回用量は、全ての続いての用量と同じである。いくつかの場合において、初回用量は、例えば、本明細書に記載の段階的増大投与レジメンによって提供されるように、1つまたは複数の続いての用量よりも少ない。他の場合において、初回用量は、例えば、本明細書に記載の逓減投与レジメンによって提供されるように、1つまたは複数の続いての用量よりも多い。
いくつかの態様において、本発明はまた、それを必要とする対象へ、段階的増大投与レジメンに従って、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを投与する工程を含む、対象における心不全を治療するか、該心不全を予防するか、または該心不全の進行を遅らせるための方法を提供する。いくつかの場合において、方法は、第1の治療有効用量で本明細書に記載のペプチドを投与する工程、および続いて第2の治療有効用量を投与する工程を含む。いくつかの態様において、第2の用量は初回用量と同じである。いくつかの態様において、第2の用量は第1の用量よりも多い。いくつかの場合において、方法は、例えば、維持用量に達するまで、初回用量または第2の用量の後に1つまたは複数の続いての用量を投与する工程を含む。例えば、方法は、本明細書に記載の投与間隔で維持用量を投与する工程を含む。例えば、投与間隔は、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月である。例えば、投与レジメンは、ある期間の間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上の期間、対象へペプチドの初回用量を投与する工程、および続いて、様々な指定の時点で、例えば、各前回の用量後の少なくとも24時間の時点で、例えば、各前回の用量後の少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上の時点で、用量を増やす工程を含む。
例えば、投与レジメンは、
(a)約0.005 mg/kg体重〜約1.5 mg/kg体重、例えば、約0.007〜約0.015 mg/kg体重の範囲内、または約0.007 mg/kg、約0.021 mg/kg、約0.063 mg/kg、約0.189 mg/kg、約0.378 mg/kg、約0.756 mg/kg、もしくは約1.512 mg/kg体重の初回用量のペプチドを投与する工程;
(b)その後、前回の用量より2倍〜3倍多い第2の用量のペプチドを投与する工程;
(c)維持治療用量に達するまで工程(b)を繰り返す工程;
(d)任意で、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の投与間隔で、維持治療用量を投与し続ける工程
を含む。
いくつかの態様において、本発明はまた、それを必要とする対象へ、逓減投与レジメンに従って、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを投与する工程を含む、対象における心不全を治療するか、該心不全を予防するか、または該心不全の進行を遅らせるための方法を提供する。いくつかの場合において、方法は、第1の治療有効用量で本明細書に記載のペプチドを投与する工程、および続いて第2の治療有効用量を投与する工程を含む。いくつかの態様において、第2の用量は第1の用量と同じである。いくつかの態様において、第2の用量は第1の用量よりも少ない。いくつかの場合において、方法は、例えば、維持用量に達するまで、または0 mg/kgの用量に達するまで、初回用量または第2の用量の後に1つまたは複数の続いての用量を投与する工程を含む。例えば、方法は、本明細書に記載の投与間隔で維持用量を投与する工程を含む。例えば、投与レジメンは、ある期間の間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上の期間、対象へペプチドの初回用量を投与する工程、および続いて、様々な指定の時点で、例えば、各前回の用量後の少なくとも24時間の時点で、例えば、各前回の用量後の少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上の時点で、用量を減らす工程を含む。
例えば、投与レジメンは、
(e)約0.005 mg/kg体重〜約1.5 mg/kg体重、例えば、約0.007〜約0.015 mg/kg体重の範囲内、または約0.007 mg/kg、約0.021 mg/kg、約0.063 mg/kg、約0.189 mg/kg、約0.378 mg/kg、約0.756 mg/kg、もしくは約1.512 mg/kg体重の初回用量のペプチドを投与する工程;
(f)その後、前回の用量の1/2〜1/3である第2の用量のペプチドを投与する工程;
(g)維持治療用量に達するまで工程b)を繰り返す工程;
(h)任意で、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の投与間隔で、維持治療用量を投与し続ける工程
を含む。
例えば、投与レジメンは、
(i)約0.005 mg/kg体重〜約1.5 mg/kg体重、例えば、約0.007〜約0.015 mg/kg体重の範囲内、または約0.007 mg/kg、約0.021 mg/kg、約0.063 mg/kg、約0.189 mg/kg、約0.378 mg/kg、約0.756 mg/kg、もしくは約1.512 mg/kg体重の初回用量のペプチドを投与する工程;
(j)その後、前回の用量より2倍〜3倍多い第2の用量のペプチドを投与する工程;および
(k)最大治療用量に達するまで工程(b)を繰り返す工程
を含む。
最大治療用量は、対象において有害事象を誘発せず、用量を少なくとも24時間の間隔で投与する。例えば、最大用量は約0.7 mg/kg体重〜約1.5 mg/kg体重である。例えば、有害事象、例えば、治療下で発現した有害事象(TEAE)を表12に示し、有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)バージョン4(CTCAEv4)を使用して等級分けする。
いくつかの場合において、本発明は、少なくとも24時間の間隔で最大治療有効用量のペプチドを投与し続ける追加の工程をさらに含む。例えば、間隔および/または期間は、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上である。代わりにまたはさらに、方法は、ペプチドの用量、例えば、初回用量または任意の続いての用量を、ある期間にわたって最終用量0 mg/kgへ、漸減するかまたは減少させる追加の工程を含む。例えば、期間は、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上にわたる。
いくつかの態様において、本発明の方法に従って使用される、治療的投与レジメンは、
(a)約0.005 mg/kg体重〜約0.015 mg/kg体重の範囲内の治療用量のペプチドを投与する工程;
(b)その後、治療有効用量のペプチドを投与する工程であって、該用量を、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間隔で投与する、工程
を含む。
いくつかの場合において、治療用量は所定量であり、所定量は、当技術分野で周知である方法によって算出される。
さらに他の場合において、治療用量は、初回用量の有効性を評価することに基づき、有効性は、例えば本明細書に記載されるような、当技術分野で周知である方法によって決定される。
本明細書に記載のペプチドの用量は、対象にとって必要である限り、例えば、1用量、2用量、3用量、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、9用量、10用量、またはそれ以上の用量について、本明細書に記載の投与間隔で対象へ提供され得る。
投与の基本原則は、有効循環濃度を決定し、それらのレベルを維持するように投与レジメンを設計することである。薬物動態学(PK)および薬力学(PD)研究を組み合わせ、特定の薬物の定常状態レベルを維持する投与レジメンを予測する。典型的なプランは、CmaxとCminとの差を最小限にし、それによって副作用を減らすことである。しかし、本明細書に記載するように、いくつかの態様において、本発明は、対象において、ペプチドの定常状態レベルを維持しない本明細書に記載のペプチドの投与レジメン、例えば、不連続のまたは断続的な投与レジメンを提供する。例えば、投与レジメンは、心不全および/または心不全の1つもしくは複数の症状を治療すること、心不全および/または心不全の1つもしくは複数の症状を予防すること、または心不全および/または心不全の1つもしくは複数の症状の進行を遅らせることにおける有効性を維持すると同時に、ペプチドへの対象の曝露を最小限にする。
薬物は、それらの「治療指数」によって記載され、これは、有効用量または循環濃度によって割られた毒性用量または循環レベルの比率である。治療指数が大きい場合、毒性レベルに近づくことなく有効用量が提供され得る広い安全性範囲がある。有効濃度に非常に近い濃度で不都合な効果が生じる場合、治療指数は狭いと記載され、薬物は安全に投与することが困難である。
投与レジメンを開発している間、PK/PDデータと治療指数の知識とが組み合わされ、投与の用量および頻度が設計され、化合物は、有効濃度を超えかつ毒性濃度未満となるような濃度で患者、例えばヒトにおいて維持される。薬物の有効濃度が危険な効果を誘発することなしには維持され得ない場合、薬物は、開発の間に落第する。薬物開発に関するさらなる解説は、以下を含む種々の参考文献において見られ得る:全体が本明細書に組み入れられる、Pharmacokinetics in Drug Development: Clinical Study Design and Analysis (2004, Peter Bonate and Danny Howard, eds.)。
薬物治療を含む医学的介入は、適切な薬物の選択および適切な投与レジメンでのその送達を必要とする。適切な投与レジメンは、十分な用量、経路、頻度、および治療期間を含む。薬物療法の最終的な目的は、治療される患者が、治療が必要とされる病理学的過程を克服することを可能にするように、作用部位での最適な薬物濃度を獲得することである。概して、薬物体内動態(drug disposition)ドラッグディスポジションの原則の基礎知識は、適切な投与レジメンの選択を容易にする。しかし、治療薬物モニタリング(TDM)が、補助ツールとしてこれに関連して使用され得、個々の患者の医学療法のための選択薬物の有効かつ安全な投与レジメンを決定することにおいて主治医を援助する。
最適な薬物濃度の定義は、特定の薬物の薬力学的特徴に応じて変化する。例えば、ペニシリンなどの時間依存性の抗生物質についての最適な療法は、2〜4の最高濃度対MIC(最小阻止濃度)比率、および投与間隔の75%に等しいMICを超える時間を達成することに関する。例えば、ゲンタマイシンなどの濃度依存性の抗生物質について、有効性は、約8〜10の最高濃度対MIC比率を得る事に関する。特定の薬物の投与に伴う微妙な差異に関係なく、薬物療法は、標的種における薬物の薬物動態学、薬力学および毒性プロファイルに基づいて前もって決定された「治療ウインドウ」の制限内で標的血漿中濃度(これは、しばしば、作用部位での濃度を表す)を達成しようとする。このウインドウの幅は、種々の薬物および種について変化する。最小有効濃度と最小毒性濃度との差が小さい(2〜4倍)場合、治療ウインドウは狭いと言われる。対照的に、有効濃度と毒性濃度との間に大きな差がある場合、薬物は、広い治療ウインドウを有すると考えられる。狭い治療ウインドウを有する薬物の例は、ジゴキシンであり、ここで、平均の有効濃度と毒性濃度との差は2または3倍である。他方で、アモキシシリンは、広い治療域を有し、患者の過剰投与は、毒性問題を一般的に伴わない。
薬物応答性に関しての同一種の健常対象間の顕著な変動性は、一般的である。さらに、病状は、臓器系および機能、例えば、腎臓、肝臓、含水量に影響を与える可能性を有し、これは、次に、薬物応答性に影響を与え得る。これは、次に、薬物が投与される病気の個体における薬物応答性の差異の増加に寄与する。さらに別の関連する問題は、同時の複数の薬物の投与に関し、これは、一方または両方の薬物に対する応答性の変化をもたらし得る薬物動態学的相互作用を生じさせる。要約すると、生理学的因子、例えば年齢、病理学的因子、例えば疾患効果、および薬理学的因子、例えば薬物相互作用は、動物における薬物のディスポジションを変化させ得る。その結果として起こる個体間の変動性の増加は、狭い治療ウインドウを有する薬物の治療失敗または毒性をもたらし得る。
血清中薬物濃度を測定する目的での血液試料採取の適切なタイミング、ならびに報告された濃度の解釈は、測定される薬物の薬物動態学的性質の考慮を必要とする。これらの特性の議論において使用されるいくつかの用語を、以下の段落において定義する。
半減期は、間隔の最初に存在する血清中濃度が50%減少するために必要とされる時間である。おおよその半減期を知ることは、臨床医にとって必須であり、何故ならば、それは、最適な投与スケジュール、血清中濃度の用量内変動、および定常状態を達成するために必要とされる時間を決定するためである。
手短に記載すると、多数の薬物動態試験がGGF2について行われた。GGF2についての典型的な半減期は、静脈内(iv)経路については4〜8時間であり、一方、皮下(sc)投与されたGGF2の半減期は11〜15時間である。Cmax、AUC、TmaxおよびT1/2を下記の表14および15に示す。半減期がこれらの方法によって正確に測定されるには長すぎる場合、時間の代わりにダッシュを記載する。
(表14)
125I-rhGGF2の単回の静脈内投与または皮下投与の後の雄性Sprague-Dawleyラットについての血漿中の
125I-rhGGF2由来放射活性の平均薬物動態
(表15)
125I-rhGGF2の単回の副次的な静脈内投与または皮下投与の後の雄性Sprague-Dawleyラットについての血漿中の
125I-rhGGF2由来の放射活性の平均薬物動態
投与後の血漿中濃度を、ivおよびsc投与について、それぞれ、図1および2に示す。図1および2に示される通り、Cmaxは、最大血漿中濃度(投与後のいずれかの時点での血漿中において測定される最大濃度)を指し;AUC無限は、無限時間までの濃度対曲線下の面積を指し(この方法は、アッセイ法が検出限界を有することを予想するために使用される);AUC0-tは、血漿中濃度下の面積を指し(時間ゼロから最後までの測定可能な濃度の時間曲線);任意の方法によるAUCは、動物への全曝露の推定値を指し;かつTmaxは、最大血漿中濃度の中央時間を指す。
提供された表および図によって示される通り、4日毎、1日おき毎または毎日の投与でのいずれかの投与経路によって定常状態治療レベルを維持することは、可能でない。表16に記載のデータによって反映された通り、1日後に、それよりずっと前でさえ、レベルは測定不能である。
(表16)静脈内投与後のGGF2についてのPKパラメータ
*
*ELISAによって測定された血漿中GGF2濃度から得られたデータより取得。報告されたデータは平均値±SDである。
定常状態血清中濃度は、各投与により繰り返される値であり、所定の時間間隔における投与される薬物の量と排出される量との平衡状態を示す。任意の薬物での長期間投与の間、その平均定常状態血清中濃度の2つの主要な決定要因は、薬物が投与される速度、および特定の患者における薬物の総クリアランスである。
最高血清中濃度は血清中濃度対時間曲線上の最大濃度のポイントである。最高血清中濃度の正確な時間は、予測するのが困難であり、何故ならば、それは、インプット速度とアウトプット速度との間の複雑な関係を表すためである。
血清中濃度は投与間隔の間に見られるトラフ血清中濃度である。トラフ濃度は、次の用量を投与する直前の期間において理論上存在する。
吸収は薬物が身体に入るプロセスである。血管内投与された薬物は、完全に吸収されるが、血管外投与は、吸収の種々の程度および速度をもたらす。吸収速度と排出速度との関係は、血流中の薬物濃度の主な決定要因である。
分布は、血管内腔から血管外液および組織へのならびにそれに従って標的受容体部位への、全身的に利用可能な薬物の分散である。
治療域は、高度の有効性と低リスクの用量関連毒性とに関連する血清中薬物濃度のその範囲である。治療域は、統計的概念であり:それは、大部分の患者における治療応答と関連する濃度範囲である。結果として、ある患者は、その範囲の下限未満の血清中濃度で治療応答を示し、一方、他の患者は、治療的利益について上限を超える血清中濃度を必要とする。
試料収集の正確なタイミングが重要であり、何故ならば、薬物療法は、しばしば、血清中濃度測定に基づいて修正されるためである。試料が採取される前に、吸収および分布段階は完了しており、定常状態濃度が達成されているべきである。定常状態濃度が存在する前に得られるレベルは、誤って低い場合があり;このような結果に基づいて投与量を増加させることは、毒性濃度を生じさせ得る。さらに、比較測定を行う場合、試料採取時間が一定であることが重要である。
投与量に関しての血液試料のタイミングは、血清中濃度結果の正確な解釈のために重要である。試料が薬物投与に関して採取される時間の選択は、薬物の薬物動態特性に、その剤形に、および試料のアッセイ法のため、例えば、有効性の評価または可能性のある薬物誘発毒性の解明のための臨床的理由に基づくべきである。短い半減期を有する薬物の型通りの血清中濃度モニタリングについて、定常状態ピークおよびトラフ試料の両方が、血清中濃度プロファイルを特徴付けられるために収集され得;長い半減期を有する薬物については、定常状態トラフ試料のみで、一般的には十分である。
一般通念および開発実行に従って、CHFについての他の医学的処置が、少なくとも毎日に基づいて、典型的に施される。このようなレジメンの周期性が必要とされると考えられ、何故ならば、CHFは、急性状態ではなく、心臓の損なわれた収縮および/または弛緩によって一般的に引き起こされる、慢性状態であるためである。弛緩障害およびCHFへ至る弱いまたは不全の心臓を有する人において、医学的処置は、特定の神経ホルモンの形成または作用を遮断する薬物、例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害物質(ACE阻害物質)、アンギオテンシン受容体アンタゴニスト(ARB)、アルドステロンアンタゴニスト、およびβ-アドレナリン作動性受容体遮断薬を含む。これらおよび他の医用薬剤は、慢性CHFの現在の標準治療であり、何故ならば、それらは、改善された症状、平均余命および/または入院の減少をもたらすことが実証されたためである。急性増悪または慢性症状の場合において、患者は、心収縮性を増強させるための変力物質(inotrope)、例えば、ドブタミン、ジゴキシン、ならびにうっ血を減少させるための血管拡張薬、例えば、ニトレート、ネシリチド、および/または利尿薬、例えばフロセミドでしばしば治療される。高血圧症およびうっ血性心不全を有する患者は、1つまたは複数の抗高血圧剤、例えば、β遮断薬、ACE阻害物質およびARB、ニトレート、例えば二硝酸イソソルビド、ヒドララジン、ならびにカルシウムチャネル遮断薬で治療される。
従って、CHFの治療に関しての典型的な実行にもかかわらず、本発明者らは、本明細書に記載の投与レジメンが、望ましくない副作用を回避すると同時に、CHFの有効な治療をもたらすことを実証した。理論によって拘束されることを望まないが、このようなニューレグリン治療は、心筋細胞肥大を刺激することによって心臓のポンプ機能を強化し、心筋細胞アポトーシスを抑制することによって心臓のさらなる劣化を部分的にまたは完全に阻害する可能性が高い。
外因的に供給されたニューレグリンの超正常レベルを維持することは、神経鞘過形成、乳房過形成、腎症、精子減少、肝酵素増加、心臓弁変化、および注射部位での皮膚変化を含む不都合な効果を有することが示された。これらの効果は、ニューレグリンの毎日の皮下投与に続いて観察された。例えば、表8を参照のこと。これらの効果を低下させるための投与レジメンを開発することは、治療剤として使用されるニューレグリンの能力を顕著に高め、本開示が向けられるのはこの目的である。この目的を達成するために、本発明は、一定レベルを維持しない頻度の少ない投与もまた心不全の治療における使用について有効であることを実証する。
本開示の化合物、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンは、唯一の活性作用物質として投与され得、またはそれらは、同一のまたは類似の治療活性を示す、およびこのような併用投与について安全かつ有効であることが確定されている、他の化合物、例えば、ペプチドを含む、他の作用物質と併用して投与され得る。CHFの治療のために使用される他のこのような化合物としては、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP);スタチン(例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチン);特定の神経ホルモンの形成または作用を遮断する薬物(例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害物質(ACE阻害物質)、アンギオテンシン受容体アンタゴニスト(ARB)、アルドステロンアンタゴニスト、およびβ-アドレナリン作動性受容体遮断薬);心収縮性を増強するための変力物質(例えば、ドブタミン、ジゴキシン);うっ血を減少させるための血管拡張薬(例えば、ニトレート、ネシリチド);利尿薬(例えば、フロセミド);1つまたは複数の抗高血圧剤(例えば、β遮断薬、ACE阻害物質およびARB);ニトレート(例えば、二硝酸イソソルビド);ヒドララジン;ならびに/またはカルシウムチャネル遮断薬が挙げられる。
本開示の組成物および方法の特定の態様において、ベンゾジアゼピン薬を、上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含むペプチドと同じ組成物内で、または、代わりに、同じ治療の一部としておよび/または同じ投与レジメンに従って、患者へ投与する。ベンゾジアゼピン薬はベンゼン環およびジアゼピン環の融合から生じる。ベンゾジアゼピン薬は、短時間作用型、中時間作用型、または長時間作用型として分類され得る。ベンゾジアゼピン薬は、抗不安、鎮静、催眠、筋弛緩、健忘、抗痙攣、および抗高血圧特性を共有する。本開示の例示的なベンゾジアゼピン薬としては、アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、ブロチゾラム、クロロジアゼポキシド、シノラゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エスゾピクロン エチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、フルマゼニル、フルニトラゼパム、5-(2-ブロモフェニル)-7-フルオロ-1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2(3H)-オン、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、プラゾラム、クアゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデム、およびゾピクロンが挙げられるが、これらに限定されない。以下の例示的なベンゾジアゼピン薬は抗不安特性を有し得る:アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、クロロジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、メダゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、およびプラゾラム。以下の例示的なベンゾジアゼピン薬は抗痙攣特性を有し得る:ブレタゼニル、クロナゼパム、クロラゼペート、クロキサゾラム、ジアゼパム、フルトプラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、およびフェナゼパム。以下の例示的なベンゾジアゼピン薬は催眠特性を有し得る:ブロチゾラム、エスタゾラム、エスゾピクロン、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデム、およびゾピクロン。以下の例示的なベンゾジアゼピン薬は鎮静特性を有し得る:シノラゼパム。以下の例示的なベンゾジアゼピン薬は筋弛緩特性を有し得る:ジアゼパムおよびテトラゼパム。
本開示の組成物および方法の特定の態様において、ミダゾラムを、上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンと同じ組成物内で、または、代わりに、同じ治療の一部としておよび/または同じ投与レジメンに従って、患者へ投与する。これらの態様の特定の局面において、ミダゾラムを、上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンと同じ組成物内で、または、代わりに、同じ治療の一部としておよび/または同じ投与レジメンに従って、患者へ投与する。ニューレグリンはニューレグリン1(NRG1)であり得る。ニューレグリンはGGF2またはその機能的断片であり得る。ベンゾジアゼピン薬、例えばミダゾラムを、本開示に記載の任意の投与レジメンに従って投与してもよいが、特定の態様において、ベンゾジアゼピン薬、例えばミダゾラムを、経口用量を含む、1つまたは複数の用量で投与してもよい。特定の局面において、ベンゾジアゼピン薬、例えばミダゾラムを、経口用量を含む、1つまたは複数の用量で投与する場合、ペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンを単回投与、例えば単回静脈内注入で投与する。ベンゾジアゼピン薬、例えばミダゾラムを、ニューレグリン、例えばGGF2またはその機能的断片の用量の前、と同時、または後に、投与し得る。この態様の特定の局面において、ベンゾジアゼピン薬、例えばミダゾラムを5経口用量で投与し、それらのうちの第2の経口用量の後に、ニューレグリン、例えばGGF2またはその機能的断片を単回投与、例えば単回静脈内注入で投与する。
ミダゾラムは、短時間作用型ベンゾジアゼピン薬および中枢神経系(CNS)抑制薬である。ミダゾラムは、痙攣、不眠、医学的/外科的処置の前の鎮静および/または健忘、ならびに麻酔の誘導または維持の処置について承認されている。ミダゾラムは、強力な抗不安、健忘、催眠、抗痙攣、筋弛緩、および鎮静特性を有する。ミダゾラムは、GABAA受容体に対する神経伝達物質GABAの効果を増強し、塩素チャネル開口の頻度を増加させ、従って、神経活動の阻害を誘導するかまたは増加させる。
ミダゾラムは、鼻腔内および経口を含むがこれらに限定されない任意の経路、例えば、ガムおよびチークを介しての吸収の頬経路によって投与され得る。ミダゾラムはおよそ1〜4時間の排出半減期を有する。排出半減期は、幼児、若年者および高齢者において延長され得る。
本開示の組成物を受容する対象または本開示の方法に従って治療される対象は、本開示の組成物の投与または治療レジメンの開始の前に、1つまたは複数のベンゾジアゼピン薬を服用し得る。本開示の組成物を受容する対象または本開示の方法に従って治療される対象は、本開示の組成物の投与または治療レジメンの開始の間に、1つまたは複数のベンゾジアゼピン薬を服用し得る。本開示の組成物を受容する対象または本開示の方法に従って治療される対象は、本開示の組成物の投与または治療レジメンの開始の後に、1つまたは複数のベンゾジアゼピン薬を服用し得る。
好適な対象または患者は哺乳動物を含む。哺乳動物は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サルまたはブタを含むが、これらに限定されない。本開示の一態様において、哺乳動物はヒトである。本開示において提供される治療方法の対象は、慢性心不全を示し得る。好ましくは、対象の状態は、少なくとも1、2、3、4、5、または6ヶ月間、安定しているままである。安定または慢性心不全は、少なくとも1、2、3、4、5、または6ヶ月の期間にわたって心臓機能の増加もしくは減少および/または損傷の欠如をさらに特徴とし得る。例えば、対象は、本発明のペプチドの投与前の少なくとも1ヶ月、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6ヶ月、またはそれ以上の間、慢性心不全に罹患している。
例えば、対象は、本発明のペプチドの投与前にクラス2、3、または4心不全に罹患している。ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)(NYHA)心機能分類システムは、どれほど対象が身体活動の間に制限されるかに基づいて心不全のクラスを決定するために使用される。クラス1心不全に入る患者は、心疾患を有するが、身体活動には制限がない。通常の身体活動は、過度の疲労、動悸、呼吸困難または狭心痛を引き起こさない。クラス2心不全に入る患者は、身体活動が軽度に制限される心疾患を有する。これらの患者は安静時には快適であるが、通常の身体活動が疲労、動悸、呼吸困難または狭心痛を引き起こす。クラス3心不全患者は、身体活動を著しく制限する心疾患を有する。これらの患者は安静時には快適であるが、通常未満の身体活動が疲労、動悸、呼吸困難または狭心痛を生じさせる。クラスIV心不全患者は、不快感無しにはいかなる身体活動も行うことができない心疾患を有する。安静時に、これらの患者は心不全症状または狭心症症候群を経験し得る。いかなる身体活動も不快レベルを増加させる。
いくつかの場合において、対象は収縮期心不全に罹患している。例えば、対象は左室収縮機能障害に罹患している。例えば、対象は、本明細書に記載のペプチドの投与前に、40%またはそれ未満、例えば、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、またはそれ未満の左室駆出率を有している。
いくつかの例において、対象は、少なくとも18歳、例えば、少なくとも18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95歳のヒトである。いくつかの場合において、ヒトは18〜75歳である。
いくつかの場合において、対象は、本明細書に記載のペプチドの投与前に、急性非代償性心不全(ADHD)に罹患している場合がある。例えば、急性非代償性心不全は、救急外来受診、入院、および/または予定外の診療所受診を必要とする心不全の1つまたは複数の症状または徴候の突然または徐々の発症を特徴とする。いくつかの場合において、ADHDは、左および/または右心充満圧の増加によって引き起こされ得る、肺うっ血および/または全身うっ血と関連する。例えば、Joseph et al. Tex. Heart Inst. J. 36.6(2009):510-20を参照のこと。例えば、ADHDは、当技術分野において一般的に知られた方法を使用して、対象中のB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の血漿中濃度を測定することによって、診断され得る。例えば、100 pg/dLよりも高い、例えば、少なくとも100 pg/dL、200 pg/dL、300 pg/dL、400 pg/dL、500 pg/dL、600 pg/dLまたはそれよりも高い、対象由来の生体試料(例えば、血液、血漿、血清、または尿)中のBNPレベルは、対象がADHDを有することを示し得る。いくつかの例において、本明細書に記載のペプチドの治療的投与レジメンは、ADHDの発生を予防するか、減らすか、または遅らせるために十分である。
いくつかの態様において、心不全は、高血圧症、虚血性心疾患、心毒性化合物、例えば、コカイン、アルコール、抗ErbB2抗体もしくは抗HER抗体、例えば、ハーセプチン(登録商標)、またはアントラサイクリン抗生物質、例えば、ドキソルビシンもしくはダウノマイシンへの曝露、心筋炎、甲状腺疾患、ウイルス感染症、歯肉炎、薬物乱用、アルコール乱用、心膜炎、アテローム性動脈硬化症、血管疾患、肥大型心筋症、急性心筋梗塞もしくは以前の心筋梗塞、左室収縮機能障害、冠動脈バイパス手術、飢餓、放射線被曝、摂食障害、または遺伝的欠陥から生じ得る。
本開示の別の態様において、抗ErbB2抗体または抗HER2抗体、例えば、ハーセプチン(登録商標)が、アントラサイクリン投与の前、間、または後に、哺乳動物へ投与される。
本開示の他の態様において、ペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンは、心毒性化合物への曝露の前、心毒性化合物への曝露の間、または心毒性化合物への曝露の後に投与され;ペプチドは、哺乳動物におけるうっ血性心不全の診断の前または後に投与される。本開示の方法は、対象哺乳動物が代償性心肥大を経験した後に行われ得る。いくつかの例において、本明細書に記載の方法の成果は、左心室肥大を維持すること、または心筋菲薄化の進行を防止する/遅らせること、または心筋細胞アポトーシスを阻害することである。本開示の方法において、ペプチドは、EGF様ドメインを含み得るか、EGF様ドメインから本質的になり得るか、またはEGF様ドメインからなり得、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンである。ペプチドは、心毒性化合物への曝露の前、間、または後に投与される。別の態様において、これらの期間のうちの2つ、または3つ全ての間に、ペプチドを投与する。本開示の他の態様において、ペプチドは、哺乳動物におけるうっ血性心不全の診断の前または後のいずれかに投与される。本開示のさらに別の態様において、ペプチドは、代償性心肥大を経験した哺乳動物へ投与される。本開示の他の特定の態様において、ペプチドの投与は、左心室肥大を維持し、心筋菲薄化の進行を防止し/遅らせ、かつ/または心筋細胞アポトーシスを阻害する。
他の態様において、本明細書に記載の治療または予防を必要とする対象は、心不全、例えば、うっ血性心不全の危険性がある。個体がうっ血性心不全を発症する可能性を増加させるリスク因子は、周知である。これらとしては、喫煙、肥満、高血圧、虚血性心疾患、血管疾患、冠動脈バイパス手術、心筋梗塞、左室収縮機能障害、心毒性化合物(アルコール、薬物、例えば、コカイン、ならびにアントラサイクリン抗生物質、例えば、ドキソルビシン、およびダウノルビシン)への曝露、ウイルス感染症、心膜炎、心筋炎、歯肉炎、甲状腺疾患、放射線被曝、心不全のリスクを増加させることが公知である遺伝的欠陥(例えば、Bachinski and Roberts, Cardiol. Clin. 16:603-610, 1998;Siu et al., Circulation 8:1022-1026, 1999;およびArbustini et al., Heart 80:548-558, 1998に記載されるもの)、飢餓、摂食障害、例えば食欲不振症および過食症、心不全の家族歴、ならびに心筋肥大が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、本開示の治療レジメンから利益を得る患者集団は、非常に多様であり、例えば、腎臓機能障害を有する患者がよい候補であり、何故ならば、タンパク質治療剤の連続的なレベルは、しばしば、腎糸球体沈着物と関連するためである。本開示において記載される、一定の血漿中濃度を維持しない治療レジメンの有用性は、従って、既存の機能の減少が有害であり得る腎機能障害を有する患者に非常に有利である。同様に、本明細書に記載される通り、GGF2または機能的断片などの治療剤への短時間かつ断続的な曝露は、成長因子での慢性的かつ連続的な刺激に対して応答性である腫瘍タイプを有する患者に有利であり得る。本明細書に記載される断続的な療法から特に利益を得る場合がある他の患者は、神経鞘腫および他の末梢性ニューロパチーを有する患者である。断続的な投与が、種々の組織の連続的な副作用関連刺激を維持しないことにおいて顕著な利点を有し得ることが、本開示の利点である。
本開示によれば、危険性があると同定された人におけるうっ血性心疾患進行を予防するかまたは該うっ血性心疾患進行を遅らせること/該うっ血性心疾患進行の速度を低下させることによるなどの予防法を達成するために、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンが、断続的に投与され得る。例えば、初期代償性肥大の患者へのペプチドの投与は、肥大状態の維持を可能にし、心不全への進行を防止する/遅らせる。さらに、危険性があると同定された人は、代償性肥大の発症の前に、ペプチドでの心臓保護的治療が提供され得る。
アントラサイクリン化学療法またはアントラサイクリン/抗ErbB2(抗HER2)抗体、例えばハーセプチン(登録商標)、併用療法の前または間の癌患者への、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与は、患者の心筋細胞がアポトーシスを受けるのを防止し/遅らせ得、それによって心機能を保存し得る。心筋細胞減少を既に受けた患者もまた、ニューレグリン治療から利益を得、何故ならば、残りの心筋組織は、肥大成長および収縮性増加を示すことによってニューレグリン曝露に対して応答するためである。
本発明の方法によれば、例えば、治療有効用量での、本明細書に記載のペプチド、例えば、ニューレグリン、例えば、GGF2またはその機能的断片などのEGF様ドメインを含むペプチドの投与は、対象における心不全の症状を改善または安定させるために十分である。症状としては、疲労、息切れ、運動不耐性、入院、再入院、死亡、および/または病的状態が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与または使用は、心臓機能の1つまたは複数のメトリクス(metrics)の改善および/または安定化をもたらす。例えば、治療有効用量の本明細書に記載のペプチドの投与または使用は、心臓機能の1つまたは複数のメトリクスを改善するために十分である。他の態様において、治療有効用量の本明細書に記載のペプチドは、心臓機能の1つまたは複数のメトリクス、または上述の心不全の1つまたは複数の症状を維持するかつ/または安定させるために十分である。例えば、治療有効用量の本明細書に記載のペプチドは、例えば、ペプチドの続いての投与なしに、ペプチドの第1の投与後、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間、心臓機能の1つまたは複数のメトリクス、または心不全の1つまたは複数の症状を維持するかつ/または安定させるために十分である。
心臓機能の例示的なメトリクスは、心室駆出率(EF)、例えば、左室駆出率(LVEF)、収縮末期容量(ESV)、拡張末期容量(EDV)、短縮率(FS)、入院の回数、運動耐容能、僧帽弁逆流、呼吸困難、末梢浮腫、およびADHDの発生を含むが、これらに限定されない。例えば、本発明のペプチドの投与としての、心臓機能の改善は、例えば、以下のうちの1つまたは複数によって検出される:LVEFの増加、ESVの減少、EDVの減少、FSの増加、入院の回数の減少、運動耐容能の増加、僧帽弁逆流の発生数または重篤度の減少、呼吸困難の減少、末梢浮腫の減少、およびADHDの発生の防止または減少。LVEFが保たれた心不全に対象が罹患しているいくつかの例において、心臓機能のメトリクスは、ESV、EDV、FS、入院の回数、運動耐容能、僧帽弁逆流、呼吸困難、ADHDの発生、および末梢浮腫を含むが、これらに限定されない。
いくつかの例において、治療有効量の本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与は、ペプチドの投与前のLVEFと比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30%、またはそれを上回って、対象におけるLVEFを増加させるために十分である。例えば、LVEFの増加は少なくとも1〜20%である。いくつかの場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のLVEFを約10〜40%の駆出率まで増加させるために十分であり、例えば、対象のLVEFを、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、または約40%の駆出率まで増加させる。他の場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のLVEFを約40〜60%の駆出率まで増加させるために十分であり、例えば、対象のLVEFを、約40%、45%、50%、55%、または約60%の駆出率まで増加させる。さらに他の場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のLVEFを正常なLVEF値へ完全に戻すために十分である。例えば、対象のLVEFは、対象におけるペプチドの第1の投与から、例えば初回用量から、90日またはそれ未満以内に、例えば、90日、80日、70日、60日、50日、40日、30日、20日、10日、またはそれ未満以内に増加する。いくつかの場合において、対象における増加したLVEFは、例えば、ペプチドの続いての投与なしに、ペプチドの第1の投与後、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間、維持される。例えば、本明細書に記載のペプチドの治療有効用量は、例えば、ペプチドの続いての投与なしに、ペプチドの第1の投与後、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間、対象におけるLVEFを維持するかつ/または安定させるために十分である。
いくつかの例において、治療有効量の本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与は、ペプチドの投与前の対象のEDVと比較して、少なくとも1 mL、例えば、少なくとも1 mL、5 mL、10 mL、15 mL、20 mL、25 mL、30 mL、40 mL、50 mL、60 mL、70 mL、80 mL、90 mL、100 mL、またはそれを上回って、例えば、少なくとも1〜60 mL、対象におけるEDVを減少させるために十分である。例えば、対象のEDVは、対象におけるペプチドの第1の投与から、例えばペプチドの初回用量から、90日またはそれ未満以内に、例えば、90日、80日、70日、60日、50日、40日、30日、20日、10日、またはそれ未満以内に減少する。いくつかの場合において、対象における減少したEDVは、例えば、ペプチドの続いての投与なしに、ペプチドの第1の投与後、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間、維持される。
他の例において、治療有効量の本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与は、ペプチドの投与前の対象のESVと比較して、少なくとも1 mL、例えば、少なくとも1 mL、5 mL、15 mL、20 mL、25 mL、30 mL、40 mL、50 mL、60 mL、70 mL、80 mL、90 mL、100 mLまたはそれを上回って、例えば、少なくとも1〜30 mL、対象におけるESVを減少させるために十分である。例えば、対象のESVは、対象におけるペプチドの第1の投与から、例えばペプチドの初回用量から、90日またはそれ未満以内に、例えば、90日、80日、70日、60日、50日、40日、30日、20日、10日、またはそれ未満以内に減少する。いくつかの場合において、対象における減少したESVは、例えば、ペプチドの続いての投与なしに、ペプチドの第1の投与後、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間、維持される。
いくつかの場合において、治療有効量の本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2またはその機能的断片などのニューレグリンの投与は、ペプチドの投与前のFSと比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30%、またはそれを上回って、対象におけるFSを増加させるために十分である。例えば、FSの増加は少なくとも1〜15%である。いくつかの場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のFSを約15%、例えば、約1%、2%、3%、4%、6%、7%、8%、9%、10%、または約15%のパーセント短縮率まで増加させるために十分である。他の場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のFSを約15〜20%、例えば、約15%、16%、17%、18%、19%、または約20%のパーセント短縮率まで増加させるために十分である。さらに他の場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のFSを約20〜25%、例えば、約20%、21%、22%、23%、24%、または約25%のパーセント短縮率まで増加させるために十分である。さらなる場合において、本明細書に記載のペプチドの治療有効量は、それを必要とする対象のFSを約25〜45%、例えば、約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、または約45%のパーセント短縮率まで増加させるために十分である。例えば、対象のFSは、対象におけるペプチドの第1の投与から、例えばペプチドの初回用量から、90日またはそれ未満以内に、例えば、90日、80日、70日、60日、50日、40日、30日、20日、10日、またはそれ未満以内に増加する。いくつかの場合において、対象における増加したFSは、例えば、ペプチドの続いての投与なしに、ペプチドの第1の投与後、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、90日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月(四半期)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の間、維持される。
本明細書に記載の心臓機能を評価するためのメトリクスは、当技術分野において一般的に知られた方法によって決定される。
「1つの(a)」という用語の実体または「1つの(an)」という用語の実体は、1つまたは複数のその実体を指す。例えば、「1つのペプチド(a peptide)」への言及は、2つまたはそれ以上のそのようなペプチドの混合物などを含む。従って、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は交換可能に使用することができる。例えば、「用量(a dose)」は1つまたは複数の用量を含む。さらに、特に文脈に定めがない限り、単数の用語は複数を含み、かつ複数の用語は単数を含む。
本明細書において使用される場合、約という用語は、記載される値プラスまたはマイナス別の量であり;それによって、値の範囲が確立される。ある好ましい態様において、「約」は、ベース(またはコアもしくはリファレンス)値または量に対して、プラスまたはマイナス15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.75%、0.5%、0.25%、または0.1%までの範囲を指す。
本明細書において使用される場合、有害なまたは有毒な副作用という用語は、医学的処置の意図されない望ましくない結果を指す。本開示に関して、ペプチド、例えば、外因性ペプチドの投与から生じる有害なまたは有毒な副作用は、以下のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る:神経鞘過形成、乳房過形成、腎症、および注射部位での皮膚変化、および/または表12に列挙される有害事象。
本明細書に記載のポリヌクレオチド、ペプチド(これはポリペプチドとも呼ばれ得る)、または他の作用物質は、例えば、精製および/または単離されている。具体的には、本明細書において使用される場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ペプチド、またはタンパク質は、組換え技術によって産生された場合は他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まず、または化学合成された場合は化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製された化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)、関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%、関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、98重量%、99重量%、または100重量% (w/w)、所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。精製されたまたは単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然状態においてはそれに隣接している遺伝子または配列を含まない。精製または単離されたペプチドは、その天然状態においてはそれに隣接しているアミノ酸または配列を含まない。精製されたとはまた、ヒト対象への投与について安全である滅菌の程度、例えば、感染因子または毒物の欠如を定義する。
本明細書において使用される場合、外因性とは、本明細書に記載の治療を必要とする対象の外部で産生されるかまたは導入される、組成物、例えば、ペプチドを指す。
本明細書において使用される場合、cDNA(相補DNA)は、メッセンジャーRNA(mRNA)テンプレートから、合成される、例えば、化学合成される、DNAである。例えば、cDNAは、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼなどの酵素によって触媒される反応においてmRNAテンプレートから合成される。
本明細書において使用される場合、「哺乳動物における投与前レベルへのペプチドの血清中濃度の用量内変動」とは、ある用量のペプチドの投与の前の血清中濃度レベル間の差を指す。
本明細書において使用される場合、「定常状態レベル」という用語は、投与と排出との間の平衡(後の投与間の変動の範囲内)を達成するのに十分である外因性作用物質、例えば、ペプチドのレベルを指す。「定常状態治療レベルを維持する」は、対象または患者へ治療的利益を与えるのに十分なレベルで外因性作用物質の濃度を持続させることを指す。
「うっ血性心不全」とは、心臓が、安静時にまたは運動で正常な血液拍出量を維持することができないようにするか、または正常な心充満圧の設定で正常な心拍出量を維持することができないようにする、心機能障害を意味する。約40%またはそれ未満の左室駆出率が、うっ血性心不全を示す(比較として、約60%パーセントの駆出率が正常である)。うっ血性心不全にある患者は、周知の臨床症状および徴候、例えば、頻呼吸、胸水、安静時または運動での疲労、収縮不全、および浮腫を示す。うっ血性心不全は、周知の方法によって容易に診断される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる"Consensus recommendations for the management of chronic heart failure." Am. J. Cardiol., 83(2A):1A-38-A, 1999を参照のこと)。
相対的重篤度および疾患進行は、周知の方法、例えば、身体検査、心エコー検査、放射性核種イメージング、侵襲性血行動態モニタリング、磁気共鳴血管造影、および酸素摂取量試験と組み合わされたトレッドミル運動負荷試験を使用して評価される。
「虚血性心疾患」とは、心筋の酸素要求と酸素供給の妥当性との間の不均等から生じる任意の障害を意味する。大抵の虚血性心疾患は、アテローム性動脈硬化症または他の血管障害において生じるように、冠状動脈の狭窄から生じる。
「心筋梗塞」とは、心筋が瘢痕組織によって置き換えられている領域において虚血性疾患が生じるプロセスを意味する。
「心毒性」とは、心筋細胞を直接的にまたは間接的に害することまたは死滅させることによって心臓機能を低下させる化合物を意味する。
「高血圧症」とは、医療専門家、例えば医師または看護師によって、正常よりも高く、うっ血性心不全を発症する高い危険性を有すると考えられる血圧を意味する。
「治療する」とは、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、ニューレグリンもしくはニューレグリン様ペプチド、GGF2、またはそれらの機能的断片の投与が、治療がない場合に生じる疾患進行と比較して、統計的に有意な様式で、治療の間、心不全、例えばうっ血性心不全の進行を遅らせるかまたは阻害することを意味する。周知の指標、例えば、左室駆出率、運動能力、僧帽弁逆流、呼吸困難、末梢浮腫および上記に列挙されるような他の臨床検査、ならびに生存率および入院率が、疾患進行を評価するために使用され得る。治療が統計的に有意な様式で疾患進行を遅らせるまたは阻害するか否かは、当技術分野において周知である方法によって判定され得る(例えば、参照により本明細書に組み入れられるSOLVD Investigators, N. Engl. J. Med. 327:685-691, 1992およびCohn et al., N. Engl. J Med. 339:1810-1816, 1998を参照のこと)。
「予防する」とは、心不全、例えばうっ血性心不全を発症する危険性がある対象において、心不全、例えばうっ血性心不全の発症を最小限にするかまたは部分的にまたは完全に抑制することを意味する(参照により本明細書に組み入れられる"Consensus recommendations for the management of chronic heart failure." Am. J. Cardiol., 83(2A):1A-38-A, 1999に定義される通り)。心不全、例えばうっ血性心不全が本発明のペプチドの投与によって最小限にされるかまたは予防されるかどうかの判定は、公知の方法によって、例えば、SOLVD Investigators、前記、およびCohnら、前記に記載のものなどによって行われる。
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師あるいは他の臨床医によって試みられている組織、システム、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する薬物または薬剤、例えば、本明細書に記載されるペプチドの量を意味するように意図される。治療的変化は、取り組まれる疾患または状態を緩和すると予想される方向の、測定される生化学的特徴の変化である。より特定的には、「治療有効量」は、医学的状態または虚弱に関連する症状を減少させるに、特定の身体機能を害する疾患または障害において身体機能を正常化するに、または疾患の臨床的に測定されるパラメータの1つまたは複数の改善を提供するのに十分な量である。
「予防有効量」という用語は、研究者、獣医、医師あるいは他の臨床医によって組織、系、動物またはヒトにおいて予防される/遅らせるよう試みられる生物学的または医学的事象の発生を予防するか、該事象の発生の危険性を減らすか、または該事象の進行を遅らせる薬学的薬物、例えば、本明細書に記載されるペプチドの量を意味するように意図される。
「治療ウインドウ」という用語は、治療的変化を達成するための最小量と、対象に対して毒性直前の応答である応答を生じさせる最大量との間の用量の範囲を意味するように意図される。
「心不全の危険性がある」、例えば、うっ血性心不全を発症する危険性があるとは、例えば、喫煙するか、肥満である、即ち、理想体重の20%またはそれ以上多いか、心毒性化合物(例えば、アントラサイクリン抗生物質)へ曝露されたかまたは曝露される予定であるか、または、高血圧、虚血性心疾患、心筋梗塞、心不全のリスクを増加させることが公知である遺伝的欠陥、心不全の家族歴、心筋肥大、肥大型心筋症、左室収縮機能障害、冠動脈バイパス手術、血管疾患、アテローム性動脈硬化症、アルコール症、心膜炎、ウイルス感染症、歯肉炎、もしくは摂食障害、例えば、神経性食欲不振症または過食症を有する(または有した)か、またはアルコールもしくはコカイン常用者である個体を意味する。
「心筋菲薄化の進行を低下させる」とは、心室壁の厚みが維持または増加されるように心室の心筋細胞の肥大を維持することを意味する。
「心筋アポトーシスを阻害する」とは、本明細書に記載のペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2もしくはその機能的断片などのニューレグリンの投与が、未処理心筋細胞と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、なおより好ましくは少なくとも25%、なおより好ましくは少なくとも50%、なおより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%、心筋細胞の死滅を阻害することを意味する。
「運動耐容能」とは、平均的に健康な個体に対して通常予想される持続時間および/またはレベルにおいて身体的運動を実施する対象の能力を意味する。運動耐容能の低下は、運動誘発性の疼痛、疲労、またはその他の負の作用を特徴とする。
「ニューレグリン」または「NRG」とは、NRG-1、NRG-2、NRG-3、もしくはNRG-4遺伝子または核酸、例えばcDNAによってコードされ、ErbB2、ErbB3、もしくはErbB4受容体、またはそれらの組み合わせへ結合しこれを活性化するペプチドを意味する。
「ニューレグリン-1」、「NRG-1」、「ヘレグリン」、「GGF2」、または「p185erbB2リガンド」とは、別の受容体(ErbB1、ErbB3またはErbB4)と対形成されるとErbB2受容体へ結合し、米国特許第5,530,109号;米国特許第5,716,930号;および米国特許第7,037,888号に記載のp185erbB2リガンド遺伝子によってコードされるペプチドを意味し、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
「ニューレグリン様ペプチド」とは、ニューレグリン遺伝子によってコードされるEGF様ドメインを有し、ErbB2、ErbB3、ErbB4、またはその組み合わせへ結合しこれを活性化する、ペプチドを意味する。
「上皮成長因子様ドメイン」または「EGF様ドメイン」とは、ErbB2、ErbB3、ErbB4、またはその組み合わせへ結合しこれを活性化し、Holmes et al., Science 256:1205-1210, 1992;米国特許第5,530,109号;米国特許第5,716,930号;米国特許第7,037,888号;Hijazi et al., Int. J. Oncol. 13:1061-1067, 1998;Chang et al., Nature 387:509-512, 1997;Carraway et al., Nature 387:512-516, 1997;Higashiyama et al., J Biochem. 122:675-680, 1997;およびWO 97/09425に開示されるようなEGF受容体結合ドメインと構造的類似性を有する、NRG-1、NRG-2、NRG-3、またはNRG-4遺伝子(またはcDNA)によってコードされるペプチドモチーフを意味する。
「抗ErbB2抗体」または「抗HER2抗体」とは、ErbB2(ヒトにおいてHER2としても公知)受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合し、ニューレグリン結合によって開始されるErbB2(HER2)依存性シグナル伝達を妨げる、抗体を意味する。
「形質転換細胞」とは、ペプチド、例えばEGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2もしくはその機能的断片などのニューレグリンをコードするDNA分子が、組換えDNA技術または公知の遺伝子治療技術によって導入されている細胞(または細胞の子孫)を意味する。
「プロモーター」とは、転写を指示するのに十分な最小配列を意味する。プロモーター依存性遺伝子発現を、細胞型または生理学的状態、例えば、正常酸素条件に対して低酸素条件に基づいて制御可能にするか、または外部シグナルもしくは作用物質によって誘導可能にするのに十分である、プロモーター配列も、本開示に含まれ;このような配列は、天然遺伝子の5'または3'または内部領域に配置され得る。
「機能的に連結された」とは、ペプチドをコードする核酸、例えばcDNA、および1つまたは複数の調節配列が、適切な分子、例えば、転写活性化因子タンパク質が調節配列へ結合されると遺伝子発現を可能にするように結合されていることを意味する。
「発現ベクター」とは、例えば、バクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、または人工染色体由来の、遺伝子操作されたプラスミドまたはウイルスを意味し、これは、プロモーターへ機能的に連結された、ペプチド、例えば、EGF様ドメインを含むペプチド、例えば、GGF2もしくはその機能的断片などのニューレグリンのコード配列を宿主細胞へ導入するために使用され、その結果、コードされるペプチドが宿主細胞内で発現される。
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能である知識を確立する。US 2011/0166068を含む、本明細書において引用される全ての米国特許および公開されたまたは未公開の米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBIの寄託は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
本開示をその好ましい態様に関連して具体的に表示および説明したが、添付の特許請求の範囲によって包含される本開示の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がそこにおいて行われ得ることが、当業者に理解されると考えられる。
下記の実施例は、当業者が本開示ならびにその原理および利点をよりよく理解する助けとなる。これらの実施例は本開示を説明しかつその範囲を限定しないことが意図される。
実施例1:一般的な材料および方法
GGF2のIgEGF(Ig154Y)ドメイン(EGF-Ig)のクローニング、発現、および精製
DNA
IgEGFドメインを、既存のGGF2 cDNAから増幅し、Nde1およびBamH1制限部位を使用してpet 15bベクター(Novagenカタログ番号69661-3)へクローニングした。得られたタンパク質は、21.89 kDa+約3kDa Hisタグ(=約25 kDa)であった。
IgEgf pet 15クローンのDNA配列(SEQ ID NO: 26):下線が引かれた配列は、増幅のために使用されたプライマーであった。太字の配列は、petベクターへ配列を挿入するために使用されたクローニング部位であった(Nde1およびBamH1)。IgEgf pet 15 DNA配列の翻訳されたアミノ酸配列(SEQ ID NO: 27)も以下に示す。
IgEgfのDNA配列を含有するpet15bベクターからの最終的な翻訳されたタンパク質を、以下に示す(SEQ ID NO: 28)。ベクター部分に下線を引いている。
タンパク質発現:LB培地中において25℃で24時間Overnight Express Autoinduction System(Novagen)を使用して、タンパク質発現のためにクローンをBl21細胞へ形質転換した。
タンパク質再折り畳み:Novagen Protein Refolding Kit, 70123-3より適応させた。
タンパク質精製:His TRAPカラム--製造業者の説明書通り。
ウエスタンブロッティング:タンパク質発現をウエスタンブロッティングによって評価した。Hisタグを有する得られるバンドは、約25 kDに移動する。4〜20%標準ゲル(criterion gel)(Biorad)をタンパク質分離のために使用し、続いて、Protranニトロセルロース紙(0.1μm細孔径、Schliecher and Schull製)へ転写した。ブロットをTBS-T(0.1%)中5%ミルクでブロッキングした。RTで1時間(4℃で一晩でも機能する)、TBS-T中5%ミルク中において一次抗体(抗EGFヒトNRGI-α/HRG1-αアフィニティー精製ポリクローナルAbカタログ番号AF-296-NA、R&D systems製)1:1000希釈。ウサギ抗ヤギHRP二次抗体を、RTで1時間、TBS-T中5%ミルク中において1:10,000希釈で使用した。全ての洗浄をTBS-T中において行った。
Ig154Yについての精製プロトコール
Novagen製のOvernight Express Autoinduction System 1(カタログ番号71300-4)中において25℃で、培養物を増殖させた。精製を行い得る前にIg154Yを得るために、培養物を遠心沈殿させて、ペレットを取り出し、可溶化し、再び折り畳ませた。
抽出、可溶化、および再折り畳みのための材料:
10×洗浄緩衝液:200mM Tris-HCI、pH 7.5、100mM EDTA、10% Triton X-100
10×可溶化緩衝液:500mM CAPS、pH 11.0
50×透析緩衝液:1M Tris-HCI、pH 8.5
30% N-ラウリルサルコシン--粉末(Sigma 61739-5G)として添加
1M DTT
還元型グルタチオン(Novagen 3541)
酸化型グルタチオン(Novagen 3542)
細胞溶解および封入体の調製のためのプロトコール:
工程1- 細胞ペレットを1×洗浄緩衝液30ml中に解凍し、再懸濁した。
工程2- プロテアーゼ阻害物質(50ml当たり10×を25μl)、DNase(50ml当たり1mg/mlを200μl)およびMgCl2(50ml当たり1Mを500μl)を、懸濁液へ添加した。
工程3- 氷上で冷却しながら超音波処理によって細胞を溶解した。
工程4- 超音波処理に続いて、封入体を12分間の10,000×gでの遠心分離によって収集した。
工程5- 上澄みを除去し、ペレットを、1×洗浄緩衝液30ml中に完全に再懸濁した。
工程6- 工程4を繰り返した。
工程7- ペレットを、1×洗浄緩衝液30ml中に完全に再懸濁した。
工程8- 封入体を10分間の10,000×gでの遠心分離によって収集した。
可溶化および再折り畳みのためのプロトコール:
工程1- 処理される封入体の湿重量から、10〜15mg/mlの濃度で封入体を再懸濁するために必要な1×可溶化緩衝液の量を算出した。算出された体積が250mlを超える場合、250mlを使用した。
工程2- 室温で、0.3%N-ラウリルサルコシン(さらなる最適化において必要な場合には、2%までを使用することができた)(300mg/100mL緩衝液)および1mM DTTが補われた算出された体積の1×可溶化緩衝液を調製した。
工程3- 工程2からの算出された量のI×可溶化緩衝液を封入体へ添加し、穏やかに混合した。大きな細片は、ピペット操作を繰り返すことによって破壊することができた。
工程4- 25℃、50〜100 rpmで4〜5時間(さらなる最適化において必要な場合には、さらに長く)、リフリジレーターシェーカー中においてインキュベートした。
工程5- 室温での10分間の10,000×gでの遠心分離によって清澄化した。
工程6- 可溶性タンパク質を含有する上澄みを、清潔なチューブへ移した。
タンパク質再折り畳みに関する透析プロトコールのためのプロトコール
工程1- 可溶化タンパク質の透析のために必要とされる体積の緩衝液を調製した。透析は、試料の体積の50倍を超える少なくとも2回の緩衝液交換を伴って行われた。50×透析緩衝液を所望の体積でI×まで希釈し、0.1mM DTTを補った。
工程2- 4℃で少なくとも4時間透析した。緩衝液を交換し、継続した。さらに4時間またはそれ以上の間、透析した。
工程3- DTTを省略することを除いては、工程1において決定された通りに、新たな透析緩衝液を調製した。
工程4- 透析緩衝液にDTTは含まれずに、2つのさらなる変更(各々、数分 4時間)によって透析を継続した。
ジスルフィド結合形成を促進するための酸化還元再折り畳み緩衝液のためのプロトコール
工程1- 1×透析緩衝液中において1mM還元型グルタチオン(1.2g/4L)および0.2mM酸化型グルタチオン(0.48g/4L)を含有する透析緩衝液を調製した。体積は、可溶化タンパク質試料の体積よりも25倍大きかった。4℃まで冷した。
工程2- 工程1からの再折り畳みされたタンパク質を4℃で一晩透析した。
タンパク質精製材料:
- 全ての手技を4℃で行った。
- 化学物質:
トリズマ塩酸塩(Sigma T5941-500G)
塩化ナトリウム5M溶液(Sigma 56546-4L)
水酸化ナトリウムION(JT Baker 5674-02)
イミダゾール(JT Baker N811-06)
HISPrep FF 16/10カラム-20ml(GE Healthcare)での精製のためのプロトコール
緩衝液A:20mM Tris-HCL+500mM NaCl pH 7.5
緩衝液B:緩衝液A+500mMイミダゾール pH 7.5
工程1- カラムの平衡:緩衝液A- 5CV、緩衝液B- 5CV、緩衝液A- 10CV。
工程2- 0.5ml/分で20mlカラム上での1実行当たり20mlの試料をロードした。
工程3-カラムを5CVの緩衝液Aで洗浄した。
工程4-カラムを5CVの280mMイミダゾールで溶出した。
工程5- 10CVの100% 緩衝液Bでクリーニングした。
工程6- 15CVの緩衝液Aで平衡させた。
工程7- SDS-page銀染色でフラクションを分析した。Ig154Yを含むフラクションをプールする。
Hisタグ除去
Hisタグの除去を、Novagen製のThrombin Cleavage Capture Kit(カタログ番号69022-3)で行った。前もっての試験に基づいて、最良の条件は、Ig154Yタンパク質10μg毎について1μl当たり0.005Uの酵素でのトロンビンを用いて室温で4時間であった。4時間のインキュベーション後、トロンビン酵素1単位当たりストレプトアビジンアガローススラリー16μlを添加した。室温で30分間試料を揺り動かした。スピン濾過または滅菌濾過(体積に依存する)によってIg154Yを回収した。完全な切断を、EGFおよび抗Hisウエスタンブロッティングによって判定した。
Ig154Yの濃縮
Millipore Centriprep 3000 MWCO 15ml濃縮器(Ultracel YM-3, 4320)を用いて、所望の濃度へ調整した。
最終緩衝液中での保存
20mM Tris+500mM NaCl pH 7.5および1×PBS+0.2% BSA中において保存した。
156Q(EGF-Id)[NRG1b2 EGFドメイン(156Q)]のクローニング、発現、および精製
DNA:NRG1b2 egfドメインを、ヒト脳cDNAからクローニングし、Nde1およびBamH1 制限部位を使用してpet 15bベクター(Novagenカタログ番号69661-3)へクローニングした。得られるタンパク質は、6.92 kda+約3kDa Hisタグ(=9.35 kDa)であった。
NRG1b2 egf pet 15クローンのDNA配列(SEQ ID NO:29)。下線が引かれた配列は、クローニング部位(Nde1およびBamH1)である。
上記のNRG1b2 egf DNA配列を含むpetl5bベクターからの最終的な翻訳されたタンパク質を、以下に示す(SEQ ID NO:30)。egfドメインに下線を引いている。
算出されたpI/Mw:7.69 / 9349.58
タンパク質発現:LB培地中において25℃で24時間Overnight Express Autoinduction System(Novagen)を使用して、タンパク質発現のためにクローンをBL21細胞へ形質転換した。発現は、主に不溶性の封入体においてであった。
タンパク質再折り畳み:Novagen Protein Refolding Kit, 70123-3から適応させた。
タンパク質精製:タンパク質を2.5ml/分でアニオン交換カラムDEAE上へロードした。EGF-Id断片は素通り画分に残り、一方、汚染物質は結合し、より高い塩で溶出された。ローディングおよび洗浄緩衝液は、50mM Tris pH7.9であり、溶出緩衝液は、1M NaClを含む50mM Tris pH7.9であった。素通り画分をプールし、Millipore製のCentriprep YM-3で濃縮した。
ウエスタンブロッティング:タンパク質発現をウエスタンブロッティングによって評価した。得られるバンドは、約10kDに移動した。4〜20%基準ゲル(Biorad)をタンパク質分離のために使用し、続いて、Protranニトロセルロース紙(0.1μm細孔径、Schliecher and Schull製)へ転写した。ブロットをTBS-T(0.1%)中5%ミルクでブロッキングした。一次抗体(抗EGFヒトNRG1-α/HRG1-αアフィニティー。精製ポリクローナルAbカタログ番号AF-296-NA、R&D systems製)RTで1時間(4℃で一晩でも作用した)、TBS-T中5%ミルク中の1:1000希釈。ウサギ抗ヤギHRP二次抗体を、RTで1時間、TBS-T中5%ミルク中において1:10,000希釈で使用した。全ての洗浄をTBS-T中において行った。
NRG-156Qについての精製プロトコール
Novagen製のOvernight Express Autoinduction System 1(カタログ番号71300-4)中において25℃で、培養物を増殖させた。ほんの僅かだけ可溶性のNRG-156Q(EGF-Id)が、存在した。培養物を遠心沈殿させ、ペレットを取り出し、可溶化し、再折り畳みし、NRG-156Qを得、その後、精製を行うことができた。
抽出、可溶化、および再折り畳みのための材料:
-- 10×洗浄緩衝液:200mM Tris-HCl、pH 7.5、100mM EDTA、10% Triton X-100
-- 10×可溶化緩衝液:500mM CAPS、pH 11.0
-- 50×透析緩衝液:1M Tris-HCl、pH 8.5
-- 30% N-ラウリルサルコシン--粉末(Sigma 61739-5G)として添加
-- 1M DTT
-- 還元型グルタチオン(Novagen 3541)、酸化型グルタチオン(Novagen 3542)
細胞溶解および封入体の調製
工程1- 細胞ペレットを1×洗浄緩衝液30ml中に解凍し、再懸濁した。完全な再懸濁のために、必要な場合は混合した。
工程2- プロテアーゼ阻害物質(50ml当たり10×を25μl)、DNase(50ml当たり1mg/mlを200μl)およびMgCl2(50ml当たり1Mを500μul)を、懸濁液へ添加した。
工程3- 超音波処理によって細胞を溶解した。
a.この工程の間、細胞を氷上で冷却した。
b.懸濁液の粘着性が減少するまで、スクエアチップを使用して、10回、レベル6で30秒間超音波処理した。各超音波処理の間、懸濁液を氷上において60秒間冷却させる。超音波処理の際、50mlコニカルチューブ中において体積を40ml以下に維持した。
工程4- 完了したら、各懸濁液を、F-16/250ローターでの使用のために250mlアングルドネック(angled neck)遠心分離機ボトルへ移した。
工程5- 封入体を12分間の10,000×gでの遠心分離によって収集した。
工程6- 上澄みを除去し(可溶性タンパク質の分析のために試料を保持した)、ペレットを1×洗浄緩衝液30ml中に完全に再懸濁した。
工程7- 工程4における通り遠心分離を繰り返し、ペレットを保持した。
工程8- 再度、ペレットを1×洗浄緩衝液30ml中に完全に再懸濁した。
工程9-- 封入体を10分間の10,000×gでの遠心分離によって収集した。上澄みをデカンテーションし、逆さにしたチューブをペーパータオル上で軽くたたくことによって、最後の微量の液体を除去した。
可溶化および再折り畳み
工程1- 処理される封入体の湿重量から、10〜15mg/mlの濃度で封入体を再懸濁するために必要な1×可溶化緩衝液の量を算出した。算出された体積が250mlを超える場合、250mlを使用した。
工程2- 室温で、0.3% N-ラウリルサルコシン(さらなる最適化において必要な場合には、2%までが使用することができた)(300mg/100mL緩衝液)および1mM DTTが補われた算出された体積の1×可溶化緩衝液を調製した。
工程3- 工程2からの算出された量の1×可溶化緩衝液を封入体へ添加し、穏やかに混合した。大きな細片は、ピペット操作を繰り返すことによって破壊することができた。
工程4- 25℃、50〜100 rpmで4〜5時間、リフリジレーターシェーカー中においてインキュベートした。
工程5- 室温での10分間の10,000×gでの遠心分離によって清澄化した。
タンパク質再折り畳みのための透析プロトコール
工程1- 可溶化タンパク質の透析のために必要とされる体積の緩衝液を調製した。透析は、試料の体積の50倍を超える少なくとも2回の緩衝液交換を伴って行われた。
工程2- 50×透析緩衝液を所望の体積で1×まで希釈し、0.1mM DTTを補った。
工程3- 4℃で少なくとも4時間透析した。緩衝液を交換し、継続した。さらに4時間またはそれ以上の間、透析した。
工程4- DTTを省略することを除いては、工程1において決定された通りに、新たな透析緩衝液を調製した。
工程5- 透析緩衝液にDTTは含まれずに、2つのさらなる変更(各々4時間)によって透析を継続した。
ジスルフィド結合形成を促進するための酸化還元再折り畳み緩衝液
工程1- 1×透析緩衝液中において1mM還元型グルタチオン(1.2g/4L)および0.2mM酸化型グルタチオン(0.48g/4L)を含有する透析緩衝液を調製した。体積は、可溶化タンパク質試料の体積よりも25倍大きかった。4℃まで冷やした。
工程2- 工程1からの再折り畳みされたタンパク質を4℃で一晩透析した。
精製のための材料
全ての手技を4℃で行った。
化学物質:
- トリズマ塩酸塩(Sigma T5941-500G)
- 塩化ナトリウム5M溶液(Sigma 56546-4L)
- 水酸化ナトリウムI0N(JT Baker 5674-02)
DEAE HiPrep 16/10アニオンカラム-20ml(GE Healthcare)での精製
緩衝液A:50mM Tris-HCL pH 8.0
緩衝液B:50mM Tris-HCLおよび1M NaCl pH 8.0
工程1- カラムの平衡:緩衝液A- 5CV、緩衝液B- 5CV、緩衝液A- 10CV。
工程2- 2.0ml/分で20mlカラム上での1実行当たり50mlの試料をロードした(NRG-156(EGF-Id)は素通り画分中にあった)。
工程3- 20mlカラムを5CVの緩衝液Aで洗浄した。
工程4- 20mlカラムを100% Bへの勾配で5CVにおいて用いて、汚染物質を溶出除去した。
工程5- 10CVの100% 緩衝液Bでクリーニングした。
工程6- 15CVの緩衝液Aで平衡させた。
工程7- SDS-page銀染色でフラクションを分析した。
工程8- NRG-156Q(10kDa)を含むフラクションをプールした。
NRG-156(EGF-Id)の濃縮
工程1- Millipore Centriprep 3000 MWCO 15ml濃縮器(Ultracel YM-3, 4320)を用いて濃縮した。
工程2- 濃度を測定するためにModified Lowry Protein Assayを使用した。
Hisタグ除去
Hisタグの除去を、Novagen製のThrombin Cleavage Capture Kit(カタログ番号69022-3)で行った。前もっての試験に基づいて、最良の条件は、NRG-156Q(EGF-Id)タンパク質10μg毎について1μl当たり0.005Uの酵素でのトロンビンを用いて室温で4時間であった。4時間のインキュベーション後、トロンビン酵素1単位当たりストレプトアビジンアガローススラリー16μlを添加した。室温で30分間試料を揺り動かした。スピン濾過または滅菌濾過(体積に依存する)によってNRG-156Qを回収した。完全な切断を、EGFおよび抗Hisウエスタンによって判定した。
最終緩衝液中での保存:4℃で1×PBSおよび0.2% BSA中に保存した。
GGF2の発現および精製
GGF2についてのクローニングおよび背景情報については、米国特許第5,530,109号を参照のこと。細胞株は米国特許第6,051,401号に記載されている。米国特許第5,530,109号および米国特許第6,051,401号の各々の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
CHO-(α2HSG)-GGF細胞株:この細胞株を、無血清条件においてrhGGF2の高い産生速度を支持するのに十分な量のフェチュイン(ヒトα2HSG)を産生するように設計した。
CHO(dhfr-)細胞に、下記に示される発現ベクター(pSV-AHSG)をトランスフェクションした。安定細胞をアンピシリン選択下で増殖させた。細胞株を名付けた(dhfr-/α2HSGP)。次いで、カチオン性脂質DMRIE-C試薬(Life Technologies #10459-014)を使用して、ヒトGGF2についてのコード配列を含む図3に示されるpCMGGF2ベクターを、dhfr-/α2HSGP細胞にトランスフェクションした。
安定で高産生性の細胞株を、4〜6週間間隔で、メトトレキサート(100 nM、200 nM、400 nM、1μM)を使用する標準プロトコール下で誘導した。細胞を、血清含有培地から徐々に引き離した。標準的な限界希釈法によって、クローンを単離した。培地要件の詳細は本明細書に記載している。
転写を増強するために、GGF2コード配列を、EBV BMLF-1介在配列(MIS)の後に配置した。図4を参照のこと。
完全長ヒトGGF2タンパク質配列(SEQ ID NO:1)
GGF2産生:2.2×106細胞/mLのGGF2の1つのバイアルを100mlのAcorda培地1(表1を参照のこと)中へ解凍し、産生容器に接種するのに十分な数に達するまで拡大させた。細胞を、2リットル通気性ローラーボトル中において、1.0×105細胞/mLで、産生培地Acorda培地2(表2を参照のこと)へ接種した。ローラーボトルを37℃で5日間、次いで27℃で26日間維持した。ローラーボトルを、細胞数および全体的な外観についてモニタリングしたが、それらに供給はしない。いったん生存力が10%未満になると、細胞をスピンアウトし、馴化培地を採取し、滅菌濾過した。
GGF2についての精製プロトコール
- 全ての手技を4℃で行った。
化学物質:
- 酢酸ナトリウム
- 氷酢酸(pH調整のため)
- 10N NaOH(pH調整のため)
- NaCl
- 硫酸ナトリウム
- L-アルギニン(JT Bakerカタログ番号:2066-06)
- マンニトール(JT Bakerカタログ番号:2553-01)
- 出発材料:馴化培地上澄み。pHを6.5に調整した。
工程1:
- 捕捉--カチオン交換クロマトグラフィー
HiPrep SP 16/10(Amersham Biosciences)
カラム平衡:緩衝液A - 5CV、緩衝液B - 5CV、緩衝液 15%B - 5CV
緩衝液A:20 mM 酢酸Na、pH 6.0
緩衝液B:20 mM 酢酸Na、pH 6.0、1M NaCl
- 可能である場合は一晩連続的なロードで、試料を2ml/分でロードした。連続的なローディングによって、結合はより十分となった。
- 出発試料についての最大容量:5 mg GGF2/ml培地
- 流量:3ml/分
- 第1の洗浄:15%B、10CV
- 第2の洗浄:35%B、10CV
- GGF2溶出:60%B、8CV
- カラム洗浄:100%B、8CV
- 緩衝液
工程2:
精製- ゲル濾過クロマトグラフィー
Sephacryl S200 26/60
溶出緩衝液:20 mM酢酸Na、100mM硫酸ナトリウム、1% マンニトール、および10 mM L-アルギニン、pH 6.5
緩衝液導電率:
試料:約AU280 1.0まで濃縮されたSP GGF2溶出プール
流量:1.3 ml/分
ピーク溶出:注入開始から約0.36CVにおいて
工程3-- Intercept Q膜を通す濾過によるDNAおよび内毒素除去
- プレ平衡緩衝液:20 mM酢酸Na、100mM硫酸ナトリウム、1% マンニトール、および10 mM L-アルギニン、pH 6.5。
- 素通り画分を収集した。
工程4-- 最終製剤および試料の調製
- 試料へ追加の90 mM L-アルギニンを添加した。
- 濃縮した。
- 滅菌濾過した。
本明細書で使用するビヒクル/対照物は、0.2% ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1 Mリン酸ナトリウム、pH 7.6であった。
ラット株であるCD(登録商標)IGS[Crl:CD(登録商標)(SD)/MYOINFARCT]およびナイーブSprague Dawleyを、本明細書では使用する。これらの株はCharles River Laboratoriesから得た。試験動物は、到着時に約6〜7週齢であり、外科的処置の時点で約160〜200グラムの重さであった。実際の範囲は変化し得る。
受容した全てのナイーブSprague Dawley動物を試験に用い、群1へ割り当てた。試験に適切であると考えられた動物を、処置前に計量した。
受容した全てのCD(登録商標)IGS[Crl:CD(登録商標)(SD)/MYOINFARCT]動物を、Charles River Laboratoriesで行われた外科的処置の7日後に行われた心エコー検査からの算出された駆出率に基づいて、単純無作為化方法を使用して無作為に処置群(群2〜5)に分けた。単純無作為化を行い、適用可能数の動物からなる各処置群(群2〜5)を得、群2〜5にわたってほぼ等しい群平均駆出率(±3%)が得られた。
群2〜6内の全ての動物を、Charles River Laboratoriesにおいてその研究室の標準操作方法に従って順応させた。続いて、動物を無作為化に処置群に分けた。群1内の全てのナイーブ動物を、それらの最初の心エコー検査の前の受容後の約24時間順応させた。
吊り下げ式のステンレス鋼金網タイプのケージ中に動物を個々に収容し、ソリッドボトムケージは一般的に使用せず、何故ならば、げっ歯動物は糞食性(coprophagic)であり、排泄された試験物および代謝産物を含有する糞便の摂取、または敷きわら自体の摂取は、この毒性試験における結果の解釈を混乱させ得るためである。
自動タイマーによって1日当たり約12時間、蛍光照明を提供した。時々、試験に関する作業のために、暗サイクルを断続的に中断した。温度および湿度を毎日モニタリングし記録し、可能な限りそれぞれ64〜79oFおよび30〜70%に維持した。
基礎食は、block Lab Diet(登録商標)Certified Rodent Diet #5002, PMI Nutrition International, Inc.であった。特に指定されない限り、この食事は、自由に利用可能であった。使用した各ロット番号を試験記録に記載した。特に記載されない限り、自動ウォーターシステムによって、全ての動物へ水道水を適宜供給した。
実施例2:動物モデル試験設計および評価
(表3)LAD後7日目から開始して10日間投与したGGF2とEGF-Id断片(Liuら, J. Am. Coll. Cardiol. 48.7(2006):1438-47)
(表4)EGF-IdおよびEGF-Igと比較した場合のより高い用量のGGF2。LAD後7日目から開始して20日間投与した。10日洗い流し。
(表5)GGF2投与頻度
TA 1=試験物1;M=雄性;F=雌性。
試験物および対照物の投与
投与経路:試験物および対照物を静脈内注射によって投与した。群1へ割り当てられた動物は、ビヒクルまたは試験物で処置せず;これらの動物は、処置を施さない年齢を一致させた対照として役立った。投与頻度、期間および用量は、表3〜6に記載の通りであった。用量体積は約1 ml/kgであった。
試験物投与:試験物および対照物を、尾静脈を介して投与した。個々の用量は、最新の体重に基づいた。特に指示されない限り、用量をボーラス注射によって投与した。
試験システムの準備
外科的処置- 左前下行枝動脈結紮
Charles River Laboratories Surgical Capabilities Reference Paper, Vol. 13, No.1, 2005に記載された通りに、外科的処置を、Charles River Laboratoriesで行った。簡単に記載すると、皮膚および胸筋を通って胸骨の僅かに左側の胸部に、頭蓋尾方向切開を作製する。第3および第4肋骨を横に切開し、肋間筋を鈍的解剖する。胸腔に迅速に入り、心膜を完全に開く。心臓を切開から体外へ出す。肺動脈円錐および左心耳を確認する。小さな曲針を使用し、左前下行枝冠状動脈下に1本の5-0絹縫合糸を通す。結紮を結び、心臓を胸郭へ戻す。胸壁および皮膚切開を閉じながら、胸腔中の空気を徐々に追い出す。陽圧換気を使用して動物を蘇生させ、酸素に富む環境下に置く。
手術後の回復
短期手術後モニタリングおよび適切な鎮痛薬の投与を、Charles River Laboratories Surgical Capabilities Reference Paper, Vol. 13, No.1, 2005に記載された通りにCharles River Laboratoriesによって行った。長期手術後モニタリングを行い、疼痛または感染症の徴候について動物を評価した。動物の受容後の7日間、毎日の切開部位観察を継続した。必要な場合、追加の疼痛管理および抗菌療法を施した。
(表7)
*- 下記に示される動物群評価によって設定されたECHO処置日。
生前の試験評価
ケージサイド観察:罹病、死滅、損傷、ならびに食料および水の利用可能性について少なくとも1日2回、全ての動物を観察した。健康状態が良くない動物を、さらなるモニタリングおよび可能性のある安楽死のために同定した。
体重:無作為化の前に少なくとも1回、および試験中毎週、体重を測定および記録した。
食料消費:食料消費は測定しなかったが、食欲不振は記録に残した。
心エコー検査:受容(0日目)後1、12、22、および32日目に、群1へ割り当てられた全ての動物について、心エコー検査を行った。Charles River Laboratoriesで行われた外科的処置(0日目)後7、18、28、および38日目に、群2〜5へ割り当てられた全ての動物について、心エコー検査を行った。
心エコー検査について、各動物を表7に従って麻酔し、その体毛を胸部から切り取った。カップリングゲルを心エコートランスデューサーへ塗布し、画像を得、多数のレベルで心機能を測定した。画像を各動物について短軸像で得た(中央乳頭レベルにおいて、または心エコー検査による観察される梗塞領域の位置に依存してその他において)。
心エコーのパラメータ:左心室の、中央乳頭筋レベルにおいてまたは心エコー検査による観察される梗塞領域の位置に依存してその他において、ECHO画像を撮影した。M-モードおよび2-D画像をCDおよび/またはMODに記録および保存した。ECHOで得られる測定パラメータは以下を含む:心室内隔壁厚み(拡張期);単位=cm;心室内隔壁厚み(収縮期);単位=cm;左心室内部寸法(拡張期);単位=cm;左心室内部寸法(収縮期);単位=cm;左心室乳頭壁厚み(拡張期);単位=cm;左心室乳頭壁厚み(収縮期);単位=cm;拡張末期容量;単位=mL;収縮末期容量;単位=mL;駆出率;パーセンテージとして報告;一回心拍出量;単位=ml;およびパーセント短縮率;パーセンテージとして報告。
安楽死
瀕死:試験施設標準操作手技によって定義されるいずれの瀕死の動物も、人道的な理由のために安楽死させた。死の間際に安楽死させたかまたは死んだ状態で見つけられた全ての動物を、通常の検死へ供した。
安楽死の方法:大静脈への飽和塩化カリウム注射、続いての死を確実にするための承認された方法、例えば全採血によって、安楽死を行った。
最終措置:試験した全ての生き残っている動物を、それらの計画された検死時に安楽死させたか、または必要に応じて死の間際に安楽死させた。
実施例3:動物試験結果
本明細書において上記の通り、ニューレグリンは、上皮成長因子(EGF)に構造的に関連する成長因子のファミリーであり、心臓の正常な発達に必須である。ニューレグリンが、心不全、心筋梗塞、化学療法毒性およびウイルス性心筋炎を含む心疾患の治療についての可能性のある治療剤であることを証拠は示唆している。
ラットにおけるうっ血性心不全の左前下行枝(LAD)動脈結紮モデルにおいて投与を画定するために、実施例2に記載の試験を役立てた。多数のニューレグリンスプライス変異体をクローニングし、作製した。以前の報告(Liuら, 2006)からのEGF様ドメイン(EGF-Id)からなるニューレグリン断片を、グリア成長因子2(GGF2)として公知の全長ニューレグリン、およびIgドメインを有するEGF様ドメイン(EGF-Ig)と比較した。雄性および雌性Sprague-DawleyラットにLAD動脈結紮を施した。結紮の7日後に、ラットを毎日のニューレグリンで静脈内(iv)処置した。心機能を心エコー検査によってモニタリングした。
第1の試験は、等モル量のEGF-IdまたはGGF2(GGF2について、これは、0.0625および0.325 mg/kgまで算出する)での投与の10日を比較した。GGF2処置は、投与期間の終了時でEGF-Idがもたらしたよりも、駆出率(EF)および短縮率(FS)において有意に(p<0.05)より大きな改善をもたらした。第2の試験は、等モル濃度でのGGF2とEGF-ldおよびEGF-Igとの20日を比較した。GGF2処置は、有意に改善されたEF、FS、およびLVESDをもたらした(p<0.01)。心臓生理の改善は、EGF-ldまたはEGF-Igのいずれによっても、この期間の間、維持されなかった。第3の試験は、GGF2(3.25 mg/kg)での20日間について毎日(24時間毎)、1日おき毎(48時間毎)および4日毎(96時間毎)の投与を比較した。3つ全てのGGF2治療レジメンが、EF、ESVおよびEDVを含む心臓生理の有意な改善をもたらし、効果は、投与の終了後10日間維持された。本明細書に示された試験は、GGF2をニューレグリンリード化合物として確認し、これを投与するための最適な投与レジメンを確立する。
本明細書において示される通り、本試験は、公開されたニューレグリン断片(Liuら, 2006)と比較してのGGF2の相対的な有効性を確立し、用量範囲および投与頻度試験を開始し、以前報告された通りにBSA賦形剤が必要とされるかどうかを決定する。
結果
試験1-- GGF2 0.625 mg/kg iv 1日1回(1日毎)でのラットの処置により、駆出率および短縮率の変化によって本明細書で示される心機能の有意な改善が得られた。EGF-Id断片は、同程度の改善をもたらさなかった。表3および図5を参照のこと。
試験2-- GGF2 0.625および3.25 mg/kg iv 1日毎でのラットの処置により、駆出率および短縮率の変化によって本明細書で示される心機能の有意な改善が得られた。処置期間の間、収縮末期容量および拡張末期容量においても、有意な改善が見られた。表4ならびに図6および7を参照のこと。
試験3-- GGF2 3.25 mg/kg iv 24、48、または96時間毎に1回(24、48、または96時間毎)でのラットの処置により、駆出率および短縮率の変化によって本明細書で示される心機能の有意な改善が得られた。処置期間の間、収縮末期容量および拡張末期容量においても、有意な改善が見られた。表5および図8を参照のこと。
以前の報告(Liuら)は、BSAなどの担体タンパク質が最適なニューレグリン安定性および活性のために必要とされることを示した。GGF2は、BSAなどの担体無しで安定性を示した。この実験は、GGF2がBSA無しでの治療レジメンにおいて安定かつ活性であるかどうかを試験するように設計された。処置の10日後、BSA含有GGF2製剤およびBSA非含有GGF2製剤は両方とも、以前の試験において見られたものと同様のビヒクル対照と比較して、駆出率の改善をもたらした。従って、BSAまたは他の担体タンパク質はCHFの治療のためのGGF2製剤において必要とされないことが、この試験から明らかである。表6および図9を参照のこと。
(表8)病理学的所見
++ 頻繁に存在;+ 存在;+/- 時折観察;- 稀に観察または観察されず。
表8に示された通り、GGF2の断続的な投与は、外因的に投与されるGGF2の超正常レベルに関連する副作用を減らす。本発明者らは、GGF2が静脈内または皮下に投与されるかどうかに関係なく、この知見が真実であることを見出した。
過形成および心臓効果が、1日おき毎の投与で時折見られ、頻度の少ない投与では見られなかった。
実施例4:ヒト臨床安全性および認容性試験
左室機能障害および症候性HFを有する患者のコホートにおいてGGF2の単回静脈内投与の安全性、認容性、薬物動態および免疫原性を決定するための第1相二重盲検プラセボ対照の用量段階的増大試験を行った。全ての患者がNYHAクラス2〜3 HF、左室駆出率(LVEF)≦0.40を有し、既存の植え込み型除細動器を伴う著しい腎疾患または肝疾患を有さなかった。年齢に応じた癌検査を登録前に完了した。インフォームドコンセント後、症候性HFを有する患者40人を、0.007〜1.5 mg/kgの7つの増大用量コホートにおいてGGF2またはプラセボへ無作為化した(4:2)。患者を30時間病院において観察し、次いで、注入後1、2、4、12、および24週間で有害事象(AE)について評価した。有害事象共通用語規準バージョン4(CTCAEv4)を使用して、AEを等級分けした。
患者40人をこの試験に登録した。患者の各々は、以下の包含のための診断および主な基準を満たす:(1)患者は左室収縮機能障害および症候性心不全(ステージC;NYHAクラスII〜III)を有する、(2)患者は、終点を含めて18〜75歳である、ならびに(3)患者は、終点を含めて10〜40%の左室駆出率(LVEF)を有する。この試験に登録された患者は慢性心不全を示し、これは、患者の状態が少なくとも1、2、3、4、5、または6ヶ月間安定しているままであることを意味する。安定または慢性心不全は、少なくとも1、2、3、4、5、または6ヶ月の期間にわたって心臓機能の増加もしくは減少および/または損傷の欠如をさらに特徴とする。
プラセボ治療を受けなかった患者に、ヒト組換えGGF2の用量を受容させた。GGF2の用量を、15〜20分間にわたって与えられる100 mLの固定体積で静脈内注入として投与した。与えられる薬物の総量が一定のままである限り(例えば、約0.007 mg/kg〜約1.5 mg/kgの範囲のGGF2の用量)、GGF2の用量を、任意の長さの時間にわたって与えられる任意の体積で静脈内注入として投与してもよい。GGF2の用量を好ましくは朝に与えた。GGF2の開始用量は0.007 mg/kgであり、これは、最も敏感な動物種毒性試験から同定されたNOAEL(無毒性量)のおよそ1/30(または、ヒト等価用量係数3.1を適用しておよそ1/10 NOAEL)である。コホート7を除いて、各々患者6人の別々のコホートにおいて用量を段階的に増大した。用量段階的増大工程は、最初に、最初の3つの工程において用量を3倍にし、次いで、最大用量1.512 mg/kgまで用量を2倍にした。投与の体積は固定のままであった。GGF2の用量を単回投与として投与した。
段階的増大の間、最初の6つのコホートの各々において、患者6人のうちの4人がGGF2を受容し、患者6人のうちの2人がプラセボを受容した。コホート7において、患者3人がGGF2を受容し、1人がプラセボを受容した。各コホート(用量レベルを示す)において、最初の2人の患者をGGF2またはプラセボ(1:1)へ無作為化し、安全性モニタリングのために7日間追跡し、その後、コホート中の他の患者について開始する。即ち、薬物関連用量制限毒性が最初のGGF2治療患者において観察されない場合、そのコホート中の残りの患者4人を無作為化し、GGF2またはプラセボ(3:1)を受容させ、これらの患者に同時に投与してもよい。用量段階的増大は、薬物関連毒性の発生に基づく。各コホートの最後の患者が28日に達する時までに著しい安全性懸念がない場合、次の用量レベルを開始した。図10は、治療を中止する前の用量継続および/または段階的増大についてのデシジョンツリーの略図を提供する。GGF2用量を任意のレベルで開始し、任意のレベルまで進めることができる。用量制限毒性(DLT)に関して、少なくとも恐らく治験薬と関連していた場合がある以下の事象のうちの1つまたは複数は、治療を停止することができる:(1)グレードIII毒性またはそれを上回る毒性(生命を脅かす事象を包含する)、(2)プロトコールにおいて定義される肝機能異常、および(3)用量減少または治療の中断を必要とすると臨床的に判断される他の事象。
毒性プロファイル、有害事象、生命徴候(心拍数、呼吸、収縮期および拡張期BP)、ECG変化、肝機能検査、身体検査ならびに実験室パラメータの検討によって、安全性を評価する。
GGF2治療の薬物動態を評価するために、連続血液試料を、GGF2レベルの決定のためのGGF2の投与前に、および該GGF2の投与後24時間までの特定の時点で採取した。合計8つの血液試料を採取した。
心機能に対するGGF2治療の効果を評価するために、以下の技術を使用した:心電図記録法(ECGもしくはEKG);駆出率(EF)、拡張末期容量(EDV)、および/または収縮末期容量(ESV)を決定するための心エコー図;B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、N末端B型ナトリウム利尿ペプチド(NT BNP)、および/またはトロポニン-I(TnI)のレベルを決定するための心臓組織または血液試料のいずれかにおけるタンパク質発現の評価。
GGF2治療の免疫原性を評価するために、血液試料を、ベースライン-1日目、14日目、28日目におよび投与後3ヶ月で、免疫学的評価のために採取した。
試験順序:患者を8つの機会に評価した:スクリーニング、ベースライン-1日、1日目、2日目、8日目、14日目、28日目、および3ヶ月(試験完了)。現場はさらに、医学的フォローアップ(有害事象を含む)のために患者に治療後6ヵ月での電話をかける。
投与日の手技:以下の評価を1日目に行う(患者を制限する)。
投与前イベントは、生命徴候、例えば、脈拍数、呼吸、血圧(仰臥位および座位)、および口腔温の評価;体重の記録;12誘導ECGの記録;PK評価、グルコース検査、およびEPCのための血液試料の採取;選択された注射部位の評価および何らかの皮膚異常の記録;有害事象、潜在的な毒性ならびに併用薬および療法の何らかの変更の記録;ならびに、Site Instruction Manualに従っての、対側の腕(contralateral arm)における治療の投与(二重盲検GGF2またはプラセボ)を含んだ。
投与後イベントは、投与後およそ15(± 3)分および30(± 3)分、次いで1時間(± 10分)、2時間(± 10分)、4時間(± 10分)、6時間(± 20分)、8時間(± 20分)、および12時間(± 20分)での生命徴候(例えば、脈拍数、呼吸、血圧(仰臥位および座位)、および口腔温)の評価を含むがこれらに限定されないイベントを含むが、これらに限定されない。投与後イベントは、以下の血液試料の採取および試料を採取する時間の文書化を含み得る:PK/グルコース評価:投与後20(± 3)分、45(± 3)分、および90(± 10)分、次いで3時間(± 10分)、6時間(± 20分)、および12時間(± 20分);EPC:投与後20(± 3)分、45(± 3)分、および90(± 10)分、次いで3時間(± 10分);ならびに肝機能検査:投与後12時間(± 20分)。投与後イベントは、投与後30(± 3)分および12時間(± 20分)での注射部位での局所反応の記録;投与後30(± 3)分および90(± 10)分、3時間(± 10分)、6時間(± 20分)、および8時間(± 20分)での12誘導ECGの記録;有害事象および潜在的な毒性の記録;ならびに併用薬または療法の何らかの変更の記録を含み得る。
統計的方法:これは、1コホート当たり設定数の患者を有し、増大用量レベルで試験する、第I相単回増大用量試験設計であった。必要とされる患者数に対して統計的正当化は適用されなかった。ノンコンパートメンタル(モデル独立)法を使用し、個々の患者血漿中濃度-時間データを用いて、薬物動態パラメータを導き出す。PKパラメータはCmax、Tmax、T1/2、およびAUCを含む。
結果:表10は、試験に登録された患者の個体群統計学プロファイルを要約し、試験期間の間のそれらの典型的な継続中の薬物治療を表11に示す。血液学的、電気的、または行った生化学安全性実験室検査の大部分に対してGGF2の単回投与の顕著な治療効果はなかった。連続する心エコー測定を行い、LVEFを図11に示す。GGF2用量の増加と共に、LVEFの改善への用量関連傾向があった。治験薬の投与中止に至る有害事象はなかった。治療下で発現した有害事象(TEAE)を表12に示す。
(表10)試験集団の個体群統計学
全てのデータは、数字(パーセント)が示される場合を除いて、平均値(標準偏差)である。HF=心不全、NYHA=ニューヨーク心臓協会。
(表11)全ての患者コホートについてのバックグラウンド薬物療法
(表12)CTCAEv4によって定義される治療下で発現した有害事象(TEAE)
* 定義された用量制限毒性:AST、ALT、ビリルビンの可逆的な上昇。
** 尿路上皮癌インサイチュー検査継続中。
この試験によって作成されたデータに基づいて、GGF2は安全と思われ、0.756 mg/kgまでの単回増大用量において全体的に十分に許容された。データは、LVEFが、GGF2の単回投与後約4週間〜約90日の期間にわたって改善し得ることを示している。LVEFは、少なくとも4週間および/または少なくとも90日の期間にわたって改善し得る。一過性肝機能障害(Hyの法則ケース)の用量制限毒性が、最高用量(1.512 mg/kg)で見られ、これは、8日後の観察で消散した。試験は、収縮期心不全についての治療としてのGGF2の安全性および有効性を実証する。
実施例5:症候性心不全患者における心機能の臨床評価
方法:グリア成長因子2(GGF2)に関する単回注入、第I相、用量段階的増大の試験(表9を参照のこと)。
心エコー検査プロトコールを示すダイヤグラムを図12に示す。
結果
図11は、様々な投与量(mg/kgで提供)でのグリア成長因子2(GGF2)の単回注入を用いての治療後の日数の関数としての駆出率(EF)の変化を示す。
図13は、プラセボ対最高用量のGGF2(1.515 mg/kg)についてのベースラインおよびGGF2治療後90日の左室駆出率(LVEF)を示す。
図14は、GGF2またはプラセボの単回注入後の時間(日)に対する寸法の平均変化(Δ容量)を示す。左パネルのグラフは、時間(治療後の日数で測定)の関数としての拡張末期容量(EDV)の変化を示す。右パネルのグラフは、時間(治療後の日数で測定)の関数としての収縮末期容量(ESV)の変化を示す。
この試験の第I相は、優れた安全性および認容性で完了した(実施例4)。データは、心機能の改善および内部寸法の減少を実証する。さらに、データは、プラセボと比較してより高い用量のGGF2での療法に対する用量依存的反応を実証する。従って、GGF2の単回投与または注入は、プラセボと比較して90日の期間にわたって左心室(LV)機能を改善する。
実施例6:LAD閉塞誘導心筋梗塞(MI)後のラットにおける左心室機能に対する隔週投与による様々な用量レベルでのGGF2効果の評価
この試験は、LAD閉塞によって誘導された急性心不全を有するラットにおける左心室(LV)機能に対する隔週(2週毎に1回)投与での様々な用量レベルでのGGF2治療の効果を評価する。LV機能の用量依存的改善が、ラットにおけるMIの10〜15日後に処置を開始した場合、GGF2の隔週静脈内投与後に観察された。
試験システム:手術時におよそ250グラムの体重(試験施設到着時には175〜200グラム)を有し、およそ8週齢である雄性ナイーブSprague Dawleyラットを使用し、LAD閉塞誘導心不全後に左心室機能を(例えば、心エコー検査によって)評価した。
試験物および対照物:ラットをビヒクルまたはGGF2のいずれかで処置した。ビヒクルは、GGF2についてのAcorda Formulation Buffer(20 mMヒスチジン、100 mMアルギニン、100 mM硫酸ナトリウム、1%マンニトール、pH 6.5)を含んだ。GGF2での処置は、SEC-HPLCによって96.0%純度を有すると決定されたGGF2のヒト組換え形態(rhGGF2)を含んだ。
受容した後、ナイーブ動物を計量し、1週間モニタリングした。動物を、様々な手術群へ分け、群平均体重と群体重分散との差を最小限にした。動物を、外科的左前下行枝動脈結紮(LAD閉塞)へ供したか、または手術へ供しなかった(ナイーブ)。LAD閉塞の7〜13日後、短軸左心室心エコーデータを各動物から集めた。ベースラインイメージングの2〜3日後に、ラットを、ベースラインLV機能に基づいて処置群へ無作為に割り当て、次いで、16週間(8用量)について表13に示される経路および用量レベルによって、投与パラダイムへ供した。1 mL/kgの投与体積を使用した。
左心室機能評価前の7日間、感染症または手術後疼痛/窮迫の臨床徴候について、動物をモニタリングした。最初の心エコー評価をLAD閉塞手術のおよそ7〜13日後に行った。
心エコー測定を、手術のおよそ7〜13日後に、および投与の開始後に週1回(96時間)行った。動物を試験の終了時に安楽死ささせた。
観察、測定、および試料
臨床観察:動物を、少なくとも1日1回モニタリングした。病的状態、死亡、全体的な動物の健康および行動についての全体的観察を記録した。臨床的異常の全ての徴候を記録した。
体重:体重を試験期間の間、週1回確認した。個々の動物体重データを試験記録に保管する。
組織調製:安楽死後、心臓を採取して計量した。
LV機能:左心室パラメータを、試験の生存期の残りについて、投与の開始後に週1回、心エコー検査によって評価した。短軸像から得られたモードデータを使用し、以下を含むLVパラメータを導き出した:駆出率(EF%)およびEF%の変化、短縮率(FS%)およびFS%の変化、拡張末期容量(EDV)、収縮末期容量(ESV)、および左心室重量(修正されたLV重量(LV Mass corr))。
LVパラメータの統計分析:ExcelおよびGraphPad Prism (バージョン5.0)を使用してデータを分析した。平均LVパラメータ、平均データの標準偏差および標準誤差を報告した。ベースライン値と比べての様々なLV機能パラメータの変化を分析した。各別個の処置期の間の群平均値間の統計学的差異を、ANOVA、続いてα=0.05で事後検定(例えばTukeyまたはDunnett's)を使用して評価した。経時的に得られたデータを、反復測定ANOVA、続いてα=0.05でのDunnett'sおよび/またはTukey多重比較検定へ供した。
結果
心エコー変化:LVパラメータを、上述のように投与の開始後に週1回、心エコー検査によって評価した。EF%およびEF%の変化データを図15および16に示す。LAD閉塞は、ナイーブ動物と比較して、経時的に、全ての処置群において、EF%およびEF%の変化を有意に減少させた(p<0.05)。全ての静脈内投与されたGGF2用量レベルが、ビヒクル処置対照と比較して、経時的なEF%およびベースラインからのEF%の変化を有意に改善した(p<0.05)。
経時的なEF%およびEF%の変化において見られた効果と同様に、LAD閉塞は、ナイーブ対照と比較して全ての処置群においてFS%およびFS%の変化を有意に減少させた(p<0.05)。
全ての用量レベルでの静脈内投与されたGGF2は、ビヒクル処置対照と比較して、経時的なFS%およびベースラインからのFS%の変化を有意に改善した(p<0.05);FS%の変化。それぞれ、図17および18を参照のこと。
上記のEF%およびFS%の変化に加えて、LAD閉塞は、ナイーブ動物と比較して、全てのLAD閉塞群において経時的なESVの有意な増加をもたらした(p<0.05)。全体的に、GGF2の投与は、ビヒクル処置対照と比較してESVの減少への傾向に至り、値は、図19に示されるように3.5 mg/kgで投与されたGGF2で有意であった。
EDVに対するGGF2の効果を図20に示す。LAD閉塞は、ナイーブ動物と比較して、全てのLAD閉塞群において、経時的なEDVの有意な増加をもたらした(p<0.05)。GGF2治療は、ビヒクル処置対照と比較して、EDVのいかなる有意な改善ももたらさなかった。
さらに、LAD閉塞後の心室重量に対する様々な用量レベルのGGF2治療の効果を評価した。全体的に、心エコー評価から導き出されたLV重量は、全ての処置群において、体重と共に増加した。LAD閉塞は、心筋梗塞後期間において、ナイーブ動物と比較して、LV重量の有意な増加をもたらした。全体的に、ビヒクル処置対照と比較して、LV重量に関して、GGF2の投与後に、明白な用量依存的傾向は観察されなかった(図21)。
体重:LAD閉塞後に、全ての処置群が、経時的に体重を増したが、時間一致させた体重は、恐らく手術に起因して、図22に示されるように、ナイーブ動物と比較して有意により低かった。経時的な体重の有意差は、ビヒクル処置対照と比較してGGF2治療で観察されなかった。
心臓重量:試験の終了時に、心臓重量を全ての動物から集めた。様々な群についての平均心臓重量を図23に示す。LAD閉塞動物の心臓重量は、ナイーブ動物の心臓重量よりも有意に重かった。GGF2治療は心臓重量に対していかなる効果も有さなかった。
LAD結紮後、ナイーブ動物と比較してのEF%およびFS%の有意な減少によって証明されたように、左心室機能の有意な低下があった。ナイーブ動物と比較して、LAD動物においてESVおよびEDVの有意な増加もあった。損なわれた心室機能は、最初の時点と比較してビヒクル処置動物において試験過程にわたって、安定しているかまたは僅か低下することがわかった。
GGF2の静脈内投与は、LAD閉塞後の16週間にわたる駆出率および短縮率の有意な改善によって証明されたように、心機能の用量依存的改善をもたらした。ビヒクル処置動物と比較してGGF2処置動物において、収縮末期容量の有意な改善があったが、拡張末期容量の有意な改善はなかった。全ての群の動物が、試験過程の間に体重を増したが;しかし、ナイーブ動物は、恐らくLAD閉塞手術の影響に起因して、LAD動物と比較して有意により大きな体重を有した。静脈内経路を介しての様々な用量レベルのGGF2の隔週投与は、ラットにおけるMIの10〜15日後に処置を開始した後のLV機能を改善させることにおいて有効であると結論付けることができる。