JP2021167386A - 蓄光材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 屋外用途として使用できる大きな輝度値の蓄光材の製造方法を提供する。【解決手段】 トンネル式バッチ大気加熱炉で1500℃×10時間加熱処理し、SrAl2O4の結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を大幅に減らし発光効率が高い発光材料を作製する。次いで、この発光効率が高い発光材料をボールミルで粉砕し5ミクロン前後に微細化した後、Dy2O3及びB2O3及び母材を添加し、前記4つの蓄光原料を攪拌混合させた後、真空加熱炉にて1630℃×10時間加熱する事、結晶粒径が40ミクロン前後で、Dy固溶量が0.5%の蓄光材を作製する。【選択図】 図4

Description

本発明は、蓄光材の製造方法に関する。
長時間の残光性に優れた蓄光材として、SrAl:Eu2+(グリーン系)及びSrAl1425:Eu2+(ブルーグリーン系)が知られている。そして、これら蓄光材の製造方法としては特許文献1〜3に開示されるものが知られている。
特許文献1には、MAlで表わされる蓄光性蛍光体(Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物)の製造方法として、炭酸ストロンチウムおよびアルミナに賦活剤としてユウロピウムを添加し、更にフラックスとして硼酸を添加し、電気炉を用いて焼成する方法が開示されている。この時、賦活剤としてEuOでなくEuを使用し、窒素と水素との還元性雰囲気中で1300℃1時間加熱することにより蓄光体を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、化学式SrAl1425:Eu2+をもって表される物質にジスプロシウム(Dy)などの賦活助剤が化学的に結合してなる長残光性を有する蛍光体の製造方法として、ストロンチウム化合物とアルミニウム化合物からなる主原料に、フラックスとして、ホウ酸、ケイフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、燐酸水素ナトリウムまたはケイフッ化亜鉛を添加し焼成する方法が開示されている。この時も 賦活剤としてEuOでなくEuを使用し、窒素と水素との還元性雰囲気中で1300℃3時間加熱することにより蓄光体を製造する方法が記載されている。
特許文献3には、結晶母体構成として、(SrxCa1−X)yAlOzを選定し、発光中心となる賦活剤としてEuでなくEuを事前還元したEuOを選定し、蓄光機能を付与する賦活助剤としてDyを選定し、前記賦活剤であるEuOと前記賦活助剤であるDyを一定比率で混合した後、焼結〜緻密化したEuO・Dy混合材料を作製し、前記結晶母体を構成する材料に前記EuO・Dy混合材料を添加・混合した後、焼結を行う事で(SrCa1−X)yAlOz:Eu、Dyの構成の焼結体を作製することが開示されている。
また非特許文献1にも、賦活剤としてEuOでなくEuを使用し、Arと水素との還元性雰囲気中で1500℃、3時間加熱することにより蓄光体を製造する方法が記載されている。
特開平7−011250号公報 特開平9−208948号公報 特開2014−47331号公報
「資源と素材」 1998年 Vol.114 社団法人 資源・素材学会
現状の蓄光製品の性能は、照射停止1h後の残光輝度が500mcd/m2〜1000mcd/m2前後と大きな値になっているのに対し、屋外用途で重要な10h後の輝度値が5mcd/m2〜20mcd/m2という非常に小さな値になっている。この値は暗闇中で1〜2mの距離から人間がかろうじて視認出来るレベルであり、暗闇中で数十mの距離からはっきり視認するためには500mcd/m〜1000mcd/mレベルが望ましい輝度値である。屋外用途として、照射停止10h後の輝度値が500mcd/m〜1000mcd/mレベルの蓄光製品の実現が不可能であるのかを調べるため、結晶母体としてSrAl4、賦活剤としてEuOを、賦活助剤としてDy2を例にとって蓄光〜発光のメカニズム及びDy3+トラップの役割を解明する事で、10h後の残光輝度を大きくする改善ポイントを明確にすると共に残光エネルギー理論値Zを求める事とする。
蓄光メカニズムや発光メカニズムに関しては、いくつかの蓄光論文や出願特許で説明されているが、以下 改めて蓄光メカニズムと発光メカニズムに関し説明する。
蓄光のメカニズムは、図1で示すようにSrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)が光(紫外線)エネルギーを吸収し、4f準位にある電子が5d準位に励起され、励起により生じた正孔(ホール)が、価電子帯を移動して賦活助剤として導入したDy3+トラップに捕獲され蓄光される事になる。この時SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)では光(紫外線)エネルギーを吸収しても励起電子は発生せず熱消費される。
また、5d準位に励起された励起電子はその場に留まらず、かなり早い回遊速度で移動するので、励起電子は移動を繰りかえす内にSrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)という欠陥に捕獲され最終的には熱消費される事になる。上記現象は発光材の濃度消光理論で説明されている現象と同じで、照射光を吸収し励起した電子が移動し、移動途中に結晶内及び結晶粒界の欠陥に捕獲され、発光されず熱消費されるという現象で、回遊速度が速くなればなるほど顕著になる。
従って、殆どのEu3+(3価のEu)には励起電子が存在する状態になるが、ごく一部のEu3+(3価のEu)には励起電子が存在しない状態になる。即ち Eu3+(3価のEu)には励起電子が存在する状態と存在しない状態の二つの状態があり、この事が残光輝度を大きくする最適なEu添加モル濃度が存在する要因であると考えられる。以下最適なEu添加モル濃度がどの程度の濃度であるのか、更に 最適なEu添加モル濃度が何故存在するのか、に関して説明する。
まず屋内用途の蓄光材に最適なEu添加モル濃度に関しては、Alの添加モル量を100とした時に0.4前後、即ち0.4%前後ではないか、と非特許文献1に記載されている。
次に最適なEu添加モル濃度が何故存在するのか、に関して説明する。
前記回遊速度はSrAlの結晶母体に固溶されたEuO濃度の6乗に比例するので、添加するEu濃度を少なくし過ぎると、回遊速度が急激に遅くなるため励起電子が存在しないEu3+(3価のEu)が増加し、励起電子が存在しないEu3+(3価のEu)は照射光を吸収し熱消費するため、結果 照射中の熱消費量が増え、結果 蓄光エネルギー量が減り、結果 照射停止直後の初期輝度が小さくなり、結果、10h後の残光輝度が小さくなる。
逆に、添加するEu濃度を多くし過ぎると、回遊速度が急激に速くなるため励起電子が存在しないEu3+(3価のEu)が減少し、結果、照射中の熱消費量が減り、結果、蓄光エネルギー量が増え、結果、初期輝度は大きくなるが、照射停止〜10h後の量子効率を悪化させ、特に照射停止から長時間経過した10h後の発光効率(外部量子効率)を非常に悪化させ、結果10h後の残光輝度が小さくなる。
以上の結果より10h後の残光輝度を大きくする最適なEu添加濃度が存在する事になり、非特許文献1の基礎実験結果や他社の特許出願内容等から判断すると現状の蓄光材に於いて、屋内用途に最適なEu添加濃度はAlの添加モル量を100とした時に0.3〜0.4前後、即ち0.3%〜0.4%前後で、屋外用途に最適なEu添加濃度は0.2%〜0.3%前後ではないか、と考えられる。
照射停止後の発光メカニズムは、図2で示す様にDy3+トラップに捕獲された正孔が一定捕獲時間後に熱エネルギーによりDy3+トラップから解放され、解放された正孔が価電子帯を移動しEu2+(2価のEu)に存在する励起電子と再結合し発光する事になる。この時、解放された正孔がEu3+(3価のEu)に存在する励起電子と再結合した場合は発光せずに熱消費される事になる。
従って、EuOが酸化されてEu3+(3価のEu)の比率が多くなると、発光せずに熱消費される割合が増え量子効率が悪くなる。又、Eu3+(3価のEu)の比率が同じでも、Eu3+(3価のEu)に存在する励起電子の比率により量子効率が異なる事になる。即ち、濃度消光理論と同じで、Eu3+(3価のEu)の比率が同じでも添加するEu濃度を多くした方が照射停止後の量子効率は悪化する事になる。
最後に、蓄えられた正孔の消費速度に関し、正孔を捕獲していないDy3+トラップが多数存在すると、図3で示す様にDy3+トラップから一定捕獲時間後に解放された正孔が再び別のDy3+トラップに捕獲される事になるので、蓄えられた正孔の消費速度が遅くなり屋外用途で10h後の輝度向上に有効となる。即ちDy/Eu比率を大きくする程、屋外用途で10h後の輝度向上に有効となる。
ここで、トラップの深さが深い程、正孔が解放されるのに大きな熱エネルギーが必要となり、捕獲から解放されるまでの捕獲時間は長くなる事になる。同じく周囲温度が低い程、捕獲から解放されるまでの捕獲時間は長くなる事になる。
以上の結果より、10h後の残光輝度を大きくするには、下記三つの改善が必要という事が判る。
一つ目の改善は、SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を限りなく0%に近づけ、固溶されたEu2+(2価のEu)の比率を限りなく100%に近づけることである。SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)の比率を限りなく100%に近づけることが出来ると、量子効率が急激に向上し量子効率を改善できると、屋外用途だけでなく 屋内用途の残光輝度も大幅に改善できるので最大の改善点である。
二つ目の改善は、Eu添加モル量を減らすことでDy/Eu比率を大きくすることである。但し この場合 SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)比率を限りなく100%に近づけるという一つ目の改善をした上で行う必要がある。例えばEu添加濃度を0.3%から0.1%に減らすとDy/Eu比率が3倍になり、10h後の残光輝度が格段に向上する筈であるが、Eu2+(2価のEu)比率が例えば80%〜85%前後と悪い場合は、Eu添加濃度を0.1%前後にすると、励起電子が存在しないEu3+(3価のEu)が異常に増え、照射光を大量に熱消費するため、Eu添加濃度0.1%が最適なEu添加濃度にはならない事を認識しておく必要がある。即ち、最適なEu添加モル濃度はSrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)比率で異なった値になる事を認識しておく必要がある。
三つ目の改善は、Dy固溶量そのものを大きくすることでDy/Eu比率を大きくすることである。
次に残光エネルギー理論値Zを求める。
Φ20タイプ測定サンプル中の蓄光材重量を2.8grとすると、1m当たりの蓄光材重量は2.8gr÷(π/4×0.02)=8918gr/mとなる。蓄光材の材料組成をSr0.993AlEu0.0025Dy0.003として、8918gr/mの蓄光材中のEuO重量を求めると、Sr0.993AlEu0.0025Dy0.003 の分子量は0.993SrO+Al2O3+0.0025EuO+0.0015Dy2O3=0.993×103.62+102+0.0025×168+0.0015×373=205.87gr/molとなるので、1m2あたりのEuO重量は、8918 gr/m×(0.0025×168/205.87)=18.19gr/mとなる。
18.19gr/mのEuO中のEuO数を求めると EuOの分子量が168なので18.19÷168×(6×1023)=6.50×1022個/mとなる。但し、実際にはEu還元率が100%になる事はないので、EuO数は6.50×1022個/mより小さな値となる。
Eu還元率が100%と仮定して、前記6.50×1022個/m2のEu2+(2価のEu)が光(紫外線)エネルギーを吸収し、4f準位にある電子が5d準位に励起され、再結合時に520nm波長の光を発生するとして 理論的に発光可能なエネルギーZを求めると、520nm波長に於ける電子1個のエネルギーは1240/520nm×(1.602×10−19)=3.82×10−19J/個 であるので、Z=(6.50×1022個/m)×(3.82×10−19J/個)=24816J/mとなる。
但し、実際にはEu還元率が100%になったと仮定しても、6.50×1022個/mのEu2+(2価のEu)が 全て励起される訳でないので、実際に発光可能なエネルギーZは24816J/mより小さな値となる。EuO還元率が100%と仮定し、且つ6.50×1022個/mのEu2+(2価のEu)の全てが励起されたと仮定し、Z=24816J/mの値をlm・sec/mの単位系に変換すると、520nm波長の標準比視感度は0.66となるので、520nm波長では1J=0.66×683lm・secとなり Z=24816×0.66×683lm・sec/m=11、186、556lm・sec/m=3107lm/m2×1hとなる。
次に、Z=3107lm/m×1hの値をcd/m×1hの単位系に変換すると、表面及び裏面の両方から光を取り出す場合は2πで割るが、今回の様に表面だけから光を取り出す場合はπで割る事になるので、Z=3107×(1/π)cd/m×1h=989cd/m×1hとなる。
但し、EuO還元率が100%と仮定し、且つ6.50×1022個/mのEu2+(2価のEu)が100%励起されたと仮定しても、光取り出し効率が100%になる事はないので、実際には989cd/m×1hより小さな値となる。
以上の結果より、残光エネルギー理論値Zは989cd/m×1h=989000mcd/m×1hという大きな値になり、989000mcd/m×1hの内、僅か10%でも光エネルギーとして活用出来れば2000mcd/mの輝度であれば、50時間光り続けられるエネルギー量を潜在的に有するという事が判明した。従って屋外用途で10h後の残光輝度を500mcd/m〜1000mcd/mレベルにする事は充分に可能であるという結論になる。
以上の結果で分かる様に、10h後の残光輝度を500mcd/m〜1000mcd/mレベルに大きくする最大の課題は、SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を限りなく0%に近づけ固溶されたEu2+(2価のEu)の比率を限りなく100%に近づける事で量子効率を大きくする事である。
10h後の残光輝度が500mcd/m〜1000mcd/mレベルという大きな蓄光材を製造する上で最大の課題であるSrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)の比率を限りなく100%に近づける事に対する従来技術の問題点について述べる。従来技術では、賦活剤としてEuOではなくEuを使用し、Hガス中やカーボン雰囲気中で結晶母体と一緒に焼結・還元を行っている。
全世界で生産されている蓄光材の殆どは中国で生産されており、中国での生産方式は2重坩堝に入れた蓄光原料をトンネル炉で10時間前後加熱するという大量生産に優れたトンネル炉方式が用いられている。
実際に生産されている2重坩堝を用いたトンネル炉方式の一例を下記説明する。
先ず、使用する2重坩堝に入れる蓄光原料としては、発光中心となる賦活剤としてEuを使用し、賦活助剤としてDyを使用し、母材としてSrCOとAlの混合材料を使用し、フラックス剤としてB等を使用している。
前記4つの蓄光原料をプラスチック製の大型混合容器に入れ 蓋を閉めた後 大型混合容器を数時間回転させる事で攪拌混合させる。
その後、前記混合材料を例えば内径Φ70mm×深さ133mmの小型坩堝内に充填し、その後蓋を閉め、更に前記小型坩堝を例えば内径Φ93mm×深さ180mmの中型坩堝内に収め、前記小型坩堝と前記中型坩堝の隙間に活性炭を充填し、その後蓋を閉め、その後トンネル炉で10時間前後加熱処理する。
充填した前記活性炭の役割は2つあり、一つ目の役割はトンネル炉内で外部の空気(酸素)が小型坩堝内に侵入するのを防ぐ役割である。即ち、中型坩堝内に侵入した酸素を活性炭がC+1/2O→COと反応する事でOを消費する役割である。
二つ目の役割は、トンネル炉加熱中に活性炭から発生したカーボン蒸気が小型坩堝内に侵入し、小型坩堝内を還元状態にする事でEu自身を還元すると共に、母材であるSrAlに酸素欠陥を発生させる事で母材結晶内に溶け込んだEuの一部を還元する役割である。従って、例えば、大型坩堝を追加して3重坩堝にしても役割は2重坩堝と同じである。
前記のトンネル炉方式の欠点は二つあり、一つ目の欠点は加熱温度が1400℃〜1500℃前後と低く、且つ加熱時間が不足しているため、小型坩堝内に侵入するカーボン蒸気総量が不足して、Euの一部しかEuOへ還元出来ない結果、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)の比率が非常に低い事である。二つ目の欠点は加熱温度が1400℃〜1500℃前後と低く、且つ加熱終了後の冷却が緩やかであるためDy固溶量も極めて小さい事である。
但し、Dy3+(3価のDy)は非常に固溶しにくい材料であるため、Dyを賦活助剤として使用する限り欠点2の大きな改善は難しい。
ここで屋内用途の場合は20分〜60分後の残光輝度を大きくするだけで良いので、Dy固溶量が現状レベルでも大きな問題はない。又 屋外用途の場合でも、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)の比率を限りなく100%に近づけ 且つ Eu添加モル濃度を0.1%前後まで減らす事でDy/Eu比率を大きくすれば、相対的にDy固溶量を増やしたことと同じ効果があり10h後の残光輝度を大幅に大きく出来るので、一つ目の欠点だけを改善すれば良い事になる。
一つ目の欠点の対策としてEuを使用せず、Euを加熱還元して作製したEuO材料、或いはEu金属材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末の混合材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を使用する対策が考えられるが、SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を極限の1%前後まで改善するには不十分である事を以下に説明する。
蓄光材作製工程中に於いて、EuO、或いはEu金属を酸化させる酸化物質としては「CO」「HO」「O」等が存在する。
「CO」はSrCOとAlが反応しSrAl母材に変化する時に発生し、その発生量は膨大な量になるため、坩堝内に投入したEuO材料、或いはEu金属材料の殆どをEu材料に酸化させる事になる。
「HO」はSrAl母材に吸着している「HO」が離脱する時に発生し、 その吸着量は膨大な量になるため、坩堝内に投入したEuO材料、或いはEu金属材料の多くをEu材料に酸化させる事になる。
SrAl母材は主成分である「Al」が「HO」を吸着して「水酸化アルミ」に変化する事から判る様に、空気中の水分を非常に吸着し易い材料で、「SrAl」を母材とする蓄光材を空気中に放置しておくと、「HO」を吸着して蓄光性能が激しく劣化する事は広く知られている。同じく、EuO材料も空気中の水分を非常に吸着し易い材料である事が広く知られている。
具体的に、材料組成のEu添加モル量を0.25%、Dy添加モル量を0.5%即ち 材料組成をSr0.99AlEu0.0025Dy0.005とした時に発生する「CO」の計算例を下記する。
<計算例1> 原料としてSrCOを使用する場合
0.99SrCO3 + Al2O3 + 0.0025Dy2O3 + 0.0025EuO
0.99×147.62+1.0×102.00+0.0025×373.00+0.0025×168.00 =
146.14gr + 102gr + 0.933gr + 0.42gr = 249.493gr

<計算例2> 原料としてSrOを使用する場合
0.99SrO + Al2O3 + 0.0025Dy2O3 + 0.0025EuO
0.99×103.62+1.0×102.00+0.0025×373.00+0.0025×168.00 =
102.58gr + 102gr + 0.933gr + 0.42gr = 205.933gr

Φ20mmの蓄光材重量を2.8grとし 1m当たりの蓄光材重量G1を求めると G1=2.8gr÷(π/4×2)=8918(gr/m2)となり、1m当たりのEuOの重量G2を求めると、G2=8918gr×(0.42÷205.933)=18.19(gr/m2)となり、1m当たりのEuOの数量を求めると18.19(gr/m2)÷168×6×1023(ケ/gr)=6.50×1022(ケ/m2)となり、1gr当たりのEuOの数量を求めると、6.50×1022(ケ/m2)÷8918(gr/m2)=7.285×1018(ケ/gr)となる。

材料組成をSr0.99AlEu0.0025Dy0.005としてフラックス剤を除くEuO、Dy、SrCO、Alの重量合計700grを、例えば内径Φ70mm×深さ133mmの小型坩堝内に注入した時に小型坩堝内に存在するEuOの数量N1を求めると N1=700gr×205.933gr/249.493gr×7.285×1018(ケ/gr)=42.092×1020ケとなる。この時、小型坩堝内に存在するSrCOから発生するCOの数量N2を求めると、N2=700gr×0.99×44gr/249.493gr÷44gr×6×1023=16665.798×1020ケとなる。
発生したCOがEuO+1/2CO→1/2Eu+1/2COの反応式でEuOを酸化させると仮定すると、N2/N1×2倍=約792倍程度となるので 投入したEuO材料の殆どを酸化させる事になり、EuO材料を使用した意味がなくなる。
同じく、発生したCOがEu+3/2CO→1/2Eu+3/2COの反応式でEu金属を酸化させると仮定すると、N2/N1×2/3倍=約264倍程度となるので 投入したEu金属材料の殆どを酸化させる事になり、Eu金属材料を使用した意味がなくなる。
次に、材料組成をSr0.99AlEu0.0025Dy0.005とした時に発生する「HO」の計算例を下記する。
<計算例2> 原料としてSrOを使用する場合
0.99SrO + Al2O3 + 0.0025Dy2O3 + 0.0025EuO
0.99×103.62+1.0×102.00+0.0025×373.00+0.0025×168.00 =
102.58gr + 102gr + 0.933gr + 0.42gr = 205.933gr

Φ20mmの蓄光材重量を2.8grとし 1m当たりの蓄光材重量G1を求めると G1=2.8gr÷(π/4×2)=8918(gr/m2)となり、1m当たりのEuOの重量G2を求めると、G2=8918gr×(0.42÷205.933)=18.19(gr/m2)となり、1m当たりのEuOの数量を求めると18.19(gr/m2)÷168×6×1023(ケ/gr)=6.50×1022(ケ/m2)となり、1gr当たりのEuOの数量を求めると、6.50×1022(ケ/m2)÷8918(gr/m2)=7.285×1018(ケ/gr)となる。

材料組成をSr0.99AlEu0.0025Dy0.005としてフラックス剤を除くEuO、Dy、SrCO、Alの重量合計700grを、内径Φ70mm×深さ133mmの小型坩堝内に注入した時に小型坩堝内に存在するEuOの数量N1を求めると N1=700gr×205.933gr/249.493gr×7.285×1018(ケ/gr)=42.092×1020ケとなる。
この時、小型坩堝内に存在するSrAl母材に吸着しているHO量N3を求めると、SrAl母材1gr中に1×1020ケのHO分子が吸着されているとして計算すると、N3=700gr×1×1020(ケ/gr)=700×1020ケとなる。ここで小型坩堝内に存在する母材に吸着しているHOがEuO+1/2HO→1/2Eu+1/2Hの反応式でEuOを酸化させると仮定すると、N3/N1×2倍=約33.3倍となり投入したEuOの大部分が酸化される危険性がある。但し、実際には発生したHOの内1/20程度しかEuOに吸着されず 残りは小型坩堝から逃げ出すので、N3/N1×2倍×1/20=約1.67倍程度になると考えられる。
同じく、発生したHOがEu+3/2HO→1/2Eu+Hの反応式でEu金属を酸化させると仮定すると、N3/N1×2/3倍×1/10=約0.55倍程度となるので、投入したEu金属材料の多くが酸化される危険性がある。
尚、SrAl母材1grへのHO分子吸着量は、母材の粒子径や空気中への放置時間や空気中の湿度条件などで大きく変化し、最悪のケースではSrAl+3HO→2Al(OH)+SrOという反応になり この場合のSrAl母材1gr中のHO分子吸着量は88×1020ケという値になるので、上記計算ではSrAl母材1gr中のHO分子量を1×1020ケとした。
次に、小型坩堝内に存在するOの数量N4を求めると、N4=(0.5L−0.2L)÷22.4L×6×1023(ケ/gr)×21%=16.875×1020ケとなる。ここで小型坩堝内に存在するOがEuO+1/4O→1/2Euの反応式でEuO材料を酸化させると仮定すると、N4/N1×4倍=約1.6倍程度となる。同じく、発生したOがEu+3/4O→1/2Euの反応式でEu金属材料を酸化させると仮定するとN4/N1×4/3倍=約0.5倍程度となる。
以上の結果よりEuの替わりにEuO材料、或いはEu金属材料等を使用しても、「CO」の発生を防止する対策を行うだけでは不十分で、SrAl母材から発生する「HO」及び小型坩堝内に存在する「O」によりEuに酸化される危険性があるため 更なる対策が必要となる。
上記課題を解決するための本発明に係る蓄光材の製造方法を説明する。
まず 母材としてSrCOとAlの混合材料を使用せず、SrCOとAlの混合材料を事前加熱する事で作製したSrAl材料を使用した。
次に発光中心となる賦活剤としてEuを使用せず、Euを加熱還元して作製したEuO材料、或いはEu金属材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末の混合材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を使用した。Euの具体的な加熱還元方法としては、カーボンを添加し還元雰囲気中で加熱する事でEu+C→2EuO+CO 或いは Eu+1/2C→2EuO+1/2COの反応を起こさせるという広く知られている還元方法を採用した。尚 この時 EuO材料、或いはEu金属材料の収量効率を無視すれば Euモル量を1とした時に、カーボン添加モル量を2〜10と多めに投入すれば還元率の良好なEuO材料、或いはEu金属材料を容易に得る事が出来る。
次に、加熱処理を2回に分け、1回目の加熱処理工程で賦活剤としてのEu添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に1.0以上にした混合材料を小型坩堝内に充填し、その後蓋を閉め、更に、前記小型坩堝を中型坩堝内に収め、前記小型坩堝と前記中型坩堝の隙間に活性炭、或いはカーボン粉末を充填し、その後蓋を閉めた2重坩堝を大気加熱炉で加熱処理する事で、蓄光機能を有さない発光材を一旦作製し、2回目の加熱処理工程で前記発光材を粉砕すると共に、前記粉砕発光材の3倍以上の母材を追加添加し、真空加熱炉で加熱処理する事でEu添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に0.3以下の蓄光材にする事にした。
尚、上記の1回目の加熱処理において、蓄光機能を有さない発光材が得られるが、ここにいう蓄光機能を有さないとは、蓄光材として使用できる程度の蓄光機能を有さないの意味であり、1回目の加熱処理において賦活助剤やフラックス剤が不可避的に混入する場合も含む。
又、蓄光材作製に必須な賦活助剤の投入時期に関しては、1回目の加熱処理工程でも良いが、2回目の加熱処理工程で添加する方が好ましい。
2回目の加熱処理工程で添加する方が好ましい理由は、1回目の加熱処理工程で賦活助剤を添加しない発光材料を一括して作製した後、2回目の加熱処理工程でDy/Eu比率が異なる複数タイプの蓄光材料を作製する方が、生産性が高いためである。ここで蓄光材料としてDy/Eu比率の異なる複数タイプの蓄光材料を作製する必要性に関し以下説明する。
まず屋内用途向け及び屋外用途向けで残光輝度を最も大きくするのに最適なDy/Eu比率が2タイプ存在する事になる。屋内向け用途としてはDy/Eu比率を1〜2前後にした方が20分〜60分後の残光輝度を最も大きくするのに対し、屋外向け用途としては例えばDy/Eu比率=3〜5と出来るだけ大きくした方が10h〜12h後の残光輝度を最も大きくするためである。
又、照射強度が屋内用途向けの1/5〜1/10倍前後小さい潜水艦や船舶向け等の特殊用途向けに最適なDy/Eu比率も存在するので、少なくとも合計3タイプが存在する事になる。
次に、蓄光材作製に必須なフラックス剤の投入時期に関しても、1回目の加熱処理工程でも良いが、2回目の加熱処理工程で添加する方が好ましい。
上記理由を説明すると、1回目の加熱処理工程で大量に添加すると添加した賦活剤が大量に酸化される危険性があるためである。例えば 賦活剤としてEu金属を使用した場合は Eu+1/3B→EuO+2/3B、或いは Eu+1/2B→1/2Eu+1/2Bの反応式でEu金属が激しく酸化される。
従って1回目の加熱処理工程で添加した賦活剤がフラックス剤で酸化されるのを防ぐため、フラックス剤の添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に0.1以下にすると共に、2回目の加熱処理工程ではSrAl母材結晶中に固溶したEuOがH2O、或いはO2で酸化されるのを防ぐため、逆にフラックス剤の添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に3.0以上にする事とした。
本発明により、SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を大幅に減らし、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)の比率を大幅に増やせた結果、量子効率が大幅に向上し、残光輝度を大きくする事が出来る。
結晶母体としてSrAl4、賦活剤としてEuOを、賦活助剤としてDyを例にとった蓄光〜発光のメカニズム(1)を説明した図 結晶母体としてSrAl4、賦活剤としてEuOを、賦活助剤としてDyを例にとった蓄光〜発光のメカニズム(2)を説明した図 結晶母体としてSrAl4、賦活剤としてEuOを、賦活助剤としてDyを例にとった蓄光〜発光のメカニズム(3)を説明した図 本発明方法の実施に用いるトンネル式加熱炉の一例を示す図。 本発明方法の実施に用いるバッチ式大気加熱炉の一例を示す図。 本発明方法の実施に用いる真空加熱炉の一例を示す図。
本発明ではSrCOとAlの混合材料を電気加熱装置等で加熱する事でSrAl材料を作製し、その後ボールミル等で乾式粉砕したSrAl材料を使用する事とした。事前に作製したSrAlを使用すると大量のCOが発生する事を防ぐ効果がある。
更なる対策の一つ目として特許文献3には賦活剤であるEuOと賦活助剤であるDyを一定比率、例えば、賦活助剤/賦活剤(Dy/Eu)=10〜40で混合した後、焼結〜緻密化したEuO・Dy混合材料を作製する事でSrAl母材から発生する「HO」がEuOに吸着されるのを防ぐ方法が開示されている。
まず前記方法は「HO」がEuOに吸着するのをある程度防ぐ事は出来るが、完璧に防ぐ事が出来ないという基本的な問題を抱えた方法である。即ち SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を10%前後まで改善する事は出来るが、1%前後まで改善する事は出来ない方法である。
何故ならば中央部に少量のEuOが存在し、その周りを大量のDyで覆うという理想的な構造を作製出来ないからである。更に「HO」が内部に侵入する事を防ぐためにDyを完璧に緻密化させるには、Dyの融点である2350℃以上という超高温で加熱する必要があり、1500℃前後の温度で加熱したDy粒子間には大量の隙間が存在し「HO」が内部に侵入する事を完璧には防げないからである。
更に屋外用途の場合として、例えば賦活助剤/賦活剤(Dy/Eu)=20にすると、一般的なDy固溶量がAlの添加モル量を100とした時に1.0よりはるかに小さい値、即ち1.0%よりはるかに小さな値にしかならないため、Dy濃度を0.5%にしたとすると、必然的にEu濃度は0.025%になる。添加するEu濃度を0.05%と少なくし過ぎると、励起電子の回遊速度が例えばEu濃度を0.3%にした場合の(0.025/0.3)=1/2985984倍と極めて遅くなり、結果 励起電子が存在しないEu3+(3価のEu)が多くなり、照射光を大量に熱消費するため、照射中の量子効率が大幅に悪くなり、10h後の残光輝度が小さくなる。以上の結果より屋外用途に関しても対策は不十分となる。
従って本発明では、更なる対策の二つ目として、添加するEuモル量を0.3%前後から1%以上 好ましくは10%以上に増やす対策を行った。この対策により「HO」や「O」に起因する酸化を激減させる事が可能となるが、新たに二つの問題点が発生する。
一つ目の問題点は、添加するEu濃度を1%以上にすると屋外用途として重要な照射停止10h後の残光輝度が0.1mcd/m2以下にしかならないという、僅かに蓄光機能を有するが実質的に蓄光材として全く使用できない発光材しか作製出来ない事である。二つ目の問題点は、Eu金属材料等を酸化させる物質として「HO」「O」以外にも「B」等の酸化物フラックス剤が存在するという点である。
まず一つ目の問題点に関して説明する。具体的に中国の2重坩堝を利用したトンネル炉方式で、Eu濃度を1.0%・Dy濃度を1.0%とした蓄光材を作製し残光輝度を測定した結果では、僅か1h後に0.1mcd/m2以下という測定不能な小さな値になった。0.1mcd/m2以下という値は、暗闇中で人間の目で視認できる限界輝度が5mcd/m2といわれており実質的に蓄光材として全く使用できないレベルの値である。尚 Eu濃度を0.3%〜0.4%にした一般的な蓄光材の10h後の残光輝度は5mcd/m2〜20mcd/m2レベルで、暗闇中で1〜2mの距離から人間がかろうじて視認出来るレベルである。
上記原因は三つあり、一つ目の原因は添加するEu濃度を1%以上にすると「照射停止直後に蓄えられた正孔」の量が激減するためで、二つ目の原因は前記「照射停止直後に蓄えられた正孔」の消費速度が非常に速くなるためで、三つ目の原因は「10h後に消費されずに残った正孔」の発光効率が非常に悪くなるためである。
まず一つ目の原因に関して説明する。Eu2+(2価のEu)、Eu3+(3価のEu)、Dy3+(3価のDy)の3つに関し、SrAlの結晶母体への固溶し易さを比較するとEu2+>>Eu3+>>Dy3+の順番になり、Dy3+(3価のDy)が非常に固溶しにくい材料である事が広く知られている。以上の様にDy3+がSrAlの結晶母体へ固溶しにくい事に加えて、更に大量のEu濃度を添加すると大量のEu3+の方が優先的に固溶されるため、Dy3+はますます固溶しにくくなり、Dy3+の固溶量は1%よりはるかに小さな値になる。
従ってEu濃度を1%にすると、屋外の強い照射光(例えば 夏の夕暮れ時の太陽光)を吸収し発生する大量の正孔で同一結晶内の全てのDy3+トラップに正孔が捕獲され、更に 大量の正孔がDy3+トラップから溢れ出た状態になる。ここで前記溢れ出た正孔1個の「励起電子との再結合確率」の方がDy3+トラップに捕獲された正孔1個の「励起電子との再結合確率」より数100倍大きいため、前記溢れ出た大量の正孔は大量の励起電子と次から次へと再結合し〜再結合後に新たに屋外の強い照射光を吸収〜新たに溢れ出た大量の正孔が発生〜新たに再結合するという現象を単位時間内に繰り返す事になり、結果 照射光エネルギーの大部分をDy3+トラップから溢れ出た正孔が光消費(熱消費も含む)するというトラブルが発生し、結果「照射停止直後に蓄えられた正孔の量」が激減するためである。ここで前記現象を詳しく数値解析するためには、Dy3+トラップに捕獲された正孔がDy3+トラップから脱出する確率を数値化する必要がある。
以上の理由から前記確率を数値化するため、蓄光現象を解明するために独自に開発した「蓄光計算プログラム」を活用し、照射停止直後から36000秒後まで10秒単位の繰り返し計算をさせた結果、前記確率は1秒間当たり1/260前後の値になる事が判った。
更に、前記「蓄光計算プログラム」で計算した結果、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+比率を100%近くに改善し 且つ Eu濃度を小さくしてDy/Eu比率を大きくするという2つの改善を行えば、10h後の残光輝度を2000mcd/m2前後まで飛躍的に大きく出来る事も判った。
更に、10h後の残光輝度を向上させる上で最大の改善点である「SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+比率」に関しても、実際の輝度測定実験データと前記「蓄光計算プログラム」の計算結果を比較する事で評価出来る事も判った。
以下、前記蓄光計算プログラムで行った6つの計算結果を説明する。
まず一般的な蓄光材の1h後の残光輝度が500mcd/m2〜1000mcd/m2前後、10h後の残光輝度が5mcd/m2〜20mcd/m2前後になるのに対し、計算例1として前記確率を1/260、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+(2価のEu)比率を85%、Eu濃度を0.30%、Dy固溶濃度を0.45%、結晶粒径を40μm、必要材料を132gr/m2、照射条件をキセノンランプ4W/m2×19分として計算を行った結果、1h後の残光輝度が706mcd/m2、10h後の残光輝度が1.5mcd/m2となった。
次に計算例2として前記計算例1に於いてEu濃度を0.30%から0.28%に変更して計算すると、1h後の残光輝度が976mcd/m2、10h後の残光輝度が7.0mcd/m2となり、一般的な蓄光材とほぼ似た結果になった。
更に計算例3として前記計算例2に於いて確率を1/260から1/26に変更して計算すると、0h後の残光輝度は20818mcd/m2から12166mcd/m2と1/1.7倍程度しか減っていないのに対し、1h後の残光輝度は976mcd/m2から57.1mcd/m2と1/17倍に激減し、一般的な蓄光材の1h後の輝度値である500mcd/m2〜1000mcd/m2と全くかけ離れた数値になった。前記計算例3の結果になった理由は、1秒間に消費される正孔の量と励起電子の量が実際より10倍前後多くなったためと考えられる。
以上の結果より、1秒間当たり1/260という数値は、信頼性がある数値レベルであると判断している。尚1h後の「正孔の残存比率」と「2価のEuに存在する励起電子の残存比率」に関して、計算例2では初期値(照射停止直後)の25.5%と28.5%であったのに対し、計算例3では初期値の8.4%と9.5%まで大幅に減っていた。
因みに、照射停止後の輝度値は「照射停止直後に蓄えられた正孔の量」「正孔の残存比率」「2価のEuに存在する励起電子の残存比率」「発光効率」「その他の因子」「光取り出し効率」の6因子の乗算値に比例するので、10h後の残光輝度を大きくするには「照射停止直後に蓄えられた正孔の量」を大きくすると共に「正孔の10h後の残存比率」と「2価のEuに存在する励起電子の10h後の残存比率」と「10h後の発光効率」を大きくする必要がある。
更に計算例4として前記計算例2に於いて励起電子の回遊速度だけを(1.0%/0.28%)=2072倍に変更して計算すると、僅か50分後の残光輝度が0.1mcd/m2以下に激減した。前記計算例4の内容を分析した結果、励起電子の回遊速度が非常に早くなると発光効率が大幅に悪化するだけでなく、正孔の消費速度も大幅に早くなる事が判った。因みに計算例4の場合の発光効率は初期に25%であったのが45分30秒後には0.0025%という小さな値になっていた。
次に、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+比率を100%近くに改善し 且つ、Eu濃度を小さくしてDy/Eu比率を大きくするという2つの改善を行った場合の一例(計算例5)として、前記確率を1/260、SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+比率を99%、Eu濃度を0.09%、Dy固溶濃度を0.45%、結晶粒径を80μm、必要材料を4189gr/m2、照射条件をキセノンランプ4W/m2×169分として計算を行うと、1h後の残光輝度が19375mcd/m2、10h後の残光輝度が1964mcd/m2となり、10h後の残光輝度の値を飛躍的に改善出来る事が判った。前記計算例5で1h後及び10h後に残存している「正孔の残存比率」と「2価のEuに存在する励起電子の残存比率」を求めると、1h後では初期値の69.1%と74.1%、10h後でも22.8%と25.1%と共に非常に大きな比率になる事も判った。
尚、計算例5の必要材料の値は「照射光強度」「照射時間」「SrAlの結晶母体に固溶されたEu2+比率」「Eu濃度」「Dy固溶濃度」「結晶粒径」の6因子を決めれば、ほぼ理論的に求められる値で「照射停止直後に蓄えられた正孔の量」が飽和状態になり、必要材料以上の材料を使用しても「照射停止直後に蓄えられた正孔の量」が大きくならない限界の材料重量の事である。
又、前記必要材料の値は蓄光エネルギー容量に比例し、Eu濃度に逆比例するので、計算例5の場合の「照射停止直後に蓄えられた正孔の量」は計算例1の場合より(4189gr/m2÷132gr/m2)×(0.09%÷0.3%)=9.5倍大きい事になる。即ち、蓄光エネルギー容量が9.5倍大きくなったことになる。
又、計算例5の照射時間に関して、一般的な蓄光材の場合は蓄光エネルギー容量が小さいため照射時間は30分程度で蓄光エネルギーが飽和するので充分であるが、計算例5の様に蓄光エネルギー容量が大きくなった場合には、蓄光エネルギーを飽和させるのに3時間程度必要となり、現状のJIS規格で規定された以上の照射時間が必要になるので要注意である。但し太陽が完全に沈む3時間前から太陽光エネルギーを吸収すれば良いだけなので実用上では何ら問題は無い。
最後に計算例6として前記計算例5に於いてDy固溶濃度を0.45%から0.60%に変更して計算すると、1h後の残光輝度が17942mcd/m2、10h後の残光輝度が2429mcd/m2となり、Dy固溶量を大きく出来れば1h後の残光輝度は少し小さくなるが、10h後の残光輝度は非常に大きくなる事が判った。
以上の結果よりDy3+トラップから溢れ出た正孔1個の1秒間当たりの再結合確率の方が、Dy3+トラップに捕獲された正孔1個の1秒間当たりの再結合確率より260倍前後大きくなる。更に 屋外の強い照射光を吸収すると、1秒間に発生〜再結合(消失)〜発生〜再結合(消失)を繰り返す正孔の数S1が増えるので、S1はDy3+トラップに捕獲された正孔の数S2と少なくとも同等レベル以上となる。ここでS1=S2=Sとして計算するとDy3+トラップに捕獲された正孔が1秒間に消費される数がS2×1/260=S×1/260となるのに対し、Dy3+トラップから溢れ出た正孔が1秒間に消費される数はS1−S2×1/260=S×(1−1/260)となり、照射光エネルギーの99.6%(=1−1/260)をDy3+トラップから溢れ出た大量の正孔が光消費するという激しい発光現象を起こし、最終的に 蓄光エネルギーとして利用できる照射光エネルギーが僅か0.4%(=1/260)となり「蓄えられる正孔」が非常に少なくなる訳である。
即ち Eu濃度をDy固溶濃度以下にした材料は、Dy3+トラップから溢れ出る正孔が全く発生しないため100%蓄光材といえるが、Eu濃度を1.0%・Dy濃度を1.0%とした材料に屋外の強い照射光を照射すると、発光材比率が99.6%で蓄光材比率が0.4%の混合材料になると見なされる。
尚、照射光を一定時間照射後に照射停止するとDy3+トラップから溢れ出た大量の正孔は一気に消費され、99.6%の発光材としての機能を失い、結果 激しい発光現象を終了し、その後Dy3+トラップに捕獲された「蓄えられた正孔」が1秒間に1/260の確率で脱出し、脱出した正孔が励起電子と再結合し、再結合しなかった正孔が再びDy3+トラップに再捕獲されるという現象を繰り返す事で徐々に消費され、0.4%の蓄光材としての機能を発揮して行く事になる。
ここで注意すべき点は、1秒間に1/260の確率で脱出するという事は、逆にいうと260秒という短い時間内にDy3+トラップに捕獲された全ての正孔が脱出するという事であり、脱出した正孔がDy3+トラップに再捕獲されなければ蓄光現象は僅か260秒(4分20秒)で終了するという事である。従って1秒間当たり1/260という確率は決して小さ過ぎる数値でないと断言できる。
尚、1/260という値は温度条件22℃での値であり、東京の年間平均温度である15℃を温度条件にすると1/350前後まで更に小さくなると考えられる。
又 発光材の比率は、Eu添加濃度をDy固溶濃度より大きくすればする程大きな比率となり、照射光強度を大きくすればする程大きな比率となる。例えば Eu添加濃度を1%から5%に増やすと、1秒間に発生〜再結合〜発生〜再結合を繰り返す正孔の数S1が5倍以上に増えS1=5*S2+αとなるため、発光材の比率が99.9%(=1−1/260*1/5)以上に増える事になる。
次に二つ目の原因について説明する。Eu濃度を1.0%と増やすとDy/Eu比率=1.0と同じ状況になるため、Dy3+トラップに捕獲された「蓄えられた正孔」が1秒間に1/260の確率で脱出し、脱出した正孔が再びDy3+トラップに再捕獲される確率が非常に低くなり、結果「蓄えられた正孔」の消費速度が非常に早くなるためである。
最後に三つ目の原因について説明する。Eu濃度を1.0%に増やすと、励起電子の回遊速度が例えばEu濃度を0.3%にした場合の(1.0/0.3)=1371倍速くなるため、3価のEuに存在する励起電子の比率がEu濃度を0.3%にした場合より大きくなり、結果 発光効率が悪くなると共に正孔の消費速度も早くなるためである。この時、発光効率の差は照射停止直後では大きくないが、照射停止後の時間が経過し励起電子量が少なくなるに従って大きくなるので、照射停止から長時間経過した10h後の発光効率は非常に悪くなる。
尚、量子効率は内部量子効率と外部量子効率に分けられ、前記発光効率は外部量子効率の一つで「蓄えられたエネルギー」を光に変換する効率の事で、光取り出し効率は変換された光を蓄光製品の外部に取り出す効率の事である。
以上の結果で判る様に、添加するEu濃度を1%以上にすると「蓄えられた正孔」の量が一般的な蓄光材の1/260倍前後に激減し、更に「蓄えられた正孔」の消費速度が非常に速くなるため「10h後に消費されずに残った正孔」の量が一般的な蓄光材の1/500〜1/1000倍前後に激減すると共に、更に「10h後に消費されずに残った正孔」の発光効率も一般的な蓄光材よりかなり悪くなるため、照射停止10h後の残光輝度が5mcd/m2〜20mcd/m2から0.1mcd/m2以下になると考えられる。
即ち、添加するEu濃度を1%以上にすると、賦活助剤を添加しても添加しなく
ても、僅かに蓄光機能を有するが実質的に蓄光材として全く使用できない発光材しか作製できず、10h後の残光輝度が大きな蓄光材を作製するためには、Eu濃度を0.3%以下にし、且つ Dy/Eu比率を大きくする事が必須要件となる。
従って、本発明では、2回目の加熱処理工程でEu濃度を0.3%以下に薄める目的で母材を追加し、真空加熱炉で加熱処理する事とした。
二つ目の問題点は、Eu金属材料等を酸化させる物質として「HO」「O」以外にも「B」等の酸化物フラックス剤が存在するという点である。特にEu金属材料は酸化され易い材料であるので要注意である。「B」はフラックス剤として結晶粒径を大きくするために大量に添加されている蓄光原料の一つである。フラックス剤の役割は液体化したフラックス剤を通して、物質の移動が活発になり結晶の成長を促進させる事であり、低い温度で液体化し易いフラックス剤として「B」が昔から用いられている。フラックス剤として「B」を使用すると、「B」の融点である480℃以上の温度になると液体化した「B」が拡がり、結果として、まだ母材結晶内に溶け込んでいないEu金属材料と接触し、Eu+1/3B→EuO+2/3B、或いは Eu+1/2B→1/2Eu+1/2Bの反応式でEu金属が激しく酸化され、時間の経過と共にEu金属微細粒子の内部まで酸化されていくので、完璧な対策とならない事である。上記トラブルの対策としては融点が低く、且つ非酸化物で、且つ蓄光性能に悪影響を及ぼさないという理想的なフラックス剤を使用すれば良いが、現時点で前記の様な理想的なフラックス剤が見つかっていないのが現状である。
尚、Eu金属がSrAl母材結晶中に固溶すると、SrAl母材結晶中のOと反応しEuOに変化する。
従って、本発明では、1回目の加熱処理工程で添加した賦活剤がフラックス剤で酸化されるのを防ぐため、フラックス剤の添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に0.1以下(0.1%以下)に小さくすると共に、2回目の加熱処理工程ではSrAl母材結晶中に固溶したEuOがH2O、或いはO2で酸化されるのを防ぐため、フラックス剤の添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に3.0以上(3%以上)に大きくする事とした。
一旦、SrAl結晶中に溶け込んでEu2+(2価のEu)になったEuOはB、或いはHBOにより酸化されにくいため、前記蓄光材の作製工程でB、或いはHBOの添加量を増やしても問題なく、例えばBの添加量を増やすと「B」の融点である480℃以上の温度になると液体化した「B」がSrAl結晶表面を覆い SrAl結晶中に溶け込んだEu2+(2価のEu)が「HO」「O」にアタックされるのを防ぐ事が出来る。又、Bの添加量を増やすと短時間の加熱処理で、結晶粒径を大きく出来る効果も発生する。
前記1回目の加熱処理工程、及び、2回目の加熱処理工程に使用する加熱炉の組み合わせとしては「真空加熱炉+真空加熱炉」、「真空加熱炉+大気加熱炉(トンネル式大気加熱炉またはバッチ式大気加熱炉)」、「大気加熱炉(トンネル式大気加熱炉またはバッチ式大気加熱炉)+大気加熱炉(トンネル式大気加熱炉またはバッチ式大気加熱炉)」、「大気加熱炉(トンネル式大気加熱炉またはバッチ式大気加熱炉)+真空加熱炉」の4タイプが考えられる。
本発明では、「トンネル式大気加熱炉(バッチ式大気加熱炉)+真空加熱炉」を選択した。その理由を以下に述べる。
まず真空加熱炉、トンネル式大気加熱炉、バッチ式大気加熱炉の3タイプの特徴を述べると、真空加熱炉の方が、坩堝内で大量に発生したHOや坩堝内のOを真空ポンプの働きで坩堝外に排出出来、且つ トンネル式大気加熱炉やバッチ式大気加熱炉より急冷し易い構造なので性能的に優位である。
一方、トンネル式大気加熱炉を使用すると、連続生産が可能なため真空加熱炉に比べて量産性に優れ、バッチ式大気加熱炉を使用すると、真空加熱炉に比べて1台当たりの処理能力が高く価格も安くなるという特徴を持つ。
以上の3タイプの特徴を考慮して、本発明では1回目の加熱処理工程では量産性を優先しトンネル式大気加熱炉(バッチ式大気加熱炉)を採用し、2回目の加熱処理工程では性能を優先し真空加熱炉を採用した。
実施例1
以下に本発明の実施例1に関して説明する。
まず、1回目の加熱処理工程時に使用する母材としては0.99SrCO+Alの混合材料を電気式加熱装置で加熱したSr0.99Alを使用し、2回目の加熱処理工程時に使用する母材としても0.99SrCO+Alの混合材料を電気式加熱装置で加熱したSr0.99Alを使用した。
次に、1回目の加熱処理工程中の材料組成としては、前記母材に賦活剤としてEu金属材料を1%添加したSr0.99AlEu0.01とした。
尚、1回目の加熱処理工程中の賦活助剤及びフラックス剤の添加量は零とした。最後に、2回目の加熱処理工程中の材料組成としては、Sr0.99AlEu0.0025Dy0.005となる様にDy及び母材を添加し、フラックス剤はBを使用し、添加量は10%とした。
前記Eu金属材料の作製方法に関しては、Eu+2.5Cの材料を混合し、前記混合材料を坩堝に入れカーボン炉で1430℃×1.5h加熱し、更に加熱後材料を取り出し、前記加熱後材料+1.0Cの材料を粉砕〜混合し、前記混合材料を坩堝に入れカーボン炉で1300℃×1.5h加熱し、更に加熱後材料を取り出し、前記加熱後材料+1.0Cの材料を粉砕〜混合し、前記混合材料を坩堝に入れカーボン炉で1300℃×1.5h加熱する手順でEu金属材料を作製した。
次に、1回目の加熱処理工程中の材料組成としては、前記母材に賦活剤としてEu金属材料を1%添加したSr0.99AlEu0.01とした。
賦活剤としてEu金属を使用し、母材としてSr0.99Alを使用し、前記2つの発光原料を攪拌混合させた後、前記混合材料700grを内径Φ71mm×深さ130mmの小型坩堝内に充填し、その後蓋を閉め、更に前記小型坩堝を内径Φ92mm×深さ170mmの中型坩堝内に収め、前記小型坩堝と前記中型坩堝の隙間に活性炭200grを充填し、その後蓋を閉め、その後図4に示すトンネル式大気加熱炉で1500℃×10時間加熱処理した結果、SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を大幅に減らす事が出来、結果、発光効率が高い発光材料を作製する事が出来た。
トンネル式大気加熱炉は、図4に示すように、トンネル8内をコンベアベルト9によって二重坩堝10が搬送される。二重坩堝10は前記したように発光原料を充填した小型坩堝10aを中型坩堝10b内に収め、小型坩堝10aと中型坩堝10bの間に活性炭11を充填している。
上記の一回目の加熱処理では、トンネル式大気加熱炉の代わりに、図5に示すバッチ式大気加熱炉を用いてもよい。このバッチ式大気加熱炉は断熱材からなる本体12の内側面にヒータ13が配置され、前記同様の二重坩堝10が収納される。
最後に、2回目の加熱処理工程中の材料組成としては、Sr0.99AlEu0.0025Dy0.005となる様にDy及び母材及びフラックス剤を添加し、フラックス剤としてはBを使用し、添加量は10%とした。
前記1回目の加熱処理工程で作製した発光材料をボールミルで粉砕し5ミクロン前後に微細化した後、前記微細化発光材の3倍の母材を添加すると共にDy及びBを添加し、前記4つの蓄光原料を攪拌混合させた後、図6に示す真空加熱炉にて1630℃×10時間加熱(2回目のの加熱処理)した。
真空加熱炉は、本体1の内側に加熱室2が設けられ、本体中央部に蓄光原料を充填した坩堝3が載置され、この坩堝を囲むように筒状のW(タングステン)ヒータ4が加熱室2内に配置され、その外側及び加熱室の天井部にW(タングステン)からなる反熱板5が設けられ、更に天井部には真空ポンプ6につながる配管7が開口している。
2回目の加熱処理の結果、結晶粒径が40ミクロン前後の蓄光材を作製する事が出来た。前記蓄光材を使用したサンプルを作製し、キセノンランプ光源で照射した結果、10hの残光輝度が140mcd/mと大きくなった。
実施例2
以下に本発明の実施例2に関して説明する。
まず、1回目の加熱処理工程時に使用する母材としては0.9SrCO+Alの混合材料を電気式加熱装置で加熱したSr0.9Alを使用し、2回目の加熱処理工程時に使用する母材としては0.9915SrCO+Alの混合材料を電気式加熱装置で加熱したSr0.9915Alを使用した。
次に、1回目の加熱処理工程中の材料組成としては、前記母材に賦活剤としてEu金属材料を10%添加したSr0.9AlEu0.1とした。
尚、1回目の加熱処理工程中の賦活助剤及びフラックス剤の添加量は零とした。
最後に、2回目の加熱処理工程中の材料組成としては、Sr0.9915AlEu0.001Dy0.005となる様にDy及び母材を添加し、フラックス剤はBを使用し、添加量は10%とした。
前記Eu金属材料の作製方法に関しては、Eu+2.5Cの材料を混合し、前記混合材料を坩堝に入れカーボン炉で1430℃×1.5h加熱し、更に加熱後材料を取り出し、前記加熱後材料+1.0Cの材料を粉砕〜混合し、前記混合材料を坩堝に入れカーボン炉で1300℃×1.5h加熱し、更に加熱後材料を取り出し、前記加熱後材料+1.0Cの材料を粉砕〜混合し、前記混合材料を坩堝に入れカーボン炉で1300℃×1.5h加熱する手順でEu金属材料を作製した。
次に、1回目の加熱処理工程中の材料組成としては、前記母材は賦活剤としてEu金属材料を10%添加したSr0.9AlEu0.1とした。
賦活剤としてEu金属を使用し、母材としてSr0.9Alを使用し、前記2つの発光原料を攪拌混合させた後、前記混合材料700grを内径Φ71mm×深さ130mmの小型坩堝内に充填し、その後蓋を閉め、更に前記小型坩堝を内径Φ92mm×深さ170mmの中型坩堝内に収め、前記小型坩堝と前記中型坩堝の隙間に活性炭200grを充填し、その後蓋を閉め、その後図4に示すトンネル式大気加熱炉で1500℃×10時間加熱処理した結果、SrAlの結晶母体に固溶されたEu3+(3価のEu)の比率を大幅に減らす事が出来、結果、発光効率が非常に高い発光材料を作製する事が出来た。
最後に、2回目の加熱工程中の材料組成としては、Sr0.9915AlEu0.001Dy0.005となる様にDy及び母材及びフラックス剤を添加し、フラックス剤としてはBを使用し、添加量は10%とした。
前記1回目の加熱工程で作製した発光材料をボールミルで粉砕し5ミクロン前後に微細化した後、前記微細化発光材の99倍の母材を添加すると共にDy及びBを添加し、前記4つの蓄光原料を攪拌混合させた後、図6に示す真空加熱炉にて1630℃×10時間加熱(2回目の加熱処理)した。
2回目の加熱処理の結果、結晶粒径が40ミクロン前後の蓄光材を作製する事が出来た。前記蓄光材を使用したサンプルを作製し、キセノンランプ光源で照射した結果、10hの残光輝度が1080mcd/mと飛躍的に大きくなった。
実施例2の結果で分かる様に、1回目の加熱処理工程中の材料組成としてEu金属材料を10%添加した場合は、10hの残光輝度が1080mcd/mと飛躍的に大きく出来るだけでなく、2回目の加熱処理工程で使用する発光材の使用重量比率が1/100倍と減るので、例えば100Kgの蓄光材を作製するのに必要な1回目の加熱処理工程の実施回数を大幅に減らす事が出来 結果 生産性も大幅に向上出来る事になる。
1…真空加熱炉の本体、2…加熱室、3…坩堝、4…ヒータ、5…反熱板、6…真空ポンプ、7…配管、8…トンネル、9…コンベアベルト、10…二重坩堝、10a…小型坩堝、10b…中型坩堝、11…活性炭、12…バッチ式大気加熱炉の本体、13…ヒータ。

Claims (5)

  1. Euを加熱還元したEuO材料、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を作製する工程、SrCOとAlの混合材料を事前加熱してSrAl材料を作製する工程、発光中心となる賦活剤として前記EuO材料、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を使用し、賦活助剤としてDyを使用し、母材としてSrCOとAlの混合材料を事前加熱する事で作製したSrAl材料を使用し、フラックス剤としてB、或いはHBOを使用し加熱処理する蓄光材の製造方法において、
    加熱処理を2回に分け、1回目の加熱処理工程で賦活剤としてのEu添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に1.0以上にした混合材料を大気加熱炉で加熱処理する事で発光材を一旦作製し、2回目の加熱処理工程で前記発光材を粉砕すると共に、前記粉砕発光材中のEu添加モル濃度を薄める目的で母材を追加添加し、真空加熱炉で加熱処理する事で蓄光材にする事を特徴とする蓄光材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の蓄光材の製造方法において、前記賦活助剤に関しては、2回目の加熱処理工程において投入することを特徴とする蓄光材の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の蓄光材の製造方法において、2回目の加熱処理工程で前記粉砕発光材の3倍以上の母材を追加添加し、真空加熱炉で加熱処理する事でEu添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に0.3以下の蓄光材にする事を特徴とする蓄光材の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の蓄光材の製造方法において、大気加熱炉での加熱処理工程では、前記混合原料を小型坩堝内に充填し、その後蓋を閉め、更に、前記小型坩堝を中型坩堝内に収め、前記小型坩堝と前記中型坩堝の隙間に活性炭、或いはカーボン粉末を充填し、その後蓋を閉めた二重坩堝を用いる事を特徴とする蓄光材の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の蓄光材の製造方法において、1回目の加熱処理工程で添加した賦活剤がフラックス剤で酸化されるのを防ぐため、フラックス剤の添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に0.1以下にすると共に、2回目の加熱処理工程ではSrAl母材結晶中に固溶したEuOがH2O、或いはO2で酸化されるのを防ぐため、フラックス剤の添加モル量をAlの添加モル量を100とした時に3.0以上にする事を特徴とする蓄光材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022168704A1 (ja) * 2021-02-05 2022-08-11 住友化学株式会社 蛍光体の製造方法及び蛍光体
WO2022168705A1 (ja) * 2021-02-05 2022-08-11 住友化学株式会社 蛍光体及び蛍光体の製造方法

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