JP2021166314A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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直哉 杠
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Abstract

【課題】量産性に優れるとともに、良好な発光特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を実現する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子(100)において、正孔輸送層(22)は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂硬化物により形成されている。また、正孔輸送層(22)の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvは、いずれも14nm以下である。これにより、量産性に優れ、かつ高い発光効率を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が実現される。
【選択図】図3

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、発光装置、および有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層を形成する方法として、真空蒸着法や、スピンコート、インクジェット等による塗布法が広く用いられている。このうち、塗布法は、量産性に優れ、工程管理が容易であるという利点を有している。
塗布法は、有機薄膜の形成材料を溶媒に溶解させて得られた溶液を下地となる有機薄膜上に塗布する工程を有する。この工程において、塗布の下地となる有機薄膜の一部が上記溶媒に溶解すると、設計どおりの層構成が得られない。
このため、有機薄膜を架橋樹脂材料で構成し、耐溶剤性を高めることが試みられてきた。非特許文献1は、そのような技術を開示するものである。非特許文献1には、ジアミン誘導体からなる架橋性樹脂と光重合開始剤とを溶解させた溶液を塗布した後、光照射により樹脂を反応させて正孔輸送層を形成することが記載されている。そして、発光材料を含む有機薄膜は、このように形成された正孔輸送層上に塗布法により形成される。
しかしながら、非特許文献1に記載された技術を用いて正孔輸送層を形成する場合、有機エレクトロルミネッセンス素子として十分な性能が得られないことがあった。例えば特許文献1には、非特許文献1の技術により重合性化合物を重合させて有機層を形成する場合において駆動寿命が短くなるという課題があると記載されている。特許文献1に記載の技術は、このような課題を解決するために、重合性化合物を重合して形成される正孔輸送層と、該正孔輸送層に隣接して設けられる、重合反応開始剤を含有する正孔注入層と、を備えるというものである。
特開2008−227483号公報
Advanced Materials 2006, 18, 948-954.
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、その発光効率を向上させることが重要である。一方で、量産性に優れた構造の実現も求められる。しかしながら、非特許文献1および特許文献1のいずれによっても、量産性に優れるとともに、良好な発光特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することは困難であった。
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
請求項1に記載の発明によれば、陽極と、
前記陽極上に設けられた有機層と、
前記有機層上に設けられた発光層と、
前記発光層上に設けられた陰極と、
を備え、
前記有機層は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂硬化物により形成され、
前記有機層の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが、いずれも14nm以下である有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面図である。 図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子を含む発光デバイスを示す断面図である。 図1に示す正孔輸送層の形成方法を説明するフロー図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本明細書において、ある層の「上に」設けられているとは、当該層に接するように設けられている場合と、他の層を介して当該層の上方に設けられている場合の双方を含む。
図1は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す断面図である。なお、図1は有機エレクトロルミネッセンス素子100を示すための模式図であり、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の構成は図1に示すものに限られない。
図1(a)は正孔注入層を含まない場合を、図1(b)は正孔注入層21を含む場合を、それぞれ示している。本実施形態においては、特に図1(a)に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100について説明する。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100は、陽極20上に、正孔輸送層22(有機層)、発光層24、電子輸送層26、電子注入層28および陰極30が順に形成されている。正孔輸送層22は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂組成物により形成されている。正孔輸送層22の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvは、いずれも14nm以下である。
以下、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の構成について詳細に説明する。
有機エレクトロルミネッセンス素子100は、基板10上に設けられている。
基板10を構成する材料としては、石英、ガラス、金属または金属酸化物、樹脂等が挙げられる。基板10を樹脂で構成する場合、樹脂材料としては、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、またはポリスルホン等が挙げられる。これらの樹脂材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の組み合わせを用いてもよい。
基板10の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上50mm以下、好ましくは50μm以上3mm以下である。基板10の厚さを当該範囲内とすることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の軽量化を図りつつ、十分な機械的強度を得ることができる。
図1(a)に示すように、陽極20は、基板10上に設けられている。
陽極20を構成する材料は、陰極30よりも仕事関数の大きな導電性材料とすることが好ましい。
陽極20は、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、もしくは白金等の金属材料、インジウム、亜鉛、錫、もしくはこれらの合金等の金属材料を酸化した金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、またはポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3−メチルチオフェン)、もしくはPEDOT:PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate))等の導電性高分子等により構成される。この中でも、インジウム錫酸化物(ITO:Indium−Tin−Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium−Zinc−Oxide)、酸化亜鉛、または酸化錫が特に好ましい。これらの材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の組み合わせを用いてもよい。なお、陽極20の材料は、例えば陽極20に求められる透明性により適宜選択することができる。
発光した光が陽極20側から取り出される構成とする場合、陽極20は発光した光の波長に対して透明または半透明である。この場合、陽極20における発光波長の光の透過率は、例えば60%以上であり、好ましくは80%以上である。
なお、陽極20を透明または半透明とする場合、陽極20の膜厚は、例えば5nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上500nm以下である。これにより、透明性を確保しつつ、膜厚が薄くなることに起因した電気抵抗の増大を抑制できる。
正孔輸送層22は、陽極20上に設けられている。
本実施形態において、正孔輸送層22は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂組成物により形成されている。具体的には、上記重合性化合物(a)および重合開始剤(b)の両方を含有する層形成材料を塗布した後、上記成分(a)および(b)を反応させて正孔輸送層22を形成している。
上述したように、重合性化合物(a)は、分子構造中に開環重合性基を有する。開環重合性基とは、カチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行するヘテロ環構造を有する基である。重合様式としては、カチオンまたはアニオン開環重合が好ましい。開環重合性基を構成するヘテロ環としては、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環、カーボネート環、オキサゾリン環、エピスルフィド環等が挙げられる。このうち、エポキシ環、オキセタン環が好ましく用いられる。このように、開環重合性基としてエポキシ基またはオキセタニル基が選択される場合、耐溶剤性に優れた正孔輸送層22を形成することができる。
重合性化合物(a)は、開環重合性基を有するため、架橋反応により三次元網目構造の樹脂を形成する。このため、有機溶媒に不溶な化学的安定性に優れる正孔輸送層22を形成することができる。
開環重合性基は、重合開始剤(b)により開環し、これにより、重合性化合物(a)の重合が進行し、三次元網目構造の樹脂硬化物を形成する。こうした重合様式を採用しているため、重合反応時に水が発生せず、重合反応に起因した発光効率の低下を抑制することが可能となる。
重合性化合物(a)一分子中の開環重合性基の数は、2以上とすることが好ましい。すなわち、重合性化合物(a)は、2官能または多官能(3官能以上)の重合性化合物を含むものとすることが好ましい。こうすることにより、架橋密度が高く、耐溶剤性等の化学的安定性に特に優れた正孔輸送層22を形成することができる。
ここで、2官能または多官能(3官能以上)の重合性化合物を用いた場合、一般に、樹脂硬化物の化学的、機械的物性が向上する一方、重合性化合物(a)の反応性が高まり、層形成材料の可使時間が短くなる傾向がある。このため、架橋密度の向上と反応性とのバランスをとる観点から、重合性化合物(a)として種々の化合物を混合して用いることもできる。例えば、
単官能と2官能の重合性化合物の混合物、
単官能と多官能の重合性化合物の混合物、
2官能と多官能の重合性化合物の混合物、
単官能、2官能、多官能の重合性化合物の混合物
のいずれも、使用可能である。
なお、正孔輸送層22を構成する樹脂材料として、上述の重合性化合物(a)以外の重合性化合物を併用してもかまわない。
重合性化合物(a)としては、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、2,4,6−トリフェニルピリジン誘導体、C60誘導体、オリゴチオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体誘導体等が挙げられる。これらの中でも、電気化学的安定性および電荷輸送性が高い、トリアリールアミン誘導体が好ましい。すなわち、重合性化合物(a)は、トリアリールアミン構造を含む化合物であることが好ましい。
重合性化合物(a)としては、以下に示す、繰り返し単位を有しない化合物を用いることができる。
Figure 2021166314
また、重合性化合物(a)としては、以下に示す、繰り返し単位を有する重合性オリゴマーを用いることができる。
Figure 2021166314
なお、重合性化合物(a)としては、上記のいずれかから選択される一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
重合性化合物(a)が繰り返し単位を有さない化合物である場合、重合性化合物(a)の重量平均分子量は、例えば300以上5000以下であり、好ましくは500以上2500以下である。これにより、十分な電荷輸送性を実現しつつ、溶媒に対する溶解性を確保することができる。
また、重合性化合物(a)が重合性オリゴマーである場合、重合性化合物(a)の重量平均分子量は、例えば500以上200万以下であり、好ましくは2000以上50万以下であり、さらに好ましくは4000以上20万以下である。上記下限値以上とすることにより、正孔輸送層22の成膜性を良好とすることができる。また、ガラス転移温度、融点、および気化温度の低下を抑制し、耐熱性を確保することもできる。一方、上記上限値以下とすることにより、重合性化合物(a)の精製を容易とすることができる。
なお、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて測定されるポリスチレン等の標準ポリマーとの比較による換算値から得られる。
本実施形態における重合開始材(b)としては、例えばアニオンおよびカチオンを生成する化合物が挙げられる。カチオンは、重合性化合物(a)の重合反応に寄与した後に定常状態へ変換し、正孔輸送層の一部として電荷輸送を行う。このため、重合開始材(b)としてアニオンおよびカチオンを生成する化合物を使用することにより、重合開始材(b)としての機能を有しつつ、正孔輸送層22の正孔輸送性を向上させることができる。
アニオンおよびカチオンを生成する化合物としては、有機オニウム塩が挙げられる。本実施形態においては、以下の式(1)〜(3)で表される有機オニウム塩が好適に用いられる。
Figure 2021166314
Figure 2021166314
Figure 2021166314
上記式(1)〜(3)中、R11、R21およびR31は、それぞれA、AおよびAと炭素原子で結合する有機基を表す。本実施形態におけるR11、R21、およびR31は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基が、正電荷を非局在化させる観点、および熱的安定性の観点から好ましい。
11、R21、およびR31を構成するアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、または環状のアルキル基等を用いることができる。当該アルキル基の炭素数は、例えば1以上12以下であり、好ましくは1以上6以下である。本実施形態における当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられる。
11、R21、およびR31を構成するアルケニル基の炭素数は、例えば2以上12以下であり、好ましくは2以上6以下である。本実施形態における当該アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、または1−ブテニル基等が挙げられる。
11、R21、およびR31を構成するアルキニル基の炭素数は、例えば2以上12以下であり、好ましくは2以上6以下である。本実施形態における当該アルキニル基としては、エチニル基、またはプロパルギル基等が挙げられる。
11、R21、およびR31を構成する芳香族炭化水素基としては、例えば5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられるものが挙げられる。本実施形態における当該芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、またはフルオレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
また、R11、R21、およびR31を構成する芳香族複素環基としては、例えば5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられるものが挙げられる。本実施形態における当該芳香族複素環基としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、またはアズレン環等に由来の一価の基が挙げられる。
上記式(1)〜(3)中、R12、R22、R23、R32、R33、およびR34は、それぞれ独立に、任意の基を表す。本実施形態におけるR12、R22、R23、R32、R33、およびR34としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、シアノ基、水酸基、チオール基、またはシリル基等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基が、電子受容性および熱的安定性の観点から好ましい。R12、R22、R23、R32、R33、およびR34の分子量は、置換基を含めた値で、例えば1000以下であり、好ましくは500以下である。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、および芳香族複素環基としては、R11、R21、およびR31と同様のものを用いることができる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはアシルアミノ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキルアミノ基は、炭素数が1以上12以下、好ましくは1以上6以下であるアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。本実施形態における当該アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、またはジベンジルアミノ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアリールアミノ基としては、炭素数が3以上25以下、好ましくは4以上15以下の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を1つ以上有するアリールアミノ基が挙げられる。本実施形態における当該アリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、トリルアミノ基、ピリジルアミノ基、またはチエニルアミノ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアシルアミノ基としては、炭素数が2以上25以下、好ましくは2以上15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。本実施形態におけるアシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、またはベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルコキシ基の炭素数は、例えば1以上12以下、好ましくは1以上6以下である。本実施形態におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアリールオキシ基としては、炭素数が3以上25以下、好ましくは4以上15以下の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。本実施形態におけるアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、例えばチエニルオキシ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアシル基の炭素数は、1以上25以下であり、好ましくは1以上15以下である。本実施形態における当該アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、またはベンゾイル基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルコキシカルボニル基の炭素数は、2以上10以下であり、好ましくは2以上7以下である。本実施形態における当該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、またはエトキシカルボニル基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアリールオキシカルボニル基としては、炭素数が3以上25以下、好ましくは4以上15以下の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を有するものが挙げられる。本実施形態に係るアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、またはピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキルカルボニルオキシ基の炭素数は、2以上10以下であり、好ましくは2以上7以下である。本実施形態におけるアルキルカルボニルオキシ基としては、アセトキシ基、またはトリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキルチオ基の炭素数は、1以上12以下であり、好ましくは1以上6以下である。本実施形態に係るアルキルチオ基としては、メチルチオ基、またはエチルチオ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアリールチオ基の炭素数は、3以上25以下であり、好ましくは4以上14以下である。本実施形態における当該アリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、またはピリジルチオ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基としては、メシル基、またはトシル基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するスルホニルオキシ基としては、メシルオキシ基、またはトシルオキシ基等が挙げられる。
12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するシリル基としては、トリメチルシリル基、またはトリフェニルシリル基など挙げられる。
上記式(1)〜(3)中、Aはヨウ素原子、臭素原子、または塩素原子等であり、Aはテルル原子、セレン原子、または硫黄原子等であり、Aはアンチモン原子、ヒ素原子、またはリン原子等である。
上記式(1)〜(3)中、Z n1−、Z n2−、およびZ n3−は、それぞれ以下の式(4)、(5)および(6)により表される錯体イオンである。
Figure 2021166314
Figure 2021166314
Figure 2021166314
式(4)および(6)中、EおよびEは、それぞれ独立に、ホウ素原子、アルミニウム原子、またはガリウム原子等である。また、式(5)中、Eは、リン原子、ヒ素原子、またはアンチモン原子等である。
上記式(4)および(5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、または臭素原子等のハロゲン原子を表す。
上記式(6)中、Ar61〜Ar64は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。本実施形態におけるAr61〜Ar64としては、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の1価の基等、R11、R21、およびR31と同様のものを表す。なお、Ar61〜Ar64は、電子吸引性の基等を含む任意の基により置換されていてもよい。
本実施形態における有機オニウム塩を構成するZ n1−、Z n2−、およびZ n3−としては、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2021166314
なお、本実施形態における有機オニウム塩としては、有機ヨードニウム塩、または有機スルホニウム塩等を好適に用いることができる。
本実施形態においては、重合開始材(b)として、以下の式(7)に示す有機オニウム塩を特に好適に使用することができる。下記式(7)の重合開始材(b)を使用することにより、形成される正孔輸送層22の膜質を良好なものとすることができる。
Figure 2021166314
また、重合開始材(b)としては、例えばアセチルアセトナートを二座配位子として有する金属錯体を使用することもできる。この場合、重合性化合物(a)の重合を促進させつつ、良好な輝度および発光寿命を有する有機電解発光素子を実現することが可能となる。
当該金属錯体を構成する金属としては、モリブデン、チタン、またはバナジウム等が挙げられる。また、アセチルアセトナートを構成するメチル基は、他のアルキル基であってもよい。他のアルキル基としては、tert−ブチル基等が挙げられる。これによりバルキー性を上げ、溶媒への溶解性を向上させることができる。
本実施形態においては、以下に示す金属錯体を重合開始材(b)として使用することができる。
Figure 2021166314
なお、重合開始材(b)としては、上記のいずれかから選択される一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
重合開始材(b)の分子量は、例えば100以上10000以下であり、好ましくは200以上3000以下である。これにより、塗布膜形成時における揮発性を抑えつつ、溶媒への溶解性を十分に確保することができる。
本実施形態において、正孔輸送層22の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvのいずれもが、14nm以下であり、好ましくは10nm以下である。ここで、最大山高さRpとは、JISB0601により規定された、基準長さにおける輪郭曲線の山高さの最大値である。山高さとは、平均線から山頂までの高さを意味する。また、最大谷深さRvとは、JISB0601により規定された、基準長さにおける輪郭曲線の谷深さの最大値である。谷深さとは、平均線から谷底までの深さを意味する。
正孔輸送層22の上面の最大山高さRpおよび最大谷深さRvは、例えばアルファステップIQ(KLA−Tencor社製)、SEM(Scanning Electron Microscope)、またはAFM(Atomic Force microscope)等の方法を用いて測定することができる。
本発明者は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性(発光効率や発光ムラ等)を向上させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層の上面の平滑性を精密に制御することが重要であることを知見した。かかる知見に基づき、本実施形態では、正孔輸送層22の上面の平滑性を精密に制御している。そして、平滑性を表す指標として、最大山高さRpおよび最大谷深さRvを採用している。これらの指標が有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性を制御する良好な指標となることについては、本発明者の実験により確認されている。
すなわち、本実施形態では、正孔輸送層22の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを上記上限値以下とする。これにより、正孔輸送層22の上面における凹凸を、発光特性へ影響を与えない程度に微小なものとすることができる。したがって、良好な発光特性を実現することが可能となる。
また、正孔輸送層22の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを上記上限値以下とすることにより、正孔輸送層22上に形成される各有機層の上面の凹凸についても、発光特性に影響を与えない程度に微小なものとすることができる。
なお、最大山高さRpおよび最大谷深さRvの下限値は、特に限定されないが、例えば0.1nmである。この場合、正孔輸送層22上に設けられる発光層24との密着性を向上させることができる。
本実施形態においては、図1(b)に示すように、正孔輸送層22と陽極20との間には、正孔注入層21が設けられていてもよい。正孔注入層21としては、例えば正孔伝導準位と陽極20の仕事関数の差が有機層22よりも小さい層が用いられる。これにより、陽極20からの正孔注入を容易にすることができる。
正孔注入層21を構成する材料としては、正孔輸送性を有する化合物を使用することができる。本実施形態における正孔注入層21を構成する材料としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、またはオリゴチオフェン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、非晶質性、溶媒に対する溶解性、および透光性の観点から芳香族アミン化合物を使用することが好ましい。
正孔注入層21を構成する芳香族アミン化合物としては、芳香族三級アミン化合物等が用いられる。これにより、高い正孔輸送性を実現することができる。なお、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物を含む。
また、正孔注入層21は、電子受容性化合物を有していてもよい。電子受容性化合物としては、オニウム塩、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、またはアリールアミンとルイス酸との塩等が挙げられる。これらの電子受容性化合物を含むことにより、正孔注入層21の導電率を向上させることができる。
正孔注入層21の厚さは、例えば1nm以上1000nm以下であり、好ましくは10nm以上500nm以下である。これにより、正孔注入性を確保しつつ、抵抗の低減を図ることができる。
なお、本実施形態において、正孔注入層21が、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂硬化物により形成されていてもよい。この場合、正孔注入層21の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが、いずれも14nm以下となる。
また、この場合、正孔輸送層22は、特に限定されないが、例えば正孔注入層21と同様に上述した重合性化合物(a)と重合開始剤(b)を含む材料により構成される。
図1(a)に示すように、発光層24は、正孔輸送層22上に設けられている。本実施形態において、発光層24は、例えば正孔輸送層22に接するよう設けられる。
本実施形態における発光層24は、発光材料を有する。発光材料としては、蛍光発光材料および燐光発光材料のいずれを用いることもできるが、内部量子効率向上の観点から燐光発光材料を用いてもよい。
燐光発光材料としては、イリジウム、白金、オスミウム、レニウム、金、タングステン、ルテニウム、ハフニウム、ユウロビウム、テルビウム、ロジウム、パラジウム、または銀等から選択される、原子量が100以上200以下である重原子を一種または二種以上含む、燐光性有機金属錯体等が用いられる。
本実施形態では、上述のように、発光層24は、原子量が100以上200以下である重原子により構成される発光材料を含む。これにより、正孔輸送層22内の重合開始材(b)に含まれるカチオンおよびアニオンと、発光層24内の重原子と、の間において重原子効果に起因する反発力が働く。このため、重合開始材(b)を構成するカチオンまたはアニオンが発光層24内に拡散することによって発光層24内の励起子が消失してしまうことを抑制することができる。
本実施形態における発光層24は、例えば正孔輸送性化合物、または電子輸送性化合物を含む。正孔輸送性化合物としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、またはオリゴチオフェン誘導体等の正孔注入層21を構成する材料と同様のものが挙げられる。また、電子輸送性化合物としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(6'−(2',2''−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール、バソフェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、4,4'−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル、またはビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム等が挙げられる。
発光層24の厚さは、例えば5nm以上1000nm以下であり、好ましくは20nm以上100nm以下である。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧を抑えつつ、発光効率および発光寿命を向上させることが可能となる。
図1(a)に示すように、発光層24上には、電子輸送層26が設けられる。電子輸送層26は、例えば電子輸送性を有する化合物により構成される。また、電子輸送層26を構成する材料としては、例えば陽極20から移動してくる正孔が陰極30へ到達することを阻止する機能を有するものを用いることができる。
本実施形態における電子輸送層26を構成する材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム、もしくはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体、またはバソクプロイン等のフェナントロリン誘導体が挙げられる。
なお、電子輸送層26を構成する材料としては、上記のいずれかから選択される一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせてもよい。
電子輸送層26の厚さは、例えば0.5nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上50nm以下である。これにより、陽極20から注入される正孔を十分に抑制できる厚さを確保して発光効率の低下を抑制しつつ、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動効率を向上させることができる。
図1(a)に示すように、電子輸送層26上には、電子注入層28が設けられる。電子注入層28としては、有機エレクトロルミネッセンス素子100における電子注入効率を向上させるため、例えば仕事関数が低い金属、またはその化合物が用いられる。
本実施形態において、電子注入層28を構成する材料としては、リチウム、ナトリウム、もしくはセシウム等のアルカリ金属、バリウム、もしくはカルシウム等のアルカリ土類金属、またはCsF、CsCO、LiO、もしくはLiF等の化合物が挙げられる。これらの材料は、一種を単独で使用してもよく、二種以上の任意の組み合わせで併用してもよい。
また、電子注入層28の厚さは、例えば0.1nm以上5nm以下であり、好ましくは0.5nm以上2nm以下である。
図1(a)に示すように、発光層24上には、陰極30が形成される。本実施形態においては、陰極30は、例えば発光層24上に設けられた電子輸送層26および電子注入層28を介して、発光層24の上方に設けられる。
陰極30としては、例えば陽極20よりも仕事関数の小さな導電性材料が選択される。
本実施形態において、陰極30を構成する材料は、陽極20よりも仕事関数が小さい導電性材料であれば特に限定されない。陰極30は、錫、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、もしくは銀、またはこれらの合金等により構成される。これらの材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の組み合わせを用いてもよい。
なお、陰極30の膜厚は、例えば5nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上500nm以下である。これにより、膜厚を薄くして製造コストの低減を図りつつ、膜厚が薄くなることに起因した電気抵抗の増大を抑制できる。
本実施形態において、陰極30の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvのいずれもが、10nm以下であり、好ましくは6nm以下である。これにより、陰極30の上面における凹凸を、発光効率へ影響を与えない程度に微小なものとすることができる。したがって、発光効率の低下を抑制することが可能となる。
なお、陰極30の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvの下限値は、特に限定されない。しかしながら、例えば0.1nm以上の範囲とすることで、十分に有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率の向上を図ることができる。
図2は、図1(a)に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100を含む発光デバイス200を示す断面図である。なお、図2は発光デバイス200を示すための模式図であり、本実施形態に係る発光デバイス200の構成は図2に示すものに限られない。発光デバイス200は、有機エレクトロルミネッセンス素子100を用いて構成される。本実施形態に係る発光デバイス200は、例えば表示装置、または発光装置として用いることができる。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば金属製またはガラス製の封止缶40により封止されている。封止缶40は、例えば基板10上に設けられている。また、封止缶40は、例えばシール材44により基板10に接着される。このシール材44により、封止缶40内を密閉することができる。また、封止缶40内は、例えば窒素ガス等の不活性ガスが充填されている。これにより、封止缶40内の有機エレクトロルミネッセンス素子100が、酸素により劣化してしまうことを抑制することができる。
封止缶40内には、例えば乾燥剤42が配置される。これにより、封止缶40内に残存した水分により有機エレクトロルミネッセンス素子100の素子特性が劣化してしまうことを抑制できる。
次に、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の製造方法を説明する。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の製造方法は、陽極20上に正孔輸送層22を形成する工程と、正孔輸送層22上に発光層24を形成する工程と、発光層24上に陰極30を形成する工程と、を備える。正孔輸送層22を形成する工程は、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を含む第1溶液と、重合開始剤(b)を含む第2溶液と、を準備する工程と、第1溶液と第2溶液を混合させて塗布液を作製する工程と、塗布液を塗布することにより、塗布膜を形成する工程と、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を開環重合させて塗布膜を硬化させる工程と、を含む。
以下、有機エレクトロルミネッセンス素子100の製造方法について詳細に説明する。
まず、基板10上に陽極20を形成する。陽極20は、スパッタリング法、または真空蒸着法等を用いて形成される。
また、陽極20として金属微粒子、ハロゲン化金属の微粒子、炭素材料の微粒子、金属酸化物の微粒子、または導電性高分子の微粉末等を使用する場合、例えばこれらの材料をバインダー樹脂溶液に分散させて基板10上に塗布することにより陽極20が形成される。さらに、陽極20の材料として導電性高分子を使用する場合、陽極20は、電解重合、または塗布法等を用いて形成される。
次に、陽極20上に、正孔輸送層22を形成する。本実施形態において、正孔輸送層22は、例えば以下のように形成される。
図3は、図1(a)に示す正孔輸送層22の形成方法を説明するフロー図である。
まず、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を含む第1溶液と、重合開始剤(b)を含む第2溶液と、を準備する(S01、S02)。すなわち、第1溶液と第2溶液は、それぞれ別個に準備されることとなる。第1溶液は、第1溶媒中に重合性化合物(a)を溶解して作製される。また、第2溶液は、第2溶媒中に重合開始剤(b)を溶解して作製される。本実施形態においては、第1溶液と第2溶液のいずれを先に作製してもよい。
第1溶液を準備する工程(S01)では、例えば第1溶媒の沸点+30℃以下の温度条件下において、重合性化合物(a)を第1溶媒中に溶解させる。第溶媒として、キシレンを用いる場合、165℃以下の温度条件下で、重合性化合物(a)を第1溶媒中に溶解させる。これにより、第1溶媒が揮発して第1溶液中の固形分濃度が変化してしまうことを抑制することができる。したがって、後述する塗布液の調製が容易となる。
また、第2溶液を準備する工程(S02)においても、例えば第2溶媒の沸点+30℃以下の温度条件下において、重合開始剤(b)を第2溶媒に溶解させる。第2溶媒としてキシレンを用いる場合、165℃以下の温度条件下で、重合開始剤(b)を第2溶媒中に溶解させる。これにより、第2溶媒が揮発して第2溶液中の固形分濃度が変化してしまうことを抑制することができる。したがって、後述する塗布液の調製が容易となる。
本実施形態において、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)は、それぞれ別個に用意された溶媒中に溶解させる。このため、重合性化合物(a)を溶解する工程において、溶媒中に重合開始材(b)が存在しないので、重合性化合物(a)の開環重合が進行することを抑制できる。したがって、溶解温度および溶解時間に関し、プロセスマージンを広くとることができる。
第1溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、またはジメチルスルホキシド等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、ビシクロヘキシル、トリメチルシクロヘキサン、フェンコン、メントン、またはcis−デカリン等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、または1,5−ジメチルテトラリン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸2−フェノキシエチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、4−フルオロ安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、または安息香酸ベンジル等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、もしくはプロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル、または1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2溶媒としては、例えば第1溶媒と同様のものを用いることができる。
なお、第1溶媒と第2溶媒は、互いに異なっていてもよい。この場合、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)の溶媒に対する溶解度を、それぞれ制御することができる。また、第1溶媒と第2溶媒の沸点の差を調整することで、成膜性を向上させることもできる。
本実施形態においては、第1溶液および第2溶液を準備する工程(S01、S02)の後であって、第1溶液と第2溶液を混合させて塗布液を形成する工程(S03)の前において、第1溶液および第2溶液を冷却してもよい。冷却の方法は、自然冷却でもよいし、空冷あるいは冷媒により強制的に冷却してもよい。
本実施形態において、第1溶液と第2溶液は、例えば60℃以下、好ましくは40℃以下まで冷却される。こうすることにより、第1溶液と第2溶液を混合する工程において、重合性化合物(a)の重合の進行をより確実に抑制できる。
次いで、重合性化合物(a)を含む第1溶液と重合開始剤(b)を含む第2溶液を混合して、塗布液を作製する(S03)。この混合工程は、重合性化合物(a)の重合の進行をより確実に抑制する観点から、非加熱とするか、加熱する場合は、例えば60℃以下の加熱条件下で行うことが好ましい。
従来技術においては、重合性化合物(a)と重合開始材(b)の両方を同一溶媒中に溶解させていた。本発明者の検討によれば、このようにした場合、以下のような問題が生じることが明らかになった。
第一に、塗布液の作製段階において、重合開始材(b)の存在下で重合性化合物(a)の開環重合が一定程度進行すると、得られる有機層が可視光領域中に吸収帯を有するようになる。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が損なわれてしまう。
重合性化合物(a)と重合開始材(b)の両方を同一溶媒中に溶解させて塗布液を調整する方法をとった場合、溶解温度を高くし溶解時間を長くすると、重合性化合物(a)の開環重合が進み、塗布液がわずかに着色することがある。この場合、上述したように、得られる有機層が可視光領域中に吸収帯を有することとなる。一方、塗布液が着色するほどではなく、一見、無色のものであっても、重合がある程度進めば、やはり可視光領域中に吸収帯を有することとなる。
第二に、重合性化合物(a)と重合開始材(b)の両方を同一溶媒中に溶解させた塗布液を塗布、乾燥、硬化して有機層を形成すると、nmレベルのサイズの微小な凹凸が生じる。この微小凹凸が発光特性の低下をもたらすため、良好な発光特性を安定的に実現することが困難となる。
これに対し、本実施形態では、上述したように、塗布液の作製段階において重合性化合物(a)と重合開始剤(b)が反応してしまうことを回避することができる。このため、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)を含む塗布液における透明性を維持することができる。この場合、当該塗布液により形成される正孔輸送層22についても、その透明性が確保される。したがって、有機層の変色に起因して有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が低下してしまうことを抑制することが可能となる。
また、上記本実施形態によれば、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)を含む塗布液により形成される正孔輸送層22の上面における凹凸を発光効率に影響を与えない程度に微小なものとすることができる。したがって、有機層上面に形成される凹凸に起因して有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が低下してしまうことを抑制することもできる。
本実施形態によりこのような効果が得られることについては後述する実施例により示す。
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法によれば、上述のように、塗布液が塗布される前に重合性化合物(a)と重合開始剤(b)が反応してしまうことを回避することができる。このため、塗布液が塗布される前に塗布液の粘度が上昇してしまうことを抑制することができる。したがって、例えばインクジェット法により塗布する際に塗布液がノズルにつまってしまうといった不具合が発生することを抑制することもできる。
なお、本実施形態において、第1溶液と第2溶液の混合は、第1溶液と第2溶液の温度を40℃以下に制御しつつ行ってもよい。第1溶液と第2溶液を混合する際の温度条件をこのように制御することによって、混合時に重合性化合物(a)と重合開始剤(b)が反応してしまうことを確実に抑制することが可能となる。
次いで、第1溶液と第2溶液を混合して得られた塗布液を塗布することにより、塗布膜を形成する(S04)。本実施形態において、当該塗布液は、例えば陽極20上に塗布される。塗布液の塗布は、スピンコートまたはインクジェット等により行われる。
本実施形態では、塗布膜を形成する工程(S04)の後であって、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を開環重合させて塗布膜を硬化させる工程の前(S05)において、当該塗布膜を乾燥させることができる。塗布膜の乾燥は、例えば真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下にて行われる。塗布膜を乾燥させることにより、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を重合させる際に、溶媒の極性によって不要な反応が促進されてしまうことを抑制することができる。したがって、塗布膜により形成される有機層の透明性を確保することが可能となる。
次いで、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を重合させて、塗布膜を硬化する(S05)。これにより、正孔輸送層22が形成される。
本実施形態では、例えば塗布膜を加熱することにより、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を重合させる。この際の加熱条件は、例えば200℃以上250℃以下、5分以上60分以下の条件で行われる。本実施形態では、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)が一つの塗布液中に含まれる。このため、上記のような短時間による焼成でも、十分な反応が可能となる。したがって、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造コストを低減することが可能となる。
なお、本実施形態では、塗布膜の硬化に際し、光照射による硬化を行わず、加熱硬化の方式を採用している。このため、重合性化合物(a)のうち正孔を輸送する機能を有する部分が光照射により酸化されてしまうことが抑制される。したがって、塗布膜の硬化工程に起因して有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性低下が抑制される。
本実施形態では、正孔輸送層22を形成する工程の前であって、陽極20を形成する工程の後において、正孔注入層を形成する工程を備えていてもよい。この場合、正孔輸送層22を形成するための塗布液は、正孔注入層上に塗布されることとなる。正孔注入層は、スピンコート、またはインクジェット等の塗布法により陽極20上に形成される。
次に、正孔輸送層22上に発光層24を形成する。
本実施形態において、発光層24は、例えば次のように形成される。まず、発光層24を構成する材料を溶媒に溶解し、塗布液を作製する。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が用いられる。次いで、この塗布液を正孔輸送層22上に塗布して、正孔輸送層22上に塗布膜を形成する。塗布液の塗布は、例えばスピンコートまたはインクジェット等の塗布法により行われる。次いで、この塗布膜を乾燥させる。塗布膜の乾燥は、例えば真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下にて行われる。これにより、発光層24が形成される。
次に、発光層24上に電子輸送層26を形成する。電子輸送層26は、塗布法、または真空蒸着法等により発光層24上に形成される。真空蒸着法を用いる場合、真空蒸着機内に蒸着源を入れ、真空蒸着機内を設定圧力まで減圧した後、蒸着源を加熱して蒸発させることにより電子輸送層26を形成する。これは、陽極20、発光層24および陰極30を真空蒸着法により形成する場合において同様である。
次に、電子輸送層26上に電子注入層28を形成する。電子注入層28は、塗布法、または真空蒸着法等により電子輸送層26上に形成される。
次に、電子注入層28上に陰極30を形成する。陰極30は、真空蒸着法、またはスパッタリング法等により電子注入層28上に形成される。
本実施形態によれば、正孔輸送層22の上面における凹凸を微小な範囲に制御することができる。このため、正孔輸送層22の上に形成される有機層、および陰極30の上面における凹凸についても、微小な範囲に制御されることとなる。したがって、陰極30に形成される凹凸に起因した発光特性の低下を抑制することも可能となる。
このようにして、図1(a)に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100が形成される。
図2に示すように、形成された有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば封止缶40により封止される。本実施形態において、有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気のグローブボックス中で、封止缶40により封止される。このとき、封止缶40中には、乾燥剤42が配置されていてもよい。
次に、本実施形態の作用および効果を説明する。
本実施形態では、正孔輸送層22(有機層)を、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を開環重合させて得られた樹脂硬化物により形成している。このため、正孔輸送層22を、塗布法を用いて形成することができる。したがって、量産性および製造安定性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
一方、このような成分(a)および(b)を用いて正孔輸送層22を形成した場合、期待する程の高い発光特性が得られていないのが現状であった。また、発光特性がばらつくという課題も抱えていた。
本発明者は、この原因について鋭意検討した結果、正孔輸送層22の上面のミクロな平滑性が発光特性に影響を及ぼしていることを見いだした。
塗布法では、重合性化合物(a)および重合開始剤(b)を含む層形成材料を有機溶剤中に溶解させて得られる溶液を、基板上に塗布する。溶液は、塗布工程における作業に問題ない程度に低粘度であるため、塗布直後の表面は平滑である。しかし、有機溶剤が乾燥しつつ樹脂の反応が進行し、さらに、加熱等により架橋を進行させると、有機層の表面に微小な凹凸が生じる。このように、塗布法で形成された薄層の表面は、一見、十分な平滑性を有しているようにみえるが、nmレベルの微小な凹凸が存在する。従来、こうした微小凹凸の存在は知られておらず、また問題にもされていなかった。本発明者は、このような微小凹凸が発光特性の低下をもたらす原因であることを究明した。
有機層上面に形成された微小凹凸が発光特性の低下をもたらす理由は必ずしも明らかではないが、次のように推測される。すなわち、有機層上面に微小凹凸が形成された場合、発光面内に電界強度分布が生じてしまう。この電界強度分布に起因して発光むらが生じると、発光特性が低下してしまう。また、有機層上面に形成された微小凹凸により、発光層から発生する光が散乱してしまい、これにより、発光特性が低下する。
本実施形態では、このような知見に基づき、正孔輸送層22(有機層)の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを、いずれも14nm以下としている。これにより、十分に良好な発光特性を安定的に実現している。
このように、本実施形態によれば、量産性および製造安定性に優れるとともに、十分に良好な発光特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
なお、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の構成は図1(a)に示すものに限られない。例えば、図1(b)に示すように、陽極20と正孔輸送層22との間に正孔注入層21が設けられていてもよい。
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
透明なガラス基板上に厚さ110nmのITO(Indium−Tin−Oxide)からなる陽極を形成した。陽極は、真空蒸着法により形成した。
次に、この陽極上に、正孔輸送層を形成した。正孔輸送層は次の方法により形成した。
まず、下記式(8)に示す重合性化合物(a)を含む第1溶液を作製した。第1溶液は、キシレン溶媒中に重合性化合物(a)を、160℃、10分の条件下で溶解させて得た。次いで、作製した第1溶液を室温(25℃。以下、特にことわりがない限り「室温」とは25℃をいうものとする)まで冷却した。
Figure 2021166314
次いで、第1溶液とは別個に、下記式(7)に示す重合開始材(b)を含む第2溶液を作製した。第2溶液は、キシレン溶媒中に重合開始材(b)を、160℃、10分の条件下で溶解させて得た。次いで、作製した第2溶液を室温まで冷却した。
Figure 2021166314
次いで、第1溶液と第2溶液を混合し、塗布液を作製した。第1溶液と第2溶液の混合は、室温条件下にて行った。なお、溶媒を除く固形分全体のうちの重合開始材(b)の含有量が7.6重量%となるよう塗布液を調製した。次いで、塗布液を陽極上に塗布し、陽極上に厚さ45nmの塗布膜を形成した。塗布液の塗布は、スピンコート法により行った。
次いで、塗布膜を、真空乾燥機を用いて、室温、2Pa未満の雰囲気下で乾燥した。次いで、塗布膜に対し、230℃、15分、常圧下で加熱処理を行った。これにより、塗布膜内において、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)の開環重合を進行させ、3次元架橋構造を有する樹脂組成物からなる正孔輸送層を形成した。
次に、正孔輸送層上に発光層を、次の方法により形成した。まず、電子輸送性化合物としてのビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウムと下記式(9)で示す発光材料を含有する塗布液を、正孔輸送層上に塗布し、正孔輸送層上に厚さ40nmの塗布膜を形成した。この塗布液は、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウムおよび下記式(9)で示す発光材料をトルエン溶媒に溶解して作製した。なお、溶媒を除く固形分全体のうち発光材料の含有量が6重量%となるよう塗布液を調製した。
Figure 2021166314
次いで、この塗布液を正孔輸送層上に塗布し、正孔輸送層上に厚さ40nmの塗布膜を形成した。塗布液の塗布は、スピンコート法により行った。
次いで、塗布膜を、真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下で乾燥した。次いで、正孔輸送層上に形成された塗布膜に対し、加熱処理を行った。このようにして、発光層を形成した。
次に、発光層上に厚さ30nmの電子輸送層を形成した。電子輸送層は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを真空蒸着法によって発光層上に堆積させることにより形成した。次に、電子輸送層上に厚さ1nmの電子注入層を形成した。電子注入層は、LiFを真空蒸着法によって電子輸送層上に堆積させることにより形成した。次に、電子注入層上に厚さ80nmの陰極を形成した。陰極は、Agを真空蒸着法によって電子注入層上に堆積させることにより形成した。なお、電子輸送層、電子注入層、および陰極を形成する工程は、真空蒸着機中において連続して行った。
このようにして、陽極と陰極との間に複数の有機層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
次に、上記で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を真空蒸着機から取り出した。次いで、有機エレクトロルミネッセンス素子を、金属製(ガラス製)の封止缶により封止した。封止缶による封止は、不活性ガス雰囲気のグローブボックス中において行った。これにより、発光デバイスを得た。
(比較例1)
正孔輸送層の形成方法を除き、実施例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子、および発光デバイスを得た。正孔輸送層は、以下のように形成した。
まず、キシレン溶媒中に、上記式(8)で示す重合性化合物(a)および上記式(7)で示す重合開始材(b)を入れた。次いで、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む当該キシレン溶媒を160℃、2分の条件下で加熱して、重合性化合物(a)および重合開始材(b)をキシレン溶媒に溶解させた。これにより、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む塗布液を得た。なお、溶媒を除く固形分全体のうちの重合開始材(b)の含有量が7.6重量%となるよう塗布液を調製した。
次いで、塗布液を陽極上に塗布し、陽極上に厚さ45nmの塗布膜を形成した。塗布液の塗布は、スピンコート法により行った。
次いで、塗布膜を、真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下で乾燥した。次いで、塗布膜に対し、230℃、15分、常圧下で加熱処理を行った。これにより、塗布膜内において、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(b)の開環重合を進行させ、3次元架橋構造を有する樹脂硬化物からなる正孔輸送層を形成した。
(比較例2)
重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む塗布液の調製方法を除き、比較例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子、および発光デバイスを得た。塗布液は、以下のように調製した。
まず、キシレン溶媒中に、上記式(8)で示す重合性化合物(a)および上記式(7)で示す重合開始材(b)を入れた。次いで、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む当該キシレン溶媒を160℃、10分の条件下で加熱して、重合性化合物(a)および重合開始材(b)をキシレン溶媒に溶解させた。これにより、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む塗布液を得た。なお、溶媒を除く固形分全体のうちの重合開始材(b)の含有量が7.6重量%となるよう塗布液を調製した。
実施例および各比較例について、以下のように評価を行った。評価結果については、表1に示す。
(正孔輸送層表面の平滑性)
正孔輸送層の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを測定した。
測定は、次のように行った。まず、正孔輸送層を成膜した後、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所を、ガラス基板面が露出するようカッターにより削った。次いで、ガラス基板面のうち露出した各箇所から、当該各箇所の近傍に位置する正孔輸送層の表面までの高さをそれぞれ測定した。測定された上記各箇所からの高さに基づいて、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所における膜厚を算出した。そして、算出された膜厚から、正孔輸送層の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを求めた。ガラス基板の露出面から、その近傍に位置する正孔輸送層の表面までの高さは、アルファステップIQ(KLA−Tencor社製)を使用して、針圧3.0±0.2mg、スキャン範囲300μm、スキャン回数1回の条件下で測定された。
なお、表1では、測定範囲における最大山高さRpまたは最大谷深さRvのいずれか大きい方を示している。表1に示す測定値の単位は、nmである。
(陰極表面の平滑性)
陰極の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを測定した。
測定は、次のように行った。まず、陰極を成膜した後、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所を、ガラス基板面が露出するようカッターにより削った。次いで、ガラス基板面のうち露出した各箇所から、当該各箇所の近傍に位置する陰極の表面までの高さをそれぞれ測定した。測定された上記各箇所からの高さに基づいて、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所における膜厚を算出した。そして、算出された膜厚から、陰極の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを求めた。ガラス基板の露出面から、その近傍に位置する陰極の表面までの高さは、アルファステップIQ(KLA−Tencor社製)を使用して、針圧3.0±0.2mg、スキャン範囲300μm、スキャン回数1回の条件下で測定された。
なお、表1では、測定範囲における最大山高さRpまたは最大谷深さRvのいずれか大きい方を示している。表1に示す測定値の単位は、nmである。
(相対輝度)
得られた発光デバイスの相対輝度を測定した。輝度計(LS−110、コニカミノルタホールディングス株式会社製)と電流電源(236型ソース−メジャー−ユニット、Keithley製)を使用した電流−電圧−輝度測定により、各実施例および各比較例における発光デバイスの輝度を算出した。表1では、実施例1における輝度を基準(100%)とした場合の、各実施例および各比較例における相対輝度を示している。
(相対寿命)
得られた発光デバイスの相対寿命を測定した。約20mA/cmの一定電流密度下における相対輝度の変化から、相対寿命を算出した。表1では、実施例1における寿命を基準(100%)とした場合の、各実施例および各比較例における相対寿命を示している。
(発光ムラ)
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させながら、Eclipse L150(株式会社ニコン製)を用いた光顕微観察により発光ムラの有無を観察した。入力電圧は、有機エレクトロルミネッセンス素子が発光する3〜4Vであった。
Figure 2021166314
表1に示すように、実施例1では、正孔輸送層表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが14nm以下である。また、陰極表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが10nm以下である。実施例1は、相対輝度、相対寿命、発光ムラのいずれも良好な結果を示した。
一方、比較例1では、正孔輸送層表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが14nmを超えている。また、陰極表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが10nmを超えている。このような比較例1では、実施例1と比較して発光ムラが生じた。すなわち、発光特性の低下が見られた。
また、比較例2では、正孔輸送層表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが14nmを超えている。また、陰極表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが10nmを超えている。このような比較例2では、実施例1と比較して発光効率が低下し、かつ発光ムラが生じた。すなわち、発光特性の低下が見られた。

Claims (1)

  1. 陽極と、
    前記陽極上に設けられた有機層と、
    前記有機層上に設けられた発光層と、
    前記発光層上に設けられた陰極と、
    を備え、
    前記有機層は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂硬化物により形成され、
    前記有機層の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが、いずれも14nm以下である有機エレクトロルミネッセンス素子。
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