JP2021162069A - 弁装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】操作トルクを長期間にわたり低減できるとともに、異物の噛み込みを防止できる弁装置を提供する。【解決手段】ボールバルブ1は、配管内の流路を遮断または開放する弁装置であって、流路に連通する開口部34a、34bを有する略円筒状の弁箱3と、弁箱3内において開口部34a、34bの周囲に装着されるリング状のシート部材4と、弁箱3内に回動可能に設けられ、かつ、シート部材4に押し当てられることで流路を遮断する弁体2とを備え、シート部材4は、ゴム製基材と、その表面に直接または下地層を介して形成された、第1のフッ素樹脂の粒子と樹脂バインダーとを含む第1の樹脂層と、該第1の樹脂層の上に形成された、第2のフッ素樹脂の粒子を含む第2の樹脂層と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は弁装置に関し、特にボールバルブに関する。
従来、都市ガスなどの流体を流す配管内には、流体の流れを遮断または開放するために弁装置が設置されている。弁装置としては、球状の弁体を有するボールバルブが広く使用されており、例えば、柔軟性に優れ、耐腐食性を有する合成樹脂製(例えば、ポリエチレン樹脂製)のボールバルブが汎用されている。
一般に、ボールバルブは、流路に連通する開口部を有する略円筒状の弁箱と、弁箱内に回動可能に設けられる球状の弁体と、弁体と弁箱の間をシールするリング状のシート部材とを備えている(例えば特許文献1参照)。この構成によれば、ボールバルブの外部から弁体を操作して流路を開閉し、配管内の流体の流れを遮断したり開放したりすることができる。シート部材には、ニトリルブタジエンゴムなどのゴム部材が用いられており、このシート部材に弁体を押し当てることで流路を遮断している。
特開2019−49333号公報
ところで、弁体の開閉作業の作業性の観点から、弁体の操作トルクは、容易に開閉操作ができる大きさであることが望ましい。また、弁体を繰り返し開閉する使用形態においても、低トルクが長期間維持されることが望ましい。従来のボールバルブでは、弁体の操作トルクを低減するために、シート部材に潤滑用グリスを塗布して使用している。
しかしながら、例えば、流体中に砂やほこりなどの異物が存在するような環境でボールバルブを使用した場合、上記の潤滑用グリスを用いた構成では、異物が潤滑用グリスに接触すると付着するおそれがある。その結果、付着した異物の噛み込みによってシート部材と弁体との摩擦が増大して弁体の操作トルクが増大するおそれがある。また、付着した異物の噛み込みによって、シート部材と弁体のシールが不十分になり、流体を確実に遮断できなくなるおそれがある。また、流路の開閉が頻繁に行われないような使用においては、潤滑用グリスを介して弁体とシート部材が固着し、操作トルクが増大するおそれもある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、操作トルクを長期間にわたり低減できるとともに、異物の噛み込みを防止できる弁装置を提供することを目的とする。
本発明の弁装置は、配管内の流路を遮断または開放する弁装置であって、上記弁装置は、上記流路に連通する開口部を有する略円筒状の弁箱と、上記弁箱内において上記開口部の周囲に装着されるリング状のシート部材と、上記弁箱内に回動可能に設けられ、かつ、上記シート部材に押し当てられることで上記流路を遮断する弁体とを備え、上記シート部材は、ゴム製基材と、その表面に直接または下地層を介して形成された、第1のフッ素樹脂の粒子と樹脂バインダーとを含む第1のフッ素樹脂層と、該第1のフッ素樹脂層の上に形成された、第2のフッ素樹脂の粒子を含む第2のフッ素樹脂層と、を有する。
本発明において、上記弁装置は、上記シート部材と上記弁体との間にグリスを介在させないことが好ましい。
さらに、本発明において、上記第1のフッ素樹脂層において、上記第1のフッ素樹脂の粒子はポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子であり、上記樹脂バインダーはウレタン樹脂バインダーであることが好ましい。
さらに、本発明において、上記第2のフッ素樹脂の粒子はポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子であり、上記第2のフッ素樹脂層は、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子が堆積した層であることが好ましい。
また、本発明において、上記弁箱および上記弁体が合成樹脂製であり、上記弁装置は、上記配管内の流路を流れるガスの遮断または開放をするボールバルブであってもよい。
本発明の弁装置は、このような構成にすることにより、シート部材に異物が付着しにくいので、弁体の操作トルクを長期間にわたり低減できるとともに、異物の噛み込みを防止できる。
本発明に係る弁装置の全体の概略構成を示す説明図である。 弁体の全開状態を示す模式断面図である。 弁体の全閉状態を示す模式断面図である。 シート部材の層構造を説明するための図などである。 弁体の開閉回数と操作トルクの関係を示す図である。 放置時間と初動操作トルクの関係を示す図である。 従来の弁装置におけるシート部材の一部拡大図である。
図1は、本発明に係る弁装置の全体の概略構成を示す説明図である。図1では、弁装置としてボールバルブを示す。ボールバルブ1は、流体などが流れる配管内の流路の途中に配置され、流路を遮断または開放する装置である。図1に示すように、ボールバルブ1は、略円筒状の弁箱3と、弁箱3内に回動可能に設けられる弁体2と、弁箱3内に装着されるリング状のシート部材4とを備える。図1では矢印方向に流体が流れる。弁箱3の上流側と下流側にはそれぞれ配管(図示省略)が接続される。なお、図1では、弁体2が流路を開放している全開状態を示している。
図1に示すように、弁箱3は、胴部31と側部32とが嵌合されて一体化されている。一体化された弁箱3の中央部には、弁体2が収容される弁体収容部33が形成されている。弁箱3は、弁体収容部33の両側に、上流側の流路37aと下流側の流路37bを連通する開口部34a、34bを有する。開口部34a、34bの周囲には、弁箱3の内周面が縮径するように径方向内側に張り出した段部35a、35bが形成されており、その段部35a、35bにシート部材4、4がそれぞれ装着されている。また、弁箱3において、弁体2の回転軸に沿った方向には、内周面と外周面とが貫通した装着孔36が形成されており、この装着孔36に弁棒5が回転可能に挿入されている。
弁箱内の弁体収容部33において、弁棒5の端部には弁体2が連結されており、弁棒5の回転に伴って弁体2が回動する。弁棒5の回転軸と弁体2の回転軸は一致している。弁体2は、外面21が球面状に形成され、内部に貫通した貫通孔22を有する。弁体2において、弁体2の回転軸に沿った方向の一方側には凹部23が形成されており、他方側には貫通孔22と外面21とが貫通したピン装着孔24が形成されている。凹部23には弁棒5の端部が固定され、ピン装着孔24にはピン6が弁箱3のピン溝に跨るように挿入されている。
図1において、ボールバルブ1は合成樹脂製のボールバルブであり、弁体2および弁箱3はそれぞれ樹脂材料で構成される。樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂などを使用できる。
弁体2の動作について、図2および図3を用いて説明する。図2および図3は、図1の弁体を弁棒側から見た一部断面図である。図2は、弁体2の全開状態を示しており、弁体2の貫通孔22は、流路に対して平行になっている。この図2の全開状態から、弁体2が回転軸を中心に90度回転すると、図3の全閉状態になる。図3では、弁体2の貫通孔22は、流路に対して直交しており、弁体2がシート部材4と密着することで流路が遮断される。流路の遮断時において、シート部材4は、弁体2に押し付けられることで弾性変形する。
ここで、従来のボールバルブの構成を図7に示す。図7は、図1のA部に相当する部分の拡大図であり、弁体の全開状態を示している。ボールバルブ11では、弁体12と接触するシート部材14のシール面14aに、半固体状の潤滑用グリス15(以降、単にグリス15という場合もある)が塗布されている。弁体12とシート部材14との間にグリス15を介在させることで、弁体12の操作トルクを低減し、弁体12の回動をスムーズにしている。ところで、トラブルなどによって、流体中に、砂、ほこり、金属粉、ごみなどの異物が混入する場合が想定される。そのような場合、従来の構成では、異物がグリス15に接触すると、異物はグリス15による粘着作用によってグリス15に付着するおそれがある。異物が付着した状態で弁体12を開閉操作すると、弁体12とシート部材14との間に異物が噛み込まれてしまい、シート部材などを摩耗させて弁体の操作トルクの増大につながるおそれがある。
これに対して、本発明の弁装置は、シート部材が表面に2層のフッ素樹脂層を有する樹脂被膜を有するので、耐久性が高く操作トルクを長期間にわたり低減できるとともに、異物の噛み込みを防止できる。特に、弁体と接触するシート部材の最表層側のフッ素樹脂層(第2のフッ素樹脂層)は速乾性潤滑剤(ドライグリス)によって形成されるため、異物の付着を防止できる構成になっている。
本発明に係るシート部材の構成について図4を用いて説明する。図4(a)には、シート部材をシール面側から見た平面図を示し、図4(b)には、そのシール面の断面図を示す。図4(a)に示すように、シート部材4はリング状であり、その内径側端部には、外径側に向けて拡径するテーパ部が全周にわたり形成されている。このテーパ部が弁体2とのシール面となる(図1参照)。図4(a)の形態では、樹脂被膜Lがこのテーパ部にのみ形成されている。なお、樹脂被膜Lは、少なくとも弁体に接触するシール面に形成されていればよく、例えば、シート部材4の全面に形成されていてもよく、シート部材4の軸方向一方側の端面(テーパ部を含む)に形成されていてもよい。
樹脂被膜Lの具体的な構成について、図4(b)に説明する。図4(b)に示すように、樹脂被膜Lは、ゴム製基材41の表面に直接形成された第1のフッ素樹脂層42と、この第1のフッ素樹脂層42の表面に形成された第2のフッ素樹脂層43とを有する。ゴム製基材41のゴム材料としては、特に限定されず、天然ゴムや、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、例えば、都市ガス用の弁装置においては、ガス透過性が低く、且つ圧縮永久ひずみが小さいNBRを用いることが好ましい。
なお、図4(b)の構成では、第1のフッ素樹脂層42をゴム製基材41の表面に直接形成しているが、プライマー層(下地層)を介して第1のフッ素樹脂層42を形成してもよい。例えば、ゴム製基材41の表面にポリオレフィン樹脂塗料を塗布して、ポリオレフィン樹脂層を下地層としてもよい。これにより、樹脂被膜Lとゴム製基材41との密着性を向上させることができる。また、ゴム製基材41の表面を粗くする粗面化処理を施してもよい。粗面化処理として、ショットブラスト法などの機械的粗面化法や、アルカリ処理などの化学的粗面化法などが採用できる。
第1のフッ素樹脂層42は、第1のフッ素樹脂の粒子と樹脂バインダーとを含む層である。図4(b)に示すように、フッ素樹脂粒子421は、樹脂バインダー422中に分散している。樹脂バインダーとしては、フッ素樹脂粒子を分散できる樹脂バインダーであれば使用できる。使用できる樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂や、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。特に、柔軟性に優れ、弾性を有するウレタン樹脂バインダーを用いることが好ましい。
ウレタン樹脂は、組成内にウレタン結合を有するポリマーであり、例えば、イソシアネート基を含む化合物と、水酸基を含む化合物とを反応させることで得られる。イソシアネート基を含む化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などのポリイソシアネート成分が挙げられる。また、水酸基を含む化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、水酸基含有フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体(FEVE)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などのポリオール成分が挙げられる。
第1のフッ素樹脂層42に含まれるフッ素樹脂粒子421としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)粒子、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)粒子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)粒子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)粒子などを使用できる。なお、これらの樹脂粒子は単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。上記フッ素樹脂粒子の中でも、摩擦特性や耐熱性に優れるPTFE樹脂粒子が好ましい。
第1のフッ素樹脂層42に含まれるフッ素樹脂粒子421の平均粒子径は、好ましくは15μm以下である。15μm以下にすることで分散性を向上できる。なお、フッ素樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式の粒度分布測定法により測定される50質量%の粒子径である。フッ素樹脂粒子421の平均粒子径は、好ましくは10μm以下である。また、第1のフッ素樹脂層42全体におけるフッ素樹脂粒子421の含有量は、例えば10質量%〜60質量%であり、好ましくは10質量%〜40質量%である。
第1のフッ素樹脂層42の形成には、フッ素樹脂粒子が分散した樹脂塗料などを用いる。例えば、樹脂バインダーとしてウレタン樹脂バインダーを用いる場合、ウレタン樹脂バインダーとフッ素樹脂粒子を溶剤に所定量配合して樹脂塗料を調整してもよく、また、市販品を用いてもよい。樹脂塗料の市販品としては、例えば、東洋ドライルーブ社製FD−2760などが挙げられる。樹脂塗料を、3本ロール、ボールミル、アトライター、ビーズミルなどの混錬装置によって混錬することで、フッ素樹脂粒子が均一に分散される。分散後、樹脂塗料をスプレー、刷毛塗り、ディッピングなどの方法でゴム製基材41に塗布した後、所定の硬化温度で硬化させることで、第1のフッ素樹脂層42が形成される。硬化温度は、例えば、80℃〜150℃である。
第1のフッ素樹脂層42の厚みは5μm〜30μmが好ましい。厚みをこの範囲内にすることで、第1のフッ素樹脂層の密着不良による剥離や、層形成時のクラックの発生などを抑制できる。また、上記厚みは5μm〜15μmが好ましい。
続いて、第2のフッ素樹脂層について説明する。図4(b)において、第2のフッ素樹脂層43は、フッ素樹脂粒子431を含む層である。具体的には、第2のフッ素樹脂層43は、バインダー成分が低含量であるか、または実質的に含まれておらず、フッ素樹脂粒子431が堆積した層で構成されている。バインダー成分の含有量は、第2のフッ素樹脂層43全体に対して、例えば10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。本発明に係る弁装置では、潤滑用グリスを介在させず、油分を含まないドライの層43が弁体の外面と直接接触することから、従来構成(図7参照)に比べて、異物の付着を防止できる。また、第2のフッ素樹脂層43は、フッ素樹脂粒子431を有する緻密な層である。第2のフッ素樹脂層43は、フッ素原子の持つ強い化学結合力により耐久性に優れている。さらに、フッ素樹脂は摩擦係数が小さいため低摩擦性を長期間にわたって維持できる。
第2のフッ素樹脂層43のフッ素樹脂粒子431としては、PTFE樹脂粒子、PFA樹脂粒子、FEP樹脂粒子、ETFE樹脂粒子、PVDF樹脂粒子などを使用できる。このフッ素樹脂粒子431と、第1のフッ素樹脂層42のフッ素樹脂粒子421は、互いに同一の樹脂からなる樹脂粒子であってもよく、互いに異なる樹脂からなる樹脂粒子であってもよい。また、フッ素樹脂粒子431の平均粒子径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。フッ素樹脂粒子431の平均粒子径は、第1のフッ素樹脂層42のフッ素樹脂粒子421の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
第2のフッ素樹脂層43は、フッ素樹脂粒子を有機溶媒や水に分散した揮発性塗料を塗布して、乾燥することで形成される。有機溶媒としては、速乾性を有し、フッ素樹脂粒子を分散できる溶媒であれば、特に限定されないが、膜形成の容易さから、沸点が100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。有機溶媒の中でも、速乾性に優れ、環境負荷の少ないハイドロフルオロエーテルを用いることが好ましい。
ハイドロフルオロエーテルは、下記の一般式(1)で表される。
2n+1−O−C2x+1・・・(1)
ただし、式(1)中において、n、Xは、それぞれ1以上の整数である。
ハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2 ,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル) ペンタンなどが挙げられる。ハイドロフルオロエーテルとして、これらの化合物を1種単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
フッ素樹脂粒子が分散した揮発性塗料は、有機溶媒や水にフッ素樹脂粒子を所定量配合して調整してもよく、また、市販品を用いてもよい。ハイドロフルオロエーテルを有機溶媒に使用した市販品としては、例えば、東洋ドライルーブ社製LBF−731などが挙げられる。揮発性塗料において、フッ素樹脂粒子は、揮発性塗料全体に対して1質量%〜10質量%含まれることが好ましい。揮発性塗料を混錬装置によって混錬することで、フッ素樹脂粒子が均一に分散される。分散後、揮発性塗料をスプレー、刷毛塗り、ディッピングなどの方法で第1のフッ素樹脂層42の上に塗布した後、所定の温度で乾燥することで、第2のフッ素樹脂層43が形成される。乾燥の温度は、例えば、20℃〜80℃である。
なお、上記の揮発性塗料には、各種の添加剤を添加することができる。例えば、界面活性剤、分散剤、防錆剤、防食剤、酸化防止剤、極圧剤、付着性向上剤、油性剤などを添加することができる。
樹脂被膜Lの特に好ましい形態として、樹脂被膜Lは、フッ素樹脂粒子421がPTFE樹脂粒子で、樹脂バインダー422がウレタン樹脂バインダーで、かつ樹脂層の厚みが5μm〜20μmである第1のフッ素樹脂層42と、フッ素樹脂粒子431としてPTFE樹脂粒子が堆積した層である第2のフッ素樹脂層43と、を有する。さらに、第2のフッ素樹脂層43の厚みが第1のフッ素樹脂層42の厚みよりも小さいことが好ましい。
上記図1〜図4では、合成樹脂製のボールバルブについて説明したが、弁体や弁箱が、ステンレス鋼などの金属材料で構成されたボールバルブであってもよい。また、本発明の弁装置は、ボールバルブに限らず、ボールバルブ以外の弁装置にも適用できる。
本発明の弁装置の性能を確認するため、仕様を変更した各シート部材を用いて、耐久性試験、耐固着性試験、耐異物性試験をそれぞれ実施した。
実施例1
リング状のNBR製基材(外径:175mm、内径:139mm)のシール面に、前処理として、オリジン化建工業株式会社製 商品名ORプライマー(オーアールプライマー)を塗布して100℃で20〜30分乾燥させた。そして、そのプライマー層の上に、PTFE樹脂粒子がウレタン樹脂バインダーに分散した樹脂塗料(東洋ドライルーブ社製、FD−2760)をスプレーにより塗布し、100℃で60分間焼成して、樹脂バインダーを硬化させることで第1のフッ素樹脂層を形成した。さらに、その樹脂層の上に、PTFE樹脂粒子がハイドロフルオロエーテルに分散した揮発性塗料(東洋ドライルーブ社製、LBF−731)を刷毛塗りにより塗布し、23℃で10分間乾燥して、第2のフッ素樹脂層を形成した。得られたシート部材を図1に示すボールバルブに装着して試験用バルブを得た。
比較例1
リング状のNBR製基材(外径:175mm、内径:139mm)のシール面に、半固体状の潤滑用グリスとしてシリコーングリス(信越化学工業社製、HIVAC−G)を塗布した後、そのシート部材を図1に示すボールバルブに装着して試験用バルブを得た。
参考例1
リング状のNBR製基材(外径:175mm、内径:139mm)のシール面に、実施例1と同様に、前処理として、オリジン化建工業株式会社製 商品名ORプライマー(オーアールプライマー)を塗布して100℃で20〜30分乾燥させた。そして、そのプライマー層の上に、PTFE樹脂粒子がウレタン樹脂バインダーに分散した樹脂塗料(東洋ドライルーブ社製、FD−2760)をスプレーにより塗布し、100℃で60分間焼成して、樹脂バインダーを硬化させることで第1のフッ素樹脂層を形成した。得られたシート部材を図1に示すボールバルブに装着して試験用バルブを得た。
参考例2
リング状のNBR製基材(外径:175mm、内径:139mm)のシール面に、シリコーンオイルがウレタン樹脂バインダーに分散した樹脂塗料(オキツモ社製、NTB7104)をスプレーにより塗布し、150℃で60分間焼成して、樹脂バインダーを硬化させることでシリコーンオイル層を形成した。得られたシート部材を図1に示すボールバルブに装着して試験用バルブを得た。
(1)耐久性試験
この試験では、実施例、比較例、および参考例1の試験用バルブを用いた。各試験用バルブにおいて、弁体の開閉を繰り返し行った際の操作トルクを測定した。10秒ほどの間隔で開操作および閉操作を繰り返し行い、開操作と閉操作を1セットとして計500回行った。操作トルクの目標上限値を150N・mに設定した。なお、参考例1は目標上限値を上回ったため、試験を途中で中断した。図5に操作トルクの時間的変化を示す。
図5に示すように、実施例は目標上限値を大きく下回っており、開閉回数500回まで低トルクを維持した。また、比較例は、初回の開閉操作を除いて、ほぼ一定の操作トルクで安定していた。これに対して、第1のフッ素樹脂層のみが形成された参考例1は、開閉回数が増えるに伴って操作トルクが上昇していき、開閉回数が100回を過ぎたあたりで目標上限値を超える結果となった。開閉操作の繰り返しによって、第1のフッ素樹脂層が剥離したためと考えられる。
(2)耐固着性試験
この試験では、比較例、参考例1、および参考例2の試験用バルブを用いた。各試験用バルブにおいて、任意の放置時間(1日〜125日)、弁体を閉鎖状態で放置した後、弁体を開放する際の初動操作トルクを測定した。操作トルクの目標上限値を150N・mに設定した。図6に操作トルクの時間的変化を示す。
図6に示すように、比較例の試験用バルブは、試験開始時(0日)の操作トルクに対して、1日の放置時間で操作トルクが大幅に上昇し、数日の放置時間で目標上限値を上回る結果となった。比較例の試験用バルブでは、シート部材と弁体との間にグリスを介在させており、このグリスによって弁体が固着したことから操作トルクが上昇したと考えられる。これに対して、参考例1〜参考例2は、40日を超える長期の放置時間でも目標上限値を下回っていた。また、これらは、試験開始時(0日)と比べて操作トルクの変動がほとんどなく、固着は見られなかった。さらに、樹脂層の潤滑剤としてPTFE樹脂粒子を含む参考例1の方が、シリコーンオイルを含む参考例2よりも低トルクを示した。
なお、耐固着性試験は、実施例の試験用バルブでは実施していないが、実施例は、最表面がPTFE樹脂粒子の層からなり、かつ、シート部材と弁体との間にグリスを介在させていない構成であることから、参考例1と同程度の結果を示すと想定される。
(3)耐異物性試験
この試験では、実施例、比較例、および参考例1の試験用バルブを用いた。各試験用バルブの流路が鉛直方向を向くように配置して、弁体を閉じた状態で約20gの砂を上から流路内に入れ、その後、弁体の開閉操作を10回行って、反対側の流路から砂を落下させた。砂の投入から弁体の10回の開閉を1セットとして、この操作を10セット行った。砂を投入する前における弁体の開閉時の操作トルクAと、10セット終了後における弁体の開閉時の操作トルクBを測定し、操作トルクAに対して操作トルクBが250%以下の場合を「○」とし、250%を超える場合を「×」とした。評価結果を表1に示す。
また、表1には、上述の他の試験結果も併せて示しており、各試験において操作トルクが目標上限値を上回った場合に「×」を記した。なお、表1中の操作トルクの項目は、耐久性試験における初回時の開閉操作の操作トルクを評価している。
Figure 2021162069
表1に示すように、比較例は、目視観察において砂が多く付着しており、耐異物性は「×」の評価であったのに対して、実施例および参考例1は砂の付着がほとんどなく、耐異物性は「○」の評価であった。また、砂を通過させた後の実施例の試験用バルブを用いて、シール性も確認した。具体的には、該試験用バルブの弁体を閉じた状態で流路に0.6MPaの圧力を加えたところ、シート部材を介したガス漏れは確認されなかった。
表1に示すように、実施例のボールバルブは、シート部材の弁体とのシール面にフッ素樹脂層が形成されており、さらに弁体との間に半固体状の潤滑用グリスを介在させないので、従来構成で不利となる耐固着性や耐異物性を改善することができる。また、速乾性潤滑剤を用いて、第1のフッ素樹脂層の上に、フッ素樹脂粒子の緻密な層(第2のフッ素樹脂層)を形成することで、従来構成と遜色ない操作トルクおよび耐久性を保つことができる。
以上のように、本発明の弁装置は、シート部材が2層のフッ素樹脂層を有するので、操作トルクを長期間にわたり低減できるとともに、シート部材に異物が付着することを防止できる。そのため、流体に異物が混入するような環境下でも異物の噛み込みを防止でき、ひいてはガス漏れを長期的に防止できる。流体としては、例えば、都市ガスなどを用いることができる。
1:ボールバルブ(弁装置)
2:弁体
21:外面
22:貫通孔
23:凹部
24:ピン装着孔
3:弁箱
31:胴部
32:側部
33:弁体収容部
34a:開口部
34b:開口部
35a:段部
35b:段部
36:装着孔
37a:流路
37b:流路
4:シート部材
41:ゴム製基材
42:第1のフッ素樹脂層
421:フッ素樹脂粒子
422:樹脂バインダー
43:第2のフッ素樹脂層
431:フッ素樹脂粒子
5:弁棒
6:ピン
L:樹脂被膜

Claims (5)

  1. 配管内の流路を遮断または開放する弁装置であって、
    前記弁装置は、前記流路に連通する開口部を有する略円筒状の弁箱と、前記弁箱内において前記開口部の周囲に装着されるリング状のシート部材と、前記弁箱内に回動可能に設けられ、かつ、前記シート部材に押し当てられることで前記流路を遮断する弁体とを備え、
    前記シート部材は、ゴム製基材と、その表面に形成された、第1のフッ素樹脂の粒子と樹脂バインダーとを含む第1の樹脂層と、該第1の樹脂層の上に形成された、第2のフッ素樹脂の粒子を含む第2の樹脂層と、を有することを特徴とする弁装置。
  2. 前記弁装置は、前記シート部材と前記弁体との間にグリスを介在させないことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
  3. 前記第1の樹脂層において、前記第1のフッ素樹脂の粒子はポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子であり、前記樹脂バインダーはウレタン樹脂バインダーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弁装置。
  4. 前記第2のフッ素樹脂の粒子はポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子であり、前記第2の樹脂層は、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子が堆積した層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の弁装置。
  5. 前記弁箱および前記弁体が合成樹脂製であり、前記弁装置は、前記配管内の流路を流れるガスの遮断または開放をするボールバルブであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の弁装置。
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