JP2021159073A - 細胞含有容器及びその製造方法 - Google Patents

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Tomoaki Nakayama
知行 荒谷
Tomoyuki Araya
慎之介 腰塚
Shinnosuke Koshizuka
敦史 宮岡
Atsushi Miyaoka
桃子 塩野入
Momoko Shionoiri
梨恵 矢本
Rie Yamoto
智文 北澤
Tomofumi Kitazawa
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Abstract

【課題】神経細胞の凝集を抑制する技術を提供することができる。【解決手段】細胞含有容器であって、神経細胞及び培地を含み、前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり0.5mm2以上であり、前記培地中のグルコースの濃度は1g/L以上である、細胞含有容器。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞含有容器及びその製造方法に関する。本願は、2020年3月30日に、日本に出願された特願2020−061251号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
神経細胞に対する薬効評価や毒性評価に、神経細胞の活動電位を用いる場合がある。神経細胞の活動電位を検出し評価する方法の一つに、Microelectrode Array(MEA)を用いた評価方法が知られている。MEAは細胞培養を行う基材に配置された微小な電極のアレイであり、細胞の電気的な活動を検出することができる。
ところで、ヒトiPS細胞由来の神経細胞をMEA上で培養し、活動電位を検出する際には、ヒト以外の動物由来の神経細胞を用いた場合よりも、神経細胞を高密度で且つ長期間培養することが必要であることが知られている。
発明者らは、iPS由来の神経細胞を、高密度で長期間培養すると、細胞が凝集し、培養容器の培養面から剥離してしまう場合があることを見出した。
例えば、特許文献1(特開2018−117567号公報)には、生体細胞の培養環境を適切に維持し、安定させることを課題とする細胞培養装置が記載されている。当該細胞培養装置は、生体細胞を培養する培養槽と、オンライン/インラインモニタリング装置と、無菌サンプリング装置、分析装置、データ収集装置、データ解析装置、クラスタ分析機能を備えた細胞状態判別装置と、クラスタごとの細胞の反応モデルの参照機能を備えた運転制御補正装置とを備えるものである。しかしながら、特許文献1には、神経細胞を、高密度で長期間培養した場合に神経細胞の凝集が生じることは記載されておらず、このような神経細胞の凝集を抑制するために必要な具体的なパラメータも記載されていない。
本発明は、神経細胞の凝集を抑制する技術を提供することを目的とする。
本発明に係る、細胞含有容器は、神経細胞及び培地を含み、前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり0.949〜28.2mmであり、前記培地中のグルコースの濃度は1g/L以上である。
本発明に係る、細胞含有容器の製造方法は、神経細胞及び培地を収容した容器を、所定のタイミングで前記培地を交換しながら、培養条件下でインキュベートする工程を含み、前記培地中のグルコースの濃度を所定期間1g/L以上に維持する製造方法である。
本発明によれば、神経細胞の凝集を抑制する技術を提供することができる。
図1は、実験例1において、神経細胞の培地中のグルコース濃度の経時変化を測定した結果を示すグラフである。 図2(a)〜(c)は、実験例2において、神経細胞の播種から53日目(DIV53)の神経細胞を撮影した代表的な顕微鏡写真である。 図3(a)は、実験例3において、凝集レベル1と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図3(b)は、実験例3において、凝集レベル2と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図3(c)は、実験例3において、凝集レベル3と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図3(d)は、実験例3において、凝集レベル4と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。 図4は、実験例4における、神経細胞の凝集レベルの経時変化を示すグラフである。 図5は、実験例5において、培地中のグルコース濃度と神経細胞の凝集レベルとの関連性を検討した結果を示すグラフである。
[細胞含有容器]
1実施形態において、本発明は、細胞含有容器であって、神経細胞及び培地を含み、前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり0.5mm以上であり、前記培地中のグルコースの濃度は1g/L以上である、細胞含有容器を提供する。
実施例において後述するように、発明者らは、神経細胞の凝集と、培地中のグルコース濃度に関連性があることを見出した。また、通常のプロトコールにしたがって神経細胞を培養した場合、培地中のグルコース濃度が1g/L未満になる場合があることを明らかにした。また、培地中のグルコース濃度を1g/L以上に維持することにより、神経細胞の凝集を抑制できることを明らかにした。
神経細胞の凝集が抑制されていると、MEA等を用いて神経細胞の活動電位を良好に検出して評価することができる。また、神経細胞の凝集が抑制されていると、免疫染色等の他の解析手段によっても神経細胞の状態を良好に評価することができる。
本実施形態の細胞含有容器は、培養容器中で神経細胞を培養したものである。培養容器は一般に細胞培養に用いられる容器であってよく、ディッシュ、ウェルプレート等が挙げられる。ディッシュの直径、ウェルプレートのウェル数等は、用途に応じて適宜選択することができる。
本実施形態の細胞含有容器は、容器の培養面に電極アレイが配置されていてもよい。すなわち、本実施形態の細胞含有容器はMEAプレートであってもよい。MEAの電極数等は用途に応じて適宜選択することができる。
培養容器の培養面の材質としては、例えば、以下に記載の有機材料や無機材料が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
有機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ウレタンアクリレート等のアクリル系材料、セルロース、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコーン系材料、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸カルシウム等のアルギン酸金属塩、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、アガロース等のゲル状材料等が挙げられる。
無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
培養容器の培養面はコーティング剤でコートされていてもよい。コーティング剤は、通常細胞培養に用いられるものを適宜用いることができ、例えば、コラーゲン、マトリゲル(登録商標、コーニング社)、Geltrex(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、PLO(シグマ−アルドリッチ社)、PDLO(シグマ−アルドリッチ社)、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ゼラチン、ポリエチレンイミン(PEI)、ラミニン等が挙げられる。
本実施形態の細胞含有容器が含有する神経細胞は、生体から採取された細胞であってもよく、株化され培養された細胞であってもよい。また、所望の神経細胞を多く含む細胞集団を得やすいという観点から、幹細胞から分化誘導された細胞であってもよい。すなわち、幹細胞由来神経細胞であってもよい。
幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯血由来幹細胞、神経幹細胞等が挙げられる。人工多能性幹細胞としては、例えば、核移植胚性幹細胞(ntES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等が挙げられる。間葉系幹細胞としては、例えば、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞等が挙げられる。中でも、幹細胞としては、iPS細胞が好ましい。
iPS細胞は健常者由来のものであってもよく、各種神経系の疾患を有する患者由来のものであってもよい。また、各種遺伝子編集が施されたものであってもよく、例えば、遺伝子編集により各種神経系の疾患の原因又はリスク因子となる遺伝子を持つように操作された細胞であってもよい。
iPS細胞が各種神経系の疾患を有する患者由来の細胞である場合には、当該神経系の疾患モデルを構築するために利用することができる。神経系の疾患としては、特別に限定されないが、例えば、神経変性疾患、自閉症、てんかん、注意欠陥−多動性障害(Attention−deficit hyperactivity disorder、ADHD)、統合失調症、双極性障害等が挙げられる。神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症等が挙げられる。
神経細胞の由来となる動物種は、特に限定されず、例えば、ヒト、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等が挙げられる。中でも、ヒトが好ましい。
また、神経細胞は、1種単独であってもよく、2種以上の神経細胞が混合されたものであってもよい。神経細胞は、例えば末梢神経と中枢神経に大別することができる。末梢神経としては、例えば、感覚神経細胞、運動神経細胞、自律神経細胞が挙げられる。中枢神経としては、例えば、介在神経細胞、投射ニューロンが挙げられる。投射ニューロンとしては、例えば、皮質ニューロン、海馬ニューロン、扁桃体ニューロン等が挙げられる。また、中枢神経細胞は、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンとに大別することができる。中枢神経系で主に興奮性伝達を担うグルタミン酸作動性ニューロン、主に抑制性伝達を担うGABA(γ−aminobutyric acid)作動性ニューロン等が挙げられる。
その他、神経調節物質を放出するニューロンとして、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ヒスタミン作動性ニューロン等が挙げられる。
本実施形態の細胞含有容器は、神経細胞と共に、アストロサイト、マイクログリア等を含んでいてもよい。神経細胞と培養容器の培養面との接着面積は、神経細胞80,000個あたり0.5mm以上であり、0.949mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、3.14mm以上であることが更に好ましい。また、神経細胞と培養容器の培養面との接着面積の上限は28.2mm程度であることが好ましい。
また、目的によっては、神経細胞は成熟していることが好ましく、例えばTubulin beta3、MAP2、NeuN、160kDa Neurofilament、200kDa Neurofilament、NSE、PSD93、PSD95のいずれかのマーカー遺伝子の発現が陽性であることが好ましい。
本実施形態の細胞含有容器が含む培地としては、培地中のグルコースの濃度は1g/L以上である限り、使用する細胞に適したものを適宜選択して用いることができる。
具体的な培地としては、基礎培地に必要成分を添加した培地が挙げられる。基礎培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、DMEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、D−MEM/F12培地、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、イーグルMEM培地(Eagle’s Minimum Essential Medium、EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagle’s Minimum Essential Medium、αMEM)、MEM培地(Minimum Essential Medium)、RPMI1640(Roswell Park Memorial Institute−1640)培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium、IMDM)、MCDB131培地、ウィリアム培地E、IPL41培地、Fischer’s培地、M199培地、高性能改良199培地(Hight Performance Medium 199)、StemPro34(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、X−VIVO 10(Chembrex社製)、X−VIVO 15(Chembrex社製)、HPGM(Chembrex社製)、StemSpan H3000(ステムセルテクノロジーズ社製)、StemSpanSFEM(ステムセルテクノロジーズ社製)、StemlineII(シグマ−アルドリッチ社製)、QBSF−60(Quality Biological社製)、StemProhESCSFM(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、Essential8(登録商標)培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、mTeSR1又はmTeSR2培地(ステムセルテクノロジーズ社製)、ReproFF又はReproFF2(リプロセル社製)、PSGro hESC/iPSC培地(System Biosciences社製)、NutriStem(登録商標)培地(バイオロジカルインダストリーズ社製)、CSTI−7培地(細胞科学研究所社製)、MesenPRO RS培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、MF−Medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡株式会社製)、Sf−900II(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、Opti−Pro(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
また、基礎培地に添加する添加剤としては、神経細胞の培養に通常用いられるものが挙げられ、例えば、Component N(Elixirgen Scientific社)、Component G2(Elixirgen Scientific社)、N2 Supplement(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、iCell Neural SupplementB(CDI社)、iCell Neuvous System Supplement,B−27 plus(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)等が挙げられる。
[細胞含有容器の製造方法]
1実施形態において、本発明は、神経細胞及び培地を収容した容器を、所定のタイミングで前記培地を交換しながら、培養条件下でインキュベートする工程を含み、前記培地中のグルコースの濃度を所定期間1g/L以上に維持する、細胞含有容器の製造方法を提供する。
本実施形態の製造方法により、上述した細胞含有容器を製造することができる。また、実施例において後述するように、本実施形態の製造方法により、神経細胞の凝集が抑制された細胞含有容器を製造することができる。
本実施形態の製造方法において、容器(培養容器)、神経細胞、培地については上述したものと同様である。具体的には、例えば、細胞含有容器の培養面に電極アレイが配置されていてもよい。また、神経細胞は、幹細胞由来神経細胞であってもよい。また、幹細胞は、ヒト細胞であってもよい。
所定のタイミングで培地を交換するとは、例えば、1週間に1〜10回、培地全量の10〜100体積%を交換することが挙げられる。培地交換のタイミングは、例えば、1週間に1〜8回であってもよく、1週間に1〜5回であってもよく、1週間に1〜3回であってもよい。培地交換から次の培地交換までの期間はほぼ一定であることが好ましい。
また、1回の培地交換で交換する培地の量は、培地全量の10〜80体積%であってもよく、培地全量の10〜50体積%であってもよく、培地全量の10〜30体積%であってもよい。
また、培養条件は、通常神経細胞の培養に用いられる条件であってよく、例えば、37℃、5%COの条件が挙げられる。また、酸素濃度を0〜1%に設定してもよい。
インキュベートの期間は、目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、ヒトiPS細胞から分化誘導した神経細胞で活動電位を検出する場合には、単一細胞に解離させた神経細胞を培養容器に播種した時点から、例えば30日間以上、例えば40日間以上、例えば50日間以上、例えば60日間以上、例えば70日間以上であることができる。
本実施形態の製造方法では、培地中のグルコースの濃度を所定期間1g/L以上に維持する。ここで、所定期間とは、神経細胞を培養条件下でインキュベートする全期間であってもよいし、例えば、少なくとも培養開始から20日間、例えば22日間、例えば24日間であってもよい。また、培地中のグルコースの濃度は、少なくとも培養開始から30日間、例えば培養開始から35日間、例えば培養開始から40日間、0.2g/L以上に維持することが好ましい。ここで、培養開始とは、単一細胞に解離させた神経細胞を培養容器に播種した時点をいう。
本実施形態の製造方法において、神経細胞は、細胞含有容器の培養面に接着しており、神経細胞と培養面との接着面積は、神経細胞80,000個あたり0.5mm以上であることが好ましく、0.949mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、3.14mm以上であることが更に好ましい。また、神経細胞と培養容器の培養面との接着面積の上限は28.2mm程度であることが好ましい。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(培地中のグルコース濃度の経時変化の検討)
ヒト神経細胞を培養した。また、この過程で、培地中のグルコース濃度の経時変化を測定した。細胞の培地は、1週間に3回交換した。また、培地の交換量を変化させて比較した。
ヒト神経細胞としては、Human iPSC−derived GABAergic Neurons(Elixirgen Scientific社)を使用した。
また、細胞培養容器としては、微小電極アレイ(microelectrode array、MEA)を有するMEAプレート(型番「M768−tMEA−48W」、Axion Biosystems社)を使用した。MEAプレートの培養面をポリエチレンイミン(PEI、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びラミニン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)でコートして使用した。培養容器1ウェルあたりの容量は300μLであった。
神経細胞の播種日(0 days in vitro、以下、「DIV0」という場合がある。)から、5日目(以下、「DIV5」という場合があり、以下同様である。)までは、培地として、製品名「Quick−Neuron(TM) GABAergic Maintenance Medium」(Elixirgen Scientific社)を使用した。この培地中のグルコース濃度は5g/Lであった。DIV6以降は、培地として、製品名「Complete Brainpys Medium」(CDI社)を使用した。この培地中のグルコース濃度は0.5g/Lであった。
培地の交換は次のようにして行った。まず、培養容器から、1回あたり、250μL、150μL又は50μLの培地を吸引した。続いて、吸引した培地と等容量の新しい培地を添加した。培地の交換は1週間に3回行った。吸引した培地は、グルコース濃度の測定に使用した。グルコース濃度の測定には、培地成分解析装置である、FLEX2(ノババイオメディカル社)を使用した。
図1は、培地中のグルコース濃度の経時変化を測定した結果を示すグラフである。横軸は、神経細胞の播種からの培養日数を示し、縦軸は培地中のグルコース濃度(g/L)を示す。
その結果、1週間に3回、1回あたり50μLの培地を交換した場合に培地中のグルコース濃度が最も高く維持されたことが明らかとなった。1回あたり50μLの培地を交換した場合、神経細胞の播種から22日目における培地中のグルコース濃度は約1.4g/Lであった。また、神経細胞の播種から40日目における培地中のグルコース濃度は約0.2g/Lであった。
一方、1週間に3回、1回あたり150μLの培地を交換した場合、神経細胞の播種から22日目における培地中のグルコース濃度は約0.4g/Lであった。また、神経細胞の播種から40日目における培地中のグルコース濃度は約0g/Lであった。
また、1週間に3回、1回あたり250μLの培地を交換した場合、神経細胞の播種から22日目における培地中のグルコース濃度は約0.3g/Lであった。また、神経細胞の播種から40日目における培地中のグルコース濃度は約0g/Lであった。
[実験例2]
(神経細胞の凝集レベルの検討)
実験例1で培養した各神経細胞を顕微鏡で観察し、その凝集レベルを評価した。凝集レベルの評価基準は以下の通りであった。凝集レベルが高くなるほど、神経細胞と培養面との接着面積が小さくなり、神経細胞が培養面から剥離する傾向が認められた。
《凝集レベルの評価基準》
1:神経細胞と培養面との接着面積が、神経細胞80,000個あたり3.14mm以上28.2mm以下であった。
2:神経細胞と培養面との接着面積が、神経細胞80,000個あたり0.949mm以上3.14mm未満であった。
3:神経細胞と培養面との接着面積が、神経細胞80,000個あたり0.196mm以上0.949mm未満であった。
4:神経細胞と培養面との接着面積が、神経細胞80,000個あたり0mm以上0.196mm未満であった。
図2(a)〜(c)は、神経細胞の播種から53日目(DIV53)の各神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図2(a)は、1週間に3回、1回あたり250μLの培地を交換した神経細胞の顕微鏡写真であり、図2(b)は、1週間に3回、1回あたり150μLの培地を交換した神経細胞の顕微鏡写真であり、図2(c)は、1週間に3回、1回あたり50μLの培地を交換した神経細胞の顕微鏡写真である。
その結果、1週間に3回、1回あたり250μLの培地を交換した神経細胞のDIV53における凝集レベルは4であった。また、1週間に3回、1回あたり150μLの培地を交換した神経細胞のDIV53における凝集レベルは3であった。また、1週間に3回、1回あたり50μLの培地を交換した神経細胞のDIV53における凝集レベルは1であった。
この結果から、培地中のグルコース濃度が高く維持された条件で培養した神経細胞は、凝集レベルが低い傾向にあることが明らかとなった。より具体的には、神経細胞の播種から22日目における培地中のグルコース濃度が1g/L以上である神経細胞は、凝集レベルが低い傾向にあることが明らかとなった。更に、神経細胞の播種から40日目における培地中のグルコース濃度が0.2g/L以上である神経細胞は、凝集レベルが低い傾向にあることが明らかとなった。
[実験例3]
(神経細胞の凝集レベルと活動電位の検討)
実験例1と同様にして、神経細胞の播種から42日間培養した神経細胞を顕微鏡で観察し、その凝集レベルを評価した。凝集レベルの評価基準は実験例2と同様であった。また、微小電極アレイを用いて各神経細胞の活動電位を測定し評価した。活動電位の評価基準は以下の通りとし、活動電位の検出可否を判定した。
《活動電位の評価基準》
A:活動電位を良好に検出することができた。
B:活動電位を検出することができた。
C:活動電位を検出することができなかった。
図3(a)は、凝集レベル1と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図3(b)は、凝集レベル2と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図3(c)は、凝集レベル3と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。図3(d)は、凝集レベル4と評価された神経細胞の代表的な顕微鏡写真である。また、下記表1に、凝集レベルと活動電位の評価結果を示す。
Figure 2021159073
その結果、凝集レベル1と評価された神経細胞を用いると、活動電位を良好に検出することができることが明らかとなった。
[実験例4]
(神経細胞の凝集レベルの経時変化の検討)
実験例1と同様にして培養した各神経細胞の凝集レベルの経時変化を観察した。凝集レベルの評価基準は実験例2と同様であった。
図4は、1週間に3回、1回あたり250μL、150μL又は50μLの培地を交換した神経細胞の凝集レベルの経時変化を示すグラフである。その結果、1週間に3回、1回あたり50μLの培地を交換した神経細胞は、神経細胞の播種から56日目においても凝集レベル1を維持したことが明らかとなった。
一方、1週間に3回、1回あたり150μLの培地を交換した神経細胞は、神経細胞の播種から38日目以降に凝集レベルの上昇が認められた。また、1週間に3回、1回あたり250μLの培地を交換した神経細胞は、神経細胞の播種から31日目以降に凝集レベルの上昇が認められた。
この結果は、培地中のグルコース濃度が低いほど、神経細胞の凝集レベルが上昇する傾向にあることを示す。従来、1週間に3回、1回あたり150μLの培地を交換する神経細胞の培養条件が一般的に採用されている。これに対し、1週間に3回、1回あたり50μLの培地を交換する神経細胞の培養条件の方が、神経細胞の凝集レベルを低く維持することができることが明らかになった。
[実験例5]
(培地中のグルコース濃度と神経細胞の凝集レベルとの関連性の検討)
実験例1と同様にして、培地の交換量を様々に変化させて神経細胞を培養した。そして、神経細胞の播種から22日目(DIV22)における神経細胞の培地中のグルコース濃度と、神経細胞の播種から、それぞれ、31日目(DIV31)、38日目(DIV38)、45日目(DIV45)、56日目(DIV56)における神経細胞の凝集レベルとの関連性を検討した。
図5は、検討結果を示すグラフである。図5中、横軸は、DIV22における神経細胞の培地中のグルコース濃度(g/L)を示し、縦軸は、実験例2と同様の評価基準で評価した神経細胞の凝集レベルを示す。
その結果、神経細胞の播種から22日目(DIV22)における神経細胞の培地中のグルコース濃度が1g/L以上であると、31日目(DIV31)、38日目(DIV38)、45日目(DIV45)、56日目(DIV56)においても神経細胞の凝集レベルが低く維持される傾向にあることが明らかとなった。
一方、神経細胞の播種から22日目(DIV22)における神経細胞の培地中のグルコース濃度が1g/L未満であると、31日目(DIV31)、38日目(DIV38)、45日目(DIV45)、56日目(DIV56)における神経細胞の凝集レベルが上昇していく傾向にあることが明らかとなった。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]細胞含有容器であって、神経細胞及び培地を含み、前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり0.5mm以上であり、前記培地中のグルコースの濃度は1g/L以上である、細胞含有容器。
[2]前記培養面に電極アレイが配置されている、[1]に記載の細胞含有容器。
[3]前記神経細胞は、幹細胞由来神経細胞である、[1]又は[2]に記載の細胞含有容器。
[4]前記幹細胞は、ヒト細胞である、[3]に記載の細胞含有容器。
[5]神経細胞及び培地を収容した容器を、所定のタイミングで前記培地を交換しながら、培養条件下でインキュベートする工程を含み、前記培地中のグルコースの濃度を所定期間1g/L以上に維持する、細胞含有容器の製造方法。
[6]前記インキュベートする工程が30日間以上行われる、[5]に記載の製造方法。
[7]前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり3mm以上である、[5]又は[6]に記載の製造方法。
[8]前記培養面に電極アレイが配置されている、[7]に記載の製造方法。
[9]前記神経細胞は、幹細胞由来神経細胞である、[5]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記幹細胞は、ヒト細胞である、[9]に記載の製造方法。
特開2018−117567号公報

Claims (10)

  1. 細胞含有容器であって、
    神経細胞及び培地を含み、
    前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、
    前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり0.5mm以上であり、
    前記培地中のグルコースの濃度は1g/L以上である、
    細胞含有容器。
  2. 前記培養面に電極アレイが配置されている、請求項1に記載の細胞含有容器。
  3. 前記神経細胞は、幹細胞由来神経細胞である、請求項1又は2に記載の細胞含有容器。
  4. 前記幹細胞は、ヒト細胞である、請求項3に記載の細胞含有容器。
  5. 神経細胞及び培地を収容した容器を、所定のタイミングで前記培地を交換しながら、培養条件下でインキュベートする工程を含み、
    前記培地中のグルコースの濃度を所定期間1g/L以上に維持する、
    細胞含有容器の製造方法。
  6. 前記インキュベートする工程が30日間以上行われる、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記神経細胞は、前記細胞含有容器の培養面に接着しており、
    前記神経細胞と前記培養面との接着面積は、前記神経細胞80,000個あたり3mm以上である、請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. 前記培養面に電極アレイが配置されている、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記神経細胞は、幹細胞由来神経細胞である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記幹細胞は、ヒト細胞である、請求項9に記載の製造方法。
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