<第1の実施形態>
図1に、本発明の第1の実施形態によるインフラ資産管理システム1のブロック図を示す。なお、本開示の各図は模式図であり、寸法通りとは限らない。インフラ資産管理システム1は、車両V(自動車)に搭載されたインフラ資産管理装置2、及びインフラ資産3に取り付けられたRFID(Radio Frequency Identification)タグ50を含む。インフラ資産3は、例えば、道路に設置された道路灯、防犯灯などの照明装置である。本実施形態では、インフラ資産3は道路灯であるので、インフラ資産3を道路灯3という場合もある。例えば、車両Vには、ドライバとオペレータ(作業者)が乗車し、作業者がインフラ資産管理装置2を操作することが好ましい。車両Vは、調査及び管理対象のインフラ資産3が存在するエリア、ルートなどを走行する。なお、図1においては1つのインフラ資産3を示すが、実際には複数のインフラ資産3が調査及び管理対象となり得る。
RFIDタグ50は、既設の道路灯3に対して取り付けられてもよいし、道路灯3の製造時に道路灯3に取り付けられてもよい。道路灯3は、道路脇の地面に立設されたポール3a及びポール3aの先端に配置された照明器具3bを備える。RFIDタグ50は、一般的に、ただしこれに限定されないが、長さ10〜20cm、幅2〜5cm、厚さ1〜2cm程度の平板状の物体である。本実施形態では、RFIDタグ50は、ポール3aの表面であって地上1〜2m程度の位置に取り付けられる。また、RFIDタグ50は、道路灯3が設置された場合に道路(車道側)に面するようにポール3aに取り付けられる。ポール3aが鉛直方向に延在する円柱状であることから、RFIDタグ50もその長手方向が鉛直となるようにポール3aに取り付けられる。また、RFIDタグ50は、その管轄に関する表示(例えば、「〇〇市」)、整理番号などが記載された銘版と一体化されていてもよい。RFIDタグ50には、一般的な受動型RFIDタグを用いることができる。
インフラ資産管理装置2は、RFIDアンテナ10、RFIDリーダ/ライタ20、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機30及び処理装置40を備える。なお、RFIDアンテナ10とRFIDリーダ/ライタ20は、別体であってもよいし、一体化されていてもよい。インフラ資産管理装置2の概略の動作は、以下の通りである。インフラ資産管理装置2を搭載した車両Vが走行してRFIDタグ50を有する道路灯3付近を通過すると、RFIDアンテナ10及びRFIDリーダ/ライタ20がRFIDタグ50と通信し、処理装置40がRFIDタグ50のIDを取得する。一方で、処理装置40はGNSS受信機30からの現在位置情報を取得し、RFIDタグ50が取得された時点での測定位置を特定する。これにより、処理装置40は、RFIDタグ50のIDと測定位置とを対応付け、当該IDに対応する道路灯3の存在確認又は位置特定を行う。以下、インフラ資産管理装置2の各部の詳細を説明する。
RFIDタグ50、RFIDアンテナ10及びRFIDリーダ/ライタ20は、標準的なRFID技術に従って動作する。すなわち、RFIDリーダ/ライタ20の制御部(不図示)が、問合せ信号の電波を送信回路(不図示)及びRFIDアンテナ10から送信させる。RFIDタグ50の内蔵アンテナ(不図示)が、RFIDアンテナ10からの問合せ信号を受信すると、RFIDタグ50内で問合せ信号から電力が生成され、内部の制御回路(不図示)及びメモリ(不図示)が動作する。この制御回路は、問合せ信号に対して必要な信号処理を行い、メモリに記憶されたデータから応答信号を生成し、この応答信号の電波を内蔵アンテナから送信させる。RFIDアンテナ10及びRFIDリーダ/ライタ20の受信回路(不図示)が応答信号を受信すると、RFIDリーダ/ライタ20の制御部は応答信号に対してフィルタリング、増幅、復号などの必要な処理を行い、応答信号に対応するデータを抽出する。そして、RFIDリーダ/ライタ20の制御部は、抽出したデータを処理装置40に出力する。
RFIDタグ50並びにRFIDアンテナ10及びRFIDリーダ/ライタ20は、例えば、上記UHF帯(例えば、860MHz〜960MHz)の通信に対応するように構成される。また、RFIDリーダ/ライタ20の制御部は、応答信号の受信強度を測定する受信測定部(不図示)を備えていることが好ましい。この受信測定部は、RFIDアンテナ10が受信した応答信号の受信強度の情報を処理装置40に出力することができる。
RFIDアンテナ10は、ループ状の配線などで形成され、そのループ配線によってアンテナ面が画定される。したがって、RFIDアンテナ10は指向性を有し、その有効通信エリア(例えば、半値角度)は、仕様に応じて20〜90度程度の範囲(すなわち、アンテナ面の法線を中心として10〜45度程度の範囲)である。本実施形態では、単一のRFIDアンテナ10が用いられる。RFIDアンテナ10は、アンテナ面垂直方向に指向性を有するRFIDアンテナ10と道路(車道)に面して取り付けられたRFIDタグ50とが最短距離及び最大信号強度で通信できるような態様で車両Vに設置されることが好ましい。すなわち、アンテナ面法線が車両Vの進行方向(前後方向)に対して垂直となるように、言い換えると、アンテナ面が車両前後方向に平行となるように、RFIDアンテナ10が設置される。例えば、RFIDアンテナ10は、車両Vのルーフ上に上述の向きで設置されることが好ましい。この配置は、好適な通信を可能とするだけでなく、RFIDアンテナ10が車両Vの外部に取り付けられるにもかかわらず車両Vの走行時の空気抵抗を最小化し得る。
また、RFIDアンテナ10が単一のRFIDアンテナからなる前提では、RFIDアンテナ10は、車両Vの車高などの取付け位置の設定に応じて、アンテナ面法線が適宜の垂直角(仰角又は俯角)及び水平角となるように配置される。ただし、RFIDアンテナ10からの送信電波がRFIDタグ50又はポール3aから反射されてRFIDアンテナ10に直接戻るのを回避するために、設置角度(垂直角又は水平角)は0度以外であることが好ましい。RFIDアンテナ10は、その設置角度(垂直角又は水平角)が可変となるように設置されてもよい。あるいは、車両Vの助手席又は後部座席に着席する作業者が、RFIDアンテナ10を車外に向けて保持してもよい。
RFIDタグ50とRFIDアンテナ10との間の距離が約10m以下であれば、上記通信による問合せ信号及び応答信号の送受信が可能である。また、RFIDタグ50のメモリに記憶されたデータ及び生成される応答信号は、少なくともRFIDタグ50のIDを含む。したがって、RFIDアンテナ10を搭載した車両VがRFIDタグ50付きの道路灯3の約10m以内に存在する場合に、RFIDリーダ/ライタ20はRFIDタグ50のIDを取得できる。なお、RFIDタグ50のIDを道路灯3のIDとみなすこともできる。したがって、本開示において、RFIDタグ50又は道路灯3のIDを「資産ID」ともいう。
GNSS受信機30は、GPS、GLONASS、Galileo、BDSなどの全地球測位システムに対応した受信機であり、本実施形態では、GPS受信機である。GNSS受信機30は、所定周期(例えば、300ms程度)で又はより連続的に現在位置情報(測定位置の情報)を取得して処理装置40に出力する。現在位置情報は、緯度及び経度を含む。
処理装置40は、例えば、ノートパソコン、タブレット端末などであり、CPU41、記憶部42、ディスプレイ43、入出力インターフェース(I/F)44及び通信部45を備える。CPU41は、測位データ生成部411、調査結果生成部412、表示制御部413、距離推定部414、測位データ補正部415及び通信制御部416を含む。CPU41の各部、記憶部42、ディスプレイ43、入出力インターフェース44及び通信部45はバスBを介して相互にデータ、信号などの交換が可能となるように接続されている。CPU41は、本開示で明記する機能以外にも一般的なプロセッサとしての機能を果たし得るものである。言い換えると、CPU41に含まれる上記各部以外の処理装置40の機能(例えば、時計機能など)も、CPU41の機能に含まれる。
記憶部42は、各実施形態のインフラ資産管理方法を実行するプログラム(アプリケーション)などのプログラムを記憶するROM、データ又はログなどを一時的に記憶するRAMなどの記憶デバイスを含む。あるいは、記憶部42の一部又は全部は、処理装置40に対して外付けされるメモリデバイス(外付けハードディスク、USBメモリなど)であってもよい。あるいは、記憶部42の一部又は全部は、通信部45によって無線接続されるサーバ(中央サーバ、クラウドサーバなど)であってもよい。本実施形態では、記憶部42は、資産IDと初期位置情報とを対応付けた資産マスタデータを予め記憶している。RFIDタグ50の初期位置情報とは、RFIDタグ50が道路灯3に取り付けられた時に取付け作業員によって測定されたRFIDタグ50、すなわち、道路灯3の設置地点の緯度経度情報である。
ディスプレイ43は、液晶表示装置などの一般的な表示装置である。入出力インターフェース44は、RFIDリーダ/ライタ20、GNSS受信機30などの他の装置との有線接続又は無線接続のための接続インターフェースを含む。また、入出力インターフェース44は、ユーザ入力を受け付けるための入力インターフェース、ディスプレイ43に対する信号出力のための出力インターフェース及び通信部45との通信インターフェースを含み得る。なお、処理装置40がタブレット端末の場合など、処理装置40がタッチパネルを備える場合には、ディスプレイ43が入出力インターフェース44の一部を兼ねる。通信部45は、必要に応じて使用され、3G、4G、LTE、Wi−Fi(登録商標)などの標準的な通信方式によってインターネットなどの通信ネットワークと通信することができる。
測位データ生成部411は、RFIDリーダ/ライタ20によって取得された資産IDと、当該資産IDが取得された時点でGNSS受信機30によって取得されている現在位置情報である測定位置とを対応付けて資産測位データを生成する。測位データ生成部411は、その資産測位データを記憶部42に記憶する。複数の時点において同じ資産IDが取得された場合には、測位データ生成部411は、リーダ/ライタ20からの受信強度の情報に基づいて、応答信号の受信強度が最大となる時点(以下、「ピーク時点」という)での現在位置情報を測定位置として採用する。すなわち、RFIDアンテナ10(車両V)がRFIDタグ50(道路灯3)に最も接近したと推定される時点での現在位置情報が、測定位置として資産測位データに含まれることになる。
調査結果生成部412は、調査対象の道路灯3の在/不在又は設置状況を示す調査結果を生成し、その判定結果を記憶部42に記憶する。所定の資産IDについて資産マスタデータの初期位置及び資産測位データの測定位置の双方が存在する場合には、調査結果生成部412は、当該資産IDに対応する道路灯3が存在することを示す調査結果を生成する。また、所定の資産IDについて資産マスタデータが存在するが資産測位データが存在しない場合には、調査結果生成部412は、当該資産IDに対応する道路灯3が存在しないこと、例えば、撤去されたこと示す調査結果を生成する。
また、調査結果生成部412は、同じ資産IDに対して資産測位データにおける測定位置がマスタデータにおける初期位置の所定距離内にある場合には、当該資産IDに対応する道路灯3の設置状態が維持されていることを示す調査結果を生成する。これは、資産測位データにおける測定位置と資産マスタデータにおける初期位置とが比較的近い場合には、道路灯3は移設又は撤去などされずに初期設置状態が維持されているものと判断するものである。すなわち、道路灯3の設置作業員又はRFIDタグ50の取付け作業員がその設置又は取付け場所で測定した初期位置の方が、インフラ資産管理装置2が道路灯3から若干離れて車道上で測位して取得した測定位置よりも、道路灯3の正確な位置を示す蓋然性が高い。したがって、処理装置40において、測定位置が初期位置の所定距離内にある場合には、初期位置のデータを優先又は重視するように処理が行われる。
また、調査結果生成部412は、同じ資産IDに対して資産測位データにおける測定位置がマスタデータにおける初期位置の所定距離外にある場合には、当該資産IDに対応する道路灯3は移設されたこと示す調査結果を生成する。ここで、測定位置が初期位置の所定距離外にある場合には、調査結果生成部412は、次回調査のために資産マスタデータの初期位置を測定位置に更新してもよい。なお、本開示において、測定位置に更新された後の初期位置も資産マスタデータに含まれる限り「初期位置」というものとする。また、厳密な定義として、所定距離内は所定距離に等しい距離を含み、所定距離外は所定距離に等しい距離を含まないものとする。
上記の所定距離は、任意の適宜の距離に設定される。この所定距離は、RFIDの通信可能距離、RFIDリーダ/ライタ20のデータ読取り時間間隔に起因する誤差、GNSS受信機30のデータ読取り時間間隔に起因する誤差、GNSS受信機30の測位誤差などを考慮した距離であることが好ましい。言い換えると、初期位置と測定位置の差が上記所定距離未満であれば、その差は測定誤差とみなすことができる。
表示制御部413は、測位データ生成部411によって生成された資産測位データ、調査結果生成部412によって生成された調査結果などをディスプレイ43に表示させる。具体的には、一態様として、表示制御部413は、地図、並びに資産測位データにおける資産ID及び地図上の測定位置をディスプレイ43に表示させる。すなわち、調査対象となる道路灯3の資産ID及び測定位置が地図上に表示される。例えば、複数の道路灯3について調査を行う際、資産測位データが得られる度に測定結果がそのまま地図上に追加されていく。これにより、調査の作業者は、作業の結果に関する情報を逐次確認することができる。このように、実際には複数の道路灯3が調査及び管理対象となり得る状況で、道路灯3の測定位置が特定される毎に調査結果が追加され、作業者はその調査及び管理作業の進捗を一覧することができる。
他の態様として、表示制御部413は、地図、資産測位データにおける資産ID、並びに初期位置及び測定位置のうちの調査結果生成部412によって採用された一方の地図上の位置をディスプレイ43に表示させる。この採用された一方とは、測定位置が初期位置の所定距離内にある場合の初期位置の地図上の位置、又は測定位置が初期位置の所定距離外にある場合の測定位置の地図上の位置である。すなわち、調査対象となる道路灯3の資産ID、「維持」の場合の初期位置又は「移設」の場合の測定位置が地図上に表示される。例えば、複数の道路灯3について調査を行う際、資産測位データが得られる度に「維持」又は「移設」の判定結果が地図上に反映及び追加されていく。これにより、調査の作業者は、作業の結果に関する一層正確な情報を逐次確認することができる。実際には複数の道路灯3が調査及び管理対象となり得る状況で、道路灯3の位置が特定される毎に調査結果が追加され、作業者はその調査及び管理作業の進捗を一覧することができる。また、調査終了時に、道路灯3の初期位置を反映した一層正確な調査最終結果が得られる。
他の態様として、表示制御部413は、地図、資産マスタデータにおける資産ID及び地図上の初期位置、並びに資産測位データが生成された場合の地図上の測定位置をディスプレイ43に表示させる。すなわち、調査対象となる道路灯3の資産ID及び初期位置が予め地図上に表示され、これに対して資産測位データが得られる度に測定位置が地図上に追加されていく。予め表示される資産ID及び初期位置は、調査対象となる全ての道路灯3についてのものであってもよいし、一部の道路灯3についてのものであってもよい。この一部の道路灯3とは、例えば、未調査の道路灯3、現在位置に比較的近い全ての道路灯3、現在位置に比較的近い未調査の道路灯3などであり得る。これにより、調査の作業者は、調査及び管理すべき道路灯3の情報及びそれに対する調査結果に関する情報を一覧することができる。また、調査終了時において、作業者は、撤去された道路灯3を容易に把握することができる。
なお、ディスプレイ43上での調査結果の表示は、上記の地図表示に限られず、他の形態の地図表示又はリスト表示であってもよい。地図表示又はリスト表示は、資産ID、初期位置、測定位置、初期位置及び測定位置のうちの採用された一方などの表示を含み得る。また、地図表示又はリスト表示は、調査結果に応じて、在/不在の表示又は「維持」、「移設」若しくは「撤去」の表示を含み得る。また、表示制御部413は、地図表示において、調査すべき複数の道路灯3を最短距離又は最短時間で通過するためのルートを示すナビゲーション表示を行ってもよい。また、表示制御部413は、リスト表示において、調査すべき複数の道路灯3を最短距離又は最短時間で通過するための調査順序を示してもよい(例えば、資産ID順の表示ではなく巡回順序で昇順にソート表示を行ってもよい)。
距離推定部414は、RFIDリーダ/ライタ20の受信測定部から入力される受信強度の情報(及び必要に応じてRFIDリーダ/ライタ20の出力電力の情報)に基づいて、RFIDアンテナ10とRFIDタグ50の間の離隔距離を算出する。RFIDリーダ/ライタ20の出力電力の情報は、記憶部42に予め記憶されてもよいし、RFIDリーダ/ライタ20から処理装置40に出力されてもよい。上記の受信強度と離隔距離との関係は、予め実験又はシミュレーションによって求められる。また、RFIDアンテナ10の設置角(垂直角又は水平角)が記憶部42に記憶されている場合には、その垂直角又は水平角に基づいて、上記離隔距離が平面距離に換算されてもよい。ただし、RFIDアンテナ10の垂直角及び水平角が比較的小さい場合には、RFIDアンテナ10とRFIDタグ50の間の離隔距離は、RFIDアンテナ10とRFIDタグ50の間の平面距離に近似される。離隔距離又は平面距離のいずれの場合であっても、最終的に距離推定部414が算出及び推定する距離を推定距離というものとする。
測位データ補正部415は、資産測位データにおける測定位置が現実の資産設置位置に近づくように、資産測位データにおける測定位置を補正する。測位データ補正部415は、GNSS受信機30から得られる複数の測定位置の軌跡及びRFIDアンテナ10の設置各(水平角)に基づいて、RFIDアンテナ10の指向方向を特定する。そして、測位データ補正部415は、ピーク時点での測定位置(緯度及び経度)、ピーク時点でのRFIDアンテナ10の指向方向、及びピーク時点での推定距離から補正位置を算出する。すなわち、測位データ補正部415は、ピーク時点での測定位置から指向方向に推定距離だけ移動した地点を補正位置として算出する。そして、測位データ補正部415は、資産測位データにおける測定位置を補正位置に更新する。
通信制御部416は、RFIDリーダ/ライタ20から送信する問合せ信号の送信タイミングを制御する。例えば、車両Vを走行速度30km〜60kmで車道を走行させながら車道脇の道路灯3のRFIDタグ50のIDを読み取る場合、通信制御部416は、10ms〜100ms程度の周期で問合せ信号を送信するようにRFIDリーダ/ライタ20を制御すればよい。上記の通信周期は、車速、要求測位精度などに応じて適宜設定され得る。また、通信制御部416は、必要に応じて、通信部45の通信制御を行う。
図2に、本実施形態によるインフラ資産管理方法における処理装置40の動作のフローチャートを示す。図2に示すフローチャートでは1つの道路灯3についての調査及び管理について説明するが、本フローを反復することによって、同様の処理が複数の道路灯3について適用され得る。
ステップS100において、測位データ生成部411が、RFIDリーダ/ライタ20からの資産IDの入力が開始されたか否かを判定する。この資産IDは任意の道路灯3の資産IDであってもよいし、特定の道路灯3の資産IDであってもよい。資産IDの入力が開始されない場合(ステップS100、NO)、処理はステップS105に進み、資産IDの入力が開始された場合(ステップS100、YES)、処理はステップS110に進む。ステップS105において、CPU41は、入出力インターフェース44からのユーザ入力などに基づいて、道路灯3の調査が終了したか否かを判定する。道路灯3の調査が終了していない判定された場合(ステップS105、NO)、処理はステップS100に戻る。道路灯3の調査が終了したと判定された場合(ステップS105、YES)、処理はステップS128に進む。
ステップS110において、測位データ生成部411が、RFIDリーダ/ライタ20から資産ID及び受信強度の情報を取得する。
ステップS111において、測位データ生成部411が、GNSS受信機30から現在位置情報を測定位置として取得する。ステップS110とステップS111は、並行して実行され得る。
ステップS115において、測位データ生成部411が、RFIDリーダ/ライタ20からの資産IDの入力が終了した否かを判定する。資産IDの入力が終了していない場合(ステップS115、NO)、処理はステップS110に戻り、資産IDの入力が終了した場合(ステップS115、YES)、処理はステップS116に進む。
ステップS116において、測位データ生成部411が、受信強度の情報に基づいてピーク時点を特定する。なお、資産IDが一回のみしか取得されていない場合、すなわち、受信強度の値が1つしか存在しない場合には、ステップS116は省略され得る。
ステップS117において、測位データ生成部411は、ステップS110で取得された資産IDと、ピーク時点における測定位置とを対応付けて資産測位データを生成する。
ステップS120において、調査結果生成部412が、当該資産IDの道路灯3が存在することを示す調査結果を生成する。
ステップS121において、調査結果生成部412が、同じ資産IDに対して資産測位データにおける測定位置が資産マスタデータにおける初期位置の所定距離内にあるか否かを判定する。測定位置が初期位置の所定距離内にある場合(ステップS121、YES)、処理はステップS125に進み、測定位置が初期位置の所定距離外にある場合(ステップS120、NO)、処理はステップS126に進む。
ステップS125において、調査結果生成部412は、道路灯3が初期設置位置に維持されていることを示す調査結果を生成する。
ステップS126において、調査結果生成部412は、道路灯3が初期設置位置から移設されたことを示す調査結果を生成する。ステップS126の後のステップS127において、調査結果生成部412は、資産マスタデータの初期位置を測定位置で更新してもよい。
ステップS128において、調査結果生成部412は、道路灯3が初期設置位置から撤去されたこと(又は不在であること)を示す調査結果を生成する。
ステップS130において、距離推定部414が、RFIDアンテナ10を介してRFIDリーダ/ライタ20で測定される受信強度に基づいて、RFIDアンテナ10とRFIDタグ50の間の推定距離を算出する。
ステップS131において、測位データ補正部415が、複数の測定位置の軌跡及びRFIDアンテナ10の設置角度に基づいて、RFIDアンテナ10の指向方向を特定する。
ステップS132において、測位データ補正部415は、ピーク時点での測定位置(緯度及び経度)から指向方向に推定距離だけ移動した地点を補正位置として算出し、資産測位データにおける測定位置を補正位置に更新する。
ステップS140において、表示制御部413が、調査結果を所定の態様でディスプレイ43上に表示させる。なお、ステップS130〜S132の測位データ補正の処理は、ステップS116の後であってステップS140より前のいずれのステップ間に挿入されてもよいし、省略されてもよい。
以上のように、本実施形態のインフラ資産管理装置2は、インフラ資産3(道路灯3)に取り付けられたRFIDタグ50と通信可能なRFIDアンテナ10と、RFIDアンテナ10で受信されたRFIDタグ50からの応答信号から資産IDを取得するためのRFIDリーダ/ライタ20と、現在位置情報を測定位置として取得するためのGNSS受信機30と、資産ID及び当該資産IDが取得された時点での測定位置を相互に対応付けて資産測位データを生成する測位データ生成部411を含む処理装置40を備える。また、本実施形態のインフラ資産管理システム1は、上記のインフラ資産管理装置2と、インフラ資産3(道路灯3)に取り付けられたRFIDタグ50とを備える。
このように、RFIDアンテナ10及びRFIDリーダ/ライタ20によって取得された資産IDと、資産IDの取得時にGNSS受信機30によって取得されている測定位置とが対応付けられて資産測位データが生成される。これにより、短時間かつ省労力でのインフラ資産3の調査及び管理を実現するインフラ資産管理装置2及びインフラ資産管理システム1が実現される。
また、処理装置40は、RFIDタグ50の資産ID及び資産IDに対応する初期位置の情報が資産マスタデータとして予め記憶された記憶部42と、調査結果生成部412とを含む。調査結果生成部412は、資産IDについて、初期位置及び測定位置の双方が存在する場合には資産IDに対応するインフラ資産3が存在することを示す調査結果を生成し得る。これにより、確実なインフラ資産3の存在確認が可能となる。また、調査結果生成部412は、資産IDについて、測定位置が初期位置の所定距離内にある場合にはインフラ資産3の設置状態が維持されていることを示す調査結果を生成し得る。これにより、インフラ資産3の設置状態の維持が確実に把握される。また、調査結果生成部412は、資産IDについて、測定位置が初期位置の所定距離外にある場合にはインフラ資産3が移設されたことを示す調査結果を生成し得る。これにより、インフラ資産3の移設が確実に把握される。また、調査結果生成部412は、資産IDについて、測定位置が初期位置の所定距離外にある場合には資産マスタデータの初期位置を測定位置に更新し得る。これにより、次回のインフラ資産調査が効率化される。
また、処理装置40は、ディスプレイ43と、少なくとも資産測位データをディスプレイ43に表示させる表示制御部413とを含む。これにより、資産測位データなどの視覚的情報性が得られる。一例として、表示制御部413は、地図、並びに資産測位データにおける資産ID及び地図上の測定位置をディスプレイ43に表示させる。これにより、インフラ資産3の測定位置が特定される毎に調査結果が追加され、作業者はその調査及び管理作業の進捗を一覧することができる。また、他の例として、表示制御部413は、地図、資産測位データにおける資産ID、及び測定位置が初期位置の所定距離内にある場合の初期位置又は測定位置が初期位置の所定距離外にある場合の測定位置の地図上の位置をディスプレイ43に表示させてもよい。これにより、インフラ資産3の位置が特定される毎に調査結果が追加され、作業者はその調査及び管理作業の進捗を一覧することができるとともに、調査終了時にはインフラ資産3の初期位置を反映した一層正確な調査最終結果が得られる。また、他の例として、表示制御部413は、地図、資産マスタデータにおける資産ID、地図上の初期位置、及び資産測位データが生成された場合の地図上の測定位置をディスプレイ43に表示させてもよい。これにより、作業者は、調査及び管理すべきインフラ資産3の情報及びそれに対する調査結果に関する情報を一覧することができるとともに、撤去されたインフラ資産3を容易に把握することができる。
また、処理装置40は、RFIDアンテナ10を介してRFIDリーダ/ライタ20で測定される受信強度に基づいてRFIDアンテナ10とRFIDタグ50の間の推定距離を算出する距離推定部414と、測定位置、推定距離及びRFIDアンテナの指向方向に基づいて、資産測位データにおける測定位置を補正及び更新する測位データ補正部415とを備える。これにより、資産測位データにおける測定位置の精度が向上し、インフラ資産3に対するインフラ資産管理の精度が向上する。
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、1台のRFIDアンテナ10が設置される構成について説明したが、本実施形態では、鉛直方向に向きの異なる複数台のRFIDアンテナ10が設置される構成について説明する。本実施形態は、RFID通信の上下方向のダイバシティの向上を図るものである。
図3に、本実施形態によるインフラ資産管理装置2を含むインフラ資産管理システム1のブロック図を示す。図3に示すように、インフラ資産3−1〜3−n(道路灯3−1〜3−n)にはそれぞれRFIDタグ50−1〜50−nが取り付けられる。なお、道路灯3−1〜3−n及びRFIDタグ50−1〜50−nをそれぞれ総称して又はいずれか1つを代表して道路灯3及びRFIDタグ50というものとする。本実施形態において、第1の実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。本実施形態のインフラ資産管理装置2は、RFIDアンテナ10の構成及び通信制御部416の動作が第1の実施形態のものと異なる。
図3に示すように、道路灯3−1〜3−nにおいて、RFIDタグ50−1〜50−nの取り付け位置がそれぞれ異なることが想定される。例えば、既設の道路灯に対するRFIDタグの容易な取付けの観点から、道路灯3−1のRFIDタグ50−1のように、比較的低い位置にRFIDタグが取り付けられることがある。また、取り付けられたRFIDタグの盗難防止、他の装備との干渉回避、歩道の景観の向上などの観点から、道路灯3−2のRFIDタグ50−2のように、比較的高い位置にRFIDタグが取り付けられることもある。また当然に、道路灯3−3のRFIDタグ50−3のように、中間的な位置にRFIDタグが取り付けられることもある。これに対して、RFIDアンテナ10の指向性に起因して、1台のRFIDアンテナ10で種々の高さのRFIDタグ50に対応するのが難しい場合がある。
そこで、本実施形態では、RFIDアンテナ10は、垂直角が異なるRFIDアンテナ10a及び10bからなる。なお、垂直角とは水平面に対する角度であり、仰角又は俯角ということもできる。RFIDアンテナ10bの垂直角は、RFIDアンテナ10aの垂直角よりも大きく、より上向きの指向性を有する。RFIDアンテナ10aの指向角とRFIDアンテナ10bの指向角とは部分的に重複し得る。RFIDアンテナ10aは、比較的低い位置に設置されたRFIDタグ50−1又はRFIDタグ50−1及び50−3と通信可能である。一方、RFIDアンテナ10bは、比較的高い位置に設置されたRFIDタグ50−2又はRFIDタグ50−2及び50−3と通信可能である。すなわち、RFIDタグ50−1の資産IDはRFIDアンテナ10aを介して読み取られ、RFIDタグ50−2の資産IDはRFIDアンテナ10bを介して読み取られ、RFIDタグ50−3の資産IDはRFIDアンテナ10a又は10bを介して読み取られる。
なお、本実施形態では、1台のRFIDリーダ/ライタ20がRFIDアンテナ10a及び10bに対して共通に設けられているが、2台のRFIDリーダ/ライタ20がRFIDアンテナ10a及び10bに対して一対一でそれぞれ設けられてもよい。
通信制御部416は、RFIDアンテナ10aからの問合せ信号とRFIDアンテナ10bからの問合せ信号とを時分割で送信するようにRFIDリーダ/ライタ20の制御部を制御する。これにより、RFIDリーダ/ライタ20の出力電力が制限される場合でも、RFIDアンテナ10a及び10bの各々からの送信強度を確保できる。例えば、空中線電力、すなわち、出力電力は1W以下に設定される。これは、無線局(陸上移動局)に関して他の条件を満たすことを要件として免許が不要となることによる。特に、本実施形態のように、ある程度の信号強度(電波強度)の確保が必要な状況では、上限となる上記出力電力1Wを最大限活用することが望ましい。したがって、本実施形態では、通信制御部416は、RFIDアンテナ10a及び10bを時分割で動作させて、各アンテナにおいて最大出力で信号を送受信させる。例えば、通信制御部416は、RFIDアンテナ10a及び10bの動作を50ms〜100ms周期で交互に切り換える。
RFIDアンテナ10a及び10bは、同種のRFIDアンテナであってもよいし、異種のRFIDアンテナであってもよい。ここで、RFIDアンテナ10a及び10bが車両V上の実質的に同じ位置に配置され、RFIDアンテナ10aがRFIDタグ50−1と通信し、RFIDアンテナ10bがRFIDタグ50−2と通信する状況を想定する。幾何学的な要因により、RFIDアンテナ10aとRFIDタグ50−1との間の距離は、RFIDアンテナ10bとRFIDタグ50−2との間の距離よりも短くなる。なお、説明の便宜上、RFIDアンテナ10aとRFIDタグ50−1の間の通信を「低角通信」といい、RFIDアンテナ10bとRFIDタグ50−2の間の通信を「高角通信」という。
同種(同一の出力電力及び指向角度)のRFIDアンテナが採用される場合、車両Vが道路灯3付近を通過する際に、幾何学的に、低角通信での受信強度は高角通信での受信強度よりも大きくなるが、低角通信での通信期間は高角通信での通信期間よりも短くなる。これについて、低角通信での受信感度を高角通信での受信感度と同等とするために、RFIDアンテナ10aに相対的に低い受信感度のRFIDアンテナを採用し、RFIDアンテナ10bに相対的に高い受信感度のRFIDアンテナを採用してもよい。また、通信制御部416は、低角通信での通信期間を高角通信での通信期間と同等とするために、低角通信に割り当てられる時分割幅を高角通信における時分割幅よりも長くなるように制御してもよい。すなわち、通信制御部416は、RFIDアンテナ10aのデューティをRFIDアンテナ10bのデューティよりも大きくするように時分割制御を行う。また、低角通信での通信期間を高角通信での通信期間と同等とするために、RFIDアンテナ10aに相対的に広い指向角度のRFIDアンテナを採用し、RFIDアンテナ10bに相対的に狭い指向角度のRFIDアンテナを採用してもよい。この場合、同じ時分割幅が、低角通信及び高角通信に割り当てられ得る。
また、RFIDタグ50−3がRFIDアンテナ10a及び10bを介して読み取られる場合、2回のピーク時点が発生することになる。この場合、測位データ生成部411は、高い信号強度で受信された側のピーク時点の測定位置を採用して資産測位データを生成し得る。あるいは、測位データ生成部411は、2回のピーク時点における測定位置を平均して資産測位データを生成してもよい。また、距離推定部414及び測位データ補正部415による測位データ補正の処理は、RFIDアンテナ10a及び10bの各々に関して行われ得る。なお、本実施形態では、2台のRFIDアンテナ10が設けられるが、3台以上のRFIDアンテナ10が設けられてもよい。
以上のように、本実施形態のインフラ資産管理装置2では、RFIDアンテナ10が複数のRFIDアンテナ10a及び10bからなり、RFIDアンテナ10a及び10bの指向方向が垂直角において相互に異なる。これにより、第1の実施形態における効果が得られることに加えて、鉛直方向(上下方向)にRFID通信のダイバシティが得られ、種々のインフラ資産3についての調査及び管理が可能となる。
また、処理装置40は、複数のRFIDアンテナ10a及び10bに時分割でRFIDタグ50と通信させるようにRFIDリーダ/ライタ20を制御する通信制御部416を含む。これにより、RFIDリーダ/ライタ20の出力電力が制限される場合でも、RFIDアンテナ10a及び10bの各々からの送信強度を確保できる。なお、例えば、複数のRFIDアンテナからの出力電力が1W以下であることが好ましい。
<第3の実施形態>
上記第1の実施形態では、1台のRFIDアンテナ10が設置される構成について説明したが、本実施形態では、水平方向に向きの異なる複数台のRFIDアンテナ10が設置される構成について説明する。本実施形態は、インフラ資産3の測定位置の特定精度の向上を図るものである。
図4に、本実施形態によるインフラ資産管理装置2を含むインフラ資産管理システム1のブロック図を示す。本実施形態において、第1又は第2の実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。本実施形態のインフラ資産管理装置2は、RFIDアンテナ10の構成、測位データ生成部411の動作及び通信制御部416の動作が第1の実施形態のものと異なり、測位データ補正部415は省略される。
図5は、本実施形態におけるRFIDアンテナ10の配置を示す車両Vの上面図である。図5に示すように、本実施形態のRFIDアンテナ10は、水平角が異なるRFIDアンテナ10c及び10dを備える。RFIDアンテナ10c及び10dは、同種のRFIDアンテナであってもよいし、異種のRFIDアンテナであってもよい。RFIDアンテナ10c及び10dは、車両Vのルーフ上などに同じ垂直角で(例えば、略水平に)設置される。RFIDアンテナ10cは、そのアンテナ面法線Nc(すなわち、指向方向)が車両Vの前後方向に対する垂線Nvに対してα度だけ前方に傾斜されるように配置される。RFIDアンテナ10dは、そのアンテナ面法線Nd(すなわち、指向方向)が車両Vの前後方向に対する垂線Nvに対してβ度だけ後方に傾斜されるように配置される。ここで、車両Vがある程度道路灯3に接近した状態でRFIDアンテナ10c及び10dがそれぞれ異なる位置(緯度経度)でRFIDタグ50と通信するように、α及びβの各々は0〜45度の範囲内でかつαと−βは相互に相違していることが望ましい。
本実施形態は、概略として、2点の位置(緯度経度)、2点から対象物(道路灯3)までの距離、及び2点を結ぶ線に対する対象物の象限(車両Vの左右のいずれか)の情報があれば、対象物の位置(緯度経度)が特定できるという原理に基づく。図6は、図5に示すRFIDアンテナ10c及び10dの配置を有する車両Vが進路Rを進行方向F(図面右方向)に進む場合を示す。
図6に示すように、車両V(不図示)が地点P1を通過する時点がRFIDアンテナ10cの受信に基づく第1のピーク時点であり、地点P2を通過する時点がRFIDアンテナ10dの受信に基づく第2のピーク時点であるものとする。また、地点P1において、受信強度から推定されるRFIDアンテナ10cとRFIDタグ50の間の推定距離がD1であり、地点P2において、受信強度から推定されるRFIDアンテナ10dとRFIDタグ50の間の推定距離がD2であるものとする。この場合、RFIDタグ50(道路灯3)の位置は、地点P1を中心とする半径D1の円C1と、地点P2を中心とする半径D2の円C2との交点P3又はP4であると推定される。なお、進路Rによって分けられる左側象限QL及び右側象限QRのうち、RFIDアンテナ10c及び10dとも進行方向Fに対して左側象限QLが指向象限となることが(記憶部42に記憶されるなどして)既知であるものとする。これにより、道路灯3の位置は、円C1と円C2の交点P3及びP4のうちの左側象限QLにある位置P3と推定又は特定できる。
上記原理に基づいて、測位データ生成部411は、RFIDアンテナ10cを介した受信に基づいて第1のピーク時点の地点P1の位置(緯度経度)を特定する。同様に、測位データ生成部411は、RFIDアンテナ10dを介した受信に基づいて第2のピーク時点の地点P2の位置(緯度経度)を特定する。各地点の位置の取得方法は、第1の実施形態における測地位置の取得方法と同様である。そして、距離推定部414は、第1のピーク時点でのRFIDリーダ/ライタ20の受信測定部から入力されるRFIDアンテナ10cに関する受信強度に基づいて、RFIDアンテナ10cとRFIDタグ50の間の推定距離D1を算出する。同様に、距離推定部414は、第2のピーク時点でのRFIDリーダ/ライタ20の受信測定部から入力されるRFIDアンテナ10dに関する受信強度に基づいて、RFIDアンテナ10dとRFIDタグ50の間の推定距離D2を算出する。測位データ生成部411は、地点P1を中心とする半径D1の円C1、及び地点P2を中心とする半径D2の円C2を特定し、円C1と円C2の交点のうちの左側象限QLの側の交点P3を特定する。測位データ生成部411は、この交点P3の緯度経度を測位位置として採用し、資産測位データを生成する。
通信制御部416は、第2の実施形態と同様に、RFIDアンテナ10cからの問合せ信号とRFIDアンテナ10dからの問合せ信号とを時分割で送信するようにRFIDリーダ/ライタ20の制御部を制御する。また、本実施形態でも、1台のRFIDリーダ/ライタ20がRFIDアンテナ10c及び10dに対して共通に設けられているが、2台のRFIDリーダ/ライタ20がRFIDアンテナ10c及び10dに対して一対一でそれぞれ設けられてもよい。
以上のように、本実施形態のインフラ資産管理装置2では、RFIDアンテナ10がRFIDアンテナ10c及び10dを備え、RFIDアンテナ10c及び10dの指向方向が水平角において異なる。処理装置40は、RFIDアンテナ10cを介した第1の信号受信時にRFIDリーダ/ライタ20で測定される受信強度に基づいてRFIDアンテナ10cとRFIDタグ50の間の推定距離D1を算出し、RFIDアンテナ10dを介した第2の信号受信時にRFIDリーダ/ライタ20で測定される受信強度に基づいてRFIDアンテナ10dとRFIDタグ50の間の推定距離D2を算出する距離推定部414を含む。測位データ生成部411は、第1の信号受信時の現在位置情報に基づいて地点P1を特定し、第2の信号受信時の現在位置情報に基づいて地点P2を特定し、地点P1を中心として推定距離D1を半径とする円C1と、地点P2を中心として推定距離D2を半径とする円C2との交点P3及びP4のうちの、RFIDアンテナ10c及び10dの指向象限QL側の交点の位置P3を測定位置として特定する。これにより、第1又は第2の実施形態における効果が得られることに加えて、資産測位データにおける測定位置の精度が向上し、インフラ資産3に対するインフラ資産管理の精度が一層向上する。
<変形例>
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は、例えば以下に示すように種々の態様に変形可能である。
(1)インフラ資産3に関する変形
上記各実施形態では、インフラ資産3が道路灯、防犯灯などの照明装置である場合を説明した。ここで、照明装置は、道路灯、防犯灯などのポール一体型のものに限られず、既設の電柱などの支柱に取り付けられる照明器具も含み得る。この場合、RFIDタグ50が照明器具部分に取り付けられる。このようなインフラ資産3の調査及び管理のためには、RFIDアンテナ10は、相応の仰角で設置される必要がある。また、インフラ資産3が照明装置である場合を説明したが、インフラ資産3は照明装置に限られない。インフラ資産3は、RFIDタグを取り付け可能な構造物、例えば、電柱(照明器具が取り付けられているか否かを問わない)、道路標識、道路反射鏡(カーブミラー)、道路脇に設置された消火栓又は消化器、街路樹などであってもよい。
(2)移動手段に関する変形
上記各実施形態では、インフラ資産管理装置2が車両V(自動車)に搭載される例を示したが、インフラ資産管理装置2はバイク、自転車など、他の移動手段に搭載されてもよい。また、インフラ資産管理装置2は、リュック、ヘルメット、プロテクタ、ベルト、ジャケット、ウェアラブルデバイスなど、作業者によって装着可能な形態で構成されてもよい。そして、インフラ資産管理装置2を装着した作業者が、バイク、自転車などの移動手段に乗って調査エリアを走行し、それにより上記インフラ資産管理方法が実行可能となる。この場合、処理装置40は、スマートフォンなどの小型情報端末であってもよいし、ディスプレイ43を備えないコンピュータであってもよい。また、インフラ資産管理装置2は、ドローンなどの飛行物体に装備されてもよい。作業者がこのドローンを操縦してドローンを調査エリアに飛行させ、それにより上記インフラ資産管理方法が実行可能となる。この場合、処理装置40は、ディスプレイ43を備えない。
(3)車両Vの台数に関する変形
上記各実施形態では1台の車両Vが例示されたが、インフラ資産管理システム1に含まれる車両Vは2台以上であってもよい。この場合、各車両Vに搭載されたインフラ資産管理装置2の通信部45がサーバ(不図示)に調査結果を送信し、当該サーバが、収集された調査結果を他の各車両Vに搭載されたインフラ資産管理装置2に通知してもよい。ここで、複数の車両Vは、同一の調査対象の調査を担当する車両であってもよいし、異なる調査対象の調査を担当する車両であってもよい。そして、同一のインフラ資産3について複数の資産測位データが収集された場合には、これらの測定位置を平均化して資産測位データの信頼性を高めることができる。また、同一のインフラ資産3に対して重複した調査を回避するために、調査済みのインフラ資産3に関する情報をサーバから該当の車両Vのインフラ資産管理装置2に通知するようにしてもよい。これにより、重複労働が回避されて調査が効率化される。
<付記>
なお、本発明は、上述した態様に加えて又はそれととともに、以下の態様も含む。
一態様において、前記処理装置は、ディスプレイと、少なくとも前記資産測位データを前記ディスプレイに表示させる表示制御部とを含む。これにより、資産測位データの視覚的情報性が得られる。
一態様において、前記表示制御部は、地図、並びに前記資産測位データにおける前記資産ID及び前記地図上の前記測定位置を前記ディスプレイに表示させるように構成される。これにより、インフラ資産の測定位置が特定される毎に調査結果が追加され、作業者はその調査及び管理作業の進捗を一覧することができ、作業の効率化が可能となる。
一態様において、前記表示制御部は、地図、前記資産測位データにおける前記資産ID、及び前記測定位置が前記初期位置の前記所定距離内にある場合の前記初期位置の地図上の位置又は前記測定位置が前記初期位置の前記所定距離外にある場合の前記初期位置の前記地図上の位置を前記ディスプレイに表示させるように構成される。これにより、インフラ資産の位置が特定される毎に調査結果が追加され、作業者はその調査及び管理作業の進捗を一覧することができるとともに、調査終了時において、インフラ資産の初期位置を反映した一層正確な調査最終結果が得られる。
一態様において、前記表示制御部は、地図、前記資産マスタデータにおける前記資産ID、前記地図上の前記初期位置、及び前記資産測位データが生成された場合の前記地図上の前記測定位置を前記ディスプレイに表示させるように構成される。これにより、作業者は、調査及び管理すべきインフラ資産の情報及びそれに対する調査結果に関する情報を一覧することができるとともに、調査終了時において、撤去されたインフラ資産を容易に把握することができる。
一態様において、前記処理装置は、前記RFIDアンテナを介して前記RFIDリーダ/ライタで測定される受信強度に基づいて前記RFIDアンテナと前記RFIDタグの間の推定距離を算出する距離推定部と、前記測定位置、前記推定距離及び前記RFIDアンテナの指向方向に基づいて、前記資産測位データにおける前記測定位置を補正及び更新する測位データ補正部とを含む。これにより、資産測位データにおける測定位置の精度が向上し、インフラ資産管理の精度が向上する。
一態様において、前記RFIDアンテナは複数のRFIDアンテナを備え、前記複数のRFIDアンテナの指向方向は垂直角において相互に異なる。これにより、鉛直方向(上下方向)にRFID通信のダイバシティが得られ、種々のインフラ資産についての調査及び管理が可能となる。
一態様において、前記RFIDアンテナは第1及び第2のRFIDアンテナを備え、該第1及び第2のRFIDアンテナの指向方向は水平角において相互に異なり、前記処理装置は、前記第1のRFIDアンテナを介した第1の信号受信時に前記RFIDリーダ/ライタで測定される受信強度に基づいて前記第1のRFIDアンテナと前記RFIDタグの間の第1の推定距離を算出し、前記第2のRFIDアンテナを介した第2の信号受信時に前記RFIDリーダ/ライタで測定される受信強度に基づいて前記第2のRFIDアンテナと前記RFIDタグの間の第2の推定距離を算出する距離推定部を含み、前記測位データ生成部は、前記第1の信号受信時の前記現在位置情報に基づいて第1の地点を特定し、前記第2の信号受信時の前記現在位置情報に基づいて第2の地点を特定し、前記第1の地点を中心として前記第1の推定距離を半径とする第1の円と、前記第2の地点を中心として前記第2の推定距離を半径とする第2の円との交点のうちの、前記第1及び第2のRFIDアンテナの指向象限側の交点の位置を前記測定位置として特定するように構成される。これにより、資産測位データにおける測定位置の精度が向上し、インフラ資産に対するインフラ資産管理の精度が一層向上する。
一態様において、前記処理装置は、前記複数のRFIDアンテナに時分割で前記RFIDタグと通信させるように前記RFIDリーダ/ライタを制御する通信制御部を含む。これにより、RFIDリーダ/ライタの出力電力が制限される場合でも、RFIDアンテナの各々からの送信強度を確保できる。例えば、複数のRFIDアンテナからの出力電力が1W以下であることが好ましい。
一態様において、本発明のインフラ資産管理システムは、上記いずれかのインフラ資産管理装置と、前記インフラ資産に取り付けられた前記RFIDタグとを備える。これにより、上記効果を奏するインフラ資産管理システムが実現される。
一態様において、本発明のインフラ資産管理方法は、RFIDアンテナ及びRFIDリーダ/ライタによって、インフラ資産に取り付けられたRFIDタグから資産IDを取得するステップと、GNSS受信機によって現在位置情報を測定位置として取得するステップと、処理装置のCPUによって、前記資産ID及び該資産IDが取得された時点での前記測定位置を相互に対応付けて資産測位データを生成するステップとを備える。本方法によると、RFIDアンテナ及びRFIDリーダ/ライタによって取得された資産IDと、資産IDの取得時にGNSS受信機によって取得されている測定位置とが対応付けられて資産測位データが生成される。これにより、短時間かつ省労力でのインフラ資産の調査及び管理が可能となる。
一態様において、上記方法は、前記CPUによって、前記RFIDタグの前記資産ID及び該資産IDに対応する初期位置の情報を記憶部から読み出し、前記資産IDについて、前記初期位置及び前記測定位置の双方が存在する場合には前記インフラ資産が存在することを示す調査結果を生成するステップを備える。これにより、確実なインフラ資産の存在確認が可能となる。
一態様において、上記方法は、前記CPUによって、前記RFIDタグの前記資産ID及び該資産IDに対応する初期位置の情報を記憶部から読み出し、前記資産IDについて、測定位置が初期位置の所定距離内にある場合にはインフラ資産の設置状態が維持されていることを示す調査結果を生成するステップを備える。これにより、インフラ資産の設置状態の維持が確実に把握される。
一態様において、上記方法は、前記CPUによって、前記RFIDタグの前記資産ID及び該資産IDに対応する初期位置の情報を記憶部から読み出し、前記資産IDについて、前記測定位置が前記初期位置の所定距離外にある場合には前記インフラ資産が移設されたことを示す調査結果を生成するステップを備える。これにより、インフラ資産の移設が確実に把握される。
一態様において、上記方法は、前記CPUによって、前記RFIDタグの前記資産ID及び該資産IDに対応する初期位置の情報を記憶部から読み出し、前記資産IDについて、前記測定位置が前記初期位置の所定距離外にある場合には前記資産マスタデータの前記初期位置を前記測定位置に更新するステップを備える。これにより、次回のインフラ資産調査が効率化される。