JP2021157158A - 偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム - Google Patents

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Abstract

【課題】偏光ビームスプリッタに使用した場合に鮮明な映像が得られる樹脂製プリズムを提供する。【解決手段】偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム3は、位相差の絶対値の平均が10nm以下であり、クロロホルムに溶解して得た2.0質量%溶液について、励起波長436nmで測定したときの波長530nmにおける蛍光強度から、フルオレセインのエタノール溶液の濃度−強度換算式を用いて求めた蛍光発光性物質の含有量が、0.1〜4.0×10-9mol/Lであることを特徴としている。【選択図】図1

Description

本発明は、偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムに関する。
偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)は、入射光をP偏光成分とS偏光成分とに分割することができる偏光分離素子であり、光学ピックアップ、反射型液晶プロジェクタ等に用いられる。近年、VR(Virtual Reality;仮想現実感)、AR(Augmented Reality;拡張現実感)と呼ばれる各種電子技術が急速に発展し、その画像表示装置としてヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)製品が普及しはじめており、その画像投影部又は画像表示部に偏光ビームスプリッタを配置する光学系が提案されている。(特許文献1〜2)。
一方で、ヘッドマウントディスプレイは頭部に装着して使用する画像表示装置であるために、小型・軽量で装着時の不快感が少ないことが求められている。そのため、プリズム形状の偏光ビームスプリッタの軽量化の目的で、従来のガラス製のプリズムを樹脂化する提案がなされている。樹脂は、成形加工時に生じる配向や応力歪みによって複屈折が生じやすいため、応力歪みが発生しにくいプリズム形成方法や、複屈折が発生しづらい樹脂材料を用いることにより、複屈折を低減した樹脂製プリズムを用いることが提案されている。(特許文献3〜4)。
特開2002−116409号公報 特開2015−161737号公報 特表2015−532729号公報 特開2018−156081号公報
しかしながら、本発明者らの検討の結果、樹脂製のプリズムを用いた偏光ビームスプリッタにおいて、単にプリズムの複屈折を低減しただけでは十分に鮮明な映像が得られないことが判明した。
従って、本発明の目的は、鮮明な映像が得られる偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、低複屈折性の樹脂を用いて形成したプリズムを用いて形成した偏光ビームスプリッタにおいて、意外にもプリズム中に含まれる蛍光発光性物質の含有量が、偏光ビームスプリッタを通して得られる映像の鮮明度に影響することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
位相差の絶対値の平均が10nm以下であり、
クロロホルムに溶解して得た2.0質量%溶液について、励起波長436nmで測定したときの波長530nmにおける蛍光強度から、フルオレセインのエタノール溶液の濃度−強度換算式を用いて求めた蛍光発光性物質の含有量が、0.1〜4.0×10-9mol/Lである
ことを特徴とする、偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[2]
ガラス転移温度(Tg)が120℃超160℃以下である、[1]に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[3]
光弾性係数の絶対値が3.0×10-12Pa-1以下である、[1]又は[2]に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[4]
メタクリル系樹脂を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[5]
前記メタクリル系樹脂が、主鎖に環構造を有する構造単位(X)を有するメタクリル系樹脂を含む、[4]に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[6]
前記構造単位(X)が、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、[5]に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[7]
前記構造単位(X)が、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を含む、[5]に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
[8]
前記構造単位(X)が、グルタルイミド系構造単位を含む、[5]に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
本発明によれば、鮮明な映像が得られる偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを提供することができる。
図1は、実施例において、本発明の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを用いた偏光ビームスプリッタの特性を評価するために作製した実験系の概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム]
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、プリズムの位相差の絶対値の平均が10nm以下であり、クロロホルムに溶解して得た2.0質量%溶液について、励起波長436nmで測定したときの波長530nmにおける蛍光強度から、フルオレセインのエタノール溶液の濃度−強度換算式を用いて求めた蛍光発光性物質の含有量が、0.1〜4.0×10-9mol/Lであることを特徴とする。
−プリズムの位相差−
本実施形態における偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、プリズムの位相差の絶対値の平均が10nm以下であり、好ましくは8nm以下であり、より好ましくは6nm以下である。位相差の絶対値の平均が10nm以下であることにより、消光率が高く鮮明な映像を提供する偏光ビームスプリッタを得ることができる。
ここで、プリズムの位相差は、偏光ビームスプリッタとした場合の透過光のプリズム内での光路長と等しい光路長にて測定したものであり、具体的には後述の実施例記載の方法で測定することができる。
−蛍光発光性物質の含有量−
本実施形態における偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、プリズムをクロロホルムに溶解して得た2.0質量%溶液について、励起波長436nmで測定したときの波長530nmにおける蛍光強度から、フルオレセインのエタノール溶液の濃度−強度換算式を用いて求めた蛍光発光性物質の含有量が、0.1〜4.0×10-9mol/Lであり、好ましくは0.2〜3.5×10-9mol/Lであり、より好ましくは0.3〜3.0×10-9mol/L、さらに好ましくは0.3〜2.5×10-9mol/Lである。蛍光発光性物質の含有量が上記上限以下であることにより、色調再現度が高い映像を得ることができ、映像がぼやけずに鮮明に視認することができる。また、蛍光発光性物質の含有量が上記下限以上であることにより、目に有害な低波長の光が必要以上に目に入ることを抑制できる。
蛍光強度が高い(蛍光発光性物質の含有量が多い)場合に映像がぼやけて見える原因は定かではないが、プリズムを透過中の光によって蛍光を生じた場合に、元の透過光の進行方向以外にも光が向かうことによって映像がぼやけて見えるものと推定される。
なお、蛍光発光性物質の含有量は、樹脂製プリズムの表面にハードコートや反射防止コートが施されている場合には、それらのコートを除いて測定を行う。具体的には後述の実施例記載の方法で測定することができる。
−ガラス転移温度−
本実施形態における偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムのガラス転移温度(Tg)は、120℃超160℃以下であることが好ましい。
偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムのガラス転移温度が120℃を超えていることが、ヘッドマウントディスプレイ等の表示機器類からの発熱に対する耐熱性の観点や寸法変化に伴う光弾性複屈折の発生の観点から好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、使用環境温度下での寸法安定性の観点から、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
一方、ガラス転移温度(Tg)が160℃以下である場合には、極端な高温での溶融加工を避け、樹脂等の熱分解を抑制し、良好な製品を得ることができる。ガラス転移温度(Tg)は、上述の効果が一層得られる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121に準拠して測定することにより決定できる。具体的には、後述の実施例記載の方法で求めることができる。
−光弾性係数CR
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムの光弾性係数CRの絶対値|CR|は、3.0×10-12Pa-1以下であることが好ましく、より好ましくは2.0×10-12Pa-1以下であり、さらに好ましくは1.5×10-12Pa-1以下であり、更に好ましくは1.0×10-12Pa-1以下である。光弾性係数に関しては種々の文献に記載があり(例えば、化学総説,No.39,1998(学会出版センター発行)参照)、下記式(i−a)及び(i−b)により定義されるものである。光弾性係数CRの値がゼロに近いほど、外力による複屈折変化が小さいことがわかる。
|CR|=|Δn|/σR ・・・(i−a)
|Δn|=|nx−ny| ・・・(i−b)
(式中、CRは、光弾性係数、σRは、伸張応力、|Δn|は複屈折の絶対値、nxは、伸張方向の屈折率、nyは、面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率、をそれぞれ示す。)
本実施形態の樹脂製プリズムの光弾性係数CRの絶対値|CR|が3.0×10-12Pa-1以下であれば、プリズムを固定する際に生じる応力や寸法温度変化に伴って生じる光弾性複屈折が十分小さく、鮮明な映像が得られる樹脂製プリズムが得られる。
なお、光弾性係数CRの測定は、樹脂製プリズムを細断後、真空圧縮成形機を用いてプレスフィルムとすることで行う。樹脂製プリズムの表面にハードコートや反射防止コートが施されている場合には、それらのコートを除いて測定を行う。具体的には後述の実施例記載の方法で求めることができる。
−光透過率−
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、分光色彩計を用いてD65光源10°視野で測定した最厚部における光透過率について、波長680nmにおける透過率(T680)に対する、波長450nmにおける透過率(T450)の比率(T450/T680)が0.95〜1.03であることが好ましく、0.97〜1.01であることがより好ましく、0.98〜1.00であることがさらに好ましい。比率(T450/T680)が上記範囲内であると、良好な色調の映像を得ることができる。
なお、光透過率は、具体的には後述の実施例記載の方法で測定することができる。
−分子量及び分子量分布−
本実施形態における偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは80,000〜170,000の範囲であり、より好ましくは100,000〜160,000の範囲であり、より好ましくは100,000〜150,000の範囲であり、さらに好ましくは120,000〜150,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあると、機械的強度及び流動性のバランスにも優れる。
なお、樹脂製プリズムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、下記の装置、及び条件で測定することができる。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本、を順に直列接続して使用する。
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min、内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/Lで添加する。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
サンプル:0.02gの樹脂製プリズムのテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメチルメタクリレート(PolymerLaboratories製;PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いる。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、樹脂製プリズムの溶出時間に対する、RI検出強度を測定する。
上記、検量線用標準サンプルの測定により得られた各検量線を基に、樹脂製プリズムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びZ平均分子量(Mz)を求め、その値を用い、分子量分布(Mw/Mn)及び(Mz/Mw)を決定する。なお、樹脂製プリズムの表面にハードコートや反射防止コートが施されている場合には、それらのコートを除いて測定を行う。
−メタノール不溶分−
本実施形態における偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムのメタノール不溶分の量の、メタノール不溶分の量とメタノール可溶分の量との合計量100質量%に対する割合は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは95.5質量%以上であり、さらに好ましくは96質量%以上であり、よりさらに好ましくは96.5質量%以上であり、特に好ましくは97質量%以上であり、最も好ましくは97.5質量%以上である。メタノール不溶分の量の割合を95質量%以上とすることで、射出成形時のシルバーストリークス発生等の成形時のトラブルを抑制することができる。
なお、メタノール不溶分及びメタノール可溶分は、偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムをクロロホルムに溶解してクロロホルム溶液とした後に、溶液を大過剰量のメタノール中に滴下することによって再沈殿を行い、濾液及び濾物を分別し、その後に各々を乾燥させることによって得られたものを言う。樹脂製プリズムの表面にハードコートや反射防止コートが施されている場合には、それらのコートを除いて測定を行う。
具体的には、次のようにして求めることができる。樹脂製プリズム5gをクロロホルム100mLに溶解させた後、溶液を滴下漏斗に入れ、撹拌子を用いて撹拌している1Lのメタノール中に約1時間かけて滴下して、再沈殿を行う。全量滴下後、1時間静置した後に、メンブランフィルター(アドバンテック東洋株式会社製、T050A090C)をフィルターとして用いて、吸引濾過を行う。濾物は60℃で16時間真空乾燥してメタノール不溶分とする。また、濾液はロータリーエバポレーターを、バス温度を40℃として、真空度を初期設定の390Torrから徐々に下げて最終的に30Torrとして、溶媒を除去した後、ナス形フラスコに残存している可溶分を回収し、メタノール可溶分とする。メタノール不溶分の質量及びメタノール可溶分の質量の各々を秤量し、メタノール可溶分の量の、メタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量(100質量%)に対する割合(質量%)(メタノール可溶分率)を算出する。
[樹脂組成物]
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、メタクリル系樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
[メタクリル系樹脂]
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムに含まれるメタクリル系樹脂は、主鎖に環構造を有する構造単位(X)とメタクリル酸エステル単量体由来の構造単位とを有するメタクリル系樹脂を含むことが好ましい。メタクリル系樹脂、特に主鎖に環構造を有する構造単位(X)とメタクリル酸エステル単量体単位とを含むメタクリル系樹脂を含むことにより、プリズムの位相差が十分に小さく、また、光弾性係数も十分に小さい樹脂製プリズムを得ることができる。
以下、各構造単位について説明する。
−メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位−
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位としては、例えば、以下に示すメタクリル酸エステル類から選ばれる単量体に由来する構造単位が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸ジシクロオクチル、メタクリル酸トリシクロドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸1−フェニルエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸3−フェニルプロピル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル等が挙げられる。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用する場合もある。
上記メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位としては、得られるメタクリル系樹脂の透明性や耐候性が優れる点で、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ベンジルに由来する構造単位であることが好ましい。
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位は、一種のみ含有していても、二種以上含有していてもよい。
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、主鎖に環構造を有する構造単位(X)とメタクリル酸エステル単量体由来の構造単位との比率を適宜調節することにより、成形時の配向や残留応力によって生じる複屈折を低下させ、位相差の絶対値の平均が10nm以下の樹脂製プリズムを得ることができる。また、上記比率を適宜調節することにより、メタクリル系樹脂に対して耐熱性を十分に付与することができる。これらの観点から、メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量%として、好ましくは50〜97質量%、より好ましくは55〜97質量%、さらに好ましくは55〜95質量%、さらにより好ましくは60〜93質量%、特に好ましくは60〜90質量%である。
なお、メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位の含有量は、1H−NMR測定及び13C−NMR測定により求めることができる。1H−NMR測定及び13C−NMR測定は、例えば、測定溶媒としてCDCl3又はDMSO−d6を用い、測定温度40℃で行うことができる。
以下、主鎖に環構造を有する構造単位(X)について説明する。
主鎖に環構造を有する構造単位(X)としては、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましく、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位のみからなることがより好ましい。主鎖に環構造を有する構造単位(X)は、一種であってもよいし複数種を組み合わせてもよい。
−N−置換マレイミド単量体由来の構造単位−
次に、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位について説明する。
N−置換マレイミド単量体由来の構造単位は、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造単位としてよく、好ましくは、下記式(1)及び下記式(2)で表される構造単位の両方から形成される。
Figure 2021157158
式(1)中、R1は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基のいずれかを示し、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基のいずれかを示す。
また、R2又はR3がアリール基の場合には、R2又はR3は置換基としてハロゲン原子を含んでいてもよい。
また、R1は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ベンジル基等の置換基で置換されていてもよい。
Figure 2021157158
式(2)中、R4は、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基のいずれかを示し、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基のいずれかを示す。
以下、具体的な例を示す。
式(1)で表される構造単位を形成する単量体(N−アリールマレイミド類、N−芳香族置換マレイミド等)としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−アントラセニルマレイミド、3−メチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、3,4−ジメチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1,3−ジフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1,3,4−トリフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン等が挙げられる。
これらの単量体のうち、得られるメタクリル系樹脂の耐熱性、及び複屈折等の光学的特性が優れる点から、N−フェニルマレイミド及びN−ベンジルマレイミドが好ましい。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いる場合もある。
式(2)で表される構造単位を形成する単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、1−シクロヘキシル−3−メチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3,4−ジメチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3,4−ジフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン等が挙げられる。
これらの単量体のうち、メタクリル系樹脂の耐候性が優れる点から、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましく、近年光学材料に求められている低吸湿性に優れることから、N−シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いることもできる。
本実施形態のメタクリル系樹脂において、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを併用して用いることが、高度に制御された複屈折特性を発現させ得る
上で特に好ましい。
式(1)で表される構造単位の含有量(X1)の、式(2)で表される構造単位の含有量(X2)に対するモル割合、(X1/X2)は、好ましくは0超15以下、より好ましくは0超10以下である。
モル割合(X1/X2)がこの範囲にあるとき、本実施形態の樹脂製プリズムは透明性を維持し、黄変を伴わず、また耐環境性を損なうことなく、良好な耐熱性と良好な光弾性特性を発現する。
N−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量%として、好ましくは5〜40質量%の範囲、より好ましくは5〜35質量%の範囲である。
この範囲内にあるとき、メタクリル系樹脂はより十分な耐熱性改良効果が得られ、また、耐候性、低吸水性、光学特性についてより好ましい改良効果が得られる。なお、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量を40質量%以下とすることが、重合反応時に単量体成分の反応性が低下し未反応で残存する単量体量が多くなることによるメタクリル系樹脂の物性低下を防ぐのに有効である。
また、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量をこの範囲内で適宜調節することにより、成形時の配向や残留応力によって生じる複屈折を低下させ、位相差の絶対値の平均が10nm以下の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを得ることができる。N−置換マレイミドの種類によって最適なN−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量は異なるが、例えば、メタクリル酸エステル単量体としてメタクリル酸メチル、N−置換マレイミド単量体としてN−フェニルマレイミドとN−シクロヘキシルマレイミドとを用いた場合には、メタクリル酸メチル由来の構造単位79〜83質量%、N−フェニルマレイミド由来の構造単位6〜8質量%、N−シクロヘキシルマレイミド由来の構造単位11〜13質量%の範囲内で調節することが好ましい。
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、メタクリル酸エステル単量体及びN−置換マレイミド単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位を含有していてもよい。
例えば、上記共重合可能な他の単量体としては、芳香族ビニル;不飽和ニトリル;シクロヘキシル基、ベンジル基、又は炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸エステル;グリシジル化合物;不飽和カルボン酸類;等を挙げることができる。
上記芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、等が挙げられる。
上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記グリシジル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの半エステル化物又は無水物等が挙げられる。
上記共重合可能な他の単量体由来の構造単位は、一種のみ有していてもよく、二種以上を有していてもよい。
これら共重合可能な他の単量体由来の構造単位の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量%として、0〜10質量%であることが好ましく、0〜9質量%であることがより好ましく、0〜8質量%であることがさらに好ましい。
他の単量体由来の構造単位の含有量がこの範囲にあると、主鎖に環構造を導入する本来の効果を損なわずに、樹脂の成形加工性や機械的特性を改善できるため好ましい。
なお、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量、並びに共重合可能な他の単量体由来の構造単位の含有量は、1H−NMR測定及び13C−NMR測定により求めることができる。1H−NMR測定及び13C−NMR測定は、例えば、測定溶媒としてCDCl3又はDMSO−d6を用い、測定温度40℃で行うことができる。
−グルタルイミド系構造単位−
主鎖にグルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂としては、例えば、特開2006−249202号公報、特開2007−009182号公報、特開2007−009191号公報、特開2011−186482号公報、再公表特許2012/114718号公報等に記載されている、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂が挙げられ、当該公報に記載されている方法により形成することができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するグルタルイミド系構造単位は、樹脂重合後に形成されてよい。
具体的には、グルタルイミド系構造単位は、下記一般式(3)で表されるものとしてよい。
Figure 2021157158
上記一般式(3)において、好ましくはR7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R9は、水素原子、メチル基、ブチル基、シクロヘキシル基のいずれかであり、より好ましくは、R7は、メチル基であり、R8は、水素原子であり、R9は、メチル基である。
グルタルイミド系構造単位は、単一の種類のみを含んでいてもよいし、複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂において、グルタルイミド系構造単位の含有量については、メタクリル系樹脂を100質量%として、好ましくは3〜70質量%の範囲、より好ましくは3〜60質量%の範囲である。
グルタルイミド系構造単位の含有量が上記範囲にあると、成形加工性、耐熱性、及び光学特性の良好な樹脂が得られることから好ましい。
また、グルタルイミド系構造単位の含有量をこの範囲内で適宜調節することにより、成形時の配向や残留応力によって生じる複屈折を低下させ、位相差の絶対値の平均が10nm以下の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを得ることができる。一般式(3)のR7〜R9の置換基の種類によって最適なグルタルイミド系構造単位の含有量は異なるが、例えば、R7及びR8が水素原子、R9がメチル基の場合、グルタルイミド系構造単位の含有量が3〜10質量%の範囲にあると、成形時の配向や残留応力によって生じる複屈折を低下させ、位相差の絶対値の平均が10nm以下の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを得ることができる。
なお、メタクリル系樹脂におけるグルタルイミド系構造単位の含有量は、前述の特許文献記載の方法を用いて決定できる。
グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体単位をさらに含んでいてもよい。
芳香族ビニル単量体としては特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレンが挙げられ、スチレンが好ましい。
グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂における芳香族ビニル単位の含有量としては、特に限定されないが、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂を100質量%として、0〜20質量%が好ましい。
芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲にあると、耐熱性と優れた光弾性特性との両立が可能となり好ましい。
例えば、メタクリル酸エステル単量体としてメタクリル酸メチル、芳香族ビニル単量体としてスチレンを用いて共重合して得られるメタクリル酸メチル−スチレン共重合体をグルタルイミド化して樹脂を得る場合、メタクリル酸メチル由来の構造単位65〜90質量%、スチレン由来の構造単位5〜15質量%、グルタルイミド系構造単位5〜20質量%の範囲内で調節することにより、成形時の配向や残留応力によって生じる複屈折を低下させ、位相差の絶対値の平均が10nm以下の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを得ることができる。
−ラクトン環構造単位−
主鎖にラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂は、例えば、特開2001−151814号公報、特開2004−168882号公報、特開2005−146084号公報、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報、特開2007−297620号公報、特開2010−180305号公報等に記載されている方法により形成することができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂を構成するラクトン環構造単位は、樹脂重合後に形成されてよい。
本実施形態におけるラクトン環構造単位としては、環構造の安定性に優れることから6員環であることが好ましい。
6員環であるラクトン環構造単位としては、例えば、下記一般式(4)に示される構造が特に好ましい。
Figure 2021157158
上記一般式(4)において、R10、R11及びR12は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜20の有機残基である。
有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等);エテニル基、プロペニル基等の炭素数2〜20の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等);フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基(アリール基等);これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;等が挙げられる。
ラクトン環構造単位は、例えば、ヒドロキシ基を有するアクリル酸系単量体と、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル単量体とを共重合して、分子鎖にヒドロキシ基とエステル基又はカルボキシル基とを導入した後、これらヒドロキシ基とエステル基又はカルボキシル基との間で、脱アルコール(エステル化)又は脱水縮合(以下、「環化縮合反応」ともいう)を生じさせることにより形成することができる。
重合に用いるヒドロキシ基を有するアクリル酸系単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアルキル部位を有する単量体である2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸や2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルであり、特に好ましくは2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルである。
主鎖にラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂におけるラクトン環構造単位の含有量は、メタクリル系樹脂100質量%に対して、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜35質量%である。
ラクトン環構造単位の含有量がこの範囲にあると、成形加工性を維持しつつ、耐溶剤性向上や表面硬度向上等の環構造導入効果が発現できる。また、ラクトン環構造単位の含有量をこの範囲内で適宜調節することにより、成形時の配向や残留応力によって生じる複屈折を低下させ、位相差の絶対値の平均が10nm以下の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを得ることができる。
なお、メタクリル系樹脂におけるラクトン環構造の含有量は、前述の特許文献記載の方法を用いて決定できる。
主鎖にラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂は、上述したメタクリル酸エステル単量体及びヒドロキシ基を有するアクリル酸系単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。
このような共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等の重合性二重結合を有する単量体等が挙げられる。
これら他のモノマー(構成単位)は、1種のみを有していてもよいし2種以上有していてもよい。
これら共重合可能な他の単量体由来の構造単位の含有量としては、メタクリル系樹脂100質量%に対して、0〜20質量%であることが好ましく、耐候性の観点からは、10質量%未満であることがより好ましく、7質量%未満であることがさらに好ましい。
本実施形態におけるメタクリル系樹脂は、上記の共重合可能な他の単量体由来の構造単位を一種のみ有していてもよく、二種以上を有していてもよい。
本実施形態におけるメタクリル系樹脂は、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、ラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を有することが好ましく、その中でも、特に、他の熱可塑性樹脂をブレンドすること無く、光弾性係数等の光学特性を高度に制御しやすい点から、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有することが特に好ましい。また、特に、高強度の樹脂製プリズムを得る観点からは、グルタルイミド系構造単位を有することが特に好ましい。
[メタクリル系樹脂の製造方法]
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法について説明する。
−N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法−
主鎖にN−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂(以下、「マレイミド共重合体」と記す場合がある)の製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれの重合方法が挙げられ、樹脂製プリズム中に含まれる残存モノマー量や不純物量を少なくできる観点から、好ましくは懸濁重合、塊状重合、溶液重合法であり、より好ましくは溶液重合法である。
本実施形態における製造方法では、重合形式として、例えば、バッチ重合法、セミバッチ法、連続重合法のいずれも用いることができる。
本実施形態においては、単量体の一部を重合開始前に反応器内に仕込み、重合開始剤を添加することによって重合を開始した後に、単量体の残部を供給する方法、いわゆるセミバッチ重合法を用いることが、重合終了時の残存マレイミド量を低減し、蛍光強度を小さく(蛍光発光性物質の含有量を少なく)できる観点から好ましい。
N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂において、得られる樹脂製プリズムが所定の蛍光強度を示す(蛍光発光性物質の含有量が所定の範囲になる)ように制御する方法としては、(1)原料として特定の不純物の含有量を制御したN−置換マレイミド単量体を用いること、(2)重合終了後に残留する未反応のN−置換マレイミド量を低減する重合方法を適用すること、(3)せん断を低減した脱揮方法を適用すること等から選ばれる少なくとも一つを行うことが挙げられ、中でも(1)と(3)を組み合わせた製造方法を選択すること、又は3つを組み合わせた製造方法を選択することが好ましい。
(1)N−置換マレイミド中の不純物の制御
メタクリル系樹脂に蛍光発光性を与えるN−置換マレイミド中の不純物の一つとして、N−置換マレイミドと一級アミンとが反応して生じる2−アミノ−N−置換スクシンイミドが挙げられる。2−アミノ−N−置換スクシンイミドとしては、2−シクロヘキシルアミノ−N−シクロヘキシルスクシンイミド、2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド等が挙げられる。2−アミノ−N−置換スクシンイミドはそれ自体が蛍光発光性を有するだけでなく、詳細な変性機構は不明なものの、これを300℃以上に加熱したり、せん断を有する脱揮装置に供したりすると、蛍光発光性を有する熱変性物が生じることが発明者らの検討により明らかになった。すなわち、N−置換マレイミド中に含まれる2−アミノ−N−置換スクシンイミドの低減と、メタクリル系樹脂の製造においては回転部を有しない脱揮装置を用い、300℃以下で脱揮を行うこととが、メタクリル系樹脂及び得られる樹脂製プリズムの蛍光強度を制御するために好ましい。
N−置換マレイミド中の不純物を制御する方法としては、N−置換マレイミドの水洗(水洗工程)及び/又は脱水(脱水工程)をする前処理工程を設けること等が挙げられる。
上記前処理工程は、水洗のみであってもよいし、水洗と脱水との組み合わせであってもよい。また、水洗と脱水とは、1回ずつ行ってもよいし、複数回行ってもよい。上記前処理工程では、脱水工程で得られたN−置換マレイミド溶液の濃度調整をする濃度調整工程がさらに設けられていてもよい。
本実施形態においては、例えば、N−置換マレイミド中の2−アミノ−N−置換スクシンイミドを以下に示す水洗工程により除去し、続く脱水工程で水分を除去することで、蛍光強度を制御し、かつ良好な色調を有するメタクリル系樹脂を調製するのに適切なN−置換マレイミド溶液を得ることができる。
水洗工程では、例えば、N−置換マレイミドを非水溶性有機溶媒に溶解させ、有機層と水層とに分離し、この有機層を、酸性水溶液、水、アルカリ水溶液のうちの1つ以上の液を用いて回分式、連続式、又はこれら両方の方式によって混合、洗浄し、その後、有機層と水層とを分離する方法を取ることができる。
水洗工程後の有機層中の2−アミノ−N−置換スクシンイミド量は、有機層中のN−置換マレイミド量を100質量%とした場合、5質量ppm以下が好ましく、より好ましくは0.1質量ppm以上1質量ppm以下である。有機層中の2−アミノ−N−置換スクシンイミド量がこの範囲にあると、メタクリル系樹脂及び得られる樹脂製プリズム中の蛍光発光性物質の濃度を上述の範囲内に制御でき、鮮明な映像を得られる偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを得ることができるため好ましい。また、洗浄におけるコストの面からも好ましい。脱水工程を設けない場合は、水洗工程で得られたN−置換マレイミドを含む有機層を、N−置換マレイミド溶液として重合工程で用いてもよい。
なお、有機層中の2−アミノ−N−置換スクシンイミド量は、例えば、安息香酸イソプロピルを内部標準物質として、ガスクロマトグラフィー、リキッドクロマトグラフィー等により測定することができ、具体的には、後述の実施例記載の方法で測定することができる。
用いられる非水溶性有機溶媒は、N−置換マレイミドと2−アミノ−N−置換スクシンイミドとを溶解させ、水と相分離し、且つ水との共沸点を有する溶媒であれば特に制限は無い。具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;等を用いることができる。
用いられる水は、下水、純水、上水のいずれを用いても良い。
また、酸性水溶液、アルカリ性水溶液の酸性度は特に制限されない。
水洗工程前の有機層中のN−置換マレイミドの濃度は、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上25質量%以下である。
有機層と水層を混合、洗浄する際の温度は40℃以上であれば良いが、好ましくは40℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上60℃以下である。
有機層に対する水層の質量割合は、有機層の質量を100質量%とした場合、5質量%以上300質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上200質量%、さらに好ましくは30質量%以上100質量%以下である。
有機層中のN−置換マレイミドの濃度、洗浄する際の液温、及び水層の質量割合がこれらの範囲にあると、N−置換マレイミドと水との反応が進行しにくく、かつ2−アミノ−N−置換スクシンイミドが水層側へ抽出されやすいため好ましい。
回分式で洗浄する場合には、用いる反応槽はステンレス製、グラスライニング製のいずれでも良く、これら以外の反応槽を用いても良い。また、撹拌翼の形状については特に制限されない。具体的な撹拌翼としては、例えば、3枚後退翼、4枚パドル翼、4枚傾斜パドル翼、6枚タービン翼、アンカー翼を使用することができ、また、神鋼環境ソリューション製のツインスターやフルゾーンを使用することができる。
撹拌時間は10分以上120分以下が好ましく、より好ましくは30分以上60分以下である。また、撹拌速度は、混合液が乱流状態になり、かつ乳化しないような速度が適宜選択される。撹拌時間、撹拌速度がそれぞれこの範囲にあると、撹拌効率と2−アミノ−N−置換スクシンイミドの水層中への抽出効率が向上し、N−置換マレイミド中の2−アミノ−N−置換スクシンイミドをより低減できるため好ましい。
連続式で洗浄する場合には、空塔、充填塔、又は段塔を用いることができ、スタティックミキサー等の静止型混合器や、ダイナミックミキサー等の回転式ミキサーを使用することもできる。
有機層と水層との接触時間は、1秒以上60分以下に設定することが好ましく、より好ましくは30秒以上10分以下である。接触時間がこの範囲にあると、N−置換マレイミドと水との反応が進行しにくく、かつ2−アミノ−N−置換スクシンイミドが水層側へ抽出されやすいため好ましい。
脱水工程では、反応槽中に有機層を供し、減圧下で加熱することにより水分を除去する。圧力と温度は、用いる溶媒と水が共沸組成を形成する条件ならば特に制限は無い。
脱水工程後の有機層中の水分量は、有機層の質量を100質量%とした場合、100質量ppm以下が好ましい。脱水工程後の水分量がこの範囲にあると、メタクリル系樹脂重合時に水による色調悪化を抑制することができ、且つ水とともに留去される溶媒量を少なくできるため、コストの面からも好ましい。
脱水工程で得られたN−置換マレイミドを含む有機層を、N−置換マレイミド溶液として重合工程で用いてもよいし、さらに濃度調整工程で濃度を調整したN−置換マレイミド溶液を重合工程で用いてもよい。
濃度調整工程では、例えば、脱水工程等で得られた上記N−置換マレイミドの有機層を上記非水溶性有機溶媒により希釈してもよい。濃度調整工程で用いる非水溶性有機溶媒は、水洗工程で用いる非水溶性有機溶媒と同じであることが好ましい。
上記前処理工程で得られるN−置換マレイミド溶液は、上記非水溶性有機溶媒の溶液(有機層)であることが好ましい。
上記前処理工程で得られるN−置換マレイミド溶液は、上記N−置換マレイミド溶液中に含まれる2−アミノ−N−置換スクシンイミドの質量割合が、上記N−置換マレイミド溶液中に含まれるN−置換マレイミド100質量%に対して、5質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量ppm以上1質量ppm以下である。
上記前処理工程で得られるN−置換マレイミド溶液中に含まれる水分量は、N−置換マレイミド溶液100質量%に対して、200質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100〜200質量ppmである。
上記前処理工程で得られるN−置換マレイミド溶液中に含まれるN−置換マレイミドの質量割合は、N−置換マレイミド溶液100質量%に対して、5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜25質量%である。この範囲にある場合、N−置換マレイミドが析出しにくく、均一溶液として移送が可能であるため好ましい。
複数種のN−置換マレイミド溶液を重合工程で用いる場合、複数種のN−置換マレイミド溶液の混合液が上記2−アミノ−N−置換スクシンイミドの質量割合、上記水分量、及び/又は上記N−置換マレイミドの質量割合を満たすことが好ましく、各N−置換マレイミド溶液が上記2−アミノ−N−置換スクシンイミドの質量割合、上記水分量、及び/又は上記N−置換マレイミドの質量割合を満たすことがより好ましい。
上述のようなN−置換マレイミドの水洗工程及び脱水工程を採用することにより、蛍光発光性を有する2−アミノ−N−置換スクシンイミドの低減と、メタクリル系樹脂の色調悪化の原因となる水分を除去することが可能となり、光路長の長いプリズムにおいても良好な色調を有するメタクリル系樹脂及び該樹脂の組成物を得ることができるので好ましい。
重合工程では、上記前処理工程で得られたN−置換マレイミド溶液に、メタクリル酸エステル単量体、任意の他の単量体、重合開始剤、重合溶媒、連鎖移動剤等を混合し、単量体混合液としてから重合に用いてもよい。
(2)重合終了時の未反応N−置換マレイミドの低減
メタクリル系樹脂の重合終了時に未反応N−置換マレイミドが存在すると、詳細な機構は不明だが、加熱された脱揮装置内等でN−置換マレイミドをその構造単位として含む低分子量で蛍光発光性を有する反応副生成物が生成することがあることを本発明者らは見出した。
メタクリル系樹脂及び得られる樹脂製プリズム中の蛍光発光性物質の含有量を上述の範囲内に制御するためには、重合終了後に残存する未反応N−置換マレイミドの総質量を、重合終了時の重合溶液100質量%に対して1000質量ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは10質量ppm以上500質量ppm以下である。
また、N−置換マレイミドとしてN−フェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド類を使用する際には、重合終了後に残存する未反応N−アリールマレイミド類の総質量が、重合終了時の重合溶液100質量%に対して、500質量ppm以下が好ましく、より好ましくは10質量ppm以上500質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以上50質量ppm以下である。
これらの範囲にあるとき、メタクリル系樹脂及び得られる樹脂製プリズム中の蛍光性物質の含有量を上述の範囲内に抑えることができるため好ましい。また、未反応N−置換マレイミド量を10質量ppm未満にするためには、重合温度を高くしたり、重合開始剤の量を増やしたりする必要があるため、マレイミド熱変性物や活性ラジカルが増加し、メタクリル系樹脂の色調悪化の原因となるため好ましくない。
重合終了後の未反応N−置換マレイミド量を上記の範囲に制御する手段として、セミバッチ重合法が挙げられる。セミバッチ重合法では、重合工程において、重合開始剤の添加開始から30分後以降に、重合に供与する全ての単量体(例えば、メタクリル酸エステル、N−置換マレイミド、及び任意の他の単量体)の総質量を100質量%として、メタクリル酸エステル単量体を5〜35質量%追加添加することが好ましい。言い換えると、重合に供与する全ての単量体の総質量100質量%のうち65〜95質量%を重合開始剤添加前に反応器内に仕込み、重合開始剤の添加開始から30分後以降にメタクリル酸エステル単量体の残部5〜35質量%を追加添加することが好ましい。追加添加するメタクリル酸エステル単量体量は、重合に供与する全ての単量体の総質量を100質量%として、より好ましくは10〜30質量%である。追加添加するメタクリル酸エステル単量体量が上記範囲にあると、未反応N−置換マレイミドと追加添加したメタクリル酸エステル単量体とが反応し、重合終了後の未反応N−置換マレイミド量を上述の範囲内に制御できるため好ましい。
単量体の追加添加の開始時点、追加添加のスピード等は、重合転化率に応じて適宜選択すればよい。また、本発明の効果や未反応N−置換マレイミド量を低減することを阻害しない範囲で、メタクリル酸エステル単量体に加え、N−置換マレイミド単量体やその他の単量体を含む単量体混合物を追加添加してもよい。
上述のようなセミバッチ重合法を採用することにより、重合後半時点での未反応のN−置換マレイミド単量体量を低減し、脱揮工程における蛍光発光性物質の生成を最小限とすることが可能となり、光路長の長いプリズムにおいても良好な色調を有するメタクリル系樹脂及び該樹脂の組成物を得ることができるので好ましい。
以下、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法の一例として、溶液重合法を用いてセミバッチ式でラジカル重合で製造する場合について、具体的に説明する。
セミバッチ重合法では、重合開始剤の添加開始から30分後以降に、重合に供与する全ての単量体(メタクリル酸エステル、N−置換マレイミド、及び任意の他の単量体)の総質量を100質量%として、メタクリル酸エステル単量体を5〜35質量%追加添加することが好ましい。言い換えると、重合に供与する全ての単量体の総質量100質量%のうち65〜95質量%を重合開始前に反応器内に仕込み、重合開始剤の添加開始から30分後以降にメタクリル酸エステル単量体の残部5〜35質量%を追加添加することが好ましい。
追加添加するメタクリル酸エステル単量体量は、重合に供与する全ての単量体の総質量を100質量%として、より好ましくは10〜30質量%である。
単量体の追加添加の開始時点、追加添加のスピード等は、重合転化率に応じて適宜選択すればよい。
また、本発明の効果やN−置換マレイミド単量体の転化率を高めることを阻害しない範囲で、メタクリル酸エステル単量体に加え、N−置換マレイミド単量体やその他の単量体を含む単量体混合物を追加添加してもよい。
上述のようなセミバッチ重合法を採用することにより、重合後半時点でのN−置換マレイミド単量体の転化率を高くすることが可能となり、蛍光発光性物質の含有量を低減し、光路長の長いプリズムの光線透過率に優れ、得られる重合物の分子量分布を制御しやすく、特に射出成形に適した流動性を有する樹脂並びに該樹脂の組成物を得ることができるので好ましい。
用いる重合溶媒としては、重合により得られるマレイミド共重合体の溶解度を高め、ゲル化防止等の目的から反応液の粘度を適切に保てるものであれば、特に制限はない。
具体的な重合溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ジメチルホルムアミド、2−メチルピロリドン等の極性溶媒を用いることができる。
これらは単独でも2種以上を併用して用いることもできる。
また、重合時における重合生成物の溶解を阻害しない範囲で、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合溶媒として併用してもよい。
重合時の溶媒量としては、重合が進行し、生産時に共重合体や使用モノマーの析出等が起こらず、容易に除去できる量であれば、特に制限はないが、例えば、配合する単量体の総量を100質量%とした場合に、10〜200質量%とすることが好ましい。より好ましくは25〜150質量%、さらに好ましくは40〜100質量%、さらにより好ましくは50〜100質量%である。
本実施形態においては、重合時の溶媒量が、配合する単量体の総量を100質量%とした場合に、100質量%以下の範囲内で、重合中に溶媒濃度を適宜変更しながら重合する方法も好ましく用いることができる。
より具体的には、重合初期においては40〜60質量%を配合し、重合途中に、残りの60〜40質量%を配合し、最終的には、配合する単量体の総量を100質量%とした場合に、溶媒量が100質量%以下の範囲になるようにする方法等が例示できる。
この方法を採用することにより、重合転化率を高めることができ、さらに分子量分布を制御することが可能となり、射出成形性に優れ、蛍光発光性物質の含有量を低減し、光路長の長いプリズムを調製した際にも良好な色調が得られる樹脂及び樹脂組成物が得られるので好ましい。
溶液重合においては、重合溶液中の溶存酸素濃度を出来る限り低減させておくことが重要であり、例えば、溶存酸素濃度は、10ppm以下の濃度であることが好ましい。溶存酸素濃度は、例えば、溶存酸素計DOメーターB−505(飯島電子工業株式会社製)を用いて測定することができる。溶存酸素濃度を低下する方法としては、重合溶液中に不活性ガスをバブリングする方法、重合前に重合溶液を含む容器中を不活性ガスで0.2MPa程度まで加圧した後に放圧する操作を繰り返す方法、重合溶液を含む容器中に不活性ガスを通ずる方法等の方法を適宜選択することができる。
重合温度としては、重合が進行する温度であれば特に制限はないが、70〜180℃であることが好ましく、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは90〜150℃、さらにより好ましくは100〜150℃である。生産性の観点から70℃以上とすることが好ましく、重合時の副反応を抑制し、所望の分子量や品質の重合体を得るために180℃以下とすることが好ましい。
また、重合時間については、必要な転化率にて、必要な重合度を得ることができる時間であれば特に限定はないが、生産性等の観点から、2〜15時間であることが好ましく、より好ましくは3〜12時間、さらに好ましくは4〜10時間である。
重合開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
重合開始剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.01〜1質量%としてよく、好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲である。
重合開始剤の添加方法としては、一定添加速度ではなく重合溶液内に残存する単量体濃度に合わせ、可変的な添加であれば特に制限はなく、連続的に加えても断続的に加えてもよい。重合開始剤を断続的に加える場合は、添加していない時間については単位時間当たりの添加量を考えないものとする。
本実施形態では、反応系内に残存する未反応の単量体総量に対する重合開始剤より発生するラジカル総量の割合が、常時一定値以下となるように、重合開始剤の種類及び添加量、並びに重合温度等を適宜選択することが好ましい。
これらの方法を採用することにより、重合後期におけるオリゴマーや低分子量体の生成量を抑制したり、重合時の過熱を抑制して重合の安定性を図ったりすることもできる。
重合反応時には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加して重合してもよい。
連鎖移動剤としては、一般的なラジカル重合において用いる連鎖移動剤が使用でき、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
これらの連鎖移動剤は、重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよく、特に限定されるものではない。
連鎖移動剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.01〜1質量%としてよく、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
溶液重合により得られる重合液から重合物を回収する方法としては、脱揮工程と呼ばれる工程を経由して重合溶媒や未反応の単量体を分離し、重合生成物を回収する方法が挙げられる。ここで、脱揮工程とは、重合溶媒、残存単量体、反応副生成物等の揮発分を、加熱・減圧条件下で、除去する工程をいう。
本実施形態においては、脱揮工程に供する、メタクリル系樹脂を含む重合溶液中に含まれる未反応のN−置換マレイミド単量体の含有量を一定濃度以下に制御することが好ましい。詳細は上記、「(2)重合終了時の未反応N−置換マレイミドの低減」に記載のとおりであるが、上記の手法に加え、例えば、単量体の転化率を高めるために、重合時間を出来る限り長くしたり、重合溶液中の未反応の単量体濃度に合わせ、重合開始剤の添加速度を変化させたりして重合を行う方法;重合中に溶媒濃度を適宜変更しながら重合する方法;重合後半に残存するN−置換マレイミド単量体との反応性が高い他の単量体を追加添加する方法;重合終了時にα−テルピネン等、N−置換マレイミドとの反応性の高い化合物を添加する方法等も使用することができる。
−N−置換マレイミド単量体の残存量−
メタクリル系樹脂を含む重合溶液中に残存するN−置換マレイミド単量体の残存量を求める方法としては、例えば、重合溶液の一部を採取・秤量し、この試料をクロロホルムに溶解させて、5質量%溶液を調製し、内部標準物質としてn−デカンを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2010)を用いて、試料中に残存するN−置換マレイミド単量体の濃度を測定することにより求めることができる。より具体的な測定条件としては、後述の実施例記載のものを用いることができる。
(3)せん断を低減した脱揮方法
上記脱揮工程に用いる装置としては、熱交換器と減圧容器とを主な構成とし、その構造として回転部を有しない脱揮装置を用いることが好ましい。回転部を設けないことにより、脱揮中のせん断を低減でき、蛍光発光性が一層低い樹脂を得ることができる。
具体的には、その上部に熱交換器を配置し脱揮が可能な大きさを有する減圧容器に減圧ユニットが附帯した構成の脱揮槽と、脱揮後の重合物を排出するためのギアポンプ等の排出装置とから構成される脱揮装置を採用することができる。
上記脱揮装置は、重合溶液を、減圧容器の上部に配置され加熱された熱交換器、例えば、多管式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、平板型流路とヒータとを有する平板式熱交換器等に供して予熱した後、加熱・減圧下にある脱揮槽に供給して、重合溶媒、未反応原料混合物、重合副生成物等と重合体とを分離除去する。上述のように回転部を有しない脱揮装置を用いることで、未反応のN−置換マレイミドに由来する低分子量で蛍光発光性を有する反応副生成物を抑制することができ、メタクリル系樹脂及び得られる樹脂製プリズム中の蛍光強度(蛍光発光性物質の含有量)を所定の範囲内に制御できるため好ましい。また良好な色調を有するメタクリル系樹脂を得ることができるため好ましい。
上記回転部を有する装置としては、神鋼環境ソリューション社製ワイプレン及びエクセバ、日立製作所製コントラ及び傾斜翼コントラ等の薄膜蒸発機;ベント付き押出機等が挙げられる。
本実施形態における脱揮工程においては、重合溶液にかかるせん断速度を20s-1以下とすることが好ましく、10s-1以下とすることがより好ましく、0.1s-1以上10s-1以下として実施することがさらに好ましい。せん断速度を0.1s-1以上とすることにより、溶融樹脂の流れが遅くなりすぎず、滞留時間が増加することによる色調悪化を抑えることができる。また20s-1以下とすることにより、せん断による蛍光発光性を有する反応副生物の生成を抑えることができる。
ここで、例えば、押出機におけるせん断速度γは下記式で計算する。
γ=(π×D×N)/H
(式中、Dはスクリュー径(m)、Nは1秒あたりのスクリュー回転数、Hはスクリュー溝深さ(m)を表す。)
また、平板型流路の場合には、せん断速度γは下記式で計算する。
γ=(6×Q)/(w×h2
(式中、Qは平板型流路を通過する体積流量(m3/s)、wは平板型流路の幅(m)、hは平板間の距離(m)を表す。)
本実施形態において、減圧容器上部に配置する熱交換器としては、平板型流路とヒータとを有する平板式熱交換器を用いることが好ましい。より好ましくは、同一平面状に断面が矩形であるスリット状流路を複数有する積層構造を有する平板型流路とヒータとを有する平板式熱交換器である。
脱揮装置に供された重合溶液は、該熱交換器の中央部から該スリット状流路へ送られて加熱される。加熱された重合溶液は、スリット状流路から、熱交換器と一体化した減圧下の減圧容器内に供給されて、フラッシュ蒸発させられる。
このような脱揮方法は、フラッシュ脱揮とも称されることもあり、本発明においては、以後、フラッシュ脱揮とも記す。
上述する脱揮装置を2機以上直列に設置して、2段階以上で脱揮する方法を採用することも可能である。
脱揮装置に附帯する熱交換器にて加熱する温度の範囲としては、100℃以上300℃以下としてよく、好ましくはメタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)+100℃〜Tg+160℃の温度、より好ましくはTg+110℃〜Tg+150℃の温度である。加熱・保温された脱揮槽の温度の範囲としては、100℃以上300℃以下としてよく、好ましくはTg+100℃〜Tg+160℃の温度、より好ましくはTg+110℃〜Tg+150℃の温度である。熱交換器及び脱揮槽の温度がこの範囲にあると、残存する2−アミノ−N−置換スクシンイミドの熱変性を抑制することができ、蛍光発光性物質の生成を抑制できるため好ましい。また残存揮発分が多くなることを防ぐのに有効であり、得られるメタクリル系樹脂の熱安定性や製品品質が向上するため好ましい。
脱揮槽内における真空度としては、5〜300Torrの範囲としてよく、中でも、10〜200Torrの範囲が好ましい。この真空度が300Torr以下であると、効率よく未反応単量体又は未反応単量体と重合溶媒の混合物を分離除去することができ、得られる熱可塑性共重合体の熱安定性や品質が低下しない。真空度が5Torr以上であると、工業的な実施がより容易である。
脱揮槽内における平均滞留時間としては、5〜60分であり、好ましくは5〜45分である。平均滞留時間がこの範囲にあると、効率よく脱揮できるとともに、重合物の熱変性による着色や分解を抑制できるので好ましい。
脱揮工程を経て回収された重合物は、造粒工程と呼ばれる工程にてペレット状に加工される。
造粒工程では、溶融状態の樹脂を、多孔ダイを付帯設備として有するギアポンプ、単軸押出機、及び二軸押出機等から選ばれた少なくとも1種の搬出造粒装置にて、ストランド状に押出し、コールドカット方式、空中ホットカット方式、水中ストランドカット方式、及びアンダーウォーターカット方式にて、ペレット状に加工する。せん断による蛍光発光性を有する反応副生物の生成を抑える観点から、押出機は用いず、せん断速度の小さい搬送装置を選択することが好ましい。
本実施形態では、高度に制御された樹脂組成物を得ようとするため、高温下で溶融状態にある樹脂組成物をできる限り空気に触れないようにして、素早く冷却固化させることができる造粒方式を採用することが好ましい。
その場合には、溶融樹脂温度を可能な範囲で低くし、且つ多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間を極力少なくし、冷却水の温度も可能な範囲で高い温度にて、実施できる条件にて造粒を行うことがより好ましい。
例えば、溶融樹脂温度としては、220〜280℃が好ましく、より好ましくは230〜270℃であり、多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間は5秒以内が好ましく、より好ましくは3秒以内であり、冷却水の温度としては、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜60℃の範囲である。
これら溶融樹脂温度並びに冷却水温度の範囲にて実施することにより、より着色が少なく、含有する水分率が低いメタクリル系樹脂ならびにその組成物が得られるので好ましい。
脱揮工程後のメタクリル系樹脂中に残留する単量体の含有量については、少ないほど、熱安定性や製品品質の観点から好ましい。具体的には、メタクリル酸エステル単量体の含有量としては、3000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは2000質量ppm以下である。N−置換マレイミド単量体の含有量としては総量として200質量ppm以下が好ましく、より好ましくは100質量ppm以下である。
また、残留する重合溶媒の含有量としては500質量ppm以下が好ましく、より好ましくは300質量ppm以下である。
−グルタルイミド系構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法−
主鎖にグルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれの重合方法が挙げられ、好ましくは懸濁重合、塊状重合、溶液重合法であり、さらに好ましくは溶液重合法である。
本実施形態における製造方法では、重合形式として、例えば、バッチ重合法、セミバッチ法、連続重合法のいずれも用いることができる。
本実施形態における製造方法では、ラジカル重合により単量体を重合することが好ましい。
主鎖にグルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂は、例えば、特開2006−249202号公報、特開2007−009182号公報、特開2007−009191号公報、特開2011−186482号公報、国際公開第2012/114718号等に記載されている、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂であり、当該公報に記載されている方法により形成することができる。
以下、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法の一例として、溶液重合法を用いてバッチ式のラジカル重合で製造する場合について、具体的に説明する。
まず、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルを重合することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造する。グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂に芳香族ビニル単位を含める場合には、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル(例えば、スチレン)とを共重合させ、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を製造する。
重合に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合時の溶媒量としては、重合が進行し、生産時に共重合体や使用モノマーの析出等が起こらず、容易に除去できる量であれば特に制限はないが、例えば、配合する単量体の総量を100質量%とした場合に、10〜200質量%とすることが好ましい。より好ましくは25〜200質量%、さらに好ましくは50〜200質量%、さらにより好ましくは50〜150質量%である。
重合温度としては、重合が進行する温度であれば特に制限はないが、50〜200℃であることが好ましく、より好ましくは80〜200℃である。さらに好ましくは90〜150℃、さらにより好ましくは100〜140℃、よりさらに好ましくは100〜130℃である。生産性の観点から70℃以上とすることが好ましく、重合時の副反応を抑制し、所望の分子量や品質の重合体を得るために180℃以下とすることが好ましい。
重合時間としては、目的の転化率が満たされれば、特に制限されないが、生産性等の観
点から、0.5〜15時間であることが好ましく、より好ましくは2〜12時間、さらに
好ましくは4〜10時間である。
重合反応時には、必要に応じて重合開始剤や連鎖移動剤を添加して重合してもよい。
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に開示した重合開始剤等が利用できる。
これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの重合開始剤は、重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよい。
重合開始剤の添加量は、単量体の組合せや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.01〜1質量%としてよく、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
連鎖移動剤としては、一般的なラジカル重合において用いる連鎖移動剤が使用でき、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に開示した連鎖移動剤等が利用できる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
これらの連鎖移動剤は重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよく、特に限定されるものではない。
連鎖移動剤の添加量については、使用する重合条件において所望の重合度が得られる範囲であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.01〜1質量%としてよく、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
重合工程における、好適な重合開始剤及び連鎖移動剤の添加方法は、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に記載した方法としてよい。
重合溶液中の溶存酸素濃度は、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に開示した値であってよい。
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体又は上記メタクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体にイミド化剤を反応させることで、イミド化反応を行う(イミド化工程)。これにより、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂を製造することができる。
上記イミド化剤としては、特に限定されず、上記一般式(3)で表されるグルタルイミド系構造単位を生成できるものであればよい。
イミド化剤としては、具体的には、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。上記一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有一級アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有一級アミン;等が挙げられる。
上記イミド化剤のうち、コスト、物性の面から、アンモニア、メチルアミン、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
このイミド化工程では、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂におけるグルタルイミド系構造単位の含有量を調整することができる。
上記イミド化反応を実施するための方法は、特に限定されないが、従来公知の方法を用いることができ、例えば、押出機又はバッチ式反応槽を用いることでイミド化反応を進行させることができる。
上記押出機としては、特に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等を用いることができる。
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、原料ポリマーとイミド化剤との混合を促進することができる。
二軸押出機としては、例えば、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、噛合い型異方向回転式等が挙げられる。
上記例示した押出機は、単独で用いてもよいし、複数を直列に連結して用いてもよい。
また、使用する押出機には、大気圧以下に減圧可能なベン卜口を装着することが、反応のイミド化剤、メタノール等の副生物、又は、モノマー類を除去することができるため、特に好ましい。
グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂を製造するにあたっては、上記イミド化の工程に加えて、ジメチルカーボネート等のエステル化剤で樹脂のカルボキシル基を処理するエステル化工程を含むことができる。その際、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の触媒を併用し処理することもできる。
エステル化工程は、上記イミド化工程と同様に、例えば、押出機又はバッチ式反応槽を用いることで進行させることができる。
また、過剰なエステル化剤、メタノール等の副生物、又はモノマー類を除去する目的で、使用する装置には、大気圧以下に減圧可能なベン卜口を装着することが好ましい。
イミド化工程、及び必要に応じてエステル化工程を経たメタクリル系樹脂は、多孔ダイを附帯した押出機から、ストランド状に溶融し押出し、コールドカット方式、空中ホットカット方式、水中ストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式等にて、ペレット状に加工される。
また、樹脂の異物数を低減するために、メタクリル系樹脂を、トルエン、メチルエチルケトン、塩化メチレン等の有機溶媒に溶解し、得られたメタクリル系樹脂溶液を濾過し、その後、有機溶媒を脱揮する方法を用いることも好ましい。
蛍光強度(蛍光発光性物質の含有量)を低減する観点からは、重合終了後の重合溶液をバッチ式反応槽中でイミド化し、せん断力を受ける二軸押出機を用いないことが好ましい。
イミド化反応は130〜250℃で実施することが好ましく、150〜230℃で実施することがより好ましく、170〜190℃で実施することがさらに好ましい。また反応時間は、10分〜5時間であることが好ましく、30分〜2時間であることがより好ましい。
イミド化工程後は必要に応じてエステル化工程を経た後、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に記載した(3)せん断を低減した脱揮方法により脱揮後、ペレタイズすることが蛍光強度を低減する観点で好ましい。
−ラクトン環構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法−
主鎖にラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法としては、重合後に環化反応によりラクトン環構造を形成させる方法が用いられるが、環化反応を促進させる上で、溶媒を使用する溶液重合法にてラジカル重合により単量体を重合することが好ましい。
本実施形態における製造方法では、重合形式として、例えば、バッチ重合法、セミバッチ法、連続重合法のいずれも用いることができる。
主鎖にラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂は、例えば、特開2001−151814号公報、特開2004−168882号公報、特開2005−146084号公報、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報、特開2007−297620号公報、特開2010−180305号公報等に記載されている方法により形成することができる。
以下、ラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法の一例として、溶液重合法を用いてバッチ式でラジカル重合で製造する場合について、具体的に説明する。
ラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法としては、重合後に環化反応によりラクトン環構造を形成させる方法が用いられるが、環化反応を促進させる上で、溶媒を使用する溶液重合が好ましい。
重合に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合時の溶媒量としては、重合が進行し、ゲル化を抑制できる条件であれば特に制限はないが、例えば、配合する単量体の総量を100質量%とした場合に、50〜200質量%とすることが好ましく、より好ましくは100〜200質量%である。
重合液のゲル化を充分に抑制し、重合後の環化反応を促進するためには、重合後に得られる反応混合物中における生成した重合体の濃度が50質量%以下になるように重合を行うことが好ましい。また、重合溶媒を反応混合物に適宜添加して、上記濃度が50質量%以下となるように制御することが好ましい。
重合溶媒を反応混合物に適宜添加する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、連続的に重合溶媒を添加してもよいし、間欠的に重合溶媒を添加してもよい。
添加する重合溶媒は、1種のみの単一溶媒であっても2種以上の混合溶媒であってもよい。
重合温度としては、重合が進行する温度であれば特に制限はないが、生産性の観点から50〜200℃であることが好ましく、より好ましくは80〜180℃である。
重合時間としては、目的の転化率が満たされれば、特に制限されないが、生産性等の観点から、0.5〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1〜8時間である。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤や連鎖移動剤を添加して重合してもよい。
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に開示した重合開始剤等が利用できる。
これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの重合開始剤は、重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよい。
重合開始剤の添加量は、単量体の組合せや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.05〜1質量%としてよい。
連鎖移動剤としては、一般的なラジカル重合において用いる連鎖移動剤が使用でき、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に開示した連鎖移動剤等が利用できる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
これらの連鎖移動剤は重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよく、特に限定されるものではない。
連鎖移動剤の添加量については、使用する重合条件において所望の重合度が得られる範囲であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.05〜1質量%としてよい。
重合工程における、好適な重合開始剤及び連鎖移動剤の添加方法は、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に記載した方法でよい。
重合溶液中の溶存酸素濃度は、例えば、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に開示した値であってよい。
本実施形態におけるラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂は、上記重合反応終了後、環化反応を行うことにより得ることができる。そのため、重合反応液から重合溶媒を除去することなく、溶媒を含んだ状態で、ラクトン環化反応に供することが好ましい。
重合により得られた共重合体は、加熱処理されることにより、共重合体の分子鎖中に存在するヒドロキシル基(水酸基)とエステル基との間での環化縮合反応を起こし、ラクトン環構造を形成する。
ラクトン環構造形成の加熱処理の際、環化縮合によって副生し得るアルコールを除去するための真空装置あるいは脱揮装置を備えた反応装置、脱揮装置を備えた押出機等を用いることもできる。
ラクトン環構造形成の際、必要に応じて、環化縮合反応を促進するために、環化縮合触媒を用いて加熱処理してもよい。
環化縮合触媒の具体的な例としては、例えば、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル等の亜リン酸モノアルキルエステル、ジアルキルエステル又はトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル等のリン酸モノアルキルエステル、ジアルキルエステル又はトリアルキルエステル;酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、オクチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;等が挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
環化縮合触媒の使用量としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタクリル系樹脂100質量%に対して、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。
触媒の使用量が0.01質量%以上であると、環化縮合反応の反応率の向上に有効であり、触媒の使用量が3質量%以下であると、得られた重合体が着色することや、重合体が架橋して溶融成形が困難になることを防ぐのに有効である。
環化縮合触媒の添加時期としては、特に限定されるものではなく、例えば、環化縮合反応初期に添加してもよいし、反応途中に添加してもよいし、その両方で添加してもよい。
溶媒の存在下に環化縮合反応を行う際に、同時に脱揮を行うこともできる。
環化縮合反応と脱揮工程とを同時に行う場合に用いる装置については、特に限定されるものではないが、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、脱揮装置と押出機を直列に配置したものが好ましく、ベント付き二軸押出機がより好ましい。
用いるベント付き二軸押出機としては、複数のベント口を有するベント付き押出機が好ましい。
ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。反応処理温度が150℃未満であると、環化縮合反応が不充分となって残存揮発分が多くなることがある。逆に、反応処理温度が350℃を超えると、得られた重合体の着色や分解が起こることがある。
ベント付き押出機を用いる場合の真空度としては、好ましくは10〜500Torr、より好ましくは10〜300Torrである。真空度が500Torrを超えると、揮発分が残存しやすいことがある。逆に、真空度が10Torr未満であると、工業的な実施が困難になることがある。
上記の環化縮合反応を行う際に、残存する環化縮合触媒を失活させる目的で、造粒時に有機酸のアルカリ土類金属及び/又は両性金属塩を添加することも好ましい。
有機酸のアルカリ土類金属及び/又は両性金属塩としては、例えば、カルシウムアセチルアセテート、ステアリン酸カルシウム、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、2−エチルヘキシル酸亜鉛等を用いることができる。
環化縮合反応工程を経た後、メタクリル系樹脂は、多孔ダイを附帯した押出機からストランド状に溶融し押出し、コールドカット方式、空中ホットカット方式、水中ストランドカット方式、及びアンダーウォーターカット方式にてペレット状に加工する。
なお、前述のラクトン環構造単位を形成するためのラクトン化は、樹脂の製造後樹脂組成物の製造(後述)前に行ってもよく、樹脂組成物の製造中に、樹脂と樹脂以外の成分との溶融混練と併せて、行ってもよい。
蛍光強度(蛍光発光性物質の含有量)を低減する観点からは、重合終了後の重合溶液をバッチ式反応槽中でラクトン環化し、せん断力を受ける二軸押出機を用いないことが好ましい。ラクトン環化工程後は、上記N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の調製方法に記載した(3)せん断を低減した脱揮方法により脱揮後、ペレタイズすることが蛍光強度を低減する観点で好ましい。
[添加剤]
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、上述する、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、種々の添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、特に制限はないが、例えば、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、他の熱可塑性樹脂、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、酸化鉄等の顔料等の無機充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤;亜リン酸エステル類、ホスホナイト類、リン酸エステル類等の有機リン化合物、その他添加剤、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
−酸化防止剤−
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、成形加工時あるいは使用中の劣化や着色を抑制する酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種又は2種以上を併用してしてもよい。
また、熱安定性の向上や成形不良の抑制の観点から、複数種の熱安定剤を併用することが好ましく、例えば、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール、アクリル酸2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル、アクリル酸2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル等が挙げられる。
特に、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アクリル酸2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルが好ましい。
また、上記酸化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤は、市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、BASF社製)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、BASF社製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、BASF社製)、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ADEKA社製)、アデカスタブAO−80(3、9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ADEKA社製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、サイテック製)、スミライザーGA−80(Sumilizer GA−80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル、住友化学製)、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル、住友化学製)、ビタミンE(エーザイ製)等が挙げられる。
これらの市販のフェノール系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
また、上記酸化防止剤としてのリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト、4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)−6−イルオキシ]プロピル]−2−メチル−6−tert−ブチルフェノール等が挙げられる。
さらに、リン系酸化防止剤として市販のリン系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガフォス168(Irgafos 168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、BASF製)、イルガフォス12(Irgafos 12:トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製)、イルガフォス38(Irgafos 38:ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、BASF製)、アデカスタブ329K(ADK STAB−229K、ADEKA製)、アデカスタブPEP−36(ADK STAB PEP−36、ADEKA製)、アデカスタブPEP−36A(ADK STAB PEP−36A、ADEKA製)、アデカスタブPEP−8(ADK STAB PEP−8、ADEKA製)、アデカスタブHP−10(ADK STAB HP−10、ADEKA製)、アデカスタブ2112(ADK STAB 2112、ADEKA社製)、アデカスタブ1178(ADKA STAB 1178、ADEKA製)、アデカスタブ1500(ADK STAB 1500、ADEKA製)Sandstab P−EPQ(クラリアント製)、ウェストン618(Weston 618、GE製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE製)、スミライザーGP(Sumilizer GP:4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)−6−イルオキシ]プロピル]−2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、住友化学製)、HCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、三光株式会社製)等が挙げられる。
これらの市販のリン系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点から、イルガフォス168、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−36A、アデカスタブHP−10、アデカスタブ1178が好ましく、アデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−36が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、上記酸化防止剤としての硫黄系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−6−メチルフェノール(イルガノックス1726、BASF社製)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール(イルガノックス1520L、BASF社製)、2,2−ビス{〔3−(ドデシルチオ)−1−オキソポロポキシ〕メチル}プロパン−1,3−ジイルビス〔3−ドデシルチオ〕プロピオネート〕(アデカスタブAO−412S、ADEKA社製)、2,2−ビス{〔3−(ドデシルチオ)−1−オキソポロポキシ〕メチル}プロパン−1,3−ジイルビス〔3−ドデシルチオ〕プロピオネート〕(ケミノックスPLS、ケミプロ化成株式会社製)、ジ(トリデシル)3,3’−チオジプロピオネート(AO−503、ADEKA社製)等が挙げられる。
これらの市販の硫黄酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点、取り扱い性の観点から、アデカスタブAO−412S、ケミノックスPLSが好ましい。
これらの硫黄系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の含有量は、熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01〜0.8質量%、特に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
酸化防止剤を添加するタイミングについては、特に限定はなく、重合前のモノマー溶液に添加した後に重合を開始する方法、重合後のポリマー溶液に添加・混合した後に脱揮工程に供する方法、脱揮後の溶融状態のポリマーに添加・混合した後にペレタイズする方法、脱揮・ペレタイズ後のペレットを再度溶融押出する際に添加・混合する方法等が挙げられる。これらの中でも、脱揮工程での熱劣化や着色を防止する観点から、重合後のポリマー溶液に添加・混合した後脱揮工程の前に酸化防止剤を添加した後に脱揮工程に供することが好ましい。
−ヒンダードアミン系光安定剤−
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有することができる。
ヒンダードアミン系光安定剤は、特に限定されないが、環構造を3つ以上含む化合物であることが好ましい。ここで、環構造は、芳香族環、脂肪族環、芳香族複素環及び非芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、1つの化合物中に2以上の環構造を有する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジオールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールの反応物、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジオールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールの反応物、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
中でも環構造を3つ以上含んでいるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジオールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールの反応物、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジオールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールの反応物が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、光安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01〜0.8質量%、特に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
−−紫外線吸収剤−−
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、その極大吸収波長を280〜380nmに有する紫外線吸収剤であることが好ましく、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。
これらの中でも、分子量が400以上のベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、例えば、市販品の場合、Kemisorb(登録商標)2792(ケミプロ化成製)、アデカスタブ(登録商標)LA31(株式会社ADEKA製)、チヌビン(登録商標)234(BASF社製)等が挙げられる。
ベンゾトリアジン系化合物としては、2−モノ(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物、2,4−ビス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
ベンゾトリアジン系化合物としては、市販品を使用してもよく、例えばKemisorb102(ケミプロ化成社製)、LA−F70(株式会社ADEKA製)、LA−46(株式会社ADEKA製)、チヌビン405(BASF社製)、チヌビン460(BASF社製)、チヌビン479(BASF社製)、チヌビン1577FF(BASF社製)等を用いることができる。
その中でも、アクリル系樹脂との相溶性が高く紫外線吸収特性が優れている点から、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(「アルキルオキシ」は、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等の長鎖アルキルオキシ基を意味する)を有する紫外線吸収剤がさらに好ましく用いることができる。
紫外線吸収剤としては、特に、樹脂との相溶性、加熱時の揮散性の観点から、分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましく、また、紫外線吸収剤自体の押出加工時加熱による分解抑制の観点から、ベンゾトリアジン系化合物が特に好ましい。
また、上記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがさらにより好ましい。
上記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
これら紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種類の構造の異なる紫外線吸収剤を併用することにより、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、及び成形加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であれば特に制限はないが、メタクリル系樹脂100質量%に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、好ましくは0.2〜4質量%以下、より好ましくは0.25〜3質量%であり、さらにより好ましくは0.3〜3質量%である。この範囲にあると、紫外線吸収性能、成形性等のバランスに優れる。
−−離型剤−−
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。上記離型剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、炭化水素系滑剤、アルコール系滑剤、ポリアルキレングリコール類や、カルボン酸エステル類、炭化水素類のパラフィン系ミネラルオイル等が挙げられる。
上記離型剤として使用可能な脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜32の脂肪酸と、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の1価脂肪族アルコールや、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価脂肪族アルコールとのエステル化合物;脂肪酸と多塩基性有機酸と1価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコールとの複合エステル化合物等を用いることができる。
このような脂肪酸エステルとしては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジ12−ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレート等を挙げることができる。
これらの脂肪酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、理研ビタミン社製リケマールシリーズ、ポエムシリーズ、リケスターシリーズ、リケマスターシリーズ、花王社製エキセルシリーズ、レオドールシリーズ、エキセパールシリーズ、ココナードシリーズが挙げられ、より具体的にはリケマールS−100、リケマールH−100、ポエムV−100、リケマールB−100、リケマールHC−100、リケマールS−200、ポエムB−200、リケスターEW−200、リケスターEW−400、エキセルS−95、レオドールMS−50等が挙げられる。
脂肪酸アミドについても、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド;m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド等を挙げることができる。
これらの脂肪酸アミドは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、ダイヤミッドシリーズ(日本化成社製)、アマイドシリーズ(日本化成社製)、ニッカアマイドシリーズ(日本化成社製)、メチロールアマイドシリーズ、ビスアマイドシリーズ、スリパックスシリーズ(日本化成社製)、カオーワックスシリーズ(花王社製)、脂肪酸アマイドシリーズ(花王社製)、エチレンビスステアリン酸アミド類(大日化学工業社製)等が挙げられる。
脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩を指し、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、2塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム等が挙げられ、その中でも、得られる透明樹脂組成物の加工性が優れ、極めて透明性に優れたものとなることから、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
市販品としては、一例をあげると、堺化学工業社製SZシリーズ、SCシリーズ、SMシリーズ、SAシリーズ等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩を使用する場合の含有量は、透明性保持の観点から、樹脂組成物100質量%に対して0.2質量%以下であることが好ましい。
上記離型剤は、1種単独で用いてもいいし、2種以上を併用して使用してもよい。
使用に供される離型剤としては、分解開始温度が200℃以上であるものが好ましい。ここで、分解開始温度はTGAによる1%質量減量温度によって測定することができる。
離型剤の含有量は、離型剤としての効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトの発生やスクリューの滑りによる押出不良等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01〜0.8質量%、特に好ましくは0.01〜0.5質量%である。上記範囲の量で添加すると、離型剤添加による透明性の低下を抑制されるうえ、射出成形時の離型不良が抑制される傾向にあるため、好ましい。
−他の熱可塑性樹脂−
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、本発明の目的を損なわず、複屈折率の調整や可とう性向上の目的で、メタクリル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有することもできる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリブチルアクリレート等のポリアクリレート類;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレンーブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;さらには、例えば、特開昭59−202213号公報、特開昭63−27516号公報、特開昭51−129449号公報、特開昭52−56150号公報等に記載の、3〜4層構造のアクリル系ゴム粒子;特公昭60−17406号公報、特開平8−245854公報に開示されているゴム質重合体;国際公開第2014−002491号に記載の、多段重合で得られるメタクリル系ゴム含有グラフ卜共重合体粒子;等が挙げられる。
この中でも、良好な光学特性と機械的特性とを得る観点からは、スチレン−アクリロニトリル共重合体や、主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含むメタクリル系樹脂と相溶し得る組成からなるグラフト部をその表面層に有するゴム含有グラフト共重合体粒子が好ましい。
前述のアクリル系ゴム粒子、メタクリル系ゴム含有グラフ卜共重合体粒子、及びゴム質重合体の平均粒子径としては、本実施形態の組成物より得られるフィルムの衝撃強度及び光学特性等を高める観点から、0.03〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
他の熱可塑性樹脂の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量%とした場合に、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜25質量である。
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物を製造する方法としては、本発明の要件を満たす組成物を得ることができれば、特に限定されるものではない。例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法が挙げられる。その中でも押出機による混練が、生産性の面で好ましい。混練温度は、メタクリル系樹脂を構成する重合体や、混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140〜300℃の範囲、好ましくは180〜280℃の範囲である。また、押出機には、揮発分を減じる目的で、ベント口を設けることが好ましい。
ここで、本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物では、残存する溶媒量(残存溶媒量)が1000質量ppm未満であることが好ましく、より好ましくは800質量ppm未満であり、さらに好ましくは700質量ppm未満である。
ここで、残存する溶媒とは、重合時に用いた重合溶媒(但し、アルコール類を除く)、及び重合により得られた樹脂を再度溶解し、溶液化する際に用いる溶媒を指し、具体的には、重合溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、2−メチルピロリドン等の極性溶媒;等が例示でき、再溶解に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、塩化メチレン等が例示できる。
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムを構成する樹脂組成物は、残存するアルコール量(残存アルコール量)が500質量ppm未満であることが好ましく、より好ましくは400質量ppm未満であり、さらに好ましくは350質量ppm未満である。
ここで、残存するアルコールとは、環化縮合反応により副生したアルコールを指し、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等脂肪族アルコール等が例示できる。
上記残存溶媒量及び上記残存アルコール量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
いずれの方法を選択した場合においても、酸素及び水を可能な限り低減させた上で、組成物を調製することが好ましい。
例えば、溶液重合での重合溶液中の溶存酸素濃度としては、重合工程において、300ppm未満が好ましく、また、押出機等を利用した調製法において、押出機内の酸素濃度としては、1容量%未満とすることが好ましく、0.8容量%未満とすることがさらに好ましい。メタクリル系樹脂の水分量としては、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下に調整する。
これらの範囲内であれば、本発明の要件を満たす組成物を調製することが比較的容易となり、有利である。
[偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムの製造方法]
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムは、上記樹脂組成物を成形してなる。本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムの製造方法としては、射出成形、圧縮成形、押出成形等の成形方法を用いることができる。このうち、生産性の観点からは射出成形が好ましい。
通常、射出成形法は、(1)樹脂を溶融させ、温度制御された金型のキャビティに溶融樹脂を充填する射出工程、(2)ゲートシールするまでキャビティ内に圧力をかけ、射出工程で充填された溶融樹脂が金型に接し冷却されて収縮した量に相当する樹脂を注入する保圧工程、(3)保圧を開放後、樹脂が冷却されるまで成形品を保持する冷却工程、(4)金型を開いて冷却された成形品を取り出す工程からなる。
この際、成形温度としては、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+100℃〜Tg+160℃の範囲、好ましくは、Tg+110℃〜Tg+150℃の範囲であることが好ましい。ここで、成形温度とは、射出ノズルに巻かれているバンドヒータの制御温度を指す。成形温度が高いほど位相差の低い樹脂製プリズムを得ることができるが、恒温下では成形機内滞留時の熱劣化による着色を促進するため、適宜成形温度を選択すべきである。
また、金型温度としては、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg−70℃〜Tgの範囲であることが好ましく、Tg−50℃〜Tg−20℃の範囲であることがより好ましい。
また、射出速度としては、得ようとする樹脂製プリズムの厚さや寸法により、適宜選択することができるが、例えば、10〜1000mm/秒の範囲から適宜選択することができる。
また、保圧のための圧力としては、得ようとする樹脂製プリズムの形状により、適宜選択することができるが、例えば30〜120MPaの範囲で適宜選択できる。
ここで保圧のための圧力とは、溶融樹脂を充填した後に、ゲートから更に溶融樹脂を送り出すためのスクリューによって保持される圧力である。
また、射出成形によって生じる残留応力を緩和し、樹脂製プリズムの位相差を低減するために、アニール工程を経てもよい。アニールの際の温度は、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg−50℃〜Tgの範囲であることが好ましく、Tg−30℃〜Tg−10℃の範囲であることがより好ましい。
本実施形態の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズムの表面には、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をさらに行うこともできる。これら機能層の厚さは、特に制限はないが、通常、0.01〜10μmの範囲である。
その表面に付与するハードコート層としては、例えば、シリコーン系硬化性樹脂、有機ポリマー複合無機微粒子含有硬化性樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤とを有機溶剤に溶解あるいは分散させた塗布液を従来より公知の塗布方法で、本実施形態の樹脂組成物より得られるフィルム又はシート上に、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
また、ハードコート層を塗布するまえに、接着性を改良するために、例えば、無機微粒子をその組成に含む易接着層やプライマー層、アンカー層等を予め設けたのちにハードコート層を形成させる方法も用いることができる。
その表面に付与する防眩層としては、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粒子をインキ化し、従来より公知の塗布方法で、他の機能層上に塗布し、熱あるいは光硬化させることにより形成させる。
その表面に付与する反射防止層としては、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなるもの、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたもの等が例示でき、また、無機系化合物と有機系化合物との複合微粒子を含む薄層を積層させたものも利用できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<1.N−シクロヘキシルマレイミド中の2−シクロヘキシルアミノ−N−シクロヘキシルスクシンイミド量の測定>
N−シクロヘキシルマレイミド、又はN−シクロヘキシルマレイミド/メタキシレン溶液を採取・秤量し、N−シクロヘキシルマレイミド25質量%メタキシレン溶液を調製し、内部標準物質として安息香酸イソプロピルを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2014)を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:FID
使用カラム:HP−5ms
測定条件:80℃で5分保持後、10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温、その後5分間保持
<2.N−フェニルマレイミド中の2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド量の測定>
N−フェニルマレイミド、又はN−フェニルマレイミド/メタキシレン溶液を採取・秤量し、N−フェニルマレイミド10質量%メタキシレン溶液を調製し、内部標準物質として安息香酸イソプロピルを添加し、リキッドクロマトグラフィー(Waters株式会社製 UPLC H−class)を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:PDA(検出波長:210nm〜300nm)
使用カラム:ACQUITY UPLC HSS T3
カラム温度:40℃
移動相:0.1%ギ酸含有50%アセトニトリル水溶液
流速:0.4mL/min
<3.N−置換マレイミド単量体の残存量の決定>
分析対象(重合後の重合溶液、又はメタクリル系樹脂ペレット)の一部を採取・秤量し、この試料をクロロホルムに溶解させて、5質量%溶液を調製し、内部標準物質としてn−デカンを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2010)を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:FID
使用カラム:ZB−1
測定条件:45℃で5分保持後、20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温、その後15分間保持
<4.構造単位の解析>
後述の製造実施例及び比較例で製造したメタクリル系樹脂中の各構造単位は、特に断りのない限り1H−NMR測定及び13C−NMR測定により、メタクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂組成物について各構造単位を同定し、その存在量を算出した。1H−NMR測定及び13C−NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
・測定機器:日本電子株式会社製 JNM−ECZ400S
・測定溶媒:CDCl3、又は、d6−DMSO
・測定温度:40℃
<5.分子量及び分子量分布>
後述の製造実施例及び製造比較例で製造したメタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、下記の装置、及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本、を順に直列接続して使用した。
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min、内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/Lで添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂組成物のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメチルメタクリレート(PolymerLaboratories製;PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂組成物の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
上記検量線用標準サンプルの測定により得られた各検量線を基に、メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、並びにZ平均分子量(Mz)を求め、その値を用い、分子量分布(Mw/Mn)及び(Mz/Mw)を決定した。
<6.樹脂製プリズムの位相差>
実施例及び比較例により得られた一対の直角プリズムの斜辺同士を合わせて立方体として、フォトニックラティス社製複屈折評価システムPA−200−Lを用い、波長520nmで入出射面に光を透過させてプリズムの位相差の面分布を測定し、プリズム内を領域指定して、位相差の絶対値の平均値(nm)を求めた。
<7.樹脂製プリズム中の蛍光発光性物質の含有量>
実施例及び比較例にて得られた樹脂製プリズムを細断し、ガラス製のサンプル瓶に秤量してクロロホルムを加え、振とう機で毎分800回の速度で30分間振とうすることで樹脂製プリズムの2.0質量%クロロホルム溶液を調製し、蛍光分光光度計(堀場Jobin Yvon社製、Fluorolog3−22)を用いて蛍光強度の測定を行った。
測定条件は、光源としてキセノンランプ、検出器としてPMTを用い、励起波長436nm、スリット幅を励起側、観測側ともに2nmとして、時定数0.2s、測定モードは各波長の励起光強度で発光強度を規格化するSc/Rcとし、光路長1cm石英セルを用いて90°観測で測定を行った。
得られた波長530nmにおける蛍光強度を、フルオレセイン/エタノール溶液の蛍光強度を用いて規格化した。具体的には以下のようにした。
エタノール、及び、5×10-8mol/Lと1×10-6mol/Lのフルオレセイン/エタノール溶液のそれぞれを、励起波長436nmで分光分析した際の波長530nmにおける蛍光強度を求め、エタノールのバックグラウンドを差し引いた後、濃度−強度換算式を作成した。クロロホルムの蛍光発光スペクトルを測定し、樹脂製プリズムの2.0質量%クロロホルム溶液の波長530nm発光強度からクロロホルムの波長530nm発光強度を差し引いて得られる発光強度から、先に求めたフルオレセイン/エタノール溶液の濃度−強度換算式を用いて濃度に換算し、蛍光発光性物質の含有量(mol/L)を求めた。
<8.樹脂製プリズムのガラス転移温度>
JIS−K7121に準拠して、樹脂製プリズムのガラス転移温度(Tg)(℃)を測定した。
まず、標準状態(23℃、50%RH)で状態調節(23℃で1週間放置)した樹脂製プリズムから、試験片として4点(4箇所)、それぞれ約10mgを切り出した。
次に、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン(株)製 Diamond DSC)を窒素ガス流量25mL/分の条件下で用いて、ここで、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで昇温(1次昇温)し、200℃で5分間保持して、試料を完全に融解させた後、10℃/分で200℃から40℃まで降温し、40℃で5分間保持し、さらに、上記昇温条件で再び昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のうち、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をガラス転移温度(Tg)(℃)として測定した。1試料当たり4点の測定を行い、4点の算術平均(小数点以下四捨五入)を測定値とした。
<9.樹脂製プリズムの光弾性係数>
実施例及び比較例にて得られた樹脂製プリズムを細断後、真空圧縮成形機を用いてプレスフィルムとすることで、測定用試料とした。
具体的な試料調製条件としては、真空圧縮成形機(神藤金属工業所製、SFV−30型)を用い、260℃、減圧下(約10kPa)、10分間予熱した後、樹脂製プリズムを、260℃、約10MPaで5分間圧縮し、減圧及びプレス圧を解除した後、冷却用圧縮成形機に移して冷却固化させた。得られたプレスフィルムを、23℃、湿度60%に調整した恒温恒湿室内で24時間以上養生を行った上で、測定用試験片(厚み約150μm、幅6mm)を切り出した。
Polymer Engineering and Science 1999, 39,2349−2357に詳細な記載のある複屈折測定装置を用いて、光弾性係数CR(Pa-1)を測定した。
フィルム状の試験片を、同様に恒温恒湿室に設置したフィルムの引張り装置(井元製作所製)にチャック間50mmになるように配置した。次いで、複屈折測定装置(大塚電子製、RETS−100)のレーザー光経路がフィルムの中心部に位置するように装置を配置し、歪速度50%/分(チャック間:50mm、チャック移動速度:5mm/分)で伸張応力をかけながら、試験片の複屈折を測定した。
測定より得られた複屈折(Δn)と伸張応力(σR)との関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きを求め、光弾性係数(CR)(Pa-1)を計算した。計算には、伸張応力が2.5MPa≦σR≦10MPaの間のデータを用いた。
R=Δn/σR
ここで、複屈折(Δn)は、以下に示す値である。
Δn=nx−ny
(nx:伸張方向の屈折率、ny:面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率)
<10.樹脂製プリズムの光透過率>
実施例及び比較例により得られた樹脂製プリズムを一対の直角プリズムの斜辺同士を合わせて立方体とし、入出射面に光を透過させて、分光色彩計(日本電色工業株式会社製、SD−5000)を用いて、D65光源10°視野で波長380〜780nmの範囲で5nmごとに透過率(%)を測定した。測定値を用いて、波長680nmにおける透過率(T680)に対する、波長450nmにおける透過率(T450)の比率(T450/T680)を求めた。
<11.映像の鮮明度>
実施例及び比較例により得られた樹脂製プリズムを用い、一対の直角プリズムの斜辺と斜辺の間に反射型偏光フィルムを挟み、接着することで、キューブ型の偏光ビームスプリッタを作製した。これを用い、図1に示すような評価系を作製した。
当該評価系は、青色LED(ピーク波長:約465nm)1、コリメータレンズ2、偏光ビームスプリッタ3、反射型液晶パネル(LCOS:Liquid Crystal On Silicon)4、投射レンズ5、スクリーン6を組み合わせて形成した。偏光ビームスプリッタ3は、実施例及び比較例により得られた一対の樹脂製の直角プリズム31、32の斜辺と斜辺の間に反射型偏光フィルム33を挟んで接着することで作製した。青色LED1からの光は、コリメータレンズ2により平行光とされたのち、偏光ビームスプリッタ3に入射し、樹脂製プリズム31を通ったのちに反射型偏光フィルム33によってP偏光とS偏光に分割される。S偏光は、反射型偏光フィルム33によって90°折り返され、反射型液晶パネル4に入射する。反射型液晶パネル4では、入射したS偏光が、オン信号の画素ではP偏光に変換されて反射され、オフ信号の画素ではS偏光のまま反射されて樹脂製プリズム31に入射し反射型偏光フィルム33に到達する。反射型偏光フィルム33では、P偏光の光が透過して樹脂製プリズム32を通り、投射レンズ5で拡大されてスクリーン6に投影される。
上記模擬装置を通してスクリーン6に表示される静止画像を観察し、映像の鮮明度について以下の評価基準で評価を行った。
[評価基準]
映像の鮮明度
〇:映像ににじみ及びぼやけが見られない。
△:にじみ及びぼやけにより映像がやや不鮮明になっているが、映し出されているものが何か判別可能である。
×:にじみ及びぼやけにより映像が不鮮明になっているため、映し出されているものが何か判別不能である。
色調の再現度
〇:青色が鮮明に再現されている。
×:青色の再現度が悪くなっている。
[原料]
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[単量体]]
・メチルメタクリレート(MMA):旭化成株式会社製
・N−シクロヘキシルマレイミド(chMI):株式会社日本触媒製
(chMI質量に対する2−シクロヘキシルアミノ−N−シクロヘキシルスクシンイミド(CCSI)の質量割合は80質量ppm)
・N−フェニルマレイミド(phMI):株式会社日本触媒製
(phMI質量に対する2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド(APSI)の質量割合は60質量ppm)
−N−置換マレイミド(chMI、phMI)の前処理(水洗工程及び脱水工程)−
上記N−シクロヘキシルマレイミド(chMI)及びN−フェニルマレイミド(phMI)について、下記の水洗及び脱水工程により、2−アミノ−N−置換スクシンイミド(CCSI、APSI)の除去及び含有水分の除去を行った。
−−N−シクロヘキシルマレイミド(chMI)の水洗及び脱水−−
−−−N−シクロヘキシルマレイミド中のCCSIを5質量ppm以下に低減−−−
chMIを250.0kg、メタキシレン(以下「mXy」と記す)を750.0kg計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼として3枚後退翼とを具備した2.0m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を56℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで、2質量%硫酸水350.0kgを計量して反応器に加え、溶液温度を56℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
同様の操作をさらに2回繰り返し、有機層を硫酸水で洗浄する操作を合計3回行った。有機層中のCCSI量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のchMIに対して4.9質量ppmであった。
その後、イオン交換水350.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、20分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
同様の操作をもう一度繰り返し、有機層をイオン交換水で洗浄する操作を合計2回行った。有機層中のCCSI量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のchMIに対して4.6質量ppmであった。
次に、溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内の圧力を5kPaとした。その後、溶液温度を60℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。131.6kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中の水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機層の質量に対して102質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、chMIが24.0質量%、水分濃度が191質量ppm、chMIの質量に対してCCSIが4.6質量ppmの有機層を1034.3kg得た。
−−−N−シクロヘキシルマレイミド中のCCSIを1質量ppm以下に低減−−−
chMIを80.0kg、mXyを240.0kg計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼として神鋼環境ソリューション製フルゾーンとを具備した0.50m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を55℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで、2質量%硫酸水112.0kgを計量して反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
同様の操作をさらに3回繰り返し、有機層を硫酸水で洗浄する操作を合計4回行った。有機層中のCCSI量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のchMIに対して0.57質量ppmであった。
その後、イオン交換水112.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内の圧力を5kPaとした。その後、溶液温度を60℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。54kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中の水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機層の質量に対して46質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、chMIが20.3質量%、水分濃度が125質量ppm、chMIの質量に対してCCSIが0.60質量ppmの有機層を384.0kg得た。
−−N−フェニルマレイミド(phMI)の水洗及び脱水−−
−−−N−フェニルマレイミド中のAPSIを5質量ppm以下に低減−−−
phMIを150.0kg、mXyを720.0kg計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼として3枚後退翼とを具備した2.0m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を55℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで、7質量%重曹水336.0kgを計量して反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
次いで、イオン交換水336.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
その後、2質量%硫酸水336.0kgを計量して反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
上記と同様にして、イオン交換水で洗浄する操作をさらに2回行った。
有機層中のAPSI量をリキッドクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のphMIに対して3.6質量ppmであった。
次に、溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内の圧力を5kPaとした。その後、溶液温度を55℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。190kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中の水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機層の質量に対して47質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、phMIが10.8質量%、水分濃度が170質量ppm、phMIの質量に対してAPSIが3.4質量ppmの有機層を1340.7kg得た。
−−−N−フェニルマレイミド中のAPSIを1質量ppm以下に低減−−−
phMIを50.0kg、mXyを240.0kg計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼として神鋼環境ソリューション製フルゾーンとを具備した0.50m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を55℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで、7質量%重曹水112.0kgを計量して反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで15分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。同様の操作をもう一度繰り返し、有機層を重曹水で洗浄する操作を合計2回行った。
次いで、イオン交換水112.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。
その後、2質量%硫酸水112.0kgを計量して反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜き出した。同様の操作をさらに2回繰り返し、有機層を硫酸水で洗浄する操作を合計3回行った。
上記と同様にして、イオン交換水で洗浄する操作をさらに2回行った。
有機層中のAPSI量をリキッドクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のphMIに対して0.37質量ppmであった。
溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内の圧力を5kPaとした。その後、溶液温度を55℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。72kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中の水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機層の質量に対して60質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、phMIが10.3質量%、水分濃度が180質量ppm、phMIの質量に対してAPSIが0.42質量ppmの有機層を432.8kg得た。
[[重合開始剤]]
・1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:日油株式会社製「パーヘキサC」
[[連鎖移動剤]]
・n−オクチルメルカプタン:花王株式会社製
[[ヒンダードフェノール系酸化防止剤]]
・イルガノックス1010:BASF社製
[[リン系酸化防止剤]]
・イルガフォス168(融点180〜190℃):BASF社製
[メタクリル系樹脂組成物]
[製造実施例1]
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSIはphMIの質量に対して0.42質量ppm)374.8kgと、水洗工程及び脱水工程を経たchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSIはchMIの質量に対して0.60質量ppm)323.6kgとを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼とを具備した1.25m3反応器に加え、溶液温度60℃、反応器内圧力5kPaにて撹拌しつつmXyを160.8kg減圧下で留去した。次いで、反応釜を常圧に戻し、mXy16.7kgを添加することで、phMI38.6kg、chMI65.7kg、mXy450.0kgの混合溶液を調製した。MMA445.7kgと、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン0.413kgとを計量、投入して撹拌し、単量体混合溶液を得た。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。
その後、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を125℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.23kgをmXy2.77kgに溶解させた重合開始剤溶液を0.5kg/時間の速度で添加することで重合を開始し、重合開始6時間後に添加を停止した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で125±2℃に制御した。
重合開始から8時間経過した後、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量を評価した結果、phMIを1340質量ppm、chMIを4390質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1010と0.05質量%のイルガフォス168を撹拌下に添加した。
この酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3m3のSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し、脱揮処理を施した。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
脱揮後の重合物を脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物Aを得た。
メタクリル系樹脂組成物Aの組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.2質量%、7.1質量%、11.7質量%であった。また、重量平均分子量Mwは148,000、Mw/Mnは2.12、Mz/Mwは1.63、ガラス転移温度は133℃であった。
[製造実施例2]
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSIはphMIの質量に対して0.42質量ppm)を352.4kgと、水洗工程及び脱水工程を経たchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSIはchMIの質量に対して0.60質量ppm)を310.3kgとを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼とを具備した1.25m3反応器に加え、溶液温度60℃、反応器内圧力5kPaにて撹拌しつつmXyを335.4kg減圧下で留去した。次いで、反応釜を常圧に戻し、mXy8.9kgを添加することで、phMI36.3kg、chMI63.0kg、mXy236.9kgの混合溶液を調製した。MMA340.7kgと、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン0.275kgとを計量、投入して撹拌し、単量体混合溶液を得た。
次いで、mXy123.1kgを計量して、タンク1に加えた。
さらに、タンク2にMMA110.0kg及びmXy90.0kgを計量して撹拌し、追添用単量体溶液とした。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を128℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.37kgをmXy3.005kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。重合開始0.5時間後に、開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させるとともに、タンク1から35.2kg/時間で3.5時間の間、mXyを添加した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で128±2℃で制御した。
次いで、重合開始4時間後に開始剤溶液の添加速度を0.75kg/時間に変化させるとともに、タンク2からMMAを含む単量体溶液を100.0kg/時間の速度で2時間の間添加した。
さらに、重合開始6時間後に開始剤溶液の添加速度を0.5kg/時間に低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。重合を更に1時間継続し、主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量を評価した結果、phMIを220質量ppm、chMIを1070質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1010と0.05質量%のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3m3のSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される、回転部を有していない脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
脱揮後の重合物を脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物Bを得た。
メタクリル系樹脂組成物Bの組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、80.9質量%、7.0質量%、12.1質量%であった。また、重量平均分子量Mwは142,000、Mw/Mnは2.32、Mz/Mwは1.75、ガラス転移温度は134℃であった。
[製造実施例3]
水洗工程及び脱水工程を経たphMIとして10.8質量%mXy溶液(APSIはphMIの質量に対して3.4質量ppm)、及び水洗工程及び脱水工程を経たchMIとして24.0質量%mXy溶液(CCSIはchMIの質量に対して4.6質量ppm)を用い、反応器内で調製する混合溶液の組成を製造実施例2と合わせた以外は、製造実施例2と同様にしてメタクリル系樹脂組成物Cを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量を評価した結果、phMIを210質量ppm、chMIを1090質量ppm含んでいた。
メタクリル系樹脂組成物Cの組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、80.8質量%、7.1質量%、12.1質量%であった。また、重量平均分子量Mwは141,000、Mw/Mnは2.31、Mz/Mwは1.75、ガラス転移温度は134℃であった。
[製造実施例4]
ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼とを具備した反応器に、MMA40質量部とmXy60質量部、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン0.08質量部を仕込み、窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。その後、ジャケットにスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を120℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部をmXy0.10質量部に溶解させた重合開始剤溶液を、等速で5時間添加することで重合を行い、さらに120℃で3時間熟成を行い、重合開始から8時間後に重合を終了してPMMAのmXy溶液を得た。重合終了後に液温を50℃まで下げた。
次にモノメチルアミン12質量部とメタノール12質量部とからなる混合液を反応器内に室温で滴下し、液温を170℃に上げて加圧下で1時間撹拌することでグルタルイミド環化反応を進行させた。液温を120℃に下げ、反応器内を減圧にして未反応のモノメチルアミンとメタノール、さらにmXyの一部を留去して、グルタルイミド環化メタクリル系重合体の約50質量%mXy溶液を得た。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1010と0.05質量%のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3m3のSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される、回転部を有していない脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
脱揮後の重合物を脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物Dを得た。
得られたメタクリル系樹脂組成物Dの組成を確認したところ、イミド化率は3.2%、グルタルイミド構造単位量は5.1質量%であった。また、重量平均分子量Mwは93,000、Mw/Mnは1.79、Mz/Mwは1.51、ガラス転移温度は122℃であった。
[製造実施例5]
反応器内で調製する溶液中の各モノマー量をphMI39.3kg、chMI46.5kg、MMA354.2kgとした以外は製造実施例2と同様にして、メタクリル系樹脂組成物Eを得た。
メタクリル系樹脂組成物Eの組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、83.2質量%、7.6質量%、9.2質量%であった。また、重量平均分子量Mwは143,000、Mw/Mnは2.35、Mz/Mwは1.81、ガラス転移温度は132℃であった。
[製造比較例1]
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSIはphMIの質量に対して0.42質量ppm)を352.4kgと、水洗工程及び脱水工程を経たchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSIはchMIの質量に対して0.60質量ppm)を310.3kgとを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼とを具備した1.25m3反応器に加え、溶液温度60℃、反応器内圧力5kPaにて撹拌しつつmXyを335.4kg減圧下で留去した。次いで、反応釜を常圧に戻し、mXy8.9kgを添加することで、phMI36.3kg、chMI63.0kg、mXy236.9kgの混合溶液を調製した。MMA340.7kgと、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン0.275kgとを計量、投入して撹拌し、単量体混合溶液を得た。
次いで、mXy123.1kgを計量して、タンク1に加えた。
さらに、タンク2にMMA110.0kg及びmXy90.0kgを計量して撹拌し、追添用単量体溶液とした。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を128℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.37kgをmXy3.005kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。重合開始0.5時間後に、開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させるとともに、タンク1から35.2kg/時間で3.5時間の間、mXyを添加した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で128±2℃で制御した。
次いで、重合開始4時間後に開始剤溶液の添加速度を0.75kg/時間に変化させるとともに、タンク2からMMAを含む単量体溶液を100.0kg/時間の速度で2時間の間添加した。
さらに、重合開始6時間後に開始剤溶液の添加速度を0.5kg/時間に低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。重合を更に1時間継続し、主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量を評価した結果、phMIを220質量ppm、chMIを1070質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1010と0.05質量%のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
次に、得られた重合溶液を、脱揮用に複数のベント口を装備した二軸押出機に導入することにより、脱揮を行った。二軸押出機では、樹脂換算で10kg/時となるように、得られた重合溶液を供給し、バレル温度260℃、スクリュー回転数150rpm、真空度10〜40Torrの条件とした。二軸押出機で脱揮された樹脂を、ストランドダイから押出し、水冷後ペレット化し、メタクリル系樹脂組成物Fを得た。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると80s-1であった。
メタクリル系樹脂組成物Fの組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、80.9質量%、7.0質量%、12.1質量%であった。また、重量平均分子量Mwは136,000、Mw/Mnは2.35、Mz/Mwは1.81、ガラス転移温度は134℃であった。
[製造比較例2]
phMI及びchMIとして市販品を未精製のまま使用してphMI36.3kg、chMI63.0kg、mXy236.9kgの混合溶液を調製した以外は、製造実施例2と同様にしてメタクリル系樹脂組成物Gを得た。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
尚、得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量を評価した結果、phMIを220質量ppm、chMIを1070質量ppm含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、80.9質量%、7.1質量%、12.1質量%であった。また、重量平均分子量Mwは142,000、Mw/Mnは2.32、Mz/Mwは1.75、ガラス転移温度は134℃であった。
[製造比較例3]
phMI及びchMIとして市販品を未精製のまま使用して、phMI38.6kg、chMI65.7kg、mXy450.0kg、MMA445.7kgと、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン0.413kgとを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼とを具備した1.25m3反応器に投入して撹拌し、単量体混合溶液を得た。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。
その後、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を125℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.23kgをmXy2.77kgに溶解させた重合開始剤溶液を0.5kg/時間の速度で添加することで重合を開始し、重合開始6時間後に添加を停止した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で125±2℃に制御した。
重合開始から8時間経過した後、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量を評価した結果、phMIを1340質量ppm、chMIを4390質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1010と0.05質量%のイルガフォス168を撹拌下に添加した。
この酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
この酸化防止剤を添加した重合溶液を予め170℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給し、溶液中に含まれる重合体の濃度を70質量%まで高め、次いで得られた重合溶液を伝熱面積が0.2m2である、回転部を有する薄膜蒸発機に供給し、脱揮を行った。
この際の装置内温度は280℃、供給量30L/hr、回転数400rpm、真空度30Torrで実施し、脱揮後の重合物をギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化して、メタクリル系樹脂組成物Hを得た。回転部を有する薄膜蒸発機内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると3200s-1であった。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.0質量%、7.2質量%、11.8質量%であった。また、重量平均分子量Mwは136,000、Mw/Mnは2.21、Mz/Mwは1.71、ガラス転移温度は134℃であった。
[製造比較例4]
反応器内で調製する溶液中の各モノマー量をphMI41.3kg、chMI41.3kg、MMA357.5kgとした以外は製造実施例2と同様にして、メタクリル系樹脂組成物Iを得た。
メタクリル系樹脂組成物Iの組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、84.1質量%、8.0質量%、7.9質量%であった。また、重量平均分子量Mwは145,000、Mw/Mnは2.31、Mz/Mwは1.77、ガラス転移温度は130℃であった。
[製造比較例5]
同方向回転式の二軸押出機を用いてポリメタクリル酸メチルをモノメチルアミンでイミド化することで、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂組成物Jを得た。
具体的には、スクリュー径40mmの同方向回転式二軸押出機を用い、押出機シリンダー温度を270℃、スクリュー回転数を150rpmに設定し、ホッパーより重量平均分子量Mw10.8万のポリメタクリル酸メチルを20kg/hで供給するとともに、窒素を200mL/minの流量で押出機内にフローした。ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから原料樹脂100質量部に対して1.8質量部のモノメチルアミンを注入し、イミド化反応を行った。反応ゾーンの末端(ベント口の手前)にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物及び過剰のメチルアミンをベント口の圧力を50Torrに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することによりイミド樹脂を得た。
次いでスクリュー径40mmの同方向回転式二軸押出機を用い、押出機シリンダー温度を250℃、スクリュー回転数を150rpmに設定し、得られたイミド樹脂を20kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからエステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合液を注入し、樹脂中のカルボン酸基の低減を行った。イミド樹脂100質量部に対して、炭酸ジメチルは3.2質量部、トリエチルアミンは0.8質量部とした。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物及び過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を50Torrに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化しグルタルイミド構造を有するメタクリル系樹脂組成物Jを得た。
この樹脂組成物のイミド化率は3.3%、グルタルイミド系構造単位の含有量は5.2質量%、であった。二軸押出機内のせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると約80s-1であった。
また、重量平均分子量Mwは96,000、Mw/Mnは1.82、Mz/Mwは1.48、ガラス転移温度は122℃であった。
[実施例1〜5、比較例1〜5]
製造実施例及び製造比較例によって得られたメタクリル系樹脂組成物A〜Jを用いて、以下の方法で樹脂製プリズムを射出成形し、諸特性の測定を行った。結果を表1に示す。
〈樹脂製プリズムの成形〉
メタクリル系樹脂組成物A〜Jを強制送風循環式の乾燥器で100℃、4時間乾燥後、一辺12.7mmの直角二等辺三角形を底面とする高さ12.7mmの三角柱(一辺12.7mmの立方体の一対の相対面の対角線を含む面で切断した形の三角柱)の金型を用い、型締め力50Tの射出成形機で、シリンダー温度270℃、金型温度110℃、射出速度10mm/s、50MPaで10秒間の保圧、冷却時間100秒として直角プリズムの射出成形を行った。
さらに、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度から25℃低い温度に設定したオーブンで3時間アニールした。
Figure 2021157158
本発明の樹脂製プリズムは、偏光ビームスプリッタを形成したときに鮮明な映像が得られるため、ヘッドマウントディスプレイ等の表示機器の軽量化に寄与することができる。
1:青色LED
2:コリメータレンズ
3:偏光ビームスプリッタ
4:反射型液晶パネル(LCOS)
5:投射レンズ
6:スクリーン
31、32:樹脂製プリズム
33:反射型偏光フィルム

Claims (8)

  1. 位相差の絶対値の平均が10nm以下であり、
    クロロホルムに溶解して得た2.0質量%溶液について、励起波長436nmで測定したときの波長530nmにおける蛍光強度から、フルオレセインのエタノール溶液の濃度−強度換算式を用いて求めた蛍光発光性物質の含有量が、0.1〜4.0×10-9mol/Lである
    ことを特徴とする、偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  2. ガラス転移温度(Tg)が120℃超160℃以下である、請求項1に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  3. 光弾性係数の絶対値が3.0×10-12Pa-1以下である、請求項1又は2に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  4. メタクリル系樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  5. 前記メタクリル系樹脂が、主鎖に環構造を有する構造単位(X)を有するメタクリル系樹脂を含む、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  6. 前記構造単位(X)が、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、請求項5に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  7. 前記構造単位(X)が、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を含む、請求項5に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
  8. 前記構造単位(X)が、グルタルイミド系構造単位を含む、請求項5に記載の偏光ビームスプリッタ用樹脂製プリズム。
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