JP2021155831A - 鋼部品の製造方法 - Google Patents

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洋 山口
大介 笠井
Daisuke Kasai
大介 笠井
一晃 岡田
Kazuaki Okada
一晃 岡田
将芝 榊原
Masashi Sakakibara
将芝 榊原
幸生 松原
Yukio Matsubara
幸生 松原
淳 木野瀬
Atsushi Konose
淳 木野瀬
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Abstract

【課題】コストアップを抑制しつつ、鋼部品の強度のばらつきを低減することができる鋼部品の製造方法の提供。【解決手段】素材鋼から鋼部品を製造する鋼部品の製造方法は、鋼部品の外周面およびその近傍におけるC濃度が素材鋼のC濃度よりも高い1.1質量%超かつ1.5質量%以下になるように素材鋼からなるワークに浸炭処理を施し、ワークのオーステナイト組織をマルテンサイト変態させる臨界冷却速度未満の冷却速度でワークを冷却し、内部温度が予め定められた目標温度になるように管理された加熱炉内でワークを加熱した後、臨界冷却速度以上の冷却速度でワークを冷却する。【選択図】図2

Description

本開示は、素材鋼から鋼部品を製造する鋼部品の製造方法に関する。
従来、軸受部品の製造方法として、軸受部品の表面炭素濃度が1.1超−1.5%の範囲内となるようにワークに真空浸炭処理を施し、表層の組織をパーライト組織になるようにワークを冷却した後に当該ワークに高周波誘導加熱による焼入れを施すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる方法によれば、軸受部品の表面に微細な炭化物を多量に生じさせて当該軸受部品の硬度や強度をより向上させることができる。
特許第5599211号公報
上述従来の製造方法のように、高周波誘導加熱を利用して1つのワークに短時間で焼入れを施すことで軸受部品の製造コストを低減することができる。しかしながら、高周波誘導加熱による焼入れ工程を経て製造された軸受部品では、強度の個体差が大きく、上記従来の製造方法には、鋼部品の強度をより向上させる上でなお改善の余地があることが判明した。
そこで、本開示は、コストアップを抑制しつつ、鋼部品の強度のばらつきを低減することができる鋼部品の製造方法の提供を主目的とする。
本開示の鋼部品の製造方法は、素材鋼から鋼部品を製造する鋼部品の製造方法において、前記鋼部品の外周面およびその近傍におけるC濃度が前記素材鋼のC濃度よりも高い1.1質量%超かつ1.5質量%以下になるように前記素材鋼からなるワークに浸炭処理を施し、前記ワークのオーステナイト組織をマルテンサイト変態させる臨界冷却速度未満の冷却速度で前記ワークを冷却し、内部温度が予め定められた目標温度になるように管理された加熱炉内で前記ワークを加熱した後、前記臨界冷却速度以上の冷却速度で前記ワークを冷却するものである。
本発明者らは、浸炭処理および焼入れが施された鋼部品の強度をより向上させるべく、鋭意研究を行い、その結果、高周波誘導加熱による焼入れでは、加熱時のワークの位置ズレやワークの形状の個体差等により必ずしもワークが均一に加熱されなくなり、ワーク間における加熱温度のばらつきが大きくなることが判明した。更に、本発明者らの回転曲げ疲労試験の結果から、浸炭処理(および冷却処理)の後に高周波誘導加熱による焼入れを施して得られた鋼部品では、高周波誘導加熱による加熱温度が高いと粒界破壊が発生しやすくなり、高周波誘導加熱による加熱温度が低いと粒内破壊が発生しやすくなるという傾向が認められた。すなわち、高周波誘導加熱によりワークが焼入れされる場合、ワーク間における加熱温度のばらつきが大きくなることで、焼入れ・冷却後の鋼部品の強度のばらつきが大きくなってしまう。これを踏まえて、本開示の製造方法では、浸炭処理および冷却処理が施されたワークを内部温度が予め定められた目標温度になるように管理された加熱炉内で加熱した後、臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する。これにより、臨界冷却速度以上の冷却速度での冷却前に焼入れによる加熱温度のばらつきをより小さくして、冷却後の鋼部品の強度のばらつきを低減することが可能となる。また、加熱炉内でワークを加熱することで当該ワークの焼入れ(加熱)に時間を要することにはなるが、加熱炉内で一度に多くのワークを加熱することで、高周波誘導加熱による焼入れを行う場合に比べて鋼部品の製造コストを低下させることができる。この結果、本開示の製造方法によれば、コストアップを抑制しつつ、鋼部品の強度のばらつきを低減することが可能となる。
本開示の製造方法により製造される鋼部品を例示する断面図である。 本開示の製造方法を説明するためのフローチャートである。 (a)は、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の断面組織の一例を示す説明図であり、(b)は、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の破面の一例を示す説明図である。 (a)は、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の断面組織の他の例を示す説明図であり、(b)は、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の破面の他の例を示す説明図である。 (a)は、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の断面組織の更に他の例を示す説明図であり、(b)は、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の破面の更に他の例を示す説明図である。
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の製造方法により製造される鋼部品であるピニオンギヤ1を示す断面図である。同図に示すピニオンギヤ1は、複数の歯2と、図示しないピニオンシャフトが挿通されるピニオンシャフト孔3とを含むものである。ピニオンギヤ1は、図2に示すように、高Si添加鋼である素材鋼からなる棒材(ワーク)に、粗加工(ステップS100)、歯切り加工(ステップS110)、浸炭処理(ステップS120)、冷却処理(ステップS130)、焼入れ処理(ステップS140)および焼戻し処理(ステップS150)を施すことにより形成される。なお、焼き戻し処理の後に、ピニオンギヤ1に対して、ショットピーニング処理等の表面硬化処理が施されてもよく、更に必要に応じて鏡面仕上げ処理等の表面処理が施されてもよい。
ピニオンギヤ1の素材鋼は、0.15質量%以上かつ0.25質量%以下のC(炭素)、0.90質量%以上かつ3.00質量%以下のSi(ケイ素)、0.70質量%以上かつ1.10質量%以下のMn(マンガン)、0.03質量%以下のP(リン)、0.100質量%以下のS(硫黄)、0.01質量%以上かつ0.50質量%以下のCu(銅)、0.01質量%以上かつ0.50質量%以下のNi(ニッケル)、0.20質量%以上かつ0.50質量%以下のCr(クロム)、0.50質量%以下のMo(モリブデン)、0.30質量%以下のAl(アルミニウム)、0.05質量%以下のN(窒素)、Fe、および不可避不純物を含むものである。
素材鋼におけるSi濃度は、好ましくは、1.00質量%以上かつ1.30質量%以下である。素材鋼におけるS濃度は、好ましくは、0.03質量%以下である。素材鋼におけるCu濃度は、好ましくは0.05質量%以上かつ0.3質量%以下である。素材鋼におけるNi濃度は、好ましくは、0.04質量%以上かつ0.3%質量%以下である。素材鋼におけるCr濃度は、好ましくは、0.2質量%以上かつ0.4質量%以下である。素材鋼におけるMo濃度は、好ましくは、0.05質量%以上かつ0.4質量%以下である。素材鋼におけるAl濃度は、好ましくは、0.01質量%以上かつ0.04質量%以下である。素材鋼におけるN濃度は、好ましくは、0.01質量%以上かつ0.03質量%以下である。
また、素材鋼は、任意の合金成分として、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)およびB(ボロン)のうちの1種または2種を含有していてもよい。素材鋼におけるNb濃度は、好ましくは、0.02質量%以上かつ0.20質量%以下である。素材鋼におけるTi濃度は、好ましくは0.02質量%以上かつ0.20質量%以下である。素材鋼におけるB濃度は、好ましくは、0.0005質量%以上かつ0.0100質量%以下である。
そして、素材鋼としては、Siの含有質量%を[Si]とし、Niの含有質量%を[Ni]とし、Cuの含有質量%を[Cu]とし、Crの含有質量%を[Cr]としたときに、[Si]+[Ni]+[Cu]−[Cr]>0.5を満たすものが採用される。これにより、ステップS120の浸炭処理によりワークに高濃度の炭素を添加しても、ステップS130の冷却処理によりパーライト組織を生じさせることができる。
続いて、上述のピニオンギヤ1の製造手順について具体的に説明する。
ピニオンギヤ1の製造に際しては、上述のような組成の素材鋼からなる棒材を用意する。当該棒材には、素材鋼のC濃度(0.05質量%以上かつ0.30質量%以下)に対応したA3変態点(オーステナイト−フェライト変態点)より高い温度になるように加熱する焼きならしが予め施される。更に、棒材を所定長に切断して得たワークに粗加工(ステップS100)および歯切り加工(ステップS110)を施す。
歯切り加工の完了後、ワークに対して浸炭処理(ステップS120)を施す。ステップS120の浸炭処理は、炭化水素系ガス(例えばアセチレンガス等)が導入された図示しない減圧炉内でワークを加熱し、当該ワークの内部にC(炭素)を浸透・拡散させる、いわゆる真空浸炭処理である。浸炭処理の実行に際して、減圧炉内の圧力は、例えば2kPa以下に設定され、減圧炉の内部温度は、例えば900−1050℃の範囲内に設定される。ワークは、当該減圧炉内でピニオンギヤ1の表層に対応した領域におけるC濃度が1.1質量%超かつ1.5質量%以下になるように予め定められた時間(例えば、60−300分)だけ加熱される。ただし、ピニオンギヤ1の表層は、歯2の歯面、歯先面および歯底面(外周面)を含む当該外周面から20−40μm程度の深さまでの領域である。浸炭処理(加熱)が完了した段階では、ワークの概ね全体がオーステナイト組織となる。
浸炭処理(加熱)の完了後、ワークに対して減圧炉内で冷却処理を施す(ステップS130)。ステップS130の冷却処理は、ワークのオーステナイト組織をマルテンサイト変態させる臨界冷却速度未満の冷却速度(例えば、0.2−5.0℃/s)で当該ワークを徐々に冷却するものである。このようにワークを徐冷することで、当該、ワークの外周面および内周面側の部分が主にパーライト組織となり、内部に向かうにつれてフェライト組織が増加していく。これにより、パーライト組織よりも体積の大きなマルテンサイト組織がワークに生じるのが抑制されることから、熱処理によるワークの歪みの発生を抑制することができる。
冷却処理の完了後、ワークに対して焼入れ処理(ステップS140)を施す。ここで、図3から図5に、高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品についての本発明者らによる回転曲げ疲労試験の結果を示す。回転曲げ疲労試験は、ワークに装着された熱電対により検出される温度が互いに異なる設定温度になるように高周波誘導加熱により焼入れされた複数のワークについて実施された。図3(a)は、設定温度を770℃とした高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の断面組織の一例を示す説明図であり、図3(b)は、設定温度を770℃とした高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の破面の一例を示す説明図である。また、図4(a)は、設定温度を820℃とした高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の断面組織の一例を示す説明図であり、図4(b)は、設定温度を820℃とした高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の破面の一例を示す説明図である。更に、図5(a)は、設定温度を870℃とした高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の断面組織の一例を示す説明図であり、図5(b)は、設定温度を870℃とした高周波誘導加熱による焼入れが施された鋼部品の破面の一例を示す説明図である。
図3(a)および図4(a)に示すように、高周波誘導加熱の設定温度が770℃または820℃とされた鋼部品の断面には、白い層状のセメンタイト(Fe3C,炭化物)が確認された。また、高周波誘導加熱の設定温度が870℃とされた鋼部品の断面では、図5(a)に示すように、層状のセメンタイトが分断され、セメンタイトが点在していた。更に、高周波誘導加熱の設定温度が770℃または820℃とされた鋼部品の破面では、図3(b)および図4(b)に示すように、粒界が明瞭に確認されておらず、これらの鋼部品では、粒内を破断が伝播する粒内破壊が発生したと推定される。これに対して、高周波誘導加熱の設定温度が870℃とされた鋼部品の破面では、図5(b)に示すように、粒界が明瞭に確認され、かかる鋼部品では、粒界で破断が生じる粒界破壊が発生したと推定される。
すなわち、高周波誘導加熱によりワークがA3変態点を超える温度に加熱されると、粒界に析出しているセメンタイトの一部が粒内に固溶するが、かかる現象は焼入れ時の温度が高いほど発生し、それにより粒内に多くの炭素が含有されると推定される。一方、焼入れ時の温度が低い場合には、粒界に析出している炭化物はさほど減少せず、粒内の炭素量の変動度合いは比較的小さいと推定される。従って、浸炭処理(および冷却処理)の後に高周波誘導加熱による焼入れを施して得られた鋼部品では、高周波誘導加熱による加熱温度が高いと粒界の弱化により粒界破壊が発生しやすくなり、高周波誘導加熱による加熱温度が低いと粒内が強化されず粒内破壊が発生しやすくなると考えられる。
そして、本発明者らの実験・解析によれば、高周波誘導加熱では、加熱装置(コイル)に対するワークの位置ズレや、ワーク自体の形状の個体差等により必ずしもワークが常時均一に加熱されなくなり、ワーク間における実際の加熱温度のばらつきが大きくなることも判明した。更に、高周波誘導加熱による焼入れ工程は短時間(例えば15−20秒程度)で行われることから、当該焼入れ工程に際してワーク間における実際の加熱温度のばらつきを低減することは困難である。このため、高周波誘導加熱による焼入れ工程を含む製造方法によれば、互いに異なる破壊モード(粒内破壊モードまたは粒界破壊モード)をもった複数の鋼部品が製造され、製造された複数の鋼部品間における強度のバラツキが大きくなってしまう。
かかる研究結果を踏まえて、ステップS140の焼入れ処理は、浸炭処理(ステップS120)および冷却処理(ステップS130)が施されたワークを内部温度が予め定められた目標温度Ttagになるように管理された加熱炉内で加熱した後、上記臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却するものとされる。本実施形態において、目標温度Ttagは、770−820℃の範囲内でAcm変態点以上の一定値(例えば、800℃)に設定される。Acm変態点は、ピニオンギヤ1の表層におけるC濃度に対応したオーステナイト化温度である。そして、ステップS140では、内部温度が目標温度Ttag±5℃の範囲内に維持されると共にカーボンポテンシャル(CP)が例えばCP=0.8に設定された図示しない加熱炉内で、ワークを所定時間(例えば30−120分)だけ加熱する。これにより、ワークの粒界に析出している炭化物が粒内へと固溶する度合いのばらつきを抑制しつつ、当該ワークの概ね全体をオーステナイト組織にすることができる。
また、本実施形態では、加熱炉として、いわゆる連続炉が用いられ、ワークが所定時間だけ加熱されると、当該加熱炉内で例えば20−200℃の水や冷却油といった冷媒を用いて上記臨界冷却速度以上の冷却速度でワークが冷却(急冷)される。これにより、ワークの外周面の沿った領域および内周面(ピニオンシャフト孔3)に沿った領域で、オーステナイト組織の一部がマルテンサイト組織(焼入マルテンサイト組織)に変化する。これにより、ワークの外周面の沿った領域および内周面に沿った領域の硬さが素材鋼よりも高くなる。また、冷媒の温度を20−200℃とすることで、ワークのピニオンギヤの表層に対応した領域におけるC濃度が1.1質量%超かつ1.5質量%以下であったとしても、マルテンサイト組織に変態していない残留オーステナイト組織の体積率が大きくなるのを確実に抑制することできる。
焼入れ処理の完了後、ワークに対して焼戻し処理(ステップS150)を施す。焼戻し処理は、ワークの温度が約600℃より低い温度(例えば、300℃で3時間)になるように当該ワークを加熱するものである。焼入れ処理および焼戻し処理が実行されることで、表層の靱性が十分に確保されたピニオンギヤ1が完成する。なお、焼き戻し処理の後に、ピニオンギヤ1に対して、ショットピーニング処理等の表面硬化処理や、鏡面仕上げ処理等の表面処理が施されてもよい。
上述のように、鋼部品としてのピニオンギヤ1を製造する際には、浸炭処理(ステップS120)および冷却処理(ステップS130)の後、素材鋼からなるワークを内部温度が予め定められた目標温度Ttagになるように管理された加熱炉内で加熱した後、臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理(ステップS140)が実行される。これにより、ワークの粒界に析出している炭化物が粒内へと固溶する度合いのばらつきを小さくし、粒内破壊しやすい鋼部品と粒界破壊しやすい鋼部品とが混在して製造されるのを抑制することができる。従って、ピニオンギヤ1の強度のばらつきを低減することが可能となる。また、加熱炉内でワークを加熱することで当該ワークの焼入れ(加熱)に時間を要することにはなるが、加熱炉内で一度に多くのワークを加熱することで、高周波誘導加熱による焼入れを行う場合に比べてピニオンギヤ1の製造コストを低下させることができる。この結果、コストアップを抑制しつつ、ピニオンギヤ1の強度のばらつきを低減することが可能となる。更に、加熱炉の内部温度を目標温度±5℃の範囲内に維持することで、ピニオンギヤ1の強度のばらつきを極めて良好に低減することができる。
また、加熱炉内の目標温度Ttagを770−820℃の範囲内に定めた場合(目標温度Ttagを低くした場合)、加熱炉内の目標温度Ttagを高くした場合(例えば、目標温度Ttagが870℃である場合)に比べて、粒界の炭化物が多くなり、表層の残留オーステナイトの量が少なくなる。従って、加熱炉内の目標温度Ttagを770−820℃の範内に定めることで、表層の硬度をより高くして鋼部品の耐摩耗性をより向上させることが可能となる。ただし、加熱炉内の目標温度Ttagは、820℃を超える温度(好ましくは870℃以下)に定められてもよい。これにより、より高温に焼入れされたワークが急冷されることで、粒内に多くの炭素が含まれて当該粒内が強化されると共に表層の残留オーステナイト量が多くなるので、鋼部品の靱性をより向上させることができる。
なお、上記実施形態では、焼入れ処理すなわちワークの加熱および急冷が加熱炉(連続炉)内で連続して実行されるが、これに限られるものではない。すなわち、ステップS140の焼入れ処理は、加熱炉でワークを加熱した後、当該加熱炉とは別の冷却設備でワークを急冷するものであってもよい。また、本開示の製造方法の製造対象は、ピニオンギヤ1に限られるものではなく、ピニオンシャフトといった軸部材であってもよく、遊星歯車の構成部材であってもよく、軸受部品であってもよい。
以上説明したように、本開示の鋼部品の製造方法は、素材鋼から鋼部品(1)を製造する鋼部品の製造方法において、前記鋼部品(1)の外周面およびその近傍におけるC濃度が前記素材鋼のC濃度よりも高い1.1質量%超かつ1.5質量%以下になるように前記素材鋼からなるワークに浸炭処理を施し、前記ワークのオーステナイト組織をマルテンサイト変態させる臨界冷却速度未満の冷却速度で前記ワークを冷却し、内部温度が予め定められた目標温度(Ttag)になるように管理された加熱炉内で前記ワークを加熱した後、前記臨界冷却速度以上の冷却速度で前記ワークを冷却するものである。
本発明者らは、浸炭処理および焼入れが施された鋼部品の強度をより向上させるべく、鋭意研究を行い、その結果、高周波誘導加熱による焼入れでは、加熱時のワークの位置ズレやワークの形状の個体差等により必ずしもワークが均一に加熱されなくなり、ワーク間における加熱温度のばらつきが大きくなることが判明した。更に、本発明者らの回転曲げ疲労試験の結果から、浸炭処理(および冷却処理)の後に高周波誘導加熱による焼入れを施して得られた鋼部品では、高周波誘導加熱による加熱温度が高いと粒界破壊が発生しやすくなり、高周波誘導加熱による加熱温度が低いと粒内破壊が発生しやすくなるという傾向が認められた。すなわち、高周波誘導加熱によりワークが焼入れされる場合、ワーク間における加熱温度のばらつきが大きくなることで、焼入れ・冷却後の鋼部品の強度のばらつきが大きくなってしまう。これを踏まえて、本開示の製造方法では、浸炭処理および冷却処理が施されたワークを内部温度が予め定められた目標温度になるように管理された加熱炉内で加熱した後、臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する。これにより、臨界冷却速度以上の冷却速度での冷却前に焼入れによる加熱温度のばらつきをより小さくして、冷却後の鋼部品の強度のばらつきを低減することが可能となる。また、加熱炉内でワークを加熱することで当該ワークの焼入れ(加熱)に時間を要することにはなるが、加熱炉内で一度に多くのワークを加熱することで、高周波誘導加熱による焼入れを行う場合に比べて鋼部品の製造コストを低下させることができる。この結果、本開示の製造方法によれば、コストアップを抑制しつつ、鋼部品の強度のばらつきを低減することが可能となる。
また、前記加熱炉の前記内部温度を前記目標温度(Ttag)±5℃の範囲内に維持してもよい。これにより、鋼部品の強度のばらつきを極めて良好に低減することが可能となる。
更に、前記目標温度(Ttag)を770−820℃の範囲内に定めてもよい。これにより、表層の硬度をより高くして鋼部品の耐摩耗性をより向上させることが可能となる。ただし、前記目標温度(Ttag)は、820℃を超える温度に定められてもよい。
また、前記素材鋼は、0.15質量%以上かつ0.25質量%以下のC(炭素)、0.90質量%以上かつ3.00質量%以下のSi(ケイ素)、0.70質量%以上かつ1.10質量%以下のMn(マンガン)、0.03質量%以下のP(リン)、0.100質量%以下のS(硫黄)、0.01質量%以上かつ0.50質量%以下のCu(銅)、0.01質量%以上かつ0.50質量%以下のNi(ニッケル)、0.20質量%以上かつ0.50質量%以下のCr(クロム)、0.50質量%以下のMo(モリブデン)、0.30質量%以下のAl(アルミニウム)、0.05質量%以下のN(窒素)、Fe、および不可避不純物を含むものであってもよく、Siの含有質量%を[Si]とし、Niの含有質量%を[Ni]とし、Cuの含有質量%を[Cu]とし、Crの含有質量%を[Cr]としたときに、[Si]+[Ni]+[Cu]−[Cr]>0.5を満たすものであってもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本開示の発明は、鋼部品の製造産業等において利用可能である。
1 ピニオンギヤ、2 歯、3 ピニオンシャフト孔。

Claims (4)

  1. 素材鋼から鋼部品を製造する鋼部品の製造方法において、
    前記鋼部品の外周面およびその近傍におけるC濃度が前記素材鋼のC濃度よりも高い1.1質量%超かつ1.5質量%以下になるように前記素材鋼からなるワークに浸炭処理を施し、
    前記ワークのオーステナイト組織をマルテンサイト変態させる臨界冷却速度未満の冷却速度で前記ワークを冷却し、
    内部温度が予め定められた目標温度になるように管理された加熱炉内で前記ワークを加熱した後、前記臨界冷却速度以上の冷却速度で前記ワークを冷却する鋼部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の鋼部品の製造方法において、前記加熱炉の前記内部温度を前記目標温度±5℃の範囲内に維持する鋼部品の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の鋼部品の製造方法において、前記目標温度を770−820℃の範囲内に定める鋼部品の製造方法。
  4. 請求項1から3の何れか一項に記載の鋼部品の製造方法において、
    前記素材鋼は、0.15質量%以上かつ0.25質量%以下のC(炭素)、0.90質量%以上かつ3.00質量%以下のSi(ケイ素)、0.70質量%以上かつ1.10質量%以下のMn(マンガン)、0.03質量%以下のP(リン)、0.100質量%以下のS(硫黄)、0.01質量%以上かつ0.50質量%以下のCu(銅)、0.01質量%以上かつ0.50質量%以下のNi(ニッケル)、0.20質量%以上かつ0.50質量%以下のCr(クロム)、0.50質量%以下のMo(モリブデン)、0.30質量%以下のAl(アルミニウム)、0.05質量%以下のN(窒素)、Fe、および不可避不純物を含み、Siの含有質量%を[Si]とし、Niの含有質量%を[Ni]とし、Cuの含有質量%を[Cu]とし、Crの含有質量%を[Cr]としたときに、
    [Si]+[Ni]+[Cu]−[Cr]>0.5
    を満たす鋼部品の製造方法。
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