JP2021151218A - スフェロイド及びその作製方法 - Google Patents

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史明 島
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Abstract

【課題】スフェロイド表面に血管構造の末端が形成されたスフェロイドを提供すること。【解決手段】本発明のスフェロイド100は、幹細胞と血管内皮細胞が凝集して形成されている。スフェロイド100は、ドーム部10と平坦部20を含む形状であり、平坦部20から平坦部20に対して垂直方向に沿って複数の血管構造30が形成されている。【選択図】図8

Description

本発明はスフェロイド及びその作製方法に関する。
近年、細胞を三次元培養することで、様々な形態のスフェロイドを形成することに注目が集まっている。例えば、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養して、生物学的に血管系を付与する方法が提案されている(特許文献1)。血管系が付与された生物学的組織は、臓器移植及び創薬スクリーニングなどへの応用が期待されている。
国際公開2015/012158号
従来の血管構造を有するスフェロイドは、スフェロイド内部で血管構造がランダムに形成されており、スフェロイド表面に血管構造の末端が形成されていなかった。そのため、例えば、スフェロイドを移植した場合に生着できる可能性は必ずしも高くないことが予想される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、スフェロイド表面に血管構造の末端が形成されたスフェロイドを提供する。
本発明者らは、幹細胞と血管内皮細胞を細胞接着性の細胞培養基材上で培養することで、スフェロイド表面に血管構造の末端が形成されたスフェロイドを作製することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一形態に係るスフェロイドは、幹細胞と血管内皮細胞が凝集しており、ドーム部と平坦部を含む形状であり、上記平坦部から上記平坦部に対して垂直方向に沿って複数の血管構造が形成されている。かかるスフェロイドは、スフェロイドの表面である平坦部に血管構造の末端が形成されているため、移植した場合に生着できる可能性が高い。
また、本発明の一形態に係るスフェロイドの作製方法は、細胞接着性の細胞培養基材上で、幹細胞及び血管内皮細胞を共培養する工程を備える。かかる方法により上記のスフェロイドを作製することができる。
本発明のスフェロイドは、スフェロイドの表面である平坦部に血管構造の末端が形成されているため、移植した場合に生着できる可能性が高い。
図1は、AdSC単独培養又はAdSC及びHUVECの共培養により作製したスフェロイドの顕微鏡写真を表す図である。 図2は、AdSC単独培養又はAdSC及びHUVECの共培養により作製したスフェロイドの平均粒径を表すグラフである。*:p<0.05(Tukey−Kramer法による多重比較検定) 図3は、AdSC単独培養又はAdSC及びHUVECの共培養により作製したスフェロイドを染色した顕微鏡写真を表す図である。 図4は、AdSC単独培養又はAdSC及びHUVECの共培養により作製したスフェロイドの(A)HUVECの割合及び(B)細胞生存率を表すグラフである。**:p<0.01(Tukey−Kramer法による多重比較検定)。n.s.:有意差無し。 図5は、AdSC及びHUVEC(100細胞/穴)の共培養により作製したスフェロイドの染色画像のz−スタックである。(A)、(B)、及び(C)は、HUVEC染色画像のz−スタックをそれぞれ横、横、及び上から見た画像であり、(D)はHUVEC及び細胞核の染色画像のz−スタックを下から見た画像であり、(E)はスフェロイドの垂直方向及び水平方向の断面画像である。 図6は、AdSC及びHUVECの共培養により作製したスフェロイドの水平方向の断面画像である。(A)に示す画像では、HUVEC、ラミニン、及び細胞核が染色されており、(B)に示す画像では、HUVEC、IV型コラーゲン、及び細胞核が染色されている。 図7は、AdSC単独培養又はAdSC及びHUVECの共培養により作製したスフェロイドの蛍光強度を表すグラフである。**:p<0.01(Tukey−Kramer法による多重比較検定)。n.s.:有意差無し。 図8は、スフェロイドの模式図である。 図9は、図7に示した蛍光強度を測定したスフェロイドの蛍光写真である。 図10は、AdSC及びHUVEC(50細胞/穴)の共培養により作製したスフェロイドの染色画像のz−スタックである。(A)、(B)、及び(C)は、HUVEC染色画像のz−スタックをそれぞれ横、横、及び上から見た画像であり、(D)はHUVEC及び細胞核の染色画像のz−スタックを下から見た画像であり、(E)はスフェロイドの垂直方向及び水平方向の断面画像である。 図11は、AdSC及びHUVEC(200細胞/穴)の共培養により作製したスフェロイドの染色画像のz−スタックである。(A)、(B)、及び(C)は、HUVEC染色画像のz−スタックをそれぞれ横、横、及び上から見た画像であり、(D)はHUVEC及び細胞核の染色画像のz−スタックを下から見た画像であり、(E)はスフェロイドの垂直方向及び水平方向の断面画像である。
以下、図面に沿って本発明の実施形態について詳細に説明する。
図8は、本発明の一形態に係るスフェロイド100の模式図である。スフェロイド100は、幹細胞と血管内皮細胞が凝集した細胞塊である。図8に示すように、スフェロイド100は、ドーム部10と平坦部20から構成される。平坦部20から平坦部20に対して垂直方向に沿って複数の血管構造30が形成されている。血管構造30の一端は平坦部20においてスフェロイド表面に接続している。そのため、スフェロイドを移植した場合に、生体内の血管に血管構造30は生着できる可能性が高い。血管構造30は血管内皮細胞により構成される。
スフェロイドの大きさは特に限定されず、例えば、1〜500μm又は10〜300μmの粒径を有していてよい。粒径の測定は、実施例1に記載された方法に準じて、画像解析により行うことができる。
「平坦部20に対して垂直方向」とは、平坦部20が形成する平面に対して垂直な方向である。「垂直方向に沿って」とは、血管構造30が形成される方向成分に少なくとも垂直成分が含まれることを意味する。なお、平坦部20が形成する平面内だけに血管構造30が形成されている状態は、血管構造30が形成される方向成分に上記平面内の方向成分だけが含まれることになるため、垂直成分は含まれておらず、「垂直方向に沿って」血管構造30は形成されている状態に該当しない。
例えば、血管構造は、垂直方向と平行に形成されていてもよく、垂直方向に対して所定の立ち上がり角度をなして傾斜した状態で形成されていてもよい。なお、ここでの「立ち上がり角度」とは平坦部に対する立ち上がり部、すなわち血管構造の付根部が平坦部に対してなす角度である。立ち上がり角度は、特に限定されないが、スフェロイド中心部への酸素及び栄養の供給の観点から、所定の角度であることが好ましい。例えば、立ち上がり角度は、1度以上が好ましく、45度以上がより好ましい。なお、立ち上がり角度の最大値は90度である。
また、血管構造が形成されている方向成分に垂直成分が含まれてさえいればよいため、血管構造がどのような態様で形成されているかは特に限定されず、血管構造は必ずしも略直線形状でなくてもよい。例えば、血管構造は、曲線形状(湾曲形状、螺旋形状など)でもよい。また、血管構造の形状は場所によって異なっていてもよい。例えば、血管構造の付根部付近では略直線形状であっても、血管構造の中間付近及び先端(付根部ではない側の末端)付近では曲線形状であってもよい。さらに、血管構造の途中で枝分かれ構造を含んでいてもよい。枝分かれした後の血管構造は、直線形状でも曲線形状でもよい。また、枝分かれした血管構造は、他の血管構造(枝分かれしたものもしていないものも含む)と接続してもよい。
スフェロイド100中に複数の血管構造30が存在することで、スフェロイド100全体に酸素及び栄養などをいきわたらせやすくなる。好ましくは、複数の血管構造30が全体としてドーム状に形成され、血管構造30の周りを覆うように幹細胞が存在することでドーム部が構築される。例えば、スフェロイド100における血管内皮細胞の割合は、5〜25%又は10%〜20%であってよい。スフェロイド100における血管内皮細胞の割合の測定は、実施例2に記載された方法に準じて行うことができる。
血管構造30はその外周に基底膜が形成されていることが好ましい。外周に基底膜が形成された血管構造30は、成熟した血管構造とみなすことができ、血管として正常に機能し得ることが期待される。基底膜が形成されているか否かはIV型コラーゲン、ラミニン及びプロテオグリカンのいずれか一つ以上の存在の有無を確認することで判断することができる。
一実施形態において、スフェロイド100は、細胞接着性の細胞培養基材に接着されている。その場合、スフェロイド100は平坦部20において細胞培養基材に接着されている。細胞培養基材に接着されたスフェロイド100は、スフェロイド100を損傷することなく安全に運搬することができるという利点があり、また、スフェロイド100を単離することなくそのまま創薬スクリーニングなどに用いることが可能であるという利点もある。
細胞接着性の細胞培養基材は細胞を接着できる基材であれば特に限定されず、公知の接着培養用の基材であってよく、より具体的には公知の接着培養用の培養容器であってよい。すなわち、基材の表面の一部又は全部は細胞接着性を有する。細胞接着性の表面とは、培養液中で細胞が該表面上に沈降したときに、該細胞がある一定の接着点で接着することのできる表面のことである。
より具体的には、基材は細胞接着性物質を含んでよい。細胞接着性物質は、例えば、タンパク質又は合成樹脂であってよい。タンパク質は、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、又はラミニンであってよい。合成樹脂は、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリジメチルシロキサン、又はこれらの混合物であってよい。合成樹脂は、好ましくはフッ素化ポリイミド樹脂である。フッ素化ポリイミド樹脂とは、いいかえれば含フッ素ポリイミド樹脂である。
フッ素化ポリイミド樹脂は、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体、6FDA/1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPER)共重合体、6FDA/4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)/TPEQ共重合体、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、6FDA/2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)共重合体、6FDA/2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)共重合体、6FDA/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)共重合体、又は6FDA/4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)共重合体であってよい。
フッ素化ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000〜2000000であり、好ましくは8000〜1000000であり、より好ましくは20000〜500000である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、下記手法により測定される。
(重量平均分子量の測定)
装置:HCL−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・HO、リン酸入りN−メチルピロリドン):0.01mol/L
測定方法:0.5質量%の溶液を溶離液で作製し、ポリスチレンで作製した検量線に基づいて分子量を算出する。
一実施形態において、基材は、開口部を有する凹部を複数備えていてよい。凹部の底面は細胞接着性を有していてよく、より具体的には、凹部の底面は上記細胞接着性物質により構成されていてよい。
凹部の個数は特に限定されず、基材の1cmあたりの凹部の個数は、10個以上、20個以上、30個以上、又は50個以上であってよく、1000個以下、500個以下、300個以下、200個以下、又は100個以下であってよい。本実施形態に係る基材における凹部の総数は、例えば、10個以上、100個以上、1000個以上、10000個以上、又は50000個以上であってよい。
凹部の開口部の形状は特に限定されず、例えば、円、多角形、又は楕円であってよい。開口部の口径は、例えば、2000μm以下、10〜2000μm、10〜1000μm、10〜700μm、10〜600μm、又は10〜500μmであってよい。本明細書において、ある部位の口径とは、該部位に外接する円の直径、すなわち該部位の最大長さのことである。
凹部の底面の形状は特に限定されず、例えば、円、多角形、又は楕円であってよい。底面の形状は、開口部の形状と同一であっても異なってもよい。底面の口径は、開口部の口径と同一であっても異なってもよく、開口部の口径より小さくても大きくてもよい。底面の口径は、例えば、10〜2000μm、10〜1000μm、10〜700μm、10〜600μm、10〜500μm、10〜400μm、又は10〜300μmであってよい。
開口部と、それに隣接する開口部との間の距離、すなわち間隙の長さは、特に限定されない。間隙の長さは、例えば、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
凹部の深さは特に限定されず、例えば、100〜500nm、10〜1000μm又は10〜300μmであってよい。
本実施形態において、基材の全表面のうち凹部の底面以外の表面、すなわち凹部の内側面と基材の上面(凹部の辺縁部ともいえる)は細胞非接着性であってよい。細胞非接着性の表面とは、細胞が全く接着しないか、一時的に弱く接着しても自然に脱離する、表面ことである。より具体的には、基材の全表面のうち凹部の底面以外の表面は、細胞非接着性物質から構成されていてよい。
細胞非接着性物質は、細胞の表面に存在するタンパク質、糖鎖等の分子に結合しない物質であれば特に限定されない。細胞非接着性物質は、例えば、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(poly−HEMA)、セグメント化ポリウレタン(SPC)、又はアルブミン等のタンパク質であってよい。
別の実施形態において、基材は、細胞接着性表面と細胞非接着性表面とで形成された微細パターンを備える、細胞培養用シートであってよい。一例として、細胞培養用シートは、細胞接着性物質の層と、該層の表面に設けられた細胞非接着性物質のマスクとで形成された微細パターンを有してよい。微細パターンは、例えば凹部であってよい。この場合、凹部の深さは細胞非接着性物質のマスクの厚みに依存する。したがって、凹部の深さの下限は、細胞がマスクの非接着性を認識できる最小厚みである。凹部の深さは、例えば、10μ未満であってよく、100nm〜500nmであってよい。凹部の個数、凹部の開口部及び底面の形状及び口径、並びに凹部間の距離は、上記実施形態と同様であってよい。
微細パターンの形成は、例えば、マイクロコンタクトプリンティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法、スプレイコーティング法、バーコーティング法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、インクジェット法、又はパターニング法により行ってもよい。パターニング法とは、ベース材表面に形成された凹凸構造の間隙に、該間隙に生じる毛細管力を利用して所望の物質を注入することにより、微細パターンを形成する方法である。
顕微鏡を用いてスフェロイドを観察する観点から、基材の厚みは、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。基材の面積は特に限定されず、例えば、0.01〜10000cm又は0.03〜5000cmであってよい。
幹細胞は、ヒト由来及びヒト以外の動物由来のものを用いることができ、例えば、ES細胞、iPS細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、組織幹細胞(体性幹細胞)、造血系幹細胞、又は癌幹細胞であってよく、具体的には、例えば、ヒト脂肪由来幹細胞(human adipose derived stem cell:AdSC)であってよい。
血管内皮細胞は、ヒト由来及びヒト以外の動物由来のものを用いることができ、具体的には、例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell:HUVEC)であってよい。
本発明のスフェロイドは、細胞接着性の細胞培養基材上で、幹細胞及び血管内皮細胞を共培養することで作製することができる。共培養に用いる培地は特に限定されず、例えば、任意の細胞培養基本培地、分化培地、又は初代培養専用培地を用いることができる。培地は、細胞の増殖又は分化に必要な成分を含む培地であればよく、具体的には、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α−MEM、グラスゴーMEM(GMEM)、IMDM、RPMI1640、ハムF−12、MCDB培地、ウィリアムス培地E、Hepatocyte thaw medium、MSC専用培地、KBM ADSC培地又はこれらの混合培地であってよい。培地は、必要に応じて、各種成長因子、分化誘導因子、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類等の添加成分を含んでいてもよい。培地は、臨床応用の際の安全性の観点から、ヒト又はヒト以外の動物の血清成分を含まない無血清培地であることが好ましい。
培養温度は特に限定されないが、通常は25〜40℃程度である。培養時の相対湿度は特に限定されず、例えば、40〜95%RHであってよい。
培養の時間は特に限定されず、細胞の増殖速度と所望のスフェロイドのサイズに応じて、適宜決定することができる。培養の時間は、好ましくは4時間〜30日(4時間〜720時間)であり、より好ましくは1日〜14日(24時間〜336時間)であり、さらに好ましくは1日〜7日(24時間〜168時間)である。
細胞を培養する前に、細胞培養用基材を脱泡することが好ましい。脱泡処理の方法は特に限定されず、霧吹き、ピペッティング、振盪、加温及び冷却、遠心処理、真空脱気、超音波処理等の一般的な方法を利用することができる。
共培養の際の幹細胞及び血管内皮細胞の比率は特に限定されないが、スフェロイド内に十分な血管構造を形成する観点から、20:1〜2:1又は10:1〜2:1の比率であってよい。また、フッ素化ポリイミド樹脂を含む細胞培養基材上で共培養する場合、フッ素化ポリイミド樹脂からの酸素供給を十分に行い、スフェロイド内部の低酸素状態を軽減する観点から、幹細胞及び血管内皮細胞の比率は100:7〜5:1であることが好ましく、10:1〜5:1であることがより好ましい。
[AdSCの準備]
凍結されたヒト脂肪由来幹細胞(PT−5006、ロンザ社から購入)を37℃の恒温水槽で溶解させ、5%FBSと1%抗生物質とを含む9mLのKBM ADSC−2培地(基礎培地、コージンバイオ株式会社製)に加えた。次いで、該培地を210×gで5分間遠心して上清を除去し、残った細胞を10mLの基礎培地に分散させて細胞懸濁液を得た。培養フラスコ(培養面積:225cm)を2本用意し、各フラスコに細胞の量が1.0×10細胞/30mL培地/フラスコとなるように細胞懸濁液及び基礎培地を加え、37℃の5%(v/v)COインキュベーター内で培養(拡大培養)した。培養後、フラスコから培地を除去し、アキュターゼ(登録商標)(プロモセル社製)を5mL添加した後、フラスコを室温で5分程度静置して細胞を剥離した。次いで、細胞を含む剥離液を回収し、10mLのPBSで洗浄した後、チューブへ移した。チューブを210×gで5分間遠心して上清を除去し、残った細胞を4mLの1%抗生物質を含むKBM ADSC−2培地に懸濁した。細胞の数を数え、細胞懸濁液の濃度を2.0×10細胞/mLに調整した。
[HUVECの準備]
凍結されたヒト臍帯静脈内皮細胞(C2517A、ロンザ社から購入)を37℃の恒温水槽で溶解させた後、14mLの専用培地EGM(登録商標)BulletKit(登録商標)(ロンザ社製)に加えて細胞懸濁液を得た。培養フラスコ(培養面積:75cm)に、細胞の量が5.0×10細胞/14mL培地/フラスコとなるように細胞懸濁液及び専用培地を加え、37℃の5%(v/v)COインキュベーター内で培養した。翌日、培地を全量交換して拡大培養を行った。培養後、フラスコから培地を除去し、アキュターゼ(プロモセル社製)を5mL添加した後、フラスコを室温で3分程度静置して細胞を剥離した。次いで、細胞を含む剥離液を回収し、EGM BulletKitで洗浄した後、チューブへ移した。チューブを210×gで5分間遠心して上清を除去し、残った細胞を4mLの1%抗生物質を含むKBM ADSC−2培地に懸濁した。細胞の数を数え、細胞懸濁液の濃度を4.0×10細胞/mL、8.0×10細胞/mL、又は1.6×10細胞/mLに調整した。
[脱泡処理]
培地を含む培養容器を、次のように脱泡した。まず、培養容器に1mL程度のリン酸緩衝食塩水(PBS)を加えてピペッティングの作業を行い、37℃の5%(v/v)COインキュベーター内で細胞培養容器を15分間静置した。再びピペッティングの作業を行った後、PBSをアスピレーターで吸引した。その後、1%抗生物質を含むKBM ADSC−2培地を培養容器に0.2mL加え、37℃の5%(v/v)COインキュベーター内で培養容器を一晩静置した。
<実施例1>
脱泡処理後の培養容器から培地を除去し、AdSCの量が1000細胞/穴の量かつHUVECの量が50、100又は200細胞/穴となるように、AdSC及びHUVECを播種した。培養容器を安全キャビネット内で15分静置した後、37℃の5%(v/v)COインキュベーターに入れて4時間静置した。次いで、培養容器に1%抗生物質を含むKBM ADSC−2培地を加え、再び37℃の5%(v/v)COインキュベーターに培養容器を入れて3日間培養し、スフェロイドを作製した。培養容器としては、直径300μm程度、穴数400個、開口部及び底面が円形、フッ素化ポリイミドを底面に有し、開口部以外をMPCでコートした培養容器を用いた。
3日間培養したスフェロイドを顕微鏡で撮影し、粒径を画像解析で計測した(n=100、画像解析はニコン社のNIS Elementsにより行った)。図1に各スフェロイドの顕微鏡写真を示し、図2に各スフェロイドの平均粒径のグラフを示す。AdSCのみからなるスフェロイド、AdSC及びHUVECからなるスフェロイドのいずれも粒径が200μm程度であった。なお、スフェロイドの粒径結果についてTukey−Kramer法による多重比較検定(統計解析ソフトウェアJMP(登録商標) version 14.3.0、SAS社)を行ったところ、200細胞/穴の条件で、HUVECを含むスフェロイドはAdSCのみからなるスフェロイドより粒径が小さいことが分かった。これは、HUVECを含むスフェロイド内の細胞の細胞生存率が200細胞/穴の条件では低かったためと考えられる。
<実施例2>
実施例1と同様にして、3日間培養したスフェロイドを4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液で15分処理することで固定し、パラフィン包埋して薄切切片を作製した。一次抗体として抗CD31抗体(アブカム社製)を、色素としてDAB(ニチレイ社製)を用いてHUVECを染色し、スフェロイド中のHUVEC含有率を画像解析で計測した(n=100、画像解析は三谷商事社のWinROOFにより行った)。スフェロイド1個あたりにおけるCD31陽性率から算出(面積率)した。一方、スフェロイド中の死細胞をTUNEL染色(ミリポア社製)し、画像解析及び以下の計算式で細胞生存率を計算した(n=90)。
細胞生存率(%)=スフェロイド1個の全面積(100%)−TUNEL陽性の面積(%)
図3に染色した各スフェロイドの顕微鏡写真を示し、図4に各スフェロイドのHUVECの割合及び細胞生存率のグラフを示す。HUVECの播種数が増大するにしたがって、スフェロイド中のHUVECの割合が増大した。また、HUVECの播種数によらず、スフェロイド中の細胞生存率は95%以上であったが、Tukey−Kramer法による多重比較検定を行ったところ、HUVECの播種数が増大するにしたがって細胞生存率が低下していた。
<実施例3>
実施例1と同様にして、3日間培養したスフェロイドを4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液で15分処理することで固定した。一次抗体として抗CD31抗体を、二次抗体としてAlexa Fluor(登録商標)594で標識された抗体を用いてHUVECを染色し、細胞核をDAPIで染色した。染色されたスフェロイドにSCALEVIEW−S4を加え、37℃で一晩インキュベートした。透明化後、スフェロイドを培養容器の底面側から共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
図5(HUVECの播種数は100細胞/穴)の(A)、(B)、及び(C)は、HUVEC染色画像のz−スタックをそれぞれ横、横、及び上から見た画像であり、図5の(D)はHUVEC及び細胞核の染色画像のz−スタックを下(スフェロイドの底面側)から見た画像である。図5の(E)において、左上はスフェロイドの水平方向の断面画像であり、右上、左下は、それぞれ線I、線IIを切り口としたスフェロイドの垂直方向の断面画像である。これらの画像に示されるように、スフェロイドの平坦面(すなわち、培養容器と接着した部分)から垂直方向に沿って延伸した複数の管腔構造(血管)が観察され、これらの管腔構造は全体としてドーム状の形を形成していた。また、AdSCは、このドーム状の形を形成している血管の周りを覆うように存在していた。
図10及び11は、AdSC及びHUVEC(図10では50細胞/穴、図11では200細胞/穴)の共培養により作製したスフェロイドの染色画像のz−スタックである。図10及び11に示す結果から分かるように、AdSC及びHUVECを50細胞/穴で共培養して作製したスフェロイドであっても、血管構造が形成されており、フィルム底面から血管が伸びていることが確認できた。しかし、50細胞/穴の共培養スフェロイドは、200細胞/穴の共培養スフェロイドに比べると、形成された血管構造が少なく、フィルム底面へのHUVECの接着も少なかった。
<実施例4>
さらに、抗ラミニン抗体(アブカム社)又は抗IV型コラーゲン抗体(アブカム社)を一次抗体として、Alexa Fluor(登録商標)488で染色した抗体を二次抗体として、ラミニン又はIV型コラーゲンを染色した以外は実施例3と同様にして、スフェロイドを観察した。
図6の(A)及び(B)は、スフェロイドの水平方向の断面画像である。図6の(A)は、HUVEC、ラミニン、及び細胞核の染色画像であり、図6の(B)は、HUVEC、IV型コラーゲン、及び細胞核の染色画像である(HUVECの播種数は100細胞/穴)。図6に示されるように、ドーム状の形を形成している血管とAdSCの間にはラミニン及びIV型コラーゲンが観察された。この結果は、スフェロイド中に基底膜を伴った血管構造が形成されていることを示す。この構造は、生体内での血管構造に類似しており、このスフェロイドは機能的に有用であることが示唆される。
<実施例5>
実施例1と同様にして、3日間培養したスフェロイドに、終濃度が2μmol/Lとなるように細胞内低酸素センシングプローブLOX−1(MBLライフサイエンス社)を加えて1日間培養した。LOX−1は、酸素濃度の低下に伴って蛍光強度が増大する試薬である。スフェロイドを共焦点レーザー顕微鏡で観察し、蛍光強度からスフェロイド中の低酸素状態を評価した(n=50)。各試料において顕微鏡の撮影条件を統一して実施した。
図7に、各スフェロイドの蛍光強度を示す。また、図9に、スフェロイドの蛍光写真を示す。図7に示す結果から分かるように、AdSC単独培養で作製したスフェロイドに比べて、AdSC及びHUVECを100又は200細胞/穴で共培養して作製したスフェロイドは蛍光強度が優位に低かった。血管構造を有することでスフェロイド内の低酸素状態が軽減されることが分かった。HUVECの播種数が100細胞/穴及び200細胞/穴の場合では有意な差は認められなかった。ドーム型の管腔構造がスフェロイド内部への酸素供給に寄与していると考えられるためである。スフェロイドの中心付近は特に低酸素状態であることが知られているが、ドーム型の管腔構造形成されたスフェロイドでは、スフェロイドの中心付近において密な血管構造を有している。一方、過去の研究で、ポリイミドフィルムがポリスチレンフィルムより酸素透過性が高いことが分かっている。本実験結果では、フィルム底面に管腔構造が接着してドーム構造を形成していたが、そのような構造の形成によって、酸素透過性が高いフィルム底面からスフェロイド内部にネットワーク構造を介して酸素が供給され、スフェロイド内部の低酸素状態が低減されていると考えられる。
10…ドーム部、20…平坦部、30…血管構造、100…スフェロイド。

Claims (8)

  1. 幹細胞と血管内皮細胞が凝集したスフェロイドであって、
    前記スフェロイドは、ドーム部と平坦部を含む形状であり、
    前記平坦部から前記平坦部に対して垂直方向に沿って複数の血管構造が形成されている、
    スフェロイド。
  2. 前記複数の血管構造が全体としてドーム状に形成される、請求項1に記載のスフェロイド。
  3. 前記血管構造の外周に基底膜が形成されている、請求項1又は2に記載のスフェロイド。
  4. 前記幹細胞がヒト脂肪由来幹細胞であり、前記血管内皮細胞がヒト臍帯静脈内皮細胞である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスフェロイド。
  5. 細胞接着性の細胞培養基材と前記平坦部で接着している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスフェロイド。
  6. 前記細胞接着性の細胞培養基材が、フッ素化ポリイミド樹脂を含む細胞培養基材である、請求項5に記載のスフェロイド。
  7. 細胞接着性の細胞培養基材上で、幹細胞及び血管内皮細胞を共培養する工程を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスフェロイドを作製する方法。
  8. 前記共培養を行う培地が無血清培地である、請求項7に記載の方法。
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