JP2021142460A - バラスト水処理装置 - Google Patents

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智陽 丹下
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【課題】流通するバラスト水の急激な流量変化に対処することの可能なバラスト水処理装置を提供する。【解決手段】本発明によれば、バラスト装置1に用いられるバラスト水処理装置10であって、バラスト装置1は、複数のバラストタンク2A〜2Dを備え、バラストポンプ3により複数のバラストタンク2A〜2Dに対してバラスト水の注排水を行うものであり、バラスト水処理装置10は、バラスト水を流通させて浄化処理を行う浄化手段11,12と、開度調整の可能な開度調整弁FCVと、制御手段15と、切替検知手段16A〜16Dとを備え、制御手段15は、浄化手段11,12を流通するバラスト水の流量に基づいて開度調整弁FCVの開度を調整するよう構成され、切替検知手段16A〜16Dは、浄化処理後のバラスト水を複数のバラストタンク2A〜2Dへ注水する際の、注水の対象となるバラストタンク2A〜2Dの切替えを検知する、バラスト水処理装置10が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、バラスト装置に用いられるバラスト水処理装置に関する。
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。このような船舶には、バラスト水の注排水による生態系の破壊を防ぐため、バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置が設けられている。
例えば、特許文献1には、殺傷処理装置(バラスト水処理装置)により処理されたバラスト水を、バラストポンプにより複数のバラストタンクに順次貯留することの可能なバラスト水処理システムが開示されている。
特開2013−39516号公報
しかしながら、このようにバラスト水を複数のバラストタンクに貯留するバラスト水処理システムにおいて、注水の対象となるバラストタンクを切替える場合、圧力差によりバラスト水処理装置の背圧が低下し、バラスト水処理装置を流通するバラスト水の流量が急激に増加するおそれがあった。このような状況は、例えば、注水対象のバラストタンクを満水のバラストタンクから空のバラストタンクに切替える際や、バラストポンプから遠いバラストタンクから近いバラストタンクへ切替える際に特に生じ得る。また、このような問題は、バラスト水を複数のバラストタンクから順次排水する際にバラスト水処理装置による処理を行う場合にも生じ得るものである。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、流通するバラスト水の急激な流量変化に対処することの可能なバラスト水処理装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、バラスト装置に用いられるバラスト水処理装置であって、前記バラスト装置は、複数のバラストタンクを備え、バラストポンプにより前記複数のバラストタンクに対してバラスト水の注排水を行うものであり、前記バラスト水処理装置は、前記バラスト水を流通させて浄化処理を行う浄化手段と、開度調整の可能な開度調整弁と、制御手段と、切替検知手段とを備え、前記制御手段は、前記浄化手段を流通するバラスト水の流量に基づいて前記開度調整弁の開度を調整するよう構成され、前記切替検知手段は、前記浄化処理後のバラスト水を前記複数のバラストタンクへ注水する際の、注水の対象となるバラストタンクの切替えを検知する、バラスト水処理装置が提供される。
このような構成によれば、切替検知手段が注水又は排水の対象となる対象バラストタンクの切替えを検知することで、バラスト水処理装置を流通するバラスト水の流量が急激に変化し得ることを予見し、予め対処することが可能となる。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、当該制御手段は、前記切替検知手段が前記バラストタンクの切替えを検知したことに応じて、一時的に以下(1)〜(3)の少なくとも1つの制御を行う。(1)前記開度調整弁の開度調整を行う間隔を短くする。(2)前記開度調整弁の開度調整を行う1回あたりの調整量を増加させる。(3)前記開度調整弁の開度を下げる。
好ましくは、前記切替検知手段は、前記複数のバラストタンクごとに設けられる開閉弁に設置されたリミットスイッチである。
好ましくは、前記制御手段は、前記複数のバラストタンクごとに設けられる開閉弁の開閉を制御するよう構成され、前記切替検知手段は、前記制御手段による各バラストタンクの開閉信号を検知することで、注水の対象となるバラストタンクの切替えを検知する。
好ましくは、前記切替検知手段は、操作者に押下されることで切替えを検知する入力手段である。
好ましくは、前記浄化手段を流通するバラスト水の流量を略一定に保って前記浄化処理を行う通常モードと、前記通常モードよりも流量を絞った状態で前記浄化処理を行う低流量モードとを備える。
本発明の実施形態に係るバラスト水処理装置10を船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概略図である。 図1のバラスト水処理装置10の概略構成を示す説明図である。 図1のバラスト装置1のバラスト動作時の流路の例を示す図である。 図1のバラスト装置1のバラスト動作時の他の流路の例を示す図である。 図1のバラスト装置1のデバラスト動作時の流路を示す図である。 本発明の変形例に係るバラスト水処理装置10を船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
1.バラスト装置1の構成
図1は、本発明の実施形態に係るバラスト水処理装置10を、船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概略図である。本願のバラスト装置1は、複数のバラストタンク2A〜2Dを備え、バラストポンプ3によりバラストタンク2A〜2Dに対してバラスト水の注排水を行うものである。ここで、海水等の船外の水をシーチェストSC1から船内に取り込んで複数のバラストタンク2A〜2Dに注水を行う動作をバラスト動作、バラストタンク2A〜2Dに貯留されたバラスト水を船外排出口SC2から排水する動作をデバラスト動作と呼ぶ。
なお、本明細書における「バラスト水」について、バラストタンク2A〜2Dに導入(流入)される前又はバラストタンク2A〜2Dから排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現する。また、船内に取り込むバラスト水には、海水、淡水、汽水等が含まれるものとする。また、本実施形態の説明において、バラストタンクの数は便宜上4つ(バラストタンク2A〜2D)として記載するが、2以上の任意の数であって良い。また、図1では、複数のバラストタンク2A〜2Dは隣接するよう記載しているが、一般的に、複数のバラストタンク2A〜2Dは、船舶のバランスを取るため、船体の幅方向及び船首・船尾方向に分割して設けられる。
図1に示すように、本実施形態のバラスト装置1は、複数のバラストタンク2A〜2Dと、船内を流通するバラスト水を圧送するバラストポンプ3とを備える。また、バラスト装置1は、各構成要素を接続してバラスト水を流通させる第1ラインL1〜第5ラインL5と、これらのライン上に設けられる開閉弁V1〜開閉弁V6とを備える。ここで、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
各ラインの接続関係を具体的に説明すると、第1ラインL1は、シーチェストSC1とバラストポンプ3を接続するラインであり、開閉弁V1を有する。第2ラインL2及び第3ラインL3は、バラストポンプ3と各バラストタンク2A〜2Dを接続するラインである。本実施形態では、バラスト水処理装置10がバラストポンプ3とバラストタンク2A〜2Dの間に配置されるため、バラスト水処理装置10よりも上流側を第2ラインL2、バラスト水処理装置10よりも下流側を第3ラインL3としている。第2ラインL2は、開閉弁V2を有し、第3ラインL3は、開閉弁V3を有する。また、第3ラインL3は、各バラストタンク2A〜2Dと接続するため、一端側において分岐ラインL3A〜L3Dに分岐している。そして、分岐ラインL3A〜L3Dには、それぞれ開閉弁V4A〜V4Dが設置される。
第4ラインL4は、一端が開閉弁V1とバラストポンプ3の間の位置において第1ラインL1と接続され、他端が開閉弁V3よりもバラストタンク2A〜2D側において第3ラインL3と接続される。第4ラインL4には、開閉弁V5が設置される。第5ラインL5は、一端がバラスト水処理装置10と開閉弁V3の間の位置において第3ラインL3と接続され、他端は船外排出口SC2と接続される。第5ラインL5には、開閉弁V6が設置される。
なお、上述したバラスト装置1の構成は、本発明に係るバラスト水処理装置10を導入する対象であるバラスト装置の一例を示したに過ぎず、以下に説明するバラスト水処理装置10は、任意の構成のバラスト装置に適用することが可能である。
2.バラスト水処理装置10の構成
次に、バラスト水処理装置10の構成を説明する。バラスト水処理装置10は、船内に取り込むバラスト水及び船内から排出するバラスト水を処理してバラスト水中に含まれる微生物・異物の含有量を低減するために導入されるものである。本実施形態のバラスト水処理装置10は、図1に示すように、バラストポンプ3とバラストタンク2A〜2D(あるいは船外排出口SC2)の間に設けられる。ここで、バラスト水処理装置10において、第2ラインL2と接続されるバラストポンプ3側の接続部を上流側接続部P1、第3ラインL3と接続されるバラストタンク2A〜2D側の接続部を下流側接続部P2とする。
本実施形態のバラスト水処理装置10は、図2に示すように、浄化手段として、フィルタによりバラスト水を濾過処理する濾過装置11と、バラスト水に紫外線を照射して微生物を殺菌処理する紫外線照射手段としての紫外線リアクタ12とを備える。また、バラスト水処理装置10は、バラスト水の水圧を計測する圧力計13と、バラスト水の流量を計測する流量計14と、バラスト水処理装置10内を流通するバラスト水の流通を制御する制御手段15と、切替検知手段としてのリミットスイッチ16A〜16Dとを備える。なお、圧力計13は必須ではない。また、濾過装置11と紫外線リアクタ12とをそれぞれ浄化手段とも称する。濾過装置11及び紫外線リアクタ12には、既知の任意の構成を適用することができ、その詳細な説明を省略する。
また、バラスト水処理装置10は、各構成要素を接続してバラスト水を流通させる第7ラインL7〜第11ラインL11を備える。加えて、バラスト水処理装置10は、開閉弁V7〜V11及び、開度調整の可能な開度調整弁FCVを備える。ここで、本明細書において、「開度調整弁」と呼ぶ場合は、開状態と閉状態の2つの状態しか取ることのできない開閉弁は除かれるものとする。
第7ラインL7は、上流側接続部P1と濾過装置11を接続するラインであり、上流側に開閉弁V7、下流側に開閉弁V8が設置される。第8ラインL8は、濾過装置11と紫外線リアクタ12を接続するラインであり、開閉弁V9が設置される。第9ラインL9は、紫外線リアクタ12と下流側接続部P2を接続するラインであり、開度調整の可能な開度調整弁FCVが設置される。第10ラインL10は、一端が開閉弁V7と開閉弁V8の間の位置において第7ラインL7と接続され、他端が流量計14と下流側接続部P2の間の位置において第9ラインL9と接続される。第10ラインL10には、開閉弁V10が設置される。第11ラインL11は、一端が開閉弁V10よりも上流側の位置において第10ラインL10と接続され、他端が開閉弁V9と紫外線リアクタ12の間の位置において第8ラインL8と接続される。また、本実施形態において、圧力計13は、第7ラインL7の開閉弁V7と開閉弁V8の間の位置に設置され、流量計14は、第9ラインL9に設置される。ただし、流量計14を第7ラインL7又は第8ラインL8に設けることも可能である。
制御手段15は、上述した開閉弁V7〜開閉弁V11及び開度調整弁FCVの開閉を制御することにより、バラスト水処理装置10内を流通するバラスト水の流通を制御する。また、本実施形態の制御手段15は、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)を流れるバラスト水の流量を調整するため、開度調整弁FCVの開度を調整する制御も行う。開度調整弁FCVによる流量制御については後述する。
リミットスイッチ16A〜16Dは、図1及び図2に示すように、複数のバラストタンク2A〜2Dに対応して、分岐ラインL3A〜L3Dに設けられる開閉弁V4A〜V4Dごとに設置される。本実施形態のリミットスイッチ16A〜16Dはそれぞれ、対応する開閉弁V4A〜V4Dが全閉状態から全閉状態ではなくなった際に、制御手段15に対し信号を送信するよう構成される。これにより、制御手段15は、バラスト動作時又はデバラスト動作時における注排水の対象となるバラストタンク2A〜2Dの切替えを検知することができる。なお、リミットスイッチ16A〜16Dの作用については後述する。
3.バラスト装置1の動作
図3は、バラスト装置1のバラスト動作時のバラスト水の流路の例を示す図である。この例では、注水の対象となるバラストタンクとして、バラストタンク2Aが選択されている。太線で示される第1ラインL1〜第3ラインL3及び分岐ラインL3Aがバラスト水の流れる流路であり、4つのバラストタンク2A〜2Dのうち、バラストタンク2Aに注水される様子が示される。この動作時には、開閉弁V1〜V3及び開閉弁V4Aが開かれ、その他の開閉弁V4,V5及び開閉弁V4B〜V4Dが閉じられる。
また、図4は、バラスト装置1のバラスト動作時のバラスト水の他の流路を示す図である。この例では、注水の対象となるバラストタンクとして、バラストタンク2Dが選択されている。太線で示される第1ラインL1〜第3ラインL3及び分岐ラインL3Dがバラスト水の流れる流路であり、4つのバラストタンク2A〜2Dのうち、バラストタンク2Dに注水される様子が示される。この動作時には、開閉弁V1〜V3及び開閉弁V4Dが開かれ、その他の開閉弁V4,V5及び開閉弁V4A,V4C〜V4Dが閉じられる。なお、複数のバラストタンク2A〜2Dへの注水の順番は、荷役の状況等により適宜選択される。選択は、自動で行う構成であっても、船員などの操作者により手動で行う構成であっても良い。
一方、図5は、バラスト装置1のデバラスト動作時の流路の例を示す図である。この例では、排水の対象となるバラストタンクとして、バラストタンク2Aが選択されている。太線で示される第1ラインL1の一部、第2ラインL2、第3ラインL3の一部、第4ラインL4、第5ラインL5及び分岐ラインL3Aがデバラスト動作時にバラスト水が流れる流路であり、4つのバラストタンク2A〜2Dのうち、バラストタンク2Aから排水される様子が示される。この動作時には、開閉弁V2,V5,V6及び開閉弁V4Dが開かれ、その他の開閉弁V1,V3及び開閉弁V4B〜V4Dが閉じられる。デバラスト動作時にも、複数のバラストタンク2A〜2Dから順次排水が行われ、その順番は、荷役の状況等により適宜選択される。選択は、自動で行う構成であっても、船員などの操作者により手動で行う構成であっても良い。
4.バラスト水処理装置10の動作
次に、バラスト水処理装置10の動作について説明する。以下に示すバラスト水処理装置10の動作は、制御手段15により制御される。ただし、一部又は全部の動作を、船員などの操作者により手動に行うことも可能である。
4.1 バイパス動作
バラストポンプ3の駆動直後やバラスト水の浄化処理が必要ない場合は、制御手段15は開閉弁V7及びV10を開き、開閉弁V8,V9,V11及び開度調整弁FCVを閉じることでバラスト水を濾過装置11及び紫外線リアクタ12をバイパスさせる。
4.2 浄化動作
バラスト水処理装置10によりバラスト水を浄化する場合、制御手段15は、開閉弁V10,V11を閉じ、開閉弁V7〜V9を開くとともに、開度調整弁FCVを所定の開度にする。これにより、バラスト水は、濾過装置11及び紫外線リアクタ12(浄化手段)を流通するようになる。この際、制御手段15は、これら濾過装置11及び紫外線リアクタ12の起動命令も出力する。これにより、バラスト水は、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通することで浄化される。
4.3 流量制御動作
制御手段15は、開度調整弁FCVの開度を制御することにより、浄化処理を行うバラスト水の水量、すなわち浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)を流通するバラスト水の制御を行う。本実施形態の制御手段15による開度調整弁FCVの制御には、少なくとも通常モードM1と低流量モードM2の2つのモードがある。以下、これら2つのモードについて具体的に説明する。
<通常モードM1>
通常モードM1は、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水を、浄化処理可能で且つ効率的な流量で流通させてバラスト水を浄化処理させるモードである。バラスト水の流量は、制御手段15により開度調整弁FCVを制御することで調整される。具体的には、通常モードM1において、制御手段15は、流通させるバラスト水の流量が略一定となるよう開度調整弁FCVを制御する。略一定とする目標流量は、濾過装置11が濾過処理可能な定格流量と、紫外線リアクタ12が微生物を殺滅処理できる定格流量のうち、小さいほうの定格流量とすることが好適である。
また、上記制御の間、制御手段15は、紫外線リアクタ12に設けられた照度計(図示せず)により計測される照度と流量計14により計測される流量とから、バラスト水に対する紫外線の照射量を算出する。そして、紫外線リアクタ12は、当該照射量が略一定になるよう、出力が調整される。具体的には、制御手段15は、照度計により計測される照度が高いときは、バラスト水の水質が良好であると判断されるため紫外線リアクタ12の出力を抑える。また、照度が低いときは、水質が悪いと判断されるため、紫外線リアクタ12の出力を増加させる。同時に、制御手段15は、流量計14により計測される流量が少ないときは紫外線リアクタ12の出力を抑えて電力を抑え、流量が多いときは出力を増加させて殺滅処理が不十分にならないようにしている。このような制御により、浄化手段により適切に処理されたバラスト水を最短時間で貯留または排出することができる。なお、紫外線リアクタ12の照度を100%にしても上述した照射量が略一定の目標値に到達しない場合、制御手段15は、適切な浄化処理が行えないと判断して、後述する低流量モードM2に移行する。
加えて、本実施形態において、制御手段15は、開度調整弁FCVによる流量調整を所定の時間(間隔)ごとに行う。言い換えると、制御手段15は、開度調整弁FCVによる流量調整を所定の待ち時間ごとに行う。具体的には、制御手段15は、流量計14から所定の時間(例えば、20秒)ごとにバラスト水の流量を取得し、計測された流量が目標流量よりも多い場合は、開度調整弁FCVを所定%(例えば、5%)閉じる。一方、計測された流量が目標流量よりも少ない場合は、開度調整弁FCVを所定%(例えば、5%)開く。そして、このような所定の時間間隔ごとの調整を所定回数又は所定時間行って流量が目標流量を超えている場合にも、制御手段15は、適切な浄化処理が行えないと判断して、後述する低流量モードM2に移行する。
<低流量モードM2>
低流量モードM2は、例えば、流通するバラスト水の水質が悪い場合に、紫外線リアクタ12による紫外線の照射量を担保するため、流通するバラスト水の流量を減らして浄化処理を行うモードである。このモードでは、制御手段15はまず、バラスト水の殺滅処理が不十分にならないよう、紫外線リアクタ12の出力を最大にする。同時に、開度調整弁FCVを予め設定された最低開度まで一気に落として、流量を大幅に低減する。
このような状態とした後、制御手段15は、照度と流量とにより算出される上述した照射量を通常モードM1と同様一定量以上に保ちつつ、所定の間隔(例えば、20秒)ごとに徐々に開度調整弁FCVを開いて処理流量を増加させる。この際、開度調整弁FCVの開度は所定%ずつ開くことになるが、この所定%は、通常モードM1での流量調整の場合よりも小さく設定される(例えば、1%)。これは、低流量モードM2時はバラスト水の水質が悪いため、慎重に流量を増やす必要があるからである。そして、上記の制御により、バラスト水の流量を順調に増加させることができれば、通常モードM1に復帰する。
ところで、バラスト装置1によるバラスト動作の際、1つのバラストタンク(例えば、バラストタンク2A)が満水になると、注水の対象となるバラストタンクを他の1つのバラストタンク(例えば、バラストタンク2D)に切替えることが必要である。しかしながら、注水の対象となるバラストタンクが切替わると、切替わる前後のバラストタンクの水位や高さ、バラストポンプ3からの距離の差等に起因して、バラスト水処理装置10の下流の圧力(背圧)が低下することがある。例えば、注水対象のバラストタンクを満水のバラストタンクから空のバラストタンクに切替える際や、バラストポンプ3からの距離が遠いバラストタンクから距離の近いバラストタンクへ切替える際には、バラストタンク間の圧力差によりバラスト水処理装置10の背圧が急激に低下するおそれがある。そして、バラスト水処理装置10の背圧が急激に低下すると、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水の流量が急激に増加することになる。
通常モードM1における動作時にバラスト水の流量が急激に増加した場合、上述したように、制御手段15は流量を低減するために、所定の時間(間隔)ごとに開度調整弁FCVの開度を下げる制御を行う。しかしながら、流量の変化量が大きい場合、所定の時間ごとに開度調整弁FCVの開度を所定%ずつ下げるだけでは、所定回数又は所定時間の流量調整を行っても流量が目標流量まで低下せず、意図せず低流量モードM2に移行してしまうことが起こり得る。そして、一度低流量モードM2に移行すると、流量を低減することはできるものの、開度調整弁FCVの開度の増加量を通常モードM1時よりも小刻みにするため、流量を回復するまでに時間を要してしまうことになる。流量の回復に時間を要すると、バラスト動作に要する時間が長くなり、荷役作業等も円滑に行えなくなってしまう。また、低流量モードM2では、一時的に紫外線リアクタ12の出力を最大にするため、紫外線ランプの寿命を縮めてしまうという問題も生じる。
なお、上記のようなバラスト水の流量の急激な増加は、主にバラスト動作時、すなわちバラストタンク2A〜2Dへの注水時に生じるものである。しかしながら、デバラスト動作時、すなわちバラストタンク2A〜2Dからの排水時にも、排水の対象となるバラストタンクの切替えによって生じ得るものである。
そこで、本実施形態のバラスト水処理装置10は、このような意図しない低流量モードM2への移行を抑制するための構成として、注排水の対象となるバラストタンクの切替えを検知するリミットスイッチ16A〜16Dが設けられている。そして、制御手段15は、リミットスイッチ16A〜16Dのいずれかから、対応する開閉弁(開閉弁V4A〜V4Dのいずれか)が閉状態から閉状態ではなくなったことを示す信号を受信すると、その後注排水の対象となるバラストタンクが切替わると判断する。ここで、これまで注排水の対象となっていたバラストタンクに対応する開閉弁はすでに開状態であるから、当該開閉弁に対応するリミットスイッチからはすでに信号を受信している。すなわち、制御手段15がバラストタンクが切替わると判断するのは、これまで開状態を示していなかったリミットスイッチからの信号が新たに(追加で)受信されたときである。そして、制御手段15は、バラストタンクが切替わると判断すると、一時的に、以下(1)〜(3)の少なくとも1つの制御を行う
(1)開度調整弁FCVの開度調整を行う間隔を通常モードM1における間隔よりも短く(例えば、半分以下)する。
(2)開度調整弁FCVの開度調整を行う1回あたりの調整量を通常モードM1における調整量よりも増加させる。
(3)開度調整弁FCVの開度を判断した時点の開度よりも下げる。
これにより、所定の間隔ごとの開度調整弁FCVの開度調整を所定回数又は所定時間行う間に流量が目標流量まで低下し、切替えに伴って流量計14の計測する流量が急激に変化していたとしても、低流量モードM2へ移行しないようになる。その結果、注排水の対象となるバラストタンクを切替えても、バラスト動作に要する時間を短くすることができ、荷役作業等を円滑に行うことが可能となっている。なお、制御手段15が上記制御を「一時的に」行うとは、予め定めた所定の時間行うものでも、1回の待ち時間ごとの流量の変化量が一定量以下に抑えられるまで行うものでも良い。
5.変形例
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上記実施形態では、注排水の対象となるバラストタンクの切替えを検知する切替検知手段として、バラストタンク2A〜2Dごとに設けられる開閉弁V4A〜V4Dに設置されたリミットスイッチ16A〜16Dが用いられた。しかしながら、切替検知手段は、このような構成に限定されるものではない。
例えば、制御手段15が複数のバラストタンク2A〜2Dごとに設けられる開閉弁V4A〜V4Dの開閉を制御するよう構成されている場合には、切替検知手段を、制御手段15による各バラストタンク2A〜2Dの開閉信号を検知することで、注水の対象となるバラストタンク2A〜2Dの切替えを検知するよう構成することも可能である。このような構成であっても、注排水の対象となるバラストタンクの切替えを検知し、低流量モードM2への移行が抑制されるため、バラスト動作に要する時間を短くすることができ、荷役作業等を円滑に行うことが可能となる。
また、例えば、切替検知手段として、船員などの操作者に操作されることで切替えを検知する入力手段を用いることも可能である。入力手段は、図6に示すように、操舵室等に設置する入力ボタン17とすることが好適である。入力ボタン17は、物理的なボタンであっても、操舵室に設けられたモニターに表示される画面上のボタンであっても良い。この場合は、操作者がボタンの操作を忘れない限り、確実に注排水の対象となるバラストタンクの切替えを検知することができる。
・上記実施形態では、制御手段15が通常モードM1に加えて低流量モードM2を備える構成であったが、低流量モードM2は備えていなくても良い。この場合には、例えば、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水の流量が急激に変化すると、アラームを発すること等により、バラストポンプ3を自動又は手動で停止させる構成であっても良い。この場合も、何ら対策を講じないと、バラストポンプ3を一度停止させることになるためバラスト水の注排水が遅延してしまうことになる。しかしながら、このような構成であっても、リミットスイッチ16A〜16Dにより制御手段15がバラストタンクの切替えを検知することで、アラームを発しないようにする等の措置を取ることができ、注排水の遅延を防止することが可能となる。
・上記実施形態では、バラスト水処理装置10は浄化手段として濾過装置11及び紫外線リアクタ12を備えていたが、濾過装置11と紫外線リアクタ12の一方のみを備えた構成や、他の浄化手段を用いた構成とすることも可能である。また、制御手段15が紫外線リアクタ12の出力を照射量によって制御しない構成とすることも可能である。これらの場合であっても、切替検知手段が注排水の対象となるバラストタンクの切替えを検知することにより、流通するバラスト水の急激な流量変化を察知し、所定の対応を行うことが可能となる。
・上記実施形態では、バラスト水処理装置10の制御手段15が開閉弁V7〜V11を制御してバラスト水の流通を制御する構成であったが、開閉弁V7〜V11は、手動で操作するものであっても良い。また、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水の流量調整は、開度調整弁FCVのみにより行っていたが、例えば第7ラインL7に設けられる開閉弁V8を開度調整弁に置き換え、2つの開度調整弁により流量調整を行う構成とすることも可能である。
・上記実施形態では、流量調整のための開度調整弁FCVを紫外線リアクタ12の下流側の第9ラインL9に設けていた。しかしながら、流量調整のための調整弁は、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)を流通するバラスト水の流路上であれば、任意の場所に設けることができる。
1 :バラスト装置
2A〜2D :バラストタンク
3 :バラストポンプ
10 :バラスト水処理装置
11 :濾過装置(浄化手段)
12 :紫外線リアクタ(浄化手段)
13 :圧力計
14 :流量計
15 :制御手段
16A〜16D :リミットスイッチ(切替検知手段)
17 :入力ボタン
FCV :開度調整弁
L1〜L11 :ライン
L3A〜L3D :分岐ライン
M1 :通常モード
M2 :低流量モード
P1 :上流側接続部
P2 :下流側接続部
SC1 :シーチェスト
SC2 :船外排出口
V1〜V11 :開閉弁
V4A〜V4D :開閉弁

Claims (6)

  1. バラスト装置に用いられるバラスト水処理装置であって、
    前記バラスト装置は、複数のバラストタンクを備え、バラストポンプにより前記複数のバラストタンクに対してバラスト水の注排水を行うものであり、
    前記バラスト水処理装置は、前記バラスト水を流通させて浄化処理を行う浄化手段と、開度調整の可能な開度調整弁と、制御手段と、切替検知手段とを備え、
    前記制御手段は、前記浄化手段を流通するバラスト水の流量に基づいて前記開度調整弁の開度を調整するよう構成され、
    前記切替検知手段は、前記浄化処理後のバラスト水を前記複数のバラストタンクへ注水する際の、注水の対象となるバラストタンクの切替えを検知する、バラスト水処理装置。
  2. 請求項1に記載のバラスト水処理装置であって、
    当該制御手段は、前記切替検知手段が前記バラストタンクの切替えを検知したことに応じて、一時的に以下(1)〜(3)の少なくとも1つの制御を行う、バラスト水処理装置。
    (1)前記開度調整弁の開度調整を行う間隔を短くする。
    (2)前記開度調整弁の開度調整を行う1回あたりの調整量を増加させる。
    (3)前記開度調整弁の開度を下げる。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
    前記切替検知手段は、前記複数のバラストタンクごとに設けられる開閉弁に設置されたリミットスイッチである、バラスト水処理装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
    前記制御手段は、前記複数のバラストタンクごとに設けられる開閉弁の開閉を制御するよう構成され、
    前記切替検知手段は、前記制御手段による各バラストタンクの開閉信号を検知することで、注水の対象となるバラストタンクの切替えを検知する、バラスト水処理装置。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
    前記切替検知手段は、操作者に押下されることで切替えを検知する入力手段である、バラスト水処理装置。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバラスト水処理装置であって、
    前記浄化手段を流通するバラスト水の流量を略一定に保って前記浄化処理を行う通常モードと、
    前記通常モードよりも流量を絞った状態で前記浄化処理を行う低流量モードとを備える、バラスト水処理装置。
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