上記の技術の欠点を克服する、α−トロンビン又はβ−トロンビンを定量化するための分析方法、及びタンパク質溶液から活性で未変性のα−トロンビン又はβ−トロンビンを精製するための方法に対して、依然として満たされていないニーズがある。
溶液中のα−トロンビン及び/又は均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法が提供され、この溶液は、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド(β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)、翻訳後修飾α−トロンビン種、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む。
未変性の、例えば、未分解の機能的な活性α−トロンビン及び/又は均質な翻訳後修飾α−トロンビンの良好な分離を提供することにより、α−トロンビンを、タンパク質溶液から精製するための方法も提供し、この溶液は、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド(β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)、翻訳後修飾α−トロンビン種、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む。
均質なα−トロンビングリコフォームを、不均質なグリコシル化α−トロンビン種を含む溶液から精製するための方法も提供される。
β−トロンビンと、α−トロンビン、例えば、翻訳後修飾α−トロンビン種、γ−トロンビン、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中のβ−トロンビンを精製及び/又は定量化するための方法も提供される。
本明細書で使用される場合、「のうちの少なくとも1つ」という用語は、機能において接続的及び離接的の両方である。例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB共に、A及びC共に、B及びC共に、又はA、B、及びC共にという意味である。
均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、均質にグリコシル化されたα−トロンビン、又は均質にグリコシル化された及び均質にシアリル化されたα−トロンビンであり得る。
本出願に従う均質なα−トロンビングリコフォームは、「均質にグリコシル化されたα−トロンビン」又は「均質にグリコシル化された及び均質にシアリル化されたα−トロンビン種」であり得る。
典型的には、グリコフォームは、付加されたグリカン又は多糖類の数及び/又は種類に関してのみ異なるタンパク質のイソ型である。糖タンパク質は、いくつかの異なるグリカンからなる場合が多く、付加された糖類が変化する。
多くの場合、「グリカン」及び「多糖」という用語は、糖タンパク質などの複合糖質の炭水化物部分を指す。グリカンは、単糖残基のホモ−又はヘテロポリマーであり得、直鎖状又は分枝状であり得る。グリカンは、負電荷を有する、又は有しない糖類を保有し得る。
本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程を含む。本方法は、確実かつ再現可能な性能を得ること、高度に精製され、活性なα−トロンビン及び/又は均質な翻訳後修飾α−トロンビンを提供すること、並びにα−トロンビン、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、及び/又はその分解ポリペプチドの正確な定量を可能にする。本方法は、β−トロンビン単独の定量及び/又は精製も可能にする。
一態様では、α−トロンビンを、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液から精製するための方法が提供され、本方法は、1−溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、2−差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)により、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド(例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチドから)及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、3−α−トロンビン画分を回収し、それにより精製α−トロンビンを得る工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)により、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド(例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)及び別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程を含む。
一実施形態では、α−トロンビンは、ヒト血液又は血漿源からのものである。別の実施形態では、α−トロンビンは、組み換え体源からのものである。
本明細書で使用される、「分離」という用語は、典型的には、特定の化合物を、特定の化合物及び別の化合物を含む溶液から単離することを指す。
一態様では、均質にグリコシル化されたα−トロンビンを、不均質にグリコシル化されたα−トロンビンを含む溶液から精製するための方法が提供され、本方法は、1−溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、2−差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)により、均質にグリコシル化されたα−トロンビンを、不均質にグリコシル化されたα−トロンビンから分離する工程と、3−均質にグリコシル化されたα−トロンビン画分を回収し、それにより精製された均質にグリコシル化されたα−トロンビンを得る工程と、を含む。
一態様では、均質にグリコシル化されたα−トロンビンを、不均質にグリコシル化されたα−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液から精製するための方法が提供される。別の態様では、均質にグリコシル化されたα−トロンビンを、不均質にグリコシル化されたα−トロンビン、α−トロンビン分解ポリペプチド、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つを含む溶液から精製するための方法が提供される。本方法は、1−溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、2−差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)により、均質にグリコシル化されたα−トロンビンを分離する工程と、3−均質にグリコシル化されたα−トロンビン画分を回収し、それにより精製された均質にグリコシル化されたα−トロンビンを得る工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、工程1の接触工程後に、洗浄工程が均一濃度の緩衝液/溶液を使用して実施される。
本発明の一実施形態では、本方法は、トロンビン含有溶液を陰イオン交換体に装填する工程と、均一濃度溶液で洗浄する工程と、洗浄した画分を廃棄する工程と、pH勾配などの不均一濃度溶液を使用して、所望のα−トロンビン画分を溶出する工程と、を含む。均一濃度溶液の使用は、典型的には、液体クロマトグラフィーにおける一定の組成の移動相の使用に関連する。
「所望のα−トロンビン画分」は、典型的には、例えば、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、均質にグリコシル化されたα−トロンビン又は均質にグリコシル化された及び均質にシアリル化されたα−トロンビンを含む、精製及び/又は定量が意図される溶液中に存在する任意のα−トロンビンを指す。
一態様では、均質なα−トロンビングリコフォームを、不均質なグリコシル化されたα−トロンビン種を含む溶液から精製するための方法が提供され、本方法は、
溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、均質なα−トロンビングリコフォームを、不均質な種から分離する工程と、
均質なα−トロンビングリコフォーム画分を回収し、
それにより精製された均質なα−トロンビングリコフォームを得る工程と、を含む。
一実施形態では、本方法は、精製された均質なα−トロンビングリコフォームを定量化する工程も含む。
別の態様では、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中のα−トロンビンを定量化するための一工程又は単一工程クロマトグラフィー方法が提供され、本方法は、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、α−トロンビン画分を回収する工程と、α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。別の態様では、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中のα−トロンビンを定量化するための一工程又は単一工程クロマトグラフィー方法が提供され、本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、pH勾配などの差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、α−トロンビン画分を回収する工程と、α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、α−トロンビンは、哺乳類、例えば、ヒト若しくはブタの血漿源、又は組み換えタンパク質からのものである。
本明細書に開示されるクロマトグラフィー方法は、当業者に既知の全ての技法を使用して実施され得る。例えば、高性能液体クロマトグラフィー装置、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、及び/又は接続型検出器を備える、若しくは備えていない単独型カラムが採用され得る。
一実施形態では、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー方法が使用される。高性能液体クロマトグラフィー(HPLC;高圧液体クロマトグラフィーとも称される)は、典型的には、試料混合物を含有する加圧液体溶媒を固体吸着物質で充填したカラムに通すために、ポンプに依存する技法である。試料中の各成分は、吸着物質とわずかに異なって相互作用し、成分の分離をもたらす。HPLCは、動作圧力が非常に高い(50〜350バール)ため、従来の(「低圧」)液体クロマトグラフィーと区別される。HPLC装置の機械式ポンプのいくつかのモデルは、時間で変化する比率で複数の溶媒を一緒に混合し、移動相において組成物の勾配を生成することができる。紫外線(UV)、フォトダイオードアレイ(PDA)、又は質量分析などの様々な検出器が普及している。検出は、190〜400nm(A190nm〜A400nm)で、UV吸光度検出器を使用して実施することができる。一実施形態では、アミンが溶出緩衝液に含まれる場合、吸光度は約A280nmで測定される。
典型的には、クロマトグラフィー分離、例えば、HPLCの実行は、少なくとも以下の工程からなる:平衡化カラムを試料/混合物と接触させる、例えば、それらで装填する(「装填」)。装填後、洗浄工程が実施され得る。この工程後、分離された成分がカラムから溶出される。これは、均一濃度で(装填及び/又は平衡化工程と比較したとき、緩衝液組成を変更することなく)、又は勾配(緩衝液の特性、例えば、塩濃度、極性、pHのうちの少なくとも1つを変更する)を通して実施することができる。一実施形態では、溶出は直線勾配を使用して実施される。次の工程では、カラムを再生することができる(「カラム再生」)、つまり、任意の残留物質をカラムから溶出するために、変更した特性(塩濃度、極性、pH)の最高濃度で、残留成分に追加時間を与える。再生は、別の方法としては、他の緩衝液の特性を変更することにより(溶出工程中には変更されない)実施することができる。最終工程(「カラム平衡化」)は、カラムが更なる使用に好適である元の状態にカラムを戻すことを可能にする、平衡化工程であり得る。記載される工程は、別の方法としては、FPLC装置及び/又は単独型カラムを使用して実施することができる。クロマトグラフィー分離は、Hidayat Ullah Khan(2012).The Role of Ion Exchange Chromatography in Purification and Characterization of Molecules,Ion Exchange Technologies,Chapter 14,331〜334に記載されるように、当該技術分野において周知である。
有利に、本発明に従う方法は、未変性α−トロンビンの、トロンビン溶液中のその分解ポリペプチドから及び/又は他のタンパク質からの良好なピーク分離を提供する。典型的には、クロマトグラフィー方法において、「良好な分離」/「良好なピーク分離」は、成分の溶出の代表として検出されるピークが重複しない、つまり、検出器の応答がピーク間でベースラインレベルに戻る、成分の効率的な分離と考えられる。「良好なピーク分離」という用語はまた、溶出ピーク間の明確な区別が現れるが、検出器の応答がピーク間でベースラインレベルに完全に戻らない、「十分な分離」も含むことを意味する。
分離/分離能の有効性が視覚的に評価され得る。別の方法としては、又は加えて、クロマトグラフィーカラムが互いから成分を分離する程度である分離能(Rs)は、数学的に定義することができ、分離能は選択されたピークとそれの前のピークのピーク保持時間との間の差を定数1.18で乗じて、ピーク高さの50%のピーク幅の合計で除すことである。「保持時間」という用語は、溶出の代表として、注入の時点とピーク頂点(ピークの最上点)の検出時点との間の間隔を指す。
一般的に、2又はそれ以上の分離能レベルが成分の良好な分離と考えられ、ピークの良好な定量化を可能にする。1.5又はそれ以上(2未満)の分離能は、分離及び/又は定量化を可能にする「十分な分離」と考えられる。
本方法の一実施形態では、α−トロンビンピークとその分解ポリペプチドとの間の分離能は、約1.5〜約8の範囲である。
本方法の一実施形態では、トロンビン溶液中のα−トロンビンピークと他のタンパク質との間の分離能は、8よりも高い。
本方法の一実施形態では、異なるα−トロンビン種ピーク間の分離能は、約1.5〜約8の範囲である。
一実施形態では、異なるα−トロンビン分解ポリペプチド(β−トロンビン及びγ−トロンビン)間の分離能は、1.5より低く、例えば、0に等しい。一実施形態では、β−トロンビン及びγ−トロンビンは同じピークで溶出する。別の実施形態では、ある特定のβ−トロンビン形態は、別個のピークで溶出し、例えば、溶液中のβ−トロンビンと他の成分との間の分離能は約1.5〜約8である。したがって、一態様では、本発明は、β−トロンビンを、β−トロンビンと、α−トロンビン、γ−トロンビン、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液から精製するための方法も提供し、本方法は、
溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、β−トロンビンを、α−トロンビン、γ−トロンビン、及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、β−トロンビン画分を回収し、それにより精製β−トロンビンを得る工程と、を含む。
「β−トロンビン画分」という用語は、典型的には、差次的溶出条件下での、緩衝液を用いた、装填された陰イオン交換体(例えば、装填されたカラム)の溶出後に回収された画分を指す。
別の態様では、本発明は、β−トロンビンと、α−トロンビン、γ−トロンビン、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中のβ−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法を提供し、本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、β−トロンビンを、α−トロンビン、γ−トロンビン、及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、β−トロンビンを定量化する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、分離したβ−トロンビン、α−トロンビン、及び/又はγ−トロンビン含有画分を特定する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、α−トロンビン及び/又はγトロンビンを定量化する工程を更に含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、β−トロンビンを、α−トロンビン、γ−トロンビン、及び別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程を含む。
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー方法は、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー方法である。いくつかの実施形態では、差次的溶出条件は、例えば、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用することにより生成される、pH勾配を含む。いくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、非多孔質粒子でできている。
別の態様では、本発明は、本発明の方法により得ることができる、精製β−トロンビン、単離したβ−トロンビン、及び本明細書に記載される、精製/単離したβ−トロンビンを含む製剤/キットを提供する。
いくつかの実施形態では、本方法は、均質な翻訳後修飾α−トロンビン画分の単離及び回収を可能にする。いくつかの実施形態では、均質な翻訳後修飾は、均質なグリコシル化である。いくつかの実施形態では、均質な翻訳後修飾は、均質なグリコシル化及びシアリル化である。いくつかの実施形態では、分離/回収したα−トロンビン画分は、均質なグリコシル化α−トロンビンである。いくつかの実施形態では、均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、単一のグリコフォームにより表される。いくつかの実施形態では、分離/回収したα−トロンビングリコフォームは、均質にグリコシル化及び/又はシアリル化されている。いくつかの実施形態では、単離、分離、及び/又は回収した翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、均質なα−トロンビングリコフォームの均質性は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%同一性のレベルである。例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、又は100%未満であり、50〜55%、50〜60%、50〜65%、50〜70%、50〜75%、50〜80%、50〜85%、50〜90%、50〜95%、50〜99%、50〜100%、55〜60%、55〜65%、55〜70%、55〜75%、55〜80%、55〜85%、55〜90%、55〜95%、55〜99%、55〜100%、60〜65%、60〜70%、60〜75%、60〜80%、60〜85%、60〜90%、60〜95%、60〜99%、60〜100%、65〜70%、65〜75%、65〜80%、65〜85%、65〜90%、65〜95%、65〜99%、65〜100%、70〜75%、70〜80%、70〜85%、70〜90%、70〜95%、70〜99%、70〜100%、75〜80%、75〜85%、75〜90%、75〜95%、75〜99%、75〜100%、80〜85%、80〜90%、80〜95%、80〜99%、80〜100%、85〜90%、85〜95%、85〜99%、85〜100%、90〜95%、90〜99%、90〜100%、95〜99%、95〜100%同一性など、開示されるパーセントの間の任意の範囲を含む。また別の実施形態では、α−トロンビンは、未修飾であり、例えば、グリコシル化されない。
いくつかの実施形態では、タンパク質溶液は、別のタンパク質、α−トロンビン分解ポリペプチド(例えば、β−トロンビンポリペプチド及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)、翻訳後修飾されないα−トロンビン(未修飾α−トロンビン)、又は翻訳後修飾α−トロンビンのうちの少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、溶液は、未修飾及び翻訳後修飾α−トロンビンの混合物を含む。
いくつかの実施形態では、溶液は、α−トロンビンの異なるグリコフォーム種を含む、不均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む。
いくつかの実施形態では、溶液は、例えば、溶液に添加されたタンパク質であり得る、別のタンパク質又はタンパク質断片を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)である。本方法のいくつかの実施形態では、溶液は、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、溶液は、α−トロンビン分解ポリペプチド又はHSAのうちの少なくとも1つを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、溶液は、α−トロンビン分解ポリペプチド及びHSAのうちの少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、溶液を陰イオン交換カラム上に装填する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、バッチ式形態で、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程を含む。
本明細書で使用される場合、「バッチ方法」、「バッチ式」、及び「バッチ形態」は一般的に、溶液が、典型的には単段吸着手順において、樹脂と接触させられる技法を指す。「単段吸着手順」は、精製プロセスの成分全て(例えば、樹脂及び溶液)が、例えば、撹拌タンク、バッチリアクター、又は槽で共にインキュベートされ、吸着が連続様式で実施される手順を指す。樹脂結合画分は、次に、遠心分離及び/又は濾過の追加工程により回収され得る。
いくつかの実施形態では、接触前、例えば、装填前に、交換体/カラムを、10.5のpH〜約pH7.0(例えば、9.1のpH)に平衡化する。平衡化は、10.5のpH〜約pH7.0(例えば、9.1のpH)で交換体を平衡化するのに好適な緩衝液(複数可)を使用して実施され得る。
一実施形態では、緩衝液はアミンの混合物を含む。いくつかの実施形態では、平衡化に使用されるアミン混合物は、ピペラジン、トリエタノールアミン、ビス−トリスプロパン、1−メチルピペラジン、ビシン、ビス−トリス、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、1−ヒスチジン、イミダゾール、ピリジン、トリシン、トリエタノールアミン、及び/又はトリスを含む。
いくつかの実施形態では、平衡化に使用されるアミン混合物は、ピペラジン、トリエタノールアミン、ビス−トリスプロパン、及び1−メチルピペラジンからなる。いくつかの実施形態では、平衡化緩衝液中のアミンの濃度は、約1〜約100mMの範囲、例えば、約10〜約20mMの範囲又は約20mMである。
接触中、例えば、装填中の流量は、約0.1〜約1.4mL/分の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、α−トロンビンの分解ポリペプチド、α−トロンビン、均質なα−トロンビングリコフォーム、及び/又は別のタンパク質間の分離を可能にする条件は、陰イオン交換体/カラムを溶出のためのpH勾配条件に曝すなど、差次的溶出条件を適用することを含む。
いくつかの実施形態では、差次的溶出条件は、pH勾配を、例えば、段階的又は連続して(例えば、直線)適用することを含む。典型的には、「連続勾配」は、溶離剤の組成が、徐々に、連続して、及び一定して変更される勾配として定義されるが、「段階的勾配」は、溶離剤の組成の即時変更を含む。
いくつかの実施形態では、勾配の長さは、5分〜100分、又は5分〜60分の範囲である。別の実施形態では、勾配の長さは、25分より長い、例えば、30より長い、又は35分より長い。いくつかの実施形態では、勾配の長さは、25分〜35分超の範囲、又は25分〜30分超の範囲である。
一実施形態では、溶出は、陰イオン交換体の平衡化に使用された緩衝液と同じもので実施される。
いくつかの実施形態では、直線pH勾配は、約9.1〜約pH3.4の範囲など、約pH10.5〜約pH2.0である。
いくつかの実施形態では、pH勾配は、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用して生成される。いくつかの実施形態では、直線pH勾配は、アミンの混合物を含む溶離剤緩衝液を使用して生成される。いくつかの実施形態では、差次的溶出条件中で使用されるアミン混合物は、ピペラジン、トリエタノールアミン、ビス−トリスプロパン、1−メチルピペラジン、ビシン、ビス−トリス、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、1−ヒスチジン、イミダゾール、ピリジン、トリシン、トリエタノールアミン、及び/又はトリスを含む。いくつかの実施形態では、差次的溶出条件中で使用されるアミン混合物は、ピペラジン、トリエタノールアミン、ビス−トリスプロパン、及び1−メチルピペラジンからなる。いくつかの実施形態では、緩衝液中の各アミンの濃度は、約1〜約100mMの範囲である。いくつかの実施形態では、緩衝液中の各アミンの濃度は、約20mMである。
いくつかの実施形態では、直線pH勾配は、アミンの混合物を含む2つの溶離剤緩衝液を使用して生成される。いくつかの実施形態では、直線pH勾配は、同じアミンの混合物を含む2つの溶離剤緩衝液を使用して生成される。典型的には、溶出緩衝液のpHは、溶出の間の緩衝液AとBとの間の比率に依存する。いくつかの実施形態では、緩衝液Aは約9.1のpHを有し、緩衝液Bは約3.4のpHを有し、緩衝液Aの濃度は約40%から約60%に減少し、緩衝液Bの濃度は約60%から約40%に増加する。いくつかの実施形態では、緩衝液Aは約9.1のpHを有し、緩衝液Bは約3.4のpHを有し、緩衝液Aの濃度は約100%から約0%に減少し、緩衝液Bの濃度は約0%から約100%に増加する。いくつかの実施形態では、緩衝液Aは約9.1のpHを有し、緩衝液Bは約3.4のpHを有し、緩衝液Aの濃度は約90%から約0%に減少し、緩衝液Bの濃度は約10%から約100%に増加する。いくつかの実施形態では、毎分の緩衝液Bの増加%は、約0.1%〜約10%の範囲、又は約3.5%〜約4.5%の範囲である。いくつかの実施形態では、毎分の緩衝液Bの増加%は、約3.5%、3.75%、4%、4.25%、又は4.5%からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毎分の緩衝液Bの増加%は、約3.5%である。
いくつかの実施形態では、溶出条件は、約0.1〜約1.4mL/分、又は約0.25〜1.0mL/分、又は0.5mL/分〜0.8mL/分、又は約0.8〜約1.0mL/分の流量を含む。いくつかの実施形態では、溶出条件は、約1mL/分の流量を含む。
いくつかの実施形態では、溶出条件は、以下の工程を含む:毎分約0.1%〜約10%、約0.5%〜約10%、又は約3.5%〜約4.5%の緩衝液Bの直線増加/傾きで、90%〜100%緩衝液B。
いくつかの実施形態では、溶出条件は、以下の工程を含む:毎分約0.1%〜約10%、約0.5%〜約10%、又は約3.5%〜約4.5%の緩衝液Bの直線増加/傾きで、0%〜100%緩衝液B。
いくつかの実施形態では、溶出条件は、以下の工程を含む:毎分約3.5%の緩衝液Bの直線増加/傾きで、90%〜100%緩衝液B。
いくつかの実施形態では、溶出条件は、以下の工程を含む:毎分約3.5%の緩衝液Bの直線増加/傾きで、0%〜100%緩衝液B。
本方法のいくつか実施形態では、陰イオン交換体は、弱又は強陰イオン交換体である。本方法のいくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、四級アンモニウム正荷電基からなる。本方法のいくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、約1〜約1000μm、例えば、5μmのポリマービーズがベースである。本方法のいくつかの実施形態では、ポリマービーズは、ポリ(スチレン/ジビニル/ベンゼン)からなる。本方法のいくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、非多孔質又は多孔質の粒子からなり、例えば、粒子の孔は、約120〜1000オングストローム(Å)の範囲である。本方法のいくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、非多孔質粒子からなる。本方法のいくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、単分散粒子からなる。
本方法のいくつかの実施形態では、以下の特性のうちの少なくとも1つを有する陰イオン交換カラムが使用される:1.7〜10mmの範囲の幅(例えば、4.6mm)、及び10〜250mmの範囲の長さ(例えば、250mm)。
本方法のいくつかの実施形態では、1.7〜10mmの範囲の幅(例えば、4.6mm)、及び10〜250mmの範囲の長さ(例えば、250mm)を有する陰イオン交換カラムが使用される。
本方法のいくつかの実施形態では、本方法は、一工程クロマトグラフィー方法、例えば、追加のクロマトグラフィー及び/又は分離工程(複数可)がない一種のクロマトグラフィー方法からなる。
いくつかの実施形態では、精製方法は、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)により、及び/又は接続型検出器を備える、若しくは備えていない単独型カラムにより実施される。
いくつかの実施形態では、本方法は分析目的のためである。
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される方法により得ることができる精製α−トロンビンが本明細書において提供される。
別の態様では、単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンが本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、α−トロンビンは、哺乳類の血漿源、例えば、ヒト又はブタの血漿源からのものである。別の態様では、哺乳類の血液又は血漿源からの単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンが本明細書において提供される。
いくつかの実施形態では、翻訳後修飾はグリコシル化である。いくつかの実施形態では、翻訳後修飾は、グリコシル化及びシアリル化である。いくつかの実施形態では、均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、単一/特定のグリコフォームにより表される。いくつかの実施形態では、α−トロンビングリコフォームは更にシアリル化されている。いくつかの実施形態では、α−トロンビングリコフォームは均質にシアリル化されている。いくつかの実施形態では、単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、均質にグリコシル化されたα−トロンビンである。いくつかの実施形態では、単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、1つの特定のグリコフォームにより表される。いくつかの実施形態では、単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、均質にシアリル化されたα−トロンビンである。
また別の態様では、本明細書に開示される、精製α−トロンビン又は単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む製剤が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、精製α−トロンビン又は単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、本明細書に開示される方法により得られる。製剤のいくつかの実施形態では、α−トロンビンは、哺乳類の血漿源からのものである。いくつかの実施形態では、α−トロンビンは、血液又は血漿源からのものである。いくつかの実施形態では、本製剤は、薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。本明細書に開示される製剤は、冷凍又は凍結乾燥させることができる。
別の態様では、精製α−トロンビン、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、又はβ−トロンビンを含む製剤を表面に適用することを含む、対象の表面に、止血処置、封止、移植片固定、創傷治癒、及び/又は吻合を提供する方法が本明細書において提供される。製剤は、フィブリノーゲンを含む溶液で適用され得る。表面は、出血性又は非出血性部位であってよい。対象は、ヒト対象であってもよい。
別の態様では、本発明は、止血処置、封止、移植片固定、創傷治癒、抗接着、及び/又は吻合のための、上記に開示される、単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン、精製α−トロンビン、又はβ−トロンビンを含む製剤の使用に関する。
別の態様では、上記に開示される、精製α−トロンビン、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、又はβ−トロンビンを含む、アンプル、バイアル、及び/又は注射器などの容器、並びに任意選択で適用装置、及び/又は使用説明書を含むキットが提供される。
別の態様では、第1成分として、上記に開示される、単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン又は精製した均質な翻訳後修飾α−トロンビングリコフォームを含む容器を含むキットが提供される。
いくつかの実施形態では、キットは、例えば、第2成分としてゼラチンを含む容器を含む。キットは更にフィブリノーゲンを含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、例えば、第2成分としてフィブリノーゲンを含む容器を含む。キットは、少なくとも1つの容器及び少なくとも1つのラベルを含み得る。好適な容器として、例えば、アンプル、バイアル、注射器、及び管が挙げられる。容器は、例えば、ガラス、金属、又はプラスチックで作製され得る。
本発明のこれら及び他の態様及び実施形態は、以下の本発明の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかとなるであろう。
α−トロンビンの精製及び/定量に関する本明細書に開示される全ての実施形態はまた、β−トロンビンの精製及び/又は定量にも関する。
本明細書に提供される方法は、一部、例えば、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化及び/又はシアリル化レベル)に関して、未変性α−トロンビンが、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)を利用することにより、不均質なタンパク質溶液から単離/精製され得るという発見に基づく。また、本発明に従う方法は、α−トロンビン又はβ−トロンビンが他のタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン及び/又はウシ血清アルブミンなどの安定剤を含む溶液から単離/精製され得るという発見に基づく。
本発明に従う方法は、溶液中のトロンビン濃度に対して大量の他のタンパク質の存在下でα−トロンビン又はβ−トロンビンの高分離能精製及び/又は定量を可能にすることが意外にも分かった。
より具体的には、本発明に従う方法は、大量の他のタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなどの安定剤を含む不均質な溶液からの、高分離能で異なる均質な翻訳後修飾α−トロンビン種(例えば、均質なα−トロンビングリコフォーム)を精製及び/又は定量化を可能にする。
いくつかの実施形態では、他のタンパク質、例えば、血清アルブミンは、約0.4〜約50mg/ml、例えば、約5〜約6.5mg/mlの濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、溶液中のトロンビン濃度は、約100〜約10000IU/ml、例えば、約800〜約1200IU/mlの範囲、又は約0.3mg/mlである。いくつかの実施形態では、トロンビン(IU)対他のタンパク質(mg)の比率は、約1:10〜約1:40、又は約1:14〜約1:27の範囲である。
特に、未変性の翻訳後修飾α−トロンビンの、トロンビン製剤中のその分解ポリペプチド及び他のタンパク質からの良好なピーク分離を提供することにより、α−トロンビンを、トロンビン含有溶液から精製及び/又は定量するための一工程クロマトグラフィー方法が本明細書において提供される。また、トロンビン溶液/製剤中のα−トロンビン、その分解ポリペプチド、及び他のタンパク質(例えば、HSA)間で分離するためのツールも本明細書において提供される。
「未変性α−トロンビン」は、例えば、α−トロンビンの無傷の、未分解の、及び/又は機能的な形態を指す。
従来、トロンビンは、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び/又はSDS−PAGE、並びにウエスタンブロットを使用して精製及び分析された。
α−トロンビンを、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド(例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液から精製するための方法が本明細書において提供され、本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件、例えば、pH勾配を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、α−トロンビン画分を回収し、それにより精製α−トロンビンを得る工程と、を含む。
均質な翻訳後修飾α−トロンビン種(例えば、均質なα−トロンビングリコフォーム)を、不均質な翻訳後修飾α−トロンビン種(例えば、不均質にグリコシル化されたα−トロンビン種)、及び任意選択で、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つを含む溶液から精製するための方法も本明細書において提供され、本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件、例えば、pH勾配により、均質な翻訳後修飾α−トロンビン種を、別のα−トロンビン翻訳後修飾種から、並びに任意選択で、α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は別のタンパク質から分離する工程と、均質な翻訳後修飾α−トロンビン画分を回収し、それにより、精製した均質な翻訳後修飾α−トロンビン種を得る工程と、を含む。
「精製する(purifying)」、「精製する(to purify)」などの用語は、α−トロンビン(例えば、均質な翻訳後修飾α−トロンビン)又はβ−トロンビンを、それを含む溶液から除去、単離、又は分離することを指す。α−トロンビン含有溶液は、α−トロンビン分解ポリペプチド(β−トロンビン及び/又はγ−トロンビン)、別のタンパク質、及び/又は他のα−トロンビン翻訳後種も含み得る。β−トロンビン含有溶液は、α−トロンビン、γ−トロンビン、別のタンパク質、及び/又はα−トロンビン翻訳後種も含み得る。
「接触させる」という用語は、結合相互作用が正荷電基と溶液中に存在する任意の結合パートナー、例えば、α−トロンビン又はβ−トロンビンとの間で生じる様式で、溶液を、正荷電基を含む陰イオン交換体と十分に密接に接触させる、任意の種類の結合作用を指す。溶液は、正荷電基とα−トロンビン又はβ−トロンビンとの間の接触及び/又は結合を可能にする十分な時間期間、例えば、1分又はそれ以上、陰イオン交換体と共にインキュベートされ得る。
「α−トロンビン画分」という用語は、典型的には、差次的溶出条件下で、緩衝液を用いた装填した陰イオン交換体(例えば、装填カラム)の溶出後に回収された画分を指す。一実施形態では、回収したα−トロンビン画分は、α−トロンビンのみからなる。別の実施形態では、回収したα−トロンビン画分は、1つの均質なα−トロンビン種からなる。別の実施形態では、回収したα−トロンビン画分は、均質なα−トロンビングリコフォーム画分からなる。
「精製α−トロンビン」という用語は、典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィー方法を使用して、出発トロンビン含有溶液中に存在するα−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は別のタンパク質からのα−トロンビンの単離後に得られたα−トロンビン調製物を指す。本明細書で使用される場合、「精製α−トロンビン」という用語は、陰イオン交換クロマトグラフィー方法を使用して、不均質な翻訳後修飾α−トロンビン溶液からの均質な翻訳後修飾α−トロンビンの単離後に得られた、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、均質にグリコシル化された及び/又はシアリル化されたα−トロンビン調製物も指す。「精製した均質なα−トロンビングリコフォーム」という用語は、典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィー方法を使用して、出発トロンビン含有溶液中に存在するα−トロンビン分解ポリペプチド、不均質なグリコシル化α−トロンビン種、及び/又は別のタンパク質からのα−トロンビングリコフォームの単離後に得られた、均質なα−トロンビングリコフォーム調製物を指す。
一実施形態では、精製α−トロンビンは、分解ポリペプチドを含まない未変性タンパク質である。
一実施形態では、精製α−トロンビンは、均質な翻訳後修飾α−トロンビン種である。別の実施形態では、精製α−トロンビンは、未修飾α−トロンビン種である。別の実施形態では、精製α−トロンビンは、均質なα−トロンビングリコフォームである。
精製α−トロンビン調製物は、様々な翻訳後修飾α−トロンビンを含む溶液から単離された均質な翻訳後修飾種からなり得る。出発トロンビン溶液は、未修飾α−トロンビン種も含み得る。
単離した翻訳後修飾α−トロンビンは、グリコシル化、又はグリコシル化及びシアリル化され得る。グリコシル化及び/又はシアリル化の程度は、異なる種間で変動し得る。アンテナは、二分岐から五分岐まで、様々な程度で分岐し得る。シアル酸は、N−アセチルノイラミン酸又はN−グリコリルノイラミン酸などの、ノイラミン酸(5−アミノ−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−ウロソン酸)の誘導体のいずれかであり得る。
「α−トロンビン」は、未修飾α−トロンビン、均質又は不均質なα−トロンビン、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、均質にグリコシル化されたα−トロンビン若しくは均質にグリコシル化された及び均質にシアリル化されたα−トロンビン、又は均質にシアリル化されたα−トロンビン、並びに不均質な翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、不均質にグリコシル化された又はグリコシル化及びシアリル化されたα−トロンビンを含み得る。α−トロンビンは、哺乳類血液及び/又は血漿源、例えば、ヒト、ウシの血漿、若しくはブタ血漿源から、又は組み換え体源からのものであり得る。
いくつかの実施形態では、「別のタンパク質」/「他のタンパク質」は、例えば、製剤の安定化のためにトロンビン製剤中に含まれるヒト血清アルブミン(HSA)、又は任意の他のタンパク質である。「別のタンパク質」は、α、β、及びγ−トロンビンとは異なる。「別のタンパク質」は、プロトロンビン、免疫グロブリン、HSAなど、血液又は血漿に見られ得る多くのタンパク質であり得る。別のタンパク質は、タンパク質断片であり得る。いくつかの実施形態では、別のタンパク質は、ヒト血清アルブミン及び/又はウシ血清アルブミンなどの安定剤である。
「陰イオン交換クロマトグラフィー」という用語は、分子がそれらの正味電荷に基づき分離される分離技法を指す。陰イオン交換体は、陰イオン又は負に荷電された粒子を付着させる又は結合させるそれらの能力に対して命名される。陰イオン交換体は、当該技術分野において周知である(Practical Protein Chromatography edited by Kenney and Fowell Volume 11;Chapter 16,249〜258;Humana Press,1992)。陰イオン交換体では、樹脂は、正に荷電され、分子は、緩衝液pHがタンパク質の等電点を超える場合、結合する。「等電点」という用語は、分子が正味電荷を持たない場合のpHを指す。等電点を下回るpHを有する媒質では、分子は、正味正電荷を持ち、それを上回る場合、分子は、正味負電荷を持つ。「陰イオン交換体」及び「陰イオン交換マトリックス」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。
本明細書で使用される場合、「支持体」及び「樹脂」という用語は、担体、又は正荷電基を付着、固定化、担持、若しくは安定させるために使用される任意のマトリックスを含む。支持体は、Hermanson GT,Mallia AK and Smith PK 1992「Immobilization Affinity Ligand Techniques」pp.1〜45 Academic Press,Inc.San Diego,USAに記載されるように、当該技術分野において周知である。
本発明の方法を実施するための支持体は、正荷電基を含む分子、すなわち、正電荷を持つ化学基を含む分子に結合することができる任意の材料から作製され得る。固体支持体としては、マトリックス、カラム、カバースリップ、クロマトグラフィー材料、フィルタ、顕微鏡スライド、試験管、バイアル、瓶、ELISA支持体、ガラス若しくはプラスチック表面、クロマトグラフィー膜、シート、粒子、電磁ビーズを含むビーズ、ゲル、粉末、繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態では、支持体は、クロマトグラフィーで利用可能な材料の形態である。本発明の別の実施形態では、支持体は、クロマトグラフィー膜の形態である。支持体は、アガロース、セファロース、アクリルビーズ、セルロース、制御多孔性ガラス、シリカゲル、デキストランなどの親水性材料、疎水性材料、又はポリアクリルアミド若しくはポリスチレンがベースの材料など、有機人工/合成ポリマーを含み得る。典型的な材料/ポリマーは、Sephacryl(登録商標)(Pharmacia,Sweden)、Ultragel(登録商標)(Biosepara,France)TSK−Gel Toyopearl(登録商標)(Toso Corp.,Japan)、HEMA(Alltech Ass.(Deer−field,Ill.,USA)、Eupergit(登録商標)(Rohm Pharma,Darmstadt,Germany)の商品名下で市販されている。また、アズラクトン系材料(3M,St.Paul,Minn.,USA)。一実施形態では、支持体は、Agarose(登録商標)又はSepharose(登録商標)を含む。これらの材料は市販されている。典型的には、陰イオン交換樹脂又は陰イオン交換ポリマーは、通常、有機ポリマー基質から作製された微小ビーズの形態の不溶性マトリックス(又は支持構造体)である。
本方法のいくつかの実施形態では、ビーズは、約1〜約1000μm、又は例えば、5μmのサイズである。ビーズは、非多孔質又は多孔質の粒子であり得る。ビーズは、単分散(すなわち、実質的にサイズが均質)粒子であり得る。一実施形態では、ビーズは、1.7μm〜10μmの範囲である。
陰イオン交換体は、弱又は強陰イオン交換体であり得る。弱陰イオン交換体は、一般的に、弱塩基を含む交換体を指し、一方、強陰イオン交換体は、一般的に、より広いpH範囲にわたってその電荷を持続することができる強塩基を含む交換体を指す。
本方法のいくつかの実施形態では、正荷電基は、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアキルアンモニウム、四級アンモニウム、アルキル基、H+、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、アミノ官能基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
樹脂ビーズは、適切な媒質中に懸濁され得、得られたスラリーは、例えば、本明細書において、「カラム精製」と称されるクロマトグラフィーカラム中で使用され得る。別の方法としては、カラムは、充填済形態で購入することができる。
「カラム精製」及び「カラムクロマトグラフィー」は、一般的に、溶液(移動相)がある特定の流量で、充填された樹脂を含むカラムを通って移動することができる技法を指し、個々の成分又はいくつかの成分が樹脂(固定相)によって、すなわち、クロマトグラフィー材料によって吸着される。未結合材料は、混合物がそれを通過した後に、カラムのもう一方の側から回収することができる。ある特定の溶出条件を使用することにより、異なる化合物と固定相との間の結合を変更することが可能であり、それにより特定の精製化合物を1つずつカラムから溶出することにつながる。カラム精製は、Practical Protein Chromatography edited by Kenney and Fowell Volume 11;Chapter 16,249〜258;Humana Press,1992に記載されるように、当該技術分野において周知である。
典型的には、樹脂のスラリーがカラム内に注がれる。それが沈降した後、タンパク質混合物/溶液が適用される前に、カラムを緩衝液中で予備平衡化する。別の方法としては、充填済カラムを購入することができる。未結合タンパク質は、フロースルー及び/又は後続の緩衝液洗浄液に現れる。樹脂に結合するタンパク質は保持され、塩又はpH/極性調整により溶出され得る。「未結合材料」/「未結合画分」という用語は、典型的には、例えば、平衡化に使用された同じ緩衝液及び/又はトロンビン含有溶液をカラムに装填するのに使用された緩衝液(「結合緩衝液」)で装填カラムの洗浄後に廃棄された画分を指す。「不均一濃度溶液」は、溶出条件として使用される。「不均一濃度溶液」は、典型的には、例えば、カラムを装填、洗浄、及び/若しくは平衡化するために使用された溶液及び/若しくは条件とは異なる溶液及び/若しくは条件、並びに/又は前の工程で使用された溶液とは異なる溶液を指す。溶出条件は、移動相の組成におけるシフトを採用し、そのため、結合緩衝液によって創出された結合環境の要因が変化する。
一般的に、平衡化は、pH及び/又は伝導率及び/又はUV指数が安定するまで実施される。一実施形態では、平衡化は、緩衝液の≧5カラム容量で実施される。一実施形態では、平衡化は、緩衝液の1〜5カラム容量で実施される。
「溶出条件」という用語は、不均一濃度条件、例えば、カラムを装填及び/若しくは平衡化するために使用された溶液及び/若しくは条件とは異なる、並びに/又は前の工程に使用された溶液とは異なる溶液及び/若しくは条件の使用を指す。溶出工程(例えば、勾配溶出)の開始点及び/又は終了点で使用された溶液及び/又は条件は、洗浄、装填、及び/又は再生工程中に使用された溶液及び/又は条件と同一であり得る。「溶出条件」という用語は、塩濃度及び/又はpH/極性における変化が生じる勾配溶出も指し得る。溶出条件は、タンパク質及び分解ポリペプチドが分離され、差次的に溶出されるような条件である。本発明に従う方法は、不均一濃度溶液を用いた少なくとも1つの溶出工程を含む。溶出条件は、典型的には、塩濃度の増加及び/又はpH/極性の変化を伴う。溶出にpH勾配を使用することが効率的であることが本明細書において見出された。
本方法のいくつかの実施形態では、本方法は、1つのクロマトグラフィー工程、すなわち、単一クロマトグラフィー工程からなる。
典型的には、「一工程クロマトグラフィー方法」又は「1つのクロマトグラフィー工程」又は「一工程陰イオン交換クロマトグラフィー」という用語は、追加のクロマトグラフィー及び/又は分離工程(複数可)なしに、直接試料材料に対して陰イオン交換体により実施される、α−トロンビン、均質又は不均質なα−トロンビン、均質な翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、均質にグリコシル化されたα−トロンビン、又は均質にグリコシル化された及び均質にシアリル化されたα−トロンビン、未修飾α−トロンビン、不均質な翻訳後修飾α−トロンビン、例えば、不均質にグリコシル化された若しくはグリコシル化及びシアリル化されたα−トロンビン、並びに/又はトロンビン分解ポリペプチド、あるいはβ−トロンビンの精製及び/又は定量を可能にする方法を指す。
本発明の一実施形態では、カラム精製が利用される。別の実施形態では、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー方法が使用される。カラムは、繰り返し使用するために、溶液成分の溶出後に再生され得る。装填から再生までの合計実行時間は、30〜120分の範囲、例えば、約46、55分であり得る。一実施形態では、勾配分離は28.6分かかる。
本発明に従う分離は、差次的溶出条件を採用することにより実施される。「差次的溶出条件」という用語は、α−トロンビンの、その分解ポリペプチドから、及び/若しくは別のタンパク質からの分離、均質な翻訳後修飾α−トロンビン種の、トロンビン分解ポリペプチド、別のタンパク質、及び/若しくは不均質な翻訳後修飾α−トロンビン種からの分離、均質なα−トロンビングリコフォームの、不均質な翻訳後修飾α−トロンビン種、例えば、グリコシル化α−トロンビン種からの分離、均質なα−トロンビングリコフォームの、α−トロンビン分解ポリペプチド、別のタンパク質、若しくは不均質な翻訳後修飾α−トロンビン種のうちの少なくとも1つからの分離、並びに/又はβ−トロンビンの、α−トロンビン、γ−トロンビン、及び/若しくは別のタンパク質からの分離を可能にする条件を指す。
溶出条件は、塩濃度及び/又は溶出緩衝液のpHの変化を伴い得る。一実施形態では、差次的溶出条件は、pHの変化、例えば、pH勾配を含む。一実施形態では、本発明に従い使用される樹脂は、本発明に従うpH範囲で作業するのに適切である。一実施形態では、樹脂は、有機材料(メタノール及び/又はアセトニトリル)に曝すのに適している。
カラム容量は約0.03〜約53mLの範囲であり得る。本発明の一実施形態では、カラム容量は約4.1mL、例えば、4.15mLである。別の実施形態では、ピークの大半は1つのカラム容量内で収集される。
追加の実施形態では、本方法は、分析方法、例えば、物理化学分析方法であり、一工程クロマトグラフィー方法として実施され得る。
いくつかの実施形態では、本方法は、分離したα−トロンビン、β−トロンビン、及び/又はγ−トロンビン含有画分を特定する工程を更に含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、異なる翻訳後修飾α−トロンビンを特定する工程を更に含む。異なるグリコシル化は、質量分析、キャピラリー電気泳動を使用して、異なるHPLC方法を使用することにより、又は当該技術分野において既知の任意の他の方法により分析され得る。
一実施形態では、異なる画分/ピークは、試料セットを注入した後に視覚的に特定される。典型的には、ピークプロファイルは確実であり、したがって、各ピークは容易に特定することができる。別の実施形態では、異なるトロンビンピークは、α、β、及びγトロンビン標準品をHPLCに注入し、トロンビン溶液の相関ピークを特定することにより特定される。別の実施形態では、異なるトロンビンピークは、α、β、及びγトロンビン標準品に対して溶出したピークを実行する、並びに/又はα−、β−及びγ−トロンビンの既知の分子サイズに基づき、ウエスタンブロット分析により特定される。
本明細書において、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中のα−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法が提供され、本方法は、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、α−トロンビン画分を回収する工程と、α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。
本明細書において、不均質な翻訳後修飾α−トロンビンと、任意選択で、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中の均質な翻訳後修飾α−トロンビン(例えば、均質なグリコフォーム)を定量化するための一工程クロマトグラフィー方法が提供され、本方法は、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを溶液から分離する工程と、均質な翻訳後修飾α−トロンビン画分を回収する工程と、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。本明細書において、α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中のα−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法が提供され、本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド及び別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程を含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、1つ又は2つ以上の分解ポリペプチド、例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチドを定量化する工程を更に含む。
また、本明細書において、不均質な翻訳後修飾α−トロンビンと、任意選択でα−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中の均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法も提供され、本方法は、溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、不均質な翻訳後修飾α−トロンビンから、並びに任意選択で、α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程と、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。一実施形態では、溶液は、α−トロンビン分解ポリペプチド(β−トロンビン及び/又はγ−トロンビン)、及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、溶液は、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つを更に含み、本方法は、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つからも分離する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、α−トロンビン分解ポリペプチド及び別のタンパク質のうちの少なくとも1つから分離する工程を含む。
定量は、例えば、積分を計算することにより、例えば、クロマトグラムのピーク下面積を測定することにより実施することができる。ピークは、ピークを積分し、ピーク面積を溶出された総面積と比較すること、又はピーク高さを評価することのいずれかにより定量化することができる。面積又は高さは、標準品が使用される場合、絶対数に変換され得るか、又は相対ピーク面積が評価され得る。
本方法のいくつかの実施形態では、分離工程は、差次的溶出条件を適用する工程を含む。いくつかの実施形態では、溶出条件はpH勾配を適用することを含む。いくつかの実施形態では、溶出条件は直線pH勾配を適用することを含む。典型的には、直線pH勾配は、経時的に、徐々にかつ等しくpHを変更する勾配として定義される。いくつかの実施形態では、pH勾配は、約pH9.1〜約pH3.4である。いくつかの実施形態では、直線pH勾配は、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用して生成される。いくつかの実施形態では、溶離剤はアミンの混合物を含む。いくつかの実施形態では、アミン系緩衝液は、ピペラジン、トリエタノールアミン、ビス−トリスプロパン、1−メチルピペラジン、及びこれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液中の各アミンの濃度は、約1〜約100mMの範囲、例えば、約10〜約20mMの範囲又は約20mMである。pH勾配の創出に好適な、類似する特性を有する緩衝液、例えば、異なるpH値のリン酸緩衝液が使用され得る。本明細書に列記されないが、陰イオン交換体からのトロンビンの溶出に好適な緩衝系を構築するために、代替化合物を使用することができる。
結果は、AEX−HPLC及びpH9.1〜pH3.4の直線勾配を使用した溶出がHSA、アセチルトリプトファン、α−トロンビン分解ポリペプチド、及びα−トロンビン間で良好な分離能をもたらすことを示す。したがって、一実施形態では、pH9.1〜pH3.4の直線pH勾配溶出工程は差次的溶出条件として使用される。一実施形態では、HPLCは、0.80mL/分の流量で5分の装填工程、0.80mL/分の流量で20分の直線pH勾配溶出工程を含み、直線pH勾配は同じアミンの混合物を含む2つの溶出緩衝液を使用することにより生成され、緩衝液Aの濃度は90%から0%に減少し、緩衝液Bは10%から100%に増加し、緩衝液Bの増加は毎分4.5%である。別の実施形態では、HPLCは、0.80mL/分の流量で15分のカラム平衡化工程を含む。別の実施形態では、HPLCは、0.80mL/分の流量で5分のカラム再生工程を含む。
いくつかの実施形態では、溶出工程中の温度は約10℃〜約50℃の範囲であり、例えば、約25℃である。
いくつかの実施形態では、直線pH勾配溶出工程中の流量は、0.25、0.5、0.75、及び1mL/分である。結果は、α−トロンビンとその分解ポリペプチドとの間の分離能が流量の増加と共に増加し、最良の分離能が1.0mL/分の流量で達成されたことを示す。したがって、一実施形態では、直線pH勾配溶出工程中の流量は0.75mL/分より高く、例えば、約1.0mL/である。
結果は、より広いpH範囲のカラムからのタンパク質の溶出がピーク間のより良い分離をもたらすことを示す。したがって、一実施形態では、直線pH勾配溶出工程は、同じアミンの混合物及び濃度からなる2つの溶出緩衝液を使用することにより生成され、緩衝液Aの勾配濃度は100%から0%に減少し、緩衝液Bは0%から100%に増加し、緩衝液Bの増加は毎分約4.5%である。このような実施形態では、直線pH勾配溶出工程は約22分であり得る。
トロンビン溶液のカラム装填から、最大カラム再生工程(例えば、装填工程、直線勾配溶出工程、カラム再生工程、及びカラム平衡化工程を含む)までの合計実行時間は、30〜120分の範囲、例えば、46〜61分の範囲、例えば、約46、51、56、及び61分の合計実行時間であり得、溶出工程は20〜35分の範囲、例えば、約20、25、30、及び35分であり得る。結果は、56及び61分の合計実行時間で(30及び35分の長さの勾配溶出工程)、トロンビンピークに明確な領域で溶出する追加のピークがより短い実行時間と比較したときに分離されたことを示す。したがって、一実施形態では、25分より長い直線勾配溶出工程が実施される。
結果は、毎分4.5%、4.25%、4%、3.75%、及び3.5%の直線pH傾き勾配での溶出が異なるトロンビンピークの分離に有効であり、3.5%の増加が最良の分離プロファイルを有することを示す。傾き勾配は、1つを超える緩衝液が溶出緩衝液として使用されるとき、毎分の緩衝液Bのパーセントの増加により影響を受け得る。典型的には、毎分の緩衝液Bのパーセントの増加がより低いと、毎分の緩衝液Bのパーセントの増加がより高いときと比較して、傾きがより浅くなり、それによりタンパク質の溶出プロファイルに影響を及ぼす。したがって、いくつかの実施形態では、溶出は、毎分3.5〜4.5%の緩衝液Bの傾き、例えば、3.5%の傾きで、100%緩衝液A〜100%緩衝液Bの直線pH勾配で実施される。
いくつかの実施形態では、α−トロンビンを含む出発溶液(精製及び/又は定量化される)は、別のタンパク質を更に含み、実質的に分解ポリペプチドを欠く(例えば、溶液は総トロンビン量に対して10%w/w未満のβ−トロンビン及び/又はγ−トロンビンを含有する)。
いくつかの実施形態では、α−トロンビンを含む出発溶液は、分解ポリペプチド、例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンを更に含む。いくつかの実施形態では、α−トロンビンを含む出発溶液は、別のタンパク質を含まずに分解ポリペプチドを更に含む。
いくつかの実施形態では、α−トロンビンを含む出発溶液は、分解ポリペプチド(例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビン)、及び別のタンパク質を更に含む。
いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、α−トロンビンを更に含み、γ−トロンビン及び/又は別のタンパク質を欠く。いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、γ−トロンビンを更に含み、α−トロンビン及び/又は別のタンパク質を欠く。いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、別のタンパク質を更に含み、α−トロンビン及び/又はγ−トロンビンを欠く。いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、α−トロンビン及びγ−トロンビンを更に含み、別のタンパク質を欠く。いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、α−トロンビン及び別のタンパク質を更に含み、γ−トロンビンを欠く。いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、γ−トロンビン及び別のタンパク質を更に含み、α−トロンビンを欠く。いくつかの実施形態では、β−トロンビンを含む出発溶液は、α−トロンビン、γ−トロンビン、及び別のタンパク質を更に含む。
出発溶液は、不均質な翻訳後修飾α−トロンビン及び/又は未修飾のα−トロンビンを含み得る。いくつかの実施形態では、出発溶液は別のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、出発溶液は別のタンパク質を欠く。
溶液中のトロンビン濃度は、約2〜約10000IU/mL、約100〜約10000IU/mL、約2〜約4000IU/mL、約800〜約3000IU/mL、又は約800〜約1200IU/mLの範囲であり得、総タンパク質濃度は、約0.3〜約55mg/ml、約0.3〜約10mg/ml、又は約1〜約7mg/mlの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、1000IU/mlは0.3mg/mlに等しい。溶液は約6.9〜約7.1の範囲のpHであり得、5.0〜6.5mg/mLのヒト血清アルブミン(HSA)、及びアセチルトリプトファンなどの他の安定剤を含み得る。
α−トロンビンを含む溶液は、例えば、800〜1200IU/mlの範囲のトロンビン活性、約5.7〜6.5mg/mlの総タンパク質濃度、及びpH6.9〜7.1の5.0〜6.5mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)を有する、トロンビン製剤又は製剤化トロンビン(例えば、賦形剤及び/又は安定剤を含むトロンビン溶液)、例えば、医薬品を含む溶液であり得る。トロンビン製剤は、他の安定剤、例えば、アセチルトリプトファンを含み得る。一実施形態では、トロンビンの製剤に使用されるHSAは、安定剤であるアセチルトリプトファンを含む。
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、薬学的組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例としては、ヒトアルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム、及び注射用水が挙げられるが、これらに限定されない。溶液中のヒトアルブミンは約2〜約8mg/mlの範囲であり得る。マンニトールは約15〜約25mg/mlの濃度範囲であり得る。酢酸ナトリウムも約2〜約3mg/mlの範囲で溶液に加えられ得る。
一実施形態では、トロンビン溶液は、約3000IU/mlのトロンビン、約1mg/mlの総タンパク質濃度、pH6.9〜7.1の20mM酢酸ナトリウムを含む。別の実施形態では、トロンビン製剤は、800〜1200IU/mlの範囲のトロンビン、約5.7〜6.5mg/mlの総タンパク質濃度、及びpH6.9〜7.1の5.0〜6.5mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)を含む。
溶液は塩化カルシウムを含み得る。溶液中の塩化カルシウム濃度は、5.88mg/mlの濃度など、約2〜約6.2mg/mlの範囲、又は約5.6〜約6.2mg/mlの範囲であり得る。
トロンビン凝固活性は、例えば、欧州薬局方アッセイ(0903/1997)の手順によって直接、斜面上における移動距離を測定すること(又は落下試験モデル)によって、及び/又は当該技術分野において既知の任意の他の方法によって測定することができる。
トロンビン活性は、Diagnostica Stago ST4 Coagulation Analyzerなどの血栓形成を検出するために、機械的終点検出系を備えた凝固分析器、又はフィブリン血栓形成による濁度の変化を測定する装置を使用して決定され得る。
トロンビン活性を測定することができる別の方法は、トロンビンの発色性又は蛍光性ペプチド基質を使用することである。多くの場合、この方法では、可溶化トロンビンが過剰の発色性又は蛍光性基質と混合される。トロンビンは基質を切断し、分光光度計又は蛍光光度計で監視することができる発色団又はフルオロフォアを放出する。発色性又は蛍光性基質の例としては、それぞれ、β−Ala−Gly−Arg−p−ニトロアニリドジアセテート及びZ−Gly−Pro−Arg−AMC[Z=ベンジルオキシカルボニル;AMC=7−アミノ−4−メチルクマリン]が挙げられる。放出された発色団又はフルオロフォアの率はトロンビンの活性に相関し得る。
トロンビンは、血液組成物から調製され得る。血液組成物は、全血液、又は血液画分、すなわち、血漿などの全血液の画分であり得る。トロンビンの起源は、自家であることが可能であるため、患者自身の血液から、プールされた血液又は画分から製造される。トロンビン溶液は、ヒト又は哺乳動物の血漿から調製され得る。一実施形態では、トロンビンは、原核細胞における組み換え法により調製され得る。
一実施形態では、トロンビン溶液は、高純度ヒトトロンビンを含有する減菌溶液(pH6.8〜7.2)として製剤化され得る。トロンビン製剤は、ヒトトロンビン(800〜1200IU/mL)、塩化カルシウム、ヒトアルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム、及び注射用水を含有し得る。一実施形態では、トロンビンは、例えば本明細書に組み込まれる米国特許第5,143,838号に記載されるように、クリオ除去血漿からプロトロンビンをクロマトグラフィーにより精製した後、塩化カルシウムにより活性化することによって製造される。
別の態様では、本明細書において、α−トロンビン及び別のタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を含む製剤化トロンビン(例えば、医薬品)中のα−トロンビンを定量化するための一工程分析方法が提供され、本方法は、製剤化トロンビンを陰イオン交換体と接触させる工程と、差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、α−トロンビンを別のタンパク質から分離する工程と、α−トロンビンを定量化する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、差次的溶出条件は、例えば、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用することにより生成される、pH勾配を含む。いくつかの実施形態では、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー方法が使用される。いくつかの実施形態では、陰イオン交換体は、非多孔質粒子でできている。いくつかの実施形態では、製剤化トロンビンは、望ましくないα−トロンビン分解ポリペプチド(β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)を更に含み、本方法はα−トロンビンを分解ポリペプチドから分離する工程を含む。いくつかの実施形態では、製剤化トロンビンは分解ポリペプチドを含有しない。
本明細書において使用するとき、不定冠詞「a」及び「an」は、文脈が明確にそうでない旨を表さない限り、「少なくとも1つの」又は「1つ又は2つ以上の」を意味する。
本明細書において使用するとき、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、及びそれらの文法的変形は、記載される特徴、工程、又は構成要素を特定するものとして理解されるが、1つ又は2つ以上の追加的特徴、工程、構成要素、又はこれらの群の追加を排除するものではない。
「約」という用語が数値に先行するとき、「約」という用語は、±10%を示すことが意図される。
「トロンビン」又は「トロンビンポリペプチド」は、血液凝固カスケードの一部であり、フィブリノーゲンをフィブリンの不溶性鎖に変換すると共に、他の凝固関連反応を触媒する、哺乳類セリンプロテアーゼである。ヒトにおいて、プロトロンビンは、F2遺伝子によってコードされ、得られるポリペプチドは、補助因子(FVa)と共に第Xa因子又は他のセリンプロテアーゼにより凝固カスケード内でタンパク質分解により切断され、トロンビンを生成する。トロンビンは、とりわけ、いくつかの止血製品中の活性成分として機能する。例えば、フィブリンシーラントは、典型的にフィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を含む。両方の成分が混合されるとき(例えば、出血性創傷に適用されるとき)、トロンビンはフィブリノーゲンを切断し、止血特性を有するフィブリンポリマーが形成される。フィブリンシーラントは、典型的には、商業的な供給元又は特定の地域の輸血センターより入手される血液製剤である。フィブリン糊の調製に一般的に使用される成分は、フィブリノーゲン、トロンビン、第VIII因子、第XIII因子、フィブロネクチン、ビトロネクチン、及びフォンビルブランド因子(vWF)である。フィブリンシーラントは、典型的には、とりわけフィブリノーゲン、トロンビン、及び第XIII因子が関与する酵素反応によって形成される。「フィブリンシーラント」及び「フィブリン糊」という用語は交換可能である。
ヒトトロンビンは、ジスルフィド結合によって接合された2つのポリペプチド鎖A及びBからなる、295アミノ酸タンパク質である。α−トロンビンのB鎖は、フィブリノーゲン及び他のタンパク質に対するトロンビンのタンパク質分解活性に関与し、β−トロンビン及びγ−トロンビン分解ポリペプチドをもたらすその自己溶解活性に関与する。Arg106−Tyr107結合でのB鎖の切断は、70アミノ酸B1断片及び188アミノ酸β−トロンビ(B2)形態をもたらす。γ−トロンビンは、Lys190−Gly191結合でのβ−トロンビンB2鎖の更なる切断により生成される。典型的には、トロンビンのこれらのタンパク質分解形態は、未変性α−トロンビンよりもフィブリノーゲンをフィブリンの不溶性鎖に変換する能力を低減した。
ヒトα−トロンビンB鎖は、更に翻訳後修飾されて、例えば、グリコシル化により、未修飾形態と比較したとき、及び/又は翻訳後修飾の他の形態と比較したとき、おそらく、より強力かつ/又は安定したトロンビン形態をもたらす(他のグリコシル化タンパク質に関しては、Ricardo J.Sola and Kai Griebenow.「Glycosylation of Therapeutic Proteins:An Effective Strategy to Optimize Efficacy」.BioDrugs.2010;24(1):9〜21により示される)。成熟α−トロンビンは、その「重鎖」上に単一のN結合グリコシル化部位を有する。ノイラミン酸とも称されるシアル酸は、糖タンパク質の生物学的利用能、機能、安定性、及び代謝に重要である。α−トロンビンのグリコシル化形態(成熟した天然のヒトα−トロンビン、アミノ酸残基N416)は、1〜5個のシアル酸残基で更にシアリル化され得る。したがって、α−トロンビンは異なるシアリル化度/レベルを含有し得、例えば、α−トロンビンはグリコシル化部位でN−アセチルノイラミン酸(NANA)残基(シアル酸)の量が変動し得る。シアリル化度は、タンパク質の効力及び安定性に影響を及ぼし得る。典型的には、シアリル化レベルが高いほど、効力が高くなり、安定性が高くなる。
結果は、陰イオン交換クロマトグラフィーによるα−トロンビンの分離が異なる量のNANAを含有する多くのα−トロンビンピークの分離を可能にすることを示す。結果は、グリカンの末端からNANA残基を除去することができる酵素であるN−アセチルノイラミニダーゼを用いたトロンビンの処理がトロンビンの溶出プロファイルに影響を及ぼし、クロマトグラムの左側へのピークの全体的なシフト(未処理のトロンビンと比較したとき)をもたらすことを示す。したがって、本発明の方法は、例えば、NANA含量において差がある、異なるα−トロンビングリコフォームを精製及び/又は定量化するために使用され得る。一実施形態では、本発明に従う方法は、AEX−HPLCを使用して、NANAの実質的に同一のプロファイルを含む異なる均質なα−トロンビン種を精製/単離するために使用され得る。別の実施形態では、本発明に従う方法は、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、タンパク質溶液から、及び/又は不均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む溶液から精製/単離するために使用され得る。
「翻訳後修飾」は、タンパク質生合成における工程である。タンパク質は、mRNAをポリペプチド鎖に翻訳するリボソームによって作製される。ポリペプチド鎖は、それらが最終タンパク質産物に成熟する前に、翻訳後修飾、例えば、切断、折り畳み、及び他のプロセスを受ける。
翻訳後、アミノ酸の翻訳後修飾は、それを他の生化学官能基に付加すること、アミノ酸の化学性質を変更すること、又は構造を変更する(例えばジスルフィド架橋の形成)ことにより、タンパク質の機能の範囲を拡大する。修飾は、グリコシル化、リン酸化、ユビキチン化、メチル化、ニトロシル化、アセチル化、脂質化であり得る。典型的には、修飾はタンパク質の挙動、例えば、酵素の活性化及び不活性化を制御する。
典型的には、グリコシル化は、タンパク質の折り畳み、立体構造、分布、安定性、及び活性に対して顕著な作用を有する。グリコシル化は、核転写因子の単純な単糖修飾から高度に複雑な分枝状多糖変更にわたるタンパク質への糖部分の付加を含む。リン酸化は、細胞周期、成長、アポトーシス、及びシグナル伝達経路を含む、多くの細胞プロセスの調節において重要な役割を果たす。窒素への1炭素メチル基の移動又はアミノ酸側鎖への酸素の移動であるメチル化(それぞれ、N−及びO−メチル化)は、タンパク質の疎水性を増加させ、カルボン酸に結合したときに、負のアミノ酸電荷を中和することができる。ユビキチン化において、ユビキチンは、ユビキチンのC末端グリシンを介して標的タンパク質のリジンの
に付加される76個のアミノ酸からなる8−kDaポリペプチドである。ポリユビキチン化タンパク質は、ユビキチン化タンパク質の分解及びユビキチンの再利用を触媒する26Sプロテアソームにより認識される。ヒストンメチル化及び脱メチル化は転写のためのDNAの利用能に影響を及ぼすため、メチル化は、エピジェネティック調節の周知の機構である。アミノ酸残基は、修飾の作用を増加させるために、単一のメチル基又は複数のメチル基に抱合され得る。
「未修飾α−トロンビン」は、翻訳後修飾を受けなかったα−トロンビン、例えば、非グリコシル化及び/又はしたがって、非シアリル化α−トロンビンを指す。
「均質な翻訳後修飾α−トロンビン」は、例えば、グリコシル化及び/又はシアリル化レベルに関して、実質的に同一の形態のα−トロンビンを指す。異なるα−トロンビン分子間の均質性は、同じ翻訳後修飾、例えば、同じグリコシル化を有することによって表されるが、各トロンビン分子は異なるレベル及び/又は形態の他の修飾を有することができる。α−トロンビンは、α−トロンビンのグリコシル化及び/又はシアリル化形態であり得る。一実施形態では、均質なα−トロンビンは均質にグリコシル化されている。別の実施形態では、均質なα−トロンビンは均質にシアリル化されている。グリコシル化α−トロンビンは、0〜5個のシアル酸残基を有し得る。いくつかの実施形態では、均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、1、2、3、4、又は5個のシアル酸残基を有するシアリル化α−トロンビンである。
本明細書で使用される場合、α−トロンビン及び未修飾α−トロンビンの異なる/不均質な翻訳後修飾α−トロンビン集団は、「異なるα−トロンビン種」としても知られる。不均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、異なるグリコシル化及び/又はシアリル化形態を有し得る。
本明細書で使用される場合、「α−トロンビングリコフォーム」は、均質にグリコシル化及び/又はシアリル化されたα−トロンビン種を指す。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して調製されるα−トロンビンは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%同一性のレベルまで均質である。例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、又は100%未満であり、50〜55%、50〜60%、50〜65%、50〜70%、50〜75%、50〜80%、50〜85%、50〜90%、50〜95%、50〜99%、50〜100%、55〜60%、55〜65%、55〜70%、55〜75%、55〜80%、55〜85%、55〜90%、55〜95%、55〜99%、55〜100%、60〜65%、60〜70%、60〜75%、60〜80%、60〜85%、60〜90%、60〜95%、60〜99%、60〜100%、65〜70%、65〜75%、65〜80%、65〜85%、65〜90%、65〜95%、65〜99%、65〜100%、70〜75%、70〜80%、70〜85%、70〜90%、70〜95%、70〜99%、70〜100%、75〜80%、75〜85%、75〜90%、75〜95%、75〜99%、75〜100%、80〜85%、80〜90%、80〜95%、80〜99%、80〜100%、85〜90%、85〜95%、85〜99%、85〜100%、90〜95%、90〜99%、90〜100%、95〜99%、95〜100%同一性など、開示されるパーセントの間の任意の範囲を含む。
本開示は、α−トロンビン、例えば、均質な翻訳後修飾α−トロンビンの均質な集団/種を単離する方法を提供する。更に、α−トロンビンの精製した均質な集団、並びに単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む製剤が提供される。
また別の態様では、本明細書に開示される、精製α−トロンビン又は単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む製剤が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、精製α−トロンビン又は単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、本明細書に開示される方法により得られる。いくつかの実施形態では、精製α−トロンビン又は単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンは、本明細書に開示される方法により得ることができる。製剤のいくつかの実施形態では、α−トロンビンは、哺乳類の血漿源からのものである。いくつかの実施形態では、本製剤は、薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。本明細書に開示される製剤は、冷凍又は凍結乾燥させることができる。
精製α−トロンビン又は均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む製剤は、対象の表面に適用され得る。製剤は、フィブリノーゲンを含む溶液で適用され得る。製剤は、例えば、止血、組織固定、移植片固定、創傷治癒、及び吻合において使用されてもよい。
また別の態様では、本明細書に開示される、精製β−トロンビンを含む製剤が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、精製β−トロンビンは、本明細書に開示される方法により得られる。精製β−トロンビンを含む製剤は、対象の表面に適用され得る。製剤は、フィブリノーゲンを含む溶液で適用され得る。製剤は、例えば、止血、組織固定、移植片固定、創傷治癒、及び吻合において使用されてもよい。
「精製β−トロンビン」という用語は、典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィー方法を使用して、出発トロンビン含有溶液中に存在するα−トロンビン、γ−トロンビン、及び/又は別のタンパク質からのβ−トロンビンの単離後に得られたβ−トロンビン調製物を指す。「単離」とは、一般的に、「単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン」又は「単離したβ−トロンビン」に言及するとき、指定の分子又は化合物が、自然界で分子又は化合物が見られる生物全体から分離されており、別個のものである、及び/又は分子をその意図する目的のために用いることができるように、他の分子を十分に含まないことを意味する。
「薬学的に許容される担体又は希釈剤」は、製剤中の構成体と相溶性であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の合併症なしに、妥当な有益性/危険性の比に見合う、ヒト及び動物の組織と接触した使用に好適な試薬、化合物、材料、組成物、希釈剤を指す。本明細書に開示される製剤との使用に好適な薬学的に許容される担体は、液体、半固体、及び固体材料であり得る。担体は、スポンジ、フィルム、ギブス、外科用ドレッシング、又は包帯であり得る。
別の態様では、本発明に従う有効量の製剤を対象に適用する工程を含む、止血処置、封止、移植片固定、創傷治癒、抗接着、及び/又は吻合を必要とする対象にそれを行う方法が本明細書において提供される。「治療有効量」又は「有効量」という用語は、疾患、障害、又は状態を予防する又は処置する(ある症状又は全ての症状を緩和する)のに必要な用量を指す。有効量は、製剤の投与に応答した、疾患の経過中の任意の変化に基づいて判断され得る。有効用量は、対象の年齢及び体重、疾患及びその重症度(例えば、早期か末期か)、並びに当業者によって認識され得る他の要因に応じて変えることができる。
別の態様では、水性液体トロンビン製剤中のトロンビン活性の安定化における使用可能性について化合物をスクリーニングするための方法が本明細書において提供され、本方法は、所与の時間の間、試験化合物を、α−トロンビンを含む溶液と共にインキュベートする工程と、インキュベーション後、本明細書に開示される方法に従うα−トロンビン及び/又は分解ポリペプチド(例えば、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチド)を定量化する工程と、トロンビン活性の安定化における使用可能性を有する、1つ又は2つ以上の好適な試験化合物を特定する工程と、を含み、好適な化合物は、初期のα−トロンビン含量と比較して、約70%〜約100%のレベルでα−トロンビン含量を維持する化合物であり、かつ/又は試験化合物の不在下での分解ポリペプチドのレベルと比較したとき、約0%〜約30%まで分解ポリペプチドのレベルを低減する化合物である。
「トロンビン活性の安定化」とは、例えば、トロンビン自己消化活性の低減を指す。「トロンビン活性の安定化」とは、トロンビン水溶液、例えば、濃縮トロンビン溶液として、例えば室温で、1日間超、−18℃又はそれ以下で2年間超、及び/又は2〜8℃で1ヶ月間超保存したとき、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換活性を含む、異種基質に対するトロンビンの生物活性を著しく損なわせることなく、トロンビン活性を維持することを指す場合もある。「室温」は、約20℃〜約25℃、又は22℃〜約25℃の温度を含むように意図されている。「トロンビン活性」は、トロンビンが媒介する、タンパク質を含む異種基質の変換、例えば、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換に加えて、第VIII因子の第VIIIa因子への変換、第XI因子の第XIa因子への変換、第XIII因子の第XIIIa因子への変換、及び第V因子の第Va因子への変換を含むことを意味する。「異種基質」は、トロンビン以外の基質、好ましくはタンパク質基質である。いくつかの実施形態では、トロンビン活性は、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換を指す。
「安定化」という用語は、例えば、初期トロンビン活性と比較して、約70%〜約100%(例えば、約90〜100%)のレベルで、トロンビン液体製剤内のトロンビン活性/効力を維持することを意味する。
いくつかの実施形態では、化合物(複数可)は、トロンビンの自己消化を、約70%〜約100%、約70%〜約95%、約70%〜約90%、又は約70%〜約80%阻害し、約70%〜約100%、約70%〜約95%、約70%〜約90%、又は約70%〜約80%のトロンビン生物活性を保持する。
「試験化合物」又は「試験物質」という用語は、トロンビンを安定させる能力が本発明の方法により定義される、化学的に定義された化合物又は化合物の混合物である。これらの化合物又は化合物の混合物は、Dave A.Parkins and Ulla T.Lashmar「The formulation of biopharmaceutical products」.PSTT Vol.3,No.4 April 2000などに記載される、当該技術分野において既知の賦形剤(複数可)/安定剤であり得る。
「初期α−トロンビン含量」という用語は、例えば、凍結トロンビン製剤を解凍した直後、トロンビン粉末を再構築した直後、及び/又は自己分解を可能にする条件下(例えば、800IU/ml〜10,000IU/ml又はそれ以上のトロンビン濃度で、例えば、−18℃又はそれ以下で2年間超、2〜8℃で1ヶ月間超、及び/若しくは室温で1日間超保存)で液体トロンビンを保存する前のトロンビン液体製剤において測定されたフィブリノーゲンに対するトロンビンの活性を指す。
いくつかの実施形態では、インキュベーション時間は、水性トロンビン溶液、例えば、濃縮トロンビン溶液として、1日間超(例えば、室温で)、−18℃又はそれ以下で2年間超、及び/又は2〜8℃で1ヶ月間超である。
「分解ポリペプチド」という用語は、β−トロンビン及び/又はγ−トロンビンポリペプチドを指す。
「表面」という用語は、肉眼で見ることができる皮膚の外部表面、及び生物の内部構造の一部である内部体部位の表面を指し得る。外部表面として、顔の皮膚、喉、頭皮、胸部、背部、耳、首、手、肘、臀部、膝、及び他の皮膚部位が挙げられるが、これらに限定されない。内部体部位の例として、外部環境に曝される体腔又は解剖学的開口部、並びに鼻孔、唇、耳部、子宮、膣及び卵巣を含む生殖器領域、肺、肛門、脾臓、肝臓、及び心筋などの内臓が挙げられるが、これらに限定されない。表面は、出血性又は非出血性部位であってよい。
本明細書に開示される製剤及びキットは、組織及び臓器移植片固定のため、手術創傷を封止するため、止血を提供することを含む血管手術において、抗接着のため、並びに動脈、消化管、及び気管吻合のために、内部的及び外部的に使用することができる。
本明細書で使用される場合、「対象」はヒト及び哺乳類起源の動物を含む。一実施形態では、対象は、手術患者又は創傷患者である。
精製α−トロンビン及び/又は精製β−トロンビンは止血製品において使用され得る。α−トロンビン又はβ−トロンビンは、フィブリンシーラントを形成するために、フィブリノーゲンと組み合わせて使用され得る。
フィブリノーゲンは、初期血液組成物から調製され得る。血液組成物は、全血、又は血液画分、すなわち、血漿などの全血の産物であり得る。本発明の一実施形態では、フィブリノーゲン成分は、血漿由来のタンパク質溶液である生物学的有効成分(BAC)から構成され、これはトラネキサム酸及び/若しくはアルギニン、リジン、それらの薬学的に許容される塩などの安定剤、又はこれらの混合物を更に含み得る。BACは、クリオプレシピテート、特に濃縮クリオプレシピテート由来であり得る。
「クリオプレシピテート」という用語は、全血より調製した凍結血漿から得られる血液成分を指す。クリオプレシピテートは、凍結血漿を低温、典型的には0〜4℃の温度で解凍すると得ることができ、フィブリノーゲン及び第XIII因子を含有する沈殿物の形成をもたらす。沈殿物は、例えば、遠心分離によって回収し、120mM塩化ナトリウム、10mMクエン酸三ナトリウム、120mMグリシン、95mMアルギニン塩酸塩を含有する緩衝液などの好適な緩衝液に溶解することができる。BACの溶液は、例えば、米国特許第6,121,232号(B)及び国際公開第9833533号に記載されるように、第VIII因子、フィブロネクチン、フォンビルブランド因子(vWF)、ビトロネクチンなどを更に含み得る。好ましくは、BACの組成物は、トラネキサム酸及びアルギニン塩酸塩などの安定剤を含み得る。典型的には、BAC中のフィブリノーゲンの量は、約40〜約60mg/mLの範囲である。BACの溶液中のトラネキサム酸の量は、約80〜約110mg/mLであり得る。塩酸アルギニンの量は、約15〜約25mg/mLであり得る。
必要に応じて、溶液は生理学的適合性を有するpH値に緩衝される。緩衝液は、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び溶媒としての注射用蒸留水から構成され得る。グリシンは組成物中に約6〜約10mg/mLの量で存在してよく、クエン酸ナトリウムは約1〜約5mg/mLの範囲でよく、塩化ナトリウムは約5〜約9mg/mLの範囲でよく、塩化カルシウムは約0.1〜0.2mg/mLの濃度でよい。
別の実施形態では、BAC組成物中のプラスミノーゲン及びプラスミンの濃度を、例えば、米国特許第7,125,569号(B)、欧州特許第1,390,485号、及び国際公開第02095019号に記載される方法を使用して、15μg/ml又はそれ以下、例えば5μg/ml又はそれ以下のプラスミノーゲンにまで低下させる。本発明の別の実施形態では、BAC組成物中のプラスミノーゲン及びプラスミンの濃度を低下させるとき、組成物は、トラネキサム酸及びアプロチニンを含有しない。フィブリノーゲン溶液は、BAC2成分(EVICEL(登録商標))又は他の任意のフィブリノーゲン含有溶液、例えば、精製された組み換えフィブリノーゲン又はヒト血漿から産生されたクリオプレシピテートであってもよい。
フィブリノーゲンは、自家の、プール血漿を含むヒト、又は非ヒト源であり得る。フィブリノーゲンは、組み換え方法によって調製されるか、又は化学的に修飾され得ることも可能である。
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するものであるが、本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ本発明の完全な説明に寄与するものとして解釈すべきである。
全ての実施例に関して、本明細書では以下の用語が使用される。
「トロンビン溶液」は、pH6.9〜7.1の20mM酢酸ナトリウム中、約3000IU/mlのトロンビン、約1mg/mlの総タンパク質濃度のトロンビンの溶液を指す。
「トロンビン製剤」又は「製剤化トロンビン」は、800〜1200IU/mlの範囲のトロンビン活性、約5.7〜6.5mg/mlの総タンパク質濃度、及びpH6.9〜7.1の5.0〜6.5mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)を有する、製剤化トロンビン医薬品EVITHROM(登録商標)Thrombin、Topical(Human)(ETHICON,Inc.)、又はEVICEL(登録商標)Fibrin Sealant(ETHICON,Inc.)のトロンビン成分を指す。トロンビンの製剤に使用されるHSAは、安定剤であるアセチルトリプトファンを含む。
以下の全ての実施形態では、トロンビン溶液は、存在するトロンビンが製剤化されておらず(例えば、安定剤を含まない)、また高濃縮されておらず(約3000IU/ml)、したがって、トロンビンがより速く分解する傾向にある(「トロンビン製剤」中に存在するトロンビンと比較して)ため、トロンビン分解ポリペプチドを含む「対照試料」として使用された。
以下の実施例では、ツールは、α−トロンビン、その分解ポリペプチド、及び存在する場合、HSA間の分離を提供する、並びにα−トロンビン及びその分解ポリペプチドを定量化するそれらの能力について評価された。
一般に、「良好な分離」とは、ピーク間の「ベースライン分離能」と考えられる。「ベースライン分離能」は、分析物の溶出の代表として検出されたピークが重複しない、分析物の十分な分離を意味する、つまり、検出器の応答がピーク間のベースラインレベルに戻る。
「十分な分離」とは、溶出ピーク間に明確な違いが現れるが、検出器の応答がピーク間でベースラインレベルに完全に戻らない。
不十分な分離は、ピークの重複がクロマトグラムに現れるときと考えられる。
値で示されない限り、分離能/分離レベルは視覚的に評価された。数値が以下の実施例において列記される場合、クロマトグラフィーカラムが互いに成分を分離する程度である分離能(Rs)は、数学的に以下のように定義される:分離能は、選択されたピークとその前のピーク保持時間との間の差を1.18の定数で乗じた後、ピーク高さの50%のピーク幅の合計で除したものである。
2又はそれ以上の分離能レベルは、「ベースライン分離能」と考えられ、したがって、良好な分離を示し、ピークの良好な定量を可能にする。1.5又はそれ以上(2未満)の分離能は、分離及び定量化を可能にする「十分な分離」と考えられる。
クロマトグラフィー方法の有効性に関して、「分離」及び「分離能」という用語は交換可能に使用される。
実施例1:HSA、トロンビン溶液、及び製剤化トロンビンの逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)
タンパク質及びその断片を分離する標準的な手順は、逆相モードのHPLC装置を採用する。RP−HPLC方法の基本原理は、デュアルポンプ、極性カラム、及び検出器からなる装置である。タンパク質を装置に注入し、カラムに保持させる。有機溶媒の濃度を増加すると、カラムに保持されたタンパク質及びペプチドがカラムから解放され、検出器に溶出し、ここで、所与の時間で溶出したタンパク質の量に基づいて、応答が取得される。
以下の実施例では、C4カラム(Phenomenex,Jupiter,00G−4167−B0,4.6×250mm)を備えたRP−HPLCは、α−トロンビン、その分解ポリペプチド、及び存在する場合、HSA間を分離し、α−トロンビン及びその分解ポリペプチドを定量化するためのツールとして評価された。
HPLC分析は、100μLの注入ループを備えたWaters Alliance分離モジュールe2695を使用して実施され、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器2998(A190nm〜A450nmを走査する)は、50℃の一体型Watersカラムオーブンと共に使用された。
分離に使用された有機溶媒/溶液は、
緩衝液A:HPLCグレードの水+0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)、
緩衝液B:アセトニトリル+0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)であった。
異なる溶液勾配(経時的な緩衝液Aと緩衝液Bの比率)が評価された。
注入された試料は、a)30μLのトロンビン溶液、b)100μLの製剤化トロンビン、c)100μLの5mg/ml HSA、及びd)ブランク試料としての100μLのHPLCグレードの水であった。
全ての実験において、異なる注入容量は、トロンビン溶液中のトロンビンが製剤化トロンビンと比較したとき、より濃縮されたという事実に基づいた。
注入前に、全ての試料を、0.45μmのポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Millipore、より大きい粒子、例えば、凝集体を濾過するため)を通して濾過した。HPLCに注入するまで、試料を一体型試料コンパートメント中で、10℃で保存した。
図1は、溶出ピークの領域の代表的なクロマトグラムの拡大図を示す。
全ての図において、試料の描写は、クロマトグラムの開始に基づいて上から下に示され、注入された試料(上から下)は、クロマトグラム上に列記される。異なる試料の実行は、重なったオーバーレイとして1つの図に示される。
HSAとトロンビンとの主ピーク間に分離があるが、全体的に十分な分離は達成されなかった。カラムから溶出されたピークは非常に近接しているため、信頼できるピークの分離及び/又は定量はできなかった。
温度、カラム化学(異なる試験したRPカラムは以下に列記される)、移動相化学(メタノールなど)、及び勾配を含む条件を変更した、追加の実験が実施されたが、α−トロンビン及びその分解ポリペプチド、並びに/又は他のタンパク質、例えばHSA間の分離能は改善されなかった。
上述のように、分離及び定量化のために、以下の追加のRPカラムが試験された:C4,5μm,300A,4.6×250mm;Sepax BioC18,3μm,300A,4.6×150mm;LiChroCART,5μm,300A,4×250mm;Sepax C8,5μm,300A,4×250mm;Waters XBridge C4,3.5μm,300A,4×250mm。
したがって、RP−HPLCは、分解ポリペプチド及び/又はHSAの存在下でのα−トロンビンの「一工程」若しくは「単一カラム分離」及び/又は定量化が所望される場合、適切なツールではないと結論付けられた。
実施例2:陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)並びに直線塩勾配及びpH8.0を使用した溶出
タンパク質及びその断片を分離するための標準的な手順は、陰イオン交換モードのHPLC装置を採用する。AEX−HPLC方法の基本原理は、デュアルポンプ、極性カラム、及び検出器からなる装置である。タンパク質を装置に注入し、カラムに保持する。溶媒特性(例えば、塩濃度、pH)を変更すると、カラムに保持されたタンパク質及びペプチドがカラムから解放され、検出器に溶出し、ここで、所与の時間で溶出したタンパク質の量に基づいて、応答が取得される。
この実験において、陰イオン交換カラムを使用したHPLC分析は、α−トロンビン、その分解ポリペプチド、及び存在する場合、HSA間を分離し、α−トロンビン及びその分解ポリペプチドを定量化するためのツールとして評価された。
AEX−HPLC分析は、100μLの注入ループを備えたWaters Alliance分離モジュールe2695を使用して実施され、PDA検出器は、A220nm及びA280nmで使用され、一体型Watersカラムオーブンは25℃で使用された。使用されたカラムはSepax 403NP5−4625(Sepax Proteomix SAX−NP5 NP 4.6×250mm 403NP5−4625)であった。カラム(幅4.6mm及び長さ250mm)は、5μmのポリマービーズがベースである。ビーズは、四級アンモニウム化学を有し、非多孔質の単分散粒子である。
AEX−HPLCからの溶出に関して、緩衝液A:HPLCグレードの水中20mMトリス(pH8.0)と、緩衝液B:HPLCグレードの水中20mMトリス(pH8.0)及び1M NaClとの間の直線塩勾配が使用された。
注入された試料は、a)30μLのトロンビン溶液、b)100μLの製剤化トロンビン、c)100μLの5mg/ml HSA、及びd)ブランク試料としての100μLの緩衝液Aであった。
注入前に、全ての試料を、孔径0.45μmのPVDF膜を有する4mm注射器フィルタを通して濾過した。HPLCに注入するまで、試料を一体型試料コンパートメント中で、10℃で保存した。実行時間は、37分であり、使用された流量は0.8mL/分であり、圧力は約18000kPa(2600psi)であった。
図2は、溶出ピークの領域の代表的なクロマトグラムの拡大図を示す。
結果は、pH8.0の溶出緩衝液及び1M NaClまでの直線塩勾配を用いたAEX−HPLCが十分な分離を提供せず、かつ/又は信頼できる定量化を可能にしなかったことを示す。カラムから溶出されたピークは互いに非常に近接し、分離能は十分ではなかった。
実施例3:AEX−HPLC並びに直線塩勾配及びpH 6.0を使用した溶出
先行の実施例は、pH8.0及び直線塩勾配で、α−トロンビン、その分解ポリペプチド、及びHSA間の分離が限られたことを示した。
この実施例では、1M NaClまでの増加勾配でpH6.0のリン酸緩衝液を使用した溶出が、実施例2において記載される、カラム、装置、及び実験設定を使用して評価された。
AEX−HPLCからの溶出に関して、緩衝液A:HPLCグレードの水中20mMリン酸緩衝液(pH6.0)と、緩衝液B:HPLCグレードの水中20mMリン酸緩衝液(pH6.0)及び1M NaClとの間の直線塩勾配が使用された。
注入された試料は、a)30μLのトロンビン溶液、b)100μLの製剤化トロンビン、c)100μLの5mg/ml HSA、及びd)ブランク試料としての100μLの緩衝液Aであった。
図3は、異なる試料に関して得られた代表的なクロマトグラムを示す。
結果は、pH6.0の溶出緩衝液及び1M NaClまでの塩勾配を用いたAEX−HPLCが十分な分離を提供せず、かつ/又は信頼できる定量化を可能にしなかったことを示す。
クロマトグラムに見られるアセチルトリプトファンは、HSA製剤中に存在する安定剤である。
実施例4:AEX−HPLC並びに直線塩勾配及びpH7.5を使用した溶出
先行の実施例は、pH6.0(実施例3)及び8.0(実施例2)の溶出緩衝液を用いた分離が限られたことを示したため、pH7.5の溶出緩衝液を試験した。
HPLC分析及び条件は実施例2に記載されるように実施された。溶出は、NaClの増加直線勾配でpH7.5のトリス緩衝液を使用して実施された。使用された緩衝液は、緩衝液A:HPLCグレードの水中20mMトリス(pH7.5)及び緩衝液B:20mMトリス(pH7.5)及び1M NaClであった。
注入された試料は、a)30μLのトロンビン溶液、b)100μLの製剤化トロンビン、c)100μLの5mg/ml HSA、及びd)ブランク試料としての100μLの緩衝液Aであった。結果を図4(拡大図)に示す。結果は、pH7.5の溶出緩衝液及び1M NaClまでの塩勾配を用いたAEX−HPLCが十分な分離を提供せず、かつ/又は信頼できる定量化を可能にしなかったことを示す。
実施例5:AEX−HPLC並びに直線NaNO3塩勾配及びpH8.0を使用した溶出
NaClの代替えとして、NaNO3(硝酸ナトリウム)が、トロンビン分解ポリペプチドを、α−トロンビンから、及び溶液中の残りのタンパク質、例えば、HSAから分離するその能力に関して評価された。
直線塩勾配は、緩衝液A:HPLCグレードの水中20mMトリス(pH8.0)と緩衝液B:20mMトリス(pH8.0)/1M NaNO3との間で評価された。カラム、装置、及び実験設定は実施例2に記載される通りであった。
注入された試料は、a)30μLのトロンビン溶液、b)100μLの製剤化トロンビン、及びc)100μLの5mg/ml HSAであった。結果を図5に示す。上述のように、トロンビン溶液は分解ポリペプチドを含有した。
結果は、溶離剤としてのNaNO3を使用することにより、HSA、アセチルトリプトファン、及びトロンビン間の分離が大幅に増加されるが、十分な分離能がトロンビンとその分解ポリペプチド間で達成されなかったことを示す。
実施例6:AEX−HPLC及びpH9.1〜pH3.4の直線勾配を使用した溶出
AEX−HPLC樹脂から溶出した関連ピーク間の分離を達成するために塩勾配を使用する代替えとして、アミン系緩衝液を使用するpH勾配が評価された。緩衝液のアミンの性質により、検出はA280nmで実施された。
緩衝液A及びBは、20mMピペラジン(Sigma Aldrich,P45907)、20mMトリエタノールアミン(Sigma Aldrich,T9534)、20mMビス−トリスプロパン(Sigma Aldrich,B4679)、及び20mM 1−メチルピペラジン(Sigma Aldrich,13000〜1)を含有した。
緩衝液は、HClで滴定することにより、pH9.1(緩衝液A)及びpH3.4(緩衝液B)に調整された。合計実行時間は46分であった。全ての実験において、直線勾配は、工程2と3との間に実行され(下の表1を参照されたい)、直線勾配の実行時間は20分であった。工程2及び3の間に、材料はカラムから溶出される。
注入された試料は、a)30μLのトロンビン溶液、b)100μLの製剤化トロンビン、c)100μLの5mg/ml HSA、及びd)ブランク試料としての100μLの緩衝液Aであった。
緩衝液間の流量条件及び比率を表1に示す。溶出緩衝液のpHは、緩衝液AとBとの間の比率に依存する。一般に、典型的なHPLC実行は少なくとも以下の工程からなる:
平衡化したカラムに材料を装填する(工程1と2との間の時間、「装填」)。
この工程後、材料をカラムから溶出する(工程2と3との間、「直線勾配」)。これは、均一濃度で(装填及び/又は平衡化工程と比較したとき、緩衝液組成を変更することなく)、又は勾配(緩衝液の特性、例えば、塩濃度、極性/pHのうちの1つを変更する)を通して実施することができる。この実施例では、溶出は直線勾配を使用して実施された。
次の工程では、カラムが再生され得る(工程3と4との間、「カラム再生」)、つまり、カラムから任意の残存材料を溶出するために、変更した特性(塩濃度、極性、pH)の最高濃度で、残存材料に追加時間を与える。
最後の工程(工程5と6との間、「カラム平衡化」)は、カラムが追加分離に適する元の状態にカラムを戻すための平衡化工程である。
条件、カラム、及び装置は実施例2に記載される通りであった。
−工程1と2との間−装填−5分。
−工程2と3との間−直線勾配−20分。緩衝液Bの増加は毎分4.5%であった。
−工程3と4との間−「カラム再生」−5分。
−工程5と6との間−「カラム平衡化」−15分。
下の表全てにおいて、工程は同じ様式で特徴付けされ、番号付けされる。
図6は、注入された試料の代表的なクロマトグラムを示す。図7は、図6からのクロマトグラムのトロンビン溶出領域の拡大図である。
結果は、良好な分離能が、HSA、アセチルトリプトファン、及びトロンビン間で得られたことを示す。記載される条件で、いくつかのトロンビンピークが得られた(図6に最も良く示される)。以下の実施例では、トロンビンピークの分離能を更に強化するために、追加のパラメータが検査された。
実施例7:AEX−HPLC及び異なる流量の直線pH勾配を使用した溶出
異なるトロンビンピーク間でより良い分離を得るために、温度(実施例2〜7と同様25℃で)及びpH勾配を一定に維持したまま、異なる流量が評価された。
緩衝液A及びBは実施例6と同じであった。プログラム(下の表2を参照されたい)は4回操作された。各回で流量は異なった:0.25、0.5、0.75、及び1mL/分。
評価された勾配は下の表2に示される通りである。
注入された試料は、各試験した流量に関して、30μLのトロンビン溶液であった。
図8は、実施された流量スクリーンのクロマトグラムの拡大図を示す。
HSA、アセチルトリプトファン、及びトロンビン間の分離(目視検査)は、流量の増加による影響は受けなかった(データ示さず)。
α−トロンビンとその分解ポリペプチドとの間の分離能が流量の増加と共に増加することが示された(図8)。最良の分離能は1.0mL/分で達成され、例えば、より多くのピークが観察された。
実施例8:AEX−HPLC及び100%緩衝液AからのpH勾配を使用した溶出
この実施例では、分離分離能に対して、前の実施例と比較してより高いpHでAEX−HPLC方法を開始する作用が評価された。この目的のため、90%(表2に使用されるように)の代わりに、100%緩衝液A(表3を参照されたい)でのpH勾配が使用された。工程1、2、5、及び6において、緩衝液Aのパーセントが90であり、緩衝液Bのパーセントが10であったのみで、対照として、同じセットの試料が表3に記載される様式で実行された。
緩衝液A及びBは実施例6と同じであった。特に記載されない限り、実験設定は実施例6と同じであった。
ピーク間の分離能は視覚的に評価された。表3は勾配及び流量条件を示す。
結果(データ示さず)は、より高いpHで勾配を開始することにより、トロンビンピークのより良い分離能が得られたことを示した。したがって、より広いpH範囲のカラムからのタンパク質の溶出はピーク間のより良い分離をもたらす。
以下の実施例では、100%緩衝液AのpH勾配が使用された。
実施例9:AEX−HPLC及び勾配実行時間を増加した直線pH勾配を使用する溶出
異なるトロンビンピーク間のより良い分離/分離能を得るために、実施例6の実行時間と比較したとき、各々5分ずつ51、56、及び61分の合計実行時間(すなわち、工程2と3との間の時間が20から25、30から35分に増加した)への勾配増加(すなわち、時間増加は工程2と3との間であった)が評価された。46分の実行時間(実施例6と同様に)も試験された。分離能は各ピークからその前のピークまでの間で測定された。
特に記載されない限り、実験設定は表3に列記されるパラメータを使用する実施例8と同じであった。
トロンビン溶液(30μL)を注入した。緩衝液A及びBは実施例6と同じである。表4、5、6、及び7は、それぞれ、保持時間、並びに46、51、56、及び61分の合計実行時間で達成された分離能を示す。保持時間は、注入時と溶出の代表としてのピーク頂点(ピークの最も上方の点)検出との間の間隔である。
結果は、56及び61分の合計実行時間で(30及び35分の勾配の長さ)、トロンビンピークに明確な領域で溶出する追加のピークがより短い実行時間と比較したときに分離されたことを示す。
有利に、明確なトロンビン領域で溶出する追加のピークを得るために、25分より長い勾配の長さが使用され得る。
次の実施例では、56分の合計実行時間が使用された。
実施例10:分離分離能に対する直線勾配の作用
異なる直線傾き勾配は、トロンビンピークの分離を改善するそれらの能力について評価された(工程2と3との間に使用された勾配)。傾きは毎分の緩衝液Bのパーセントの増加により影響を受ける。毎分の緩衝液Bのパーセント増加が低いと、毎分の緩衝液Bのパーセント増加がより高いときと比較したとき、より浅い傾きとなり、それによりタンパク質の溶出プロファイルに影響を及ぼす。勾配が異なる出発pHを使用することにより影響を受けた実施例8とは対照的に、この実施例では、勾配は毎分異なる速度でpH値が増加することにより影響を受けた(開始点及び終了点のpHは全ての試料において等しい)。
緩衝液A及びBは実施例6と同じであった。特に記載されない限り、実験設定は実施例6と同じであった。トロンビン溶液(30μL)を注入した。緩衝液A(30μL)はブランクとして使用された(示さず)。
毎分の緩衝液Bのパーセント増加が評価された:4.5%、4.25%、4%、3.75%、及び3.5%。例えば、毎分4.5%のパーセントが使用されたとき、最初の1分後に毎分4.5%の緩衝液Bが得られ、2分後に毎分9%の緩衝液Bが得られ、3分後に毎分13.5%の緩衝液Bが得られるなど、毎分最大100%までの緩衝液Bが得られる。各分で、緩衝液Aは総溶液を100%にするように使用された。
典型的には、より浅い傾きは実行時間の増加となる。実行時間は次の通りであった:列記される緩衝液Bのパーセントに対して、それぞれ、48、49.5、51、52.7、及び54.6分。
図9は、評価された異なる勾配について得られたクロマトグラムを示し、目視検査は分離分離能を決定するために実施された。
結果は、全ての試験した傾きがトロンビンピーク間で満足な/十分な分離を示し、3.5%の増加が最良の分離を有することを示す(拡大図に見られる、データ示さず)。
実施例11:AEX−HPLCに市販の標準品を注入することによる異なるトロンビンピークの特定
クロマトグラムにおいてトロンビンピークを特定するために、1.0mL/分の流量を使用して、α、β、及びγトロンビン標準品に加えて、実施例7と同様にトロンビン溶液が注入された。
標準品(Haematological Industries;Human alpha−Thrombin、HTI HCT−0020、Human beta−Thrombin、HTI−0022、Human gamma−Thrombin、HTI−0021)は、注入前に0.3mg/mLに希釈された。30μLのトロンビン溶液、α−、β−、及びγ−標準品各々100μLがHPLCに注入された。緩衝液Aはブランクとして使用された。
緩衝液A及びBは、実施例7に記載されるのと同じであり、表2に示されるプログラムにおいて使用された。
図10は重複したクロマトグラムを示す。標準品について得られたピークに基づき、トロンビン溶液の相関するピークを特定し、それにより、α−トロンビンとその分解ポリペプチドβ及びγトロンビンとの間の分離が達成され得ることを確認することが可能であった。加えて、α−トロンビンがクロマトグラムにおいて複数のピークとして溶出することが特記された。
実施例12:定性的ツールとしてウエスタンブロットを使用するトロンビンピークの特定
前の実施例では、トロンビンピークの特定は、AEX−HPLCにおいて、市販のα、β、及びγトロンビン標準品の注入により実施された。
上記の結果を裏付けるために、この実施例では、トロンビンピークは注入されたトロンビン溶液から収集され、既知のサイズのα−トロンビン及びその分解ポリペプチド、β−並びにγ−トロンビンに基づく市販の標準品(実施例11と同様)に対して、ウエスタンブロットにより更に定性的に特定された。
十分な量のβ及びγトロンビンを得るために、HPLCに注入する前に、一晩など、室温で(約20〜25℃)少なくとも12時間、トロンビンの自己分解を強化する条件下で、トロンビン溶液をインキュベートした。実験設定は実施例10と同様であり、3.5%B/分の増加が使用された。60μLの試料(四つ組で)及び100μLの緩衝液Aが注入された。
明確なピーク(図11及び表8に示され、特定される)が4つの別個の実行から収集され(各ピークに存在するタンパク質量が少ないため)、プールされ(視覚的特定及び保持時間に従い)、回収量が大きいため凍結乾燥された。各凍結乾燥され、プールされたピークは再構築された(SDS−PAGEの可能な装填容量に限りがあるため、初期容量と比較して低い容量の水中で)。得られたプールされた試料を、SDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロースシート上に移し、ポリクローナル抗α−トロンビンに対して免疫ブロットした(データ示さず)。α、β、γの混合物を対照として使用した。
ピークはウエスタンブロットにおいて得たバンドの分子量に基づき、及び標準品のα、β、γミックスとの比較により特定された。
ウエスタンブロットにおいて得られた結果は、トロンビンの分解ポリペプチドはピーク3、5、及び5aにおいて溶出することを示す。類似する分子量を有するピーク1、2、4、6、及び8は、α−トロンビンとして特定された。「特定されず」と表示されるピークの相対面積は「特定された」ピークと比較して小さかった。
機構に束縛されるものではないが、α−トロンビンはHPLC−AEX系においていくつかのピークに分離され、おそらく、それらの正味電荷が異なるいくつかのα−トロンビン種に相当する。
実施例11及び12の結果は、有利に、α、β、γ−トロンビン、α−トロンビン種、並びにHSA(HSA分離のデータはこの実施例において示されない)間の完全な分離が毎分3.5%の緩衝液Bの傾きを用いた100%緩衝液A〜100%緩衝液BのAEX−HPLC直線pH勾配を使用して得ることができることを示す。緩衝液の組成は、実施例6に記載される通りである。
実施例13:HPLC−AEXにより分離されたα−トロンビン種の特定
本実施例の目的は、HPLC−AEXクロマトグラフィーにおいてα−トロンビンについて検出された複数のピークを特徴付けることであった。α−トロンビンの異なる種が異なる翻訳後修飾α−トロンビン形態によるものであるかを探求した。いくつかの翻訳後修飾がある。グリコシル化が1つの可能性である。グリコシル化はタンパク質の活性に影響を及ぼすため(Ricardo J.Sola and Kai Griebenow.「Glycosylation of Therapeutic Proteins:An Effective Strategy to Optimize Efficacy」.BioDrugs.2010;24(1):9〜21)、以下の実施例はグリコシル化に焦点を当てる。
ヒトα−トロンビンは、その「重鎖」上に単一のN結合グリコシル化部位を有する。HPLC−AEXクロマトグラフィーにおいて分離されたα−トロンビンがN結合ブリコシル化部位上の異なるシアリル化レベル、すなわち、グリコシル化部位に様々な量のN−アセチルノイラミン酸(NANA)(シアル酸)を含有するα−トロンビンに相当するという可能性を探求した。
この目的のため、トロンビン溶液は製造者の指示に従い(Sigma Aldrich,N2876)、N−アセチルノイラミニダーゼ処理を受けた。N−アセチルノイラミニダーゼ(NANase)は、NANA残基をグリカンの末端から除去することができる酵素である。これらの荷電糖残基を除去することにより、グリコシル化タンパク質の各々の全体的な電荷が同じレベルとなる。
次の工程では、NANase処理したトロンビン溶液を、実施例12に記載されるようにAEX−HPLC系に注入した。処理しなかったトロンビン溶液は対照として注入された。
結果(図12)は、NANaseによるトロンビンの処理が溶出プロファイルに影響を及ぼし、クロマトグラムの左側へのピークの全体的なシフト(未処理のトロンビン溶液と比較したとき)をもたらすことを示す。シアル酸残基の負電荷の損失により、所与のpHでのトロンビンのタンパク質正味電荷が増加し、それによりカラムからの溶出をより早くさせる。これらの結果をかんがみて、多くのピークがNANA含量の相違に起因すると結論付けることができる。
実施例14:タンパク質溶液からの均質な翻訳後修飾α−トロンビンの精製
前の実施例では、α−トロンビンが異なる量のNANA/シアリル化レベルを含有する明確なピークに分離され得ることが分かった。
この実施例では、目的は、AEX−HPLCを使用して、実質的に同一のプロファイルのNANAを含有する均質なα−トロンビン種を単離することであった。以下の条件を使用した。
使用されたカラムは、実施例2と同様、Sepax 403NP5−4625、幅4.6x長さ250mmであった。30μLのトロンビン溶液、100μLの製剤化トロンビン、及び100μLの緩衝液A(示さず)を注入した。
樹脂からのタンパク質の溶出は、20mMピペラジン(Sigma Aldrich,P45907)、20mMトリエタノールアミン(Sigma Aldrich,T9534)、20mMビス−トリスプロパン(Sigma Aldrich,B4679)、及び20mM 1−メチルピペラジン(Sigma Aldrich,13000〜1)を含むpH勾配を使用して実施された。緩衝液は、pH9.1(緩衝液A)及びpH3.4(緩衝液B)に調整された。
毎分3.5%の緩衝液Bの増加での直線pH勾配、及び表9に示される流量条件を使用した。
図13は、2つの溶出したトロンビン試料の完全な長さのクロマトグラムを示す。図14は、α−トロンビン種及び分解ポリペプチド溶出領域の拡大図を示す。
製剤化トロンビンのクロマトグラムに関して、HSA、いくつかの荷電α−トロンビン種(矢印で示される)、及びアセチルトリプトファン間の完全な分離が達成され得ることが分かる。
トロンビン溶液のクロマトグラムに関して、いくつかの荷電α−トロンビン種(矢印で示される)と分解ポリペプチドとの間の完全な分離が達成され得ることが分かる。
これらの結果は、異なる均質なα−トロンビン種がトロンビン含有試料において互いから分離され得ることを示す。また、結果は、分離の質が、均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、タンパク質溶液及び/又は不均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む溶液から精製することを可能にすることを示す。
実施例15:均質な翻訳後修飾α−トロンビン及びトロンビン分解ポリペプチドの定量化
先行の実施例は、NANAの均質な含量を含有するα−トロンビンピークがAEX−HPLCにより十分に分離され得ることを示す。ピークの完全な分離は、関連する分離されたピークの積分を計算することにより、トロンビン含有溶液中のα、β、γトロンビン変異型の定量化を可能にする(表10を参照されたい)。AEX−HPLCに使用された条件は前の実施例に記載される通りであった。
*面積はソフトウェアによって計算されたピーク下積分面積を指す。
**計算されたピーク合計面積からの相対面積。
全てのα−トロンビン種及び分解ポリペプチドの定量が得られたことが示された。
本方法は、有利に、溶液中に存在する全てのタンパク質からのα−トロンビンの量を定量化するため、及び/又は好適な製剤をスクリーニングするためにも使用され得る。
また、結果は、本発明の方法を使用して、1種のβ−トロンビンが精製され、定量化され得ることを示す。
本明細書で様々な実施形態について記載したが、それらの実施形態に対する多くの修正及び変形が実施されてもよい。また、材料が特定の構成要素に関して開示されているが、他の材料が使用されてもよい。以上の説明及び以下の特許請求の範囲は、そのような修正及び変形を全て包含することが意図される。
全体又は部分的に、参照によって本明細書に組み込まれるとされるいずれの特許、刊行物、又はその他の開示物も、組み込まれる内容が既存の定義、記載、又は本開示に記載されているその他の開示物と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれるものとする。したがって、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。
本出願のいずれの参照文献の引用又は指定も、このような文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
節の表題は、ここでは本明細書の理解を容易にするために用いられ、必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。
〔実施の態様〕
(1) α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中の前記α−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法であって、
前記溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、前記α−トロンビンを、前記α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は前記別のタンパク質のうちの前記少なくとも1つから分離する工程と、
前記α−トロンビンを定量化する工程と、を含む、一工程クロマトグラフィー方法。
(2) 1つ又は2つ以上の分解ポリペプチドを更に定量化する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記分離したα−トロンビンが、均質な翻訳後修飾α−トロンビンであり、それにより均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化する、実施態様1又は2に記載の方法。
(4) 前記均質な翻訳後修飾α−トロンビンが、均質なグリコシル化α−トロンビンであり、それにより均質なグリコシル化α−トロンビンを定量化する、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記分離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンが、均質なシアリル化α−トロンビンであり、それにより均質なシアリル化α−トロンビンを定量化する、実施態様4に記載の方法。
(6) 前記溶液が前記別のタンパク質を含み、前記別のタンパク質がヒト血清アルブミンである、実施態様1〜5のいずれかに記載の方法。
(7) 不均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む溶液中の均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法であって、
前記溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、前記均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、前記不均質な翻訳後修飾α−トロンビンから分離する工程と、
前記均質な翻訳後修飾α−トロンビンを定量化する工程と、を含む、一工程クロマトグラフィー方法。
(8) 前記溶液が、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つを更に含み、前記方法が、前記均質な翻訳後修飾α−トロンビンを、前記α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は前記別のタンパク質のうちの前記少なくとも1つからも分離する工程を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記差次的溶出条件が、pH勾配を含む、実施態様1〜8のいずれかに記載の方法。
(10) 前記pH勾配が、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用することにより生成される、実施態様9に記載の方法。
(11) 前記陰イオン交換体が、非多孔質粒子でできている、実施態様1〜10のいずれかに記載の方法。
(12) 前記クロマトグラフィー方法が、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー方法である、実施態様1〜11のいずれかに記載の方法。
(13) α−トロンビンを、前記α−トロンビンと、α−トロンビン分解ポリペプチド又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液から精製するための方法であって、
前記溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、前記α−トロンビンを、前記α−トロンビン分解ポリペプチド及び/又は前記別のタンパク質のうちの前記少なくとも1つから分離する工程と、
α−トロンビン画分を回収する工程と、
それにより精製α−トロンビンを得る工程と、を含む、方法。
(14) 前記α−トロンビンが、ヒト血液又は血漿源からのものである、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記回収したα−トロンビン画分が、均質な翻訳後修飾α−トロンビンであり、それにより精製した均質な翻訳後修飾α−トロンビンを得る、実施態様13又は14に記載の方法。
(16) 前記回収した均質な翻訳後修飾α−トロンビンが、均質なグリコシル化α−トロンビンであり、それにより精製した均質なグリコシル化α−トロンビンを得る、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記回収した均質な翻訳後修飾α−トロンビンが、均質なシアリル化α−トロンビンであり、それにより精製した均質なシアリル化α−トロンビンを得る、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記溶液が前記別のタンパク質を含み、前記別のタンパク質がヒト血清アルブミンである、実施態様13〜17のいずれかに記載の方法。
(19) 前記方法が、1つのクロマトグラフィー工程からなる、実施態様13〜18のいずれかに記載の方法。
(20) 均質なα−トロンビングリコフォームを、不均質なグリコシル化α−トロンビン種を含む溶液から精製するための方法であって、
前記溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、前記均質なα−トロンビングリコフォームを前記不均質な種から分離する工程と、
均質なα−トロンビングリコフォーム画分を回収する工程と、
それにより精製した均質なα−トロンビングリコフォームを得る工程と、を含む、方法。
(21) 前記精製した均質なα−トロンビングリコフォームを更に定量化する、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記差次的溶出条件が、pH勾配を含む、実施態様13〜21のいずれかに記載の方法。
(23) 前記pH勾配が、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用することにより生成される、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記陰イオン交換体が、非多孔質粒子でできている、実施態様13〜23のいずれかに記載の方法。
(25) 単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン。
(26) 前記α−トロンビンが、ヒト血漿源からのものである、実施態様25に記載の単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン。
(27) 均質にグリコシル化されたα−トロンビンである、実施態様25又は26に記載の単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン。
(28) 前記α−トロンビンが、1つの特定のグリコフォームで表される、実施態様25〜27のいずれかに記載の単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン。
(29) 均質にシアリル化されたα−トロンビンである、実施態様28に記載の単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン。
(30) 実施態様13〜24のいずれかに記載の方法により得ることができる精製α−トロンビン。
(31) 実施態様25〜29のいずれかに記載の単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビン及び/又は実施態様30に記載の精製α−トロンビンを含む、製剤。
(32) 止血処置、封止、移植片固定、創傷治癒、抗接着、及び/又は吻合のための、実施態様31に記載の製剤の使用。
(33) 第1の成分として、実施態様20〜24のいずれかに記載の方法により得ることができる精製した均質なα−トロンビングリコフォーム、及び/又は実施態様25〜29のいずれかに記載の単離した均質な翻訳後修飾α−トロンビンを含む容器を含む、キット。
(34) β−トロンビンと、α−トロンビン、γ−トロンビン、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液中の前記β−トロンビンを定量化するための一工程クロマトグラフィー方法であって、
前記溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件により、陰イオン交換クロマトグラフィーで、前記β−トロンビンを、前記α−トロンビン、γ−トロンビン、及び/又は前記別のタンパク質のうちの前記少なくとも1つから分離する工程と、
前記β−トロンビンを定量化する工程と、を含む、一工程クロマトグラフィー方法。
(35) 前記クロマトグラフィー方法が、陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー方法である、実施態様34に記載の方法。
(36) β−トロンビンを、前記β−トロンビンと、α−トロンビン、γ−トロンビン、又は別のタンパク質のうちの少なくとも1つとを含む溶液から精製するための方法であって、
前記溶液を陰イオン交換体と接触させる工程と、
差次的溶出条件を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、前記β−トロンビンを、前記α−トロンビン、γ−トロンビン、及び/又は別のタンパク質のうちの前記少なくとも1つから分離する工程と、
β−トロンビン画分を回収する工程と、
それにより精製β−トロンビンを得る工程と、を含む、方法。
(37) 前記差次的溶出条件が、pH勾配を含む、実施態様34〜36のいずれかに記載の方法。
(38) 前記pH勾配が、アミン又はアミンの混合物を含む溶離剤を使用することにより生成される、実施態様37に記載の方法。
(39) 前記陰イオン交換体が、非多孔質粒子でできている、実施態様34〜38のいずれかに記載の方法。
(40) 実施態様36〜39のいずれかに記載の方法により得ることができる精製β−トロンビン。
(41) 単離したβ−トロンビン。
(42) 実施態様40に記載の精製β−トロンビン及び/又は実施態様41に記載の単離したβ−トロンビンを含む、製剤。
(43) 止血処置、封止、移植片固定、創傷治癒、抗接着、及び/又は吻合のための、実施態様42に記載の製剤の使用。
(44) 第1の成分として、実施態様40に記載の精製β−トロンビン及び/又は実施態様41に記載の単離したβ−トロンビンを含む容器を含む、キット。
(45) 水性液体トロンビン製剤中のトロンビン活性の安定化における使用可能性について化合物をスクリーニングするための方法であって、所与の時間の間、試験化合物を、α−トロンビンを含む溶液と共にインキュベートする工程と、前記インキュベーション後、実施態様1、2、6、又は9〜12のいずれかに記載のα−トロンビン及び/又は分解ポリペプチドを定量化する工程と、トロンビン活性の安定化における使用可能性を有する1つ又は2つ以上の好適な試験化合物を特定する工程と、を含み、好適な化合物が、初期のα−トロンビン含量と比較して、約70%〜約100%のレベルで前記α−トロンビン含量を維持し、かつ/又は前記試験化合物の不在下の分解ポリペプチドのレベルと比較したとき、約0%〜約30%まで分解ポリペプチドのレベルを低減する化合物である、方法。