JP2021136998A - 細胞含有容器、被験物質の評価方法及び細胞含有容器の製造方法 - Google Patents

細胞含有容器、被験物質の評価方法及び細胞含有容器の製造方法 Download PDF

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大輔 高木
秀和 ▲柳▼沼
秀和 ▲柳▼沼
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Tatsuya Masuko
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Tomoaki Nakayama
智明 仲山
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敦史 宮岡
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武尊 鈴木
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Abstract

【課題】細胞の密度上昇による細胞死、細胞の剥離等を抑制することができる細胞含有容器を提供する。【解決手段】細胞を収容した少なくとも1つの凹部を有する細胞含有容器であって、前記細胞は前記凹部の底面に接着しており、前記底面の第1の領域の細胞密度が250〜20,000個/mm2であり、前記第1の領域の周囲を取り囲む第2の領域の細胞密度が250個/mm2未満である、細胞含有容器。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞含有容器、被験物質の評価方法及び細胞含有容器の製造方法に関する。
近年、創薬開発では、臨床試験段階での開発中断が問題となっている。これは、薬物動態試験段階での動物種差に起因する。これまで、前臨床段階における薬物動態試験では、ラット、イヌ、サル等の動物を用い、薬物の体内動態を予測してきた。しかしながら、ヒトを用いる臨床試験では、その予測が事実上成立しないことが分かってきている。
また、動物実験の3R(「代替(Replacement)」、「削除(Reduction)」、「改善(Refinement)」)の観点からも、動物実験を代替する試験方法の開発が求められている。
このような状況のもと、ヒトにおける薬物の試験をヒト細胞を用いて行う検討が進められている。ヒト細胞としては、初代細胞、induced Pluripotent Stem(iPS)細胞、embryonic stem(ES)細胞、iPS細胞又はES細胞から分化した細胞等が用いられる。これらの細胞は高価であるため、より少ない細胞数で信頼性の高い試験を行う技術の開発が求められている。
ヒト試料を用いた薬物の試験において、培養皿として、樹脂製シャーレや、6ウェル、12ウェル、48ウェル、96ウェルのプレート等が用いられている。一般に、これらのプレートは、全体の大きさがほぼ同じであり、ウェル数が大きくなるほど、1ウェルのサイズが小さくなる。この1ウェルが1培養皿に相当する。また、近年の微量化への流れから、更に小口径で多数の培養皿からなる384ウェルプレートも使用され始めている。一般的に、これらの培養皿の底部は平坦な平板状であり、底部の表面を培養面として用いる。
従来、健常者由来、患者由来の生細胞を培養皿に播種し、機能を比較するアッセイを行うことで、患者間の比較検討を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、培養皿の底部にマイクロ空間を有し、複数の異なるドナーに由来する生細胞が凝集している細胞培養キットが記載されている。また、特許文献2には、間葉系幹細胞を神経系の各細胞に分化誘導し、健常者、患者間の比較を行ったことが記載されている。
しかしながら、従来の細胞含有容器は、細胞の接着領域が容器の培養面全体になっている。容器の培養面全体に細胞が接着していると、培養面端部における細胞の密度上昇による細胞死が生じる場合がある。また、容器の培養面全体に細胞が接着していると、細胞がコンフルエントに増殖した時に発生する張力等により細胞が培養面から剥離する場合がある。この結果、特に顕微鏡観察、蛍光強度等の光学的分析において、試験結果の信頼性が低下する場合がある。
本発明は、細胞の密度上昇による細胞死、細胞の剥離等を抑制することができる細胞含有容器を提供することを目的とする。
本発明は、細胞を収容した少なくとも1つの凹部を有する細胞含有容器であって、前記細胞は前記凹部の底面に接着しており、前記底面の第1の領域の細胞密度が250〜20,000個/mmであり、前記第1の領域の周囲を取り囲む第2の領域の細胞密度が250個/mm未満である、細胞含有容器を提供する。
本発明によれば、細胞の密度上昇による細胞死、細胞の剥離等を抑制することができる細胞含有容器を提供することができる。
一実施形態に係る細胞含有容器の構造を説明する模式図である。 一実施形態に係る細胞含有容器の構造を説明する模式図である。 一実施形態に係る細胞含有容器の構造を説明する模式図である。 インクジェットヘッドの構成を説明する模式断面図である。 実験例1における細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例1における細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例1における細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例1における細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例2において測定した、iPS細胞の細胞密度と神経細胞への分化効率との関係を示すグラフである。 実験例3で使用した枠部材を説明する模式断面図である。 実験例3で使用した枠部材を説明する模式断面図である。 実験例3で培養した細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例3で培養した細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例4における細胞接着のばらつきの評価方法を説明する図である。 実験例4における細胞接着のばらつきの評価方法を説明する図である。 実験例4における細胞接着のばらつきの評価方法を説明する図である。 実験例4において、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。 実験例4において、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。 実験例4において、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。 実験例4において、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。 実験例4において、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。 実験例4において、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。 実験例4において計算した細胞の凝集度を示すグラフである。 実験例4で培養した細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例5で細胞を播種したMEAプレートのウェルの顕微鏡写真である。 実験例5で細胞を播種したMEAプレートのウェルの顕微鏡写真である。 実験例6の結果を示すグラフである。 実験例6の結果を示すグラフである。 実験例7の結果を示すラスタープロットである。
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
[細胞含有容器]
1実施形態において、本発明は、細胞を収容した少なくとも1つの凹部を有する細胞含有容器であって、前記細胞は前記凹部の底面に接着しており、前記底面は第1の領域と、前記第1の領域の周囲を取り囲む第2の領域とを有し、前記第1の領域の細胞密度は250〜20,000個/mmであり、前記第2の領域の細胞密度は250個/mm以下である、細胞含有容器を提供する。
図1は、本実施形態の細胞含有容器を説明する模式図である。図1に示すように、細胞含有容器100は、細胞Cを収容した凹部110を有している。細胞Cは凹部110の底面120に接着している。底面120は、細胞の培養面であり、第1の領域121と、第1の領域121の周囲を取り囲む第2の領域122とを有している。第2の領域122は凹部110の底面120の端部(辺縁部)に接している。第1の領域121における細胞Cの密度は250〜20,000個/mmであり、500〜10,000個/mmであることが好ましく、5,000〜10,000個/mmであることがより好ましい。また、第2の領域における細胞Cの密度は250個/mm未満である。
薬物スクリーニング等において、第1の領域121における細胞Cの密度が上記の範囲にあることにより、例えばiPS細胞の高い分化効率を維持することができる。また、第1の領域121における細胞Cの密度が上記の範囲にあることにより、細胞の成熟化が進行する。画像解析による評価を行う場合においては、500〜1,000個/mmに抑えることにより細胞が重なりあうことがほとんどなく、効率よい評価が可能になる。
実施例において後述するように、本実施形態の細胞含有容器によれば、細胞の接着領域を培養面の端部(辺縁部)以外に限定することにより、細胞培養環境下におけるインキュベート時に生じる培養液の対流の乱れの影響を低減することができる。その結果、細胞の密度上昇による細胞死を抑制することができる。
また、第2の領域における細胞Cの密度が低いため、細胞がコンフルエントに増殖した時に発生する張力等により細胞が培養面から剥離することを抑制することができる。
また、培養面の中央部分(第1の領域121)には、信頼性の高い試験を行うのに必要な細胞密度で細胞が存在している。このため、最小限の細胞数で信頼性の高い試験を行うことができる。これにより、貴重な細胞の使用量を低減することができる。また、コスト的にも有利になる。
本実施形態の細胞含有容器は、凹部の開口部を密閉するシール部材を更に備えていてもよい。凹部の開口部が密閉されていることにより、細胞含有容器を輸送することが容易になる。
本実施形態の細胞含有容器において、細胞は、初代細胞であってもよいし、樹立された細胞株であってもよいし、iPS細胞であってもよいし、iPS細胞から分化した細胞であってもよいし、Embryonic Stem(ES)細胞であってもよいし、ES細胞から分化した細胞であってもよい。また、初代細胞は分化した細胞であってもよいし、幹細胞であってもよい。また、細胞は、当該幹細胞から分化した細胞であってもよい。細胞は、接着細胞であることが好ましい。また、細胞はヒト由来の細胞に限られず、マウス、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、サル等の細胞であってもよい。細胞としては、なかでも、患者由来又は健常者由来の、初代細胞、幹細胞又はiPS細胞若しくは前記iPS細胞から分化した細胞であることが好ましい。
従来、薬剤のスクリーニング等において、入手困難な神経細胞、心筋細胞等は動物の細胞を用いて試験を行っていた。これに対し、近年、ES細胞、iPS細胞等の様々な細胞に分化できる幹細胞を作製又は入手できるようになったことから、ヒト由来の細胞を用いて試験を行うことが可能になった。特定の疾患を有する患者由来の幹細胞を分化させることにより、疾患の一部を体外で再現することができる。そこで、このような細胞を収容した細胞含有容器によれば、動物実験を代替し、より正確な創薬開発等を行うことができる。
本実施形態の細胞含有容器は、複数の凹部110を有しており、各凹部110は、それぞれ同一の患者又は同一の健常者に由来する細胞を収容しており、複数の凹部110は、互いに異なる患者又は異なる健常者に由来する細胞を収容した凹部110を含んでいてもよい。
図2Aは、本態様の細胞含有容器を説明する斜視図である。図2Bは、図2Aのb−b’線における矢視断面図である。
図2Bの例では、細胞含有容器200は、複数の凹部110(凹部110a〜110f)を有している。そして、凹部110に収容される細胞は、同一の患者又は同一の健常者に由来するものである。すなわち、1つの凹部110に収容される細胞の由来は同一である。例えば、凹部110a及び凹部110fには、由来を同一にする細胞Cが収容されている。また、凹部110bには由来を同一にする細胞Cが収容されている。また、凹部110cには由来を同一にする細胞Cが収容されており、以下同様である。
複数の凹部110は、互いに異なる患者又は異なる健常者に由来する細胞を収容した凹部を含んでいてもよい。例えば、細胞Cは健常者Aに由来する細胞であり、細胞Cは患者Aに由来する細胞であり、細胞Cは患者Bに由来する細胞であってもよい。
ここで、各凹部に収容された細胞の全てが互いに異なる患者又は健常者に由来していてもよいし、由来を同一にする細胞が収容された凹部が複数存在していてもよい。図2Bの例では、凹部110aと凹部110fには、いずれも健常者Aに由来する細胞Cが収容されている。
このような細胞含有容器を用いて、健常者及び複数の患者に対する薬物の影響を評価し、比較すること等が可能である。
本実施形態の細胞含有容器において、下記式(1)により計算される、第1の領域の細胞の凝集度が100%以下であることが好ましい。
凝集度(%)=A/B×100 …(1)
[式(1)中、Aは各細胞のボロノイ領域の面積の標準偏差を示し、Bは各細胞のボロノイ領域の面積の平均値を示す。ここで、細胞のボロノイ領域は、細胞の核と当該細胞に隣接する細胞の核との間に垂直二等分線を引いた場合に、当該垂直二等分線で囲まれた領域を意味する。]
ボロノイ領域については後述する。実施例において後述するように、細胞の凝集度が100%以下であると、細胞が均一に分散している傾向にある。細胞が均一に分散していることは、ばらつきが少なく信頼性が高い試験結果を得るうえで重要である。細胞の接着条件を制御し、1細胞レベルでの細胞間の距離の制御を行うことで、細胞間の重なりが抑制され、例えば画像解析を用いた評価に最適な細胞含有容器を提供することができる。
本実施形態の細胞含有容器において、凹部が、(i)神経細胞、並びに、(ii)グリア系細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を収容していてもよい。
ヒトに対する薬物の毒性や薬物に対するヒトの応答を臨床試験の前に把握することは重要である。神経細胞を単独で培養するのではなく、神経細胞と共に、神経細胞の活動を活性化させるグリア系細胞、神経細胞に栄養を供給する血管内皮細胞、神経細胞の複雑な構造を維持する平滑筋細胞等を1つの凹部内で共培養することにより、神経細胞単独で培養した場合と比較して、よりインビボに近い評価を行うことが可能となる。
神経細胞としては、GABA作動性神経細胞、グルタミン酸作動性神経細胞、コリン作動性神経細胞、モノアミン作動性神経細胞、ヒスタミン作動性神経細胞等が挙げられる。細胞がこれらの神経細胞のいずれであるかは、各細胞に特異的なマーカー遺伝子又はマーカータンパク質の発現の検出、細胞の形態の観察、細胞の機能(自発発火等)の検出等により判定することができる。
グリア系細胞としては、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア等が挙げられる。細胞がこれらのグリア系細胞のいずれであるかは、各細胞に特異的なマーカー遺伝子又はマーカータンパク質の発現の検出、細胞の形態の観察等により判定することができる。
また、細胞が血管内皮細胞であるか否か、平滑筋細胞であるか否かについても、各細胞に特異的なマーカー遺伝子又はマーカータンパク質の発現の検出、細胞の形態の観察等により判定することができる。
細胞含有容器は、凹部に神経細胞を収容しており、凹部の底面に電極アレイが設けられていてもよい。電極アレイが設けられた細胞培養容器としては、Microelectrode array(MEA)プレート等が挙げられる。MEAプレートとは、神経細胞や心筋細胞等の機能評価に用いられるものである。すなわち、細胞含有容器は、MEAプレートに細胞が収容されたものであってもよい。
(凹部)
凹部は、細胞含有容器が有する区画であり、細胞を収容する。本実施形態の細胞含有容器において、凹部の数は少なくとも1つであり、5以上が好ましく、50以上がより好ましい。
本実施形態の細胞含有容器が複数の凹部を有する場合、隣接する2つの凹部の中心間の距離は、9.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.5mm以下であることが更に好ましく、2.25mm以下が特に好ましい。ここで、凹部の中心とは、凹部の開口部の形状の重心を意味する。また、隣接する2つの凹部の中心間の距離とは、隣接する2つの凹部の中心を結ぶ線分の長さを意味する。
隣接する2つの凹部の中心間の距離が9.0mm以下である容器としては、マルチウェルプレート、マイクロウェルスライド等が挙げられる。マルチウェルプレートとしては、例えば、96ウェル、384ウェル、1,536ウェルのウェルプレートが挙げられる。マイクロウェルスライドとしては、例えば、192ウェル、768ウェル、3,456ウェルのマイクロウェルスライドが挙げられる。
凹部は、その形状、容積、材質、色等については特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
凹部の形状は、細胞を収容することができれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の形状が挙げられるが、平底であることが好ましい。
凹部の容積は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般的な評価方法に用いられる試薬の使用量を考慮すると、0.1〜1,000μLであってもよく、0.1〜300μLであってもよく、0.1〜100μLであってもよく、0.1〜10μLであってもよい。
凹部の色は、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光等が挙げられる。また、光学系の検査の場合、隣接した凹部同士の干渉を抑制する観点から、底面部は透明で、側面部に着色をした容器が好ましい。
凹部の材質は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ウレタンアクリレート等のアクリル系材料、セルロース、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の有機材料、ガラス、セラミックス等の無機材料等が挙げられる。
(細胞接着性材料)
凹部の底面には、細胞接着性材料が配置されていてもよい。細胞接着性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞外基質から選ばれるタンパク質等が挙げられる。
細胞外基質から選ばれるタンパク質としては、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、ビトロネクチン、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)配列含有ペプチド、YIGSR(チロシン−イソロイシン−グリシン−セリン−アルギニン)配列含有ペプチド、コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、PuraMatrix、フィブリン、これらの混合物等が挙げられる。細胞接着性材料を凹部の底面に配置する方法は、特に制限されず、例えば細胞接着性材料を含有する溶液を凹部に注入すること、インクジェットヘッド等を用いて細胞接着性材料を含有する溶液を凹部に吐出すること等が挙げられる。
[被験物質の評価方法]
1実施形態において、本発明は、少なくとも1つの凹部に細胞を有し、前記凹部の底面の中央の方が、前記凹部の底面の端部よりも細胞密度が大きい細胞含有容器の前記凹部に被験物質を添加する工程と、前記凹部の底面に設けられた電極アレイを通じて神経細胞の自発発火を検出する工程と、を備える、前記被験物質の評価方法を提供する。
本実施形態の被験物質の評価方法は、薬物のスクリーニング方法であるということもできる。被験物質としては特に制限されず、例えば、天然化合物ライブラリ、合成化合物ライブラリ、既存薬ライブラリ、代謝物ライブラリ等が挙げられる。例えば、患者由来の神経細胞の自然発火の同期性、頻度等を変化させる被験物質は疾患の治療薬の候補となり得る。
本実施形態の評価方法において、細胞含有容器は上述したものであってもよい。すなわち、細胞含有容器は、細胞を収容した少なくとも1つの凹部を有しており、前記細胞は前記凹部の底面に接着しており、前記底面の第1の領域の細胞密度が250〜1,500個/mmであり、前記第1の領域の周囲を取り囲む第2の領域の細胞密度が250個/mm未満であってもよい。また、細胞、凹部、細胞含有容器の材質等は上述したものと同様であってよい。
[細胞含有容器の製造方法]
1実施形態において、本発明は、少なくとも1つの凹部を有する容器の前記凹部に、インクジェット法により前記凹部の底面の中央の細胞密度が250〜20,000個/mmとなり、前記凹部の底面の端部の細胞密度が250個/mm未満となるように細胞の数及び位置を制御して吐出する工程(吐出工程)を含む細胞含有容器の製造方法を提供する。本実施形態の製造方法により、上述した細胞含有容器を製造することができる。
インクジェット法により細胞の数及び位置を制御して吐出することにより、凹部の底面の第1の領域の細胞密度が250〜20,000個/mmであり、第2の領域の細胞密度が250個/mm以下である細胞含有容器を製造することができる。
第1の領域の細胞密度は、500〜10,000個/mmであることが好ましく、5,000〜10,000個/mmであることがより好ましい。
本実施形態の製造方法において、容器としては、上述したものと同様のものが挙げられる。また、細胞としては上述したものと同様のものが挙げられる。
吐出工程では、インクジェット法により細胞懸濁液を液滴として吐出することにより細胞を吐出する。本明細書において、液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。また、吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
吐出工程は、細胞を含有する細胞懸濁液を保持する液体保持部と、ノズルが形成され、前記液体保持部に保持された前記細胞懸濁液を振動により前記ノズルから液滴として吐出する膜状部材と、前記液体保持部内を大気に開放する大気開放部とを少なくとも有するインクジェットヘッドにより行うことが好ましい。
図3は、インクジェットヘッドの構成を説明する模式断面図である。図3に示すように、インクジェットヘッド300は、細胞Cを含有する細胞懸濁液310を保持する液体保持部320と、ノズル331が形成され、液体保持部320に保持された細胞懸濁液310を振動によりノズル331から液滴310’として吐出する膜状部材330と、液体保持部320内を大気に開放する大気開放部とを少なくとも有する。インクジェットヘッド300は、圧電素子340を備えていることが好ましい。
インクジェットヘッド300では、図示していない制御装置から圧電素子340に対して電圧印加することにより、メンブレンを上下方向に変形させることができる。これにより、液体保持部320内の細胞懸濁液310を撹拌しつつ、液滴310’を形成するため、ノズル詰まりを抑制し、かつ高速に繰り返し液滴を形成することができる。
上記の吐出工程は、複数のインクジェットヘッドを同時に又は交互に作動させて行ってもよい。ここで、例えば、複数のインクジェットヘッドにそれぞれ異なる細胞を含有する細胞懸濁液を保持させることにより、複数種類の細胞を収容した細胞含有容器を製造することができる。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(ウェルの位置における細胞の生存率の検討)
96ウェルプレートで神経細胞に分化誘導したiPS細胞を培養し、ウェルの中央部及び端部における生存率を検討した。
細胞としては、健常人由来iPS細胞に、GABA作動性神経細胞に分化誘導させる転写因子を発現するウイルスベクター又はmRNAを導入した細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社)、健常人由来iPS細胞に、神経細胞ミックス(神経細胞の混合物)に分化誘導させる転写因子を発現するウイルスベクター又はmRNAを導入した細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社)を用いた。
96ウェルプレートのウェル表面を、市販の細胞接着性材料(商品名、「iMatrix 511−silk」、ニッピ社製)でコートした後、各細胞を8×10個/ウェル(250個/mm)で播種した。なお、iMatrix 511−silkは、ヒトラミニン断片をカイコで発現させたものである。培地には市販の無血清培地(BrainPhys Neuronal Medium、ステムセルテクノロジーズ社)を使用した。本実験例では、ウェルの培養面全体に細胞を接着させた。
続いて、各細胞を培養し、培養開始から8日目に、カルセイン−AM(同仁化学研究所)、Hoechst33342(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びエチジウムホモダイマーI(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)で染色し、蛍光顕微鏡で観察した。カルセイン−AMにより生細胞の細胞質が染色され、Hoechst33342により生細胞及び死細胞の双方の核が染色され、エチジウムホモダイマーIにより死細胞の核が染色される。
図4AはGABA作動性神経細胞のウェルの中央部の蛍光顕微鏡写真であり、図4Bは神経細胞ミックスのウェルの中央部の蛍光顕微鏡写真であり、図4CはGABA作動性神経細胞のウェルの端部の蛍光顕微鏡写真であり、図4Dは神経細胞ミックスのウェルの端部の蛍光顕微鏡写真である。図4A〜図4D中、「Total」は全細胞数を表し、「Red」は死細胞数を表し、「V」は生存率を表す。
その結果、ウェルの中央部におけるGABA作動性神経細胞の生存率は89%であった。また、ウェルの端部におけるGABA作動性神経細胞の生存率は70%であった。また、ウェルの中央部における神経細胞ミックスの生存率は79%であった。また、ウェルの端部における神経細胞ミックスの生存率は44%であった。
以上の結果から、ウェルの培養面全体に細胞を接着させた場合、ウェルの端部では細胞の生存率が低下することが明らかとなった。
[実験例2]
(細胞密度と分化効率の検討)
iPS細胞を様々な細胞密度で播種して神経細胞に分化誘導し、分化効率を検討した。iPS細胞としては、健常人由来iPS細胞に、神経細胞ミックス(神経細胞の混合物)に分化誘導させる転写因子を発現するウイルスベクター又はmRNAを導入した細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社)を使用した。
上記のiPS細胞を様々な細胞密度で96ウェルプレートに播種した。培地には市販の無血清培地(BrainPhys Neuronal Medium、ステムセルテクノロジーズ社)を使用した。
続いて、各細胞を培養し、培養開始から7日目又は10日目にパラホルムアルデヒド固定した。続いて、免疫染色により神経細胞のマーカーであるβIIIチューブリンを染色し、蛍光顕微鏡で観察し、神経細胞への分化効率を測定した。
図5は、iPS細胞の細胞密度と神経細胞への分化効率との関係を示すグラフである。図5には、培養開始から7日目にパラホルムアルデヒド固定した細胞の結果(白丸で示す。)と、培養開始から10日目にパラホルムアルデヒド固定した細胞の結果(黒丸で示す。)をまとめて示す。その結果、iPS細胞を220個/mm以上の細胞密度で播種した場合に、神経細胞への分化効率が80%以上という高い値を示すことが明らかとなった。
[実験例3]
(ウェルにおける細胞接着領域の限定方法の検討)
実験例1及び2の結果から、ウェルの中央部分のみに220個/mm以上の細胞密度でiPS細胞を播種すると、細胞死が抑制され、分化効率も高くなることが示された。そこで、本実験例では、ウェルの中央部分のみに細胞を播種する方法を検討した。具体的には、ウェルの底面の外縁部分を覆う枠部材を用いて細胞を播種した。
図6A及び図6Bは、本実験例で使用した枠部材を説明する模式断面図である。図6Aに示すように、枠部材610は、筒状部611を有しており、ウェル620に筒状部611を挿入して使用する。
図6Aに示すように、ウェル620に筒状部611を挿入すると、筒状部611の壁部の外面はウェル620の内壁に接する。この結果、ウェル620の底面623において、筒状部611の壁部の厚さの分、底面623の外縁部分(第2の領域622)が筒状部611の壁部で覆われる。一方、底面623の中央部分(第1の領域621、筒状部611の内腔部分)は開放されている。
続いて、図6Aに示すように、筒状部611の内腔部に細胞Cを播種すると、細胞は第1の領域621に接着するが、第2の領域622には接触しない。続いて図6Bに示すように、枠部材610を取り外すと、第1の領域621に高い細胞密度で細胞が接着し、第2の領域622には細胞が接着していない状態になる。後述するように、実際には第2の領域622にも細胞が接着する場合があるが、第2の領域622への細胞の接着は意図していないものである。このため、第2の領域622の細胞密度は、第1の領域621の細胞密度よりもはるかに低くなる。
本実験例では、内腔部の直径(ウェルの底面における開放部分の直径)が約3mmである枠部材、及び、内腔部の直径が約1.5mmである枠部材をそれぞれ用いて、96ウェルプレート(ウェルの直径約6mm)のウェルの中央部のみに神経細胞を播種した。続いて、神経細胞を培養し、培養開始から3日目に、カルセイン−AM(同仁化学研究所)で生細胞を染色し、蛍光顕微鏡で観察した。
図7A及び図7Bは、蛍光顕微鏡写真である。その結果、いずれの枠部材を用いた場合においても、主にウェルの中央付近に細胞を接着させることができたことが明らかとなった。
この結果は、上記の方法により、ウェルの限定された領域に少ない細胞を高い細胞密度で播種することができることを示す。
[実験例4]
(細胞接着のばらつきの検討)
96ウェルプレートのウェルの表面に、様々な濃度で細胞接着性材料をコートした。細胞接着性材料としては、市販の細胞接着性材料(商品名、「iMatrix 511−silk」、ニッピ社製)を使用した。続いて、ウェルにiPS細胞を播種し、4日間培養した後、細胞接着のばらつきを検討した。
iPS細胞としては、健常人由来iPS細胞に、神経細胞ミックス(神経細胞の混合物)に分化誘導させる転写因子を発現するウイルスベクター又はmRNAを導入した細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社)を使用した。
また、細胞接着のばらつきは下記式(1)により計算した凝集度により評価した。
凝集度(%)=A/B×100 …(1)
[式(1)中、Aは各細胞のボロノイ領域の面積の標準偏差を示し、Bは各細胞のボロノイ領域の面積の平均値を示す。ここで、細胞のボロノイ領域は、細胞の核と当該細胞に隣接する細胞の核との間に垂直二等分線を引いた場合に、当該垂直二等分線で囲まれた領域を意味する。]
図8A〜図8Cは、上記式(1)を用いた細胞接着のばらつきの評価を説明する図である。図8Aは、ボロノイ図を説明する図である。ボロノイ図とは粒子の分散評価等で用いられるものである。図8Aに示すように、ボロノイ図では、画像上にある二つの母点の垂直二等分線をボロノイ境界という。そして、各母点により作られたボロノイ境界で囲まれた領域をボロノイ領域という。母点からボロノイ領域を描画した画像をボロノイ図と呼ぶ。
図8Bは、母点が均一に分散した場合のボロノイ図の例である。また、図8Cは、母点が不均一に分散した場合(本明細書において「凝集している」という場合がある。)のボロノイ図の例である。図8B及び図8Cに示すように、母点の分散度合いによりボロノイ領域の面積のばらつきに差が生じる。つまり、画像内のボロノイ領域のばらつきを評価することで母点の分散度を評価することができる。
本実験例では、ボロノイ図を培養細胞に適用し、細胞接着のばらつきを評価した。具体的には、まず、培養した細胞を神経細胞のマーカーであるβIIIチューブリンに対する抗体で免疫染色し、また、細胞の核を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した。
続いて、細胞を蛍光顕微鏡で観察し、蛍光顕微鏡画像における細胞の核を母点として、ボロノイ図を作成した。続いて、ボロノイ図内の各ボロノイ領域の面積を算出した。続いて、算出した各ボロノイ領域の面積のCV値を上記式(1)における凝集度(%)と定義し、凝集度を計算した。
図9A〜図9Fは、細胞の凝集度を算出した代表的な結果を示す蛍光顕微鏡写真及びボロノイ図である。図9A〜図9Cは細胞接着性材料として市販の細胞接着性材料(商品名、「iMatrix 511−silk」、ニッピ社製)を1倍濃度(4.7×10−12g/mm)でコートしたウェルで培養したiPS細胞の結果である。図9Aは抗βIIIチューブリン抗体を用いた免疫染色画像とDAPIによる染色画像を重ね合わせた蛍光顕微鏡写真である。図9Bは、DAPIで染色された細胞の核を示す蛍光顕微鏡写真である。図9Cは、図9Bの細胞の核を母点として作成したボロノイ図である。図9Cに基づいて、上記式(1)により計算した凝集度は252%であった。
図9D〜図9Fは細胞接着性材料として市販の細胞接着性材料(商品名、「iMatrix 511−silk」、ニッピ社製)を9倍濃度(4.23×10−11g/mm)でコートしたウェルで培養したiPS細胞の結果である。図9Dは抗βIIIチューブリン抗体を用いた免疫染色画像とDAPIによる染色画像を重ね合わせた蛍光顕微鏡写真である。図9Eは、DAPIで染色された細胞の核を示す蛍光顕微鏡写真である。図9Fは、図9Eの細胞の核を母点として作成したボロノイ図である。図9Fに基づいて、上記式(1)により計算した凝集度は88%であった。
図10Aは、細胞接着性材料として市販の細胞接着性材料(商品名、「iMatrix 511−silk」、ニッピ社製)を、0倍濃度(コートなし)、0.5倍濃度(2.4×10−12g/mm)、1倍濃度(4.7×10−12g/mm)、3倍濃度(1.4×10−11g/mm)、6倍濃度(2.8×10−11g/mm)、9倍濃度(4.23×10−11g/mm)でコートしたウェルでiPS細胞を培養し、ボロノイ図を作成して計算した凝集度を示すグラフである。
また、図10Bは、各濃度で市販の細胞接着性材料(商品名、「iMatrix 511−silk」、ニッピ社製)をコートしたウェルでiPS細胞を培養後、上記と同様にして撮影した、抗βIIIチューブリン抗体を用いた免疫染色画像とDAPIによる染色画像を重ね合わせた蛍光顕微鏡写真である。
その結果、0倍濃度では細胞が剥がれてしまい、ボロノイ図を作成することができず、凝集率の算出はできなかった。また、細胞接着性材料の濃度を増加させると、細胞の凝集率が低下していく傾向にあることが明らかとなった。また、細胞接着性材料の濃度が3倍又は6倍になるあたりで凝集率の低下の程度が緩やかになることが明らかとなった。この結果は、細胞接着性材料の濃度は3倍又は6倍で十分量であることを示す。
以上の結果から、ボロノイ図を培養細胞に適用することで培養状態を細胞の凝集度という値で定量的に測定できることが明らかとなった。
[実験例5]
(MEAプレートを用いた検討1)
MEAプレートのウェルに神経細胞及びアストロサイトを播種した。実験例3で用いたものと同様の枠部材を使用して、MEAプレート(製品名「CytoView MEA 48」、アクシオン・バイオシステムズ社)のウェルに、神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)及びアストロサイト(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を混合した細胞を播種した。使用した枠部材の内腔部の面積(ウェルの底面における開放部分の面積)は22mmであった。
播種した細胞の細胞密度は、神経細胞が6,400個/mmであり、アストロサイトが1,600個/mmであった。また、比較のために、枠部材を使用せずに細胞を播種したウェルも用意した。
図11Aは、枠部材を使用してウェルの中央部のみに細胞を播種した結果を示す写真である。図11Bは、枠部材を使用せずにウェルに細胞を播種した結果を示す写真である。その結果、枠部材を使用してウェルの中央部のみに細胞を播種した場合においても、問題なく細胞がウェルの底面に接着することが明らかとなった。
また、後述するように、電極アレイが存在する、MEAプレートのウェルの中央部のみに細胞を播種した場合においても、細胞外電位を測定することができることが明らかとなった。
[実験例6]
(MEAプレートを用いた検討2)
内腔部の面積(ウェルの底面における開放部分の面積)が約1.8mmである枠部材と、内腔部の面積が約3.1mmである枠部材を使用し、播種細胞数を変化させた点以外は実験例5と同様にして、MEAプレート(製品名「CytoView MEA 48」、アクシオン・バイオシステムズ社)のウェルに、神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)及びアストロサイト(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を混合した細胞を播種した。神経細胞の数とアストロサイトの数の比は、神経細胞の数:アストロサイトの数=約4:1とした。
細胞を播種してから14日間培養後、各ウェルにおける10分間あたりの神経細胞の発火(スパイク)の数を測定した。
図12A及び図12Bは、スパイクの数の測定結果を示すグラフである。図12Aの横軸は1ウェルあたりに播種した神経細胞の数であり、縦軸はスパイクの数である。図12Bの横軸は各ウェルにおける神経細胞の播種密度であり、縦軸はスパイクの数である。
図12Aの結果から、1ウェルあたりの播種細胞数が同等である場合には、播種面積が小さい(播種細胞密度が高い)、内腔部の面積が約1.8mmである枠部材を用いた方が、内腔部の面積が約3.1mmである枠部材を用いた場合よりも、単位時間当たりのスパイク数が多いことが明らかとなった。
また、図12Bの結果から、スパイク数との相関には播種細胞密度が支配的であり、播種細胞数が異なっていても播種細胞密度が同等であれば同等の数のスパイクを発生することが明らかとなった。
これらの結果から、MEAプレートに播種する神経細胞の数が一定の場合には、播種細胞密度が高い領域を電極部分に限定することにより、機能を維持したままウェルの数を増やすことができ、1ウェルあたりの細胞のコストを低減することができることが明らかとなった。
[実験例7]
(MEAプレートを用いた検討3)
MEAプレートのウェルに神経細胞及びアストロサイトを播種し、薬物に対する応答性を評価した。
実験例3と同様にして、MEAプレート(製品名「CytoView MEA 48」、アクシオン・バイオシステムズ社)のウェルに、神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)及びアストロサイト(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を混合した細胞を播種した。使用した枠部材の内腔部の面積(ウェルの底面における開放部分の面積)は22mmであった。播種した細胞の細胞密度は、神経細胞が6,400個/mmであり、アストロサイトが1,600個/mmであった。
続いて、細胞を播種してから49日間培養後、MEAプレートのウェルに、Naチャネルブロッカーである4−Aminopyridine(4−AP)及びGABAアンタゴニストであるPicrotoxinをそれぞれ添加し、電位変動を10分間測定した。各薬物の添加濃度を数段階に変化させた。4−AP及びPicrotoxinの作用はいずれも興奮方向である。
図13は測定結果を示すラスタープロットである。図13中、各グラフの上部の縦軸はスパイク数の積算数を示す。各グラフの下部は1ウェルあたり16個存在する各電極で検出されたスパイクを示す。また、「CTRL」は薬物を添加していない対照ウェルの測定結果であることを示す。
その結果、いずれの薬物を添加した場合においても、スパイク頻度の上昇が認められた。また、薬物濃度依存的にスパイク頻度が上昇したことが明らかとなった。この結果から、MEAプレートのウェルの中央部のみに神経細胞を播種することにより、使用する神経細胞の数の低減を図りながら、薬物評価を行うことができることが明らかとなった。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]細胞を収容した少なくとも1つの凹部を有する細胞含有容器であって、前記細胞は前記凹部の底面に接着しており、前記底面の第1の領域の細胞密度が250〜20,000個/mmであり、前記第1の領域の周囲を取り囲む第2の領域の細胞密度が250個/mm未満である、細胞含有容器。
[2]前記第1の領域の細胞密度が500〜10,000個/mmである、[1]に記載の細胞含有容器。
[3]前記細胞は、患者由来又は健常者由来の、初代細胞、幹細胞又はinduced Pluripotent Stem(iPS)細胞若しくは前記iPS細胞から分化した細胞である、[1]又は[2]に記載の細胞含有容器。
[4]複数の前記凹部を有しており、前記各凹部は、それぞれ同一の患者又は同一の健常者に由来する細胞を収容しており、複数の前記凹部は、互いに異なる患者又は異なる健常者に由来する細胞を収容した凹部を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の細胞含有容器。
[5]下記式(1)により計算される、前記第1の領域の細胞の凝集度が100%以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の細胞含有容器。
凝集度(%)=A/B×100 …(1)
[式(1)中、Aは各細胞のボロノイ領域の面積の標準偏差を示し、Bは各細胞のボロノイ領域の面積の平均値を示す。ここで、細胞のボロノイ領域は、細胞の核と当該細胞に隣接する細胞の核との間に垂直二等分線を引いた場合に、当該垂直二等分線で囲まれた領域を意味する。]
[6]前記凹部が、(i)神経細胞、並びに、(ii)グリア系細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を収容している、[1]〜[5]のいずれかに記載の細胞含有容器。
[7]前記凹部が神経細胞を収容しており、前記凹部の底面に電極アレイが設けられている、[1]〜[6]のいずれかに記載の細胞含有容器。
[8]少なくとも1つの凹部に細胞を有し、前記凹部の底面の中央の方が、前記凹部の底面の端部よりも細胞密度が大きい細胞含有容器の前記凹部に被験物質を添加する工程と、前記凹部の底面に設けられた電極アレイを通じて神経細胞の自発発火を検出する工程と、を備える、前記被験物質の評価方法。
[9]少なくとも1つの凹部を有する容器の前記凹部に、インクジェット法により前記凹部の底面の中央の細胞密度が250〜20,000個/mmとなり、前記凹部の底面の端部の細胞密度が250個/mm未満となるように細胞の数及び位置を制御して吐出する工程を含む細胞含有容器の製造方法。
[10]前記吐出する工程を、細胞を含有する細胞懸濁液を保持する液体保持部と、ノズルが形成され、前記液体保持部に保持された前記細胞懸濁液を振動により前記ノズルから液滴として吐出する膜状部材と、前記液体保持部内を大気に開放する大気開放部とを少なくとも有するインクジェットヘッドにより行う、[9]に記載の製造方法。
[11]前記吐出する工程を、複数の前記インクジェットヘッドを同時に又は交互に作動させて行う、[10]に記載の製造方法。
100,200…細胞含有容器、110,110a,110b,110c,110d,110e,110f、620…凹部(ウェル)、120,623…底面、121,621…第1の領域、122,622…第2の領域、300…インクジェットヘッド、310…細胞懸濁液、310’…液滴、320…液体保持部、330…膜状部材、331…ノズル、340…圧電素子、610…枠部材、611…筒状部、C,C,C,C,C,C…細胞。
特許第5607535号公報 特表2015−510401号公報

Claims (11)

  1. 細胞を収容した少なくとも1つの凹部を有する細胞含有容器であって、
    前記細胞は前記凹部の底面に接着しており、
    前記底面の第1の領域の細胞密度が250〜20,000個/mmであり、前記第1の領域の周囲を取り囲む第2の領域の細胞密度が250個/mm未満である、細胞含有容器。
  2. 前記第1の領域の細胞密度が500〜10,000個/mmである、請求項1に記載の細胞含有容器。
  3. 前記細胞は、患者由来又は健常者由来の、初代細胞、幹細胞又はinduced Pluripotent Stem(iPS)細胞若しくは前記iPS細胞から分化した細胞である、請求項1又は2に記載の細胞含有容器。
  4. 複数の前記凹部を有しており、
    前記各凹部は、それぞれ同一の患者又は同一の健常者に由来する細胞を収容しており、
    複数の前記凹部は、互いに異なる患者又は異なる健常者に由来する細胞を収容した凹部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞含有容器。
  5. 下記式(1)により計算される、前記第1の領域の細胞の凝集度が100%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞含有容器。
    凝集度(%)=A/B×100 …(1)
    [式(1)中、Aは各細胞のボロノイ領域の面積の標準偏差を示し、Bは各細胞のボロノイ領域の面積の平均値を示す。ここで、細胞のボロノイ領域は、細胞の核と当該細胞に隣接する細胞の核との間に垂直二等分線を引いた場合に、当該垂直二等分線で囲まれた領域を意味する。]
  6. 前記凹部が、(i)神経細胞、並びに、(ii)グリア系細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を収容している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞含有容器。
  7. 前記凹部が神経細胞を収容しており、前記凹部の底面に電極アレイが設けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞含有容器。
  8. 少なくとも1つの凹部に細胞を有し、前記凹部の底面の中央の方が、前記凹部の底面の端部よりも細胞密度が大きい細胞含有容器の前記凹部に被験物質を添加する工程と、
    前記凹部の底面に設けられた電極アレイを通じて神経細胞の自発発火を検出する工程と、を備える、前記被験物質の評価方法。
  9. 少なくとも1つの凹部を有する容器の前記凹部に、インクジェット法により前記凹部の底面の中央の細胞密度が250〜20,000個/mmとなり、前記凹部の底面の端部の細胞密度が250個/mm未満となるように細胞の数及び位置を制御して吐出する工程を含む細胞含有容器の製造方法。
  10. 前記吐出する工程を、
    細胞を含有する細胞懸濁液を保持する液体保持部と、ノズルが形成され、前記液体保持部に保持された前記細胞懸濁液を振動により前記ノズルから液滴として吐出する膜状部材と、前記液体保持部内を大気に開放する大気開放部とを少なくとも有するインクジェットヘッドにより行う、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記吐出する工程を、複数の前記インクジェットヘッドを同時に又は交互に作動させて行う、請求項10に記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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