JP2021135285A - 変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法および振動解析方法 - Google Patents

変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法および振動解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数を最適に決定することができる変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法および振動解析方法を提供する。【解決手段】変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法において、ステップS3で、積層鉄心21について、積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxを所定範囲から選定された特定の値Gとして振動応答解析を行い、特定の値Gに対する積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルを求め、ステップS4で、積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルを算出し、ステップS5で、積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求め、ステップS6で、特定の値Gを所定範囲内で変更して、ステップS3からステップS5を繰り返し、一致度が極大となる特定の値Gを決定する。【選択図】図4

Description

本発明は、変圧器の積層鉄心の振動解析を実施する際に適用する鉄心の弾性変形における応力と歪の関係を示す構成方程式中の弾性マトリックス決定方法および振動解析方法に関する。
配電用変圧器などの変圧器は電磁鋼板を積層した積層鉄心にコイルを巻装することにより構成されている。変圧器として重要とされる性能には鉄損(無負荷損)特性、励磁電流特性、騒音特性などがある。
配電用変圧器は、様々な場所に設置されているが、特に市街地に設置される変圧器には騒音が小さいことが強く求められる。このように昨今では、変圧器が設置される周辺環境への配慮などから、特に騒音特性がますます重要となっている。
変圧器の鉄心材料として多くの場合には方向性電磁鋼板が使用されている。方向性電磁鋼板には磁歪と称される励磁に伴う材料伸縮があり、この励磁磁歪振動が変圧器騒音の主な原因と言われている。このため変圧器騒音性能は使用する電磁鋼板の磁歪性能に強く依存するとされ、低騒音変圧器を製造するに際しては低磁歪特性を有する電磁鋼板が鉄心材料として使用される。
しかし、磁歪性能の優れた電磁鋼板を実際に使用して鉄心を製造したにもかかわらず、十分な変圧器低騒音特性が得られない場合がしばしばみられる。このようなことが起こる原因を調査してみると、変圧器鉄心の固有振動数と電磁鋼板磁歪振動の共鳴現象であると考えられるケースが多くみられる。このため、変圧器鉄心の固有振動をはじめとする機械振動特性を計算予測することは変圧器を設計・製造する上で極めて重要である。
そこで、磁歪が生ずる磁性体を含む電磁部品を有限要素解析における複数の有限要素の組み合わせで表現した数値解析モデルに基づいて電磁部品に与えられる磁束密度に応じた有限要素の各節点又は各有限要素の歪みと等価な節点力を算出する解析装置および解析方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014ー71689号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術では、釣合いの式、応力と歪みとの関係を示した構成式、および変位と歪みの関係式によって構成される構造解析の支配方程式を用いて、準静的構造解析を行うようにしている。
このうち、応力テンソル{σ}と歪みテンソル{ε}との関係を示した構成式は、
{σ}={D}{ε} ({ }はテンソルを示す)
で表されている。
ここで、{D}は歪みと応力の関係を表したテンソルである。成分表示すると、(1)式のようになる。
Figure 2021135285
となり、{D}は81成分、{σ}と{ε}は9成分ある。ここで、物理量としてのテンソルは対称テンソルとなるので、{σ}と{ε}の独立成分はそれぞれ6成分となる。したがって、構成式を
[σ]=[D][ε] ([ ]は行列であることを示す。[D]を弾性マトリックスと称する。)
と行列表示して、成分で表示すると、(2)式のようになる。
Figure 2021135285
そして、垂直応力σと垂直歪みεとの関係および剪断歪みτijとせん断歪みγijとの関係が弾性マトリックス[D]を使用して表されている。
しかしながら、上記先行技術では、弾性マトリックス[D]の設定については何ら記載がなく、弾性マトリックス[D]をどのように決定するかについては記載がない。但し、一般的には、構造解析の対象となる電磁部品を構成する電磁鋼板等の部材自体の弾性係数をそのまま適用する場合が多い。
この場合には、構造解析の対象となる電磁部品の機械振動計算結果と実際に機械振動を測定した結果とを比較した場合に、計算値と実測値との間に大きな乖離があることが知られている。このため、構造解析プログラムによる構造解析を、鋼板を積層して構成される積層構造体である電磁部品の設計に反映することは困難とされてきた。
ここで、配電用変圧器などの変圧器に用いられる変圧器の鉄心も鋼板を積層して構成される積層構造体であるため、構造解析プログラムによる構造解析を用いて騒音予測を行うことは困難であった。このため、実際に製造した変圧器の騒音が大きいために防音壁のような防音対策に余分なコストがかさむなどの問題を生じることがある。このような場合、変圧器鉄心の設計変更を行うことで変圧器の騒音を低減することができれば余分なコスト上昇を抑制できるが、どのように設計変更を行えば騒音を低減することができるのかがわからない。このため、容易には設計変更を行えないという問題がある。この設計変更を行えるように構造解析プログラムによる構造解析を用いて騒音予測を行えるようにすることが強く求められている。
構造解析の対象となる変圧器鉄心の機械振動計算結果と実際に機械振動を測定した結果とを比較した場合に、計算値と実測値との間に大きな乖離を生じる原因は、当該変圧器鉄心が鋼板を積層して構成される積層構造体であって、積層構造体の弾性マトリックス[D]は変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板等の部品自体の弾性マトリックス[D]とは本来異なる値であるにもかかわらず、積層構造体の弾性マトリックス[D]を決定する良い方法が存在しないために電磁鋼板等の部品自体の弾性マトリックス[D]の値をそのまま代用して構造解析を実施していることにあるものと考えられる。
特に、応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した積層鉄心の振動解析を行うに際し、構成式中の前述の弾性マトリックス[D]に含まれる変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数を決定する方法は確立されていない。
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題に着目してなされたものであり、その目的は、応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した積層鉄心の振動解析を行うに際し、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数を最適に決定することができる変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法および振動解析方法を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、本発明の趣旨は以下のとおりである。
[1] 応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した変圧器の積層鉄心の振動解析を行うに際し、前記構成式中の弾性マトリックスに含まれる前記変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数が前記積層鉄心を構成する複数(n個)の部位において同一である当該同一の積層方向を含む二面における横弾性係数を決定する変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法であって、振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求めた騒音の周波数スペクトルを取得する第1ステップと、前記変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを取得する第2ステップと、振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心について、積層方向を含む二面における横弾性係数を所定範囲から選定された特定の値Gとして振動応答解析を行い、この特定の値Gに対する前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルを求める第3ステップと、前記第2ステップで取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、前記第3ステップで求めた前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルとから前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルを算出する第4ステップと、前記第1ステップで取得した前記変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと、前記第4ステップで算出した前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求める第5ステップと、前記特定の値Gを前記所定範囲内で変更して、前記第3ステップから前記第5ステップを繰り返し、前記一致度が極大となる特定の値Gを決定する第6ステップと、を含むことを特徴とする変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法。
[2] 応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した変圧器の積層鉄心の振動解析を行うに際し、前記構成式中の弾性マトリックスに含まれる前記変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数が前記積層鉄心を構成する複数(n個)の部位ごとに異なっている当該複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数を決定する変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法であって、振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求めた騒音の周波数スペクトルを取得する第1ステップと、前記変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを取得する第2ステップと、振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心について、前記複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数をそれぞれ所定範囲から選定された特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせとして振動応答解析を行い、この特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせに対する前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルを求める第3ステップと、前記第2ステップで取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、前記第3ステップで求めた前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルとから前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルを算出する第4ステップと、前記第1ステップで取得した前記変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと、前記第4ステップで算出した前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求める第5ステップと、前記特定の値G、G、・・・、Gの値をそれぞれ前記所定範囲内で変更して前記特定の値G、G、・・・、Gの値の組み合わせを変更し、前記第3ステップから前記第5ステップを繰り返し、前記一致度が極大となる特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせを決定する第6ステップと、を含むことを特徴とする変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法。
[3] 前記第5ステップで求める、前記第1ステップで求めた前記変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと、前記第4ステップで算出した前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度の評価方法が、コサイン一致度であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法。
[4] 応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式の弾性マトリックスに、[1]乃至[3]のうちいずれか一項に記載の弾性マトリックス決定方法で決定した横弾性係数を組み込んで鋼板を積層した変圧器の積層鉄心の振動解析を行うことを特徴とする変圧器の積層鉄心の振動解析方法。
本発明に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法によれば、応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した積層鉄心の振動解析を行うに際し、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数を最適に決定することができ、振動特性の実測値と計算値との乖離を抑制することができる。
また、本発明に係る変圧器の積層鉄心の振動解析方法は、最適に決定された変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数を構成式に組み込んで振動解析を行うことにより、振動解析精度を向上させることができる。
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法に適用し得る振動解析装置を示す構成図である。 三相三脚変圧器鉄心を示す斜視図である。 垂直応力およびせん断応力を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る弾性マトリックス決定方法の手順を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態における、振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトルの一例を示すグラフである。 本発明の第1実施形態における、振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータの一例を示すグラフである。 本発明の第1実施形態における、積層方向を含む二面における横弾性係数を所定範囲から選定された特定の値Gとして振動応答解析を行った際の、前述の値Gに対する変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルの一例を示すグラフである。 本発明の第1実施形態における、電磁鋼板の磁歪の周波数スペクトルと変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルとから算出された変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルの一例を示すグラフである。 本発明の第1実施形態における、変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとのコサイン一致度と積層方向を含む二面における横弾性係数との関係の一例を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係る弾性マトリックス決定方法の手順を示すフローチャートである。 実施例における振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施例における、振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを示すグラフである。 実施例における、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bの積層方向を含む二面における横弾性係数Gzx,Gyz及び脚部22cの積層方向を含む二面における横弾性係数Gzx,Gyzをそれぞれ所定範囲から選定された特定の値G、Gの組み合わせとして振動応答解析を行った際の、特定の値G、Gの組み合わせに対する変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施例における、電磁鋼板の磁歪の周波数スペクトルと変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルとから算出された変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルを示すグラフである。 実施例における、変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルの計算値と、変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトルの実測値とを示すグラフである。
以下、本発明に係る積層鉄心の弾性マトリックス決定方法および積層鉄心の振動解析方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法に適用し得る振動解析装置が示されている。
振動解析装置10は、図1に示すように、CPU11を備えた演算処理装置12で構成されたコンピュータシステムである。CPU11には、内部バス13を介してRAM,ROM等の内部記憶装置14、外部記憶装置15、キーボード、マウス等の入力装置16およびディスプレイに画像データを出力する出力装置17が接続されている。
外部記憶装置15は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の読み出しが可能なディスクドライブと、記録媒体からのデータを読み出すCD、DVD、BD等のドライブ装置を含んで構成されている。この外部記憶装置15に市販の振動解析プログラムを格納した記録媒体18をセットし、読み出した振動解析プログラムをディスクドライブにインストールする。なお、振動解析プログラムのインストールは、記録媒体18を使用する場合に限らず、ネットワークを介して振動解析プログラムをダウンロードするようにしてもよい。
CPU11は、インストールされた振動解析プログラムにしたがって入力された解析用入力データを用いて有限要素法を用いて振動解析を行い、解析結果を出力装置17からディスプレイに出力して表示する。この解析結果は、ディスプレイに表示する場合に限らず、プリンタで印刷したり、ネットワーク経由で送信したりすることができる。
そして、第1実施形態及び第2実施形態で解析対象とする積層鉄心21は、例えば配電用変圧器として使用する三相三脚変圧器用の積層鉄心であって、図2に示すように、上ヨーク22aおよび下ヨーク22b間に三本の脚部22cを連結した板厚0.3mmの方向性電磁鋼板22を例えば333枚積層してガラステープを巻き付けて固定されている。
一例として、上ヨーク22aおよび下ヨーク22bの寸法は、幅100mm×長さ500mmに設定されている。また、三本の脚部22cの寸法は、幅100mm×長さ300mmに設定され、上ヨーク22aおよび下ヨーク22b間に100mm間隔で連結されている。
なお、第1実施形態及び第2実施形態で解析対象とする積層鉄心21は、図2に示した三相三脚変圧器用の積層鉄心が一例であって、方向性電磁鋼板22の板厚、方向性電磁鋼板22の積層枚数、上ヨーク22aおよび下ヨーク22bの寸法、三本の脚部22cの寸法等は前述した例に限定されない。
このような三相三脚変圧器の積層鉄心21の振動数値解析を行う場合には、弾性構造解析の支配方程式となる応力と歪みとの関係を示した構成式が使用される。
この構成式は、積層物を等価均質体に置き換え、積層の影響をマトリックス物性で表現すると下記(3)式のようになる。
[σ]=[C][ε] ・・・(3)
ここで、[σ]は応力マトリックス、[C]は応答関数としての弾性マトリックス(ステフィネスマトリックス)、[ε]は歪みマトリックスである。
ここで、鋼板の積層方向をZ方向とし、このZ方向と直行する2次元平面の一方をX方向、他方をY方向とすると、応力マトリックス[σ]は、図3に示すように、垂直成分がX方向の垂直応力σx、Y方向の垂直応力σyおよびZ方向の垂直応力σzで表され、せん断成分が、ZX平面のせん断応力τzx、YZ平面のせん断応力τyzおよびXY平面のせん断応力τxyで表される。
同様に、歪みマトリックス[ε]は、垂直成分がX方向の垂直歪みεx、Y方向の垂直歪みεyおよびZ方向の垂直歪みεzで表される、せん断成分がZX平面のせん断歪みはγzx、YZ平面のせん断歪みγyzおよびXY平面のせん断歪みγxyで表される。
また、弾性マトリックス[C]は、36個の弾性係数Cij(i=1〜6,j=1〜6)で表される。
これらをマトリックス表示すると下記(4)式となる。
Figure 2021135285
積層鉄心は、方向性電磁鋼板を積層して製造するので、積層鉄心の機械的対称性を有する他、積層する鋼板の長手方向とその直角方向にも180度対称性を有するので、異方性分類としては直交異方性を有することになる。
このため、直交異方性を有する物体については基本的に、下記(5)式のようにC11、C12、C13、C22、C23、C33、C44、C55およびC66の計9個の弾性係数で表すことができる。
Figure 2021135285
このうち、弾性係数C11、C12、C13、C22、C23、C33については縦弾性係数Ex、EyおよびEzとポアソン比νxy、νyx、νyz、νzy、νzx、νxzとによって(6)〜(12)式で算出することができる。また、(13)〜(15)式で示されるように、弾性係数C44はYZ平面の横弾性係数Gyzであり、弾性係数C55はZX平面の横弾性係数Gzxであり、弾性係数C66はXY平面の横弾性係数Gxyである。
ここで、ExはX方向縦弾性係数(ヤング率)、EyはY方向縦弾性係数(ヤング率)、EzはZ方向縦弾性係数(ヤング率)、νxyはXY平面のポアソン比(X方向縦歪とY方向横歪の比)、νyxはYX平面のポアソン比、νyzはYZ平面のポアソン比、νzyはZY平面のポアソン比、νzxはZX平面のポアソン比、νxzはXZ平面のポアソン比である。
ここで、縦弾性係数とポアソン比との間には、相反定理と呼ばれる下記(16)式の関係が成り立つ。
Figure 2021135285
このため、YX平面のポアソン比νyxはExとEyとνxyとを使って、ZY平面のポアソン比νzyはEzとEyとνyzとを使って、XZ平面のポアソン比νxzはEzとExとνzxとを使ってそれぞれ表すことができる。
このように、直交異方性を有する物体の弾性マトリックスを表す計9個の弾性係数C11、C12、C13、C22、C23、C33、C44、C55およびC66の値は、縦弾性係数Ex、Ey、Ez、横弾性係数Gyz、Gzx、Gxyおよびポアソン比νxy、νyz、νzxの計9個の機械的物性値を使って表すことができるので、これら9個の機械的物性値を決定することは弾性マトリックスを表す9個の弾性係数を決定することと等価になる。従って、以下では縦弾性係数、横弾性係数、ポアソン比の決定方法について説明する。
先ず、直交異方性を有する積層鉄心の縦弾性係数については、縦弾性係数Ex及びEyは1枚の鋼板の縦弾性係数Ex0、Ey0と等しく設定することができる。但し、縦弾性係数Ezは1枚の鋼板の縦弾性係数Ez0と略等しく設定できない。その理由は、積層鋼板間には、わずかながら隙間があるからである。第1実施形態及び第2実施形態においては、積層鋼板の積層方向への荷重と変位との関係から縦弾性係数Ezを求める実験を行ったところ、縦弾性係数Ezは10GPa前後の値を有することが分かったので、Ez=10GPaとした。なお、積層方向の縦弾性係数の値の大小が振動計算結果に及ぼす影響は小さなものなので、Ezはこの値に限定されなくてもよく、1枚の鋼板の縦弾性係数Ez0と等しく設定しても大きな誤差とはならない。
また、直交異方性を有する積層鉄心のポアソン比については、XY平面のポアソン比νxyは1枚の鋼板のポアソン比νxy0と等しく設定することができるが、YZ平面のポアソン比νyz及びZX平面のポアソン比νzxは1枚の鋼板のポアソン比νyz0及びνzx0をそのまま設定することはできない。この理由は、積層鉄心の場合は積層方向の歪と積層方向と垂直方向の歪との力学的な結合が極めて弱いと考えられるためである。νyz及びνzxを実測することは極めて困難であるが上記の考えから極めて小さな値となることが予想されるので、第1実施形態及び第2実施形態においては、νyz=νzx=0とする。
更に、積層鉄心の横弾性係数については、XY平面の横弾性係数Gxyは1枚の鋼板の横弾性係数Gxy0と等しく設定できるが、積層方向を含む二面の横弾性係数、即ちZX平面の横弾性係数GzxおよびYZ平面の横弾性係数Gyzは1枚の鋼板の横弾性係数Gxz0およびGyz0をそのまま設定することができない。その理由は、積層鋼板は、積層された各鋼板の境界面で積層方向と直交するX方向及びY方向に滑りが生じることから、鋼板間の滑りの影響を横弾性係数GzxおよびGyzに反映させる必要があるからである。
従って、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数、即ちZX平面の横弾性係数GzxおよびYZ平面の横弾性係数Gyzを決定することが、積層鉄心の応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用する振動解析において重要な事項となる。
ところが、ZX平面の横弾性係数GzxおよびYZ平面の横弾性係数Gyzを鋼板間の滑りの影響を反映した値とするには、実際に三相三脚変圧器用の積層鉄心を製作して、正確な横弾性係数GzxおよびGyzを測定しなければならない。しかしながら、積層鉄心の横弾性係数を測定する方法は確立されていない。金属材料の場合には、超音波を使った測定により横弾性係数を含む機械定数を測定することができるが、積層鉄心の場合は鋼板間の滑りがあるので、振動減衰が大きく、測定が難しいためと思われる。
積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数を求めるためのその一つの方法としては、積層鉄心の固有振動数を測定してその値から当該横弾性係数を推定する方法が挙げられる。しかしながら、変圧器の積層鉄心の固有振動数を測定することはやはり振動減衰が大きいために測定が難しい場合もあり、特に鉄心が大型である場合にはとりわけ固有振動数を測定することは困難である。
そこで、第1実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、図4に示す手順で、積層方向を含む二面における横弾性係数GzxおよびGyzを決定するようにしている。第1実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位の横弾性係数が同一であり、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxが積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位で同一であり、当該同一の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxを決定するようにしている。具体的には、第1実施形態では、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cの横弾性係数が同一であり、変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxが積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとで同一であり、その同一の横弾性係数Gyz、Gzxを決定するようにしている。
先ず、振動解析装置10は、ステップS1(第1ステップ)において、図2に示す振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトルを入力装置16で取得する。具体的には、積層鉄心21に周波数50Hz励磁騒音測定を行って騒音の周波数スペクトルとして周波数100Hzから1000Hzまで100Hzピッチでの励磁騒音のスペクトルを採取する。このように採取された騒音の周波数スペクトルの一例を図5に示す。励磁周波数は60Hzでもよくその場合は周波数120Hzから1200Hzまで120Hzピッチでの励磁騒音のスペクトルを採取する。以下では励磁周波数は50Hzの場合について記載する。
なお、変圧器の製造の現場において、変圧器の励磁騒音特性は出荷製品の品質管理項目として広く実測されており、その測定に特段の困難はない。
次いで、振動解析装置10は、ステップS2(第2ステップ)において、図2に示す振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21を構成する方向性電磁鋼板22と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを入力装置16で取得する。励磁磁歪の周波数スペクトルデータは、周波数100Hzから1000Hzまで100Hzピッチでの励磁磁歪振幅のスペクトルデータを採取する。当該励磁磁歪の周波数スペクトルデータは、電磁鋼板の励磁磁歪を測定するか、あるいは電磁鋼板の製造メーカーから入手するなどして得ることができる。このように採取された励磁磁歪の周波数スペクトルデータの一例を図6に示す。図6においては、縦軸に磁歪振幅をとってあるが、周波数100Hzにおける値で除算して規格化してから常用対数を取って10倍してdb表示にする。
次に、振動解析装置10は、ステップS3(第3ステップ)において、振動解析装置10にインストールされた構造解析ソフトを用いて振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21について振動応答解析を実施する。
ここで、積層鉄心21の縦弾性係数Ex、Ey、Ez、横弾性係数Gyz、Gzx、Gxyおよびポアソン比νxy、νyz、νzxの計9個の機械的物性値のうちの7個は前述したように以下のように設定する。
Ex=Ex0、Ey=Ey0、Ez=10GPa
Gxy=Gxy0
νxy=νxy0、νyz=νzx=0
そして、残る2つの積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxについては、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部材で同一であるため、具体的には、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cの横弾性係数が同一であるため、Gyz=Gzx=G(所定範囲から選定された特定の値)と設定し、この特定の値Gに対する変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルを求める。このように求めた特定の値Gに対する変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルの一例を図7(周波数100Hzの振動応答値を0dBとして表示)に示す。ここで特定の値Gが選定される所定範囲は、実際に、変圧器の積層鉄心21の構造から予想される横弾性係数の範囲であり、本実施形態では、0.02GPaから1.0GPaの範囲である。
次に、振動解析装置10は、ステップS4(第4ステップ)において、ステップS2(第2ステップ)で取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、ステップS3(第3ステップ)で求めた変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルとから変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルを算出する。具体的には、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルは、電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルとの積で算出される(dB表示の場合は加算で算出される)。このように算出された変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルの一例を図8に示す。
次に、振動解析装置10は、ステップS5(第5ステップ)において、ステップS1(第1ステップ)で取得した変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、ステップS4(第4ステップ)で算出した変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求める。
ここで、変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度をどのように評価するかが問題となる。
騒音の周波数スペクトルデータは、周波数100Hzから1000Hzまで100Hzピッチで10個あるので、当該騒音の周波数スペクトルデータを(S100,S200,S300,・・・,S1000)と表記し、励磁振動の周波数スペクトルデータは、周波数100Hzから1000Hzまで100Hzピッチで10個あるので、当該励磁振動の周波数スペクトルデータを(V100,V200,V300,・・・,V1000)と表記して一致度を説明する。
一致度の評価方法としては、上記(S100,S200,S300,・・・,S1000)と(V100,V200,V300,・・・,V1000)とを多次元空間におけるデータ点(この場合は10次元空間の点)と考えたときの両点のユークリッド距離の近さをとるのが一般的である。
しかしながら、ユークリッド距離をとる一致度の評価方法は、データにオフセットがあると精度が悪くなることが知られている。励磁騒音や励磁振動の周波数スペクトルデータはdB値で示されることが多いが、この場合には基準値をどこにとるかの自由度があって、この自由度の分がオフセットとなる懸念がある。
そこで、上記懸念がない一致度の評価方法として、本実施形態では、コサイン一致度を採用した。このコサイン一致度は、(S100,S200,S300,・・・,S1000)及び(V100,V200,V300,・・・,V1000)を多次元ベクトル(この場合は10次元空間ベクトル)とし、両ベクトルS、Vのなす角度のコサイン値を一致度とする方法である。コサイン一致度を数式で表すと、下記の(17)式となる。
Figure 2021135285
ここで、コサイン一致度COSθは、ベクトルS、Vの内積をベクトルSの長さ及びベクトルVの長さの積で割った値で表され、ベクトルSとベクトルVとが一致していれば1をとり、両者が直交していれば0をとり、両者の向きが逆であれば−1をとる。
次に、振動解析装置10は、ステップS6(第6ステップ)において、積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxの特定の値Gの値を前述の所定範囲内で変更して、ステップS3(第3ステップ)からステップS5(第5ステップ)を繰り返し、変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度が極大となる特定の値Gを決定する。この決定された特定の値Gが、積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxとなる。つまり、決定された特定の値Gが、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位で同一の積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzx、具体的には、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとで同一の横弾性係数GyzおよびGzxとなる。このステップS6においては、パラメータ(G)が一つであるので、探索を比較的容易に行うことができる。
図9には、横弾性係数Gyz=Gzx=Gの値を0.02GPaから1.0GPaの範囲で適宜変えながら、ステップS3(第3ステップ)からステップS5(第5ステップ)を繰り返し、積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとのコサイン一致度を算出した一例が示されている。図9において、積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとのコサイン一致度は、横弾性係数Gに対して山形をなすような関数となり、Gの値が0.02GPaから1.0GPaの範囲の範囲でコサイン一致度が極大となる最高点のときのGの値が約0.20GPaとなっている。
なお、第1実施形態では、積層鉄心の横弾性係数GyzとGzxとを等しいとおいた場合を例示している。横弾性係数GyzとGzxの値が異なることも一般的にはあり得るが、方向性電磁鋼板の積層鉄心の場合には、横弾性係数GyzとGzxとを等しいとおいて良いことは図2に例示した積層鉄心と異なる寸法のいくつかの変圧器の積層鉄心の場合で確認している。第1実施形態では横弾性係数GyzとGzxとは等しいとした。
このように、第1実施形態に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法によれば、応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した積層鉄心21の振動解析を行うに際し、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxが積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位で同一である当該同一の積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxを最適に決定することができ、振動特性の実測値と計算値との乖離を抑制することができる。
そして、振動解析装置10は、振動解析装置10にインストールされた構造解析ソフトを用いて図2に示す形状の三相三脚変圧器の積層鉄心21の振動解析を行う。この際に、積層鉄心21の機械的弾性係数のうち積層方向における二面を含む横弾性係数GyzおよびGzxを上記弾性マトリックス決定方法で決定した値とし、その他の機械的弾性係数における積層鉄心21の縦弾性係数Ex、Ey、Ez、横弾性係数Gxyおよびポアソン比νxy、νyz、νzxをそれぞれ以下のように設定して、前述した(5)式に組み込んで計算を行う。
Ex=Ex0、Ey=Ey0、Ez=10GPa
Gxy=Gxy0
νxy=νxy0、νyz=νzx=0
このように、第1実施形態に係る変圧器の積層鉄心の振動解析方法によれば、最適に決定された変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxを構成式に組み込んで振動解析を行うことにより、振動解析精度を向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法について、図10を参照して説明する。
第2実施形態に係る弾性マトリックス決定方法に適用される振動解析装置は、前述したように、図1に示す振動解析装置10である。また、第2実施形態で解析対象とする積層鉄心は、図2に一例で示した三相三脚変圧器用の積層鉄心21である。
第1実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、前述したように、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位の横弾性係数が同一であり、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxが積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位で同一であり、当該同一の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxを決定するようにしている。具体的には、第1実施形態では、変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxが積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとで同一であり、その同一の横弾性係数Gyz、Gzxを決定するようにしている。
これに対して、第2実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位の横弾性係数が異なり、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxが積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位ごとに異なっており、当該複数の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxを決定するようにしている。具体的には、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cの横弾性係数が異なり、変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数Gyz、Gzxが積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとで異なっており、その異なる上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz、Gzxと脚部22cの横弾性係数Gyz、Gzxとを決定するようにしている。
そして、第2実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、図10に示す手順で、複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数GzxおよびGyzを、具体的には、上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz、Gzxと脚部22cの横弾性係数Gyz、Gzxとを決定する。
先ず、振動解析装置10は、ステップS11(第1ステップ)において、図2に示す振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトルを入力装置16で取得する。具体的には、積層鉄心21に周波数50Hz励磁騒音測定を行って騒音の周波数スペクトルとして周波数100Hzから1000Hzまで100Hzピッチでの励磁騒音のスペクトルを採取する。
なお、変圧器の製造の現場において、変圧器の励磁騒音特性は出荷製品の品質管理項目として広く実測されており、その測定に特段の困難はない。
次いで、振動解析装置10は、ステップS12(第2ステップ)において、図2に示す振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21を構成する方向性電磁鋼板22と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを入力装置16で取得する。励磁磁歪の周波数スペクトルデータは、周波数100Hzから1000Hzまで100Hzピッチでの励磁磁歪振幅のスペクトルデータを採取する。当該励磁磁歪の周波数スペクトルデータは、電磁鋼板の励磁磁歪を測定するか、あるいは電磁鋼板の製造メーカーから入手するなどして得ることができる。
次に、振動解析装置10は、ステップS13(第3ステップ)において、振動解析装置10にインストールされた構造解析ソフトを用いて振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21について振動応答解析を実施する。
ここで、積層鉄心21の縦弾性係数Ex、Ey、Ez、横弾性係数Gyz、Gzx、Gxyおよびポアソン比νxy、νyz、νzxの計9個の機械的物性値のうちの7個は前述したように以下のように設定する。
Ex=Ex0、Ey=Ey0、Ez=10GPa
Gxy=Gxy0
νxy=νxy0、νyz=νzx=0
そして、残る2つの積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxについては、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位ごとに異なっているので、Gyz=Gzx=G、G、・・・、G(G、G、・・・、Gのそれぞれは所定範囲から選定された特定の値)と設定し、この特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせに対する変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルを求める。具体的には、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz=Gzx=Gと設定し、脚部22cの横弾性係数Gyz=Gzx=Gと設定し(G、Gのそれぞれは所定範囲から選定された特定の値)、この特定の値G、Gの組み合わせに対する変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルを求める。
ここで、ここで特定の値G、G、・・・、Gのそれぞれが選定される所定範囲は、実際に、変圧器の積層鉄心21の構造から予想される横弾性係数の範囲であり、本実施形態では、0.02GPaから1.0GPaの範囲である。
次に、振動解析装置10は、ステップS14(第4ステップ)において、ステップS12(第2ステップ)で取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、ステップS13(第3ステップ)で求めた変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルとから変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルを算出する。具体的には、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルは、電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルとの積で算出される(dB表示の場合は加算で算出される)。
次に、振動解析装置10は、ステップS15(第5ステップ)において、ステップS1(第1ステップ)で取得した変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、ステップS14(第4ステップ)で算出した変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求める。
ここで、変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度は、第1実施形態と同様に、コサイン一致度を採用している。
次に、振動解析装置10は、ステップS16(第6ステップ)において、前述の特定の値G、G、・・・、Gの値をそれぞれ前述の所定範囲内で変更して特定の値G、G、・・・、Gの値の組み合わせを変更し、ステップS13(第3ステップ)からステップS15(第5ステップ)を繰り返し、前述の一致度が極大となる特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせを決定する。この決定された特定の値G、G、・・・、Gが、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位のそれぞれの積層方向を含む二面における横弾性係数GzxおよびGyzとなる。具体的には、上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz=Gzx=Gの値及び脚部22cの横弾性係数Gyz=Gzx=Gの値をそれぞれ前述の所定範囲内で変更して特定の値G、G2nの値の組み合わせを変更し、ステップS13(第3ステップ)からステップS15(第5ステップ)を繰り返し、前述の一致度が極大となる特定の値G、Gの組み合わせを決定する。この決定された特定の値G、Gが、それぞれ上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数GzxおよびGyx、脚部22cの横弾性係数GzxおよびGyxとなる。
振動解析装置10が行うステップS16においては、パラメータ(G、G、・・・、G)が第1実施形態の場合と異なり、複数(n個)あるので、数値的探索をn次元的に行う必要が生じ、探索点数が非常に多くなり多大な労力を要する。従って、第2実施形態では、AI(人工知能)技術を活用して、GA(遺伝的アルゴリズム)を用いた最適化探索法を用いて、ステップS1(第1ステップ)で取得した変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、ステップS14(第4ステップ)で算出した変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を評価関数とした探索法を採用した。使用するGA最適化探索ツールは市販の探索ソフトを用いても良いし、発明者らが行ったように独自に作成したGA最適化探索ツールを採用しても良い。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、積層鉄心の横弾性係数GyzとGzxとを等しいとおいた場合を例示している。
このように、第2実施形態に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法によれば、応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した積層鉄心21の振動解析を行うに際し、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心21の複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxを最適に決定することができ、振動特性の実測値と計算値との乖離を抑制することができる。
そして、振動解析装置10は、振動解析装置10にインストールされた構造解析ソフトを用いて図2に示す形状の三相三脚変圧器の積層鉄心21の振動解析を行う。この際に、積層鉄心21の機械的弾性係数のうち積層鉄心21の複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxを上記弾性マトリックス決定方法で決定した値とし、その他の機械的弾性係数における積層鉄心21の縦弾性係数Ex、Ey、Ez、横弾性係数Gxyおよびポアソン比νxy、νyz、νzxをそれぞれ以下のように設定して、前述した(5)式に組み込んで計算を行う。
Ex=Ex0、Ey=Ey0、Ez=10GPa
Gxy=Gxy0
νxy=νxy0、νyz=νzx=0
このように、第2実施形態に係る変圧器の積層鉄心の振動解析方法によれば、最適に決定された複数(n個)の異なる変圧器の積層鉄心21の積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxを構成式に組み込んで振動解析を行うことにより、振動解析精度を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更改良を行うことができる。
例えば、変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度の評価方法は、コサイン一致度に限らず、オフセットを含まないようにdB表示の基準をとるなどすればユークリッド距離を採用することも可能であるし、その他の一致度の評価方法も本質的に励磁騒音と励磁振動の周波数スペクトルデータの一致度を定量的に示すものであれば採用することは可能である。
また、上記実施形態では、三相三脚変圧器についての振動解析について説明したが、これに限定されるものではなく三相五脚変圧器や他の変圧器における積層鉄心の振動解析にも本発明を適用することができる。
また、第1実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位の横弾性係数が同一であり、具体例として、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cの横弾性係数が同一である場合について説明している。積層鉄心21を構成する複数の部位の数は任意であり、上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとに限らず、上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22c以外の部位を含めて積層鉄心21を構成するようにしてもよい。
また、第2実施形態に係る弾性マトリックス決定方法では、積層鉄心21を構成する複数(n個)の部位の横弾性係数が異なり、具体例として、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cの横弾性係数が異なる場合について説明している。第2実施形態でも、積層鉄心21を構成する複数の部位の数は任意であり、上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとに限らず、上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22c以外の部位を含めて積層鉄心21を構成するようにしてもよい。
(実施例)
本発明の効果を検証すべく、第2実施形態に係る変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法を実施した。
先ず、板厚0.3mmの方向性電磁鋼板を用意した。この方向性電磁鋼板は、振動解析の対象となる図2に示す三相三脚変圧器用の積層鉄心21を構成する方向性電磁鋼板22と同じものである。この方向性電磁鋼板について、磁束密度1.7Tにおける磁歪の周波数スペクトルを測定したところ、図12に示すような結果を得た。
次いで、用意した方向性電磁鋼板を積層して振動解析の対象となる図2に示す三相三脚変圧器用の積層鉄心21を作成した。積層鉄心21の鋼板積層厚は100mmとした。また、上ヨーク22aおよび下ヨーク22bの寸法は、幅100mm×長さ500mmとした。また、三本の脚部22cの寸法は、幅100mm、鉄心窓長を300mmに設定して、上ヨーク22aおよび下ヨーク22b間に100mm間隔で連結した。
そして、作成した積層鉄心21の三本の脚部22cにそれぞれIV電線を巻いて励磁用コイルとし、そのコイルに50Hzの3相電流を通電して鉄心磁束密度がちょうど1.7Tとなるように電源電圧を調整してから、騒音計を用いて励磁騒音を測定した。使用した騒音計の騒音周波数スペクトルを求める機能を用いて騒音周波数スペクトルを求めたところ、図11に示すような騒音の周波数スペクトルが得られた。
次に、振動解析装置10は、図10に示すステップS11(第1ステップ)において、前述の積層鉄心21の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトル(図11)を入力装置16で取得した。
次いで、振動解析装置10は、ステップS12(第2ステップ)において、前述の励磁磁歪の周波数スペクトルデータ(図12)を入力装置16で取得した。
次に、振動解析装置10は、ステップS13(第3ステップ)において、振動解析装置10にインストールされた構造解析ソフトを用いて振動解析の対象となる変圧器の積層鉄心21について振動応答解析を実施した。
ここで、積層鉄心21の縦弾性係数Ex、Ey、Ez、横弾性係数Gyz、Gzx、Gxyおよびポアソン比νxy、νyz、νzxの計9個の機械的物性値のうちの7個は以下のように設定した。
Ex=132GPa、Ey=220GPa、Ez=10GPa
Gxy=116GPa
νxy=0.37、νyz=νzx=0
ここで、x、y、zは、鋼板圧延方向をx、鋼板積層方向をzとしている。
そして、残る2つの積層方向を含む二面における横弾性係数GyzおよびGzxについては、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bと脚部22cとで異なっている。このため、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz=Gzx=Gと設定し、脚部22cの横弾性係数Gyz=Gzx=Gと設定し(G、Gのそれぞれは所定範囲から選定された特定の値)、この特定の値G、Gの組み合わせに対する変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルを求めた。ここで、ここで特定の値G、Gのそれぞれが選定される所定範囲は、実際に、変圧器の積層鉄心21の構造から予想される横弾性係数の範囲であり、本実施形態では、0.02GPaから1.0GPaの範囲である。
例えば、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz=Gzx=Gが0.2GPa、脚部22cの横弾性係数Gyz=Gzx=Gが0.1GPaのときは、積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルは図13に示すようになる。
次に、振動解析装置10は、ステップS14(第4ステップ)において、ステップS12(第2ステップ)で取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、ステップS13(第3ステップ)で求めた変圧器の積層鉄心21の振動応答関数の周波数スペクトルとから変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルを算出した。
例えば、積層鉄心21を構成する上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz=Gzx=Gが0.2GPa、脚部22cの横弾性係数Gyz=Gzx=Gが0.1GPaのときの、積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルは、図14に示すようになる。
次に、振動解析装置10は、ステップS15(第5ステップ)において、ステップS11(第1ステップ)で取得した変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、ステップS14(第4ステップ)で算出した変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求めた。
ここで、変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度は、第1実施形態と同様に、コサイン一致度を採用している。
次に、振動解析装置10は、ステップS16(第6ステップ)において、上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gyz=Gzx=Gの値、及び脚部22cの横弾性係数Gyz=Gzx=Gの値をそれぞれ前述の所定範囲内で変更して特定の値G、G値の組み合わせを変更し、ステップS13(第3ステップ)からステップS15(第5ステップ)を繰り返し、前述の一致度が極大となる特定の値G、Gの組み合わせを決定した。この決定された特定の値G、Gが、それぞれ上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数GzxおよびGyz、脚部22cの横弾性係数GzxおよびGyzとなる。
実施例の振動解析装置10が行うステップS16においては、パラメータ(G、G)が2個あるので、数値的探索を2次元的に行う必要が生じ、探索点数が非常に多くなり多大な労力を要する。従って、実施例では、AI(人工知能)技術を活用して、GA(遺伝的アルゴリズム)を用いた最適化探索法を用いて、ステップS1(第1ステップ)で取得した変圧器の積層鉄心21の騒音の周波数スペクトルと、ステップS14(第4ステップ)で算出した変圧器の積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を評価関数とした探索法を採用した。
上記GA(遺伝的アルゴリズム)を用いた最適化探索を行ったところ、上ヨーク22a及び下ヨーク22bの横弾性係数Gが0.25GPa、脚部22cの横弾性係数Gが0.15GPaのとき、前述の一致度が極大となることが分かった。
最後に、G=0.25GPa、G=0.15GPaとするG、Gの組み合わせに対して計算した積層鉄心21の励磁振動の周波数スペクトルを、変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルの最終的な計算値とした。
そして、図15に、実施例における、変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルの計算値と、変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求められた騒音の周波数スペクトルの実測値とを示す。両者は非常によく一致しており、実施例によって、構成式中の弾性マトリックスに含まれる変圧器の積層鉄心21の上ヨーク22a及び下ヨーク22bの積層方向を含む二面における横弾性係数GzxおよびGyzと、変圧器の積層鉄心21の脚部22cの積層方向を含む二面における横弾性係数GzxおよびGyzを精度良く求めることができることが確認できた。
10 振動解析装置
11 CPU
12 演算処理装置
13 内部バス
14 内部記憶装置
15 外部記憶装置
16 入力装置
17 出力装置
18 記録媒体
21 積層鉄心
22 方向性電磁鋼板(鋼板)
22a 上ヨーク
22b 下ヨーク
22c 脚部

Claims (4)

  1. 応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した変圧器の積層鉄心の振動解析を行うに際し、前記構成式中の弾性マトリックスに含まれる前記変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数が前記積層鉄心を構成する複数(n個)の部位において同一である当該同一の積層方向を含む二面における横弾性係数を決定する変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法であって、
    振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求めた騒音の周波数スペクトルを取得する第1ステップと、
    前記変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを取得する第2ステップと、
    振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心について、積層方向を含む二面における横弾性係数を所定範囲から選定された特定の値Gとして振動応答解析を行い、この特定の値Gに対する前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルを求める第3ステップと、
    前記第2ステップで取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、前記第3ステップで求めた前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルとから前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルを算出する第4ステップと、
    前記第1ステップで取得した前記変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと、前記第4ステップで算出した前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求める第5ステップと、
    前記特定の値Gを前記所定範囲内で変更して、前記第3ステップから前記第5ステップを繰り返し、前記一致度が極大となる特定の値Gを決定する第6ステップと、
    を含むことを特徴とする変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法。
  2. 応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式を使用して鋼板を積層した変圧器の積層鉄心の振動解析を行うに際し、前記構成式中の弾性マトリックスに含まれる前記変圧器の積層鉄心の積層方向を含む二面における横弾性係数が前記積層鉄心を構成する複数(n個)の部位ごとに異なっている当該複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数を決定する変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法であって、
    振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心の励磁騒音を測定して求めた騒音の周波数スペクトルを取得する第1ステップと、
    前記変圧器の積層鉄心を構成する電磁鋼板と同じ電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータを取得する第2ステップと、
    振動解析の対象となる前記変圧器の積層鉄心について、前記複数(n個)の異なる積層方向を含む二面における横弾性係数をそれぞれ所定範囲から選定された特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせとして振動応答解析を行い、この特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせに対する前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルを求める第3ステップと、
    前記第2ステップで取得した電磁鋼板の励磁磁歪の周波数スペクトルデータと、前記第3ステップで求めた前記変圧器の積層鉄心の振動応答関数の周波数スペクトルとから前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルを算出する第4ステップと、
    前記第1ステップで取得した前記変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと、前記第4ステップで算出した前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度を求める第5ステップと、
    前記特定の値G、G、・・・、Gの値をそれぞれ前記所定範囲内で変更して前記特定の値G、G、・・・、Gの値の組み合わせを変更し、前記第3ステップから前記第5ステップを繰り返し、前記一致度が極大となる特定の値G、G、・・・、Gの組み合わせを決定する第6ステップと、
    を含むことを特徴とする変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法。
  3. 前記第5ステップで求める、前記第1ステップで求めた前記変圧器の積層鉄心の騒音の周波数スペクトルと、前記第4ステップで算出した前記変圧器の積層鉄心の励磁振動の周波数スペクトルとの一致度の評価方法が、コサイン一致度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変圧器の積層鉄心の弾性マトリックス決定方法。
  4. 応力と歪みとの関係を行列表示で表した構成式の弾性マトリックスに、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の弾性マトリックス決定方法で決定した横弾性係数を組み込んで鋼板を積層した変圧器の積層鉄心の振動解析を行うことを特徴とする変圧器の積層鉄心の振動解析方法。
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