JP2021134353A - ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ - Google Patents

ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、高電圧コンデンサに用いた際の高温環境での耐電圧特性、信頼性に優れ、高温度、高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対する安定性に優れた構造を有し、さらに蒸着工程を含む搬送工程においてシワの発生がない、加工性に優れたポリプロピレンフィルムを提供することを課題とする。【解決手段】 本発明は、広角X線回折で測定される、α晶(110)面の主配向方向に走査して得られる結晶子サイズと主配向方向と直交する方向に走査して得られる結晶子サイズとの差の絶対値が3.0nm以下であり、熱機械分析(TMA)における昇温速度10℃/minでの昇温過程において135℃での長手方向の収縮応力(SF135MD)が2.0MPa以下であるポリプロピレンフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、特にコンデンサ用途に好適に用いられるポリプロピレンフィルムに関する。
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。
この中でもコンデンサ用途においては、その優れた耐電圧性、低損失特性から直流、交流に限らず高電圧コンデンサ用にポリプロピレンフィルムは特に好ましく用いられている。
最近では、各種電気機器がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。そのような分野、特に自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)や太陽光発電、風力発電用途からの要求を受け、ポリプロピレンフィルムとしても薄膜化と絶縁破壊電圧の向上、高温環境で長時間の使用において特性を維持できる優れた信頼性が必須な状況となってきている。
ポリプロピレンフィルムは、ポリオレフィン系フィルムの中では耐熱性および絶縁破壊電圧は高いとされている。一方で、前記の分野への適用に際しては使用環境温度での優れた寸法安定性と使用環境温度より10〜20℃高い領域でも耐電性などの電気的性能として安定した性能を発揮することが求められている。ここで耐熱性という観点では、将来的に、シリコンカーバイト(SiC)を用いたパワー半導体用途を考えた場合、使用環境温度がより高温になるといわれている。コンデンサとしてさらなる高耐熱化と高い耐電圧性の要求から、110℃を超えた高温環境下でのフィルムの絶縁破壊電圧の向上が求められている。しかしながら、非特許文献1に記載のように、ポリプロピレンフィルムの使用温度上限は約110℃といわれており、このような温度環境下において絶縁破壊電圧を安定して維持することは極めて困難であった。
またフィルムを蒸着加工する過程でも、輻射熱による熱履歴を受けてフィルムの配向が緩和する場合があるため、熱に対して不安定なフィルムは本来フィルムが有する耐電圧性能をコンデンサとして十分発揮することが困難であった。
これまでポリプロピレンフィルムを薄膜で、かつ、コンデンサとしたときの高温環境下で優れた性能を得るための手法として、例えば、広角X線回折で得られるα(040)面の結晶子サイズ、光学的複屈折および一定の高さの表面突起部の総体積を制御しコンデンサとして高温で長期間使用できるフィルムの提案(例えば、特許文献1)、また粘度が異なるポリプロピレン樹脂をブレンドし溶融押出後に急冷することにより、キャストシートにメゾ相を形成させることでフィルム表面の突起の凹み部位を減らし平滑表面により高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示すフィルムの提案がなされている(例えば、特許文献2)。また、歪み硬化性パラメータが一定の範囲内であるポリプロピレン原料を用いることにより、絶縁破壊強度を向上することが提案されている(例えば、特許文献3)。
特開2014−231584号公報 特開2019−179221号公報 国際公開第2017/221985号
河合基伸、「フィルムコンデンサ躍進、クルマからエネルギーへ」、日経エレクトロニクス(日本)、日経BP社、2012年9月17日号、p.57-62
しかしながら、特許文献1に記載のポリプロピレンフィルムは、110℃を超える高温環境下での絶縁破壊電圧の向上が十分ではなく、さらにコンデンサ化した際の耐電圧や高温環境下の信頼性についても、十分とは言い難いものであった。
また特許文献2に記載のポリプロピレンフィルムは115℃の高温で高い絶縁破壊電圧を有するがフィルムの突起高さが十分でなく、蒸着加工工程においてシワが発生したり、115℃を超える高温環境化ではコンデンサ化した際に信頼性が悪化する場合があった。
また特許文献3に記載のポリプロピレンフィルムについては、高温環境下での使用は想定されておらず、110℃を超える温度帯においてコンデンサ耐電圧や信頼性が損なわれる場合があった。
そこで、本発明は、高温環境での耐電圧特性・信頼性に優れ、高温度・高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対する安定性に優れた構造を有し、適度な加工性を得られるポリプロピレンフィルムを提供することを目的とし、また、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の課題を解決するため鋭意検討を重ね、上記特許文献1〜3に記載のポリプロピレンフィルムが高温環境下において絶縁破壊電圧、並びにコンデンサとしたときの高温環境での耐電圧特性・信頼性・加工性が十分でない理由について、以下のように考えた。
すなわち、特許文献1に記載のポリプロピレンフィルムは、コンデンサとして110℃環境での耐電圧性および信頼性については十分ともいえるが、更に高温環境での耐電圧性を想定してみると、フィルム製膜における延伸倍率と熱処理、分子鎖の配向と構造の固定が必ずしも十分ではなく、より高い温度でフィルムの非晶鎖が配向緩和し耐電圧が低下することに問題があると考えた。特許文献2に記載のポリプロピレンフィルムはフィルム表面が平滑であるため十分な易滑性が得られない場合があり、低メルトフローレート(MFR)のポリプロピレン原料をブレンドする事によりゲルが発生して耐電圧の低下を招く場合や、ゲルが起点となって製膜中にフィルムが破れる場合があることが問題であると考えた。特許文献3のポリプロピレンフィルムは、一定の範囲内の歪み硬化性をもつポリプロピレン原料を含有したものであるが、製膜時の延伸条件を適正化することでフィルムの構造を制御する思想がないため分子鎖の配向と構造の固定が必ずしも十分でなく、高温環境下で非晶鎖が配向緩和し耐電圧が低下する場合があることが問題であると考えた。
以上の考察を踏まえて、本発明者らはさらに検討を重ね、広角X線回折のα晶(110)面の主配向方向に走査して得られる(Through−TDの)結晶子サイズと主配向方向と直交する方向に走査して得られる(Through−MD)との結晶子サイズの差が一定の値以下であること、熱機械分析(TMA)において135℃での長手方向への収縮応力が一定の値以下であるフィルムとすることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、広角X線回折で測定されるα晶(110)面の、主配向方向に走査して得られる結晶子サイズと主配向方向と直交する方向に走査して得られる結晶子サイズとの差の絶対値が3.0nm以下であり、熱機械分析(TMA)における昇温速度10℃/minでの昇温過程において135℃での長手方向の収縮応力(SF135MD)が2.0MPa以下であるポリプロピレンフィルムである。
また本発明は、本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を有する金属膜積層フィルムである。
また本発明は、本発明の金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサである。
本発明により、高温環境での耐電圧特性・信頼性に優れ、高温度・高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対して構造安定性に優れ、蒸着工程を含む搬送工程においてシワの発生が少ない適度な加工性を得られるポリプロピレンフィルムが提供される。また、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサが提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明において「以上」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも大きいことを意味する。また、「以下」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも小さいことを意味する。また、「室温」とは、23℃を意味する。
本発明のポリプロピレンフィルムは直鎖状のポリプロピレン樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、ポリプロピレンフィルムを構成する成分のうち最も質量分率の高いもの(含有量の多いもの)をいう。
以下、ポリプロピレンフィルムを単にフィルムと称することがある。
ポリプロピレン樹脂は、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分が用いられてもよいし、プロピレンの単独重合体ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成するプロピレン以外の単量体成分として例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテンー1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
プロピレン成分以外の共重合量またはブレンド量は、絶縁破壊電圧、耐熱性の点から、共重合量としては1mol%以下とすることが好ましく、ブレンド量ではプロピレン以外の成分の量としてフィルムを構成する樹脂全体の1質量%以下とすることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、その重量平均分子量Mwおよびz+1平均分子量Mz+1に対してMz+1/Mwが3以上10以下であることが好ましい。Mz+1/Mwを10以下、より好ましくは7.9以下、さらに好ましくは6.9以下、特に好ましくは6.5以下、最も好ましくは6.1以下とすることで、分子量分布が狭くフィルムの構造としても局所的なムラの少ない均一な構造となり、熱収縮を抑え、また高温環境下での絶縁破壊電圧向上の効果を得ることができる。
z+1/Mwを上記の範囲に制御する手段としては、ポリプロピレン樹脂Aとしてメソペンタッド分率が0.97以上またはチップ融点が160℃以上、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3質量%未満、数平均分子量(Mn)が7万(7.0×10)以下、Z+1平均分子量(Mz+1)が300万(3.0×10)未満の原料を使用し、ポリプロピレン樹脂Bおよび/またはポリプロピレン樹脂Cを本願の好ましい範囲内で適宜ブレンドすることにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば有機粒子、無機粒子、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤を含有してもよい。
酸化防止剤を含有させる場合、その酸化防止剤の種類および添加量の選定は、長期耐熱性の観点からなされることが好ましい。かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1,177.7)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン全量に対して0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましい。0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上とすることで、長期耐熱性に優れる。1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下とすることで、酸化防止剤のブリードアウトによる高温下でのブロッキングを抑え、コンデンサ素子への悪影響を防ぐことができる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲でポリプロピレン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。ポリプロピレン樹脂以外の樹脂としては、各種ポリオレフィン系樹脂を含むビニルポリマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、特に、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンコポリマ、シクロオレフィンポリマー、シンジオタクチックポリスチレンなどが好ましく例示される。ポリプロピレン樹脂以外の樹脂の含有量は、ポリプロピレンフィルムを構成する樹脂成分全体を100質量%とした場合、30質量%未満が好ましく、より好ましくは19質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、最も好ましくは9質量%以下である。ポリプロピレン樹脂以外の樹脂の含有量が30質量%以上であると、ドメイン界面の影響が大きくなるため、高温環境下での絶縁破壊電圧を低下させてしまう場合がある。
本発明のポリプロピレンフィルムは、広角X線回折で測定されるα晶(110)面の、主配向方向に走査して得られる結晶子サイズと主配向方向と直交する方向に走査して得られる結晶子サイズとの差の絶対値(以降、「α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差」とも呼ぶ。)が3.0nm以下であり、かつ熱機械分析(TMA)における昇温速度10℃/minでの昇温過程において135℃での長手方向の収縮応力(SF135MD)が2.0MPa以下であることが重要である。
なお、本発明のポリプロピレンフィルムは、微多孔フィルムではない。ここで微多孔フィルムとは、フィルムの両表面を貫通し、JIS P 8117(2009)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mLの空気の透過時間が5,000秒/100mL以下である透気性を有する孔構造を有するフィルムと定義する。
本発明のポリプロピレンフィルムは、α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差が3.0nm以下、収縮応力SF135MDが2.0MPa以下であることが重要である。
本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差は高温環境下でのコンデンサの耐電圧特性・信頼性との間に高い相関性があり、さらに熱収縮応力SF135MDはコンデンサとしたときの加工性と耐電圧特性に影響する。コンデンサ用途において、高温環境で長時間の使用においても高い信頼性を有するポリプロピレンフィルムを得るには、α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差と熱収縮応力SF135MDが一定の値以下にあるよう制御することが、特に高温環境下のコンデンサ耐電圧特性・長期信頼性・加工性において重要である。
ポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差が3.0nm以下であるということは、長手方向と幅方向においてフィルムを構成する結晶ラメラの幅の差が小さく、より均一な構造であることを示唆する。α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差を3.0nm以下、好ましくは2.5nm以下、より好ましくは2.1以下、さらに好ましくは1.9nm以下、さらに好ましくは1.7nm以下とすることで、構造差が小さく、より均一な構造になり結晶配向度も高まりやすく、フィルムが加熱されても構造変化が小さく抑えられる。その結果、フィルムは特に高温環境において非常に安定な構造となり、高温でも高い絶縁破壊電圧を示すため、コンデンサとしたときに漏れ電流が小さくなり、高温環境で優れた信頼性を発現できる。α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差が3.0nmより大きい場合には、高電圧がかかる高温環境下にてコンデンサとして用いられた場合、特に長時間の高温状態に置かれた際に、フィルムの結晶緻密性が低く、隣り合う結晶ラメラと結晶ラメラを繋ぐ非晶部の分子鎖緩和が進行して耐電圧を低下させる。そのため、コンデンサ容量減少やショート破壊などを生じ、信頼性の劣ったコンデンサとなる。また、α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差は、フィルム全体の構造差を小さく、より均一な構造とし二軸延伸しても安定してフィルムを得る観点から0.5nm以上が好ましい。
結晶子サイズの差は、β晶球晶サイズを小さく制御した未延伸シートを、延伸工程で高い面積倍率で延伸し、特に幅方向へ高倍率に延伸することで小さくすることができる。後述するように、例えばポリプロピレン原料A(ポリプロピレン樹脂(A)ということもある。後述するポリプロピレン原料(B)、ポリプロピレン原料(C)についても同様とする。)として高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満のポリプロピレン原料Aおよび/またはポリプロピレン原料Bの使用、分岐鎖状のポリプロピレン原料Cを含有すること、キャスティングドラムの温度を後述する好ましい範囲とすること、長手方向の延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより、前述のようにα晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差の小さいポリプロピレンフィルムを好ましく得ることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、熱機械分析(TMA)の昇温過程において、135℃での長手方向の収縮応力(SF135MD)が2.0MPa以下であることが必要である。SF135MDを2.0MPa以下、好ましくは1.8MPa以下、より好ましくは1.5MPa以下、さらに好ましくは1.3MPa以下とすることで、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮を抑制できる。そのため、コンデンサとしたときに素子が強く巻き締まらないためフィルム層間の適度な隙間を保持することで自己回復機能(セルフヒーリング)が動作し、急激な容量減少を伴う貫通ショート破壊が抑制され、コンデンサとしての信頼性が高まる。SF135MDが2.0MPaより大きくなる場合には、高電圧がかかる高温環境下にてコンデンサとして用いられた場合、特に長時間の高温状態に置かれた際に、フィルムの分子鎖緩和が進行して耐電圧が低下する。そのため、コンデンサ容量減少やショート破壊などを生じ、信頼性の劣ったコンデンサとなる。
一方、SF135MDは0.1MPa以上が好ましい。0.1MPa以上とすることで、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮が十分なものとなり、設計に応じた容量を得ることができる。
上記のような好ましい範囲内のSF135MDは、後述するように、例えばポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより得ることが可能である。
ここで本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向(以降、「MD」という場合がある)であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向(以降、「TD」という場合がある)である。フィルムサンプルがリール、ロール等の形状の場合はフィルム巻き取り方向が長手方向といえる。一方、フィルムの外観からは何れの方向がフィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であるかが不明なフィルムの場合は、スリット状のフィルム片をサンプリングして引張り試験器にて破断強度を求め、最大の破断強度を与える方向を、そのフィルム幅方向および主配向方向とみなし、そのフィルム幅方向に直交する方向を長手方向および主配向方向と直交する方向とみなす。詳細は後述するが、サンプルの幅が50mm未満で引張り試験器では破断強度を求めることができない場合は、広角X線によるα晶(110)面の結晶配向を次のように測定し、下記の判断基準に基づいてフィルム長手および幅方向とする。すなわち、フィルム表面に対して垂直方向にX線(CuKα線)を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も高い方向をフィルム幅方向および主配向方向とし、それと直交する方向を長手方向および主配向方向と直交する方向とする。
本発明のポリプロピレンフィルムは広角X線回折で測定される、α晶(110)面の主配向方向と直交する方向に走査して得られる(Through−MDの)結晶子サイズが10.0nm以下であることが好ましい。この結晶子サイズを10.0nm以下、より好ましくは8.0nm以下、さらに好ましくは6.9nm以下、特に好ましくは6.6nm以下、最も好ましくは6.4nm以下とすることで、結晶が微細になり結晶配向度も高くなり、高温でも高い絶縁破壊電圧を示す。そのため、コンデンサとしたときに漏れ電流が小さくなり、高温環境で優れた信頼性を発現できる。α晶(110)面の主配向方向と直交する方向に走査して得られる結晶子サイズの下限は、フィルム全体の構造差を小さく、より均一な構造とし二軸延伸しても安定してフィルムを得る観点から実質3.0nmである。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは広角X線回折で測定される、α晶(110)面の主配向方向に走査して得られる(Through−TDの)結晶子サイズが10.0nm以下であることが好ましい。この結晶子サイズを10.0nm以下、より好ましくは9.0nm以下、さらに好ましくは8.9以下、特に好ましくは8.7nm以下、最も好ましくは8.5nm以下とすることで、結晶が微細になり結晶配向度も高くなり、高温でも高い絶縁破壊電圧を示す。そのため、コンデンサとしたときに漏れ電流が小さくなり、高温環境で優れた信頼性を発現できる。α晶(110)面の主配向方向に走査して得られる結晶子サイズの下限は、フィルム全体の構造差を小さく、より均一な構造とすることにより二軸延伸しても安定してフィルムを得る観点から実質5.0nmである。
本発明のポリプロピレンフィルムは、広角X線回折で測定されるα晶(110)面の結晶配向度が0.77以上であることが好ましい。この結晶配向度を0.77以上、より好ましくは0.78以上、さらに好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.82以上とすることで、フィルムを構成する結晶構造の配向秩序性の乱れを軽減し、部分的に絶縁破壊しやすい箇所が生じるのを抑えることができる。そのため、コンデンサとした場合に高温環境下においても容量低下やショート破壊の発生が抑えられ、耐電圧性が保たれるため、高い信頼性を得ることができる。一方、広角X線回折で測定されるα晶(110)面の結晶配向度は、二軸延伸後に安定してフィルムを得る観点から、0.95以下が好ましい。
上記のようなα晶(110)面の結晶配向度は、例えばポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満のポリプロピレン原料Aおよび/またはポリプロピレン原料Bの使用、分岐鎖状のポリプロピレン原料Cを含有すること、長手方向の延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とすることにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、125℃で60分加熱後のフィルムを広角X線回折で測定したとき、α晶(110)面の結晶配向度が0.73以上であることが好ましい。この結晶配向度を0.73以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.78以上、さらに好ましくは0.81以上とすることで、フィルムを構成する結晶構造の配向秩序性が高く保たれ、部分的に絶縁破壊しやすい箇所が発生するのを抑え、コンデンサとした場合に高温環境下においても容量低下やショート破壊を抑え、耐電圧性の低下を抑え、高い信頼性を得ることができる。
一方、二軸延伸後に安定してフィルムを得る観点から、125℃で60分加熱後のポリプロピレンフィルムを広角X線回折で測定したときのα晶(110)面の結晶配向度は0.95以下が好ましい。また、当該α晶(110)面の結晶配向度の下限は特に制限されないが、フィルムを構成する結晶構造の配向秩序性の乱れを軽減し、部分的に絶縁破壊しやすい箇所が生じるのを抑える観点から0.60となる。
上記のような、125℃で60分加熱後のフィルムを広角X線回折で測定したときのα晶(110)面の結晶配向度は、後述するように、例えばポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で145℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより得ることが可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、150℃で10分加熱後のフィルムを室温で引っ張り試験したときのフィルム長手方向の伸度5%時の応力(F5MD)と、同条件で加熱後のフィルムを室温で引っ張り試験したときのフィルム幅方向の伸度5%時の応力(F5TD)との和が150MPa以上であることが好ましい。F5MDとF5TDとの和を150MPa以上、より好ましくは170MPa以上、さらに好ましくは180MPa以上、さらに好ましくは190MPa以上とすることで、高温環境下での剛性を有し、コンデンサとした場合に高い信頼性を得ることができる。
一方、F5MDとF5TDとの和は、300MPa以下が好ましい。300MPa以下とすることで、フィルムの製膜工程にて破断し製膜性が低下するのを抑えることができる。
上記のような範囲のF5MDとF5TDとの和は、後述するように、例えばポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で145℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより得ることが可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、125℃で15分加熱処理後の幅方向の熱収縮率(HS125TD)が1.0%以下であることが好ましい。この熱収縮率を1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.4%以下とすることで、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によるフィルムの収縮や、素子端部メタリコンとの接触不良による耐電圧性の低下を抑え、素子が巻き締まることによる容量低下やショート破壊に伴って信頼性が悪化するのを防ぐことができる。
一方、125℃で15分加熱後の幅方向の熱収縮率は、0.02%以上とすることが好ましい。0.02%以上とすることで、コンデンサ製造工程や使用工程の熱により素子の巻き状態が緩むのを防ぐことができる。
上記のような範囲の、フィルム幅方向の125℃15分加熱処理における熱収縮率は、例えば後述するように、ポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)が170℃以上であることが好ましい。Tmを170℃以上、より好ましくは171℃以上、さらに好ましくは172℃以上、さらに好ましくは173℃以上、さらに好ましくは174℃以上とすることで、高温環境下での絶縁破壊電圧を効果的に向上させることができる。一方、Tmはポリプロピレン樹脂が工業的に製造できる観点から200℃以下が好ましい。
上記のような範囲のTmは、例えば後述するように、ポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用することにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)と、昇温後260℃から30℃まで20℃/minで降温した際に得られる結晶化ピーク温度(Tc)との差(Tm−Tc)が65℃以下であることが好ましい。(Tm−Tc)を65℃以下、より好ましくは63℃以下、さらに好ましくは61℃以下、さらに好ましくは59℃以下、さらに好ましくは57℃以下とすることで、樹脂の冷却固化プロセスにおける結晶化時間を短くし、粗大な球晶の形成を抑えることができる。キャストシートにおいてこのような粗大球晶の形成を抑えることで、延伸工程での内部ボイドの発生や、表面における粗大な突起が形成されることによるコンデンサとしたときの信頼性低下を軽減できる。さらに、フィルム表面の全体に平坦な箇所が多くなることによりフィルムの易滑性が悪化して、加工性が悪化するのを防ぐこともできる。
一方、TmとTcとの差(Tm−Tc)は、40℃以上が好ましい。40℃以上とすることで、製膜安定性に優れる。
ここで、本発明のポリプロピレンフィルムがポリプロピレンとポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂とを含むフィルムである場合には、非相溶樹脂の融解ピーク温度がポリプロピレンの融解ピーク温度とは別の温度に観測される場合があるが、本発明においては170℃以上200℃以下に観測されるピークの温度を本発明のポリプロピレンフィルムの融解ピーク温度(Tm)、結晶化ピーク温度(Tc)とする。このとき、ピークが前記温度範囲の中で2つ以上観測される場合や、ショルダーと言われる多段型のDSCチャートに観測できるピーク温度(2つ以上のピークが重なり合ったチャートの場合に観測される)の場合があるが、本発明においてはDSCチャートの縦軸熱流(単位:mW)の絶対値が最も大きいピークを選択し、それぞれTm、Tcとする。
上記のような範囲の(Tm−Tc)は、例えばポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満のポリプロピレン原料Aおよび/またはポリプロピレン原料Bの使用、分岐鎖状のポリプロピレン原料Cを含有すること、これらの成分の比率を調整することで達成できる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現させるために、フィルムの少なくとも一方の表面におけるISO25178で定義されるスキューネス(Ssk)が−30を超えて5未満であることが好ましい。ここでSskとは、表面の凹凸の偏り度を示したパラメータである。このSskは、二乗平均平方根高さSqの三乗によって無次元化した基準面において、Z(x,y)の三乗平均を表したもので、歪度(わいど)を意味し、平均面を中心とした山部と谷部の対称性を表す数値である。そのため、Sskが0よりも小さい場合は平均線に対して下側に偏っている、つまり凸の山部よりも凹の谷部が多く存在することを意味する。他方、Sskが0よりも大きい場合は平均線に対して上側に偏っている、つまり凹の谷部よりも凸の山部が多く存在することを意味する。そして偏り度Sskが0の場合は、平均線に対して対称(正規分布)な状態を意味する。
Sskを−30を超えて、より好ましくは−28以上、さらに好ましくは−26以上とすることで、フィルム表面に凹みを有する形状が多く偏り過ぎるのを抑え、特に高電圧用コンデンサ用途において、高温環境下でも耐電圧性が損なわれにくくなり、フィルムの易滑性も得られ良好な加工性も得ることができる。
一方、Sskを5未満、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下とすることで、フィルム表面に凸部の形状が過剰に存在するのを抑え、コンデンサとしたときにフィルムとフィルムとの層間にギャップが生じるのを抑えて高温環境における容量低下を防ぎ、フィルムの易滑性が損なわれて耐電圧性や加工性が悪化するのを防ぐことができる。
本発明のポリプロピレンフィルムにおけるSskは、例えば後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料Bを使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)を好ましい範囲に制御することにより上記のような範囲内とすることが可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、一方の側の面の表面Aおよびもう一方の側の面の表面Bのそれぞれの、ISO25178で定義される突出山部高さSpkAおよびSpkBが以下の関係を満たすことが好ましい。
SpkA<SpkB
20nm≦SpkA≦100nm
80nm≦SpkB≦150nm
ここで、
SpkA:表面Aの突出山部高さ
SpkB:表面Bの突出山部高さ。
SpkはISO25178で定義される機能パラメータの一種で、高さデータのベアリングカーブの等価直線と負荷面積率=0%の直線との交点よりも高い部分(突出山部)の平均高さを示す。ここに、高さデータのベアリングカーブは、ある高さにおける頻度を高い側から累積し、全高さデータの総数を100%として百分率で表したものであり、ある高さCにおける負荷面積率はSmr(C)で与えられる。また、等価直線は、負荷面積率(Smr)の差が40%になる直線のうち最も傾きが小さくなるものである。
本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、SpkAは30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましい。またSpkAは90nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、SpkBは90nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましい。またSpkBは140nm以下であることがより好ましく、130nm以下であることがさらに好ましい。
SpkAおよびSpkBが上記範囲を満すことで、フィルムの表面突起高さが適度に高いため十分な易滑性が得られ、コンデンサ素子作成時の加工性に優れ、フィルム表面の過剰に高い突起を抑え、コンデンサの耐電圧低下を防ぐことができる。
SpkAおよびSpkBを上記した範囲内に制御することは、例えば後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料Bを使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)を好ましい範囲に制御することにより可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルムの少なくとも一方の表面における、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が35nm以上100nm以下であることが好ましい。Saを35nm以上、より好ましくは40nm以上とすることで、フィルムの滑りを適度に保ち、ハンドリング性に優れ、シワの発生を抑え、素子加工性に優れる。一方、Saを100nm以下、より好ましくは75nm以下、さらに好ましくは60nm以下とすることで、高い耐電圧を効果的に得ることができる。上記観点から、両面のうちSaが小さい方の面において、Saが35nm以上100nm以下、または上記好ましい範囲であることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムのSaを上記した好ましい範囲内に制御するには、例えば後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料Aにポリプロピレン原料Bおよび/またはポリプロピレン原料Cを使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)を好ましい範囲に制御することにより可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、少なくとも一方の表面において、走査型白色干渉顕微鏡により測定される、0.561mm×0.561mmの領域における深さ20nm以上の谷の容積を合計した総容積が50μm以上5,000μm以下であることが好ましい。この総容積を50μm以上、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは500μm以上とすることで、表面の凹凸を適度に有し、適度なフィルムの滑りによりハンドリング性が向上する上、シワの発生が軽減されて素子加工性が向上する。また、コンデンサとして長時間使用したときでもシワ等の影響で容量変化が大きくなるのを抑え、フィルムを積層したコンデンサとした場合にもフィルムとフィルムとの間に適度な隙間を有することから自己回復機能(セルフヒーリング)が働きコンデンサの信頼性が向上する。一方、谷の総容積を5,000μm以下、好ましくは4,000μm以下、更に好ましくは3,500μm以下、特に好ましくは3,000μm以下とすることで、局所的に厚みが薄い部分ができて絶縁破壊が生じるのを抑えることができる。そのため、フィルムの耐電圧性が向上し、高電圧用コンデンサ用途に用いたときでも高温環境下での耐電圧性と信頼性を向上させることができる。
フィルム表面の谷の総容積を上述した好ましい範囲とすることは、例えば後述するポリプロピレン原料Bを使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を60倍以上、好ましくは65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)を好ましい範囲に制御することにより可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、適度な易滑を付与してコンデンサ素子作成時の加工性を高める観点から、少なくとも一方の側の面について、同じ側の面同士を重ね合わせた際の静摩擦係数(μ)が0.3以上1.5以下であることが好ましい。この静摩擦係数μを0.3以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.5以上とすることで、フィルムが滑りすぎて製膜時の巻き取りや素子加工時に巻きずれが発生するのを防ぐことができる。一方、静摩擦係数μを1.5以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下とすることで、フィルムの滑り性の極端な低下が抑えられるため、シワの発生を抑え、さらにハンドリング性や素子加工性を向上させることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるメソペンタッド分率が0.970以上であることが好ましい。メソペンタッド分率はポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、メソペンタッド分率を0.970以上、より好ましくは0.975以上、さらに好ましくは0.981以上とすることで、結晶化度が高く、融点が高くなり、高温環境下での絶縁破壊電圧を向上できる。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。
本発明では、高メソペンタッド分率のポリプロピレン樹脂は、特に、チーグラー・ナッタ触媒により作製されたものが好ましく、該触媒において電子供与成分の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。これによるポリプロピレン樹脂は分子量分布(Mw/Mn)を3.0以上、<2,1>エリトロ部位欠損を0.1mol%以下とすることができ、このようなポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、キシレンでポリプロピレンフィルムを完全に溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分(CXS、冷キシレン可溶部とも言う)が3.0質量%以下であることが好ましい。ここでCXSは、立体規則性が低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分が該当すると考えられる。CXSを3.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下、特に好ましくは1.1質量%以下、最も好ましくは0.9質量%以下とすることで、フィルムの耐熱性や高温での耐電圧性、あるいは絶縁破壊電圧を高めることができる。そのため、コンデンサに使用した場合において、高温環境下での緩和が抑えられて熱寸法安定性が向上し、もれ電流を抑えることができる。またCXSの下限は特に限定されないが、0.1質量%であることが実用的である。CXSを0.1質量%未満にしようとすると、製膜時の延伸性が悪化し破れを生じたりする場合がある。
CXSの含有量を上記のような範囲とするには、使用するポリプロピレン樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られたポリプロピレン樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法等が使用できる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、130℃での絶縁破壊電圧が350V/μm以上であることが好ましい。この絶縁破壊電圧を350V/μm以上、より好ましくは375V/μm以上、さらに好ましくは400V/μm以上、さらに好ましくは420V/μm以上とすることで、コンデンサとしたときに特に高温環境で長時間の使用でもショート破壊を引き起こし難くなるため、耐電圧性が維持され、高い信頼性を得ることができる。130℃での絶縁破壊電圧の上限は特に限定されないが、800V/μm程度である。
130℃でのフィルム絶縁破壊電圧を上記の範囲に制御するには、例えば後述するように、ポリプロピレン原料Aとして高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01〜1.10倍の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、表面処理が施されていることが好ましい。ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難である。そのため、金属膜との接着性を改善する目的で、蒸着前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理とは具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。
通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、本発明のポリプロピレンフィルムは、これらの表面処理によって、濡れ張力を好ましくは37〜75mN/m、より好ましくは39〜65mN/m、さらに好ましくは41〜55mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、コンデンサとしての保安性も良好となるので好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム厚みが0.5μm以上25μm未満であることが好ましい。フィルム厚みを0.5μm以上25μm未満、より好ましくは0.6μm以上6μm以下、さらに好ましくは0.8μm以上4μm以下、さらに好ましくは1μm以上2.5μm以下とすることで、高温環境下での耐電圧特性と薄膜化によるコンデンササイズの小型化のバランスに優れ、特に高温環境下で用いられる自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)等に要求される薄膜の耐熱フィルムコンデンサ用に好適である。
フィルム厚みは、例えば、押出吐出量、キャスティングドラムの回転速度、口金のリップ間隙、延伸倍率を調整すること等により、調整することができる。より具体的には、押出吐出量を少なくする、キャスティングドラムの回転速度を上げること、口金のリップ間隙を狭めること、延伸倍率を高めること等により、小さくすることができる。なお、これらの方法は適宜併用することもできる。
本発明のポリプロピレンフィルムは単層フィルムの態様であることが好ましいが、積層フィルムの態様であってもよい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプは種々のものに用いることができる。具体的には、電極構成の観点では金属箔とフィルムとの合わせ巻きコンデンサ、金属蒸着フィルムコンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。本発明のフィルムの特性を活かす観点からは、金属蒸着フィルムコンデンサとして特に好ましく使用される。コンデンサにおけるフィルムの形状としては、捲回式であっても積層式であってもよい。
本発明のポリプロピレンフィルムを製造する方法について、例を挙げて説明する。
先ず、本発明のポリプロピレンフィルムに用いると好ましい原料について説明する。前述のように、本発明ポリプロピレンフィルムを得るために、複数の種類の、特に数平均分子量の異なるポリプロピレン原料を用いることが好ましい。
ポリプロピレン原料Aは、直鎖状のポリプロピレンであって、後述するポリプロピレン原料Bよりも数平均分子量(Mn)の小さいものを指す。ポリプロピレン原料AのMnは、フィルムを二軸延伸する観点から、3万(3.0×10)以上が好ましく、4万(4.0×10)以上がより好ましく、5万(5.0×10)以上がさらに好ましい。またポリプロピレン原料AのMnは、高温環境での熱安定性を得る観点から、9万(9.0×10)以下が好ましく、8万(8.0×10)以下がより好ましい。
ポリプロピレン原料AのZ+1平均分子量(Mz+1)は、フィルムを二軸延伸する観点から、100万(1.0×10)以上が好ましく、150万(1.5×10)以上がより好ましい。また、ポリプロピレン原料AのMz+1は、高温環境での熱安定性を得る観点から、250万(2.5×10)以下が好ましく、200万(2.0×10)以下がより好ましい。
ポリプロピレン原料Aは、冷キシレン可溶部(以下、CXS)が3質量%以下であることが好ましい。CXSを3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下とすることで、製膜安定性に優れ、フィルムの強度、寸法安定性、および耐熱性が向上する。CXSは低いほど好ましいが、0.1質量%程度が下限である。
CXSの含有量を上記のような範囲内とするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはオレフィンモノマー自身で洗浄する方法が使用できる。
ポリプロピレン原料Aのメソペンタッド分率は0.970以上であることが好ましい。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、メソペンタッド分率を0.970以上、より好ましくは0.975以上、さらに好ましくは0.980以上、さらに好ましくは0.983以上とすることで、結晶化度や融点が高くなり、高温での使用に適する。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。
メソペンタッド分率の高いポリプロピレン樹脂を得るには、例えばn−ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。
ポリプロピレン原料Aのチップの融点(樹脂の融点を意味する。以下同様とする。)としては、160℃以上が好ましい。チップの融点を160℃以上、より好ましくは163℃以上、さらに好ましくは166℃以上とすることで、フィルムとした際に高温環境下での耐電圧特性を効果的に得ることができる。
チップ融点は、チップを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られる融解ピーク温度とする。融解ピーク温度が前記温度範囲の中で2つ以上観測される場合や、ショルダーと言われる多段型のDSCチャートに観測できるピーク温度(2つ以上のピークが重なり合ったチャートの場合に観測される)の場合があるが、本発明においてはDSCチャートの縦軸熱流(単位:mW)の絶対値が最も大きいピークの温度をチップ融点とする。
本発明のポリオレフィンフィルムの原料におけるポリプロピレン原料Aの割合としては、ポリオレフィンフィルムに対してポリプロピレン原料Aが主成分、すなわち最も多いことが好ましい。
本発明のポリオレフィンフィルムの原料には、フィルムとした際に高温環境下での耐電圧特性を効果的に得る観点から、ポリプロピレン原料Aの他に、ポリプロピレン原料Aよりも数平均分子量(Mn)の大きいポリプロピレン原料Bを含むことも好ましい。
ポリプロピレン原料Bの数平均分子量(Mn)は、フィルムを二軸延伸する観点から、5万(5.0×10)以上が好ましく、6万(6.0×10)以上がより好ましく、7万(7.0×10)以上がさらに好ましい。一方、フィルムの高温環境での熱安定性を得る観点から、ポリプロピレン原料BのMnは12万(12.0×10)以下が好ましく11万(11.0×10)以下がより好ましく、10万(10.0×10)以下がさらに好ましい。
ポリプロピレン原料BのMnはポリプロピレン原料AのMnよりも大きく、1万(1.0×10)以上大きいことが好ましく、2万(2.0×10)以上大きいことがより好ましい。
ポリプロピレン原料BのZ+1平均分子量(Mz+1)は、フィルムを二軸延伸する観点から、250万(2.5×10)以上が好ましく、350万(3.5×10)以上がより好ましく、400万(4.0×10)以上がさらに好ましく、450万(4.5×10)以上がさらに好ましい。一方、フィルムの高温環境での熱安定性を得る観点から、ポリプロピレン原料BのMz+1は、800万(8.0×10)以下が好ましく、700万(7.0×10)以下がより好ましい。
ポリプロピレン原料BのMz+1は、フィルムの高温環境での熱安定性を得る観点から、ポリプロピレン原料AのMz+1平均分子量よりも大きいことが好ましく、50万(0.5×10)以上大きいことがより好ましく、100万(1.0×10)以上大きいことがさらに好ましく、150万(1.5×10)以上大きいことがさらに好ましい。
ポリプロピレン原料Bは、冷キシレン可溶部(CXS)の含有量が4.0質量%以下であることが好ましい。ポリプロピレン原料BにおけるCXSの含有量を4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下とすることで、製膜安定性に優れ、フィルムの強度が向上し、寸法安定性および耐熱性も向上する。CXSは低いほど好ましいが、0.1質量%程度が下限である。
CXSの含有量を上記のような範囲内とするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはオレフィンモノマー自身で洗浄する方法が使用できる。
ポリプロピレン原料Bのメソペンタッド分率は0.940以上であることが好ましく、より好ましくは0.95以上、更に好ましくは0.960以上である。
ポリプロピレン原料Bのチップの融点としては、160℃以上が好ましい。チップの融点を160℃以上、より好ましくは162℃以上、さらに好ましくは164℃以上とすることで、フィルムとした際に高温環境下での耐電圧特性を効果的に高めることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムの原料におけるポリプロピレン樹脂Bの含有量としては、ポリプロピレンフィルム100質量%において1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。ポリプロピレン原料Bの含有量は2質量%以上がより好ましい。また、ポリプロピレン原料Bの含有量は25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
ポリプロピレン原料Bの数平均分子量(Mn)、Z+1平均分子量(Mz+1)、冷キシレン可溶分(CXS)、メソペンタッド分率、チップ融点、および含有量を上記した好ましい範囲とし、さらに延伸前に長手方向に1.01〜1.10倍の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことによって、ポリプロピレン原料Aとの粘度差によって表面に適度な突起が形成され、さらに結晶と結晶を結ぶタイ分子の数が増えることで、延伸倍率を高めた際に分子鎖の配向が高まりやすくなり、高温環境下での非晶鎖の拘束力を高めることができる。
本発明のポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレン原料Aおよびポリプロピレン原料Bの他に、分岐鎖状のポリプロピレン原料Cを含んでもよい。
ポリプロピレン原料Cには、チーグラー・ナッタ触媒系やメタロセン系触媒系など、複数の製造方法があるが、ポリプロピレン原料Aやポリプロピレン原料Bと合わせて用いる観点において、低分子量成分、高分子量成分が少なく、分子量分布の狭いメタロセン触媒系がより好ましい。
ポリプロピレン原料Cの市販品として、具体的には例えば、Lyondell Basell社製“Profax”(登録商標)(PF−814など)、メタロセン触媒系としては、Borealis社製“Daploy”(商標)(WB130HMS、WB135HMS、WB140HMSなど)や日本ポリプロ(株)社製、“WAYMAX”(登録商標)(MFX8、MFX6、MFX3など)を適宜選択の上、使用することができる。
ポリプロピレン原料Cは、CXSが5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0質量%以下である。CXSは低いほど好ましいが、0.1質量%程度が下限である。CXSをこのような範囲に制御するには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはオレフィンモノマー自身で洗浄する方法が使用できる。
ポリプロピレン原料Cは、230℃における溶融張力が2cN以上40cN以下であることが延伸均一性の観点の観点から好ましい。溶融張力は3cN以上であることがより好ましく、5cN以上がさらに好ましい。また、30cN以下がより好ましく、20cN以下がさらに好ましい。ポリプロピレン原料Cの溶融張力を上記の範囲内とするためには、平均分子量や分子量分布、ポリプロピレン原料中の分岐度を制御する方法などを採用することができる。
本発明のポリプロピレンフィルムの原料における、ポリプロピレン樹脂Cの含有量としては、ポリプロピレンフィルム100質量%において0.10質量%以上が好ましい。ポリプロピレン原料Cの含有量は0.15質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上がさらに好ましく、0.50質量%以上がさらに好ましい。また、ポリプロピレン原料Cの含有量は10質量%以下が好ましく、4.5質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂Cの含有量を上記の範囲とすると、溶融ポリマーをシート状に形成する際に球晶サイズが大きくなり過ぎるのを防ぎ、高温耐電圧を保つことができる。
以下、上述のような原料を用いて本発明のポリプロピレンフィルムを製造する方法をより具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
上述のようなポリプロピレン樹脂を支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとすることができる。
ポリプロピレン原料を押出温度として好ましくは220℃以上280℃以下、より好ましくは230℃以上270℃以下に設定した単軸押出機から溶融押出し濾過フィルタを通した後、好ましくは200℃以上260℃以下、より好ましくは210℃以上240℃以下の温度でスリット状口金から押し出す。スリット状口金から押し出された溶融シートは、30℃以上110℃以下の温度に制御されたキャスティングドラム(冷却ドラム)上で固化され、未延伸ポリプロピレンフィルムとなる。溶融シートのキャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。キャスティングドラムの温度は、フィルムとしたときに表面の凹みが少なく、適度な易滑性を持つことで素子加工性の向上と耐電圧性の向上をはかる観点から、より好ましくは60℃以上110℃以下、さらに好ましくは80℃以上110℃以下である。
未延伸ポリプロピレンフィルムを、二軸延伸、熱処理および弛緩処理することによって、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、フィルムの製膜安定性、結晶・非晶構造、表面特性、特に本発明の幅方向に延伸倍率を高めながら機械特性および熱寸法安定性を制御する点においてテンターによる逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。逐次二軸延伸においては、未延伸ポリプロピレンフィルムを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸する。
縦延伸工程において、予備延伸と本延伸の多段延伸を施すことが好ましい。未延伸ポリプロピレンフィルムを好ましくは70℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上145℃以下に保たれたロール間に通して予熱し、長手方向に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を行う。これにより未延伸シートの球晶破壊が適度に進み分子鎖が予備配向することで、続く本延伸後に得られる延伸フィルムの結晶子サイズ、結晶配向および非晶鎖の拘束がより高まる。そのため、フィルムの耐電圧を向上させ、高温環境においても安定した構造とすることができる。
引き続き長手方向に予備延伸されたポリプロピレンフィルムを好ましくは70℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上145℃以下の温度に保たれたロール間にて、長手方向に好ましくは2.0倍以上15.0倍以下、より好ましくは4.5倍以上12.0倍以下、さらに好ましくは5.5倍以上10.0倍以下に本延伸した後、室温まで冷却する。
次いで長手方向に一軸延伸せしめたフィルムの幅方向両端部をクリップで把持したまま、テンターに導く。ここで本発明においては幅方向へ延伸する直前の予熱工程の温度を好ましくは幅方向の延伸温度+5〜+15℃、より好ましくは+5〜+12℃、さらに好ましくは+5〜+10℃とすることが好ましい。一軸延伸で長手方向に高配向したフィブリル構造をさらに強化でき、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制できるためである。また、温度条件を上記の通りとすることは、一軸延伸後、配向が不十分な分子鎖を高温予熱で安定化させることで熱寸法安定性が向上できる観点でも好ましい。予熱温度を延伸温度+5℃以上とすることで、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制でき、熱寸法安定性の向上が効果的に得られる。一方、予熱温度を延伸温度+15℃以下とすることで、延伸工程でフィルムが破れるのを抑えることができる。
次いでフィルムの端部をクリップで把持したまま幅方向へ延伸する。その際の温度(幅方向の延伸温度)は好ましくは150℃以上170℃以下、より好ましくは155℃以上165℃以下である。
フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制する観点から、幅方向の延伸倍率としては、11.0倍以上20.0倍以下が好ましい。幅方向の延伸倍率を11.0倍以上、より好ましくは11.5倍以上、さらに好ましくは12.0倍以上とすることで、一軸延伸で長手方向に高配向したフィブリル構造の配向寄与を小さくし、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を効果的に抑制することができる。幅方向の延伸倍率を高めることにより、長手方向の高い配向状態を保ったまま幅方向の配向が付与されるため、面内の分子鎖緊張が高まり、さらに熱に対する構造安定性も向上できる。そのため、幅方向の延伸倍率を上記の通りとすることは、トレードオフとなる熱収縮特性を改善できる効果を得られると考察している観点で好ましい。他方、幅方向の延伸倍率を20.0倍以下、より好ましくは19.0倍以下、さらに好ましくは18.0倍以下とすることで、製膜時のフィルム破れを軽減できる。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造において、面積延伸倍率は65倍以上であることが好ましい。面積延伸倍率とは、長手方向の延伸倍率に幅方向の延伸倍率を乗じたものである。面積延伸倍率を65倍以上、より好ましくは66倍以上、さらに好ましくは68倍以上、さらに好ましくは72倍以上とすることで、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑制し、コンデンサとしたとき高温環境で長時間の使用信頼性に優れたものとすることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造においては、続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2%以上20%以下の弛緩を与えつつ、145℃以上165℃以下、かつ幅方向の延伸温度未満の温度(1段目熱処理温度)で熱固定(1段目熱処理)した後に、再度クリップで幅方向を緊張把持したまま135℃以上、前記の熱固定温度(1段目熱処理温度)未満の条件で熱処理を施し(2段目熱処理)、さらに緊張把持したまま80℃以上、前記の熱固定温度(2段目熱処理温度)未満の条件で熱固定(3段目熱処理)を施す多段方式の熱処理を行うことが、フィルム加熱前後での絶縁破壊電圧の変化を抑えられ、熱に対する構造安定性を向上させ、コンデンサとしたときの耐電圧性、信頼性を得る観点から好ましい。
弛緩処理においては、熱に対する構造安定性を高める観点から、弛緩率は2%以上20%以下が好ましい。弛緩率を20%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下とすることで、テンター内部でフィルムが弛みすぎて製品にシワが入り、蒸着時にムラを発生させるのを防ぐことができる。また、機械特性の低下を防ぐこともできる。他方、弛緩率を2%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上とすることで、熱に対する構造安定性が得られ、コンデンサとした際に、高温環境下での容量低下やショート破壊を防ぐことができる。
多段式に低温化する熱処理を経た後はテンターの外側へ導き、室温雰囲気にてフィルム幅方向両端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム厚み0.5μm以上10μm未満のフィルム製品ロールを巻き取る。ここでフィルムを巻取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行うことが好ましい。
なお、本発明のポリプロピレンフィルムを得るため、着眼される好ましい製造条件を具体的に挙げてみると、例としては以下のとおりである。
・溶融押出温度は、フィルター前、フィルター後、口金と多段式に低温化すること。
・ポリプロピレン樹脂Aのメソペンタッド分率が0.970以上であること。
・ポリプロピレン樹脂AのCXSが3.0質量%未満であること。
・縦延伸前に1.01倍以上1.10倍以下の予備延伸を行うこと。
・延伸の面積延伸倍率が65倍以上であること。
・幅方向の延伸倍率が11.0倍以上であること。
・幅方向の延伸前の予熱温度が幅方向の延伸温度+5〜+15℃であること。
・1段目の熱処理温度が、145℃以上165℃以下であり、かつ幅方向の延伸温度未満の温度であること。
・2段目の熱処理温度が、135℃以上1段目の熱処理温度未満であること。
・3段目の熱処理温度が、80℃以上2段目の熱処理温度未満であること。
・1段目の熱処理工程において、幅方向に2%以上20%以下の弛緩処理が施されていること。
続いて、本発明のポリプロピレンフィルムを用いてなる金属膜積層フィルム、それを用いてなるフィルムコンデンサ、およびそれらの製造方法について説明する。
本発明の金属膜積層フィルムは、本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を有する。この金属膜積層フィルムは、上記の本発明に係るポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を設けることで得ることができる。
本発明において、金属膜を付与する方法は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、アルミニウムまたは、アルミニウムと亜鉛との合金を蒸着してフィルムコンデンサの内部電極となる蒸着膜等の金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロムなどの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。ポリプロピレンフィルム表面の粗さが表裏で異なる場合には、粗さが平滑な表面側に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとすることが耐電圧性を高める観点から好ましい。
本発明では、必要により、金属膜を形成後、金属膜積層フィルムを特定の温度でアニール処理を行なったり、熱処理を行なったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属膜積層フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンオキサイドなど樹脂のコーティングを施すこともできる。
本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムを用いてなる。つまり本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムを有する。
例えば、上記した本発明の金属膜積層フィルムを、種々の方法で積層もしくは捲回すことにより本発明のフィルムコンデンサを得ることができる。捲回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを減圧状態で蒸着する。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面の一方にマージンを有した、テープ状の巻取リールを作成する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻取リールを左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて捲回し、捲回体を得る。
両面に蒸着を行う場合は、一方の面の長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着し、もう一方の面には長手方向のマージン部が裏面側蒸着部の中央に位置するようにストライプ状に蒸着する。次に表裏それぞれのマージン部中央に刃を入れてスリットし、両面ともそれぞれ片側にマージン(例えば表面右側にマージンがあれば裏面には左側にマージン)を有するテープ状の巻取リールを作製する。得られたリールと未蒸着の合わせフィルム各1本ずつを、幅方向に金属化フィルムが合わせフィルムよりはみ出すように2枚重ね合わせて捲回し、捲回体を得る。
以上のようにして作成した捲回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して捲回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車輌用、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車)、太陽光発電・風力発電用および一般家電用等、多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。その他、本発明のポリプロピレンフィルムは包装用フィルム、離型用フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途でも用いることができ、特にフィルム加工において加熱工程を含む用途に好ましく用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
[測定・評価方法]
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)フィルム厚み
ポリプロピレンフィルムの、無作為抽出した10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの算術平均値をポリプロピレンフィルムのフィルム厚みとした。
(2)α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差
ポリプロピレンフィルムを長さ4cm、幅1mmの短冊状に切断し、厚さが1mmになるように重ねて試料を作成した。この試料に対してX線が透過するように、X線源と検出器の間に試料を設置し、フィルム面に関して対称にX線源と検出器の角度(2θ/θ)を走査し、X線回折を測定した。主配向、及び、その直交方向それぞれの走査方向について2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークの半値幅βeから、下記式(1)、(2)を用いて、主配向に走査して得られる(Through−MDの)結晶子サイズ(nm)、及び、主配向方向の直交方向に走査して得られる(Through−TDの)結晶子サイズ(nm)をそれぞれ求め、その差の絶対値を、α晶(110)面の配向方向による結晶子サイズの差(nm)とした。
結晶子サイズ=Kλ/(βcosθ) …式(1)
β=(βe+βo1/2 …式(2)
ここで、
λ:X線波長(0.15418nm)、
βe:回折ピークの半値幅、
βo:半値幅の補正値(0.6)、
K:Scherrer定数(1.0)
である。
(測定装置)
・X線回折装置
理学電機(株)社製 4036A2型
X線源 :CuKα線(Niフィルタ使用)
出力 :40kV−30mA
・ゴニオメータ 理学電機(株)社製 2155D型
スリット:2mmφ−1°−1°
検出機 :シンチレーションカウンター
・計数記録装置 理学電機(株)社製 RAD−C型。
(測定条件)
・Through−TDスキャン、Through−MDスキャン
スキャン方法 :ステップスキャン
測定範囲 :2θ=5〜60°
ステップ :0.05°
積算時間 :2秒。
(3)α晶(110)面の結晶配向度
ポリプロピレンフィルムを長さ4cm、幅1mmの短冊状に切断し、厚さが1mmになるように重ねて試料調製した。ポリプロピレンフィルムに対してX線が透過するように、X線源と検出器の間にフィルム試料を設置し、フィルム表面に対して垂直方向にX線を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンして得られる配向ピークの半値幅H(°)から、下記式により計算した。
結晶配向度=(180°−H)/180°
測定装置および条件を以下に示す。
(測定装置)
・上記(2)と同装置を使用した。
(測定条件)
・円周方向スキャン(2θ=約14°)
スキャン方法 :ステップスキャン
測定範囲 :0〜360°
ステップ :0.5°
積算時間 :2秒。
(4)135℃での長手方向の収縮応力(SF135MD)
ポリプロピレンフィルムを、フィルムの測定方向(長手方向)を長辺として幅4mm、長さ50mmの長方形の試料に切り出し、試長20mmとなるよう金属製チャックにフィルムを挟み込んだ。前記チャックに挟んだサンプルを下記装置にセットし、下記温度プログラムにて試長を一定保持したフィルムにおける長手方向の応力曲線を求めた。得られた応力曲線から、135℃における収縮応力の値(SF135MD)を読み取り、n=3の測定を行った平均値を135℃での長手方向の収縮応力(単位:MPa)とした。
装置 :熱機械分析装置 TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
試験モード :L制御モード
試長 :20mm
温度範囲 :23〜200℃
昇温速度 :10℃/分
スタート変位 :0μm
SSプログラム:0.1μm/分
測定雰囲気 :窒素中
測定厚み :上記(1)により測定したフィルム厚みを用いた。
(5)表面の突起形状の偏り度スキューネス(Ssk)
スキューネス(Ssk)はISO25178の定義による。測定は(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、次いで補間処理、すなわち、高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理を行った。一方の面内の無作為抽出した5箇所で測定を行った平均値を算出した。測定はフィルムの両面について行った。
測定条件は下記のとおり。
製造元:株式会社菱化システム
販売元:株式会社日立ハイテクサイエンス
装置名:走査型白色干渉顕微鏡VS1540
測定条件:対物レンズ 10×
鏡筒 1×
ズームレンズ 1×
波長フィルタ 530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS-Measure Version10.0.4.0
解析ソフトフェア:VS−Viewer Version10.0.3.0
測定面積:0.561mm×0.561mm。
(6)メソペンタッド分率
原料の場合はポリプロピレン樹脂、フィルムの場合はフィルム試料について凍結粉砕してパウダー状にし、60℃のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の不純物・添加物を除去した後、130℃で2時間以上減圧乾燥したものをサンプルとした。該サンプルを溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた。
測定条件
・装置:Bruker製DRX−500
・測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
・測定濃度:10質量%
・溶媒:ベンゼン:重オルトジクロロベンゼン=1:3混合溶液(体積比)
・測定温度:130℃
・スピン回転数:12Hz
・NMR試料管:5mm管
・パルス幅:45°(4.5μs)
・パルス繰り返し時間:10秒
・データポイント:64K
・積算回数:10,000回
・測定モード:complete decoupling。
解析は次のように行った。LB(ラインブロードニングファクター)を1としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker製)を用いて、ピーク分割を行った。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、更にソフトの自動フィッティングを行い、ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とした。
(1)mrrm
(2),(3)rrrm(2つのピークとして分割)
(4)rrrr
(5)mrmr
(6)mrmm+rmrr
(7)mmrr
(8)rmmr
(9)mmmr
(10)mmmm
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたメソペンタッド分率の平均値を当該サンプルのメソペンタッド分率とした。
(7)ポリプロピレン樹脂およびフィルムの融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレンフィルムを30℃から260℃まで20℃/分の条件で昇温し、次いで、260℃で5分間保持した後、20℃/分の条件で30℃まで降温する。昇温過程で得られる吸熱ピーク温度をポリプロピレンフィルムの融解ピーク温度とし、降温過程で得られる発熱ピーク温度をポリプロピレンフィルムの結晶化ピーク温度とした。本明細書中ではn=3の測定を行った平均値からTm、Tcを算出した。ピーク温度が前記温度範囲の中で2つ以上観測される場合や、ショルダーと言われる多段型のDSCチャートに観測できるピーク温度(2つ以上のピークが重なり合ったチャートの場合に観測される)がでる場合があるが、本発明においてはDSCチャートの縦軸熱流(単位:mW)の絶対値が最も大きいピークの温度をそれぞれTm、Tcとする。なお、ポリプロピレン樹脂の(Tm)、(Tc)についても同様に測定した。
(8)フィルム表面における表面における算術平均高さ(Sa)
算術平均高さ(Sa)はISO25178の定義による。測定は、(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、補間処理、すなわち、高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理を行った。Saはポリプロピレンフィルム表面の両面で測定を行い、小さな値が得られたポリプロピレンフィルム表面の値を表に記した。測定条件は上記(5)表面突起の偏り度と同様とした。
(9)フィルム表面における突出山部高さ(SpkA)、(SpkB)
突出山部高さ(Spk)はISO25178の定義による。測定は(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。一方の面内の任意の5箇所で測定を行った平均値を算出した。フィルムの両面を測定し、値が低い面の値をSpkA、反対側の面をSpkBとした。測定条件は上記(5)表面突起の偏り度と同様とした。
(10)130℃での絶縁破壊電圧(V/μm)
130℃に保温されたオーブン内でフィルムを1分間加熱後、その雰囲気中で、JIS C2330(2014)6.2およびそこで引用するJIS C2151(2019)の17.2 B法(平板電極法)に準じて測定した。ただし、下部電極については、JIS C2151(2019)17.2.2 図3−C記載のアルミはくの上に、同一寸法の導電ゴム(株式会社十川ゴム製E−100<65>)を載せたものを電極として使用した。絶縁破壊電圧試験を30回行い、得られた値をフィルムの厚み(上記(1)で測定)で除してV/μmの単位に換算し、計30点の測定値(算出値)のうち最大値から大きい順に5点と最小値から小さい順に5点を除いた20点の平均値を、130℃でのフィルム絶縁破壊電圧とした。
(11)フィルムの冷キシレン可溶部(CXS)
原料の場合はポリプロピレン樹脂、フィルムの場合はフィルム試料について、0.5gを135℃のキシレン100mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間静置して再結晶させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量した。ろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分の量をX(g)、試料0.5gの精量値をX(g)として下記式
CXS(質量%)=(X/X)×100
から算出した。
(12)加熱後のα晶(110)面の結晶配向度
フィルムを125℃で60分熱処理する方法は、厚み2mm、外寸300mm×300mm、内寸280mm×280mmに中抜きされた幅20mmの四角い金属製フレームを用い、フレーム面の四辺には両面テープ(ニチバン製“ナイスタック”(登録商標)NW−H15接着力02)を貼り、金属製フレームの全面にフィルムが被さるように、フィルムを貼り付け、更に同寸法の金属製フレームでフィルムを挟み込む。この時、フィルムにシワが入らないように貼り付ける。次いで、金属フレーム/両面テープ/フィルム/金属フレームの状態で、フレームの4辺をクリップで挟み固定したサンプルを作成し、125℃に加熱されたオーブンへ60分放置した。その後、サンプルを取り出し、常温で5分放置した後、金属フレームの内枠にそってフィルムを切り出し、125℃で熱処理後のフィルムとした。125℃で熱処理後のフィルムを長さ4cm、幅1mmの短冊状に切断し、厚さが1mmになるように重ねて試料調製した。ポリプロピレンフィルムに対してX線が透過するように、X線源と検出器の間にフィルム試料を設置し、フィルム表面に対して垂直方向にX線を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンして得られる配向ピークの半値幅H(°)から、下記式により計算した。
結晶配向度=(180°−H)/180°
測定装置および条件を以下に示す。
(測定装置)
・X線回折装置 理学電機(株)社製 4036A2型
X線源 :CuKα線(Niフィルタ使用)
出力 :40kV−30mA
・ゴニオメータ 理学電機(株)社製 2155D型
スリット:2mmφ−1°−1°
検出機 :シンチレーションカウンター
・計数記録装置 理学電機(株)社製 RAD−C型
(測定条件)
・円周方向スキャン(2θ=約14°)
スキャン方法 :ステップスキャン
測定範囲 :0〜360°
ステップ :0.5°
積算時間 :2秒。
(13)加熱後のフィルムのフィルム長手方向の伸度5%時の応力(F5MD)と、フィルム幅方向の伸度5%時の応力(F5TD)
フィルムを150℃で10分熱処理する方法は、厚み2mm、外寸300mm×300mm、内寸280mm×280mmに中抜きされた幅20mmの四角い金属製フレームを用い、フレーム面の四辺には両面テープ(ニチバン製“ナイスタック”(登録商標)NW−H15接着力02)を張り、金属製フレームの全面にフィルムが被さるように、フィルムを貼り付け、更に同寸法の金属製フレームでフィルムを挟み込む。この時、フィルムにシワが入らないように貼り付ける。次いで、金属フレーム/両面テープ/フィルム/金属フレームの状態で、フレームの4辺をクリップで挟み固定したサンプルを作成し、150℃に加熱されたオーブン内に10分放置した。その後、サンプルを取り出し、常温で5分放置した後、金属フレームの内枠にそってフィルムを切り出し、150℃で熱処理後のフィルムとした。150℃で熱処理後のフィルムを試験方向長さ50mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。次に、矩形のサンプル用の引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、23℃雰囲気下で引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプルの伸び5%時にフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を伸度5%時の応力(F5値、単位:MPa)として算出し、測定は長手方向および幅方向で各サンプル5回ずつ行い、その平均値を算出し、F5MD、F5TDをそれぞれ算出した。なお、F5値算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
(14)フィルム表面における深さ20nm以上の谷の総容積
測定は(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、次いで補間処理、すなわち、高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理を行った。次いで解析ソフトの解析ツールであるベアリング機能を用いて解析した。深さ20nm以上の谷側空隙を指定するため、高さ領域指定において、谷側高さ閾値を−20nmに設定した。次いで当該閾値を満たし解析された谷の容積の値を読み取った。一方の面内の無作為抽出した5箇所の0.561×0.561mmの領域で測定を行い、領域内の総容積の平均値をフィルム表面における深さ20nm以上の谷の総容積とした。
なお、フィルムの両面を測定して、一方の面について谷の総容積が50〜5,000μmの範囲内に入った場合には範囲内となった側の面の値、両面とも範囲内となった場合には小さい値を有する側の面の値、両面とも範囲内に入らなかった場合には総谷側体積が50〜5,000μmの範囲に近い側の面の値を記した。測定条件は上記(5)表面突起の偏り度と同様とした。
(15)125℃で15分間熱処理後の幅方向の熱収縮率HS125TD
フィルムの幅方向が長辺となるように、長さ200mm、幅10mmの試料を5本切り出し、両端から25mmの位置に標線として印を付けて、万能投影機で標線間の距離を測定し試長(L1)とする。次に、試験片の長さ方向の一方の端(下端となる)に3gの荷重をかけ、125℃に保温されたオーブン内で15分間、吊した状態で加熱し、試験片を取り出して室温で冷却後、先で付した標線間の寸法(L2)を万能投影機で測定して下記式にて各試料の熱収縮率HS125TDを求め、5本の算術平均値をその測定方向における熱収縮率HS125TDとして算出した。
HS125TD={(L1−L2)/L1}×100
ここに、
HS125TD:125℃で15分間熱処理後の幅方向の熱収縮率(%)
L1:熱処理前の標線間の距離(150mm)
L2:熱処理後の標線間の距離。
(16)静摩擦係数(μ
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999)に準じて、25℃、65%RHにて測定した。なお、測定はフィルム長手方向同士で、かつ、異なる面同士を重ねて行った。同じ測定をサンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルの静摩擦係数(μ)とした。
(17)ポリプロピレン樹脂およびフィルムの分子量、分子量分布
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、以下の装置および測定条件で評価し、算出した。以下の測定条件にて試料前処理として試料を秤量し、溶媒(0.1%のBHTを添加した1,2,4−TCB)を加えて140℃で1時間振とう溶解させた。次いで、孔径0.5μmの焼結フィルターで加熱濾過を行い、分子サイズによる分画を行った。
<装置および測定条件>
・装置 :HLC−8321GPC/HT(検出器:RT)
・カラム :
TSKgel guardcolumnHHR(30)HT(7.5mmI.D.×7.5mm)×1本
+TSKgel GMHHR−H(20)HT(7.8mmI.D.×30cm)(東ソー社製)×3本
・溶離液 :1,2,4−トリクロロベンゼン(富士フイルム和光純薬社製GPC用)+BHT(0.05%)
・流量 :1.0mL/min.
・検出条件:polarity=(−)
・注入量 :0.3mL
・カラム温度:140℃
・システム温度:40℃
・試料濃度:1mg/mL
標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて検量線を作製し、測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して、Z+1平均分子量(Mz+1)、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を得た。そしてMz+1とMwの値を用いた分子量分布(Mz+1/Mw)を算出した。
(18)フィルムコンデンサ特性の評価(120℃での耐電圧、信頼性、加工性)
フィルムの一方の面に、真空蒸着機((株)アルバック製)でアルミニウムを蒸着させ、マスキングオイルにより膜抵抗が10Ω/sqで長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた、いわゆるT型マージン(長手方向ピッチ(周期)が17mm、ヒューズ幅が0.5mm)を有する蒸着パターンを形成した。なお、濡れ張力が表裏両面で異なる場合は、濡れ張力が高い方の面に蒸着を施した。
蒸着パターンを形成したフィルムをスリットし、フィルム幅50mm、端部マージン幅2mmの蒸着リールを得た。
次いで、このリールを用いて素子巻機((株)皆藤製作所製 KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、128℃の温度で12時間の熱処理を施し、リード線を取り付けコンデンサ素子に仕上げた。
こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、120℃高温下でコンデンサ素子に250VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す、所謂ステップアップ試験を行なった。
<耐電圧評価>
ステップアップ試験においてこの際の静電容量の変化を測定しグラフ上にプロットして、当該容量が初期値の80%になった時点における電圧をフィルムの厚み(上記(1))で割り返して耐電圧とし、以下の通り評価した。
S:耐電圧が400V/μm以上である。
A:耐電圧が390V/μm以上400V/μm未満である。
B:耐電圧が380V/μm以上390V/μm未満である。
C:耐電圧が380V/μm未満である。
S、A、Bは使用可能である。Cでは実用上の性能に劣る。
<信頼性評価>
静電容量が初期値に対して15%以下に減少するまで電圧を上昇させた後に、コンデンサ素子を解体し破壊の状態を調べて、信頼性を以下の通り評価した。
S:素子形状の変化は無く、貫通状の破壊は観察されない。
A:素子形状の変化は無く、フィルム1層以上5層以内の貫通状の破壊が観察される。
B:素子形状の変化は無く、フィルム6層以上10層以内の貫通状の破壊が観察される。
C:素子形状に変化が認められる、若しくは10層を超える貫通状の破壊が観察される、あるいは素子形状が大きく変化し破壊する
Sは問題なく使用でき、A、Bでは条件次第で使用可能である。Cでは実用上の性能に劣る。
<加工性評価>
下記基準で判断した。上記と同様にしてコンデンサ素子を作成し、目視により素子の形状を確認した。
S:コンデンサ素子の端面フィルムのズレ、シワ、変形がなく、後の工程に全く支障がないレベル
A:コンデンサ素子の変形はなく、シワがわずかにあるが問題なく使用が可能なレベル
B:コンデンサ素子の変形、シワが僅かにあるが使用可能なレベル
C:コンデンサ素子の変形、シワの程度がひどく、後の工程に支障を来すレベル
S、Aは問題なく使用可能であり、Bは条件次第で使用可能、Cでは実用が困難である。
[ポリプロピレン原料]
実施例、比較例のポリプロピレンフィルムの製造に、下記の表1に示す原料を使用した。ポリプロピレン原料Aとして4種類(A1、A2、A3、A4)、ポリプロピレン原料Bとして3種類(B1、B2、B3)、ポリプロピレン原料Cとして2種類(C1:チーグラー・ナッタ触媒系、C2:メタロセン触媒系)の原料を使用した。
[実施例1]
本実施例に使用した原料および製膜の条件は表1、2に示したとおりである。まずポリプロピレン原料A1を92質量部、ポリプロピレン原料B1を5質量部、ポリプロピレン原料C1を3質量部ドライブレンドした。ブレンドした原料を温度260℃の単軸押出機に供給し、溶融させ、濾過フィルターを通過後の温度を255℃に設定した配管を通過させ、250℃に設定したT型スリットダイよりシート状に溶融押出した。このシート状物を98℃に保温されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化して未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。当該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に143℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、130℃にて1.08倍の予備延伸を行った後、143℃にて長手方向に6.1倍で延伸した。引き続き当該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま169℃の温度(TD延伸温度+7℃)で予熱し、次いで162℃の温度で幅方向に12.3倍で延伸した。さらに1段目の熱処理として幅方向に15%の弛緩を与えながら159℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてフィルム幅手の両端部をクリップで幅方向把持したまま150℃で熱処理を行った。3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.3μmのポリプロピレンフィルムをフィルムロールとして巻き取った。各項目の評価結果を表4に示す。
[実施例2〜9、比較例1〜6]
原料組成及び製膜条件を表2,3のとおりとした以外は実施例1と同様にして、表2,3に示す厚みのポリプロピレンフィルムを得た。なお、厚みの調整は単軸押出機の回転数を増減することにより行った。以下、他の実施例、比較例においても同様である。各項目の評価結果を表4〜6に示す。
Figure 2021134353
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Claims (16)

  1. 広角X線回折で測定される、α晶(110)面の主配向方向に走査して得られる結晶子サイズと主配向方向と直交する方向に走査して得られる結晶子サイズとの差の絶対値が3.0nm以下であり、熱機械分析(TMA)における昇温速度10℃/minでの昇温過程において135℃での長手方向の収縮応力(SF135MD)が2.0MPa以下であるポリプロピレンフィルム。
  2. 広角X線回折で測定される、α晶(110)面の主配向方向と直交する方向に走査して得られる結晶子サイズが10.0nm以下である請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
  3. 広角X線回折で測定される、α晶(110)面の主配向方向に走査して得られる結晶子サイズが10.0nm以下である請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
  4. 広角X線回折で測定されるα晶(110)面の結晶配向度が0.77以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  5. フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)が170℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  6. フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)と、昇温後260℃から30℃まで20℃/minで降温した際に得られる結晶化ピーク温度(Tc)が以下の関係を満たす請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
    Tm−Tc≦65(℃)
  7. フィルムの少なくとも一方の表面におけるISO25178で定義されるスキューネス(Ssk)が−30を超えて5未満である請求項1〜6のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  8. 一方の側の面の表面Aおよびもう一方の側の面の表面Bのそれぞれの、ISO25178で定義される突出山部高さSpkAおよびSpkBが以下の関係を満たす請求項1〜7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
    SpkA<SpkB
    20nm≦SpkA≦100nm
    80nm≦SpkB≦150nm
    ここで、
    SpkA:表面Aの突出山部高さ
    SpkB:表面Bの突出山部高さ
  9. フィルムの少なくとも一方の表面における、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が35nm以上100nm以下である請求項1〜8のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  10. 125℃で60分加熱後のポリプロピレンフィルムを広角X線回折で測定したとき、α晶(110)面の結晶配向度が0.73以上である請求項1〜9のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  11. 150℃で10分加熱後のフィルムを室温で引っ張り試験したときのフィルム長手方向の伸度5%時の応力(F5MD)と、150℃、10分加熱後のフィルムを室温で引っ張り試験したときのフィルム幅方向の伸度5%時の応力(F5TD)との和が150MPa以上である請求項1〜10のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  12. キシレンでポリプロピレンフィルムを完全に溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分(CXS)が3.0質量%以下である請求項1〜11のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  13. 少なくとも一方の表面において、走査型白色干渉顕微鏡により測定される、0.561mm×0.561mmの領域における深さ20nm以上の谷の容積を合計した総容積が50μm以上5,000μm以下である、請求項1〜12のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  14. 125℃で15分加熱後の幅方向の熱収縮率(HS125TD)が1.0%以下である、請求項1〜13に記載のポリプロピレンフィルム。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を有する金属膜積層フィルム。
  16. 請求項15に記載の金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。
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