JP2021133677A - 不燃処理薬剤を含有する木材とその生産方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】準不燃木材などの不燃処理薬剤を含有する木材に関する耐火性能の信頼性の向上と、原料の調達容易性並びに量産性の改善との両立を図る。【解決手段】スギなどの針葉樹と散孔広葉樹材で構成された羽目板11などの木材である。羽目板11は、長手方向が繊維方向と略一致し、左右の側面に複数の注入孔21を備える。注入孔21は、ドリリング加工等により断面が円形をなすもので、左右幅の半分以上の長さを備える。羽目板11は、注入孔21から仮導管又は導管内を繊維に沿って流体移動した不燃処理薬剤31が存在する中央領域15と、中央領域15を挟んで上下に位置すると共に上下両面から拡散した不燃処理薬剤31が存在する上下領域16とを備える。中央領域15と上下領域16との間に、上下両面からの拡散と注入孔21経由の流体移動が少なく不燃処理薬剤31の含有量が少ない中間領域17を備える。【選択図】図4

Description

本発明は準不燃木材などの不燃処理薬剤を含有する木材と、その生産方法に関するものである。
(準不燃又は難燃木材の現状)
今日流通している薬剤注入木材の多くは、防腐、防虫、難燃、準不燃の処理を行うための薬剤を木質材料に対して含浸することによって製造されている。例えば製材品や集成材用ラミナに薬剤を注入する方法を採用することでは、インサイジング加工をして薬剤注入部分を少し増やすことも行われているが、心材部と辺材部では薬剤浸透の程度が大きく異なる。その結果、薬剤注入木材の性能、及び木質製品の性能に大きなバラツキがあり、薬剤処理木材基準値を満たさないものも散見された。薬剤注入が不十分な部分が存在する難燃準不燃処理木質材料が加熱されると、200℃前後以上の高温域に達することによって、不十分な部分の木材組織から可燃性ガスが発生し、当該ガスが発火することによって、その耐火性能は大きく損なわれてしまう。
(今日の我が国における木材の市場の変化)
今日の我が国における木材の市場を、概観すると次のような変化が見られる。
木材の最大の市場である一戸建て木造住宅の市場が、少子高齢化の影響で縮小方向にある。
その反面、公共施設・店舗・事務所・宿泊施設など不特定多数の人が集まる中大規模建築物では、『居心地の良さ』『お洒落なイメージ』を創り出すことができると共に、ウイルス等の微生物に強い健康的な50%〜60%の湿度を維持できる空間が求められ、木材の内装・外装の市場が拡大傾向にある。このような、不特定多数の人が集まる中大規模建築物では、火災発生時の安全性が重要な要素であるため、『難燃・準不燃』の安定的な性能を満たす木材の需要が増加している。
(従来製品・技術の問題点とその影響)
次に今日まで提供されていた従来製品の技術の問題点とその影響をまとめると、下記の状況にあることが分かる。
・従来製品における難燃・準不燃木材にあっては、不燃処理薬剤の注入量が不充分な部分が存在する。その結果、性能不足の製品も散見され、難燃・準不燃木材の性能に対する信頼性が損なわれている。
・注入量の最低値を基準値にするために、不燃薬剤の過剰注入が行われ、その結果コストアップと製品表面における白華現象が生じている。
(技術的基礎知識)
本件発明の技術的な基礎知識は以下の通りである。
・辺材を除いて木材中を液体の水又は水溶液は殆ど移動しないという事実に関する知識。
・液体の水又は水溶液の木材中の移動は繊維方向が主で、繊維直交方向の移動は極めて遅いという事実に関する知識。
・薬剤処理の目的によって3種類の薬剤注入処理があるが、防虫処理(デンプン等の虫の栄養分が多い辺材部に対する薬剤注入)と、防腐処理(木材の周辺部だけの薬剤処理)と、準不燃・難燃薬剤処理(木材に均一な薬剤注入処理)との3種を明確に区別し、準不燃・難燃薬剤処理(木材に均一な薬剤注入処理)に適する処理を行うべきであること。
・難燃・準不燃処理木材注入薬剤には接着阻害要因があることが多く、注入後に接着すると用途上十分な接着力を得られない場合が多いということ。
(先行技術文献とその課題)
このような耐火改質木質材料に関する先行技術文献としては、特許文献1〜5を挙げることができるが、心材部と辺材部を明確に区別して辺材部のみを用いる技術を示すものではないことは勿論、辺材部については繊維方向へ液体が良好に移動する性質がある事を積極的に利用した提案はなされていなかった。
具体的には、特許文献1の明細書段落0014では、浸漬処理を施す時間について6〜72時間という大きな幅を持たせた範囲を設定しており、その理由として導管の太さや並び方が木の種類によって異なることを挙げるとともに、その具体例として辺材部は導管が太く密度が粗い点を指摘している。ところが、特許文献1ではそもそも針葉樹と広葉樹の区別ができておらず論外である。また、明細書段落0022以下の実施例では、原料の木材として杉板や桐板を用いているに止まり、心材部と辺材部とを区別して用いないし、導管が存在するかのように記載されている杉には導管自体が存在せず、また桐については散孔広葉樹で辺材部導管周囲には水溶液が注入可能であり、辺材部が杉や桐にあっては導管が太く密度が低いものであるとの認識自体に疑義が存するものである。このように特許文献1では心材部と辺材部とを区別して用いないことを前提に、言い換えれば心材部と辺材部とを区別して用いずとも処理条件の調整によって不燃木材板を製造することができると言う技術思想を開示したものであると、認められる。
特許文献2にあっても、明細書段落0011で、導管及びその周辺部に十分な耐火剤が含浸されていることが示されているが、明細書段落0017以下の実施例では、原料の木材として桐板を用いているに止まり、心材部と辺材部とを区別して用いていない。このように特許文献2では心材部と辺材部とを区別して用いないことを前提に、言い換えれば心材部と辺材部とを区別して用いずとも、桐材に含浸した耐火薬液と桐材に潜在的に含浸されているタンニンが熱によって架橋反応して形成されたものと推測されるガラス様膜の形成によって不燃特性が格段と向上させることができると言う技術思想を開示したものであると、認められる。
また、本件発明者においては桐材にだけ特有のタンニンがあるという話は聞いたことがなく、架橋反応しても有機物であることには変わりがなく、燃え難さは関係がないと考える次第である。
特許文献3にあっては、複数の凹部形成用突起の部分だけに薬液を付着させ、乾燥した単板に前記突起を押し付けることに、より単板をその厚さ以下に圧縮するとともに薬液を単板に接触させたのち、突起を単板から離脱させて単板の組織内に薬液を浸透させることを特徴とする単板への薬液注入方法を提案するものである。ところがこの特許文献3の方法では木材内部に薬剤が入るとは考え難く、また心材部と辺材部とを区別して用いておらず、凹部形成用突起の部分だけに薬液を付着させても、心材部にあっては薬液の移動がほとんど生じない。
特許文献4にあっては、角材の前側部および後側部を除いた板材による積層部に、この角材の長さ方向に対して連続するまたは断続する空洞部と溝部を形成して、これら空洞部または溝部の一部へ、充填材を注入して多数の壁構成材を形成し、これら壁構成材をその上下方向に積み重ねて結合手段により連結した後、空洞部または溝部の充填材の未注入部へ充填材を注入して、それぞれの壁構成材の接合隙間を閉塞し一体的な壁を構築させることを提案している。ところがこの特許文献3にあっても心材部と辺材部とを区別して用いておらず、心材部にあっては薬液の移動がほとんど生じない。しかも特許文献4にあっては、板材同士の間に形成された空洞部または溝部には薬液が注入できるが、それぞれの板材の内部には、薬液を注入することができず、それぞれの板材の内部での薬液の移動も期待することができない。
特許文献5にあっては、木材各4面を鋸目により背割加工した溝に薬液を垂らし込み、木材内部に流し込む。尚背割と直角に木材各4面より穴を明け、木材の内部で流れ込んだ樹脂が横穴に入り力骨となる。合成樹脂液が硬化した時点で表面も薬液にて処理した木材及び木材加工製品を提案している。ところがこの特許文献5にあっても心材部と辺材部とを区別して用いておらず、心材部にあっては薬液の移動が困難である。しかも鋸目により背割加工した溝は、木材の繊維の伸びる方向に沿って設けられているものであり、溝同士の間への薬液の移動はほとんど期待することができない。
(今日の我が国におけるスギ資源の活用状況)
翻ってわが国の針葉樹の代表的資源であるスギについてみると、スギは国内に大量の資源がある。現在わが国のスギの主製品は、スギ原木の中心部分を、「心持ち」や「心サリ」と呼ばれる形態に製材して得られた柱材や梁材である。他方、辺材の部分は、従来は野地板を取っていたが、その需要は合板に取られているために、現在は用途がない。
前述のように、スギを始めとする針葉樹の心材部は生物材料であるため、外部からの異物浸入を防ぐ細胞構造になっている。樹木の生命活動をしている辺材部は地中からの水を葉に移動するのに適した構造になっており、辺材部の木材では薬剤水溶液が繊維方向に容易に移動する。
具体的には、スギは辺材部を除いて通常の減圧加圧注入では水溶液薬剤が繊維方向には50mm以下しか浸潤しないし、繊維直行方向には5mm未満しか浸潤しない。
他方、スギの辺材部にあっては、通常の減圧加圧注入で水溶液薬剤が繊維方向に100mm以上も浸潤し、繊維直行方向には約5mm浸潤することが本発明者の予備試験で確認されている。
(先の発明と特許出願)
この知見に基づき、本発明者は準不燃又は難燃木材の発明を完成させて、特願2018ー226298号に係る特許出願を2018年12月3日に行なった。この出願は、本願の国内優先権主張の先の出願の日(令和2年2月25日)の後であって、本願の出願日前に特許文献6として公開された。
この特許文献6に係る発明は、均質な耐火性能を発揮し得る準不燃又は難燃木材とその製造方法の提供を図ることを課題とするものであり、スギなどの針葉樹や散孔広葉樹材の辺材だけを原料とした準不燃又は難燃木材の提供を図るものである。その際、木材には適当な間隔で、所定深さの注入孔を形成し、重ね合わせ面を内側にして木材同士を接着剤で積層するものである。この様に加工された積層材に対して水溶性などの不燃薬剤を減圧・加圧注入することによって、全体にほぼ均一で安定した不燃性を備えた準不燃又は難燃木材を提供するものであった。
この特許文献6に係る発明の準不燃又は難燃木材は、厚さ20mmのスギ板目辺材の積層材であり無地板目材で表面が構成されるため、見栄えは非常に良いし、積層面の両側の幅3mm、深さ5mmの注入孔は外観上も問題がない。そして、不燃薬剤注入量について濃度25%、140〜150kg/m3で準不燃に必要な量を注入したものについて準不燃燃焼試験を行なったところ、発熱量及び裏面までの亀裂の有無についてはいずれも合格であった。
ところが、この発明にあっては、辺材のみを用いるため、1本の樹木から採取できる原料木材に限りがあるという課題があった。
特許第4221599号公報 特開2007ー63749号公報 特許第3344703号公報 特開平11ー131635号公報 特開平8ー281203号公報 特開2020−89978公報
本発明は、準不燃木材などの不燃処理薬剤を含有する木材に関する耐火性能の信頼性の向上と、原料の調達容易性並びに量産性の改善との両立を課題とする。
また本発明は、準不燃木材などの不燃処理薬剤を含有する木材に関する耐火性能の信頼性の向上と、原料の調達容易性並びに量産性の改善との両立を可能にした生産方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記の課題を解決するための手段として、針葉樹と散孔広葉樹材の辺材だけの木材を原料とした準不燃木材などの不燃処理薬剤を含有する木材を提供する。
上記先行技術文献との対比における本発明の重要なポイントは、下記の2点にある。
1、水溶液薬剤は木材辺材部の繊維方向への移動が容易であることの知見に基づき、これを活用した水溶液薬剤の注入を図っていること。
2、薬剤注入の平準化を図るために繊維方向と交わる方向へ伸びる注入孔を設けて、木材の厚み方向の略中央部に薬剤を注入すること。
さらに特許文献6の発明にあっては、辺材部の水溶性薬剤の注入移動に関する知見に基づく発明であったが、本発明にあって心材部の水溶性薬剤の注入移動にも着目し、長手方向における薬剤が確実に移動できる量を治験することにより完成されたものである。
具体的には、前記木材は、辺材のみの部位、心材のみの部位、又は、前記辺材と前記心材とが混在した部位で構成されたものであり、前記木材は、その前後の長手方向が繊維方向と略一致するものとする。前記木材は、左右の側面から左右幅方向の中央に向けて、ドリリング加工などで断面円形の注入孔が形成されたものである。前記注入孔のうち左側面からの左注入孔と、右側面からの右注入孔とは、前記長手方向の位置が異なるものであり、これらの前記注入孔は、前記木材の左右幅の半分以上の長さを備えることによって、前記左注入孔の先端と前記右注入孔の先端とが左右幅方向においてオーバーラップしている。
前記木材の上下の外面には、前記注入孔を設けず無地板目とする。
この木材に対して水溶性などの不燃薬剤を減圧・加圧注入する。
これにより、木材の表裏面は約5mm程度の深さで薬剤が表面から主に拡散で注入される。また木材の中心部へは、注入孔から薬剤が浸入し、浸入した薬剤は、仮導管と導管内を前記繊維に沿って前記不燃処理薬剤が良好に流体移動することで、全体に薬剤が注入される。
従って、本発明に係る準不燃木材は、前記注入孔から仮導管又は導管内を前記繊維に沿って流体移動した不燃処理薬剤が存在する中央領域と、前記中央領域を挟んで上下に位置すると共に前記上下両面から拡散した不燃処理薬剤が存在している上下領域とを備えたものである。
さらに本発明の望ましい実施の形態によれば、前記中央領域と前記上下領域との間に、前記不燃処理薬剤の含有量が少ない中間領域とを備えるものとする。この中間領域の層は、表面から拡散含浸した薬剤が少なく且つ前記注入孔経由の流体移動含浸が、前記中央領域と前記上下領域よりも少なくいものであり、前記注入孔直径の外側(木材の表裏面へ近い側)に存在する層である。
このように、前記中央領域と前記上下領域の間に、不燃処理薬剤の含有量が少ない中間領域の層を介在させることによって、たとえ前記上下領域の不燃処理薬剤に起因する白華現象が一時的に発生しても中間領域の層からの継続的な潮解現象による薬剤補給がないので、白華を軽減することができ、木材の美感維持の点においても優れた不燃処理薬剤を含有する木材を提供することができる。
不燃処理薬剤を含有する前記木材は、針葉樹と散孔広葉樹材とのいずれか一方の1枚の板材でも構わないし、接着された複数枚の板材(積層材)で構成されても構わない。
前記左注入孔と前記右注入孔とは、例えば前記長手方向に50mm〜200mm、より好ましくは50〜100mmの間隔を置いて左右交互に設けること適当である。
前記木材は、その左右幅が最大150mmであり、その厚さが15mm以下であるものとして、実施することができる。
本発明の準不燃木材には、その側面の厚さ方向の略中央部に注入孔が所定の間隔で存在するが、表裏面には傷が無いので外観を損ねないし、注入孔同士が完全には一致しないように実施することによって、製品の強度を極端に低下させることも抑制することができる。
本発明は、準不燃木材などの不燃処理薬剤を含有する木材に関する耐火性能の信頼性の向上と、原料の調達容易性並びに量産性の改善とを両立することができた不燃処理薬剤を含有する木材と、その生産方法を提供することができたものである。
本発明の実施の形態にあっては下記の利点をもたらすことができるものである。
・生産工程数を減らすことで加工コストを下げることができる。
・使用木材体積を減らすことができるので、歩留まりが向上する。
・単位面積当たりの薬剤量減少の可能性があるが、薬剤濃度を上げることで体積当たりの注入薬剤量を上げて、準不燃の性能を維持できる。
・辺材のみの部位、心材のみの部位、又は、前記辺材と前記心材とが混在した部位で構成することができるため、特殊な材料を取りを必要とせず、且つ、木材における不燃処理薬剤の分布の均一化を図ることができたものである。
・上記の様な薬剤濃度分布になるために、一時的な白華現象が発生しても中間領域の層からの継続的な潮解現象による薬剤補給がないので、白華を軽減することができる。
本発明の実施の形態に係る準不燃木材の斜視図。 (A)同準不燃木材の平面図、(B)他の実施の形態に係る準不燃木材の平面図。 (A)本発明の実施の形態に係る準不燃木材用の木材を得るための原木の横断面構造の説明図、(B)他の実施の形態に係る準不燃木材用の木材を得るための原木の横断面構造の説明図。 本発明の実施の形態に係る準不燃木材の断面図。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(概要)
この実施の形態に係る準不燃木材は、図3(A)に示すように、スギなどの針葉樹や散孔広葉樹材の辺材部A、白線帯B、心材熟成部C及び心材未熟成部Dが混在したものでも構わないし、図3(B)に示すように、スギなどの針葉樹や散孔広葉樹材の辺材部Aのみで構成されたものででも構わないし、いずれも図1、図2に示す木材11の長手方向(矢印方向)に沿って、その繊維が伸びている。
この実施の形態に係る木材11は、図1に示すように上下面12と左右の側面13前後の木口面14とを備えており、左右の側面13から左右幅方向の中央に向けて伸びる複数の注入孔21を備えている。これらの注入孔21は、長手方向と略直交する方向に伸びており、上記の繊維を横切るように形成されたものである。注入孔21のうち左側面からの左注入孔21(L)と、右側面からの右注入孔21(R)とは、木材11における長手方向の位置が異なるものである。これらの注入孔21は、木材11の左右幅の半分以上の長さを備えるものであって、左右交互に千鳥状に設けられた左注入孔21(L)と右注入孔21(R)とは、それらの先端同士が左右幅方向においてオーバーラップしている。
この木材11には、図4の断面図に示すように、注入孔21から仮導管又は導管内を繊維に沿って流体移動した不燃処理薬剤31が存在する中央領域15と、この中央領域15を挟んで上下に位置すると共に上下面12から拡散した不燃処理薬剤31が存在する上下領域16と表面からと孔からの薬剤水溶液の浸潤量が少ない中間領域17の層を備えたものであり、準不燃木材としての性能が担保されている。
(木材11の製造)
一般に、木材は辺材部と心材部に大別されることが多く、辺材部とは丸太の横断面で外周部の色の白っぽい部分を指し、心材部とは丸太の横断面で中心部の色の赤っぽい部分を指すと言われるが、さらに詳しくは、心材部は中央部の未成熟部と成熟部との2つの領域に区別することができ、また辺材部と心材部との境界領域の白線帯が存在する場合もある。従って、図3に示すように外側から辺材部A、白線帯B、心材熟成部C及び心材未熟成部Dとの4つの領域に区分することができるが、本発明にあっては、単に心材部と言う場合には、白線帯B、心材熟成部C及び心材未熟成部Dを含む部位を示すものとする。
本発明においては、図3(A)に示すように、流体移動が良好な辺材部Aのみならず、流体移動が比較的悪い心材部を使うものであっても構わないし、これらが混在しているものであっても構わないが、図3(B)に示すように、液体が木材内部で繊維の伸びる方向に流体移動が良好に行われる辺材部Aだけを使うものであっても構わない。
これらの部位から繊維の伸びる方向(立木の縦方向)を長手方向とする木材11を切削等で製造する際、図3(B)では、辺材部Aだけを残余の白線帯B、心材熟成部C及び心材未熟成部Dと、辺材部Aと区別する必要があるが、図3(A)では区別する必要はないため材料取りの点で有利である。
(注入孔21の加工)
不燃処理薬剤31等の薬液が主に繊維方向に流体移動することを前提に、左右の側面13から、木材11の繊維を横切る方向に伸びる断面略円形の注入孔21をドリル等の穿孔工具で形成する。注入孔21の直径は最大15mmで板厚の凡そ半分以下とし、孔の深さは板幅の半分以上とする。
具体的には、木材11の厚さの中央部分に、左右各側面13、13において長手方向において所定の間隔毎に左右の両側面13からの穿孔を形成して注入孔21とするものである。図2(A)は辺材のみの部位、心材のみの部位、前記辺材と前記心材とが混在した部位を区別なく用いたものに適用できる例であり、左右各側面13、13において2〜3cm間隔で注入孔21を設けた例を示すものである。これに対して、図2(B)は辺材のみで構成したものに適用できる例であり、左右各側面13、13において5cm〜10cm間隔で注入孔21を設けた例を示すものである。
なお、それぞれの注入孔21の上下の位置は、厚さの中央部に一列に配置することが、穿孔作業の複雑化を抑制する上で好ましい。
前述の通り、注入孔21のうち左側面からの左注入孔21(L)と、右側面からの右注入孔21(R)とは、木材11の左右幅の半分以上の長さを備えるものであって、それらの先端同士が左右幅方向においてオーバーラップしている。
注入孔21同士の間隔は、木質材料の品目、辺材心材の相違、樹木の種類や生育した地域差等を考慮して、染色液注入の予備試験で浸潤に充分余裕がある距離を決めることが適当である。
ドリリング加工は容易に断面略円形の注入孔21を形成することができると共に、断面略円形の注入孔21は断面多角形の開口と比べて外部荷重を均一に分散することができる点で有利である。
(薬剤の注入)
薬剤の注入加工は、水分移動が容易な木材11に対して、不燃化処理薬剤を注入する工程である。具体的には木材11に対して、減圧加圧注入缶を使って、不燃・準不燃・難燃処理薬剤などの水溶液を注入した準不燃木材を完成させる。辺材部Aから得られた木材11には、通液性を未だ喪失していない導管や仮導管などが繊維方向(矢印方向)に連続して伸びているため、注入孔21及び木口面からの薬液の注入移動が速く、準不燃木材の全体に耐火用の薬剤を含浸させることができる。また、準不燃木材の外面12からは、薬液が内部に拡散することによって薬剤を含浸させることができる。この拡散による含浸は、準不燃木材の外面12から約5mm程度であるが、前述のように、注入孔21を厚み方向の略中央に設けることによって、内部全体に薬剤を含浸させることができる。
薬剤の注入量は、木材11の板厚や樹木の種類や生育した地域差に応じて設定すれば良いが、日本産のスギの場合の目安は、厚み18mmの木材11では約150kg/m3とすることが適当である。
なお、木材の種類と生育状態によって、薬液の含浸状態は変化するため、減圧条件と時間、加圧条件と時間、及び繰り返し回数は水溶性の着色剤を用いた予備実験で確認して実施することが好ましい。
また、工程管理上の注入量は注入前後の重量を測定し、その差をロットの平均注入量として管理することが好ましい。
開口部から注入孔21内に入った不燃処理薬剤31が繊維方向に流体移動することによって、木材11の厚さ中央部に不燃処理薬剤31を浸潤させることができる。辺材部のみから構成されている場合には、繊維方向への流体移動が良好に行われる点から100〜300mm間隔で注入孔21を設ければ、ほぼ均一に不燃処理薬剤31を浸潤させることが本願発明者の研究で確認された。一方、心材部のみで構成されている場合や、心材部と辺材部が混在している場合には、繊維方向への流体移動が良好に行われ得ないとは言え、流体移動が皆無でないことが本願発明者によって知見され、5〜200mm間隔で注入孔2を設ければ、ほぼ均一に不燃処理薬剤31を浸潤させることが本願発明者の研究で確認された。
これによって、木材からのガス発生を抑制する壁を中央領域15につくると共に、上下面12からの不燃処理薬剤31の拡散によって木材11の表面付近にガス発生を抑制する壁を上下領域16につくる。このように、厚さ方向の表裏層と中央層の2か所に不燃処理薬剤31がある壁をつくることで、木材の高断熱性と併せて準不燃性能の木質材料(即ち準不燃木材)を創り出すことができたものである。
木材11の注入孔21の内部の深さは、左右幅方向において間隔が開かないように、好ましくは一部が重複する程度の幅方向の半分以上の長さとすることが適当である。また木材11の平面視では、注入孔21同士が重ならない位置に左右交互に千鳥状に設けることが完成した準不燃木材の強度保持の点から好ましい。
(注入後の工程)
養生:注入薬剤の木材内部の平準化のために養生をすることが好ましく、養生期間は予備実験で決定する。
乾燥:販売先と取り決めるなどして決定された商品としての品質を満たすために、含水率を管理する。品質の向上からは人工乾燥を行うことが好ましい。
仕上げ加工:商品としての所定の条件を満たすために、板幅はリップソー、長さはクロスカットソー、表面はサンダーやモルダーで仕上げるなどの仕上げ加工を施す。
検品:商品としての品質を満たすために必要な検品を行う。例えば、厚さと幅はノギスで、長さは鋼製巻尺で測定し、外観と表面性は目視と手触りで確認する。
梱包:準不燃木材の製品は小結束して6面被覆して外気の水分を遮断したり、荷傷みをしないようにクラフト紙で被覆してテープで固定するなどの必要な梱包を施す。
この実施の形態に係る準不燃木材は耐火改質木質材料全体としてほぼ均一で良好な耐火性能を発揮することができる。薬剤注入が不十分な部分が存在する木質材料が加熱されると、200℃前後以上の高温域に達することによって、不十分な部分の木材組織から可燃性ガスが発生し、当該ガスが発火する。その結果、その耐火性能は大きく損なわれてしまうが、本発明の準不燃木材は、十分な量の耐火用薬剤が略全体に含浸されているため、木材組織から可燃性ガスが発生することを抑制することができ、安定した耐火性能を示すことができる。
(工程管理)
本発明の実施に際して、生産された全ての準不燃木材が安定した耐火性能を示すものとするには、工程管理が重要である。
・浸潤長さの確認
予備乾燥後に生産ロット毎に4〜6個の試料を採取し、染色液注入試験を行い、薬剤の浸潤長さを確認する。試験方法は、長さ1.2mの板の長さ中央にスリットを入れ、両木口をシールして染色液を減圧加圧注入した後に、長さ10cm毎に切断をして、切断面の染色液浸潤性を確認する。
・注入前含水率測定
注入前含水率は、薬剤の含浸に影響を及ぼすため、高周波含水率計で含水率を測定することは重要である。望ましくは、生産ロット毎に無作為に6個の試験片を採取し、全乾法でも測定する。
・薬剤注入量測定
注入ロット毎に減圧・加圧工程の前後の注入ロットの重量を測定し、その差をそのロットの平均薬剤注入量として管理を行うことによって、十分な量の薬剤が注入されているか否かを確認する。
・乾燥後の含水率測定
生産ロット毎に6個の試料を採取し全乾法で重量を測定し、測定された重量から平均薬剤量を差し引いて水分量を推計する。この数値と高周波含水率計の数値の相関表を作成して、製品の小ロットの含水率測定を行う。
・寸法精度の確認
準不燃木材の厚さ・巾=ノギスで測定する。精度は顧客との取り決めによる。
準不燃木材の長さ=鋼製巻尺で測定する。精度は顧客との取り決めによる。
・製品検査
全ての製品の外観検査を目視で行う。内容は顧客との取り決めによる。
・梱包の確認
製品は結束後に6面全てをプラスチックシートで被覆し、外気に触れないようにする。
荷扱いによる傷を防止するために必要なパレット、クラフト紙で包装する。
・表示の確認
梱包外部の側面と木口面には以下の内容を記入した紙を貼りつける。
商品名、商品のグレード、原料樹種、処理薬剤種類、製品寸法、製品数量(入数)、生産者名、生産場所、生産ロット番号及びバンドル番号。
(品質管理)
上述の工程管理とともに、品質管理を徹底して行い、安定した耐火性能を示す製品のみを出荷する。
・燃焼試験=国土交通省令に従い実施する。具体的には、コーンカロリーメーターで所定の条件で、必要母数に従った個数を測定する。コーンカロリーメーター試験結果と注入ロット毎注入量の相対関係記録を作成することによって、工程管理の精度を高めることができる。
・薬剤注入量管理=薬剤注入前後の薬剤量の管理(頻度=生産ロット毎)を行う。具体的には、注入前後の台車に乗せた材料の重量を測定し、その差を計算して木材体積で割り、当該ロットのm当りの平均注入薬剤量とする。
単板積層材51は、複数枚の原料単板52がその繊維方向(図5の矢印方向)を揃えられて積層されたものである。この積層工程自体は通常の単板積層材を製造する方法に従って実施すればよい。
得られた単板積層材51に対して、その左側面から左注入孔をドリリング加工によって形成し、右側面から右注入孔をドリリング加工によって形成する。
なお、注入孔は、原料単板52同士の間の接着剤層を避けて受ける必要はなく、中間の接着剤層を含めて上下2枚の原料単板52に渡って注入孔を形成することもできる。
最後に、先の実施の形態と同様に、不燃処理薬剤を注入して不燃処理薬剤が内部に注入された木材(単板積層材51)を完成させる。
上記の例では、原料単板52同士を先に積層した後で、不燃処理薬剤を注入するための注入孔を形成したが、図1から図4に示した羽目板11のように注入孔を形成した木材を複数枚積層して単板積層材51を製造することもできる。また、単板積層材51は、厚み方向に圧縮された圧密の積層材であっても構わない。
11…羽目板
12…上下面
13…側面
14…木口面
15…中央領域
16…上下領域
17…中間領域
21…注入孔
31…不燃処理薬剤
51…単板積層材
52…原料単板
A…辺材部
B…白線帯
C…心材熟成部
D…心材未熟成部

Claims (5)

  1. 不燃処理薬剤が内部に注入された木材において、
    前記木材は、辺材のみの部位、心材のみの部位、又は、前記辺材と前記心材とが混在した部位で構成されたものであり、
    前記木材は、その前後の長手方向が繊維方向と略一致し、
    前記木材は、左右の側面から左右幅方向の中央に向けて伸びる断面円形の注入孔を備え、
    前記注入孔のうち左側面からの左注入孔と、右側面からの右注入孔とは、前記長手方向の位置が異なるものであり、
    前記注入孔は、前記木材の左右幅の半分以上の長さを備えることによって、前記左注入孔の先端と前記右注入孔の先端とが左右幅方向においてオーバーラップしているものであり、
    前記木材の上下の外面には、前記注入孔が設けられておらず、
    前記木材は、前記注入孔から仮導管又は導管内を前記繊維に沿って流体移動した不燃処理薬剤が存在する中央領域と、前記中央領域を挟んで上下に位置すると共に前記上下両面から拡散した不燃処理薬剤が存在する上下領域とを備えたことを特徴とする不燃処理薬剤を含有する木材。
  2. 前記中央領域と前記上下領域との間に、前記上下両面からの拡散と前記注入孔経由の前記流体移動が少なく前記不燃処理薬剤の含有量が少ない中間領域とを備えたことを特徴とする請求項1記載の不燃処理薬剤を含有する木材。
  3. 前記木材は、針葉樹と散孔広葉樹材とのいずれか一方の1枚の板材又は接着された複数枚の板材で構成され、
    前記左注入孔と前記右注入孔とは前記長手方向に50〜100mmの間隔を置いて左右交互に設けられたものであり、
    前記木材の左右幅が最大150mmであり、
    前記板材の厚さが15mm以下であることを特徴とする請求項1記載の不燃処理薬剤を含有する木材。
  4. 不燃処理薬剤が内部に注入された木材を製造する方法において、
    前記木材の長手方向に前記木材の繊維が伸びるようにして、針葉樹と散孔広葉樹材とのいずれから前記木材を製造し、
    前記木材の左右の側面から左右幅方向の中央に向けてドリリング加工して、左注入孔と右注入孔の注入孔を形成し、
    前記左注入孔と前記右注入孔とを、前記長手方向に50mm〜200mmの間隔を置いて左右交互に設けるものであり、
    前記注入孔は、前記木材の左右幅の半分以上の長さまで形成することによって、前記左注入孔の先端と前記右注入孔の先端とを左右幅方向においてオーバーラップさせ、
    前記木材の上下の外面には、前記注入孔を設けず、
    前記木材に対して不燃処理薬剤を減圧・加圧して注入し、
    前記注入孔から仮導管と導管内を前記繊維に沿って前記不燃処理薬剤を流体移動させると共に、前記木材の上下両外面には、前記不燃処理薬剤を前記外面から内部へ拡散させることを特徴とする不燃処理薬剤を含有する木材の製造方法。
  5. 前記中央領域と前記上下領域との間に、前記上下両面からの拡散と前記注入孔経由の前記流体移動が少なく前記不燃処理薬剤の含有量が少ない中間領域を設けることにより、白華現象を軽減することを特徴とする請求項4記載の不燃処理薬剤を含有する木材の製造方法。
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