JP2021131457A - ホログラム撮影装置及び像再構成システム - Google Patents

ホログラム撮影装置及び像再構成システム Download PDF

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Abstract

【課題】空気の揺らぎや振動などの外乱の影響を受けにくく、高い空間分解能を有し、撮像素子の選定が自由なホログラム撮影装置及び像再構成システムを提供する。【解決手段】ホログラム撮影装置は、インコヒーレントな光波を第1分割光と第2分割光に分割し、これら2つの光波の位相分布に互いに異なる位相分布を付与し、その後、前記第1分割光と前記第2分割光を互いに干渉させてホログラムを形成し、撮影する。ホログラム撮影装置は、インコヒーレントな光波を直線偏光とする偏光子2と、前記直線偏光から前記第1分割光と前記第2分割光を生成する偏光回折光学素子3と、前記第1分割光と前記第2分割光を複数方向に分割する市松状位相板4と、領域ごとに前記第1分割光と前記第2分割光に異なる位相差を与える領域分割偏光子5とを備え、単一光路の光学系を構成することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明はホログラム撮影装置及び像再構成システムに関し、特に、インコヒーレントホログラフィによるホログラム撮影装置及び立体像の像再構成システム関する。
インコヒーレントホログラフィの技術では、太陽光、LED、蛍光などの空間的にコヒーレンスが低い光源を用いて、物体のホログラムを撮影することができる。この特徴から、インコヒーレントホログラフィは、ライダーや縞投影法などの能動的な立体撮影手法と異なり、特殊な光源を必要とせず、自然光環境下での受動的な立体撮影手法として有望視されている。
インコヒーレントホログラフィでは、撮影対象物体の奥行情報が反映された位相情報を撮像素子で検出するために位相シフト法が用いられる(特許文献1)。位相シフト法とは、位相シフト量が異なる複数枚のホログラムを撮影し、これらを解析することにより、撮影対象の3次元情報を再構成するために必要な位相情報の検出を可能にする技術である。実用的なインコヒーレントホログラフィのホログラム撮影装置を実現するためには、位相シフト量が異なる複数枚のホログラムを簡易に取得することが肝要となる。従来のインコヒーレントホログラフィのホログラム撮影装置では、異なる位相シフト量を、ピエゾ素子又は液晶空間光変調器などを用いて、逐次的に与えるものが多く提案されている。しかしながら、これらの従来技術では、撮影対象が静止している必要があり、動的な現象あるいは物体のホログラムの撮影が困難である。
これに対し、偏光子アレイカメラを用いて、カメラの画素毎に位相シフト量が異なるホログラムを一括に撮影する方法が提案されている(特許文献2)。この方法により1回の撮影で複数のホログラムを取得することができるため、動的な現象あるいは物体のホログラムの撮影が可能となる。さらに、単一光路で光学系を実現することができ、小型化に有効であるだけでなく、その構築が容易である。
また、インコヒーレントホログラフィにおいて、2枚の回折光学素子を用いて立体像を撮影する方法が提案されている(特許文献3)。この技術では、2枚の回折光学素子を面内方向に適切にずらして配置させることにより、4種類の異なる位相シフト量が与えられた4枚のホログラムを得ることができる。したがって、1回の撮影で複数のホログラムを取得することができるため、動的な現象あるいは物体のホログラムの撮影が可能となる。また、この技術は、特許文献2の技術と比較して、高い空間分解能で位相情報を検出することができる。さらに、偏光子アレイカメラのような特殊な撮像素子を必要としないため、高精細な撮像素子や、フレームレートが高い撮像素子など、撮影対象・目的に応じて、容易に撮像素子を選定することができる。
特表2016−533542号公報 特許第6245551号公報 特開2019−144520号公報
しかしながら、特許文献2の従来技術では、撮像素子の画素毎に透過軸が異なる直線偏光子を導入した偏光子アレイカメラを用いて、隣接画素毎に異なる位相シフト量を導入し、ホログラムを撮影する。これら隣接画素間で、測定対象の物体からの光の波面の変化量は十分に小さいとみなすことで、位相シフト法を適用することが可能となり、1回の撮影で立体情報を再構成するために必要な位相情報を得ることができる。しかし、この手法では、隣接画素間で光の波面の変化量が微小である必要があるため、撮影されるホログラムの分解能が撮像素子の分解能よりも低くなり、結果的に立体像の分解能が低下する。例えば、4種類の位相シフト量0、π/2、π、3/2π [rad]を与える場合には、ホログラムの分解能が撮像素子の分解能の1/4程度となってしまう。また、撮像素子の各画素に直線偏光子の役割をもたせる必要があるため、画素ピッチの微細化が困難であり、適用可能な撮像素子の仕様に制限がある。
また、特許文献3の従来技術では、2枚の回折光学素子を配置するために、高精度な位置合わせ技術が必要であり、光学系の構築の難易度が比較的高い。さらに、2枚の回折光学素子を使用するため、基本的に2光路の干渉計を用いる必要があり、光学系が大型化するとともに、ホログラム撮影時に空気の揺らぎや振動の影響を受けやすく、位相情報の検出精度が低下する課題がある。
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、従来技術の問題を解決し、特許文献2と特許文献3の両方の従来技術のメリットを兼ね備えるホログラム撮影装置及び像再構成システムを提供することにある。すなわち、単一光路の光学系で、空気の揺らぎや振動などの外乱の影響を受けにくく、高い空間分解能を有し、撮像素子の選定が自由なホログラム撮影装置及び像再構成システムを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るホログラム撮影装置は、インコヒーレントな光波を第1分割光と第2分割光に分割し、これら2つの光波の位相分布に互いに異なる位相分布を付与し、前記第1分割光と前記第2分割光を互いに干渉させてホログラムを形成し、撮影するホログラム撮影装置において、インコヒーレントな光波を直線偏光とする偏光子と、前記直線偏光から前記第1分割光と前記第2分割光を生成する偏光回折光学素子と、前記第1分割光と前記第2分割光を複数方向に分割する市松状位相板と、領域ごとに前記第1分割光と前記第2分割光に異なる位相差を与える領域分割偏光子とを備え、単一光路の光学系を構成することを特徴とする。
また、前記ホログラム撮影装置は、前記偏光回折光学素子が、前記直線偏光から、偏光状態が円偏光で焦点距離がfdの収束球面波と、この光波と逆回りの円偏光で焦点距離が−fdの発散球面波を同時に生成することが望ましい。
また、前記ホログラム撮影装置は、前記市松状位相板が、市松状に0とπの位相値を与えることが望ましい。
また、前記ホログラム撮影装置は、前記領域分割偏光子が、0°、45°、90°、135°の透過軸を有する4領域の直線偏光子を備えることが望ましい。
また、前記ホログラム撮影装置は、インコヒーレントな光波を集光するレンズをさらに備え、前記第1分割光と前記第2分割光の重なり度合いを制御することが望ましい。
また、前記ホログラム撮影装置は、前記市松状位相板が、透過型又は反射型であることが望ましい。
上記課題を解決するために本発明に係る像再構成システムは、前記のホログラム撮影装置と、前記ホログラム撮影装置で撮影したホログラムの画像データから像再構成を行う処理装置とを備えることを特徴とする。
また、前記像再構成システムは、前記処理装置が、前記画像データから個別のホログラムを抽出し、位相シフト法により複素振幅分布を求め、伝搬計算により像を再構成することが望ましい。
本発明のホログラム撮影装置及び像再構成システムによれば、単一の光路で光学系を実現することができるため、空気の揺らぎや振動などの外乱の影響を受けにくく、また、撮像素子の分解能でホログラムを取得できるため、高い空間分解能を有しており、撮影対象に応じて撮像素子を自由に選択できる。
本発明のホログラム撮影装置及び像再構成システムの概念図である。 市松状位相板の位相分布の例を示す図である。 領域分割偏光子の透過軸の例を示す図である。 本発明の第1の実施形態の装置構成の例を示す図である。 本発明の第2の実施形態の装置構成の例を示す図である。 撮影対象の3次元物体の例を示す図である。 撮像素子で取得したホログラムの例を示す図である。 抽出したホログラムの例を示す図である。 算出した複素振幅分布の例を示す図である。 3次元物体の再構成結果の例を示す図である。
図1に、本発明のホログラム撮影装置及び像再構成システムの概念図を示す。
本発明のホログラム撮影装置は、偏光子2、偏光回折光学素子3、市松状位相板4、領域分割偏光子5、及び撮像素子6を備えている。なお、処理装置10は、ホログラム撮影装置の画像データの記録装置、及び/又は、像再構成システムの像再構成装置として機能することができる。
本発明の光学系の各構成要素について説明する。撮影対象物体1から伝搬してきた空間的にインコヒーレントな光を、偏光子2と偏光回折光学素子3により変調する。偏光子2は、入射した光を直線偏光にする。
偏光回折光学素子3は、入射された直線偏光を第1分割光と第2分割光に分割する光学素子であり、本発明の実施形態では、「偏光ディレクトフラットレンズ」と呼ばれるものを使用した。偏光回折光学素子(偏光回折レンズと言うことがある。)3は、入射光の偏光状態に応じて焦点距離が変化するレンズであって、直線偏光を入射させることによって、偏光状態が円偏光で焦点距離がfdの収束球面波と、この光波と逆回りの円偏光で焦点距離が−fdの発散球面波を同時に生成することができる。偏光状態が右回り円偏光のものを第1分割光L1、左回り円偏光のものを第2分割光L2とする。なお、左回り円偏光を第1分割光L1、右回り円偏光を第2分割光L2としてもよい。偏光回折光学素子3により変調することで、第1分割光L1と第2分割光L2にそれぞれ符号が逆の曲率を有する球面位相を付加することができる。したがって、第1分割光L1と第2分割光L2の集光位置はそれぞれ異なる。これらの光波を、市松状位相板4に入射させる。
市松状位相板4は、位相変化を与える領域が市松状に配置された光学素子である。図2に、市松状位相板4の位相分布の例を示す。この位相板は、φ[rad]の位相を与える位相板41と0[rad]の位相を与える位相板42とが市松状かつ周期的に並んで分布位相を与えるものであり、回折光学素子やメタサーフェス等を用いて実現することができる。市松状の周期は、例えば、数μmから数十μmとする。この位相板4で変調された後、第1分割光L1と第2分割光L2は、それぞれ伝搬に伴い複数方向(4方向)に分裂する。この4方向の分裂は、市松状位相板4の周期性に起因している。4つに分割された光波を、領域分割偏光子5に入射させる。
図3は、領域分割偏光子5の透過軸の例を示す図である。領域分割偏光子5は、図3に示すように、例えば、透過軸が0°の偏光子51、45°の偏光子52、90°の偏光子53、135°の偏光子54の4種類(4領域)の直線偏光子で構成されている。偏光子の透過軸がx軸に対してηの角度となるように設置した場合、Pancharatnam-Berry位相の効果により、第1分割光(右回り円偏光)L1と第2分割光(左回り円偏光)L2は、それぞれ+ηと−ηの位相シフトを生じ、偏光状態が同じで相対的な位相差が2ηの2つの直線偏光として直線偏光子51〜54から出力される。すなわち、直線偏光子の透過軸の角度に応じて、領域ごとに異なる位相シフト量0、π/2、π、3π/2 [rad]がそれぞれの直線偏光の組に付与され、撮像素子6に向かう。なお、各直線偏光子の透過軸の角度は、互いに異なる任意の角度に設定可能であるが、上記の0°、45°、90°、135°を選択することにより、像再構成処理の演算が効率よく処理できる。
その結果、直線偏光となった第1分割光L1と第2分割光L2は互いに干渉し、撮像素子6の受光面上に位相シフト量が異なる4枚のホログラムが、一括に形成される。したがって、撮像素子6による1回の撮影で、位相シフト法に必要な4枚のホログラムを同時に得ることができる。撮像されたホログラムの画像データは処理装置10に伝送される。
処理装置10は、メモリ及びCPU(中央処理装置)等を備える信号処理装置であり、例えば、ホログラムの画像データをメモリに記録する、記録装置として構成されてもよい。また、ホログラムの画像データから立体像を再生する、像再構成装置として構成されてもよい。像再構成装置では、1回の撮影で得た強度画像から4枚のホログラムを抽出し、これらのホログラムに対して位相シフト法のアルゴリズムにより解析することにより、撮影対象物体の振幅情報及び位相情報、つまり複素振幅情報を得る。この複素振幅情報に対して、伝搬計算を適用することにより、任意の奥行き位置の像を再構成することができ、撮影後に自由にリフォーカスをおこなうことができる。
以上から明らかなように、本発明は、特許文献2の従来技術と異なり、撮像素子の分解能でホログラムを取得でき、比較的に高い分解能で立体像を再構成することができる。また、特許文献2で用いられている偏光子アレイカメラのような特殊な撮像素子が必要ではないため、空間解像度の優先、フレームレートの優先、多階調の優先というように、目的、撮影対象に応じて、所望の仕様を満たす撮像素子を自由に選定することができる。また、特許文献3の従来技術と異なり、単一の光路で光学系を実現することができるため、空気の揺らぎや振動などの外乱に対してロバストであり、光学系の構築が容易である。このように、本発明は、より実用的なホログラム撮影装置を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の装置構成の例を、図4に示す。本実施形態は、透過型の市松状位相板4を用いたホログラム撮影装置又は像再構成システム装置の例である。図4の実施形態の装置構成は、レンズ8、バンドパスフィルター7、偏光子2、偏光回折光学素子3、市松状位相板4、領域分割偏光子5、撮像素子6、及び、処理装置10を備える。以下、各構成要素について説明するが、図1の概念図と共通する構成要素については、説明を簡略化する。
バンドパスフィルター7は、撮影対象物体1から、反射・透過した、あるいは発せられた空間的かつ時間的にインコヒーレントな光波について、特定の帯域の光のみを透過させ、時間的コヒーレンスを向上させる。バンドパスフィルター7を透過する光の波長幅は、例えば、1nm〜100nmであり、透過波長幅が狭い方が望ましい。なお、光源の時間的コヒーレンスが十分に高い場合には、バンドパスフィルター7を用いなくてよい。バンドパスフィルター7を適用後、光は偏光子2に入射する。
偏光子2は、入射した光を直線偏光にする。また、偏光回折光学素子(偏光回折レンズ)3は、直線偏光を入射させることによって、偏光状態が円偏光で焦点距離がfdの収束球面波と、この光波と逆回りの円偏光で焦点距離が−fdの発散球面波を同時に生成する。偏光子2と偏光回折光学素子3により、右回り円偏光の第1分割光L1と左回り円偏光の第2分割光L2を得る。
光利用効率を高める場合や、像倍率を任意に制御する場合、或いは、第1分割光L1と第2分割光L2の重なり度合いを制御する場合には、バンドパスフィルター7の前にレンズ8を配置してもよい。レンズ8は、撮影対象物体1から発せられた空間的かつ時間的にインコヒーレントな光波を集光し、所望の収束度合とする。この収束度合は、例えば、撮像素子6の受光面において第1分割光L1と第2分割光L2の重なる面積ができるだけ広くなるように設定することが望ましい。レンズ8を導入することにより、ホログラムの解像度及び視野を制御することができる。
本実施形態の市松状位相板4は、光透過型の光学素子である。図2に示す市松状の位相板により、透過する光波を変調し、第1分割光L1と第2分割光L2のそれぞれを4方向に分割する。φ≠0であればφの値は任意である。なお、φ=πの場合に最も回折効率が高くなる。
次いで、領域分割偏光子5により、4方向の直線偏光成分を取り出すことで、撮像素子6の受光面上で位相シフト量が異なる4枚のホログラムを同時に形成させる。撮像素子6は、4枚のホログラムを含む光分布を1枚の強度画像として撮影し、画像データを処理装置10に送る。
処理装置10は、画像データの記録、又は、像再構成処理を行う。像再構成を行う場合は、ホログラムの画像データを4枚のホログラムに分割する。これらのホログラムを位相シフト法及び伝搬計算を適用することにより、撮影対象物体1の立体情報を再構成することができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の装置構成の例を、図5に示す。本実施形態は、反射型の市松状位相板4を用いたホログラム撮影装置又は像再構成システム装置の例である。図5の実施形態の装置構成は、レンズ8、バンドパスフィルター7、偏光子2、偏光回折光学素子3、ビームスプリッター9、市松状位相板4、領域分割偏光子5、撮像素子6、及び、処理装置10を備える。以下、各構成要素について説明するが、図4の第1の実施形態と共通する構成要素については、説明を簡略化する。
撮影対象物体1から反射・透過した、あるいは発せられた空間的かつ時間的にインコヒーレントな光波を、レンズ8で集光し、バンドパスフィルター7で時間的コヒーレンスを向上させる。偏光子2と偏光回折光学素子3により、右回り円偏光の第1分割光L1と左回り円偏光の第2分割光L2を得る。
市松状位相板4の前にビームスプリッター9を配置する。ビームスプリッター9は、まず、偏光回折光学素子3からの第1分割光L1と第2分割光L2を透過させ、市松状位相板4に導く。
市松状位相板4は反射型であり、入射した第1分割光L1と第2分割光L2を変調し、第1分割光L1と第2分割光L2のそれぞれを4方向に分割させて反射する。反射された第1分割光L1と第2分割光L2の4つの分割光は、再びビームスプリッター9に入射する。
ビームスプリッター9は、市松状位相板4からの第1分割光L1及び第2分割光L2の4つの分割光を、入射方向から90度角度が変化するよう反射して、領域分割偏光子5に導く。
領域分割偏光子5は、4方向の直線偏光成分を取り出すことで、撮像素子6の受光面上で位相シフト量が異なる4枚のホログラムを同時に形成させる。撮像素子6は、4枚のホログラムを含む光分布を1枚の強度画像として撮影し、画像データを処理装置10に送る。
処理装置10は、画像データの記録、又は、像再構成処理を行う。像再構成を行う場合は、ホログラムの画像データを4枚のホログラムに分割する。これらのホログラムを位相シフト法及び伝搬計算を適用することにより、撮影対象物体1の立体情報を再構成することができる。
第1及び第2の実施形態に示す光学系で、4枚のホログラムを形成させるためには、偏光子2、偏光回折光学素子3、市松状位相板4、領域分割偏光子5の配置順は固定する必要があるが、バンドパスフィルター7とレンズ8の配置位置に制約はない。しかし、レンズ8に関しては、配置位置に応じて分解能や視野が変動するため、目的の撮像特性に応じて、配置位置を検討する必要がある。
(像再構成処理及びその検証)
図4に示すホログラム撮影装置及び像再構成システムを用い、ホログラムを撮影し、像を再構成した結果を以下に示す。図4において、処理装置10が、ホログラム画像データに基づいて像再構成処理を行う。
図6に、撮影対象とした"A",“B",“C"の物体とそれらの位置関係を示す。“A",“B",“C"の物体の大きさはそれぞれ、144μm×150μm,114μm×150μm,126μm×150μmである。“A"の物体を基準とすると、“B"、“C"の物体の面内方向の中心位置は、それぞれ(x=−110.5μm,y=130μm)、(x=175.5μm,y=266.5μm)である。また、物体“A"と“B"の間、物体“B"と“C"の間の奥行(z)方向の距離は、それぞれ30mmである。なお、図6の各画面は概念的なものであり、物体"A",“B",“C"が上記の位置で光を反射又は発光し、他の領域(黒で示されている。)は透光性であればよい。これらを3次元物体として、本発明のホログラム撮影装置で撮影した。以下、各図の画像は、シミュレーションで作成した。
撮像素子6で撮影した強度画像を図7に示す。なお、この画像を取得する際、市松状位相板4の位相値φをπ[rad]とし、水平方向及び垂直方向のピッチを13μmとした。図7より、縞の明暗の位置が異なる4枚のホログラムが形成されていることがわかる。
処理装置10により、図7の強度画像から4枚のホログラムを抽出する。この際に、4枚のホログラムに相互の面内ずれが生じないように、正確に抽出する必要がある。このため、ホログラムの位置関係を正確に把握するために、位相限定相関の演算を用いる。図7の4つのホログラムの内、任意の1枚のホログラムを、ケラレが生じないように切り出し、これをテンプレート画像t(x,y)とする。図7の強度画像をi(x,y)とすると、位相限定相関の演算は、次の(1)式で与えられる。
Figure 2021131457
ここで、I(u,v)、T(u,v)はそれぞれi(x,y)、t(x,y)のフーリエスペクトルであり、*は複素共役を示す。FT[…]はフーリエ変換演算子である。なお、(1)式においては、逆フーリエ変換を行っても、実質的に同等である。演算の結果、p(x,y)には、4つ各ホログラムの中心位置に明確なピークが生じる。p(x,y)のピーク位置から、4つのホログラムの相対的な位置情報を取得する。この位置情報を参照することにより、面内ずれを十分に抑制でき、4つの個別のホログラムを正確に抽出することができる。
抽出したホログラム群を図8に示す。図8(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ、位相シフト量が0、π/2、π、3π/2 [rad]のホログラムの画像である。以降の画像処理においては、例えば、各ホログラム画像の中心を原点として、位置合わせされた各画像の(x,y)座標に基づいて処理を行う。
これらのホログラムの干渉パターン強度Iに対して、4ステップの位相シフト法のアルゴリズムである、次式(2)を適用することにより、複素振幅分布U(x,y)を求める。
Figure 2021131457
ここで、I0、Iπ/2、Iπ、I3π/2はそれぞれ、位相シフト量が0、π/2、π、3π/2 [rad]のホログラムである。U(x,y)には、撮影対象物体1の3次元情報を再構成するために必要な位相分布が含まれている。
図9にU(x,y)の(a)振幅分布と(b)位相分布をそれぞれ示す。このU(x,y)に対して、伝搬計算を適用することにより任意のz面における光分布を再構成することができる。伝搬計算は次式(3)により与えられる。
Figure 2021131457
ここでFT-1[…]は逆フーリエ変換演算子である。λは光源の波長である。撮影対象物体の奥行方向の配置位置zsが既知の場合に、撮影対象物体にフォーカスが合った像を得るためには、(3)式のzrを以下の(4)式に従うように設定すればよい。
Figure 2021131457
ここで、fdは偏光回折光学素子(偏光回折レンズ)の焦点距離、zhは偏光回折光学素子と撮像素子の間の距離であり、zdは、次の(5)式により与えられる。
Figure 2021131457
0はレンズ8の焦点距離であり、dはレンズ8と偏光回折光学素子3の間の距離である。図4の光学系を用いた実施例では、f0=200[mm]、d=0[mm]、fd=200[mm]、zh=300[mm]としている。“A"、“B"、“C"の配置位置zs=270,300,330[mm]の情報を参照し、(3)式を適用して再構成した結果を図10に示す。
図10を参照すると、“A"、“B"、“C"の物体のそれぞれにフォーカス位置を合わせることに成功していることがわかる。物体“A"にフォーカス位置を合わせた場合には、物体“B"と物体“C"の像がぼやける。同様に、物体“B"、物体“C"のそれぞれにフォーカス位置を合わせた場合には、フォーカス位置と異なる面に配置された物体の像がぼやける。以上のように、本発明により単一光路の光学系を実現でき、一度の撮影で3次元情報を撮影・再構成することが可能である。
上記の実施形態では、ホログラム撮影装置及び像再構成システムの構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、ホログラム撮影方法及び像再構成方法として構成されてもよい。
なお、上述した像再構成装置(処理装置)10として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、像再構成装置10の各演算手順を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成要素を1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成要素を分割したりすることが可能である。
本発明は、立体映像のカメラとして用いることができ、蛍光3次元顕微鏡など、干渉計測・分析装置等に応用可能である。
1 撮影対象物体
2 偏光子
3 偏光回折光学素子
4 市松状位相板
5 領域分割偏光子
6 撮像素子
7 バンドパスフィルター
8 レンズ
9 ビームスプリッター
10 処理装置

Claims (8)

  1. インコヒーレントな光波を第1分割光と第2分割光に分割し、これら2つの光波の位相分布に互いに異なる位相分布を付与し、前記第1分割光と前記第2分割光を互いに干渉させてホログラムを形成し、撮影するホログラム撮影装置において、
    インコヒーレントな光波を直線偏光とする偏光子と、前記直線偏光から前記第1分割光と前記第2分割光を生成する偏光回折光学素子と、前記第1分割光と前記第2分割光を複数方向に分割する市松状位相板と、領域ごとに前記第1分割光と前記第2分割光に異なる位相差を与える領域分割偏光子とを備え、単一光路の光学系を構成することを特徴とする、ホログラム撮影装置。
  2. 請求項1に記載のホログラム撮影装置において、
    前記偏光回折光学素子は、前記直線偏光から、偏光状態が円偏光で焦点距離がfdの収束球面波と、この光波と逆回りの円偏光で焦点距離が−fdの発散球面波を同時に生成することを特徴とする、ホログラム撮影装置。
  3. 請求項1又は2に記載のホログラム撮影装置において、
    前記市松状位相板は、市松状に0とπの位相値を与えることを特徴とする、ホログラム撮影装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のホログラム撮影装置において、
    前記領域分割偏光子は、0°、45°、90°、135°の透過軸を有する4領域の直線偏光子を備えることを特徴とする、ホログラム撮影装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のホログラム撮影装置において、
    インコヒーレントな光波を集光するレンズをさらに備え、前記第1分割光と前記第2分割光の重なり度合いを制御することを特徴とする、ホログラム撮影装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のホログラム撮影装置において、
    前記市松状位相板は、透過型又は反射型であることを特徴とする、ホログラム撮影装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のホログラム撮影装置と、前記ホログラム撮影装置で撮影したホログラムの画像データから像再構成を行う処理装置とを備えた、像再構成システム。
  8. 請求項7に記載の像再構成システムにおいて、
    前記処理装置は、前記画像データから個別のホログラムを抽出し、位相シフト法により複素振幅分布を求め、伝搬計算により像を再構成することを特徴とする、像再構成システム。
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