JP2021130592A - 被覆酸化マグネシウム粒子及びその製造方法、並びに樹脂組成物 - Google Patents

被覆酸化マグネシウム粒子及びその製造方法、並びに樹脂組成物 Download PDF

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直樹 御法川
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郁恵 小林
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Abstract

【課題】樹脂に対して高い熱伝導性を付与する効果を維持しつつ、耐湿性に優れた被覆酸化マグネシウム粒子及びその製造方法、また、該被覆酸化マグネシウム粒子を用いた樹脂組成物を提供する。【解決手段】酸化マグネシウム粒子の表面に、所定のシロキサン化合物を蒸着させて、被覆酸化マグネシウム粒子の前駆体を得る工程と、前記前駆体を所定の温度で加熱し、酸化マグネシウム粒子の表面がシリカ系薄膜で被覆された被覆酸化マグネシウム粒子を得る工程とを経て、酸化マグネシウム粒子と、前記酸化マグネシウム粒子の表面を被覆するシリカ系薄膜とを含む被覆酸化マグネシウム粒子を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、被覆酸化マグネシウム粒子及びその製造方法、並びに該被覆酸化マグネシウム粒子を用いた樹脂組成物に関する。
電子機器の発熱部位の周辺では、電子デバイスの正常作動や長寿命化を図る等の観点から、一般に、放熱を促進する熱伝導性部材が用いられている。前記熱伝導性部材としては、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、ナイロン樹脂等の耐熱性を有する樹脂材料に、熱伝導性フィラーを充填して、熱伝導率を向上させた樹脂組成物により形成された成形品が用いられている。
酸化マグネシウム(以下、MgOと表記する。)は、高い熱伝導性を有していることから、上記のような熱伝導性部材における熱伝導性フィラーとして用いられている。
しかしながら、MgOは、吸湿性が大きく、熱伝導性フィラーとして用いた場合に、吸湿により水和して膨張し、これを含む樹脂組成物で形成された成形品にクラックが生じたり、熱伝導性が低下したりしやすい等の課題を有していた。
これに対しては、例えば、特許文献1には、MgO粒子を研磨して、粒子表面に偏在するカルシウム化合物等の不純物を除去することにより、MgO粒子の耐水性(耐湿性)を向上させることができることが記載されている。
また、特許文献2には、MgO粉末(MgO粒子)表面に、リン酸マグネシウム系化合物による被覆層を形成し、さらに有機シリケートによる被覆層を形成することにより、耐水性(耐湿性)を向上させることが記載されている。
特開2019−99413号公報 特開2008−74683号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような方法では、MgO粒子の表面の不純物を、研磨後分級する処理によって、完全に除去することは難しい。また、該処理では、原料MgO粒子のロスも大きくなりやすい。
また、上記特許文献2に記載されたような方法では、MgO粒子表面に複数層の被覆層の形成が必要であり、被覆のための工程数が多く、手間及び原料コストが増大する。また、被覆層の厚さが大きくなり、熱伝導率の低下の抑制が困難な場合がある等の課題を有していた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、樹脂に対して高い熱伝導性を付与する効果を維持しつつ、耐湿性に優れた被覆MgO粒子及びその製造方法、また、該被覆MgO粒子を用いた樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、所定の方法でMgO粒子をシリカ系薄膜で被覆することにより、耐湿性に優れた被覆MgO粒子が得られることを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1]MgO粒子と、前記MgO粒子の表面を被覆するシリカ系薄膜とを含む、被覆MgO粒子。
[2]前記シリカ系薄膜が、シリカ及びSi−Mg複合酸化物の少なくともいずれかを含む薄膜である、上記[1]に記載の被覆MgO粒子。
[3]Si含有量が200〜5000質量ppmである、上記[1]又は[2]に記載の被覆MgO粒子。
[4]C含有量が170質量ppm未満である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の被覆MgO粒子。
[5]BET比表面積が0.02〜5.0m2/gである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の被覆MgO粒子。
[6]レーザー回折散乱法による粒度分布における累積体積50%での粒子径が2.5〜40.0μmである、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の被覆MgO粒子。
[7]温度85℃、相対湿度85%の大気中における48時間での質量増加率が、25.00%以下である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の被覆MgO粒子。
[8]MgO粒子の表面に、下記式(1)で表される構造を含むシロキサン化合物を蒸着させて、被覆MgO粒子の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を650℃以上1000℃未満の温度で加熱し、MgO粒子の表面がシリカ系薄膜で被覆された被覆MgO粒子を得る工程とを含む、被覆MgO粒子の製造方法。
Figure 2021130592

(式(1)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基である。)
[9]前記式(1)で示される構造を含むシロキサン化合物が、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される化合物の少なくとも一方を含む、上記[8]に記載の被覆MgO粒子の製造方法。
Figure 2021130592

(式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R1及びR2の少なくともいずれかは水素原子である。mは0〜10の整数である。)
Figure 2021130592

(式(3)中、nは3〜6の整数である。)
[10]上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の被覆MgO粒子と、樹脂とを含む、樹脂組成物。
本発明によれば、樹脂に対して高い熱伝導性を付与する効果を維持しつつ、耐湿性に優れた被覆MgO粒子を提供することができる。したがって、本発明の被覆MgO粒子を用いることにより、高い熱伝導性を有し、かつ、耐湿性に優れた樹脂成形品を得るための樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、前記被覆MgO粒子を好適に製造することができる。
以下、本発明の被覆MgO粒子及びその製造方法、並びに、該被覆MgO粒子を用いた樹脂組成物の実施形態について、詳細に説明する。
なお、本明細書で言う「室温」とは、25±5℃の常温を意味するものとする。
[被覆MgO粒子]
本実施形態の被覆MgO粒子は、MgO粒子と、該MgO粒子の表面を被覆するシリカ系薄膜とを含むことを特徴としている。
このようなシリカ系薄膜で被覆されたMgO粒子は、耐湿性に優れており、樹脂に添加した際に、耐湿性及び熱伝導性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態で言うシリカ系薄膜とは、シリカ及び/又はSi−Mg複合酸化物を含む薄膜であることを意味する。すなわち、前記シリカ系薄膜は、シリカからなる場合、Si−Mg複合酸化物からなる場合、又は、シリカからなる部分とSi−Mg複合酸化物とが混在している場合を含む。なお、Si−Mg複合酸化物のMgは、MgO粒子の表面のMgに由来し、Siは、MgO粒子の表面を被覆するために用いられる原料由来のSiである。
MgO多結晶基板表面に、後述する本実施形態に係る被覆MgO粒子の製造方法におけるシリカ系薄膜を形成する工程と同様の方法を実施して基板試料を作製した場合、該基板試料の表面についてのX線光電子分光(XPS)法による分析で検出されるSi由来の光電子の運動エネルギーが、シリカの標準ピーク103.7eVとほぼ一致する。このことから、本実施形態の被覆MgO粒子も、シリカ又はSi−Mg複合酸化物を主成分とする薄膜が形成されているものと推測される。
前記被覆MgO粒子は、上記のようにシリカ系薄膜を有するものであり、Si含有量が、200〜5000質量ppmであることが好ましく、より好ましくは280〜4000質量ppm、さらに好ましくは400〜3500質量ppmである。
上記範囲内のSi含有量であれば、適度な膜厚のシリカ系薄膜が形成されているものと推定され、このため、良好な耐湿性が得られるものと考えられる。
なお、前記Si含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法による測定値である。具体的には、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
前記被覆MgO粒子のシリカ系薄膜は、膜厚がナノオーダーと小さく、測定が非常に困難である。上述した基板試料についての透過型電子顕微鏡(TEM)観察や、前記Si含有量及び後述する粒子径等を考慮した計算値等から推定される膜厚としては、好ましくは50nm未満であり、より好ましくは30nm未満、さらに好ましくは20nm未満である。
前記被覆MgO粒子は、炭素原子(C)含有量が、170質量ppm未満であることが好ましく、より好ましくは150質量ppm以下、さらに好ましくは120質量ppm以下である。C含有量の下限は、0質量ppmであることが好ましい。
MgO粒子の表面のシリカ膜の形成には、有機ケイ素化合物を用いることができるが、該有機ケイ素化合物由来のCが残存し、原料MgO粒子自体に不可避的不純物として存在するCの含有量よりも増加する場合もある。
これに対して、本実施形態の被覆MgO粒子のC含有量は、原料MgO粒子のC含有量と同等又はそれ以下であり、しかも、MgO粒子本来の熱伝導性を大幅に低減させることのないシリカ系薄膜を有するものである。このように、被覆MgO粒子のC含有量が、できる限り少なく、上記範囲内であることにより、良好な熱伝導性が保持され得る。
なお、前記C含有量は、非分散赤外吸収法にて測定した値である。具体的には、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
前記被覆MgO粒子は、C以外に、原料MgO粒子由来の不可避的不純物として、CaやFe等の金属元素も含み得るが、これらの合計含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であることが好ましく、好ましくは8000質量ppm未満、より好ましくは7000質量ppm未満、さらに好ましくは6000質量ppm未満である。
なお、これらの金属元素の含有量は、ICP発光分光法による測定値とする。
前記被覆MgO粒子は、樹脂等に対する熱伝導性フィラーとしての使用の観点から、微粒子であることが好ましく、BET比表面積が、好ましくは0.02〜5.0m2/g、より好ましくは0.07〜4.5m2/g、さらに好ましくは1.5〜4.1m2/gである。
前記BET比表面積は、JIS R 1626:1996に準じて、吸着質としてN2ガスを用いたBET流動法(1点法)で測定した値である。具体的には、下記実施例に記載の方法により測定することができる。このBET比表面積は、前記被覆MgO粒子の微細性を示す指標であり、このBET比表面積の値が大きいほど、該被覆MgO粒子は微細であると言える。
前記被覆MgO粒子は、樹脂等への熱伝導性フィラーとしての配合容易性や充填性等の観点から、上述したように微粒子であることが好ましく、レーザー回折散乱法による粒度分布における累積体積50%での粒子径(以下、D50と表記する。)が、好ましくは2.5〜40.0μm、より好ましくは2.8〜35.0μm、さらに好ましくは3.0〜30.0μmである。
前記D50は、具体的には、下記実施例に記載の粒度分布測定装置にて測定された値である。
前記被覆MgO粒子は、耐湿性に優れたものであり、高温高湿条件下において、吸湿性が低いものである。具体的には、温度85℃、相対湿度85%の大気中における48時間での質量増加率が、好ましくは25.00%以下、より好ましくは20.00%以下、さらに好ましくは18.00%以下である。
前記質量増加率は、上記の高温高湿条件下での曝露前の質量に対する、曝露後の質量増加量の割合である。具体的には、下記実施例に示す耐湿試験によって求められる値である。
本実施形態の被覆MgO粒子は、シリカ系薄膜で被覆される前の原料MgO粒子に比べて、前記質量増加率が小さく、耐湿性の向上が図られたものである。
[被覆MgO粒子の製造方法]
本実施形態の被覆MgO粒子の製造方法は、MgO粒子の表面に、下記式(1)で表される構造を含むシロキサン化合物を蒸着させて、被覆MgO粒子の前駆体を得る工程(1)と、前記前駆体を650℃以上1000℃未満の温度で加熱し、MgO粒子の表面がシリカ系薄膜で被覆された被覆MgO粒子を得る工程(2)とを含む。
Figure 2021130592

式(1)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基である。
このような製造方法によれば、上述したような本実施形態の被覆MgO粒子を好適に製造することができる。
以下、上記製造方法について、工程順に説明する。
<工程(1)>
まず、工程(1)では、MgO粒子の表面に、前記シロキサン化合物を蒸着させて、被覆MgO粒子の前駆体を得る。
このようなシロキサン化合物を用いた被覆MgO粒子の前駆体を作製することにより、MgO粒子表面に好適なシリカ系薄膜を形成することができる。
(MgO粒子)
前記MgO粒子は、被覆MgO粒子の製造に用いられる原料MgO粒子である。原料MgO粒子は、その製法や粒子形状等は特に限定されるものではなく、市販品等の公知のものを使用することができる。原料MgO粒子は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
原料MgO粒子の純度は、良好な熱伝導性の観点から、純度が97.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは97.2質量%以上、さらに好ましくは97.5質量%以上である。
原料MgO粒子に含まれる不純物金属元素は、合計含有量が8000質量ppm未満であることが好ましく、より好ましくは7000質量ppm未満、さらに好ましくは6000質量ppm未満である。
原料MgO粒子のD50は、上述したように、得られる被覆MgO粒子の樹脂等への熱伝導性フィラーとしての配合容易性や充填性等に鑑みて、好ましくは2.5〜40.0μm、より好ましくは2.8〜35.0μm、さらに好ましくは3.0〜30.0μmである。
(シロキサン化合物)
下記式(1)で表される構造を含むシロキサン化合物は、前記シリカ系薄膜を生成させるための原料化合物であり、原料MgO粒子の表面に蒸着させる。
Figure 2021130592
式(1)で表される構造は、Si−H結合を有するハイドロジェンシロキサン構造単位である。式(1)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基であり、より好ましくはメチル基である。
前記シロキサン化合物としては、式(1)で表される構造を繰り返し単位として含むオリゴマー又はポリマーが好ましい。また、前記シロキサン化合物は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。前記シロキサン化合物の重量平均分子量は、均一な膜厚のシリカ系薄膜の形成容易性の観点から、好ましくは100〜2000、より好ましくは150〜1000、さらに好ましくは180〜500である。なお、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値とする。
前記シロキサン化合物としては、下記式(2)で表される化合物及び/又は下記式(3)で表される化合物が好適に用いられる。
Figure 2021130592
式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R1及びR2の少なくともいずれかは水素原子である。mは0〜10の整数であり、好ましくは1〜5、より好ましくは1である。
Figure 2021130592
式(3)中、nは3〜6の整数であり、好ましくは3〜5、より好ましくは4である。
前記シロキサン化合物としては、良好なシリカ系薄膜の形成容易性の観点から、特に、式(3)においてnが4である環状ハイドロジェンシロキサンオリゴマーが好ましい。
(前駆体)
前記シロキサン化合物を原料MgO粒子の表面に蒸着させることにより、被覆MgO粒子の前駆体を得る。蒸着により、原料MgO粒子の表面に前記シロキサン化合物を付着形成させることにより、ナノオーダーの膜厚の小さいシリカ系薄膜が得られやすい。
蒸着の方法は、特に限定されるものではないが、密閉系、かつ、系内ガスを容易に置換できる装置を使用して行うことが好ましい。必要に応じて、系内を減圧又は加圧してもよい。使用装置としては、例えば、物理蒸着(PVD)装置が挙げられ、また、比較的低温で、かつ、高真空状態とすることを要しない場合は、例えば、デシケーター、密閉ガラス容器等のより簡易な装置を用いることもできる。
蒸着を行う際の温度は、使用するシロキサン化合物の蒸気圧にもよるが、製造効率等の観点から、好ましくは10〜200℃、より好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃で行われる。
得られる前駆体中への不純物の混入を防止する観点から、蒸着装置の系内には、N2ガス等の不活性ガス等を導入することも好ましい。また、原料MgO粒子全体に均一に蒸着膜を形成する観点から、蒸着装置の系内の原料MgO粒子を撹拌したり、震とうしたりすることも好ましい。
蒸着に使用するシロキサン化合物の量は、該シロキサン化合物の種類にもよるが、ナノオーダーの膜厚の小さいシリカ系薄膜を有する被覆MgO粒子を得る観点から、原料MgO粒子に対して、BET比表面積基準で、好ましくは0.1〜1.0mg/m2、より好ましくは0.2〜0.8mg/m2、さらに好ましくは0.3〜0.6mg/m2である。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた前駆体を、650℃以上1000℃未満の温度で加熱し、MgO粒子の表面がシリカ系薄膜で被覆された被覆MgO粒子を得る。
上記温度で前記前駆体を加熱処理することにより、シロキサン化合物が脱水素反応を生じ、また、アルキル基等の有機基成分が分解して揮散する等により、Cが除去されてシリカ系薄膜が生成し、C含有量の少ない前記被覆MgO粒子が形成される。
なお、前記シリカ系薄膜は、前記シロキサン化合物から生じたシリカのみからなる場合、又は、原料MgO粒子の表面のMgと前記シロキサン化合物由来のSiとの複合酸化物(Si−Mg複合酸化物)からなる場合、及びこれらの両方を含む場合とがある。
前記加熱処理の温度は、耐湿性に優れた被覆MgO粒子を効率的に得る観点から、650℃以上1000℃未満、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜900℃である。
加熱時間は、十分な反応時間を確保し、また、良好なシリカ系薄膜の形成を効率的に行う観点から、0.5〜12時間であることが好ましく、より好ましくは0.5〜6時間、さらに好ましくは1〜4時間である。
前記加熱処理時の雰囲気は、特に限定されるものではなく、不活性ガス雰囲気中でも、大気雰囲気中でもよい。
なお、一連の工程(1)及び工程(2)を行った後、確実に全面がシリカ系薄膜で被覆された、より耐湿性に優れた被覆MgO粒子を得る目的で、さらに、工程(1)及び工程(2)を順次、繰り返し行ってもよい。ただし、シリカ系薄膜をこのように重畳的に形成する場合は、MgO粒子による所望の熱伝導性が損なわれない範囲内で行う必要がある。
また、工程(2)の後、被覆MgO粒子同士が、局所的に融着することがあるが、このような場合には、例えば、ローラーミル、ハンマーミル、ジェットミル、ボールミル等の一般的な粉砕機を用いて解砕し、固着や凝集のない被覆MgO粒子を得ることができる。
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、上記のような本実施形態の被覆MgO粒子と、樹脂とを含むものである。
前記被覆MgO粒子は、MgO粒子の高い熱伝導性を維持しつつ、耐湿性が向上したものであり、樹脂に良好な熱伝導性を付与し、耐湿性及び放熱性に優れた樹脂成形品が得られる樹脂組成物を提供することができる。したがって、前記被覆MgO粒子は、電気・電子分野等の放熱材料用途において、樹脂に配合される熱伝導性フィラーとして好適に用いることができる。
前記樹脂は、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は、これらの複合樹脂であってもよい。耐熱性の観点からは、熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記熱硬化性樹脂には、硬化剤や硬化促進剤等が添加されてもよい。これらのうち、良好な柔軟密着性の観点からは、シリコーン樹脂が好ましい。また、耐熱性や接着性、絶縁性等の観点からは、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
シリコーン樹脂には、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂等がある。優れた柔軟密着性の観点からは、副生成物等に起因する気泡等を生じ難い付加反応硬化型液状シリコーン樹脂が好ましい。
なお、本明細書で言うシリコーン樹脂とは、シリコーンゴムも含む広義なものとする。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、水添ビスフェノールA型、ビフェニル型等の2官能グルシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグルシジルエステル型エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)、4−(グリシジロキシ)−N,N−ジグリシジルアニリン、3−(グリシジロキシ)−N,N−ジグリシジルアニリン等のグルシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂;4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の3官能以上の多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記樹脂組成物中の被覆MgO粒子の含有量は、該樹脂組成物により形成される樹脂成形品に求められる耐湿性や熱伝導性の程度や樹脂の種類等に応じて、適宜調整することができる。
前記被覆MgO粒子を熱伝導性フィラーとして添加する場合、前記樹脂組成物中における被覆MgO粒子の含有量は、通常、35〜98質量%であり、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。
前記樹脂組成物中には、被覆MgO粒子以外のフィラーが含まれていてもよく、また、所望の樹脂成形品を製造する上での加工性等の観点から、前記被覆MgO粒子による効果が損なわれない範囲内において、必要に応じて、例えば、可撓性付与剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、無機イオン捕捉剤、顔料、染料等の添加剤や、希釈剤、溶剤等を適宜添加してもよい。
前記樹脂組成物は、公知の方法で混合し、所望の形状の樹脂成形品として成形することができる。
例えば、半導体パワーデバイスやパワーモジュール等の接着用途向けに、シート状に成形した放熱シートとすることができる。
以下、本発明の実施形態を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[被覆MgO粒子試料の作製]
下記実施例において被覆MgO粒子試料の作製に使用した原料MgO粒子、シロキサン化合物及び真空デシケーターの詳細を以下に示す。
<原料MgO粒子>
(A−1)「パイロキスマ(登録商標)5301」、協和化学工業株式会社製、D50 3.5μm、BET比表面積1.6m2/g、Si含有量170質量ppm
(B−1)「パイロキスマ(登録商標)3320」、協和化学工業株式会社製、D50 27.8μm、BET比表面積0.11m2/g、Si含有量105質量ppm
(C−1)「スターマグP」、神島化学工業株式会社製、D50 2.9μm、BET比表面積4.2m2/g、Si含有量623質量ppm
<シロキサン化合物>
・環状メチルハイドロジェンシロキサン4量体(H4)、東京化成工業株式会社製
<真空デシケーター>
厚さ20mmのアクリル樹脂製、内寸法:縦260mm、横260mm、高さ100mm、上下二段構造
(実施例1−1)
真空デシケーター内の上段に、原料MgO粒子(A−1)約30gをアルミナトレー上に均一に広げたものを載置し、下段に、シロキサン化合物(H4)をガラスシャーレに10g入れたものを載置した。この真空デシケーターを閉扉して、60℃で6時間加熱して、シロキサン化合物(H4)を原料MgO粒子(A−1)表面に蒸着させて、被覆MgO粒子の前駆体を得た。
得られた前駆体を真空デシケーター内から取り出して、アルミナルツボに収容し、大気雰囲気中、800℃で3時間加熱処理して、被覆MgO粒子試料(A−2)を得た。
(実施例1−2)
実施例1−1において、被覆MgO粒子の前駆体の加熱処理の温度を650℃、時間を1.5時間とし、それ以外は、実施例1−1と同様にして、被覆MgO粒子試料(A−3)を得た。
(実施例1−3)
実施例1−1において、被覆MgO粒子の前駆体の加熱処理の温度を900℃とし、それ以外は、実施例1−1と同様にして、被覆MgO粒子試料(A−4)を得た。
(実施例1−4)
実施例1−1において、原料MgO粒子(A−1)に代えて(B−1)を用い、それ以外は、実施例1−1と同様にして、被覆MgO粒子試料(B−2)を得た。
(実施例1−5)
実施例1−1において、原料MgO粒子(A−1)に代えて(C−1)を用い、それ以外は、実施例1−1と同様にして、被覆MgO粒子試料(C−2)を得た。
[MgO粒子試料の評価測定]
上記実施例で得られた各被覆MgO粒子試料について、以下の各種評価測定を行った。これらの評価測定結果を下記表1にまとめて示す。なお、比較参照のため、被覆MgO粒子試料の原料として用いた非被覆の原料MgO粒子(A−1)、(B−1)及び(C−1)についての評価測定結果も、それぞれ、比較例1−1、1−2及び1−3として、表1に併せて示す。
<D50>
D50は、粒度分析測定装置(「マイクロトラック(登録商標) MT3300EX II」、マイクロトラック・ベル株式会社製)にて測定した粒度分布から求めた。
<BET比表面積>
全自動比表面積測定装置(「Macsorb(登録商標) HM model−1210」、株式会社マウンテック製)にて、BET流動法(1点法、使用ガス:N230体積%とHe70体積%との混合ガス)で測定した。
<Si含有量>
ICP発光分析装置(「ICPS−7510」、株式会社島津製作所製)にて測定した。
<C含有量>
管状電気炉方式による非分散赤外吸収法を用いた炭素・硫黄分析装置(「EMIA−821」、株式会社堀場製作所製)にて測定した。
<耐湿性>
約20gのMgO粒子試料(乾燥剤入り密閉容器内で室温保管)を秤量瓶に入れて秤量し、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽内で48時間保持することにより、耐湿試験を行った。
試験後、恒温恒湿槽から秤量瓶を取り出して秤量し、MgO粒子試料の質量増加量Δx[g]を求めた。試験前のMgO粒子試料の質量x[g]に対するΔx[g]の割合を質量増加率として算出し、表1に示す。
前記質量増加率が小さいほど、MgO粒子試料が耐湿性に優れていると言える。
Figure 2021130592
表1に示した結果から分かるように、本実施形態の被覆MgO粒子(実施例)は、原料MgO粒子(比較例)と比較して、D50及びBET比表面積の変化は小さく、C含有量は減少し、Si含有量が増加しており、MgO粒子の表面がシリカ系薄膜で被覆されているものであると推測される。このような被覆粒子であることにより、該被覆MgO粒子は、耐湿性が向上したものと考えられる。
[樹脂組成物の調製]
上記実施例及び比較例のMgO粒子試料のうち、代表例として試料(A−1)〜(A−3)、試料(B−1)及び(B−2)について、これらを用いて樹脂組成物をそれぞれ調製した。樹脂成分としては、下記実施例及び比較例においては、以下に示すシリコーン樹脂(シリコーンゴム)を用いた。
<樹脂成分>
・シリコーン樹脂:「KE−109」、信越化学工業株式会社、二液室温硬化型シリコーンゴム
(実施例2−1〜2−3、比較例2−1及び2−2)
シリコーン樹脂100質量部、及び下記表2に示す各MgO粒子試料300質量部を配合し、自公転ミキサー(「あわとり練太郎(登録商標) ARE−310」、株式会社シンキー製)にて、2000rpmで30秒間撹拌混合して、各樹脂組成物を調製した。
[樹脂成形品の評価測定]
上記実施例及び比較例で調製した各樹脂組成物について、樹脂成形品として樹脂シートを作製して、耐湿試験、及び加速試験として高加速寿命(HAST)試験により、耐湿性の各種評価測定を行った。これらの評価測定結果を下記表2にまとめて示す。
〔樹脂シートの製造〕
フッ素離型処理されたポリエステルフィルム上に樹脂組成物を流し広げて、泡が入らないように、フッ素離型処理されたポリエステルフィルムを被せ、圧延ロールにて、所定の厚さのシート状に成形し、成形品の前駆体(未硬化品)を得た。
この前駆体をオーブンにて、100℃で15分間熱処理した後、室温にて1日間放冷し、樹脂シートを得た。
〔耐湿試験〕
前記樹脂シートを厚さ2mmで製造し、これを20mm×70mmのサイズに切り出したものを試験片とした。この試験片を温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽内で17日間保持することにより、耐湿試験を行った。
試験前及び試験後の試験片について、以下のようにして、熱伝導率及び硬度を測定した。
<熱伝導率>
ホットディスク法熱物性測定装置(「TPS 2500S」、京都電子工業株式会社製、ISO22007−2準拠)にて、室温における熱伝導率を測定した。
耐湿試験を行ったことにより熱伝導率が低下していない場合は、樹脂シート(成形品)の耐湿性が優れていると言える。
<硬度>
タイプAデュロメータ(「デジタルゴム硬度計 DD4−A型」、高分子計器株式会社製)にて、JIS K 6249:2003に準拠した方法で、室温における硬度を測定した。
〔HAST試験〕
前記樹脂シートを厚さ0.2mmで製造し、これを直径30mmのポンチ型で円形状に打ち抜いたものを試験片とし、イオン交換水5.00gが入ったフッ素樹脂製容器に入れた。温度120℃、相対湿度100%の条件下で24時間曝露することにより、HAST試験を行った。
試験前及び試験後の試験片について、以下のようにして、質量増加率を測定し、また、試験前後での試験片の変化の状態を目視にて観察した。
<質量増加率>
試験前に試験片を秤量瓶に入れて秤量し、また、試験後に試験片入りの秤量瓶を秤量し、試験片の質量増加量Δy[g]を求めた。試験前の試験片の質量y[g]に対するΔy[g]の割合を質量増加率として算出した。
前記質量増加率が小さいほど、試料片が耐湿性(耐水性)に優れていると言える。
<目視観察>
試験前後での試験片の目視観察の結果、比較例2−1(MgO粒子試料(A−2))のみ、試験片が明らかに膨張していることが確認された。
Figure 2021130592
表2に示した結果から分かるように、耐湿試験において、比較例2−1のみ、熱伝導率の低下が見られた。これは、非被覆のMgO粒子試料(A−2)が比較的細かいため(D50 35μm)、吸湿しやすく、MgOがMg(OH)2に変化したことによるものと推測される。
また、耐湿試験における硬度の変化は、比較例の方が実施例よりも大きかった。これは、非被覆のMgO粒子試料(A−1)及び(B−1)が耐湿性に劣り、樹脂の劣化が生じていることを示しているものと考えられる。
以上から、本実施形態の被覆MgO粒子は、シリコーン樹脂に添加した場合に、耐湿性(耐水性)を向上させることができ、高温高湿条件下でも、良好な熱伝導性フィラーとしての性能を保持することができると言える。

Claims (10)

  1. 酸化マグネシウム粒子と、前記酸化マグネシウム粒子の表面を被覆するシリカ系薄膜とを含む、被覆酸化マグネシウム粒子。
  2. 前記シリカ系薄膜が、シリカ及びSi−Mg複合酸化物の少なくともいずれかを含む薄膜である、請求項1に記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
  3. Si含有量が200〜5000質量ppmである、請求項1又は2に記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
  4. C含有量が170質量ppm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
  5. BET比表面積が0.02〜5.0m2/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
  6. レーザー回折散乱法による粒度分布における累積体積50%での粒子径が2.5〜40.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
  7. 温度85℃、相対湿度85%の大気中における48時間での質量増加率が、25.00%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
  8. 酸化マグネシウム粒子の表面に、下記式(1)で表される構造を含むシロキサン化合物を蒸着させて、被覆酸化マグネシウム粒子の前駆体を得る工程と、
    前記前駆体を650℃以上1000℃未満の温度で加熱し、酸化マグネシウム粒子の表面がシリカ系薄膜で被覆された被覆酸化マグネシウム粒子を得る工程とを含む、被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
    Figure 2021130592

    (式(1)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基である。)
  9. 前記式(1)で示される構造を含むシロキサン化合物が、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される化合物の少なくとも一方を含む、請求項8に記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
    Figure 2021130592

    (式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R1及びR2の少なくともいずれかは水素原子である。mは0〜10の整数である。)
    Figure 2021130592

    (式(3)中、nは3〜6の整数である。)
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子と、樹脂とを含む、樹脂組成物。
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