JP2021124136A - 高圧タンク - Google Patents

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新二 三好
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Abstract

【課題】ガスの透過性を向上できる技術を提供する。
【解決手段】ガスを収容する高圧タンクは、円筒部を有するライナと、円筒部上に、樹脂と繊維とで形成された第1強度層と、第1強度層上に樹脂と繊維とで形成され、面内方向におけるガスの透過速度が第1強度層の面内方向におけるガスの透過速度以下である第2強度層と、を備え、円筒部の中心軸方向に垂直な断面において、第1強度層は、円筒部の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙を有する。
【選択図】図11

Description

本開示は、高圧タンクに関する。
燃料電池システムに用いられる水素等のガスを収容する高圧タンクにおいて、熱硬化性樹脂を含浸させた強化繊維がライナの表面を覆う強度層を備えるものが知られている。特許文献1に記載されている高圧タンクでは、ライナと強度層との間のガスを外部に放出するガス抜き孔が強度層に形成されている。
特開2009−216133号公報
しかし、強度層にガス抜き孔を形成するだけでは、ガスの透過性が不十分である場合があった。そのため、ガスの透過性を向上できる技術が望まれていた。
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、ガスを収容する高圧タンクが提供される。この高圧タンクは円筒部を有するライナと、前記円筒部上に、樹脂と繊維とで形成された第1強度層と、前記第1強度層上に樹脂と繊維とで形成され、面内方向における前記ガスの透過速度が前記第1強度層の面内方向における前記ガスの透過速度以下である第2強度層と、を備え、前記円筒部の中心軸方向に垂直な断面において、前記第1強度層は、前記円筒部の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙を有する。この形態の高圧タンクによれば、第1強度層が、円筒部の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙を有するため、第2強度層よりも速いガス透過速度となり、ガスの透過性を向上できる。
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、高圧タンクの製造方法や、フィラメントワインディング装置、フィラメントワインディング装置の制御方法などの形態で実現することが可能である。
高圧タンクの概略構造を示す断面図である。 図1をII−IIラインで切断した断面模式図である。 高圧タンクの製造方法の一例を示す工程図である。 繊維束選定処理の一例を示す工程図である。 繊維束選定処理の説明図である。 繊維束の一例を示す説明図である。 測定装置の概略構成を示す断面図である。 ガス透過速度の測定方法の一例を示す工程図である。 ガス透過速度の求め方を示す説明図である。 ガス透過速度の測定結果を示した図である。 ガス透過速度を示した図である。 図2に示す第1強度層のB部分の拡大図である。 空隙率と強度との関係を示すグラフである。 空隙率と強度との関係を示す他のグラフである。
A.第1実施形態:
図1は、高圧タンク100の概略構造を示す断面図である。図2は、図1をII−IIラインで切断した断面模式図である。高圧タンク100は、例えば10〜70MPaの高圧水素を収容し、燃料電池車両に搭載される。高圧タンク100は、ライナ10と、口金20と、強度層30と、保護層40とを備える。強度層30と保護層40とを併せて補強層50ともいう。図1には互いに直行するx軸、y軸、z軸を示している。x軸は高圧タンク100の軸方向、つまり高圧タンク100の長手方向に沿った方向である。これらの軸は図1以降に示した軸に対応している。
ライナ10は、円筒部12と円筒部12の両端に設けられた二つのドーム部14とを有する。ライナ10は、例えばポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン等の水素ガスに対するガスバリア性を有する樹脂によって形成されている。なお、本実施形態においては、ライナ10は樹脂製としたが、金属製であってもよく、また、上記の樹脂に水素吸蔵合金などのガス不透過材料を混入して形成されていてもよい。円筒部12およびドーム部14の外周には強度層30が形成されている。本実施形態において、口金20は、ライナ10の長手方向両端に設けられているが、一端だけに設けられてもよい。
強度層30は、例えば、炭素繊維(以下、単に「繊維」という)を10000〜40000本程度束ね、樹脂を含浸させることによって形成された繊維束を、フィラメントワインディング法によって、ライナ10上に巻き付け、熱硬化させることによって形成されている。この繊維束のことを、プリプレグともいう。強度層30は、第1強度層31と、第1強度層31上に形成された第2強度層32と、を備える。強度層30の外表面には保護層40が形成されている。
保護層40は、例えば、ガラス繊維を10000〜40000本程度束ね、エポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させることによって形成された繊維束を、フィラメントワインディング法によって、ライナ10の外周の強度層30上に巻き付け、熱硬化させることによって形成されている。保護層40は、樹脂成分が接着剤となり強度層30の外周に固定される。本実施形態において、保護層40は、ヘリカル層と、円筒部12上におけるヘリカル層の外側に形成されたフープ層と、を備える。また、フープ層の外側には、繊維束が熱硬化されることで繊維から浮き出た熱硬化性樹脂によって樹脂層が形成される。
強度層30および保護層40を形成する繊維束に含浸させる樹脂(マトリックス樹脂)としては、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリミアド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルポロリドン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を単独または2種類以上を混合して用いることができる。
図3は、本実施形態における高圧タンクの製造方法の一例を示す工程図である。本実施形態の高圧タンク製造では、まず、ステップS100で、口金が装着済みの樹脂製容器をライナ10として用意する。ライナ10は、例えば、円筒部12の両端に、口金20が装着済みのドーム部14を溶着して準備される。
次に、ステップS110において、強度層30に用いられる繊維束を選定する。繊維束の選定の詳細については後述する。なお、ステップS100とステップS110とはこの順に限らず実行されてもよく、並列して実行されてもよい。
続いて、ステップS120において、ステップS100で用意したライナ10上に、ステップS110において選定された繊維束を巻き付けて第1強度層31を形成する。本実施形態において、1層以上のフープ巻きと1層以上のヘリカル巻きとを交互に行うよう繊維束を巻き付けて、第1強度層31を形成する。第1強度層31は、第1強度層31の面内方向におけるガス透過速度が、第2強度層32の面内方向におけるガス透過速度以上になるように巻き付けられる。本実施形態において「面内方向」とは、強度層30の積層方向に垂直な面に沿った方向であって、第1強度層31および第2強度層32の表面ではなく、第1強度層31または第2強度層32の内部における面方向である。ガス透過速度の詳細については後述する。
続いて、ステップS130において、ステップS120で形成された第1強度層31の上に、ステップS110において選定された繊維束をヘリカル巻きによって巻き付けて、第2強度層32を形成する。第2強度層32は、第2強度層32の面内方向におけるガス透過速度が、第1強度層31の面内方向におけるガス透過速度以下になるように巻き付けられる。ステップS120とステップS130との処理により、強度層30が形成される。
続いて、ステップS140において、ステップS130で形成された第2強度層32の外表面に、樹脂が含浸した繊維束を巻き付けて保護層40を形成する。本実施形態において、保護層40はフープ層とヘリカル層との2層が形成される。
続いて、ステップS150において、ステップS120およびステップS130とで巻き付けた強度層30の繊維束の樹脂とステップS140で巻き付けた保護層40の繊維束の樹脂とを硬化する。より具体的には、熱ヒーターを備える熱硬化炉や、加熱コイルを用いた高周波誘電加熱式の熱硬化炉において、ライナ10を回転させつつ加熱して、熱硬化性樹脂を熱硬化させる。この処理によって樹脂層が形成される。
最後に、ステップS160において樹脂の熱硬化後の冷却養生を経て、高圧タンク100の強度を確認するための加圧検査を行い、高圧タンクの製造が完了する。ステップS160では、熱硬化性樹脂の収縮により、保護層40内の微少な空隙に連通した通路となる亀裂が樹脂層に形成される。
図4は、繊維束選定処理の一例を示す工程図である。繊維束選定処理は、上述した高圧タンクの製造方法におけるステップS110(図3)において実行される処理である。この処理において強度層30に使用可能であると選定された繊維束が、上述したタンク製造処理において用いられる。
まず、ステップS200において、繊維束の隙間の面積割合を検査する。より具体的には、光学顕微鏡やCCDカメラを用いて繊維束を構成する繊維間の隙間を検出し、隙間の面積割合(以下、「隙間率」ともいう)を検査する。
図5は、繊維束選定処理のステップS200(図4)の説明図である。繊維と繊維との間に樹脂を含浸しながら隙間が形成される挙動を検査する検査装置200を示す。検査装置200は、加熱ステージ210と窓部220と光学顕微鏡230とを備える。検査装置200は、繊維を束ねた繊維束上に樹脂を置き、加熱ステージ210により樹脂を溶解させ、繊維束に樹脂を含浸させる。加熱ステージ210では、樹脂の融点以上の温度で予め定めた時間加熱する。「予め定めた時間」とは、樹脂と繊維との組み合わせと樹脂が繊維に含浸する時間との関係が予め定義されたマップや関数に基づき、定めることができる。樹脂が含浸した繊維束を光学顕微鏡230によって窓部220から検査することによって、繊維束を構成する繊維間の隙間を検出し、隙間率を検査する。
図6は、繊維束の一例を示す説明図である。図6において、色が付されている部分は、繊維束を構成する繊維間に樹脂が浸透している部分を示しており、白色の部分は、繊維を樹脂が覆っておらず、露出した繊維の表面が見えている部分を示しており、隙間となる部分である。図6に示すように、樹脂が繊維間に染み渡らなかった場合、繊維間に、繊維方向に沿ってチューブ状の隙間が形成される。隙間の幅は、例えば繊維束を構成する繊維1本分である。
次に、ステップS210(図4)において、ステップS200で検査した繊維束の隙間率が予め定められた範囲内であるか否かを判定する。予め定められた範囲とは、所望のガス透過速度と耐圧強度とが確保できる隙間率の範囲であり、予めシミュレーションや実験を行うことにより定めることができる。繊維束によって形成された強度層30のガス透過速度と耐圧強度とはトレードオフの関係である。所望のガス透過性と耐圧強度とが確保できる隙間率の範囲は、例えば、0.1%以上、20%未満である。隙間率は10%未満であることがより好ましい。隙間率が予め定められた範囲内である場合、ステップS220に進み、強度層30に使用可能な繊維束であると判定される。一方、隙間率が予め定められた範囲外である場合、ステップS225に進み、強度層30に使用不可能な繊維束であると判定される。
第1強度層31および第2強度層32のガス透過速度の測定方法について説明する。図7は、ガス透過速度を測定するための測定装置300の概略構成を示す断面図である。測定装置300は、外筒部310とプランジャ部320とを備え、外筒部310内には、プランジャ部320を押圧することにより加圧される加圧室330が形成されている。測定装置300には、加圧室330に連通する箇所に圧力センサ350が設けられており、加圧室330内の圧力を検出可能となっている。外筒部310には、サンプルを取り付けるためのコネクタ340が取り付けられており、コネクタ340の先端には、加圧室330と連通する開口部360が形成されている。ガス透過速度を測定する際には、開口部360を塞ぐように、ガス透過速度の測定対象となるサンプルが取り付けられる。また、加圧室330におけるコネクタ340との接続部である出口部には、開閉バルブ(図示せず)が設けられている。本実施形態では、加圧室330の容積は、25mlである。加圧室330の容積には、加圧室330と圧力センサ350とを連通させる空間が含まれる。また、本実施形態では、加圧室330の出口部の開閉バルブから、サンプルが取り付けられる箇所までの空間、すなわち、コネクタ340内の空間の容積は、加圧室330の容積に比べて、無視できる程度に小さい。
図8は、ガス透過速度の測定方法の一例を示す工程図である。まず、ステップS300において、測定に用いるサンプルを調製する。サンプルの調製は、まず、高圧タンク100の外壁の一部である部分A(図2に示す)を、積層方向に貫通するように切り取る。切り取った外壁片において、ライナ10と補強層50とは、容易に分離することができる。その後、ライナ10から分離された補強層50において、測定対象以外の層を研磨により削り取り、測定対象の層を、サンプルとして得る。測定対象のサンプルは、例えば、縦横の長さがそれぞれ20mmの矩形である。
次に、ステップS310において、ステップS300で調製した測定対象のサンプルにおいて、積層方向に垂直な一対の表面を、シール部370によって被覆する。より具体的には、図7に示す第1面S1および第2面S2を被覆する。このとき、一対の面のうちの一方である第1面S1の中央に、シール部370によって被覆されない領域として、直径4mmの加圧領域を設ける。すなわち、シール部370は、加圧領域以外の第1面S1の部分、および、第2面S2に設ける。これにより、面内方向におけるガスの透過速度を測定できる。なお、第1面S1および第2面S2に加えて、高圧タンク100の周方向に垂直な一対の表面をシール部370によって被覆することで、高圧タンク100の軸方向におけるガスの透過速度を測定できる。また、第1面S1および第2面S2に加えて、高圧タンク100の軸方向に垂直な一対の表面をシール部370によって被覆することで、高圧タンク100の周方向におけるガス透過速度を測定できる。シール部370は、例えば、サンプルの表面に接着剤を塗布することによって形成することができる。接着剤としては、例えば、エポキシ系の接着剤や、シリコーン系の接着剤を用いることができる。
続いて、ステップS320において、サンプルの第1面S1に設けた加圧領域と、コネクタ340の先端の開口部360とが重なるように、コネクタ340の先端に対してサンプルを接着剤で気密に固定する。
続いて、ステップS330において、加圧室330の出口部の開閉バルブを閉じた状態で、測定装置300のプランジャ部320を押圧することによって、加圧室330内を、0.2MPaに加圧する。
最後に、ステップS340において、ガス透過速度を算出する。より具体的には、開閉バルブを開いて、開閉バルブを開いたときからの経過時間と、圧力センサ350によって測定した加圧室330内の圧力と、を用いてガス透過速度を算出する。開閉バルブを開くことにより、加圧室330内の圧縮された空気は、コネクタ340の先端の開口部360から、サンプルの第1面S1の加圧領域を介して、サンプル内に流入する。このとき、サンプルの表面には上記したようにシール部370が設けられているため、サンプルに流入した空気は、サンプル内を面内方向に流れ、サンプルの側面からサンプル外部に排出される。これに伴い、加圧室330内の圧力は低下する。
図9は、ガス透過速度の求め方を示す説明図である。図9では、加圧室330内の圧力を0.2MPaに昇圧させた後に、既述した開閉バルブを開いた時間を、時間taとして示している。そして、時間taから120秒経過した後の時間を、時間tbとして示している。時間taから120秒の間に、サンプルを面内方向に空気が透過することにより加圧室330内の圧力はPbまで低下する。図9では、時間taから時間tbまでの経過時間を「Δt=120s」として示し、0.2MPaからPbまでの加圧室330内の圧力低下を「ΔP」として示している。面内方向のガス透過速度(Pa/s)とは、ΔPをΔtで除することにより算出される値である。すなわち、加圧室330内の圧力を0.2MPaにしてガスの透過を開始して、120秒後の加圧室330の圧力低下量から求められる、1秒当たりの加圧室330の圧力低下量を指す。面内方向にガスを通しやすいサンプルほど、加圧室330内の圧力は速やかに低下するため、ガス透過速度の値は大きくなる。
図10は、第1強度層31および第2強度層32のガス透過速度の測定結果を示した図であり、図11は、本実施形態における第1強度層31のガス透過速度と第2強度層32のガス透過速度とを示した図である。図10は、48個のサンプルのガス透過速度の分布を示しており、横軸にガス透過速度を示し、縦軸に頻度(個数)を示している。第1強度層31の分布結果を実線Gr1で示し、第2強度層32の分布結果を破線Gr2で示している。図11は図10で示したガス透過速度の平均値を示している。図10および図11に示すように、第1強度層31のガス透過速度は、第2強度層32のガス透過速度よりも速い。
本実施形態において、高圧タンク100の軸方向におけるガス透過速度は、第2強度層32の方が第1強度層31よりも速い。また、高圧タンク100の周方向におけるガス透過速度は、第1強度層31の方が第2強度層32よりも速い。第1強度層31と第2強度層32とがこれらのガス透過速度の関係を満たすように形成されることで、第1強度層31におけるガスの透過経路と、第2強度層32におけるガスの透過経路とが網目状に連結され、強度層30におけるガスの透過性を向上できる。
図12は図2に示す第1強度層31のB部分の拡大図である。より具体的には、第1強度層31におけるフープ巻きによって形成された層の一部を示す拡大図である。図12に示すように、第1強度層31は、円筒部12の中心軸方向に垂直な断面において、円筒部12の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙を有する。「予め定められた基準長さ」とは、例えば、繊維の直径の20倍である。本実施形態において、第1強度層31を、基準長さ以上のチューブ状の空隙を有するように形成することで、所望のガス透過速度とすることができる。つまり、図12に示す空隙の長さL1は、繊維の直径の20倍以上である。また、空隙の幅は、例えば繊維の直径程度である。この空隙は、図4に示した繊維束選定処理において使用可能と判断された繊維束を用いて第1強度層31が形成されることにより発生する。基準長さ以上の空隙によって、周方向にガスが透過しやすくなる。また、第1強度層31は、フープ層とヘリカル層とが交互に積層して形成されるため、空隙が網目状に連結され、ガス透過性が向上する。
図13および図14は、空隙率と強度の関係を示すグラフである。図13は、上述したような予め定められた基準長さ以上の空隙を有する第1強度層31における、空隙の面積割合(以下、「空隙率」ともいう)と強度との関係を示したグラフである。空隙率は、例えば光学顕微鏡やCCDカメラを用いて検出し、画像解析によって求めることができる。図14は、予め定められた基準長さ以上の空隙を有しない第1強度層31における、空隙率と強度との関係を示したグラフである。つまり、図14には、予め定められた基準長さより小さい空隙を有する第1強度層31の強度を示す。図13に示すように、空隙率が10%を超えると、強度が低下する。図14に示すように、空隙率が20%を超えると強度が低下する。そのため、第1強度層31は、円筒部12の中心軸方向に垂直な断面において、空隙が20%未満であることが好ましく、更に、円筒部12の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙が10%未満であることがより好ましい。
以上で説明した本実施形態の高圧タンク100は、この形態の高圧タンク100によれば、第1強度層31が、円筒部12の中心軸方向に垂直な断面において、円筒部12の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙を有するため、第2強度層32よりも速いガス透過速度となり、ガスの透過性を向上できる。また、隙間率が予め定められた範囲内である繊維束を用いて強度層30が形成されるため、ガスの透過性を確保できる。また、高圧タンク100の軸方向におけるガス透過速度は、第2強度層32の方が第1強度層31よりも速く、高圧タンク100の周方向におけるガス透過速度は、第1強度層31の方が第2強度層32よりも速くなるように第1強度層31と第2強度層32とが形成されるため、第1強度層31におけるガスの透過経路と、第2強度層32におけるガスの透過経路とが網目状に連結され、ガス透過性を向上できる。また、第1強度層31は、フープ層とヘリカル層とが交互に積層して形成されるため、空隙が網目状に連結され、ガス透過性が向上する。
B.他の実施形態:
(B1)上述した実施形態において、第1強度層31は、1層以上のフープ巻きと1層以上のヘリカル巻きとが交互に積層して形成されている。この代わりに、第1強度層31は、フープ巻きのみで形成されていてもよい。
(B2)上述した実施形態において、第2強度層32は、ヘリカル巻きによって形成されている。この代わりに、第2強度層32は、1層以上のフープ巻きと1層以上のヘリカル巻きとが交互に積層して形成されてもよい。
(B3)上述した実施形態において、第1強度層31と第2強度層32とは、同じ繊維束によって形成されている。この代わりに、第1強度層31と第2強度層32は、異なるそれぞれ繊維束によって形成されてもよい。例えば、第1強度層31を形成する繊維束を構成する樹脂は、第2強度層32を形成する繊維束を構成する樹脂と異なる樹脂を用いることができる。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
10…ライナ、12…円筒部、14…ドーム部、20…口金、30…強度層、31…第1強度層、32…第2強度層、40…保護層、50…補強層、100…高圧タンク、200…検査装置、210…加熱ステージ、220…窓部、230…光学顕微鏡、300…測定装置、310…外筒部、320…プランジャ部、330…加圧室、340…コネクタ、350…圧力センサ、360…開口部、370…シール部、S1…第1面、S2…第2面

Claims (1)

  1. ガスを収容する高圧タンクであって、
    円筒部を有するライナと、
    前記円筒部上に、樹脂と繊維とで形成された第1強度層と、
    前記第1強度層上に樹脂と繊維とで形成され、面内方向における前記ガスの透過速度が前記第1強度層の面内方向における前記ガスの透過速度以下である第2強度層と、を備え、
    前記円筒部の中心軸方向に垂直な断面において、前記第1強度層は、前記円筒部の周方向に沿って予め定められた基準長さ以上の空隙を有する、高圧タンク。
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