JP2021123582A - 効率的な抗原の細胞内送達とアジュバント活性を有する化合物を有効成分とする薬剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAをはじめとするDDS技術を用いた免疫療法の提供。【解決手段】下記式1の化合物と,抗原を共に投与することにより,抗原に対する免疫を誘導することを特徴とする免疫療法のための薬剤。(式1)Fa-(D-Arg)n/HSA(式1中,Faは長鎖脂肪酸であり,D-ArgはD-アルギニンであり,nは8から20の整数から選択され,HSAはヒト血清アルブミンであり,式1は,Fa-(D-Arg)nとHSAの複合体であることを表す。)【選択図】図1
Description
本発明は,効率的な抗原の細胞内送達とアジュバント活性を有する化合物を有効成分とする薬剤の開発に関する。
近年,薬物治療のみならず,自身の免疫を活性化することで病態を改善する「免疫療法」が注目されている。特に,アレルギー疾患,悪性新生物(がん),感染症に対して,免疫療法の取り組みが盛んに行われている。
これらのうちアレルギー疾患では,花粉やダニ,食物等に含まれるタンパク質などが抗原(アレルゲン)となり,それに対する免疫反応が過剰に起こることで発症する。このアレルギー疾患における免疫療法としては,アレルゲン特異的免疫療法が用いられている。
これらのうちアレルギー疾患では,花粉やダニ,食物等に含まれるタンパク質などが抗原(アレルゲン)となり,それに対する免疫反応が過剰に起こることで発症する。このアレルギー疾患における免疫療法としては,アレルゲン特異的免疫療法が用いられている。
アレルゲン特異的免疫療法では,アレルゲンエキスを少量ずつ繰り返し投与していくことで免疫寛容を誘導し,体質の改善が促されるものであり,過剰なアレルギー反応そのものを緩和する。
一方,汎用されてきた抗アレルギー薬は,アレルギー反応そのものに作用することはなく,アレルギー反応により惹起される症状を治療・緩和するものがほとんどであり,対症的な治療法といえる。
これらより,アレルゲン特異的免疫療法は,アレルギー反応そのものを緩和する点において,アレルギー疾患の根治あるいは長期寛解を目的とした唯一の治療法といえる。そのためアレルゲン特異的免疫療法は,QOLの改善や医療費削減に貢献することができる有用性の高い治療法として位置付けられている。
一方,汎用されてきた抗アレルギー薬は,アレルギー反応そのものに作用することはなく,アレルギー反応により惹起される症状を治療・緩和するものがほとんどであり,対症的な治療法といえる。
これらより,アレルゲン特異的免疫療法は,アレルギー反応そのものを緩和する点において,アレルギー疾患の根治あるいは長期寛解を目的とした唯一の治療法といえる。そのためアレルゲン特異的免疫療法は,QOLの改善や医療費削減に貢献することができる有用性の高い治療法として位置付けられている。
アレルゲン特異的免疫療法におけるアレルゲンの曝露方法としては,皮下投与と舌下投与が用いられている。
皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy: SCIT)は,アレルゲンを含む薬剤を皮下注射し,これを繰り返すことにより,免疫寛容を誘導する治療方法である。皮下免疫療法は,有効性は認められるものの,通院が必要であることや,侵襲性があり,繰り返し投与による疼痛やアナフィラキシーなどの副作用が問題視され,現在ではあまり利用されなくなってきた。
皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy: SCIT)は,アレルゲンを含む薬剤を皮下注射し,これを繰り返すことにより,免疫寛容を誘導する治療方法である。皮下免疫療法は,有効性は認められるものの,通院が必要であることや,侵襲性があり,繰り返し投与による疼痛やアナフィラキシーなどの副作用が問題視され,現在ではあまり利用されなくなってきた。
これに対し,舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)は,アレルゲンを含む薬剤を舌下に一定時間含んでこれを飲み込み,これを繰り返すことにより,免疫寛容を誘導する治療方法である。舌下免疫療法は,皮下免疫療法と比べると副作用が少なく安全性が高いことや通院が不要であることから,アレルゲン特異的免疫療法の主流となってきており,ダニ・スギ花粉については,保険適応にもなっている。
しかしながら舌下免疫療法では,皮下免疫療法と比較して,下記の課題を有することから,今後の標準化やスギ花粉以外の抗原への展開が進まない状況となっている。
(1) 皮下注射に比べ有効性が低いこと。
(2) 理想的には皮下注射の10〜100倍の抗原量が必要であるが,抗原溶液の濃度が高くなり,粘稠性も高くなってしまうこと。そのため,抗原溶液における抗原自身の安定性が低くなってしまうこと。
しかしながら舌下免疫療法では,皮下免疫療法と比較して,下記の課題を有することから,今後の標準化やスギ花粉以外の抗原への展開が進まない状況となっている。
(1) 皮下注射に比べ有効性が低いこと。
(2) 理想的には皮下注射の10〜100倍の抗原量が必要であるが,抗原溶液の濃度が高くなり,粘稠性も高くなってしまうこと。そのため,抗原溶液における抗原自身の安定性が低くなってしまうこと。
一方,発明者らは,ヒトアルブミン(以下,「HSA」)を用いたDDS技術を開発している(非特許文献1,非特許文献2)。
発明者らが開発したPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,HSAに,細胞膜透過性ペプチドであるパルミチン酸-ポリアルギニンが結合した複合体であり,細胞膜を通過する機能を有するものである。
発明者らが開発したPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,HSAに,細胞膜透過性ペプチドであるパルミチン酸-ポリアルギニンが結合した複合体であり,細胞膜を通過する機能を有するものである。
Shota Ichimizu et al. 「Design and tuning of a cell-penetrating albumin derivative as a versatile nanovehicle for intracellular drug delivery」J Control Release. 2018 May 10;277:23-34.
Shota Ichimizu et al. 「Cell-penetrating mechanism of intracellular targeting albumin: Contribution of macropinocytosis induction and endosomal escape」 J Control Release. 2019 Jun 28;304:156-163.
発明者らは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,アレルゲン特異的免疫療法に適用が可能ではないかと考え,研究に着手したものである。
上記事情を背景として,本発明では,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAをはじめとするDDS技術を用いた免疫療法の開発を課題とする。
上記事情を背景として,本発明では,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAをはじめとするDDS技術を用いた免疫療法の開発を課題とする。
発明者らは,鋭意研究の結果,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを用いて,これを抗原と共に舌下投与することにより,抗原に対する抗体が誘導され,アレルギー症状が緩和されることを明らかとした。
さらに発明者らは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを用いて,これをガン抗原と共に皮下投与することにより,腫瘍の増殖抑制効果があることを明らかとした。
これらより,発明者らは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを有効成分とする免疫療法のための薬剤に関する発明を完成させたものである。
さらに発明者らは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを用いて,これをガン抗原と共に皮下投与することにより,腫瘍の増殖抑制効果があることを明らかとした。
これらより,発明者らは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを有効成分とする免疫療法のための薬剤に関する発明を完成させたものである。
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,下記式1の化合物と,抗原を共に投与することにより,抗原に対する免疫を誘導することを特徴とする免疫療法のための薬剤である。
(式1) Fa-(D-Arg)n/HSA
(式1中,Faは長鎖脂肪酸であり,D-ArgはD-アルギニンであり,nは8から20の整数から選択され,HSAはヒト血清アルブミンであり,式1は,Fa-(D-Arg)nとHSAの複合体であることを表す。)
本発明の第一の構成は,下記式1の化合物と,抗原を共に投与することにより,抗原に対する免疫を誘導することを特徴とする免疫療法のための薬剤である。
(式1) Fa-(D-Arg)n/HSA
(式1中,Faは長鎖脂肪酸であり,D-ArgはD-アルギニンであり,nは8から20の整数から選択され,HSAはヒト血清アルブミンであり,式1は,Fa-(D-Arg)nとHSAの複合体であることを表す。)
本発明の第二の構成は,Faが,炭素数12から20の天然脂肪酸から選択される第一の構成に記載の薬剤である。
本発明の第三の構成は,Faが,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸のいずれか又は複数から選択される第一の構成に記載の薬剤である。
本発明の第四の構成は,Faが,パルミチン酸である第一の構成に記載の薬剤である。
本発明の第三の構成は,Faが,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸のいずれか又は複数から選択される第一の構成に記載の薬剤である。
本発明の第四の構成は,Faが,パルミチン酸である第一の構成に記載の薬剤である。
本発明の第五の構成は,nが,8,10,12,14,16,20のいずれかから選択される第一から第四の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第六の構成は,nが,12である第一から第四の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第六の構成は,nが,12である第一から第四の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第七の構成は,(D-Arg)nが,環状に構成されている第一から第六の構成のいずれかに記載の薬剤である。
本発明の第八の構成は,HSA1分子に対して,Fa-(D-Arg)nが1から8の比率である第一から第七の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第八の構成は,HSA1分子に対して,Fa-(D-Arg)nが1から8の比率である第一から第七の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第九の構成は,抗原が,がん細胞表面上に発現する抗原である第一から第八の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十の構成は,さらに,抗PD-1抗体を合わせて投与する第九の構成に記載の薬剤である。
本発明の第十一の構成は,抗原が,アレルギー疾患の原因となる抗原である第一から第八の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十の構成は,さらに,抗PD-1抗体を合わせて投与する第九の構成に記載の薬剤である。
本発明の第十一の構成は,抗原が,アレルギー疾患の原因となる抗原である第一から第八の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十二の構成は,投与方法が,舌下投与である第一から第十一の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十三の構成は,投与方法が,皮下投与である第一から第十一の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十四の構成は,さらに,免疫誘導促進効果を有する第一から第十三の構成のいずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十三の構成は,投与方法が,皮下投与である第一から第十一の構成いずれかに記載の薬剤である。
本発明の第十四の構成は,さらに,免疫誘導促進効果を有する第一から第十三の構成のいずれかに記載の薬剤である。
本発明により,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAをはじめとするDDS技術を用いた免疫療法の提供が可能となった。
本発明について詳述する。本発明は,発明者らにより見出された下記知見に基づいて発明されたものである。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,下記化1で示されるPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12とHSA(ヒト血清アルブミン)の複合体である。Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,マクロピノサイトーシスにより舌下細胞に取り込まれる。この際,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,分子量の比較的大きな分子を伴うことにより,この分子とともに細胞内に取り込まれる。
(2) 上記(1)の取り込みは,マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞においても同様である。
(3) In vivoにおいて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと抗原を舌下投与することにより,抗原に対する抗体価が上昇し,免疫誘導を行うことができる。加えて,この免疫誘導により,アレルギー症状の抑制が可能である。
(4) さらに,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,免疫増強効果(アジュバント作用)を発揮する。この免疫増強効果は,アルギニンのD体・L体,アルギニンの直鎖型・環状型など,化合物構造のわずかな違いでも大きく異なる。
(5) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの免疫増強効果は,cGAS-STING-IRF3経路を介するものであり,IFNβが誘導されることにより,発揮される。
(6) In vivoにおいて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとがん抗原を皮下投与することにより,そのがん抗原を有するがんの増殖抑制が可能である。加えて,がんの増殖抑制効果は,抗PD-1抗体により,促進される。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,下記化1で示されるPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12とHSA(ヒト血清アルブミン)の複合体である。Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,マクロピノサイトーシスにより舌下細胞に取り込まれる。この際,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,分子量の比較的大きな分子を伴うことにより,この分子とともに細胞内に取り込まれる。
(2) 上記(1)の取り込みは,マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞においても同様である。
(3) In vivoにおいて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと抗原を舌下投与することにより,抗原に対する抗体価が上昇し,免疫誘導を行うことができる。加えて,この免疫誘導により,アレルギー症状の抑制が可能である。
(4) さらに,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,免疫増強効果(アジュバント作用)を発揮する。この免疫増強効果は,アルギニンのD体・L体,アルギニンの直鎖型・環状型など,化合物構造のわずかな違いでも大きく異なる。
(5) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの免疫増強効果は,cGAS-STING-IRF3経路を介するものであり,IFNβが誘導されることにより,発揮される。
(6) In vivoにおいて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとがん抗原を皮下投与することにより,そのがん抗原を有するがんの増殖抑制が可能である。加えて,がんの増殖抑制効果は,抗PD-1抗体により,促進される。
本発明の免疫療法のための薬剤は,下記式1の化合物と,抗原を共に投与することにより,抗原に対する免疫を誘導することを特徴とする。
(式1) Fa-(D-Arg)n/HSA
(式1中,Faは長鎖脂肪酸であり,D-ArgはD-アルギニンであり,nは8から20の整数から選択され,HSAはヒト血清アルブミンであり,式1は,Fa-(D-Arg)nとHSAの複合体であることを表す。)
(式1) Fa-(D-Arg)n/HSA
(式1中,Faは長鎖脂肪酸であり,D-ArgはD-アルギニンであり,nは8から20の整数から選択され,HSAはヒト血清アルブミンであり,式1は,Fa-(D-Arg)nとHSAの複合体であることを表す。)
Fa(Fatty acid)は,長鎖脂肪酸として定義される。すなわち,Fa-(D-Arg)nにおけるFaは,HSAが有する脂肪酸結合サイトに非共有的に結合するための役割を果たすものである。これよりFaは,HSAの脂肪酸結合サイトへの非共有的な結合が可能であり,かつ,安全性を有する限り特に限定する必要はなく,種々の長鎖脂肪酸を用いることができる。
Faは,典型的には,炭素数12から30の脂肪酸であればよく,直鎖状のもの,分岐を有するもの,飽和したもの,不飽和なものなどを用いればよい。
Faは,好ましくは,炭素数12から20の天然脂肪酸を用いることができる。これにより,Faとしての安全性とHSAの結合性を担保することが容易となり,本発明の薬剤の有用性を向上させる効果を有する。このような天然脂肪酸として,例えば,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸などを用いることができ,最も好ましくはパルミチン酸を用いることができる。
Faは,典型的には,炭素数12から30の脂肪酸であればよく,直鎖状のもの,分岐を有するもの,飽和したもの,不飽和なものなどを用いればよい。
Faは,好ましくは,炭素数12から20の天然脂肪酸を用いることができる。これにより,Faとしての安全性とHSAの結合性を担保することが容易となり,本発明の薬剤の有用性を向上させる効果を有する。このような天然脂肪酸として,例えば,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸などを用いることができ,最も好ましくはパルミチン酸を用いることができる。
(D-Arg)nは,アルギニンのD体が連なったポリアルギニン構造を有し,膜透過性を向上させるための部位として機能する。(D-Arg)nは,膜透過性向上を果たしうる限り特に限定する必要はなく,適度な長さと形状(直鎖状,環状など)とすることができる。
(D-Arg)nにおいて,典型的には,nが8から20の長さとすることができ,より好ましくは8から16,特に好ましくは10から14,最も好ましくは12とすることができる。加えて,(D-Arg)nの形状を,環状とすることが最も好ましい。
(D-Arg)nにおいて,典型的には,nが8から20の長さとすることができ,より好ましくは8から16,特に好ましくは10から14,最も好ましくは12とすることができる。加えて,(D-Arg)nの形状を,環状とすることが最も好ましい。
上記で構成されたFa-(D-Arg)nは,HSAの脂肪酸結合サイトに非共有的に結合し,複合体を形成する。HSA 1分子に対するFa-(D-Arg)nの比率は,Faやポリアルギニンの具体的構造を勘案して,複合体としての細胞透過性を損なわない限り特に限定する必要はなく,種々の比率とすることができる。
HSA 1分子に対するFa-(D-Arg)nの比率は,典型的には1から8とすることができ,より好ましくは3から8,特に好ましくは3.5から6,最も好ましくは3.5から4.5とすることができる。すなわち,HSA 1分子に対するFa-(D-Arg)nの比を少なくとも3.5以上とすることにより,より効果的な細胞透過性の達成が期待できる。
HSA 1分子に対するFa-(D-Arg)nの比率は,典型的には1から8とすることができ,より好ましくは3から8,特に好ましくは3.5から6,最も好ましくは3.5から4.5とすることができる。すなわち,HSA 1分子に対するFa-(D-Arg)nの比を少なくとも3.5以上とすることにより,より効果的な細胞透過性の達成が期待できる。
本発明においてFa-(D-Arg)n/HSAを有効成分として薬剤を構成することができる。かかる場合,免疫対象となる抗原を組成成分の一つとして薬剤を構成してもよいし,別々の薬剤として構成して使用時に混合するなどしてもよい。
また,Fa-(D-Arg)n/HSAと抗原との比については,Fa-(D-Arg)nの化学形や抗原の物性,投与方法などを勘案して,適宜,設定することができる。
また,Fa-(D-Arg)n/HSAと抗原との比については,Fa-(D-Arg)nの化学形や抗原の物性,投与方法などを勘案して,適宜,設定することができる。
本発明の薬剤は,免疫誘導を起こしうる限り特に限定する必要はなく,種々の投与方法に対応した剤型とすることができる。本発明の薬剤は,典型的には,舌下投与ないし皮下投与に適した剤型とすることができる。
また,投与回数については,免疫療法の目的や投与方法を勘案して,適宜,設定することができるが,一定の間隔を置いたうえでの複数回投与であることが好ましい。
また,投与回数については,免疫療法の目的や投与方法を勘案して,適宜,設定することができるが,一定の間隔を置いたうえでの複数回投与であることが好ましい。
本発明において用いられる抗原は,Fa-(D-Arg)n/HSAにより惹起されるマクロピノサイトーシスによる細胞内取り込みが可能な抗原サイズである限り特に限定する必要はなく,免疫療法の対象となりうるあらゆる抗原を対象とすることができる。
このような抗原サイズとして,大きい場合は,花粉やハウスダスト等の大きさ(数μm程度)のものを用いることができる。また,抗原としてタンパク質などを考慮する場合には,典型的には,1.5μmより小さなものを用いることができ,より好ましくは1.3μmより小さなもの,特に好ましくは1.1μmより小さなもの,最も好ましくは1.0μmより小さなものとすることができる。
このような抗原サイズとして,大きい場合は,花粉やハウスダスト等の大きさ(数μm程度)のものを用いることができる。また,抗原としてタンパク質などを考慮する場合には,典型的には,1.5μmより小さなものを用いることができ,より好ましくは1.3μmより小さなもの,特に好ましくは1.1μmより小さなもの,最も好ましくは1.0μmより小さなものとすることができる。
本発明において用いられる抗原の種類については,免疫療法の対象となりうるあらゆる抗原を用いることができる。このような抗原として,アレルギー疾患の原因となる抗原(アレルゲン),がん抗原などが挙げられる。
本発明においてアレルギー疾患の原因となる抗原(アレルゲン)とは,アレルギー症状を引き起こす分子ないし物質として定義される。このようなアレルゲンとして,典型的には,花粉やハウスダスト,タンパク質,化学物質などが挙げられる。
本発明においてがん抗原とは,がん細胞特異的な認識を可能とする分子や分子断片として定義される。これより,本発明においてがん抗原は,典型的には,がん細胞において正常細胞よりも高く発現する,もしくはがん細胞に特異的に発現する分子,もしくはこの分子断片である。このような分子等として,例えば,タンパク質,ペプチド,糖鎖などが挙げられる。加えて,がん抗原を用いる場合,抗PD-1抗体を合わせて用いることで,がんに対する増殖抑制効果を促進することが可能となる。
本発明においてアレルギー疾患の原因となる抗原(アレルゲン)とは,アレルギー症状を引き起こす分子ないし物質として定義される。このようなアレルゲンとして,典型的には,花粉やハウスダスト,タンパク質,化学物質などが挙げられる。
本発明においてがん抗原とは,がん細胞特異的な認識を可能とする分子や分子断片として定義される。これより,本発明においてがん抗原は,典型的には,がん細胞において正常細胞よりも高く発現する,もしくはがん細胞に特異的に発現する分子,もしくはこの分子断片である。このような分子等として,例えば,タンパク質,ペプチド,糖鎖などが挙げられる。加えて,がん抗原を用いる場合,抗PD-1抗体を合わせて用いることで,がんに対する増殖抑制効果を促進することが可能となる。
本発明における免疫療法は,式1の化合物と,抗原を共に投与することにより,抗原に対する免疫を誘導することを原理とする。これにより,アレルギーに対する過剰反応を緩和したり,がん細胞に対する免疫機能を獲得ないし向上させることによりがん治療効果を発揮しうるものである。
加えて本発明における免疫療法においては,式1の化合物による免疫増強効果により,免疫誘導を促進しうる付加的効果を有するものである。
加えて本発明における免疫療法においては,式1の化合物による免疫増強効果により,免疫誘導を促進しうる付加的効果を有するものである。
<<実験例1.口腔扁平上皮癌(HSC-2)細胞に対するPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの細胞内移行特性>>
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,舌下において細胞内に取り込まれるかどうかを調べることを目的に,実験を行った。
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,舌下において細胞内に取り込まれるかどうかを調べることを目的に,実験を行った。
<実験方法>
1.HSC-2細胞を24 well plateまたは8 well SLIDE & CHAMBERに4.0 ×104 cells/wellで播種し,DMEM(+)で24時間培養した。
2.細胞が十分に接着していることを確認して,培地をFBS非含有DMEM(DMEM(-))に置換して,37℃で2時間スタベーション処置を施し,その後FITC-HSA,および各Palmitoyl-poly-arginineを含んだDMEM(-)と置換した。
3.2時間のインキュベーション後,HSC-2細胞を50U/mL Heparinを含むDulbecco's phosphate-buffered salineで2回洗浄し,0.25% Trypsin-EDTA処理後,細胞を回収した。
4.回収した細胞はフローサイトメーターに通し,488nmのレーザー光を利用してHSAに標識したFITCを励起し,蛍光強度解析を行った。
5.細胞内移行性については,HSA単独添加群に平均蛍光強度(mean fluorescence intensity: MFI)に対する,Palmitoyl-poly-arginine/HSA添加群におけるMFI比を算出して評価した。また,8 well SLIDE & CHAMBERに播種した細胞については,4% PFAで細胞を固定し,Vectashieldで封入後,共焦点レーザー顕微鏡(Leica TCS SP5)により観察し,Leica Application Suite Advanced Fluorescence Liteにより解析した。
1.HSC-2細胞を24 well plateまたは8 well SLIDE & CHAMBERに4.0 ×104 cells/wellで播種し,DMEM(+)で24時間培養した。
2.細胞が十分に接着していることを確認して,培地をFBS非含有DMEM(DMEM(-))に置換して,37℃で2時間スタベーション処置を施し,その後FITC-HSA,および各Palmitoyl-poly-arginineを含んだDMEM(-)と置換した。
3.2時間のインキュベーション後,HSC-2細胞を50U/mL Heparinを含むDulbecco's phosphate-buffered salineで2回洗浄し,0.25% Trypsin-EDTA処理後,細胞を回収した。
4.回収した細胞はフローサイトメーターに通し,488nmのレーザー光を利用してHSAに標識したFITCを励起し,蛍光強度解析を行った。
5.細胞内移行性については,HSA単独添加群に平均蛍光強度(mean fluorescence intensity: MFI)に対する,Palmitoyl-poly-arginine/HSA添加群におけるMFI比を算出して評価した。また,8 well SLIDE & CHAMBERに播種した細胞については,4% PFAで細胞を固定し,Vectashieldで封入後,共焦点レーザー顕微鏡(Leica TCS SP5)により観察し,Leica Application Suite Advanced Fluorescence Liteにより解析した。
<実験結果>
1.結果を図1に示す。
(1) HSA単独群においては,蛍光強度比は極めて低い値であった。
(2) 一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいては,HSA単独群と比較して,蛍光強度比が顕著かつ有意に増加していた。
2.これより,HSA単独では舌下細胞に取り込まれないが,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとすることにより舌下細胞に取り込まれ,その増加は顕著であることが分かった。
1.結果を図1に示す。
(1) HSA単独群においては,蛍光強度比は極めて低い値であった。
(2) 一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいては,HSA単独群と比較して,蛍光強度比が顕著かつ有意に増加していた。
2.これより,HSA単独では舌下細胞に取り込まれないが,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとすることにより舌下細胞に取り込まれ,その増加は顕著であることが分かった。
<<実験例2.FITC標識Dextranの細胞透過に対するPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA の促進効果>>
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,舌下細胞における抗原取り込みを促進するかを調べることを目的として,実験を行った。
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,舌下細胞における抗原取り込みを促進するかを調べることを目的として,実験を行った。
<実験方法>
1.ヒト口腔粘膜モデルを作製して用いた。
(1) HSC-2細胞を用い,12wellのCell culture insert(登録商標,Fisher Scientific製)に,細胞数をそれぞれ0.5×105,1.0×105,2.0 ×105cells/wellで播種し,10%(v/v)FBS,penicillin 100 U/mL,streptomycin 100mg/mLを含むDMEM(+)で37℃,5% CO2条件下で培養した。
(2) これらと同じ細胞数で7,10,14日間培養したものを用意し,細胞膜抵抗値及びタイトジャンクションマーカーの蛍光免疫染色を行い,ヒト口腔粘膜モデルが適切に作製されているかの確認を行ったところ,HSC-2細胞が膜上に単層として形成されていることが確認され,ヒト口腔粘膜モデルとして適切であることを確認し,以降の検討に用いた。
2.ヒト口腔粘膜モデルにおいて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA: 2.25μM, Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12: 9μM)とFITC-Dextran(0.1mg/mL)とを共添加し,継時的に基底膜側よりサンプリングを行い,サンプリング後は回収した分のバッファー(D-PBS)を補充した。なお,Dextranは,2000kDaのものを用いた。
3.回収したサンプル液は分光光度計を用いて蛍光強度(Ex/Em: 488 nm/585nm)を測定した。
4.また,メンブレンを回収しD-PBSで100倍希釈したHoechst33342を添加して4℃,20分間インキュベートした。次いで4% PFAで細胞を固定し,Vectashieldで封入後,共焦点レーザー顕微鏡(Leica TCS SP5)により観察し,Leica Application Suite Advanced Fluorescence Liteにより解析を行った。
1.ヒト口腔粘膜モデルを作製して用いた。
(1) HSC-2細胞を用い,12wellのCell culture insert(登録商標,Fisher Scientific製)に,細胞数をそれぞれ0.5×105,1.0×105,2.0 ×105cells/wellで播種し,10%(v/v)FBS,penicillin 100 U/mL,streptomycin 100mg/mLを含むDMEM(+)で37℃,5% CO2条件下で培養した。
(2) これらと同じ細胞数で7,10,14日間培養したものを用意し,細胞膜抵抗値及びタイトジャンクションマーカーの蛍光免疫染色を行い,ヒト口腔粘膜モデルが適切に作製されているかの確認を行ったところ,HSC-2細胞が膜上に単層として形成されていることが確認され,ヒト口腔粘膜モデルとして適切であることを確認し,以降の検討に用いた。
2.ヒト口腔粘膜モデルにおいて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA: 2.25μM, Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12: 9μM)とFITC-Dextran(0.1mg/mL)とを共添加し,継時的に基底膜側よりサンプリングを行い,サンプリング後は回収した分のバッファー(D-PBS)を補充した。なお,Dextranは,2000kDaのものを用いた。
3.回収したサンプル液は分光光度計を用いて蛍光強度(Ex/Em: 488 nm/585nm)を測定した。
4.また,メンブレンを回収しD-PBSで100倍希釈したHoechst33342を添加して4℃,20分間インキュベートした。次いで4% PFAで細胞を固定し,Vectashieldで封入後,共焦点レーザー顕微鏡(Leica TCS SP5)により観察し,Leica Application Suite Advanced Fluorescence Liteにより解析を行った。
<実験結果>
1.結果を図2に示す。図中,Aは下層における蛍光強度を,Bは上層における蛍光強度を,Cはメンブレン上に固定された細胞の共焦点画像を示す。
(1) 下層側において,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるサンプル液中の蛍光強度が,HSA単独と比較しておよそ1.5倍ほどであった(図2,A)。このことは,上層に添加されたFITC-Dextranが,形成されたHSC-2細胞単層膜を通過して,下層まで到達した量が最も多いことを示している。
(2) 上層側においては,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるサンプル液中の蛍光強度が,最も低く,HSA単独と比較して,半分程度であった(図2,B)。
(3) また,共焦点画像において,HSA添加群ではFITCの蛍光が確認できなかったのに対してPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA添加群では細胞内にFITCの蛍光が観察された(図2,C)。加えて,この時に膜抵抗値も同時に測定したところ,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの添加前後において,膜抵抗値は変化しなかった(不図示)。このことは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,細胞間隙に影響を及ぼさないことを示している。
2.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは細胞を通過し,基底膜側へ移行することが明らかとなった。
1.結果を図2に示す。図中,Aは下層における蛍光強度を,Bは上層における蛍光強度を,Cはメンブレン上に固定された細胞の共焦点画像を示す。
(1) 下層側において,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるサンプル液中の蛍光強度が,HSA単独と比較しておよそ1.5倍ほどであった(図2,A)。このことは,上層に添加されたFITC-Dextranが,形成されたHSC-2細胞単層膜を通過して,下層まで到達した量が最も多いことを示している。
(2) 上層側においては,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるサンプル液中の蛍光強度が,最も低く,HSA単独と比較して,半分程度であった(図2,B)。
(3) また,共焦点画像において,HSA添加群ではFITCの蛍光が確認できなかったのに対してPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA添加群では細胞内にFITCの蛍光が観察された(図2,C)。加えて,この時に膜抵抗値も同時に測定したところ,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの添加前後において,膜抵抗値は変化しなかった(不図示)。このことは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,細胞間隙に影響を及ぼさないことを示している。
2.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは細胞を通過し,基底膜側へ移行することが明らかとなった。
<<実験例3.Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるFITC標識Dextranの細胞膜透過促進機序の解明>>
実験例2で示されたFITC-Dextranの細胞透過促進のメカニズムを解明することを目的に,実験を行った。
実験例2で示されたFITC-Dextranの細胞透過促進のメカニズムを解明することを目的に,実験を行った。
<実験方法>
1.実験例2に準じて行い,マクロピノサイトーシス阻害剤であるEIPA,又はマクロピノサイトーシスを誘導する受容体であるCXCR4の阻害剤AMD3100を添加して実験を行った。
1.実験例2に準じて行い,マクロピノサイトーシス阻害剤であるEIPA,又はマクロピノサイトーシスを誘導する受容体であるCXCR4の阻害剤AMD3100を添加して実験を行った。
<実験結果>
1.結果を図3に示す。図3のうち,Aが下層における蛍光強度を,Bが共焦点画像を示す。
(1) EIPA添加により,蛍光強度がおよそ20%と,大きく,かつ,有意に減少していた(図3,A)。
(2) 同様に,AMD3100添加により,蛍光強度がおよそ20%と,大きく,かつ,有意に減少していた(図3,A)。
(3) また,共焦点画像において,阻害剤を添加しない場合は蛍光が観察できる一方,阻害剤を添加した場合は,蛍光が確認できなかった(図3,B)。
(4) これらより,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるFITC-Dextranの細胞透過が,EIPAないしAMD3100により大きく阻害されていることが分かった。
2.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるFITC-Dextranの細胞透過が,マクロピノサイトーシスによることが示された。
1.結果を図3に示す。図3のうち,Aが下層における蛍光強度を,Bが共焦点画像を示す。
(1) EIPA添加により,蛍光強度がおよそ20%と,大きく,かつ,有意に減少していた(図3,A)。
(2) 同様に,AMD3100添加により,蛍光強度がおよそ20%と,大きく,かつ,有意に減少していた(図3,A)。
(3) また,共焦点画像において,阻害剤を添加しない場合は蛍光が観察できる一方,阻害剤を添加した場合は,蛍光が確認できなかった(図3,B)。
(4) これらより,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるFITC-Dextranの細胞透過が,EIPAないしAMD3100により大きく阻害されていることが分かった。
2.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるFITC-Dextranの細胞透過が,マクロピノサイトーシスによることが示された。
<<実験例4.FITC標識OVAの細胞透過に対するPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA の促進効果>>
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,舌下細胞における抗原取り込みを促進するかを目的に,モデル抗原としてOVAを用いて実験を行った。
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,舌下細胞における抗原取り込みを促進するかを目的に,モデル抗原としてOVAを用いて実験を行った。
<実験方法>
1.モデル抗原として,OVA(Ovalbumin)を用いた。OVAは,分子量45kDaの糖たんぱく質であり,感作試験におけるモデル抗原として汎用されていることから,これをFITC標識して用いた。
2.実験例2に準じて行い,FITC標識OVA(0.1 mg/mL)と各サンプルを共添加して実験を行った。
1.モデル抗原として,OVA(Ovalbumin)を用いた。OVAは,分子量45kDaの糖たんぱく質であり,感作試験におけるモデル抗原として汎用されていることから,これをFITC標識して用いた。
2.実験例2に準じて行い,FITC標識OVA(0.1 mg/mL)と各サンプルを共添加して実験を行った。
<実験結果>
1.結果を図4に示す。図中,Aは下層における蛍光強度を,Bは上層における蛍光強度を,Cはメンブレン上に固定された細胞の共焦点画像を示す。
(1) 下層側において,HSA単独と比較してPalmitoyl-liner-(L-Arg)8/HSAではFITC-OVAの蛍光強度が低下していた。一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,HSA単独と比較しておよそ1.5倍の蛍光強度であった(図4,A)。
(2) 上層側においては,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるサンプル液中の蛍光強度が最も低く,HSA単独と比較して,有意な減少が確認された。
(3) また,共焦点画像において,HSA添加群ではFITCの蛍光が確認できなかったのに対してPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA 添加群では細胞内にFITCの蛍光が観察された(図4,C)。
2.これらの結果より,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは共存する抗原のサイズに依存せず,抗原を基底膜側にまで送達可能であることが明らかとなった。
1.結果を図4に示す。図中,Aは下層における蛍光強度を,Bは上層における蛍光強度を,Cはメンブレン上に固定された細胞の共焦点画像を示す。
(1) 下層側において,HSA単独と比較してPalmitoyl-liner-(L-Arg)8/HSAではFITC-OVAの蛍光強度が低下していた。一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,HSA単独と比較しておよそ1.5倍の蛍光強度であった(図4,A)。
(2) 上層側においては,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるサンプル液中の蛍光強度が最も低く,HSA単独と比較して,有意な減少が確認された。
(3) また,共焦点画像において,HSA添加群ではFITCの蛍光が確認できなかったのに対してPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA 添加群では細胞内にFITCの蛍光が観察された(図4,C)。
2.これらの結果より,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは共存する抗原のサイズに依存せず,抗原を基底膜側にまで送達可能であることが明らかとなった。
<<実験例5.抗原提示細胞に対するPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの抗原送達促進効果>>
アレルゲン免疫療法では,投与された抗原が抗原提示細胞へ移行する必要があることから,抗原提示細胞であるマクロファージ及び樹状細胞抗原提示細胞を用いて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの抗原送達促進効果を評価した。
アレルゲン免疫療法では,投与された抗原が抗原提示細胞へ移行する必要があることから,抗原提示細胞であるマクロファージ及び樹状細胞抗原提示細胞を用いて,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの抗原送達促進効果を評価した。
<実験方法>
1.マクロファージ細胞株としてRAW264.7細胞,樹状細胞として樹状細胞様に分化したTHP-1細胞を用いた。
2.これらの細胞をそれぞれ12 well plate に1.0×105cells/wellで播種し,実験例2に準じて実験を行った。
1.マクロファージ細胞株としてRAW264.7細胞,樹状細胞として樹状細胞様に分化したTHP-1細胞を用いた。
2.これらの細胞をそれぞれ12 well plate に1.0×105cells/wellで播種し,実験例2に準じて実験を行った。
<実験結果>
1.RAW264.7細胞において,FITC-HSAないしPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAを用いた結果を図5のAおよびBに示す。
(1) FITC-HSA単独と比較して,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAでは,その蛍光強度は有意かつ顕著に増加していた。加えて,この蛍光強度は,マクロピノサイトーシス阻害剤であるEIPAの添加により,有意に減少していた(図5,A)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図5,B)。
(3) これらの結果から,HSAは単独ではRAW264.7細胞に取り込まれることはなく,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとすることで,細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
1.RAW264.7細胞において,FITC-HSAないしPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAを用いた結果を図5のAおよびBに示す。
(1) FITC-HSA単独と比較して,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAでは,その蛍光強度は有意かつ顕著に増加していた。加えて,この蛍光強度は,マクロピノサイトーシス阻害剤であるEIPAの添加により,有意に減少していた(図5,A)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図5,B)。
(3) これらの結果から,HSAは単独ではRAW264.7細胞に取り込まれることはなく,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとすることで,細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
2.RAW264.7細胞において,FITC-Dextran(MW 2000kDa)と,HSA又はPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAとを用いた結果を図5のCおよびDに示す。
(1) FITC-Dextran単独,もしくはこれとHSAを共存させた場合いずれにおいても,蛍光強度は低かった。これに対し,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAを共存させた場合,蛍光強度は,顕著かつ有意に増加した。加えて,この蛍光強度は, EIPAの添加により,有意に減少していた(図5,C)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図5,D)。
(3) これらの結果から,Dextranは,Dextran単独もしくはHSAのみ共存する場合においては細胞内に取り込まれない一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAが共存した場合において細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
(4) これより,マクロファージにおいて,高分子がPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAと共存することにより,マクロピノサイトーシスにより細胞内に取り込まれることが示された。
(1) FITC-Dextran単独,もしくはこれとHSAを共存させた場合いずれにおいても,蛍光強度は低かった。これに対し,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAを共存させた場合,蛍光強度は,顕著かつ有意に増加した。加えて,この蛍光強度は, EIPAの添加により,有意に減少していた(図5,C)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図5,D)。
(3) これらの結果から,Dextranは,Dextran単独もしくはHSAのみ共存する場合においては細胞内に取り込まれない一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAが共存した場合において細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
(4) これより,マクロファージにおいて,高分子がPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAと共存することにより,マクロピノサイトーシスにより細胞内に取り込まれることが示された。
3.THP-1細胞において,FITC-HSAないしPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAを用いた結果を図6のAおよびBに示す。
(1) FITC-HSA単独と比較して,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAでは,その蛍光強度は有意かつ顕著に増加していた。加えて,この蛍光強度は,マクロピノサイトーシス阻害剤であるEIPAの添加により,有意に減少していた(図6,A)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図6,B)。
(3) これらの結果から,HSA単独ではTHP-1細胞に取り込まれることはない一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと共存することで,細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
(1) FITC-HSA単独と比較して,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAでは,その蛍光強度は有意かつ顕著に増加していた。加えて,この蛍光強度は,マクロピノサイトーシス阻害剤であるEIPAの添加により,有意に減少していた(図6,A)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/FITC-HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図6,B)。
(3) これらの結果から,HSA単独ではTHP-1細胞に取り込まれることはない一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと共存することで,細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
4.THP-1細胞において,FITC-Dextran(MW 2000kDa)と,HSA又はPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAとを用いた結果を図6のCおよびDに示す。
(1) FITC-Dextran単独(不図示),もしくはこれとHSAを共存させた場合いずれにおいても,蛍光強度は低かった。これに対し,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAを共存させた場合,蛍光強度は,顕著かつ有意に増加した。加えて,この蛍光強度は, EIPAの添加により,有意に減少していた(図6,C)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図6,D)。
(3) これらの結果から,Dextranは,HSAのみ共存する場合においては細胞内に取り込まれず,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAが共存した場合において細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
(4) これより,樹状細胞において,高分子がPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAと共存することにより,マクロピノサイトーシスにより細胞内に取り込まれることが示された。
(1) FITC-Dextran単独(不図示),もしくはこれとHSAを共存させた場合いずれにおいても,蛍光強度は低かった。これに対し,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAを共存させた場合,蛍光強度は,顕著かつ有意に増加した。加えて,この蛍光強度は, EIPAの添加により,有意に減少していた(図6,C)。
(2) また,共焦点画像においても,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAにおける蛍光が顕著であることが確認された(図6,D)。
(3) これらの結果から,Dextranは,HSAのみ共存する場合においては細胞内に取り込まれず,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAが共存した場合において細胞内に取り込まれることが示された。加えて,その取り込み機構は,マクロピノサイトーシスによるものであることが示された。
(4) これより,樹状細胞において,高分子がPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/ HSAと共存することにより,マクロピノサイトーシスにより細胞内に取り込まれることが示された。
<<実験例6.舌下OVA免疫療法に対するPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA併用投与の影響>>
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの舌下投与を行うことにより,免疫誘導が可能か調べることを目的に,実験を行った。
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの舌下投与を行うことにより,免疫誘導が可能か調べることを目的に,実験を行った。
<実験方法>
1.実験方法の概容を図7に示す。
2.健常マウスに,下記サンプルの舌下投与を,図7のスケジュールに従い行った。
(1) Contorol;PBS
(2) OVA(40mg/mL)
(3) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12
:9μM)
(4) OVA(40mg/mL)+Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,Palmito
yl-cyclic-(D-Arg)12:9μM)
3.14日後,マウスから血液を採取し,この血液から血漿を回収した。回収した血漿をサンプルとして,ELISAにより,抗体の検出を行った。
1.実験方法の概容を図7に示す。
2.健常マウスに,下記サンプルの舌下投与を,図7のスケジュールに従い行った。
(1) Contorol;PBS
(2) OVA(40mg/mL)
(3) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12
:9μM)
(4) OVA(40mg/mL)+Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,Palmito
yl-cyclic-(D-Arg)12:9μM)
3.14日後,マウスから血液を採取し,この血液から血漿を回収した。回収した血漿をサンプルとして,ELISAにより,抗体の検出を行った。
<実験結果>
1.図8に結果を示す。
(1) OVA,ならびにPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,コントロールと比較して,OVAに対する抗体価に有意な差はなかった(図8,左)。
(2) 一方,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合においては,コントロールと比較して,抗体価の有意な上昇が確認された(図8,左)。
2.これらの結果から,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,免疫誘導が可能であることが示された。
3.また,本実験で用いた40mg/mLのOVA濃度は,従来の報告と比較しても最も高い濃度であるが,いずれの投与群においてもアナフィラキシー症状は確認されなかった。このことから,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAがアナフィラキシー症状を助長することはなく,安全性に優れていることが分かった。
1.図8に結果を示す。
(1) OVA,ならびにPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,コントロールと比較して,OVAに対する抗体価に有意な差はなかった(図8,左)。
(2) 一方,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合においては,コントロールと比較して,抗体価の有意な上昇が確認された(図8,左)。
2.これらの結果から,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,免疫誘導が可能であることが示された。
3.また,本実験で用いた40mg/mLのOVA濃度は,従来の報告と比較しても最も高い濃度であるが,いずれの投与群においてもアナフィラキシー症状は確認されなかった。このことから,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAがアナフィラキシー症状を助長することはなく,安全性に優れていることが分かった。
<<実験例7.舌下スギ花粉抗原免疫療法に対するPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA 併用投与の影響>>
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの舌下免疫療法について,保険適応が認められているスギ花粉(JCP :Japanese Cedar Pollen)を用いてその有用性を調べることを目的に,実験を行った。
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの舌下免疫療法について,保険適応が認められているスギ花粉(JCP :Japanese Cedar Pollen)を用いてその有用性を調べることを目的に,実験を行った。
<実験方法>
1.実験方法の概容を図9に示す。実験例6に準じて実験を行い,OVAの替わりとして,JCPE溶液(2mg/mL)を用いた。
2.また,インビボの評価として,投与後3週間の段階で,マウスの鼻腔にJCPE濃厚溶液10μLを添加し,5分間における鼻かき回数を計測する単盲検試験を行った。
1.実験方法の概容を図9に示す。実験例6に準じて実験を行い,OVAの替わりとして,JCPE溶液(2mg/mL)を用いた。
2.また,インビボの評価として,投与後3週間の段階で,マウスの鼻腔にJCPE濃厚溶液10μLを添加し,5分間における鼻かき回数を計測する単盲検試験を行った。
<実験結果>
1.図10のAに抗体価の測定結果を示す。
(1) JCPE,ならびにPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,コントロールと比較して,JCPEに対する抗体価に有意な差はなかった。
(2) 一方,JCPEとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合においては,コントロールと比較して,抗体価の有意な上昇が確認された。また,この増加は,JCPE単独と比較しても有意な上昇を示していた。
2.これらの結果から,JCPEとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,抗体価の上昇による免疫誘導が可能であり,JCPE単独と比較しても優れていることが分かった。
1.図10のAに抗体価の測定結果を示す。
(1) JCPE,ならびにPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,コントロールと比較して,JCPEに対する抗体価に有意な差はなかった。
(2) 一方,JCPEとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合においては,コントロールと比較して,抗体価の有意な上昇が確認された。また,この増加は,JCPE単独と比較しても有意な上昇を示していた。
2.これらの結果から,JCPEとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,抗体価の上昇による免疫誘導が可能であり,JCPE単独と比較しても優れていることが分かった。
3.鼻かき回数を計測した結果を図10のBに示す。
(1) コントロール(PBS)において,JCPE無処置群(Saline)と比較して,鼻かき回数の有意な上昇を示しており,試験系が妥当であることが確認された。
(2) コントロールと比較して,JCPE投与群では,鼻かき回数の変化は見られなかった。また,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,鼻かき回数の若干の減少は見られたものの,有意な減少ではなかった。
(3) 一方,JCPEとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合においては,コントロールと比較して,鼻かき回数の有意な減少が確認され,JCPE無処置群(Saline)と同等程度で有意な差はなかった。また,この減少は,JCPE単独,もしくはPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと比較しても有意な減少であった。
(1) コントロール(PBS)において,JCPE無処置群(Saline)と比較して,鼻かき回数の有意な上昇を示しており,試験系が妥当であることが確認された。
(2) コントロールと比較して,JCPE投与群では,鼻かき回数の変化は見られなかった。また,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,鼻かき回数の若干の減少は見られたものの,有意な減少ではなかった。
(3) 一方,JCPEとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合においては,コントロールと比較して,鼻かき回数の有意な減少が確認され,JCPE無処置群(Saline)と同等程度で有意な差はなかった。また,この減少は,JCPE単独,もしくはPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと比較しても有意な減少であった。
4.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとJCPEとを共に投与することにより,抗体価上昇による免疫誘導をメカニズムとして,アレルギー症状が抑制されていることが分かった。また,その効果は,JCPE単独と比較しても優れたものであった。
5.また,本実験においても,アナフィラキシー症状は確認されなかったこのことから,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAがアナフィラキシー症状を助長することはなく,安全性に優れていることが確認された。
5.また,本実験においても,アナフィラキシー症状は確認されなかったこのことから,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAがアナフィラキシー症状を助長することはなく,安全性に優れていることが確認された。
<<実験例8.抗原皮下投与後の血漿中抗原特異的IgG抗体の検出(in vivo)>>
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの免疫誘導作用について,さらに詳細に検討するため,皮下注射を行った場合の免疫誘導作用を調べることを目的に,実験を行った。
Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAの免疫誘導作用について,さらに詳細に検討するため,皮下注射を行った場合の免疫誘導作用を調べることを目的に,実験を行った。
<実験方法>
1.実験方法を,図11に示す。
2.マウスに,OVA(40mg/mL)の皮下投与を行い,さらに,下記サンプルの皮下投与を行った。
(1) Contorol;PBS
(2) OVA(0.1mg/mL)
(3) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12
:9μM)
(4) OVA(0.1mg/mL)+Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,palmito
yl-cyclic-(D-Arg)12:9μM)
3.21日後,マウスから血液を採取し,この血液から血漿を回収した。回収した血漿をサンプルとして,ELISAにより,抗体の検出を行った。
1.実験方法を,図11に示す。
2.マウスに,OVA(40mg/mL)の皮下投与を行い,さらに,下記サンプルの皮下投与を行った。
(1) Contorol;PBS
(2) OVA(0.1mg/mL)
(3) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12
:9μM)
(4) OVA(0.1mg/mL)+Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25μM,palmito
yl-cyclic-(D-Arg)12:9μM)
3.21日後,マウスから血液を採取し,この血液から血漿を回収した。回収した血漿をサンプルとして,ELISAにより,抗体の検出を行った。
<実験結果>
1.結果を図12に示す。
(1) コントロールと比較して,OVAにおいて,抗体価の有意な増加が確認された。一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,増加は確認されたものの,有意差はなかった。これより,OVAの皮下投与により,OVAに対する免疫誘導が行われていることが確認された。
(2) これに対し,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した群においては,コントロールと比較しておよそ3倍の有意な抗体価の増加を示した。この抗体価は,OVA群と比較しても,有意に大きな値であり,OVA単独よりも大きな免疫誘導が行われていることを示す。
2.これらの結果から,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,免疫誘導が促進され,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが免疫を行う際のアジュバントとして作用していることが分かった。
1.結果を図12に示す。
(1) コントロールと比較して,OVAにおいて,抗体価の有意な増加が確認された。一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,増加は確認されたものの,有意差はなかった。これより,OVAの皮下投与により,OVAに対する免疫誘導が行われていることが確認された。
(2) これに対し,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した群においては,コントロールと比較しておよそ3倍の有意な抗体価の増加を示した。この抗体価は,OVA群と比較しても,有意に大きな値であり,OVA単独よりも大きな免疫誘導が行われていることを示す。
2.これらの結果から,OVAとPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,免疫誘導が促進され,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが免疫を行う際のアジュバントとして作用していることが分かった。
<<実験例9.ヒト単球由来THP-1 細胞を用いた検討>>
実験例8より,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント作用が確認されたことから,これを調べることを目的に,検討を行った。
すなわち,アジュバント活性経路の一つとして,NLRP3インフラマソーム経路の活性化があり,IL-1を産生亢進することが知られている。これより,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,NLRP3インフラマソーム経路の活性を活性化するかどうかを,IL-1βのmRNA発現量を指標として調べた。
実験例8より,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント作用が確認されたことから,これを調べることを目的に,検討を行った。
すなわち,アジュバント活性経路の一つとして,NLRP3インフラマソーム経路の活性化があり,IL-1を産生亢進することが知られている。これより,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,NLRP3インフラマソーム経路の活性を活性化するかどうかを,IL-1βのmRNA発現量を指標として調べた。
<実験方法>
1.細胞として,マクロファージ様に分化させたTHP-1細胞を用いた。
(1) THP-1細胞を,6 well プレートに1.0×106 cells/wellで播種し,Phorbol 12-Miristate 13-Acetate(PMA)を50 nM含んだRPMIで48時間インキュベートしマクロファージ様に分化させた。
(2) 分化させたTHP-1細胞について,各サンプルを含んだRPMIで,3時間インキュベートした。
(3) インキュベート終了後,細胞を回収・溶解し,周知の方法により,RNAペレットを得た。RNAペレットの洗浄・溶解を行い,分光光度計により,230/260/280 nmの吸光度を測定することで,RNA濃度を算出した。さらに,PrimeScript master mix(Perfect Real Time)を用いて,逆転写を行うことにより,cDNAを得た。
(4) また,相対的mRNA発現量については,コントロール遺伝子としてGAPDHを用いcomparative Ct法により算出した。
1.細胞として,マクロファージ様に分化させたTHP-1細胞を用いた。
(1) THP-1細胞を,6 well プレートに1.0×106 cells/wellで播種し,Phorbol 12-Miristate 13-Acetate(PMA)を50 nM含んだRPMIで48時間インキュベートしマクロファージ様に分化させた。
(2) 分化させたTHP-1細胞について,各サンプルを含んだRPMIで,3時間インキュベートした。
(3) インキュベート終了後,細胞を回収・溶解し,周知の方法により,RNAペレットを得た。RNAペレットの洗浄・溶解を行い,分光光度計により,230/260/280 nmの吸光度を測定することで,RNA濃度を算出した。さらに,PrimeScript master mix(Perfect Real Time)を用いて,逆転写を行うことにより,cDNAを得た。
(4) また,相対的mRNA発現量については,コントロール遺伝子としてGAPDHを用いcomparative Ct法により算出した。
<実験結果>
1.結果を,図13に示す。
(1) Positive controlであるLPS 添加により,hIL-1βのmRNAレベルが著しく増加していた(約300倍。不図示)。また,controlとHSA添加群では,IL-1β のmRNA レベルに変化は見られなかった。
(2) 一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA 添加群では,IL-1β のmRNA レベルが2.3 倍上昇していた。さらに,この上昇は,EIPAにより,コントロールと同程度にまで抑制されていた。
(3) また,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAに化学構造が類似する化合物(Palmitoyl-liner-(L-Arg)8/HSA,Palmitoyl-liner-(L-Arg)12/HSA,Palmitoyl-cyclic-(L-Arg)12/HSA,palmitate/HSA)においては,いずれもIL-1βmRNAの上昇は見られなかった。
2.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント作用は,マクロピノサイトーシスにより発揮されることが分かった。
1.結果を,図13に示す。
(1) Positive controlであるLPS 添加により,hIL-1βのmRNAレベルが著しく増加していた(約300倍。不図示)。また,controlとHSA添加群では,IL-1β のmRNA レベルに変化は見られなかった。
(2) 一方,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA 添加群では,IL-1β のmRNA レベルが2.3 倍上昇していた。さらに,この上昇は,EIPAにより,コントロールと同程度にまで抑制されていた。
(3) また,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAに化学構造が類似する化合物(Palmitoyl-liner-(L-Arg)8/HSA,Palmitoyl-liner-(L-Arg)12/HSA,Palmitoyl-cyclic-(L-Arg)12/HSA,palmitate/HSA)においては,いずれもIL-1βmRNAの上昇は見られなかった。
2.これらの結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント作用は,マクロピノサイトーシスにより発揮されることが分かった。
<<実験例10.マウスマクロファージ細胞RAW264.7細胞を用いた検討>>
実験例9と同様,マクロファージ細胞株としてRAW264.7 細胞を用い,アジュバント作用を調べることを目的に,検討を行った。
実験例9と同様,マクロファージ細胞株としてRAW264.7 細胞を用い,アジュバント作用を調べることを目的に,検討を行った。
<実験方法>
1.細胞として,マクロファージ細胞株であるRAW264.7 細胞を用い,実験例9に準じて,実験を行った。
2.IL-1βに加え,アジュバント活性に関与することが知られている炎症性サイトカインであるIL-6,IL-12,TNFαのmRNA発現量についても調べた。
1.細胞として,マクロファージ細胞株であるRAW264.7 細胞を用い,実験例9に準じて,実験を行った。
2.IL-1βに加え,アジュバント活性に関与することが知られている炎症性サイトカインであるIL-6,IL-12,TNFαのmRNA発現量についても調べた。
<実験結果>
1.IL-1βを調べた結果を図14のAに示す。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較しておよそ7倍と最も大きな発現量の増加がみられ,他と比較しても有意な増加であった。加えて,このPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおける増加は,EIPAにより減少していた。
(2) なお,Palmitoyl-cyclic-(L-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較して,およそ1.7倍の増加がみられたが,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと比較すると,低い増加にとどまった。
1.IL-1βを調べた結果を図14のAに示す。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較しておよそ7倍と最も大きな発現量の増加がみられ,他と比較しても有意な増加であった。加えて,このPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおける増加は,EIPAにより減少していた。
(2) なお,Palmitoyl-cyclic-(L-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較して,およそ1.7倍の増加がみられたが,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAと比較すると,低い増加にとどまった。
2.IL-6を調べた結果を図14のBに示す。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較しておよそ55倍と最も大きな発現量の増加がみられ,他と比較しても有意な増加であった。
(2) 加えて,このPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるIL6の増加は,EIPAにより減少していた。
(3) この結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるIL6の増加は,マクロピノサイトーシスによるものであることが分かった。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較しておよそ55倍と最も大きな発現量の増加がみられ,他と比較しても有意な増加であった。
(2) 加えて,このPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるIL6の増加は,EIPAにより減少していた。
(3) この結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるIL6の増加は,マクロピノサイトーシスによるものであることが分かった。
3.IL-12を調べた結果を図14のCに示す。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較しておよそ194倍と最も大きな発現量の増加がみられ,他と比較しても有意な増加であった。
(2) 加えて,このPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるIL-12の増加は,EIPAにより減少していた。
(3) この結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるIL-12の増加は,マクロピノサイトーシスによるものであることが分かった。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較しておよそ194倍と最も大きな発現量の増加がみられ,他と比較しても有意な増加であった。
(2) 加えて,このPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおけるIL-12の増加は,EIPAにより減少していた。
(3) この結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAによるIL-12の増加は,マクロピノサイトーシスによるものであることが分かった。
4.TNFαを調べた結果を図14のDに示す。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較してもほとんど変化はなかった。
(2) また,EIPAの添加を行っても,添加を行わない場合と同等であった。
(3) この結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにより,TNFαの増加に関与しない,もしくは関与したとしても極めて小さいことが分かった。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにおいて,コントロールと比較してもほとんど変化はなかった。
(2) また,EIPAの添加を行っても,添加を行わない場合と同等であった。
(3) この結果から,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAにより,TNFαの増加に関与しない,もしくは関与したとしても極めて小さいことが分かった。
5.Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA以外の化合物に着目すると,下記のことが分かった。
Palmitoyl-cyclic-(L-Arg) 12 /HSA
(1) Palmitoyl-cyclic-(L-Arg)12/HSAは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのD-アルギニンがL体であることが異なるのみであり,構造そのものは極めて類似しているといえる。
(2) しかしながら,各炎症性サイトカインの発現量の変化は大きく異なっていた。IL-1βについてはコントロールとほとんど変わらないレベルであり,IL-6が3.1倍,IL-12が2.6倍,TNFαが3.1倍であった。特に,TNFαにおいては,検討したサンプルの中で最も大きな発現量の増加であった。
(1) Palmitoyl-cyclic-(L-Arg)12/HSAは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのD-アルギニンがL体であることが異なるのみであり,構造そのものは極めて類似しているといえる。
(2) しかしながら,各炎症性サイトカインの発現量の変化は大きく異なっていた。IL-1βについてはコントロールとほとんど変わらないレベルであり,IL-6が3.1倍,IL-12が2.6倍,TNFαが3.1倍であった。特に,TNFαにおいては,検討したサンプルの中で最も大きな発現量の増加であった。
Palmitoyl-liner-(L-Arg) 12 /HSA
(1) Palmitoyl-liner-(L-Arg)12/HSAは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのD-アルギニンがL体であること,ならびにこのアルギニンが環状ではなく直鎖状であることが異なる化合物である。
(2) このPalmitoyl-liner-(L-Arg)12/HSAにおいても,各炎症性サイトカインの発現量の変化はPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとは大きく異なっており,IL-1βについてはコントロールとほとんど変わらないレベルであり,IL-6が4.7倍,IL-12が2.0倍,TNFαが2.1倍であった。
(1) Palmitoyl-liner-(L-Arg)12/HSAは,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのD-アルギニンがL体であること,ならびにこのアルギニンが環状ではなく直鎖状であることが異なる化合物である。
(2) このPalmitoyl-liner-(L-Arg)12/HSAにおいても,各炎症性サイトカインの発現量の変化はPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAとは大きく異なっており,IL-1βについてはコントロールとほとんど変わらないレベルであり,IL-6が4.7倍,IL-12が2.0倍,TNFαが2.1倍であった。
6.これらのことからPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント活性は,IL-1β,IL-6,IL-12が関与しているが,わずかな構造の違いにより,炎症性サイトカインの発現量の増加や,そのメカニズムが著しく異なることが分かった。また,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント作用は,ポリアルギニン数,環状構造,D体構造,これらが重要なファクターであり,わずかな構造の差異により影響を受けうることが分かった。特に,アルギニンのD体構造が重要な要素であると考えられた。
7.本実験により,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAが,IL-6やIL-12の発現量を増加させることから,さらなる実験を行ったところ,下記のことが分かった(不図示)。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,RAW264.7細胞において,マクロピノサイトーシスにより取り込まれ,細胞質に移行し,一部が,ミトコンドリアに移行する。
(2) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,ミトコンドリアを活性化する。
(3) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,ミトコンドリアを活性化することにより,cGASの基質となるmtDNAや酸化障害を受けたmtDNAの放出を促進する。
(4) 放出されたmtDNAが,cGAS-STING-IRF3経路を介して,IFNβを誘導する。このIFNβにより,アジュバント活性作用を発揮する(図15)。
(1) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,RAW264.7細胞において,マクロピノサイトーシスにより取り込まれ,細胞質に移行し,一部が,ミトコンドリアに移行する。
(2) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,ミトコンドリアを活性化する。
(3) Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAは,ミトコンドリアを活性化することにより,cGASの基質となるmtDNAや酸化障害を受けたmtDNAの放出を促進する。
(4) 放出されたmtDNAが,cGAS-STING-IRF3経路を介して,IFNβを誘導する。このIFNβにより,アジュバント活性作用を発揮する(図15)。
<<実験例11.腫瘍抗原ペプチドを用いたPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA のアジュバント活性評価>>
STING活性を有するアジュバントは,腫瘍抗原ペプチドと併用することにより,抗腫
瘍効果を増強することが知られている。
これより,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA がin vivo環境下で腫瘍抗原ペプチドに対するアジュバントとして機能するか否かをしらべることを目的に実験を行った。
また,STINGアゴニストと抗PD-1抗体を腫瘍内投与することで,抗腫瘍効果が増強することが知られていることから,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント効果が,抗PD-1抗体により,どう変化するかを調べることを目的に実験を行った。
STING活性を有するアジュバントは,腫瘍抗原ペプチドと併用することにより,抗腫
瘍効果を増強することが知られている。
これより,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA がin vivo環境下で腫瘍抗原ペプチドに対するアジュバントとして機能するか否かをしらべることを目的に実験を行った。
また,STINGアゴニストと抗PD-1抗体を腫瘍内投与することで,抗腫瘍効果が増強することが知られていることから,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAのアジュバント効果が,抗PD-1抗体により,どう変化するかを調べることを目的に実験を行った。
<実験方法>
1.実験方法の概容を図16に示す。
2.C57BL/6 マウス(6週齢,雄性)に対し,麻酔管理下,メラノーマ細胞株であるB16F10細胞の懸濁液(3.0 ×105 cells/150 μL salineをマウス右後肢側の皮下に投与し,B16F10担がんマウスを作製した。
3.担がん日をday0 とし,day5,day11,day17 において,下記AからEの各サンプルを腫瘍部位とは離れた背中側の皮下に投与を行った。サンプルEのみ,サンプルDに相当するサンプルを皮下投与し,抗PD-1抗体を静脈内に投与した。なお,TRP-2は,分子量1176Daのメラノーマにおける腫瘍抗原ペプチドである。
サンプルA PBS(Control)
サンプルB TRP-2(day5: 10 μg, day11, 17: 20 μg)
サンプルC Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25 μM, Palmitoyl-cyclic-
(D-Arg)12 : 9μM)
サンプルD TRP-2 + Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA
サンプルE TRP-2 + Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA (s.c.) + anti-PD-1 Ab (i.v.)
4.投与と並行して,経日的に腫瘍の大きさを測定し,下記式に基づき,腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積(mm3)= 0.4 ×(腫瘍短径(mm))2 × 腫瘍長径(mm)
5.担がんマウスを21日目に屠殺を行い,各臓器(心臓,肺,肝臓,脾臓,腎臓)を摘出し,重量を測定した。さらに,下大静脈より採血を行い,各種生化学パラメーターを測定した。
1.実験方法の概容を図16に示す。
2.C57BL/6 マウス(6週齢,雄性)に対し,麻酔管理下,メラノーマ細胞株であるB16F10細胞の懸濁液(3.0 ×105 cells/150 μL salineをマウス右後肢側の皮下に投与し,B16F10担がんマウスを作製した。
3.担がん日をday0 とし,day5,day11,day17 において,下記AからEの各サンプルを腫瘍部位とは離れた背中側の皮下に投与を行った。サンプルEのみ,サンプルDに相当するサンプルを皮下投与し,抗PD-1抗体を静脈内に投与した。なお,TRP-2は,分子量1176Daのメラノーマにおける腫瘍抗原ペプチドである。
サンプルA PBS(Control)
サンプルB TRP-2(day5: 10 μg, day11, 17: 20 μg)
サンプルC Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA(HSA:2.25 μM, Palmitoyl-cyclic-
(D-Arg)12 : 9μM)
サンプルD TRP-2 + Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA
サンプルE TRP-2 + Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSA (s.c.) + anti-PD-1 Ab (i.v.)
4.投与と並行して,経日的に腫瘍の大きさを測定し,下記式に基づき,腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積(mm3)= 0.4 ×(腫瘍短径(mm))2 × 腫瘍長径(mm)
5.担がんマウスを21日目に屠殺を行い,各臓器(心臓,肺,肝臓,脾臓,腎臓)を摘出し,重量を測定した。さらに,下大静脈より採血を行い,各種生化学パラメーターを測定した。
<実験結果>
1.担がんマウスにおける腫瘍体積の経時的な変化の結果を図17のAに示す。
(1) コントロール,TRP-2,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,いずれも時間の経過とともに,腫瘍の体積が増加していき,これらの間で,有意な差はなかった。
(2) これに対し,TRP-2とPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合,腫瘍体積の増加が抑制されており,他のサンプルと比較して,有意に小さな値を示した。
(3) さらに,TRP-2とPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAに加え,抗PD-1抗体を共に投与した場合,有意かつ顕著な,腫瘍体積の増加抑制効果が確認された。
(4) このことから,TRP-2とPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,メラノーマに発現するTRP-2に対する免疫が誘導され,これにより,腫瘍体積の増加が抑制されていると考えられた。また,抗PD-1抗体の共投与によるがん増殖抑制効果は,メラノーマによる免疫阻害作用が抗PD-1抗体により抑制されることで,TRP-2に対する免疫が促進されたことに基づくと考えられた。
1.担がんマウスにおける腫瘍体積の経時的な変化の結果を図17のAに示す。
(1) コントロール,TRP-2,Palmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAでは,いずれも時間の経過とともに,腫瘍の体積が増加していき,これらの間で,有意な差はなかった。
(2) これに対し,TRP-2とPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与した場合,腫瘍体積の増加が抑制されており,他のサンプルと比較して,有意に小さな値を示した。
(3) さらに,TRP-2とPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAに加え,抗PD-1抗体を共に投与した場合,有意かつ顕著な,腫瘍体積の増加抑制効果が確認された。
(4) このことから,TRP-2とPalmitoyl-cyclic-(D-Arg)12/HSAを共に投与することにより,メラノーマに発現するTRP-2に対する免疫が誘導され,これにより,腫瘍体積の増加が抑制されていると考えられた。また,抗PD-1抗体の共投与によるがん増殖抑制効果は,メラノーマによる免疫阻害作用が抗PD-1抗体により抑制されることで,TRP-2に対する免疫が促進されたことに基づくと考えられた。
2.担がんマウスの体重変化の結果を図17のBに示す。いずれのサンプルにおいても,体重変化に大きな差はなかった(サンプルEについてのみ不図示)。
3.表1に,各臓器の測定結果を示す。測定を行った各臓器においても,有意な差はなかった。
4.表2に,各血液パラメーターの測定結果を示す。測定を行った各血液パラメーターにおいても,有意な差はなかった。
3.表1に,各臓器の測定結果を示す。測定を行った各臓器においても,有意な差はなかった。
4.表2に,各血液パラメーターの測定結果を示す。測定を行った各血液パラメーターにおいても,有意な差はなかった。
Claims (14)
- 下記式1の化合物と,抗原を共に投与することにより,抗原に対する免疫を誘導することを特徴とする免疫療法のための薬剤。
(式1) Fa-(D-Arg)n/HSA
(式1中,Faは長鎖脂肪酸であり,D-ArgはD-アルギニンであり,nは8から20の整数から選択され,HSAはヒト血清アルブミンであり,式1は,Fa-(D-Arg)nとHSAの複合体であることを表す。)
- Faが,炭素数12から20の天然脂肪酸から選択される請求項1に記載の薬剤。
- Faが,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸のいずれか又は複数から選択される請求項1の薬剤。
- Faが,パルミチン酸である請求項1に記載の薬剤。
- nが,8,10,12,14,16,20のいずれかから選択される請求項1から4のいずれかに記載の薬剤。
- nが,12である請求項1から4のいずれかに記載の薬剤。
- (D-Arg)nが,環状に構成されている請求項1から6のいずれかに記載の薬剤。
- HSA 1分子に対して,Fa-(D-Arg)nが1から8の比率である請求項1から7のいずれかに記載の薬剤。
- 抗原が,がん細胞表面上に発現する抗原である請求項1から8のいずれかに記載の薬剤。
- さらに,抗PD-1抗体を合わせて投与する請求項9に記載の薬剤。
- 抗原が,アレルギー疾患の原因となる抗原である請求項1から8のいずれかに記載の薬剤。
- 投与方法が,舌下投与である請求項1から11のいずれかに記載の薬剤。
- 投与方法が,皮下投与である請求項1から11のいずれかに記載の薬剤。
- さらに,免疫誘導促進効果を有する請求項1から13のいずれかに記載の薬剤。
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JP2021006701A Pending JP2021123582A (ja) | 2020-02-07 | 2021-01-19 | 効率的な抗原の細胞内送達とアジュバント活性を有する化合物を有効成分とする薬剤 |
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2021
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