以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下では、一例として、車両制御装置が自動運転車両に適用された実施形態について説明する。自動運転とは、例えば、自動的に車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行することである。また、自動運転車両は、乗員の手動操作による運転制御(いわゆる手動運転)が実行されてもよい。
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池等のバッテリ(蓄電池)の放電電力を使用して動作する。
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。カメラ10と、レーダ装置12と、LIDER14とを組み合わせたものが「外界センサ」の一例である。また、「外界センサ」には、物体認識装置16が含まれていてもよい。外界センサと、車両センサ40と、自動運転制御装置100とを組み合わせたものが「車両制御装置」の一例である。
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面、車体の前頭部等に取り付けられる。後方を撮像する場合、カメラ10は、リアウインドシールド上部やバックドア等に取り付けられる。側方を撮像する場合、カメラ10は、ドアミラー等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、自車両Mの周辺の物体の位置、種類、速度等を認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。また、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。その場合、車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。また、物体認識装置16は、自動運転制御装置100(例えば、後述する認識部130)に含まれていてもよい。
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN(Local Area Network)、WAN(WiDe Area Network)、インターネット等のネットワークを利用して、例えば、自車両Mの周辺に存在する他車両、自車両Mを利用する利用者の端末装置、或いは各種サーバ装置と通信する。
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を出力すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30には、例えば、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キー等が含まれる。
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、自車両Mの重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。また、車両センサ40は、自車両Mの位置を検出する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、「位置計測部」の一例である。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、ナビゲーション装置50のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。車両センサ40は、位置センサにおける所定時間における位置情報の差分(すなわち距離)から自車両Mの速度を導出してもよい。車両センサ40により検出した結果は、自動運転制御装置100に出力される。
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。GNSS受信機51は、車両センサ40に設けられてもよい。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、POI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。ナビゲーション装置50は、決定した地図上経路を、MPU60に出力する。
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、道路形状や道路構造物に関する情報等を含んでいる。道路形状には、第1地図情報54よりも更に詳細な道路形状として、例えば、車線数、道路の曲率半径(或いは曲率)、幅員、勾配等が含まれる。上記情報は、第1地図情報54に格納されていてもよい。道路構造物には、例えば、道路標識や交通信号機、踏切、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス等が含まれる。また、道路構造物には、例えば、路面に描画または貼付されたレーンマークや横断歩道、一時停止線等の路面標識が含まれてもよい。道路構造物に関する情報には、道路構造物の種別、位置、道路の延伸方向に対する向き、大きさ、形状、色等の情報が含まれてよい。道路構造物の種別において、例えば、「道路区画線」を1つの種別としてもよく、道路区画線に属する「レーンマーク」や「縁石」、「中央分離帯」等のそれぞれを異なる種別としてもよい。また、「道路区画線」の種別は、例えば、自車両Mが通過不可能な道路区画線と、通過可能な道路区画線とで分かれていてもよい。通行不可能な道路区画線とは、例えば、ガードレール、縁石、中央分離帯、フェンス等の道路境界物である。通過可能な道路区画線とは、例えばレーンマークやチャッターバーである。また、第2地図情報62には、位置情報(緯度経度)、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報等が含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が外部装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。第1地図情報54および第2地図情報62は、地図情報として一体に設けられていてもよい。また、地図情報(第1地図情報54および第2地図情報62)は、記憶部190に記憶されていてもよい。
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイールと、アクセルペダルと、ブレーキペダルとを備える。また、運転操作子80は、シフトレバー、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含んでもよい。運転操作子80の各操作子には、例えば、乗員による操作子の操作量あるいは操作の有無を検出する操作検出部が取り付けられている。操作検出部は、例えば、ステアリングホイールの操舵角や操舵トルク、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込量等を検出する。そして、操作検出部は、検出結果を自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一方または双方に出力する。
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部180と、記憶部190とを備える。第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部180とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。上述のプログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM、メモリカード等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置やカードスロット等に装着されることで自動運転制御装置100の記憶装置にインストールされてもよい。
記憶部190は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部190には、例えば、実施形態における運転制御に関する各種情報やプログラム等が格納される。
また、記憶部190には、地図情報(例えば、第1地図情報54および第2地図情報62)が格納されていてもよい。また、記憶部190には、物体認識装置16や後述する認識部130により認識される物体を識別するための物体情報192が格納されていてもよい。物体情報192には、例えば、物体の名称に、物体の特徴情報(例えば、色や形状、大きさ等)および物体の種別に関する情報が対応付けられている。物体には、例えば、道路構造物、他車両、歩行者等が含まれる。
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示等がある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。また、第1制御部120は、例えば、MPU60やHMI制御部180等からの指示に基づいて自車両Mの自動運転に関する制御を実行する。
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、例えば、物体が他車両等の移動体である場合には、移動体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば他車両が車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
また、認識部130は、例えば、第1道路情報取得部132と、第2道路情報認識部134と、判定部136と、ずれ度合取得部138とを備える。これらの機能の詳細については後述する。
行動計画生成部140は、認識部130の認識結果に基づいて、自動運転等の走行制御により自車両Mを走行させる行動計画を生成する。例えば、行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、認識部130による認識結果または地図情報から取得された自車両Mの現在位置に基づく周辺の道路形状等に基づいて、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。イベントには、例えば、自車両Mを一定の速度で同じ車線を走行させる定速走行イベント、自車両Mの前方の所定距離以内(例えば100[m]以内)に存在し、自車両Mに最も近い他車両(以下、前走車両と称する)に自車両Mを追従させる追従走行イベント、自車両Mを自車線から隣接車線へと車線変更させる車線変更イベント、道路の分岐地点で自車両Mを目的地側の車線に分岐させる分岐イベント、合流地点で自車両Mを本線に合流させる合流イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバーイベント等が含まれる。また、イベントには、例えば、自車両Mを一旦隣接車線に車線変更させて前走車両を隣接車線において追い越してから再び元の車線へと車線変更させる追い越しイベント、自車両Mの前方に存在する障害物を回避するために自車両Mに制動および操舵の少なくとも一方を行わせる回避イベント等が含まれてよい。
また、行動計画生成部140は、例えば、自車両Mの走行時に認識された自車両Mの周辺状況に応じて、現在の区間に対して既に決定したイベントを他のイベントに変更したり、現在の区間に対して新たなイベントを設定したりしてよい。また、行動計画生成部140は、HMI30への乗員の操作に応じて、現在の区間に対して既に設定したイベントを他のイベントに変更したり、現在の区間に対して新たなイベントを設定したりしてよい。行動計画生成部140は、設定したイベントに応じた目標軌道を生成する。
行動計画生成部140は、例えば、走行制御態様決定部142を備える。走行制御態様決定部142は、第1道路情報取得部132により取得される道路情報(第1道路情報)に含まれる道路構造物(第1道路構造物)と、第2道路情報認識部134により認識される道路情報(第2道路情報)に含まれる道路構造物(第2道路構造物)とに基づいて、自車両Mの走行制御の態様を決定する。
ここで、自車両Mの走行制御の態様には、例えば、第1走行制御と、第2走行制御と、第3走行制御とが含まれる。第1走行制御、第2走行制御、および第3走行制御は、この順で自車両Mの制御に関して自動化の度合が高くなる。自動化の度合が高いとは、乗員の車両に対する操作度合に基づいて自車両Mが制御されている度合いが低いこと、または乗員に要求される自車両Mの周辺監視に関するタスクが低いことである。
第1走行制御は、例えば、自車両Mの乗員がステアリングホイールを把持していなく、且つ乗員が自車両Mの周辺を監視していない状態において、自車両Mの操舵または速度のうち、一方または双方を制御して自車両Mの運転制御を実行するものである。乗員が自車両Mの周辺を監視している、乗員がステアリングホイールを把持している、または乗員が上記の監視および上記の把持を行っている場合であっても、第1走行制御が実行可能な他の条件を満たしていれば、第1走行制御は実行または維持されてもよい。第1走行制御では、例えば、外界センサの出力に基づく自車両Mの周辺状況(例えば、道路情報等)の認識結果、および地図情報から取得した自車両Mの周辺状況を利用して自車両Mの走行制御が実行される。
第2走行制御は、第1走行制御よりも自車両Mの走行制御に関して自動化の度合が低い。第2走行制御は、例えば、乗員が自車両Mの周辺を監視している状態、且つ、乗員がステアリングホイールを把持している状態において、自車両Mの操舵または速度のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行するものである。第2走行制御では、例えば、地図情報は利用せず、外界センサの出力に基づく自車両Mの周辺状況の認識結果に基づいて自車両Mの走行制御が実行される。
第3走行制御は、第2走行制御よりも自車両Mの走行制御に関して自動化の度合が低い。第3走行制御では、例えば、少なくとも運転者に周辺(前方注視等)の安全運転に係る監視のタスクが課される運転状態である。第3走行制御は、例えば、乗員がステアリングホイールを操作し、且つ乗員が自車両Mの周辺を監視している状態で、乗員による運転操作子80の操作により、自車両Mが速度および操舵を制御して運転制御を実行するものである。第3走行制御は、乗員(運転者)が手動運転を行っている状態であってもよい。また、第3走行制御は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)が作動している状態であってもよい。ADASは、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control System)やLKAS(Lane Keeping Assist System)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)等に代表される運転支援システムである。第3走行制御では、例えば、外界センサの出力に基づく認識結果に基づいて、自車両Mの走行制御を実行する。走行制御態様決定部142の機能の詳細については後述する。行動計画生成部140は、第1〜第3走行制御のうち走行制御態様決定部142で決定された走行制御の態様に対応させて目標軌道の生成等を行う。
なお、走行制御の分類は、上述した第1〜第3走行制御に限定されるものではなく、例えば、第1および第2走行制御を1つの走行制御としてもよく、第1〜第3走行制御のうち少なくとも一つを更に細分化してもよい。
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。行動計画生成部140と、第2制御部160とを合わせたものが、「運転制御部」の一例である。
第2制御部160は、例えば、目標軌道取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。目標軌道取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率半径(或いは曲率)に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
図1に戻り、HMI制御部180は、HMI30により、乗員に所定の情報を通知する。所定の情報には、例えば、自車両Mの状態に関する情報や運転制御に関する情報等の自車両Mの走行に関連のある情報が含まれる。自車両Mの状態に関する情報には、例えば、自車両Mの速度、エンジン回転数、シフト位置等が含まれる。また、運転制御に関する情報には、例えば、走行制御の種別(第1〜第3走行制御)や自動運転による運転制御(例えば、車線変更制御)の実行の有無、自動運転を開始するか否かを問い合わせる情報、乗員に手動運転を促す情報、自動運転による運転制御状況に関する情報等が含まれる。また、所定の情報には、テレビ番組、DVD等の記憶媒体に記憶されたコンテンツ(例えば、映画)等の自車両Mの走行制御に関連しない情報が含まれてもよい。また、所定の情報には、例えば、自動運転における現在位置や目的地、自車両Mの燃料の残量に関する情報が含まれてよい。HMI制御部180は、HMI30により受け付けられた情報を通信装置20、ナビゲーション装置50、第1制御部120等に出力してもよい。
また、HMI制御部180は、後述する判定部136による判定経過や判定結果、ずれ度合取得部138により取得されるずれ度合に関する情報をHMI30に出力させてもよい。また、HMI制御部180は、HMI30に出力させる各種情報を、通信装置20を介して自車両Mの利用者(乗員)が利用する端末装置に送信してもよい。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のアクセルペダルから入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のブレーキペダルから入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のステアリングホイールから入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
[第1道路情報取得部132、第2道路情報認識部134、判定部136、ずれ度合取得部138の機能]
次に、第1道路情報取得部132、第2道路情報認識部134、判定部136、およびずれ度合取得部138の機能の詳細について説明する。図3は、第1道路情報取得部132および第2道路情報認識部134が自車両Mの周辺を認識することについて説明するための図である。図3の例では、X軸方向に延伸した車線L1と、車線L1に隣接する対向車線L2を示している。車線L1は、道路区画線LLおよびCLで区画され、車線L2は、道路区画線CLおよびRLで区画されている。自車両Mは、車線L1を速度VMで走行しているものとする。
第1道路情報取得部132は、自車両Mの位置情報に基づいて地図情報(第1地図情報54および第2地図情報62)を参照し、自車両Mの位置の周辺の道路情報(第1道路情報)を取得する。第1道路情報は、例えば、道路構造物および道路形状等を含む。以下、第1道路情報に含まれる道路構造物を「第1道路構造物」と称する。また、第1道路情報取得部132は、地図情報から第1道路情報に含まれる第1道路構造物ごとの種別を取得する。図3の例において、第1道路情報取得部132は、車両センサ40から取得した自車両Mの位置情報に基づいて、地図情報の位置情報を参照し、合致する位置情報を基準として所定距離以内に存在する第1道路構造物として、車線L1、L2の形状、道路区画線LL、CL、RL、道路標識RS1、RS2、横断歩道CW、停止線SL1、SL2、交通信号機TLの種別や位置を取得する。また、第1道路情報取得部132は、地図情報から道路標識RS1が一時停止標識であること、道路標識RS2が横断歩道の標識であることを取得してもよい。第1道路情報取得部132は、車両センサ40により検出された自車両Mの向きの情報や進行方向の情報に基づいて、自車両Mの走行車線(車線L1)に対応付けられた第1道路構造物に関する情報のみを取得してもよい。
第2道路情報認識部134は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の一部または全部から物体認識装置16を介して入力された情報(外界センサの出力)に基づいて、自車両Mの周辺の道路状況を認識し、認識結果を含む第2道路情報を出力する。「出力する」とは、例えば、共有メモリやキャッシュメモリに出力する場合や、一つの構成要素から他の構成要素に信号線等を介して送信することが含まれてよい。第2道路情報は、例えば、道路構造物および道路形状等を含む。以下、第2道路情報に含まれる道路構造物を「第2道路構造物」と称する。
例えば、第2道路情報認識部134は、カメラ10によって撮像された画像を解析し、解析結果である画像中のエッジ領域や色、形状、大きさ等の特徴情報を取得する。そして、第2道路情報認識部134は、取得した特徴情報に基づいて記憶部190に記憶された物体情報192の特徴情報を参照し、類似度が最も高いまたは類似度が閾値以上の特徴情報に対応付けられた物体の名称および種別を取得する。なお、第2道路情報認識部134は、通信装置20を介して特徴情報を外部装置に送信し、特徴情報に対応する物体情報(名称および種別)を受信してもよい。また、第2道路情報認識部134は、物体情報192を参照したり、外部装置と通信を行わずに、単に画像から特徴情報を取得するだけでもよい。また、第2道路情報認識部134は、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果に基づいて、第2道路構造物を含む物体の位置を認識する。
判定部136は、第1道路構造物と第2道路構造物とが合致しているか否かを判定する。例えば、判定部136は、第1道路構造物および第2道路構造物に含まれる道路構造物の種別ごとに、第1道路構造物と第2道路構造物とが合致しているか否かを判定する。図4は、判定部136により実行される処理について説明するための図である。図4の例では、第1道路構造物に含まれる道路区画線LL、CL、RLのそれぞれが、第2道路構造物に含まれる道路区画線LL、CL、RLと合致しているか否かを説明するものである。図4に示す道路区画線LL、CL、RLは、地図情報から取得された第1道路構造物に含まれる道路区画線であるものとし、認識区画線RB1〜RB3は、外界センサの出力に基づいて認識された第2道路構造物に含まれる道路区画線であるものとする。
例えば、判定部136は、道路区画線LL、CL、RLのそれぞれの位置を基準とした道路境界判定領域を設定し、設定された道路境界判定領域内に認識区画線RB1〜RB3が含まれる場合に、「道路区画線」という道路構造物の種別において、第1道路構造物と第2道路構造物とが合致すると判定する。一方、判定部136は、道路境界判定領域内に認識区画線RB1〜RB3のうち少なくとも一つが含まれない場合に、「道路区画線」という道路構造物の種別において、第1道路構造物と第2道路構造物とが合致しないと判定する。
ここで、道路境界判定領域とは、例えば、道路区画線LL、CL、RLのそれぞれの長手方向(言い換えると、車線の延伸方向)に直交する方向(言い換えると、車線の車線幅方向)に所定の幅を有し、その幅を第1道路境界(区画線)の長手方向に所定距離だけ延伸させることで表される領域である。
図4の例では、道路区画線LL、CL、RLのそれぞれの位置を基準として、それぞれの道路区画線LL、CL、RLの長手方向に直交する方向に延ばした幅WL、WC、WRが設定され、設定された幅WL、WC、WRを基準地点P0から区画線LL、CL、RLの長手方向に沿って所定距離D1(以下、必要に応じて区間D1ともいう)だけ延伸させた地点P1までの領域が道路境界判定領域AL1、AC1、AR1として設定されている。基準地点P0は、車両センサ40により検出された自車両Mの位置を基準とした地点であり、例えば、自車両Mの前頭部(前端部)の位置や、自車両Mの中心位置、位置センサやカメラ10等の設置位置のうち何れかの位置である。所定距離D1は、例えば、外界センサによって第2道路情報が所定の精度で検出可能と推定される距離である。所定距離D1は、例えば、固定距離でもよく、自車両Mの車速や道路状況(例えば、トンネル内、急カーブ、勾配、車線数、車線幅)によって変更されてもよい。
また、判定部136は、自車両Mから見て道路区画線LL、CL、RLよりも向こう側の領域と、道路区画線LL、CL、RLよりも手前側の領域とを含む道路境界判定領域を設定する。この場合、判定部136は、自車両Mから見て道路区画線よりも向こう側の領域を、手前側の領域よりも狭く設定する。図4の例では、道路区画線LLに対応付けられた道路境界判定領域AL1において、自車両Mから見て道路区画線LLよりも向こう側の幅WLOが手前側の幅WLIよりも狭く設定されている。また同様に、道路境界判定領域AC1において、自車両Mから見て道路区画線CLよりも向こう側の幅WCOを手前側の幅WCIよりも狭く設定し、道路境界判定領域AR1において、自車両Mから見て道路区画線RLよりも向こう側の幅WROを手前側の幅WRIよりも狭く設定する。このように、自車両Mに近い側の領域を広くすることで、自車両M側で道路区画線LL、CL、RLと認識区画線RB1〜RB3とが合致していると判定し易くすることができる。また、合致していると判定した場合に、認識区画線RB1〜RB3に基づいて自車両Mの自動運転制御を行うことで、自車両Mが車線L1外への逸脱するのを抑制し易くすることができる。また、判定部136は、幅WLOと幅WLIとを同じ幅にしてもよく、幅WCOと幅WCI、および幅WROと幅WRIを同じ幅にしてもよい。また、判定部136は、所定条件に基づいて道路境界判定領域を変更してもよい。所定条件には、例えば、車両センサ40による自車両Mの位置検出の精度、地図情報が作成または更新された年月日からの経過期間、自車両Mの速度、自車両Mの周辺の他車両の有無、道路構造物の種別等が含まれる。
また、判定部136は、区間D1において認識区画線の全てが道路境界判定領域内に含まれている場合に加え、認識区画線の一部が領域外に存在する場合であっても認識区画線が領域内に存在すると判定してもよい。この場合、判定部136は、例えば、区間D1における認識区画線が、道路境界判定領域内に存在する割合を算出し、算出した割合が閾値以上である場合に、道路区画線と認識区画線とが合致していると判定する。
また、判定部136は、認識区画線のうち自車両Mに近い方の区画線が道路境界判定領域内に存在する方が、自車両Mから遠い方の道路境界が道路境界判定領域内に存在するよりも、割合に対する重みを大きくしてもよい。図4の例において、判定部136は、基準地点P0から地点P2までの区間D2までの道路境界判定領域(第1領域)において認識区画線が第1領域内に存在する割合をaとし、自車両Mから見て区間D2よりも遠方に存在する区間D3(地点P2から地点P1までの区間)の道路境界判定領域(第2領域)において認識区画線が第2領域内に存在する割合をbとした場合、割合aに重みw(w>1)を乗算して、認識区画線が道路境界判定領域内に存在する割合(a×w+b)を算出し、算出した結果と閾値とを比較して認識区画線が道路境界判定領域内に含まれているか否かを判定する。このように、自車両Mからの距離に基づいて認識区画線が道路境界判定領域内に存在する割合に重みを付与して判定することで、より適切に区画線同士の合致判定を行うことができる。なお、区間D2およびD3の長さは、自車両Mの速度や道路形状によって可変に設定されてよい。
判定部136は、道路区画線以外の種別についても、同様に第1道路構造物と第2道路構造物とが合致するか否かを判定し、種別ごとに合致しているか否かを判定する。図3の例において、判定部136は、道路標識RS1、RS2、横断歩道CW、停止線SL1、SL2、交通信号機TLの種別ごと、第1道路構造物と第2道路構造物とが合致するか否かを判定する。なお、判定部136は、道路標識の種類(例えば、一時停止標識、横断歩道標識)ごと、または路面標識の種類ごとに異なる種別として、合致するか否かを判定してもよい。
また、判定部136は、道路構造物の種別ごとに、上述した道路境界判定領域と同様に判定領域を設定してもよい。その場合、判定部136は、道路構造物の中心位置や外形を基準にそれより広い判定領域を設定する。また、判定部136は、道路構造物の大きさや位置に応じて判定領域の大きさを調整してもよい。例えば、判定部136は、道路標識RS1、RS2のように比較的小さい(言い換えると、基準の大きさより小さい)道路構造物の場合には判定領域を大きく設定し、逆に横断歩道CWのように比較的大きい(言い換えると、基準の大きさより大きい)道路構造物の場合には判定領域を小さく設定する。また、判定部136は、上述した判定領域を設定せずに、第1道路構造物の領域に第2道路構造物(認識道路構造物)が含まれるか否かで、合致するか否かを判定してもよい。
ずれ度合取得部138は、第1道路構造物と第2道路構造物とが合致しないと判定された場合に、合致しないと判定された種別ごとに、第1道路構造物と第2道路構造物とのずれ度合を取得する。ずれ度合取得部138は、例えば、第1道路構造物の位置を基準とした第2道路構造物の位置までの距離をずれ度合として取得する。また、ずれ度合取得部138は、第1道路構造物の向きを基準としたときの第2道路構造物の向きの差分(角度)をずれ度合として取得してもよく、第1道路構造物の大きさに対する第2構造物の大きさの違い(例えば、大きさの比率)をずれ度合として取得してもよい。また、ずれ度合取得部138は、第2道路構造物が、第1道路構造物を基準として設定した判定領域外に存在する割合をずれ度合として取得してもよい。また、ずれ度合取得部138は、上述した距離、向き(角度)、比率、割合等の数値を正規化したずれ度合を取得してもよい。また、ずれ度合取得部138は、第2道路構造物の位置が、自車両Mから見て第1道路構造物の位置からどの方向にずれているか(例えば、自車両Mから見て第1道路構造物よりも手間側か、奥側か、右側か、左側か等)の情報を取得してもよい。また、ずれ度合取得部138は、例えば、第1道路構造物と第2道路構造物の一方にしか存在しない道路構造物が存在する場合(例えば、レーンマークが擦れていて外界センサの出力から認識できず、第1道路構造物のみにレーンマークが存在する場合)に、ずれ度合を最大値に設定してもよい。
[走行制御態様決定部の機能]
次に、走行制御態様決定部142の機能の詳細について説明する。走行制御態様決定部142は、判定部136により判定された結果やずれ度合取得部138により取得されたずれ度合に基づいて、自車両Mの走行制御の態様を、上述した第1〜第3走行制御のうち何れかの態様に決定する。
例えば、走行制御態様決定部142は、判定部136により第1道路構造物と第2道路構造物とが合致しないと判定された道路構造物の種別に基づいて、自車両Mの走行制御の態様を決定する。以下、走行制御態様決定部142による自車両Mの走行制御の態様の決定処理(態様を変更する処理も含む)について、幾つかの決定パターンに分けて説明する。
<第1の決定パターン>
第1の決定パターンを採用する場合、走行制御態様決定部142は、第1の決定条件として、判定部136により合致しないと判定された道路構造物の種別に一時停止標識または停止線のうち一方または双方が含まれる場合に、自車両の走行制御の態様を第3走行制御に決定する。一時停止線や停止線は、実際の位置と異なる位置で認識されてしまうと、自動運転制御において、自車両Mが停止すべき位置を停止せずに通過してしまったり、停止する位置がずれてしまうため、その先の交差点や横断歩道に存在する他車両や歩行者等に接触したり、通行を妨げてしまう可能性が生じる。したがって、走行制御態様決定部142は、合致しないと判定された道路構造物の種別に、一時停止標識または停止線のうち一方または双方が含まれる場合には、自車両Mを第3走行制御(例えば、手動運転)に切り替えることで、より適切に自車両Mの走行させることができる。
<第2の決定パターン>
第2の決定パターンを採用する場合、走行制御態様決定部142は、第2の決定条件として、判定部136により合致しないと判定された道路構造物の種別がレーンマークである場合に、自車両Mの走行制御の態様を第1走行制御に決定する。
例えば、レーンマークが合致しない場合は、例えば、複数のレーンマーク候補(影、古い白線等)の検出等により、一時的にレーンマークが誤認識されるが、その後短時間でレーンマークの位置が正しく認識されることが予測される。そのため、第2の決定条件を満たす場合に、自動化の度合が高い制御を継続させることで、一時的な不一致により走行制御の態様が頻繁に切り替わることを抑制することができる。したがって、より安定した走行制御を継続させることができる。
<第3の決定パターン>
第3の決定パターンを採用する場合、走行制御態様決定部142は、第3の決定条件として、判定部136により合致しないと判定された道路構造物の種別が道路境界物(例えば、ガードレール、縁石、中央分離帯、フェンス等)である場合に、自車両Mの走行制御の態様を第2走行制御に決定する。
例えば、道路境界物が合致しない場合は、車線数の増減や幅員の調整等、道路形状に変化があるものの、自車両Mの走行車線自体には影響が少ないことが予測される。そのため、第3の決定条件を満たす場合に、第2走行制御によって走行制御の自動化の度合を低くしながら、自動運転を継続させることで、より適切な走行制御を実行することができる。
<第4の決定パターン>
第4の決定パターンを採用する場合、走行制御態様決定部142は、第4の決定条件として、ずれ度合取得部138により取得された第1道路構造物と第2道路構造物とのずれ度合が閾値以上である場合に、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する。上記の閾値は、例えば、ずれ度合の種類(例えば、位置(距離)のずれ度合、向き(角度)のずれ度合、大きさのずれ度合)に応じて異なる閾値が設定されてよい。また、閾値は、例えば、天候や時間帯、道路形状等によって変更してもよい。
なお、走行制御態様決定部142は、ずれ度合が閾値以上である場合には、道路構造物の種別に関係なく、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する。また、走行制御態様決定部142は、上述した第1〜第3の決定条件のうち、少なくとも一つの決定条件を満たすか否かに関係なく、ずれ度合が閾値以上である場合に、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する。
第4の決定パターンを実行した自動運転制御装置100によれば、ずれ度合が大きい場合には、走行制御の態様を、第1〜第3走行制御のうち自動化の度合が最も低い第3走行制御に切り替えることで、地図情報から取得した情報や外界センサの出力に基づいて認識した結果を用いずに、運転者による運転を促し、運転者の手動運転によって自車両Mをより適切に走行させることができる。
なお、第4の決定パターンを採用する場合、走行制御態様決定部142は、第2道路構造物が自車両Mから見て、第1道路構造物を基準にどの方向に閾値以上ずれているか否かを種別ごとに判定して、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定するか否かを判定してもよい。例えば、道路構造物が道路区画線の場合には、手間または奥側にずれていても走行上の影響が少ないが、道路構造物が停止線である場合には、手間または奥側にずれていると停止位置がずれたり、実際の停止線を通過してしまうため走行上の影響が大きい。したがって、ずれ度合に加えて、ずれている方向も考慮して走行制御の態様を決定することで、道路構造物の種別に応じて、より適切な走行制御を実行することができる。
<第5の決定パターン>
第5の決定パターンを採用する場合、走行制御態様決定部142は、第5の決定条件として、判定部136により合致しないと判定された道路構造物の種別の数に応じて、自車両Mの走行制御の態様を決定する。
例えば、走行制御態様決定部142は、例えば、合致しないと判定された道路構造物の種別の数が0または1の場合には、自車両Mの走行制御の態様を第1走行制御に決定する。また、走行制御態様決定部142は、合致しないと判定された道路構造物の種別の数が2または3の場合には自車両Mの走行制御の態様を第2走行制御に決定し、合致しないと判定された道路構造物の種別の数が4以上の場合には、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する。
また、第5の決定パターンにおいて、走行制御態様決定部142は、合致しないと判定された道路構造物の種別の数に代えて、合致すると判定された道路構造物の種別の数に応じて自車両Mの走行制御の態様を決定してもよい。その場合、走行制御態様決定部142は、合致する道路構造物の数が多いほど、自車両Mの制御に関して自動化の度合が高い走行制御の態様を決定する。
第5の決定パターンによれば、道路構造物の種別の数に応じて走行制御の自動化の度合を切り替えることができる。なお、第5の決定パターンにおいて、走行制御態様決定部142は、合致しないと判定された道路構造物の種別の数が複数である場合に、その種別の組み合わせに応じて自車両Mの走行制御の態様を決定してもよい。
上述した第1〜第5の決定パターンのそれぞれは、他の決定パターンの一部または全部を組み合わせてもよい。また、決定パターンのそれぞれにおいて、走行制御態様決定部142は、決定条件を満たしてからの経過時間が所定時間(第1所定時間)以上となった場合に、各決定条件に対応付けられた走行制御の態様に決定してもよい。所定時間は、決定パターンごとに変更してもよく、天候(晴れ、曇り、雨、雪、雷)や時間帯(日中、夜間)、道路形状(例えば、カーブ路、勾配)によって変更してもよい。これにより、他車両や周辺物体(建物など)の影や街灯、天候、日差し等の影響によって一時的に決定条件を満たした場合において、走行制御の態様が頻繁に切り替わることを抑制することができ、より適切なタイミングで走行制御を切り替えることができる。
また、走行制御態様決定部142は、上述した決定パターンのうち何れかの決定パターンが所定時間(第2所定時間)以上継続した場合に、決定パターンを変更してもよい。例えば、走行制御態様決定部142は、上述した第2の決定パターンにおいて、自車両Mの走行制御の態様を第1走行制御に決定した後、第1走行制御で自車両Mの走行制御が実行される状態で、判定部136により合致しないと判定された道路構造物の種別がレーンマークである状態が第2所定時間以上継続した場合に、自車両Mの走行制御の態様を第1走行制御から第2走行制御に変更する。これにより、道路構造物が合致しない状態の継続時間に応じて走行制御の態様を切り替えることができ、より適切な走行制御を実行することができる。
行動計画生成部140は、走行制御態様決定部142により決定された走行制御の態様に基づいて、自車両Mの目標軌道等を生成する。なお、走行制御態様決定部142により決定された走行制御の態様が第3走行制御である場合には、運転者による手動運転が実行されるため、目標軌道が生成されなくてもよく、ADASに関する目標軌道が生成されてもよい。
[処理フロー]
図5は、実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示す処理は、所定タイミングまたは所定周期で繰り返し実行される。例えば、図5に示す処理は、自車両Mにおいて、第1〜第3走行制御のうち何れかの走行制御が実行されている間、繰り返し実行される。
図5の処理において、第1道路情報取得部132は、車両センサ40から自車両Mの位置情報を取得する(ステップS100)。次に、第1道路情報取得部132は、自車両Mの位置情報に基づいて、地図情報から第1道路情報を取得する(ステップS120)。次に、第2道路情報認識部134は、外界センサの出力に基づいて、自車両Mの周囲の道路状況を認識し、認識結果を含む第2道路情報を出力する(ステップS140)。
次に、判定部136は、第1道路情報に含まれる第1道路構造物と、第2道路情報に含まれる第2道路構造物とが合致するか否かを、道路構造物の種別ごとに判定する(ステップS160)。次に、走行制御態様決定部142は、判定部136の判定結果に基づいて、自車両Mの走行制御の態様を決定する(ステップS180)。ステップS180の処理の詳細については後述する。次に、行動計画生成部140および第2制御部160は、決定した態様による自車両Mの走行制御を実行する(ステップS200)。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
図6は、走行制御態様決定部142により実行される処理(ステップS180の処理)の流れの一例を示すフローチャートである。図6の例において、走行制御態様決定部142は、判定部136の判定結果に基づき、第1道路構造物および第2道路構造物に含まれる各種の道路構造物において、合致しない種別が存在するか否かを判定する(ステップS181)。合致しない種別が存在しない(全ての種別で合致する)と判定された場合、走行制御態様決定部142は、自車両Mの走行制御の態様を第1走行制御に決定する(ステップS182)。
ステップS181の処理において、合致しない種別が存在すると判定された場合、走行制御態様決定部142は、ずれ度合取得部138の取得結果から、合致しない種別における第1道路構造物と第2道路構造物とのずれ度合を取得し(ステップS183)、取得したずれ度合が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS184)。取得したずれ度合が閾値以上であると判定された場合、走行制御態様決定部142は、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する(ステップS185)。
ステップS184の処理において、取得したずれ度合が閾値以上でないと判定された場合、走行制御態様決定部142は、合致しない種別に一時停止標識または停止線のうち、一方または双方が含まれるか否かを判定する(ステップS186)。合致しない道路構造物の種別に一時停止標識または停止線のうち、一方または双方が含まれると判定された場合、走行制御態様決定部142は、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する(ステップS185)。
ステップS186の処理において、合致しない種別に一時停止標識または停止線のうち、一方または双方が含まれないと判定された場合、合致しない種別がレーンマークか否かを判定する(ステップS187)。合致しない種別がレーンマークである場合、走行制御態様決定部142は、自車両Mの走行制御の態様を第1走行制御に決定する(ステップS182)。
ステップS187の処理において、合致しない種別がレーンマークでないと判定された場合、走行制御態様決定部142は、合致しない種別が道路境界物か否かを判定する(ステップS188)。合致しない種別が道路境界物であると判定された場合、走行制御態様決定部142は、自車両Mの走行制御の態様を第2走行制御に決定する(ステップS189)。また、ステップS188の処理において、合致しない種別が道路境界物でない場合、他の道路構造物(例えば、交通信号機や道路標識等)が合致していないため、より安全な走行制御を実行するために、走行制御態様決定部142は、自車両Mの走行制御の態様を第3走行制御に決定する(ステップS185)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
上述した実施形態によれば、車両制御装置において、自車両Mの位置情報に基づいて地図情報から自車両Mの周辺の道路構造物を含む第1道路情報を取得する第1道路情報取得部132と、外界センサの出力に基づいて自車両Mの周辺の道路構造物を含む周辺状況を認識し、第2道路情報を出力する第2道路情報認識部134と、第1道路情報に含まれる第1道路構造物と第2道路情報に含まれる第2道路構造物とが合致するか否かの判定を道路構造物の種別ごとに行う判定部136と、判定部136により合致しないと判定された道路構造物の種別に基づいて、自車両の走行制御の態様を決定する走行制御態様決定部142と、を備えることにより、自車両Mの走行制御に関して、より適切な制御態様を決定することができる。
また、上述した実施形態によれば、地図情報と外界センサからの出力情報とが合致しなかった場合に、その道路構造物の種別に応じて走行制御のモードを変更することで、より適切な運転モードに切り替えることができる。
[ハードウェア構成]
図7は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100のコンピュータは、通信コントローラ100−1、CPU100−2、ワーキングメモリとして使用されるRAM100−3、ブートプログラム等を格納するROM100−4、フラッシュメモリやHDD等の記憶装置100−5、ドライブ装置100−6等が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100−1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。ドライブ装置100−6には、光ディスク等の可搬型記憶媒体(例えば、コンピュータ読み込み可能な非一時的記憶媒体)が装着される。記憶装置100−5には、CPU100−2が実行するプログラム100−5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)等によってRAM100−3に展開されて、CPU100−2によって実行される。CPU100−2が参照するプログラム100−5aは、ドライブ装置100−6に装着された可搬型記憶媒体に格納されていてもよいし、ネットワークを介して他の装置からダウンロードされてもよい。これによって、自動運転制御装置100の各構成要素のうち一部または全部が実現される。
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の位置情報に基づいて地図情報から前記車両の周辺の道路構造物を含む第1道路情報を取得し、
外界センサの出力に基づいて前記車両の周辺の道路構造物を含む周辺状況を認識し、第2道路情報を出力し、
前記第1道路情報に含まれる第1道路構造物と前記第2道路情報に含まれる第2道路構造物とが合致するか否かの判定を道路構造物の種別ごとに行い、
合致しないと判定された道路構造物の種別に基づいて、前記車両の走行制御の態様を決定する、
ように構成されている、車両制御装置。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。