JP2021121573A - 水素の製造方法、一酸化炭素の製造方法および反応媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】水素や一酸化炭素の新たな製造方法を提供する。【解決手段】ある態様の製造方法は、ペロブスカイト相と非ペロブスカイト相との間で相転移を生じる化合物を用いた水素の製造方法であって、ペロブスカイト相の化合物が加熱還元されて非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出する第1の工程と、非ペロブスカイト相の化合物が酸化されてペロブスカイト相に相転移する際に水素を生成する第2の工程と、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、水素や一酸化炭素の製造方法、および、製造の際に用いられる反応媒体に関する。
太陽光を集光して得られる熱を利用して水熱分解により水素を製造する方法として、酸化セリウム(CeO)による二段階水熱分解サイクルが考案されている(特許文献1参照)。この二段階水熱分解サイクルでは、加熱によりCeOを構成する酸素原子の一部を引き抜き、不定比酸化物を得る熱還元の工程と、得られた不定比酸化物と水蒸気との反応(水分解反応)により水素を得る工程とが行われる。
特開2019−127430号公報
しかしながら、前述のCeOを用いた二段階水熱分解サイクルでは、1サイクルにおける単位量あたりの水素発生量が十分であるとは言い難い。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、水素や一酸化炭素の新たな製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の水素の製造方法は、ペロブスカイト相と非ペロブスカイト相との間で相転移を生じる化合物を用いた水素の製造方法であって、ペロブスカイト相の化合物が加熱還元されて非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出する第1の工程と、非ペロブスカイト相の化合物が酸化されてペロブスカイト相に相転移する際に水素を生成する第2の工程と、を含む。
本発明によれば、水素や一酸化炭素の新たな製造方法を実現できる。
図1(a)は、(ABO(AO)構造(Ruddlesden-Popper構造)の一つであるABO構造(n=1の場合)の原子配置を示す模式図、図1(b)は、A構造(n=2の場合)の原子配置を示す模式図である。 本実施の形態に係る水素の製造方法で生成した水素の発生量を測定する装置の模式図である。 本実施の形態の変形例に係る一酸化炭素の製造方法で生成した一酸化炭素の発生量を測定する装置の模式図である。
はじめに、本発明の態様を列挙する。本発明のある態様の水素の製造方法は、ペロブスカイト相と非ペロブスカイト相との間で相転移を生じる化合物を用いた水素の製造方法であって、ペロブスカイト相の化合物が加熱還元されて非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出する第1の工程と、非ペロブスカイト相の化合物が酸化されてペロブスカイト相に相転移する際に水素を生成する第2の工程と、を含む。
この態様によると、相転移を利用した従来にはない水素の製造方法を実現できる。
非ペロブスカイト相は、RP(Ruddlesden-Popper)相であってもよい。
化合物は、一般式A1−x1−y3−δ(Aは希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Bはアルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Pは第一遷移元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Qは、Pを置換しうる元素。)で表されてもよい。ここで、δは、A、Bの組成、温度、酸素分圧が決まれば一意的に決まりうる値である。Aに好適な希土類元素としては、Sc,Y,La、Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luが挙げられる。また、PやQに好適な第一遷移元素としては、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuが挙げられる。
化合物は、一般式A1−x1−y3−δにおけるAがLaであり、xは0≦x≦0.3を満たす範囲であってもよい。
化合物は、一般式A1−x1−y3−δにおけるBがSrであってもよい。
化合物は、一般式A1−x1−y3−δにおけるPがCoおよびNiの少なくとも一方の元素であり、yは0.3≦y≦1.0を満たしてもよい。
第1の工程が実施される温度T1は、1000〜1500℃の範囲であり、第2の工程が実施される温度T2(ただしT2≦T1)は、700〜1300℃の範囲であってもよい。これにより、例えば太陽光の熱を利用して相転移が生じる高温で水素を製造できる。なお、より好ましくは、温度T1は、1100〜1300℃の範囲であり、温度T2は、900〜1100℃の範囲である。
本発明の他の態様は、一酸化炭素の製造方法である。この製造方法は、ペロブスカイト相と非ペロブスカイト相との間で相転移を生じる化合物を用いた一酸化炭素の製造方法であって、ペロブスカイト相の化合物が加熱還元されて非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出する第1の工程と、非ペロブスカイト相の化合物が酸化されてペロブスカイト相に相転移する際に一酸化炭素を生成する第2の工程と、を含む。
この態様によると、相転移を利用した従来にはない一酸化炭素の製造方法を実現できる。
本発明の別の態様は、反応媒体である。この反応媒体は、1000〜1500℃の範囲にある温度T1で非ペロブスカイト相であり、700〜1300℃の範囲にある温度T2(T2≦T1)でペロブスカイト相である化合物を含む反応媒体である。また、化合物は、加熱還元されてペロブスカイト相から非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出し、酸化されて非ペロブスカイト相からペロブスカイト相に相転移する際に水素を含む物質と反応して水素を生成する。あるいは、酸化されて非ペロブスカイト相からペロブスカイト相に相転移する際に酸素と炭素を含む物質と反応して一酸化炭素を生成する。
この態様によると、相転移を利用した従来にはない水素や一酸化炭素の製造方法を実現できる。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。また、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、同一の部材であっても、各図面間で縮尺等が若干相違する場合もあり得る。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
(二段階酸化還元反応)
現状、COフリー水素を最も低コストで製造する方法は、COフリー電力(再生可能エネルギー由来電力)を使用した水電解法であるが、二段階熱化学水素製造方法は、より低コストで水素を製造できる方法として有望な技術の一つである。この製造方法は、二段階の酸化還元反応で水を分解して水素と酸素を生成する技術である。下記に各段階の反応モデルを示す。
[還元反応1]MO → MO(X−n)+0.5nO (反応温度1000〜1500℃:吸熱反応)
[酸化反応2]MO(X−n)+nHO → MO+nH (反応温度700〜1300℃:発熱反応)
この技術の重要な要素は、メディエータと呼ばれる化合物MOであり、適切な化合物MOを用いることで、より多量の水素を生成できる。本願発明者らは、このメディエータになりうる様々な化合物を鋭意検討し、その中の一つの態様として酸化還元反応において相転移を生じる化合物に着目した。具体的には、酸化形ではペロブスカイト構造(相)を、還元形ではその他の結晶構造(相)を取り得るメディエータに着目した。そして、このメディエータの相転移が起こる温度、酸素分圧(PO)等の条件を適切に制御することで、より多くの水素や一酸化炭素を効率的に製造できる点に想到した。
(相転移)
ペロブスカイト相を主とする相転移を図1を参照して説明する。なお、本実施の形態で用いる「相転移」という用語は、主として結晶構造が変化することを意味しているが、含有する酸素の比率が変わりうる変化であれば必ずしも結晶構造が大きく変わらない場合(例えば、原子間距離が変わることによる密度変化や、空孔の存在)も概念として含みうる。
図1(a)は、(ABO(AO)構造(Ruddlesden-Popper構造)の一つであるABO構造(n=1の場合)の原子配置を示す模式図、図1(b)は、A構造(n=2の場合)の原子配置を示す模式図である。
ペロブスカイト相から、図1(a)や図1(b)に示すRP相に変化すると、下記反応により化合物中の酸素が減少することが分かる。つまり、太陽熱を利用した温度T1(1000〜1500℃)で行われる熱還元反応により酸素が放出される。
[還元反応1]LaNiO → 0.5LaNiO+0.5NiO+0.25O
次に、温度T2(T2≦T1:700〜1300℃)で行われる再酸化反応により、RP相になった化合物が再度ペロブスカイト相に変化すると、下記反応により水素が発生する。
[酸化反応2]0.5LaNiO+0.5NiO+0.5HO → LaNiO+0.5H
その後、還元反応1と酸化反応2とを繰り返すことで、水素を連続的に生成することができる。次に、酸化反応2で水を分解して生成した水素の量の測定方法について説明する。
(水分解ステップ)
図2は、本実施の形態に係る水素の製造方法で生成した水素の発生量を測定する装置100の模式図である。流入口10から流入した窒素ガスを、純水PWを満たした試験管12に導入し、装置100内の経路をパージする。試験管12は95℃のオイルバス14で一定の温度に保たれる。なお、オイルバス14内の熱媒体は、スターラー16で常に撹拌されている。
反応媒体18は、赤外線イメージ炉20内に載置され、熱電対22を用いて温度が制御される。本実施の形態において、赤外線イメージ炉20内に載置される反応媒体18は、La0.8Sr0.2NiOを還元したRP相の化合物である。そして、試験管12から流出した水(水蒸気)が赤外線イメージ炉20に導入されると、反応温度1200℃で反応媒体18が酸化され、水素が製造される。なお、水の分圧P(HO)は0.84atm、ガスの流速は12.0×10−3[dm/min]、反応時間は1hである。
赤外線イメージ炉20で未反応な水は、水冷トラップ24で冷却される。また、赤外線イメージ炉20で生成した水素の量は、ガスクロマトグラフ分析(熱伝導度検出器26)により測定される。La0.8Sr0.2NiOを用いた反応媒体18による水素の生成量は、68.1Ncc/g/cycleであり、これまでのメディエータと比較して飛躍的に水素発生量を大きくできることが分かった。例えば、CeOをメディエータとして用いた場合の水素発生量は、7.0Ncc/g/cycle程度である。
(変形例)
上述の実施の形態では、反応媒体を水素の製造に用いているが、一酸化炭素の製造に用いることもできる。図3は、本実施の形態の変形例に係る一酸化炭素の製造方法で生成した一酸化炭素の発生量を測定する装置200の模式図である。流入口10から流入した二酸化炭素は、赤外線イメージ炉20内の反応媒体18が酸化される際に一酸化炭素になる。赤外線イメージ炉20で未反応な二酸化炭素、および、赤外線イメージ炉20で生成した一酸化炭素を含む混合ガスは、一部がキャピラリー28から質量分析器30に導入され、一酸化炭素の生成量が測定される。なお、導入する二酸化炭素ガスの純度は99.995%、ガスの流速は100[mL/min]、二酸化炭素の分解温度は1000〜1200℃、反応時間は1hである。
(カーボンニュートラルサイクル)
前述のように、本実施の形態に係る反応媒体は、水を水素に分解し、二酸化炭素を一酸化炭素に分解できる。そこで、この特性を利用することで、フィッシャー・トロプシェ合成(2nH+nCO → -(CH)- +nHO)による炭化水素製造プロセスに必要な原料(水素と一酸化炭素)の製造を同時に行うことができる。
これにより、フィッシャー・トロプシェ合成で製造された炭化水素を燃焼することでエネルギーが得られるとともに、燃焼の際に発生する二酸化炭素や、フィッシャー・トロプシェ合成で得られる水は、再度反応媒体で一酸化炭素や水素に分解することで、フィッシャー・トロプシェ合成に再利用できる。したがって、反応媒体による還元反応や酸化反応に必要な熱を、太陽集光熱といったクリーンなエネルギーから得ることで、カーボンニュートラルサイクルを実現できる。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
10 流入口、 12 試験管、 14 オイルバス、 16 スターラー、 18 反応媒体、 20 赤外線イメージ炉、 22 熱電対、 24 水冷トラップ、 26 熱伝導度検出器、 28 キャピラリー、 30 質量分析器。

Claims (10)

  1. ペロブスカイト相と非ペロブスカイト相との間で相転移を生じる化合物を用いた水素の製造方法であって、
    ペロブスカイト相の前記化合物が加熱還元されて非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出する第1の工程と、
    非ペロブスカイト相の前記化合物が酸化されてペロブスカイト相に相転移する際に水素を生成する第2の工程と、
    を含む水素の製造方法。
  2. 前記非ペロブスカイト相は、RP(Ruddlesden-Popper)相であることを特徴とする請求項1に記載の水素の製造方法。
  3. 前記化合物は、一般式A1−x1−y3−δ(Aは希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Bはアルカリ金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Pは第一遷移元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Qは、Pを置換しうる元素。)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の水素の製造方法。
  4. 前記化合物は、一般式A1−x1−y3−δにおけるAがLaであり、xは0≦x≦0.3を満たす範囲であることを特徴とする請求項3に記載の水素の製造方法。
  5. 前記化合物は、一般式A1−x1−y3−δにおけるBがSrであることを特徴とする請求項3または4に記載の水素の製造方法。
  6. 前記化合物は、一般式A1−x1−y3−δにおけるPがCoおよびNiの少なくとも一方の元素であり、yは0.3≦y≦1.0を満たすことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の水素の製造方法。
  7. 前記第1の工程が実施される温度T1は、1000〜1500℃の範囲であり、
    前記第2の工程が実施される温度T2(ただしT2≦T1)は、700〜1300℃の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水素の製造方法。
  8. ペロブスカイト相と非ペロブスカイト相との間で相転移を生じる化合物を用いた一酸化炭素の製造方法であって、
    ペロブスカイト相の前記化合物が加熱還元されて非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出する第1の工程と、
    非ペロブスカイト相の前記化合物が酸化されてペロブスカイト相に相転移する際に一酸化炭素を生成する第2の工程と、
    を含む一酸化炭素の製造方法。
  9. 1000〜1500℃の範囲にある温度T1で非ペロブスカイト相であり、700〜1300℃の範囲にある温度T2(T2≦T1)でペロブスカイト相である化合物を含む反応媒体であって、
    前記化合物は、加熱還元されてペロブスカイト相から非ペロブスカイト相に相転移する際に酸素を放出し、酸化されて非ペロブスカイト相からペロブスカイト相に相転移する際に水素を含む物質と反応して水素を生成することを特徴とする反応媒体。
  10. 前記化合物は、一般式A1−x1−y3−δ(Aは希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Bはアルカリ金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Pは第一遷移元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素、Qは、Pを置換しうる元素。)で表されることを特徴とする請求項9に記載の反応媒体。
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