JP2021120351A - フルオロオレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)から液相において効率的にフルオロオレフィンを製造する方法の提供。【解決手段】炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するHFCまたはHCFCを液相で、相間移動触媒、およびHFCまたはHCFCを溶解し得る水溶性有機溶媒の存在下に、アルカリ水溶液と接触させ、HFCまたはHCFCを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを得るフルオロオレフィンの製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、フルオロオレフィン、具体的には、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを液相において効率的に製造する方法に関する。
近年、洗浄剤、冷媒、発泡剤、溶剤、およびエアゾール用途等にハイドロフルオロカーボンやハイドロクロロフルオロカーボンが用いられている。しかしながら、これらの化合物は、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。そこで、地球温暖化係数の小さい化合物としてハロゲン化オレフィンが注目されている。
ハロゲン化オレフィンの製造方法の一つとして、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させる反応が知られている。
例えば、特許文献1には、XCF2CF2CHClYを脱フッ化水素させて、XCF2CF=CClY(XおよびYはそれぞれフッ素原子または塩素原子である。)を得る反応、および、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−クロロプロパンを脱塩化水素させ、ヘキサフルオロプロペンを得る反応が記載されている。
特許文献2には1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させて1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法が記載されており、特許文献3には、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させて1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る方法が記載されている。
これらの特許文献のいずれにおいても、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの脱塩化水素または脱フッ化水素反応は、液相反応でアルカリ水溶液を用いて行う例が記載されている。これらの反応においては、反応時間が長く、そのため、相間移動触媒を使用する等の改良がなされているものの、より効率的に生産できる方法が求められていた。
本発明は、上記観点からなされたものであって、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンから液相において効率的にフルオロオレフィン、具体的には、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを製造する方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[8]の構成を有するフルオロオレフィンの製造方法を提供する。
[1]炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを液相で、相間移動触媒、および前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを溶解し得る水溶性有機溶媒の存在下に、アルカリ水溶液と接触させ、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびクロロフルオロオレフィンから選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法。
[2]ハンセン溶解度パラメータに基づき下記式(I)で示される、前記水溶性有機溶媒と前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンとの、相互作用距離(Ra)が25.0以下である、[1]に記載の製造方法。
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
式(I)中、δD1、δP1およびδH1は各々、前記水溶性有機溶媒のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項を、δD2、δP2およびδH2は各々、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンのハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項をそれぞれ示し、単位はいずれも(MPa)1/2である。
[3]前記水溶性有機溶媒を、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの100質量部に対して、1〜100質量部の割合で用いる[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記水溶性有機溶媒が、メタノール、アセトン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがモノクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがテトラフルオロプロペンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記モノクロロテトラフルオロプロパンが2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[5]に記載の製造方法。
[7]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがジクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがモノクロロテトラフルオロプロペンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記ジクロロテトラフルオロプロパンが2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記モノクロロテトラフルオロプロペンが1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[7]に記載の製造方法。
[1]炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを液相で、相間移動触媒、および前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを溶解し得る水溶性有機溶媒の存在下に、アルカリ水溶液と接触させ、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびクロロフルオロオレフィンから選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法。
[2]ハンセン溶解度パラメータに基づき下記式(I)で示される、前記水溶性有機溶媒と前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンとの、相互作用距離(Ra)が25.0以下である、[1]に記載の製造方法。
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
式(I)中、δD1、δP1およびδH1は各々、前記水溶性有機溶媒のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項を、δD2、δP2およびδH2は各々、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンのハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項をそれぞれ示し、単位はいずれも(MPa)1/2である。
[3]前記水溶性有機溶媒を、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの100質量部に対して、1〜100質量部の割合で用いる[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記水溶性有機溶媒が、メタノール、アセトン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがモノクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがテトラフルオロプロペンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記モノクロロテトラフルオロプロパンが2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[5]に記載の製造方法。
[7]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがジクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがモノクロロテトラフルオロプロペンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記ジクロロテトラフルオロプロパンが2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記モノクロロテトラフルオロプロペンが1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[7]に記載の製造方法。
本発明によれば、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンから液相において効率的にフルオロオレフィン、具体的には、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを製造できる。
また、本発明の製造方法は液相反応で実施することから、気相反応に比して小さな反応器を採用でき、工業上有利である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(−)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけ(例えば、「HCFO−1224yd」においては「1224yd」)を用いることがある。さらに、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(−)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけ(例えば、「HCFO−1224yd」においては「1224yd」)を用いることがある。さらに、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
本明細書において、反応式(1)で示される反応を、反応(1)という。他の式で表される反応も同様である。本明細書において、式(A)で示される化合物を化合物(A)という。他の式で表される化合物も同様である。本明細書において、数値範囲を表す「〜」では、上下限を含む。
化合物のハンセン溶解度パラメータ(以下、「HSP」ともいう。)は、分散項、極性項および水素結合項からなる。本明細書において、HSPは、文献値または、化合物の化学構造からコンピュータソフトウエア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)バージョン4)によって推算した値である。2種以上の化合物を含む混合物のHSPは、各化合物のHSPに、混合物全体に対する各化合物の体積比を乗じた値のベクトル和として算出される。
本発明の製造方法は、炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を液相で、相間移動触媒、および前記HFCまたはHCFCを溶解し得る水溶性有機溶媒(以下、「水溶性有機溶媒(S)」ともいう。)の存在下に、アルカリ水溶液と接触させ、前記HFCまたはHCFCを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ペルフルオロオレフィン(PFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)およびクロロフルオロオレフィン(CFO)から選ばれるフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法である。
本発明の製造方法が適用される反応は、具体的には、下記反応式(1)に示す反応である。式(1)中、出発物質(原料)である上記HFCまたはHCFCは式(A)で示され、HFO、PFO、HCFOまたはCFOである目的生成物は式(B)で示される。式(C)は塩化水素またはフッ化水素である。
ただし、式(1)中の記号は以下のとおりである。
X1、X2は、一方が水素原子であり、他方がフッ素原子または塩素原子である。
Y1、Y2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。
R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素原子数1〜5の脂肪族飽和炭化水素基(ただし、水素原子の一部または全部が塩素原子またはフッ素原子で置換されてもよい。)であり、R1とR2の合計の炭素原子数は1〜5である。
Y1、Y2、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子である。
X1、X2は、一方が水素原子であり、他方がフッ素原子または塩素原子である。
Y1、Y2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。
R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素原子数1〜5の脂肪族飽和炭化水素基(ただし、水素原子の一部または全部が塩素原子またはフッ素原子で置換されてもよい。)であり、R1とR2の合計の炭素原子数は1〜5である。
Y1、Y2、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子である。
従来から、化合物(A)を液相でアルカリ水溶液と接触させると、反応(1)に示すように化合物(A)から塩化水素またはフッ化水素が脱離して化合物(B)が得られることが知られている。この反応は、化合物(A)を主体とする有機相とアルカリ水溶液を主体とする水相の2相状態で行われる。2相の接触を効率よく行うために撹拌条件や装置を工夫する、相間移動触媒を用いて反応の促進を図ることが行われているが、反応速度を上げて、生産性を向上させることは容易でなかった。
本発明者らは、上記反応(1)において、化合物(A)とアルカリ水溶液の接触を、相間移動触媒および水溶性有機溶媒(S)の存在下で行うことで、水溶性有機溶媒(S)が相間移動触媒の働きを促進させ、より効率的に化合物(B)が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(本発明の製造方法が適用可能な反応)
本発明の製造方法が適用可能な反応の具体例を以下に説明する。炭素原子数3の場合の例として、以下の式(1−1)〜式(12−2)、式(15−1)、式(15−2)の反応に示される、フルオロプロペンの製造例が挙げられる。炭素原子数4の場合の例として、以下の式(13−1)および式(13−2)の反応に示される、フルオロブテンの製造例が挙げられる。炭素原子数5の場合の例として、以下の式(14−1)および式(14−2)の反応に示される、フルオロペンテンの製造例が挙げられる。
本発明の製造方法が適用可能な反応の具体例を以下に説明する。炭素原子数3の場合の例として、以下の式(1−1)〜式(12−2)、式(15−1)、式(15−2)の反応に示される、フルオロプロペンの製造例が挙げられる。炭素原子数4の場合の例として、以下の式(13−1)および式(13−2)の反応に示される、フルオロブテンの製造例が挙げられる。炭素原子数5の場合の例として、以下の式(14−1)および式(14−2)の反応に示される、フルオロペンテンの製造例が挙げられる。
式(1−1)は3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)および/または1,1−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ea)から脱HFにより1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)を得る反応式である。式(1−2)は2,3,3−トリクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ba)および/または1,1,1−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224eb)から脱HClによりCFO−1214yaを得る反応式である。
式(2−1)は1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ca)および/または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)から脱HFによりヘキサフルオロプロペン(PFO−1216)を得る反応式である。式(2−2)は2−クロロ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ba)および/または1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ea)から脱HClによりPFO−1216を得る反応式である。
式(3−1)は3−クロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235cb)および/または3−クロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235ea)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd(Z))および/または(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd(E))を得る反応式である。式(3−2)は2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−234bb)および/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−234ea)から脱HClによりHCFO−1224yd(Z)および/またはHCFO−1224yd(E)を得る反応式である。
式(4−1)は2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)および/または2−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244db)から脱HFにより2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を得る反応式である。式(4−2)は2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243xb)および/または2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)から脱HClによりHCFO−1233xfを得る反応式である。
式(5−1)は3−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244ca)および/または1−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244ea)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd(Z))および/または(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd(E))を得る反応式である。式(5−2)は2,3−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロプロパン(HCFC−243ba)および/または1,1−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロパン(HCFC−243eb)から脱HClによりHCFO−1233yd(Z)および/またはHCFO−1233yd(E)を得る反応式である。
式(6−1)は3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244eb)および/または3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))および/または(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(E))を得る反応式である。式(6−2)は2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)および/または3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243fa)から脱HClによりHCFO−1233zd(Z)および/またはHCFO−1233zd(E)を得る反応式である。
式(7−1)は1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)および/または1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)から脱HFにより2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を得る反応式である。式(7−2)は2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)および/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244eb)から脱HClによりHFO−1234yfを得る反応式である。
式(8−1)は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)および/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)から脱HFにより(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))および/または(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))を得る反応式である。式(8−2)は2−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244db)および/または3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)から脱HClによりHFO−1234ze(Z)および/またはHFO−1234ze(E)を得る反応式である。
式(9−1)は2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−234bb)および/または2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−234da)から脱HFにより(Z)−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd(Z))および/または(E)−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd(E))を得る反応式である。式(9−2)は2,2,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−233ab)および/または2,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−233da)から脱HClによりHCFO−1223xd(Z)および/またはHCFO−1223xd(E)を得る反応式である。
式(10−1)は1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236cb)および/または1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236eb)から脱HFにより(Z)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))および/または(E)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))を得る反応式である。式(10−2)は2−クロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235bb)および/または3−クロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235ea)から脱HClによりHFO−1225ye(Z)および/またはHFO−1225ye(E)を得る反応式である。
式(11−1)は1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)および/または1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)から脱HFにより3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)を得る反応式である。式(11−2)は2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−253db)および/または3−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−244eb)から脱HClによりHFO−1243zfを得る反応式である。
式(12−1)は1,1,2−トリフルオロプロパン(HFC−263eb)および/または1,1,3−トリフルオロプロパン(HFC−263fa)から脱HFにより3,3−ジフルオロプロペン(HFO−1252zf)を得る反応式である。式(12−2)は2−クロロ−1,1−ジフルオロプロパン(HCFC−262db)および/または3−クロロ−1,1−ジフルオロプロパン(HCFC−262fa)から脱HClによりHFO−1252zfを得る反応式である。
式(13−1)は、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタフルオロブタン(HFC−347mef)から脱HFにより(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(Z))および/または(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(E))を得る反応式である。式(13−2)は2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン(HCFC−346mdf)から脱HClによりHFO−1336mzz(Z)またはHFO−1336mzz(E)を得る反応式である。
式(14−1)は5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタン(HCFC−448occc)および/または5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,5−オクタフルオロペンタン(HCFC−448pcce)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(HCFO−1437dycc(Z))および/または(E)−1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(HCFO−1437dycc(E))を得る反応式である。式(14−2)は4,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロペンタン(HCFC−447obcc)および/または5,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロペンタン(HCFC−447necc)から脱HClによりHCFO−1437dycc(Z)および/またはHCFO−1437dycc(E)を得る反応式である。
式(15−1)は3−クロロ−1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ca)および/または1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ea)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CFO−1215yb(Z))および/または(E)−1−クロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CFO−1215yb(E))を得る反応式である。式(15−2)は2,3−ジクロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ba)および/または1,1−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225eb)から脱HClによりCFO−1215yb(Z)および/またはCFO−1215yb(E)を得る反応式である。
上記各反応において、特に本発明の製造方法が好適に用いられる反応として、反応速度を向上させて反応を効率的に実施できる点から、モノクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりテトラフルオロプロペンを得る反応、ジクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりモノクロロテトラフルオロプロペンを得る反応が挙げられる。
モノクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりテトラフルオロプロペンを得る反応としては、式(7−2)の244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応、式(8−2)の244dbおよび/または244faから脱HClにより1234ze(Z)および/または1234ze(E)を得る反応が挙げられ、式(7−2)の244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応がより好適に挙げられる。
ジクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりモノクロロテトラフルオロプロペンを得る反応としては、式(3−2)の234bbおよび/または234eaから脱HClにより1224yd(Z)および/または1224yd(E)を得る反応が挙げられる。
なお、上記反応においては、特に原料に244bb等のCH3基を有する化合物が含まれ、該化合物のCH3基からHの脱離が必要とされる場合に、本発明による効果が大きい。したがって、244bbから脱HClにより1234yfを得る反応において高い効果が期待できる。
本発明の製造方法に係る反応(1)において、化合物(A)は有機相として液相で、アルカリ水溶液と物理的に接触する、より具体的には、アルカリ水溶液中の塩基と接触することで、脱HFまたは脱HCl反応が生起し化合物(B)が生成する。
本発明においては、化合物(A)およびアルカリ水溶液の接触を、液相で、相間移動触媒と水溶性有機溶媒(S)の存在下に行う。本発明の製造方法に係る該接触は、通常、反応器内で行われる。
化合物(A)の入手方法は特に制限されない。公知の方法で製造してもよく、市販品を用いてもよい。例えば、本発明が好ましく適用される(7−2)の反応における244bbおよび/または244ebは、例えば、254ebと塩素を反応させる塩素化反応により製造できる。また、(3−2)の反応における234bbおよび/または234eaは、例えば、上記254ebの塩素化反応において、得られる244bbおよび/または244ebをさらに塩素化することで製造できる。
なお、本発明の製造方法に際して、化合物(A)は、化合物(A)と不純物を含む混合物の形で反応器内に導入されてもよい。混合物における不純物量は、本発明の製造方法の効果に影響を及ぼさない程度とする。具体的には、化合物(A)は、化合物(A)の製造時において副生する副生物や未反応原料と共に用いられてもよい。例えば、純度が85質量%以上、好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の化合物(A)の組成物として、本発明の製造方法に用いることができる。
本発明の製造方法に用いるアルカリ水溶液とは、塩基を水に溶解させた水溶液をいう。塩基は、上記反応(1)が実行可能な塩基であれば特に限定されない。塩基は、金属水酸化物、金属酸化物および金属炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
塩基が金属水酸化物である場合、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属水酸化物などが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
塩基が金属酸化物である場合、該金属酸化物を構成する金属としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素が挙げられる。中でも、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第6族金属元素、第8族金属元素、第10族金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素が好ましく、ナトリウム、カルシウム、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウムがさらに好ましい。
金属酸化物は、金属の1種を含む酸化物であってもよく、2種以上の金属の複合酸化物であってもよい。金属酸化物としては、反応時間および反応収率の点から、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化クロム(クロミア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛等が好ましく、アルミナおよびクロミアがより好ましい。
塩基が金属炭酸塩である場合、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等の金属の炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等の金属の炭酸塩が挙げられる。
本発明の製造方法に用いる塩基としては、反応時間および反応収率の点から、金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。金属水酸化物は、1種を単独に用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ水溶液における塩基の含有量は、反応速度の点から、アルカリ水溶液全量(質量)に対する塩基の質量の割合(単位%)が、0.5〜48質量%となる量が好ましく、20〜45質量%がより好ましく、30〜40質量%がさらに好ましい。塩基量が上記範囲未満であると、十分な反応速度が得られないことがある。一方、塩基量が上記範囲を超えると、副生物の生成量が増え、目的物質(化合物(B))の選択率が減少する可能性がある。
本発明の製造方法に用いる塩基の使用量は、反応(1)の種類による。例えば、244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応においては、244bbおよび/または244ebの転化率および1234yfの選択率を向上させる観点から、244bbおよび/または244ebの1モルに対する塩基の量は、0.2〜3.0モルが好ましく、0.5〜2.5モルがより好ましい。
また、例えば、234bbおよび/または234eaから脱HClにより1224yd(Z)および/または1224yd(E)を得る反応においては、234bbおよび/または234eaの転化率および1224yd(Z)および/または1224yd(E)の選択率を向上させる観点から、234bbおよび/または234eaの1モルに対する塩基の量は、0.2〜3.0モルが好ましく、0.5〜2.5モルがより好ましい。
本発明の製造方法において、反応液は化合物(A)を主体とする有機相とアルカリ水溶液からなる水相で構成される。相間移動触媒は有機相中およびアルカリ水溶液中の両方に存在し、化合物(A)のアルカリ水溶液との接触による脱ハロゲン化反応を促進する。
相間移動触媒としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩、クラウンエーテルなどが挙げられ、工業的入手容易さや価格、扱いやすさの点から第4級アンモニウム塩が好ましい。
4級アンモニウム塩として、具体的には、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(TOMAC)等が好ましい。なかでも、反応をより促進できる点から、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)が好ましく、入手性の点からはテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)がより好ましく、反応性の点からはテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)がより好ましい。
本発明の製造方法に用いる相間移動触媒の量は、化合物(A)の100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましく、0.01〜3質量部がさらに好ましい。相間移動触媒の量が少なすぎると、十分な反応速度が得られないことがあり、多く用いても、使用量に応じた反応促進効果は得られず、コスト面で不利である。
水溶性有機溶媒(S)は、水溶性であるとともに化合物(A)を溶解し得る。本明細書において、水溶性有機溶媒(S)における水溶性とは、25℃において、水溶性有機溶媒(S)と純水を任意の混合割合で混合した際に相分離や濁りを起こさずに均一に溶解する性質をいう。また、水溶性有機溶媒(S)が、化合物(A)を溶解し得るとは、25℃において、化合物(A)に対し、水溶性有機溶媒(S)が20質量%となる量で化合物(A)と水溶性有機溶媒(S)を混合した際に相分離や濁りを起こさずに均一に溶解する性質をいう。
水溶性有機溶媒(S)は、相間移動触媒と同様に有機相中およびアルカリ水溶液中の両方に存在し、相間移動触媒における化合物(A)の脱ハロゲン化反応を促進する作用をより高める機能を有する。
水溶性有機溶媒(S)としては、例えば、水溶性のアルコール、ケトン、エーテル、エステル等から化合物(A)の種類に応じて該化合物(A)を溶解し得る化合物が適宜選択されて用いられる。
水溶性のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、ブタン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−2−オール、2−メチルプロパン−2−オール、2−メチルブタン−2−オール等が、水溶性のケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。水溶性のエーテルとしては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(以下、「テトラグライム」ともいう。)、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレンオキシド等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、フラン、クラウンエーテル類等の環状エーテル等が、水溶性のエステルとしては、酢酸メチル、ギ酸メチル等が挙げられる。
水溶性有機溶媒(S)は、水溶性に加えて、化合物(A)を溶解する性質を有する。水溶性有機溶媒(S)は、化合物(A)の脱ハロゲン化反応における相間移動触媒の作用をより高める観点から、ハンセン溶解度パラメータに基づき下記式(I)で示される、水溶性有機溶媒(S)と化合物(A)との、相互作用距離(Ra)が25.0以下であるのが好ましく、23.0以下がより好ましい。
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
式(I)中、δD1、δP1およびδH1は各々、水溶性有機溶媒(S)のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項を、δD2、δP2およびδH2は各々、化合物(A)のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項をそれぞれ示し、単位はいずれも(MPa)1/2である。
具体的に、例えば、化合物(A)として244bb、244eb、234bb、234eaを用いた場合に、これらの化合物(A)に対して水溶性有機溶媒(S)として好ましい各化合物の相互作用距離(Ra)を表1に示す。
表1に示すように、メタノール、アセトン、テトラグライムおよびテトラヒドロフランは、244bb、244eb、234bb、234eaのいずれとも、相互作用距離(Ra)が25.0以下であり、これらの脱ハロゲン化反応に、水溶性有機溶媒(S)として好ましく用いることができる。
なお、同様にして、相互作用距離(Ra)を指標として、表1に示す以外の化合物(A)と水溶性有機溶媒(S)の好ましい組み合わせが選択できる。
本発明の製造方法に用いる水溶性有機溶媒(S)の量は、化合物(A)の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、3〜80質量部がより好ましく、5〜60質量部がさらに好ましい。水溶性有機溶媒(S)の量が少なすぎると、十分な反応速度が得られないことがあり、多く用いても、使用量に応じた反応促進効果は得られず、コスト面および容積効率の面で不利である。
反応(1)における上記以外の反応条件、例えば、温度、圧力等は、通常、アルカリ水溶液と化合物(A)を液相で接触させ脱HFや脱HCl反応させる際の、反応条件と同様にできる。
例えば、244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応において、反応温度、すなわち反応器内の温度は、40〜120℃が好ましく、50〜110℃がより好ましい。反応温度を上記範囲にすることにより、反応速度および反応率が向上し、副生成物を抑制しやすい。なお、244bbにおいては、反応温度は60〜120℃が好ましく、80〜110℃がより好ましい。244ebにおいては、反応温度は40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。
244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応において、反応中の反応器内の圧力は、0.00〜10.00MPaが好ましく、0.05〜5.00MPaがより好ましく、0.15〜2.00MPaがさらに好ましい。反応器内の圧力は、反応温度における244bbおよび/または244ebの蒸気圧以上であることが好ましい。
また、例えば、234bbおよび/または234eaから脱HClにより1224yd(Z)および/または1224yd(E)を得る反応においては、反応温度、すなわち反応器内の温度は、10〜90℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。反応中の反応器内の圧力は、0.00〜5.00MPaが好ましく、0.02〜2.00MPaがより好ましく、0.05〜1.00MPaがさらに好ましい。
本発明の製造方法においては、工業的に目的のフルオロオレフィンを大量に生産する観点から、バッチ式、半連続式または連続式の反応器に撹拌翼を設置し、それを撹拌させることにより生成させることが好ましい。撹拌翼としては、4枚パドル翼、アンカー翼、ゲート翼、3枚プロペラ、リボン翼、6枚タービン翼等が挙げられる。
本発明の製造方法は、通常、反応器内に化合物(A)、アルカリ水溶液、相間移動触媒および水溶性有機溶媒(S)の所定量を導入して行われる。反応器の材質としては、化合物(A)、アルカリ水溶液、相間移動触媒、水溶性有機溶媒(S)ならびに反応生成物を含む反応液成分等に不活性で、耐蝕性の材質であれば特に制限されない。例えば、ガラス、鉄、ニッケル、および鉄等を主成分とするステンレス鋼等の合金などが挙げられる。
本発明における反応は、バッチ式で行ってもよいし、半連続式、連続流通式で行ってもよい。本発明の製造方法において、反応終了後に反応液を放置して、有機相と水相に分離させる。有機相中には、目的生成物である化合物(B)以外に、未反応の化合物(A)や副生物、相間移動触媒および水溶性有機溶媒(S)等が含まれうる。これらを含む有機相中から化合物(B)を回収する際には、一般的な蒸留等による分離精製方法を採用するのが好ましい。
なお、反応液中に未反応の化合物(A)が残っている場合、蒸留によって化合物(A)を濃縮し、本発明の原料としてリサイクルすることも可能である。
一方、上記有機相と分離した水相は、これだけ取り出して再度適当な濃度となるように塩基を加えれば、再利用が可能である。
また、相間移動触媒および水溶性有機溶媒(S)は有機相または水相から分離してもよいが、化合物(A)や水相中に残っている場合であれば、含有させたまま再利用することも可能である。
本発明の製造方法により得られる化合物(B)を上記のように分離精製して回収することで、化合物(B)を高純度に含有する精製化合物(B)が得られる。このようにして得られる精製化合物(B)に、HFやHCl等の酸分や水、酸素等の不純物が含まれると、その使用に際して設備が腐食する、化合物(B)の安定性が低下する等のおそれがある。したがって、従来公知の方法で、これら不純物を腐食や安定性に関し問題がない程度まで除去することが好ましい。
本発明の製造方法によれば、化合物(A)をアルカリ水溶液と接触させる液相による脱ハロゲン化反応において、相間移動触媒に加えて水溶性有機溶媒(S)の存在下に該接触を行うことで、より効率的に化合物(B)を製造できる。また、本発明の製造方法は液相反応で実施することから、気相反応に比して小さな反応器を採用でき、工業上有利である。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。化合物(A)として244bbを用いて脱HClにより1234yfを製造した。例1〜4が実施例であり、例5、6が比較例である。
[ガスクロマトグラフィーの条件]
以下の各種化合物の製造において、得られた反応組成物の組成分析はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。カラムはDB−1301(商品名、アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ60m×内径250μm×厚み1μm)を用いた。
以下の各種化合物の製造において、得られた反応組成物の組成分析はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。カラムはDB−1301(商品名、アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ60m×内径250μm×厚み1μm)を用いた。
[244bbの製造例]
254ebを、次のとおり、塩素化して244bbおよび244ebを製造した。まず、光源からの光を透過する石英管およびジャケットを取り付けたステンンレス製オートクレーブ(内容積6.9リットル)を、20℃に冷却した。このオートクレーブ(以下、反応器と示す。)内に、四塩化炭素(CCl4)を2336gと254ebを103g入れた後、LEDランプ(三菱電機社製LHT42N−G−E39、定格消費電力42.4W)からの可視光を照射しながら、塩素ガスを毎分3.2gの流量で反応器内に導入した。反応の進行に伴い、反応熱が生じるとともに、反応器内の温度は23.8℃に上昇した。上記流量塩素ガスを2分間導入し、すなわち、254ebの1モルに対して0.10モルの割合の塩素を導入し、反応器内の温度が20℃で一定になるまで光照射を継続した。反応器内の圧力は、塩素供給前の圧力が0.045MPa、塩素供給後の圧力、すなわち反応圧力が0.045MPaであった。
254ebを、次のとおり、塩素化して244bbおよび244ebを製造した。まず、光源からの光を透過する石英管およびジャケットを取り付けたステンンレス製オートクレーブ(内容積6.9リットル)を、20℃に冷却した。このオートクレーブ(以下、反応器と示す。)内に、四塩化炭素(CCl4)を2336gと254ebを103g入れた後、LEDランプ(三菱電機社製LHT42N−G−E39、定格消費電力42.4W)からの可視光を照射しながら、塩素ガスを毎分3.2gの流量で反応器内に導入した。反応の進行に伴い、反応熱が生じるとともに、反応器内の温度は23.8℃に上昇した。上記流量塩素ガスを2分間導入し、すなわち、254ebの1モルに対して0.10モルの割合の塩素を導入し、反応器内の温度が20℃で一定になるまで光照射を継続した。反応器内の圧力は、塩素供給前の圧力が0.045MPa、塩素供給後の圧力、すなわち反応圧力が0.045MPaであった。
反応終了後、得られた反応液を炭酸水素カリウムの20質量%水溶液と混合して中和し、次いで分液操作を行った。静置後、分離した下層から反応組成物を回収し、蒸留により244bbを得た。
[例1]
熱電対および撹拌翼を取り付けた0.1Lの反応器を恒温槽内に設置し、80℃に保った。この反応器に、30質量%KOH水溶液を61.1g、上記で得られた244bbを24.6g(KOHと244bbのモル比は、KOH:244bb=2:1である。)、相間移動触媒としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を0.25g、水溶性有機溶媒(S)としてのメタノールを2.46g加え、反応器を閉止し、圧力試験を行った。
熱電対および撹拌翼を取り付けた0.1Lの反応器を恒温槽内に設置し、80℃に保った。この反応器に、30質量%KOH水溶液を61.1g、上記で得られた244bbを24.6g(KOHと244bbのモル比は、KOH:244bb=2:1である。)、相間移動触媒としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を0.25g、水溶性有機溶媒(S)としてのメタノールを2.46g加え、反応器を閉止し、圧力試験を行った。
600rpmで撹拌翼を回転させ、2時間反応を行った後に、恒温槽から反応器を取り出して氷水により0℃に冷却して反応を停止させ、反応組成物を回収した。回収した反応組成物のGC分析を行った結果、244bbの転化率は33.2%であり、1234yfの収率は33.2%であり、選択率は100%であった。結果を表2に示す。
[例2〜4]
例1において、メタノールの代わりに、アセトン、テトラグライム、またはテトラヒドロフランを用いた以外は同様にして、1234yfを製造した。反応組成物を回収してGC分析を行った結果を表2に示す。
例1において、メタノールの代わりに、アセトン、テトラグライム、またはテトラヒドロフランを用いた以外は同様にして、1234yfを製造した。反応組成物を回収してGC分析を行った結果を表2に示す。
[例5]
例1において、メタノールを用いなかった以外は同様にして、1234yfを製造した。反応組成物を回収してGC分析を行った結果を表2に示す。
例1において、メタノールを用いなかった以外は同様にして、1234yfを製造した。反応組成物を回収してGC分析を行った結果を表2に示す。
[例6]
例1において、TBABを用いなかった以外は同様にして、1234yfを製造した。反応組成物を回収してGC分析を行った結果を表2に示す。
例1において、TBABを用いなかった以外は同様にして、1234yfを製造した。反応組成物を回収してGC分析を行った結果を表2に示す。
Claims (8)
- 炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを液相で、相間移動触媒、および前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを溶解し得る水溶性有機溶媒の存在下に、アルカリ水溶液と接触させ、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびクロロフルオロオレフィンから選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法。
- ハンセン溶解度パラメータに基づき下記式(I)で示される、前記水溶性有機溶媒と前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンとの、相互作用距離(Ra)が25.0以下である、請求項1に記載の製造方法。
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
式(I)中、δD1、δP1およびδH1は各々、前記水溶性有機溶媒のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項を、δD2、δP2およびδH2は各々、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンのハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項をそれぞれ示し、単位はいずれも(MPa)1/2である。 - 前記水溶性有機溶媒を、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの100質量部に対して、1〜100質量部の割合で用いる請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記水溶性有機溶媒が、メタノール、アセトン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがモノクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがテトラフルオロプロペンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記モノクロロテトラフルオロプロパンが2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、請求項5に記載の製造方法。
- 前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがジクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがモノクロロテトラフルオロプロペンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ジクロロテトラフルオロプロパンが2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記モノクロロテトラフルオロプロペンが1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、請求項7に記載の製造方法。
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