JP2021116648A - 柱状物設置用根かせ - Google Patents
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Abstract
Description
特に、多くの装柱物が必要となる支柱、例えば防災柱等の設置に用いるのに適した根かせに関するものである。
根かせ1に用いる支持部材2は、長尺状の板状形体を有するウェブ22と、当該ウェブの少なくとも一端においてウェブ22と直交する少なくとも一方向へ張り出したフランジ21を有する。そして、当該フランジ21の張り出した先端の横手方向の略中央には柱状物4を嵌着するための切欠23が設けられ、ウェブ部分には連結部材3により柱状物4を固着するために用いるボルト孔24が設けられている。
これらの材質面と形状面を同時に満たすものとして、H形鋼(H鋼)、I形綱、T形鋼、溝形鋼、山形鋼(L字鋼)、Z形鋼等の形鋼を、本発明の根かせの支持部材の原材料として適宜に使用することができ、このうち、立設後の柱状物4の安定性の面からH形鋼(H鋼)もしくはI形鋼を使用することが特に好ましい。
例えば、基本設定として、土質条件[B](普通土質:「固まっている土又は砂、多数の砂利、石塊まじりの土などで軟らかい土の部類に属するもの、土質係数:3.9×107(N/m4)」日本電気協会発行の「配電規定」JEAC7001による)を採用して事前の安全率計算をおこなうことで、標準的な支持部材2の大きさを求める。実際の施工地の土質がこの土質条件[B]であれば、この計算結果により求めた大きさの支持部材を使用することで安全性が確保される。もし、施工地の土質が土質条件[B]から外れる場合には、例えば、土質条件[B]よりも条件の悪い土質条件[C](軟弱土質:「流砂(土が混ざらないもの)、土質係数:2.0×107(N/m4)」日本電気協会発行の「配電規定」JEAC7001による)の土地へ施工する場合には、上記計算により求めたサイズよりも、長手方向の長さ及び短手方向の幅を大きく、高さ(ウエブ短手方向の長さ)を高くした支持部材2を用いることで、事前の計算で求めた安全率を確保したまま対応可能となる。逆に、土質条件[B]よりも土質係数が高く条件の良い土質[A](普通土質:「固まっている土又は砂、多数の砂利、石塊まじりの土など固い土の部類に属するもの、土質係数:3.9×107(N/m4)」日本電気協会発行の「配電規定」JEAC7001による)の土地へ施工する場合には、支持部材2の長手方向の長さ及び短手方向の幅を上記計算で求めたよりも短く、高さ(ウエブ短手方向の長さ)を低くしたものを使用しても安全性が確保できる。このように、本願発明の根かせによれば、安全性を確保しつつ施工地毎の様々な土質に適合させることが非常に容易となる。
これに対して、本願発明の根かせによれば、上記のように支持部材の大きさを変更するのみで様々な土質に容易に対応可能であるので、例えば、土質条件の良い施工地では支持部材2を計算で求めた標準的な大きさより小さいサイズとするといった対応が容易であり、安全性と経済性を両立することができる。
支持部材2a、2bを上下に積重ねて接触させて用いる場合には、支持部材の交差部分で上下の支持部材2a、2bをボルト留めにより連結させることが望ましい。これにより、支持部材2a、2bが個別に回転してしまうことを防止することができる。
連結部材3は、1つの支持部材2に対して1箇所でもよいが、複数箇所使用することでより強固でかつ安定的に柱状物4を取着することができる。
本発明の根かせ1を用いる場合、装柱物が多くなる防災柱の設置であっても、コンクリート根巻きを使用する必要はない。このことは、コンクリートの準備作業や打設作業が不要になるばかりでなく、コンクリートの養生も不要になるため、施工期間の大幅な短縮、雨天等の降水時の施工が可能となることを意味する。
まず、根かせ1を埋設できる幅及び深さの穴を地面に掘削し、次に、鉛直姿勢に設置される柱状物4に応じた穴を掘削する。柱状物4を建柱し、柱状物4下方の埋設部分に、支持部材2を互いに交差させた位置関係を保持して各支持部材2の切欠き23に柱状物4を嵌着させると共に、連結部材3により各支持部材2を柱状物4に締着させる。そして、根かせ1についても十分に転圧をおこないつつ埋め戻すことにより、柱状物4の立設が遂行される。
この際に、本発明の根かせ1によれば、根かせ1自体の構造が単純であるが故に、埋め戻し作業を容易に行うことができる。また、支持部材2のウェブ22部分への土の転圧が十分であれば、埋め戻しの際に土が入り難い箇所、例えば、H鋼を用いた場合における上フランジ21aの下面側部分については、土を完全に充填して固める作業を行うことなしに立柱強度を確保できるので、埋め戻し作業の効率を飛躍的に上げることができる。
<想定条件>
支柱下部の外径:216.3mm、板厚:7.0mm
支柱中部の外径:190.7mm、板厚:6.0mm
支柱上部の外径:165.2mm、板厚:4.5mm
上部高さ:14.9m
埋込深さ:2.6m
装柱物:レフレックスホーン(前面・側面)、ストレートホーン(側面)、アンテナ (60MHz3素子八木空中線)、屋外電源装置、外部接続箱
支持部材:H鋼H340×250×9×14(SS400)、長さ1m
連結部材:U字ボルト4−M20(SS400)、直径216.3用
H鋼間接続ボルト:ボルト2−M24(6.8)
地表面から下支持部材の中心までの埋込深さ:0.877m
地表面から上支持部材の中心までの埋込深さ:0.537m
装柱物の重量、荷重中心高、受風面積、風荷重等を表1に示す。
曲げモーメント算出式(荷重×荷重中心高)は、以下の通りである。
装柱物の曲げモーメント Ma=Pa1×L1+Pa2×L2・・・
主柱材の曲げモーメント Mp=Pp×h
ここで、hは主柱材の検討断面から主柱材の頂点までの高さH’の1/2である。
位置関係を図7に示し、結果を表2に示す。
荷重載荷試験は、上記の計算結果に基づいて、以下の条件設定により土質係数算出試験と強度確認試験をおこなった。
試験に用いた供試体は、試験簡略化のため、柱材は最下節柱材のみとし、柱材の短期許容強度を高くするため、柱材φ216.3×12.7(STK490)とした。
支持部材は、H鋼H340×250×9×14(SS400)、長さ1mのものを用いた。
試験の鉛直方向荷重は、計算書の荷重相当とするため、柱材上方に重り PL25×500×500×8枚を載せ、試験中に重りが動かないようフランジPLと通しボルトで固定し設置した。
1.掘削範囲
掘削する範囲を決め、マーキングする。根かせ設置の施工性を考慮し、縦及び横の寸法は根かせ長さに1m加えた寸法とした。
2.掘削(根かせ施工範囲)
根かせの施工範囲をバックホウで掘削する。深さは根かせが設置できるように下側根かせの下面位置以上とした。
3.掘削(柱材施工範囲)
柱材の施工範囲をオーガ掘削する。鉛直となるよう掘削し、深さは柱材が設置できるように柱材の根入れ深さ以上とした。
4.建柱、埋戻し及び締め固め
柱材が鉛直となるよう建柱した後、オーガ掘削した穴と柱材との隙間を埋め戻し、締め固めた。公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部)により、各層300mm程度ごとに締め固めた。
5.根かせ設置、埋戻し及び転圧
支持部材が水平となるよう設置した後、U字ボルトを用いて支持部材を柱材へ密着させた。上下支持部材は直交配置とした。掘削範囲を埋め戻して、締め固めた。根かせを設置する深さの範囲は、ランマーで各層150mm程度ごとに転圧し、特に根かせ周囲は入念に転圧をおこなった。その他の掘削範囲は各層300mm程度ごとに転圧した。
土質係数算出試験は,根かせ有りの場合と同様に、上記の「施工概要」の「1.掘削範囲」から「4.建柱,埋戻し及び締め固め」を行い、荷重載荷時の変位から試験場所の土質係数を把握した。試験体は2体とした。
強度確認試験は、根かせ有りの状態で載荷し、基礎の強度を確認することを目的とした。根かせの設置方向は、載荷方向に対して上側根かせが直交、下側根かせが直交、上下根かせが45度方向の3種類とした。試験体は各種3体とした。上下根かせ間接続ボルトの必要性及び施工性の確認のため、各試験ケースの枝番末尾3のケースは接続ボルト無しとした。その他のケースは接続ボルト有りとした。
土質係数算出試験及び強度確認試験の試験ケース一覧表を表3に示す。
試験における荷重の載荷は、載荷点にワイヤー、その反対側は重機にナイロンスリングを取り付け、その間のチェーンブロックを介して作業員が巻き取る方法にて実施した。載荷点は柱材上方リブPL孔位置とした。
変位計は地表面付近と供試体頂部付近の2箇所に設置し、載荷方向の供試体の水平変位を計測した。張力計は供試体頂部付近の高さに1箇所設置し、載荷荷重を計測した。
載荷荷重は2種類とし、計算書の短期荷重の地際のモーメントと同等となる荷重をP1、柱材の弾性限界相当となる荷重をP2とした。載荷荷重がP1及びP2となった時点で荷重を3分間保持し、その後に荷重を漸増させた。
荷重P1は、以下の計算により25kNとした。
P1=M/H
地際モーメントM=81347.6(N・m)
荷重点の高さH=3.275(m)
荷重P1=24839(N)≒25kN
荷重P2は、 以下の表4より水平荷重作用時に柱材の地際の断面にて圧縮側のへりが降伏点に達する荷重が39kNとなることを考慮して、P2=35kNの荷重を最大とし、荷重と変位の経過を見ながら徐々に載荷する方法とした。
荷重P3は、以下を考慮して50kNとした。
柱材の地際の断面にて全断面が塑性化し終局状態となる、全塑性モーメントに対応する水平荷重を計算すると以下の表5より53kNとなる。なお、曲げ応力度に比べ圧縮応力度は微小なため、圧縮に関しては無視した。
配電規程より算出した基礎の抵抗モーメントMrと作用モーメントMaが同等となる水平荷重は表6から58kNである。また、柱材が破壊に至る全塑性モーメントは実際の降伏点にて更に大きく、基礎の抵抗モーメントは試験地の土質のばらつきにて上下するため、柱材を破壊しない範囲で基礎の抵抗モーメントに相当する水平載荷荷重として最大50kNの載荷とした。
土質係数算出試験の結果は、試験ケース1−1での載荷荷重 P1=25kN 時における地表面付近の変位量は 59mmであった。これにより、土質係数は 1.24×107(N/m4)となった。
試験ケース1−2では、載荷荷重 P1=25kN 時における地表面付近の変位量は53mmであった。これにより、土質係数は 1.31×107(N/m4)となった。
2ケースともほぼ同様の結果であった。
土質係数算出試験と強度確認試験について、位置関係を図8に示し、試験結果一覧を表7に示す。表中、根かせ有りの試験ケース 2−1から4−3の土質係数は、配電規程の付録V 2.(1)a.(b)に基づき算出した。
全ての試験ケースで供試体の倒壊は起こらなかった。柱材弾性限界以上の荷重載荷により、柱材は地際近くの位置を基点に塑性変形した。よって、柱材に想定どおりの荷重が伝達されたことを確認できた。
試験結果による強度確認一覧を表8に示す。表中柱材安全率のP3載荷の右列は、断面係数を塑性断面係数に置き換えた場合の安全率である。
柱材安全率(弾性限界)=38.587kN(表4中)÷水平荷重
柱材安全率(全塑性)=53kN(表5中)÷水平荷重
基礎安全率=抵抗モーメント÷作用モーメント
柱材安全率は、柱材弾性限界以上の荷重P3載荷時にて、試験ケース4−2を除く全てのケースで、弾性限界の安全率は1.00を下回った。これは柱材の塑性化を示し、試験においても柱材は塑性変形した。塑性断面係数を用いた場合は安全率1.00以上であり、全断面が塑性化し終局状態となるまでには至らなかった。
全ての試験ケースで荷重-変位曲線はおおよそ線形性を示し、基礎は荷重に比例した抵抗力を保ち続けたことを確認できた。
基礎安全率は、荷重P3載荷時に全9ケース中3ケースで強度不足を示す1.00未満であったが、供試体の倒壊は起こらなかった。
柱材及び基礎安全率が1.00を下回った供試体でも、根かせの塑性変形は見られず、本発明の根かせの強度に問題はなかった。
計算書の基礎検討は、安全側に転圧不十分の可能性がある部分を無効とし、実際より低めの基礎安全率となっている。よって計算書はより安全側の検討となっている。
載荷方向に対する根かせの設置方向は、上側根かせが直交、下側根かせが直交、上下根かせが45度方向となる3種類のケースで試験を行った。試験結果より、任意の方向からの荷重に対して本発明の根かせを用いた基礎が強度上問題ないことを確認できた。
強度確認試験において、接続ボルト有り無しのどちらのケースでも、本発明の根かせを用いた基礎は、強度上問題ないことを確認できた。
2 支持部材
21 フランジ
21a 上フランジ
21b 下フランジ
22 ウェブ
23 切欠
24 Uボルト孔
25 ボルト孔
26 荷吊用孔
3 連結部材
31 Uボルト
32 ナット
4 柱状物
51 ボルト
52 ナット
Claims (6)
- 下端部が地中に埋められて鉛直姿勢に設置される柱状物のための根かせであって、少なくとも2つの支持部材と、各支持部材を柱状物の下端部に固着するための連結部材とを含み、少なくとも2本の支持部材は柱状物の伸延方向に対して上下に位置すると共に、各支持部材の伸延方向が相互に交差するように柱状物に取着される、柱状物設置用根かせ。
- 前記支持部材は、長尺状の板状形体を有するウェブと、当該ウェブの少なくとも一端に接合された、当該ウェブと直交する方向の少なくとも一方向に伸延するフランジとを備える、請求項1に記載の柱状物設置用根かせ。
- 前記支持部材は、張出したフランジの少なくとも一方側に、フランジ長手方向の略中央に配置された、柱状物を嵌着するための切欠を有する、請求項2に記載の柱状物設置用根かせ。
- 前記支持部材は、ウェブの短手方向の断面形状がH字形もしくはI字形である、請求項2または3に記載の柱状物設置用根かせ。
- 前記支持部材の少なくとも2本が相互に交差する部分において、各々の支持部材を相互に固着させる手段を設けられた、請求項1から4のいずれか一項に記載の柱状物設置用根かせ。
- 請求項1から5のいずれかに記載の根かせを用いた柱状物の設置方法であって、地面を掘削して、鉛直姿勢に設置される柱状物に各々の支持部材の切欠きが嵌着するように、各々の支持部材を交差させ、連結部材により各々の支持部材を柱状物に締着させた後、埋め戻すことを特徴とする柱状物設置用根かせの設置方法。
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