以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
<車両の構成>
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100が搭載される車両1の構成について説明する。
図1は、車両1の概略構成を示す模式図である。図1では、車両1の前進方向を前方向とし、前進方向に対して逆側の後退方向を後方向とし、前方向を向いた状態における左側および右側をそれぞれ左方向および右方向として、車両1が示されている。
車両1は、駆動源として、駆動用モータ(具体的には、図1中の前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15r)を備え、駆動用モータから出力される動力を用いて走行する電気車両である。
なお、以下で説明する車両1は、あくまでも本発明に係る制御装置が搭載される車両の一例であり、後述するように、本発明に係る制御装置が搭載される車両の構成は車両1の構成に特に限定されない。
図1に示されるように、車両1は、前輪11a,11bと、後輪11c,11dと、フロントディファレンシャル装置13fと、リヤディファレンシャル装置13rと、前輪駆動用モータ15fと、後輪駆動用モータ15rと、インバータ17fと、インバータ17rと、バッテリ19と、制御装置100と、アクセル開度センサ201と、ブレーキセンサ203と、前輪モータ回転数センサ205fと、後輪モータ回転数センサ205rとを備える。
以下、前輪11a、前輪11b、後輪11cおよび後輪11dを区別しない場合には、これらを単に車輪11とも呼ぶ。また、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rを区別しない場合には、これらを単に駆動用モータ15とも呼ぶ。また、インバータ17fおよびインバータ17rを区別しない場合には、これらを単にインバータ17とも呼ぶ。また、前輪モータ回転数センサ205fおよび後輪モータ回転数センサ205rを区別しない場合には、これらを単にモータ回転数センサ205とも呼ぶ。
前輪駆動用モータ15fは、前輪11a,11bを駆動する動力を出力する駆動用モータである。なお、前輪11aは左前輪に相当し、前輪11bは右前輪に相当する。
具体的には、前輪駆動用モータ15fは、バッテリ19から供給される電力を用いて駆動される。前輪駆動用モータ15fは、フロントディファレンシャル装置13fと接続されている。フロントディファレンシャル装置13fは、前輪11a,11bと、駆動軸を介してそれぞれ連結されている。前輪駆動用モータ15fから出力された動力は、フロントディファレンシャル装置13fに伝達された後、フロントディファレンシャル装置13fによって、前輪11a,11bへ分配して伝達される。
前輪駆動用モータ15fは、例えば、多相交流式のモータであり、インバータ17fを介してバッテリ19と接続されている。バッテリ19から供給される直流電力は、インバータ17fによって交流電力に変換され、前輪駆動用モータ15fへ供給される。
前輪駆動用モータ15fは、前輪11a,11bを駆動する動力を出力する機能の他に、前輪11a,11bの運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能も有する。前輪駆動用モータ15fが発電機として機能する場合、前輪駆動用モータ15fにより発電が行われるとともに、回生制動による制動力が車両1に付与される。前輪駆動用モータ15fにより発電された交流電力は、インバータ17fによって直流電力に変換され、バッテリ19へ供給される。それにより、バッテリ19が充電される。
後輪駆動用モータ15rは、後輪11c,11dを駆動する動力を出力する駆動用モータである。なお、後輪11cは左後輪に相当し、後輪11dは右後輪に相当する。
具体的には、後輪駆動用モータ15rは、バッテリ19から供給される電力を用いて駆動される。後輪駆動用モータ15rは、リヤディファレンシャル装置13rと接続されている。リヤディファレンシャル装置13rは、後輪11c,11dと、駆動軸を介してそれぞれ連結されている。後輪駆動用モータ15rから出力された動力は、リヤディファレンシャル装置13rに伝達された後、リヤディファレンシャル装置13rによって、後輪11c,11dへ分配して伝達される。
後輪駆動用モータ15rは、例えば、多相交流式のモータであり、インバータ17rを介してバッテリ19と接続されている。バッテリ19から供給される直流電力は、インバータ17rによって交流電力に変換され、後輪駆動用モータ15rへ供給される。
後輪駆動用モータ15rは、後輪11c,11dを駆動する動力を出力する機能の他に、後輪11c,11dの運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能も有する。後輪駆動用モータ15rが発電機として機能する場合、後輪駆動用モータ15rにより発電が行われるとともに、回生制動による制動力が車両1に付与される。後輪駆動用モータ15rにより発電された交流電力は、インバータ17rによって直流電力に変換され、バッテリ19へ供給される。それにより、バッテリ19が充電される。
アクセル開度センサ201は、ドライバによるアクセルペダルの操作量であるアクセル開度を検出し、検出結果を出力する。
ブレーキセンサ203は、ドライバによるブレーキペダルの操作量であるブレーキ操作量を検出し、検出結果を出力する。
前輪モータ回転数センサ205fは、前輪駆動用モータ15fの回転数を検出し、検出結果を出力する。後輪モータ回転数センサ205rは、後輪駆動用モータ15rの回転数を検出し、検出結果を出力する。モータ回転数センサ205の検出結果は、制御装置100が行う処理において、車両1の動力伝達軸(具体的には、駆動用モータ15と車輪11との間の動力伝達系に含まれる軸)の回転数を示す情報として用いられる。
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
制御装置100は、車両1に搭載される各装置(例えば、インバータ17、アクセル開度センサ201、ブレーキセンサ203およびモータ回転数センサ205等)と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
図2は、制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
例えば、図2に示されるように、制御装置100は、特定部110と、制御部120とを有する。
特定部110は、車両1の動力伝達軸の回転数に基づいて車両1の車速(以下、単に車速とも呼ぶ)を特定する。特定部110により特定された車速を示す情報は、制御部120へ出力され、制御部120が行う処理に利用される。
特定部110は、具体的には、モータ回転数センサ205の検出結果に基づいて車速を特定する。なお、車速の特定では、前輪モータ回転数センサ205fおよび後輪モータ回転数センサ205rの双方の検出結果が用いられてもよく、前輪モータ回転数センサ205fおよび後輪モータ回転数センサ205rの一方のみの検出結果が用いられてもよい。また、車速の特定では、車両1の動力伝達軸の回転数を示す情報として、モータ回転数センサ205の検出結果以外の情報(例えば、車輪11とディファレンシャル装置とを連結する駆動軸の回転数を示す情報)が用いられてもよい。
制御部120は、車両1内の各装置の動作を制御することによって、車両1の走行を制御する。例えば、制御部120は、判定部121と、モータ制御部122とを含む。
判定部121は、車両1内の各装置から制御装置100に送信される情報を利用して各種判定を行う。判定部121による判定結果は、制御部120が行う各種処理に利用される。
モータ制御部122は、各インバータ17の動作を制御することによって、各駆動用モータ15の動作を制御する。具体的には、モータ制御部122は、インバータ17fのスイッチング素子の動作を制御することによって、バッテリ19と前輪駆動用モータ15fとの間の電力の供給を制御する。それにより、モータ制御部122は、前輪駆動用モータ15fによる動力の生成および発電を制御することができる。また、モータ制御部122は、インバータ17rのスイッチング素子の動作を制御することによって、バッテリ19と後輪駆動用モータ15rとの間の電力の供給を制御する。それにより、モータ制御部122は、後輪駆動用モータ15rによる動力の生成および発電を制御することができる。
なお、モータ制御部122は、駆動用モータ15を駆動して車両1に駆動力を付与する場合に、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方を駆動してもよく、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの一方のみを駆動してもよい。前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方が駆動される場合における各駆動用モータ15の駆動力の配分は、適宜設定され得る。以下では、駆動用モータ15のトルクは、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rのトルクの合計値を意味する。
ここで、制御部120は、車両1の走行モードとして、通常モードと、クルーズコントロールモードとを切り替えて実行可能である。通常モードは、ドライバによる加減速操作(つまり、アクセル操作およびブレーキ操作)に応じて車両1の加減速度を制御する走行モードである。クルーズコントロールモードは、ドライバによる加減速操作によらずに車速を目標車速に維持する走行モードである。
さらに、制御部120は、クルーズコントロールモードとして、高速クルーズコントロールモードと、低速クルーズコントロールモードとを切り替えて実行可能である。低速クルーズコントロールモードでは、高速クルーズコントロールモードの目標車速よりも低い目標車速が用いられる。例えば、高速クルーズコントロールモードの目標車速は、20km/h以上115km/h以下の範囲内の速度に設定され、低速クルーズコントロールモードの目標車速は、2km/h以上15km/h以下の範囲内の速度に設定される。クルーズコントロールモードの目標車速は、例えば、ドライバによる入力操作により調整可能である。
例えば、車両1には、通常モードと、高速クルーズコントロールモードと、低速クルーズコントロールモードとのいずれの走行モードを実行させるかを選択するための入力装置(例えば、スイッチまたはボタン等)が設けられており、ドライバは、当該入力装置を操作することにより、走行モードを選択することができる。制御部120は、ドライバにより選択されている走行モードを実行する。なお、制御部120は、クルーズコントロールモードの実行中に、ドライバによりブレーキ操作等の特定の操作が行われた場合には、クルーズコントロールモードを停止し、通常モードへの切り替えを行う。
通常モードでは、制御部120は、車両1に付与される駆動力がアクセル開度に応じた駆動力となるように、駆動用モータ15の動作を制御する。それにより、車両1の加速度をドライバによるアクセル操作に応じて制御することができる。また、制御部120は、車両1に付与される制動力がブレーキ操作量に応じた制動力となるように、車両1に搭載されている液圧式のブレーキ装置等のブレーキ装置の動作を制御する。それにより、車両1の減速度をドライバによるブレーキ操作に応じて制御することができる。
クルーズコントロールモードでは、制御部120は、車速が目標車速に近づくように、駆動用モータ15のトルク指令値を算出し、駆動用モータ15のトルクをトルク指令値に制御する。例えば、制御部120は、車速に基づくフィードフォワード制御と、車速と目標車速との偏差に基づくフィードバック制御(例えば、PID制御)とを用いて駆動用モータ15のトルクを制御し、当該トルクを駆動用モータ15に指令するためのトルク指令値を算出する。この場合、算出されるトルク指令値Tcは、例えば、以下の式(1)によって表される。
Tc=Tf+Tp+Ti+Td ・・・(1)
式(1)において、Tfは、車速に基づくフィードフォワード制御の成分のトルクを示し、Tpは、車速と目標車速との偏差に基づく比例制御の成分(つまり、P成分)のトルクを示し、Tiは、上記偏差に基づく積分制御の成分(つまり、I成分)のトルクを示し、Tdは、上記偏差に基づく微分制御の成分(つまり、D成分)のトルクを示す。P成分のトルクTpは、具体的には、上記偏差にゲインを乗じて得られる。I成分のトルクTiは、具体的には、上記偏差の積分値にゲインを乗じて得られる。D成分のトルクTdは、具体的には、上記偏差の微分値にゲインを乗じて得られる。フィードフォワード制御の成分のトルクTfは、車両1が平坦路を走行している場合に、車速を目標車速に維持するために必要と見積もられるトルクに相当する。なお、平坦路は、勾配(つまり、車両1の進行方向での水平方向に対する傾斜)の絶対値が所定値以下の走行路を意味する。
なお、駆動用モータ15のトルク指令値Tcの算出方法は、式(1)を用いて算出される例に限定されない。例えば、上記の例からフィードフォワード制御が省略されてもよく(つまり、式(1)からトルクTfが省略されてもよく)、PID制御がPI制御に置き換えられてもよい(つまり、式(1)からトルクTdが省略されてもよい)。
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
上記のように、制御装置100の制御部120は、ドライバによる加減速操作によらずに車両1の車速を目標車速に維持するクルーズコントロールモードを実行可能である。ここで、制御部120は、クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させ、その後、車両1を進行方向に走行させる段差乗上制御を実行する。それにより、車輪11が段差の乗り上げに失敗した場合に、車輪11を段差に乗り上げさせるために必要な車速まで車両1を加速させることができる。ゆえに、クルーズコントロールの実行中に車両1による段差の乗り越えを適切に実現することが可能となる。なお、クルーズコントロールモードの実行中に制御部120により行われる段差乗上制御に関する処理の詳細については、後述する。
<制御装置の動作>
続いて、図3〜図5を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
上記のように、クルーズコントロールモードの実行中において、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合に上述した段差乗上制御(具体的には、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させ、その後、車両1を進行方向に走行させる制御)が実行されることによって、車両1による段差の乗り越えが適切に実現される。車輪11による段差の乗り上げの失敗は、車両1が段差を乗り越えて通過する状況において、車輪11が段差に押し当った状態となることによって生じる。
ここで、段差としては、路面上に設けられた帯状の突出部分(例えば、スピードバンプ等)、または、高低差のある路面どうしの継ぎ目(例えば、車道と歩道との継ぎ目等)がある。段差の種類によらずに、車輪11が段差に押し当った状態となり段差の乗り上げが失敗する場合がある。
特に、高低差のある路面どうしの継ぎ目が段差として連続している階段路(つまり、階段状の走行路)を車両1が走行する場合、車輪11による段差の乗り上げの失敗が生じやすい。図3は、車両1が階段路2を走行する様子を示す模式図である。階段路2の段差3の高さHは、例えば、10〜15cm程度であり、隣り合う段差3間の平坦路の進行方向の幅Wは、例えば、20〜40cm程度である。階段路2では、このような段差3が連続している。
車両1が階段路2を前進方向に走行する場合、図3に示されるように、車両1の前輪11a,11bおよび後輪11c,11dの双方が同時に段差3に押し当った状態(以下、前後輪同時押し当て状態)となり段差3の乗り上げに失敗することがある。前後輪同時押し当て状態では、車輪11を段差3に乗り上げさせるために必要な車速が高くなるので、車速が不足しやすく、車輪11による段差3の乗り上げの失敗が特に生じやすい。以下で説明する段差乗上制御によれば、前後輪同時押し当て状態で車輪11が段差3の乗り上げに失敗した場合であっても、車両1による段差の乗り越えを適切に実現することができる。
ここで、クルーズコントロールモードの目標車速が低いほど、車輪11を段差に乗り上げさせるために必要な車速に対して実際の車速が不足しやすくなり、車輪11が段差の乗り上げに失敗しやすくなってしまう。ゆえに、低速クルーズコントロールモードでは、高速クルーズコントロールモードと比べて、車輪11が段差の乗り上げに失敗しやすくなってしまう。よって、制御部120は、低速クルーズコントロールモードの実行中に、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御を実行することが好ましい。
以下では、低速クルーズコントロールモードの実行中に段差乗上制御が実行される例を説明するが、制御部120は、高速クルーズコントロールモードの実行中に、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御を実行してもよい。なお、制御部120は、高速クルーズコントロールモードの実行中に、段差乗上制御を実行しなくてもよい。
図4は、低速クルーズコントロールモードの実行中に制御部120により行われる段差乗上制御に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示される制御フローは、具体的には、低速クルーズコントロールモードの実行中において繰り返し実行される。
なお、図4に示されている処理以外の処理として、判定部121は、前輪11a,11bによる段差の乗り上げが行われているか否かの判定処理と、後輪11c,11dによる段差の乗り上げが行われているか否かの判定処理とを行う。これらの判定処理は、具体的には、後述するステップS101の判定処理でNOと判定される間、および、後述するステップS103の判定処理でNOと判定される間、繰り返し行われる。
判定部121は、例えば、前輪モータ回転数センサ205fの検出結果に基づいて取得される前輪11a,11bの加速度が急峻に変化した場合(具体的には、前輪11a,11bが段差に乗り上がることによって衝撃を受けていると判断し得る程度に変化した場合)、前輪11a,11bによる段差の乗り上げが行われていると判定することができる。また、判定部121は、例えば、後輪モータ回転数センサ205rの検出結果に基づいて取得される後輪11c,11dの加速度が急峻に変化した場合(具体的には、後輪11c,11dが段差に乗り上がることによって衝撃を受けていると判断し得る程度に変化した場合)、後輪11c,11dによる段差の乗り上げが行われていると判定することができる。
図4に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、判定部121は、車輪11が段差の乗り上げに失敗したか否かを判定する。車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定された場合(ステップS101/YES)、ステップS102に進む。一方、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定されなかった場合(ステップS101/NO)、ステップS101の判定処理が繰り返される。
ステップS101では、判定部121は、車輪11が段差の乗り上げに失敗したか否かを、例えば、駆動用モータ15の駆動状態および車両1の車速に基づいて判定する。例えば、判定部121は、駆動用モータ15が駆動されて車両1に駆動力が生じているにもかかわらず車速が閾値(例えば、0km/hの近傍の値)以下に維持されている状態が基準時間ΔT1以上継続した場合、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定する。基準時間ΔT1は、車両1に駆動力が生じているにもかかわらず車速が閾値に維持されている状態の解消の見込みがないと判断し得る適切な時間に設定される。
ここで、判定部121は、例えば、前輪モータ回転数センサ205fの検出結果および後輪モータ回転数センサ205rの検出結果を用いて、段差の乗り上げに失敗した車輪11が前輪11a,11bであるか後輪11c,11dであるかを判定することができる。具体的には、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定されたときに前輪モータ回転数センサ205fの検出結果に基づいて取得される前輪11a,11bの加速度が急峻に変化していた場合、判定部121は、前輪11a,11bが段差の乗り上げに失敗したと判定する。一方、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定されたときに後輪モータ回転数センサ205rの検出結果に基づいて取得される後輪11c,11dの加速度が急峻に変化していた場合、判定部121は、後輪11c,11dが段差の乗り上げに失敗したと判定する。
ここで、判定部121は、駆動用モータ15の駆動状態および車両1の車速のみならず、走行路の勾配も判定条件に追加して、車輪11が段差の乗り上げに失敗したか否かを判定することが好ましい。走行路が車両1の進行方向に対して上向きに傾いている場合(例えば、登坂路を走行している場合)には、車輪11が段差の乗り上げに失敗したか否かによらず、駆動用モータ15が駆動されて車両1に駆動力が生じているにもかかわらず車速が閾値以下に維持されている状態が生じ得る。ゆえに、例えば、判定部121は、駆動用モータ15が駆動されて車両1に駆動力が生じているにもかかわらず車速が閾値以下に維持されている状態が基準時間ΔT1以上継続した場合であっても、走行路が車両1の進行方向に対して上向きに傾いている場合には、車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定しなくてもよい。
車輪11が段差の乗り上げに失敗したか否かは、駆動用モータ15の駆動状態および車両1の車速を利用する上記の方法以外の方法によって行われてもよい。例えば、判定部121は、前輪11a,11bが段差に乗り上がったと判定された後、後輪11c,11dが当該段差に到達すると想定されるタイミングで後輪11c,11dが段差に乗り上がったと判定されない場合に、後輪11c,11dが段差の乗り上げに失敗したと判定してもよい。なお、上記タイミングは、前輪11a,11bと後輪11c,11dとの間の距離および車速等に基づいて特定され得る。
なお、車輪11が段差に乗り上がったことは、例えば、車輪11が段差に乗り上げ始めたことを意味してもよく、車輪11が段差に乗り上げ中(つまり、乗り上げ始めから乗り上げ完了までの間)であることを意味してもよく、車輪11による段差の乗り上げが完了したことを意味してもよい。
ステップS101でYESと判定された場合、ステップS102において、制御部120は、段差乗上制御を開始する。段差乗上制御は、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させ、その後、車両1を進行方向に走行させる制御である。なお、段差乗上制御における処理例の詳細については、図5を参照して後述する。
ステップS102の次、ステップS103において、判定部121は、車輪11(具体的には、ステップS101で段差の乗り上げに失敗したと判定された車輪11)による段差の乗り上げが完了したか否かを判定する。車輪11による段差の乗り上げが完了したと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS104に進み、制御部120は、段差乗上制御を終了し、図4に示される制御フローは終了する。一方、車輪11による段差の乗り上げが完了したと判定されなかった場合(ステップS103/NO)、ステップS103の判定処理が繰り返される。
ここで、図5を参照して、段差乗上制御における処理例の詳細について説明する。
図5は、前進方向に走行する車両1が段差乗上制御を利用して段差を乗り越えて通過する場合における各種状態量の推移の一例を示す図である。図5では、具体的には、各種状態量として、車速、前輪乗上フラグ、後輪乗上フラグ、段差乗上制御実行フラグおよび前輪乗上地点からの距離の推移が示されている。
前輪乗上フラグは、前輪11a,11bによる段差の乗り上げが行われていると判定される場合に1となり、前輪11a,11bによる段差の乗り上げが行われていないと判定される場合に0となる。後輪乗上フラグは、後輪11c,11dによる段差の乗り上げが行われていると判定される場合に1となり、後輪11c,11dによる段差の乗り上げが行われていないと判定される場合に0となる。段差乗上制御実行フラグは、段差乗上制御が実行されている場合に1となり、段差乗上制御が実行されていない場合に0となる。上記の各フラグは、例えば、制御装置100の記憶素子に記憶されており、制御部120により書き換えられる。
図5に示される例では、車両1が低速クルーズコントロールモードで前進方向に走行しており、時刻T1以前において、車速が目標車速となっている。そして、時刻T1において、前輪11a,11bが段差に到達し、時刻T1から時刻T2までの間、前輪11a,11bによる段差の乗り上げが行われる。制御部120は、前輪11a,11bが段差に乗り上げ始めた地点である前輪乗上地点からの距離(つまり、時刻T1から車両1が前進した距離)を算出し、制御装置100の記憶素子等に記憶させる。前輪乗上地点からの距離は、後述するように、段差乗上制御において利用される。
時刻T2の後の時刻T3において、後輪11c,11dが段差に到達する。ここで、時刻T1以降において、前輪11a,11bによる段差の乗り上げに伴って、車速が低下する。一旦低下した車速は、時刻T3以前において目標車速に向けて上昇するものの、時刻T3では目標車速まで到達せず目標車速よりも低くなっている。ゆえに、時刻T3において、後輪11c,11dを段差に乗り上げさせるために必要な車速に対して実際の車速が不足してしまう。よって、時刻T3において、後輪11c,11dが段差に押し当った状態となり、車速は、時刻T3から低下して始めて時刻T4において0km/hとなる。このように、後輪11c,11dは、段差の乗り上げに失敗する。
クルーズコントロールモードでは、車速が目標車速となるように駆動用モータ15の出力が制御されるので、時刻T4以降において、車両1に駆動力が生じているにもかかわらず車速が0km/hである状態が継続する。そして、時刻T4から基準時間ΔT1が経過した時刻T5において、後輪11c,11dが段差の乗り上げに失敗したと判定される。よって、時刻T5において、段差乗上制御実行フラグが1となり、段差乗上制御が開始する。
段差乗上制御が開始すると、まず、制御部120は、車両1を進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)に走行させる。図5に示される例では、時刻T5から時刻T6までの間、車速が負の値となり、車両1が後退する。
制御部120は、段差乗上制御において、前輪11a,11bが直近で段差に乗り上がった位置(例えば、前輪乗上地点)からの進行方向の走行距離よりも短い距離だけ車両1を進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)に走行させる。図5に示される例では、車両1は、時刻T5から時刻T6までの間、時刻T5における前輪乗上地点からの距離L1よりも短い距離だけ後退方向に走行している。それにより、前輪11a,11bが一旦乗り上げた段差から落下することを抑制することができる。
なお、前輪11a,11bが直近で段差に乗り上がった位置からの進行方向の走行距離は、前輪11a,11bが段差に乗り上げ始めた地点である前輪乗上地点からの距離L1(つまり、時刻T1から車両1が前進した距離)であってもよく、前輪11a,11bによる段差の乗り上げが完了した地点からの距離L2(つまり、時刻T2から車両1が前進した距離)であってもよい。
ここで、車両1を進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)に走行させるときの車速が過度に高い場合、前輪11a,11bが一旦乗り上げた段差から落下することに対する不安感をドライバに与えるおそれがある。ゆえに、制御部120は、例えば、車両1をアクセル操作によらずに走行させるクリープ走行制御を通常モードにおいて実行可能である場合、段差乗上制御において、クリープ走行制御を実行する場合と比較して低車速で車両1を進行方向に対して逆方向に走行させることが好ましい。それにより、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させるときの車速が過度に高くなることを抑制することができる。
クリープ走行制御は、例えば、ブレーキ操作により車両1が停車している時にドライバがブレーキ操作を解除した場合に開始され、オートマチック式のエンジン車においてクリープ現象が生じる際の車速程度(例えば、6km/h程度)の目標速度で車両1を自動で走行させる制御である。例えば、クリープ走行制御の目標車速が6km/hである場合、制御部120は、段差乗上制御において、クリープ走行制御の目標車速よりも低い6km/h未満の車速で、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させることが好ましい。
また、制御部120は、段差乗上制御において、車両1を進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)に走行させるときに、当該逆方向に走行した距離が長くなるにつれて、車両1に生じる駆動力(つまり、車両1を逆方向に走行させるための駆動力)を低下させることが好ましい。それにより、進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)への車両1の走行が完了して一旦停車する際に急ブレーキが生じることを抑制することができる。ゆえに、ドライバの快適性を確保することができる。
段差乗上制御では、進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)への車両1の走行が完了した後に、制御部120は、車両1を進行方向(図5の例では、前進方向)に走行させる。図5に示される例では、時刻T6の後の時刻T7以降において、車速が上昇し、車両1が前進する。その後、時刻T8において、車速が目標車速に到達するとともに、後輪11c,11dが段差に到達し、時刻T8から時刻T9までの間、後輪11c,11dによる段差の乗り上げが行われる。
上記のように、段差乗上制御では、車両1を進行方向に対して逆方向(図5の例では、後退方向)に走行させた後に、車両1を進行方向(図5の例では、前進方向)に走行させる。それにより、車両1の助走距離を確保した上で、車両1を加速させることができる。ゆえに、車輪11が段差の乗り上げに失敗した場合に、車輪11を段差に乗り上げさせるために必要な車速まで車両1を加速させることができる。よって、クルーズコントロールの実行中に車両1による段差の乗り越えを適切に実現することができる。
ここで、車両1を加速させやすくして段差の乗り上げに失敗した車輪11(図5の例では、後輪11c,11d)を段差に乗り上げさせやすくするために、制御部120は、段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させるときに、車両1の加速性に関するパラメータを段差乗上制御の非実行時から異ならせてもよい。
例えば、制御部120は、段差乗上制御において、段差乗上制御の非実行時(つまり、低速クルーズコントロールモードの実行中に段差乗上制御が実行されていない時)と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの目標車速を高くしてもよい。それにより、段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させる際に、より高い車速まで車両1を加速させることができる。具体的には、制御部120は、段差の乗り上げに失敗した車輪11(図5の例では、後輪11c,11d)を段差に乗り上げさせることをより確実に実現し得る程度に、目標車速を段差乗上制御の非実行時と比べて高くする。この場合の目標車速は、段差の高さの平均値、路面の摩擦係数の平均値、および、車両1の仕様等に応じて適宜設定され得る。
また、例えば、制御部120は、段差乗上制御において、段差乗上制御の非実行時と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの進行方向の加速度を大きくしてもよい。それにより、段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させる際に、車両1を目標車速まで加速させやすくすることができる。具体的には、制御部120は、段差の乗り上げに失敗した車輪11(図5の例では、後輪11c,11d)を段差に乗り上げさせることをより確実に実現し得る程度に、進行方向の加速度を段差乗上制御の非実行時と比べて大きくする。この場合の進行方向の加速度は、段差の高さの平均値、路面の摩擦係数の平均値、および、車両1の仕様等に応じて適宜設定され得る。
車両1の加速性に関するパラメータとしての目標車速または進行方向の加速度を上記のように段差乗上制御の非実行時から異ならせることによって、段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させるときの車両1の加速性を向上させることができる。ゆえに、段差の乗り上げに失敗した車輪11(図5の例では、後輪11c,11d)を段差に乗り上げさせやすくすることができる。
時刻T9において、後輪11c,11dによる段差の乗り上げが完了したと判定される。よって、時刻T9において、段差乗上制御実行フラグが0となり、段差乗上制御が終了する。
上記では、後輪11c,11dが段差の乗り上げに失敗したと判定された場合に段差乗上制御が実行される例を説明したが、制御部120は、前輪11a,11bが段差の乗り上げに失敗したと判定された場合に段差乗上制御を実行してもよく、前輪11a,11bおよび後輪11c,11dの双方が段差の乗り上げに失敗したと判定された場合(例えば、前後輪同時押し当て状態が生じた場合)に段差乗上制御を実行してもよい。
また、上記では、車両1が前進方向に走行する場合に、段差乗上制御が実行される例を説明したが、制御部120は、車両1が後退方向に走行する場合に段差乗上制御を実行してもよい。その場合、制御部120は、段差乗上制御において、車両1を進行方向に対して逆方向である前進方向に走行させ、その後、車両1を進行方向である後退方向に走行させる。
また、上記では、段差乗上制御を実行した場合に、車輪11が段差の乗り上げに成功した例を説明したが、段差乗上制御を実行したにもかかわらず車輪11が段差の乗り上げに再度失敗する場合が想定される。この場合、制御部120は、段差乗上制御を再度実行してもよい。それにより、路面状況等の外乱による影響等に起因して前回の段差乗上制御において車輪11が段差の乗り上げに失敗した場合であっても、再度実行される段差乗上制御によって車輪11を段差に乗り上げさせることができる。
ここで、前回の段差乗上制御において段差の乗り上げに失敗した車輪11を、再度実行される段差乗上制御によって段差に乗り上げさせやすくするために、制御部120は、再度実行される段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させるときに、車両1の加速性に関するパラメータを前回の段差乗上制御から異ならせてもよい。
例えば、制御部120は、再度実行される段差乗上制御において、前回の段差乗上制御と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの目標車速を高くしてもよい。それにより、再度実行される段差乗上制御において、より高い車速まで車両1を加速させることができる。この場合の目標車速は、段差の乗り上げに失敗した車輪11を段差に乗り上げさせることをより確実に実現し得る程度の速度に設定され、例えば、段差の高さの平均値、路面の摩擦係数の平均値、および、車両1の仕様等に応じて適宜設定され得る。
また、例えば、制御部120は、再度実行される段差乗上制御において、前回の段差乗上制御と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの進行方向の加速度を大きくしてもよい。それにより、再度実行される段差乗上制御において、車両1を目標車速まで加速させやすくすることができる。この場合の進行方向の加速度は、段差の乗り上げに失敗した車輪11を段差に乗り上げさせることをより確実に実現し得る程度の加速度に設定され、例えば、段差の高さの平均値、路面の摩擦係数の平均値、および、車両1の仕様等に応じて適宜設定され得る。
車両1の加速性に関するパラメータとしての目標車速または進行方向の加速度を上記のように前回の段差乗上制御から異ならせることによって、再度実行される段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させるときの車両1の加速性を向上させることができる。ゆえに、前回の段差乗上制御において段差の乗り上げに失敗した車輪11を、再度実行される段差乗上制御によって段差に乗り上げさせやすくすることができる。
<制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させ、その後、車両1を進行方向に走行させる段差乗上制御を実行する。それにより、車両1の助走距離を確保した上で、車両1を加速させることができる。ゆえに、車輪11が段差の乗り上げに失敗した場合に、車輪11を段差に乗り上げさせるために必要な車速まで車両1を加速させることができる。よって、クルーズコントロールの実行中に車両1による段差の乗り越えを適切に実現することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、段差乗上制御において、段差乗上制御の非実行時と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの目標車速を高くすることが好ましい。それにより、段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させる際に、より高い車速まで車両1を加速させることができる。ゆえに、段差の乗り上げに失敗した車輪11(図5の例では、後輪11c,11d)を段差に乗り上げさせやすくすることができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、段差乗上制御において、段差乗上制御の非実行時と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの進行方向の加速度を大きくすることが好ましい。それにより、段差乗上制御において、車両1を進行方向に走行させる際に、車両1を目標車速まで加速させやすくすることができる。ゆえに、段差の乗り上げに失敗した車輪11(図5の例では、後輪11c,11d)を段差に乗り上げさせやすくすることができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の前輪11a,11bまたは後輪11c,11dのうちの進行方向に対して逆方向側の車輪(例えば、前進時の後輪11c,11d)が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御において、車両の前輪11a,11bまたは後輪11c,11dのうちの進行方向側の車輪(例えば、前進時の前輪11a,11b)が直近で段差に乗り上がった位置からの進行方向の走行距離よりも短い距離だけ車両1を進行方向に対して逆方向に走行させることが好ましい。それにより、前輪11a,11bまたは後輪11c,11dのうちの進行方向側の車輪(例えば、前進時の前輪11a,11b)が一旦乗り上げた段差から落下することを抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の前輪11a,11bまたは後輪11c,11dのうちの進行方向に対して逆方向側の車輪(例えば、前進時の後輪11c,11d)が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御において、クリープ走行制御を実行する場合と比較して低車速で車両1を進行方向に対して逆方向に走行させることが好ましい。それにより、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させるときの車速が過度に高くなることを抑制することができる。ゆえに、前輪11a,11bまたは後輪11c,11dのうちの進行方向側の車輪(例えば、前進時の前輪11a,11b)が一旦乗り上げた段差から落下することに対する不安感がドライバに与えられることを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の前輪11a,11bまたは後輪11c,11dのうちの進行方向に対して逆方向側の車輪(例えば、前進時の後輪11c,11d)が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御において、車両1を進行方向に対して逆方向に走行させるときに、当該逆方向に走行した距離が長くなるにつれて車両1に生じる駆動力を低下させることが好ましい。それにより、進行方向に対して逆方向への車両1の走行が完了して一旦停車する際に急ブレーキが生じることを抑制することができる。ゆえに、ドライバの快適性を確保することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、段差乗上制御を実行したにもかかわらず車両1の車輪11が段差の乗り上げに再度失敗したと判定した場合、段差乗上制御を再度実行することが好ましい。それにより、再度実行される段差乗上制御において、より高い車速まで車両1を加速させることができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、再度実行される段差乗上制御において、前回の段差乗上制御と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの目標車速を高くすることが好ましい。それにより、再度実行される段差乗上制御において、より高い車速まで車両1を加速させることができる。ゆえに、前回の段差乗上制御において段差の乗り上げに失敗した車輪11を、再度実行される段差乗上制御によって段差に乗り上げさせやすくすることができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、再度実行される段差乗上制御において、前回の段差乗上制御と比べて、車両1を進行方向に走行させるときの進行方向の加速度を大きくすることが好ましい。それにより、再度実行される段差乗上制御において、車両1を目標車速まで加速させやすくすることができる。ゆえに、前回の段差乗上制御において段差の乗り上げに失敗した車輪11を、再度実行される段差乗上制御によって段差に乗り上げさせやすくすることができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、低速クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御を実行することが好ましい。上述したように、低速クルーズコントロールモードでは、高速クルーズコントロールモードと比べて、目標車速が低いことに起因して、車輪11が段差の乗り上げに失敗しやすくなってしまう。ゆえに、低速クルーズコントロールモードの実行中に、車両1の車輪11が段差の乗り上げに失敗したと判定した場合、段差乗上制御を実行することによって、クルーズコントロールの実行中に車両1による段差の乗り越えを適切に実現する効果を有効に活用することができる。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、上記では、駆動源として前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rを備える電気車両である車両1を説明したが、本発明に係る制御装置が搭載される車両の構成は車両1に特に限定されない。例えば、本発明に係る制御装置が搭載される車両は、互いに異なる駆動用モータが各車輪に設けられている(つまり、4つの駆動用モータを備えている)電気車両であってもよく、駆動源として駆動用モータおよびエンジンを備えるハイブリッド車両であってもよく、駆動源としてエンジンのみを備えるエンジン車であってもよい。例えば、エンジン車では、エンジンおよびトランスミッションの動作を制御することによって、段差乗上制御を実行可能である。また、例えば、本発明に係る制御装置が搭載される車両は、図1を参照して説明した車両1に対して構成要素の追加、変更または削除を施した車両であってもよい。
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。