JP2021108552A - 神経核内封入体病患者の検出方法 - Google Patents

神経核内封入体病患者の検出方法 Download PDF

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【課題】神経核内封入体病の遺伝的原因であるNOTCH2NLC遺伝子内の繰り返し配列の異常伸長を簡便に検出できる新規な手段を提供すること。【解決手段】本願発明者らは、鋭意研究の結果、特定のプライマーミックスを用いたリピートプライムドPCRにより、NOTCH2NLC遺伝子のエクソン1の5'非翻訳領域内に存在する繰り返し配列が異常伸長しているか否かを簡便に検出できる検出法を開発し、さらに、蛍光アンプリコン長分析によってトリプレットの繰り返し回数を簡便に算出できることを見出した。さらに、認知症を主症状とするNIID患者においてはGGC繰り返しのみが異常伸長しているのに対し、筋力低下を主症状とするNIID患者においてはGGC繰り返しの伸長に加えGGA繰り返し配列も伸長しており、GGA繰り返し配列の伸長の有無に基づいて主症状を判定できることも見出した。【選択図】図3

Description

本発明は、NOTCH2NLC遺伝子内の繰り返し配列の異常伸長を検出することにより神経核内封入体病患者を検出する方法に関する。
神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)は、四肢の筋力低下や認知症などの高次脳機能障害が認められる神経難病である。神経組織や一般臓器の細胞の核内に封入体と呼ばれる凝集体が認められる。これらの封入体は、ヘマトキシリンエオジン染色でエオジン好性であり、抗ユビキチン抗体及び抗p62抗体に免疫反応性があり、超微細構造検査上では、微細な直線フィラメントのメッシュで構成された境界膜のない局限性の塊として観察される。
NIIDの非常に多様な臨床症状により、診断は長い間困難であったが、近年、皮膚生検による診断が可能であることが判明し、患者数が増加している。特に、高齢で認知症を発症する例の報告が多いことから、認知症患者の一定の割合をNIID患者が占めているものと推察されている。本疾患の遺伝学的な原因は不明であったが、2019年に本願発明者らのグループ及び他のグループにより、NOTCH2NLC遺伝子(NBPF19遺伝子とも呼ばれる)の5'非翻訳領域に存在するGGC繰り返し配列がNIID患者において異常伸長していることが見いだされた。中国人NIID患者においても同様のGGC繰り返し配列の伸長が確認されている。
Lindenberg, R., Rubinstein, L. J., Herman, M. M. & Haydon, G. B. A light and electron microscopy study of an unusual widespread nuclear inclusion body disease. A possible residuum of an old herpesvirus infection. Acta Neuropathol. 10, 54-73 (1968). Schuffler, M. D., Bird, T. D., Sumi, S. M. & Cook, A. A familial neuronal disease presenting as intestinal pseudoobstruction. Gastroenterology 75, 889-898 (1978). Michaud, J. & Gilbert, J. J. Multiple system atrophy with neuronal intranuclear hyaline inclusions. Report of a new case with light and electron microscopic studies. Acta Neuropathol. (Berl.) 54, 113-119 (1981). Munoz-Garcia, D. & Ludwin, S. K. Adult-onset neuronal intranuclear hyaline inclusion disease. Neurology 36, 785-790 (1986). Oyer, C. E., Cortez, S., O’Shea, P. & Popovic, M. Cardiomyopathy and myocyte intranuclear inclusions in neuronal intranuclear inclusion disease: a case report. Hum. Pathol. 22, 722-724 (1991). Takahashi-Fujigasaki, J. Neuronal intranuclear hyaline inclusion disease. Neuropathology 23, 351-359 (2003). Sone, J. et al. Neuronal intranuclear hyaline inclusion disease showing motor-sensory and autonomic neuropathy. Neurology 65, 1538-1543 (2005). Liu, Y. et al. Inclusion-positive cell types in adult-onset intranuclear inclusion body disease: implications for clinical diagnosis. Acta Neuropathol. 116, 615-623 (2008). Sone, J. et al. Skin biopsy is useful for the antemortem diagnosis of neuronal intranuclear inclusion disease. Neurology 76, 1372-1376 (2011). Sone, J. et al. Neuronal intranuclear inclusion disease cases with leukoencephalopathy diagnosed via skin biopsy. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 85, 354-356 (2014). Sone, J. et al. Clinicopathological features of adult-onset neuronal intranuclear inclusion disease. Brain 139, 3170-3186 (2016). Sone, J. et al. Reply: Neuronal intranuclear (hyaline) inclusion disease and fragile X-associated tremor/ataxia syndrome: a morphological and molecular dilemma. Brain 140, e52 (2017). Janota, I. Widespread intranuclear neuronal corpuscles (Marinesco bodies) associated with a familial spinal degeneration with cranial and peripheral nerve involvement. Neuropathol. Appl. Neurobiol. 5, 311-317 (1979). Sone, J. et al. Long-read sequencing identifies GGC repeat expansion in human-specific NOTCH2NLC associated with neuronal intranuclear inclusion disease. bioRxiv, January 09, 2019, doi: https://doi.org/10.1101/515635 Hiroyuki Ishiura et al. Noncoding CGG repeat expansions in neuronal intranuclear inclusion disease, oculopharyngodistal myopathy and an overlapping disease. Nature Genetics. VOL 51, AUGUST 2019, 1222-1232. Yun Tian et al. Expansion of Human-Specific GGC Repeat in Neuronal Intranuclear Inclusion Disease-Related Disorders. The American Journal of Human Genetics 105, 166-176, July 3, 2019. Jianwen Deng et al. Long-read sequencing identified repeat expansions in the 5'UTR of the NOTCH2NLC gene from Chinese patients with neuronal intranuclear inclusion disease. J Med Genet 2019;56:758-764. doi:10.1136/jmedgenet-2019-106268.
本発明は、NIIDの遺伝的原因であるNOTCH2NLC遺伝子内の繰り返し配列の異常伸長を簡便に検出できる新規な手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、特定のプライマーミックスを用いたリピートプライムドPCR(repeat primed PCR)により、NOTCH2NLC遺伝子のエクソン1の5'非翻訳領域内に存在する繰り返し配列が異常伸長しているか否かを簡便に検出できる検出法を開発し、さらに、蛍光アンプリコン長分析によってトリプレットの繰り返し回数を簡便に算出できることを見出した。さらに、認知症を主症状とするNIID患者においてはGGC繰り返しのみが異常伸長しているのに対し、筋力低下を主症状とするNIID患者においてはGGC繰り返しの伸長に加えGGA繰り返し配列も伸長しており、GGA繰り返し配列の伸長の有無に基づいて主症状を判定できることも見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、配列番号3〜5に示す塩基配列である3種のプライマーを含むプライマーミックスを用いたリピートプライムドPCRにより、被検者由来のゲノムDNAからNOTCH2NLC遺伝子内の繰り返し配列領域を増幅し、増幅産物を電気泳動したエレクトロフェログラムのシグナルパターンに基づいて繰り返し配列の伸長を検出することを含む方法であり、以下の態様を包含する。
(1) NOTCH2NLC遺伝子のエクソン1に存在するGGN(NはC又はA)繰り返し配列の伸長を指標とする、神経核内封入体病患者の検出方法であって、被検者から分離されたゲノムDNAを鋳型とし、(蛍光ラベル1)-GGCATTTGCGCCTGTGCTTCGGACCGT(配列番号3)、CAGGAAACAGCTATGACCTCCTCCGCCGCCGCCGCC(配列番号4)及びCAGGAAACAGCTATGACC(配列番号5)の塩基配列である3種のプライマーを含むプライマーミックスを用いたリピートプライムドPCRにより、GGN繰り返し配列を含む領域を増幅する工程と、増幅産物を電気泳動してエレクトロフェログラムを取得する工程を含み、エレクトロフェログラムにおいて、200bpを超える領域まで漸減しながら進展するシグナルパターンが認められる場合に、当該被検者におけるGGN繰り返し配列の伸長が検出され、当該被検者が神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示される、方法。
(2) GGN繰り返し配列の伸長が検出された被検者について、さらに、該被検者から分離されたゲノムDNAを鋳型とし、(蛍光ラベル2)-CATTTGCGCCTGTGCTTCGGAC(配列番号6)の塩基配列であるフォワードプライマー及びAGAGCGGCGCAGGGCGGGCATCTT(配列番号7)の塩基配列であるリバースプライマーを用いたPCRにより、GGN繰り返し配列を含む領域を増幅し、増幅産物を電気泳動してエレクトロフェログラムを取得し、エレクトロフェログラムにおいて、200bp近傍のGGN繰り返し配列非伸長アレルとは独立してより鎖長の長い領域に現れるシグナルのピーク(そのようなピークが複数現れた場合には、最もシグナル強度の高いピーク)が位置する鎖長を、当該被検者における伸長したGGN繰り返し配列のサイズとして、GGN繰り返し回数を算出することを含む、(1)記載の方法。
(3) GGN繰り返し領域の配列を決定することをさらに含み、GGN繰り返し配列中のGGA繰り返し単位数が5以下であり、かつ、GGC繰り返し配列が伸長している場合に、当該被検者は認知症を主症状とする神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示され、GGN繰り返し配列中のGGA繰り返し単位数が5を超え、かつ、GGC繰り返し配列が伸長している場合に、当該被検者は筋力低下を主症状とする神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示される、(1)又は(2)記載の方法。
(4) GGN繰り返し領域の配列の決定において、被検者から分離されたゲノムDNAよりGGN繰り返し領域を切り出して濃縮し、濃縮された繰り返し領域の配列を決定する、(3)記載の方法。
本発明により、NIIDの遺伝的原因であるNOTCH2NLC遺伝子内の繰り返し配列の異常伸長をPCRにより簡便に検出可能となる。さらに、異常伸長にGGA配列の伸長が含まれているか否かに基づいて、NIID患者が主症状として認知症を発症するか否かを認知症発症前に検出することも可能となる。解析検体としては、末梢血等の採取が容易な検体を用いることができるので、本発明の方法による遺伝子診断は皮膚生検と比較して侵襲性が少なく、皮膚生検に先行して実施しやすい。原因遺伝子が判明したことで正確な診断(医師による診断の補助)が可能となり、病態の集積・解明、治療法の開発へとつながることが期待される。
家系図。黒と白の記号は、2名以上の罹患家系員を有する家族性NIIDの罹患者及び非罹患者をそれぞれ表す。アスタリスクは、剖検により病理診断された患者を示す。 NIID患者の組織病理学的特徴と脳のMRI所見。a、bは、ヘマトキシリンエオジン染色で観察された核内封入体。頸髄の前角ニューロン(F1-8)(a)及び大脳皮質の星状細胞(孤発例)(b)。c〜fは、抗ユビキチン抗体による免疫染色。中心前回(F1-6)(c)、腸間膜神経叢(孤発例)(d)、副腎皮質(F1-1)(e)及び腎尿細管(F1-1)(f)。g、hは、核内封入体の電子顕微鏡写真。頸髄の星状細胞(F1-6)(g)及び皮膚線維芽細胞(F1-14)(h)。i〜lは、抗ユビキチン抗体免疫染色による皮膚生検所見。線維芽細胞(F4-1)(i)、線維芽細胞(F7-2)(j)、汗腺(孤発例)(k)及び脂肪細胞(孤発例)(l)。m〜pは、脳MRI所見。T2強調画像(F1-1)(m)、DWI画像(F3-1)(n)、DWI画像(F4-2)(o)及びDWI画像(孤発例)(p)。スケールバーは10μm(a〜f及びi〜l)及び2μm(g、h)。 NIID患者及びコントロールの遺伝学的研究。a; 家系1の連鎖解析により、対数オッズスコアの最大値4.21で1p22.1-q21.3に58.1 Mbの連鎖領域が同定された。b; NOTCH2NLC遺伝子の概略図。NM_001364012(アイソフォーム1、配列番号1)及びNM_001364013(アイソフォーム2、配列番号2)のエクソン1で、疾患に関連したリピート伸長が同定された。アスタリスク(*)で示したプライマーはRP-PCRに、シャープ(#)で示したプライマーは蛍光アンプリコン長分析に使用したプライマーである。c; RP-PCRのエレクトロフェログラム。上のパネルは、非罹患者F1-3におけるリピート伸長の不存在を示す。下のパネルは、NIID患者F1-6におけるリピート伸長の鋸歯状テールパターンを示す。d; NIID患者の蛍光アンプリコン長分析によって検出されたNOTCH2NLCのリピート長の分布(家族性症例では45アレル、孤発症例では79アレル)。アレル数は加算的。e; 正常コントロール(450アレル)のNOTCH2NLCのリピート長の分布。コントロール1例で61リピート単位の増加が見つかった(矢印)。 MAFFTを使用したマルチプルアライメントのNOTCH2NLCリピートコンセンサス配列。正常アレル間に多型があることに注意。F1-1、F2-2、及びF9-1は家族性患者。個人IDにアスタリスクが付いている患者は、筋力低下優位の表現型を示す。個人IDにアスタリスクのない患者は、認知症優位の表現型を示す。「Expansion」は繰り返し伸長を伴うアレル、「Normal」は正常アレル。 MAFFTを使用したマルチプルアライメントのNOTCH2NLCリピートコンセンサス配列。F1-8, F3-1, F4-2, F7-1, F8-1, 及びFD-2は家族性患者であり、3619, 3624 及び3629は孤発性患者である。個人IDにアスタリスクが付いている患者は、認知症に加えて筋力低下優位の表現型を示す。個人IDにアスタリスクのない患者は、認知症優位の表現型を示す。ナノポアシークエンシングのカバレッジは高かったが、FD-2は繰り返し伸長のないアレルを有していなかった。「Expansion」は繰り返し伸長を伴うアレル、「Normal」は正常アレル。 家系1のNIID患者2名(F1-16及びF1-14)及びNIIDを持たない者2名(F1-7及びF1-18)の線維芽細胞におけるNOTCH2NLC遺伝子のRNAシークエンス解析。a; NOTCH2NLCのセンス鎖からの正規化発現レベル。コントロール群(n = 2)及び患者群(n = 2)間の統計的有意性は、負の二項一般化モデルとDESeq2を使用したWald検定で確認した。差は有意ではなかった(P = 0.53)。b; NOTCH2NLCの各エクソンでの正規化されたリード深度。255 MQのリードのみを示す。複数にマップされたリードは表示されなかったため、エクソン2及び3にマップされたリードはほとんどなかった。c; NOTCH2NLパラログの最初のエクソンの上流領域におけるセンス鎖及びアンチセンス鎖からの正規化されたリード深度。255 MQのリードのみを示す。フォワードストランドとリバースストランドは、それぞれ青と紫の色で表示される。リバースストランドがNOTCH2NLA及びNOTCH2NLBにとってセンスであり、フォワードストランドがNOTCH2NLC及びNOTCH2NLRにとってセンスである。d; NOTCH2NLC及びポリアデニル化シグナル(PAS)のセンス鎖及びアンチセンス鎖由来の0 MQを超えるリード。PASサイトと順方向(F)及び逆方向(R)鎖のシークエンスを示す(左パネル)。GGCタンデムリピート近傍におけるNOTCH2NLC-ASリードのIGV画像(右パネル)。e; NIID罹患者及び非罹患者の線維芽細胞から全RNAを抽出した。RNAシークエンシングにより検出されたNOTCH2NLC遺伝子中のアンチセンスRNAの領域に対してRT-PCR(逆転写を伴うPCR)を2回実施した。ゲル画像はフルスキャン画像(データ示さず)から切り取った。「RT」は逆転写。 蛍光アンプリコン長分析により検出した、家系1の患者におけるNOTCH2NLC遺伝子の伸長リピートの長さ。縦軸がシグナル強度、横軸はPCR産物の長さを表す。リピート伸長したアレルは、300 bpを超える鎖長の異常なピークとして示される。複数のリピート伸長アレルのうちで最も高い蛍光ピーク(図中の矢印)の鎖長を当該患者の伸長アレル長とみなした。非伸長アレル由来のPCR産物は200 bp付近にあるが、このPCR産物は伸長アレル由来のPCR産物よりもはるかに量が多いため、ピークの頂上は示されなかった。F1-16の非伸長アレルは、アーチファクトと思われる少数のピークを除き、アンプリコン長分析では認められなかった。
本発明の方法では、以下の3種のプライマーを含むプライマーミックスを使用してリピートプライムドPCR(RP-PCR)を行なうことにより、鋳型とする被検者由来のゲノムDNAからGGN(NはC又はA)繰り返し配列を含む領域を増幅する。配列番号4の塩基配列のプライマーが、GGN繰り返し配列部分にアニールするプライマーである。配列番号3の塩基配列のプライマーには蛍光ラベル1による標識が施されるが、蛍光ラベル1としては、FAM、TET、VIC、HEX、NED、PET等の、従来より用いられている蛍光色素を用いることができる。
(蛍光ラベル1)-GGCATTTGCGCCTGTGCTTCGGACCGT(配列番号3)
CAGGAAACAGCTATGACCTCCTCCGCCGCCGCCGCC(配列番号4)
CAGGAAACAGCTATGACC(配列番号5)
RP-PCRにおいて鋳型とするゲノムDNAは、被検者から分離されたゲノムDNAである。ゲノムDNAは、末梢血や口腔粘膜スワブ等から常法により容易に調製することができる。
被検者は、典型的にはヒトである。1つの態様において、被検者は、神経核内封入体病の疑いがあり、確定診断が求められる患者である。さらなる1つの態様において、被検者は、血縁者に神経核内封入体病患者が存在し、神経核内封入体病を発症するおそれがあるかどうかを調べることが望まれる者である。さらなる1つの態様において、被検者は、認知症を発症している患者である。
PCR反応液は、上記のプライマーミックスを各プライマー0.3μM程度、ヌクレオチドとしてdATP、dTTP、dCTP及び7-デアザ-dGTP(7-Deaza-2'-deoxy-guanosine-5'-triphosphate)を各200μM程度、ゲノムDNAを100 ng程度で調製すればよい。DNAポリメラーゼは、GCリッチな配列やリピート配列の増幅に適した高正確性PCR酵素が知られており、市販品も存在するので(例えば、タカラバイオのPrimeSTAR GXL)、そのようなDNAポリメラーゼを好ましく使用することができる。
PCRの熱サイクル反応は、2段階のサイクル反応とし、1段階目のサイクル反応ではアニーリング温度をサイクルごとに0.5℃程度下げる設定で行なうことが好ましい。下記実施例では、98℃で10分間の熱変性後、98℃30秒−66℃1分、サイクル当たり0.5℃低下−68℃8分の反応を16サイクル行ない、次いで98℃30秒−58℃1分−68℃8分の反応を29サイクル行なっているが、この反応条件を基本として温度設定や反応時間、サイクル数に適宜変更を加えてよい。
繰り返し領域を増幅後、増幅産物を電気泳動してエレクトロフェログラムを取得する。電気泳動は、キャピラリー電気泳動により行なうことが好ましい。図3cの上段は健常者についてのRP-PCR解析結果のエレクトロフェログラムの一例であり、下段が神経核内封入体病患者についてのRP-PCR解析結果のエレクトロフェログラムの一例である。異常な繰り返し伸長がある場合、下段に示すような、鋸歯状のテイルパターン、すなわち、200bpを超える領域まで漸減しながら進展するシグナルパターンが得られる。被検者のRP-PCR解析の結果、このようなシグナルパターンが認められた場合には、当該被検者がGGN繰り返し配列の伸長を有することが検出され、当該被検者が神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示されたこととなる。
GGN繰り返し配列の伸長が検出された被検者について、GGNトリプレットの繰り返し回数を調べてもよい。繰り返し回数は、特定のプライマーセットを用いた蛍光アンプリコン長分析により算出することができる。
蛍光アンプリコン長分析では、まず、被検者由来のゲノムDNAより、GGN繰り返し配列を含む領域をPCRにより増幅する。このPCRにおいては、(蛍光ラベル2)-CATTTGCGCCTGTGCTTCGGAC(配列番号6)の塩基配列であるフォワードプライマー及びAGAGCGGCGCAGGGCGGGCATCTT(配列番号7)の塩基配列であるリバースプライマーのセットを好ましく用いることができる。フォワードプライマーに付加する蛍光ラベル2には、FAM、TET、VIC、HEX、NED、PET等の、従来より用いられている蛍光色素を用いることができる。RP-PCRにおいて使用するプライマーの蛍光ラベル1と蛍光ラベル2は、同一でも異なっていてもよいが、一般には異なる蛍光ラベルを用いることが好ましい。
PCR反応液は、RP-PCRと同様の組成でよいが、プライマー濃度や鋳型とするゲノムDNAの使用量等を適宜変更してもよい。PCRの熱サイクル反応は、RP-PCRと同様の条件で行なってもよいし、温度設定や反応時間、サイクル数に適宜変更を加えてよい。
次いで、PCR産物を電気泳動してエレクトロフェログラムを取得する。この際の電気泳動もキャピラリー電気泳動により行なうことが好ましい。図6は、蛍光アンプリコン長分析で得られる神経核内封入体病患者(F1-1, F1-6, F1-8, F1-10, F1-11, F1-13, F1-14, F1-16, F1-20)及び非罹患者(F1-2)のエレクトロフェログラムの例である。配列番号6及び配列番号7に示す塩基配列のプライマーセットを用いた場合、200 bp付近に異常伸長の無い正常アレル由来のPCR産物のピークが現れる。被検者が、GGN繰り返し配列が異常伸長したアレルを有しない場合、図6のF1-2のように、200 bp近傍のピークが確認され、これを超える鎖長のPCR産物は検出されない。一方、被検者がGGN繰り返し配列が異常伸長したアレルを有する場合、図6のF1-1〜F1-20のように、200 bp近傍のGGN繰り返し配列非伸長アレルとは独立して、より鎖長の長い領域に、すなわち250〜300 bp以上のサイズの領域に、PCR産物のシグナルのピークが少なくとも1つ現れる。GGN繰り返し領域では様々なサイズの増幅産物が生じるが、理論的には正しいサイズの増幅産物が最も多く生じることになるので、200 bp近傍の非伸長アレルとは独立してより鎖長の長い領域に現れるシグナルのピーク(そのようなピークが複数現れた場合には、最もシグナル強度の高いピーク)が位置する鎖長を、その被検者における異常伸長したGGN繰り返し配列のサイズとして理解することができる。このようにして、被検者のGGN繰り返し異常伸長領域のサイズを決定し、このサイズに基づいてGGN繰り返し回数を算出することができる。電気泳動後のデータの分析は、GeneMapper等の公知のソフトウェアを好ましく用いることができる。
下記実施例では、ヒト参照ゲノムhg38と比べて、NIIDを罹患していないコントロール(症状発現前の患者である可能性のある1名を除く)ではGGN繰り返し回数の変化が-6〜30の範囲内であり、NIID患者においては71〜183であることが確認されている。hg38におけるGGN繰り返し回数は13であるので(hg38のゲノムDNAを鋳型とした場合に配列番号6、7のプライマーセットにより増幅される断片の塩基配列を配列番号37に示す。配列番号37中の第116位〜第154位がGGN繰り返し配列である。)、GGN繰り返し回数は、コントロール(非NIID)で7〜43回、NIIDで84〜196回ということになる。従って、GGN繰り返し回数にて健常者(非NIID)とNIID患者を区別する場合、その閾値は48〜78の範囲から選択した1つの数値を採用することができる。例えば、当該閾値は、50〜70の範囲、50〜65の範囲、55〜70の範囲、又は55〜65の範囲から選択した1つの数値であってよい。
所望により、GGN繰り返し領域の配列を決定してもよい。本願発明者らは、筋力低下を主症状とするNIID症例ではGGC繰り返し配列に加えてGGA繰り返し配列の異常伸長も見られるが、認知症を主症状とするNIID症例ではGGC繰り返しの異常伸長のみであり、GGA繰り返しの異常伸長は認められないことを見出した。従って、GGN繰り返しの異常伸長が検出された被検者について、繰り返し領域の配列を決定してGGA繰り返しの異常伸長があるか否かを調べることにより、当該被検者の主症状が認知症であるか筋力低下であるかを調べることができる。GGN繰り返し配列中のGGA繰り返し単位数が5以下であり、かつ、GGC繰り返し配列が伸長している場合には、当該被検者は認知症を主症状とする神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあると判断することができる。GGN繰り返し配列中のGGA繰り返し単位数が5を超え、かつ、GGC繰り返し配列が伸長している場合には、当該被検者は筋力低下を主症状とする神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあると判断することができる。
GGN繰り返し領域の配列は、例えば、ロングリードシークエンサーを用いて決定することができる。配列決定に先立ち、被検者から分離されたゲノムDNAよりGGN繰り返し領域を切り出して濃縮してもよい。濃縮された繰り返し領域の配列を決定することにより、繰り返し領域の配列をより正確に決定することができる。
GGN繰り返し領域の濃縮には、例えば下記実施例に記載するように、CRISPR-Cas9システムを利用することができる。ガイド鎖としては、短鎖CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化crRNA(tracrRNA)の複合体を用いてもよいし、crRNAとtracrRNAを連結したキメラRNAを一本鎖のガイドRNAとして用いてもよい。GGN繰り返し領域の前後でゲノムDNAを切断するため、2種類のガイド鎖が必要である。下記実施例では、2種類のcrRNA(配列番号8、9)をtracrRNAと混合して形成させた2種類のRNA複合体をガイド鎖として用いているが、これに限定されない。tracrRNAは、CRISPR-Cas9システムにおいて一般的に使用されている公知のものを使用すればよく、例えば市販品を好ましく用いることができる。2種類のガイド鎖をCas9タンパク質と混合して会合させることにより、2種類のリボ核タンパク質複合体(RNP)を形成させ、これらのRNPを被検者から分離したゲノムDNAと混合することにより、ゲノムDNAからGGN繰り返し領域を切り出すことができる。配列決定するためには、例えば、ゲノムDNAをホスファターゼで前処理した後、2種類のRNP及びDNAポリメラーゼと混合してゲノムDNAを切断すればよい。その後、使用するシークエンサーに適したアダプターを切断DNAに付加し、ビーズ等でDNAを精製し、ロングリードシークエンサーで配列決定することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[方法]
NIIDを持つ家族からのサンプル
神経核内封入体病(NIID)を生じた9家系の罹患及び非罹患メンバー、並びに孤発のNIID症例40例より、インフォームドコンセントを得た上で末梢血白血球のゲノムDNAを抽出した。全ての罹患者の診断は皮膚生検により行なった。研究プロトコルは、横浜市立大学医学部及び名古屋大学医学部の施設内審査委員会によって承認された。
病理学
標本を20%ホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。それらを6μmのスライスに切断し、ヘマトキシリンエオジンで染色した。免疫染色及び免疫蛍光染色は、既報[9]の通りに抗ユビキチン抗体(Z0458、Dako)を用いて、Ventana Discoveryシステム(Roche)及びVentana DABマップキット(Roche)を使用して実施した。電子顕微鏡研究用のサンプルは、既報[26]の通りに調製した。皮膚生検については、脂肪細胞、汗腺細胞及び線維芽細胞等に、ヘマトキシリンエオジン染色でエオジン好性に染色され、抗ユビキチン抗体もしくは抗p62抗体等を用いた免疫染色により陽性に染色される核内封入体を認めた際に、神経核内封入体病と病理学的に判断した。
FMR1遺伝子分析
インフォームドコンセントを得て、この研究に関与したNIID患者の末梢血サンプルからゲノムDNAを抽出した。既報[17]の通りにサザンブロット法を実施した。正常アレルを5〜44の反復を持つものとして定義し、変異アレルを55〜230の反復を持つものとして定義した。
連鎖解析
罹患者7名及び非罹患者7名のWES(F1-4、10、11、12、13、14、19、20、及び24)またはWGS(F1-6、7、16、17、及び18)のデータを使用して、家系1の連鎖解析を実行した。情報価値のあるジェノタイピングデータをLinkDataGen [18]によって選択し、完全な浸透度の常染色体優性遺伝の条件を使用してMerlin [27]で連鎖解析を実行した。
NIID患者のサンプルのロングリード全ゲノムシークエンシング
NIID患者及び非罹患家系員のDNAサンプルは、PromethIONナノポアシークエンサー(Oxford Nanopore Technologies)を使用して配列決定した。製造元のプロトコルに従い1D Genomic DNA ligation kit(SQK-LSK109)を使用してライブラリの調製を行なった。各個人に対して、1つのPRO-002(R9.4.1)フローセルを使用した。ベースコールとFASTQ変換は、MinKNOW(v1.14.0)(Oxford Nanopore Technologies)で実行した。1つの個人サンプル(F1-6)をRSIIシークエンサー(PacBio)で配列決定した。コントロールデータセットは、MinION(Oxford Nanopore Technologies)、PromethION又はSequel(PacBio)によって配列決定した。
対照個体からのロングリード配列データセット
他の疾患を有する患者又はその家系員における遺伝的変化を調査するため、NIIDを持たない個人のロングリードWGSデータセットを取得した。これは、MinION、PromethION、又はSequelシークエンサーを使用して行われた。1個人(NA12878)に由来する、公的に利用可能なヒト全ゲノムナノポア(rel3)配列データも使用した[28]。PromethIONを使用した、別の個人(NA19240)に由来する別の公的に利用可能な60倍カバレッジのヒト全ゲノムナノポアデータセットは、EBI(https://www.ebi.ac.uk/ena/data/view/PRJEB26791)[29]からダウンロードした。MinIONシークエンス解析では、製造元のプロトコルに従って、1DゲノムDNAキット(SQK-LSK108)を使用してライブラリーの調製を行い、FLO-MIN106(R9.4.1)フローセルでシークエンスした。ベースコール及びFASTQ変換は、MinKNOW v1.11.5で実行した。
LASTを使用したロングリード配列データ分析
次のようにLAST(http://last.cbrc.jp)v936又はv959を使用してリードをヒト参照ゲノムhg38にアラインした[30]:
windowmasker -mk_counts -in hg38.fa> genome.wmstat
windowmasker -ustat genome.wmstat -outfmt fasta -in hg38.fa> genome-wm.fa
lastdb -P8 -uNEAR -R11 -c hg38 genome-wm.fa
last-train -P8 hg38reads.fasta > train.out
lastal -P8 -p train.out hg38 reads.fasta| last-split > alns.maf
次に、別の報告[19]に記載の通りに、tandem-genotypes v1.1.0(https://github.com/mcfrith/tandem-genotypes, biocondaにもある)を使用し、タンデムリピートジェノタイピング及びマルチデータセットの優先順位付けを実行した。タンデムリピート(simpleRepeat.txt)及び遺伝子(refFlat.txt)アノテーションは、カリフォルニア大学サンタクルーズ(UCSC)ゲノムデータベース(http://genome.ucsc.edu/)[31]から取得した。NIIDの全患者からのデータについては、公的に利用可能な2つのヒトのデータセット(NA12878ナノポアrel3及びNA19240 PromethION ERR2585112-5)と、非罹患家系員2名(F1-3及びF1-9)も使用して、良性の可能性のある伸長の優先順位を下げた。
以下のコマンドを使用した:
tandem-genotypes -g refFlat.txt simpleRepeat.txt alns.maf > patient-out
tandem-genotypes-join patient-out: controls-out > patient-prioritized
NOTCH2NLC遺伝子のリピートのドットプロットイメージは以下の通りに取得した:
last-dotplot -1 chr1:149390802-149390842 --sort2=3 --strands2=1 --rot1=v --rot2=h --labels1=2 --max-gap2=0,inf --bed1 notch2nlc-repeat.bed alignment.maf alignment.png
リピートプライムドPCR(repeat-primed PCR; RP-PCR)
NIIDを罹患した9家系の家系員、孤発の40症例、及び正常コントロール個体497名のゲノムDNAをRP-PCRによって分析した。PCRミックスは、0.25 U PrimeSTAR GXL DNAポリメラーゼ、1 x PrimeSTAR GXLバッファー、各200μM dATP、dTTP、dCTP(Takara Bio)及び7-Deaza-2'-deoxy-guanosine-5'-triphosphate(Sigma-Aldrich)、5%ジメチルスルホキシド(Sigma-Aldrich)、1 Mベタイン(Sigma-Aldrich)、0.3μMの各プライマーミックス、及び100 ngのゲノムDNAを総反応量10μl中に含んでいた。プライマーミックスは、NOTCH2NLC-RP-F、M13-(GGC)4(GGA)2-R、及びM13-リンカー-Rの3つのプライマーを含んでいた(プライマー配列は表1に示す)。98℃で10分間インキュベーション後、サイクリング条件は次のとおり:98℃30秒−66℃1分、サイクル当たり0.5℃低下−68℃8分を16サイクル、次いで98℃30秒−58℃1分−68℃8分を29サイクル、続いて68℃10分の最終伸長ステップ。全サイクリングステップのランプ速度は毎秒0.5℃に調整した。電気泳動は、3500xlジェネティックアナライザ(Thermo Fisher Scientific)で実施し、データはGeneMapperソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)を使用して解析した。エレクトロフェログラムの鋸歯状のテイルパターンは、疾患に関連する繰り返し伸長と判断した。
蛍光アンプリコン長分析
蛍光アンプリコン長分析には、9家系のNIID患者23名及びNIID非罹患者9名、孤発の40症例、並びに正常コントロール225名のゲノムDNAを使用した。PCRミックスの組成は、テンプレートとして50 ngゲノムDNAを使用し、異なるプライマーペアNOTCH2NLCAL-F及びNOTCH2NLC-AL-Rを使用することを除いて、RP-PCRと同一であった(プライマー配列は表1に示す)。前記PCR条件はRP-PCRと同一とした。あるいは、98℃で10分間インキュベートした後、次のサイクリング条件とした:98℃30秒−66℃1分、サイクル当たり0.5℃低下−68℃4分間を16サイクル、次いで98℃30秒−58℃1分−68℃4分を24サイクル、続いて68℃10分の最終伸長ステップ。全サイクリングステップのランプ速度は、T100サーマルサイクラー(Bio-Rad)のデフォルト設定であった。GeneScan 1200 LIZ色素サイズ標準(Thermo Fisher Scientific)を搭載した3500xlジェネティックアナライザで電気泳動を実施した。GeneMapperソフトウェアを使用してデータを分析し、伸長したアレルの最高シグナルピークの長さを使用して繰り返し回数を計算した。
Cas9を介した濃縮とナノポアシークエンス
NOTCH2NLC遺伝子リピート領域は、Oxford Nanopore Technologiesが提供するプロトコルに従ってCRISPR-Cas9システムを使用して濃縮した。簡単に説明すると、2つの異なるAlt-R CRISPR-Cas9 CRISPR RNA(crRNA)(IDT)(表1に2種のcrRNAのRNA配列を示す)をAlt-R CRISPR-Cas9 tracrRNA(IDT)と混合して二次RNA構造を形成し、Alt-R S.p. HiFi Cas9 Nuclease V3(IDT)を添加してリボ核タンパク質複合体(RNP)を形成した。各患者からの5μgのゲノムDNAを子ウシ腸ホスファターゼ(CIP、New England Biolabs)で前処理し、RNP及びTaqポリメラーゼ(New England Biolabs)と混合した。切断DNAを、ライゲーションシークエンスキットプロトコル(SQK-LSK109、Oxford Nanopore Technologies)に従って、ナノポアアダプターライゲーションに続いてAMPure XPビーズ(Beckman Coulter)精製に供した。サンプルごとに単一のR9.4.1フローセルを使用して、調製したライブラリをMinIONシークエンサー(Oxford Nanopore Technologies)で配列決定した。ベースコール及びFASTQ変換は、MinKNOW v18.12.9で実行した。LASTを使用してリードをhg38にアラインした。tandem-genotypesを使用して、hg38(13コピー)からのNOTCH2NLC繰り返しコピー数の変化を予測した。tandem-genotypesの出力に従って、正常な繰り返しコピー数変化と伸長した繰り返しコピー数変化にリードを分離した。
MAFFTを使用したNOTCH2NLC遺伝子リピートによるリードのマルチプルアライメント
±50bpのフランキングを持つNOTCH2NLC遺伝子リピートを含むリードは、MAFFT[20]を使用してアラインした。ナノポアのリードには非常に偏りのあるエラーがあるため、ナノポアR9.4のためのlast-train [21]により推定された特別なパラメーターセットを使用した。この計算を実行するためのコマンドライン引数を含む詳細については、パラメーターファイル(https://mafft.cbrc.jp/alignment/server/rawreads/minion94)を参照。コンセンサス配列を取得するために、50%以上のギャップのあるアライメントカラムを破棄し、次いでlast-train [21]からの置換確率に基づいてカラムごとの最も可能性の高い塩基を決定した。
RNAシークエンス解析
家系1の非罹患者2名(F1-7及びF1-18)と罹患者2名(F1-14及びF1-16)のサンプルのRNAシークエンシングを実行した。各人、2つの技術的複製があった(つまり、2つのライブラリが独立に準備されていた)。製造元の指示書に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen)で線維芽細胞から全RNAを抽出した。全RNAのRNA完全性数(RNA integrity number)は、全サンプルで10だった。4μgの全RNAからポリ(A)RNAを選択し、製造元の指示書に従ってSureSelect Strand-Specific RNAライブラリー調製キット(Agilent Technologies)でcDNAライブラリーを調製した。cDNAライブラリーは151 bpのペアエンドリードを使用してNextSeq 500システム(Illumina)により決定された。生成されたBCLファイルについて、bcl2fastq2(Illumina)を使用してアダプターのトリミングとFASTQ形式への変換を実行した。FASTQファイルは、ソフトウェアの取扱説明書に従ってtwopassModeオプションを使用して、STAR 2.5.2b [32]を使用してヒト参照ゲノムGRCh38.p12にマッピングされた。遺伝子アノテーションについては、以前の研究からNOTCH2NL遺伝子パラログを含むGTFファイルを取得し[23]、NOTCH2NLC遺伝子については、RefSeqアノテーション(NM_001364012.1)を使用した。
NOTCH2NL遺伝子パラログの発現分析
NOTCH2NLC遺伝子のセンス鎖からの発現レベルを定量化するために、STARのquantModeオプションを使用してNOTCH2NLC遺伝子センス鎖にマッピングされたリードをカウントし、全遺伝子のセンス鎖からの総リードカウントでそれを正規化した。後述の通り、DESeq2 [33]を使用して、負の二項一般化モデル及びWald検定で統計的有意性を分析した(「差次的に発現される遺伝子分析」を参照)。
NOTCH2NLC遺伝子の発現を各鎖と各エクソンに分解するために、Gvizを使用して遺伝子に沿ったセンス鎖またはアンチセンス鎖からの正規化されたリードカウントを視覚化した。視覚化のために、各サンプルにおいて2つの技術的複製のFASTQファイルをマージし、各サンプルに対し1つのBAMファイルを生成した。NOTCH2NLパラログからのリードのマッピングミスのおそれを防ぐために、255マッピング品質(MQ)のリード、すなわち、samtoolsを使用して一意にマッピングされたリードのみを抽出した。リードカウントは、GvizのDataTrack関数の変換オプションを使用して、入力リードの数によって正規化した。GvizのDataTrack関数(gist.github.com/sidderb)のimportFunctionオプションのための以前のスクリプトに従って、センス鎖及びアンチセンス鎖からのリードを差別的に視覚化した。スクリプトを変更して、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかのリードがないサンプルを可視化できるようにした(https://github.com/hamanakakohei)。
NOTCH2NLC-ASのcDNA増幅
RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を使用して、F1-7、F1-14、F1-16及びF1-18の線維芽細胞から全RNAを抽出した。500 ng RNA及びSuperScript III First-Strand Synthesis System(Thermo Fisher Scientific)とランダム六量体プライマーを使用して、製造元の指示書に従ってcDNAを合成した。PCRは、LA taq HS(Takara Bio)をGC Buffer 1で使用し、NOTCH2NLCAS遺伝子に対するプライマーペア及びACTB遺伝子[34]に対するプライマーペア(表1にプライマー配列を示す)を使用して実行した。アニーリング温度は62℃、NOTC2NLC-AS及びACTBに対するPCRサイクルはそれぞれ30サイクル及び25サイクルとした。
主成分分析
技術的複製間の再現性を確認し、トランスクリプトームに対してNIIDステータスが及ぼし得る影響を調べるために、遺伝子発現レベルの主成分分析(principal component analysis; PCA)を実行した。ライブラリーサイズによってセンス鎖からの各遺伝子の発現レベルを正規化し、R統計コンピューティングパッケージのDESeq2パッケージ1.14.1のvarianceStabilizingTransformation関数を使用してログ変換した。Rのprcomp関数で分散のPCAを実行した。
差次的に発現される遺伝子分析
負の二項一般化モデルとDESeq2を使用したWald検定を使用して、NIIDを罹患した2名及び家系1内の非罹患者2名からのサンプルの差次的発現遺伝子(differentially expressed gene; DEG)分析を行った。各サンプルにおいて、DESeq2のCollapsingReplicates関数を使用して、技術的複製のリードカウントをマージした。DEGのしきい値は次のように設定した:log2倍数変化<-2または>2;-log10調整済みP>1。P値は、Benjamini-Hochberg法を使用した多重比較のために調整された。54のDEGの間で、BPOターム及びMPOタームの濃縮度を分析した。濃縮分析は、ToppGene Suite [35]を使用し、確率密度関数とP値のBenjamini-Hochberg法による調整を使用して実行した。特徴づけられていない又は非特異的なタームを除外するために、20〜2,000個の遺伝子が属するタームのみを分析した。調整されたP値のしきい値は0.1に設定した。同様の生物学的プロセス又は同様のマウス表現型のGOターム
を要約するために、CytoScape(v3.6.1)[36,37]のEnrichmentMapプラグインを使用して、ジャカード及び2つのノード間のオーバーラップ係数が> 0.375であるときに2つのノードを線で接続した。
統計学
DEG分析(図5a)は、DESeq2を用いた負の二項一般化モデル及びWald検定により、それぞれ2つの技術的複製があるコントロール(n = 2)と患者(n = 2)のサンプルを比較して実行した。この分析は、シークエンスデータが負の二項モデルに適合するという仮定に基づいていた。P値はBenjamini-Hochberg法を使用して調整された。遺伝子オントロジー濃縮分析は、ToppGene Suiteを使用した超幾何テストでDEG(n = 54)に対して実行した。この分析は、DEG間の遺伝子オントロジータームの遺伝子の数が超幾何分布に従うという仮定に基づいていた。P値はBenjamini-Hochberg法を使用して調整した。
ナノポア5mCメチル化修飾のコーリング
次のように、ナノポアベースコーラーflappie v1.1.0(https://github.com/nanoporetech/ flappie)を使用して5mCメチル化をコールした:
flappie --model r941_5mC fast5> fastq
NIID患者の2つのNOTCH2NLC遺伝子領域、すなわち、伸長リピート自体及び下流のCpGアイランド、それぞれchr1:149390802-149390842及びchr1:149390845-149391541、をテストした。SNRPN遺伝子のCpGアイランド内にあるchr15:24848213-24848273上のG-四重鎖(CGGGGG)[38]もテストした。この領域は母系にインプリントされており、プラダー・ウィリー症候群の原因であることが知られている(ここでは、二峰性のメチル化パターンが見られると予想される。)。得られたシークエンスでは、flappieは5mCを「Z」と記述している。これらの配列を上記の通りにヒト参照ゲノムhg38にアラインした。SNRPN遺伝子のG四重鎖又はNOTCH2NLC遺伝子の(GGC)nリピートにアラインされたリードを抽出し、1,000塩基あたりの「Z」の数をヒストグラムとして表示した。
DNAメチル化分析
9μgのゲノムDNAをNheIで消化した。NheI消化したDNAを3つに細分し、さらに酵素無し、MspI又はHpaIIで消化して、NOTCH2NLCの下流のCpGアイランド(chr1:149390845-149391541)のDNAメチル化状態を調べた。IGF2R遺伝子メチル化可変領域(differentially methylated region; DMR)での半定量PCRのためにアリコートを取り、メチル化感受性制限消化を確認した。消化DNAの3倍系列希釈をPCRテンプレートとして使用した。33サイクル後にプライマー(プライマー配列は表1に示す)を用いたPCR産物を、IGF2R DMRについて分析した。MspI / HpaII部位のないIGF2R遺伝子領域での入力DNAの量を評価するために、異なるプライマー(プライマー配列を表1に示す)を使用した(PCRコントロール)。消化DNAを1.0×TBE緩衝液中で0.8%アガロースゲル(w / v)にて泳動し、キャピラリートランスファーを使用して正に帯電したナイロン膜にトランスファーした。NOTCH2NLC遺伝子座に対するジゴキシゲニン標識DNAプローブは、製造元の指示書(Merck)に従いプライマー(プライマー配列は表1に示す)を使用して生成した。
Figure 2021108552
[結果]
9家系(図1)の(組織病理学的に診断された)NIID患者と40名の孤発NIID症例を調べた。家系1及び2のNIID患者は運動感覚及び自律神経の障害と筋力低下を示し[7]、家系4、7、8、9、10及びDの患者並びに孤発39例は、T2強調画像により明らかに認知症及び白質脳症を示し、頭部磁気共鳴画像法(MRI)の拡散強調イメージング(DWI)により皮質髄質接合部に高強度の信号があった[11,14-16]。家系3のNIID患者[11]と孤発1症例(ID:3692)は、神経障害(筋力低下)と認知症の両方を示した。家系1及び2の患者と孤発1症例(ID:3618)の剖検では、好酸球性並びに抗ユビキチン及び抗p62に陽性の核内封入体が神経系及び内臓中に広く観察され、皮膚生検では脂肪細胞、汗腺細胞及び線維芽細胞に同様の特徴的な核内封入体を認め、これに基づいてNIIDと診断された(図2)。これらの家族性及び孤発性の症例はすべて、サザンブロッティングにより決定されたように、FMR1の前突然変異を伴わなかった[17]。
最初に、家系1の罹患及び非罹患家系員のIllumina HiSeq全ゲノムシークエンシング(WGS)または全エクソームシークエンス(WES)を実行した。LinkDataGen [18]によってWGS及びWESデータから抽出された情報価値のあるSNPを使用した家系1の連鎖分析の結果、最大の対数オッズ(LOD)スコアが>1.0であるリンク領域は、hg38に基づいて1p36.31-p36.22の3.5 Mb領域(chr1:6218354-9719813;最大LOD 2.32)と1p22.1-q21.3の58.1 Mb領域(chr1:94205228-152350656;最大LOD 4.21)の2箇所のみであった(図3a)。2つの連鎖領域におけるWGSまたはWESデータにおいて、病原性SNPまたはコピー数バリアント(CNV)は同定できなかった(データ示さず)。
次に、PacBio RSII(F1〜6のみ)またはPromethION(その他)のいずれかを使用して、8家系の罹患家系員13名及び非罹患家系員4名に対してロングリードWGSを実行した。さらに、我々は近年、ヒトの疾患を引き起こす可能性のあるタンデムリピートを見つけるための計算ツールtandem-genotypesを開発した[19]。全てのロングリードWGSデータにおいてtandem-genotypes(https://github.com/mcfrith/tandem-genotypes)を使用して、タンデムリピートコピー数の変化をゲノムワイドでチェックした。驚くべきことに、罹患者13名全員がchr1:149390802-149390842にGGCリピート伸長を有していた。この部位は、58.1 Mb連鎖領域にマップされたNOTCH2NLC遺伝子(NM_001364012、配列番号1)の5'UTRにある(図3b)。このリピート伸長は、罹患していない家系員や他のコントロール29名においてはロングリードWGSによって観察されなかった(データ示さず)。全ての患者において、NOTCH2NLCリピート伸長は、tandem-genotypes優先順位付けツール[19]によりゲノム内の1,014,212リピートのうちトップ5(通常は1位)にランクされた(https://www.ucsc.eduのsimpleRepeat.txt内)。
次に、repeat-primed PCR(RP-PCR)を使用して、全9家系のゲノムにおけるこのリピート伸長の分離を調査した。RP-PCRの結果、鋸歯状パターンとして示されるリピート伸長は、調査した全てのNIID患者で認められ、非罹患家系員及び497名の正常コントロールのうち496名では認められなかった(図3c及び表2)。孤発NIID 40症例も分析したところ、驚くべきことに、全員がリピート伸長を有していた(表3)。さらに、患者63名全員と正常コントロール225名において、非伸長リピートとともにリピート伸長の領域を増幅する蛍光アンプリコン長分析を行った。調べた患者全員でリピート伸長を確認し、家系内及び家系間のリピートコピー数の差異を観察した。重要なことに、家系1の罹患した親子3ペアでリピート数が全て減少していた(-52、-6及び-9)(図6及び表2, 3)。また、多型マーカーを使用して生物学的親子関係が確認された孤発症例(ID:3661)の家系でde novoのリピート伸長が見つかった(表3)。RP-PCR陽性の正常コントロール1名では、リピート回数の増加は61だった。治験審査委員会(IRB)のプロトコルにより、この個人の臨床情報を取得できなかった。従って、繰り返し回数の変化の範囲は、-6〜61(コントロール)及び71〜183(NIID)である(図3及び表2, 3)。ただし、リピート数増加が61のコントロール個体は予期しない症状発現前の患者である可能性があり、この個体のデータがコントロールグループから除外される場合、コントロールにおける繰り返し数の変化の範囲は-6〜30である。
Figure 2021108552
Figure 2021108552
次に、Cas9を介したNOTCH2NLCリピートの濃縮システムを使用して、この遺伝子座(100×−1,795×)でより高いリードカバレッジを取得し(表4)、last-train [20,21]とともにMAFFT v.7を使用してコンセンサスシークエンスを構築した(表4、図4−1及び4−2)。コンセンサス配列におけるリピートコピー数は、tandem-genotypes v.1.1.0の出力中央値及び蛍光アンプリコン長の分析ピークとよく一致した(表4)。興味深いことに、家系1、2、3の家系員4名と、筋力低下が優位の表現型を示した個人である孤発例1名(ID:3692)は、(GGC)nリピートに続いて様々なバリエーションの{(GGA)n(GGC)n)}nリピートを有しており、一方で、認知症を呈し筋力低下のない他の家系員と孤発例は、純粋な(GGC)nリピートを有する(表4、図4−1及び4−2)。{(GGA)n(GGC)n)}nリピートは筋力低下が優位の表現型を生じる可能性がある。さらに、FD-2では、2つの異なる方法により(GGC)nリピートの伸長のみが検出されたが、正常なリピートは検出されなかった(図4及び表2)。このことは、これらの方法が必ずしもこの遺伝子座の二倍性を保証するわけではないが、FD-2がホモ接合のリピート伸長を有することを示唆している。
Figure 2021108552
リピート伸長の転写効果を確認するために、家系1の罹患者2名(F1-14及びF1-16)及び非罹患者2名(F1-7及びF1-18)の線維芽細胞の相補DNAを使用してRNAシークエンシングを実行した。驚くべきことに、2つの罹患者サンプルでのみ、伸長リピート領域の開始部又は内部より異常なアンチセンス転写物が見つかり、非罹患者サンプルでは見つからなかった(図5)。差次的発現遺伝子(DEG)分析により、54のDEG(アップレギュレーション39遺伝子、ダウンレギュレーション15遺伝子)が明らかになり、それにおいて我々は11の生物学的プロセスオントロジー(biological process ontology; BPO)と5の哺乳類表現型オントロジー(mammalian phenotype ontology; MPO)のタームの濃縮を発見した(データ示さず)。1つを除くすべてのBPO及びMPOタームは、神経機能に関連していた(データ示さず)。
ナノポアベースコーラーflappie v1.1.0を使用して、GGC伸長配列およびリピートのすぐ下流に隣接するCpGアイランド(chr1:149390845-149391541)における5-メチルシトシン(5mC)の修飾を調べた。さらに、患者及びコントロールの血液DNA中のCpGアイランドを常法により調べた。しかしながら、いずれの方法でも、罹患者及び非罹患者(又はコントロール)の線維芽細胞(または血液)にメチル化の差異は見られなかった(データ示さず)。
NOTCH2NLC遺伝子は、1q21.1位の3つのヒト特異的NOTCH2関連遺伝子(NOTCH2NLA、NOTCH2NLB、及びNOTCH2NLC)の1つである。それは、外側放射状グリア、星状細胞、ミクログリアを含む様々な放射状グリア集団で高度に発現され、ヒト大脳皮質の進化的拡大に関与すると考えられている[22、23]。NOTCH2NL遺伝子は、NOTCH2のアミノ末端部分と99.1%を超える配列同一性を有するが、NOTCH2NLCには、NOTCH2開始コドンのすぐ下流に2 bpの欠失があり、N末端シグナルペプチドが欠けているがタンパク質産物を生産する。NOTCH2NLの異所性発現は、マウスの皮質ニューロンの分化を遅延させ、NOTCH2NLの削除は、ヒトの皮質オルガノイドの発達に影響を及ぼす[22]。
1q21.1のNOTCH2NL遺伝子には、3つの異なる遺伝子としてアノテートされていなかった。なぜならば、これらの領域は誤ってアセンブルされ、最新バージョン(hg38)[22,23]まではヒト参照ゲノムに含まれていなかったためである。これらの領域は非常に類似しており、(GGC)nは100%GCリッチであり、標準的なシークエンス手法では分析が困難である。10 kb超のリードのロングリードシークエンシングには、そのような相同(重複)及び反復領域を解決するための顕著な利点があるであろう[24]。我々は、PromethIONを複数の患者由来のデータに適用し、シングルフローセルのランより8倍〜25倍の全ゲノムカバレッジを得た。tandem-genotypes [19]を使用することにより、家族性及び孤発性のNIIDにおいて、8倍程度の低いカバレッジ深度のデータからでもNOTCH2NLCリピート伸長が検出された。さらに、Cas9を介した濃縮によるナノポアシークエンスにより、複雑な繰り返し構造を決定することができた(図4-1及び4-2)。従って、この研究は、ヒトの疾患の未発見の遺伝的原因を解決するためのロングリードシークエンシングの使用の明確な例を提供する。
我々の知る限り、分節重複を介して進化した約30のヒト特異的遺伝子間で、繰り返し配列の伸長が報告されたことはない[22、23、25]。このようなヒト特異的遺伝子は、ここに示すように、ヒトの脳の進化だけでなく、ヒトの神経疾患でも非常に重要である。ヒト特異的遺伝子のさらなる研究により、ヒト疾患に関連する追加のバリエーションが明らかになると予想される。
結論として、家族性及び孤発性のNIIDの遺伝的原因を解明した。NIIDの有病率は以前に考えられていたよりも高いと予測し[11]、NIIDが認知症患者のかなりの割合を占める可能性があると推測する。これまで、NIIDの多くの症例が誤診されてきた;たとえば、ビンスワンガー病または白質損傷を伴う神経変性疾患として。NIIDは認知症の鑑別診断と見なされるべきであり、組織病理学による診断は遺伝的に実施できるようになった。認知症の大規模な集団におけるNOTCH2NLCのリピート伸長を調査する価値があるかもしれない。
参考文献
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Claims (4)

  1. NOTCH2NLC遺伝子のエクソン1に存在するGGN(NはC又はA)繰り返し配列の伸長を指標とする、神経核内封入体病患者の検出方法であって、被検者から分離されたゲノムDNAを鋳型とし、(蛍光ラベル1)-GGCATTTGCGCCTGTGCTTCGGACCGT(配列番号3)、CAGGAAACAGCTATGACCTCCTCCGCCGCCGCCGCC(配列番号4)及びCAGGAAACAGCTATGACC(配列番号5)の塩基配列である3種のプライマーを含むプライマーミックスを用いたリピートプライムドPCRにより、GGN繰り返し配列を含む領域を増幅する工程と、増幅産物を電気泳動してエレクトロフェログラムを取得する工程を含み、エレクトロフェログラムにおいて、200bpを超える領域まで漸減しながら進展するシグナルパターンが認められる場合に、当該被検者におけるGGN繰り返し配列の伸長が検出され、当該被検者が神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示される、方法。
  2. GGN繰り返し配列の伸長が検出された被検者について、さらに、該被検者から分離されたゲノムDNAを鋳型とし、(蛍光ラベル2)-CATTTGCGCCTGTGCTTCGGAC(配列番号6)の塩基配列であるフォワードプライマー及びAGAGCGGCGCAGGGCGGGCATCTT(配列番号7)の塩基配列であるリバースプライマーを用いたPCRにより、GGN繰り返し配列を含む領域を増幅し、増幅産物を電気泳動してエレクトロフェログラムを取得し、エレクトロフェログラムにおいて、200bp近傍のGGN繰り返し配列非伸長アレルとは独立してより鎖長の長い領域に現れるシグナルのピーク(そのようなピークが複数現れた場合には、最もシグナル強度の高いピーク)が位置する鎖長を、当該被検者における伸長したGGN繰り返し配列のサイズとして、GGN繰り返し回数を算出することを含む、請求項1記載の方法。
  3. GGN繰り返し領域の配列を決定することをさらに含み、GGN繰り返し配列中のGGA繰り返し単位数が5以下であり、かつ、GGC繰り返し配列が伸長している場合に、当該被検者は認知症を主症状とする神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示され、GGN繰り返し配列中のGGA繰り返し単位数が5を超え、かつ、GGC繰り返し配列が伸長している場合に、当該被検者は筋力低下を主症状とする神経核内封入体病を発症している又は発症するおそれがあることが示される、請求項1又は2記載の方法。
  4. GGN繰り返し領域の配列の決定において、被検者から分離されたゲノムDNAよりGGN繰り返し領域を切り出して濃縮し、濃縮された繰り返し領域の配列を決定する、請求項3記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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