JP2021102229A - スポット溶接方法 - Google Patents

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崇志 後藤
Takashi Goto
崇志 後藤
康弘 永田
Yasuhiro Nagata
永田  康弘
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Abstract

【課題】散りの発生を抑制しつつ、適度な大きさのナゲットを適正な位置に形成できるスポット溶接方法を提供する。【解決手段】スポット溶接方法は、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23との重ね合わせ工程と、第1電極13と第2電極15との間に、重ね合わせたアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23を差し込み、アルミニウム展伸材21側に第1電極13を配置させるとともにアルミニウム鋳物材23側に第2電極15を配置させる配置工程と、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23を第1電極13と第2電極15とで挟み込んで加圧しながら通電する通電工程と、を含む。通電工程において、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積を、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも大きくするか、電極加圧力を7.0kN以上、10kN以下とする。【選択図】図1

Description

本発明は、スポット溶接方法に関する。
アルミニウム材は、機械的強度を有し、かつ軽量であるため、自動車のドアなどの様々な構造体の部品として適用されている。このアルミニウム材には、圧延板、押出材あるいは鍛造材などの展伸材、アルミニウム鋳物などがあり、要求される剛性や強度に応じて構造体の各部位に適宜使い分けて用いられる。
アルミニウム材からなる構造体を組み立てる際には、これらのアルミニウム材からなる部材同士を接合する必要があり、最も安価に接合できる方法としてスポット溶接が広く採用されている。
このスポット溶接は、展伸材からなるアルミニウム材同士を接合するのに用いられており、例えば、展伸材からなるアルミニウム材と鋳物からなるアルミニウム材の接合は、ボルト等を用いた機械的締結方法により行うのが一般的である。
展伸材からなるアルミニウム材と鋳物からなるアルミニウム材とをスポット溶接で接合できれば、構造体のコンパクト化、軽量化、コストダウンを図ることができる。しかし、展伸材からなるアルミニウム材と鋳物からなるアルミニウム材は、電気抵抗値や融点が大きく異なるため、スポット溶接時に形成されるナゲットが部材の重ね面に対して偏った位置に形成されることや、ナゲットが十分に発達しないうちに散りが発生してしまうおそれがあった。
特許文献1には、接合させる部材に対して上下に配置した電極の一方の接触面積を他方の接触面積よりも大きくしてスポット溶接時に形成されるナゲットの偏りを修正することが示されている。また、特許文献2には、アルミニウム材の接合において、正極側の電極の面積を負極側の電極よりも広くし、スポット溶接の打点数を向上させる方法が開示されている。
特開2017−177112号公報 特開平5−50260号公報
しかし、特許文献1に記載の技術は、例えば、異なる板厚の板材をスポット溶接する際に、そのナゲットをそれぞれの板材の合わせ面に及ぶようにナゲットの形成位置を修正するもので、展伸材のアルミニウム材と鋳物のアルミニウム材とをスポット溶接した際のナゲットの偏りや散りの発生を抑えるものではない。
また、展伸材のアルミニウム材と鋳物のアルミニウム材とをスポット溶接した際のナゲットの偏りや散りの発生は、電極の寿命を延ばしてスポット溶接の打点数を向上させる特許文献2に記載の技術によっても抑えることは困難である。
本発明は、上記の問題を解決したもので、散りの発生を抑制しつつ、適度な大きさのナゲットを適正な位置に形成できるスポット溶接方法を提供するものである。
本発明は下記構成からなる。
アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
対向位置に配置された第1電極と第2電極との間に、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を差し込み、前記アルミニウム展伸材側に第1電極を配置させるとともに前記アルミニウム鋳物材側に前記第2電極を配置させる配置工程と、
重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を前記第1電極と前記第2電極とで挟み込んで加圧しながら前記第1電極と前記第2電極との間に通電する通電工程と、を含み、
前記通電工程において、前記アルミニウム鋳物材に対する前記第2電極の接触面積を、前記アルミニウム展伸材に対する前記第1電極の接触面積よりも大きくする、スポット溶接方法。
本発明によれば、散りの発生を抑制しつつ、適度な大きさのナゲットを適正な位置に形成できる。
図1は、スポット溶接機の概略構成図である。 図2は、(A)はアルミニウム鋳物材として用いられるダイキャスト材を成形する金型の断面図、(B)はダイキャスト材の斜視図である。 図3は、スポット溶接方法における重ね合わせ工程及び配置工程を示す模式図である。 図4は、溶接電流及び加圧力の付与のタイミングを示すタイミングチャートである。 図5はスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。 図6は、参考例に係るスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。 図7は、変形例1に係るスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。 図8は、変形例2に係るスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。 図9は、試験例1の試験結果を示し、(A)はナゲットの溶け込み量を示すグラフ、(B)はウエルドローブを示すグラフである。 図10は、試験例2の試験結果を示し、(A)はナゲットの溶け込み量を示すグラフ、(B)はウエルドローブを示すグラフである。 図11は、試験例3の試験結果を示し、(A)はナゲットの溶け込み量を示すグラフ、(B)はウエルドローブを示すグラフである。 図12は、試験例4の試験結果を示し、(A)はナゲットの溶け込み量を示すグラフ、(B)はウエルドローブを示すグラフである。 図13は、溶接電流25kAで溶接した際のナゲットの状態を示す画像であり、(A)は試験例1での断面画像、(B)は試験例2での断面画像、(C)は試験例3での断面画像、(D)は試験例4での断面画像である。 図14は、溶接電流35kAで溶接した際のナゲットの状態を示す画像であり、(A)は試験例1での断面画像、(B)は試験例3での断面画像である。 図15は、試験例5における電極加圧力による溶接推奨範囲の変化を示すグラフである。 図16は、試験例6における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。 図17は、試験例7における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。 図18は、試験例8における電極加圧力による溶接推奨範囲の変化を示すグラフである。 図19は、試験例9における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。 図20は、試験例10における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。 図21は、試験例11の電極加圧力を7kNとした場合の溶接電流に対するナゲット径の分布を示すグラフである。 図22は、試験例12における電極加圧力による溶接推奨範囲の変化を示すグラフである。 図23は、圧痕の深さの定義を説明するための断面写真である。 図24は、ナゲット径が5√tにおける圧痕深さを求めた結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<スポット溶接機>
図1はアルミニウム材を溶接するスポット溶接機の要部を示す概略構成図である。
図1に示すように、スポット溶接機11は、第1電極13及び第2電極15と、第1電極13及び第2電極15に接続された溶接トランス部17と、電源部18と、溶接トランス部17に電源部18からの溶接電力を供給する制御部19と、第1電極13及び第2電極15を軸方向に移動させる電極駆動部20とを備える。制御部19は、電流値、通電時間、電極の加圧力、通電タイミング、加圧タイミングを統合的に制御する。
第1電極13は、曲面からなる先端面13aを有するラジアス形(R形)又はドームラジアス形(DR形)の電極である。これに対して、第2電極15は、平面からなる先端面15aを有するフラット形(F形)の電極である。第1電極13及び第2電極15は、それぞれ先端面13a,15aが平滑面とされている。溶接トランス部17は、第1電極13を正極とし、第2電極15を負極として、第1電極13と第2電極15との間に通電する。
これらの第1電極13及び第2電極15は、それぞれの内部に冷却部を備える。冷却部の冷却方式は特に限定されないが、図示例の構成では、第1電極13及び第2電極15のそれぞれに形成された凹部31に冷却用パイプ32,33が配置され、冷却用パイプ32,33から水等の冷却媒体が供給されることで、第1電極13及び第2電極15が冷却される。
スポット溶接機11は、第1電極13と第2電極15との間に、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とを重ね合わせて挟み込む。このとき、重ね合わせたアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23を、アルミニウム展伸材21側に第1電極13が配置され、アルミニウム鋳物材23側に第2電極15が配置されるように、第1電極13と第2電極15との間に挟み込まれる。
そして、電極駆動部20による第1電極13及び第2電極15の駆動によって、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とを板厚方向に加圧する。この加圧状態で、制御部19からの指令に基づいて溶接トランス部17が第1電極13と第2電極15との間で通電する。これにより、正極の第1電極13と負極の第2電極15とで挟まれたアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23との境界部29にナゲット(スポット溶接部)25が形成され、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とが一体化されたアルミニウム溶接継手(接合体)27が得られる。
<アルミニウム展伸材>
アルミニウム展伸材21としては、例えば、2000系、3000系、5000系、6000系、7000系のアルミニウム合金、または、1000系の純アルミニウムからなる圧延材、押出材あるいは鍛造材が用いられる。
<アルミニウム鋳物材>
アルミニウム鋳物材23としては、例えば、AC4C、AC4CH、AC2B(JIS
H 5202)、又はADC12(JIS H 5302)等からなる板状のダイキャスト材や鋳造材が用いられる。
図2の(A)はアルミニウム鋳物材として用いられるダイキャスト材を成形する金型の断面図、図2の(B)はダイキャスト材の斜視図である。
板状のアルミニウム鋳物材23は、図2の(A)に示すように、例えば、薄肉キャビティ51を備えたダイキャスト金型53を用いて作製される。このダイキャスト金型53は、例えば、薄肉キャビティ51の隙間が2mmとされており、薄肉キャビティ51に繋がるゲート55及びオーバーフローゲート57を有している。このダイキャスト金型53では、ゲート55から薄肉キャビティ51へアルミニウム溶湯59が加圧されて注入され、薄肉キャビティ51における湯流れ方向FLの延長線上に設けたオーバーフローゲート57から排出される。
図2の(A)に示すように、薄肉キャビティ51を有するダイキャスト金型53で成形したダイキャスト材61は、ゲート55の部分に形成されたゲート部63と、オーバーフローゲート57の部分に形成されたオーバーフロー部65との間に、薄肉キャビティ51によって形成された薄肉部67を有している。本例では、アルミニウム鋳物材23として、ダイキャスト材61の薄肉部67におけるゲート部63及びオーバーフロー部65の近傍を除く部分が用いられる。薄肉部67を、加圧注入されたアルミニウム溶湯59がオーバーフローゲート57に向かって流れる主流で成形されることで、気泡が発生してもオーバーフロー部65に押し出され排除される。これにより、ダイキャスト材61の薄肉部67では、ポロシティの発生が十分に抑えられ、スポット溶接を良好に実施できるようになる。したがって、アルミニウム鋳物材23として、ダイキャスト材61の薄肉部67を用いることで、良好にスポット溶接を行うことが可能である。
<スポット溶接方法>
次に、スポット溶接機11によってアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とをスポット溶接して接合する場合について説明する。なお、本発明のスポット溶接方法は、以下の態様に限定されるものではない。
図3はスポット溶接方法における重ね合わせ工程及び配置工程を示す模式図である。図4は溶接電流及び加圧力の付与のタイミングを示すタイミングチャートである。図5はスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。
(重ね合わせ工程、配置工程)
図3に示すように、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とを重ね合わせ、この重ね合わせたアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23を、第1電極13と第2電極15との間に差し込む。これにより、重ね合わせたアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23に対して、アルミニウム展伸材21側に正極の第1電極13を配置させるとともにアルミニウム鋳物材23側に負極の第2電極15を配置させる。
(通電工程)
重ね合わせたアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23を第1電極13と第2電極15とで挟み込んで加圧しながら、溶接トランス部17によって、正極からなる第1電極13と負極からなる第2電極15との間に溶接電流を通電する。
なお、通電工程における通電の仕方としては、例えば、図4に示すように、制御部19によって、第1電極13と第2電極15とによる加圧開始から加圧終了までの加圧時間tpの間に第1電極13と第2電極15との間に溶接電流Iwを通電する。この第1電極13と第2電極15との間に通電する溶接電流Iwは、単一のパルス電流とする。溶接電流Iwは、第1電極13と第2電極15とによる加圧開始から時間ta後に通電が開始され、時間tiの間、通電が維持される。そして、第1電極13と第2電極15とによる加圧は、溶接電流Iwの通電終了後、時間tb後に停止する。
ここで、第1電極13は、曲面からなる先端面13aを有するR形又はDR形の電極であり、第2電極15は、平面からなる先端面15aを有するF形の電極である。したがって、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積は、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも大きくされる。つまり、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積を、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも大きくした状態で第1電極13と第2電極15との間に通電する。
このようにして第1電極13と第2電極15との間に通電すると、図5に示すように、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23の境界部29において溶融が開始され、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23のそれぞれに溶け込んだナゲット25が形成される。
そして、上記の工程により、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とがスポット溶接で一体化されたアルミニウム溶接継手27が得られる。
<参考例>
ここで、参考例について説明する。
図6は参考例に係るスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。
図6に示すように、参考例では、例えば、第1電極及び第2電極として、同一曲率半径の曲面からなる同一形状の先端面103a,105aを有するR形又はDR形の第1電極103及び第2電極105を用いてアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とスポット溶接する。
この参考例では、第1電極103及び第2電極105の先端面103a,105aの形状が同一であることから、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極105の接触面積が、アルミニウム展伸材21に対する第1電極103の接触面積と同一とされる。つまり、参考例では、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極105の接触面積を、アルミニウム展伸材21に対する第1電極103の接触面積と同一にした状態で第1電極103と第2電極105との間に通電する。
ここで、アルミニウム鋳物材23は、アルミニウム展伸材21よりも電気抵抗が高いため、スポット溶接時にアルミニウム展伸材21よりも発熱しやすい。しかも、アルミニウム鋳物材23とアルミニウム展伸材21とは、融点が大きく異なる。
このため、参考例のように、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極105の接触面積を、アルミニウム展伸材21に対する第1電極103の接触面積と同一にした状態で第1電極103と第2電極105との間に通電すると、ナゲット25が、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23の境界部29よりもアルミニウム鋳物材23側に偏った位置に形成されてしまう。すると、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23に対するナゲット25の溶け込み深さに偏りが生じることがある。また、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23との接合箇所に散りが発生し、接合強度や溶接品質の低下を招いてしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態に係るスポット溶接方法によれば、通電工程において、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積を、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも大きくする。これにより、通電工程において、アルミニウム展伸材21よりも発熱しやすいアルミニウム鋳物材23の電流密度を低くし、アルミニウム鋳物材23側に発熱が集中するのを抑制できる。つまり、電気抵抗値や融点が大きく異なるアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができ、散りの発生を抑制しつつ、適正な位置に偏りなくナゲット25を形成することができる。
したがって、アルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とをスポット溶接によって高い溶接品質で接合させることができ、アルミニウム材からなる構造体のコンパクト化、軽量化及びコストダウンを図ることができる。
特に、第1電極13として曲面からなる先端面13aを有する電極を用い、第2電極15として平面からなる先端面15aを有する電極を用いることにより、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積を、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも容易に大きくすることができる。
また、通電工程において、第1電極13を正極とするとともに第2電極15を負極として、重ね合わせたアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23に通電する。これにより、いわゆる極性効果によって、正極とした第1電極13に接するアルミニウム展伸材21側の発熱を負極とした第2電極15に接するアルミニウム鋳物材23側の発熱よりも大きくすることができる。したがって、さらに良好にアルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができる。
次に、変形例について説明する。
(変形例1)
図7は変形例1に係るスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。
図7に示すように、変形例1では、第1電極13として、曲面からなる先端面13aを有する電極を用い、第2電極15として、第1電極13の先端面13aよりも大きな曲率半径の曲面からなる先端面15aを有する電極を用いる。
この変形例1では、第1電極13の先端面13aの曲率半径に対して第2電極15の先端面15aの曲率半径が大きいことから、これらの第1電極13と第2電極15とで、重ね合わせたアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とを挟み込んだ際に、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積が、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも大きくされる。
したがって、変形例1においても、アルミニウム展伸材21よりも発熱しやすいアルミニウム鋳物材23の電流密度を低くし、アルミニウム鋳物材23側に発熱が集中するのを抑制できる。これにより、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができ、散りの発生を抑制しつつ、適正な位置に偏りなくナゲット25を形成することができる。
(変形例2)
図8は変形例2に係るスポット溶接方法の通電工程によって形成されるナゲットの形成状態を示す模式図である。
図8に示すように、変形例2では、例えば、第1電極13及び第2電極15として、同一曲率半径の曲面からなる先端面13a,15aを有する電極を用いてアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とスポット溶接する。また、第2電極15としては、先端面15aが粗面化された電極を用いる。先端面15aを粗面化するには、例えば、第2電極15の先端面15aに対してベルトサンダー等の研磨機によって研磨処理を施す。
この変形例2では、第2電極15の先端面15aが粗面化されていることから、これらの第1電極13と第2電極15とで、重ね合わせたアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23とを挟み込んだ際に、アルミニウム鋳物材23に対する第2電極15の接触面積が、アルミニウム展伸材21に対する第1電極13の接触面積よりも大きくされる。
したがって、変形例2においても、アルミニウム展伸材21よりも発熱しやすいアルミニウム鋳物材23の電流密度を低くし、アルミニウム鋳物材23側に発熱が集中するのを抑制できる。これにより、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができ、散りの発生を抑制しつつ、適正な位置に偏りなくナゲット25を形成することができる。
なお、第2電極15の先端面15aを粗面化する方法としては、研磨機による研磨処理に限らず、ブラスト処理やエッチング処理などの各種表面処理、または切削加工処理を施してもよい。
<他のスポット溶接方法>
本発明に係るスポット溶接方法として、電極加圧力を増加させてもよい。その場合、通電時にアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材23との界面に形成される溶融金属が、電極による加圧によって電極間の領域内に閉じ込められる。これにより、溶融金属の飛散(散り)を防止でき、必要十分なサイズのナゲットが得られて、高い接合強度を安定して維持できる。
電極加圧力は、7kN以上、10kN以下にすることで、適正なナゲットが形成される。電極加圧力を10kN以下にすると、アルミニウム展伸材21及びアルミニウム鋳物材23に形成される圧痕深さが、板厚をt(mm)とした場合に、0.1t以下、好ましくは0.09t以下に抑えられる。
[A]電極の接触面積を変更
互いに重ね合わせた同一寸法のアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを、互いに対向位置に配置させた各種の第1電極及び第2電極を用いてスポット溶接し、アルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材へのナゲットの溶け込み深さ及び通電時間と溶接電流の関係であるウエルドロ−ブを求め、さらに、ナゲット部分の断面状態を観察した。
<試験片>
(アルミニウム展伸材)
材質:6K21−T4(6000系アルミニウム合金の展伸材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:2mm
(アルミニウム鋳物材)
材質:ADC12(アルミニウム合金からなるダイキャスト材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:2mm
<試験条件>
(1)溶接条件
電極加圧力:5.0kN
溶接電流:20kA,25kA,30kA,33kA,35kA,37kA
(2)溶接方法
第1電極を正極、第2電極を負極とし、重ね合わせたアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを、第1電極と第2電極との間に挟み込ませ、アルミニウム展伸材側に正極である第1電極を配置させるとともにアルミニウム鋳物材側に負極である第2電極を配置させる。
第1電極と第2電極とでアルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材を加圧し、加圧開始から100ms後に通電時間200msで溶接電流を通電させ、電流通電終了後に加圧を200msだけ保持させて加圧を終了させる。
<使用電極>
(試験例1)
1)第1電極(正極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
2)第2電極(負極側電極)
種別:フラット形(F形)電極
電極先端径:19mm
先端面:平滑面
(試験例2)
1)第1電極(正極側電極)
種別:ドームラジアス形(DR形)電極
電極先端径:8mm
先端曲率半径:40mm
先端面:平滑面
2)第2電極(負極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
(試験例3)
1)第1電極(正極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
2)第2電極(負極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:粒度Z60のジルコニア砥石を備えたベルトサンダーにより研磨して粗面化する。
(試験例4)
1)第1電極(正極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
2)第2電極(負極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
<試験結果>
(1)溶け込み深さ
図9の(A)、図10の(A)、図11の(A)、及び図12の(A)に、試験例1〜3及び試験例4におけるナゲットの溶け込み深さの試験結果を示す。なお、各図において、各プロットはN=3の平均値および標準偏差の値を示す。また、矢印HAはアルミニウム展伸材側へのナゲットの溶け込み方向を示し、矢印HBはアルミニウム鋳物材側へのナゲットの溶け込み方向を示している。
(試験例1)
図9の(A)に示すように、試験例1では、溶接電流を20kAとした際には、ナゲットがアルミニウム鋳物材側に若干偏って形成されたが、溶接電流を25kA,30kA,33kA,35kA,37kAとした際に、アルミニウム展伸材側及びアルミニウム鋳物材側の両方にバランスよく溶け込んだナゲットを形成することができた。
(試験例2)
図10の(A)に示すように、試験例2では、溶接電流を20kAとした際には、ナゲットがアルミニウム鋳物材側に多く溶け込んだが、溶接電流を25kA,30kA,33kA,35kAとした際には、アルミニウム展伸材側及びアルミニウム鋳物材側の両方にバランスよく溶け込んだナゲットを形成することができた。
(試験例3)
図11の(A)に示すように、試験例3では、溶接電流を20kA,25kA,30kA,33kA,35kA,37kAとした際に、アルミニウム展伸材側及びアルミニウム鋳物材側の両方にバランスよく溶け込んだナゲットを形成することができた。ただし、いずれの溶接電流においても、ナゲットがアルミニウム鋳物材側に僅かに偏って形成された。
(試験例4)
図12の(A)に示すように、試験例4(比較例)では、溶接電流を30kA,33kA,35kAとした際には、アルミニウム展伸材側及びアルミニウム鋳物材側の両方にバランスよく溶け込んだナゲットを形成することができた。しかし、溶接電流を20kA,25kAとした際には、ナゲットがアルミニウム鋳物材側に偏って形成された。
(2)ウエルドローブ
図9の(B)、図10の(B)、図11の(B)及び図12の(B)に、試験例1〜3及び試験例4におけるウエルドローブを示す。なお、各図において、基準となるナゲット径を5√t(t:板厚)で示す。
(試験例1)
図9の(B)に示すように、試験例1では、溶接電流が28kA以上で適度なナゲット径(5√t)のナゲットを形成することができ、また、37kA以下で散り(中散り)の発生を抑制できることがわかった。つまり、試験例1では、適度な径のナゲットを形成可能な溶接推奨範囲(5√tのナゲットが形成されて散りが発生するまでの溶接電流の範囲。以下同じ。)が28kA以上37kA以下となった。
(試験例2)
図10の(B)に示すように、試験例2では、溶接電流が31kA以上で適度なナゲット径(5√t)のナゲットを形成することができ、また、35kA以下で散り(中散り)の発生を抑制できることがわかった。つまり、試験例2では、適度な径のナゲットを形成可能な溶接推奨範囲が31kA以上35kA以下となった。
(試験例3)
図11の(B)に示すように、試験例3では、溶接電流が27kA以上で適度なナゲット径(5√t)のナゲットを形成することができ、また、37kA以下で散り(中散り)の発生を抑制できることがわかった。つまり、試験例3では、適度な径のナゲットを形成可能な溶接推奨範囲が27kA以上37kA以下となった。
(試験例4)
図12の(B)に示すように、試験例4(比較例)では、溶接電流が28kA以上で適度なナゲット径(5√t)のナゲットを形成することができ、また、35kA以下で散り(中散り)の発生を抑制できることがわかった。つまり、試験例4では、適度な径のナゲットを形成可能な溶接推奨範囲が28kA以上35kA以下となった。
(3)断面状態
図13は溶接電流25kAで溶接した際のナゲットの状態を示す画像であり、(A)は試験例1での断面画像、(B)は試験例2での断面画像、(C)は試験例3での断面画像、(D)は試験例4での断面画像である。図14は溶接電流35kAで溶接した際のナゲットの状態を示す画像であり、(A)は試験例1での断面画像、(B)は試験例3での断面画像である。
なお、図13及び図14の各画像において、上側がアルミニウム展伸材Wであり、下側がアルミニウム鋳物材Cである。
図13の(A)に示すように、試験例1では、溶接電流25kAでスポット溶接した場合、ナゲットNがアルミニウム鋳物材Cだけでなくアルミニウム展伸材Wにバランス良く溶け込んでいることが確認できた。同様に、図13の(B)に示すように、試験例2においても、溶接電流25kAでスポット溶接した場合、ナゲットNがアルミニウム鋳物材Cだけでなくアルミニウム展伸材Wにもバランス良く溶け込んでいることが確認できた。さらに、図13の(C)に示すように、試験例3においても、溶接電流25kAでスポット溶接した場合、ナゲットNがアルミニウム鋳物材Cだけでなくアルミニウム展伸材Wにもバランス良く溶け込んでいることが確認できた。
特に、図14の(A)に示すように、試験例1では、溶接電流35kAでスポット溶接した場合、ナゲットNがアルミニウム鋳物材C及びアルミニウム展伸材Wに対してバランスよく十分に溶け込んでいることが確認できた。同様に、図14の(B)に示すように、試験例3においても、溶接電流35kAでスポット溶接した場合、ナゲットNがアルミニウム鋳物材C及びアルミニウム展伸材Wに対してバランスよく十分に溶け込んでいることが確認できた。
これに対して、図13の(D)に示すように、比較例である試験例4では、溶接電流25kAにおいて、ナゲットNがアルミニウム鋳物材C側だけに偏って形成され、アルミニウム展伸材Wへの溶け込みが不十分であることが確認できた。また、試験例4では、溶接電流35kAでスポット溶接した際に散りが発生していた。
上記の試験結果から、試験例1〜3では、アルミニウム鋳物材及びアルミニウム展伸材に対して、散りの発生を抑制しつつバランスよく溶け込んだナゲットを形成できることがわかった。
試験例1,2では、第1電極及び第2電極の先端面の形状を異ならせることにより、また、試験例3では第2電極の先端面を粗面化することにより、アルミニウム鋳物材に対する第2電極の接触面積が、アルミニウム展伸材に対する第1電極の接触面積よりも大きくされる。
つまり、アルミニウム展伸材よりも発熱しやすいアルミニウム鋳物材に対する第2電極の接触面積を、アルミニウム展伸材に対する第1電極の接触面積よりも大きくしたことにより、通電工程において、アルミニウム鋳物材の電流密度が低くされ、アルミニウム鋳物材側に発熱が集中するのが抑制されると考えられる。
[B]電極加圧力を変更
次に、電極圧力を高めてスポット溶接する態様について説明する。
上記したスポット溶接条件と同様に、互いに重ね合わせた同一寸法のアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを、一対の第1電極及び第2電極で挟み込み、前述した5kNより高い加圧力を含む種々の加圧力の条件でスポット溶接した。そして、アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材との間に形成されるナゲットが5√tとなる最低電流から、散りが発生するまでの溶接電流の溶接推奨範囲の幅をそれぞれ求めた。
<試験片>
(アルミニウム展伸材)
材質:6K21−T4(6000系アルミニウム合金の展伸材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:2mm
(アルミニウム鋳物材:試験例5〜7,11,12)
材質:ADC12(アルミニウム合金からなるダイキャスト材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:2mm
(アルミニウム鋳物材:試験例8〜10)
材質:AC4CH(アルミニウム合金からなるダイキャスト材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:2mm
<試験条件>
(1)溶接条件
電極加圧力:3.0kN,4.0kN,5.0kN、6kN,7kN
溶接電流:20kA,25kA,30kA,33kA,35kA,40kA,43kA
(2)溶接方法
第1電極を正極、第2電極を負極とし、重ね合わせたアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを、第1電極と第2電極との間に挟み込ませ、アルミニウム展伸材側に正極である第1電極を配置させるとともにアルミニウム鋳物材側に負極である第2電極を配置させる。
第1電極と第2電極とでアルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材を加圧し、加圧開始から100ms後に通電時間200msで溶接電流を通電させ、電流通電終了後に加圧を200msだけ保持させて加圧を終了させる。
(3)使用電極
第1電極(正極側電極),第2電極(負極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
図15は、試験例5における電極加圧力による溶接推奨範囲の変化を示すグラフである。各溶接電流において、5√tのナゲット径が得られる溶接電流の最小値を「○」、中散りが生じた溶接電流の最小値を「▲」で示している。
電極加圧力が3kN〜6kNの範囲では、溶接推奨範囲が5〜7kA程度の幅であるが、電極加圧力を7kNにすると、溶接推奨範囲が約10kAの幅に拡大した。
試験例6(比較例)では、試験例5の電極加圧力を5kN(通電時間:200ms)とする条件を種々の通電時間に変更した場合の溶接推奨範囲を求めた。
図16は、試験例6における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。
通電時間を50ms,100ms,150ms及び試験例5の200msとした場合、溶接推奨範囲は3〜5kA程度の幅になった。
試験例7では、試験例5の電極加圧力を7kN(通電時間:200ms)とする条件を種々の通電時間に変更した場合の溶接推奨範囲を求めた。
図17は、試験例7における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。
通電時間を50ms,100ms,150ms及び試験例5の200msとした場合、電極加圧力が5kNの場合と比較して、ナゲットサイズが5√tに達する溶接電流値が増加したが、中散りが発生する溶接電流値が特に大きくなり、通電時間が100ms以上では溶接推奨範囲が10kA程度の幅に拡大した。
試験例8では、試験例5のアルミニウム鋳物材をAC4CHに入れ替えた以外は、試験例5と同様の条件とした。
図18は、試験例8における電極加圧力による溶接推奨範囲の変化を示すグラフである。
このときの通電時間は200msである。試験例8では、電極加圧力が5kNまでは溶接推奨範囲が約5kA以下の幅であるが、電極加圧力を6kN以上にすると、溶接推奨範囲が約10kN以上の幅にまで拡大した。
試験例9(比較例)では、試験例6のアルミニウム鋳物材をAC4CHに入れ替えた以外は、試験例6と同様の条件とした。
図19は、試験例9における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。
電極加圧力を5kNとし、通電時間を50ms,100ms,150ms及び200msとした場合、溶接推奨範囲は100ms〜200msの間で、2〜5kA程度の幅になった。
試験例10では、試験例7のアルミニウム鋳物材をAC4CHに入れ替えた以外は、試験例7と同様の条件とした。
図20は、試験例10における溶接電流と通電時間との関係を示すグラフである。
電極加圧力を7kNとし、通電時間を50ms,100ms,150及び200msとした場合、電極加圧力が5kNの場合と比較して、ナゲットサイズが5√tに達する溶接電流値が増加した。また、中散りが発生する溶接電流値が特に大きくなり、通電時間が100ms以上では溶接推奨範囲が10kA以上の幅に拡大した。
試験例5〜7及び試験例8〜10から、アルミニウム鋳物材の種類によらず、電極加圧力の増加が溶接推奨範囲の拡大に寄与していることがわかる。
試験例11では、粗面化した電極を使用して、電極加圧力を増加させた場合の溶接推奨範囲を確認した。使用した電極は次のとおりである。
(第1電極:正極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:平滑面
(第2電極:負極側電極)
種別:ラジアス形(R形)電極
電極先端径:19mm
先端曲率半径:100mm
先端面:粒度Z60のジルコニア砥石を備えたベルトサンダーにより研磨して粗面化する。
図21は、試験例11の電極加圧力を7kNとした場合の溶接電流に対するナゲット径の分布を示すグラフである。
電極加圧力を7kNにすると、溶接推奨範囲が10kAの幅に拡大することから、電極の接触面積を変更した場合にも、溶接推奨範囲の拡大に効果のあることがわかった。
試験例12では、板厚を変更して、電極加圧力を増加させた場合の溶接推奨範囲の変化を確認した。使用したアルミニウム展伸材21とアルミニウム鋳物材は以下に示すとおりである。
(アルミニウム展伸材)
材質:6K21−T4(6000系アルミニウム合金の展伸材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:1mm
(アルミニウム鋳物材:)
材質:ADC12(アルミニウム合金からなるダイキャスト材)
形状:幅40mm、長さ100mmの板状
厚さ:2mm
図22は、試験例12における電極加圧力による溶接推奨範囲の変化を示すグラフである。
図22に示すように、アルミニウム展伸材の厚さが1.0mmとした場合でも、電極加圧力が7kN以上になると溶接推奨範囲が拡大する。つまり、アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物との板厚比が変化しても、電極加圧力の増加が溶接推奨範囲の拡大に寄与していることがわかる。
図23は、圧痕の深さの定義を説明するための断面写真である。図24は、ナゲット径が5√tにおける圧痕深さを求めた結果を示すグラフである。
電極加圧力を増加させると、試験片の表面に生じる電極の圧痕が深くなる。ここでいう圧痕の深さとは、図23に示すように、アルミニウム展伸材の表面の圧痕深さt1と、アルミニウム鋳物の表面の圧痕深さt2との平均値(=(t1+t2)/2)である。
電極加圧力3kN,5kN,7kNの圧痕深さの分布をそれぞれ直線に近似し、求めた近似直線からナゲット径が5√tに相当する7.1mmでの圧痕深さを算出した。その結果が図24にプロットされている。具体的には、電極加圧力が3kN、5kN、7kNでの圧痕深さは、0.134mm、0.154mm、0.168mmである。
図24のグラフのプロットされた各点を直線近似して、圧痕深さが板厚tの10%(t=2mmなので0.2mm)を超えない電極加圧力を求めると、その限界となる電極加圧力は約10kNとなる。つまり、電極加圧力を10kN以下にすることで、適正な加圧力が維持される。
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
対向位置に配置された第1電極と第2電極との間に、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を差し込み、前記アルミニウム展伸材側に第1電極を配置させるとともに前記アルミニウム鋳物材側に前記第2電極を配置させる配置工程と、
重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を前記第1電極と前記第2電極とで挟み込んで加圧しながら前記第1電極と前記第2電極との間に通電する通電工程と、を含み、
前記通電工程において、前記アルミニウム鋳物材に対する前記第2電極の接触面積を、前記アルミニウム展伸材に対する前記第1電極の接触面積よりも大きくする、スポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、通電工程において、アルミニウム鋳物材に対する第2電極の接触面積を、アルミニウム展伸材に対する第1電極の接触面積よりも大きくする。これにより、通電工程において、アルミニウム展伸材よりも発熱しやすいアルミニウム鋳物材の電流密度を低くし、アルミニウム鋳物材側に発熱が集中するのを抑制できる。つまり、電気抵抗値や融点が大きく異なるアルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができ、散りの発生を抑制しつつ、適正な位置に偏りなくナゲットを形成することができる。
したがって、アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とをスポット溶接によって高い溶接品質で接合させることができ、アルミニウム材からなる構造体のコンパクト化、軽量化及びコストダウンを図ることができる。
(2) 前記第1電極として曲面からなる先端面を有する電極を用い、前記第2電極として平面からなる先端面を有する電極を用いる、(1)に記載のスポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、アルミニウム鋳物材に対する第2電極の接触面積を、アルミニウム展伸材に対する第1電極の接触面積よりも容易に大きくし、アルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができる。
(3) 前記第1電極として曲面からなる先端面を有する電極を用い、前記第2電極として前記第1電極の先端面よりも大きな曲率半径の曲面からなる先端面を有する電極を用いる、(1)に記載のスポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、アルミニウム鋳物材に対する第2電極の接触面積を、アルミニウム展伸材に対する第1電極の接触面積よりも容易に大きくし、アルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができる。
(4) 前記第2電極として先端面が粗面化された電極を用いる、(1)〜(3)のいずれか一つに記載のスポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、第2電極の先端面が粗面化されているので、アルミニウム鋳物材に対する第2電極の接触面積を効率的に大きくすることができる。
(5) 前記通電工程において、前記第1電極を正極とするとともに前記第2電極を負極として、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材に通電する、(1)〜(4)のいずれか一つに記載のスポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、いわゆる極性効果によって、正極とした第1電極に接するアルミニウム展伸材側の発熱を負極とした第2電極に接するアルミニウム鋳物材側の発熱よりも大きくすることができる。これにより、さらに良好にアルミニウム展伸材及びアルミニウム鋳物材の溶接時における抵抗発熱のバランスをとることができる。
(6) 前記通電工程において、電極加圧力を7.0kN以上、10kN以下とする、(1)〜(5)のいずれか一つに記載のスポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、電極加圧力を増加させることで、アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材との間に形成される溶融金属を電極間に押さえ込める。そのため、高い溶接電流値まで散りの発生が抑えられ、良好なサイズのナゲットを、溶接条件の裕度を高めて形成できる。これにより、溶接条件の自由度が高められ、溶接施工性を向上できる。
(7) アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
対向位置に配置された第1電極と第2電極との間に、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を差し込み、前記アルミニウム展伸材側に第1電極を配置させるとともに前記アルミニウム鋳物材側に前記第2電極を配置させる配置工程と、
重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を前記第1電極と前記第2電極とで挟み込んで加圧しながら前記第1電極と前記第2電極との間に通電する通電工程と、を含み、
前記通電工程において、前記通電工程において、電極加圧力を7.0kN以上、10kN以下とする、スポット溶接方法。
このスポット溶接方法によれば、電極加圧力を増加させることで、アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材との間に形成される溶融金属を電極間に押さえ込める。そのため、高い溶接電流値まで散りの発生が抑えられ、良好なサイズのナゲットを、溶接条件の裕度を高めて形成できる。これにより、溶接条件の自由度が高められ、溶接施工性を向上できる。
13 第1電極
13a 先端面
15 第2電極
15a 先端面
21 アルミニウム展伸材
23 アルミニウム鋳物材

Claims (7)

  1. アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
    対向位置に配置された第1電極と第2電極との間に、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を差し込み、前記アルミニウム展伸材側に第1電極を配置させるとともに前記アルミニウム鋳物材側に前記第2電極を配置させる配置工程と、
    重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を前記第1電極と前記第2電極とで挟み込んで加圧しながら前記第1電極と前記第2電極との間に通電する通電工程と、を含み、
    前記通電工程において、前記アルミニウム鋳物材に対する前記第2電極の接触面積を、前記アルミニウム展伸材に対する前記第1電極の接触面積よりも大きくする、スポット溶接方法。
  2. 前記第1電極として曲面からなる先端面を有する電極を用い、前記第2電極として平面からなる先端面を有する電極を用いる、請求項1に記載のスポット溶接方法。
  3. 前記第1電極として曲面からなる先端面を有する電極を用い、前記第2電極として前記第1電極の先端面よりも大きな曲率半径の曲面からなる先端面を有する電極を用いる、請求項1に記載のスポット溶接方法。
  4. 前記第2電極として先端面が粗面化された電極を用いる、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のスポット溶接方法。
  5. 前記通電工程において、前記第1電極を正極とするとともに前記第2電極を負極として、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材に通電する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスポット溶接方法。
  6. 前記通電工程において、電極加圧力を7.0kN以上、10kN以下とする、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
  7. アルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
    対向位置に配置された第1電極と第2電極との間に、重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を差し込み、前記アルミニウム展伸材側に第1電極を配置させるとともに前記アルミニウム鋳物材側に前記第2電極を配置させる配置工程と、
    重ね合わせた前記アルミニウム展伸材及び前記アルミニウム鋳物材を前記第1電極と前記第2電極とで挟み込んで加圧しながら前記第1電極と前記第2電極との間に通電する通電工程と、を含み、
    前記通電工程において、前記通電工程において、電極加圧力を7.0kN以上、10kN以下とする、スポット溶接方法。
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