JP2021101156A - Rfタグ位置検出装置 - Google Patents

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剛之 前田
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Abstract

【課題】RFIDシステムに於いて、RFタグの3次元的な位置を検出するRFタグ位置検出装置を提供する。【解決手段】RFタグからの到来波を受信する、面状に配列された4以上のアンテナ素子を具備するアレイアンテナと、各アンテナ素子で受信される受信波の位相差を検出する位相差検出手段と、位相差検出手段が検出する位相差に基づき、到来波を送信したRFタグのアレイアンテナに対する3次元相対位置を算出するタグ位置算出手段と、を備え、タグ位置算出手段は、各位相差を入力とし3次元相対位置を出力とする、機械学習可能な適応フィルタを具備することとした。【選択図】図1

Description

本発明は、RFID(Radio Frequency Identification:電波個体識別)システムにおいて、RFタグの3次元的な位置を検出する技術に関する。
一般に、RFIDシステムは、RFIDリーダライタ(RFID reader/writer)又はRFID質問器(RFID interrogator)と呼ばれるRFIDリーダ(RFID reader)と、一乃至複数のRFタグ(RF tag)とを有している。そして、RFIDリーダにより、一乃至複数のRFタグに対して無線周波数の電波信号である質問信号を送信し、これに対してRFタグは同じ周波数帯の電波信号である応答信号を返信する。RFタグには、アクティブタグ(active tag)、パッシブタグ(passive tag)、半アクティブタグ(semi-active tag)がある。アクティブタグは、内部電池を有して自発的に応答信号を発信するRFタグである。これは、主に数十メートルという長距離通信に用いられる。パッシブタグは、内部電池を持たず、RFIDリーダから送信される電波の一部を後方散乱(backscatter)として知られる手法により反射させると共にこれを変調することにより、反射波に応答信号を載せて発信するRFタグである。通信距離は1メートル程度とされる。半アクティブタグは、内部電池を内蔵し、外部からの特定の信号を検知した時にアクティブタグとして機能するRFタグである。パッシブタグよりも読み取り可能な通信距離が長く、アクティブタグよりも電力消費が少ない。
斯かるRFIDシステムに於いてRFタグの存在方向(応答信号の到来方向)を検出する技術としては、特許文献1,2に記載のものが公知である。特許文献1には、RFIDリーダの送受信アンテナにアレイアンテナ(array antenna)を使用した構成が開示されている。
図15に、特許文献1,2に記載のRFIDリーダ用のアレイアンテナ100を示す。アレイアンテナ100は、平板状の接地面101の表面に、9つのアンテナ素子(antenna element)E0〜E8が配置されている。各アンテナ素子は、アンテナ素子E0を対称中心としてアンテナ素子の組(E1,E5),(E2,E6),(E3,E7),(E4,E8)が、其々、45度の角度間隔で、アンテナ素子E0を中心とする略円上に対称に配置されている(図15(a)(b))。各アンテナ素子の放射方向ベクトルdは、通常、接地面101に垂直な方向とされる。アレイアンテナ100から電波を送信する場合、各アンテナ素子に通電する送信波電流の位相及びゲインを調整することにより、送信波の指向性を高めるとともに、指向性曲線におけるメインローブ(main lobe)のビーム方向を自在に制御することが可能である。これを、ビームの「ステアリング(steering)」という。
送信波の位相とゲインは、合成ビームリーダ(SBR:synthesized-beam reader)により制御される。SBRが、主にアンテナ素子E1,E0,E5を使用して送信した場合、アレイアンテナ100のメインローブの方向は直線L105を通る紙面に垂直な面上となり、主にアンテナ素子E2,E0,E6を使用して送信した場合、メインローブの方向は直線L206を通る紙面に垂直な面上となり、主にアンテナ素子E3,E0,E7を使用して送信した場合、メインローブの方向は直線L307を通る紙面に垂直な面上となり、主にアンテナ素子E4,E0,E8を使用して送信した場合、メインローブの方向は直線L408を通る紙面に垂直な面上となる(図15(b))。さらに、直線状に並ぶ3つのアンテナ素子に加えて、それ以外のアンテナ素子の位相及びゲインを制御することにより、ビームのステアリングを任意に制御することができる。
一例として、主にアンテナ素子E2,E0,E6を使用して送信する場合を考える。この場合、図15(c)(d)に示すように、アレイアンテナ100のメインローブは直線L206を通る紙面に垂直な平面S206上となる。図15(d)は図15(c)を直線L206で切断して真横から視た図(平面S206上の図)である。アンテナ素子E2,E0,E6の位相とゲインを変化させることによって、アレイアンテナ100のメインローブはML1L,ML,ML1Hのように、ビーム中心方向を平面S206上で連続的に変化させることが出来る。
特許文献2では、このように、SBRによってメインローブのビーム中心方向を走査しながらRFタグに対して質問信号を送信し、RFタグからの応答信号を受信できたビーム中心方向から、RFタグ存在方向(応答信号の到来方向)を検出する手法が記載されている。図16において、アレイアンテナ100は接地面101を床面に対し平行となるように設置されている。メインローブのビーム中心方向を真下(接地面101に垂直)の方向Lとすると、メインローブは図16(a)のMLのようになる。この場合、床面上でのメインローブを上から視ると、図16(b)のようになる。メインローブのビーム中心方向を真下方向Lから角度θだけ傾いた方向とすると、メインローブは図16(a)のMLのようになる。この場合、床面上でのメインローブを上から視ると、図16(c)のようになる。メインローブのビーム中心方向を真下方向Lから角度θだけ傾いた方向とすると、メインローブは図16(a)のMLのようになる。この場合、床面上でのメインローブを上から視ると、図16(d)のようになる。これらを合わせると、図16(e)のようになり。このように、メインローブのビーム中心方向を、真下方向Lからの角度(垂直角)θを変化させるとともに、水平方向の方位角(水平角)φを変化させて、全方位に亘り走査することにより床面上のRFタグの方位を検出することができる。この方法は、一般的なアレイアンテナにおける到来方向推定方法であるビームフォーマ法(beamformer method)と呼ばれる手法であり、アレイアンテナの到来波の到来方向推定方法として従前より知られている手法である(非特許文献1,pp.47-48,非特許文献2参照)。
尚、一般的なアレイアンテナにおける到来波の到来方向推定方法としては、これ以外にも、Capon法(Capon's beamformer method)(非特許文献1,pp.49-51参照)、線形予測法(Linear Prediction (LP) method)(非特許文献1,pp.51-52参照)、最尤推定法(maximum likelihood method)(非特許文献1,pp.52-54参照)、部分空間ベース法(subspace-based method)(非特許文献1,pp. 54-56参照)、MUSIC(Multiple Signal Classification)(非特許文献1,pp. 57-61参照)、最小ノルム法(minimum norm method)(非特許文献1,p. 61参照)、ESPRIT(Estimation of Signal Parameter via Rotational Invariance Techniques)(非特許文献1,p. 62参照)などが知られている。これらは、主にRFタグとしてアクティブタグを用いるようなRFIDシステムに対して適用が可能と考えられる。
米国特許第9954278号明細書 米国特許第10430623号明細書
Z.Chen, G.Gokeda, and Y.Yu, "Introduction to Direction-of-Arrival Estimation (Artech House Remote Sensing Library)", 初版, Artech House, 2010年2月. S. N. Bhuiya, F. Islam, and M. A. Matin, "Analysis of Direction of Arrival Techniques Using Uniform Linear Array", International Journal of Computer Theory and Engineering, 2012年12月, Vol.4, No.6, pp.931-934. K. Takao, M. Fujita, T. Nishi, "An adaptive antenna array under directional constraint", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol.24, No.5, Sep 1976, pp.662-669.
実際に、人や物の移動の探知、出入場管理など様々な用途でRFタグを用いる場面に於いて、RFタグの位置をリアルタイムに検出する技術が求められている。特許文献2に示された技術を用いれば、RFIDリーダのアレイアンテナに対するRFタグの相対的な方位を検出することが可能である。また、アレイアンテナの受信範囲がオーバーラップするようにアレイアンテナを室内に間隔をあけて複数設けることによって、連続的に移動するRFタグの追跡が可能となる(特許文献2,Fig.20−22参照)。
然し乍ら、特許文献2に記載の手法では、アレイアンテナに対するRFタグの相対的な方位は検出できるが、RFタグの高さ(3次元空間内の位置)までは検出することができない。また、上述した、各種のアレイアンテナにおける到来波の到来方向推定方法においても、到来波の到来方向の推定は行うが、到来波の電波源までの距離の推定を行うものではない。従って、例えば、商品の管理を、RFタグを用いて行う場合、RFタグが付された商品がどの方向に存在するかは検出可能であるが、多数の商品棚が並んであると、どの商品棚のどの段にその商品があるのかまでは検出できない。
そこで、本発明の目的は、RFIDシステムに於いて、RFタグの3次元的な位置を検出するRFタグ位置検出装置を提供することにある。
本発明に係るRFタグ位置検出装置の第1の構成は、RFタグからの到来波を受信する、面状に配列された4以上のアンテナ素子を具備するアレイアンテナと、
各アンテナ素子で受信される受信波の位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段が検出する位相差に基づき、前記到来波を送信したRFタグの前記アレイアンテナに対する3次元相対位置を算出するタグ位置算出手段と、を備え、
前記タグ位置算出手段は、前記各位相差を入力とし前記3次元相対位置を出力とする、機械学習可能な適応フィルタを具備することを特徴とする。
この構成により、RFタグの3次元位置を検出することができる。また、機械学習可能な適応フィルタを用いることにより、アレイアンテナの周囲の電波の反射環境に適應して補正が行われるため、アレイアンテナの周囲環境によらず最適なRFタグの3次元位置の検出が可能となる。
本発明に係るRFタグ位置検出装置の第2の構成は、前記第1の構成に於いて、前記アレイアンテナで受信されるRFタグからの到来電波の受信信号、及び該アレイアンテナの受信信号に対する応答特性関数に基づき、該到来波の到来方向を推定する到来方向検出手段を備え、
前記タグ位置算出手段は、前記各位相差及び前記到来方向を入力とし前記3次元相対位置を出力とする機械学習可能な適応フィルタを具備することを特徴とする。
この構成により、適応フィルタの機械学習の際に、RFタグの位置からアレイアンテナまでの距離測定さえすればよくなるため、機械学習の作業が容易となる。
本発明に係るRFタグ位置検出装置の第3の構成は、前記第1又は2の構成に於いて、前記アレイアンテナによりRFタグとの通信が可能な通信可能エリアのエリア内に、予め前記アレイアンテナに対する相対位置が測定されている複数個のRFタグを参照タグとしたとき、複数個の前記参照タグの前記相対位置を記憶する参照タグ位置記憶手段と、
前記各参照タグからの到来波、及び前記参照タグ位置記憶手段に記憶された前記各参照タグの前記相対位置に基づき、前記機械学習可能な適応フィルタの各ノード間の各結合の最適な重み係数を学習する学習手段を備えたことを特徴とする。
この構成により、アレイアンテナの周囲の電波の反射環境の変化に適應して機械学習による重み係数の補正が行われるため、反射環境の変化に適應して常に最適なRFタグの3次元位置の検出が可能となる。
以上のように、本発明のRFタグ位置検出装置によれば、RFタグの3次元的な位置を検出することが可能となるため、移動するRFタグの立体空間内での追跡が可能となる。
本発明の実施例1に係るRFタグ位置検出装置の構成を表すブロック図である。 実際に設置されたRFタグ位置検出装置とRFタグとの位置関係の一例を示す図である。 図1のアレイアンテナ2の一例を示す図である。 N素子リニアアレイアンテナの受信側モデルを示す図である。 N=8,θ=45度の場合のアレイファクタ|D(θ)|の指向性パターンを示す図である。 3×3素子アレイアンテナを示す図である。 2つのアンテナ素子とRFタグとの位置関係を示す図である。 位相差検出部6におけるアンテナ素子A,A間の位相差検出回路の一例を示す図である。 タグ位置検出部7にNNFを用いたRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。 実施例1における適応フィルタの最初の学習方法の一例を示す図である。 本発明の実施例2に係るRFタグ位置検出装置の構成を表すブロック図である。 タグ位置検出部7にNNFを用いた図11のRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。 実施例3に係るRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。 実施例4に係るRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。 特許文献1,2に記載のRFIDリーダ用アレイアンテナである。 特許文献2に記載のRFIDリーダ
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)RFタグ位置検出装置の構成
図1は、本発明の実施例1に係るRFタグ位置検出装置の構成を表すブロック図である。RFタグ位置検出装置1は、アレイアンテナ2、送受信部3、振幅調整移相部4、到来方向検出部5、位相差検出部6、タグ位置検出部7、参照タグ位置入力部8、参照タグ位置記憶部9、及びNNF学習部10を備えている。アレイアンテナ2は、面状に配列された4以上のアンテナ素子を具備するアンテナである。アレイアンテナ2は、RFタグ20との間で電波の送受信を行う。RFタグ20は、ID情報を記録した微小な電子チップと無線通信用のアンテナを備えたタグである。RFタグ20は、アクティブタグ、パッシブタグ、半アクティブタグの何れでもよい。送受信部3は、アレイアンテナ2を介してRFタグ20とのデータの送受信の処理を行うモジュールである。振幅調整移相部4は、アレイアンテナ2の各アンテナ素子の入出力信号の位相及びゲインの調整を行うモジュールである。到来方向検出部5は、アレイアンテナ2で受信されるRFタグ20からの到来電波の受信信号、及び該アレイアンテナ2の受信信号に対する応答特性関数に基づき、該到来波の到来方向を推定する処理を行うモジュールである。位相差検出部6は、各アンテナ素子で受信される受信波の位相差を検出するモジュールである。タグ位置検出部7は、RFタグ20のアレイアンテナ2に対する3次元相対位置を算出するモジュールである。このタグ位置検出部7は、位相差検出部6が検出する各位相差、及び到来方向検出部5が検出する到来方向を入力とし、RFタグ20のアレイアンテナ2に対する3次元相対位置を出力とする機械学習可能な適応フィルタを具備している。参照タグ位置入力部8は、各参照タグ20aのアレイアンテナ2に対する相対位置を入力する装置である。ここで、「参照タグ」とは、アレイアンテナ2によりRFタグとの通信が可能な通信可能エリアのエリア内に設置されたRFタグであって、予めアレイアンテナ2との相対位置が測定されているものをいう。参照タグは、アレイアンテナ2の通信可能エリア内に、タグ位置検出部7の機械学習可能な適応フィルタの学習に必要な数だけ複数個設置される。参照タグ位置記憶部9は、各参照タグ20aのアレイアンテナ2に対する相対位置を記憶するモジュールである。NNF学習部10は、各参照タグ20aからの到来波、及び参照タグ位置入力部8に記憶された各参照タグ20aの相対位置に基づき、タグ位置検出部7の機械学習可能な適応フィルタの各ノード間の各結合の最適な重み係数を機械学習する処理を行うモジュールである。
図2は、実際に設置されたRFタグ位置検出装置とRFタグとの位置関係の一例を示す図である。図2は、床面Fと天井面Cに挟まれた室内空間を表している。S,S,Sは、室内に固定的に設置された構造物(例えば、机、棚等)である。RFタグ位置検出装置1は、室内の天井面Cに固定して設置されている。また、各参照タグ20aは、RFタグ位置検出装置1のアレイアンテナ2によりRFタグとの通信が可能な通信可能エリアR内にある室内構造物S,S,Sに固定して設置される。図2では、3つの参照タグ20aを示しているが、参照タグ20aは機械学習において十分な学習精度を得るのに必要な数だけ設置する。
図3は、図1のアレイアンテナ2の一例を示す図である。(a)はアレイアンテナ2の斜視図、(b)はアレイアンテナ2のアンテナ素子配列を示す平面図、(c)はアレイアンテナ2のアンテナ素子配列の他の例を示す平面図である。図3では、アレイアンテナ2としてパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)を用いた例を示すが、アンテナ素子2aとしては、他にも、スロットアンテナ、ワイヤアンテナ、ホーンアンテナ、ヘリカルアンテナ等を用いることもできる。
図3において、アレイアンテナ2は、電気的に接地されている平板状のグランド板2bの上面に、複数のアンテナ素子2aが配列された構造を有している。アンテナ素子2aの配列としては、図3(b)のように縦横に格子状に配列してもよいし、図3(c)のように、中心のアンテナ素子に対して周辺の各アンテナ素子が等距離となるように配列してもよい。ビームステアリングの際のメインローブ強度の変化を滑らかにする観点から、アンテナ素子2aの配列は、中心Oに対して対称となるように配列することが好ましい。また、図3では、アンテナ素子2aの数は9個の例を示しているが、アンテナ素子2aの数は、これに限られない。
(2)RFタグ位置検出装置の動作
以上のように構成された本実施例のRFタグ位置検出装置1について、以下、その動作を説明する。
(2.1)アレイアンテナの動作の基本的事項
後で説明する到来方向検出部5,タグ位置検出部7の動作説明において必要であるため、最初に、アレイアンテナの動作の基本的な事項について簡単に説明しておく。ここでは、説明を簡単にするため、N素子リニアアレイアンテナについて説明する。図4に、N素子リニアアレイアンテナの受信側モデルを示す。図4では、アンテナ素子の符号法として、A,A,…,Aを用いている。リニアアレイアンテナでは、アンテナ素子は一直線(アレイ軸)上に配列している。このアレイ軸に対して垂直な方向を「ブロードサイド」(broadside)という。アレイ軸上の任意の位置に基準点Oを置き、各アンテナ素子A(i=1,…,N)の基準点Oからの距離をdとする。このN素子リニアアレイアンテナに対して到来する電波を「到来波」(arraival wave)と呼ぶ。到来波が到来する方向を「到来方向」(direction-of-arraival:DOA)と呼ぶ。
今、このN素子リニアアレイアンテナに対してM個の到来波s,…,sが入力する場合を考える。到来波sの到来方向がブロードサイドと成す角θを「到来角」(arraival angle)と呼ぶ。各アンテナ素子2aは同一構造・同一向きであるとし、その指向性関数をg(θ)(θはブロードサイドに対する角度)とする。アレイアンテナの幅に対して各到来波sが狭帯域の場合、アンテナ素子Aに誘起される受信信号x(t)は式(1)のようになる。ここで、λは到来波の波長、dは基準点Oからアンテナ素子Aまでの距離である。
Figure 2021101156
図4に示した様に、各アンテナ素子Aに対して振幅調整移相器が設けられており、この振幅調整移相器において、受信信号x(t)はw 倍に増幅される。ここで、( )は複素共軛を表す。wはアンテナ素子Aに対する重み係数であり「複素ウエイト」(complex weight)という。そして、各振幅調整移相器の出力は加算器で加算され、アレイ出力信号y(t)として出力される。従って、アレイ出力信号y(t)は式(2a)のように表される。
Figure 2021101156
上式に於いて、s(t)はj番目の到来波の信号である。W,δは、其々、振幅調整移相器のゲイン(振幅重み係数),移相量である。D(θ)は「アレイファクタ」(array factor)といい、アレイアンテナに対する固有の関数である。式(2a)より、アレイアンテナ全体の指向性は、アンテナ素子2aの指向性関数g(θ)とアレイファクタD(θ)の積で表されている。従って、各アンテナ素子2aは同一構造・同一向きの場合、アレイファクタD(θ)を制御することによって、アレイアンテナ全体の指向性を調整することができる。もし、到来角θの方向に対してアレイファクタD(θ)を最大としたい場合には、各振幅調整移相器の移相量δを次式(3)のように設定すればよい。
Figure 2021101156
このとき、到来角θの方向からの到来信号に対しては、各アンテナ素子の振幅調整移相器の出力の位相が揃うため、合成すると互いに強め合いアレイ出力信号y(t)は最大となる。到来角が角θの方向からずれると、各アンテナ素子の振幅調整移相器の出力の位相が一致せず、合成すると互いに相殺してアレイ出力信号y(t)は弱まる。このようにして、アレイアンテナでは、特定の方向の到来信号に対する利得が向上する。ここでは、受信信号の場合について説明したが、送信信号の場合についても全く同様のことがいえる。
一例として、図5に、N=8,θ=45度の場合のアレイファクタ|D(θ)|の指向性パターンを示す。この場合、到来角θが45度の周辺でアレイファクタ|D(θ)|の大きさは最大となる。図5の指向性パターンにおいて、幾つかの方向に対して|D(θ)|の極大値がみられるが、これらの極大値周辺の葉状曲線を「ローブ」(lobe)という。指向性パターンが最大となる方向(θ=45度)の周辺を「メインローブ」(main lobe)という。メインローブ以外のローブを「サイドローブ」(side lobe)という。また、ローブとローブの間の零点を「ヌル」(null)という。
尚、ここでは、簡単に説明を行うため、リニアアレイアンテナについて説明するが、アンテナ素子が一平面内に2次元状に配置された平面アレイアンテナの場合についても同様に考えることが出来る。この場合、到来角は2次元(θ,φ)となるので、アンテナ素子の指向性関数及びアレイファクタは、g(θ,φ),D(θ,φ)のように表される。ここで、θは到来波sの到来方向がブロードサイドと成す角、φは到来方向のxy平面上の方位角(到来方向ベクトルのxy平面内成分のx軸に対する角度)である(以下の説明ではθを「垂直角」、φを「水平角」という)。平面アレイアンテナに対して座標系を図3(a)のように設定した場合、アレイファクタD(θ,φ)は次式(4a)のように表される。ここで、ベクトルdは基準点Oに対するアンテナ素子Aの相対位置ベクトル、ベクトルuは到来方向の単位ベクトルである。
Figure 2021101156
今、受信信号x(t),複素ウエイトw(i=1,…,N)を次式(5a),(5c)のようにベクトルx(t),wで表記し、其々、入力ベクトル(input vector),ウエイトベクトル(weight vector)と呼ぶ。
Figure 2021101156
ここで、式(5b)のベクトルa(θ)は「アレイ応答ベクトル」(array response vector)という。このベクトルx(t),wを用いて、アレイ出力信号y(t)は式(6)のように表される。ここで、( )は転置、( )は複素共軛転置(エルミート共軛)、( )は複素共軛を表す。
Figure 2021101156
実際の装置に於いては、各アンテナ素子の入力信号x(t)は、到来信号成分と雑音成分との和で表される。従って、実際に観測されるアレイ出力信号y(t)を議論する場合には、期待値(アンサンブル平均)を求める必要がある。式(6)より、到来角θ方向(メインローブ方向)に対するアレイアンテナのアレイ出力信号y(t)及び出力電力Poutは次式(7a),(7b)のようになる。
Figure 2021101156
ここで、E[ ]は期待値(アンサンブル平均)を表す。ベクトルn(t)は雑音ベクトルを表す。行列Rxxは相関行列(共分散行列)である。尚、ここでは、簡略化のため1つの到来波(M=1)の場合を考え、到来波の信号をs(t)とした。従って、アレイアンテナの出力SINR(Signal-to-Interference-pulse-Noise Ratio)は次のように表される。
Figure 2021101156
ここで、Ps=E[|s(t)|]は到来波の信号電力、Pは1つのアンテナ素子当たりの雑音電力である。ww=const.なので、式(8a)の分子が最大となるときに出力SINRが最大となる。従って、出力SINRが最大となる条件は、ウエイトベクトルwが受信波の振幅調整移相器出力の位相を揃える共相共振ベクトルとなる場合であり、次のように表される。
Figure 2021101156
この共相共振のウエイトベクトルwを用いるアレイを「フェイズドアレイ」(phased array)という。尚、平面アレイアンテナの場合には、共相条件(同相となるように位相を揃える条件)は次のように表される。
Figure 2021101156
ここで、(θ,φ)はメインローブの方向を表す垂直角及び水平角である。
(2.2)到来方向検出部5の動作
RFタグ20がパッシブタグである場合、RFタグ20は後方散乱の手法(アレイアンテナ2から送信される電波の一部を反射させると共に、これを変調することにより反射波に応答信号を載せて発信する手法)により応答信号を送信する。従って、RFタグ20が応答信号を送信するには、アレイアンテナ2のメインローブがRFタグ20の方向を向いていなければならない。従って、到来方向検出部5がRFタグ20の方向を検出する手法としては、ビームフォーマ法やCapon法を用いるのが好適であると考えられる。一方、RFタグ20がアクティブタグや半アクティブタグの場合には、質問信号の電力がRFタグ20の受信限界電力を下回らなければ、必ずしも、アレイアンテナ2のメインローブがRFタグ20の方向を向いている必要はない。従って、到来方向検出部5がRFタグ20の方向を検出する手法としては、アレイアンテナ2のビーム幅、サイドローブ、及びノイズに対してよりロバストな手法である、線形予測法、最尤推定法、部分空間ベース法、MUSIC、最小ノルム法、ESPRITなどの公知の統計的手法を使用することが好適である。これらの手法の詳細については、非特許文献1などに記載されており、既に公知であるため、ここでは説明を省略する。
本実施例では、RFタグ20がパッシブタグである場合を想定し、到来方向検出部5がビームフォーマ法又はCapon法を用いてRFタグ20の方向の検出を行う場合について説明する。この場合、到来方向検出部5は、アレイアンテナ2のメインローブを、ステアリング範囲内で全方向に亘って走査し、アレイの出力電力が最も大きくなる方向を探査する。メインローブの走査は、基本的には、各振幅調整移相器の複素ウエイトwを制御することにより制御することができる。例えば、アレイアンテナ2のメインローブを、角度(θ,φ)の方向に向けるには、ウエイトベクトルwを式(10)のように設定すればよい。メインローブの角度θ,φを、其々、−90度から90度まで変化させ、アレイアンテナ2の出力電圧のピークを探索する。式(10)のa(θ,φ)は「モードベクトル」(mode vector)と呼ばれる。ウエイトベクトルをw=a(θ,φ)の共相条件に設定したとき、アレイアンテナ2の出力電力は次のようになる。
Figure 2021101156
従って、アレイアンテナ2の出力電力の角度スペクトラムPBF(θ,φ)は、この出力電力関数を次のように正規化することで計算することが出来る。
Figure 2021101156
到来方向検出部5は、入力ベクトルの相関行列Rxxとモードベクトルa(θ,φ)を用いて角度スペクトラムPBF(θ,φ)を求め、角(θ,φ)を変化させたときのPBF(θ,φ)のピークの位置から、応答信号の到来方向の到来角(θ,φ)を求める。
以上はビームフォーマ法を使用する場合の説明であるが、指向性曲線のサイドローブの影響をより低減するには、Capon法を用いる。Capon法の場合、アダプティブアレイに於ける方向拘束付出力電力最小化法(directionally constraint minimization of power method:DCMP)の考え方を応用し、或る方向にメインローブを向けると同時に、他の方向からの到来波の出力への寄与を最小化するという考え方に基づき計算が行われる(例えば、非特許文献3参照)。ここでは詳細な説明は省略するが、この場合、アレイアンテナ2の出力電力の角度スペクトラムPCP(θ,φ)は次のように計算される。
Figure 2021101156
この場合には、到来方向検出部5は、入力ベクトルの相関行列Rxxとモードベクトルa(θ,φ)を用いて角度スペクトラムPCP(θ,φ)を求め、角(θ,φ)を変化させたときのPCP(θ,φ)のピークの位置から、応答信号の到来方向の到来角(θ,φ)を求める。
尚、ここでは、一例として、ビームフォーマ法及びCapon法の適用例について説明したが、本発明に於ける到来方向検出部5による応答信号の到来方向(θ,φ)の検出手法については、上述したような他の公知の統計的手法を用いることもできる。
尚、これらの応答信号の到来方向(θ,φ)の検出手法は、何れも、RFタグの位置がアレイアンテナから十分に離れており、各アンテナ素子に入射する応答信号の到来方向は近似的に等しいと仮定している(無限遠方近似)ことに注意しておく。
(2.3)タグ位置検出部7の動作
タグ位置検出部7の動作を説明する前に、RFタグ20の3次元座標は、原理的には、アレイアンテナ2の各アンテナ素子2aで受信される到来波の位相差により求められることを示す。
(2.3.1)アレイアンテナに於ける到来波からのRFタグの位置検出(その1)
まず、一例として図6に示した様な3×3素子アレイアンテナを考える。正方格子状に配列された各アンテナ素子を、其々、A,A,…,Aと付号し、アンテナ素子Aが中央とし、アンテナ素子A,…,Aをアンテナ素子Aの左下から反時計回りに配置する。これらのアンテナ素子A,…,Aが配置された平面を「アレイ面」(array plane)といい、アレイ面に対して垂直前方(電波の放射方向を「前方」とする。)を「ブロードサイド」(broadside)という。中央のアンテナ素子Aの中心位置を原点Oとし、原点Oからアンテナ素子Aの中心位置に向かう軸をx軸、原点Oからアンテナ素子Aの中心位置に向かう軸をy軸、原点Oからブロードサイドに向かう軸をz軸とする。アンテナ素子A,…,Aが配置された正方格子の格子点の間隔をaとする。xy平面上の格子点Aの位置座標を(x,y)とする。A(0,0)である。中央のアンテナ素子Aを「中心アンテナ素子」といい、中心アンテナ素子Aの周囲のアンテナ素子(A,…,A)(N=8)を「周辺アンテナ素子」という。
今、中央のアンテナ素子A(0,0,0)と、何れか一つの周辺のアンテナ素子A(x,y,0)(i=1,…,8)を考える。そして、図7に示すように、3次元空間内の点T(x,y,z)(z>0)にRFタグがあるとする。点Tからxy平面に下ろした垂線の足をT(x,y,0)とする。直線OTの方向がRFタグからの応答信号が到来する「到来方向」である。直線OTがz軸(ブロードサイド)と成す角をθ、直線OTがx軸と成す角をφとする。角θを「垂直到来角」といい、角φを「水平到来角」という。応答信号の到来方向は垂直到来角と水平到来角の組(θ,φ)で表される。また、図7に示したように、点Aと点Tの間の距離をl、点Aと点Tの間の距離をl、点Aと点Aの間の距離をr=√(x +y )、Δl=l−iとする。
ここで、Δlは、到来波の波長λとアンテナ素子A,Aの受信波間の位相差Δψにより、
Figure 2021101156
の関係から求めることが出来る。尚、位相差Δψは、図1の位相差検出部6により検出される。図8に、位相差検出部6におけるアンテナ素子A,A間の位相差検出回路の一例を示す。位相差検出回路は、例えば、図8のように、移相器、乗算器、ローパスフィルタ(LPC)、AD変換器(ADC)を用いて簡単に構成することができる。実際には、位相差検出回路の入力信号は、アレイアンテナ2の指向性曲線による振幅変化を生じるので、さらに入力信号にアレイ応答ベクトルa(θ,φ)による補正、又はAGCアンプ(Automatic Gain Control amplifier)による振幅均一化の補正をかける必要がある。
図7より、距離差Δlは次のように表される。
Figure 2021101156
これを、x,y,zについて整理すると、次のようになる。
Figure 2021101156
同様に、他の2つの周辺のアンテナ素子A(x,y,0),A(x,y,0)についても同様に計算すると、(x,y,z)についての次の式が得られる。
Figure 2021101156
式(16a),(16b),(16c)からzを消去すれば、(x,y)についての次の連立2次方程式が得られる。
Figure 2021101156
これは、(x,y)についての4次方程式に帰着するため、解析的に解くことは可能である。(x,y)が求まれば、式(16a),(16b),(16c)の何れかからzを計算できる。然し乍ら、式(18)は解析的に解くことは可能ではあるものの、4次方程式であるため計算は複雑である。そこで、アレイアンテナが、図6のような4回回転対称の対称性のあるアンテナ素子の配置を有していることを利用すると、次のようにしてより簡単に計算することが出来る。
今、アンテナ素子Aを対称中心とする4回回転対称の対称性の位置に配置された4つのアンテナ素子(A,A,A,A)=(A,A,A,A)、及び中心のアンテナ素子Aを考える(図6参照)。アンテナ素子A,A,A,Aの座標を、A(a,0,0),A(−a,0,0),A(0,−a,0),A(0,a,0)とする。
まず、4つのアンテナ素子の組(A,A,A,A)についての連立2次方程式(18a)を考えると、式(18b),(18c)の各係数は次のようになる。
Figure 2021101156
従って、連立2次方程式(18a)からy を消去すると、x ,x,yについての次の式が得られる。
Figure 2021101156
まず、4つのアンテナ素子の組(A,A,A,A)についても同様に考えると、x ,x,yについての次の式が得られる。
Figure 2021101156
式(20),(21a)からyを消去すればxの2次方程式が得られ、その2次方程式を解くことによりxが求められる。そして、求められたxを式(20),(21a)の何れかに代入すれば、yが求められる。最終的にx,yは次式により表される。
Figure 2021101156
ここで、式(22a)右辺の±の符号は、Δl,Δlの符号により決定する。即ち、図7より、x>0のとき、Δl=l−l<0,Δl=l−l>0であり、x<0のとき、Δl=l−l>0,Δl=l−l<0であるので、式(22a)右辺の±の符号は、(Δl<0,Δl>0)のときは+、(Δl>0,Δl<0)のときは−と決定すればよい。
同様に、図6の4回回転対称位置の4つのアンテナ素子(A,A,A,A)=(A,A,A,A)及び中心のアンテナ素子Aを用いても、同様の計算によってRFタグの3次元位置(x,y,z)を算出することができる。この場合、xy座標軸を、z軸を中心に45度回転した座標系である(x’y’z)座標系に於いてRFタグの3次元位置(x’,y’,z)を算出した後、xy座標軸を−45度回転して元の(xyz)座標系のRFタグの3次元位置(x,y,z)に換算すればよい。そして、最終的なRFタグの3次元位置(x,y,z)は、アンテナ素子組(A,A,A,A,A),(A,A,A,A,A)で計算した3次元位置座標の平均値とすればよい。
(2.3.2)アレイアンテナに於ける到来波からのRFタグの位置検出(その2)
中心のアンテナ素子Aに対するRFタグTからの応答信号の到来方向(θ,φ)が既知である場合には、より容易にRFタグTの3次元座標を決定することができる。今、図7に示した様に、2つのアンテナ素子Aに対して到来方向(θ,φ)からRFタグTの応答信号が入射する場合を考える。座標系は図7に示した通りに設定し、アンテナ素子Aは原点Oにあるとする。アンテナ素子Aの位置ベクトルをベクトルq=(x,y,0)、RFタグTの位置ベクトルをベクトルt=(x,y,z)、アンテナ素子Aからアンテナ素子Aまでの距離をr=√(x +y )、アンテナ素子AからRFタグTまでの距離をl、アンテナ素子AからRFタグTまでの距離をlとする。このとき、距離l,距離l,ベクトルt,ベクトルt方向の単位ベクトルu,ベクトルq方向の単位ベクトルuは次のように表される。
Figure 2021101156
アンテナ素子A,Aで受信される受信信号をx(t),x(t)とし、受信信号x(t),x(t)の位相差をΔψ=ψ−ψとする。位相差Δψは位相差検出部6により図8のような回路を用いて検出される。また、式(14)より、位相差Δψから距離l,lの距離差Δl=l−lが求められる。
一方、距離差Δlは式(23a),(23b)より、
Figure 2021101156
であり、これより距離lは次のように表される。
Figure 2021101156
式(25a)により距離lを求めることができれば、RFタグTの3次元座標(x,y,z)は式(23c)により決定される。ここで、RFタグTからの応答信号の到来方向(θ,φ)は、到来方向検出部5によって推定検出される値を使用することができる。然し乍ら、到来方向検出部5による到来方向(θ,φ)の推定手法は、RFタグTの位置を無限遠方で近似した無限遠方近似を用いているのに対し、ここで示した式(25a)は、無限遠方近似は用いていない。従って、この計算方法は、原理的に一定の誤差を含むことになることに注意しておく。
尚、この場合、全ての周辺アンテナ素子A(i=1,…,N)(Nは周辺アンテナ素子の素子数)について、RFタグTの3次元座標(x,y,z)が算出されるので、最終的なRFタグTの3次元座標(x,y,z)は、得られたN個の3次元座標の平均値とすればよい。
(2.3.3)タグ位置検出部7によるRFタグの位置検出
上記(2.3.1)及び(2.3.2)で示したRFタグの3次元位置を求める手法においては、各アンテナ素子に加わる内部ノイズ及び外部ノイズの影響が考慮されていない。内部ノイズは、主としてアンテナ素子内の熱雑音であり、これはアンサンブル平均をとることにより一定程度その影響を除去することが可能であると考えられる。また、アンテナ素子間の電磁誘導結合による内部ノイズは、アンテナ構成や回路構成を工夫することで一定程度抑えられる。一方、外部ノイズは、RFタグの応答信号とは無相関な外来電波の影響による無相関性外部ノイズと、応答信号又は質問信号が周辺環境で反射されて生じるマルチパス・フェージングの影響による相関性外部ノイズが考えられる。特にマルチパス・フェージングの影響による相関性外部ノイズは、アレイアンテナ2の設置された周辺環境に依存し、その周辺環境も時間と共に変化すると考えられる。
そこで、本発明では、位相差検出部6に機械学習可能な適応フィルタを用いることにより相関性外部ノイズの影響を低減する。一般に、機械学習可能な適応フィルタは、変数値が保持される複数のノードと、各ノードに変数の入出力し又は各ノード間の結合する、重み係数が課せられたノード間結合を有している。各ノードの結合構成によって種々のタイプのものがあり、本発明ではそれら種々の構成のものを使用できる。本実施例では、特に自由度の高いニューラル・ネットワーク型フィルタ(Neural Network type Filter:NNF)を用いた例を示す。
図9は、タグ位置検出部7にNNFを用いたRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。本実施例のタグ位置検出部7は、NNF7a、3次元座標演算器7b、及びサンプルメモリ7cを備えている。本実施例では、到来方向検出部5が出力する到来方向(θ,φ)、位相差検出部6が出力する周辺アンテナ素子A(i=1,…,8)の受信信号の位相と中心アンテナ素子Aの受信信号の位相との位相差の標本集合{(Δψ(t),…,Δψ(t))}(tは時刻)を入力変数、中心アンテナ素子Aに対する周辺アンテナ素子A(i=1,…,8)の位置ベクトル組Q=(q,…,q)を入力定数とし、アンテナ素子AからRFタグ20までの距離lを出力変数とするNNF7aを用いる。サンプルメモリ7cは、一定の時間、各時刻t(k=1,2,…)における、位相差(Δψ(t),…,Δψ(t))を標本値として記憶・蓄積する。タグ位置検出部7に入力される各時刻t(k=1,2,…)における位相差(Δψ(t),…,Δψ(t))は、一定の標本数だけサンプルメモリ7cに蓄積された後に、NNF7aに入力される。尚、到来方向(θ,φ)に関しては、到来方向検出部5が、その計算アルゴリズムに於いて既に統計処理を行っているため、標本収集する必要はない。尚、アレイアンテナ2の取り替えがなされない場合には、位置ベクトル組Qは必ずしも必要ではない。逆に、特にRFタグ20がパッシブタグの場合、アレイアンテナ2のメインローブ方向は、RFタグ20の位置検出のための重要な情報となるため、NNF7aの変数入力として、ウエイトベクトルw(式(5c)参照)を追加することもできる。3次元座標演算器7bは、NNF7aが出力する距離lと、到来方向検出部5が出力する到来方向(θ,φ)に基づき、式(23c)によりRFタグ20の3次元座標(x,y,z)を演算し出力する。
(2.4)NNF学習部10の動作
タグ位置検出部7に適応フィルタを用いる場合には、適応フィルタの機械学習を如何に行うかが重要である。本実施例では、適応フィルタとして上述のNNF7aを使用しており、NNF学習部10は、NNF7aの各ノード間の各結合の最適な重み係数を機械学習する処理を行う。この機械学習には、参照タグ20aを使用する。最初にNNF7aの各重み係数を決める際には、アレイアンテナ2を設置した後、参照タグ20aのアレイアンテナ2との距離lを段階的に変更しながら各距離lにおいて参照タグ20aを移動させて学習を行うことにより、NNF7aの機械学習を行うことができる。これは、例えば、図10に示した様に、アレイアンテナ2の中心に長さlの絶縁体のワイヤの一端を固定し、他端に参照タグ20aを固定し、ワイヤを緩みなく張った状態で参照タグ20aを移動させることにより、容易に教師データ(l,θ,φ,Δψ)(i=1,…,N)(Nは周辺アンテナ素子Aの素子数)の収集を行うことが可能である。尚、教師データを用いたNNF学習部10による機械学習の方法としては、深層学習などの公知の方法を用いることが出来る。
NNF7aの最初の各重み係数の設定を行った後は、その重み係数を用いてRFタグ20の3次元座標(x,y,z)の検出を行うが、アレイアンテナ2の周辺環境の変化により電波の反射状態が変化すると、NNF7aの各重み係数が最適値からずれてくると考えられる。そこで、図2に示した様に、アレイアンテナ2によりRFタグ20との通信が可能な通信可能エリアのエリア内の固定的な室内構造物(S,S,S等)に、複数の参照タグ20aを設置しておくとともに、設置した各参照タグ20aのアレイアンテナ2に対する相対位置(θ,φ,l)をレーザー測距計などで測定し、参照タグ位置記憶部9に記憶させておく。そして、NNF学習部10は、一定の期間ごとに各参照タグ20aからの到来波、及び参照タグ位置記憶部9に記憶された各参照タグ20aの相対位置(θ,φ,l)に基づき、各結合の最適な重み係数を機械学習により更新する。これにより、アレイアンテナ2の周辺環境の変化に適應して、常に精度のよいRFタグ20の3次元座標(x,y,z)の検出が可能となる。
図11は、本発明の実施例2に係るRFタグ位置検出装置の構成を表すブロック図である。図12は、タグ位置検出部7にNNFを用いた図11のRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。本実施例のRFタグ位置検出装置1は、実施例1と比較すると、到来方向検出部5が省略されている点、タグ位置検出部7の3次元座標演算器7bが省略されている点、タグ位置検出部7のNNF7aの入力変数を、位相差検出部6が出力する周辺アンテナ素子A(i=1,…,8)の受信信号の位相と中心アンテナ素子Aの受信信号の位相との位相差の標本集合{(Δψ(t),…,Δψ(t))}(tは時刻)とし、タグ位置検出部7のNNF7aの出力変数をRFタグ20の3次元座標(x,y,z)とした点が相違している。実施例1の場合と同様、NNF7aの入力変数として、ウエイトベクトルw(式(5c)参照)や中心アンテナ素子Aに対する周辺アンテナ素子A(i=1,…,8)の位置ベクトル組Q=(q,…,q)を追加することもできる。
実施例1の(2.3.1)で説明したように、周辺アンテナ素子A(i=1,…,8)の受信信号の位相と中心アンテナ素子Aの受信信号の位相との位相差(Δψ,…,Δψ)(Nは周辺アンテナ素子の素子数)のみからでも、原理的には、RFタグ20の3次元座標(x,y,z)の算出が可能であるため、本実施例のように、到来方向検出部5を省略することも可能である。この場合、NNF7aの機械学習を行う際の教師データとして、参照タグ20aの3次元位置座標(x,y,z)とそれに対する位相差の標本集合{(Δψ(t),…,Δψ(t))}が多数必要となる。この場合、参照タグ20aの3次元位置座標(x,y,z)の測定に、3次元座標の測量機器が必要となる点で、実施例1に比べて最初の機械学習の教師データの収集に労力を要することになるが、このような構成によってもRFタグ20の3次元座標(x,y,z)の検出を行うことが可能である。
図13は、実施例3に係るRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。尚、実施例3のRFタグ位置検出装置1の全体構成は実施例1の図1と同様であるとする。実施例1と比較すると、本実施例のRFタグ位置検出装置1では、タグ位置検出部7が新たに位置座標演算器7dを備えている点、及びNNF7aの入力変数に位置座標演算器7dが出力する位置座標値の標本集合{(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))}(tは時刻)が追加された点が相違している。
位置座標演算器7dは、実施例1の(2.3.2)で説明した手法(式(25a),(23c)参照)により、各時刻tで位相差検出部6が検出する各アンテナ素子で受信される受信波間の位相差Δψ(t)(i=1,…,N)(Nは周辺アンテナ素子の素子数)、及び到来方向検出部5により検出されるRFタグ20からの到来波の到来方向(θ,φ)に基づき、ノイズを考慮しない場合のRFタグ20の位置座標値(x (0) (t),y (0) (t),z (0) (t))を算出するモジュールである。サンプルメモリ7cは、一定の時間、各時刻t(k=1,2,…)における、位相差(Δψ(t),…,Δψ(t))及びノイズを考慮しない位置座標値(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))を標本値として記憶・蓄積する。位相差(Δψ(t),…,Δψ(t))及びノイズを考慮しない位置座標値(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))は、一定の標本数だけサンプルメモリ7cに蓄積された後に、NNF7aに入力される。NNF7aは、到来方向検出部5が出力する到来方向(θ,φ)、位相差検出部6が出力する周辺アンテナ素子A(i=1,…,N)の受信信号の位相と中心アンテナ素子Aの受信信号の位相との位相差の標本集合{(Δψ(t),…,Δψ(t))}、及び位置座標演算器7dが出力する位置座標値の標本集合{(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))}を入力変数とし、アンテナ素子AからRFタグ20までの距離lを出力変数とする。従って、本実施例では、NNF7aは、ノイズを考慮しないで計算したRFタグ20の位置座標値(x (0),y (0),z (0))から、ノイズの影響を除去するフィルタとしての役割を担うものである。
図14は、実施例4に係るRFタグ位置検出装置1の主要部を表すブロック図である。尚、実施例4のRFタグ位置検出装置1の全体構成は実施例2の図11と同様であるとする。実施例2と比較すると、本実施例のRFタグ位置検出装置1では、タグ位置検出部7が新たに位置座標演算器7dを備えている点、及びNNF7aの入力変数に位置座標演算器7dが出力する位置座標値の標本集合{(x (0),y (0),z (0))}が追加された点が相違している。
位置座標演算器7dは、実施例1の(2.3.1)で説明した手法(式(18a)又は式(22a),(22b)参照)により、各時刻tに位相差検出部6が検出する各アンテナ素子で受信される受信波間の位相差Δψ(t)(i=1,…,N)(Nは周辺アンテナ素子の素子数)に基づき、ノイズを考慮しない場合のRFタグ20の位置座標値(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))を算出するモジュールである。サンプルメモリ7cは、一定の時間、各時刻t(k=1,2,…)における、位相差(Δψ(t),…,Δψ(t))及びノイズを考慮しない位置座標値(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))を標本値として記憶・蓄積する。位相差(Δψ(t),…,Δψ(t))及びノイズを考慮しない位置座標値(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))は、一定の標本数だけサンプルメモリ7cに蓄積された後に、NNF7aに入力される。NNF7aは、位相差検出部6が出力する周辺アンテナ素子A(i=1,…,N)の受信信号の位相と中心アンテナ素子Aの受信信号の位相との位相差の標本集合{(Δψ(t),…,Δψ(t))}、及び位置座標演算器7dが出力する位置座標値の標本集合{(x (0)(t),y (0)(t),z (0)(t))}を入力変数とし、アンテナ素子AからRFタグ20までの距離lを出力変数とする。従って、本実施例では、NNF7aは、ノイズを考慮しないで計算したRFタグ20の位置座標値(x (0),y (0),z (0))から、ノイズの影響を除去するフィルタとしての役割を担うものである。
1 RFタグ位置検出装置
2 アレイアンテナ
2a アンテナ素子
2b グランド板
3 送受信部
4 振幅調整移相部
5 到来方向検出部
6 位相差検出部
7 タグ位置検出部
7a NNF
7b 3次元座標演算器
7c サンプルメモリ
7d 位置座標演算器
8 参照タグ位置入力部
9 参照タグ位置記憶部
10 NNF学習部
20 RFタグ
20a 参照タグ

Claims (3)

  1. RFタグからの到来波を受信する、面状に配列された4以上のアンテナ素子を具備するアレイアンテナと、
    各アンテナ素子で受信される受信波の位相差を検出する位相差検出手段と、
    前記位相差検出手段が検出する位相差に基づき、前記到来波を送信したRFタグの前記アレイアンテナに対する3次元相対位置を算出するタグ位置算出手段と、を備え、
    前記タグ位置算出手段は、前記各位相差を入力とし前記3次元相対位置を出力とする、機械学習可能な適応フィルタを具備することを特徴とするRFタグ位置検出装置。
  2. 前記アレイアンテナで受信されるRFタグからの到来電波の受信信号、及び該アレイアンテナの受信信号に対する応答特性関数に基づき、該到来波の到来方向を推定する到来方向検出手段を備え、
    前記タグ位置算出手段は、前記各位相差及び前記到来方向を入力とし前記3次元相対位置を出力とする機械学習可能な適応フィルタを具備することを特徴とする請求項1記載のRFタグ位置検出装置。
  3. 前記アレイアンテナによりRFタグとの通信が可能な通信可能エリアのエリア内に、予め前記アレイアンテナに対する相対位置が測定されている複数個のRFタグを参照タグとしたとき、複数個の前記参照タグの前記相対位置を記憶する参照タグ位置記憶手段と、
    前記各参照タグからの到来波、及び前記参照タグ位置記憶手段に記憶された前記各参照タグの前記相対位置に基づき、前記機械学習可能な適応フィルタの各ノード間の各結合の最適な重み係数を学習する学習手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のRFタグ位置検出装置。
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