JP2021100325A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、再生可能エネルギーを利用して、電力系統の安定化を支援する再生可能エネルギー系統安定化システム及び系統安定化支援方法に関する。
電力系統に生じる電気的な系統状態量の動揺を抑制する電力系統安定システムにおける制御として、例えば、送電線などの事故に対して、電力系統の過渡安定化を図るために、或いは送電線や変圧器の過負荷を防止するために、必要な量の発電機を遮断する制御(電源制限と呼ぶ)がある。また、電力系統の周波数低下時に、電力系統の動揺を抑制するために、必要な量の負荷を遮断する制御(負荷制限と呼ぶ)がある。これら系統状態量の動揺を抑制する制御を実行する場合、電力系統の状態に対応させて調整する必要がある。
一方、電力系統で生じる可能性のある系統状態量の動揺を事前に予測し、予測結果に従って動揺抑制の制御内容を予め設定し、動揺が発生したときに、予め設定した制御を行う方法がある。例えば、非特許文献1の「オンライン安定度計算による脱調未然防止システム(TSC)の開発」に述べられているように、送電線などの故障に対して系統の過渡安定度を維持するために必要な量の発電機を遮断するシステムがある。
このシステムは、周期的に系統状態量を取り込み、複数の想定される事故ケ-スについて、事前に過渡安定度計算を行って、必要な量の電源制限機(以下、電制機と呼ぶ)を求め、求めた内容を制御テーブルに記録して更新し、実際の事故発生に備える構成を採用している。そして、このシステムは、実際に故障が発生した場合、発生した事故に対応する電制機を、予め求めておいた電制機の中から検索し、検索された電制機を遮断することにより電力系統の安定化を図るものである。
一方、近年、風力発電装置や太陽光発電装置などの再生可能エネルギー装置が多数台導入されている。この際、再生可能エネルギー装置の電力が既設の電力系統に供給されると、送電線や変圧器などの系統設備に流れる電力が大きく変動し、平常時の過負荷問題や事故時の安定度維持問題などが発生するおそれがある。これらの諸問題を解決するために、特許文献1のように、再生可能エネルギー装置や発電機を制御し、安定度を維持することが知られている。
電気学会論文誌B115巻1号(平成7年1月)
太陽光発電装置や風力発電装置などの再生可能エネルギー装置からの出力は、短い時間で大きく変動するために、電力系統の電力や電圧を監視して制御する給電監視制御システムの代表例である、中央給電指令所は、送電設備に流れている電力を数秒周期で常時監視し、送電設備に流れている電力が、送電設備の運用限界値(熱限界などで決まる限界値)を超える恐れがあると運転員が判断した場合、運転員の操作により、過負荷発生の恐れがある設備の両端の発電機の出力を調整(発電機差し替え)すると共に、再生可能エネルギー装置や発電機に対して、出力抑制指令を与えて過負荷を解消することが行われる。しかし、系統設備が、ループ状の基幹系統の場合、出力抑制が複数の発電機に及ぶため、適切な過負荷解消量を算出するためには、試行錯誤を運転員に強いることになる。
また、落雷事故発生などによる系統事故時に、発電機は10秒間程度にわたり動揺するが、このような発電機の過渡的安定度維持のために、非特許文献1に記載されているように、発電機緊急停止を行う安定化対策システムが知られている。一方、今後再生可能エネルギー装置が大量に電力系統に導入されると、再生可能エネルギー装置からの出力は短い時間で大きく変動しやすく、想定した事故時の動きと異なる電力系統の過渡的な動きが発生し、事前に想定した安定化対策では不適切なことが起こる恐れがある。
そこで、系統安定化システムで行う事前計算では、ある程度の時間遅れ余裕と制御量余裕をもって制御するために、場合によっては系統事故発生後の事後演算・事後補正が必要になるが、再生可能エネルギー装置が大量に稼働すると、再生可能エネルギー装置からの出力が短い時間に変動するため、事後演算・事後補正も適切でなくなるおそれがある。
また一般の発電機と違って、再生可能エネルギー装置は、力率一定で運転されることが一般的であり、無効電力を短時間に電力系統へ供給する量あるいは電力系統から吸収する量が大きくないため、系統設備の電圧が変動しやすくなる。例えば、発電機が停止した場合、電力系統の周波数が低下するので、停止した発電機の出力相当の需要負荷を緊急遮断する。しかし、この際、もし電力系統の電圧が上昇すると、電力系統の負荷が重くなるため、負荷遮断量に電圧補正を加えないと、制御量不足となり、電力系統における周波数の大幅な低下につながり、結果として、電力系統内の多くの発電機の連鎖的停止が起こり、電力系統全体が停電する、いわゆるブラックアウトになることがある。
本発明の課題は、電力系統に接続される再生可能エネルギー装置からの電力が増加しても、電力系統の潮流状態に応じて系統設備の運用限界値を変更することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、少なくとも火力を発電エネルギーとして発電する火力発電機を含む第1の電源と、再生可能エネルギーにより発電する再生可能エネルギー装置を含む第2の電源のうち少なくとも一方の電源と負荷とを結ぶ電力系統の運用を支援するシステムあって、系統設備の潮流電力に関する運用限界値を管理する運用限界値管理部と、前記第1の電源の発電計画値と、前記第2の電源の出力予測値、及び前記電力系統における電力需要の予測値を含む給電情報を基に、前記電力系統の将来の設定時間毎の潮流状態を算出し、算出した各潮流状態と前記運用限界値とを比較して、前記算出した各潮流状態が、安定であるか否かを判定する判定部と、を有し、前記判定部は、前記第1の電源の発電計画値で規定される前記第1の電源の第1の出力電力を順次変更し、変更した前記第1の出力電力と前記第2の電源の出力予測値とを含む電力を基に前記各潮流状態を算出し、当該算出結果を前記運用限界値管理部に出力し、前記運用限界値管理部は、前記判定部から肯定の判定結果が得られたことを条件に、前記将来の各設定時間における前記運用限界値を、前記変更された前記第1の出力電力と当該変更された第1の出力電力に付加された前記第2の電源の出力予測値との総和として管理することを特徴とする。
本発明によれば、電力系統に接続される再生可能エネルギー装置からの電力が増加しても、電力系統の潮流状態に応じて系統設備の運用限界値を変更することがきる。
本発明のそれ以外の効果については、明細書中で説明する。
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る電力系統システムの全体構成図である。図1において、電力系統システム1は、電源と負荷とを結ぶ電力系統、例えば、送電線100、101、母線102等で構成される系統を管理するシステムであって、再生可能エネルギー系統安定化システム(以下、再エネ系統安定化システムと称する。)10、給電制御所システム(給電監視制御システム)20、事故対策実行装置30を備えている。この際、再エネ系統安定化システム10は、給電制御所システム20及び事故対策実行装置30と有線又は無線で情報の送受信を行うことができる。なお、以下では、再生可能エネルギーを再エネと称することがある。
送電線100には、火力を発電エネルギーとして発電する火力発電機(第1の電源)301-1、301-2、301-3が接続されている。この際、火力発電機301-1、301-2は、ループ状の送電線100の端部に接続されており、送電線100の端部には、洋上風力を発電エネルギーとして発電する再生可能エネルギー装置(第2の電源)300が接続されている。送電線100から分岐された送電線101は、母線102に接続されている。母線102には、負荷400-1、400-2が接続されている。
給電制御所システム20は、電力系統の運用を行うシステムであって、例えば、CPU(Central Processing Unit)、入力装置、出力装置、通信装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置で構成される。この際、給電制御所システム20は、電力系統の電圧、電流、電力を計測する各種計測器を含む系統設備(図示せず)による計測値を基に、電力系統の状態を監視すると共に、各火力発電機301-1、301-2、301-3に関する発電計画値、再生可能エネルギー装置300に関する再エネ出力予測値、電力系統における需要予測値を含む給電情報を生成し、生成した給電情報500を再エネ系統安定化システム10に送信する。なお、給電制御所システム20は、各種計測器(電圧計、電流計、電力計等を含む計測器)の計測値を基に生成された系統構成に関する系統構成データを電力系統のオンライン情報として、給電情報500に付加して再エネ系統安定化システム10に送信することもできる。
再エネ系統安定化システム10は、給電制御所システム20から受信した給電情報500を基に、給電制御所システム20が電力系統を運用する際の運用限界値(運用目標値)であって、系統設備の運用限界値を生成し、生成した運用限界値を含む運用限界値情報510を給電制御所システム20に送信する。この際、再エネ系統安定化システム10は、例えば、ループ状の送電線100における運用限界値として、火力発電機301-1、301-2の出力による出力電力(第1の出力電力)と、再生可能エネルギー装置300の出力による出力電力(第2の出力電力)とを含む潮流電力P1+P2を基に算出する。
また、再エネ系統安定化システム10は、給電制御所システム20から受信した給電情報500を基に、再生可能エネルギー装置300の出力電力を抑制するための再エネ出力抑制量を生成し、生成した再エネ出力抑制量を含む再エネ出力抑制量情報520を給電制御所システム20に送信する。さらに、再エネ系統安定化システム10は、給電制御所システム20から受信した給電情報500を基に、電力系統における事故を想定した演算を実行して、電力系統で事故が発生した際の制御内容を規定した制御対策に関する情報を生成して制御対策テーブル(図示せず)に記録し、制御対策テーブルに記録された情報を、制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。また、再エネ系統安定化システム10は、給電制御所システム20から受信した給電情報500を基に、電力系統で事故が発生した後の復旧対策に関する復旧支援情報540を生成し、生成した復旧支援情報540を給電制御所システム20に送信する。
事故対策実行装置30は、例えば、CPU、入力装置、出力装置、通信装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置で構成される。この際、CPUは、再エネ系統安定化システム10と通信装置を介して情報の送受信を行い、再エネ系統安定化システム10から受信した制御対策情報530を記憶装置に記録し、記憶装置に記録された制御対策情報530を基に、事故対策を実行するための制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-1、32-2に出力する制御指令部として機能する。制御実行部32-1、32-2は、送電線100、101、母線102に配置された系統設備、例えば、スイッチ(コンデンサやコイルを送電線100等に接続したり、送電線100等から切り離したりするスイッチ)、開閉器、遮断器、電圧調整器(タップ位置が調整可能なタップ位置調整型変圧器)、保護リレー(いずれも図示せず)を制御対象とすると共に、再生可能エネルギー装置300を制御対象として管理する。
また、系統設備として、送電線100の系統事故200を検出する事故検出部(事故検出器)31、母線102の電圧を検出する電圧検出部(電圧計)33が配置されている。ここで、送電線100で系統事故200が発生した場合、事故検出部31によって系統事故200が検出され、この検出結果が、事故検出部31から事故対策実行装置30に転送される。また、母線102の電圧は、電圧検出部33によって検出され、この検出結果が、電圧検出部33から制御実行部32-2を介して事故対策実行装置30に転送される。
事故対策実行装置30は、制御対策情報530を基に制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-1、32-2に出力する。例えば、事故対策実行装置30は、送電線100で系統事故200が発生した場合、事故検出部31の検出結果を基に制御対策情報530を参照し、制御対策情報530を基に、再生可能エネルギー装置300を緊急停止するための制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-1に出力する。この場合、制御実行部32-1は、再生可能エネルギー装置300に対して、制御指令に従って再生可能エネルギー装置300を緊急停止するための制御を実行する。
また、事故対策実行装置30は、再生可能エネルギー装置300の出力電力を抑制する必要がある場合、制御対策情報530を基に、再生可能エネルギー装置300の出力電力を抑制するための制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-1に出力する。この場合、制御実行部32-1は、再生可能エネルギー装置300に対して、制御指令に従って再生可能エネルギー装置300の出力電力を抑制する制御を実行する。
さらに、事故対策実行装置30は、母線102に接続される負荷400-1を母線102から遮断する必要がある場合、制御対策情報530を基に、負荷400-1を母線102から遮断するための制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-2に出力する。この場合、制御実行部32-2は、母線102と負荷400-1との間に配置された遮断器(図示せず)に対して、制御指令に従って遮断器をオフにする制御を実行する。
図2は、本発明の実施例に係る再エネ系統安定化システムの具体的構成を説明するための構成図である。図2において、再エネ系統安定化システム10は、例えば、CPU、入力装置、出力装置、通信装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置で構成される。
CPUは、装置全体の動作を統括的に制御する中央処理装置として構成される。入力装置は、キーボードまたはマウスから構成され、出力装置は、ディスプレイまたはプリンタから構成される。また通信装置は、無線LAN又は有線LANに接続するためのNIC(Network Interface Card)を備えて構成される。さらに記憶装置は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶媒体から構成される。
記憶装置には、CPUが実行する各種コンピュータプログラム、CPUの処理対象であって、各種のデータを記憶するデータベースが格納される。例えば、記憶装置には、平常時対策部10aに属するプログラムまたはデータベースであって、系統構成作成部11として機能する系統構成作成プログラム、将来潮流断面算出部12として機能する将来潮流断面算出プログラム、統括演算部13として機能する統括演算プログラム、系統データ保存部14として機能するデータベース、運用限界値算出部15として機能する運用限界値算出プログラムが格納される。また、記憶装置には、事故時対策部10bに属するプログラムであって、想定事故安定化演算部16として機能する想定事故安定化演算プルグラム、事故復旧演算部17として機能する事故復旧演算プログラムが格納される。
系統データ保存部14には、給電制御所システム20から送信された給電情報500に属するデータであって、発電計画値・需要予測値・再エネ出力予測値に関するデータが保存される。これらのデータは、例えば、データ収集時或いは計画時・予測値演算時を基準に、将来の設定時間毎のデータであって、24時間先までの15分毎のデータである。
系統構成作成部11は、電力系統に接続される系統設備(スイッチ、開閉器、遮断器、保護リレー、電圧計、電流計、電力計)から、系統設備の接続状態(スイッチ、開閉器などのオン・オフ状態)や電力系統の状態に関するオンライン情報を取り込み、系統設備の接続状態に応じて系統モデルを作成し、作成した系統モデルから系統構成(電力系統の構成)を示す系統構成データを作成する。例えば、火力発電機301-1、301-2に接続される送電線100に関して、負荷・送電線・系統設備の接続状態等を示す系統モデルを作成する。系統構成作成部11は、作成した系統モデルから得られた系統構成データを将来潮流断面算出部12に転送すると共に、系統データ保存部14に保存する。
将来潮流断面算出部12は、系統構成データを基に、電力系統に流れる有効電力、無効電力、系統設備の電圧を、潮流計算と呼ばれる計算手法で算出し、算出結果を統括演算部13に出力する。この際、将来潮流断面算出部12は、例えば、データ収集時或いは演算時を基準に、24時間先までの15分毎の、将来の潮流の断面を示す情報(将来の潮流の状態を示す情報)であって、電力系統に流れる有効電力、無効電力に関する情報と、系統設備の電圧に関する情報を求めるものである。
運用限界値算出部15は、給電制御所システム20から、運転員が決める運用限界値に関する運用限界値情報510を受信した場合、受信した運用限界値情報510に属する運用限界値と、想定事故安定化演算部16の演算結果であって、想定事故に対する過渡安定度計算結果を示す運用限界値とを基に、最新の運用限界値を算出し、算出した最新の運用限界値を統括演算部13に転送すると共に、最新の運用限界値に関する情報を運用限界値情報510として給電制御所システム20に送信する。
統括演算部13は、将来潮流断面算出部12の算出結果と運用限界値算出部15の算出による最新の運用限界値を基に、最新の運用限界値を用いて系統設備を運用した場合、将来の設定時間毎の潮流の断面(例えば、15分毎の24時間先までの潮流状態)において、電力系統が安定であるか否かを判定する。例えば、統括演算部13は、最新の運用限界値を用いて系統設備を運用した場合、電力系統で過負荷が発生するか否かを判断し、過負荷が発生するとの判断結果(不安定の判断結果)を得た場合、再生可能エネルギー装置300の出力抑制、あるいは火力発電機301-1、301-2の出力抑制あるいは出力上昇を行うための演算を実行し、演算結果として、例えば、再生可能エネルギー装置300に対する再エネ出力抑制量を示す再エネ出力抑制量情報520を給電制御所システム20へ送信する。
また、統括演算部13は、過負荷が発生し電力系統が不安定であるとの判定結果(否定の判定結果)を得た場合、第1の電源である火力発電機301-1、301-2、301-3の出力による出力電力(第1の出力電力)と、第2の電源である再生可能エネルギー装置300の出力による出力電力(第2の出力電力)のうち少なくとも一方を調整する出力調整情報を生成する出力調整情報生成部としても機能する。この際、統括演算部13は、出力調整情報を再エネ出力抑制量情報520に付加して給電制御所システム20へ送信することができる。
ここで、平常時に、あるエリアの再生可能エネルギー装置300の出力が増えた場合、電力系統の潮流電力が、送電設備の運用限界値以下になるように、そのエリアの発電機(火力発電機)の出力を抑制して運用するか、あるいは発電機を停止することが実行される。ところが、電力系統に連系している発電機の台数が減ると、電力系統における周波数調整能力が低下するため、電力系統の需要が変動した場合、周波数が大きく乱れるおそれがある。
このような課題も加味して、統括演算部13では、発電機出力調整量演算を行い、演算結果と運用限界値とを比較して再エネ出力抑制量を算出し、算出した再エネ出力抑制量を含む再エネ出力抑制量情報520を給電制御所システム20へ送信する。この際、給電制御所システム20の運転員は、統括演算部13から受信した再エネ出力抑制量情報520を基に、ホームページなどを介して再生可能エネルギー装置300の出力抑制量に関する情報を公開する。
想定事故安定化演算部16は、第1の電源の発電計画値と、第2の電源の出力予測値、及び電力系統における電力需要の予測値を含む情報を入力し、入力した情報を基に、事前に設定された数百ケースほどの想定事故に対し、過渡安定度計算と呼ばれる時間軸シミュレーションの処理を繰り返して実行する。想定事故安定化演算部16は、時間軸シミュレーションの処理の結果が、不安定である場合、電源制限や負荷制限などの対策を実施することで、電力系統が安定になるか否かを判定し、判定結果が、安定である場合、電源制限や負荷制限などの制御量に関する情報を制御対策テーブル(図示せず)に記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30へ送信する。
一方、想定事故安定化演算部16は、過渡安定度計算結果が安定と判断した場合、さらに運用限界値を引き上げて、想定する送電電力を増やし、再び数百ケースの想定事故時の時間軸シミュレーションの処理を繰り返して実行する。この際、想定事故安定化演算部16は、運用限界値を順次引き上げていく過程で、時間軸シミュレーションの処理の結果が、不安定になるか否かを順次判断し、各判断結果を運用限界値算出部15に転送する。運用限界値算出部15は、想定事故安定化演算部16から、安定であるとの判断結果を得た後、不安定になるとの判断結果を得た場合、最後に安定であるとの判断結果を得たときに引き上げられた運用限界値を新たな運用限界値として登録し、登録された運用限界値を含む運用限界値情報510を給電制御所システム20へ送信する。
事故復旧演算部17は、想定事故安定化演算部16の演算により決められた想定事故の安定化対策が、実際に行われた後の系統状態、例えば、安定化対策による電源制限や負荷制限実施後の電力系統の状態を基に、電力系統の状態を事故前の状態へ戻すための復旧支援情報を作成し、作成した復旧支援情報540を給電制御所システム20へ送信する。
新たな運用限界値を含む運用限界値情報510を受信した給電制御所システム20は、新たな運用限界値を含む運用限界値情報510を再生可能エネルギー装置300の所有者へ通知したり、ホームページなどを介して運用限界値情報510の内容を公開したりする。再生可能エネルギー装置300の所有者は、公開された運用限界値情報510の内容を見ることで、発電市場での翌日以降の取引に入札する際に、新たな運用限界値に関する情報を活用することができる。これにより、送電線の混雑による再生可能エネルギー装置300の抑制による発電機会逸失のリスクを減らすことができる。
図3は、本発明の実施例に係る運用限界値と潮流電力との関係を説明するための説明図である。図3において、横軸は、月日であり、縦軸は、潮流(MW)である。電力系統における潮流電力(P1+P2)は、曲線Xで示されるように、1日毎に大きく変動することがある。この際、電力系統に再生可能エネルギー装置300が接続される前の運用限界値(第1の運用限界値)L1を、例えば、13、000(MW)とした場合、運用限界値L1と、実際の潮流電力(P1+P2)との間には、差分があり、この差分は、空き容量となる。この空き容量は、「ノンファーム型接続」の電源として、電力系統に接続される再生可能エネルギー装置300が出力できる量(電力量)となる。ここで、「ノンファーム型接続」の電源とは、空き容量がないときには、出力を抑制することに合意の上で接続される電源を意味する。
そこで、例えば、運用限界値を、L1=13、000(MW)からL2=17、000(MW)に上げることができれば、再生可能エネルギー装置300から電力系統に出力可能な電力(出力可能量)は、運用限界値L1と潮流電力(P1+P2)との差分に相当する再エネ出力増分ΔP1に、運用限界値L2と運用限界値L1との差分に相当する再エネ出力増分ΔP2を加えたものとなる。再エネ出力増分ΔP1に再エネ出力増分ΔP2を加えた量の電力を再生可能エネルギー装置300で発電し、発電された電力を、例えば、送電線100に流すことが可能になると、火力発電機301-1や火力発電機301-2の発電力を減らすことができ、結果として、火力発電機301-1や火力発電機301-2の発電に伴って発生するCO2を削減できる。なお、運用限界値L2は、電力系統に再生可能エネルギー装置300が接続された後、電力系統や電力設備に適用される第2の運用限界値である。
図4は、本発明の実施例に係るノンファーム型接続電源導入後の発電計画の作成処理の一例を示す説明図である。図4において、一般送配電事業者50と発電事業者52との間では、データのやり取りが行われる。この際、前々日には、スポット市場54が用意され、前日から当日に亘って時間前市場56が用意され、スポット市場54に対する入札58と、時間前市場56に対する入札60、62が可能になっている。前日には、発電事業者52は、時間t1で翌日の発電計画を作成し、作成した翌日の発電計画の情報を時間t2で一般送配電事業者50へ提出する。これを受けて、一般送配電事業者50は、翌日の電力需要を予測すると共に、翌日の発電計画を策定し、電力需要の予測結果と発電計画の策定結果を基に送電設備に過負荷(混雑)が発生するか否かを予測(評価)し、送電設備に過負荷が発生すると予測した場合、過負荷を解消するのに必要な抑制量を算出し、算出した抑制量に関する情報を時間t3にホームページなどで発電事業者52へ公開する。そこで、発電事業者52は、公開された情報を基に、時間t4で翌日の発電計画の見直しを行う。
当日も同じように、実需給断面の1+α時間前(数時間前)までに、発電事業者52は、時間t5で当日の発電計画を作成し、作成した当日の発電計画の情報を時間t6で一般送配電事業者50へ提出する。これを受けて、一般送配電事業者50は、当日の電力需要を予測すると共に、当日の発電計画を策定し、電力需要の予測結果と発電計画の策定結果を基に送電設備に過負荷(混雑)が発生するか否かを予測(評価)し、送電設備に過負荷が発生すると予測した場合、過負荷を解消するのに必要な抑制量を算出し、算出した抑制量に関する情報を時間t7にホームページなどで発電事業者52へ公開する。発電事業者52は、公開された情報を基に、時間t8で当日の発電計画の見直しを行う。
さらに、実需給断面の1時間前までに、同様な処理が繰り返される。すなわち、発電事業者52は、時間t9で直前の発電計画を作成し、作成した直前の発電計画の情報を時間t10で一般送配電事業者50へ提出する。これを受けて、一般送配電事業者50は、直前の電力需要を予測すると共に、直前の発電計画を策定し、電力需要の予測結果と発電計画の策定結果を基に送電設備に過負荷(混雑)が発生するか否かを予測(評価)し、送電設備に過負荷が発生すると予測した場合、過負荷を解消するのに必要な抑制量を算出し、算出した抑制量に関する情報を時間t11にホームページなどで発電事業者52へ公開する。発電事業者52は、公開された情報を基に、時間t12で直前の発電計画の見直しを行う。
このように、送電設備に過負荷(混雑)があると、一連の処理は煩雑になる。しかし、図3に示すように、運用限界値を運用限界値L1から運用限界値L2に上げることで、過負荷が起こらないと判断した場合、一般送配電事業者50と発電事業者52は、共に混雑による発電抑制の問題がなくなり、発電計画を決定するための労力が軽減される。
図5は、本発明の実施例に係る電力系統の状態を示す特性図であって、(a)は、フェンス潮流の特性図であり、(b)は、年負荷持続曲線の特性図である。図5(a)において、横軸は、月日であり、縦軸は、潮流(MW)である。図5(b)において、横軸は、時間であり、縦軸は、潮流(MW)である。図5(a)、(b)において、電力系統における実潮流(潮流電力P1+P2)は、曲線X1で示されるように、ほぼ、運用限界値L1=13、000(MW)=13.0(GW)以下であるが、月毎に大きく変動する。また、電力系統における電力需要が増加した場合を想定したときの想定潮流(潮流電力P1+P2)は、曲線X2で示されるように、ほぼ、運用限界値L1=13、000(MW)=13.0(GW)を超えることが多く、月毎に大きく変動する。
ここで、実潮流(潮流電力P1+P2)が、運用限界値L1を超えた場合、再生可能エネルギー装置300の出力は抑制される。例えば、実潮流(潮流電力P1+P2)が、運用限界値L1=13.0GWを超えた場合、年間8760時間の中で、曲線X2で示されるように、5760時間(曲線X2と運用限界値L1=13.0GWとが交差する時間)も、再生可能エネルギー装置300の出力を抑制することが必要となる。
これに対して、想定事故安定化演算部16の演算結果に従った対策を実行し、運用限界値を運用限界値L1から運用限界値L2=17.0GWまで上げることができれば、再生可能エネルギー装置300の出力を抑制する抑制時間を1000時間程度まで減らすことができ、結果として、例えば、火力発電機301-1、301-2の燃料費を大量に削減することができる効果が得られる。火力発電機301-1、301-2の燃料費の削減量は、この例では、おおよそ5.4TWhであり、火力燃料費を10円/kWhとすると、年間約540億円の燃料費削減が期待でき、経済効果は非常に大きいものであると言える。また、矢印Yで示すように、電力系統における電力需要の増加に伴って、送電線が混雑する時間を減らすことができる。
図6は、本発明の実施例に係る想定事故安定化演算部の処理を説明するためのフローチャートである。図6において、想定事故安定化演算部16は、管理対象或いはアクセス対象となるデータベース(図示せず)をアクセスすることで処理を開始する。この際、データベースには、発電計画値(火力発電機の発電計画値)、需要予測値(電力系統における電力需要の予測値)、及び再エネ出力予測値(再生可能エネルギー装置300の出力予測値)に関するデータであって、例えば、将来の設定時間毎のデータであって、15分毎の24時間先までの断面のデータが格納される。
想定事故安定化演算部16は、まず、データベースに格納されたデータを参照し、参照したデータを基に、評価する時刻の系統断面データを設定し(S201)、設定された系統断面データを基に、潮流計算と呼ばれる演算手法を用いて、想定潮流断面のデータを作成する(S202)。
次に、想定事故安定化演算部16は、想定事故条件を設定する(S203)。例えば、想定事故安定化演算部16は、N-1(平常時から1設備停止する事故)、N-2(平常時から2設備同時停止する事故)、あるいは、N-1-1(平常時から1設備停止し、その停止が続いている間に別の1設備停止する事故)、などの各種系統事故を設定する。
次に、想定事故安定化演算部16は、過渡安定度計算と呼ばれる手法、例えば、系統事故時の10秒間程度の動的な動きを求める手法を用いて、過渡安定度対策演算を実行する(S204)。この際、想定事故安定化演算部16は、系統が不安定になる(発電機の同期運転が失われる)との演算結果を得た場合、発電機出力を抑制して系統を安定化するための演算を実行し、演算結果を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信すると共に、再エネ出力(再生可能エネルギー装置300の出力)を抑制して電力系統を安定化するための演算を実行し、演算結果を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。
事故対策実行装置30は、制御対策情報530を受信した場合、受信した制御対策情報530を基に、発電機出力抑制処理や再エネ出力抑制処理を実行する。事故対策実行装置30は、発電機出力抑制処理を実行する場合、例えば、火力発電機301-1、301-2の出力を抑制するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、火力発電機301-1、301-2を制御対象とする制御実行部に出力する。この制御実行部の制御により、火力発電機301-1、301-2の出力が抑制され、その後、送電線100や変圧器に流れる潮流電力が減少する。
また、事故対策実行装置30は、再エネ出力抑制処理を実行する場合、再生可能エネルギー装置300の出力を抑制するための制御指令又は再生可能エネルギー装置300を緊急停止するための制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-1に出力する。制御実行部32-1が、制御指令に従って再生可能エネルギー装置300の出力を抑制するための制御を実行すると、再生可能エネルギー装置300の出力が抑制される。また、制御実行部32-1が、再生可能エネルギー装置300を緊急停止するための制御を実行すると、再生可能エネルギー装置300が、例えば、0.2S(秒)程度で緊急停止する。
次に、想定事故安定化演算部16は、ステップS204における過渡安定度計算の結果から、系統電圧が大きく変化しているか否かを判断し、系統電圧が既定の範囲を逸脱すると判断した場合、電圧維持演算を実行する(S205)。この際、想定事故安定化演算部16は、調相設備制御によって系統電圧を規定の範囲に維持するための電圧維持演算を実行し、演算結果を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。この場合、制御対策テーブルには、電力系統に配置される調相設備に対するオン・オフ制御を示す調相設備制御に関する情報(第1の情報)と、電力系統に配置されるタップ位置調整型変圧器のタップ位置を調整する変圧器タップ位置調整に関する情報(第2の情報)と、第1の出力電力を調整する発電機出力調整に関する情報(第3の情報)と、電力系統の負荷を遮断する負荷遮断に関する情報(第4の情報)とから構成され電圧維持情報が、制御対策情報530として記録される。
事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、調相設備制御を実行する場合、調相設備制御によって系統電圧を規定の範囲に維持するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、調相設備を制御対象とする制御実行部(図示せず)に出力する。この制御実行部が、例えば、コンデンサ又はコイルを送電線100に接続するためのスイッチをオンにすると、コンデンサ又はコイルが送電線100に接続される。コンデンサが送電線100に接続されると、送電線100の電圧が上がり、コイルが送電線100に接続されると、送電線100の電圧が下がる。これにより、電力系統の電圧が規定の範囲に維持される。
また、事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、変圧器タップ調整処理を実行する場合、変圧器タップ調整処理によって系統電圧を規定の範囲に維持するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、変圧器タップ調整処理を実行する制御実行部に出力する。この制御実行部が、例えば、タップ位置調整型変圧器のタップ位置を調整すると、タップ位置調整型変圧器の入力電圧と出力電圧との比が変化し、タップ位置調整型変圧器の出力電圧が、タップ位置に応じて変化する。これにより、タップ位置調整型変圧器を含む送電線の電圧が規定の範囲に維持される。
さらに、事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、発電機出力調整処理を実行する場合、例えば、火力発電機301-1、301-2の出力を調整するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、火力発電機301-1、301-2を制御対象とする制御実行部に出力する。この制御実行部の制御により、火力発電機301-1、301-2の出力が調整され、その後、電力系統の電圧が規定の範囲に維持される。
また、事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、負荷遮断処理を実行する場合、例えば、負荷400-1を遮断するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、制御実行部32-2に出力する。この制御実行部32-2が負荷400-1を遮断すると、負荷400-1が接続される母線102の電圧が規定の範囲に維持される。
次に、想定事故安定化演算部16は、送電線や変圧器に流れる電力が既定の大きさを超えると判断した場合、過負荷対策演算を実行する(S206)。この際、想定事故安定化演算部16は、発電機出力を抑制して系統を安定化するための過負荷対策演算を実行し、演算結果を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信すると共に、再エネ出力を抑制して系統を安定化するための過負荷対策演算を実行し、演算結果を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。
事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、発電機出力抑制処理や再エネ出力抑制処理を実行する。事故対策実行装置30は、発電機出力抑制処理を実行する場合、例えば、火力発電機301-1、301-2の出力を抑制するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、火力発電機301-1、301-2を制御対象とする制御実行部に出力する。この制御実行部の制御により、火力発電機301-1、301-2の出力が抑制され、その後、送電線100や変圧器に流れる潮流電力が減少する。これにより、送電線や変圧器に流れる電力が既定の大きさを超えて過負荷になるのを防止することができる。
また、事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、再エネ出力抑制処理を実行する場合、再生可能エネルギー装置300の出力を抑制するための制御指令又は再生可能エネルギー装置300を緊急停止するための制御指令を生成し、生成した制御指令を制御実行部32-1に出力する。制御実行部32-1が、制御指令に従って再生可能エネルギー装置300の出力を抑制するための制御や再生可能エネルギー装置300を緊急停止するための制御を実行すると、再生可能エネルギー装置300の出力が抑制され、また、再生可能エネルギー装置300が、例えば、0.2S(秒)程度で緊急停止する。これにより、送電線や変圧器に流れる電力が既定の大きさを超えて過負荷になるのを防止することができる。
一方、これらの対策の結果、発電機出力や再エネ出力が抑制されると、電力系統の周波数が低下することがあるため、電力系統の電力需要を減らすことが必要である。
そこで、想定事故安定化演算部16は、周波数対策演算を実行する(S207)。この際、想定事故安定化演算部16は、発電機出力を急増させるための周波数対策演算を実行し、演算結果(出力調整量)を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信すると共に、負荷を遮断するための周波数対策演算を実行し、演算結果(遮断の対象となる負荷)を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。この場合、制御対策テーブルには、第1の出力電力を調整する発電機出力調整に関する情報と、電力系統の負荷を遮断する負荷遮断に関する情報が、制御対策情報530として記録される。
事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、発電機出力調整処理や負荷遮断処理を実行する。事故対策実行装置30は、発電機出力調整処理を実行する場合、例えば、火力発電機301-1、301-2の出力を増加するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、火力発電機301-1、301-2を制御対象とする制御実行部に出力する。この制御実行部の制御により、火力発電機301-1、301-2の出力が増加され、その後、電力系統の周波数が漸次低下する。
また、事故対策実行装置30は、負荷遮断処理を実行する場合、例えば、負荷400-1を遮断するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、制御実行部32-2に出力する。この制御実行部32-2が負荷400-1を遮断すると、負荷400-1が接続される母線102の周波数が漸次低下する。
次に、想定事故安定化演算部16は、復旧対策演算を実行する(S208)。この際、想定事故安定化演算部16は、復旧過程において、負荷の回復に伴って、電力系統の周波数が低下するおそれがあると判断した場合、発電機出力を高めるための復旧対策演算を実行し、演算結果を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。この場合、制御対策テーブルには、第1の出力電力を調整する発電機出力調整に関する情報であって、電力系統の潮流状態を、想定事故条件を満たす事故が発生する前の潮流状態に戻すための復旧対策情報が、制御対策情報530として記録される。
事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、発電機出力調整処理を実行する場合、例えば、火力発電機301-1、301-2の出力を増加するための制御指令を生成し、生成した制御指令を、火力発電機301-1、301-2を制御対象とする制御実行部に出力する。この制御実行部の制御により、火力発電機301-1、301-2の出力が増加され、その後、電力系統の周波数が漸次上昇する。
また、想定事故安定化演算部16は、ステップS208において、事故中の電圧低下や上昇などにより、一旦停止していた再生可能エネルギー装置300の再起動により、電力系統に周波数の過渡的な上昇があると判断した場合、事故対策実行装置30の発電機出力調整処理で逆に発電機出力を低下させるための復旧対策演算を実行し、演算結果(出力調整量)を制御対策テーブルに記録し、制御対策テーブルに記録された情報を制御対策情報530として事故対策実行装置30に送信する。
この際、事故対策実行装置30は、受信した制御対策情報530を基に、発電機出力調整処理を実行する場合、例えば、火力発電機301-1、301-2の出力を低下させるための制御指令を生成し、生成した制御指令を、火力発電機301-1、301-2を制御対象とする制御実行部に出力する。この制御実行部の制御により、火力発電機301-1、301-2の出力が減少し、その後、電力系統における周波数の過渡的な上昇が抑制される。
次に、想定事故安定化演算部16は、ステップS204~S208の処理結果を基に、過負荷発生や電圧低下や周波数低下などの系統問題があるか否かを判定し(S209)、ステップS209で系統問題ありと判定した場合、その時の系統設備に適用されていた運用限界値を運用限界値として確定し(S210)、その後、このルーチンでの処理を終了する。例えば、その時の系統設備に適用されていた運用限界値が、電力系統に再生可能エネルギー装置300が接続される前の第1の運用限界値=13、000MWである場合、運用限界値を第1の運用限界値=13、000MWとして確定する。なお、ステップS211以降の処理で、運用限界値が変更され、系統設備に適用される運用限界値が、電力系統に再生可能エネルギー装置300が接続された後の第2の運用限界値である場合、運用限界値を第2の運用限界値として確定する。
一方、想定事故安定化演算部16は、ステップS209で過負荷発生や電圧低下や周波数低下などの系統問題がないと判定した場合、その時の系統設備に適用されていた運用限界値を拡大するための設定を実行する(S211)。例えば、想定事故安定化演算部16は、その時の系統設備に適用されていた運用限界値が、第1の運用限界値=13、000MWである場合、運用限界値を第1の運用限界値から第2の運用限界値に変更するために、運用限界値を13、000MWから13、050MWに50MW拡大する。
次に、想定事故安定化演算部16は、系統設備に適用されていた運用限界値を拡大したことに伴って、発電機出力の設定を変更する(S212)。例えば、想定事故安定化演算部16は、運用限界値の拡大に応じて、発電機出力を変更する設定を実行する。この際、想定事故安定化演算部16は、運用限界値の拡大に応じて、火力発電機の出力電力を下げる設定を行うことができる。
次に、想定事故安定化演算部16は、再エネ抑制量の設定を変更する(S213)。この際、想定事故安定化演算部16は、例えば、再エネ抑制量を減らす設定の変更を実行する。この場合、運用限界値の拡大に応じて、火力発電機の出力電力を下げたことに伴って、再生可能エネルギー装置300の出力電力を増加させる設定を行うことができる。その後、想定事故安定化演算部16は、ステップS202の処理に移行し、ステップS202~S213の処理を繰り返す。
なお、ステップS213で再エネ抑制量を減らす設定の変更を実行した場合、想定事故安定化演算部16は、ステップS202では、再生可能エネルギー装置300からの出力を増やして、送電線の電力潮流、例えば、送電線100の電力潮流(P1+P2)を増やした新たな想定潮流断面の情報を作成する。この際、想定事故安定化演算部16は、火力発電機(第1の電源)の発電計画値で規定される出力電力(第1の出力電力)を順次変更し、変更した第1の出力電力に、再生可能エネルギー装置300の出力予測値、例えば、100%定格出力や50%定格出力を想定した出力予測値を上乗せして、新たな想定潮流断面の情報を潮流状態の情報として作成する。その後、想定事故安定化演算部16は、新たに作成された想定潮流断面の情報を基に、過渡安定度対策演算(S204)や運用限界値拡大設定(S211)等の処理を実行する。
図7は、本発明の実施例に係る電力系統において系統事故が発生したときの系統各部の状態を示す特性図であって、(a)は、発電機の位相角の特性図で、(b)は、発電機の端子電圧の特性図で、(c)は、潮流電力の特性図で、(d)は、送電線の周波数の特性図である。
電力系統の送電線、例えば、図1に示すように、平常時に、潮流電力P1が流れている送電線100で、1回線送電線における地絡事故を示す系統事故200が発生した場合、系統事故200により、2回線の送電線のうち1回線が使えなくなり、残りの1回線の送電線に過負荷が発生するおそれがある。また、系統事故200の継続中に、送電線100の電圧低下により、火力発電機301-1や火力発電機301-2は、加速を始める。この場合、系統事故200発生後短時間のうちに、再生可能エネルギー装置300を選んで緊急停止することで、系統事故200の地点に近い火力発電機301-1が、加速脱調することを防止することはできる。
具体的には、送電線100で、系統事故200が発生すると、2回線の送電線のうち1回線が使えなくなり、残りの1回線の送電線が過負荷となり、図7(a)に示すように、火力発電機301-1の位相角が急激に大きくなり、図7(b)に示すように、火力発電機301-1の端子電圧が急激に低下し、図7(c)に示すように、潮流電力が送電限界以下に低下し、図7(d)に示すように、送電線100の周波数が急激に上昇する。この際、系統事故200発生後、0.2S(秒)で、再生可能エネルギー装置300を選んで緊急停止すると、再生可能エネルギー装置300から送電線100への電力の供給が停止され、送電線100のうち残りの1回線の送電線の過負荷が抑制される。これにより、系統事故200発生後、0.2S(秒)以後は、図7(a)に示すように、火力発電機301-1の位相角が漸次設定値に収束する方向に移行し、図7(b)に示すように、火力発電機301-1の端子電圧が漸次既定の電圧に維持され、図7(c)に示すように、潮流電力が漸次送電限界近傍に維持され、その後、送電線100の過負荷が解消される。また、図7(d)に示すように、送電線100の周波数は、漸次低下し、規定の値に維持される。
ここで、再生可能エネルギー装置300を緊急停止するまでに、数秒~10秒程度かかることを考慮する必要がある。一方、火力発電機301-2は、系統事故200の地点から離れているので、数100msで遮断できるので、再生可能エネルギー装置300を緊急停止するよりも、火力発電機301-2を緊急遮断する方が、火力発電機301-1の加速脱調を防止する点では好ましい。
一方、火力発電機301-2を緊急遮断すると、電力系統の周波数が、急峻な特性で低下し始めるので、送電線100から分岐された送電線101に接続された負荷400-1や400-2を遮断することが必要になる。この場合、送電線101が接続された母線102の電圧が上昇したり低下したりするが、母線102の電圧が上昇すると、負荷400-1や400-2の大きさも変わってしまうので、母線102の電圧を計測する電圧検出部33の計測値を基に、制御実行部32-2で、遮断するべき負荷を自律的に選び直すことが適切である。
本実施例において、運用限界値算出部15は、系統設備の潮流電力に関する運用限界値を管理する運用限界値管理部(運限界値管理プログラム)として機能する。想定事故安定化演算部16は、第1の電源(火力発電機)の発電計画値と、第2の電源(再生可能エネルギー装置)の出力予測値、及び電力系統における電力需要の予測値を含む給電情報を基に、電力系統の将来の設定時間毎の潮流状態を算出し、算出した各潮流状態と運用限界値とを比較して、算出した各潮流状態が、安定であるか否かを判定する判定部(判定プログラム)として機能する。
この際、判定部は、第1の電源の発電計画値で規定される第1の電源の第1の出力電力を順次変更し、変更した第1の出力電力と第2の電源の出力予測値とを含む電力を基に各潮流状態を算出し、この算出結果を運用限界値管理部に出力する。運用限界値管理部は、判定部から肯定の判定結果(安定)が得られたことを条件に、将来の各設定時間における系統設備の運用限界値を、変更された第1の出力電力(火力発電機の出力電力)と、変更された第1の出力電力に付加された第2の電源の出力予測値(再生可能エネルギー装置の出力予測値)との総和として管理する。また、運用限界値管理部は、将来の各設定時間における系統設備の運用限界値を含む運用限界値情報を給電制御所システム20に送信する。これにより、将来の各設定時間における系統設備の運用限界値を含む運用限界値情報を給電制御所システム20の運転員に提示することができる。また、給電制御所システム20では、運用限界値情報に従った処理・制御を実行することができる。
また、本実施例において、想定事故安定化演算部16は、電力系統が安定であるか否を判定する判定部(判定プログラム)として機能すると共に、給電情報を基に将来の各設定時間に電力系統で発生することが想定される事故の条件を示す想定事故条件を設定する想定事故条件設定部(想定事故条件設定プログラム)と、給電情報を基に想定事故条件を満たす事故が発生したときの制御対策を示す制御対策情報を生成する制御対策情報生成部(制御対策情報生成プログラム)としても機能する。この際、制御対策情報生成部は、制御対策情報として、第1の電源の一部(火力発電機301-2)又は第2の電源(再生可能エネルギー装置300)のうち少なくとも一方を停止させるための電源停止情報と、第1の電源の一部を停止させることを条件に、第1の電源に接続される負荷を遮断させるための負荷遮断情報とを生成し、生成した電源停止情報及び負荷遮断情報を給電制御所システム20と事故対策実行装置30に送信することができる。これにより、給電制御所システム20と事故対策実行装置30では、電源停止情報及び負荷遮断情報に従った処理・制御を実行することができる。
また、制御対策情報生成部は、制御対策情報530として、第1の電源の負荷が過負荷となるのを解消するための過負荷対策情報又は電力系統に対する安定度を維持するための過渡安定度対策情報を生成する。この際、過負荷対策情報と過渡安定度対策情報は、第1の出力電力を抑制する発電機出力抑制量と、第2の出力電力を抑制する再エネ出力抑制量とから構成される。また、制御対策情報生成部は、電力系統の電圧を設定電圧の範囲に維持するための電圧維持情報と、電力系統の周波数を設定周波数の範囲に維持するための周波数対策情報と、電力系統の潮流状態を、想定事故条件を満たす事故が発生する前の潮流状態に戻すための復旧対策情報を生成する。
本実施例によれば、電力系統に接続される再生可能エネルギー装置300の出力電力が増加しても、電力系統の潮流状態に応じて系統設備の運用限界値を変更することができる。すなわち、再生可能エネルギー装置300からの電力が増加しても、電力系統の潮流状態に応じて系統設備の運用限界値を変更することで、電力系統の混雑時間を減らすと共に、再生可能エネルギー装置300の抑制量を減らし、再生可能エネルギー装置300の導入を促進することができると共に、火力発電機301-1、302-2の出力電力を減らすことができ、結果として、火力発電機301-1、302-2から排出されるCO2の量を削減することが可能になる。この際、電力系統が不安定になったときの対策として、火力発電機301-1、302-2、302-3や再生可能エネルギー装置300のうち少なくとも一方を調整する出力調整情報を用意し、また、電力系統の事故に対する制御対策情報を用意しているので、電力系統の安定化に寄与することができる。さらに、再生可能エネルギーによる電源が増えても、系統設備の運用限界値を適正化することが可能となり、再生可能エネルギーの不必要な大量抑制を防止することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、事故対策実行装置30の代わりに、表示端末を給電制御所システム20に設置し、想定事故安定化対策演算や事故復旧演算の結果、さらに運用限界値の情報を表示端末に表示し、表示端末に表示された情報を、給電制御所システム20を利用する運転員、系統計画エンジニア、系統保護設計エンジニア及び系統解析エンジニアへ支援情報として提示する形態もある。
また、再生可能エネルギー装置300としては、風力発電や太陽光発電に限るものではなく、リチウムイオン電池や燃料電池などの電気エネルギーを貯蔵したり発生したりする蓄電池装置などのインバータを持つ装置を用いることもできる。
さらに、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録して置くことができる。
1…電力系統システム、10…再エネ系統安定化システム、11…系統構成作成部、12…将来潮流断面算出部、13…統括演算部、14…系統データ保存部、15…運用限界値算出部、16…想定事故安定化演算部、17…事故復旧演算部、20…給電制御所システム、30…事故対策実行装置、100、101…送電線、102…母線、300…再生可能エネルギー装置、301-1、301-2、301-3…火力発電機。
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