JP2021096305A - 防音材の製造方法および防音構造体の製造方法 - Google Patents

防音材の製造方法および防音構造体の製造方法 Download PDF

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【課題】2000Hz以下の周波数域において高い防音性能を発揮する防音材の製造手段を提供する。【解決手段】弾性を有するシート110を区画部に区画する複数の中空セル100aが規則的に配列される格子状構造体100シートを支持する支持部を備え、区画部におけるシートの面剛性(k)及びシートの面密度(m)が下記数式1の関係を満足する防音材10を製造する手段であって、複数の中空セルが直線状に配列されてなる平板状の中空構造体を作製し、中空構造体の延在方向に垂直な面で中空構造体を切断して複数の格子状構造体ユニットを作製し、複数の格子状構造体ユニットを、中空セルが面状に配列するように、かつ、格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して格子状構造体を作製し、揃った開口断面がシート側に向き合うように、格子状構造体とシートとを接合する。【選択図】図2

Description

本発明は、防音構造体の製造方法および防音構造体の製造方法に関する。
自動車内には多くの音源がある。車内および車外における騒音からの静粛性が要求されることから、自動車には様々な防音対策が施されている。特に、エンジンやトランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)については、発生源に近い位置で防音対策が必要である。このため、これらの音源に対しては吸遮音性能に優れる専用の防音カバーが使用されている。ここで、相次ぐ法改正による車外騒音レベル規制の強化や、車内騒音の静粛化が車の価値(高級感)に直結する点も相俟って、自動車における低騒音化部品の要求は非常に高い。特に、2013年度に欧州連合(EU)において導入された車外騒音規制は、最終的に従来規制値に対して−3dB(音圧エネルギーとして1/2に低減が必要)と厳しいものとなっている。これにはエンジンルーム内の主騒音発生源としてのエンジン本体およびトランスミッション等固有音源への騒音低減対策が不可欠である。これまでも、エンジン上面側のエンジントップカバー等の様々な防音部品が使用されているが、さらなる性能の向上が求められている。また、低燃費化の観点から、防音対策は軽量化の要請にも応えられるものであることが好ましい。
防音を狙った防音構造体の構成は種々知られているが、なかでも「音響メタマテリアル」と称される材料がある。「音響メタマテリアル」とは、自然界に存在する物質が通常示さないような音響的性質を示すように設計された人工媒質である。従来、所望の防音効果を示す音響メタマテリアルの開発が鋭意行われており、各種の提案がなされている。
ここで、均質な材料からなる一重壁にある周波数の音波が垂直に入射したときの当該一重壁による透過損失(TL;Transmission Loss)の値は、上記周波数(f)および上記一重壁の面密度(m)を用いて、TL≒20log10(m・f)−43[dB]と算出されることが知られている(質量則)。すなわち一般に、防音材料が軽量であるほど、また、音波の周波数が小さいほど、透過損失(TL)は小さくなり、防音性能が低下することとなる。例えば500Hzの音波の場合、20dBのSTLを達成するには、コンクリート壁では12cm、ウレタンフォーム遮音材では35cm超ものサイズが必要となる。
このような状況に鑑み、例えば非特許文献1では、連続的に形成された複数の筒状セルを有するアラミド繊維シート製ハニカムによってラテックスゴム製の膜が気密に支持されてなる格子状構造体からなる音響メタマテリアルが提案されている。ここで、非特許文献1に開示されている格子状構造体においては、ラテックスゴム製の膜が複数の筒状セルによって正六角形(一辺の長さが3.65mm)の形状を有する区画部に区画されている。
非特許文献1によれば、このような音響メタマテリアルを用いることで、軽量でも特に低周波数の音波に対する防音性能に優れた材料を提供できるとされており、実験によって500Hz未満の周波数の音波については25dBを超えるSTLを達成可能であることも開示されている。
Ni Sui et al., Applied Physics Letters 106, 171905 (2015)
しかしながら、非特許文献1に記載されているような上記音響メタマテリアルを防音材として用いた場合には、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって十分な防音性能を発揮することができない場合があることが本発明者らの検討により判明した。
また、上述したような防音材(音響メタマテリアル)を製造する際には、ハニカム構造を有する格子状構造体を作製し、これをラテックスゴム製のシートと接合する必要がある。ここで、ハニカム構造を有する格子状構造体の作製には、原料となる樹脂のシート(ここではアラミド繊維シート)を切断し、その一部に接着剤を塗布し、接着剤の塗布後に複数のシートを積層し、防音材におけるハニカムの高さに対応する長さでシートをさらに切断し、切断されたシートを広げてハニカム構造を有する格子状構造体が完成する。このように、従来技術における防音材の製造プロセスには多数の工程が必要であるとともに各工程の操作が煩雑であり、工業化のためには、より短時間で製造が可能で、操作も簡便な製造プロセスの開発が必須である。
そこで本発明は、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮しうる防音材を、短時間でかつ簡便な操作により防音材を製造しうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮することを可能とする手段を提供することを目的として検討を行った。その結果、非特許文献1に開示されているような、弾性を有するシートと、当該シートを複数の区画部に区画する複数の中空セルから構成されて当該シートを支持する支持部とを有する防音材(音響メタマテリアル)において、当該区画部を構成するシートの面剛性および面密度が所定の関係を満足するように制御することによって2000Hz以下(特に400〜1000Hz)の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能が発揮されうることを見出した。
また、防音材を製造するにあたっては、複数の中空セルが直線状に配列されてなる平板状の中空構造体を作製し、前記中空構造体の延在方向に垂直な面で前記中空構造体を切断して複数の格子状構造体ユニットを作製し、複数の前記格子状構造体ユニットを、前記中空セルが面状に配列するように、かつ、前記格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して前記格子状構造体を作製し、得られた前記格子状構造体の揃った開口断面が前記シート側に向き合うように、前記格子状構造体と前記シートとを接合するというプロセスを用いることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、弾性を有するシートと、前記シートを区画部に区画する複数の中空セルが規則的に配列されてなる格子状構造体から構成されて前記シートを支持する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が下記数式1の関係を満足する防音材の製造方法が提供される。
Figure 2021096305
そして、当該製造方法は、複数の中空セルが直線状に配列されてなる平板状の中空構造体を作製し、前記中空構造体の延在方向に垂直な面で前記中空構造体を切断して複数の格子状構造体ユニットを作製し、複数の前記格子状構造体ユニットを、前記中空セルが面状に配列するように、かつ、前記格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して前記格子状構造体を作製し、得られた前記格子状構造体の揃った開口断面が前記シート側に向き合うように、前記格子状構造体と前記シートとを接合することを含む点に特徴がある。
本発明に係る防音構造体によれば、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮しうる防音材を、短時間でかつ簡便な操作により防音材を製造することができる。
本発明の一実施形態に係る防音構造体の外観を示す側面図である。 本発明の一実施形態に係る防音構造体を構成する防音材の外観を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る防音構造体を構成する防音材の上面図である。 本発明に係る防音材の防音性能(透過損失@500Hz)を、従来公知の防音材における性能トレンドと対比して説明するためのグラフである。 防音材の面密度を大きくした場合における質量則に従った防音性能(透過損失)の変化を説明するためのグラフである。 本発明に係る防音材の防音性能(透過損失)を、ハニカム構造を有する格子状構造体(支持部)のみからなる防音材、一重壁のみからなる防音材、および鉄板からなる防音材と対比して説明するためのグラフである。 剛性則に従う防音性能について説明するための図である。 本発明に係る防音材の防音性能に質量則(図5)および剛性則(図7)の双方が関与していると仮定した場合のモデル式を、透過損失の実測値と対比して示すグラフである。 工程1において作製される中空構造体の外観を示す斜視図である。 工程2において作製される格子状構造体ユニットの外観を示す斜視図である。 工程3において、複数の格子状構造体ユニットを、中空セルが面状に(すなわち、二次元方向に)配列するように、かつ、格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して格子状構造体を作製する様子を示す図である。 工程4において、格子状構造体の揃った開口断面が弾性を有するシート側に向き合うように、当該格子状構造体と当該シートとを接合する様子を示す図である。 工程3において、中空セルが面状に(二次元方向に)配列して固定されてなる格子状構造体を複数作製し、工程4において、複数の当該格子状構造体が互いに独立して存在するように、複数の当該格子状構造体と弾性を有するシートとを接合することにより作製された防音材の外観写真である。 矩形状の支持部をX字に分割する際の分割パターンを示す図である。 矩形状の支持部を十字に分割する際の分割パターンを示す図である。
本発明の一形態は、弾性を有するシートと、前記シートを区画部に区画する複数の中空セルが規則的に配列されてなる格子状構造体から構成されて前記シートを支持する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が下記数式1の関係を満足する防音材の製造方法であって、
複数の中空セルが直線状に配列されてなる平板状の中空構造体を作製し、前記中空構造体の延在方向に垂直な面で前記中空構造体を切断して複数の格子状構造体ユニットを作製し、複数の前記格子状構造体ユニットを、前記中空セルが面状に配列するように、かつ、前記格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して前記格子状構造体を作製し、得られた前記格子状構造体の揃った開口断面が前記シート側に向き合うように、前記格子状構造体と前記シートとを接合することを含む、防音材の製造方法である。
Figure 2021096305
ここで、数式1における面剛性(k)および面密度(m)の算出方法については、後述する。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
図1は、本発明の一実施形態に係る防音構造体の外観を示す側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る防音構造体を構成する防音材の外観を示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る防音構造体を構成する防音材の上面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る防音構造体1は、区画部におけるシートの面剛性(k)およびシートの面密度(m)が上述した数式1の関係を満足する防音材10と、基板20とを有する。図1〜図3に示すように、本発明の一実施形態に係る防音材10は、連続的(規則的)に配列された複数の中空セル100aから構成される複数の格子状構造体100(支持部)と、弾性を有するラテックスゴムから構成されるラテックスゴムシート110とを備えている。図1〜図3に示す実施形態において、複数の格子状構造体100は、互いに独立して存在するように(すなわち、他の格子状構造体とは別体として構成された状態で)ラテックスゴムシート110条に配置されている。ラテックスゴムシート110は、格子状構造体100の両側の開口部のうち一方の側を塞ぐように当該格子状構造体100に気密に接合されており、シート状基材として機能する。なお、本実施形態におけるラテックスゴムシート110の厚さは0.25mm(250μm)である。一方、本実施形態において、格子状構造体100は、ポリプロピレン(PP)樹脂から構成されている。
また、図1に示すように、本実施形態に係る防音構造体1において、基板20は曲面を有している。そして、防音材10を構成するラテックスゴムシート110が格子状構造体100に対して基板20側に配置されるように、当該防音材10は基板20上に配置されている。この際、ラテックスゴムシート110は柔軟であることから、基板20の有する曲面に追従するように変形している。その結果、図1に示すように、それぞれの格子状構造体100は、自身が接合されているラテックスゴムシート110の変形に対応するようにその相対的な配置を決定することになる。すなわち、格子状構造体100の有する中空セル100aのそれぞれによって区画される区画部の法線(例えば、図1に示す仮想線h)が基板20に対して垂直となるように、防音材10は基板20上に配置されている。言い換えれば、格子状構造体100の有する中空セル100aのそれぞれによって区画される区画部に対応するラテックスゴムシート110が基板20と平行になるように、防音材10は基板20上に配置されている。ここで、本明細書において、「防音材が基板に対して配置される」とは、防音材が基板の鉛直上方に配置されることのみを意味するわけではない。防音材と基板とが配置されて防音構造体が形成されている限り、防音材は基板に対して任意の方向に配置されうる。例えば、防音材10が基板20の鉛直下方に配置されてもよい。
このように格子状構造体100の有する中空セル100aのそれぞれによって区画される区画部の法線が基板20に対して垂直となるように防音材10は基板20上に配置されることで、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮しうるとともに、曲面を有する基板に適用された場合であっても十分な防音性能を発現でき、しかも外力に対する強度の低下を抑制することが可能となる。さらに、曲面を有する基板に対して防音材が追従できない場合には当該基板の上部の空間にデッドスペースが発生することとなる。これに対し、本形態に係る防音構造体によれば、基板が有する曲面に対して防音材が追従できる結果、このようなデッドスペースの発生を防止することができ、スペース効率の向上にも寄与することができる。
なお、上述したように、図1に示す形態の防音構造体においては、格子状構造体の有する中空セルのそれぞれによって区画される区画部の法線が基板に対して垂直となるように、防音材が基板上に配置されている。ただし、上記法線と基板との角度は垂直(90°)のみに限定されず、「略垂直」であれば、上述したような作用効果が奏される。「略垂直」とは、法線の垂直からのずれが15°以内であることを意味し、好ましくは12°以内であり、より好ましくは10°以内であり、さらに好ましくは7°以内であり、さらにより好ましくは5°以内であり、いっそう好ましくは2°以内であり、特に好ましくは1°以内であり、最も好ましくは0°(垂直)である。
また、図2および図3に示すように、本実施形態に係る防音材10において、格子状構造体100を構成する中空セル100aの延在方向に垂直な断面(図3の紙面)における中空セル100aの断面形状は長方形である。これにより、本実施形態に係る格子状構造体100は、シート状基材としてのラテックスゴムシート110を支持するとともに、ラテックスゴムシート110を複数の(図2および図3では多数の)区画部に区画している。そして、当該複数の区画部は、同一の外郭形状を有する当該複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成している。
上述したように、図2および図3に示すような構成を有する防音材は、非常に簡単な構成で優れた防音性能を実現することができる。特に、軽量かつ簡便な構成であるにもかかわらず2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮することができるという従来の技術では達成し得なかった特性を発現することができる。
本発明者らは、上述した実施形態のような防音材がこのように優れた防音性能を示すメカニズムについて精力的に検討を進めた。その結果、車両等に従来適用されていた防音材とは異なるメカニズムが関与していることを突き止め、本発明を完成させるに至った。そして、最終的に見出されたメカニズムは、車両等に適用される防音材に関する従来の常識を覆すものであった。以下、本実施形態に係る防音材が優れた防音性能を発揮するメカニズムと、本発明者らによって解明された当該メカニズムに基づき完成された本願発明の構成について、順を追って説明する。
まず、本発明に係る防音材の防音性能(@500Hz)を、従来公知の防音材における性能トレンドと対比する形で図4に示す。図4に示すように、従来公知の防音材では、構成材料の密度が大きくなるにつれて防音性能(透過損失)が向上するという性能トレンドが存在していた。このような従来公知の防音材における性能トレンドは「質量則」として知られているものである。この質量則に従う防音材における透過損失の理論値(TL)は、対象とする音波の周波数(f)および防音材の面密度(m;単位面積当たりの質量)を用いて、下記数式2に従って算出される。
Figure 2021096305
このため、防音材の面密度を大きくすれば防音性能(透過損失(TL))を向上できるが、その一方で、防音性能を向上させるには防音材の面密度を大きくせざるを得ない、というのが質量則に基づく従来技術における常識であった(図5)。言い換えれば、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮する防音材を軽量の材料から構成することは不可能であると信じられていたのである。これに対し、本発明に係る防音材は、この性能トレンドから大きく外れるようにして優れた防音性能を示す(すなわち、低密度(軽量)でも相対的に高い防音性能を示す)ものである(図6)。
より詳細に説明すると、図6に示すように、ハニカム構造を有する格子状構造体(支持部)のみでは防音性能はまったく発揮されない。また、一重壁からなる防音材の場合、弾性を有するシート(ゴム膜)のみでは質量則に従った防音性能(高周波数域では透過損失が増大するものの低周波数域では透過損失が低減する)が発揮されるに留まる。したがって、低周波数域(特に2000Hz以下の領域)での防音性能を発揮させるためには、例えば鉄板のように面密度が非常に大きい(つまり、重い)材料を用いる必要があった。これに対し、上述したような構成を有する本発明に係る防音材は、高周波数域においては質量則に沿った防音性能を発揮し、周波数の減少に伴って透過損失の値も減少する。一方、本発明に係る防音材は軽量であるにもかかわらず、ある周波数(共振周波数)を境に低周波数域(特に2000Hz以下の領域)側においても優れた防音性能を発揮することができる。
このような低周波数域における防音性能の著しい向上は、質量則によっては説明することができない。そこで、本発明者らは、従来の技術からは説明のつかないこのような現象を説明するためのモデルとして、種々のパターンについて鋭意検討を行った。その過程で、本発明者らは、驚くべきことに、低周波数域における防音性能が、質量則とは異なる遮音原理である「剛性則」に従って発揮されていることを発見した。以下、この点について説明する。
剛性則に従う防音材における透過損失の理論値(TL)は、対象とする音波の周波数(f)、防音材の面密度(m;単位面積当たりの質量)および防音材の面剛性(K)を用いて、下記数式3に従って算出される。なお、面剛性(K)は、支持部(格子状構造体)によって区画されたシートの区画部の1つを、質量mのマスを有し、音波の入射に対して振動するマスバネモデルに近似したときのバネ定数であり、Kが大きいほど入力に対する変形しにくさが大きいことに相当する。
Figure 2021096305
そして、この式をTLが極小値をとる条件で周波数(f)について解くと、共振周波数(f)の値は、下記数式4のように表される(図7)。
Figure 2021096305
このことに基づき、本発明者らは、質量則(図5)および剛性則(図7)の双方が防音性能の発現に関与していると仮定した場合のモデル式の作成を試みた。そして、このモデル式が実際に測定された透過損失(TL)の結果と整合することを確認し、本形態に係る防音材による防音性能の発揮メカニズムには質量則および剛性則の双方が関与していることを検証するに至ったのである(図8)。
本形態に係る防音材による防音性能の発揮メカニズムにおいて、質量則のみならず剛性則も関与している理由については完全には明らかとはなっていないが、弾性を有するシートの区画部はそれぞれ、支持部(筒状セルを有する格子状構造体)によって区画されていることによりシートの剛性が向上している(すなわち、振動しにくくなっている)と考えられる。したがって、本発明者らは、上述したマスバネモデルによる近似によって、メカニズムがうまく説明されうるのではないかと推測している。
以上のようなメカニズムを前提として、本発明者らは、防音材の防音特性の設計に必要な要素についてさらに検討を進めた。その過程で、本発明者らは、弾性を有するシートの区画部のそれぞれを面積が等しくなる半径aの円板で近似し、荷重pが入力されたときの当該区画部の面剛性(k;本明細書では、本近似に従う場合の面剛性の値を小文字のkで表すものとする)を、当該円板が周辺固定・等分布荷重モードで振動するときの平均たわみ(wave)を用いて下記数式5のように算出した。本明細書では、このkの値が数式1において用いられるのである。
Figure 2021096305
なお、数式5において、νは区画部におけるシートのポアソン比であり、Eは区画部におけるシートのヤング率[Pa]であり、hは区画部におけるシートの膜厚[m]である。また、区画部を円板に近似した際の半径aは、区画部の面積等価円半径[m]である。一例として、区画部が1辺の長さがl(エル)の六角形である場合、当該区画部(六角形)の面積Shexは、下記数式6のように算出される。
Figure 2021096305
そうすると、この区画部(六角形)の等価円半径aeq(区画部(六角形)の面積と等しい面積を有する円の半径)は、下記数式7のように算出される。
Figure 2021096305
また、他の例として、区画部の形状が長方形であって当該長方形の辺の長さがpおよびqである場合、当該区画部(長方形)の面積Srecは、下記数式8のように算出される。
Figure 2021096305
そうすると、この区画部(長方形)の等価塩半径aeq(区画部(長方形)の面積と等しい面積を有する円の半径)は、下記数式9のように算出される。
Figure 2021096305
そして、このようにして算出された面剛性(k)の値を、上述した数式4における面剛性(K)の値として採用すると、共振周波数(f)の値は、下記数式10のように表すことができる。
Figure 2021096305
なお、区画部におけるシートの面密度(m)は、下記数式11のように表すことができる。
Figure 2021096305
数式3において、ρは前記区画部におけるシートの密度[kg/m]であり、hは前記区画部におけるシートの膜厚[m]である。
このため、数式10と数式11とから、共振周波数(f)の値は、区画部におけるシートの密度(ρ;単位体積当たりの質量;kg/m)の値と、上述した区画部におけるシートの膜厚[m]の値を用いて、下記数式12のように表すことができる。このことは、区画部のサイズや形状、区画部におけるシートの材質および膜厚を種々変更することにより、防音材が示す共振周波数(f)の値を制御可能であることを意味する。
Figure 2021096305
上述したように、本発明が解決しようとする課題は、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮しうる防音材を提供するというものである。そして、図7および図8に示すように、共振周波数(f)を境にして、周波数が小さくなるほど剛性則に従う防音性能(透過損失の値)は優れたものとなる。したがって、本発明者らは、共振周波数(f)をある程度以上の値に設定することで、2000Hz以下の周波数域の音に対する防音性能を向上させることができるのではないかと考えた。そして、この考えのもと、上述した数式10に従い、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部とを備える防音材において、区画部のサイズや形状、区画部におけるシートの材質および膜厚を種々変更することにより、異なる共振周波数(f)を有する防音材を多数作製し、そのそれぞれについて(特に2000Hz以下の周波数域における)防音性能を評価した。その結果、上記区画部におけるシートの面剛性(k;上記数式5により算出される)およびシートの面密度(m;上記数式9により算出される)が下記数式1の関係を満足することで、特に2000Hz以下の周波数域においても優れた防音性能を発揮しうることを確認した。下記数式1は、上述した近似に基づき算出される共振周波数(f)が900[Hz]よりも大きいことを意味している。
Figure 2021096305
ここで、数式1における左辺の値の形態は特に制限されず、防音材に対して防音性能を発揮させたい周波数領域に応じて適宜設定することができる。一般に、数式1における左辺の値を大きくするほど共振周波数は高周波数側にシフトすることから、このことを考慮して適宜設定すればよい。一例として、数式1における左辺の値は、好ましくは1400Hz以上であり、より好ましくは2000Hz以上であり、さらに好ましくは3000Hz以上であり、いっそう好ましくは4000Hz以上であり、特に好ましくは5000Hz以上である。数式1における左辺の値は、例えば10000Hz以上であり、例えば50000Hz以上であり、例えば100000Hz以上である。なお、本発明に係る技術的思想の範囲内で防音性能を発揮する防音材において、数式1における左辺の値の上限値としては、好ましくは1000000Hz以下であり、より好ましくは800000Hz以下であり、さらに好ましくは600000Hz以下である。
ところで、非特許文献1に開示された技術においては、セルサイズが大きすぎる結果、弾性を有するシートの面剛性が小さくなり、(k/m)1/2/2πの値が十分に大きくはならないため、特に2000Hz以下の周波数域において優れた防音性能を発揮することができないと考えられる。
また、従来、複数のセルが並設されてなるコア層と、当該コア層の両面に配置されたスキン層とからなる樹脂構造体が種々の用途で提案されており、当該樹脂構造体に吸音性や遮音性を持たせることも試みられている。しかしながら、このような樹脂構造体に吸音性や遮音性を持たせることを意図している従来の技術は、コア層を構成するセルの内外を連通させる連通孔をスキン層に設けることを前提としている。そして、このようにスキン層に連通孔が設けられている場合もまた、やはり弾性を有するシートの面剛性を十分に確保することができない。その結果、(k/m)1/2/2πの値が十分に大きくはならないため、特に2000Hz以下の周波数域において優れた防音性能を発揮することはできない。一方、上記と同様の構造を有する樹脂構造体において、上述したような連通孔をスキン層に設けることを前提としていない技術も従来提案されているが、これらの技術は吸音や遮音、防音などに関するものではない。これらの技術の中には、例えば、曲げ剛性や曲げ強度といった機械的強度を向上させることを目的として、容器、棚、パレット、パネル等の剛性が求められる用途への適用を意図したものがある。さらに、同様の樹脂構造体を用いる別の提案では、スキン層に当該スキン層の弾性率を低下させるための耐衝撃性改良材を必須に含有させることとされていることから、当該スキン層は本願発明における「弾性を有するシート」には該当しない可能性が高い。また、同様の樹脂構造体を用いるさらに別の提案では、厚みが0.05〜数mm程度の金属部材をスキン層として配置することとしており、やはり剛性が高い材料がスキン層に用いられている。このため、スキン層に連通孔を設けない樹脂構造体に関する従来技術においては、本願発明における面剛性の値が大きくなりすぎる結果、(k/m)1/2/2πの値が測定できない程度に大きい(高周波数側の)値になるものと考えられる。
以下、防音材10の構成要素について、より詳細に説明する。
(弾性を有するシート)
弾性を有するシート(図1および図2に示すラテックスゴムシート200に相当)の構成材料について特に制限はなく、弾性を有する材料であれば種々の材料が用いられうる。本明細書において、シートが「弾性を有する」とは、ヤング率の値が0.001〜70[GPa]の範囲内の値である材料から構成されていることを意味する。なお、ヤング率の値は、樹脂についてはJIS K7161−1(2014年)により測定されうる。また、金属のヤング率についてはJIS Z2241(2011年)により測定されうる。そして、ゴムのヤング率についてはJIS Z6251(2010年)により測定されうる。弾性を有するシートの構成材料としては、上述した実施形態において用いられているラテックスゴムのほか、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)などのゴム材料が同様に用いられうる。また、樹脂材料や金属材料、紙材料などが弾性を有するシートとして用いられてもよい。さらに、エアークッションなどの緩衝機能を有する材料もまた、用いられうる。これらの材料はいずれも、ゴム材料も含め、本形態に係る防音材の効果を発現できる程度に高い弾性を有するものである。樹脂材料としては、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等が例示される。また、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が用いられうる。なお、これらの樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の樹脂前駆体が用いられてもよい。金属材料としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。弾性を有するシートの構成材料は上記のものに限定されず、その他の材料が用いられてももちろんよい。なお、弾性を有するシートの構成材料としてはゴム材料が好ましく、なかでもラテックスゴムまたはEPDMゴムがより好ましい。これらのゴム材料を弾性を有するシートの構成材料として用いることで、本発明に係る防音体による防音効果が好適に発現しうる。また、これらのゴム材料は軽量であるという点で、特に車両用途への適用を考慮すると、低燃費化への寄与も大きいため、特に好ましい材料であると言える。さらに、低コスト化の観点からは、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂もまた、弾性を有するシートの構成材料として好ましいものである。
弾性を有するシートの膜厚は、防音材の防音効果の観点から、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは100〜500μmである。
(支持部(格子状構造体))
支持部は、上述した弾性を有するシートを支持する機能を有する。この支持部は、上述した弾性を有するシートを(気密的に区画された)複数の区画部に区画する複数の中空セルから構成される。このような機能を発現可能な構成を有するものであれば、支持部の具体的な構成について特に制限はない。
支持部の構成材料について特に制限はなく、上述した実施形態において用いられているポリプロピレン樹脂のほか、従来公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられうる。また、金属材料やその他の材料が支持部の構成材料として用いられてもよい。これらの材料はいずれも、弾性を有するシートを保持してこれを区画部に区画するのに適した物性を有している。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂のほか、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等が例示される。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が用いられうる。なお、これらの樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の樹脂前駆体が用いられてもよい。なかでも、成形が容易であるという観点からは、熱可塑性樹脂が好ましく用いられ、特に塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂は軽量であって、かつ耐久性に優れ、安価であるという利点から、好ましい。
上述したように、図1〜図3に示す実施形態において、支持部は、連続的に(規則的に)配列された複数の中空セルを有する複数の格子状構造体から構成されている。そして、支持部を構成する当該複数の中空セルの少なくとも一部は、延在方向に垂直な断面形状が同一である当該中空セルが規則的に配列されてなる格子状構造体を構成していることが好ましい。このような構成とすることにより、製造が容易で、かつ同一形状の多数の区画部の存在によって所望の周波数域の音波に対する防音性能を特異的に発現させることができる。この際、防音性能をよりいっそう発揮させるという観点から、支持部の面積に占める上記格子状構造体の面積の割合は、好ましくは80〜100%であり、より好ましくは90〜100%であり、さらに好ましくは95〜100%であり、いっそう好ましくは98〜100%であり、特に好ましくは99〜100%であり、最も好ましくは100%である。
上述した格子状構造体における中空セルの断面形状(中空セルの延在方向に垂直な断面における中空セルの断面形状)は、図2および図3に示すような長方形に限定されず、その他の形状であってもよい。同一の断面形状を有する正多角形を連続的に形成することによって多数の筒状セルを配置するのであれば、断面形状としては長方形のほか、正四角形(正方形)、正三角形、正六角形が採用されうる。これらの形状を採用することで、製造が容易でかつ優れた強度を示す支持体が提供されうる。また、中空セルの断面形状は円形や楕円形であってもよい。なお、格子状構造体の断面を複数の正多角形が規則的に配置されたパターンとするのであれば、例えば、アルキメデスの平面充填法により、(正三角形4個,正六角形1個)、(正三角形3個,正四角形(正方形)2個)×2通り、(正三角形1個,正四角形(正方形)2個,正六角形1個)、(正三角形2個,正六角形2個)、(正三角形1個,正十二角形2個)、(正四角形(正方形)1個,正六角形1個,正十二角形1個)、(正四角形(正方形)1個,正八角形2個)のいずれかの組み合わせにより格子状構造体の断面が上記パターンを有するように構成することができる。
格子状構造体を構成する中空セルのサイズについては、上述した数式1を満足するものであれば具体的な値について特に制限はない。また、中空セルの壁の厚さは、好ましくは10〜150μmであり、より好ましくは30〜100μmである。
本形態においては、格子状構造体(支持部)の延在方向の高さが大きいほど、2000Hz以下の低周波数域の広い範囲にわたって特に優れた防音性能が発揮されうる傾向にある。このような観点から、格子状構造体(支持部)は高さが均一な構造体であることが好ましい。また、この場合において、格子状構造体の延在方向の高さは、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは6mm以上であり、さらに好ましくは13mm以上であり、いっそう好ましくは19mm以上であり、特に好ましくは22mm以上であり、最も好ましくは25mm以上である。
本形態に係る防音材は、上述したように、軽量であることが好ましい。この観点から、本形態に係る防音材の全体としての面密度は、好ましくは3.24kg/m未満であり、より好ましくは2.0kg/m以下であり、さらに好ましくは1.5kg/m以下であり、特に好ましくは1.0kg/m以下である。
(防音材の製造方法)
以上、図1〜図3を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態に係る防音材の構成について説明したが、本発明によれば、上述した実施形態のような防音材の好適な製造方法が提供される。すなわち、当該製造方法は、複数の中空セルが直線状に配列されてなる平板状の中空構造体を作製すること(工程1)と、前記中空構造体の延在方向に垂直な面で前記中空構造体を切断して複数の格子状構造体ユニットを作製すること(工程2)と、複数の前記格子状構造体ユニットを、前記中空セルが面状に配列するように、かつ、前記格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して前記格子状構造体を作製すること(工程3)と、得られた前記格子状構造体の揃った開口断面が前記シート側に向き合うように、前記格子状構造体と前記シートとを接合すること(工程4)と、を含むものである。以下、当該製造方法について、工程順に説明する。
・工程1
工程1では、複数の中空セルが直線状に(すなわち、一次元方向に)配列されてなる平板状の中空構造体を作製する。図1〜図3に示す実施形態における防音材を製造するのであれば、工程1において、図9に示すような中空構造体100bを作製する。ここで作成される中空構造体100bは、防音材を構成する格子状構造体(支持体)における中空セル100aが延在方向に連通した長尺の構造体である。この中空構造体100bは、後述する工程2において切断されて格子状構造体ユニットを構成することになるものである。
工程1において、中空構造体100bを作製するための具体的な手法について特に制限はなく、防音材を構成する格子状構造体(支持体)の構成材料から、当該格子状構造体(支持体)の中空セルが連通した長尺の構造体として中空構造体100bを作製可能な任意の手法が採用されうる。例えば、押出成形により中空構造体100bを作製すると、同一形状の断面を有する中空構造体100bを簡便な操作により得ることができるため、好ましい。このように押出成形によって中空構造体100bを作製する際には、中空構造体100bの構成材料としてポリオレフィン樹脂のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。なお、押出成形以外の手法、例えば、ブロー成形や射出成形などの成形手法によって中空構造体100bを得てももちろんよい。
・工程2
工程2では、工程1において得られた中空構造体100bの延在方向に垂直な面で当該中空構造体100bを切断する。このようにして、図10に示すような複数の格子状構造体ユニット100cを作製する。この格子状構造体ユニット100cは、後述する工程3において複数個が重ねて配置(積層)されて格子状構造体100を構成するものである。
工程2において、中空構造体100bを切断して格子状構造体ユニット100cを作製するための具体的な手法について特に制限はなく、従来公知の切断手段が適宜採用されうる。また、工程2において作製される格子状構造体ユニット100cの数や長さは、工程3において作製する格子状構造体(ひいては、防音材を構成する支持部)の仕様に応じて適宜決定されうる。
・工程3
工程3では、工程2において作製した複数の格子状構造体ユニットを、中空セルが面状に(すなわち、二次元方向に)配列するように、かつ、格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して前記格子状構造体を作製する。好ましくは、図11に示すように、格子状構造体の双方の開口断面が揃うように配置される。ここで、工程3において配置される複数の格子状構造体ユニットの数は、防音材を構成する支持部の仕様に応じて適宜決定されうる。
ここで、工程3において作製される格子状構造体は、複数の格子状構造体ユニットから構成されるが、格子状構造体ユニットは互いに接合されるように配置されてもよいし、接合されることなく隣接するように配置されるのみでもよい。
・工程4
工程4では、図12に示すように、工程3において得られた格子状構造体の揃った開口断面が弾性を有するシート側に向き合うように、当該格子状構造体と当該シートとを接合する。これにより、防音材が完成する。格子状構造体100と弾性を有するシート110とを接合する手法は、格子状構造体を構成する中空セル100aと上記シート110とが気密に接合される形態であれば特に制限はない。例えば、これらを互いに圧接するのみで接合を達成してもよいし、接着剤を用いてこれらを互いに接着してもよい。
ここで、上述した工程3において格子状構造体ユニットを互いに接合せずに配置し、工程4において弾性を有するシートと接合すると、図1〜図3に示す実施形態のような防音材を得ることができる。一方、工程3において格子状構造体ユニットを接合することにより格子状構造体を作製した場合には、中空セル100aが面状に(二次元方向に)配列して固定されてなる格子状構造体が得られる。そして、このような格子状構造体を工程4において弾性を有するシートと接合することによっても、防音材を得ることができる。この際、中空セル100aが面状に(二次元方向に)配列して固定されてなる格子状構造体を複数作製し、複数の当該格子状構造体が互いに独立して存在するように、複数の当該格子状構造体と弾性を有するシートとを接合してもよい。このような構成とすることにより、中空セル100aが面状に(二次元方向に)配列して固定されてなる格子状構造体を予め作製しておけば、あとはこれを所望のパターンで配置することにより種々の形状を有する防音材を速やかに作製することができるという利点がある。このようにして作製された防音材の外観写真を図13に示す。図13に示される防音材において、支持部は互いに独立して配置された2つの格子状構造体から構成されている(支持部が2つに分割されているとも言える)。また、これら2つの格子状構造体はそれぞれ、中空セル100aが面状に(二次元方向に)配列して固定されるように複数の格子状構造体ユニットを配置することにより作製されたものである。このように複数の格子状構造体が互いに独立して存在するように配置される際のパターンは特に制限されず、例えば矩形状の支持部をX字または十字に分割するように配置されてもよい。図14は、矩形状の支持部をX字に分割する際の分割パターンを示し、図15は、矩形状の支持部を十字に分割する際の分割パターンを示す。
(防音材の用途)
本形態に係る防音材は、基板上に配置されて防音構造体を構成することで、種々の音源由来の騒音を遮蔽する用途に好適に用いられうる。防音材を基板上に配置する際には、単に防音材を基板上に置くだけでもよいし、防音材と基板とを接着剤などを用いて接合してもよい。また、弾性を有するシートと基板との間にゴムシートなどの固定手段を配置してもよい。
防音構造体を構成する基板としては、基本的に通気性のない金属板(鉄板、アルミニウム板など)や樹脂板などが用いられうる。基板の厚さは、金属板の場合には0.5〜2.0mmの範囲が好ましく、樹脂板の場合には0.5〜20mmの範囲が好ましい。
本形態に係る防音構造体を構成する基板は、図1に示すように曲面を有するものであることが好ましい。この「曲面」とは、平坦面以外の任意の面形状を意味するが、好ましくは防音材が配置される側に対して突出している(凸である)曲面である。
基板が有する曲面の曲率半径や曲げ深さの大きさについて特に制限はなく、防音材が適用される部位の形状に応じて任意の値が採用される。屈曲面を有する基板は、その曲面にひねり構造を有してもよい。ここでいう「ひねり」とは、曲面における曲率半径が一定でなかったり、開き角が一定でなかったりすることにより得られる形状を意味する。また、曲面を有する基板は曲面以外の部位に平坦面を有してもよい。
上述した本発明に係る防音材の製造方法によれば、図1〜図3に示すような、格子状構造体100が互いに独立して存在するように弾性を有するシート110上に配置された防音材を簡便な手法により製造することが可能である。そして、このような構成を有する防音材は、図1に示すように曲面を有する基板20上に配置されると、格子状構造体100の有する中空セル100aのそれぞれによって区画される区画部の法線(例えば、図1に示す仮想線h)が基板20に対して垂直となるように基板20上に配置される。その結果、防音材10は基板20の有する曲面の形状に対して十分に追従することができ、より優れた防音性能を発揮することができる。このため、平板状の基板のみならず様々な形状を有する基板に対しても適用が可能となるという利点がある。
本形態に係る防音材およびこれを用いた防音構造体は非常に軽量に構成することが可能である。本形態に係る防音材および防音構造体は、このように軽量化が可能であることから、車両に搭載されて用いられることが好ましい。特に、エンジンやトランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)から発生する騒音に対する防音用途に適用されることが最も好ましい。適用部位の一例として、エンジンコンパートメントにおいては、エンジンヘッドカバー、エンジンボディカバー、フードインシュレーター、ダッシュ前インシュレーター、エアボックスの隔壁、エアインテークのエアクリーナー、ダストサイドダクト、アンダーカバーなどに適用可能である。また、キャビンにおいては、ダッシュインシュレーター、ダッシュパネル、フロアのカーペット、スペーサー、ドアのドアトリム、ドアトリム内の防音材、コンパートメント内の防音材、インストパネル、インストセンターボックス、インストアッパーボックス、エアコンの筐体、ルーフのトリム、ルーフトリム内の防音材、サンバイザー、後席向けエアコンダクト、電池搭載車両における電池冷却システムの冷却ダクト、冷却ファン、センターコンソールのトリム、コンソール内の防音材、パーセルトリム、パーセルパネル、シートのヘッドレスト、フロントシートのシートバック、リアシートのシートバックなどに適用可能である。さらに、トランクにおいては、トランクフロアのトリム、トランクボード、トランクサイドのトリム、トリム内の防音材、ドラフターカバーなどに適用可能である。また、車両の骨格内やパネル間にも適用することができ、例えば、ピラーのトリム、フェンダーに適用可能である。さらには、車外の各部材、例えば、フロア下のアンダーカバー、フェンダープロテクター、バックドア、ホイールカバー、サスペンションの空力カバーなどにも適用可能である。したがって、防音構造体を構成する基板としては、上述した各種の適用部位の構成材料としての金属板や樹脂板等をそのまま用いることができる。
なお、本形態に係る防音構造体を音源に対して配置する際の配置形態について特に制限はない。本形態に係る防音構造体を音源に対して配置する際には、格子状構造体(支持部)を構成する中空セルの延在方向に音源が位置するように配置することが好ましい。また、このように配置する際には、防音材を構成する弾性を有するシートが音源側に位置するように配置してもよいし、防音材を構成する筒状セルの開口部が音源側に位置するように配置してもよい。
1 防音構造体、
10 防音材、
20 基板、
100 格子状構造体(支持部)、
100a 中空セル、
100b 中空構造体、
100c 格子状構造体ユニット、
110 ラテックスゴムシート(弾性を有するシート)、
h 中空セルによって区画される区画部の法線。

Claims (6)

  1. 弾性を有するシートと、
    前記シートを区画部に区画する複数の中空セルが規則的に配列されてなる格子状構造体から構成されて前記シートを支持する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が下記数式1の関係を満足する防音材の製造方法であって、
    Figure 2021096305

    複数の中空セルが直線状に配列されてなる平板状の中空構造体を作製し、
    前記中空構造体の延在方向に垂直な面で前記中空構造体を切断して複数の格子状構造体ユニットを作製し、
    複数の前記格子状構造体ユニットを、前記中空セルが面状に配列するように、かつ、前記格子状構造体の少なくとも一方の開口断面が揃うように配置して前記格子状構造体を作製し、
    得られた前記格子状構造体の揃った開口断面が前記シート側に向き合うように、前記格子状構造体と前記シートとを接合する、
    ことを含む、防音材の製造方法。
  2. 前記平板上の中空構造体を押出成形により作製することを含む、請求項1に記載の防音材の製造方法。
  3. 前記平板上の中空構造体において配列される前記複数の中空セルは、延在方向に垂直な断面形状が同一である、請求項1または2に記載の防音材の製造方法。
  4. 複数の前記格子状構造体ユニットを接合することにより前記格子状構造体を複数作製し、複数の前記格子状構造体が互いに独立して存在するように、複数の前記格子状構造体と前記シートとを接合することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防音材の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の防音材の製造方法によって防音材を作製し、
    得られた前記防音材を基板に対して配置する、
    ことを含む、防音構造体の製造方法。
  6. 前記基板は曲面を有し、
    前記防音材を構成する前記シートが前記支持部に対して基板側に配置されるように、前記防音材を前記基板に対して配置することを含む、請求項5に記載の防音構造体の製造方法。
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