JP2021084130A - 据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品 - Google Patents

据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品 Download PDF

Info

Publication number
JP2021084130A
JP2021084130A JP2019216866A JP2019216866A JP2021084130A JP 2021084130 A JP2021084130 A JP 2021084130A JP 2019216866 A JP2019216866 A JP 2019216866A JP 2019216866 A JP2019216866 A JP 2019216866A JP 2021084130 A JP2021084130 A JP 2021084130A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pressing surface
device axis
cone
annular material
axis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019216866A
Other languages
English (en)
Inventor
孝次 木寅
Koji Kitora
孝次 木寅
西尾 克秀
Katsuhide Nishio
克秀 西尾
淳史 須釜
Junji Sugama
淳史 須釜
潤一 岡本
Junichi Okamoto
潤一 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2019216866A priority Critical patent/JP2021084130A/ja
Publication of JP2021084130A publication Critical patent/JP2021084130A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)
  • Forging (AREA)

Abstract

【課題】樽形状となる湾曲の度合いを軽減することが可能な据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品を提供する。【解決手段】第1押圧面21を有する第1型2と、前記第1押圧面21と対向する第2押圧面31を有する第2型3と、前記第1型2と前記第2型3とを相対的に近接又は離間する方向に駆動可能な駆動部5と、を備え、環状素材100を軸線A0に沿った方向の両側から前記第1押圧面21と前記第2押圧面31とで挟んで押圧する据え込み加工装置1であって、前記第1押圧面21及び前記第2押圧面31の少なくとも一方の押圧面は、前記環状素材100の押圧時に、前記環状素材100の前記軸線A0と一致する装置軸線A1の上の一点を頂点とした錐体の側面である。【選択図】図1

Description

本発明は、環状素材の据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品に関する。
従来、軸受け、コロ、歯車部品等の環状の回転部品の多くは、丸棒材の切削により製造されている。例えば、鋼管を所定の幅に切断して切削リングを製造し、その切削リングに所定の施削を施し、その後、鍛造を行うことで、ベアリングレースを製造する技術が開示されている(特許文献1参照)。しかし、このような切削は、材料を削り出して製造されるため、歩留まりが低く、生産性タクトも著しく低い。
このため、環状素材をプレス加工して最終形状に近い形状まで製作し、仕上げのみを切削で行うニーズが増加している。例えば、円筒状素材を軸方向に圧縮し、その中央部を外方に向け突出させて折曲部を形成する技術も開示されている(特許文献2参照)。
特開2007−130673号公報 特開昭63−26230号公報
しかし、特許文献2の技術を用いて、板厚の薄い軸受け鋼管を単純に据え込み加工で増肉した場合、中央部で湾曲した樽形状になる。
本発明は、樽形状となる湾曲の度合いを軽減することが可能な据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、第1押圧面を有する第1型と、前記第1押圧面と対向する第2押圧面を有する第2型と、前記第1型と前記第2型とを相対的に近接又は離間する方向に駆動可能な駆動部と、を備え、環状素材を軸線に沿った方向の両側から前記第1押圧面と前記第2押圧面とで挟んで押圧する据え込み加工装置であって、前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面は、前記環状素材の押圧時に、前記環状素材の前記軸線と一致する装置軸線の上の一点を頂点とした錐体の側面である、据え込み加工装置を提供する。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが75°以上であってもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが83°以上89°以下であってもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが、
θ=90°−tan−1μであってもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが60°以上であってもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが76°以上88°以下であってもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが、θ=90°−2×tan−1μであってもよい。
前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面には、前記環状素材の中央貫通孔に挿入される位置決め突部が設けられていてもよい。
本発明の第2の態様は、第1押圧面を有する第1型と、前記第1押圧面と対向する第2押圧面を有する第2型と、の間に環状素材を配置する配置工程と、前記第1型と前記第2型とを相対的に近接する方向に駆動することにより、前記環状素材を軸線に沿った方向の両端から前記第1押圧面と前記第2押圧面とで挟んで押圧する据え込み工程と、を備え、前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面は、前記環状素材の押圧時に前記環状素材の前記軸線と一致させる装置軸線の上の一点を頂点とした錐体の側面である、据え込み加工方法を提供する。
前記据え込み工程は、前記環状素材の外周面及び内周面が拘束されない自由据え込み工程であってもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θを、θ=90°−tan−1μとしてもよい。
前記押圧面は円錐体の側面であり、前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θを、θ=90°−2×tan−1μとしてもよい。
前記配置工程は、前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面に設けられた前記装置軸線を中心とした位置決め突部を、前記環状素材の中央貫通孔に挿入することで、前記環状素材を位置決めする位置決め工程を含んでもよい。
本発明の第3の態様は、環状であり、軸方向の中央における内径側の中央内径部は、前記中央における外径側の中央外径部と、前記軸方向の一端側における内径側の一端側内径部と、前記軸方向の他端側における内径側の他端側内径部と、より硬い、据え込み加工品を提供する。
前記中央内径部は、前記中央外径部よりも5%以上硬くてもよい。
本発明によれば、樽形状となる湾曲の度合いを軽減することが可能な据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品を提供することができる。
実施形態の据え込み加工装置1の概略断面である。 実施形態の据え込み加工方法を説明する図である。 第1比較形態の据え込み加工方法を説明する図である。 第1比較形態の据え込み加工装置1Aを用いた場合に円環状素材100に作用する力を説明する図である。 斜面に重さWの物体を載せたときの摩擦係数μと角度φとの関係を説明する図である。 傾斜面に力Fを加えて部材を圧縮する場合の摩擦係数と摩擦角との関係を説明する図である。 φについて場合分けをした場合の、据え込み加工品200,200Aの形状を示す表である。 金型の押圧面の傾斜の有無による、据え込み加工品の径方向の材料変位量を比較したFEM解析結果である。 実施形態での据え込み加工品200と、第1比較形態での据え込み加工品200Aの相当ひずみを示す図である。 金型角度を90°から83°まで変更したときの、据え込み加工品200,200Aの上面又は下面での内径寸法及び外形寸法のFEM解析結果と、実測値とを示したグラフである。 押圧面の傾斜角度θを変えて加工した据え込み加工品200,200Aにおける、上面近傍と中央線M近傍での内径差分と外径差分と示すグラフである。 図11の縦軸が示す値を説明する図である。 異なる位置でのビッカース硬さを測定した結果である。 加工方法の違いによる加工品の鍛流線を比較した図である。
(据え込み加工装置)
図1は、本発明の実施形態の据え込み加工装置1の概略断面である。据え込み加工装置1は、実施形態では円環状素材100を軸線A0方向に圧縮して、拡径及び増肉する装置である。なお、実施形態では円環状素材100を据え込み加工するが、これに限らず、例えば角環状素材や楕円環状素材を据え込み加工する装置であってもよい。また、据え込み加工装置1は円環状素材100を上下方向から据え込み加工するが、これに限定されず、例えば横方向から据え込み加工するものであってもよい。
据え込み加工装置1は、下型2(第1型)と、その下型2と略同形で、下型2の上部に、下型2と同一の装置軸線A1を中心として配置された上型3(第2型)と、上型3と下型2との上下方向の相対移動を案内するガイド部4と、上型3と下型2とを上下方向に相対駆動する駆動部5と、を備える。下型2と上型3とを合わせて金型10と称する。
(下型2)
下型2は略円柱状であり、上面に下型押圧面21(第1押圧面)が設けられている。下型押圧面21は、装置軸線A1上の一点を頂点として、下方に向かうに従い広径する円錐体の側面の一部である。上面における装置軸線A1を中心とした所定径の範囲には、上方に円柱状に突出した下型位置決め突部22が設けられている。下型位置決め突部22の外径は、円環状素材100の貫通孔101の内径と略等しい。
図1に示すように装置軸線A1を通る断面における、下型押圧面21の装置軸線A1に対する内角側の傾斜角度(下型傾斜角度)θ1は90°未満であり、実施形態で下型傾斜角度θ1は87°である。
なお、実施形態で下型押圧面21は円錐体の側面であるが、これに限らず、加工対象である環状素材の形状に合わせて、他の錐体、例えば角錐等の側面であってもよい。
(上型3)
上型3は、下型2と上下が逆であるが同形である。すなわち、略円柱状であり、下面に、下型押圧面21と対向する上型押圧面31(第2押圧面)が設けられている。上型押圧面31は、装置軸線A1上の一点を頂点として、上方に向かうに従い広径する円錐体の側面の一部である。下面における装置軸線A1を中心とした所定径の範囲には、下方に円柱状に突出した上型位置決め突部32が設けられている。上型位置決め突部32の外径は、円環状素材100の貫通孔101の内径と略等しい。
図1に示すように装置軸線A1を通る上下方向の断面において、上型押圧面31の装置軸線A1に対する内角側の傾斜角度θ2(上型傾斜角度)は、90°未満であり、実施形態で上型傾斜角度θ2は87°である。
なお、下型押圧面21と同様に、実施形態で上型押圧面31は、円錐体の側面であるが、これに限らず、加工対象である環状素材の形状に合わせて、角錐等であってもよい。
(ガイド部4)
ガイド部4は、下型2と上型3との外周に配置された所定厚みの円筒部材である。ガイド部4の貫通孔41の内径は上型3及び下型2の外径とほぼ同じである。ガイド部4と下型2とは、台座6の上に載置されている。
下型2と上型3とは、上型押圧面31と下型押圧面21とが対向した状態で、ガイド部4の貫通孔41の内部に装置軸線A1方向に一定の間隔を開け且つ装置軸線A1を中心として配置されている。下型2と上型3とが装置軸線A1方向に互いに相対移動する際に、ガイド部4の貫通孔41によって直進ガイドされる。
(駆動部5)
駆動部5は、実施形態においては上型3を装置軸線A1方向に下型2に対して近接する方向と離間する方向とに駆動する。ただし、これに限らず、上型3と下型2とを装置軸線A1方向に互いに相対駆動させるものであればよい。
なお、実施形態の据え込み加工装置は、据え込み加工時において円環状素材100の外周を拘束しない自由据え込み加工装置である。
(実施形態の据え込み加工方法)
図2は、実施形態の据え込み加工方法を説明する図である。
図2(a)は加工前の円環状素材100の斜視図である。円環状素材100は、軸線A0を中心とした回転体である。なお、実施形態において据え込み加工装置1により加工される被処理体は円環状素材100であるが、これに限定されず、例えば角環状素材や楕円環状素材であってもよい。
図2(b)は据え込み加工方法の位置決め工程を説明する図である。下型2における下型位置決め突部22の外側に、円環状素材100の貫通孔101の下側を挿入する。これにより、円環状素材100を下型押圧面21の中央に位置決めして配置する。
そして、駆動部5を駆動させることにより上型押圧面31を下降させ、上型3の上型位置決め突部32を円環状素材100の貫通孔101に挿入する。そうすると、円環状素材100の貫通孔101の上方に上型3の上型位置決め突部32が挿入される。円環状素材100の軸線A0は、据え込み加工装置1の装置軸線A1と一致し、円環状素材100は据え込み加工装置1の中央に保持される。
図2(c)は据え込み加工方法の据え込み工程を説明する図である。駆動部5の駆動により上型3をさらに下降させ、円環状素材100を軸線A0(装置軸線A1)方向に所定の加圧力で圧縮して、円環状素材100を、軸線A0方向と直交する方向に拡径及び増肉させる。
図2(d)及び(e)は円環状素材100の加工後の状態である据え込み加工品200を示す図で、(d)は軸線A0を通り且つ軸線A0と平行な断面図であり、(e)は斜視図である。
据え込み加工品200は、円環状素材100の状態から軸線A0方向に圧縮されるとともに軸線A0方向と直交する方向に増肉されている。図2に示す実施形態の据え込み加工品200は、外側面200aと内側面200bとが、図示する断面において上下に延びる直線状であり、すなわち、湾曲していない。また、据え込み加工品200の上面200uと下面200dとは、上型押圧面31と下型押圧面21に対応する円錐の側面(内側面)状となっている。
なお、図2に示す実施形態の据え込み加工品200は、外側面200aと内側面200bとが、図示する断面において上下に延びる直線状である。しかし、本発明の範囲は、必ずしも完全に直線状でなくてもよく、次に述べる第1比較形態よりも外側への突出量が小さければよく、また内側へ突出している場合も含まれる。
(比較形態の据え込み加工方法)
図3は、第1比較形態の据え込み加工方法を説明する図である。
図3(a)は加工前の円環状素材100の斜視図である。円環状素材100は実施形態と同様である。
図3(b)は、第1比較形態の据え込み加工方法の位置決め工程を説明する図である。第1比較形態の据え込み加工装置1Aは、下型押圧面21Aと上型押圧面31Aとの形状が実施形態の据え込み加工装置1と異なる。第1比較形態の下型押圧面21Aと上型押圧面31Aとは、円錐体の側面ではなく、装置軸線A1と直交する方向(水平方向)に延びる平坦面である。
位置決め工程において、実施形態と同様に、下型2Aにおける下型位置決め突部22Aの外側に、円環状素材100の貫通孔101の下側を挿入する。これにより、円環状素材100を下型押圧面21Aの中央に位置決めして配置する。
そして、駆動部を駆動させることにより上型押圧面31Aを下降させ、上型3Aの上型位置決め突部32Aを円環状素材100の貫通孔101に挿入する。そうすると、円環状素材100の貫通孔101の上方に上型3Aの上型位置決め突部32Aが挿入される。円環状素材100の軸線A0は、据え込み加工装置1Aの装置軸線A1と一致し、円環状素材100は、据え込み加工装置1Aの中央に保持される。
図3(c)は比較形態における据え込み加工方法の据え込み工程を説明する図である。駆動部5の駆動により上型3Aをさらに下降させる。これにより円環状素材100を軸線A0(装置軸線A1)方向に圧縮して、円環状素材100を、軸線A0方向と直交する方向に拡径及び増肉する。
図3(d)及び(e)は、比較形態での加工後の据え込み加工品200Aを示す図で、(d)は軸線A0を通り、軸線A0と平行な断面図であり、(e)は斜視図である。第1比較形態の据え込み加工品200Aは、実施形態と同様に円環状素材100の状態から軸線A0方向に圧縮されるとともに軸線A0方向と直交する方向に増肉されている。第1比較形態の据え込み加工品200Aが実施形態の据え込み加工品200と異なる点は、外側面200Aaと内側面200Abの中央部が、外側に拡径して湾曲した、いわゆる樽形状である点である。
(第1比較形態が樽形状になる理由)
第1比較形態が、このように樽形状になる理由について説明する。
物体に荷重Fが作用して距離sだけ移動する場合、仕事W=F×sが最小になるように移動することが最も安定している。すなわち、Fが一定の場合、sが最も小さくなるように移動することが最も安定している。
円環状素材100を、第1比較形態のような押圧面が平坦な上型3と下型2とで据え込んだ場合においても、移動距離sが小さくなる移動が最も安定した移動であると考えられる。
一例として、外径(半径)6mm、内径(半径)5mm、高さ10mmの円環状素材100を、体積一定で圧縮率50%に据え込んだ場合、以下のようになる。
(1)内径寸法が変わらない場合、外径(半径)寸法は6mmから(√47)mm≒6.86mmへと拡径する。すなわち、外径部分の軸線A0方向からの移動距離sは0.86mmである。
(2)外径寸法が変わらない場合、内径(半径)寸法が5mmから(√14)mm≒3.74mmへと縮径する。すなわち、外径部分の軸線A0方向からの移動距離sは、1.26mmである。
したがって、拘束がない自由据え込みにおいて、外径寸法が変化した方が、内径寸法が変化する場合よりも仕事Wが小さくなるので、より安定性が高いと考えられる。
ゆえに、第1比較形態の据え込み加工において円環状素材100を据え込み加工する場合、安定性の面から、内径側に材料が移動して縮径するよりも外径側に材料が移動して拡径しやすいと考えられる。
図4は第1比較形態の据え込み加工装置1Aを用いた場合に円環状素材100に作用する力を説明する図である。円環状素材100の材料が外径側に移動しようとしたとき、上型押圧面31Aと円環状素材100の上面との間と、下型押圧面21Aと円環状素材100の下面との間とには、材料が移動しようとする方向rと逆向き、すなわち内径向きの摩擦力fi=μ×Fが働く(μは摩擦係数)。
一方、円環状素材100の軸線A0方向の中央線M近傍では、摩擦力fiの影響が少ない。このため、円環状素材100における、上面及び下面近傍と、中央線M近傍とでは材料の径方向の変位量が異なる。すなわち、中央線M近傍では径方向の変形量が大きくなり、上面及び下面近傍では変形量が小さくなり、その結果、据え込み加工品200Aは図3(c),(d),(e)に示すように樽形状となると考えられる。
(実施形態の突出量が小さくなる理由)
次に、実施形態が比較形態と比べて外側への突出量が小さくなる理由について説明する。
(1)摩擦係数μと摩擦角φとの関係
斜面に重さWの物体を載せ、傾斜をしだいに大きくしていき、傾斜角が角度φになったときに、物体が滑り始めたとする。
図5は斜面に重さWの物体を載せたときの摩擦係数μと角度φとの関係を説明する図である。図示するように、斜面の傾きが角度φのとき、重さWを斜面に直角な直圧力Rと斜面に平行な力Pとに分解する。このとき、物体の静摩擦力f(f=μ×R)は、物体を滑らせようとする力Pと釣り合っているので、
f=μ×R=P
したがって、摩擦係数μは、
μ=P/R=(Wsinφ)/(Wcosφ)=tanφ
となる。
(2)据え込み加工への応用
この関係式μ=tanφを、本願の据え込み加工(側面が拘束されない自由据え込み加工)に応用する。図6は、傾斜面に力Fを加えて部材を圧縮する場合の摩擦係数と摩擦角との関係を説明する図である。以下、上型押圧面31と円環状素材100の上面側とを例にして説明する。
F:荷重
R:荷重Fの、上型3の上型押圧面31と直交する方向の分力(直圧力)
P:荷重Fの、上型3の上型押圧面31と平行な方向の分力
fp:Pの力と同じ大きさで反対方向に働く静摩擦力
φ:水平面に対する上型押圧面31の傾きφ
μ:上型3と円環状素材100の上面との間の摩擦係数
fmax:最大摩擦力
とする。
そうすると、
P=F×sinφ、R=F×cosφ、
fmax=μ×R、
fp=P(fmax<Pになるまでの間)
となる。
図5のように物体を滑らせた場合は、P≦μ×Rでは物体は静止している。しかし、図6のような据え込み加工の場合、P≦μ×Rにおいて材料は、移動距離が小さい外径方向に移動をする。このため、材料が移動する方向と反対方向に働く、すなわち内径向きの摩擦力fiも同時に存在する。しかしながら、最大摩擦力fmax以上に摩擦は生じないので、静摩擦力fpとfiの和はfmaxと一致する。
本発明の据え込み加工において、P≦μ×Rの条件では、物体が移動する方向は斜面と平行な力Pによる内径向きの移動と、自由据込みによる外径側への移動が考えられる。
最大摩擦力fmaxは斜面に垂直な力(直圧力)Rと摩擦係数μとの積で求まるが、その向きは斜面を移動する物体の逆向きに働くので、斜面と平行な力Pと逆向きの摩擦力fpと、自由据込みによる外径側への移動と逆向きの摩擦力fiが存在し、これらの関係がfmax=fp+fiとなる。
すなわち、
P≦μ×Rのとき、
fmax=fp+fiであり、fp=Pであるので、
fi=fmax−fp=μ×R−P=(μ×F×cosφ)−(F×sinφ)=(μ×F)×(cosφ−sinφ/μ)
となる。
図7は、φについて場合分けをした場合の、据え込み加工品200(実施形態),200A(第1比較形態)の形状を示す表である。矢印の大きさは摩擦力又は変位量の大きさを示す。
(1)φ=0のとき(第1比較形態)
fi=μ×F、fp=0となり、摩擦力fはf=μ×Fで内径向きとなる。
したがって、第1比較形態では、上述のように、押圧面と当接している上面及び下面近傍では変形量が小さくなり、中央線M近傍では径方向の変形量が大きくなり、その結果、据え込み加工品200Aは図3(c),(d),(e)に示すように樽形状となる。
(2)cosφ>sinφ/μのとき(実施形態)
fpとPは相殺されるので、見かけ上の摩擦力fはfiと等しくなる。
その結果、fは内径向きで0<f<μ×Fとなる。
このときのφはμ>sinφ/cosφ=tanφとなり、φ<tan−1μで求められる。
実施形態では第1比較形態よりも見かけ上の摩擦力が小さくなるので、第1比較形態と比べて、押圧面と当接している上面及び下面近傍での変形量の、中央線M近傍での径方向の変形量に対する差が小さくなる。
(3)cosφ=sinφ/μのとき(実施形態)
fi=0であり、fp=fmax=PとなってfpはPとつりあって相殺されるので、見かけ上の摩擦力fはf=0となる。
このときのφはμ=sinφ/cosφ=tanφとなるので、φ=tan−1μで求められる。
したがって、cosφ=sinφ/μは、実施形態における最も好ましい範囲であり、押圧面と当接している上面及び下面近傍での変形量の、中央線M近傍での径方向の変形量に対する差がなくなる。ゆえに、水平面に対する上型押圧面31の傾きφを、φ=tan−1μ(μは摩擦係数)に設定すれば、金型と円環状素材100の境界面に発生する摩擦力fを見かけ上0にでき、材料の径方向に対する変位量が中央線M近傍と金型境界面とで同等となる。ゆえに、据え込み加工品200が、図2(d)及び(e)に示すように外側面200aと内側面200bとを、図示する断面において上下に延びる直線状とすることができる。
(検証結果)
図8は、金型の押圧面の傾斜の有無による、据え込み加工品の径方向の材料変位量を比較したFEM(Finite Element Method)解析結果である。図中最も右側の図8(d)は、図8(a),(b),(c)がどの位置の材料変位量を示したものであるかを示す図である。
一般的な潤滑油を使用した鋼種と金型材料との間の摩擦係数μは0.03〜0.12であり、最大で0.25となるが、今回のFEM解析では、使用頻度が高い摩擦係数μ=0.05を適用した。
各種条件は以下である。
解析手法:FEM
円環状素材
鋼種:SUJ2
内径:14.2mm
外径:28.4mm
高さ:50.5mm
摩擦係数μ:0.05
圧縮力:(a)724kN、(b)811kN、(c)838kN
圧縮率:50%
図8(c)は、摩擦のない理想的な加工条件で、互いに平行且つ水平方向に延びる上型押圧面と下型押圧面とを備える据え込み加工装置により円環状素材100を据え込み加工した場合の据え込み加工品200Iである。理想的な加工条件で加工された据え込み加工品200Iは、径方向の材料変位量が、中央線M近傍と上面及び下面近傍と変わらない。
図8(a)は、摩擦の存在する現実的な加工条件で、互いに平行且つ水平方向に延びる上型押圧面31Aと下型押圧面21Aとを備える据え込み加工装置1Aにより円環状素材100を据え込み加工した場合の第1比較形態の据え込み加工品200Aである。
第1比較形態によると、上面及び下面近傍で内径向きの摩擦力(μ×F)が働くので、材料の変位量が小さくなる。また、中央線M近傍では、摩擦力の影響が少ないので変位量が大きくなる。
図8(b)は、本実施形態である。本実施形態では現実的な摩擦が存在するが、円環状素材100に対し、φ=tan−1μ(μは摩擦係数)の傾斜面である上型押圧面31と下型押圧面21とを備える据え込み加工装置1により円環状素材100を据え込み加工した場合の据え込み加工品200である。実施形態によると、中央線M近傍と、上面及び下面近傍との材料変位量の差が小さく、摩擦のない理想的な図8(c)の状態に近いことがわかる。
(傾斜角度θについて)
上述したように、実施形態において上型傾斜角度θ2及び下型傾斜角度θ1は87°である。この効果について説明する。なお、以下の説明は、上型傾斜角度θ2及び下型傾斜角度θ1に共通する説明であるので、傾斜角度θとして共通して説明する。
図6に示すように角度φと金型10の傾斜角度θとの関係は
θ=90°−φ=90°−tan−1μである。
また、この関係式は、
tanθ=1/tanφ=1/μとなるので、
θ=tan―1(1/μ)とも表すことができる。
となる。すなわち、μがわかれば傾斜角度θを求めることができる。なお、摩擦係数μの実験による推定方法では、μの精度としては、±0.02程度の誤差が含まれるので、傾斜角度としては、ここで求めたθ±1.5°までを包含する。
(μと傾斜角度θとの関係)
実施形態において、μ=0.05であるとすると、この場合、見かけ上の摩擦力fがf=0となる傾斜角度θは、
θ=tan−1(1/μ)
=tan−1(1/0.05)
=87°となる時に、円環状素材100の径方向に対する変位量が中央線M近傍と金型境界面とで同等となり、成形された据え込み加工品200は、樽形状にならない。
なお、μには誤差があるので、傾斜角度θが85.5°≦θ≦88.5°(85.5°以上88.5°以下)までを包含する。
(湾曲させないようにする場合の好ましい範囲)
据え込み加工装置1において金型として使用する金属材料や、円環状素材の材料、潤滑油等で摩擦係数μは変動する。一般的に最大となる摩擦係数μmaxは0.25程度であるので、θ=tan−1(1/μ)より、θ=75°(小数点以下切り下げ)となる。
この中でも、通常使用される範囲は、0.03≦μ≦0.12である。この場合、83°≦θ≦89°(83°以上89°以下)となる。
図9(a)は、μ=0.05で傾斜角度θ=90°の第1比較形態での据え込み加工品200Aの相当ひずみを解析にて求めた結果を示す図で、図9(b)はμ=0.05で傾斜角度θ=87°の実施形態での据え込み加工品200の相当ひずみを解析にて求めた結果示す図である。
解析手法及び各種条件は以下である。
解析手法:FEM
円環状素材
鋼種:SUJ2
内径:14.2mm
外径:28.4mm
高さ:50.5mm
圧縮力:(a)724kN、(b)811kN
圧縮率:50%
図中点線は、目標とする据え込み加工品200の形状である。図示するように実施形態では、相当ひずみが略均一で第1比較形態では、相当ひずみの値にばらつきが大きかった。また、実施形態での据え込み加工品200のほうが理想とする形状に近かった。
図10は、金型角度を90°から83°まで変更したときの、据え込み加工品200,200Aの上面又は下面での内径寸法及び外形寸法のFEM解析結果と、金型角度が90°、88°、87°、86°、84°の場合における実測値とを示したグラフである。
摩擦係数μを推定する方法としては、塑性加工学改訂版(2014年3月14日第1版)に記載されている。
その方法は、リング状の試験片を平行工具間で圧縮するリング圧縮では、摩擦が小さいとリング内径が広がり、摩擦が大きければ、逆に小さくなるという摩擦係数の相違によるリング内径の変化を利用して、計算結果と実験によるリング内径変化を比較して摩擦係数を決定する方法であり、今回の実験品で確認した結果、摩擦係数μ=0.05となった。
解析手法及び各種条件は以下である。
円環状素材としては、以下のものを用いた。
鋼種:SUJ2
内径:14.2mm
外径:28.4mm
高さ:50.5mm
また、以下の条件で据え込み加工を行った。
プレス装置:4000kNメカプレス(油圧ユニット、理研機器株式会社製)
プレスモーション:クランク
プレス速度:10spm
金型材質:SKD11
潤滑油:G−3456(日本工作油株式会社製)
圧縮力:金型角度 90°748kN、88°801kN、87°834kN、86°773kN、84°657kN
圧縮率:50%
解析手法:FEM
円環状素材
鋼種:SUJ2
内径:14.2mm
外径:28.4mm
高さ:50.5mm
圧縮力:金型角度 90°724kN、88°788kN、87°811kN 、86°765kN、84°664kN 83°629kN
圧縮率:50%
図示するように、据え込み加工品200,200Aの外形寸法Aと内径寸法aの実測値は、図7で説明したメカニズムをもとにしたFEM解析結果と略一致しており、図7で説明したメカニズムの信頼性が高いことが示された。
(θの変更による形状の変化)
図11は、摩擦係数μ=0.05において据え込み加工装置1の押圧面の傾斜角度θを変えて加工した据え込み加工品200,200Aにおける、上面近傍と中央線M近傍での内径差分と、外径差分と示すFEM解析結果に基づくグラフである。図12は、図11の縦軸が示す値を説明する図である。図12に示すように、実施形態の据え込み加工品200における上部の外径をA、上部の内径をa、中央部の外径をB、中央部の内径をbとする。
中央部の内径bと上部の内径aとの差分b−aを内径差分とする。b−aがプラスの値ということは、据え込み加工品200の貫通孔の中央部の径が、上部の径より大きいことを示す。b−aがマイナスの値ということは、据え込み加工品200の貫通孔の中央部の径が、上部の径より小さいことを示す。
上部の外径Bと上部の外径Aとの差分B−Aを外径差分とする。B−Aがプラスの値ということは、据え込み加工品200の外径の中央部の径が、上部の径より大きいことを示す。すなわち樽型である。B−Aがマイナスの値ということは、据え込み加工品200の外径の中央部の径が、上部の径より小さいことを示す。すなわち、中央部が窪んだ形状である。
図11に示すように、金型の傾斜角度θを90°から83°へと変化させると、内径差分と外径差分との値が変化する。なお金型の傾斜角が90°とは、第1比較形態の場合である。また、図11に示すように、金型角度を変えていったときに、内径差分と外径差分とは略等しい値となる。すなわち、外径側の出張量と内径側のくびれ量とは略等しいと考えられ、外径部の突出分が内径部の凹分になっている。
実施形態の場合、μ=0.05において、傾斜角度θは約87°(=90°−tan−1μ)である。このとき図11に示すように、内径差分と外径差分とは略ゼロになる。
なお、摩擦係数μの実験による推定方法では、μの精度としては、±0.02程度の誤差が含まれるので、傾斜角度としては、ここで求めたθを±1.5°とする85.5°≦θ≦88.5°(85.5°以上88.5°以下)(=tan−1(1/μ)±1.5°)を包含するものとする。
(内側に突形状の据え込み加工品)
傾斜角度θは87°よりも角度が小さくなると(水平に対する傾斜が大きくなると)、内径差分と外径差分との値がマイナスになる。そして、傾斜角度θが90°−2×tan−1μのとき、第1比較形態において外側に突となっていた据え込み加工品200Aと同じ量だけ内側に突となった据え込み加工品を製造することができる。なお、摩擦係数μの実験による推定方法では、μの精度としては、±0.02程度の誤差が含まれるので、傾斜角度としては、ここで求めたθ±3.0°までを包含するものとする。
すなわち、平坦な押圧面で押圧した時と同じ量だけ内側に突となった据え込み加工品を製造するための傾斜角度θは、
一般的に最大となる摩擦係数μmax=0.25でのθ=60°であり、この中でも、通常使用される範囲は、0.03≦μ≦0.12である。この場合、76°≦θ≦88°(76°以上88°以下)となる。
このように、傾斜角度θを変更することにより、据え込み加工品における、軸線A0方向の中央部の径方向位置を、上部及び下部に対して変更することができる。換言すると、傾斜角度θを変えることで、外側に突の樽型、側面が湾曲していない円筒状、内側に突のくびれ型との任意形状の据え込み加工品を製造することができる。
(硬度)
図13は、(a)加工前の円環状素材100と、(b)第1比較形態の据え込み加工装置1で加工された据え込み加工品200と、(c)実施形態の据え込み加工装置1で加工された据え込み加工品200との、異なる位置でのビッカース硬さを測定した結果である。
円環状素材としては、以下のものを用いた。
鋼種:SUJ2
内径:14.2mm
外径:28.4mm
高さ:50.5mm
また、以下の条件で据え込み加工を行った。
プレス装置:4000kNメカプレス(油圧ユニット、理研機器株式会社製)
プレスモーション:クランク
プレス速度:10spm
金型材質:SKD11
潤滑油:G−3456(日本工作油株式会社製)
圧縮力:(b)748kN、(c)834kN
圧縮率:50%
それぞれ、長手方向の上から1,2,3,4,5の5箇所のそれぞれにおける、径方向の外径側からA,B,Cの3箇所の、合計15箇所において、ビッカース硬さを測定した。単位はHV,試験荷重は9.8Nである。
物体に塑性変形を与えると、変形度合が増すにつれて障害物(粒界、析出物、他の転移)にさえぎられるので、次第に蓄積され、密度が増大し、その結果材料の強度が増す加工硬化を生じる。すなわち、材料の変形度合が増すと硬くなる。
上述のように、上型3に近い円環状素材100の上面近傍と、下型2に近い円環状素材100の下面近傍とは、金型10により荷重を受けた場合、θ=90°の第1比較形態及びθ=87°の実施形態とにおいて、材料は移動距離が小さい外径側に移動する。したがって変形度合は内径側に比べ外径側が大きい。
その結果、円環状素材100の上部(側定箇所1)の硬さと、下部(側定箇所5)の硬さは、外径部(測定箇所A)>中央部(測定箇所B)>内径部(測定箇所C)となっている。これは、第1比較形態及び実施形態において同様である。
一方、中央部(測定箇所3)は、上型3と下型2の中央に位置しているので、変形は上型3と下型2による圧縮が支配的となり、材料の圧縮率が大きくなるにつれ、変形度合が増し硬くなる。
すなわち、第1比較形態では上型3と下型2が水平になっているので、外径部、内径部の圧縮率は同じとなり、変形度合に差がなく、測定箇所A,B,Cにおいて硬さは略等しい。
しかしながら、実施形態では、上型3と下型2の押圧面が傾斜しているので、内径部の圧縮率が高く、外径部の圧縮率が低い。したがって変形度合に差が生じ、外径部(測定箇所A)<中央部(測定箇所B)<内径部(測定箇所C)となっている。
以上、実施形態の据え込み加工品200は、内径部(側定箇所C)の中央部が最も硬く、内径部の上部と下部が最も軟らかい。したがって、最も軟らかい内径部の上部と下部とを金型で挟んで押し込んでいくH型加工がしやすくなり、その後、押し込んだ面を打ち抜くことで、第1比較形態による、中間製品としての据え込み加工品200よりも、容易に仕上げ抜き加工ができる。
図14は加工方法の違いによる加工品の鍛流線を比較した図である。
(a)は実施形態の据え込み加工品200の鍛流線を示した図、(b)は第1比較形態の据え込み加工品200の鍛流線を示した図、(c)は第2比較形態の据え込み加工品200の鍛流線を示した図である。
第2比較形態は、円環状素材100の外径側を、外壁で拘束して矩形加工した据え込み加工品200Bである。
図14(b)に示す第1比較形態による据え込み加工品200Aにおいて、円環状素材100の長手方向の中央線M近傍で鍛流線は軸線A0に対して直交し、すなわち水平となる。
しかし、上型押圧面31によって押圧される上面近傍の鍛流線は上型押圧面31と平行にはならない。また、下型押圧面21によって押圧される下面近傍の鍛流線も、下型押圧面21と平行にはならない。
図14(c)に示す第2比較形態による据え込み加工品200Bにおいては、円環状素材100の長手方向の中央線M近傍において鍛流線は軸線A0に対して直交せず、すなわち水平ではない。そして、上型押圧面31によって押圧される上面近傍の鍛流線は上型押圧面31と平行にはならない。また、下型押圧面21によって押圧される下面近傍の鍛流線も、下型押圧面21と平行にはならない。
しかし、図14(a)に示す実施形態による据え込み加工品200において、円環状素材100の長手方向の中央線M近傍で鍛流線は軸線A0に対して直交し、すなわち水平となる。
中央線Mより上に行くにつれて、鍛流線の徐々に傾き、上型押圧面31によって押圧される上面近傍の鍛流線は上型押圧面31と略平行、すなわち上型押圧面31と同じ傾きとなる。
中央線Mより下に行くにつれて、鍛流線の徐々に傾き、下型押圧面21によって押圧される下面近傍の鍛流線は下型押圧面21と略平行、すなわち下型押圧面21と同じ傾きとなる。
第1比較形態及び第2比較形態と比べると鍛流線同士の間隔は、略均等となり、むらのない鍛造が行われていることがわかる。
以上、本実施形態によると、傾斜角度が90°より小さい円錐体の側面である押圧面で円環状素材を内径から徐々に当接して押圧加工している。これにより、内外径面の断面形状を直線状に増肉加工できる。
また、加工後に中央部の折曲がりや座屈なく、拡径ができるので、板厚が薄い軸受け鋼管の増肉が可能となる。
なお、プレス機の荷重は円環状素材100の側面を拘束することにより側面を平坦にする場合に比べ、1/2.5程度に抑えられる。
θ:傾斜角
θ1:下型傾斜角度
θ2:上型傾斜角度
θ2:傾斜角度
μ:摩擦係数
A0:軸線
A1:装置軸線
1:据え込み加工装置
10:金型
2:下型(第1型)
21:下型押圧面(第1押圧面)
22:下型位置決め突部
3:上型(第2型)
31:上型押圧面(第2押圧面)
32:上型位置決め突部
41:貫通孔
5:駆動部
100:円環状素材(環状素材)
101:貫通孔
200:据え込み加工品
200a:外側面
200b:内側面

Claims (15)

  1. 第1押圧面を有する第1型と、
    前記第1押圧面と対向する第2押圧面を有する第2型と、
    前記第1型と前記第2型とを相対的に近接又は離間する方向に駆動可能な駆動部と、を備え、
    環状素材を軸線に沿った方向の両側から前記第1押圧面と前記第2押圧面とで挟んで押圧する据え込み加工装置であって、
    前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面は、前記環状素材の押圧時に、前記環状素材の前記軸線と一致する装置軸線の上の一点を頂点とした錐体の側面である、据え込み加工装置。
  2. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが75°以上である、
    請求項1に記載の据え込み加工装置。
  3. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが83°以上89°以下である、
    請求項1又は2に記載の据え込み加工装置。
  4. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが、
    θ=90°−tan−1μである、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の据え込み加工装置。
  5. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが60°以上である、
    請求項1に記載の据え込み加工装置。
  6. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが76°以上88°以下である、
    請求項1又は5に記載の据え込み加工装置。
  7. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θが、
    θ=90°−2×tan−1μである、
    請求項1,5又は6のいずれか1項に記載の据え込み加工装置。
  8. 前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面には、前記環状素材の中央貫通孔に挿入される位置決め突部が設けられている、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の据え込み加工装置。
  9. 第1押圧面を有する第1型と、前記第1押圧面と対向する第2押圧面を有する第2型と、の間に環状素材を配置する配置工程と、
    前記第1型と前記第2型とを相対的に近接する方向に駆動することにより、前記環状素材を軸線に沿った方向の両端から前記第1押圧面と前記第2押圧面とで挟んで押圧する据え込み工程と、を備え、
    前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面は、前記環状素材の押圧時に前記環状素材の前記軸線と一致させる装置軸線の上の一点を頂点とした錐体の側面である、据え込み加工方法。
  10. 前記据え込み工程は、
    前記環状素材の外周面及び内周面が拘束されない自由据え込み工程である、
    請求項9に記載の据え込み加工方法。
  11. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θを、θ=90°−tan−1μとする、
    請求項9又は10に記載の据え込み加工方法。
  12. 前記押圧面は円錐体の側面であり、
    前記装置軸線を通り且つ前記装置軸線と平行な断面において、前記押圧面と前記環状素材との間の摩擦係数μとしたときに、前記装置軸線と前記円錐体の側面の間の内角側の傾斜角度θを、θ=90°−2×tan−1μとする、
    請求項9又は10に記載の据え込み加工方法。
  13. 前記配置工程は、
    前記第1押圧面及び前記第2押圧面の少なくとも一方の押圧面に設けられた前記装置軸線を中心とした位置決め突部を、前記環状素材の中央貫通孔に挿入することで、前記環状素材を位置決めする位置決め工程を含む、
    請求項9から12のいずれか1項に記載の据え込み加工方法。
  14. 環状であり、
    軸方向の中央における内径側の中央内径部は、
    前記中央における外径側の中央外径部と、
    前記軸方向の一端側における内径側の一端側内径部と、
    前記軸方向の他端側における内径側の他端側内径部と、より硬い、
    据え込み加工品。
  15. 前記中央内径部は、前記中央外径部よりも5%以上硬い、
    請求項14に記載の据え込み加工品。
JP2019216866A 2019-11-29 2019-11-29 据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品 Pending JP2021084130A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019216866A JP2021084130A (ja) 2019-11-29 2019-11-29 据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019216866A JP2021084130A (ja) 2019-11-29 2019-11-29 据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021084130A true JP2021084130A (ja) 2021-06-03

Family

ID=76086639

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019216866A Pending JP2021084130A (ja) 2019-11-29 2019-11-29 据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021084130A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113669520A (zh) * 2021-09-01 2021-11-19 西安卓锐航空科技有限公司 一种非对称环槽轴向合力诱导冷流的管接头与连接方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5680934U (ja) * 1979-11-28 1981-06-30
JP2014238118A (ja) * 2013-06-06 2014-12-18 Ntn株式会社 軸受部品および転がり軸受

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5680934U (ja) * 1979-11-28 1981-06-30
JP2014238118A (ja) * 2013-06-06 2014-12-18 Ntn株式会社 軸受部品および転がり軸受

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113669520A (zh) * 2021-09-01 2021-11-19 西安卓锐航空科技有限公司 一种非对称环槽轴向合力诱导冷流的管接头与连接方法
CN113669520B (zh) * 2021-09-01 2022-07-22 西安卓锐航空科技有限公司 一种非对称环槽轴向合力诱导冷流的管接头与连接方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101581652B1 (ko) 성형재 제조 방법
JP4949783B2 (ja) 精密打ち抜き型
EP1792672A1 (en) Raceway ring for radial ball bearing, method of producing the raceway ring, and method and device for producing high precision ring
KR101920609B1 (ko) 성형재 제조 방법
JP2021084130A (ja) 据え込み加工装置、据え込み加工方法及び据え込み加工品
JP2006123003A (ja) 高精度リングの製造方法及び製造装置
TWI813862B (zh) 成形構材製造方法以及成形用模具
RU2393042C1 (ru) Устройство для контактного заневоливания пружин
EP4279192A1 (en) Burring method, burring die, burring device, and burred article
EP3520919B1 (en) Method of manufacturing molded material, and said molded material
JP4508591B2 (ja) コンプレッサ主軸の支持構造
JP2006097809A (ja) 高精度リングの製造方法
JP2008088995A (ja) スラストころ軸受用軌道輪の製造方法およびスラストころ軸受の軌道輪形成用リング部材
JP7481613B2 (ja) 打ち抜き成形装置及び打ち抜き成形方法
JP7417069B2 (ja) 成形材製造方法
EP4424435A1 (en) Method for manufacturing bearing ring member
JP2023035336A (ja) 成形品の製造方法及びトランスファープレス装置
JP2021062378A (ja) 金属板加工装置及び金属板加工方法
KR101965093B1 (ko) 볼 베어링 및 볼 베어링의 제조 방법
JP2024093300A (ja) 軸受用リング部材の製造方法
RU49144U1 (ru) Подшипник качения радиальный роликовый
KR100212251B1 (ko) 박판형 경량 클러치릴리스베어링 및 그것의 소성가공방법
JP2020127957A (ja) 環状部材の成形方法及び成形装置
JP2002113547A (ja) 筒状部材の鍛造・圧造成形方法
JPH04333502A (ja) 棒状焼結材の押抜き加工方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20200901

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220706

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230315

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230328

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230523

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230905