JP2021080169A - 組換えタンパク質の製造方法 - Google Patents

組換えタンパク質の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021080169A
JP2021080169A JP2018022432A JP2018022432A JP2021080169A JP 2021080169 A JP2021080169 A JP 2021080169A JP 2018022432 A JP2018022432 A JP 2018022432A JP 2018022432 A JP2018022432 A JP 2018022432A JP 2021080169 A JP2021080169 A JP 2021080169A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recombinant protein
solvent
recombinant
protein
soluble fraction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018022432A
Other languages
English (en)
Inventor
直樹 松坂
Naoki Matsuzaka
直樹 松坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kojima Industries Corp
Spiber Inc
Original Assignee
Kojima Press Industry Co Ltd
Spiber Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kojima Press Industry Co Ltd, Spiber Inc filed Critical Kojima Press Industry Co Ltd
Priority to JP2018022432A priority Critical patent/JP2021080169A/ja
Priority to PCT/JP2019/004736 priority patent/WO2019156242A1/ja
Publication of JP2021080169A publication Critical patent/JP2021080169A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K1/00General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length
    • C07K1/14Extraction; Separation; Purification
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08JWORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
    • C08J5/00Manufacture of articles or shaped materials containing macromolecular substances
    • C08J5/18Manufacture of films or sheets
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology

Abstract

【課題】目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞から、組換えタンパク質を簡便に製造する方法を提供すること。【解決手段】目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を用いて、前記組換えタンパク質を製造する方法であって、前記組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理し、得られた反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理した後、不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を含む可溶性画分として得ることを特徴とする、組換えタンパク質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、組換えタンパク質の製造方法に関する。
不溶性の目的とするタンパク質を単離する方法としては、組換え細胞の懸濁液から水酸化ナトリウム等の金属水酸化物を利用する方法(特許文献1)、及びギ酸やプロピオン酸等の有機酸を利用する方法(特許文献2)等が報告されている。しかしながら、これらの方法によって不溶性の目的とするタンパク質を単離する場合には、目的とするタンパク質とともに存在する不純物を除去することが難しいため、単離された目的とするタンパク質の純度が高くないという問題があった。また、有機酸を使用する方法では、酸に対して耐性がないタンパク質は分解され易いことから、単離可能なタンパク質が限定されるという問題があった。
目的とするタンパク質とともに存在する不純物を除去でき、有機酸を使用しない方法として、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒に溶解し、水等の溶媒を用いて不純物を除去し、目的とするタンパク質を精製する方法(特許文献3)等が報告されている。この方法によれば、約70%まで目的とするタンパク質を精製することができるが、目的とするタンパク質が、ハイドロパシーインデックス(HI)が0以下の親水性組換えタンパク質に限定されるという問題があった。
特表2013−523665号公報 特表2004一503204号公報 国際公開第2014/103847号
工業規模の生産においては、依然として、目的とする組換えタンパク質を簡便に精製する方法が望まれている。そこで本発明は、目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を用いて、組換えタンパク質を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、第1の非プロトン性極性溶媒を用いて、目的とする組換えタンパク質が溶解する条件で処理し、得られる処理液を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒を用いて処理することで、夾雑物を凝集させ、精製した組換えタンパク質を可溶性画分として得ることで簡便に目的とする組換えタンパク質を精製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を用いて、前記組換えタンパク質を製造する方法であって、
前記組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理し、得られた反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理した後、不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を可溶性画分として得ることを特徴とする、組換えタンパク質の製造方法。
[2]
前記得られた可溶性画分を、前記組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、前記組換えタンパク質を凝集させ、前記組換えタンパク質を凝集体として得ることをさらに含む、[1]に記載の組換えタンパク質の製造方法。
[3]
以下(A)、(B)及び(C)の工程を含む、組換えタンパク質の製造方法。
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程
[4]
(D)(C)で得られた前記第2の可溶性画分を、前記組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、前記組換えタンパク質を凝集させ、前記組換えタンパク質を凝集体として得る工程をさらに含む、[3]に記載の組換えタンパク質の製造方法。
[5]
前記条件が、温度条件であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の組換えタンパク質の製造方法。
[6]
前記第1の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントが3.0D以上であり、前記第2の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントが2.5D以上であり、かつ、前記第1の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントよりも小さい、[1]〜[5]のいずれかに記載の組換えタンパク質の製造方法。
[7]
前記無機塩が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩及びチオシアン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[6]のいずれかに記載の組換えタンパク質の製造方法。
[8]
前記組換えタンパク質が構造タンパク質である、[1]〜[7]のいずれかに記載の組換えタンパク質の製造方法。
[9]
前記構造タンパク質がスパイダーシルクに由来する、[8]に記載の組換えタンパク質の製造方法。
[10]
以下(A)、(B)、(C)及び(E)の工程を含む、人造ポリペプチド繊維の製造方法。
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程、
(E)(C)で得られた前記第2の可溶性画分を糸状の液体として凝固液に付与し、前記組換えタンパク質を糸状に凝固させて回収することにより未延伸糸を得る工程
[11]
以下(A)、(B)、(C)及び(F)の工程を含む、ポリペプチドフィルムの製造方法。
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分と含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程、
(F)(C)で得られた前記第2の可溶性画分の溶媒に耐性のある平板上に、前記第2の可溶性画分を用いて塗膜を形成し、前記塗膜から前記第2の可溶性画分の溶媒を除去することによってポリペプチドフィルムを得る工程
[12]
以下(A)、(B)及び(C)の工程を含む、組換えタンパク質の精製方法。
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程
本発明の製造方法により、複雑な工程を含まず、工程数も少ない簡便な方法であるにも関わらず、目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞から、高い純度の組換えタンパク質を簡便に製造できる。また、本発明の製造方法及び精製方法を用いて得られる組換えタンパク質は、純度が高いため、さらなる精製工程を経ることなく、例えば紡糸やフィルムの形成等の製造にそのまま利用することができる。
また、本発明の組換えタンパク質の製造方法及び精製方法は、酸を添加する工程を要さない。したがって、製造・精製対象の目的とする組換えタンパク質が、酸に対して耐性のあるタンパク質に限定されない。さらに、本発明の組換えタンパク質の製造方法及び精製方法は、組換えタンパク質を含む可溶性画分の溶媒を水等の水系溶媒と置換する精製工程を要さない。したがって、製造・精製対象の目的とする組換えタンパク質が、ハイドロパシーインデックスが0以下の親水性の組換えタンパク質に限定されず、効率的にろ過を行うことができ、ろ過残渣の廃棄処理も容易となる。
図1は、実施例1で検討した、目的とするタンパク質の精製に関する、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分析の結果を示す写真である。 図2は、実施例1で検討した、目的とするタンパク質(PRT918)の精製に関する、SDS−PAGEによる分析の結果を示す写真である。 図3は、実施例4で検討した、精製タンパク質溶液を紡糸用のドープとして使用して糸を形成させたときの凝固液の写真である。 図4は、実施例4で検討した、精製タンパク質溶液を紡糸用のドープとして使用して形成させた糸の写真である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
一実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法は、目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を用いて、組換えタンパク質を製造する方法であって、組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で組換えタンパク質が溶解する条件で処理し、得られた反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理した後、不溶性画分を除去し、組換えタンパク質を可溶性画分として得ることを特徴とする。得られた可溶性画分を、組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、組換えタンパク質を凝集させ、組換えタンパク質を凝集体として得ることをさらに含んでいてよい。
一実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法は、以下(A)、(B)及び(C)の工程を含む。
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程
組換えタンパク質の製造方法は、以下(D)の工程を更に含んでいてよい。
(C)で得られた前記第2の可溶性画分を、前記組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、前記組換えタンパク質を凝集させ、前記組換えタンパク質を凝集体として得る工程
本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法によれば、簡便に高い純度で目的とする組換えタンパク質を得ることができる。したがって、本発明の一実施形態として、上記(A)、(B)及び(C)の工程を含む、目的とする組換えタンパク質を精製する方法が提供される。
(組換えタンパク質)
目的とする組換えタンパク質(以下、「組換えタンパク質」又は「目的とするタンパク質」ということもある。)としては、工業規模での製造が好ましい任意のタンパク質を挙げることができ、例えば、工業用に利用できるタンパク質、医療用に利用できるタンパク質、構造タンパク質等を挙げることができる。工業用又は医療用に利用できるタンパク質の具体例としては、酵素、制御タンパク質、受容体、ペプチドホルモン、サイトカイン、膜又は輸送タンパク質、予防接種に使用する抗原、ワクチン、抗原結合タンパク質、免疫刺激タンパク質、アレルゲン、完全長抗体又は抗体フラグメント若しくは誘導体を挙げることができる。構造タンパク質の具体例としては、スパイダーシルク、カイコシルク、ケラチン、コラ−ゲン、エラスチン及びレシリン、並びにこれら由来のタンパク質等を挙げることができる。
フィブロイン様タンパク質であるスパイダーシルクあるいはカイコシルク由来のタンパク質として、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式1中、(A)モチーフは4〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には配列番号1(PRT918)〜配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質等を挙げることができる。PRT918(配列番号1)のハイドロパシーインデックスは、0.44、PRT468(配列番号5)のハイドロパシーインデックスは−0.59である。ハイドロパシーインデックスの値は国際公開第2014/103846号に記載の方法に従って算出した値である。
コラーゲン由来のタンパク質として、例えば、式2:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式2中、oは5〜300の整数を示す。REP2はGly−X−Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP2は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質(Collagen−type4−Kai)を挙げることができる。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、NCBlデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBlのGenebankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号10で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列76及びヒンジ配列)が付加されたものである。Collagen−type4−Kaiのハイドロパシーインデックスは、−0.75である。
レシリン由来のタンパク質として、例えば、式3:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、pは4〜300の整数を示す。REP3はSer−J−J−Tyr−Gly−U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBlのGenebankのアクセッション番号NP_611157.1、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号10で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。Resilin−Kai(配列番号7)のハイドロパシーインデックスは、−1.22である。
エラスチン由来のタンパク質として、例えば、NCBlのGenebankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。具体的には配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、NCBlのGenebankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号10で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。elastin short(配列番号8)のハイドロパシーインデックスは、0.42である。
ケラチン由来のタンパク質として、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。具体的には、配列番号9で示されるアミノ酸配列(NCBlのGenebankのアクセッション番号ACY30466のアミノ酸配列)を含むタンパク質を挙げることができる。type I keratin 26(配列番号9)のハイドロパシーインデックスは、−0.53である。
(組換え細胞)
組換え細胞は、組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞である。組換え細胞は、遺伝子工学的手法を用いた一般的な方法を用いて取得できる。
組換え細胞は、例えば、目的とするタンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで宿主(宿主細胞)を形質転換することにより得ることができる。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。例えば原核生物の好ましい例として、大腸菌、バチルス・ズブチリス、シュードモナス、コリネバクテリウム、ラクトコッカス等の細菌を挙げることができ、より好ましくは、大腸菌細胞を挙げることができる。
発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、目的とするタンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
細菌等の原核生物を宿主として用いる場合は、本発明に係る発現ベクターは、原核生物細胞中で自立複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明に係る核酸配列及び転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子配列が含まれていてもよい。
プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、目的とするタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
細菌等の原核生物の宿主としては、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する微生物を挙げることができる。
エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ BL21(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ BL21(DE3)(ライフテクノロジーズ社)、エシェリヒア・コリ BLR(DE3)(メルクミリポア社)、エシェリヒア・コリ DH1、エシェリヒア・コリ GI698、エシェリヒア・コリ HB101、エシェリヒア・コリ JM109、エシェリヒア・コリ K5(ATCC 23506)、エシェリヒア・コリ KY3276、エシェリヒア・コリ MC1000、エシェリヒア・コリ MG1655(ATCC 47076)、エシェリヒア・コリ No.49、エシェリヒア・コリ Rosetta(DE3)(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ TB1、エシェリヒア・コリ Tuner(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ Tuner(DE3) (ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ W1485、エシェリヒア・コリ W3110(ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli) XL1−Blue、エシェリヒア・コリ XL2−Blue等を挙げることができる。
ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ、ブレビバチルス・ボルステレンシス、ブレビバチルス・セントロポラスブレビバチルス・フォルモサス、ブレビバチルス・インボカツス、ブレビバチルス・ラチロスポラス、ブレビバチルス・リムノフィルス、ブレビバチルス・パラブレビス、ブレビバチルス・レウスゼリ、ブレビバチルス・サーモルバー、ブレビバチルス・ブレビス47(FERM BP−1223)、ブレビバチルス・ブレビス47K(FERM BP−2308)、ブレビバチルス・ブレビス47−5(FERM BP−1664)、ブレビバチルス・ブレビス47−5Q(JCM8975)、ブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31(FERM BP−1087)、ブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31−S(FERM BP−6623)、ブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31−OK(FERM BP−4573)、ブレビバチルス・チョウシネンシスSP3株(Takara社製)等を挙げることができる。
セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス(Serratia liquefacience)ATCC14460、セラチア・エントモフィラ(Serratia entomophila)、セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)、セラチア・フォンティコーラ(Serratia fonticola)、セラチア・グリメシ(Serratia grimesii)、セラチア・プロテアマキュランス(Serratia proteamaculans)、セラチア・オドリフェラ(Serratia odorifera)、セラチア・プリムシカ(Serratia plymuthica)、セラチア・ルビダエ(Serratia rubidaea)等を挙げることができる。
バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等を挙げることができる。
ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354等を挙げることができる。
ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)ATCC14020、ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067)ATCC13826、ATCC14067、ブレビバクテリウム・インマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)ATCC14068、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869)ATCC13665、ATCC13869、ブレビバクテリウム・ロゼウムATCC13825、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)ATCC14066、ブレビバクテリウム・チオゲニタリスATCC19240、ブレビバクテリウム・アルバムATCC15111、ブレビバクテリウム・セリヌムATCC15112等を挙げることができる。
コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)ATCC6871、ATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC14067、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)ATCC13870、コリネバクテリウム・アセトグルタミカムATCC15806、コリネバクテリウム・アルカノリティカムATCC21511、コリネバクテリウム・カルナエATCC15991、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13020,ATCC13032,ATCC13060、コリネバクテリウム・リリウムATCC15990、コリネバクテリウム・メラセコーラATCC17965、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネスAJ12340(FERMBP−1539)、コリネバクテリウム・ハーキュリスATCC13868等を挙げることができる。
シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・ブラシカセラム(Pseudomonas brassicacearum)、シュードモナス・フルバ(Pseudomonas fulva)、及びシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)D−0110等を挙げることができる。
上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−248394号公報)、又はGene,17,107(1982)やMolecular & General Genetics,168,111(1979)に記載の方法等を挙げることができる。
ブレビバチルス属に属する微生物の形質転換は、例えば、Takahashiらの方法(J.Bacteriol.,1983,156:1130−1134)や、Takagiらの方法(Agric.Biol.Chem.,1989,53:3099−3100)、又はOkamotoらの方法(Biosci.Biotechnol.Biochem.,1997,61:202−203)により実施することができる。
目的とするタンパク質をコードする核酸を導入するベクター(以下、単に「ベクター」という。)としては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233−2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX−1(Promega社製)、pQE−8(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58−110600号公報)、pKYP200〔Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)〕、pLSA1〔Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)〕、pGEL1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)〕、pBluescript II SK(−)(Stratagene社製)、pTrs30〔Escherichiacoli JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製〕、pTrs32〔Escherichia coli JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製〕、pGHA2〔Escherichia coli IGHA2(FERM B−400)より調製、特開昭60−221091号公報〕、pGKA2〔Escherichia coli IGKA2(FERM BP−6798)より調製、特開昭60−221091号公報〕、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400〔J.Bacteriol.,172,2392(1990)〕、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)等を挙げることができる。
宿主としてEscherichia coliを用いる場合は、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold等を好適なベクターとして挙げることができる。
ブレビバチルス属に属する微生物に好適なベクターの具体例として、枯草菌ベクターとして公知であるpUB110、又はpHY500(特開平2−31682号公報)、pNY700(特開平4−278091号公報)、pHY4831(J.Bacteriol.,1987,1239−1245)、pNU200(鵜高重三、日本農芸化学会誌1987,61:669−676)、pNU100(Appl.Microbiol.Biotechnol.,1989,30:75−80)、pNU211(J.Biochem.,1992,112:488−491)、pNU211R2L5(特開平7−170984号公報)、pNH301(Appl.Environ.Microbiol.,1992,58:525−531)、pNH326、pNH400(J.Bacteriol.,1995,177:745−749)、pHT210(特開平6−133782号公報)、pHT110R2L5(Appl.Microbiol.Biotechnol.,1994,42:358−363)、又は大腸菌とブレビバチルス属に属する微生物とのシャトルベクターであるpNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
原核生物を宿主とした場合のプロモーターとしては、宿主細胞中で機能するものであれば制限されない。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の大腸菌又はファージ等に由来するプロモーターを挙げることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。上記発現ベクターにおいて、上記核酸の発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母、糸状真菌(カビ等)及び昆虫細胞を挙げることができる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シワニオミセス(Schwanniomyces)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属、ヤロウィア属及びハンゼヌラ属等に属する酵母を挙げることができる。より具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、シワニオマイセス・アルビウス(Schwanniomyces alluvius)、シワニオマイセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・ポリモルファ(Pichia polymorpha)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)等を挙げることができる。
酵母を宿主細胞として用いる場合の発現ベクターは通常、複製起点(宿主における増幅が必要である場合)及び大腸菌中でのベクターの増殖のための選抜マーカー、酵母における組換えタンパク質発現のためのプロモーター及びターミネーター、並びに酵母のための選抜マーカーを含むことが好ましい。
発現ベクターが非組込みベクターの場合、さらに自己複製配列(ARS)を含むことが好ましい。これにより細胞内における発現ベクターの安定性を向上させることができる(Myers、A.M.、et al.(1986)Gene 45:299−310)。
酵母を宿主として用いる場合のベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、YIp、pHS19、pHS15、pA0804、pHIL3Ol、pHIL−S1、pPIC9K、pPICZα、pGAPZα、pPICZ B等を挙げることができる。
酵母を宿主とした場合のプロモーターの具体例としては、酵母中で発現できるものであれば制限されない。例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1 プロモーター、CUP 1プロモーター、pGAPプロモーター、pGCW14プロモーター、AOX1プロモーター、MOXプロモーター等を挙げることができる。
酵母への発現ベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法(Methods Enzymol.,194,182(1990))、スフェロプラスト法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,4889(1984))、酢酸リチウム法(J.Bacteriol.,153,163(1983))、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法等を挙げることができる。
糸状真菌としては、例えば、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ウスチラーゴ(Ustilago)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ノイロスポラ(Neurospora)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコーラ(Humicola)属、ペニシリウム(Penicillium)属、マイセリオフトラ(Myceliophtora)属、ボトリティス(Botryts)属、マグナポルサ(Magnaporthe)属、ムコア(Mucor)属、メタリチウム(Metarhizium)属、モナスカス(Monascus)属、リゾプス(Rhizopus)属、及びリゾムコア属に属する菌等を挙げることができる。
糸状真菌の具体例として、アクレモニウム・アラバメンゼ(Acremonium alabamense)、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)、アスペルギルス・アクレアツス(アキュレータス)(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・サケ(Aspergillus sake)、アスペルギルス・ゾジエ(ソーヤ)(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・テュビゲンシス(Aspergillus tubigensis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・パラシチクス(Aspergillus parasiticus)、アスペルギルス・フィクム(フィキュウム)(Aspergillus ficuum)、アスペルギルス・フェニクス(Aspergillus phoeicus)、アスペルギルス・フォエチズス(フェチダス)(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フラーブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ヤポニクス(ジャポニカス)(Aspergillus japonicus)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・ハージアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reseei)、クリソスポリウム・ルクノエンス(Chrysosporium lucknowense)、サーモアスクス(Thermoascus)、スポロトリクム(Sporotrichum)、スポロトリクム・セルロフィルム(Sporotrichum cellulophilum)、タラロマイセス(Talaromyces)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、チラビア(Thielavia)、ノイロスポラ・クラザ(Neurospora crassa)、フザリウム・オキシスポーラス(Fusarium oxysporus)、フザリウム・グラミネルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、ペニシリウム・クリゾゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)、ペニシリウム・カネセンス(Penicillium canescens)、ペニシリウム・エメルソニ(Penicillium emersonii)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・グリゼオロゼウム(Penicillium griseoroseum)、ペニシリウム・パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ペニシリウム・ロケフォルチ(Penicillium roqueforti)、マイセリオフトラ・サーモフィルム(Myceliophtaora thermophilum)、ムコア・アンビグス(Mucor ambiguus)、ムコア・シイルシネロイデェス(Mucor circinelloides)、ムコア・フラギリス(Mucor fragilis)、ムコア・ヘマリス(Mucor hiemalis)、ムコア・イナエクイスポラス(Mucor inaequisporus)、ムコア・オブロンジエリプティカス(Mucor oblongiellipticus)、ムコア・ラセモサス(Mucor racemosus)、ムコア・レクルバス(Mucor recurvus)、ムコア・サトゥルニナス(Mocor saturninus)、ムコア・サブティリススミウス(Mocor subtilissmus)、オガタエア・ポリモルファ(Ogataea polymorpha)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、リゾムコア・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾムコア・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾプス・アルヒザス(Rhizopus arrhizus)等を挙げることができる。
糸状真菌を宿主とした場合のプロモーターの具体例としては、解糖系に関する遺伝子、構成的発現に関する遺伝子、加水分解に関する酵素遺伝子等いずれであってもよく、具体的にはamyB、glaA、agdA、glaB、TEF1、xynF1tannasegene、No.8AN、gpdA、pgkA、enoA、melO、sodM、catA、catB等を挙げることができる。
糸状真菌への発現ベクターの導入は,従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168:111(1979)]、コンピテント法[J.Mol.Biol.,56:209(1971)]、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
昆虫細胞として、例えば、鱗翅類の昆虫細胞が挙げられ、より具体的には、Sf9、及びSf21等のスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来の昆虫細胞、並びに、High 5等のイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来の昆虫細胞等を挙げることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合のベクターとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等のバキュロウイルス(Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992))を挙げることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company, New York(1992)、Bio/Technology,6,47(1988)等に記載された方法によって、ポリペプチドを発現することができる。すなわち、組換え遺伝子導入ベクター及びバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルス(発現ベクター)を得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、ポリペプチドを発現させることができる。該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社製)等を挙げることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターとバキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987))等を挙げることができる。
上記組換えベクターは、形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子をさらに含有していることが好ましい。例えば、大腸菌においては、選択マーカー遺伝子としては、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の各種薬剤に対する耐性遺伝子を用いることができる。栄養要求性に関与する遺伝子変異を相補できる劣性の選択マーカーも使用できる。酵母においては、選択マーカー遺伝子として、ジェネティシンに対する耐性遺伝子を用いることができ、栄養要求性に関与する遺伝子変異を相補する遺伝子、LEU2、URA3、TRP1、HIS3等の選択マーカーも使用できる。糸状真菌においては、選択マーカー遺伝子として、niaD(Biosci.Biotechnol.Biochem.,59,1795−1797(1995))、argB(Enzyme Microbiol Technol,6,386−389,(1984)),sC(Gene,84,329−334,(1989))、ptrA(BiosciBiotechnol Biochem,64,1416−1421,(2000))、pyrG(BiochemBiophys Res Commun,112,284−289,(1983)),amdS(Gene,26,205−221,(1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet,261,290−296,(1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA,83,4869−4873,(1986))及びハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene,57,21−26,(1987))からなる群より選ばれるマーカー遺伝子、ロイシン要求性相補遺伝子等を挙げることができる。また、宿主が栄養要求性変異株の場合には、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。
上記発現ベクターで形質転換された宿主の選択は、上記核酸に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション及びコロニーハイブリダイゼーション等で行うことができる。当該プローブとしては、上記核酸の配列情報に基づき、PCR法によって増幅した部分DNA断片をラジオアイソトープ又はジゴキシゲニンで修飾したものを用いることができる。
(組換えタンパク質の生産)
組換えタンパク質は、上記発現ベクターで形質転換された宿主(組換え細胞)を培養培地中で培養することにより生産することができる。上記組換え細胞を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
上記宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、該宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、該宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該宿主が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。
培地に含まれる無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
昆虫細胞の培養培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(Pharmingen社製)、Sf−900 II SFM培地(Life Technologies社製)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社製)、Grace’s Insect Medium(Nature,195,788(1962))等を用いることができる。
昆虫細胞の培養は、例えば、培養培地のpH6〜7、培養温度25〜30℃等の条件下で、培養時間1〜5日間とすることができる。また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。
宿主が植物細胞の場合、形質転換された植物細胞(組換え細胞)をそのまま培養してもよく、また植物の器官に分化させて培養することができる。該植物細胞を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、又はこれらの培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
宿主が動物細胞の場合、形質転換された動物細胞(組換え細胞)の培養は、例えば、培養培地のpH5〜9、培養温度20〜40℃等の条件下で、培養時間3〜60日間とすることができる。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記方法により目的とするタンパク質を、不溶体として組換え細胞内において発現させることができる。
[工程(A)]
工程(A)は、目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程である。
無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒は、生菌体や乾燥菌体等である組換え細胞に添加してもよく、それらの組換え細胞を含む懸濁液等に添加してもよい。組換えタンパク質が溶解する条件で処理することにより、組換えタンパク質が溶解して第1の可溶性画分に含まれ、第1の溶媒に溶解しない夾雑物が第1の不溶性画分に含まれることになる。
夾雑物とは、宿主細胞由来の、目的とする組換えタンパク質以外のものを意味する。夾雑物としては、特に限定されないが、例えば、宿主細胞由来の、目的とする組換えタンパク質以外のタンパク質、脂質、核酸等が挙げられる。夾雑物の一部、例えば、宿主細胞由来の一部のタンパク質が、第1の溶媒に溶解することによって、第1の可溶性画分に含まれる場合がある。
夾雑物の一部は、第1の溶媒に溶解していてもよい。
工程(A)で使用される組換え細胞は無傷の細胞であっても、破壊処理等の処理を行った後の細胞であってもよい。また、既に簡単な精製処理を行った組換え細胞を用いて、残存した夾雑物を除去するために本発明の方法を適用することもできる。
(第1の非プロトン性極性溶媒)
第1の非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン(DMI)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトニトリル、アセトン、プロピレンカーボネート、ヘキサメチルフォスフォラミド、N−エチルピロリドン、ニトロベンゼン、フルフラール、γ−ブチロラクトン、エチレンスルファイト、スルホラン、スクシノニトリル、エチレンカーボネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら非プロトン性極性溶媒において、双極子モーメントが3.0D以上のものが好ましく、例えば、DMSO、NMP、DMI、DMF、DMA及びアセトニトリルからなる群より選択される少なくとも1種の溶媒が好ましく、DMSO、NMP、DMF及びDMAからなる群より選択される少なくとも1種の溶媒がより好ましい。
タンパク質等の極性を持った化合物を溶解する場合には極性の大きな溶媒が有効であり、双極子モーメントが3.0D以上の分子は極性が強いとされている。表1に、溶剤ハンドブック(講談社サイエンティフィック社、2007年)に基づく、有機化合物(有機溶剤)の双極子モーメントを記載する。
Figure 2021080169
第1の非プロトン性極性溶媒の純度は、特に限定されず、本工程においては高純度である必要はないが、純度80%以上であることが好ましい。
第1の非プロトン性極性溶媒として、1種類の非プロトン性極性溶媒を単独で用いても、2種類以上の非プロトン性極性溶媒を適宜混合して用いてもよい。
第1の非プロトン性極性溶媒を含む溶媒(第1の溶媒)は、第1の非プロトン性極性溶媒そのものであってよく、第1の非プロトン性極性溶媒以外の溶媒(他の溶媒)を含んでいてよい。他の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトンが挙げられる。
溶解溶媒中の第1の非プロトン性極性溶媒の含有量は、例えば、60〜100体積%であってよい。
組換え細胞に添加する第1の非プロトン性極性溶媒を含む溶媒(第1の溶媒)の添加量は、目的とする組換えタンパク質を溶解できる量であればよいが、例えば、組換え細胞の乾燥重量(g)に対して、第1の溶媒の体積(mL)の比(体積(mL)/乾燥重量(g))として、5〜100倍であってよく、10〜50倍であってよく、20〜35倍であってよい。ここで、組換え細胞の乾燥重量とは、例えば、宿主が細菌である場合には、乾燥させた細菌の菌体の重量を意味する。
(無機塩)
第1の溶媒に無機塩を添加することにより、目的とする組換えタンパク質がより溶解しやすくなる。
第1の溶媒に添加し得る無機塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、チオシアン酸塩、過塩素酸塩等を挙げることができる。無機塩は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩及びチオシアン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
アルカリ金属ハロゲン化物としては、例えば、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム等を挙げることができる。
アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等を挙げることができる。
アルカリ土類金属硝酸塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム等を挙げることができる。
チオシアン酸塩としては、例えばチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、(グアニジニウムチオシアナート)等を挙げることができる。
過塩素酸塩としては、例えば過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸銀、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウム等を挙げることができる。
これらの無機塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
好適な無機塩としてはアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物が挙げられ、好適な無機塩の具体例としては、塩化リチウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。
無機塩の添加量としては、使用する第1の溶媒に応じて最適量を決めればよい。第1の溶媒に無機塩を添加する場合、無機塩は、例えば第1の溶媒に対して、0mol/L超1.0mol/L以下となるように添加できる。例えば、無機塩の添加量は、0.7mol/L以下、0.6mol/L以下、又は0.5mol/L以下、0.25mol/L以下であってよく、0.05mol/L以上、0.1Mmol/L、又は0.2mol/L以上であってよい。
第1の非プロトン性極性溶媒としてDMSOを用いた場合には、無機塩の添加量は、第1の溶媒に対して0〜0.7mol/Lが好ましく、0〜0.25mol/Lがより好ましく、0〜0.15mol/Lであってもよい。
第1の非プロトン性極性溶媒としてDMF、DMA、DMI、又はNMPを用いた場合には、無機塩の添加量は、第1の溶媒に対して、0〜0.7mol/Lが好ましく、0〜0.25mol/Lがより好ましく、0〜0.15mol/Lであってもよい。
(第1の溶媒)
第1の溶媒は、第1の非プロトン性溶媒を含み、必要に応じて、無機塩を含み得る。無機塩は、第1の非プロトン性溶媒に溶解してから、目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を処理してもよく、第1の非プロトン性溶媒を上記組換え細胞に添加すると同時に又は添加した後に、添加してもよい。
組換え細胞に添加する第1の溶媒の添加量は、目的とする組換えタンパク質を溶解できる量であればよいが、例えば、組換え細胞の乾燥重量(g)に対する第1の溶媒の体積(mL)の比(体積(mL)/乾燥重量(g))として、10〜100倍であってよく、12〜50倍であってよく、20〜35倍であってよい。ここで、組換え細胞の乾燥重量とは、例えば、宿主が細菌である場合には、乾燥させた細菌の菌体の重量を意味する。
(組換えタンパク質が溶解する条件)
組換えタンパク質が溶解する条件(好ましくは、組換えタンパク質が溶解し、且つ夾雑物が溶解しにくい又は溶解しない条件)は、第1の溶媒に添加する無機塩の濃度及び目的とする組換えタンパク質等に応じて適宜設定できるが、温度条件であることが好ましい。組換えタンパク質が溶解するが、夾雑物が溶解しにくい、又は溶解しない温度まで加温して、所定時間維持することが好ましい。
溶解させるための温度は、第1の溶媒に添加する無機塩の濃度及び目的とする組換えタンパク質に応じて決めればよいが、例えば30〜100℃及び40〜60℃の温度を挙げることができる。例えば、溶解させるための温度の上限値は、100℃、90℃、80℃又は70℃であってよく、溶解させるための温度の下限値は30℃、40℃、又は50℃であってよい。
溶解させるための時間は、目的とする組換えタンパク質が十分溶解し、且つ夾雑物の溶解が少ない時間であれば、特に限定する必要はないが、工業的生産を考慮すると、10〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましく、10〜30分がさらに好ましい。
目的とする組換えタンパク質がスパイダーシルク、カイコシルク、ケラチン、コラ−ゲン、エラスチン及びレシリン等の構造タンパク質である場合には、例えば、以下の条件を挙げることができる。
上記構造タンパク質を発現した組換え細胞に添加する第1の溶媒の添加量は、組換え細胞の乾燥重量(g)に対する第1の溶媒の体積(mL)の比(体積(mL)/乾燥重量(g)として、5〜100倍が好ましく、10〜50倍がより好ましく、20〜35倍がさらに好ましい。第1の溶媒に添加する無機塩としては、塩化リチウム及び塩化カルシウムからなる群より選択される1種以上の無機塩が好ましく、塩化リチウムがより好ましい。また、第1の溶媒中の無機塩の濃度は、第1の溶媒に対して0〜1.0mol/Lが好ましく、0〜0.6mol/Lがより好ましく、0〜0.5mol/Lがさらに好ましい。
より具体的に、目的とする組換えタンパク質が配列番号1〜5のように、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式1中、(A)モチーフは4〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)であった場合には、例えば、以下の条件を挙げることができる。
目的とする組換えタンパク質を発現した組換え細胞に添加する第1の溶媒の添加量は、組換え細胞の乾燥重量(g)に対する第1の溶媒の体積(mL)の比(体積(mL)/乾燥重量(g))として、5〜100倍が好ましく、10〜50倍がより好ましく、20〜35倍がさらに好ましい。第1の溶媒に添加する無機塩としては、塩化リチウム及び塩化カルシウムからなる群より選択される1種以上の無機塩が好ましく、塩化リチウムがより好ましい。また、第1の溶媒中の無機塩の濃度は、第1の溶媒に対して0〜1.0mol/Lが好ましく、0〜0.6mol/Lがより好ましく、0〜0.5mol/Lがさらに好ましい。上記の第1の非プロトン性極性溶媒を用いて、30〜100℃及び40〜60℃の温度で処理することにより、目的とする組換えタンパク質を溶解させることができる。例えば、溶解させるための温度の上限値は、100℃、90℃、80℃又は70℃であってよく、溶解させるための温度の下限値は30℃、40℃、又は50℃であってよい。溶解させるための時間としては例えば10〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましく、10〜30分がさらに好ましい。
(第1の反応混合物)
工程(A)によって得られた第1の反応混合物は、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む。第1の可溶性画分は、目的とする組換えタンパク質が含まれており、場合によって宿主細胞由来の夾雑物も含まれ得る。第1の不溶性画分は、宿主細胞由来の夾雑物を含んでいる。第1の反応混合物は、画分することなく、工程(B)に供与される。また、必要に応じて、例えば濾過によって画分して、第1の不溶性画分を除去してから、工程(B)に供与されてもよい。
[工程(B)]
工程Bは、工程(A)で得られた第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程である。
工程(B)では、工程(A)の後に、得られる第1の反応混合物を第2の溶媒で処理し、得られる不溶性画分(第2の不溶性画分)を除去する。この不溶性画分を除去することにより、可溶性画分(第2の可溶性画分)として組換えタンパク質を得る。不溶性画分を除去する方法(可溶性画分として組換えタンパク質を回収する方法)としては、遠心分離、ドラムフィルター、プレスフィルター等のフィルターろ過等の一般的な方法が挙げられる。フィルターろ過による場合、セライト、珪藻土等のろ過助剤及びプリコート剤等を併用することにより、目的とする組換えタンパク質を含む可溶性画分をより効率的に回収することができる。
この方法によれば、水等の水系溶媒を添加することなく、簡便な方法により可溶性画分と不溶性画分を分離することで、夾雑物を除去できる。すなわち、この方法は、水系溶媒を添加しなくてもよいため、使用した第1の非プロトン性極性溶媒は精製して、再度工程(A)に利用することが可能であり、経済的である。
(第2の非プロトン性極性溶媒)
第2の溶媒は、第2の非プロトン性極性溶媒を含んでいる。第2の非プロトン性極性溶媒は、第1の非プロトン性極性溶媒と異なる種の溶媒であり、第1の溶媒に溶解した夾雑物が溶解しにくくなるような溶媒(貧溶媒)であることが好ましい。
第2の非プロトン性極性溶媒としては、例えば、後述するケトン類及びニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン(DMI)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、プロピレンカーボネート、ヘキサメチルフォスフォラミド、N−エチルピロリドン、ニトロベンゼン、フルフラール、γ−ブチロラクトン、エチレンスルファイト、スルホラン、並びに、エチレンカーボネートを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン及びメチルイソブチルケトンを挙げることができる。ケトン類は、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アセトンがより好ましい。
ニトリル類としては、飽和又は不飽和のものであってもよいが、飽和のものが好ましい。ニトリル類の炭素数は、2〜8であってよく、好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜4である。ニトリル類として、具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル及びイソブチロニトリル等を挙げることができる。
第2の溶媒は、第2の非プロトン性極性溶媒以外の溶媒を含んでいてよい。第2の溶媒中の第2の非プロトン性極性溶媒の含有量は、例えば、第2の溶媒全量に対して、85〜100体積%、又は90〜100体積%であってよい。
第2の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントは、2.5D以上であり、かつ、第1の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントよりも小さくてよい。双極子モーメントが2.5D以上の非プロトン性極性溶媒としては、例えば、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。
(第2の溶媒)
第2の溶媒は、第2の非プロトン性極性溶媒のみを含んでよく、目的とする組換えタンパク質の種類によって、他の溶媒をさらに含んでもよい。目的とするタンパク質がスパイダーシルクである場合、第2の溶媒は、第2の非プロトン性極性溶媒のみからなることが好ましく、アセトンであることが好ましい。
工程(B)における処理は、例えば、工程(A)で得られた第1の反応混合物に、第2の溶媒を添加して、第1の反応混合物と第2の溶媒とを接触させることにより、実施することができる。第2の溶媒として2種以上の溶媒を組み合わせて用いる場合、2種以上の溶媒を予め混合したものと第1の反応混合物とを接触させてもよく、2種以上の溶媒を別々に添加することにより、第1の反応混合物と接触させてもよい。
特に目的とする組換えタンパク質が疎水性タンパク質である場合、ろ過性及びろ過残渣の廃棄処理容易性が一段と向上する。
上記疎水性タンパク質とは、ハイドロパシーインデックス(HI)が0超のタンパク質のことをいう。
添加する溶媒の量は、目的とする組換えタンパク質に応じて、適時設定することが好ましく、目的とする組換えタンパク質が沈殿しない濃度に設定する。目的とする組換えタンパク質が沈殿しない濃度であればいずれでもよく、当該タンパク質の凝集の状況及び夾雑物の混入の存在等に応じて添加量を適時設定すればよい。例えば、第1の溶媒の添加量に対する第2の溶媒の添加量の体積比は、0.2〜0.5であってよい。
目的とする組換えタンパク質がスパイダーシルクである場合は、第1の溶媒よりも少ない量の第2の溶媒を添加することが好ましい。例えば、第1の溶媒の添加量(A)と第2の溶媒の添加量(A)との比(A:A)は、4(vol/vol):1(vol/vol)が好ましく、3(vol/vol):1(vol/vol)がより好ましく、2(vol/vol):1(vol/vol)がさらに好ましく、1(vol/vol):1(vol/vol)であってもよい。
第1の溶媒がDMSOであり、目的とする組換えタンパク質がスパイダーシルクであり、第2の溶媒がアセトンである場合には、DMSOの添加量とアセトンの添加量との比(DMSOの添加量:アセトンの添加量)は、例えば、好ましくは4(vol/vol):1(vol/vol)であり、より好ましくは3(vol/vol):1(vol/vol)であり、更に好ましくは2(vol/vol):1(vol/vol)であり、1(vol/vol):1(vol/vol)であってもよい。
第1の反応混合物を第2の溶媒で処理すると、夾雑物が第2の不溶性画分に移動し、沈殿させると同時に、目的とする組換えタンパク質をも沈殿させ得る。第1の反応混合物を第2の溶媒で処理する静置時間は、夾雑物が十分沈殿し、且つ目的とする組換えタンパク質の沈殿が少ない時間であれば、特に限定する必要はないが、工業的生産を考慮すると、10〜120分が好ましく、10〜75分がより好ましく、10〜60分がさらに好ましく、10〜30分であってもよい。
(第2の反応混合物)
工程(B)によって得られた第2の反応混合物は、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む。第2の可溶性画分は、目的とする組換えタンパク質が含まれており、宿主細胞由来の夾雑物が含まれておらず、若しくは第1の反応混合物に含まれている量よりも低減されている。第2の不溶性画分は、宿主細胞由来の夾雑物を含んでいる。第2の反応混合物は、好ましくは第1の反応混合物よりもろ過性が改善されており、ろ過により画分しやすくなっている。
[工程(C)]
工程(C)は、工程(B)によって得られた第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程である。
第2の不溶性画分を除去する方法(第2の可溶性画分として組換えタンパク質を回収する方法)としては、遠心分離、ドラムフィルター、プレスフィルター等のフィルターろ過等の一般的な方法が挙げられる。フィルターろ過による場合、セライト、珪藻土等のろ過助剤及びプリコート剤等を併用することにより、目的とする組換えタンパク質を含む第2の可溶性画分をより効率的に回収することができる。
工程(C)において第2の可溶性画分として得られた組換えタンパク質は、組換えタンパク質の純度が高く、さらなる精製工程を経ることなく、例えば紡糸やフィルムの形成等の製造にそのまま利用することができる。
工程(A)、(B)、及び(C)を含む方法によれば、水等の水系溶媒を添加することなく、簡便な方法により可溶性画分と不溶性画分を分離することで、夾雑物を除去できる。すなわち、この方法は、水系溶媒を添加しなくてもよいため、使用した第1の非プロトン性極性溶媒は精製して、再度工程(A)に利用することが可能であり、経済的であり、効率的にろ過を行うことができ、ろ過残渣の廃棄処理も容易となる。さらに、本方法は、酸を添加する工程を要さない。したがって、精製対象の組換えタンパク質が、酸に対して耐性のあるタンパク質に限定されない。
[工程(D)]
工程(D)は、(C)で得られた第2の可溶性画分を、組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、組換えタンパク質を凝集させ、組換えタンパク質を凝集体として得る工程である。
組換えタンパク質の貧溶媒としては、目的とする組換えタンパク質が第2の溶媒に溶解しにくくなるような溶媒が好ましい。組換えタンパク質の貧溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒、エステル類、エーテル類及び芳香族炭化水素類を挙げることができる。これらの溶媒の具体例は上記例示したとおりである。
組換えタンパク質の貧溶媒の添加量は、組換えタンパク質に応じて、組換えタンパク質が沈殿するよう適宜決めればよい。組換えタンパク質の貧溶媒は、通常、可溶性画分と同量を添加すればよい。組換えタンパク質の凝集の状況及び夾雑物の混入の存在等に応じて添加量を適宜調整すればよい。
凝集させた目的とする組換えタンパク質を凝集体として回収する方法としては、遠心分離、ドラムフィルター、プレスフィルター等のフィルターろ過等の一般的な方法が挙げられる。フィルターろ過による場合、セライト、珪藻土等のろ過助剤及びプリコート剤等を併用することにより、より効率的に目的とする組換えタンパク質を凝集体として回収することができる。
この方法によれば、水等の水系溶媒を添加することなく、目的とする組換えタンパク質を精製することもできる。したがって、凝集体として当該組換えタンパク質を回収した後に、使用した第2の溶媒及び目的とする組換えタンパク質の貧溶媒を精製して、再度利用することがより容易であり、経済的である。
[人造ポリペプチド繊維の製造方法]
目的とする組換えタンパク質が、ポリペプチド繊維の製造を目的として生産させた構造タンパク質、例えば、スパイダーシルク、カイコシルク、ケラチン等由来のタンパク質の場合、工程(C)で得られた第2の可溶性画分を、ポリペプチド繊維の製造にそのまま用いることができる。ここで、そのまま用いるとは、さらなる精製工程を必要としないことを意味する。これは、工程(C)で得られた第2の可溶性画分に含まれる組換えタンパク質の純度が紡糸に用いるのに十分高いことを示している。工程(A)〜(C)の後、紡糸工程を行うことにより、湿式紡糸により人造ポリペプチド繊維を製造することができる。
すなわち、一実施形態に係る人造ポリペプチド繊維の製造方法は、以下(A)、(B)、(C)及び(E)の工程を含むことを特徴とする:
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程、
(E)(C)で得られた第2の可溶性画分を糸状の液体として凝固液に付与し、組換えタンパク質を糸状に凝固させて回収することにより未延伸糸を得る工程
工程(A)〜(C)については、上述した通りである。工程(E)は、第2の可溶性画分を糸状の液体として凝固液に付与し、組換えタンパク質を糸状に凝固させて回収することにより未延伸糸を得る工程である。
工程(C)で得られた第2の可溶性画分を凝固液に付与すると、組換えタンパク質が凝固する。この際、第2の可溶性画分を糸状の液体として凝固液に付与することで、組換えタンパク質が糸状に凝固し、糸(未延伸糸)が形成できる。未延伸糸の形成は、例えば特許第5584932号公報に記載されている方法に準じて行うことができる。
(1)ポリペプチドの溶液(ドープ液)の調製
上述したように、工程(C)で得られた第2の可溶性画分は、さらなる精製工程を必要とせず、いわゆるドープ液として工程(E)の紡糸に用いることができる。紡糸に適した粘度は一般に10〜50,000cP(センチポイズ)であり、粘度は、例えば京都電子工業社製の商品名“EMS粘度計”を使用して測定できる。工程(C)で得られた第2の可溶性画分の粘度が、10〜50,000cP(センチポイズ)の範囲内にない場合には紡糸できる粘度に第2の可溶性画分の粘度を調整してもよい。粘度の調整には、工程(A)の説明において好適な溶媒として例示した非プロトン性極性溶媒を用いることができる。非プロトン性極性溶媒は工程(A)の説明において例示した好適な無機塩を含んでいてもよい。
ドープ液として用いるために、粘度を調整する際に非プロトン性極性溶媒に添加する無機塩の濃度は、精製を目的とした場合より高くしてもよい。例えば、無機塩を、ドープ液に対して0.5〜2.0Mとなるように添加してもよい。
第2の可溶性画分が、実際にドープ液として工程(E)における紡糸に、そのまま用いることが可能かについては、例えば以下の簡易法により確認することができる。即ち、内径0.1mmの針を持ったシリンジに当該第2の可溶性画分を適当量入れ、300mLビーカー中のメタノール(凝固液に相当)に、針の先端をつけ、押し出す。組換えタンパク質がメタノール中で糸として凝固し、ピンセットで糸としてメタノールから取り出すことができる場合には、当該可溶性画分はドープ液として紡糸に用いることができる。糸が形成されない場合は、可溶性画分の粘度及び無機塩濃度等を見直し、これらを微調整することによりドープ液として用いることができる。
(2)ポリペプチドの溶液を用いたポリペプチドの重合
上記(1)で調製したポリペプチドの溶液(ドープ液)を100℃以上に加熱する。当該加熱によりポリペプチド同士の脱水縮合が起こり、重合する。公知の脱水縮合触媒を併用することで、重合効率を飛躍的に高めることもできる。当該重合反応を行なったドープ液は、必要に応じてエタノール(エチルアルコール)、メタノール(メチルアルコール)又は水等を加えて希釈し、湿式紡糸の作製に用いることができる。
(3)湿式紡糸−延伸
(a)湿式紡糸
加熱後の可溶性画分(ドープ液)を、糸状の流体として凝固液に付与する。湿式紡糸に使用する凝固液は、脱溶媒できる溶液であればどのようなものでもよい。溶媒を脱離し、繊維形成させるための凝固液はメタノール、エタノール、2−プロパノールなどの炭素数1〜5の低級アルコール又はアセトンを使用するのが好ましい。凝固液には、適宜水を加えてもよい。凝固液の温度は紡糸の安定性の観点から、5〜30℃が好ましい。
第2の可溶性画分(ドープ液)を糸状の流体として付与する方法は、特に制限されないが、例えば紡糸用の口金から脱溶媒槽の凝固液に押し出す方法があげられる。組換えタンパク質が凝固することにより未延伸糸が得られる。第2の可溶性画分(ドープ液)を凝固液に押し出す場合の押出し速度は、口金の直径及び可溶性画分の粘度等に応じて適宜設定できるが、例えば、直径0.1〜0.6mmのノズルを有するシリンジポンプの場合、紡糸の安定性の観点から、押し出し速度は1ホール当たり、0.2〜6.0mL/hが好ましく、1ホール当たり、1.4〜4.0mL/hがより好ましい。凝固液を入れる脱溶媒槽(凝固液槽)の長さは特に限定されないが、例えば長さは200〜500mmであってよい。組換えタンパク質の凝固により形成された未延伸糸の引き取り速度は例えば1〜14m/min、滞留時間は例えば0.01〜0.15minであってよい。未延伸糸の引き取り速度は、脱溶媒の効率の観点から、1〜3m/minが好ましい。組換えタンパク質の凝固により形成された未延伸糸は、さらに凝固液において延伸(前延伸)をしてもよいが、凝固液に用いる低級アルコールの蒸発を抑える観点から、凝固液を低温に維持し、未延伸糸の状態で凝固液から引き取るのが好ましい。
(b)延伸
本実施形態に係る人造ポリペプチド繊維の製造方法は、工程(E)で得られた未延伸糸を、さらに延伸する工程を含むこともできる。延伸は一段延伸でもよいし、2段以上の多段延伸でもよい。多段で延伸すると、分子を多段で配向させ、トータル延伸倍率も高くすることができるため、タフネスの高い繊維の製造に適している。
[ポリペプチドフィルムの製造方法]
目的とする組換えタンパク質が、ポリペプチドフィルムの製造を目的として生産させた構造タンパク質、例えば、スパイダーシルク、カイコシルク、ケラチン等由来のタンパク質の場合、工程(C)で得られた第2の可溶性画分を、ポリペプチドフィルムの製造にそのまま用いることができる。ここで、そのまま用いるとは、さらなる精製工程を必要としないことを意味する。これは、工程(C)で得られた可溶性画分に含まれる組換えタンパク質の純度がポリペプチドフィルムの形成に用いるのに十分高いことを示している。工程(A)〜(C)の後、フィルム形成工程を行うことにより、ポリペプチドフィルムを製造することができる。
すなわち一実施形態に係るポリペプチドフィルムの製造方法は、以下(A)〜(C)及
び(F)の工程を含むことを特徴とする:
(A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分と含む第1の反応混合物を得る工程、
(B)第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
(C)第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程、
(F)(C)で得られた第2の可溶性画分の溶媒に耐性のある平板上に、第2の可溶性画分を用いて塗膜を形成し、塗膜から第2の可溶性画分の溶媒を除去することによってポリペプチドフィルムを得る工程
工程(A)〜(C)については、上述した通りである。工程(F)は、第2の可溶性画分の溶媒に耐性のある平板上に、第2の可溶性画分を用いて塗膜を形成し、塗膜から第2の可溶性画分の溶媒を除去することによってポリペプチドフィルムを得る工程である。
工程(C)で得られた第2の可溶性画分を用いて塗膜を形成し、第2の可溶性画分の溶媒を除去すると、組換えタンパク質のポリペプチドフィルムが形成される。
塗膜を形成する平板としては、ガラス板等の、第2の可溶性画分の溶媒に耐性のある平板が用いられる。塗膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜1000μmであってよい。
ポリペプチドフィルムを形成する方法としては、例えばキャスト法が挙げられる。キャスト法によりポリペプチドフィルムを形成する場合には、平板に、第2の可溶性画分をドクターコート、ナイフコーターなどの冶具を用いて数ミクロン以上の厚さにキャストしてキャスト膜を形成し、その後減圧乾燥又は脱溶媒槽への浸漬により溶媒を脱離することによりポリペプチドフィルムを得ることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)目的とするタンパク質発現株(組換え細胞)の作製
配列番号1(PRT918)、配列番号2(PRT410)、配列番号3(PRT587)、配列番号4(PRT799)、又は、配列番号5(PRT468)で示されるアミノ酸配列を有するクモ糸由来の配列を有するフィブロインを合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。各タンパク質のハイドロパシーインデックス及び分子量(kDa)は表2に示した通りである。
Figure 2021080169
これら5種類の各目的とするタンパク質をコードする核酸をそれぞれクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。当該4種類の核酸をそれぞれ組換えたpET−22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)をそれぞれ形質転換して、目的とするタンパク質を発現する形質転換大腸菌(組換え細胞)を得た。
(2)目的とするタンパク質の発現
上記形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表3)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2021080169
500mLの生産培地(表4)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように当該シード培養液を添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持した。
Figure 2021080169
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、酵母エキス 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持し、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的のタンパク質を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とするタンパク質サイズのバンドの出現により、目的とするタンパク質が不溶体として発現されていることを確認した。
[実施例1 夾雑物の除去及び目的とするタンパク質の精製]
エッペンチューブに33.3mgの乾燥菌体を量り取り、これを60℃で加熱している、第1の溶媒(0.5 M CaCl含有のDMSO(第1のプロトン性極性溶媒))500μL中に添加した。乾燥菌体添加後、菌体がダマになっていないことを確認してから60℃、2000rpm、30min.の条件で撹拌しながら加熱溶解を行った。加熱溶解終了後、溶液温度が45℃以下になるまで放冷し、45℃まで放冷後、第2の溶媒として、アセトン(第2の非プロトン性極性溶媒)を撹拌しながら添加した。DMSOの添加量とアセトンの添加量との比(DMSOの添加量:アセトンの添加量)は、5(vol/vol):1(vol/vol)、5(vol/vol):2(vol/vol)又は5(vol/vol):3(vol/vol)とした。添加後、5〜10分程経ったら撹拌を止めて、室温で静置(60min.撹拌時間も含む)した。目的の静置時間が経過したら、遠心分離を500×g、10min、20℃の条件で行った。
遠心分離終了後、抽出液(可溶性画分)を等量のエタノール(目的とする組換えタンパク質の貧溶媒)に添加し、疎水性タンパク質(PRT918)を沈殿させた。2時間静置後、遠心分離(条件:20℃、500×g、30min.)を行うことで沈殿したフィブロインを回収した。沈殿したフィブロインを抽出液と等量のRO水で3回洗浄した。洗浄終了後、サンプルを凍結乾燥した。凍結乾燥終了後、精製粉末を回収した。得られた粉体をSDS−PAGEで分析した。結果を図1に示す。
[ろ過検討]
乾燥菌体を必要量(3.33g)量り取り、これを60℃で加熱している第1の溶媒(0.5 M CaCl含有のDMSO(第1のプロトン性極性溶媒))50mL中に撹拌しながら添加した。乾燥菌体添加後、菌体がダマになっていないことを確認してから60℃、300rpm、30min.の条件で攪拌しながら加熱溶解を行った。加熱溶解終了後、溶液温度が45℃以下になるまで300rpmで撹拌しながら放冷し、45℃まで放冷後、第2の溶媒として、アセトン(第2の非プロトン性極性溶媒)を撹拌しながら添加した。DMSOの添加量とアセトンの添加量との比(DMSOの添加量:アセトンの添加量)は、5(vol/vol):1(vol/vol)、5(vol/vol):2(vol/vol)又は5(vol/vol):3(vol/vol)とした。アセトンの添加後、5〜10分程経過した後、撹拌を止めて、室温で静置(60min.撹拌時間も含む)した。目的の静置時間が経過したら、ろ過助剤(菌体量と等量)を撹拌しながら添加した。5分間撹拌を行った後、ろ過助剤をプレコートしたろ過機にサンプル溶液を投入し、ろ過を行った。ろ過性は、ろ過不能である場合「−」、ろ過可能である場合「+」と評価した。結果を表5に示す。
ろ過終了後、抽出液(可溶性画分)を等量のエタノール(目的とする組換えタンパク質の貧溶媒)に添加し、疎水性タンパク質(PRT918)を沈殿させた。2時間静置後、遠心分離(条件:20℃、500×g、30min.)を行うことで沈殿させたフィブロインを回収した。沈殿したフィブロインを抽出液と等量のRO水で3回洗浄した。洗浄終了後、サンプルを凍結乾燥した。凍結乾燥終了後、精製粉末を回収した。得られた粉体をSDS−PAGEで分析した。結果を表5及び図2に示す。
Figure 2021080169
[ろ過検討]
乾燥菌体を必要量量り取り、これを60℃で加熱している第1の溶媒(0.25M又は0.5M CaCl含有のDMSO(第1のプロトン性極性溶媒))100mL中に撹拌しながら添加した。乾燥菌体添加後、菌体がダマになっていないことを確認してから60℃、300rpm、30min.の条件で攪拌しながら加熱溶解を行った。加熱溶解終了後、溶液温度が45℃以下になるまで300rpmで撹拌しながら放冷し、45℃まで放冷後、第2の溶媒として、アセトン(第2の非プロトン性極性溶媒)を撹拌しながら添加した。DMSOの添加量とアセトンの添加量との比(DMSOの添加量:アセトンの添加量)は、2(vol/vol):1(vol/vol)とした。アセトンの添加後、5〜10分程経過した後、撹拌を止めて、室温で60分間(撹拌時間含む)静置した。目的の静置時間が経過したら、ろ過助剤(菌体量と等量)を撹拌しながら添加した。5分間撹拌を行った後、ろ過助剤をプレコートしたろ過機にサンプル溶液を投入し、ろ過を行った。ろ過性は、ろ過不能である場合「−」、ろ過可能である場合「+」と評価した。結果を表6に示す。0.25MCaCl含有のDMSO(第1のプロトン性極性溶媒)を用いた場合、ろ過性が良好になると共に、残渣処理がより容易となった。
ろ過終了後、抽出液(可溶性画分)を等量のエタノール(目的とする組換えタンパク質の貧溶媒)に添加し、疎水性タンパク質(PRT918)を沈殿させた。2時間静置後、遠心分離(条件:20℃、500×g、30min.)を行うことで沈殿させたフィブロインを回収した。沈殿したフィブロインを抽出液と等量のRO水で3回洗浄した。洗浄終了後、サンプルを凍結乾燥した。凍結乾燥終了後、精製粉末を回収した。
Figure 2021080169
[実施例2 従来法を用いた精製の効果]
国際公開第2014/103847号に記載の方法(以下、従来法と呼ぶ)は、DMSO等の非プロトン性極性溶媒に目的とするタンパク質を溶解し、水等の溶媒を加え不純物を除去し、精製する方法である。この従来法は、優れた方法であるものの、目的とするタンパク質はハイドロパシーインデックスが0以下の親水性組換えタンパク質に限定されていた。以下、従来法を用いた精製の効果を確認した。
PRT918を発現した大腸菌の乾燥菌体をエッペンチューブにそれぞれ必要量量り取り0.5Mの塩化カルシウムを含むDMSO500μLを加え、60℃の温度で30分間加熱し、PRT918を溶解した。室温まで放冷した後、RO水500μLを加えて攪拌した。PRT918は遠心分離を行うことができなかった。この条件で遠心分離による沈降が起きない場合は、ろ過ができないことは確認している。
[実施例3 第2の溶媒を用いた精製の効果]
本方法に従って、PRT410、PRT587、PRT799、PRT468及びPRT918乾燥菌体をそれぞれ必要量(3.33g)量り取り、これを60℃で加熱している第1の溶媒(0.5M CaCl含有のDMSO(第1のプロトン性極性溶媒))50mL中に撹拌しながら添加した。乾燥菌体添加後、菌体がダマになっていないことを確認してから60℃、300rpm、30min.の条件で攪拌しながら加熱溶解した。加熱溶解終了後、溶液温度が45℃以下になるまで300rpmで撹拌しながら放冷し、45℃まで放冷後、第2の溶媒として、アセトン(第2の非プロトン性極性溶媒)を添加した。DMSOの添加量とアセトンの添加量との比(DMSOの添加量:アセトンの添加量)は、2(vol/vol):1(vol/vol)とした。添加後、5〜10分程経ったら撹拌を止めて、室温で60分間(撹拌時間含む)静置した。目的の静置時間が経過したら、ろ過助剤(菌体量と等量)を撹拌しながら添加した。5分間撹拌を行った後、ろ過助剤をプレコートしたろ過機にサンプル溶液を投入し、ろ過を行った。ろ過終了後、抽出液(可溶性画分)を等量のエタノール(目的とする組換えタンパク質の貧溶媒)に添加し、各フィブロインを沈殿させた。2時間静置後、遠心分離(条件:20℃、500×g、30min.)を行うことで沈殿したフィブロインを回収した。沈殿したフィブロインを抽出液と等量のRO水で3回洗浄した。洗浄終了後、サンプルを凍結乾燥した。凍結乾燥終了後、精製粉末を回収した。
表7は従来法と本方法との比較におけるろ過性の関係及び本方法による各タンパク質におけるろ過性の評価結果を示す。ろ過性は、ろ過不能である場合「−」、ろ過可能である場合「+」と評価した。
Figure 2021080169
[実施例4 可溶性画分のドープ液としての利用]
PRT918を発現した大腸菌の乾燥菌体50mgに、0.5Mとなるように塩化カルシウムを添加したDMSO(第1の非プロトン性極性溶媒)を500μL加え、60℃の温度で30分間処理した。加熱溶解終了後、溶液温度が45℃以下になるまで放冷した。
DMSO500μLに対し、第2の溶媒としてアセトン(第2の非プロトン性極性溶媒)を2:1の割合で250μL加え、夾雑物を沈殿させた。その後、500×g、10分間の条件で遠心分離を行い、沈殿画分を除去し、PRT918を含む上清画分(目的とする組換えタンパク質の可溶性画分)を精製タンパク質溶液として得た。当該精製タンパク質溶液が紡糸用のドープ液として利用可能か以下の方法で確認した。
上記のPRT918を含む精製タンパク質溶液80μLを内径0.1mmの針を持ったシリンジに入れた。当該シリンジの針の先端を、500mLビーカー中のメタノール(凝固液)につけ、上記精製タンパク質溶液を押し出し、凝固液中に糸状のものが形成されることを確認した(図3)。形成された糸状のものを凝固液からピンセットで取り出し、自然乾燥した(図4)。
以上の結果、本精製方法により得られた精製タンパク質溶液は、さらなる精製工程を要することなく、そのまま紡糸用のドープ液として利用できる程、目的とするタンパク質の純度が高いことが確認できた。即ち、従来の組換えタンパク質を用いた紡糸用のドープ液の調製工程(凝集、洗浄、乾燥及び再溶解等)と比較し、極めて少ない工程で紡糸用のドープ液を調製できることがわかった。

Claims (11)

  1. 目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を用いて、前記組換えタンパク質を製造する方法であって、
    前記組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理し、得られた反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理した後、不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を可溶性画分として得ることを特徴とする、組換えタンパク質の製造方法。
  2. 前記得られた可溶性画分を、前記組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、前記組換えタンパク質を凝集させ、前記組換えタンパク質を凝集体として得ることをさらに含む、請求項1に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  3. 以下(A)、(B)及び(C)の工程を含む、組換えタンパク質の製造方法。
    (A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
    (B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
    (C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程
  4. (D)(C)で得られた前記第2の可溶性画分を、前記組換えタンパク質の貧溶媒で処理し、前記組換えタンパク質を凝集させ、前記組換えタンパク質を凝集体として得る工程をさらに含む、請求項3に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  5. 前記条件が、温度条件であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  6. 前記第1の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントが3.0D以上であり、前記第2の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントが2.5D以上であり、かつ、前記第1の非プロトン性極性溶媒の双極子モーメントよりも小さい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  7. 前記無機塩が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩及びチオシアン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  8. 前記組換えタンパク質が構造タンパク質である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  9. 前記構造タンパク質がスパイダーシルクに由来する、請求項8に記載の組換えタンパク質の製造方法。
  10. 以下(A)、(B)、(C)及び(E)の工程を含む、人造ポリペプチド繊維の製造方法。
    (A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分とを含む第1の反応混合物を得る工程、
    (B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
    (C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程、
    (E)(C)で得られた前記第2の可溶性画分を糸状の液体として凝固液に付与し、前記組換えタンパク質を糸状に凝固させて回収することにより未延伸糸を得る工程
  11. 以下(A)、(B)、(C)及び(F)の工程を含む、ポリペプチドフィルムの製造方法。
    (A)目的とする組換えタンパク質を不溶体として細胞内において発現している組換え細胞を、無機塩添加又は無添加の第1の非プロトン性極性溶媒を含む第1の溶媒で前記組換えタンパク質が溶解する条件で処理して、第1の可溶性画分と第1の不溶性画分と含む第1の反応混合物を得る工程、
    (B)前記第1の反応混合物を第2の非プロトン性極性溶媒を含む第2の溶媒で処理し、第2の可溶性画分と第2の不溶性画分とを含む第2の反応混合物を得る工程、
    (C)前記第2の反応混合物から第2の不溶性画分を除去し、前記組換えタンパク質を第2の可溶性画分として得る工程、
    (F)(C)で得られた前記第2の可溶性画分の溶媒に耐性のある平板上に、前記第2の可溶性画分を用いて塗膜を形成し、前記塗膜から前記第2の可溶性画分の溶媒を除去することによってポリペプチドフィルムを得る工程
JP2018022432A 2018-02-09 2018-02-09 組換えタンパク質の製造方法 Pending JP2021080169A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018022432A JP2021080169A (ja) 2018-02-09 2018-02-09 組換えタンパク質の製造方法
PCT/JP2019/004736 WO2019156242A1 (ja) 2018-02-09 2019-02-08 組換えタンパク質の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018022432A JP2021080169A (ja) 2018-02-09 2018-02-09 組換えタンパク質の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021080169A true JP2021080169A (ja) 2021-05-27

Family

ID=67548301

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018022432A Pending JP2021080169A (ja) 2018-02-09 2018-02-09 組換えタンパク質の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2021080169A (ja)
WO (1) WO2019156242A1 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0837883B1 (en) * 1995-06-07 2005-08-10 Chiron Corporation Method of solubilizing, purifying, and refolding protein
CN101748516A (zh) * 2008-12-15 2010-06-23 上海正家牛奶丝科技有限公司 一种蛋白质合成纤维制造过程中的溶剂除杂方法
JP5713379B2 (ja) * 2009-01-15 2015-05-07 株式会社プリベンテック 組換え植物で発現して難抽出化した組換えタンパク質の抽出・精製方法
JP5678283B2 (ja) * 2012-12-26 2015-02-25 スパイバー株式会社 クモ糸タンパク質フィルム及びその製造方法
CN107735406A (zh) * 2015-04-09 2018-02-23 丝芭博株式会社 极性溶剂溶液及其制造方法
JPWO2018066558A1 (ja) * 2016-10-03 2019-09-05 Spiber株式会社 組換えタンパク質の精製方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019156242A1 (ja) 2019-08-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7079525B2 (ja) 不溶性組換えタンパク質凝集体の製造方法
WO2018066558A1 (ja) 組換えタンパク質の精製方法
JP6807089B2 (ja) 改変フィブロイン
WO2017188434A1 (ja) 改変フィブロイン
WO2017188430A1 (ja) 改変フィブロイン
JP7133810B2 (ja) 改変フィブロイン
JP7452830B2 (ja) 組換えタンパク質の生産方法
JP2024012433A (ja) タンパク質成形体の製造方法、タンパク質溶液の製造方法及びタンパク質の製造方法
JP2021080169A (ja) 組換えタンパク質の製造方法
JP2021095346A (ja) 改変フィブロイン架橋体を製造する方法
EP3910096A1 (en) Modified fibroin
JP2024020557A (ja) 改変フィブロイン
JP2020120643A (ja) 改変フィブロイン繊維の製造方法及びタンパク質溶液
JP2020121958A (ja) タンパク質成形体の製造方法
JP2021054751A (ja) 構造タンパク質成形体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20190205

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190205