JP2021067742A - 画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

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Takashi Hiramatsu
隆 平松
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修平 常盤
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Takashi Mukai
崇 向井
並木 貴之
Takayuki Namiki
貴之 並木
匠 古川
Takumi Furukawa
匠 古川
裕一 菊池
Yuichi Kikuchi
裕一 菊池
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一浩 山内
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Abstract

【課題】クリーナレス構成において、感光ドラムの表面の残留トナーに適切に電荷を与えることで、現像装置による回収性を向上させる。【解決手段】現像剤像を像担持体から被転写体に転写した後に像担持体の表面に残留した現像剤を、帯電部材によって正規極性に帯電し、現像部材に回収する画像形成装置において、帯電部材は、振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×105Hz〜1.0×106Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×101Hzにおけるインピーダンスが、1.0×103Ω〜1.0×107Ωである。【選択図】図1

Description

本発明は、画像形成装置に関するものである。ここで、画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録材(記録媒体)に画像を形成するものである。画像形成装置の例としては、複写機、プリンタ(レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ、及び、これらの複合機(マルチファンクションプリンタ)などが含まれる。
プリンタや複写機等の電子写真方式画像形成装置(以下、画像形成装置)による画像形成は、ドラム型の感光体等の像担持体上の静電潜像をトナー像(現像剤像)に現像し、これを画像形成の対象である紙やシート等の記録材に転写し、定着させることでなされる。像担持体は、画像形成の都度、転写に供されず残留したトナー(現像剤)を除去することが必要であるが、環境保全や資源の有効利用、装置の小型化等の観点から、専用のクリーニング手段を設けない装置構成が知られている(特許文献1)。すなわち、現像ローラ等の現像剤担持体から像担持体の表面にトナーを供給する現像部において、像担持体上の静電潜像の現像と同時に、転写残トナーを像担持体から現像剤担持体へ移動させる、いわゆる現像同時クリーニングを可能にしたクリーナレス方式の装置構成である。現像剤担持体に移動したトナーは、現像装置のトナー収容部に回収され、再利用が可能である。
特開昭59−133573号公報
しかしながら、像担持体の表面の残留トナーの電荷量が小さい場合において、現像装置によって残留トナーを回収することが困難となり、画像弊害が発生することがあった。
そこで、本発明では、クリーナレス構成において、感光ドラムの表面の残留トナーに適切に電荷を与えることで、現像装置による回収性を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
前記現像部材により顕像化された現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、を有し、
前記転写部材によって前記現像剤像を前記被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を前記帯電部材によって正規極性に帯電して、前記現像部材に回収する画像形成装置であって、
前記帯電部材は、
振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
ことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
前記現像部材により顕像化された現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、を有し、
前記転写部材によって前記現像剤像を前記被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を前記帯電部材によって正規極性に帯電して、前記現像部材に回収する画像形成装置であって、
前記被転写体へ前記現像剤像を転写した後の前記像担持体の表面を、前記帯電部材が帯電する前に、帯電する現像剤帯電部材をさらに備え、
前記現像剤帯電部材は、
振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記現像剤帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
ことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明のプロセスカートリッジは、
画像形成装置の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
を備え、
前記装置本体に設けられた転写部材が、前記現像部材により顕像化された現像剤像を前記像担持体から被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を、前記帯電部材によって正規極性に帯電し、前記現像部材に回収するプロセスカートリッジにおいて、
前記帯電部材は、
振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
ことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明のプロセスカートリッジは、
画像形成装置の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
を備え、
前記装置本体に設けられた転写部材が、前記現像部材により顕像化された現像剤像を前記像担持体から被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を、前記帯電部材によって正規極性に帯電し、前記現像部材に回収するプロセスカートリッジにおいて、
前記被転写体へ前記現像剤像を転写した後の前記像担持体の表面を、前記帯電部材が帯電する前に、帯電する現像剤帯電部材をさらに備え、
前記現像剤帯電部材は、
振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記現像剤帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
ことを特徴とする。
本発明によれば、クリーナレス構成において、感光ドラムの表面の残留トナーに適切に電荷を与えることで、現像ユニットによる回収性を向上させることが可能となる。
残留トナー帯電部材による残留トナーへの帯電電荷付与分布図 本発明の実施例1に係る画像形成装置の概略構成図 インピーダンス特性の説明図 インピーダンスの挙動の説明図 帯電ローラの長手方向に対して垂直な模式的断面図 帯電ローラに測定電極を形成した状態の概要図 測定電極の模式的断面図 インピーダンス測定系の概要図 海島構造の模式図 包絡周囲長の説明図 断面切り出し方向の説明図 放電の抜けのイメージ図 インピーダンスの周波数特性を測定した一例を示すグラフ 本発明の実施例1に係る画像形成装置の制御ブロック図 本発明の実施例1の変形例に係る画像形成装置の概略構成図
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○〜××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲(○○を下限値、××を上限値とする数値範囲)を意味する。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
[実施例1]
図2は、本発明の実施例1に係る画像形成装置100の概略構成を示す模式的断面図であり、画像形成時の各構成について簡略的に示している。図2は、画像形成装置が水平な
設置面に載置される通常の設置状態における画像形成装置の構成を示しており、紙面左右方向が水平方向、紙面上下方向が装置上下方向にそれぞれ対応する。
(画像形成装置の全体構成)
本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式を利用した複写機、プリンタなどが挙げられ、ここではレーザプリンタに適用した場合について説明する。本実施例に係る画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスの主要構成がプロセスカートリッジ11として一体化され、これが装置本体に対して着脱自在に構成されている。プロセスカートリッジ11は、像担持体としてのドラム型の感光体(感光ドラム)1を備えている。他にもプロセスカートリッジ11の感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の表面を帯電するための帯電部材としての帯電ローラ2、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤により現像するための現像剤担持体(現像部材)としての現像ローラ41が設けられている。正規電荷を保持し現像ローラ41に担持されたトナーにより、感光ドラム1表面に形成された静電潜像がトナー像(現像剤像)として現像(顕像化)される。なお、本実施例では、帯電ローラ2は、残留トナー帯電部材(残留現像剤帯電部材)を兼ねている。つまり、帯電ローラ2による感光ドラム1への帯電と、残留トナー帯電部材としての帯電ローラ2による残留トナー(残留現像剤)への帯電が同時に行われる。残留トナーへの残留トナー帯電部材(帯電ローラ2)による帯電プロセスに関しては後述する。
画像形成装置100の装置本体には、感光ドラム1に当接し、被転写体としての記録材Kにトナー像の転写を行う転写手段(転写部材)としての転写ローラ5、帯電された感光ドラム1に対し画像データに対応した静電潜像を形成させるためのレーザ露光ユニット(露光装置)3が設けられている。また、感光ドラム1の回転方向における転写ローラ5の下流側、帯電ローラ2の上流側における感光ドラム1表面を露光することで、転写後の感光ドラム1表面の静電潜像をリセット(感光ドラム1の表面電位を均一化)する前露光装置(前露光手段)として、LED光源を有する前露光ユニット6が設けられている。
本実施例におけるプロセスカートリッジ11は、感光体ユニット10と、現像ユニット(現像装置)20の2つのユニットからなるカートリッジ構成である。感光体ユニット10は、感光ドラム1、帯電ローラ2、前露光ユニット6等が一体化されたユニット(カートリッジ)である。現像ユニット20は、現像ローラ41、現像ブレード43、トナー供給部材(トナー供給ローラ)42、現像枠体40等が一体化されたユニット(カートリッジ)である。2つのユニットは、一体的に(プロセスカートリッジ11として)、あるいはそれぞれ個別に、画像形成装置の装置本体に着脱可能に構成されている。なお、ここでは画像形成装置の構成のうちカートリッジを除いた構成部分のことを「装置本体」とする。
現像枠体40は、トナー(現像剤)44を収容する現像剤収容部を有するとともに、現像ローラ41、トナー供給部材42、現像ブレード43、撹拌部材45を支持する枠体である。現像ローラ41、トナー供給部材42、撹拌部材45はそれぞれ現像枠体40に対して回転可能に設けられている。
トナー供給部材42は、現像ローラ41に対しトナー44の供給、剥ぎ取りを行う現像剤供給部材であり、現像ローラ41に圧接されるように現像枠体40に設けられている。
現像ブレード43は、現像ローラ41上に担持されるトナー44に対し、その層厚を規制し、かつ帯電させる現像剤規制部材であり、現像枠体40に固定されている。
撹拌部材45は、現像枠体40の現像剤収容部内で回転することで、収容されているトナーを撹拌するとともに、トナー供給部材42に向けてトナーを搬送する。
感光ドラム1、現像ローラ41、トナー供給部材42、撹拌部材45、転写ローラ5や、記録材Kを搬送するための不図示の搬送ローラ、定着装置7の加圧ローラ等は、装置本
体に設けられた各種モータ(動力源)から伝達される駆動力によりそれぞれ回転する。
また、装置本体には、帯電ローラ2、現像ローラ41、トナー供給部材42、現像ブレード43、転写ローラ5のそれぞれに所定の電圧を印加するための、電源が取り付けられている。
図14に示す制御ブロック図は、本実施例に係る画像形成装置の制御構成の一例を概略的に示している。制御部101は、CPUやメモリ等を有し、ホストコンピュータ等の外部装置から送信される画像情報及びプリント指示を受信し、画像形成装置100の画像形成動作を制御する。すなわち、ここで説明する画像形成動作の各種動作は、制御部101によって制御される。
(画像形成動作)
図2を参照して、本実施例での画像形成動作について詳細に説明する。
画像形成動作が開始されると、感光ドラム1は、感光体駆動モータ(図8)にて図中矢印方向に回転駆動される。その表面速度は180mm/secである。感光ドラム1は、アルミニウム等からなる導電性の芯金上に、電荷発生層を形成し、その上層に電荷輸送層を形成した、所謂有機感光体である。電荷輸送層の層厚は23μmである。
感光ドラム1に当接された帯電ローラ2は、円筒状の導電性の支持体2aの外表面上(外周面上)を規定の抵抗層(後述する導電層)2bで覆ったローラである(図5)。帯電ローラ2は、導電性支持体2aの円筒両端部をバネ加圧されることで、感光ドラム1の回転に伴って(追従して)従動回転を行う。感光ドラム1表面を帯電すべく、帯電ローラ2の支持体2aに帯電用電源(図8)から所定のタイミングで−1100Vが印加され、感
光ドラム1上は一様に負帯電し暗部電位Vdとして−550Vの表面電位が形成される。
帯電された感光ドラム1を露光するレーザ露光ユニット3は、画像データに応じて、レーザビームを用いて感光ドラム1にその主走査方向(感光ドラム1の回転軸方向)に露光を繰り返しつつ、副走査方向(感光ドラム1の表面の回転移動方向)にも露光を行う。この露光により、感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される(画像形成部は明部電位Vlとして−100Vになる)。
現像手段である現像ユニット20に取り付けられた現像ローラ41は、画像形成時に感光ドラム1と接触し、形成された静電潜像に対し、現像ローラ41用の電源(図8)から現像電圧として−350Vが印加されトナー44により現像を行う。現像ローラ41は、感光ドラム1と逆方向に回転し、また表面移動速度は感光ドラム1の表面移動速度に対し1.4倍の速度で回転している。速度差をもって回転することで、現像ローラ41上から感光ドラム1へ適切なトナー量を供給している。
感光ドラム1上に可視化されたトナー像は、さらに感光ドラム1と転写ローラ5との接触部である転写部に送られ、タイミングを合わせて搬送されてくる記録材K上に転写される。転写ローラ5には、転写ローラ用の電源(図8)により転写バイアスとして500Vが印加されている。
トナー像が転写された記録材Kは、定着装置7に送られる。定着装置7において、記録材Kには熱及び圧力が加えられ、転写されたトナー像は記録材Kに定着される。トナー像が定着された(画像が形成された)記録材Kは、装置本体上部のトレイに排出される。
ここで、転写部で転写されなかった残留トナーが少なからず感光ドラム1上に存在する。
本実施例に係る画像形成装置では、そのような残留トナーを、残留トナー帯電部材としての帯電ローラ2からの放電により、トナー44の正規極性(正規帯電極性)である負極性に帯電する。本実施例では、残留トナー帯電部材として帯電ローラ2を用いるため、残留トナー帯電部材の機能に関しても帯電ローラ2で説明を行うこととする。このとき、後述のような放電による電荷付与を行うことで、その後に続く工程での現像装置による残留トナーの回収に不利となる低電荷成分のトナーを極力少なくしている。また、帯電ローラ2による放電を確実に行うために前露光ユニット6により感光ドラム1上の電位の絶対値
を小さくしている。これにより、帯電ローラ2による放電が確実に行われる。続いて、帯電された残留トナーは、帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部である帯電部に突入する。このとき、帯電部において残留トナーは、帯電ローラ2による放電により負帯電されているため、感光ドラム1上に静電的に留まった状態で帯電部を通過する。続いて、帯電部を通過した残留トナーは、現像ローラ41と感光ドラム1との接触部である現像部まで移動する。この現像部において、残留トナーが付着している感光ドラム1の表面が非画像形成部(暗部電位形成領域)である場合は、感光ドラム1と現像ローラ41の静電気力の関係により、感光ドラム1の表面から現像ローラ41にトナーが回収される。このとき、現像回収は、残留トナーの電荷が正規極性である負極性のため生じる。そのため、感光ドラム1の暗部電位である−550Vと現像電位である−350Vとの電位差である200Vの
電位差により回収が行われる。この電位差を大きくすると回収性はより向上するが、画像形成における潜像において、現像に適した電位差との兼ね合いにより決めている。また、感光ドラム1と現像ローラ41との表面移動速度差によっても現像回収性が変わり、表面移動速度差が大きくなると現像回収性は向上する。一方、残留トナーが付着している感光ドラム1の表面が画像形成部(明部電位形成領域)の場合は、残留トナーはそのまま感光ドラム1の表面上に留まり、画像形成するためのトナー44として使用される。また、本実施例では、残留トナーを極力少なくするためにトナー44の電荷が適正な範囲となるようにしている。更に、トナー44の外添剤として外径100nm程度のシリカをトナー母粒子に外添することで転写性の向上を図っている。
この様な工程を繰り返して画像形成動作が実行される。
(残留トナー帯電部材としての帯電ローラによる帯電プロセス)
帯電ローラ2によるトナー帯電について説明する。
本実施例で用いる帯電ローラ2は、放電によって残留トナーに電荷を供給し、残留トナーの現像装置20による回収性を向上させている。放電による電荷供給により、現像回収性に不利な低電荷成分を極力少なくするために、帯電ローラ2が放電を行うための電荷供給を継続させる特性を用いる。
放電による帯電により残留トナーの低電荷成分を少なくするためには、放電をできるだけ細かく継続させる必要がある。従来の帯電ローラによる放電では、感光ドラム1に対する帯電には支障がない程度の放電の抜け(断続的な放電)が発生している。そのため、従来の帯電ローラのように断続的な放電をする場合においては、放電領域内で帯電を受けないトナーができてしまう。
一方、放電を細かく継続させることができれば、放電を受けないトナーを減少させることができるため残留トナーの現像装置による回収性は向上する。
<帯電ローラの詳細>
通常、帯電部近傍における微小空隙において、電界の強さと、微小空隙の距離の関係がパッシェンの法則を満たす領域において放電が発生する。
感光ドラム1を回転させながら放電を発生させる帯電プロセスにおいては、帯電ローラ2表面の一点を経時で追跡した際に、放電の開始地点から終了地点までに、放電が持続的に発生するのではなく、複数回の放電が繰り返し発生することが分かっている。
従来の帯電ローラにおいては、支持体の該表面からその外周を覆う導電層外表面に至る、電荷を輸送できる導電パスが形成されていると考えられる。そのため、1回の放電で、導電層内に蓄積されている電荷の大半が感光体やトナーの如き被帯電体に向けて放出される。ここで、本発明者らは、従来の帯電ローラの一例として、以下で説明する比較例1に係る帯電ローラの放電状態を、オシロスコープで詳細に測定、解析した。その結果、比較例1に係る帯電ローラでは、プロセススピードが速くなるにつれて、本来放電が生じなければいけないタイミングで放電されない、いわゆる放電の抜けが生じていることが確認された。
図12に放電の抜けが発生している状態のイメージ図を示す。図12(a)は、放電の抜けがなく、放電の総量が充足されている状態、図12(b)は、放電の抜けが生じて放電の総量が不足している状態、をそれぞれ示している。
放電の抜けが生じる理由としては、帯電ローラの支持体を覆う導電層からの放電で導電層内に蓄積された電荷の大半が消費された後、次の放電のための導電層への電荷の蓄積が間に合わないためであると考えられる。ここで、本発明者らは、導電層53内に多量の電荷を蓄積でき、かつ、1回の放電によっても蓄積された電荷が一度に消費されないようにすれば、放電の抜けを解消し得るものと考察した。このような考察に基づきさらなる検討を重ねた結果、本実施例に係る構成を備えた帯電ローラ2は、上記の要求によく応え得ることを見出した。
<インピーダンスの傾き>
本実施例における帯電ローラ2は、所定のインピーダンス特性を有することを特徴とする。帯電ローラ2に、振幅が1Vの交流電圧を、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら印加することによってインピーダンスを測定する。その測定結果を、交流電圧の周波数を横軸、取得されるインピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの傾きが、周波数1.0×10Hz〜1.0×10Hzの範囲において、−0.8以上、−0.3以下である。
従来の帯電ローラ2をインピーダンス測定すると、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの間で、必ず傾きが−1となる。
ここで、傾きとは、図3に示すように、帯電ローラ2のインピーダンス特性を周波数に対して両対数プロットした際の、横軸に対する傾きのことである。従来は、実線で示すように、傾きが−1であり、対して本実施例では、破線で示すように、傾きが1.0×10Hz〜1.0×10Hzの間で−0.8以上、−0.3以下である。
帯電ローラ2の等価回路は、電気抵抗Rと静電容量Cの並列回路で表され、インピーダンスの絶対値|Z|は、下記式(1)で表現することができる。このとき、式(1)内のfは印加交流電圧の周波数を示す。
Figure 2021067742

高周波数側で、インピーダンスの傾き−1の直線になるのは、高周波の電圧に対して電荷の動きが追随できず、停滞するため、電気抵抗値Rが大きく増大した、いわば絶縁の静電容量を計測している状態であると推測できる。電荷が停滞した状態を想定すると、式(1)の中で、式(1)でRを無限大に近似した状態とすることができる。このとき、分母の要素を抜き取った式(2)において、R−2が(2πfC)に対して非常に小さい値をとる近似が可能になる。したがって、式(1)はR−2を除去した式(3)のような近似を施した式変形が可能となる。最後に、式(3)に対して両辺対数をとる式変形を行うと、式(4)となり、logfの傾きが−1になる。
−2+(2πfC) 式(2)
Figure 2021067742

Figure 2021067742
上記式(1)〜(4)の意味を、図4を用いて説明する。図4において、縦軸は、インピーダンスの絶対値の対数、横軸は、測定振動電圧の周波数の対数を示す。図4は、式(
1)で表現されるインピーダンスの挙動を示している。まず、上記で説明してきたように、式(1)を満たすインピーダンスは、周波数が大きくなると、ある周波数でその絶対値が低下してくる。そして低下する挙動は、図4のような両対数プロットにおいては、式(4)で示したように、傾きが帯電ローラの電気抵抗値や静電容量などに依存せずに、―1の傾きの直線となる。
絶縁性の導電性部材のインピーダンス特性を測定すると、傾きが−1の直線となることから、導電性部材のインピーダンス測定において、傾きが−1になる状態は、高周波数側で電荷の動きが停滞している特性が現れていると推測される。高周波数側での電荷の動きが停滞すると、放電のための電荷の供給が放電の周波数に追随できなくなる。その結果、放電のできないタイミングが生じ、放電の抜けが生じていると推測される。
一方、インピーダンスの傾きが、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの高周波数領域において、−0.8以上、−0.3以下である帯電ローラ2は、高周波数側で電荷の供給が停滞し難い。その結果、インピーダンスが一定値をとる低周波数域から高周波数域までの周波数の放電、特に電荷の停滞が生じやすい高周波数側の放電に対して、電荷の供給を可能にする。電荷の供給が潤沢に実現できるために、放電の抜けを抑制し、放電の総量を向上させることができる。当該高周波数領域の範囲は、帯電ローラ2から発生する放電の周波数のうちで、最も周波数が大きい領域の放電であるため、放電の抜けが発生しやすい領域であると考えられる。このような周波数領域において傾きが−1よりも大きい上記の範囲の値を示すことで、当該周波数領域より低い高周波数領域においても−1よりも大きい傾きを得て、放電抜けの発生を抑制し、放電の総量を向上させることができる。
帯電ローラ2と感光ドラム1を組合せた場合を用いて、具体的に放電の周波数を予測すると、次のような範囲となると発明者らは考えている。
感光ドラム1への放電が行われる放電領域は、感光ドラム1や帯電ローラ2の直径等に依る。感光ドラム1の周面の円周方向の幅(感光ドラム1の回転方向に感光ドラム1の周面に沿って測った幅)として、一般的に0.5mm〜1mm程度である。電子写真装置のプロセススピードが最大で100〜500mm/sec(感光体の表面速度)とすると、感光ドラムの表面が放電領域を通過する時間は、10−3sec〜10−2sec以上である。また、放電を詳細に観察すると、単発の放電による放電領域の長さ(感光体周面の領域)は0.01mm〜0.1mmであるため、帯電ローラの表面の同一点が放電領域を通過する間に、そのため、帯電ローラ2の同一点が放電領域を通過する間に、少なくとも数十回程度の放電が発生していることが推測される。従って、帯電ローラが発生させる放電の周波数は、数Hz〜1.0×10Hzの範囲であることが推測される。より高速プロセスになるにしたがって、放電の周波数をより高くして放電の回数を増大させる必要があるため、上記範囲の中でも特に、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの如き高周波数領域における放電および導電機構の制御が重要である。
以上のように、放電の回数を増大させるためには、高周波数領域におけるインピーダンスの傾きを−1から逸脱させることが有効である。これにより、放電とその次の放電のための電荷の供給を迅速に行う特性を良く達成させ得る。インピーダンスの傾きが−1から逸脱することは、帯電ローラ2内の電荷の供給が停滞していないことを意味するため、かかる帯電ローラは、放電の抜けを抑制する方向の特性を得られる。
ここまでは、インピーダンスの傾きの範囲を規定することについて述べたが、インピーダンスの大きさもある程度の範囲に収めることが必要である。ある程度の範囲とは、インピーダンスが大きすぎると、電荷が供給されなくなり放電自体が発生しなくなってしまうため、放電が行われる程度のインピーダンスが必要である。そのために低周波側(1.0×10−2Hz〜1.0×10Hz)でのインピーダンスを1.0×10Ω〜1.0×10Ωの範囲内にしておく。低周波領域でのインピーダンスを上記範囲内にしておく
と、それ以上の周波数帯におけるインピーダンスは小さくなり放電が発生するために、問題ない範囲になる。
図13に、インピーダンスの測定結果の一例を示す。実線は本実施例の帯電ローラ2のインピーダンスの測定結果を示し、破線は従来の帯電ローラのインピーダンスの測定結果を示している。この両対数プロットで得られたグラフの、1.0×10〜1.0×10Hzの周波数領域におけるインピーダンスの絶対値の傾きが従来の帯電ローラでは−1なのに対し、本発明の帯電ローラ2では−0.5程度になっていることが読み取れる。
<インピーダンスの測定方法>
インピーダンスの測定に際し、帯電ローラ2と測定電極との間の接触抵抗の影響を排除するために、低抵抗な薄膜を帯電ローラ2の表面に堆積させ、当該薄膜を電極として使用し、一方で導電性の支持体52を接地電極として2端子でインピーダンスを測定する。
当該薄膜の形成方法としては、金属蒸着、スパッタリング、金属ペーストの塗布、金属テープを貼付するなどの金属膜の形成方法を挙げることができる。これらの中でも、導電性部材との接触抵抗の低減という観点で、白金やパラジウムのような金属薄膜を蒸着によって電極として形成する方法が好ましい。
帯電ローラ2の表面に金属薄膜を形成する場合、その簡便さおよび薄膜の均一性を考慮すると、真空蒸着装置に対して帯電ローラを把持できる機構を付与し、断面が円柱状の帯電ローラ2に対しては、さらに回転機構を付与した、真空蒸着装置を使用することが好ましい。断面が円形状などの曲面で構成される、例えば円柱状の帯電ローラ2に対しては、上記の測定電極としての金属薄膜と、インピーダンスの測定装置との接続が困難になるため、次のような方法を用いることが好ましい。具体的には、帯電ローラ2の長手方向に、10mm〜20mm程度の幅の金属薄膜電極を形成したのち、金属シートを隙間なく巻き付け、当該金属シートと、測定装置から出ている測定電極と接続して測定すればよい。これにより、帯電ローラ2の導電層からの電気信号を好適に測定装置に取得でき、インピーダンス測定を実施することができる。金属シートとしては、インピーダンスを測定するに際して、測定装置の接続ケーブルの金属部と同等の電気抵抗値である金属シートであればよく、例えば、アルミホイルや金属テープ等を用いることができる。
インピーダンスの測定装置は、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ、スペクトルアナライザ等、1.0×10Hzまでの周波数領域におけるインピーダンスを測定できる装置であればよい。これらの中でも帯電ローラの電気抵抗域から、インピーダンスアナライザによって測定することが好ましい。
インピーダンスの測定条件に関して述べる。インピーダンス測定装置を使用し、1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの周波数領域におけるインピーダンスを測定する。測定は、温度23℃湿度50%RHの環境下で行なう。測定ばらつきを低減するために、周波数1桁あたり5点以上の測定点を設けることが好ましい。また、交流電圧の振幅は1Vである。
測定電圧に関しては、電子写真画像形成装置内の帯電ローラ2に印加される分担電圧を考慮して直流電圧を印加しながら測定してもよい。具体的には、10V以下の直流電圧を振動電圧と重畳印加しながらの測定によって電荷の輸送と蓄積の特性を定量化するために好適である。
<インピーダンスの傾きの算出方法>
上記の条件で測定した測定結果に対し、表計算ソフト(例えば、「ウインドウズエクセル」(商品名、マイクロソフト社製)を使用して、インピーダンスの絶対値を、測定周波数
に対して両対数グラフでプロットする。この両対数プロットで得られたグラフの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数領域におけるインピーダンスの絶対値の傾きを、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数領域の測定点を利用して求めればよい。具体的には、当該周波数範囲のグラフのプロットに対し、一次関数の近似直線を最小二乗法で算出し、その傾きを算出すればよい。
次いで、当該両対数グラフ内の1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの周波数領域での測定点の算術平均値を算出し、得られた値を低周波数側のインピーンダンスとすればよい。円柱状の帯電ローラ2におけるインピーダンスの傾きの測定では、軸方向としての長手方向を5等分した際のそれぞれの領域内の任意の場所で測定を5か所行い、5か所の傾きの測定値の算術平均を算出すればよい。
図5を参照して、本実施態様に係る帯電ローラ2について、ローラ形状を有する帯電ローラ2を例に、説明する。図5は、帯電ローラ2の軸方向である長手方向に対して垂直な模式的断面図である。帯電ローラ2は、円柱状の導電性の支持体52、支持体52の外周、すなわち外表面に形成された導電層53を有している。
また、本実施形態における測定は、前処理として、帯電ローラ2に対し、回転しながら真空白金蒸着をすることよって、測定電極を作成した。このとき、マスキングテープを使用して、長手方向の幅1.5cmの帯状で、周方向に均一な電極を作成した。当該電極を形成することによって、帯電ローラの表面粗さによって、測定電極と帯電ローラの接触抵抗の影響を極力排除することができる。次に、当該電極に、アルミシートを隙間なく巻きつけ、帯電ローラ側の測定電極を形成した。
図6に帯電ローラに測定電極を形成した状態の概要図を示す。図6の中で、52が導電性の支持体、53が後述するマトリックスドメイン構造を有する導電層、60が測定電極である白金蒸着層、61がアルミシートである。
図7に帯電ローラに測定電極を形成した状態の模式的断面図を示す。図7のように、導電性の支持体52と、測定電極である白金蒸着層60と、によって、マトリックスドメイン構造を有する導電層53を挟む状態にすることが重要である。
そして、当該アルミシート61を、インピーダンス測定装置70(ソーラトロン1260、およびソーラトロン1296 ソーラトロン社製)側の測定電極に接続した。
図8に、本測定系の概要図を示す。導電性の支持体52と、アルミシート61を測定のための2つの電極にすることで、インピーダンス測定を行なった。
インピーダンスの測定に際し、後述する帯電ローラ2を温度23℃、湿度50%RH環境に48時間放置し、導電性部材内の水分量を飽和させた。
インピーダンスの測定は、温度23℃、湿度50%RH環境において、振幅が1Vppの交流電圧、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzで測定(周波数が1桁変化する際に、5点ずつ測定)し、インピーダンスの絶対値を得た。次いで、測定結果をエクセル(登録商標)などの表計算ソフトを用いて、当該インピーダンスの絶対値と、周波数を両対数プロットした。両対数プロットにより得られたグラフから、(a)1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおける傾き、および(b)1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスの絶対値のそれぞれの算術平均値を算出した。測定位置に関して、後述する帯電ローラ2(長手方向の長さ:230mm)の導電層を長手方向に5個の領域に5等分し、それぞれの領域内から任意に1点ずつ、合計5点に測定電極を形成し、上記測定及び算術平均値の算出を行った。
<マトリックスドメイン構成の形成方法>
本実施形態の帯電ローラ2の一様態としては、マトリックスドメイン構造(海島構造)を有する導電層を有する帯電ローラ2が例示される。マトリックスドメイン構造とは、マトリックス54(海相を形成する)および、マトリックス54中に分散、散在した複数個
のドメイン55(島相を形成する)を有する構造とする。
本発明の効果を発現するために重要な役割を果たすマトリックスドメイン構造を形成するための具体的達成手段について説明する。
本実施形態に係る導電相としてのドメイン55と絶縁相としてのマトリックス54の構成は、本発明の効果を阻害しない範囲で、導電の材料と、絶縁の材料を、相分離または分散させる手法によって得ることができる。その中でも、帯電ローラのような放電を用いる電子写真に用いられる導電性部材として、他の部材に当接させてその機能を安定的に発現させるために、絶縁の特性を持つ第一のゴムを含むマトリックス54と、導電性の特性をもつ第二のゴム55の相分離によって、マトリックスドメイン型の相分離構造を有することが必須である。
ここで、本明細書において「導電相」と「導電層」は、それぞれ別のものを示す。導電“相”とは、相分離したマトリックスドメイン構造のドメインを形成する“相”を示し、一方、導電“層”とはドメイン55とマトリックス54を含めたマトリックスドメイン構造を有する材料でできた“層”(例えば帯電ローラの支持体外周の導電層)を示す。
このようなマトリックスドメイン型の相分離構造を形成する方法としては、非相溶の二種類のゴム材料を混練させることで、相分離構造を形成できる。
相溶/非相溶を表現するパラメータとして、SP値がある。SP値は、分子の凝集エネルギー密度の平方根であり、分子同士の凝集する力(分子間力)の大小を表す。従って、二者間のSP値差を適正化することで、混和(相溶)状態を制御し、相分離構造の制御を可能とする。ゴムのSP値は、材料の選択や極性基を含むセグメントの共重合比の選択などで、調整することで制御できる。
本実施形態においては、マトリックスドメイン構造を形成するために、2種類のゴム材料のSP値差が、5.0以下の材料であることが好ましい。SP値を2.0以下にすることがより好ましく、より小さいサイズのドメイン55を有するマトリックスドメイン構造を形成することができる。
本発明者らは、単発の放電の電荷量を増大させるために、導電性部材の導電層53を移動する電荷の経路を限定して、体積分率の少ないドメイン55にのみ、電荷を輸送させることによって、上記のインピーダンスの特性を実現できることを見出した。
周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスを制御するためには、次のような制御が必要である。
まず、マトリックス54ではなく、ドメイン55にのみ、電荷を輸送させ、さらに、ドメイン55間の電界集中を抑制して、マトリックス54に局所的に電荷が流れようとすることを抑制するために、マトリックス54の体積抵抗率、ドメイン55の体積抵抗率、ドメイン55間の距離、ドメイン55の配置の均一性、およびドメイン55の形状の制御さらに、ドメイン55の体積抵抗率の均一性、電子導電剤の量の均一性、ドメイン55のサイズ、ドメイン55のサイズの均一性、ドメイン55の体積分率などを制御することが、ドメイン55に電荷の輸送を限定させるための制御因子である。
<導電層>
本発明の実施例における帯電ローラ2(帯電部材)としては、例えば、導電層53が、以下の構成要素(i)〜構成要素(iii)を満たすことが好ましい。ここまで、本発明の導電性部材に関しては帯電ローラ2を一例として説明しているが、前にも述べたように、導電性部材は帯電ローラ2に限られない。すなわち、感光ドラム4の表面との間で放電を発生させることができる部材に対して、本発明は好適に適用することができる。例えば、帯電ローラ2とは別の導電性ローラを設け、その構成を本実施例の帯電ローラ2と同様に構成してもよい。あるいは、転写ローラ11に本発明を適用し、感光ドラム4との間で
放電量のムラの少ない放電を発生させるように構成してもよい。転写ローラ11として本発明を適用する場合、感光ドラム4表面で放電量のムラの少ない放電(放電量の均一化)を、画像形成中に転写と同時に行うようにしても良い。また、上記放電量のムラの少ない放電(放電量の均一化)を、転写ローラ11と帯電ローラ2の両方を用いて行っても、どちらか一方を用いて行っても良い。
構成要素(i):該マトリックスの体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cmより大きく1.0×1017Ω・cm以下であること。
構成要素(ii):該ドメインの体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下であること。
構成要素(iii):該ドメインの隣接壁面間距離が、0.2μm以上、2.0μm以下の範囲内であること。
図9に、帯電ローラ2の長手方向に対して垂直な方向の導電層53の部分断面図を示す。導電層53は、マトリックス54とドメイン55とを有するマトリックスドメイン構造を有する。そして、ドメイン55は、電子導電剤としての導電性粒子56を含む。
構成要素(i)〜(iii)を満たす導電層53を備えた帯電ローラ2は、感光ドラム4との間にバイアスを印加したときに各々のドメイン55に十分な電荷を蓄積でき、また、ドメイン55間での同時的な電荷の授受を抑制できる。これにより一回の放電で、導電層53内に蓄積された電荷の大半が放出されることを防ぐことができる。その結果、導電層53内には、次の放電のための電荷が未だ蓄積されている状態とすることができるため、短いサイクルで安定して放電を生じさせることが可能となる。本開示に係る帯電ローラ2によって達成されるこのような放電状態を、以降、「微細放電」とも呼ぶ。
微細放電を発生可能な本実施形態の帯電ローラ2の場合、放電により感光ドラム4を一様に帯電することで得られる暗部電位(VD)は、従来の帯電ローラと同等である。しかしながら、上述の通り、一回一回の放電量を小さく、かつ、多量にすることでVDを形成させるため、VDのミクロな均一性が従来の帯電ローラと比較し、飛躍的に向上する。放電によって生成する放電生成物の発生量は、放電量と相関する。本実施形態に係る帯電ローラ2を用いた場合、感光ドラム4表面に付着する放電生成物量のムラが抑制され、放電生成物が過度に付着することを防止し得るため、放電生成物をクリーニングブレード6により容易に除去できることが、発明者らの検討によりわかった。
以下、上記(i)〜(iii)の構成要素について説明する。
<構成要素(i)>
・マトリックスの体積抵抗率;
マトリックス54の体積抵抗率を、1.0×1012Ω・cmよりも大きくすることで、電荷が、ドメイン55を迂回してマトリックス54中を移動することを抑制できる。また、一回の放電で蓄積された電荷の大半が消費されることを抑制できる。また、ドメイン55に蓄積された電荷が、マトリックス54に漏洩することによって、あたかも導電層53内を連通する導電経路が形成されているかの如き状態となることを防止できる。
また、マトリックス54の体積抵抗率の上限としては、特に限定されないが、目安としては、1.0×1017Ω・cm以下であることが好ましい。上述した微細放電の様態を達成するために、導電層53中を、ドメイン55を介して電荷を移動させるためには、電荷が十分に蓄積された領域(ドメイン55)が、電気的に絶縁性の領域(マトリックス54)で分断されている構成が有効であると本発明者らは考えている。そして、マトリックス54の体積抵抗率を上記したような高抵抗領域の範囲とすることで、各ドメイン55との界面において十分な電荷を留めることができ、また、ドメイン55からの電荷漏洩を抑制できる。
また、放電が微細でかつ必要十分な放電量を達成するためには、すなわち、上記低周波側でのインピーダンスの傾きが−1ではなくなる条件を満たす導電層53とするためには
、電荷の移動経路が、ドメイン55を介在した経路に限定することが極めて有効である。ドメイン55からのマトリックス54への電荷の漏洩を抑制し、電荷の輸送経路を複数のドメイン55を介した経路に限定することにより、ドメイン55に存在する電荷の密度を向上させることができるため、各ドメイン55における電荷の充填量をより増大させることができる。これにより、放電の起点である導電相としてのドメイン55の表面において、放電に関与できる電荷の総数を向上させることができ、結果、帯電ローラ2の表面からの放電の出やすさを向上させることができると考えられる。
また、導電層の外表面から発生する放電は、上記のような導電相としてのドメインから電界によって電荷が引き出される現象と同時に、空気が電界によって電離して発生するプラスイオンが、マイナスの電荷が存在する導電層の表面に衝突して、導電層の表面から電荷を放出するγ効果も含む。帯電部材の表面(導電層の表面)にある導電相としてのドメインには、上記で説明したように、高密度で電荷を存在させることができる。したがって、プラスイオンが電界によって導電層の表面に衝突した際の、放電電荷の発生効率も向上でき、従来の帯電部材と比較して、より多くの放電電荷を発生しやすい状態にすることができていると推測している。
・マトリックスの体積抵抗率の測定方法;
マトリックス54の体積抵抗率は、導電層53を薄片化し、微小探針によって計測することができる。薄片化する手段としては、例えば、鋭利なカミソリや、ミクロトーム、収束イオンビーム法(FIB)などがあげられる。
薄片の作製に関しては、ドメイン55の影響を排除し、マトリックス54のみの体積抵抗率を計測する必要があるため、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などであらかじめ計測したドメイン55間距離よりも小さい膜厚の薄片を作成する必要がある。したがって、薄片化の手段としては、ミクロトームのような非常に薄いサンプルを作成できる手段が好ましい。
体積抵抗率の測定は、まず、当該薄片の片面を接地した後に、薄片中のマトリックス54とドメイン55の場所を特定する。これらの場所の特定は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、原子間力顕微鏡(AFM)、などで、マトリックス54とドメイン55の体積抵抗率あるいは硬度の分布を計測できる手段によって行うことができる。次いで、当該マトリックス54に探針を接触させ、50VのDC電圧を5秒間印加しての接地電流値の5秒間の算術平均値を測定し、電圧で除することで電気抵抗値を算出する。そして、薄片の膜厚を用いて、体積抵抗率に変換すればよい。このとき、薄片のSPMやAFMのような形状測定も可能な手段であれば、当該薄片の膜厚が計測でき、体積抵抗率が測定可能であるため、好適である。
円柱状の帯電ローラ2の導電層53におけるマトリックス54の体積抵抗率の測定は、導電層53を周方向に4分割、長手方向に5分割した領域のそれぞれから各1つずつ薄片サンプルを切り出し、上記の測定値を得た後に、合計20サンプルの体積抵抗率の算術平均値を算出することによって行なうことができる。図11(a)は、5分割した領域の1つにおいて薄片サンプルを切り出した様子を示している。
<構成要素(ii)>
・ドメインの体積抵抗率;
個々のドメイン55の体積抵抗率は、該マトリックス54の体積抵抗率よりも小さい。これにより、マトリックス54で目的としない電荷の移動を抑制しつつ、電荷の輸送経路を複数のドメイン55を介する経路に限定しやすくなるため好ましい。
また、該ドメイン55の体積抵抗率は、該マトリックス54の体積抵抗率よりも5桁以上大きいことが好ましい。
より具体的には、ドメイン55の体積抵抗率は1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下にすることが好ましい。ドメイン55の体積抵抗率をより低い状態にするこ
とで、マトリックス54で目的としない電荷の移動を抑制しつつ、電荷の輸送経路を、より効果的に複数のドメイン55を介する経路に限定することができる。
更に、ドメイン55の体積抵抗率は、1.0×10Ωcm以下であることがより好ましい。ドメイン55の体積抵抗率を当該範囲まで下げることで、ドメイン55内で移動する電荷の量を飛躍的に向上できる。そのため、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおける導電層のインピーダンスを、1.0×10Ω以下の更に低い範囲に制御することができ、更に効果的に電荷の輸送経路をドメイン55経由に限定することができる。
ドメイン55の体積抵抗率は、ドメイン55のゴム成分に対し、導電剤を使用することによって、その導電性を所定の値にすることで調整する。
ドメイン55用のゴム材料としては、マトリックス54用としてのゴム成分を含むゴム組成物を用いることができるが、マトリックスドメイン構造を形成するためにマトリックス54を形成するゴム材料との溶解度パラメータ(SP値)の差が、0.4(J/cm0.5以上、5.0(J/cm0.5以下、特には、0.4(J/cm0.5以上2.2(J/cm0.5以下にすることがより好ましい。
ドメイン55の体積抵抗率は、電子導電剤の種類、およびその添加量を適宜選択することによって調整することができる。ドメイン55の体積抵抗率を1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下に制御するために使用する導電剤としては、分散する量によって高抵抗から低抵抗まで体積抵抗率を大きく変化させることができる電子導電剤が好ましい。
ドメイン55に配合される電子導電剤については、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属;酸化物または金属が表面に被覆され導電化された粒子等を例として挙げられる。また、必要に応じて、これらの導電剤の2種類以上を適宜量配合して使用しても良い。
以上の様な電子導電剤のうち、ゴムとの親和性が大きく、電子導電剤間の距離の制御が容易な、導電性のカーボンブラックを使用することが好ましい。ドメイン55に配合されるカーボンブラックの種類については、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
中でも、高い導電性をドメイン55に付与し得る、DBP吸油量が40cm/100g以上170cm/100g以下である導電性カーボンブラックを好適に用いることができる。
導電性のカーボンブラック等の電子導電剤は、ドメイン55に含まれるゴム成分の100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下でドメイン55に配合されることが好ましい。特に好ましい配合割合は、50質量部以上100質量部以下である。これらの割合での導電剤の配合は、一般的な電子写真用の帯電ローラ2と比較して、導電剤が多量に配合されていることが好ましい。これにより、ドメイン55の体積抵抗率を1.0×10Ωcm以上1.0×10Ω・cm以下の範囲に容易に制御することができる。
また、必要に応じて、ゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、老化防止剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、軟化剤、分散剤、着色剤等を、本発明に係る効果を阻害しない範囲でドメイン用のゴム組成物に添加してもよい。
・ドメインの体積抵抗率の測定方法;
ドメイン55の体積抵抗率の測定は、上記のマトリックス54の体積抵抗率の測定方法に対して、測定箇所をドメイン55に相当する場所に変更し、電流値の測定の際の印加電圧を1Vに変更した以外は同様の方法で実施すればよい。
ここで、ドメイン55の体積抵抗率は、均一であることが好ましい。ドメイン55の体
積抵抗率の均一性を向上させるためには、各ドメイン55内の電子導電剤の量を均一化することが好ましい。これにより、帯電ローラ2の外表面からの、被帯電体への放電をより安定化させることができる。
具体的には、導電層53の厚み方向の断面に現れるドメイン55の各々の断面積に対して、ドメイン55の各々が含む電子導電剤からなる部分、例えば導電性粒子の断面積の合計の、ドメイン55の断面積に対する割合の標準偏差をσr、平均値をμrとしたとき、変動係数σr/μrが、0以上、0.4以下であることが好ましい。
σr/μrが、0以上、0.4以下であるために、各ドメイン55中に含まれる導電剤の数または量のばらつきを低減することができる。かかる指標に基づくドメイン55の体積抵抗率の均一性が付与されることで、導電層53内の電界集中を抑制でき、局所的に電界が印加されるマトリックス54の存在を低減できる。これにより、マトリックス54での導電を極力低減することができる。
より好ましいσr/μrは、0以上0.25以下であり、導電層53内の電界集中を更に効果的に抑制することができ、1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスを1.0×10Ω以下に更に低減することが可能となる。
ドメイン55の体積抵抗率の均一性を向上させるためには、後述するドメイン形成用ゴム混合物(CMB)の調製工程において、第二のゴムに対するカーボンブラックの配合量を多くすることが好ましい。
・ドメインの体積抵抗率の均一性の測定方法;
ドメイン55の体積抵抗率の均一性は、ドメイン55内の電子導電剤の量によって支配されるため、各ドメイン55内の電子導電剤の量のばらつきを測定することで、評価することができる。
まず、前述のマトリックス54の体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。次いで、凍結割断法、クロスポリッシャー法、収束イオンビーム法(FIB)等の手段で破断面を形成する。破断面の平滑性と、観察のための前処理を考慮すると、FIB法が好ましい。また、マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相としてのドメイン55と絶縁相としてのマトリックス54とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った切片を、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察して、マトリックスドメイン構造の存在を確認する。これらの中でも、ドメイン55の面積の定量化の正確性から、SEMで1000倍〜100000倍で観察を行うことが好ましい。
ドメイン55の体積抵抗率の均一性の測定は、マトリックスドメイン構造が現れている破断面の撮影画像を定量化することによって行なうことが好ましい。SEMでの観察により得られた破断面画像に対し、画像処理ソフト(例えば、「ImageProPlus」、Media Cybernetics社製)を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメイン55が白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化を実施する。次いで、当該2値化画像に対し、画像処理ソフト内のカウント機能により、ドメイン55の断面積Sおよび、それぞれのドメイン55内の導電剤からなる部分の断面積Scを算出する。そして、電子導電剤のドメイン55内の面積割合Sc/Sの標準偏差σrおよび平均値μrを算出し、ドメイン55の体積抵抗率の均一性の指標としてσr/μrを算出すればよい。
円柱形状の帯電ローラ2の場合では、導電層53の長手方向の長さをL、導電層53の厚さをTとしたとき、導電層53の長手方向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所において、15μm四方の観
察領域を取得する。当該観察領域を上記の方法によって2値化、定量化することでドメイン55の体積抵抗率の均一性の指標としてのσr/μrを算出し、合計9点の観察領域からの測定値の算術平均をドメインサイズの均一性の指標として定量化すればよい。
<構成要素(iii)>
・ドメイン間の隣接壁面間距離(以降、「ドメイン間距離」ともいう)
ドメイン55間距離は、0.2μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
ドメイン55間での電荷の授受を行わせるうえで、導電層53中のドメイン55間距離は2.0μm以下、特には、1.0μm以下とすることが好ましい。また、ドメイン55同士を絶縁領域(マトリックス54)で電気的に確実に分断し、電荷をドメイン55に蓄積しやすくなるため、ドメイン55間距離を、0.2μm以上、特には、0.3μm以上とすることが好ましい。
・ドメイン間距離の測定方法;
ドメイン55間距離の測定方法は、次のように実施すればよい。
まず、前述のマトリックス54の体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。次いで、凍結割断法、クロスポリッシャー法、収束イオンビーム法(FIB)等の手段で破断面を形成する。破断面の平滑性と、観察のための前処理を考慮すると、FIB法が好ましい。また、マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相と絶縁相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った切片を、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察して、マトリックスドメイン構造の存在を確認する。これらの中でも、ドメインの面積の定量化の正確性から、SEMで1000倍〜100000倍で観察を行うことが好ましい。
ドメイン55間距離の測定は、マトリックスドメイン構造が現れている破断面の撮影画像を定量化することによって行なうことが好ましい。SEMでの観察により得られた破断面画像に対し、画像処理ソフト(例えば、「Luzex」(商品名、ニレコ社製))を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメイン55が白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化を実施する。次いで、画像内のドメインサイズ群の壁面間距離を算出する。このときの壁面間距離は、近接したドメイン55間の最短距離である。
円柱形状の帯電ローラの場合では、導電層53の長手方向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に50μm四方の観察領域を置き、この全9個の観察領域の各々で観察される各ドメイン55間距離を測定すればよい。切片は、電荷の移動方向である支持体52から導電層53外表面を含む面を観察することが必要であることから、図11(a)を用い説明すると、支持体52の中心軸を起点とする法線を含む断面を観察することができる方向で切り出す。
・ドメイン間距離の均一性;
上記構成要素(iii)に関して、ドメイン55間距離の分布は均一であることが、より好ましい。例えば、導電層53内で局所的にドメイン55間距離が長い箇所が一部にできることで、電荷の供給が周囲比べて滞る箇所が生じた場合などに、放電の出やすさが抑制される現象が発生することがある。ドメイン55間の距離の分布が均一であることで、そのような現象の発生を低減することができる。
電荷が輸送される断面、すなわち、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面において、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所における、50μm四方の観察領域を取得した際に、当該観察領域内のドメイン55間距離の算術平均値Dmおよびドメイン55間距離のばらつきσmを用いて変動係数σm/Dmが0以上0.4以下であることが好ましい。
・ドメイン間距離の均一性の測定方法;
ドメイン55間距離の均一性の測定は、先に説明したドメイン55間距離の測定と同様に、破断面の直接観察で得られる画像を定量化することによって行なうことができる。
上記ドメイン55間距離の測定で得られる、破断面の2値化画像に対し、LUZEX(株式会社ニレコ社製)のような画像処理ソフトを用いて、画像内のドメインサイズ群のドメイン間距離の平均値Dmおよび、Dmの標準偏差σmを算出し、ドメイン間距離の均一性の指標としてσm/Dmを算出すればよい。
円柱形状の帯電ローラ2の場合では、導電層53の長手方向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所において、50μm四方の観察領域を取得する。当該観察領域を上記の方法によって2値化、定量化することでドメイン55間距離のσm/Dmを算出し、合計9点の観察領域からの測定値の算術平均をドメイン55間距離の均一性の指標として定量化すればよい。
本実施態様に用いた帯電ローラ2は、例えば、下記工程(i)〜(iv)を含む方法を経て形成することができる。
工程(i):カーボンブラックおよび第二のゴムを含む、ドメイン形成用ゴム混合物(以降、「CMB」とも称する)を調製する工程;
工程(ii):第一のゴムを含むマトリックス形成用ゴム混合物(以降、「MRC」とも称する)を調製する工程;
工程(iii):CMBとMRCとを混練して、マトリックスドメイン構造を有するゴム混合物を調製する工程;
工程(iv):工程(iii)で調製したゴム混合物の層を、導電性支持体52上に直接または他の層を介して形成し、該ゴム組成物の層を硬化させて、本実施態様に係る導電層53を形成する工程。
そして、構成要素(i)〜構成要素(iii)は、例えば、上記各工程に用いる材料の選択、製造条件の調整により制御することができる。以下説明する。
まず、構成要素(i)に関して、マトリックス54の体積抵抗率は、MRCの組成によって定まる。
MRCに用いる第一のゴムとしては、導電性の低い、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴムの如きゴムの少なくとも1種を用いる。また、MRCには、マトリックスの体積抵抗率を上記範囲内にすることができることを前提として、必要に応じて、充填剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、軟化剤、分散剤、着色剤を添加してもよい。一方、MRCには、マトリックスの体積抵抗率を上記範囲内とするために、カーボンブラックの如き電子導電剤は含有させないことが好ましい。
また、構成要素(ii)に関しては、CMB中の電子導電剤の量によって調整し得る。
例えば、電子導電剤として、DBP吸油量が、40cm/100g以上、170cm/100g以下である導電性カーボンブラックを用いる場合を例に挙げると、CMBの全質量を基準として、40質量%以上、200質量%以下の導電性カーボンブラックを含むようにCMBを調製することで構成要素(ii)を達成し得る。
さらに、構成要素(iii)に関しては、下記(a)〜(d)の4つを制御することが有効である。
(a)CMB、及びMRCの各々の界面張力σの差;
(b)CMBの粘度(ηd)、及びMRCの粘度(ηm)の比(ηm/ηd);
(c)工程(iii)における、CMBとMRCとの混練時のせん断速度(γ)、及びせん断時のエネルギー量(EDK);
(d)工程(iii)における、CMBのMRCに対する体積分率。
(a)CMBとMRCとの界面張力差
一般的に二種の非相溶のゴムを混合した場合、相分離する。これは、異種高分子間の相互作用よりも、同一高分子間の相互作用が強いため、同一高分子同士で凝集し、自由エネルギーを低下させ安定化しようとするためである。相分離構造の界面は異種高分子と接触するため、同一分子同士の相互作用で安定化されている内部より、自由エネルギーが高くなる。その結果、界面の自由エネルギーを低減させるために、異種高分子と接触する面積を小さくしようとする界面張力が発生する。この界面張力が小さい場合、エントロピーを増大させるために異種高分子でもより均一に混合しようとする方向に向かう。均一に混合した状態とは溶解であり、溶解度の目安となるSP値(溶解度パラメーター)と界面張力は相関する傾向にある。
つまり、CMBとMRCとの界面張力差は、各々が含むゴムのSP値差と相関すると考えられる。MRC中の第1のゴムと、CMB中の第2のゴムとしては、溶解度パラメータの絶対値の差が、0.4(J/cm0.5以上、5.0(J/cm0.5以下、特には、0.4(J/cm0.5以上2.2(J/cm0.5以下となるようなゴムを選択することが好ましい。この範囲であれば安定した相分離構造を形成でき、また、CMBのドメイン径Dを小さくすることができる。ここで、CMBに用い得る第二のゴムの具体例としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クルルプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)が挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
導電層53の厚みは、目的とする帯電ローラ2の機能及び効果が得られるものであれば特に限定されない。導電層53の厚みは、1.0mm以上4.5mm以下とすることが好ましい。
<SP値の測定方法>
SP値は、SP値が既知の材料を用いて、検量線を作成することで、精度良く算出することが可能である。この既知のSP値は、材料メーカーのカタログ値を用いることもできる。例えば、NBR及びSBRは、分子量に依存せず、アクリロニトリルおよびスチレンの含有比率でSP値がほぼ決定される。従って、マトリックス54およびドメイン55を構成するゴムを、熱分解ガスクロマトグラフィー(Py−GC)及び固体NMR等の分析手法を用いて、アクリロニトリルまたはスチレンの含有比率を解析することで、SP値が既知の材料から得た検量線から、SP値を算出することができる。また、イソプレンゴムは、1,2−ポリイソプレン、1,3−ポリイソプレン、3,4−ポリイソプレン、およびcis−1,4−ポリイソプレン、trans−1,4−ポリイソプレンなどの、異性体構造でSP値が決定される。従って、SBRおよびNBRと同様にPy−GC及び固体
NMR等で異性体含有比率を解析し、SP値が既知の材料から、SP値を算出することができる。
(b)CMBとMRCとの粘度比
CMBとMRCとの粘度比(ηd/ηm)は、1に近い程、ドメイン55の最大フェレ径Dmaxを小さくできる。具体的には、粘度比は1.0以上2.0以下であることが好ましい。CMBとMRCの粘度比は、CMB及びMRCに使用する原料ゴムのムーニー粘度の選択や、充填剤の種類や量の配合によって調整が可能である。また、相分離構造の形成を妨げない程度に、パラフィンオイルなどの可塑剤を添加することでも可能である。また混練時の温度を調整することで、粘度比の調整を行うことができる。なおドメイン形成用ゴム混合物やマトリックス形成用ゴム混合物の粘度は、JIS K6300−1:2013に基づきムーニー粘度ML(1+4)を混練時のゴム温度で測定することで得られる。
(c)MRCとCMBとの混練時のせん断速度、及びせん断時のエネルギー量
MRCとCMBとの混練時のせん断速度は速いほど、また、せん断時のエネルギー量は大きいほど、ドメイン間距離を小さくすることができる。
せん断速度は、混練機のブレードやスクリューといった撹拌部材の内径を大きくし、撹拌部材の端面から混練機内壁までの間隙を小さくすることや、回転数を大きくすることで上げることができる。またせん断時のエネルギーを上げるには、撹拌部材の回転数を上げることや、CMB中の第一のゴムとMRC中の第二のゴムの粘度を上げることで達成できる。
(d)MRCに対するCMBの体積分率
MRCに対するCMBの体積分率は、マトリックス形成用ゴム混合物に対するドメイン形成用ゴム混合物の衝突合体確率と相関する。具体的には、マトリックス形成用ゴム混合物に対するドメイン形成用ゴム混合物の体積分率を低減させると、ドメイン形成用ゴム混合物とマトリックス形成用ゴム混合物の衝突合体確率が低下する。つまり必要な導電性を得られる範囲において、マトリックス54中におけるドメイン55の体積分率を減らすことでドメイン間距離を小さくすることができる。そして、CMBのMRCに対する体積分率は、15%以上、40%以下とすることが好ましい。
また、本実施態様に係る帯電ローラ2は、下記構成要素(iv)および構成要素(v)を満たすことが好ましい。具体的には、先ず、導電層53の長手方向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、導電層53の厚さ方向の断面をとる。そして、各断面の各々について、導電層53の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々においてドメインを観察する。観察されるドメイン55のうちの80個数%以上が、下記構成要素(iv)および構成要素(v)を満たすことが好ましい。
<構成要素(iv)>
ドメイン55の断面積に対する該ドメイン55が含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること。
<構成要素(v)>
ドメイン55の周囲長をA、該ドメイン55の包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
上記構成要素(iv)及び構成要素(v)は、ドメイン55の形状に係る規定ということができる。「ドメインの形状」とは、導電層53の厚さ方向の断面に現れたドメイン55の断面形状として定義される。円柱形状の帯電ローラの場合では、導電層53の長手方
向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置く。ドメイン55形状は、この全9個の観察領域の各々で観察される各ドメイン55の形状で定義される。
ドメイン55の形状はその周面に凹凸がない形状であることが好ましい。形状に関する凹凸構造の数を低減することによって、ドメイン55間の電界の不均一性を低減でき、つまり、電界集中が生じる箇所を少なくして、マトリックス54で必要以上の電荷輸送が起きる現象を低減できる。
本発明者は、1個のドメイン55に含まれる導電性粒子の量が、当該ドメイン55の外形形状に影響を与えているとの知見を得た。すなわち、1個のドメイン55の導電性粒子の充填量が増えるにつれて、該ドメイン55の外形形状がより球体に近くなるとの知見を得た。球体に近いドメイン55の数が多いほど、ドメイン55間での電子の授受の集中点を少なくすることができる。
そして、本発明者らの検討によれば、その理由は明らかでないが、1つのドメイン55の断面の面積を基準として、当該断面において観察される導電性粒子の断面積の総和の割合が20%以上であるドメイン55は、より、球体に近い形状を取り得る。その結果、ドメイン55間での電子の授受の集中を有意に緩和し得る外形形状を取り得るため好ましい。具体的には、ドメイン55の断面積に対する該ドメイン55が含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であることが好ましい。
ドメイン55の周面の凹凸がない形状に関しては、下記式(5)を満たすことが好ましいことを本発明者らは見出した。
1.00≦A/B≦1.10 (5)
(A:ドメイン55の周囲長、B:ドメイン55の包絡周囲長)
式(5)は、ドメイン55の周囲長Aと、ドメイン55の包絡周囲長Bとの比を示している。ここで、包絡周囲長とは、図10に示されるように、観察領域で観察されるドメイン55の凸部を結んだときの周囲長である。
ドメイン55の周囲長と、ドメイン55の包絡周囲長との比は1が最小値であり、1である状態は、ドメイン55が真円或いは楕円等の断面形状に凹部がない形状であることを示す。これらの比が1.1を超えると、ドメイン55に大きな凸凹形状が存在することとなり、すなわち、電界の異方性が発現する。
<ドメインの形状に関する各パラメータの測定方法>
まず、前述のマトリックス54の体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。ただし、下記のように、帯電ローラ2の長手方向に対して垂直な断面によって、切片を作成し、当該切片の破断面におけるドメイン55の形状を評価する必要がある。この理由を下記に述べる。
図11では、帯電ローラ2を、3軸、具体的にはX、Y、Z軸の3次元としてその形状を示した図を示す。図11においてX軸は帯電ローラ2の長手方向(軸方向)と平行な方向、Y軸、Z軸は帯電ローラ2の軸方向と垂直な方向を示す。
図11(a)は、帯電ローラ2の導電層53に対して、XZ平面82と平行な断面82aで導電層53の一部を切り出すイメージ図を示す。XZ平面は、帯電ローラ2の軸を中心として、360°回転することができる。帯電ローラ2が感光ドラム4に対して当接さ
れて回転し、感光ドラム4との隙間を通過する際に放電することを考慮すると、当該XZ平面82と平行な断面82aは、あるタイミングに同時に放電が起きる面を示していることになる。一定量の断面82aに相当する面が通過することによって、感光ドラム4の表面電位が形成される。
したがって、帯電ローラ2内の電界集中と相関する、ドメイン55の形状の評価のためには、断面82aのようなある一瞬において同時に放電が発生する断面の解析ではなく、一定量の断面82aを含むドメイン55形状の評価ができる帯電ローラ2の軸方向と垂直なYZ平面83と平行な断面での評価が必要である。この評価に、導電層53の長手方向の中央での断面83bと、及び該導電層53の両端から中央に向かってL/4の2か所の断面(83a及び83c)の計3か所を選択する。
また、当該断面83a〜83cの観察位置に関しては、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T以上0.9T以下までの厚み領域の任意の3か所で15μm四方の観察領域を置いたときの、合計9か所の観察領域で測定を行えばよい。
破断面の形成は、凍結割断法、クロスポリッシャー法、収束イオンビーム法(FIB)等の手段で破断面を形成することができる。破断面の平滑性と、観察のための前処理を考慮すると、FIB法が好ましい。また、マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相と絶縁相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った切片に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によってマトリックスドメイン構造を観察することができる。これらの中でも、ドメイン55の面積の定量化の正確性から、SEMで1000倍〜100000倍で観察を行うことが好ましい。
ドメイン55の周囲長、包絡周囲長、及びドメイン55個数の測定は、上記で撮影画像を定量化することによって行なうことができる。SEMでの観察により得られた破断面画像に対し、ImageProPlus(Media Cybernetics社製)のような画像処理を使用して、それぞれの観察位置で得られる9枚の画像から、それぞれ15μm四方の解析領域抽出し、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメイン55が白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化して解析用の2値化画像を得ることができる。
<<ドメイン内の導電性粒子の断面積割合μrの測定方法>>
ドメイン55内の導電性粒子の断面積割合の測定は、上記の2値化画像を定量化することによって行なうことができる。2値化画像に対し、画像処理ソフトImageProPlus(Media Cybernetics社製)内のカウント機能により、ドメイン55の断面積Sおよび、それぞれのドメイン55内の導電剤からなる部分の断面積の総和Scを算出する。そして、Sc/Sの算術平均値μr(%)を算出すればよい。
円柱形状の帯電ローラ2の場合では、導電層53の長手方向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所の15μm四方の領域において、上記の測定を行い、合計9点の領域からの測定値の算術平均から算出すればよい。
<<ドメインの周囲長A、包絡周囲長Bの測定方法>>
ドメイン55の周囲長、包絡周囲長、及びドメイン55個数の測定は、上記の2値化画
像を定量することで行うことができる。2値化画像に対し、画像処理ソフトImageProPlus(Media Cybernetics社製)のカウント機能を用いて、画像内のドメインサイズ群のそれぞれのドメイン55の周囲長A、ドメイン55の包絡周囲長B、を算出し、ドメイン55の周囲長比A/Bの算術平均値を算出すればよい。
円柱形状の帯電ローラ2の場合では、導電層の長手方向の中央、及び導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層53の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所の15μm四方の領域において、上記の測定を行い、合計9点の領域からの測定値の算術平均から算出すればよい。
<<ドメインの形状指数の測定方法>>
ドメイン55の形状指数は、μr(%)が20%以上であり、かつ、ドメイン55の周囲長比A/Bが上記式(5)を満たすドメイン55群の、ドメイン55総数に対する個数パーセントを算出すればよい。上記2値化画像に対して、画像処理ソフトImageProPlus(Media Cybernetics社製)のカウント機能を用いて、ドメイン55群の2値化画像内の個数を算出し、さらに、μr≧20および上記式(5)を満たすドメイン55の個数パーセントを求めればよい。
円柱形状の帯電ローラ2の場合では、導電層の長手方向の中央、及び導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所の15μm四方の領域において、上記の測定を行い、合計9点の領域からの測定値の算術平均から算出すればよい。
構成要素(iv)で規定したように、ドメイン55中に導電性粒子を高密度に充填することで、ドメイン55の外形形状を球体に近づけることができると共に、構成要素(v)に規定したように凹凸が小さいものとすることができる。
構成要素(iv)で規定したような、導電性粒子が高密度に充填されたドメイン55を得るために、導電性粒子として、DBP吸油量が40cm/100g以上80cm/100g以下であるカーボンブラックを特に好適に用い得る。DBP吸油量(cm/100g)とは、100gのカーボンブラックが吸着し得るジブチルフタレート(DBP)の体積であり、日本工業規格(JIS) K 6217−4:2017(ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む))に従って測定される。一般に、カーボンブラックは、平均粒径10nm以上50nm以下の一次粒子がアグリゲートした房状の高次構造を有している。この房状の高次構造はストラクチャーと呼ばれ、その程度はDBP吸油量(cm/100g)で定量化される。
一般的に、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、ゴムに対し補強性が高く、ゴムへのカーボンブラックの取り込みが悪くなり、また、混練時のシェアトルクが非常に高くなる。そのため、ドメイン55中に充填量を多くすることが困難である。
一方、DBP吸油量が上記範囲内にある導電性カーボンブラックは、ストラクチャー構造が未発達のため、カーボンブラックの凝集が少なく、ゴムへの分散性が良好である。そのため、ドメイン55中への充填量を多くでき、その結果として、ドメイン55の外形形状を、より球体に近いものを得られやすい。
さらに、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、カーボンブラック同士が凝集し易く、また、凝集体は、大きな凸凹構造を有する塊となりやすい。このような凝集体が
ドメイン55に含まれると、構成要素(v)に係るドメイン55が得られ難い。凝集体の形成はドメイン55の形状にまで影響を与え凹凸構造を形成する場合がある。一方、DBP吸油量が、上記した範囲内にある導電性カーボンブラックは、凝集体を形成し難いため、構成要素(v)に係るドメイン55を作成するうえで有効である。
<ドメインサイズ>
本実施態様に係るドメイン55は、先に挙げた構成要素(iv)および構成要素(v)を満たしているドメイン55の各々に含まれるドメイン55の最大フェレ径(以降、単に「ドメイン径」ともいう)Dmaxの平均Dを0.1μm以上、5.0μm以下とすることが好ましい。
ドメイン径Dmaxの平均値Dを、0.1μm以上とすることで、導電層53において、電荷の移動する経路を効果的に限定することができる。また、ドメイン径Dmaxの平均値Dを5.0μm以下にすることで、ドメイン55の全体積に対する表面積の割合、すなわち、比表面積を指数関数的に大きくすることができ、ドメイン55からの電荷の放出効率を飛躍的に向上させ得る。ドメイン径Dmaxの平均値Dは、上記の理由から、2.0μm以下、更には、1.0μm以下とすることが好ましい。
なお、ドメイン55間での電界集中を軽減する上では、ドメイン55の外形形状をより球体に近づけることが好ましい。そのためには、ドメイン径Dmaxを、前記した範囲内でより小さくすることが好ましい。その方法としては、例えば、工程(iv)において、MRCとCMBとを混練して、MRCとCMBとを相分離させて、MRCのマトリックス54中にCMBのドメイン55を形成されたゴム混合物を調製する工程において、CMBのドメイン径Dmaxを小さくするように制御する方法が挙げられる。CMBのドメイン径Dmaxを小さくすることでCMBの比表面積が増大し、マトリックス54との界面が増加するため、CMBのドメイン55の界面には張力を小さくしようとする張力が作用する。その結果、CMBのドメイン55は、その外形形状が、より球体に近づく。
ここで、非相溶のポリマー2種を溶融混練させたときに形成されるマトリックスドメイン構造におけるドメイン径Dmaxを決定する要素に関して、Taylorの式(式(6))、Wuの経験式(式(7)、(8))、及びTokitaの式(式(9))が知られている。
・Taylorの式
Dmax=[C・σ/ηm・γ]・f(ηm/ηd) (6)
・Wuの経験式
γ・Dmax・ηm/σ=4(ηd/ηm)0.84・ηd/ηm>1 (7)
γ・Dmax・ηm/σ=4(ηd/ηm)−0.84・ηd/ηm<1 (8)
・Tokitaの式
Dmax=12・P・σ・φ/(π・η・γ)・(1+4・P・φ・EDK/(π・η・γ)) (9)
式(6)〜(9)において、Dmaxは、CMBのドメイン55の最大フェレ径、Cは、定数、σは、界面張力、ηmは、マトリックス54の粘度、ηdは、ドメイン55の粘度、γは、せん断速度、ηは、混合系の粘度、Pは、衝突合体確率、φは、ドメイン体積、EDKは、ドメイン切断エネルギーを表す。
上記構成要素(iii)に関連して、ドメイン間距離の均一化を図るためには、上記式(6)〜(9)に従って、ドメインサイズを小さくすることが有効である。さらに、マトリックスドメイン構造が混錬工程において、ドメイン55の原料ゴムが分裂し、徐々にその粒系が小さくなっていく過程において、混錬工程をどこで止めたかによっても支配される。したがって、そのドメイン間距離の均一性は、混錬過程における混錬時間およびその
混錬の強度の指数となる混錬回転数によって制御可能であり、混錬時間が長いほど、混錬回転数が大きいほどドメイン間距離の均一性を向上させることができる。
・ドメインサイズの均一性;
ドメインサイズは均一であるほど、つまり、粒度分布が狭い方が好ましい。導電層53内の電荷が通るドメイン55のサイズの分布を均一とすることで、マトリックスドメイン構造内での電荷の集中を抑制し、帯電ローラ2の全面にわたって放電の出やすさを効果的に増大することができる。電荷が輸送される断面、すなわち、図5に示されるような導電層53の厚さ方向の断面において、導電層53の外表面から支持体52方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所における、50μm四方の観察領域を取得した際に、ドメインサイズの標準偏差σdおよびドメインサイズの平均値Dの比σd/D(変動係数σd/D)が0以上0.4以下であることが好ましい。
ドメインサイズの均一性を向上させるためには、前述のドメイン間距離の均一性を向上させる手法と等しく、式(6)〜(9)に従い、ドメインサイズを小さくすればドメインサイズの均一性も向上する。さらに、マトリックスドメイン構造が混錬工程において、ドメイン55の原料ゴムが分裂し、徐々にその粒系が小さくなっていく過程において、混錬工程をどこで止めたかによっても支配される。したがって、そのドメインサイズの均一性は、混錬過程における混錬時間およびその混錬の強度の指数となる混錬回転数によって制御可能であり、混錬時間が長いほど、混錬回転数が大きいほどドメインサイズの均一性を向上させることができる。
・ドメインサイズの均一性の測定方法;
ドメインの均一性の測定は、先に説明したドメイン間距離の均一性の測定と同様の方法で得られる、破断面の直接観察で得られる画像を定量化することによって行なうことができる。
具体的には、先に説明したドメイン55間距離の測定で得られる、ドメイン55とマトリックス54を有する2値化画像に対し、画像処理ソフトImageProPlus(Media Cybernetics社製)内のカウント機能により、ドメイン55サイズ群の標準偏差σdと平均値Dとの比σd/Dを算出すればよい。
円柱状の帯電ローラ2の場合は、支持体52の中心軸を起点とする法線上の、ドメイン間距離のσd/Dを算出することによって、ドメインサイズの均一性の指標を定量化できる。
円柱形状の帯電ローラ2の場合では、導電層53の長手方向の中央、及び導電層53の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図11(b)に示されるような導電層の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層53の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所において、50μm四方の観察領域を取得する。当該観察領域を上記の方法によって2値化、定量化することでドメイン間距離のσd/Dを算出し、合計9点の観察領域からの測定値の算術平均をドメインサイズの均一性の指標として定量化すればよい。
<マトリックスドメイン構造の確認方法>
導電層53中のマトリックスドメイン構造の存在は、導電層53から薄片を作製して、薄片に形成した破断面の詳細観察により確認することができる。
薄片化する手段としては、例えば、鋭利なカミソリや、ミクロトーム、FIBなどがあげられる。また、マトリックスドメイン構造のより正確な観察を実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相としてのドメイン55と絶縁相としてのマトリックス54とのコントラストが好適に得られる前処理を観察用の薄片に施してもよい。
破断面の形成、及び必要に応じて前処理を行った薄片に対して、レーザ顕微鏡、走査型
電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって破断面を観察してマトリックスドメイン構造の存在を確認することができる。簡易的、かつ正確に海島構造を確認できる手法として、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することが好ましい。
上記のような手法で導電層53の薄片を取得し、当該薄片の表面を1000倍〜10000倍で観察して得られる画像を取得した後、ImageProPlus(Media Cybernetics社製)のような画像処理を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメイン55が白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化をして解析画像を取得する。ドメイン55およびマトリックス54を2値化によって区別する状態に画像処理した当該解析画像によって、マトリックスドメイン構造の有無を判断すればよい。
当該解析画像に、図9のように、複数のドメイン55がマトリックス54中に孤立した状態で存在する構造が含まれている場合に、導電層53中でのマトリックスドメイン構造の存在を確認することができる。ドメイン55の孤立状態は、各ドメイン55が他のドメイン55と連結していない状態で配置され、かつ、マトリックス54は画像内で連通し、ドメイン55がマトリックス54によって分断されている状態であればよい。具体的には、当該解析画像内の50μm四方内を解析領域としたとき、当該解析領域の枠線と接点を持たないドメイン群の総数に対して、上記のように孤立状態で存在するドメイン55の個数が、80個数パーセント以上存在する状態を、海島構造を有する状態とする。
上記のような確認を、導電層53を長手方向に均等に5等分し、周方向に均等に4等分し、それぞれの領域から任意に1点ずつ、合計20点から当該切片を作製して上記測定を行えばよい。
本実施例に用いた帯電ローラ2の製造方法について説明する。
(1.導電層形成用未加硫ゴム混合物の製造)
[1−1.ドメイン形成用未加硫ゴム混合物(CMB)の調製]
表1に示す各材料を、表1に示す配合量で、6リットル加圧ニーダー(商品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いて混合してCMBを得た。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、20分間とした。
(表1)
Figure 2021067742
[1−2.マトリックス形成用ゴム混合物(MRC)の調製]
表2に示す各材料を、表2に示す配合量で、6リットル加圧ニーダー((商品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いて混合してMRCを得た。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
(表2)
Figure 2021067742
[1−3.導電層形成用未加硫ゴム混合物の調製]
上記で得たCMB及びMRCを、表3に示す配合量で、6リットル加圧ニーダー(商品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いて混合した。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
(表3)
Figure 2021067742
次いで、CMB及びMRCの混合物100質量部に対して、表4に示す加硫剤及び加硫促進剤を、表4に示す配合量加え、ロール径12インチ(0.30m)のオープンロールを用いて混合し、導電層成形用ゴム混合物を調製した。混合条件は、前ロール回転数10rpm、後ロール回転数8rpmで、ロール間隙2mmとして合計20回左右の切り返しを行った後、ロール間隙を0.5mmとして10回薄通しを行った。
(表4)
Figure 2021067742
(2.導電性部材(帯電ローラ)の作製)
[2−1.導電性の外表面を有する支持体の用意]
導電性の外表面を有する支持体52として、ステンレス鋼(SUS)の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、外径5mmの丸棒を用意した。
[2−2.導電層の成形]
支持体52の供給機構、及び未加硫ゴムローラの排出機構を有するクロスヘッド押出機の先端に、内径8.5mmのダイスを取付け、押出機とクロスヘッドの温度を80℃に、支持体の搬送速度を60mm/secに調整した。この条件で、押出機から、導電層形成
用ゴム混合物を供給して、クロスヘッド内にて支持体52の外周部を、該導電層形成用ゴム混合物で被覆し、未加硫ゴムローラを得た。
次に、160℃の熱風加硫炉中に前記未加硫ゴムローラを投入し、60分間加熱することで導電層形成用ゴム混合物を加硫し、支持体52の外周部に導電層53が形成されたローラを得た。その後、導電層53の両端部を各10mm切除して、導電層53部の長手方向の長さを232mmとした。
最後に、導電層53の表面を回転砥石で研磨した。これによって、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が7.44mm、中央部直径が7.5mmのクラウン形状である導電性ローラ(帯電ローラすべてに対して共通)を得た。
このように得られた、本実施例で用いる帯電ローラa〜cのマトリックスドメイン構造は、図9に示すような構造をしている。
本実施例の帯電ローラ2は、マトリックスドメイン構造を有する(表5:帯電ローラa、帯電ローラb、帯電ローラc)。
本実施例の帯電ローラ2は、マトリックス54のゴム組成物としてタフデン2100R(SBR)を用い、ドメイン55のゴム組成物として230SL(NBR)を用いた。ドメイン55の体積抵抗率は69.6Ω・cm、平均ドメインサイズ4.4μm、マトリックス54の体積抵抗率5.9×1012Ω・cm、平均ドメイン間距離0.3μm、ドメイン間距離の分布σm/Dmが0.22、ドメイン55形状が円形であった。このマトリックスドメイン構造をもったゴムを上記帯電ローラ2に被覆するように成形させゴムローラを形成した。ゴムローラの抵抗は8.8×10Ωで周波数1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスの傾きは−0.63であった(表5:帯電ローラc)。
また、比較例として用いた帯電ローラは、実施例とは異なり、マトリックスドメイン構造を持たない、導電層が導電性材料からなる単一層のみで構成され、導電性部材として単一の導電パスをもつ構成となっている。ゴム組成物としてNBRを用い、ゴムローラの抵抗は6.22×10Ωで周波数1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスの傾きは−1.00であった(表5、帯電ローラd)。
その他、表1に示すようなインピーダンスの傾きの異なる帯電ローラa〜eとの組み合わせを準備した。
(表5)
Figure 2021067742
表5の中から帯電ローラaを用い、転写後の残留トナーに対し放電による電荷付与を行った結果を図1に示す。比較例として帯電ローラdを用いて測定を行った。残留トナーの電荷分布は、帯電ローラaと、帯電ローラdとをそれぞれ通過させた後のトナーの電荷分布を測定している。
現像装置20により回収される、帯電ローラ2を通過する前の残留トナーは、電荷としては−30μC/gより正極性側に帯電されている(図1点線)。その後、残留トナーは帯電部を通過する際に、帯電ローラ2からの放電により帯電される。もともと、負極性に帯電されていて電荷量がそれなりに大きいトナーに関しては、放電により図1の電荷分布範囲外(−30μC/gより負極性側で絶対値が大)まで帯電される。
しかし、帯電部において放電を受けることが出来なかったトナーの電荷量は変化しない。このことから、残留トナーの現像装置20による回収を考えると、低電荷量(−5μC/gより正極性側)成分が多くなると、現像装置20による静電的な回収性が低下するため、回収不良による画像不良が発生する。
図1において、帯電ローラdでは、低電荷成分が多く残っている。一方、帯電ローラaでは、マトリックスドメイン構造を用い、インピーダンスを調整した結果、放電を細かく継続させることが出来るため、低電荷成分が減少していることが分かる。つまり、放電を細かく継続させる帯電ローラaを用いることで、帯電ローラdでは放電の抜けにより帯電することが出来なかったトナーに対しても、帯電機会を与えて負極性に帯電することが出来る。そのため、残留トナーの現像回収性を向上させることが出来る。同様の実験を、表5の帯電ローラb、c、および帯電ローラeに対しても実施したところ、それぞれ帯電ローラb、cは帯電ローラaと、帯電ローラeは帯電ローラdとほぼ同様の結果が得られた。すなわち、放電を細かく継続させる、つまりインピーダンスの傾きが−1から外れる帯電ローラb、cでは、帯電ローラeよりも帯電機会を与えることが出来る。それによって、残留トナーの現像回収性を向上させることが出来る。一方、帯電ローラeでは低電荷成分が多く残り、現像回収性の向上は見られなかった。
本実施例では、残留トナー帯電部材は帯電部材を兼ねて構成されている。しかしながら、機能を分離させ残留トナー帯電部材と帯電部材とをそれぞれ配置させても問題はない。
すなわち、図15に示すように、帯電部材としての帯電ローラ2とは別に、現像剤帯電部材としての残留トナー帯電部材9を備えた構成としてもよい。残留トナー帯電部材9は、上述した帯電ローラ2と同様の構成を有しており、電源構成についても、図14に示す帯電ローラ2の電圧印加構成と同様に構成してよい。
残留トナー帯電部材9と感光ドラム1を帯電する帯電部材2とをそれぞれ配置させる場合、残留トナー帯電部材9は、感光ドラム1の回転方向に対し前露光ユニット6よりも下流で帯電ローラ2よりも上流に配置されると効果が大きい。その理由は、残留トナー帯電部材9による継続する細かな放電によって残留トナーの帯電を行うため、前露光ユニット6と帯電ローラ2との間に配置することで十分な放電機会を得ることができる。このような構成とすることで、転写残留トナーはまず残留トナー帯電部材9を通過することでネガ化され低電荷トナーが減少する。続く帯電部材2において帯電される際も放電で更にネガ化が行われ、低電荷が更に減少する。
一方、残留トナー帯電部材と帯電部材とを個別に配置する構成において、残留トナー帯電部材として、継続する細かな放電が行われない通常の帯電部材を用いると、放電機会としては残留トナー帯電部材と帯電部材の二度放電機会があるため、帯電ローラと兼用した際よりは、低電荷成分のトナーは減少する。しかし、上記継続する細かな放電を残留トナー帯電部材に用いた際よりは、低電荷のトナー量は多い。
また、前露光ユニット6の具体的な構成としては、特定の構成に限定されない。例えば、前露光ユニット6は本体からLEDの光を感光ドラム1に直接照射させてもよいし、間にライトガイドを配置しライトガイドを通った光を感光ドラム1に照射させてもよい。
また、本実施例ではマトリックスドメイン構造を有する帯電ローラ2を用いることで放電を細かく継続させて、残留トナーへの帯電付与を行った。しかし、インピーダンスの傾きが−1から外れ放電を細かく継続させる残留トナー帯電部材であればマトリックスドメイン構造を有する必要はない。
また、本実施例ではカートリッジが画像形成装置に対し1つ装着できる所謂モノクロの画像形成装置100に対し説明を行ったが、本発明が適用可能な装置構成はかかる構成に限定されない。例えば、カートリッジを複数有し、中間転写体に対しトナーを転写するフルカラーの画像形成装置に対しても、個々のカートリッジにおいて、上記実施例と同様の構成を用いることで現像回収性を向上させることができる。すなわち、被転写体としての中間転写体へのトナー像の転写後に感光体に残留する残留トナーに対して、好適に帯電付与を行うことができる。
1…感光ドラム、2…帯電ローラ、3…レーザ露光ユニット、4…現像装置、5…転写ローラ、7…定着装置、100…画像形成装置、101…制御部

Claims (22)

  1. 回転可能な像担持体と、
    前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
    前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
    前記現像部材により顕像化された現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、を有し、
    前記転写部材によって前記現像剤像を前記被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を前記帯電部材によって正規極性に帯電して、前記現像部材に回収する画像形成装置であって、
    前記帯電部材は、
    振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
    周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記帯電部材は、前記像担持体の表面との間に生じる放電により前記現像剤を帯電させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記帯電部材は、導電性の支持体と、前記支持体の外表面上に設けられた導電層と、を有する導電性部材であり、
    前記導電層は、海相を形成するマトリックス中に島相を形成する複数のドメインが散在した海島構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
  4. 前記海島構造において、前記マトリックスは、絶縁相を形成し、前記ドメインは導電相を形成することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
  5. 前記マトリックスの体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cmより大きく、1.0×1017Ω・cm以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
  6. 前記ドメインの体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  7. 前記複数のドメインのドメイン間距離の算術平均値Dmが、0.2μm以上、2.0μm以下であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記帯電部材は、前記支持体が円柱状の支持体であり、該円柱状の支持体の外周面に前記導電層を有することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記帯電部材は、回転する前記像担持体に追従して回転するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  10. 前記被転写体へ前記現像剤像を転写した後の前記像担持体の表面を、前記帯電部材が帯電する前に、露光する前露光手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  11. 回転可能な像担持体と、
    前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
    前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
    前記現像部材により顕像化された現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、を有し、
    前記転写部材によって前記現像剤像を前記被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を前記帯電部材によって正規極性に帯電して、前記現像部材に回収する画像形成装置であって、
    前記被転写体へ前記現像剤像を転写した後の前記像担持体の表面に残った現像剤を、前記帯電部材が帯電する前に、帯電する現像剤帯電部材をさらに備え、
    前記現像剤帯電部材は、
    振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記現像剤帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
    周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
    ことを特徴とする画像形成装置。
  12. 前記現像剤帯電部材は、前記像担持体の表面との間に生じる放電により前記現像剤を帯電させることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
  13. 前記現像剤帯電部材は、導電性の支持体と、前記支持体の外表面上に設けられた導電層と、を有する導電性部材であり、
    前記導電層は、海相を形成するマトリックス中に島相を形成する複数のドメインが散在した海島構造を有することを特徴とする請求項11または12に記載の画像形成装置。
  14. 前記海島構造において、前記マトリックスは、絶縁相を形成し、前記ドメインは導電相を形成することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
  15. 前記マトリックスの体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cmより大きく、1.0×1017Ω・cm以下であることを特徴とする請求項13または14に記載の画像形成装置。
  16. 前記ドメインの体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  17. 前記複数のドメインのドメイン間距離の算術平均値Dmが、0.2μm以上、2.0μm以下であることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  18. 前記現像剤帯電部材は、前記支持体が円柱状の支持体であり、該円柱状の支持体の外周面に前記導電層を有することを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  19. 前記現像剤帯電部材は、前記像担持体に接触するように設けられるとともに、回転する前記像担持体に追従して回転するように構成されていることを特徴とする請求項11乃至18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  20. 前記被転写体へ前記現像剤像を転写した後の前記像担持体の表面を、前記現像剤帯電部材が帯電する前に、露光する前露光手段をさらに備えることを特徴とする請求項11乃至19のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  21. 画像形成装置の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
    回転可能な像担持体と、
    前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
    前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
    を備え、
    前記装置本体に設けられた転写部材が、前記現像部材により顕像化された現像剤像を前記像担持体から被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を、前記帯電部材によって正規極性に帯電し、前記現像部材に回収するプロセスカートリッジにおいて、
    前記帯電部材は、
    振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
    周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
    ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
  22. 画像形成装置の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
    回転可能な像担持体と、
    前記像担持体の表面と接触して帯電部を形成し、前記帯電部において前記像担持体の表面を帯電する回転可能な帯電部材と、
    前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を供給する現像部材と、
    を備え、
    前記装置本体に設けられた転写部材が、前記現像部材により顕像化された現像剤像を前記像担持体から被転写体に転写した後に前記像担持体の表面に残った現像剤を、前記帯電部材によって正規極性に帯電し、前記現像部材に回収するプロセスカートリッジにおいて、
    前記被転写体へ前記現像剤像を転写した後の前記像担持体の表面を、前記帯電部材が帯電する前に、帯電する現像剤帯電部材をさらに備え、
    前記現像剤帯電部材は、
    振幅が1Vの交流電圧を周波数を変化させながら前記現像剤帯電部材に印加することによって測定したインピーダンス特性を、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸として両対数プロットしたときの、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの周波数における傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、
    周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである
    ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
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