上述の図1〜図16において、様々な要素及び/又は部品を繋ぐ実線がある場合、それらは、例えば、機械的結合、電気的結合、流体的結合、光学的結合、電磁気的結合、その他の結合、及び/又はこれらの組み合わせを表す。本明細書において、「結合されている」とは、直接的又は間接的に関連付けられていることを意味する。例えば、部材Aは、部材Bと直接に関連付けられる場合もあれば、例えば別の部材Cを介して間接的に関連付けられる場合もある。なお、開示されている様々な要素間の関係が、必ずしもすべて示されているとは限らない。したがって、ブロック図に示したもの以外の結合が存在することもあり得る。様々な要素及び/又は部品を示すブロックを繋ぐ破線がある場合、これらは、機能及び目的の面で、実線で表したものに類似する結合を表す場合がある。ただし、破線で示す結合は、選択的に設けられるもの、あるいは、本開示の代替的な実施例に関するものである場合がある。同様に、破線で示す要素及び/又は部品がある場合、これらは、本開示における代替的な実施例を表す場合がある。実線及び/又は破線で示す1つ又は複数の要素をある特定の実施例から省いても、本開示の範囲から逸脱しない。外部要素がある場合は、点線で示している。仮想上(想像上)の要素も、明確にするために図示している場合もある。当業者であればわかるように、図1〜図16に示す構成要素のいくつかを様々な方法で組み合わせることが可能であり、その際に、図1〜図16、その他の図面、及び/又は、付随する開示に記載された他の構成要素を含めることを要件とはしない。また、そのような組み合わせが本開示に明示されている必要はない。同様に、提示の実施例に限定されない追加の特徴を、本明細書で図示及び説明した特徴のいくつか又はすべてと組み合わせることもできる。
上述の図17〜図19において、ブロックは、工程及び/又はその一部を示す場合があり、様々なブロックを繋ぐ線は、それらの工程又はその一部について特定の順序又は従属関係を何ら暗示するものではない。破線で示すブロックは、代替の工程及び/又はその一部を表す。ブロックを繋ぐ破線がある場合、これらは、工程又はその一部の代替的な従属関係を示す。なお、開示の様々な工程間の従属関係が必ずしもすべて示されているとは限らない。本明細書に提示の方法の工程を説明する図17〜図19及び付随の開示は、これらの工程が行われる順序を必ず決定するものと解釈されるべきではない。むしろ、1つの例示的な順序が示されているものの、工程の順序は適宜に変更可能であると理解すべきである。加えて、いくつかの工程は、異なる順序で、あるいは同時に行うこともできる。また、当業者であればわかるように、記載した工程を必ずしもすべて行う必要はない。
以下の説明においては、開示の概念が十分に理解されるように多くの詳細事項を具体的に提示している。ただし、これらの詳細事項の一部又はすべてが欠けていても、本開示は実施可能である。また、開示が不必要に不明瞭になることを避けるべく、周知の装置及び
/又はプロセスについては詳細を省略している場合もある。いくつかの概念は、特定の実施例に関連させて説明しているが、これらの実施例は本開示を限定することを意図するものではない。
本明細書で用いられる場合、「第1」、「第2」等の語句は、特に明記しない限り単に標識として用いられており、これらの用語で言及している要素に対し、順序、位置、又は階層的な要件を課すものではない。また、例えば「第2の」アイテムに言及することによって、例えば「第1の」又はより小さい序数のアイテム、及び/又は「第3の」及び/又はより大きい序数のアイテムの存在を要件としたり排除したりするものではない。
本明細書において、「一実施例」という時は、当該実施例に関連させて述べる1つ又は複数の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施態様に含まれるということを意味する。本明細書の様々な箇所で用いられる「一実施例」という用語は、同じ実施例を指す場合もあるし、そうでない場合もある。
本明細書において、特定の機能を実行するように「構成された(configured to)」シ
ステム、装置、構造、物品(article)、要素、部品又はハードウェアは、一切の変更を
要することなくその特定の機能を実行できるものを指し、その特定の機能を実行するのに何らかの変更を要するものを指すのではない。言い換えれば、特定の機能を実行するように「構成された」システム、装置、構造、物品、要素、部材又はハードウェアは、その特定の機能を実行することを目的として、具体的に、選択、作製、実施、利用、プログラム及び/又は設計されたものを指す。本明細書において、「構成された」ということは、システム、装置、構造、物品、要素、部品又はハードウェアが既に備えている特性に言及するものであり、この特性により、当該システム、装置、構造、物品、要素、部品又はハードウェアは、一切の変更を要することなくその特定の機能を実行することができる。本開示において、特定の機能を実行するように「構成された」として記載されているシステム、装置、構造、物品、要素、部品又はハードウェアは、この記載に加えて、あるいは、この記載に代えて、当該機能を行うように「適合化された(adapted to)」、及び/又は「動作可能な(operative to)」ものと記載される場合もある。
図4〜図16において、x軸、y軸及び/又はz軸を有する座標系が定義されている場合がある。これら座標系は、図4〜図16を相互に、また、翼体(airfoil)100、2
00、300に関連づけて理解する助けとなる。x軸は、翼体100、200、300が受ける空気流の方向と概ね一致している。y軸は、x軸に直交すると共に、各翼体100、200、300の前縁106、206、306に対して概ね平行である。z軸は、x軸及びy軸に直交する。
本開示の技術事項についての例示的且つ非排他的な実施例を、特許請求の範囲に記載したものも、記載していないものも含めて以下に述べる。
概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、翼体100が開示されている。翼体100は、外皮110を含み、この外皮は、外側表面(external surface)112と、外側表面112と反対側の内側表面(internal surface)114と、を有する。外皮110は、導磁性及び導電性を有する。また、翼体100は、外皮110により規定された内部空間108を含む。外皮110の内側表面114が、内部空間108に面している。加えて、翼体100は、外皮110の外側表面112に沿った前縁106を含む。翼体100は、外皮110の外側表面112への着氷を抑制するよう構成された音波・誘導加熱ハイブリッドシステム(hybrid acoustic induction-heating system)102をさらに含む。音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102は、誘導コイル130を内部空間108に含む。誘導コイル130に交流電流134が流れたときに外皮110に渦電流180が発
生するように、誘導コイル130の少なくとも一部分136は、外皮110の内側表面114に十分に近接している。また、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102は、少なくとも1つの磁石140を内部空間108に含む。少なくとも1つの磁石140は、外皮110内に定常磁場(steady-state magnetic field)182を発生させるよう構成され
ている。本段落に記載したこの技術的事項は、本開示の実施例1を特徴付けるものである。
翼体100は、外皮110への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去するよう構成されている。翼体に氷が付着すると、翼体に沿った空気の空力的な流れを乱す虞がある。翼体100を用いれば、翼体100への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができ、よって、翼体100が受ける着氷の影響を排除又は低減することができる。翼体100は、誘導熱と音波振動(acoustic vibrations)との両方を利用して、翼体100へ
の着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去するよう構成されている。誘導熱を利用すると、外皮110の、特に外側表面112及び/又は前縁106の温度を上昇させること、及び/又は、維持することができる。一般的に、外皮110の温度、特に、外側表面112及び/又は前縁106の温度が水の凝固点より高いと、着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。音波振動を利用すると、外側表面112を、特に前縁106を、非静的な状態(振動状態)に保つことができる。静的な状態(非振動状態)の構造体は、非静的な状態(振動状態)の構造体に比べ、氷晶核の形成、水分の付着、及び/又は、水分粒子への熱伝導が生じやすい。誘導加熱と音波振動とを組み合わせれば、いずれか一方の技術を単独で用いるよりも効率的に翼体に対する着氷を抑制、防止、低減及び/又は除氷をできる。
翼体100は、周囲の流体(例えば、空気)に対して相対移動する際に、所望の反力を生じさせる形状の構造体である。着氷に関し、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102が動作しない場合、流体に含まれる水分が翼体100に接触し、氷となって翼体100に付着しやすい。前縁106は、翼体100における最も前側の端部、又は、翼体100が流体を通過する際に、流体と最初に接触する端部である。
翼体100は、誘導コイル130及び少なくとも1つの磁石140を内部空間108に含む。つまり、誘導コイル130及び磁石140は、外側表面112には露出しておらず、翼体100に対する空力的な空気の流れに影響しない。
外皮110は導磁性を有しているので、外皮110内に磁場が集中しやすい。外皮110の導磁性は、水の凝固点付近やそれより低い温度、且つ、翼体100の最低動作温度より高い温度で発揮される。外皮110は、導磁性を有することに加えて、軟磁性材料(着磁及び消磁が容易)及び/又は強磁性材料(外部磁場に対して、正の大きな非線形の磁化率を示す)であってもよい。
強磁性材料は、飽和、当該材料内での最大磁場(B磁場)、及び、キュリー温度を示す。キュリー温度とは、それを超えると強磁性材料の自発磁化(spontaneous magnetism)
を示さなくなる温度である。磁性に関しては、材料は、磁性体であっても、非磁性体であってもよい。磁性材料は、強磁性体である。本明細書においては、強磁性材料は、フェリ磁性材料を含む。磁性材料及び強磁性材料は、永久磁石でなくてもよい。強磁性材料は、鉄を含まなくてもよい。非磁性材料は、常磁性の材料(外部磁場に対して、実質的に線形の正の小さな磁化率を示す)であっても、反磁性の材料(外部磁場に対して、実質的に線形の負の小さな磁化率を示す)であってもよい。
外皮110は導電性を有しているので、外皮110内に渦電流180が形成され、また、外皮110は誘導熱の影響を受ける。誘導熱は、導電性の物体に交流磁場を印加するこ
とによって生じて、その物体を加熱するものである。交流磁場は、その物体上で環流する渦電流180を発生させる。渦電流180は、導電性物体の電気抵抗による抵抗加熱(ジュール加熱とも呼ばれる)を発生させる。渦電流180及びその結果生じる発熱は、通常、物体の浅い表面領域内に留まるが、この表面領域は、周波数に依存する表皮深さパラメータ(skin depth parameter)によって特徴付けられる。表皮深さ(電気表皮深さ(electrical skin depth)及び電磁表皮深さ(electromagnetic skin depth)とも呼ばれる)
は、交流磁場の周波数の逆平方根に比例する。誘導熱の効率は、交流磁場の強度及び周波数、誘導コイル130の形状、誘導コイル130と外皮110の大小関係及び位置関係、並びに、外皮110の材料に関連する。
外皮110の材料は、翼体の外側表面(例えば、翼体100の外側表面112)として適切なものが選択されうる。選択されうる特性としては、高い透磁率(導磁率)、適切な導電性、強度、耐環境性、耐摩耗性、及び、温度変化係数がある。
誘導コイル130は、誘導コイル130に交流電流134が流れたときに交流磁場が発生させるよう構成されている。誘導コイル130は、交流電流134が流れるように構成されたワイヤからなるコイルである。ワイヤは、導電性であり、通常、低抵抗のもの(例えば、銅線又はアルミ線)である。誘導コイル130のワイヤは、概ね、渦巻き状(spiral)又は螺旋状(helical)に巻回されて、当該ワイヤにおける平行ワイヤ部分が複数の
平行なループを形成する。これらのループ及び個々の平行ワイヤ部分は電気的に絶縁されており、当該ワイヤの経路に電流が流れても、ループ間や平行ワイヤ間で短絡は生じない。ワイヤは、中実の導体でもよく、個々の導体の集合体でもよく、及び/又は、電気的に絶縁された導体の集合体でもよい。例えば、高効率の(電流集中が比較的低い)交流電流が流れるようにするには、リッツ線構成(電気的に絶縁されたワイヤを編組して、単一のワイヤとしたもの)を用いることができる。
誘導コイル130の一部分136は、誘導コイル130の平行ワイヤの一部分である。通常、一部分136は、誘導コイルの仮想面の一部分である。誘導コイル130及び誘導コイル130の一部分136の形状は、誘導コイルの外形により決まる。例えば、誘導コイル130は、螺旋状のワイヤで構成されたものでもよい。規則的な螺旋(regular helix)の外形は、円筒形であり、そのような誘導コイル130は、円筒誘導コイル(cylindrical induction coil)とも呼ばれる。円筒誘導コイルにおける一部分136は、円筒誘
導コイルの外形を規定する円筒の一部分に相当する。
誘導コイル130に交流電流134が流れたときに外皮110内に渦電流180が発生するように、誘導コイル130の一部分136は、外皮110の内側表面114に十分に近接している。つまり、誘導コイル130は、外皮110に対して誘導結合されていると言える。誘導コイル130及び誘導コイル130の一部分136が、外皮110及び外皮110の内側表面114に対して十分に近接していないと、有意な渦電流180が外皮110内に発生しない。このような場合、誘導コイル130は、外皮110を誘導加熱するように配置されていないことになる。
磁石140は、外皮110内に定常磁場182(DC磁場とも呼ばれる)を発生させるよう構成されている。磁石140は、磁力源とも呼ばれる。定常磁場182は、通常、外皮110内で(渦電流180などの)電流と作用して、外皮110内に力(ローレンツ力)を発生させる。ローレンツ力は、印加電界がない状態では、荷電粒子(例えば、電子)の速度と磁場(B磁場)とのクロス積に比例する。外皮110内の交流電流(例えば、渦電流180)が、外皮110内の定常磁場182と作用することで発生する力184は、外皮110内で(交流電流の周波数の2倍の)音波振動を発生させる。外皮110内の渦電流180と定常磁場182とが平行な場合、力184は発生しない(又はゼロになる)
。その他の条件がすべて同じであれば、外皮110内の渦電流180と定常磁場182とが直交する場合に、力184は最大になる。
つまり、誘導コイル130を流れる交流電流134を利用することで、外皮110内に渦電流180を発生させて外皮110を直接に誘導加熱することができるので、熱源との熱接触は不要である(例えば、加熱部材は不要である)。また、渦電流180が定常磁場182と作用することにより、力184及び音波振動が外皮110内で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。
本明細書において、音響(acoustic)とは、音波に言及するものであり、可聴(例えば、ソニック)周波数及び/又は不可聴(例えば、超音波、超低周波)周波数を示す場合がある。周波数が高いほど、波長は短い。音響周波数(及び交流電流周波数)は、翼体100への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去の効率に影響しうる。通常、周波数が高い方が、より強力な音波が生成される(即ち、より効率よく音圧が生成される)。
磁石140が翼体100の内部空間108に配置されており、外皮110が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場182)のほとんど又はすべてが翼体100に内包される。外皮110がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えなければ)、磁力線は外皮110より遠くまで延びるが、実際には、外皮110内で方向が変えられる。つまり、磁石140の磁場は、翼体100の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体100外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場(high magnetic field)付近で作業する場合の特別
な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場182は、(例えば、永久磁石142からの)永久磁場、又は、(例えば、電磁石144からの)制御可能な磁場である。定常磁場182が制御可能な場合、これを所望の態様でオン、オフして外皮110に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで、翼体100内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体100内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要をなくすことができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例2を特徴付けるものであり、実施例2は、上述の実施例1の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、外皮110内のある位置で、少なくとも1つの磁石140により形成される定常磁場182は、渦電流180と交差(transverse)する。
渦電流180は、交流電流134が誘導コイル130に流れると発生する。渦電流180は、外皮110内における1つ又は複数のミラー電流(仮想電流)として表すことができる。このミラー電流とは、交流電流134が流れる平行ワイヤの位置と(内側表面114に対して)鏡像の関係にある外皮110内の位置において、交流電流134と逆方向に(同じ周波数で)流れる電流である。渦電流180が定常磁場182と交差すると、渦電流180を構成する移動電荷が力184を受ける。渦電流180に力184が作用すると、外皮110に音波振動が(渦電流180の2倍の周波数、また、交流電流134の2倍の周波数で)生じる。本明細書において、交差するとは、平行でないことを意味する。交差する配向には、直交する配向も含まれる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例3を特徴付けるものであり、実施例3は、上述の実施例1又は2の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図6〜図7を参照すると、誘導コイル130はシート形状である。
シート形状の誘導コイルは、扁平(flat)誘導コイル、パンケーキ誘導コイル及び/又は平面(planar)誘導コイルとも呼ばれる。シート形状の誘導コイルでは、誘導コイルのワイヤは、実質的に2次元(2D)面を構成する螺旋状に巻回されている。この仮想2D面は、平面や平坦でなくてもよい。この仮想2D面は、例えば、翼体100の内部、内部空間108、及び/又は、外皮110の内側表面114などの仮想的な3次元(3D)構造における面であってもよい。シート形状の誘導コイルは、そのシート形状の誘導コイルのコア(螺旋状ワイヤの中心)において、シート部分に直交する磁場を形成する。シート形状の誘導コイルは、その誘導コイルのシート形状を構成するシート部分の反対側において、外皮110に対して高い誘導結合を示す。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例4を特徴付けるものであり、実施例4は、上述の実施例1〜3の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図5及び図8〜図9を参照すると、誘導コイル130は立体的な形状(volumetric form)を有する。
立体的な形状の誘導コイルは、螺旋状ワイヤの中心を内包するコア空間(core volume
)を囲むコイルである。シート形状の誘導コイルには、コア空間を有するものも、有さないものもある(例えば、シート形状の誘導コイルは、円筒状のシェルと合致する形状でもよい)が、螺旋状ワイヤの中心はシート状部分の中に位置する。通常、立体形状のコイルは、実質的に筒状であり、この仮想筒の外側に螺旋状に巻回されている(例えば、ワイヤが巻回された古典的な形状のインダクタである)。立体形状の誘導コイルにより形成される磁場は、螺旋状ワイヤの中心に対して平行であり、且つ、囲まれた空間の長手方向軸に対して概ね平行である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例5を特徴付けるものであり、実施例5は、上述の実施例1〜4の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜9を参照すると、誘導コイル130の少なくとも一部分136は、外皮110の内側表面114から10mm以下の位置にある。
誘導コイル130の一部分136は、外皮110及び外皮110の内側表面114に近接している。誘導コイル130の一部分136は、当該一部分136が外皮110及び外皮110の内側表面114に近いほど、より良好に外皮110と誘導結合し、及び/又は、より強い渦電流180を発生させる。つまり、誘導コイル130の一部分136と外皮110の内側表面114との間の距離は、外皮110における誘導及び音圧(音響エネルギーとも呼ばれる)の印加効率に影響する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例6を特徴付けるものであり、実施例6は、上述の実施例5の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、誘導コイル130の少なくとも一部分136は、外皮110の内側表面114から1mm以下の位置にある。
効率を高めるため、誘導コイル130の一部分136は、外皮110の内側表面114のごく近くに配置される。一般的に、一部分136の厚みは、外皮110の厚みの小さい整数倍まで、及び/又は、交流電流134の周波数において外皮110の材料が示す表皮深さの小さい整数倍まででもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例7を特徴付けるものであり、実施例7は、上述の実施例1〜6の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜9を参照すると、誘導コイル130の少なくとも一部分136は外皮110に対して
平行である。
誘導コイル130の一部分136は、外皮110(即ち、外皮110の内側表面114)と誘導コイル130の一部分136との間の距離が実質的に一定になるように、外皮110に対して平行に配置されてもよい。距離が一定であると、誘導熱に関する結合効率を実質的に均一にすることができ、及び/又は、一部分136に対して平行な外皮110における渦電流180を実質的に均一にすることができる。誘導コイル130の一部分136及び/又は実質的に全体(例えば、誘導コイル130がシート形状である場合)は、外皮110の内側表面114に概ね合致する形状でもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例8を特徴付けるものであり、実施例8は、上述の実施例1〜7の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を参照すると、翼体100は、翼部、浸食シールド(erosion shield)、尾部、水平安定板、垂直安定板、ウィングレット、タービンエンジン空気取入口、エンジンナセル及びタービンブレードからなる群から選択される。
翼体100は、航空機の一部又は空力的な形状の面(aerodynamic surface)を有する
その他の構造体の一部であってもよい。そのような航空機又は構造体は、1つ又は複数の翼体100を有していてもよく、また、翼体100以外の空力面を有していてもよい。航空機やその他の構造体に翼体100を用いると、その航空機又は構造体を着氷の影響から保護することができる。浸食シールドは、空力面の一部分であって、空力面の前縁に衝突する空気流による浸食を防ぐよう構成されている。浸食シールドは、前縁106を例とする前縁の全体あるいは大部分を構成するものでもよい。尾部は、水平安定板及び/又は垂直安定板を含みうる。一般的な構成では、尾部は、単一の垂直安定板と一対の水平安定板を含む。水平安定板は、航空機が地上で駐機している状態では、必ずしも水平でない。垂直安定板も、航空機が地上で駐機している状態では、必ずしも垂直でない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例9を特徴付けるものであり、実施例9は、上述の実施例1〜8の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、誘導コイル130の少なくとも一部分136は、誘導コイル130における他のどの部分よりも前縁106に近接して配置され、且つ、前縁106を加熱するように配置されている。
通常、誘導コイル130は、前縁106と、外側表面112において前縁106に近接する領域と、に対して熱及び音圧を印加するよう構成されている。通常、氷の形成及び/又は蓄積の度合いは、空力構造体の前縁及びその近傍で大きい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例10を特徴付けるものであり、実施例10は、上述の実施例1〜9の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図8〜9を参照すると、誘導コイル130の少なくとも一部分136は、前縁106と交差する配向である。
誘導コイル130の一部分136は、当該一部分136における平行ワイヤが前縁106と交差する配向の場合に、前縁106と交差する配向になる。外皮110における渦電流180の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、誘導コイル130の一部分136が前縁106と交差する配向の場合、この誘導コイル130の一部分136に交流電流134が流れることにより形成される渦電流180は、前縁106と交差する。力184は渦電流180に直交するので、この配向においては、力184は、前縁106に直交する向き(即ち、x方向)又は前縁106に平行な向き(即ち、y方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例11を特徴付けるものであり、実施例11は、上述の実施例1〜9の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜7を参照すると、誘導コイル130の少なくとも一部分136は、前縁106に対して平行である。
誘導コイル130の一部分136が前縁106に対して平行になるのは、一部分136の平行ワイヤが前縁106に対して平行な場合である。外皮110における渦電流180の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、誘導コイル130の一部分136が前縁106に対して平行である場合、誘導コイル130の一部分136に交流電流134が流れることによる渦電流180は、前縁106と平行に形成される。力184は渦電流180に直交するので、この配向においては、力184は、前縁106に直交する向き(例えば、x方向又はz方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例12を特徴付けるものであり、実施例12は、上述の実施例1〜11の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140は、永久磁石142である。
永久磁石142は、電子や電流がなくても磁場を発生させる。よって、永久磁石142を用いれば、翼体100及び/又は音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102の構造及び/又は制御を簡略化することが可能である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例13を特徴付けるものであり、実施例13は、上述の実施例1〜12の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140は電磁石144である。
コイルに定常(直流DC)電流が流れると、電磁石144は定常磁場182を形成する。電流の流れを制御することにより、磁場のオンオフが可能である。これに加えて、あるいは、これに代えて、電流の流れに応じて、磁場の強度及び方向を調整することができる。通常、電磁石144は制御可能であり、制御可能磁石とも呼ばれる。誘導コイル130は、電磁石144のコイルとして機能しうる。誘導コイル130は、定常電流を流すように構成することができるので、誘導コイル130は、定常磁場182を発生させることができる。定常磁場182を生成するための定常電流は、通常、交流電流134の振幅よりもかなり大きい(当該振幅よりもかなり大きい大きさを有する)。よって、定常電流を流すように構成された誘導コイル130は、交流電流134のみを流すように構成された誘導コイル130にくらべて、断面積が大きい(抵抗が低い)ワイヤにより構成されうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例14を特徴付けるものであり、実施例14は、上述の実施例1〜13の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140は複数の磁石である。
複数の磁石は、定常磁場182が適切な位置及び/又は方向に力182を発生させるような位置及び/又は配向に配置することができる。少なくとも1つの磁石140は、1つ又は複数の永久磁石142、及び/又は、1つ又は複数の電磁石144を含みうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例15を特徴付けるものであり、実施例15は、上述の実施例1〜14の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140により形成される定常磁場182は、誘導コイル130の少なくとも一部分136と交差する。
定常磁場182が誘導コイル130の一部分136と交差する場合、定常磁場182は
当該一部分136の平行ワイヤと交差する。定常磁場182は、(すべての磁場と同様に)磁力線のループを形成する。定常磁場182などの磁場の方向を特定する際は、特に明記のない限り、対応する構造体の位置での方向を特定する。例えば、実施例15において、定常磁場182は誘導コイル130の一部分136と交差するが、これは、当該誘導コイル130の一部分136においてである。よって、一部分136の平行ワイヤにおける定常磁場182は、当該一部分136の平行ワイヤと交差する。誘導コイル130の平行ワイヤの方向により、外皮110内の渦電流180の方向が決まる。一部分136と交差する定常磁場182を生成すると、生成される定常磁場182は、通常、渦電流180と交差する。渦電流180と交差する定常磁場182により、力184が生成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例16を特徴付けるものであり、実施例16は、上述の実施例1〜15の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140により形成される定常磁場182は、外皮110の内側表面114において外皮110と交差する。
渦電流180は、外皮110内に発生し、よって、外皮110に対して実質的に平行である。定常磁場182は、外皮110の内側表面114とも交差する場合に、渦電流180と交差する。渦電流180と交差する定常磁場182により、力184が生成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例17を特徴付けるものであり、実施例17は、上述の実施例1〜16の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図6〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140により形成される定常磁場182は、外皮110の内側表面114において前縁106に最も近い部分と交差する。
外皮110の内側表面114において前縁106に最も近い部分は、内側表面114において前縁106に対して真向いの部分、真後ろの部分、及び/又は、直近の下流の部分とも言える。前縁106は、外皮110の外側表面112上にある。外皮110の内側表面114において前縁106に最も近い位置は、内側表面114において前縁106から外皮110の厚み分だけ離間した位置である。点と点、線と線及び/又は面と面との間の距離とは、物体間の幾何学的な距離(geometric distance)、つまり、最短垂直距離(shortest perpendicular distance)のことである。定常磁場182が外皮110に(よっ
て、渦電流180に)対して前縁106近傍で交差することにより、前縁106近傍の外皮110に誘導熱及び音圧を印加することができる。力184は渦電流180と直交するので、この配向においては、力184は、前縁106に平行な向き(即ち、y方向)又は前縁106に直交する向き(即ち、y方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例18を特徴付けるものであり、実施例18は、上述の実施例1〜16の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図5を参照すると、少なくとも1つの磁石140により生成される定常磁場182は、外皮110の内側表面114において前縁106に最も近い部分に対して平行である。
定常磁場182が前縁106に(よって、渦電流180に)対して前縁106近傍で平行なことにより、前縁106近傍の外皮110に誘導熱及び音圧を印加することができる。力184は渦電流180に直交するので、この配向においては、力184は、前縁106に直交する向き(即ち、x方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例19を特徴付けるものであり、実施例19は、上述の実施例1〜18の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、少なくとも1つの磁石140により生成される定常磁場1
82の大きさは、0.1T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場182の強度は、誘導コイル130を流れる交流電流134により生じる渦電流180と定常磁場182とが作用した時に、有意な音圧を外皮110に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場182は、0.1Tよりも大きな強力な磁場であって、翼体100の内部に配置された永久磁石142又は電磁石144によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例20を特徴付けるものであり、実施例20は、上述の実施例1〜19の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4、図6、図8を参照すると、翼体100は、制御システム150をさらに含む。外皮110は、制御領域(controlled region)116を有する。制御領域は、誘導コイ
ル130に交流電流134が流れると、渦電流180が発生する領域である。制御システム150は、誘導コイル130に交流電流134を供給して、外皮110の制御領域116に誘導熱及び音圧を発生させる。
制御システム150を用いると、発生させる誘導熱及び音圧の量及びタイミングを制御して、翼体100の着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例21を特徴付けるものであり、実施例21は、上述の実施例20の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4、図6及び図8を参照すると、制御システム150は、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118の周囲温度または環境温度(ambient temperature)に少なくとも部
分的に基づいて、交流電流134を供給するよう構成されている。
外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118は、概ね空気であり、水分を含む場合もある。流体の周囲温度ある程度低い場合は、流体の水分が氷となって外皮110の外側表面112上に蓄積する可能性があり、例えば、外皮110の外側表面112に水分が接触することにより凍結する可能性がある。よって、周囲温度に基づいて交流電流134の供給を制御すれば、着氷が生じうる周囲状況(ambient conditions)で選択的に誘導熱及び音圧を印加することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例22を特徴付けるものであり、実施例22は、上述の実施例21の技術事項も包含する。概ね図1を参照すると、翼体100は温度センサ160をさら含み、このセンサは、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118の周囲温度を測定するよう構成されている。
温度センサ160は、周囲温度を測定するよう構成されており、制御システム150が温度センサを利用して周囲温度を判定できるように構成されている。例えば、温度センサ160は、周囲温度を示す信号を制御システム150に送出してもよい。温度センサ160は、周囲温度を直接的又は間接的に測定するよう構成することができる。例えば、温度センサ160は、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118と直接に熱接触する構成でもよい。他の例では、温度センサ160は、外側表面112に沿って流れる流体層118と熱接触する部分において、外皮110の外側表面112の温度を測定する構成でもよい。温度センサ160の例としては、熱電対、測温抵抗体(resistance temperature detector)、赤外線センサ、サーミスタが含まれる。これに加えて、あるいは、
これに代えて、1つ又は複数の温度センサ160が、翼体100から離間して配置されて、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118の温度特性、及び/又は、その周囲温度に関連する温度特性を測定するよう構成されていてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例23を特徴付けるものであり、実施例23は、上述の実施例20〜22の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4、図6及び図8を参照すると、制御システム150は、ある高度における翼体100の周囲温度に少なくとも部分的に基づいて、誘導コイル130に交流電流134を供給するよう構成されている。
ある高度における翼体100の周囲温度は、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層の周囲温度の特性、及び/又は、これに関連する特性を示す。よって、翼体100の高度における周囲温度に基づいて交流電流134の供給を制御することにより、着氷が生じうる周囲状況で選択的に誘導熱及び音圧を印加することができる。本明細書では、高度とは、海抜からの高さを指し、これは真高度とも呼ばれる。航空機など、上昇した構造体の直下の地表からの高度は、絶対高度とも呼ばれ、絶対高度を高度(真高度)とは区別している。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例24を特徴付けるものであり、実施例24は、上述の実施例20〜23の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、交流電流134の周波数は、最小で100kHz(キロヘルツ)且つ最大で10MHz(メガヘルツ)である。
交流電流134の周波数は、上述したように、誘導熱が伝わる表皮深さに影響する。周波数が高いほど、表皮深さは浅くなる。表皮深さが外皮110の厚みとほぼ同じであると、誘導熱の効率が向上する。例えば、交流電流180の周波数は、表皮深さが外皮110の厚みの小さい整数約数(例えば、外皮110の厚みの1/2〜1/4)になるように選択してもよい。また、交流電流134の周波数は、渦電流180の周波数であり、渦電流180が定常磁場182と作用して発生させる音圧の周波数の半分である。周波数が高いほど、音響による着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去の効率が高くなる。交流電流134の周波数は、翼体100への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去における誘導熱の効果と音圧の効果を調和させる(バランスをとる)ように選択してもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例25を特徴付けるものであり、実施例25は、上述の実施例24の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、交流電流134の周波数は、最小で1MHzである。
1MHz以上の周波数などのように高い周波数を用いると、音圧の効果が誘導熱の効果よりも高くなりうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例26を特徴付けるものであり、実施例26は、上述の実施例20〜25の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、交流電流134は、定常磁場182の大きさよりも小さい振幅の交流磁場186を形成する。
交流磁場286は、外皮110内で渦電流180を発生させ、その渦電流180の振幅は交流磁場186の振幅に関連する。渦電流180の振幅は、誘導熱の効果に影響し、定常磁場182の大きさは、外皮110に作用して音圧を発生させる力184の振幅に影響する。よって、交流磁場の振幅及び定常磁場182の大きさの相対的な大小は、翼体100への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧のそれぞれが寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例27を特徴付けるものであり、実施
例27は、上述の実施例26の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、定常磁場182の大きさに対する交流磁場186の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体100の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場186の振幅は、定常磁場182の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例28を特徴付けるものであり、実施例28は、上述の実施例20〜27の技術事項のいずれも包含する。概ね図1を参照し、特に、例えば図6及び図8を参照すると、制御システム150は、電源154及びコントローラ152を含む。電源154は、誘導コイル130に交流電流134を供給するよう構成されている。コントローラ152は、外皮110の外側表面112への着氷を生じさせる状況として既知である第1周囲状況と、外側表面112への着氷を抑制する状況として既知である第2周囲状況と、を示す信号を受信するようプログラムされている。第1周囲状況及び第2周囲状況はいずれも、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118の周囲温度を含む。コントローラ152は、第1周囲状況に基づいて、外皮110の制御領域116に誘導熱及び音圧を発生させるべく誘導コイル130に交流電流134を電源154によって供給させるように、プログラムされている。コントローラ152は、第2周囲状況に基づいて、誘導コイル130に交流電流134を電源154によって供給することを停止するようにプログラムされている。
電源154は、交流電流134を誘導コイル130に選択的に供給し、これにより外皮110内に渦電流180、誘導熱及び/又は音圧を選択的に生成するよう構成されている。
コントローラ152は、そのままにすれば外皮110の外側表面112への着氷を生じさせうる周囲状況、あるいは、着氷を抑制しうる周囲状況(例えば、第1周囲状況及び第2周囲状況)に基づいて、電源154のオンオフを行って、誘導熱及び音圧の印加を制御するよう構成されている。コントローラ152は、コンピュータ(例えば、プロセッサ及びメモリを含むもの)及び/又は専用のハードウェアで構成することができる。コントローラ152は、その機能(例えば、信号の受信、電源154から電流を供給させる制御、電源154からの電流供給を停止させる制御)を、ソフトウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアによって実現することができる。コントローラ152は、組み込み型コンピュータ及び/又は組み込み型システムとも呼ばれる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例29を特徴付けるものであり、実施例29は、上述の実施例28の技術事項も包含する。全体としては図1を、特に、例えば図6及び図8を参照すると、コントローラ152は、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118の周囲温度が第1閾値温度を下回った場合に、誘導コイル130に交流電流134を電源154によって供給させるようにもプログラムされている。
コントローラ152は、例えば、翼体100の外側表面112に着氷が生じうることが既知である温度などの第1閾値温度を周囲温度が下回った場合に、電源154によって電流を供給させるよう構成されている。第1閾値温度は、所定の閾値であってもよく、あるいは、他のパラメータ(例えば、翼体100の外側表面112の温度、湿度、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102の動作時間など)の関数であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例30特徴付けるものであり、実施例30は、上述の実施例29の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図6及び図
8を参照すると、第1閾値温度は、水の凝固点より高く5℃より低い温度である。
水の凝固点から5℃までの温度範囲は、翼体100に衝突する水分が液相に留まる状態から氷となって付着する状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第1閾値は、翼体100への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のために誘導熱及び音圧をオンにする必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例31を特徴付けるものであり、実施例31は、上述の実施例29〜30の技術事項のいずれも包含する。全体としては図1を、特に、例えば図6及び図8を参照すると、コントローラ152は、外皮110の外側表面112に沿って流れる流体層118の周囲温度が第2閾値温度を上回った場合に、誘導コイル130に交流電流134を電源154によって供給することを停止するようにもプログラムされている。
コントローラ152は、翼体100の外側表面112への着氷が生じにくいことが既知である温度などの第2閾値温度を周囲温度が上回った場合に、電源154による電流供給を停止させるよう構成されている。第2閾値温度は、所定の閾値であってもよく、あるいは、他のパラメータ(例えば、翼体100の外側表面112の温度、湿度、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102の動作時間など)の関数であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例32を特徴付けるものであり、実施例32は、上述の実施例31の技術事項も包含する。概ね図1を、特に図6及び図8を参照すると、第2閾値温度は第1閾値温度とは異なる。
第2閾値温度は、第1閾値温度と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第2閾値温度と第1閾値温度とが異なる値であると、コントローラは、誘導熱と音圧のオンオフを異なる温度で実行することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例33を特徴付けるものであり、実施例33は、上述の実施例31〜32いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に図6及び図8を参照すると、第2閾値温度は第1閾値温度より高い。
第2閾値温度が第1閾値温度より高いと、誘導熱及び音圧のオンオフに伴う振動を防止できる傾向にある。第2閾値温度が第1閾値温度と同じであると、単一の閾値温度に対して周囲温度が小幅に変化することによって、コントローラ152が電源154に逆の動作を短時間に連続して命令する場合が生じうる。交流電流134を供給して周囲温度を上昇させる場合、電源154による電力供給を行わせることによって周囲温度が上昇しうる。その結果、コントローラ152は、電源154に電力供給を停止させることになりうる。そして、その結果、周囲温度が低下しうる。このような状況では、コントローラ152及び音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102に振動が生じる可能性があり、誘導熱及び音圧の供給が効果的に行われない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例34を特徴付けるものであり、実施例34は、上述の実施例31〜33いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図6及び図8を参照すると、第2閾値温度は、2℃超且つ10℃未満である。
2℃超且つ10℃未満の温度範囲は、翼体100に衝突する水分が、氷となって付着する状態から液相に留まる状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第2閾値は、翼体100への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のための誘導熱及び音圧をオフにする必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例35を特徴付けるものであり、実施例35は、上述の実施例1〜34いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、外皮110はニッケル−鉄合金を含む。
ニッケル−鉄合金は、外皮110に適した合金の一種である。ニッケル−鉄合金は、導電性及び導磁性を有し、誘導熱及び音圧の影響を受ける。ニッケル−鉄合金は、主にニッケルと鉄からなる。ニッケルの濃度は、例えば、約20%から約90%である。鉄の濃度は、例えば、約10%から約80%である。ニッケル−鉄合金の具体例には、いずれも商品名で、ミューメタル合金、パーマロイ合金、HYMU80合金、およびインバー合金が含まれる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例36を特徴付けるものであり、実施例36は、上述の実施例1〜35いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、外皮110の厚みは1mm未満且つ0.001mm超である。
外皮110は全般的に薄いので、外皮110は、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102により生成される誘導熱及び音圧に即座に影響される。外皮110の厚みは、実用的及び/又は所望の交流電流134の周波数、及び/又は、そのような周波数での表皮深さに基づいて選択可能である。外皮110は、翼体100としての状況に晒された場合に構造的な一体性を保つのに十分な厚みを有する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例37を特徴付けるものであり、実施例37は、上述の実施例1〜36いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、外皮110は強磁性を有する。
上述したように、外皮110が強磁性である場合、外皮110内に磁場が集中する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例38を特徴付けるものであり、実施例38は、上述の実施例1〜37いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、外皮110の比透磁率(relative magnetic permeability)は、1,000超且つ10,000,000未満である。
磁性材料の比透磁率は、1(unity)よりもかなり大きく、非磁性材料の比透磁率は、
1に近い。比透磁率が高いほど、その材料が磁化しやすいこと(affinity)及び磁場が集中しやすいこと(concentration)を示す。典型的な磁性材料の比透磁率は約100より
も高く、高透磁率の材料の比透磁率は約1,000より高い。既知のあらゆる材料の比透磁率は、10,000,000未満である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例39を特徴付けるものであり、実施例39は、上述の実施例1〜38いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図4〜図9を参照すると、外皮110のキュリー温度は300℃未満且つ50℃超である。
キュリー温度とは、強磁性材料の転移温度(transition temperature)である。キュリー温度より低温では、材料は高い比透磁率を示すが、キュリー温度より高温では、その材料は、常磁性を示し、比透磁率も低くなる。外皮110が、(特定の温度で示す強磁性あるいは導磁性とは逆の)常磁性に変化すると、誘導熱の効率及び/又は音圧の生成が著しく小さくなる。よって、外皮110のキュリー温度が十分に低ければ、(例えば、音波・
誘導加熱ハイブリッドシステム102の誤動作や翼体100が過度な太陽加熱に晒されるなどにより)外皮110が熱くなりすぎた場合に、誘導加熱及び/又は音圧の大部分を自動的に停止するように音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102を構成することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例40を特徴付けるものであり、実施例40は、上述の実施例1〜39いずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図5を参照すると、翼体100は、内部空間108に電気的絶縁体120をさらに含む。電気的絶縁体120は、外皮110に結合されている。
翼体100に含まれる導電性及び/又は導磁性の材料は、外皮110と同様に、加熱及び/又は音圧を受ける。よって、翼体100内の設けられる枠(form)、支持体、その他の構造体は、電気的に絶縁性のものとするか、誘導コイル130及び/又は磁石140から十分離間した位置に配置するか、その両方とする。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例41を特徴付けるものであり、実施例41は、上述の実施例40の技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図5を参照すると、電気的絶縁体120は外皮110を支持する。
翼体100は、外皮110及び/又は誘導コイル130を支持、及び/又は、翼体100の空力形状を保つための電気的絶縁体120などの内部支持体を含んで構成することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例42を特徴付けるものであり、実施例42は、上述の実施例40〜41のいずれの技術事項も包含する。概ね図1を、特に、例えば図5を参照すると、電気的絶縁体120は、少なくとも1つの磁石140を支持する。
磁石140は、電気的絶縁体120などの内部支持体によって支持され、これにより磁石140は、外皮110及び/又は誘導コイル130に対して固定の位置に保持される。
概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、翼体200が開示されている。翼体200は、外皮210を含み、この外皮は、外側表面212と、外側表面212と反対側の内側表面214と、を有する。外皮210は、導磁性及び導電性であり、制御領域216を含む。また、翼体200は、外皮210により規定された内部空間208を含む。外皮210の内側表面214が、内部空間208に面している。加えて、翼体200は、外皮210の外側表面212に沿った前縁206を含む。翼体200は、外皮210の外側表面212への着氷を抑制するよう構成された音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202をさらに含む。音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202は、誘導コイル230を内部空間208に含む。誘導コイル230に交流電流234が流れたときに外皮210の制御領域216に渦電流280が発生するように、誘導コイル230の少なくとも一部分236は、外皮210の内側表面214に十分に近接している。また、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202は、制御システム250を含み、この制御システムは、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の周囲温度に少なくとも部分的に基づいて、誘導コイル230に交流電流234を供給し、これにより外皮210の制御領域216に誘導熱及び音圧を発生させるよう構成されている。本段落に記載したこの技術的事項は、本開示の実施例43を特徴付けるものである。
翼体200は、外皮210への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去するよう構成されている。翼体に氷が付着すると、翼体に沿った空気の空力的な流れを乱す虞がある。翼
体200を用いれば、翼体200への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができ、よって、翼体200が受ける着氷の影響を排除又は低減することができる。翼体200は、誘導熱と音波振動との両方を利用して、翼体200への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去するよう構成されている。誘導熱を利用すると、外皮210の、特に外側表面212及び/又は前縁206の温度を上昇させること、及び/又は、維持することができる。一般的に、外皮210の温度、特に、外側表面212及び/又は前縁206の温度が、水の凝固点より高いと、着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。音波振動wo、外側表面212を、特に前縁206を、非静的な状態(振動状態)に保つことができる。
翼体200は、周囲の流体(例えば、空気)に対して相対移動する際に、所望の反力を生じさせる形状の構造体である。着氷に関し、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202が動作しない場合、流体に含まれる水分が翼体200に接触し、氷となって翼体200に付着しやすい。前縁206は、翼体200における最も前側の端部、又は、翼体200が流体を通過する際に、流体と最初に接触する端部である。
翼体200は、誘導コイル230を内部空間208に含む。つまり、誘導コイル230は、外部表面212には露出しておらず、翼体200に沿った空気の空力的な流れに影響しない。
外皮210は導磁性を有しているので、外皮210内に磁場が集中しやすい。外皮210の導磁性は、水の凝固点付近やそれより低い温度、且つ、翼体200の最低動作温度より高い温度で発揮される。外皮210は、導磁性を有することに加えて、軟磁性材料(着磁及び消磁が容易)及び/又は強磁性材料(外部磁場に対して、正の大きな非線形の磁化率を示す)であってもよい。
外皮210は導電性を有しているので、外皮210内に渦電流280が形成され、また、外皮210は誘導熱の影響を受ける。誘導熱は、導電性の物体に交流磁場を印加することによって生じて、その物体を加熱するものである。交流磁場は、その物体上で環流する渦電流280を発生させる。渦電流280は、導電性物体の電気抵抗による抵抗加熱(ジュール加熱とも呼ばれる)を発生させる。渦電流280及びその結果生じる発熱は、通常、物体の浅い表面領域内に留まるが、この表面領域は、周波数に依存する表皮深さパラメータによって特徴付けられる。表皮深さ(電気表皮深さや電磁表皮深さとも呼ばれる)は、交流磁場の周波数の逆平方根に比例する。誘導熱の効率は、交流磁場の強度及び周波数、誘導コイル230の形状、誘導コイル230と外皮210の大小関係及び位置関係、並びに、外皮210の材料に関連する。
外皮210の材料は、翼体の外側表面(例えば、翼体200の外側表面212)として適切なものが選択されうる。選択されうる特性としては、高い透磁率(導磁率)、適切な導電性、強度、耐環境性、耐摩耗性、及び、温度変化係数がある。
誘導コイル230は、誘導コイル230に交流電流234が流れたときに交流磁場を発生させるよう構成されている。誘導コイル230は、交流電流234が流れるように構成されたワイヤからなるコイルである。ワイヤは、導電性であり、通常、低抵抗のもの(例えば、銅線又はアルミ線)である。誘導コイル230のワイヤは、概ね、渦巻き状又は螺旋状に巻回されて、当該ワイヤにおける平行ワイヤ部分が複数の平行ループを形成する。これらのループ及び個々の平行ワイヤ部分は電気的に絶縁されており、当該ワイヤの経路に電流が流れても、ループ間や平行ワイヤ間で短絡は生じない。ワイヤは、中実の導体でもよく、個々の導体の集合体でもよく、及び/又は、電気的に絶縁された導体の集合体でもよい。例えば、高効率の(電流集中が比較的低い)交流電流が流れるようにするには、
リッツ線構成(電気的に分離されたワイヤを編組して、単一のワイヤとしたもの)を用いることができる。
誘導コイル230の一部分236は、誘導コイル230の平行ワイヤの部分である。通常、一部分236は、誘導コイルの仮想面の一部分である。誘導コイル230及び誘導コイル230の一部分236の形状は、誘導コイルの外形により決まる。例えば、誘導コイル230は、螺旋状のワイヤで構成されてもよい。規則的な螺旋の外形は、円筒形であり、そのような誘導コイル230は、円筒誘導コイルとも呼ばれる。円筒誘導コイルにおける一部分236は、円筒誘導コイルの外形形状を規定する円筒の一部分に相当する。
誘導コイル230に交流電流234が流れたときに外皮210の制御領域216内に渦電流280が発生するように、誘導コイル230の一部分236は、外皮210の内側表面214に十分に近接している。つまり、誘導コイル230は、外皮210に対して誘導結合されていると言える。誘導コイル230及び誘導コイル230の一部分236が外皮210及び外皮210の内側表面214に対して十分に近接していないと、有意な渦電流280が外皮210内に発生しない。このような場合、誘導コイル230は、外皮210を誘導加熱するように配置されていないことになる。
制御システム250を用いると、発生させる誘導熱及び音圧の量及びタイミングを制御して、翼体200の着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。制御システム250は、交流電流234の供給を制御して、誘導熱及び音圧を発生させるように誘導コイル230に交流電流234を供給させる。誘導コイル230を流れる交流電流234を利用することで、渦電流280を外皮210内で直接に発生させて外皮210を誘導加熱するので、熱源との熱接触は不要である(例えば、加熱部材は不要である)。
制御システム250は、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の周囲温度に基づいて、誘導熱及び音圧の生成を制御する。流体層218は、概ね空気であり、水分を含む場合もある。流体の周囲温度ある程度低い場合は、流体の水分が氷となって外皮210の外側表面212に蓄積する可能性があり、例えば、外皮210の外側表面212に水分が接触することにより凍結する可能性がある。よって、周囲温度に基づいて交流電流234の供給を制御すれば、着氷が生じうる周囲状況で選択的に誘導熱及び音圧を印加することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例44を特徴付けるものであり、実施例44は、上述の実施例43の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図12を参照すると、誘導コイル230はシート形状である。
シート形状の誘導コイルは、扁平誘導コイル、パンケーキ誘導コイル及び/又は平面誘導コイルとも呼ばれる。シート形状の誘導コイルでは、誘導コイルのワイヤは、実質的に2次元(2D)面を構成する螺旋状に巻回されている。この仮想2D面は、平面や平坦でなくてもよい。この仮想2D面は、例えば、翼体210の内部、内部空間208、及び/又は、外皮210の内側表面214の形状など、仮想的な3次元(3D)構造における面であってもよい。シート形状の誘導コイルは、そのシート形状の誘導コイルのコア(螺旋状ワイヤの中心)において、そのシート部分に直交する磁場を生成する。シート形状の誘導コイルは、その誘導コイルのシート形状を構成するシート部分の反対側において、外皮210に対して高い誘導結合を示す。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例45を特徴付けるものであり、実施例45は、上述の実施例43〜44のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図4〜図5及び図8〜図9の誘導コイル130を参照すると、誘導コイル230は
立体的な形状を有する。
立体的な形状の誘導コイルは、螺旋状ワイヤの中心を内包するコア空間を囲むコイルである。シート形状の誘導コイルには、コア空間を有するものも、有さないものもある(例えば、シート形状の誘導コイルは、円筒状のシェルと合致する形状でもよい)が、螺旋状ワイヤの中心はシート部分の中に位置する。通常、立体形状のコイルは、実質的に筒状であり、この仮想筒の外側に螺旋状に巻回されている(例えば、ワイヤが巻回された古典的なインダクタである)。立体形状の誘導コイルにより形成される磁場は、螺旋状ワイヤの中心に対して平行であり、且つ、囲まれた空間の長手方向軸に対して概ね平行である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例46を特徴付けるものであり、実施例46は、上述の実施例43〜45のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、誘導コイル230の少なくとも一部分236は、外皮210の内側表面214から10mm以下の位置にある。
誘導コイル230の一部分236は、外皮210及び外皮210の内側表面214に近接している。誘導コイル230の一部分236は、当該一部分236が外皮210及び外皮210の内側表面214に近いほど、より良好に外皮210と誘導結合し、及び/又は、より強い渦電流280を発生させる。つまり、誘導コイル230の一部分236と外皮210の内側表面214との間の距離は、外皮210における誘導及び音圧(音響エネルギーとも呼ばれる)の印加効率に影響する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例47を特徴付けるものであり、実施例47は、上述の実施例46の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、誘導コイル230の少なくとも一部分236は、外皮210の内側表面214から1mm以下の位置にある。
効率を高めるため、誘導コイル230の一部分236は、外皮210の内側表面214のごく近くに配置される。一般的に、一部分236の厚みは、外皮210の厚みの小さい整数倍まで、及び/又は、交流電流234の周波数において外皮210の材料が示す表皮深さの小さい整数倍までである。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例48を特徴付けるものであり、実施例48は、上述の実施例43〜47のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、誘導コイル230の少なくとも一部分236は外皮210に対して平行である。
誘導コイル230の一部分236は、外皮210(即ち、外皮210の内側表面214)と誘導コイル230の一部分236との間の距離が実質的に一定になるように、外皮210に対して平行に配置されてもよい。距離が一定であると、誘導熱に関する結合効率を実質的に均一にすることができ、及び/又は、一部分236に対して平行な外皮210における渦電流280を実質的に均一にすることができる。誘導コイル230の一部分236及び/又は実質的に全体(例えば、誘導コイル230がシート形状である場合)は、外皮210の内側表面214に概ね合致する形状でもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例49を特徴付けるものであり、実施例49は、上述の実施例43〜48のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を参照すると、翼体200は、翼部、浸食シールド、尾部、水平安定板、垂直安定板、ウィングレット、タービンエンジン空気取入口、エンジンナセル及びタービンブレードからなる群から選択される。
翼体200は、航空機又は空力的な形状の面を有するその他の構造体の一部であってもよい。そのような航空機又は構造体は、1つ又は複数の翼体200を有していてもよく、また、翼体200以外の空力面を有していてもよい。航空機やその他の構造体に翼体200を用いると、その航空機又は構造体を着氷の影響から保護することができる。浸食シールドは、前縁206を例とする前縁の全体あるいは大部分を構成するものでもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例50を特徴付けるものであり、実施例50は、上述の実施例43〜49のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、誘導コイル230の少なくとも一部分236は、誘導コイル230における他のどの部分よりも前縁206に近接して配置され、且つ、前縁206を加熱するように配置されている。
通常、誘導コイル230は、前縁206と、外側表面212における前縁206に近接する領域と、に対して熱及び音圧を印加するよう構成されている。通常、氷の形成及び/又は蓄積の度合いは、空力構造体の前縁及びその近傍で大きい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例51を特徴付けるものであり、実施例51は、上述の実施例43〜50のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図12〜図13を参照すると、誘導コイル230の少なくとも一部分236は、制御領域216における前縁206と交差する配向である。
誘導コイル230の一部分236が前縁206と交差する配向になるのは、当該一部分236における平行ワイヤが前縁206と交差する配向の場合である。外皮210における渦電流280の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、誘導コイル230の一部分236が前縁206と交差する配向の場合、この誘導コイル230の一部分236に交流電流234が流れることにより形成される渦電流280は、前縁206と交差する。力284は渦電流280に直交するので、この配向においては、力284は、前縁206に直交する向き(即ち、x方向)又は前縁206に平行な向き(即ち、y方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例52を特徴付けるものであり、実施例52は、上述の実施例43〜50のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図11を参照すると、誘導コイル230の少なくとも一部分236は、制御領域216における前縁206に対して平行である。
誘導コイル230の一部分236が前縁206に対して平行になるのは、一部分236の平行ワイヤが前縁206に対して平行な場合である。外皮210における渦電流280の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、誘導コイル230の一部分236が前縁206に対して平行である場合、誘導コイル230の一部分236に交流電流234が流れることによる渦電流280は、前縁206と平行に形成される。力284は渦電流280に直交するので、この配向においては、力284は、前縁206に直交する向き(例えば、x方向又はz方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例53を特徴付けるものであり、実施例53は、上述の実施例43〜52のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、制御システム250は、誘導コイル230に直流電流246を供給して、外皮210内に定常磁場282を発生させる。
誘導コイル230に直流電流246が流れると、定常磁場282(DC磁場とも呼ばれ
る)を含む磁場が外皮210内に形成される。定常磁場282は、通常、外皮210内で電流(例えば、渦電流280)と作用して、外皮210内に力284(ローレンツ力)を発生させる。ローレンツ力は、電界の印加がない状態では、荷電粒子(例えば、電子)の速度と磁場(B磁場)とのクロス積に比例する。外皮210内の交流電流(例えば、渦電流280)が、外皮210内の定常磁場282と作用することで発生する力284は、(交流電流周波数の2倍の)音波振動を外皮210内に発生させる。外皮210内の渦電流280と定常磁場282が平行な場合、力284は発生しない(又はゼロになる)。その他の条件がすべて同じであれば、力284は、外皮210内の渦電流280と定常磁場282とが直交する場合に最大となる。渦電流280が定常磁場282と作用することにより、力284及び音波振動が外皮210内で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。
誘導コイル230及び誘導コイル230を流れる直流電流246により形成される磁場は、翼体200の内部空間208内に収まってれており、また、外皮210が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場282)のほとんど又はすべてが翼体200に内包される。外皮210がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性でなければ)、磁力線は外皮210より遠くまで延びるが、実際には、外皮210内で方向が変えられる。つまり、誘導コイル230を流れる直流電流246による磁場は、翼体200の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体200外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場282は、誘導コイル230に対する直流電流の供給(又は、非供給)により、制御システム250で制御可能である。定常磁場282を所望の態様でオン、オフすることにより、外皮210に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで、翼体200内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体200内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要をなくすことができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例54を特徴付けるものであり、実施例54は、上述の実施例53の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図13を参照すると、誘導コイル230に供給される直流電流246により誘起される定常磁場282は、外皮210の内側表面214において外皮210と交差する。
渦電流280は、外皮210内に発生し、よって、外皮210に対して実質的に平行である。定常磁場282は、外皮210の内側表面214とも交差する場合に、渦電流280と交差する。渦電流280と交差する定常磁場282により、力284が生成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例55を特徴付けるものであり、実施例55は、上述の実施例53〜54のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図13を参照すると、外皮210内の位置であって、前縁206と外皮210の内側表面214のうち前縁206に最も近い部分との間に相当する位置において、定常磁場282は前縁206と交差する向きである。
外皮210の内側表面214において前縁206に最も近い部分は、内側表面214において前縁206に対して真向いの部分、真後ろの部分、及び/又は、直近の下流の部分とも言える。前縁206は、外皮210の外側表面212上にある。外皮210の内側表面214において前縁206に最も近い位置は、内側表面214において前縁206から外皮210の厚み分だけ離間した位置である。定常磁場282が前縁206に(よって、渦電流280に)対して前縁206近傍で交差することにより、前縁206近傍の外皮2
10に誘導熱及び音圧を印加することができる。力284は渦電流280と直交するので、この配向においては、力284は、前縁206に平行な向き(即ち、y方向)又は前縁106に直交する向き(即ち、y方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例56を特徴付けるものであり、実施例56は、上述の実施例53〜54のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を参照すると、外皮210内の位置であって、前縁206と外皮210の内側表面214のうち前縁206に最も近い部分との間に相当する位置において、定常磁場282は前縁206に対して平行である。
定常磁場282が前縁206に(よって、渦電流280に)対して前縁206近傍で平行であることにより、前縁206近傍の外皮210に誘導熱及び音圧を印加することができる。力284は渦電流280に直交するので、この配向においては、力284は、前縁206に直交する向き(即ち、x方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例57を特徴付けるものであり、実施例57は、上述の実施例53〜56のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、定常磁場282の大きさ(magnitude)は、0.1
T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場282の強度は、誘導コイル230を流れる交流電流234により生じる渦電流280と定常磁場282とが作用した時に、有意な音圧を外皮210に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場282は、0.1Tを超える大きさの強力な磁場であって、誘導コイル230を流れる直流電流246によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例58を特徴付けるものであり、実施例58は、上述の実施例53〜57のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、交流電流234の振幅は、定常磁場282の大きさよりも小さい交流磁場286を発生させる。
交流磁場286は、外皮210内で渦電流280を発生させ、その渦電流280の振幅は交流磁場286の振幅に関連する。渦電流280の振幅は、誘導熱の効率に影響し、定常磁場282の大きさは、外皮210に作用して音圧を発生させる力284の振幅に影響する。よって、交流磁場286の振幅及び定常磁場282の大きさの相対的な大小は、翼体200への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧のそれぞれが寄与する割合に影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例59を特徴付けるものであり、実施例59は、上述の実施例58の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、定常磁場282の大きさに対する交流磁場286の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体200の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場286の振幅は定常磁場282の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例60を特徴付けるものであり、実施例60は、上述の実施例53〜59のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、
例えば図10〜図13を参照すると、交流電流234の振幅は、直流電流246の大きさよりも小さい。
誘導コイル230を流れる交流電流234は、交流磁場286を発生させ、その交流磁場286の振幅は交流電流234の振幅に関連する。交流磁場286は、外皮210内で渦電流280を発生させ、その渦電流280の振幅は交流磁場286の振幅と交流電流234の振幅に関連する。渦電流280の振幅は、誘導熱の効率に影響する。誘導コイル230を流れる直流電流246は、定常磁場282を発生させ、この定常磁場282の大きさは、直流電流246の大きさに関連する。定常磁場282の大きさは、外皮210に作用して音圧を発生させる力284の振幅に影響する。よって、交流電流234の振幅と直流電流246の大きさの相対的な大小は、翼体200への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧が寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例61を特徴付けるものであり、実施例61は、上述の実施例60の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、交流電流234の振幅と直流電流246の大きさの比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体200の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流電流234の振幅が直流電流246の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例62を特徴付けるものであり、実施例62は、上述の実施例43〜61のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、交流電流234の周波数は、最小で100kHz(キロヘルツ)且つ最大で10MHz(メガヘルツ)である。
交流電流234の周波数は、上述したように、誘導熱が伝わる表皮深さに影響する。周波数が高いほど、表皮深さは浅くなる。表皮深さが外皮210の厚みとほぼ同じであると、誘導熱の効率が向上する。例えば、交流電流280の周波数は、表皮深さが外皮210の厚みの小さい整数約数(例えば、外皮210の厚みの1/2〜1/4)になるように選択してもよい。また、交流電流234の周波数は、渦電流280の周波数であり、渦電流280が定常磁場282と作用して発生させる音圧の周波数の半分である。周波数が高いほど、音響による着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去の効率が高くなる。交流電流234の周波数は、翼体200への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去における誘導熱の効果と音圧の効果を調和させる(バランスをとる)ように選択してもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例63を特徴付けるものであり、実施例63は、上述の実施例62の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、交流電流234の周波数は、最小で1MHzである。
1MHz以上の周波数などのように高い周波数を用いると、音圧の効果が誘導熱の効果よりも高くなりうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例64を特徴付けるものであり、実施例64は、上述の実施例43〜63のいずれの技術事項も包含する。図2を参照すると、翼体200は温度センサ260をさら含み、このセンサは、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の周囲温度を測定するよう構成されている。
温度センサ260は、周囲温度を測定するよう構成されており、制御システム250が温度センサを利用して周囲温度を判定できるように構成されていてもよい。例えば、温度センサ260は、周囲温度を示す信号を制御システム250に送出してもよい。温度センサ260は、周囲温度を直接的又は間接的に測定するよう構成することができる。例えば、温度センサ260は、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218と直接に熱接触する構成でもよい。他の例では、温度センサ260は、外側表面212に沿って流れる流体層218と熱接触する部分において、外皮210の外側表面212の温度を測定する構成でもよい。温度センサ260の例としては、熱電対、測温抵抗体、赤外線センサ、サーミスタが含まれる。これに加えて、あるいは、これに代えて、1つ又は複数の温度センサ260が、翼体200から離間して配置されており、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の温度特性、及び/又は、その周囲温度に関連する温度特性を測定するよう構成されていてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例65を特徴付けるものであり、実施例65は、上述の実施例43〜64のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を参照し、特に、例えば図10を参照すると、制御システム250は、電源254及びコントローラ252を含む。電源254は、誘導コイル230に交流電流234を供給するよう構成されている。コントローラ252は、外皮210の外側表面212への着氷を生じさせることが既知である第1周囲状況と、外側表面212への着氷を抑制することが既知である第2周囲状況と、を示す信号を受信するようプログラムされている。第1周囲状況及び第2周囲状況は、いずれも、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の周囲温度を含む。また、コントローラ252は、第1周囲状況に基づいて、外皮210の制御領域216に誘導熱及び音圧を発生させるべく誘導コイル230に交流電流234を電源254によって供給させるようにプログラムされている。加えて、コントローラ252は、第2周囲状況に基づいて、誘導コイル230に交流電流234を電源254によって供給することを停止するようにプログラムされている。
電源254は、誘導コイル230に交流電流234を選択的に供給し、これにより外皮210内に渦電流280、誘導熱、及び/又は音圧を選択的に生成するよう構成されている。
コントローラ252は、そのままにすれば外皮210の外側表面212への着氷を生じさせうる周囲状況、あるいは、着氷を抑制しうる周囲状況(例えば、第1周囲状況及び第2周囲状況)に基づいて、電源254のオンオフを行って、誘導熱及び音圧の印加を制御するよう構成されている。コントローラ252は、コンピュータ(例えば、プロセッサ及びメモリ)及び/又は専用のハードウェアで構成することができる。コントローラ252は、その機能(例えば、信号の受信、電源254から電流を供給させる制御、電源254からの電流供給を停止させる制御)を、ソフトウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアによって実現することができる。コントローラ252は、組み込み型コンピュータ及び/又は組み込み型システムとも呼ばれる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例66を特徴付けるものであり、実施例66は、上述の実施例65の技術事項も包含する。全体としては図2を、特に、例えば図10を参照すると、コントローラ252は、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の周囲温度が第1閾値温度を下回った場合に、電源254から誘導コイル230に交流電流234を供給させるようにもプログラムされている。
コントローラ252は、例えば、翼体200の外側表面212に着氷が生じうることが既知である温度などの第1閾値温度を周囲温度が下回った場合に、電流を電源254によって供給させるよう構成されている。第1閾値温度は、所定の閾値であってもよく、ある
いは、他のパラメータ(例えば、翼体200の外側表面212の温度、湿度、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202の動作時間など)の関数であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例67を特徴付けるものであり、実施例67は、上述の実施例66の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10を参照すると、第1閾値温度は、水の凝固点より高く5℃より低い温度である。
水の凝固点から5℃までの温度範囲は、翼体200に衝突する水分が液相に留まる状態から氷となって付着する状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第1閾値は、翼体200への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のために誘導熱及び音圧をオンにする必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例68を特徴付けるものであり、実施例68は、上述の実施例66〜67のいずれの技術事項も包含する。全体としては図2を、特に、例えば図10を参照すると、コントローラ252は、外皮210の外側表面212に沿って流れる流体層218の周囲温度が第2閾値温度を上回った場合に、電源254から誘導コイル230への交流電流234の供給を停止させるようにもプログラムされている。
コントローラ252は、翼体200の外側表面212への着氷が生じにくいことが既知である温度などの第2閾値温度を周囲温度が上回った場合に、電源254によって電流を供給することを停止するよう構成されている。第2閾値温度は、所定の閾値であってもよく、あるいは、他のパラメータ(例えば、翼体200の外側表面212の温度、湿度、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202の動作時間など)の関数であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例69を特徴付けるものであり、実施例69は、上述の実施例68の技術事項も包含する。概ね図2を、特に図10を参照すると、第2閾値温度は第1閾値温度とは異なる。
第2閾値温度は、第1閾値温度と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第2閾値温度と第1閾値温度とが異なる値であると、コントローラは、誘導熱と音圧のオンオフを異なる温度で実行することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例70を特徴付けるものであり、実施例70は、上述の実施例68〜69のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に図10を参照すると、第2閾値温度は第1閾値温度より高い。
第2閾値温度が第1閾値温度より高いと、誘導熱及び音圧のオンオフに伴う振動を防止できる傾向にある。第2閾値温度が第1閾値温度と同じであると、単一の閾値温度に対して周囲温度が小幅に変化することによって、コントローラ252が電源254に逆の動作を短時間に連続して命令する場合が生じうる。交流電流234を供給して周囲温度を上昇させる場合、電源254による電力供給を行わせることによって周囲温度が上昇しうる。その結果、コントローラ252は、電源254に電力供給を停止させることになりうる。そして、その結果、周囲温度が低下しうる。このような状況では、コントローラ252及び音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202に振動が生じる可能性があり、誘導熱及びコントローラ音圧の供給が効果的に行われない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例71を特徴付けるものであり、実施例71は、上述の実施例68〜70のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に図10を参照すると、第2閾値温度は、2℃超且つ10℃未満である。
2℃超且つ10℃未満の温度範囲は、翼体200に衝突する水分が、氷となって付着する状態から液相に留まる状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第2閾値は、翼体200への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のために誘導熱及び音圧をオフにする必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例72を特徴付けるものであり、実施例72は、上述の実施例43〜71のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、外皮210は、ニッケル−鉄合金を含む。
ニッケル−鉄合金は、外皮210に適した合金の一種である。ニッケル−鉄合金は、導電性及び導磁性を有し、誘導熱及び音圧の影響を受ける。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例73を特徴付けるものであり、実施例73は、上述の実施例43〜72のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、外皮210の厚みは1mm未満且つ0.001mm超である。
外皮210は全体的に薄いので、外皮210は、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202により生成される誘導熱及び音圧に即座に影響される。外皮210の厚みは、実用的及び/又は所望の交流電流234の周波数、及び/又は、そのような周波数での表皮深さに基づいて選択可能である。外皮210は、翼体200としての状況に晒された場合に構造的な一体性を保つのに十分な厚みを有する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例74を特徴付けるものであり、実施例74は、上述の実施例43〜73のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、外皮210は強磁性を有する。
上述したように、外皮210が強磁性である場合、外皮210内に磁場が集中する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例75を特徴付けるものであり、実施例75は、上述の実施例43〜74のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、外皮210の比透磁率は、1,000超且つ10,000,000未満である。
磁性材料の比透磁率は、1よりもかなり大きく、非磁性材料の比透磁率は、1に近い。比透磁率が高いほど、その材料が磁化しやすいこと及び磁場が集中しやすいことを示す。典型的な磁性材料の比透磁率は約100より高い。高透磁率の材料の比透磁率は約1,000より高い。既知のあらゆる材料の比透磁率は、10,000,000未満である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例76を特徴付けるものであり、実施例76は、上述の実施例43〜75のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図10〜図13を参照すると、外皮210のキュリー温度は300℃未満且つ50℃超である。
キュリー温度とは、強磁性材料の転移温度である。キュリー温度より低温では、材料は高い比透磁率を示すが、キュリー温度より高温では、その材料は、常磁性を示し、比透磁率も低くなる。外皮210が、(特定の温度で示す強磁性あるいは導磁性とは逆の)常磁性に変化すると、誘導熱の効率及び/又は音圧の生成が著しく小さくなる。よって、外皮210のキュリー温度が十分に低ければ、(例えば、音波・誘導加熱ハイブリッドシステ
ム202の誤動作や翼体200が過度な太陽加熱に晒されるなどにより)外皮210が熱くなりすぎた場合に、誘導加熱及び/又は音圧の大部分を自動的に停止するように音波・誘導加熱ハイブリッドシステム202を構成することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例77を特徴付けるものであり、実施例77は、上述の実施例43〜76のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図11を参照すると、翼体200は、内部空間208に電気的絶縁体220をさらに含み、この電気的絶縁体220は、外皮210に結合されている。
翼体200に含まれる電性及び/又は導磁性材料は、外皮210と同様に、加熱及び/又は音圧を受ける。よって、翼体200内の設けられる枠、支持体、その他の構造体は、電気的に絶縁性のものとするか、誘導コイル230及び/又は磁石240から十分離間した位置に配置するか、その両方とする。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例78を特徴付けるものであり、実施例78は、上述の実施例77の技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図11を参照すると、電気的絶縁体220は、外皮210を支持する。
翼体200は、電気的絶縁体220などの内側支持体を含んで構成することができる。内側支持体は、外皮210及び/又は誘導コイル230を支持し、及び/又は、翼体200の空力形状を保つ。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例79を特徴付けるものであり、実施例79は、上述の実施例77〜78のいずれの技術事項も包含する。概ね図2を、特に、例えば図11を参照すると、電気的絶縁体220は、少なくとも1つの磁石240を支持する。
少なくとも1つの磁石240は、定常磁場を生成し、この磁場は、外皮210の制御領域216における音圧に影響する定常磁場282に寄与しうる。少なくとも1つの磁石240の各々は、永久磁石242であっても、電磁石244であってもよい。
概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、翼体300が開示されている。翼体300は、外皮310を含み、この外皮は、外側表面312と、外側表面312と反対側の内側表面314と、を有する。外皮310は、導磁性及び導電性を有し、また制御領域316を含む。また、翼体300は、外皮310により規定された内部空間308を含む。外皮310の内側表面314が、内部空間308に面している。加えて、翼体300は、外皮310の外側表面312に沿った前縁306を含む。翼体300は、外皮310の外側表面312への着氷を抑制するよう構成された音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302をさらに含む。音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302は、複数の誘導コイル328を内部空間308にむ。各誘導コイル328には位相348の交流電流334が流れ、各誘導コイルの一部分336は、外皮310の制御領域316に渦電流380を発生させるように、外皮310の内側表面314に十分に近接している。複数の誘導コイル328のうちの1つのコイルの一部分336は、複数の誘導コイル328うちの少なくとも別の1つのコイルの一部分336に隣接する。また、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302は、制御システム350を含み、この制御システムは、外皮310の外側表面312に沿って流れる流体層318の周囲温度に少なくとも部分的に基づいて、複数の誘導コイル328に複数の位相348の交流電流334を供給し、これにより外皮310の制御領域316に誘導熱及び進行波の音圧(traveling-wave acoustic pressure)を発生させるよう構成されている。複数の位相348の交流電流334を供給することは、複数の誘導コイル328のうち、互いに隣接する一部分336を有するコイルに対して、
異なる位相348の交流電流334を供給することを含む。本段落に記載したこの技術的事項は、本開示の実施例80を特徴付けるものである。
翼体300は、外皮310への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去するよう構成されている。翼体に氷が付着すると、翼体に沿った空気の空力的な流れを乱す虞がある。翼体300を用いれば、翼体300への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができ、よって、翼体300が受ける着氷の影響を排除又は低減することができる。翼体300は、誘導熱と音波振動との両方を利用して、翼体300への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去するよう構成されている。誘導熱を利用すると、外皮310の、特に、外側表面312及び/又は前縁306の温度を上昇させること、及び/又は、維持することができる。一般的に、外皮310の温度、特に、外側表面312及び/又は前縁306の温度が水の凝固点より高いと、着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。音波振動を利用すると、外側表面312を、特に前縁306を、非静的な状態(振動状態)に保つことができる。
翼体200は、周囲の流体(例えば、空気)に対して相対移動する際に、所望の反力を生じさせる形状の構造体である。着氷に関し、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302が動作ない場合、流体に含まれる水分が翼体300に接触し、氷となって翼体300に付着しやすい。前縁306は、翼体300における最も前側の端部、又は、翼体300が流体を通過する際に、流体と最初に接触する端部である。
翼体300は、誘導コイル330を内部空間308に含む。つまり、誘導コイル330は、外部表面312には露出しておらず、翼体300に沿った空気の空力的な流れに影響しない。
外皮310は導磁性を有しているので、外皮310内に磁場が集中しやすい。外皮310の導磁性は、水の凝固点付近やそれより低い温度、且つ、翼体300の最低動作温度より高い温度で発揮される。外皮310は、導磁性を有することに加えて、軟磁性材料(着磁及び消磁が容易)及び/又は強磁性材料(外部磁場に対して、正の大きな非線形の磁化率を示す)であってもよい。
外皮310は導電性を有しているので、外皮310内に渦電流280が形成され、また、外皮310は誘導熱の影響を受ける。誘導熱は、導電性の物体に交流磁場を印加することによって生じて、その物体を加熱するものである。交流磁場は、その物体上で環流する渦電流380を発生させる。渦電流380は、導電性物体の電気抵抗による抵抗加熱(ジュール加熱とも呼ばれる)を発生させる。渦電流380及びその結果生じる発熱は、通常、物体の浅い表面領域内に留まるが、この表面領域は、周波数に依存する表皮深さパラメータによって特徴付けられる。表皮深さ(電気表皮深さや電磁表皮深さとも呼ばれる)は、交流磁場の周波数の逆平方根に比例する。誘導熱の効率は、交流磁場の強度及び周波数、誘導コイル330の形状、誘導コイル330と外皮310の大小関係及び位置関係、並びに、外皮310の材料に関連する。
外皮310の材料は、翼体の外側表面(例えば、翼体300の外側表面312)として適切なものが選択される。選択されうる特性としては、高い透磁率(導磁率)、適切な導電性、強度、耐環境性、耐摩耗性、及び、温度変化係数がある。
複数の誘導コイル328は、2つ以上の誘導コイル330(例えば、図14に3つの誘導コイル330として示す誘導コイル331、誘導コイル332及び誘導コイル333)を含む。複数の誘導コイル328の各々は、交流電流334が流れたときに交流磁場が発生するよう構成されている。交流電流334の位相348は、誘導コイル330の各々に
より生成される交流磁場の位相に影響する。図14及び図16では、3つの異なる位相348がA、B、Cとして模式的に示されており、それぞれ第1位相348a、第2位相348b、第3位相348cとの符号が付してある。
誘導コイル330は、交流電流334が流れるように構成されたワイヤからなるコイルである。ワイヤは、導電性であり、通常、低抵抗のもの(例えば、銅線又はアルミ線)である。誘導コイル330のワイヤは、概ね、渦巻き状又は螺旋状に巻回されて、当該ワイヤにおける平行ワイヤ部分が複数の平行なループを形成する。これらのループ及び個々の平行ワイヤ部分は電気的に絶縁されており、当該ワイヤの経路に電流が流れても、ループ間や平行ワイヤ間で短絡は生じない。ワイヤは、中実の導体でもよく、個々の導体の集合体でもよく、及び/又は、電気的に絶縁された導体の集合体でもよい。例えば、高効率の(電流集中が比較的低い)交流電流が流れるようにするには、リッツ線構成(電気的に絶縁されたワイヤを編組して、単一のワイヤとしたもの)を用いることができる。概して、複数の誘導コイル328の各々は、例えば、当該誘導コイル328に対応する位相348の交流電流334を容易に供給できるように、同様の構成をしている。
複数の誘導コイル328それぞれの一部分336は、各誘導コイル330の平行ワイヤ部分であり、上述した誘導コイル130の一部分136や誘導コイル230の一部分236と同様である。図14において、個々の誘導コイル330の一部分336は、それぞれ一部分336a、一部分336b、一部分336cと示されている。通常、一部分336は、その誘導コイル330の仮想面の一部分である。誘導コイル330の形状及び誘導コイル330の一部分336の形状は、誘導コイルの外形により決まる。例えば、誘導コイル330は、螺旋状のワイヤで構成されてもよい。規則的な螺旋の外形は円筒形であり、そのような誘導コイル330は、円筒誘導コイルとも呼ばれる。円筒誘導コイルにおける一部分336は、円筒誘導コイルの外形を規定する円筒の一部分に相当する。
位相348を有する交流電流334が誘導コイル330に流れたときに外皮310の制御領域316に渦電流380が発生するように、複数の誘導コイル328の各一部分336は、外皮310の内側表面314に十分に近接している。つまり、誘導コイル330は、外皮310に対して誘導結合されていると言える。誘導コイル330の一部分336及び誘導コイル330が外皮310及び外皮310の内側表面314に対して十分に近接していないと、有意な渦電流380が外皮310に発生しない。このような場合、誘導コイル330は、外皮310を誘導加熱するように配置されていないことになる。
複数の誘導コイル328のうちの1つのコイルの一部分336は、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも別の1つのコイルの一部分336に隣接する。よって、複数の誘導コイル328は、隣接する誘導コイル328とも記載される。全ての誘導コイル328は、各誘導コイル328の一部分336が、少なくとも別の1つの誘導コイル328の一部分336に隣接するように配置されている。複数の誘導コイル328を隣接して配置しているので、複数の渦電流380を隣接して発生させて、制御領域316における渦電流380が間隔を空けずに隣接するか、わずかな間隔のみを空けて隣接するようにできる。例えば、図14及び図15は、隣接する誘導コイル328を示し、また、これら誘導コイル328を流れる位相348の交流電流334により生じる隣接する電流領域(current domain)338を示す。図14において、個々の誘導コイル330に対応する電流領域348は、第1誘導コイル331の一部分336aを流れる位相348aに対応する電流領域348a、第2誘導コイル332の一部分336bを流れる位相348bに対応する電流領域348b、及び、第3誘導コイル333の一部分336cを流れる位相348cに対応する電流領域348cとして示されている。隣接する電流領域338は、図15の例に示すように、複数の隣接する渦電流380を発生させる。
制御システム350を用いると、外皮310の制御領域316に発生させる誘導熱及び音圧の量及びタイミングを制御して、翼体300の着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。制御システム350は、複数の位相348の交流電流334の供給を制御して、それぞれの誘導コイル328に特定の位相348の交流電流334を供給させて、誘導熱及び音圧を発生させる。互いに隣接する一部分336を有する誘導コイル328には、複数の位相348のうちの異なる位相の交流電流334が供給される。誘導コイル328における交流電流334を利用することで、これに対応する渦電流380を外皮310の制御領域316に発生させ、これにより外皮310を直接に誘導加熱するので、熱源との熱接触は不要である(例えば、加熱部材は不要である)。
隣接する個々の誘導コイル330に対し、異なる位相348の交流電流334を供給するので、外皮310において隣接する渦電流380同士は異なる位相を有することになる。異なる位相の渦電流380を利用すると、進行波の音圧(進行波振動)を発生させることができる。進行波の音圧は、外皮310の異なる部分を異なる位相で振動させ、その振動の振幅ピークの位置は、振動の瞬時位相、対応する渦電流380、及び、対応する位相348の交流電流334にしたがって、外皮310の外側表面312を移動する。
制御システム350は、外皮310の外側表面312に沿って流れる流体層318の周囲温度に基づいて、誘導熱及び音圧の生成を制御する。流体層318は、概ね空気であり、水分を含む場合もある。流体の周囲温度ある程度低い場合は、流体の水分が氷となって外皮310の外側表面312に蓄積する可能性があり、例えば、外皮310の外側表面312と接触することにより水分が凍結する可能性がある。よって、周囲温度に基づいて交流電流334の供給を制御すれば、着氷が生じうる周囲状況で選択的に誘導熱及び音圧を印加するようにできる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例81を特徴付けるものであり、実施例81は、上述の実施例80の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、翼体300は、内部空間308に配置された少なくとも1つの磁石340を含み、当該磁石は、外皮310内に定常磁場382を発生させるよう構成されている。
翼体300は、少なくとも1つの磁石340を内部空間308に含む。つまり、磁石340は、外部表面312には露出しておらず、翼体300に沿って流れる空気流の空力に影響を与えない。
磁石340は、外皮310内に定常磁場382(DC磁場とも呼ばれる)を発生させるよう構成されている。磁石340は、磁力源とも呼ばれる。定常磁場382は、通常、外皮310内で(渦電流380などの)電流と作用して、外皮310内に力384(ローレンツ力)を発生させる。ローレンツ力は、印加電界がない状態では、荷電粒子(例えば、電子)の速度と磁場(B磁場)とのクロス積に比例する。外皮310内の交流電流(例えば、渦電流380)が、外皮310内の定常磁場382と作用することで発生する力384は、外皮310内で(交流電流周波数の2倍の)音波振動を発生させる。外皮310内の渦電流380と定常磁場382が平行な場合、力384は発生しない(又はゼロになる)。その他の条件がすべて同じであれば、外皮310内の渦電流380と定常磁場382とが直交する場合に、力384は最大になる。
つまり、複数の誘導コイル328を流れる複数の位相348の交流電流334を利用することで、複数の渦電流380を外皮310内で直接に発生させて外皮310を誘導加熱するので、熱源との熱接触は不要である(例えば、加熱部材は不要である)。また、渦電流380が定常磁場382と作用することにより、力384及び音波振動が外皮310内
で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。
磁石340が翼体300の内部空間308に配置されており、外皮310が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場382)のほとんど又はすべてが翼体300に内包される。外皮310がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えなければ)、磁力線は外皮310より遠くまで延びるが、実際には、外皮310内で方向が変えられる。つまり、磁石340の磁場は、翼体300外側には、存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体300外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場382は、(例えば、永久磁石342からの)永久磁場、又は、(例えば、電磁石344からの)制御可能な磁場である。定常磁場382が制御可能な場合、(例えば、制御システム350により)所望の態様でオン、オフして外皮310に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで翼体300内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体300内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要をなくすことができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例82を特徴付けるものであり、実施例82は、上述の実施例81の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、外皮310内のある位置で、少なくとも1つの磁石340により生成される定常磁場382は、複数の位相348のうちの1つ有する交流電流334であって、複数の誘導コイル328のうちの対応する1つを流れる交流電流により誘起される渦電流380と交差する。
複数の渦電流380は、複数の位相348の交流電流334が複数の誘導コイル328に流れることによって発生する。各渦電流380は、外皮310内を流れる1つ又は複数のミラー電流(仮想電流)として表すことができる。このミラー電流とは、交流電流334が流れる平行ワイヤの位置と(内側表面314に対して)鏡像の関係にある外皮310内の位置において、交流電流334と逆方向に(同じ周波数で)流れる電流である。渦電流380が定常磁場382と交差すると、渦電流380を構成する移動電荷が力384を受ける。渦電流380に力384が作用すると、外皮310に音波振動が(渦電流380の2倍の周波数、また、交流電流334の2倍の周波数で)生じる。本明細書において、交差するとは、平行でないことを意味する。交差する配向には、直交する配向も含まれる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例83を特徴付けるものであり、実施例83は、上述の実施例81〜82のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、少なくとも1つの磁石340は永久磁石342である。
永久磁石342は、電子や電流がなくても磁場を発生させる。よって、永久磁石342を用いれば、翼体300及び/又は音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302の構造及び/又は制御を簡略化することが可能である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例84を特徴付けるものであり、実施例84は、上述の実施例81〜83のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、少なくとも1つの磁石340は電磁石344である。
電磁石344は、定常(直流DC)電流が流れると定常磁場382を発生させる。電流の流れを(例えば、制御システム350で)制御することにより、磁場のオンオフが可能である。これに加えて、あるいは、これに代えて、電流の流れに応じて、磁場の強度及び方向を調整することができる。通常、電磁石344は制御可能であり、制御可能磁石とも呼ばれる場合がある。誘導コイル330は、電磁石344のコイルとして機能しうる。誘導コイル330は、定常電流を流すように適合させることができるので、誘導コイル330は、定常磁場382を発生させることができる。定常磁場382を生成するための定常電流は、通常、交流電流334の複数の位相348それぞれの振幅よりも(大きさが)かなり大きい(一般的に、交流電流334の複数の位相348は、互いに等しい)。よって、定常電流を流すように構成された誘導コイル330は、交流電流334のみを流すように構成された誘導コイル330にくらべて、断面積が大きい(抵抗が低い)ワイヤにより構成されうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例85を特徴付けるものであり、実施例85は、上述の実施例81〜84のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、少なくとも1つの磁石340は、内部空間308に配置された複数の磁石である。
複数の磁石は、定常磁場382が適切な位置及び/又は方向に力382を発生させるような位置及び/又は配向に配置することができる。少なくとも1つの磁石340は、1つ又は複数の永久磁石342、及び/又は、1つ又は複数の電磁石344を含みうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例86を特徴付けるものであり、実施例86は、上述の実施例81〜85のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、定常磁場382は、複数の誘導コイル328それぞれの一部分336と交差する。
定常磁場382が複数の誘導コイル328それぞれの一部分336と交差する場合、定常磁場382は各一部分336の平行ワイヤと交差する。誘導コイル328の平行ワイヤの方向により、外皮310内の複数の渦電流380の方向が決まる。各一部分336と交差する定常磁場382を生成すると、生成される定常磁場382は、通常、渦電流380と交差する。複数の渦電流380と交差する定常磁場382により、力384が生成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例87を特徴付けるものであり、実施例87は、上述の実施例81〜86のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、定常磁場382は、外皮310の内側表面314におけるある位置で内側表面314と交差する。
複数の渦電流380は、外皮310内に発生し、よって、外皮310に対して実質的に平行である。外皮310の内側表面314とも交差する場合に、定常磁場382は、渦電流380と交差する。渦電流380と交差する定常磁場382により、力384が生成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例88を特徴付けるものであり、実施例88は、上述の実施例81〜87のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、定常磁場382は、外皮310の内側表面314において前縁306に最も近い部分と交差する。
外皮310の内側表面314において前縁306に最も近い部分は、内側表面314に
おいて前縁306に対して真向いの部分、真後ろの部分、及び/又は、直近の下流の部分とも言える。前縁306は、外皮310の外側表面312上にある。外皮310の内側表面314において前縁306に最も近い位置は、内側表面314において前縁306から外皮310の厚み分だけ離間した位置である。定常磁場382が外皮310に(よって、渦電流380に)対して前縁306近傍で交差することにより、前縁306近傍の外皮310に誘導熱及び音圧を印加することができる。力384は渦電流380と直交するので、この配向においては、力384は、前縁306に平行な向き(即ち、y方向)又は前縁に直交する向き(即ち、z方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例89を特徴付けるものであり、実施例89は、上述の実施例81〜87のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、定常磁場382は、外皮310の内側表面314において前縁306に最も近い部分に対して平行である。
定常磁場382が前縁306に(よって、渦電流380に)対して前縁206近傍で平行なことにより、前縁306近傍の外皮310に誘導熱及び音圧を印加することができる。力384は渦電流380に直交するので、この配向においては、力384は、前縁306に直交する向き(即ち、x方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例90を特徴付けるものであり、実施例90は、上述の実施例81〜89のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、定常磁場282の大きさは、0.1T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場382の強度は、複数の誘導コイル328を流れる複数の位相348の交流電流334により生じる渦電流380のそれぞれと定常磁場382が作用した時に、有意な音圧を外皮310に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場382は、0.1Tを超える大きさの強力な磁場であって、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つを流れる直流電流346によって、又は、磁石340によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例91を特徴付けるものであり、実施例91は、上述の実施例81〜90のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、各位相348の交流電流334は、定常磁場382の大きさよりも小さい振幅の複数の交流磁場386を発生させる。
各交流磁場386は、外皮310内で渦電流380をそれぞれ発生させ、その渦電流380の振幅は、対応する交流磁場386の振幅に関連する。渦電流380の振幅は、誘導熱の効率に影響する。定常磁場382の大きさは、外皮310に作用して音圧を発生させる力384の振幅に影響する。よって、交流磁場386の振幅及び定常磁場382の大きさの相対的な大小は、翼体300への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧のそれぞれが寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。交流電流334のすべての位相348の振幅は概ね等しいので、それぞれの交流磁場386の振幅も概ね等しい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例92を特徴付けるものであり、実施例92は、上述の実施例91の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、定常磁場382の大きさに対する各交流磁場386の振幅の比率は、いずれも0.1未満且つ0.0001超である。
翼体300の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために交流磁場386の振幅が定常磁場382の大きさよりも大幅に小さくてもよい。すべての交流磁場386の振幅は概ね等しいので、定常磁場382に対する各振幅の比率も概ね等しい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例93を特徴付けるものであり、実施例93は、上述の実施例80〜92のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、制御システム350は、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つに直流電流346を供給して、外皮310に定常磁場382を発生させるよう構成されている。
誘導コイル328のうち少なくとも1つに直流電流346が流れることにより、定常磁場382(DC磁場とも呼ばれる)を含む磁場が外皮310内に発生する。定常磁場382は、通常、外皮310内で電流(例えば、渦電流380)と作用して、外皮310内に力384(ローレンツ力)を発生させる。ローレンツ力は、電界の印加がない状態では、荷電粒子(例えば、電子)の速度と磁場(B磁場)とのクロス積に比例する。外皮310内の交流電流(例えば、渦電流380)が、外皮310内の定常磁場382と作用することで発生する力384は、(交流電流周波数の2倍の)音波振動を外皮310内に発生させる。外皮310内の渦電流380と定常磁場382が平行な場合、力384は発生しない(又はゼロになる)。その他の条件がすべて同じであれば、力384は、外皮310内の渦電流380と定常磁場382とが直交する場合に最大となる。渦電流380が定常磁場382と作用することにより、力384及び音波振動が外皮310内で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。
複数の誘導コイル328及び複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つを流れる直流電流346により生成される磁場が翼体300の内部空間308に収まっており、外皮310が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場382)のほとんど又はすべてが翼体300に内包される。外皮310がない(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えない)場合には、磁力線は外皮310より遠くまで延びるが、実際には、外皮310内で方向が変えられる。つまり、翼体300の外側には、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つを流れる直流電流346の磁場は存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体300の外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に関して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場382は、誘導コイル328のうちの少なくとも1つに対する直流電流346の供給(又は、非供給)により、制御システム350で制御可能である。定常磁場382を所望の態様でオン、オフすることにより、外皮310に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで翼体300内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体300内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がなくなる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例94を特徴付けるものであり、実施例94は、上述の実施例93の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、制御システム350は、複数の誘導コイル328のすべてに直流電流346を供給して、外皮310に定常磁場282を発生させるよう構成されている。
複数の誘導コイル328のすべてに直流電流346を供給することによって、定常磁場382は、空間的により大きく、例えば、外皮310における誘導コイル328の反対側
に位置する前縁306全体に拡がる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例95を特徴付けるものであり、実施例95は、上述の実施例93〜94のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、定常磁場382は、外皮310の内側表面314において外皮310に交差する。
渦電流380は、外皮310内に発生し、よって、外皮310に対して実質的に平行である。外皮310の内側表面314とも交差する場合、定常磁場382は、渦電流380と交差する。渦電流380と交差する定常磁場382により、力384が生成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例96を特徴付けるものであり、実施例96は、上述の実施例93〜95のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、内側表面314のうち前縁306に最も近い部分と前縁306との間に相当する位置であって外皮310における位置において、定常磁場382は前縁306と交差する。
外皮310における内側表面314において前縁306に最も近い部分は、内側表面314において前縁306に対して真向いの部分、真後ろの部分、及び/又は、直近の下流の部分とも言える。前縁306は、外皮310の外側表面312上にある。外皮310の内側表面314において前縁306に最も近い位置は、内側表面314において前縁306から外皮310の厚み分だけ離間した位置である。定常磁場382が前縁306に(よって、渦電流380に)対して前縁306近傍で交差することにより、前縁306近傍の外皮310に誘導熱及び音圧を印加することができる。力384は渦電流380と直交するので、この配向においては、力384は、前縁306に平行な向き(即ち、y方向)又は前縁に直交する向き(即ち、z方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例97を特徴付けるものであり、実施例97は、上述の実施例93〜95のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、外皮310において、内側表面314のうち前縁306に最も近い部分と前縁306との間に相当する位置において、定常磁場382は前縁306に対して平行である。
定常磁場382が前縁306に(よって、渦電流380に)対して前縁306近傍で平行であることにより、前縁306近傍の外皮310に誘導熱及び音圧を印加することができる。力384は渦電流380に直交するので、この配向においては、力384は、前縁306に直交する向き(即ち、x方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例98を特徴付けるものであり、実施例98は、上述の実施例93〜97のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、定常磁場382の大きさは、0.1T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場382の強度は、複数の誘導コイル328を流れる複数の位相348の交流電流334により生じる渦電流380のそれぞれと定常磁場382が作用した時に、有意な音圧を外皮310に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場382は、0.1Tを超える大きさの強力な磁場であって、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つを流れる直流電流346によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例99を特徴付けるものであり、実施
例99は、上述の実施例93〜98のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、制御システム350は電源354を含み、この電源は、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つに対して、複数の位相348の交流電流334のうちの1つを供給し、また直流電流346を供給するよう構成されている。
電源354は、誘導コイル330に交流電流334を選択的に供給し、これにより外皮310内に渦電流380、誘導熱、及び/又は音圧を選択的に生成するよう構成されている。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例100を特徴付けるものであり、実施例100は、上述の実施例93〜99のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、各位相348の交流電流334は、定常磁場382の大きさよりも小さい振幅の交流磁場386を発生させる。
各交流磁場386は、外皮310内で渦電流380をそれぞれ発生させ、その渦電流380の振幅は、対応する交流磁場386の振幅に関連する。渦電流380の振幅は、誘導熱の効率に影響し、定常磁場382の大きさは、外皮310に作用して音圧を発生させる力384の振幅に影響する。よって、交流磁場386の振幅及び定常磁場382の大きさの相対的な大小は、翼体300への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧のそれぞれが寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。交流電流334のすべての位相348の振幅は概ね等しいので、それぞれの交流磁場386の振幅も概ね等しい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例101を特徴付けるものであり、実施例101は、上述の実施例100の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、定常磁場382の大きさに対する各交流磁場386の振幅の比率は、いずれも0.1未満且つ0.0001超である。
翼体300の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場386の振幅が定常磁場382の大きさよりも大幅に小さくてもよい。すべての交流磁場386の振幅は概ね等しいので、定常磁場382に対する各振幅の比率も概ね等しい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例102を特徴付けるものであり、実施例102は、上述の実施例93〜101のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、各位相348の交流電流334の振幅は、直流電流346の大きさよりもそれぞれ小さい。
複数の誘導コイル328を流れる複数の位相348の交流電流334は、それぞれ交流磁場386を発生させ、各交流磁場386の振幅は、対応する位相348の交流電流334の振幅に関連する。各交流磁場386は、外皮310内でそれぞれ渦電流380を発生させ、その渦電流380の振幅は、対応する交流磁場386の振幅及び対応する位相348の交流電流334の振幅に関連する。渦電流380の振幅は、誘導熱の効率に影響する。複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つを流れる直流電流346は、定常磁場382を発生させ、この定常磁場382の大きさは直流電流346の大きさに関連する。定常磁場382の大きさは、外皮310に作用して音圧を発生させる力384の振幅に影響する。よって、各位相348の交流電流334の振幅と直流電流346の大きさの相対的な大小は、翼体300への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧が寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例103を特徴付けるものであり、実施例103は、上述の実施例102の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、各位相348の交流電流334の振幅と直流電流346の大きさとの比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体300の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場386の振幅が定常磁場382の大きさよりも大幅に小さくてもよい。複数の交流磁場386それぞれの振幅はすべて概ね等しいので、定常磁場382に対する各振幅の比率も概ね等しい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例104を特徴付けるものであり、実施例104は、上述の実施例80〜103のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、各位相348の交流電流334の周波数は共通であり、最小100kHz(キロヘルツ)且つ最大10MHz(メガヘルツ)である。
各位相348の交流電流334の周波数は共通であり、各位相348の交流電流334の共通周波数は、上述したように、誘導熱が伝わる表皮深さに影響する。周波数が高いほど、表皮深さは浅くなる。表皮深さが外皮310の厚みとほぼ同じであると、誘導熱の効率が向上する。例えば、各位相348の交流電流380の共通周波数は、表皮深さが外皮310の厚みの小さい整数約数(例えば、外皮310の厚みの1/2〜1/4)になるように選択してもよい。また、各位相348の交流電流334の共通周波数は、渦電流380の周波数であり、渦電流380が定常磁場382と作用して発生させる音圧の周波数の半分である。周波数が高いほど、音響による着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去の効率が高くなる。各位相348の交流電流334の共通周波数は、翼体300への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去における誘導熱の効果と音圧の効果を調和させる(バランスをとる)ように選択してもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例105を特徴付けるものであり、実施例105は、上述の実施例104の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、各位相348の交流電流334の共通周波数は、最小で1MHzである。
1MHz以上の共通周波数などのように高い周波数を用いると、音圧の効果が誘導熱の効果よりも高くなりうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例106を特徴付けるものであり、実施例106は、上述の実施例80〜105のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、誘導コイル328は、少なくとも3つの誘導コイルを含み、交流電流334の各位相348は、いずれも異なる。
誘導コイル328の数及び位相348の数が多いほど、進行波音圧を構成する音圧進行波の波形をより制御できる。誘導コイル330が3つ及び位相348が3つであれば、3相電源の使用が可能になる。3つの位相は、均一に分散させてもよい(各位相が他の2つの位相から120度ずれている3相電源と同様)し、不均一に分散させてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例107を特徴付けるものであり、実施例107は、上述の実施例80〜106のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、複数の誘導コイル328の各々はシート形状である。
シート形状の誘導コイルは、扁平誘導コイル、パンケーキ誘導コイル及び/又は平面誘導コイルとも呼ばれる。シート形状の誘導コイルでは、誘導コイルのワイヤは、実質的に2次元(2D)面を構成する螺旋状に巻回されている。この仮想2D面は、平面あるいは平坦でなくてもよい。この仮想2D面は、例えば、翼体300の内部、内部空間308、及び/又は、外皮310の内側表面314などの仮想的な3次元(3D)構造における面であってもよい。シート形状の誘導コイルは、シート形状の誘導コイルのコア(ワイヤの渦巻きの中心)において、そのシートに直交する磁場を生成する。シート形状の誘導コイルは、その誘導コイルのシート形状を構成するシート部分の反対側において、外皮310に対して高い誘導結合を示す。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例108を特徴付けるものであり、実施例108は、上述の実施例80〜107のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を参照すると、複数の誘導コイル328の各々は立体的な形状を有する。
立体的な形状の誘導コイルは、螺旋状ワイヤの中心を内包するコア空間を囲むコイルである。シート形状の誘導コイルには、コア空間を有するものも、有さないものもある(例えば、シート形状の誘導コイルは、円筒状のシェルと合致する形状でもよい)が、螺旋状ワイヤの中心はシート状部分の中に位置する。通常、立体形状のコイルは、実質的に筒状であり、この仮想筒の外側に螺旋状に巻回されている(例えば、ワイヤが巻回された古典的な形状のインダクタである)。立体形状の誘導コイルにより形成される磁場は、螺旋状ワイヤの中心に対して平行であり、且つ、囲まれた空間の長手方向軸に対して概ね平行である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例109を特徴付けるものであり、実施例109は、上述の実施例80〜108のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、複数の誘導コイル328それぞれの一部分336は、外皮310の内側表面314から10mm以下の位置にある。
複数の誘導コイル328それぞれの一部分336は、外皮310及び外皮310の内側表面314に近接している。誘導コイル330の一部分336が外皮310及び外皮310の内側表面314に近いほど、より良好に外皮310と誘導結合し、及び/又は、より強い渦電流380を発生させる。つまり、誘導コイル330の一部分336と外皮310の内側表面314との間の距離は、外皮310内における誘導及び音圧(音響エネルギーとも呼ばれる)の印加効率に影響する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例110を特徴付けるものであり、実施例110は、上述の実施例109の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、複数の誘導コイル328の各々の少なくとも一部分336は、外皮310の内側表面314から1mm以下の位置にある。
効率を高めるため、複数の誘導コイル328それぞれの一部分336は、外皮310の内側表面314のごく近くに配置される。一般的に、一部分336の厚みは、外皮310の厚みの小さい整数倍まで、及び/又は、交流電流334の周波数において外皮310の材料が示す表皮深さの小さい整数倍までである。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例111を特徴付けるものであり、実施例111は、上述の実施例80〜110のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、各誘導コイル330の一部分336は外皮310に対して平行である。
複数の誘導コイル328それぞれの一部分336は、外皮310(即ち、外皮310の内側表面314)と複数の誘導コイル328それぞれの一部分336との間の距離が実質的に一定になるように、外皮310に対して平行に配置されてもよい。距離が一定であると、誘導熱を生成する結合効率を実質的に均一にすることができ、及び/又は、一部分336に対して平行な外皮310における渦電流380を実質的に均一にすることができる。複数の誘導コイル328それぞれの一部分236及び/又は実質的に全体(例えば、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つがシート形状である場合)は、外皮310の内側表面314に概ね合致する形状でもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例112を特徴付けるものであり、実施例112は、上述の実施例80〜111のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、翼体300は、翼部、浸食シールド、尾部、水平安定板、垂直安定板、ウィングレット、タービンエンジン空気取入口、エンジンナセル及びタービンブレードからなる群から選択される。
翼体300は、空力面を有する航空機又はその他の構造体の一部であってもよい。そのような航空機又は構造体は、1つ又は複数の翼体300を有していてもよく、また、翼体300以外の空力面を有していてもよい。航空機やその他の構造体に翼体300を用いると、その航空機又は構造体を着氷の影響から保護することができる。浸食シールドは、前縁306を例とする前縁の全体あるいは大部分を構成するものでもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例113を特徴付けるものであり、実施例113は、上述の実施例80〜112のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を参照すると、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336は、他のすべての誘導コイル328における一部分336よりも前縁306に近接して配置され、且つ、前縁306を加熱するように配置されている。
通常、複数の誘導コイル328は、前縁306と、外側表面312において前縁306に近接する領域と、に対して熱及び音圧を印加するよう構成されている。通常、氷の形成及び/又は蓄積の度合いは、空力構造体の前縁及びその近傍で大きい。複数の誘導コイル328それぞれにおける一部分336の1つ又は複数を、前縁306に対して他の一部分336よりも近接させて配置することで、これら近接する一部分336近傍の外皮310領域に誘導熱及び/又は音圧を集中させることができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例114を特徴付けるものであり、実施例114は、上述の実施例80〜113のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、複数の誘導コイル328それぞれの一部分336は、当該誘導コイル328における他のどの部分よりも前縁306に近接して配置され、且つ、前縁306を加熱するように配置されている。
通常、複数の誘導コイル328は、前縁306と、外側表面312において前縁306に近接する領域と、に対して熱及び音圧を印加するよう構成されている。通常、氷の形成及び/又は蓄積の度合いは、空力構造体の前縁及びその近傍で大きい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例115を特徴付けるものであり、実施例115は、上述の実施例114の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336は、前縁306に交差する配向である。
複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336は、当該一部分336における平行ワイヤが前縁306と交差する配向の場合に、前縁306と交差する配向になる。外皮310における渦電流380の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336が前縁306と交差する配向の場合、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336に、対応する位相348の交流電流334が流れることにより形成される渦電流380は、前縁306と交差する。力384は渦電流380に直交するので、この配向においては、力384は、前縁306に直交する向き(即ち、x方向)又は前縁306に平行な向き(即ち、y方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例116を特徴付けるものであり、実施例116は、上述の実施例114の技術事項も包含する。概ね図3を参照すると、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336は、前縁306に対して平行である。
複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336は、当該一部分336における平行ワイヤが前縁306に対して平行な場合に、前縁306に対して平行になる。外皮310における渦電流380の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336が前縁306に対して平行な場合、複数の誘導コイル328のうちの少なくとも1つにおける一部分336に、対応する位相348の交流電流334が流れることにより形成される渦電流380は、前縁306に対して平行である。力384は渦電流380に直交するので、この配向においては、力384は、前縁306に直交する向き(例えば、x方向又はz方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例117を特徴付けるものであり、実施例117は、上述の実施例80〜116のいずれの技術事項も包含する。図3を参照すると、翼体300は温度センサ360をさら含み、このセンサは、外皮310の外側表面312に沿って流れる流体層318の周囲温度を測定するよう構成されている。
温度センサ360は、周囲温度を測定するよう構成されており、制御システム350が温度センサを利用して周囲温度を判定できるように構成されている。例えば、温度センサ360は、周囲温度を示す信号を制御システム350に送出してもよい。温度センサ360は、周囲温度を直接的又は間接的に測定するよう構成することができる。例えば、温度センサ360は、外皮310の外側表面312に沿って流れる流体層318と直接に熱接触する構成でもよい。他の例では、温度センサ360は、外側表面312に沿って流れる流体層318と熱接触する部分において、外皮310の外側表面312の温度を測定する構成でもよい。温度センサ360の例としては、熱電対、測温抵抗体、赤外線センサ、サーミスタが含まれる。これに加えて、あるいは、これに代えて、1つ又は複数の温度センサ360が、翼体300から離間して配置されており、外皮310の外側表面312に沿って流れる流体層318の温度特性、及び/又は、その周囲温度に関連する温度特性を測定するよう構成されていてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例118を特徴付けるものであり、実施例118は、上述の実施例80〜117のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、制御システム350は電源354を含み、この電源は、複数の位相348の交流電流334を複数の誘導コイル328に対して供給するよう構成されている。
電源354は、複数の誘導コイル328に複数の位相348の交流電流334を選択的
に供給し、これにより外皮310内に渦電流380、誘導熱、及び/又は音圧を選択的に生成するよう構成されている。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例119を特徴付けるものであり、実施例119は、上述の実施例118の技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、電源354は、3相交流電流を供給するよう構成されている。
3相交流電流は、送電及び/又は送電の信頼性に有利である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例120を特徴付けるものであり、実施例120は、上述の実施例118〜119のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14を参照すると、制御システム350は、コントローラ352を含む。コントローラは、外皮310の外側表面312への着氷を生じさせることが既知である第1周囲状況と、外側表面312への着氷を抑制することが既知である第2周囲状況と、を示す信号を受信するようプログラムされている。第1周囲状況及び第2周囲状況はいずれも、外皮310の外側表面312に沿って流れる流体層318の周囲温度を含む。コントローラ352は、第1周囲状況に基づいて、外皮310の制御領域316に誘導熱及び音圧を発生させるべく複数の誘導コイル328に複数の位相348の交流電流334を電源354によって供給させるように、プログラムされている。コントローラ352は、第2周囲状況に基づいて、複数の誘導コイル328に複数の位相348の交流電流334を電源354によって供給することを停止するようにプログラムされている。
コントローラ352は、そのままにすれば外皮310の外側表面312への着氷を生じさせうる周囲状況、あるいは、着氷を抑制しうる周囲状況(例えば、第1周囲状況及び第2周囲状況)に基づいて、電源354のオンオフを行って、誘導熱及び音圧の印加を制御するよう構成されている。コントローラ352は、コンピュータ(例えば、プロセッサ及びメモリ)及び/又は専用のハードウェアで構成することができる。コントローラ352は、その機能(例えば、信号の受信、電源354から電流を供給させる制御、電源354からの電流供給を停止させる制御)を、ソフトウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアによって実現することができる。コントローラ352は、組み込み型コンピュータ及び/又は組み込み型システムとも呼ばれる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例121を特徴付けるものであり、実施例121は、上述の実施例120の技術事項も包含する。全体としては図3を、特に、例えば図14を参照すると、コントローラ352は、周囲温度が第1閾値温度を下回った場合に、複数の誘導コイル328に複数の位相348の交流電流334を電源354によって供給させるようにもプログラムされている。
コントローラ352は、翼体300の外側表面312に着氷が生じうることが既知である温度などの第1閾値温度を周囲温度が下回った場合に、電源354によって電流を供給させるよう構成されている。第1閾値温度は、所定の閾値であってもよく、あるいは、他のパラメータ(例えば、翼体300の外側表面312の温度、湿度、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302の動作時間など)の関数であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例122を特徴付けるものであり、実施例122は、上述の実施例121の技術事項も包含する。概ね図3を、特に例えば、図14を参照すると、第1閾値温度は、水の凝固点より高く5℃より低い温度である。
水の凝固点から5℃までの温度範囲は、翼体300に衝突する水分が液相に留まる状態から氷となって付着する状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第1閾値
は、翼体300への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のために誘導熱及び音圧をオンにする必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例123を特徴付けるものであり、実施例123は、上述の実施例121〜122のいずれの技術事項も包含する。全体としては図3を、特に、例えば図14を参照すると、コントローラ352は、周囲温度が第2閾値温度を上回った場合に、複数の誘導コイル328に複数の位相348の交流電流334を電源354によって供給することを停止するようにもプログラムされている。
コントローラ352は、翼体300の外側表面312への着氷が生じにくいことが既知である温度などの第2閾値温度を周囲温度が上回った場合に、電源354による電流供給を停止させるよう構成されている。第2閾値温度は、所定の閾値であってもよく、あるいは、他のパラメータ(例えば、翼体300の外側表面312の温度、湿度、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302の動作時間など)の関数であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例124を特徴付けるものであり、実施例124は、上述の実施例123の技術事項も包含する。概ね図3を、特に図14〜図16を参照すると、第2閾値温度は第1閾値温度とは異なる。
第2閾値温度は、第1閾値温度と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第2閾値温度と第1閾値温度とが異なる値であると、コントローラは、誘導熱と音圧のオンオフを異なる温度で実行することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例125を特徴付けるものであり、実施例125は、上述の実施例123〜124のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に図14〜図16を参照すると、第2閾値温度は第1閾値温度より高い。
第2閾値温度が第1閾値温度より高いと、誘導熱及び音圧のオンオフに伴う振動を防止できる傾向にある。第2閾値温度が第1閾値温度と同じであると、単一の閾値温度に対して周囲温度が小幅に変化することによって、コントローラ352が電源354に逆の動作を短時間に連続して命令する場合が生じうる。交流電流334を供給して周囲温度を上昇させる場合、電源354による電力供給を行わせることよって周囲温度が上昇しうる。その結果、コントローラ352は、電源354に電力供給を停止させることになりうる。そして、その結果、周囲温度が低下しうる。このような状況では、コントローラ352及び音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302に振動が生じる可能性があり、誘導熱及びコントローラ音圧の供給が効果的に行われない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例126を特徴付けるものであり、実施例126は、上述の実施例123〜125のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に図14〜図16を参照すると、第2閾値温度は、2℃超且つ10℃未満である。
2℃超且つ10℃未満の温度範囲は、翼体300に衝突する水分が、氷となって付着する状態から液相に留まる状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第2閾値は、翼体300への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のための誘導熱及び音圧をオフにする必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例127を特徴付けるものであり、実施例127は、上述の実施例80〜126のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、外皮310はニッケル−鉄合金を含む。
ニッケル−鉄合金は、外皮310に適した合金の一種である。ニッケル−鉄合金は、導電性及び導磁性を有し、誘導熱及び音圧の影響を受ける。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例128を特徴付けるものであり、実施例128は、上述の実施例80〜127のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、外皮310の厚みは1mm未満且つ0.001mm超である。
外皮310は全般的に薄いので、外皮310は、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302により生成される誘導熱及び音圧に即座に影響される。外皮310の厚みは、複数の位相348の交流電流334に関して実用的及び/又は所望の周波数、及び/又は、そのような周波数での表皮深さに基づいて選択することができる。外皮310は、翼体300としての状況に晒された場合に構造的な一体性を保つのに十分な厚みを有する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例129を特徴付けるものであり、実施例129は、上述の実施例80〜128のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、外皮310は強磁性を有する。
上述したように、外皮310が強磁性である場合、磁場が外皮310内に集中する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例130を特徴付けるものであり、実施例130は、上述の実施例80〜129のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、外皮310の比透磁率は、1,000超且つ10,000,000未満である。
磁性材料の比透磁率は、1よりもかなり大きく、非磁性材料の比透磁率は、1に近い。比透磁率が高いほど、その材料が磁化しやすいこと及び磁場が集中しやすいことを示す。典型的な磁性材料の比透磁率は約100よりも高く、高透磁率の材料の比透磁率は約1,000より高い。既知のあらゆる材料の比透磁率は10,000,000未満である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例131を特徴付けるものであり、実施例131は、上述の実施例80〜130のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を、特に、例えば図14〜図16を参照すると、外皮310のキュリー温度は300℃未満且つ50℃超である。
キュリー温度とは、強磁性材料の転移温度である。キュリー温度より低温では、材料は高い比透磁率を示すが、キュリー温度より高温では、その材料は、常磁性を示し、比透磁率も低くなる。外皮310が、(特定の温度で示す強磁性あるいは導磁性とは逆の)常磁性に変化すると、誘導熱の効率及び/又は音圧の生成が著しく小さくなる。よって、外皮310のキュリー温度が十分に低ければ、(例えば、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302の誤動作や翼体300が過度な太陽加熱に晒されるなどにより)外皮310が熱くなりすぎた場合に、誘導加熱及び/又は音圧の大部分を自動的に停止するように音波・誘導加熱ハイブリッドシステム302を構成することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例132を特徴付けるものであり、実施例132は、上述の実施例80〜131のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を参照すると、翼体300は、内部空間308に電気的絶縁体320をさらに含み、この電気的絶縁体320は、外皮310に結合されている。
翼体300内に含まれる導電性材料及び/又は導磁性材料は、外皮310と同様に、加
熱及び/又は音圧を受ける。よって、翼体300内の設けられる枠、支持体、その他の構造体は、電気的に絶縁性のものとするか、誘導コイル330及び/又は磁石340から十分離間した位置に配置するか、その両方とする。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例133を特徴付けるものであり、実施例133は、上述の実施例132の技術事項も包含する。概ね図3を参照すると、電気的絶縁体320は外皮310を支持する。
翼体300は、電気的絶縁体320などの内側支持体を含んで構成することができる。内側支持体は、外皮310及び/又は誘導コイル330を支持し、及び/又は、翼体300の空力形状を保つ。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例134を特徴付けるものであり、実施例134は、上述の実施例132〜133のいずれの技術事項も包含する。概ね図3を参照すると、電気的絶縁体320は少なくとも1つの磁石340を支持する。
少なくとも1つの磁石340は、定常磁場を生成するが、この磁場は、外皮310の制御領域316における音圧に影響する定常磁場382に寄与しうる。少なくとも1つの磁石340の各々は、永久磁石342であっても、電磁石344であってもよい。
概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、翼体100、200、300の外部表面104、204、304への着氷を抑制する方法400が開示されている。方法400は、外部表面104、204、304への着氷を生じさせることが既知である第1周囲状況を検知すること(ブロック402)を含む。また、方法400は、第1周囲状況が検知された場合に、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)を含む。加えて、方法400は、外部表面104、204、304への着氷を抑制することが既知である第2周囲状況を検知すること(ブロック406)を含む。さらに、方法400は、第2周囲状況が検知された場合に、外部表面104、204、304への誘導熱及び音圧の供給を停止すること(ブロック408)を含む。本段落に記載したこの技術的事項は、本開示の実施例135を特徴付けるものである。
方法400によれば、翼体の外部表面への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。方法400は、着氷を生じさせることが既知である第1周囲状況を検知すること402を含み、第1周囲状況を検知すること402により、着氷が生じうる周囲状況に(例えば、供給404により)対処することが可能になる。また、方法400は、第1周囲状況が検知された場合に、外部表面に誘導熱及び音圧を供給すること404を含み、誘導熱及び音圧を供給すること404により、音波・誘導加熱ハイブリッドシステム102、202、302に関して説明したように、外部表面に生じうる着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去が可能になる。方法400は、着氷を抑制することが既知である第2周囲状況を検知すること406を含み、第2周囲状況を検知すること406により、着氷を抑制することが既知である周囲状況に(例えば、供給停止408により)対応することが可能になる。さらに、方法400は、第2周囲状況が検知された場合に、外部表面への誘導熱及び音圧の供給を停止すること408を含む。第2周囲状況は、誘導熱や音圧を必要とすることなく、既に着氷を抑制する状況であるので、誘導熱及び音圧の供給を継続することが不要な状況になったら、供給を停止すること408でエネルギーを節約することができる。
誘導熱を供給すること404により、翼体の外皮、特に、外側表面及び/又は前縁の温度の上昇させること、及び/又は、維持することができる。音圧を供給すること404により、外部表面に音波振動を発生させて、着氷を抑制することができる。音波振動によれ
ば、外部表面を非静的な状態(振動状態)に保つことができる。静的な状態(非振動状態)の構造体は、非静的な状態(振動状態)の構造体に比べ、氷晶核の形成、水分の付着、及び/又は、水分粒子への熱伝導が生じやすい。誘導加熱と(音波振動の形態での)音圧とを組み合わせれば、いずれか一方の技術を単独で用いるよりも効率的に翼体への着氷を抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例136を特徴付けるものであり、実施例136は、上述の実施例135の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304は、外皮110、210、310の外側表面112、212、312である。外皮110、210、310は、外側表面112、212、312とは反対側の内側表面114、214、314を有する。外皮110、210、310は、導磁性及び導電性を有する。方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、外皮110、210、310に渦電流180、280、380を発生させ、この渦電流180、280、380と交差する定常磁場182、282、382を外皮110、210、310内に形成すること(ブロック420)を含む。渦電流180、280、380は、外皮110、210、310にジュール加熱を発生させる交流の電流である。
渦電流は、外皮に誘導的に生成され、外皮にジュール加熱による熱を発生させる。渦電流と交差する定常磁場により、外皮内に力(ローレンツ力)が発生する。ローレンツ力は、印加電界がない状態では、荷電粒子(例えば、電子)の速度と磁場(B磁場)とのクロス積に比例する。外皮内の交流電流(例えば、渦電流)が、外皮内の定常磁場と作用することで発生するローレンツ力は、外皮内で(交流電流の周波数の2倍の)音波振動を発生させる。渦電流が定常磁場と作用することにより、ローレンツ力及び音波振動が外皮内で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。外皮内において渦電流と定常磁場とが平行である場合、クロス積がゼロになるので、外皮内におけるローレンス力はゼロになる。よって、ローレンツ力及び音響振動を発生させるべく、定常磁場は交差する向きに形成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例137を特徴付けるものであり、実施例137は、上述の実施例136の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382は、渦電流180、280、380と直交する。
渦電流と直交する定常磁場を形成すると、ローレンツ力のクロス積が最大になるので、ローレンツ力は実質的に最大になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例138を特徴付けるものであり、実施例138は、上述の実施例136〜137のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382を形成することは、外皮110、210、310により規定された内部空間108、208、308に永久磁石142、242、342を配置することを含む。
定常磁場は、永久磁石による永久磁場の場合もある。永久磁石は、電子や電流なしに磁場を発生させることができる。よって、永久磁石を用いることにより、翼体及び/又は音波・誘導加熱ハイブリッドシステムの構造及び/又は制御を簡略化することが可能である。外皮により規定された内部空間に永久磁石を配置すれば、翼体を流れる空気流の空力に永久磁石が影響しないようにできる。
永久磁石が翼体の内部空間に配置されており、外皮が導磁性(及び/又は、強磁性)であれば、結果として、磁場(例えば定常磁場)のほとんど又はすべてが翼体に内包される。外皮がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えなければ)、磁力線は外皮より遠くまで延びるが、実際には、外皮内で方向が変えられる。つまり、永久磁石の磁場は翼体の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体の外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例139を特徴付けるものであり、実施例139は、上述の実施例136〜138のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382を形成することは、外皮110、210、310により規定された内部空間108、208、308に配置された誘導コイル130、230、330に、直流電流146、246、346を供給することを含む。
誘導コイルに直流電流(DC電流及び定常電流とも呼ばれる)が流れると、外皮に定常磁場が形成される。通常、定常磁場は外皮内で電流(例えば、渦電流)と作用して、外皮内に力(ローレンツ力)を発生させる。
誘導コイルに加え、誘導コイルを流れる直流電流により形成される磁場が翼体の内部空間の中に収まっており、外皮が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場)のほとんど又はすべてが、翼体に内包される。外皮がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えなければ)、磁力線は外皮より遠くまで延びるが、実際には、外皮内で方向が変えられる。つまり、誘導コイルを流れる直流電流による磁場は、翼体の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場は、誘導コイルに対する直流電流の供給(又は、非供給)により、制御システムで制御可能である。定常磁場を所望の態様でオン、オフすることにより、外皮に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで、翼体内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要をなくすことができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例140を特徴付けるものであり、実施例140は、上述の実施例136〜139のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大きさは、渦電流180、280、380に対応する交流磁場186、286、386の振幅よりも大きい。
交流磁場は、外皮内で渦電流を発生させ、その渦電流の振幅は交流磁場の振幅に関連する。渦電流の振幅は、誘導熱の効率に影響する。また、定常磁場の大きさは、外皮に作用して音圧を発生させる力の振幅に影響する。よって、交流磁場の振幅及び定常磁場の大きさとの相対的な大小は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧のそれぞれが寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例141を特徴付けるものであり、実施例141は、上述の実施例140の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大き
さに対する交流磁場186、286、386の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場の振幅が定常磁場の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例142を特徴付けるものであり、実施例142は、上述の実施例140〜141のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大きさは、0.1T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場の強度は、誘導コイルを流れる交流電流により生じる渦電流と定常磁場とが作用した時に、有意な音圧を外皮に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場は、0.1Tを超える大きさの強力な磁場であって、誘導コイルを流れる直流電流によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例143を特徴付けるものであり、実施例143は、上述の実施例135〜142のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、音圧は、連続波の音圧(continuous wave acoustic pressure)である。
連続波の音圧は、実質的に一定の波形(例えば、サイン波)を有する音圧である。連続波の音圧は、衝撃性ではない。つまり、着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のために行う供給404における音圧は、短い衝撃(impulse)又はバースト(burst)をくりかえす音圧であることを要しない。連続波の音圧の方が、より簡易に、及び/又は、より高いエネルギー効率で生成可能である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例144を特徴付けるものであり、実施例144は、上述の実施例135〜143のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、外部表面104、204、304に音波を誘導的に発生させることを含む。
音波は、外部表面に細かな振動(oscillatory vibrations)を与える。外部表面を振動させることにより、水分が氷晶核を形成して着氷したり、熱伝導が行われたりする表面の面積及び/又は接触時間を減らすことができる。よって、外部表面を振動させることにより、外部表面への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去を促進できる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例145を特徴付けるものであり、実施例145は、上述の実施例144の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に音波を誘導的に発生させることは、水分粒子が外部表面104、204、304に接触する時間を短くして、当該水分粒子が外部表面104、204、304上で凍結することを抑制するのに十分な振幅及び周波数の音波を生成することを含む。
水分粒子の接触時間を短くすると、氷晶核の形成、水分の付着及び/又は熱伝導を制限できる。よって、接触時間の低減により、外部表面への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去を促進できる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例146を特徴付けるものであり、実施例146は、上述の実施例144〜145のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に音波を誘導的に発生させることは、水分粒子と外部表面104、204、304と間の有効接触表面積(effective contact surface area)を小さくして、当該水分粒子が外部表面104、204、304上で凍結することを抑制するのに十分な振幅及び周波数の音波を生成することを含む。
水分粒子の有効接触表面積を小さくすると、氷晶核の形成、水分の付着及び/又は熱伝導を制限できる。よって、有効接触表面積の低減により、外部表面への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去を促進できる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例147を特徴付けるものであり、実施例147は、上述の実施例144〜146のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に音波を誘導的に発生させることは、1μm(ミクロン)未満且つ0.001μmの振幅の音波を外部表面104、204、304に発生させることを含む。
小さい振幅の音波でも、翼体の外部表面への着氷を十分に抑制、防止、低減及び/又は除去できる。音波の振幅が大きいと、外部表面及び/又は外皮に応力及び疲労を生じさせうる。また、振幅の大きな音波を生成するには、振幅の小さな音波の生成に比べてより大きなエネルギーを必要としうる。よって、振幅の小さな音波を用いれば、外部表面及び/又は外に対する悪影響の低減及びエネルギー効率の向上が可能になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例148を特徴付けるものであり、実施例148は、上述の実施例147の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、振幅は、100nm(ナノメートル)未満且つ1nm超である。
非常に小さな振幅の音波でも、翼体の外部表面への着氷を十分に抑制、防止、低減及び/又は除去できる。振幅が100nm未満であれば、外部表面及び/又は外皮の構造的な一体性に与える影響は、無視できる程度である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例149を特徴付けるものであり、実施例149は、上述の実施例144〜148のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、30に音波を誘導的に発生させることは、最小200kHz(キロヘルツ)及び最大20MHz(メガヘルツ)の周波数の音波を生成することを含む。
上述したように、交流電流の周波数は、誘導熱が伝わる表皮深さに影響する。周波数が高いほど、表皮深さは浅くなる。表皮深さが外皮の厚みとほぼ同じであると、誘導熱の効率が向上する。例えば、交流電流の周波数は、表皮深さが外皮の厚みの小さい整数約数(例えば、外皮の厚みの1/2〜1/4)になるように選択してもよい。また、交流電流の周波数は、渦電流の周波数であり、渦電流が定常磁場と作用して生成する音圧の周波数の半分である。周波数が高いほど、音響による着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去の効率が高くなる。交流電流の周波数は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去における誘導熱の効果と音圧の効果を調和させる(バランスをとる)ように選択してもよい。音圧の音波の周波数は、交流電流の周波数の2倍でもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例150を特徴付けるものであり、実
施例150は、上述の実施例149の技術事項も包含する。全体として図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、音波の周波数は最小2MHzである。
1MHz以上の周波数などのように高い周波数の交流を用いると、音圧の効果が誘導熱の効果よりも高くなりうる。音圧の音波の周波数は、交流電流の周波数の2倍でもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例151を特徴付けるものであり、実施例151は、上述の実施例144〜150のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、音波は、外部表面104、204、304に対して平行な変位を有する。
外部表面に対して平行な変位を持つ音波は、せん断波とも呼ばれる。せん断波は、外部表面への着氷を効率的に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例152を特徴付けるものであり、実施例152は、上述の実施例151の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、翼体100、200、300は、前縁106、206、306を有し、音波は、前縁106、206、306に対して平行な変位を有する。
前縁は、外部表面に沿っているので、前縁に対して平行な変位は、前縁における外部表面に対しても平行である。よって、前縁に対して平行な変位を有する音波は、前縁における外部表面に沿ったせん断波である。せん断波は、外部表面の前縁への着氷を効率的に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例153を特徴付けるものであり、実施例153は、上述の実施例151の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、翼体100、200、300は、前縁106、206、306を有し、音波は、前縁106、206、306と交差する方向の変位を有する。
前縁は、外部表面に沿っており、前縁との交差には、外部表面に対して平行な場合及び外部表面に対して直交する場合が含まれる。外部表面に対して直交する変位を有する音波は、疎密波とも呼ばれる。よって、前縁と交差する方向の変位を有する音波には、せん断波及び/又は疎密波が含まれる。せん断波は、外部表面の前縁への着氷を効率的に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。疎密波は、外部表面の前縁への着氷を効率的に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例154を特徴付けるものであり、実施例154は、上述の実施例144〜150のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、音波は、外部表面104、204、304と交差する方向の変位を有する。
外部表面に直交する方向の変位を有する音波は、疎密波とも呼ばれる。疎密波は、外部表面への着氷を効率的に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例155を特徴付けるものであり、実施例155は、上述の実施例144〜154のいずれの技術事項も包含する。全体として図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、音波は進行波で
ある。
進行波の音圧は、外皮の異なる部分を異なる位相で振動させ、その振動の振幅ピークの位置は、振動の瞬時位相にしたがって外皮の外側表面を移動する。進行波は、複数の渦電流を異なる位相で生成することにより形成される。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例156を特徴付けるものであり、実施例156は、上述の実施例135〜155のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、翼体100、200、300の内部に配置されている誘導コイル130、230、330に交流電流134、234、334を供給すること(ブロック430)を含む。
誘導コイルに交流電流を供給すること430により、交流磁場が形成される。誘導コイルが十分に近接して配置されていれば(誘導コイルが外皮に誘導結合されていれば)、交流磁場が導電性の外皮と作用して、渦電流が形成される。渦電流が外皮内の定常磁場と作用すると、ローレンツ力及び音波振動が外皮内で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例157を特徴付けるものであり、実施例157は、上述の実施例156の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、誘導コイル130、230、330を流れる交流電流134、234、334が形成する交流磁場186、286、386の振幅よりも大きい定常磁場182、282、382によって、誘導コイル130、230、330が取り囲まれるようにすることを含む。
交流磁場は、外皮内で渦電流を発生させ、その渦電流の振幅は交流磁場の振幅に関連する。渦電流の振幅は、誘導熱の効率に影響し、定常磁場の大きさは、外皮に作用して音圧を発生させるローレンツ力の振幅に影響する。よって、交流磁場の振幅と定常磁場の大きさとの相対的な大小は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧が寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例158を特徴付けるものであり、実施例158は、上述の実施例157の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、誘導コイル130、230、330に直流電流146、246、346を供給して定常磁場182、282、382を形成することを含む。
誘導コイルに直流電流(DC電流及び定常電流とも呼ばれる)が流れると、外皮内に定常磁場が形成される。定常磁場は、通常、外皮内で電流(例えば、渦電流)と作用して、外皮内に力(ローレンツ力)を発生させる。
誘導コイルと、誘導コイルを流れる直流電流により形成される磁場と、が翼体の内部空間内に収まってれており、外皮が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場)のほとんど又はすべてが翼体に内包される。外皮がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えなければ)、磁力線は外皮より遠くまで延びるが、実際には、外皮内で方向が変えられる。つまり、誘導コイルを流れる直流電流によ
る磁場は、翼体の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に関して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場は、誘導コイルに対する直流電流の供給(又は、非供給)により制御可能である。定常磁場を所望の態様でオン、オフすることにより、外皮に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで、翼体内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要をなくすことができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例159を特徴付けるものであり、実施例159は、上述の実施例158の技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、交流電流134、234、334の振幅は、直流電流146、246、346の大きさよりも小さい。
誘導コイルを流れる交流電流は交流磁場を発生させ、その交流磁場の振幅は交流電流の振幅に関連する。交流磁場は、外皮内で渦電流を発生させ、その渦電流の振幅は交流磁場の振幅及び交流電流の振幅に関連する。渦電流の振幅は、誘導熱の効率に影響する。また、誘導コイルを流れる直流電流は定常磁場を発生させ、その定常磁場の大きさは直流電流大きさに関連する。定常磁場の大きさは、外皮に作用して音圧を発生させる力の振幅に影響する。よって、交流電流の振幅及び直流電流の大きさの相対的な大小は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧が寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例160を特徴付けるものであり、実施例160は、上述の実施例158〜159のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、直流電流146、246、346の大きさに対する交流電流134、234、334の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流電流の振幅が直流電流の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例161を特徴付けるものであり、実施例161は、上述の実施例157〜160のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382は、翼体100、200、300内に永久磁石142、242、342を配置することにより形成される。
永久磁石は、電子や電流がなくても磁場を発生させる。よって、永久磁石を用いれば、翼体及び/又は音波・誘導加熱ハイブリッドシステムの構造及び/又は制御を簡略化することが可能である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例162を特徴付けるものであり、実施例162は、上述の実施例157〜161のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、電磁石144、244、344に通電することにより、定常磁場182、282、382を形成することを含
む。
コイルに定常(直流、DC)電流が流れると、電磁石は定常磁場を形成する。電流の流れを制御することにより、磁場のオンオフが可能である。これに加えて、あるいは、これに代えて、磁場の強度及び方向を電流の流れに応じて調整することが可能である。通常、電磁石は制御可能であり、制御可能磁石とも呼ばれる。誘導コイルは、電磁石のコイルとして機能しうる。誘導コイルは、定常電流を流すように適合させることができ、よって、誘導コイルは定常磁場を発生させることが可能である。定常磁場を生成するための定常電流は、通常、交流電流の振幅よりも(大きさが)かなり大きい。よって、定常電流を流すように構成された誘導コイルは、交流電流のみを流すように構成された誘導コイルにくらべて、断面積が大きい(抵抗が低い)ワイヤにより構成されうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例163を特徴付けるものであり、実施例163は、上述の実施例157〜162のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大きさに対する交流磁場186、286、386の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場の振幅が定常磁場の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例164を特徴付けるものであり、実施例164は、上述の実施例157〜163のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大きさは、0.1T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場の強度は、誘導コイルを流れる交流電流により生じる渦電流と定常磁場とが作用した時に、有意な音圧を外皮に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場は、0.1Tを超える大きさの強力な磁場であって、誘導コイルを流れる直流電流によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例165を特徴付けるものであり、実施例165は、上述の実施例156〜164のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、翼体100、200、300の外部表面104、204、304を規定する外皮110、210、310に定常磁場182、282、382を形成することを含む。定常磁場182、282、382の大きさは、誘導コイル130、230、330を流れる交流電流134、234、334により形成される交流磁場186、286、386の振幅よりも大きい。
交流磁場外皮内で渦電流を発生させ、その渦電流の振幅は交流磁場の振幅に関連する。渦電流の振幅は、誘導熱の効率に影響し、定常磁場の大きさは、外皮に作用して音圧を発生させる力の振幅に影響する。よって、交流磁場の振幅と定常磁場の大きさとの相対的な大小は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧が寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例166を特徴付けるものであり、実施例166は、上述の実施例165の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図
1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、誘導コイル130、230、330に直流電流146、246、346を供給することにより、定常磁場182、282、382を形成することを含む。
誘導コイルに直流電流(DC電流とも、定常電流とも呼ばれる)が流れることにより、外皮内に定常磁場が形成される。定常磁場は、通常、外皮内で電流(例えば、渦電流)と作用して、外皮内に力(ローレンツ力)を発生させる。
誘導コイルと、誘導コイルを流れる直流電流により形成される磁場と、が翼体の内部空間に収まっており、外皮が導磁性(及び/又は、強磁性)を有するので、結果として、磁場(例えば定常磁場)のほとんど又はすべてが翼体に内包される。外皮がない(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えない)場合には、磁力線はより遠くまで延びるが、実際には、外皮内で方向が変えられる。つまり、誘導コイルを流れる直流電流の磁場は、翼体の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体の外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
定常磁場は、誘導コイルに対する直流電流の供給(又は、非供給)により制御可能である。定常磁場を所望の態様でオン、オフすることにより、外皮に音波振動を与えることができる。音波振動の制御に加えて、制御可能な定常磁場をオフにすることで翼体内の高磁場を消滅させることもできる。したがって、翼体内における高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がなくなる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例167を特徴付けるものであり、実施例167は、上述の実施例166の技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、交流電流134、234、334の振幅は、直流電流146、246、346の大きさよりも小さい。
誘導コイルに流れる交流電流は交流磁場を発生させ、その交流磁場の振幅は交流電流の振幅に関連する。交流磁場は外皮内に渦電流を発生させ、その渦電流の振幅は、交流磁場の振幅及び交流電流の振幅に関連する。渦電流の振幅は、誘導熱の効率に影響する。また、誘導コイルを流れる直流電流は定常磁場を発生させ、その定常磁場の大きさは直流電流大きさに関連する。定常磁場の大きさは、外皮に作用して音圧を発生させる力の振幅に影響する。よって、交流電流の振幅及び直流電流の大きさの相対的な大小は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去について誘導熱及び音圧が寄与する度合いに影響する。磁場の強度(振幅又は大きさ)が同じであれば、誘導熱の方が力の生成よりも効率がよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例168を特徴付けるものであり、実施例168は、上述の実施例166〜167のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、直流電流146、246、346の大きさに対する交流電流134、234、334の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流電流の振幅が直流電流の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例169を特徴付けるものであり、実
施例169は、上述の実施例165〜168のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382は、翼体100、200、300内の永久磁石142、242、342により形成される。
定常磁場は、永久磁石からの永久磁場の場合もある。永久磁石は、電子や電流なしに磁場を発生させることができる。よって、永久磁石を用いることにより、翼体及び/又は音波・誘導加熱ハイブリッドシステムの構造及び/又は制御を簡略化することが可能である。外皮により規定された内部空間に永久磁石を配置すれば、翼体における空気流の空力に永久磁石が影響しないようにできる。
永久磁石が翼体の内部空間に配置されており、外皮が導磁性(及び/又は、強磁性)であれば、結果として、磁場(例えば定常磁場)のほとんど又はすべてが翼体に内包される。外皮がなければ(あるいは、導磁性及び/又は強磁性を備えなければ)、磁力線は外皮より遠くまで延びるが、実際には、外皮内で方向が変えられる。つまり、永久磁石からの磁場は、翼体の外側には存在しないか、存在してもわずかである。よって、翼体の外で行う作業の人員、ツール、あるいは備品に対して、高磁場付近で作業する場合の特別な予防措置を講じる必要がない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例170を特徴付けるものであり、実施例170は、上述の実施例165〜169のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、翼体100、200、300の中に配置された電磁石144、244、344に通電することにより、定常磁場182、282、382を形成することを含む。
コイルに定常(直流DC)電流が流れると、電磁石は定常磁場を形成する。電流の流れを制御することにより、磁場のオンオフが可能である。これに加えて、あるいは、これに代えて、磁場の強度及び方向を電流の流れに応じて調整することが可能である。通常、電磁石は制御可能であり、制御可能磁石とも呼ばれる。誘導コイルは、電磁石のコイルとして機能しうる。誘導コイルは、定常電流を流すように適合させることができ、よって、誘導コイルは定常磁場を発生させることが可能である。定常磁場を生成するための定常電流は、通常、交流電流の振幅よりも(大きさが)かなり大きい。よって、定常電流を流すように適合させた誘導コイルは、交流電流のみを流すように構成された誘導コイルにくらべて、断面積が大きい(抵抗が低い)ワイヤにより構成されうる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例171を特徴付けるものであり、実施例171は、上述の実施例165〜170のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大きさに対する交流磁場186、286、386の振幅の比率は、0.1未満且つ0.0001超である。
翼体の着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去に音圧が寄与する度合いが大きく、又は、より大きくなるシステムを構築するために、交流磁場の振幅が定常磁場の大きさよりも大幅に小さくてもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例172を特徴付けるものであり、実施例172は、上述の実施例165〜171のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、定常磁場182、282、382の大きさは、0.1T(テスラ)超且つ100T未満である。
定常磁場の強度は、誘導コイルを流れる交流電流により生じる渦電流と定常磁場とが作用した時に、有意な音圧を外皮に生じさせるのに十分な強度である。定常磁場は、0.1Tを超える大きさの強力な磁場であって、誘導コイルを流れる直流電流によって実用的に形成しうる磁場であってもよい。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例173を特徴付けるものであり、実施例173は、上述の実施例156〜172のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、翼体100、200、300は、前縁106、206、306を有し、誘導コイル130、230、330は、前縁106、206、306に最も近く、且つ、前縁106、206、306に対して平行な一部分136、236、336を含む。
誘導コイルの一部分であって、前縁に最も近い一部分は、前縁に対して後ろ側、及び/又は、下流に相当する誘導コイル部分とも言える。前縁は、外皮の外側表面上にあり、誘導コイルは、外皮により規定される内部空間に配置されている。外皮の内側表面が内部空間に面している。誘導コイルにおいて前縁に最も近い部分は、概して、前縁に最も近い内側表面部分に対して、真後ろ又は下流(即ち、内側表面上において前縁から外皮の厚み分だけ離間した位置)にある部分である。
誘導コイルの一部分は、誘導コイルの平行ワイヤの一部分である。通常、一部分は、誘導コイルの仮想面の一部分である。誘導コイルの形状及び誘導コイルの一部分の形状は、誘導コイルの外形により決まる。例えば、誘導コイルは、螺旋状のワイヤで構成されてもよい。規則的な螺旋の外形は円筒形であり、そのような誘導コイルは、円筒誘導コイルとも呼ばれる。円筒誘導コイルにおける一部分は、円筒誘導コイルの外形を規定する円筒の一部分に相当する。
誘導コイルの一部分が前縁に対して平行になるのは、一部分の平行ワイヤが前縁に対して平行な場合である。外皮における渦電流の方向は、平行ワイヤの方向により定まる。よって、誘導コイルの一部分が前縁に対して平行である場合、誘導コイルの一部分に交流電流が流れることにより発生する渦電流は、前縁と平行に形成される。力は渦電流に直交するので、この配向においては、力は、前縁に直交する向き(例えば、x方向又はz方向)になる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例174を特徴付けるものであり、実施例174は、上述の実施例135〜173のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304は、導磁性及び導電性を有する外皮110、210、310の外側表面112、212、312である。
外皮が導磁性を有しているので、外皮内に磁場が集中しやすい。外皮の導磁性は、水の凝固点付近やそれより低い温度、且つ、翼体の最低動作温度を超える温度で発揮される。外皮は、導磁性を有することに加え、軟磁性材料(着磁及び消磁が容易)及び/又は強磁性材料(外部磁場に対して、正の大きな非線形の磁化率を示す)であってもよい。
外皮が導電性を有しているので、外皮内に渦電流が形成され、また、外皮は誘導熱の影響を受ける。誘導熱は、導電性の物体に交流磁場を印加することにより生じて、その物体を加熱するものである。交流磁場は、その物体上で環流する渦電流を発生させる。渦電流は、導電性物体の電気抵抗による抵抗加熱(ジュール加熱とも言呼ばれる)を発生させる。渦電流及びその結果生じる発熱は、通常、物体の浅い表面領域内に留まるが、この表面
領域は、周波数に依存する表皮深さパラメータによって特徴付けられる。表皮深さ(電気表皮深さや電磁表皮深さとも呼ばれる)は、交流磁場の周波数の逆平方根に比例する。誘導熱の効率は、交流磁場の強度及び周波数、誘導コイルの形状、誘導コイルと外皮の大小関係及び位置関係、並びに、外皮の材料に関連する。
外皮の材料は、翼体の外側表面(例えば、翼体の外側表面)として適切なものが選択される。選択されうる特性としては、高い透磁率(導磁率)、適切な導電性、強度、耐環境性、耐摩耗性、及び、温度変化係数がある。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例175を特徴付けるものであり、実施例175は、上述の実施例174の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、外皮110、210、310を誘導加熱すること及び外皮110、210、310内に音波を誘起することを含む。
誘導熱は誘導的に生成される(即ち、誘導的に加熱する)ものである。誘導コイルに交流電流が流れると、渦電流が発生し、渦電流が、導電性物体の電気抵抗による抵抗加熱(ジュール加熱とも言う)を発生させる。渦電流及びその結果生じる発熱は、通常、周波数に依存する表皮深さパラメータによって特徴付けられる物体の浅い表面領域内に留まる。
音圧は、誘導的に(即ち、音波を誘導的に生成することにより)生成されるものである。渦電流が定常磁場と作用すると、ローレンツ力及び音波振動が外皮内で直接に生成されるので、音源との音響接触は不要である(例えば、圧電素子などの音響変換器は不要である)。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例176を特徴付けるものであり、実施例176は、上述の実施例174〜175のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外皮110、210、310は、ニッケル−鉄合金を含む。
ニッケル−鉄合金は、外皮に適した合金の一種である。ニッケル−鉄合金は、導電性及び導磁性を有し、誘導熱及び音圧の影響を受ける。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例177を特徴付けるものであり、実施例177は、上述の実施例174〜176のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外皮110、210、310の厚みは1mm未満、0.001mm超である。
外皮は全般的に薄いので、外皮は、音波・誘導加熱ハイブリッドシステムにより生成される誘導熱及び音圧に即座に影響される。外皮の厚みは、交流電流において実用的及び/又は所望の周波数、及び/又は、そのような周波数での表皮深さに基づいて選択可能である。外皮は、翼体としての状況に晒された場合に構造的な一体性を保つのに十分な厚みを有する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例178を特徴付けるものであり、実施例178は、上述の実施例174〜178のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外皮110、210、310は強磁性を有する。
外皮110、210、310に関して上述したように、外皮が強磁性である場合、磁場
が外皮に集中する。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例179を特徴付けるものであり、実施例179は、上述の実施例174〜178のいずれの技術事項も包含する。概ね図17をまた図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外皮110、210、310の比透磁率は、1,000超且つ10,000,000未満である。
磁性材料の比透磁率は、1よりもかなり大きく、非磁性材料の比透磁率は、1に近い。比透磁率が高いほど、その材料が磁化しやすいこと及び磁場が集中しやすいことを示す。典型的な磁性材料の比透磁率は約100より高い。高透磁率の材料の場合、比透磁率は約1,000より高い。既知のあらゆる材料の比透磁率は10,000,000未満である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例180を特徴付けるものであり、実施例180は、上述の実施例174〜179のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外皮110、210、310のキュリー温度は、300度未満且つ50℃超である。
キュリー温度とは、強磁性材料の転移温度である。キュリー温度より低温では、材料は高い比透磁率を示すが、キュリー温度より高温では、その材料は、常磁性を示し、比透磁率も低くなる。外皮が、(特定の温度で示す強磁性あるいは導磁性とは逆の)常磁性に変化すると、誘導熱の効率及び/又は音圧の生成が著しく小さくなる。よって、外皮のキュリー温度が十分に低ければ、(例えば、音波・誘導加熱ハイブリッドシステムの誤動作や翼体が過度な太陽加熱に晒されるなどにより)外皮が熱くなりすぎた場合に、誘導加熱及び/又は音圧の大部分を自動的に停止するように音波・誘導加熱ハイブリッドシステムを構成することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例181を特徴付けるものであり、実施例181は、上述の実施例135〜180のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、着氷を生じさせることが既知である第1周囲状況を検知すること(ブロック402)、及び、着氷を抑制することが既知である第2周囲状況を検知すること(ブロック406)は、いずれも、外部表面104、204、304に沿って流れる流体層118、218、318の周囲温度を検知することを含む(ブロック410)。方法400によれば、外部表面104、204、304に誘導熱及び音圧を供給すること(ブロック404)は、外部表面104、204、304に沿って流れる流体層118、218、318の周囲温度が第1閾値温度を下回った場合に、誘導熱及び音圧を供給することを含む(ブロック440)。
第1周囲状況を検知すること402は、流体層の周囲温度を検知すること410を含む。供給404は、流体層の周囲温度ある程度低い(即ち、第1閾値温度を下回る)場合に、供給440を行うことを含む。温度は、着氷を生じさせることが既知である状況を示す適切な指標(strong indicator)であるので、周囲温度に基づいて誘導熱及び音圧を供給することにより、翼体の外部表面への着氷をより適切に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例182を特徴付けるものであり、実施例182は、上述の実施例181の技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、第1閾値温度は、水の凝固点より高く5℃より低い温度である。
水の凝固点から5℃までの温度範囲は、翼体に衝突する水分が液相に留まる状態から氷となって付着する状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第1閾値は、誘導熱及び音圧の供給404の必要性を予測する指標として適切である。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例183を特徴付けるものであり、実施例183は、上述の実施例181〜182のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、外部表面104、204、304への誘導熱及び音圧の供給を停止すること(ブロック408)は、外部表面104、204、304に沿って流れる流体層118、218、318の周囲温度が第2閾値温度を上回った場合に、誘導熱及び音圧の供給を停止することを含む(ブロック450)。
第2周囲状況を検知すること406は、流体層の周囲温度を検知すること410を含む。供給を停止すること408は、流体層の周囲温度が十分に高い(即ち、第2閾値温度を上回る)場合に停止すること450を含む。温度は、着氷が生じにくいことが既知である状況を示す適切な指標であるので、周囲温度に基づいて誘導熱及び音圧を供給することにより、翼体の外部表面への着氷をより適切に抑制、防止、低減及び/又は除去することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例184を特徴付けるものであり、実施例184は、上述の実施例183の技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、第2閾値温度は第1閾値温度とは異なる。
第2閾値温度は、第1閾値温度と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第2閾値温度と第1閾値温度とが異なる値であると、誘導熱及び音圧の供給404又は供給停止408を、異なる温度で実行することができる。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例185を特徴付けるものであり、実施例185は、上述の実施例183〜184のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、第2閾値温度は第1閾値温度より高い。
第2閾値温度が第1閾値温度より高いと、誘導熱及び音圧の供給404及び供給停止408の動作に伴う振動を防止できる傾向にある。第2閾値温度が第1閾値温度と同じであると、単一の閾値温度に対して周囲温度が小幅に変化することによって、誘導熱及び音圧の供給404と供給停止408との切り換えが短時間に繰り返し生じうる。供給404によって周囲温度を上昇させる場合、供給404を実行することによって周囲温度が上昇しする。この結果、この単一の閾値温度を上回ることになるので、また即座に供給停止408が必要になる。このような状況では、方法400が(例えば、コントローラ152、252、353のようなコントローラにより実行された場合に)、振動を生じさせる可能性があり、誘導熱及びコントローラ音圧の供給が効果的に行われない。
本段落における下記技術的事項は、本開示の実施例186を特徴付けるものであり、実施例186は、上述の実施例183〜185のいずれの技術事項も包含する。概ね図17を参照し、また図1〜図16を参照すると、方法400によれば、第2閾値温度は、2℃超且つ10℃未満である。
2℃超且つ10℃未満の温度範囲は、翼体に衝突する水分が、氷となって付着する状態から液相に留まる状態に転移しうる範囲である。よって、この範囲にある第2閾値は、翼体への着氷の抑制、防止、低減及び/又は除去のために誘導熱及び音圧をオフにする必要
性を予測するのに適切な指標である。
本開示の実施例を、図18に示すような航空機の製造及び使用方法1100に関連させ、また、図19に示すような航空機1102に関連させて説明することができる。生産開始前の工程として、例示的な方法1100は、航空機1102の仕様決定及び設計(ブロック1104)と、材料調達(ブロック1106)とを含む。生産中の工程としては、航空機1102の部品及び小組立品(subassembly)の製造(ブロック1108)及びシス
テム統合(ブロック1110)が行われる。その後、航空機1102は認証及び納品(ブロック1112)を経て、使用(ブロック1114)に入る。使用期間中は、航空機1102は、定期的な整備及び保守(ブロック1116)のスケジュールに組み込まれる。定期的な整備及び保守には、航空機1102の1つ又は複数のシステムの変更、再構成、改装なども含みうる。
例示的な方法1110の各工程は、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。説明のために言及すると、システムインテグレーターは、航空機メーカー及び主要システム(majority-system)下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請
業者、供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体(military entity)、サービス組織(service organization)などであってもよい。
図19に示すように、例示的な方法1100によって製造される航空機1102は、複数の高水準システム1120と内装1122とを備えた機体1118を含む。複数の高水準システム1120の例としては、駆動系1124、電気系1126、油圧系1128、環境系1130の内の1つ又は複数のシステムが挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。また、航空産業に用いた場合を例として説明したが、本明細書において開示した原理は、例えば自動車産業などの他の産業に適用してもよい。したがって、本明細書において開示した原理は、航空機1102以外にも、例えば、陸上車両、海上船舶、航空宇宙飛行体などの他の輸送体にも適用可能である。
本明細書において図示又は記載した装置及び方法は、製造及び使用方法1100の段階の1つ又は複数の段階において用いてもよい。例えば、部品及び小組立品製造工程(ブロック1108)に対応する部品又は小組立品は、航空機1102の使用(ブロック1114)の期間中に製造される部品又は小組立品と同様の方法で製造されてもよい。また、実施例の装置、方法、又はそれらの組み合わせの1つ又は複数を、製造工程1108及び1110で用いることによって、例えば、航空機1102の組み立て速度を大幅に速めたりコストを削減したりすることができる。同様に、実施例の装置、方法、又はそれらの組み合わせの1つ又は複数を、例えば、限定するものではないが、航空機1102の使用(ブロック1114)の期間中、及び/又は、整備及び保守(ブロック1116)に用いることができる。
本明細書に開示した種々の実施例の装置及び方法は、種々の部品、特徴、及び、機能を備える。なお、本開示の装置及び方法の様々な実施例は、本開示の装置及び方法の他の任意の実施例の部品、構成要素、及び機能のいずれでも任意に組み合わせて含むことができ、そのすべての可能性は、本開示の範囲内に含まれることを意図している。
本開示に関連する分野の当業者であれば、上述の説明及び関連図面に示された教示を受けて、本開示に記載された実施例に対する様々な改変を思いつくであろう。
したがって、本開示は、例示した特定の実施例に限定されるものではなく、改変及び他
の実施例も添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。また、上述の記載及び関連図面は、要素及び/又は機能のある特定の例示的な組み合わせに関連させて本開示の実施例を説明しているが、代替の実施態様によって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、要素及び/又は機能の別の組み合わせを提供することもできる。したがって、添付の特許請求の範囲における挿入参照数字は、例示のみを目的として示したものであり、特許請求の範囲に記載の要旨を本開示で提示した特定の実施例に限定することを意図したものではない。