〔第1実施形態〕
図1(A)及び(B)を参照して、本発明の第1実施形態としての監視装置について説明する。図1(A)は、第1実施形態の監視装置を説明する概念的なブロック図であり、図1(B)は、監視装置による一対の判定枠を説明する概念的な側面図である。
図1(A)に示すように、第1実施形態である監視装置100は、列車TRに組み込まれた車上装置200の一部である。監視装置100は、各部の動作を統括に制御する車両制御装置31と、列車TRの現在速度を検出する車速検出部34と、軌道RL側に設けた地上子との間で通信を行って軌道RL上の列車TRの位置を検出する車上子35と、不図示の列車運行管理システム又は指令所との間で通信を可能にする通信部37と、列車TRの前方及びその周辺の物体を検出する計測を行う第1光計測部41と、列車TRの前方及びその周辺の物体を検出する計測を行う比較的広域用の第2光計測部42とを備える。
列車TRを動作させるための車上装置200は、さらに、列車TRを加速するためのモーター等からなる駆動装置32と、列車TRを減速するためのブレーキ装置33と、乗客等に向けて各種情報を伝達するための報知手段であるスピーカーや表示部といった車内出力部36とを備える。
監視装置100のうち車両制御装置31は、車上装置200の動作を制御する部分であり、運転手等の指示に基づいて列車TRの各部を動作させ、列車TRの適切な速度での走行や適切なタイミングでの停止を可能にするとともに、緊急時の自動列車停止機能を有する。車両制御装置31は、車速検出部34を利用した積算距離と車上子35を利用した構成とによって、列車TRの現在の走行位置及び走行速度を把握している。
列車TRの現在の走行位置の取得方法については、上記のように車速検出部34を利用するものに限らず、レーダその他の測距装置を用いた計測に際してドップラー効果(GPS信号の場合を含む)を利用した速度値等に基づくものとしてもよい。その他、RFIDを利用した位置検出、みちびきその他の衛星測位による位置検出も可能である。また、車速検出部34は、タコジェネレータのように車軸等に付随するものに限らず、上記GPS信号のドップラー効果を利用した計測、みちびきその他の衛星測位による位置検出による速度計測等、様々な動作原理の各種速度センサーを用いて構成することができる。
車両制御装置31は、第1光計測部41と連携して動作し第1判定部を構成する。つまり、車両制御装置31は、第1光計測部41を利用して、進路である線路を構成する軌道RLに沿った走行位置及び走行速度に応じて随時設定した所定の第1判定枠AR1(図1(B)参照)内に存在する障害物としての物体を検出する。さらに、車両制御装置31は、第2光計測部42と連携して動作し第2判定部を構成する。つまり、車両制御装置31は、第2光計測部42を利用して、後に詳述するように進路である軌道RL及びその周辺についての2次元又は3次元形状の測定結果や走行速度に応じて随時設定した所定の第2判定枠AR2(図1(B)参照)内に軌道像の遮蔽体が存在するか否かを判断する。
図1(B)に示した第1及び第2判定枠AR1,AR2は、列車TRの通過空間である車両限界を含み、列車TRが通過するタイミングで障害物となる物体又はそのおそれのある物体が存在すべきでない領域となっている。判定枠AR1,AR2を用いた監視の対象となる障害物は、列車TRの進行又は走行を妨げるおそれがある物体であり、軌道RLに沿った車両限界内に存在するものには限られない。障害物としては、典型的には、人、車、落石、動物等を挙げることができ、ある程度以上の大きさを有する物体が対象となる。車両制御装置31は、第1光計測部41により取得した計測データに基づく第1判定枠AR1内における遮蔽体その他の障害物の検知結果や、第2光計測部42により取得した計測データに基づく第2判定枠AR2内における遮蔽体その他の障害物の検知結果から、列車TRの進行方向前方に障害物があると判断すると、ブレーキ装置33(図1(A)参照)を動作させて車両を減速させたり停止させたりするとともに、車内出力部36(図1(A)参照)により、乗客に対して急ブレーキによる停止を行う旨の報知等を行う。つまり、車両制御装置31を第1及び第2判定部として並列的に動作させることで、相互に補間しつつ判定の信頼性を高めることができる。
図2に示すように、車両制御装置31は、演算処理部101と、記憶部102と、入出力部103と、インターフェース部104とを備える。車両制御装置31は、具体的には、走行制御用のプログラムを搭載したコンピューターを含み、走行制御用のプログラムには、一般的制御プログラムのほかに障害物等監視用のプログラムが付加されている。車両制御装置31は、列車の走行状態の制御を基本的な役割又は動作とするものであるが、以下では、車両制御装置31を、主に障害物等の監視機能の側面から説明する。
演算処理部101は、記憶部102に保管されたプログラムやデータに基づいて動作し、入出力部103やインターフェース部104から得た情報に基づいて処理を行い、処理の経過や結果を記憶部102に保管するとともに入出力部103に提示する。また、演算処理部101は、第1判定部として、プログラム等に基づいてインターフェース部104を介して第1光計測部41等を動作させるとともに、第2判定部として、プログラム等に基づいてインターフェース部104を介して第2光計測部42等を動作させる。
図1(B)に戻って、第1光計測部41は、列車TRの進路前方にレーザを照射して反射光を計測する装置であり、電子スキャン型のLIDAR(Light Detection and Ranging)装置を備える。第1光計測部41は、詳細は後述するが、赤外又は可視域の光線を離散的に任意の方向に向ける走査系と、走査方向からの反射光を検出するセンサーとを備え、前景について距離画像を計測する。第1光計測部41による計測結果は、走査の分解能によって画像というには若干粗いものとなる場合もあるが、このような分解能の低いもの(画素が少ないもの)も本願明細書において距離画像と呼ぶ。
第1光計測部41は、列車TRの走行に伴って高速で距離画像の計測を行うので、列車TRの前方の変化する前景について、画角FA1内で距離画像を略リアルタイムで出力することができる。車両制御装置31(具体的には図2に示す演算処理部101)は、第1光計測部41によって得た距離画像に基づいて物体検出を行う。このような物体検出に際して、列車TRの前方進路において第1光計測部41の画角FA1内で想定される第1判定枠AR1を分散して離散的にカバーする集合的な判定領域を設定すれば、この第1判定枠AR1内に存在する物体又は障害物を抽出することができる。
第2光計測部42は、列車TRの進路前方に存在する対象表面までの距離を計測する装置であり、例えば視差を利用して距離情報を得るステレオカメラである。車両制御装置31(具体的には演算処理部101)は、第2光計測部42によって得た2次元画像に基づいて所定サイズ以上のエッジ又はオブジェクトを抽出することができる。さらに、車両制御装置31は、第2光計測部42によって得た一対の2次元画像の視差情報から、上記のように予め抽出したエッジ又はオブジェクトまでの距離を算出することができる。第2計測部42によって取得される2次元画像は、例えばグレースケールの輝度画像である。
第2計測部42は、列車TRの走行に伴って高速で撮影及び視差計算を行うので、列車TRの前方の変化する前景について、画角FA2内で2次元画像及び距離情報を略リアルタイムで出力することができる。車両制御装置31(具体的には演算処理部101)は、第2計測部42によって得た2次元画像及び距離情報に基づいて物体検出を行う。このような物体検出に際して列車TRの前方進路において第2計測部42の画角FA2内で想定される第2判定枠AR2を設定すれば、この第2判定枠AR2内に存在する遮蔽体その他の障害物を抽出することができる。なお、本実施形態の場合、第2光計測部42の画角FA2は、第1光計測部41の画角FA1よりも広く、これをカバーするように設定されている。
図1(A)に示すように、監視装置100は、以上で説明した第1光計測部41及び第2光計測部42に追加して、第3光計測部43を有するものであってもよい。第3光計測部43は、例えばミリ波(つまり電磁波)によって物体検出を行うレーダ装置を有し、前方の計測領域内、通常は光計測部41,42の画角FA1,FA2よりも狭い画角内に存在する物体を計測する。第3光計測部43による物体検出に際して、列車TRの前方に第3判定枠(光計測部41,42の判定枠AR1,AR2よりも例えば奥行き方向に狭い領域)を設定すれば、この第3判定枠内に存在する物体を軌道RL上の障害物として抽出することができる。
図3(A)は、第1光計測部41に組み込まれる3次元LIDAR装置41aの具体例を説明する概念図であり、図3(B)は、図3(A)に示す3次元LIDAR装置41aの検出領域を例示し、図3(C)及び(D)は、図3(B)に示す検出領域内に設定される複数の計測領域を例示する。
図3(A)を参照して、3次元LIDAR装置41aは、前景に対してレーザの光線を照射しつつ走査する照射装置144と、前景からの戻り光を検出する光検出装置147とを備える。照射装置144の光源装置144aから射出されレンズ145及び走査デバイス144bを経たレーザの照射光BPが走査光として前景の対象物に入射し、対象物からの反射光BRがハーフミラー49で折り曲げられて光検出装置147に届くまでの光の飛行時間(時間差)を走査方向毎に検出することで、前景の各対象物までの距離を測定することができる。
走査デバイス144bは、例えば液晶偏光回折素子である。液晶偏光回折素子は、2つの屈折率を持つフィルムと光の偏光状態を変える液晶素子とを多層積層したものであり、これを通過する光線の方向を離散的に任意の方向に変化させることができる。走査デバイス144bは、液晶偏光回折素子に代えてオプティカルフェーズドアレイ(OPA: Optical Phased Array)を用いたものであってもよい。オプティカルフェーズドアレイは、分岐によって複数のチャンネルを通過する光の位相をそれぞれ制御することにより、出力光ビームの方向を任意の方向に変化させることができる。
光検出装置147は、第1光計測部41外の車両制御装置31又は演算処理部101からの指令に基づいて動作し、光検出面47aに設定された計測領域内で検出又は計測を行う。走査デバイス144bは、車両制御装置31又は演算処理部101からの指令に基づいて動作し、光検出面47aの計測領域に対応する走査範囲及び走査配置を画素単位で変更することができる。
図3(B)は、図3(A)に示す光検出装置147の光検出面47aについて説明する概念図である。光検出面47aには、矩形の検出領域DA1が形成され、この検出領域DA1内で、2次元配列された多数の計測点(画素)PXに関して対象までの距離を決定することができる。ここで、検出領域DA1は、第1光計測部41の画角FA1に相当するものである。
図3(C)や(D)に例示するように、図3(B)に示す光検出面47aの検出領域DA1内で任意の配置及びサイズの複数の計測領域SA11,SA12,SA13を設定することができ、その外側OAで検出動作を休止させることができる。検出領域DA1内に表示した基準枠FF1は、第1光計測部41に関して設定される第1判定枠AR1に相当する領域を示している。検出領域DA1について部分的に設定される計測領域SA11,SA12,SA13は、車両制御装置31又は演算処理部101によって基準枠FF1内すなわち第1判定枠AR1内で設定される複数の部分領域SAに対応し、集合的な判定領域を構成する。これら複数の部分領域SAによって、1回の検出動作において検出領域DA1内で計測の対象となる計測領域群SGが構成され、計測領域群SGは、基準枠FF1を比較的均一な状態で離散的にカバーする。
検出動作が行われる各計測領域SA11,SA12,SA13について、走査範囲とは、計測領域SA11,SA12,SA13の面積や形状を意味し、計測領域SA11,SA12,SA13について、走査配置とは、計測領域SA11,SA12,SA13の中心又は重心CT11,CT12,CT13を意味する。
計測領域SA11,SA12,SA13の配置、数、サイズ等は、基準枠FF1内で、列車TRの走行速度、走行位置、その他様々な要因に応じて適宜調整される。つまり、集合的な判定領域である計測領域群SGのパターンは、列車TRの走行速度等に応じて可変となっている。なお、計測領域SA11,SA12,SA13は、図示のように基準枠FF1内に収まるものに限らず、基準枠FF1から部分的にはみ出すように設定することもできる。
図3(B)に示す検出領域DA1は、走査デバイス144b(図3(A)参照)による基本走査領域又は最大計測領域SA1に相当するものとなっている。図3(C)及び(D)に示すように、検出領域DA1について、本来の最大計測領域SA1を局所的な計測領域SA11,SA12,SA13に分散して狭めることで、全体として第1判定枠AR1をカバーした計測を実現しつつ、かつ、3次元LIDAR装置41aによる信号処理速度又は計測速度を速めて距離画像の撮像時間を短縮し、距離画像の撮影頻度を高めることができる。
図4(A)は、第1及び第2計測部41,42による第1及び第2判定枠AR1,AR2を詳細に説明する概念的な側面図であり、図4(B)は、第1及び第2計測部41,42による第1及び第2判定枠AR1,AR2を詳細に説明する概念的な正面図である。
第1光計測部41を用いた監視における第1判定枠AR1は、軌道RLに沿って設定され、3次元的に捉えた場合、軌道RL又は軌道中心RCに沿って延びる四角柱状の領域である。第1判定枠AR1は、車両限界又は建築限界程度の範囲、或いはそれ以上の範囲に設定されて、列車TRの横幅を超える既定幅を有するとともに、列車TRの高さを超える既定高さを有する。第1判定枠AR1の奥行き距離D1は、移動速度又は制動距離との関係で設定されるが、例えば50m以上に設定することができる。第1判定枠AR1による判定は、近距離〜遠距離を対象とするものである。なお、第1判定枠AR1は、列車TRの移動に伴って移動する。
一方、第2光計測部42を用いた監視における第2判定枠AR2は、進路に沿って設定され、3次元的に捉えた場合、軌道RL又は軌道中心RCに沿って延びる四角柱状の領域であり、車両限界又は建築限界程度、或いはそれ以上の範囲に設定されて、第1判定枠AR1と同程度かそれよりも広い範囲をカバーするものとなっている。例えば、第2判定枠AR2の横幅は、軌道RLの横に数m程度を超える既定幅を有するとともに、列車TRの高さを超える既定高さを有する。第2判定枠AR2の奥行き距離D2は、移動速度又は制動距離との関係で設定されるが、例えば100m以上に設定することができる。第2判定枠AR2による識別は、近距離〜遠距離であって比較的広範囲を対象とするものである。なお、第2判定枠AR2は、列車TRの移動に伴って移動する。
比較的狭い第1判定枠AR1は、軌道RL上方をカバーするように軌道中心RCを基準として設定されるものであり、列車TRが軌道RL上のどの地点に存在するかによって時々刻々と変化する。第1判定枠AR1は、軌道RL上の走行位置の関数として与えられ、列車TR又は計測車を事前に走行させ前景画像を撮影し画像処理を行うこと、軌道RLを含む路線の空間的な配置情報に基づいて第1光計測部41に対する軌道RL等の空間的配置を把握すること等によって決定され、例えば距離又は走行位置毎の第1判定枠データベースとして、記憶部102(図2参照)等に事前に保管される。実際の計測において、演算処理部101は、列車TRの軌道RL上の走行位置及び走行速度に基づいて記憶部102に保管された第1判定枠データベースから対応する第1判定枠AR1を読み出すことにより、走行位置等に対応する第1判定枠AR1を設定するとともに、第1判定枠AR1内を分散して離散的にカバーするように第1光計測部41の検出領域DA1をカバーする複数の部分領域SA(図3(C)等参照)つまり集合的な判定領域を設定し、第1判定枠AR1内に障害物その他の所定サイズ以上の物体が存在するか否かを判断する。
第1判定枠AR1の範囲又は位置は、軌道RLの軌道中心RC上の適所を基準として、例えば1mといった軌道RLに沿った間隔又は刻みで設定することができる。軌道RLがカーブで曲がっている場合、曲がった軌道RLに沿って第1判定枠AR1が設定され、全体として弧を描くようなものとなる。第1判定枠AR1は、原則として軌道RL及びその周囲を含むものとなっており、近距離領域、中距離領域、及び遠距離領域において、車両限界の外側に適宜のマージンを確保して広がったものとすることができる。
第1判定枠AR1は、第1光計測部41の検出領域DA1で考えた場合、軌道RLの各点に対して規定される車両限界又はその周囲に適宜広がる領域である個々の近傍外縁要素を包括した2次元的な外縁に相当するものとなる。図4(B)に示すように、例えば前方の軌道RLが直線的に延びる場合、最も手前に存在する近傍外縁要素又は検出範囲に対応する最前領域FFが検出領域DA1上に当てはめた2次元的な第1判定枠AR1となる。前方の軌道RLが右又は左に大きく曲がっている場合、つまり図中において一点鎖線で示すように曲がって延びる軌道RL'の場合、検出領域DA1上に設定した2次元的な第1判定枠AR1は、最も手前に存在する近傍外縁要素又は検出範囲に対応する最前領域FFから曲がった先の軌道RLを包含するように横方向にはみ出した領域又は部分AReを有するものとなる場合もある。
なお、列車TRが大きく曲がる曲線区間では、本来第1判定枠AR1とすべき箇所が物陰に隠れる可能性があり、この場合、第1判定枠AR1を部分的に有効にすることもできる。
第1判定枠AR1の利用に際して予め準備した第1判定枠データベースを参照する場合であって、第1判定枠データベースに記録された第1判定枠AR1が列車TR又は計測車を事前に走行させ前景画像を撮影し画像処理を行うことによって取得される場合、第1判定枠AR1は、後述する第2判定枠AR2と同様の手法で決定することができる。列車TR又は計測車を事前に走行させない場合、例えば予め取得した軌道RLを含む路線の空間的な配置情報に基づいて、第1光計測部41に対する軌道RL等の空間的配置を把握し、レールRLa,RLbに沿って適宜の距離間隔で車両限界等に準じた枠領域である近傍外縁要素を順次設定し、上記近傍外縁要素を適宜連ねた全体として枠内を第1判定枠AR1とすることもできる。
第1判定枠AR1又はこれを離散的にカバーする部分領域SA(図3(C)等参照)については、第1判定枠データベースを参照して取得されるものに限らず、列車TRの走行に伴ってリアルタイムで設定してもよい。この場合、第1光計測部41又は演算処理部101において走行中に前景画像又は前景距離画像を取得する必要があるが、撮像装置を別途設ける必要はなく、第2光計測部42によって取得した前景画像又は前景距離画像を用いることができる。つまり、第2光計測部42によって取得した前景画像又は前景距離画像を用いてリアルタイムで第1判定枠AR1や部分領域SAを設定できる。
なお、予め準備した第1判定枠データベースを参照する場合、第1判定枠AR1のみを第1判定枠データベースに記録し、第1判定枠AR1を離散的にカバーする部分領域SAについては、列車TRの運行時において第1光計測部41又は演算処理部101によってリアルタイムで設定することもできる。
比較的広い第2判定枠AR2は、軌道RL及びその周辺をカバーするように軌道中心RCを基準として設定されるものであり、列車TRが軌道RL上のどの地点に存在するかによって時々刻々と変化する。第2判定枠AR2は、列車TRの走行に伴って、演算処理部101によってリアルタイムで設定される。つまり、演算処理部101は、第2光計測部42を利用して計測を行うことで前景画像及び距離情報を取得し、前景画像等から第2判定枠AR2を選択し、この第2判定枠AR2内において、軌道RLの終点である消失点VPを監視するとともに、軌道RLを遮る遮蔽体のような障害物であって、所定サイズ以上の物体が出現したか否かを判断する。ここで、軌道RLの消失点VPとは、原則として、レールRLa,RLbが途切れる箇所を意味し、軌道RLが水平方向に直線的に延び又は水平方向に緩い曲線で延びる場合、レールRLa,RLbの間隔(軌道間隔)又は軌道RLが2次元画像の上側で所定画素以下となる点、つまりレールRLa,RLbが収束する無限遠点に相当し、軌道RLが特定方向に大きく曲がって延びる場合、2次元画像の画面外となるか、軌道RLが前景物体に遮られた点となる。
第2判定枠AR2の範囲及び位置は、軌道RLの軌道中心RCやその位置での軌道間隔に相当する画素幅等を基準として設定され、前方の軌道RLがカーブで曲がっている場合、曲がった状態に合わせて前方の軌道RL全体を可能な限り包含するように設定される。第2判定枠AR2は、原則として軌道RL及びその周囲を含むものとなっており、近距離領域、中距離領域、及び遠距離領域において、車両限界の外側に適宜のマージンを確保して広がったものとすることができる。
第2判定枠AR2は、2次元画像の処理において利用される場合、つまり2次元画像に基づいて障害物を判定する場合、軌道RLの各点に対して規定される車両限界又はその周囲に適宜広がる領域である個々の近傍外縁要素を包括した2次元的な外縁に相当するものとなる。例えば前方の軌道RLが直線的に延びる場合、最も手前に存在する近傍外縁要素又は検出範囲に対応する最前領域FFが2次元画像の処理における第2判定枠AR2となる。図示を省略するが、前方の軌道RLが右又は左に大きく曲がっている場合、2次元画像の処理における第2判定枠AR2は、第1判定枠AR1の場合と同様に最も手前に存在する近傍外縁要素又は検出範囲に対応する最前領域FFから曲がった先の軌道RL'を包含するように横方向にはみ出した領域を有するものとなる場合もある。
第2判定枠AR2の設定方法について説明する。演算処理部101が、第2光計測部42により取得した計測データである2次元画像を用い、例えば所定サイズ以上のエッジを2次元画像から抽出するとともに、マッチング等の技術を利用して軌道RLを構成するレールRLa,RLbの画像を抽出する。レールRLa,RLbの画像を抽出できた場合、軌道RLの消失点VPの位置を決定することができる。
2次元画像の上側で軌道RLの軌道間隔又は軌道RLが所定画素以下となる場合、消失点VPは、所定以上遠方にあるものとなる。これとは逆に消失点VPが所定以上遠方にない場合、レールRLa,RLbが近い場所で現実に又は画像上で途切れていることになり、軌道RLが終端していたり軌道RLの計測に異常が発生したりしている可能性がある。
2次元画像から消失点VPを得た場合、第2判定枠AR2の奥行き距離D2の設定が例えば無限大であるとき、演算処理部101は、2次元画像において、軌道RLに沿って最も近接した位置から消失点VPにかけて、レールRLa,RLbに沿って車両限界等に準じた枠領域である近傍外縁要素を適宜の距離間隔又は画素間隔で順次設定し、上記近傍外縁要素を連ねた全体として枠内を第2判定枠AR2とする。
以下、図5(A)等を参照して、第1判定枠AR1、計測領域群SG等の具体的な設定例を説明する。
図5(A)は、軌道RLが直線的に延びる場合を示している。前景FSは、検出領域を撮影した参照画面ともなっている。つまり、前景FSは、計測領域群SGを利用した計測の対象であるが、予め第1判定枠AR1や計測領域群SGを決定する際の参照画面でもある。第1判定枠AR1は、軌道RLの位置その他の情報の関数として与えられるものであり、具体的には、記憶部102(図2参照)に保管された第1判定枠データベースから、列車の先頭に関する現在の走行位置及び走行速度に対応する1つ以上の第1判定枠AR1等を読み出すことで、第1光計測部41の画角FA1を基準とする座標として、計測対象の前景FS上に設定される。第1判定枠AR1の範囲及び位置は、車両である列車の走行速度(移動速度)と軌道形状(進路形状)とを反映したものとなっている。
列車の運行に際して第1判定枠AR1について計測領域群SGをリアルタイムで設定しない場合、第1判例枠AR1内に設定される複数の計測領域SA1a〜SA1gつまり計測領域群SGに関する情報も、第1判定枠データベースから読み出され、列車の走行速度(移動速度)と軌道形状(進路形状)とを反映したものとされる。
前景FSは、第2光計測部42を利用して得た前景画像に相当するものともなっている。第1光計測部41を用いる実際の計測では、前景FSが判定の対象となるが、第1光計測部41の画角FA1内で取得される画像や前景として、図示したものより分解能の低い距離画像が得られる。第1光計測部41を利用して得た距離画像と、第2光計測部42を利用して得た前景画像とは、画角FA1,FA2が異なるが、同一物体に対する方位が一致するように予め関連づけられており、相互に座標変換可能になっている。これにより、第1光計測部41を利用した判定と第2光計測部42を利用した判定との相関性や信頼性を判断することもできる。
図5(A)に示す検出領域DA1内において、演算処理部101又は第1判定枠データベースを作成する処理装置は、軌道又は軌道RL上の着目点OPが列車の移動に伴って移動する方向(矢印で図示)に離間した複数の部分領域SA1a〜SA1gすなわち部分領域SAを設定し、列車の移動速度又は走行速度と着目点OPまでの距離とに応じて、複数の部分領域SAの計測幅DXを設定している。複数の部分領域SAが離間する方向は、軌道RLが延びる方向(つまり図示の例では鉛直方向又は縦方向)に対応している。
複数の部分領域SAは、第1判例枠AR1内の障害物検出を目的とするものであり複数の部分領域SAのうち相対的に遠距離及び近距離を対象とする各部分領域SAを比べた場合、部分領域SAの計測幅DXは、遠距離の方が狭くなっている。つまり、図示の例では、消失点VPに近いほど部分領域SAの計測幅DXが狭くなっている。ここで、計測幅DXは、部分領域SAが離間する方向に直交する方向(つまり図示の例では水平方向又は横方向)に関するものとなっている。このように部分領域SAの計測幅DXを遠方で狭くすることにより、遠距離を対象とする部分領域SAの計測幅DXに関して障害物判定のために走査する面積を狭めることができ、計測頻度をより高めることができる。部分領域SAの個数や密度は、列車の移動速度や判定対象おサイズを考慮して設定される。
図5(A)に示す例では、着目点OPごとに部分領域SAが設定されている。ここで、着目点OPは、レールRLa,RLb間の上方にあって列車からの距離と軌道RLからの高さとによって特定される。部分領域SAは、着目点OPによらず、第1判定枠AR1の内での配置や検出領域DA1内での配置に基づいて定めることもできる。
図5(B)は、第1判定枠AR1内に配置された判定対象空間TAを説明する概念的な斜視図である。図示の判定対象空間TAは、検出領域DA1(図3(C)等参照)内で設定される部分領域SA、つまり複数の部分領域SA1a〜SA1g(図5(A)参照)に相当し、第1判例枠AR1内で障害物検出が行われる空間的な領域である。判定対象空間TAは、軌道RLに沿って、軌道RLからの高さや架線(不図示)からの距離を一定に保つとともに列車TRからの距離(奥行き方向の位置)を変更しつつ配置されている。判定対象空間TAは、列車TRの前進に伴って+X方向に移動し、各判定対象空間TAによって軌道RL上方の空間が走査されることが分かる。つまり、判定対象空間TA又は部分領域SAを軌道RLに沿って相対的に移動させる自動的走査の効果が生じ、検出漏れを低減することができる。
図6は、軌道RLがカーブで曲がっている場合の第1判定枠AR1、計測領域群SG等の具体例を説明する概念図である。この場合、軌道RLがカーブで大きく曲がる箇所に融合点TSが形成されており、詳細は後述するが、融合点TSを境として、複数の部分領域SAは、近距離検出領域SAnと遠距離検出領域SAfとにそれぞれ区分される。ここで、融合点とは、参照画面上で分離されていた一対のレールRLa,RLbが分離できずに一体化する点を意味する。
参照画面である前景FSを基準として軌道RL又はレールRLa,RLbが分離している近距離検出領域SAn、つまり融合点TSよりも近距離側では、複数の部分領域SA(具体的には部分領域SA2a〜SA2d)が軌道RLの延びる方向(つまり図示の例では鉛直方向又は縦方向)に離間している。また、参照画面である前景FSを基準としてレールRLa,RLbがカーブによって融合している遠距離検出領域SAf、つまり融合点TSよりも遠距離側では、複数の部分領域SA(具体的には部分領域SA2e〜SA2g)が軌道RLの延びる水平方向又は横方向に離間する。つまり、カーブしたレールRLa,RLbの融合点TSの前後で複数の部分領域SAの分離方向を切り替えることができ、結果的に前方のカーブに対して部分領域SAを軌道RLに沿って相対的に移動させる自動的走査の効果が生じ、検出漏れを低減することができる。この場合も、複数の部分領域SAは、結果的に着目点OPが列車の移動に伴って見かけ上移動する方向に離間していることになる。
第1判定枠AR1が最前領域FFの外側に消失点VPを有する場合、第1判定枠AR1は、検出領域DA1上で考えると、消失点VP側に拡張したものとなる。複数の部分領域SAのうち、特に遠距離検出領域SAfを構成する部分領域SA2f,SA2gは、第1判定枠AR1が消失点VPに向かって延びる部分AReにも分散して配置されている。
近距離検出領域SAnでは、図5(A)の場合と同様に、各部分領域SAの計測幅DXは、部分領域SAが遠距離になるほど狭くなっている。遠距離検出領域SAfでも、各部分領域SAの計測幅DXは、部分領域SAが遠距離になるほど狭くなっている。ただし、遠距離検出領域SAfの場合、第1判定枠AR1が消失点VPに向かって延びる部分AReでは、部分領域SAの計測幅DXつまり縦寸法が、部分AReの縦幅よりも倍程度長くなっている。これは、列車の走行にともなって第1光計測部41の画角FA1が上下に変動しても部分領域SAつまりSA2e,SA2f,SA2gが軌道RL及びその周辺から外れないようにマージンを確保したものである。
図7(A)〜(C)は、列車の走行速度に応じて第1光計測部41による計測領域を変化させる手法について説明する概念図である。図7(A)に示す例では、列車TRの走行速度が中程度に大きく、第1判定枠AR1として、前景FS又は画角に対して制限された比較的小さなものが設定され、これに対応して、第1判定枠AR1のうち一部に対応する局所的な計測領域SA1a〜SA1gで距離画像の計測が行われている。なお、列車の先頭から第1判定枠AR1の想定位置までの距離は、制動距離と空走距離との和である停止距離に対して所定の係数αを掛けたものとなっている。例えばα=0.4〜5とした場合、第1判定枠AR1を構成する最前領域FFまでの距離は、停止距離×0.4となり、第1判定枠AR1を構成する最後矩形領域までの距離は、停止距離×5となる。
図7(B)に示す例では、列車の走行速度がさらに大きく、第1判定枠AR1として、より小さなものが設定され、これに対応し、第1判定枠AR1のうち一部に対応する局所的な計測領域SA1a〜SA1fで距離画像の計測が行われている。
図7(A)及び(B)に示すように列車の走行速度がゼロでない場合、線状の局所的な計測領域SA1a〜SA1fが見かけ上着目点に対して上下方向に移動するので、検出領域DA1上で固定されていても相対的に移動する自動的走査の効果がある。
図7(C)に示す例では、列車の走行速度がゼロ又は比較的小さいため、計測頻度に対する要求が低く、第1判定枠AR1を用いないで、前景FSの略全体を判定対象としている。ただし、検出領域DA1に対応する最大計測領域を用いるのではなく、検出領域DA1又は最大計測領域のうち縦方向に関して間引きを行った結果、横方向に延びるストライプパターンにて距離画像の計測を行っている。このようなストライプパターンの走査では、横方向に延びる複数の線状の計測領域SA2が用いられる。複数の線状の計測領域SA2は、全体として集合的な判定領域を構成する。複数の線状の計測領域SA2の横幅は、検出領域DA1の横幅と略一致しており、これらが縦方向に所定の間隔を空けて配置されている。
なお、列車の走行速度がゼロの場合、線状の計測領域SA2は、着目点に対して移動しないので、横方向に延びる必要はなく、縦に延びるものであってよい。列車の走行速度がゼロ又は比較的小さい場合、検出領域DA1において市松模様状その他の縦横に間引いたパターンで部分領域を設定することもできる。列車の走行速度がゼロ又は比較的小さい場合、検出領域DA1に対応する最大計測領域SA1全体を走査する面走査で距離画像の計測が行われてもよい。
図8(A)及び(B)は、第1光計測部41による計測領域の変形例を説明する図であり、図5(A)及び図6に対応する。図8(A)では、第1判定枠AR1内において、矩形枠状の部分領域SA1a,SA1b,SA1cが監視領域として設定されている。図8(B)では、第1判定枠AR1内及びその近傍において、矩形枠状の部分領域SA2a,SA2b,SA2c,SA2dが監視領域として設定されている。
各部分領域SAは、直線状に延びる線分又は帯状部を含むものに限らず、複数の直線の組合せ、又は、千鳥配列にしたものであってもよい。部分領域SAは、このような千鳥配列を複数組み合わせたものであってもよい。
図9(A)及び(B)は、第2判定枠AR2等の設定に際して行われる軌道RLの消失点の具体的な検出方法を説明する概念図である。図9(A)では、直線的に延びる軌道RLを構成する一対の直線状のレールRLa,RLbが軌道像として示されている。図9(B)では、一対のレール(軌道像)RLa,RLbの映像が抽出されて点線で示す一対の近似線ALのフィッティングが行われ、一対の近似線ALの先端に消失点VPが決定されている。図9(C)及び(D)は、カーブに差し掛かった場合の消失点の検出方法を説明する概念図である。図9(C)では、直線的に延びる軌道RLを構成する一対のレールRLa,RLbが軌道像として示されており、図9(D)では、一対の曲線状のレールRLa,RLbの映像が抽出されて一対の近似線(点線)ALのフィッティングが行われ、一対の近似線ALの先端に消失点VPが決定されている。なお、近似線ALを延長することによって映像上一旦途切れたレールRLa,RLbを連続的なものとして処理することもできる。
実際の鉄道での第2判定枠AR2の設定に際しては、第2光計測部42によって得た2次元画像内に複数の軌道が写り込んでいる場合がある。このような場合であっても自己の列車が走行する軌道RLのレールRLa,RLbを適切に絞り込んで抽出できるように、演算処理部101は、近距離側に軌道判定枠AR3(図9(B)参照)を設けて軌道判定枠AR3から始まる一対のレールRLa,RLbのみを選択する。これにより、自己の列車TRが走行する軌道RLに対応する適正な1つの消失点VPを決定することができ、障害物の有無に関する判定精度を高めることができる。なお、複数の軌道が写り込んでいる結果として複数の消失点が検出されても、制動関連情報が増えるだけであり、運転上の支障が生じないような運用が可能である。
図9(E)及び(F)は、第2判定枠AR2の設定方法を説明する概念図である。図9(E)に示す直進の場合と、図9(F)に示すカーブの場合とにおいて、2次元画像から抽出された軌道像に基づいて軌道RLに沿って設定される多数の近傍外縁要素CEを示している。近傍外縁要素CEの集合の外縁の範囲内が第2判定枠AR2となる。図示を省略するが、第2判定枠AR2は、列車TRの走行速度が比較的小さい場合、前景FSに対して比較的大きなものとして設定され、列車TRの走行速度が比較的小さい場合、前景FSに対して比較的小さなものとして設定される。列車TRから第2判定枠AR2までの距離は、制動距離と空走距離との和である停止距離に対して所定範囲の係数βを掛けたものとすることができる。例えばβ=0.4〜10とした場合、第2判定枠AR2を構成する最前領域FFまでの距離は、停止距離×0.4となり、第2判定枠AR2を構成する最後矩形領域までの距離は、停止距離×10となる。
図10(A)及び(B)を参照して、軌道RLを遮る遮蔽体について説明する。図10(A)に示す例では、軌道RLの消失点VPよりも手前に電柱状の遮蔽体CO1が存在する。なお、図示を省略しているが、前景FSについては、2次元的な第2判定枠が設定されている。第2光計測部42から遮蔽体CO1の軌道RLを横切る部分CO1a迄の距離値L11(不図示)と、第2光計測部42から部分CO1aによって途切れた軌道RLの遮断端である軌道位置CP1迄の距離値L12(不図示)とは、第2光計測部42によって得た2次元画像の視差から判定することができる。演算処理部101は、第2判定部として、部分CO1a迄の距離値L11と部分CO1aが遮っている軌道位置CP1迄の距離値L12との差である距離差Δが所定の上限値(例えば列車TRの横幅)を超えて大きくなっているときは、遮蔽体CO1が前景の物体であり3次元的な第2判定枠の外側にある見かけ上のものと判断し、軌道RL上を進行する列車TRにとっての障害物ではないと判断する。
図10(B)に示す例では、軌道RLの消失点VPよりも手前に別の遮蔽体CO2が存在する。第2光計測部42から遮蔽体CO2迄の距離値L21(不図示)と、第2光計測部42から遮蔽体CO2によって途切れた軌道RLの遮断端である軌道位置CP2迄の距離値L22(不図示)とは、第2光計測部42によって得た2次元画像の視差から判定することができる。演算処理部101は、第2判定部として、遮蔽体CO2迄の距離値L21と遮蔽体CO2が遮っている軌道位置CP2迄の距離値L22との差である距離差Δが所定の上限値以下であるときは、遮蔽体CO2が軌道RL上に横たわり或いは軌道RLを覆っていると判断し、軌道RL上を進行する列車TRにとっての障害物であると判断する。この場合、遮蔽体CO2と軌道RLとの距離が近い場合に限って障害物と判断することになり、障害物判定精度を高めることができる。
以上の処理において、図9(E)及び(F)に示すような第2判定枠内に遮蔽体CO2(図10(B)参照)が存在する場合に、第2判定部である演算処理部101は、遮蔽体CO2を障害物であると判断するので、第2判定枠によって列車TRが通過する領域に検出範囲を絞ることができ、障害物の有無に関する判定範囲が過度に広がることを防止できる。なお、前景とされる遮蔽体CO1や障害物の候補とされる遮蔽体CO2は、軌道RLのレール(軌道像)RLa,RLbの双方を遮蔽するものに限らず片方を遮蔽するようなものであってもよい。演算処理部101による判定処理の対象となる遮蔽体CO1,CO2は、レールRLa,RLbのサイズを基準として所定以上のサイズを有するものであれば、障害物となる可能性があるとして候補に加えられる。
図11を参照しつつ、図2、図1(A)及び(B)等を補助的に参照して、走行時における障害物検出又は障害物判定の動作について説明する。演算処理部101は、車速検出部34等を利用して列車TRの走行位置と走行速度とを取得する(ステップS21)。次に、演算処理部101は、第1光計測部41について、ステップS21で得た走行位置及び走行速度に基づいて集合的な判定領域つまり計測領域群SG(図3(C)及び(D)参照)を設定する(ステップS22)。計測領域群SGは、第1判定枠等に関するデータベースを用いて設定することができ、或は第2光計測部42によって取得した前景画像又は前景距離画像を用いてその場で計算することもできる。次に、演算処理部101は、第1光計測部41を利用して計測領域群SG内で距離画像を計測する(ステップS23)。列車TRの前方に物体が存在する場合、その物体の方位(角度)や距離が得られる。その後、演算処理部101は、ステップS23で得た物体の方位及び距離を考慮して第1判定枠AR1内であるか否かを判断する(ステップS24)。
演算処理部101は、第1判定枠AR1内に物体が存在すると判断した場合(ステップS24でYes)、入出力部103を介して運転手に軌道上に障害物が存在することを警報出力する(ステップS25)。この際、演算処理部101は、ブレーキ装置33を適宜動作させて列車TRに緊急停止を行わせることができる。
演算処理部101は、第1判定枠AR1内に物体が存在しないと判断した場合(ステップS24でNo)、ステップS21に戻って列車TRの走行位置及び走行速度を取得する処理を再開する。以上の処理は、列車TRの運用走行が完了するまで繰り返される(ステップS28でNoの場合、ステップS21に戻る)。
距離画像の取得や第1判定枠AR1内における物体の有無判定(ステップS22〜S24)と並行して、演算処理部101は、第2光計測部42を利用して判定領域内で2次元画像や視差を計測する(ステップS26)。演算処理部101は、得られた2次元画像等に基づいて、第2判定部として、2次元画像から消失点VP(図9(B)等参照)を検出するとともに、第2判定枠AR2(図9(E)等参照)を設定し、第2判定枠AR2内に列車TRにとっての障害物があるか否かを判断する(ステップS27)。つまり、消失点VPの手前に遮蔽体(例えば図10(B)に示す遮蔽体CO2)が存在し、かつ、遮蔽体迄の距離L21と遮蔽体CO2によって途切れた軌道RLの遮断端である軌道位置CP2迄の距離L22との距離差Δが、所定の上限値以下であるか否かを判断する。
演算処理部101は、第2判定枠AR2内に障害物があると判断した場合(ステップS27でYes)、入出力部103を介して運転手に軌道RL上に障害物が存在することを警報出力する(ステップS25)。障害物が存在しないと判断された場合(ステップS27でNo)、ステップS21に戻る。
図1(A)、図2、図5(A)等に示すように、以上で説明した第1実施形態の監視装置100では、処理部101が、第1光計測部41の検出領域DA1内において、軌道RL上の着目点OPが車両である列車TRの移動に伴って移動する方向に離間した複数の部分領域SAを設定し、車両である列車TRの移動速度と着目点OPまでの距離とに応じて、複数の部分領域SAの計測幅DXを設定することにより、移動に伴う走査の効果も相まって、必要な判定範囲つまり第1判定枠AR1を確保しつつ、判定領域又は走査面積を大きく狭めて計測頻度を高めることできる。また、第1光計測部41の利用により精細な情報が得られ判定域も明確に設定できる。
〔第2実施形態〕
以下、図12を参照して、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。本実施形態の監視装置100の場合、第1光計測部41が、一対の3次元LIDAR装置41a,41bを有する。
第1の3次元LIDAR装置41aは、列車TRの車体下端に取り付けられ、第2の3次元LIDAR装置41bは、列車TRの車体上端に取り付けられている。3次元LIDAR装置41a,41bは、第1判定枠AR1内で部分領域をそれぞれ設定し、独立して距離画像情報を取得する。第1の3次元LIDAR装置41aから射出されるレーザ光LB1は、略正面方向又は+X方向に射出されるレーザ光LB1aと、これより上側に射出される一群のレーザ光LB1bとを含む。また、第2の3次元LIDAR装置41bから射出されるレーザ光LB2は、略正面方向又は+X方向に射出されるレーザ光LB2aと、これより下側に射出される一群のレーザ光LB2bとを含む。つまり、第1の3次元LIDAR装置41aは、水平から所定の仰角までをカバーし、第2の3次元LIDAR装置41bは、水平から所定の俯角までをカバーする。第1の3次元LIDAR装置41aから略水平な方向に射出されるレーザ光LB1aは、列車TRの車体下端の正面にあって第1判定枠AR1の下端(つまり軌道RL近傍の上方)に配置されている障害物の発見に適する。また、第2の3次元LIDAR装置41bから略水平な方向に射出されるレーザ光LB2aは、列車TRの車体上端の正面にあって第1判定枠AR1の上端に配置されている障害物の発見に適する。
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
車上装置200は、不図示の列車運行管理システムの制御下で、列車TRの自動運転を可能としており、自動運転については、運転士を乗せた状態で行う場合のほか、運転士がいない完全無人の自動運転も含み得るものとしている。自動運転については、運行区間の全体を運転士がいない完全無人の自動運転とする場合のほか、運行区間の一部を、運転士を乗せた状態で自動運転とする場合や、運行区間の一部については、自動運転とせず、運転士による通常運転とすることも考えられる。
監視装置100は、車上装置200に組み込まずに、遠隔の列車運行管理システム側に部分的に組み込むこともできる。
監視装置100による監視対象は、鉄道の軌道RLに限らず、路面電車用の軌道であってもよい。
上記実施形態の監視装置100は、列車TRの進路を監視するものとしたが、本発明の監視装置は、列車に限らず、自動車その他の車両の進路を監視するものとして用いることができる。この際、軌道に代えて車線等を利用して判定枠を決定することができる。
第1及び第2光計測部41,42を用いる障害物の有無の判定は、第1及び第2判定枠AR1,AR2を前提としないようなものであってもよい。この場合、第1光計測部41による計測領域群SGや、第2光計測部42による計測領域の全体において、障害物の有無の判定が行われることになる。
第1光計測部41は、オプティカルフェーズドアレイや液晶偏光回折素子に限らず光線制御が可能なデバイスを備えて構成されるものであってもよい。また、第2光計測部42は、TOFカメラで構成されるものであってもよい。
以上では、消失点VPの手前に遮蔽体CO2が存在する場合に、障害物となる可能性があるとしたが、遮蔽体CO2が消失点を兼ねている場合も、遮蔽体CO2が障害物となる可能性があると判断してもよい。この場合も、遮蔽体CO2迄の距離値L21と、遮蔽体CO2によって途切れた軌道RLの遮断端である軌道位置CP2迄の距離値L22との距離差Δが所定の上限値以下であることが障害物であると判断する前提条件となる。
進路前方の障害物の判定は、軌道RL近辺にあるものに限らず、軌道RLから離れた物体が軌道RLに近接しつつある状態を監視するようなものであってもよい。この場合、軌道RLに進入する物体を移動軌跡によって追跡するようなものとなる。