JP2021046370A - α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、α,β−不飽和カルボン酸塩を反応効率よく製造する手段を提供することを目的とする。【解決手段】遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、アルケンと、二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、金属ラクトン化合物を得る工程(1)と、前記第1の反応器から連続的に抜き出された前記金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程(2)と、を含み、前記工程(1)における前記遷移金属錯体の供給量(mmol/分)に対する二酸化炭素の供給量(mmol/分)の比(A)が1以下である、α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法に関する。
近年、二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスの低減等を目的として、CO2を化学合成の原料として使用する方法が数多く提案されている。その一つとして、CO2とアルケンを原料として、アクリル酸等の不飽和カルボン酸を製造することが提案されている。
例えば、非特許文献1には、CO2およびアルケンを原料とする世界初のアクリル酸塩の触媒的合成が記載されている。より詳細には、ニッケル錯体とエチレンとを反応させて、エチレン−ニッケル錯体を得た後に(工程1)、CO2を反応させることでニッケル−ラクトン錯体を形成する(工程2)。そして、ナトリウムtert−ブトキシドを添加し、前記ニッケル−ラクトン錯体と反応させることで、ラクトン環の開裂によるアクリレート錯体の形成、アクリレート配位子のエチレンによる置換を経由してアクリレート(アクリル酸ナトリウム)を放出させたことが記載されている。
なお、非特許文献1には、前記工程2においてニッケル−ラクトン錯体を形成する際に、CO2を50bar(約50気圧)となるまで加圧した上で反応させることが記載されている。そして、このようなCO2リッチ領域を、エチレンで置換してCO2プア領域とした後に工程2の後工程が行われることが記載されている。
また非特許文献2には、触媒としてのニッケル錯体を仕込んだ回分式の反応容器にCO2(40気圧)、エチレン(10気圧)および、ナトリウムtert−ブトキシドを同時に導入し、約50気圧で反応させることによって、最大で、触媒量に対して514当量のアクリレート(アクリル酸ナトリウム)を放出させたことが記載されている。
なお、非特許文献1には、前記工程2においてニッケル−ラクトン錯体を形成する際に、CO2を50bar(約50気圧)となるまで加圧した上で反応させることが記載されている。そして、このようなCO2リッチ領域を、エチレンで置換してCO2プア領域とした後に工程2の後工程が行われることが記載されている。
また非特許文献2には、触媒としてのニッケル錯体を仕込んだ回分式の反応容器にCO2(40気圧)、エチレン(10気圧)および、ナトリウムtert−ブトキシドを同時に導入し、約50気圧で反応させることによって、最大で、触媒量に対して514当量のアクリレート(アクリル酸ナトリウム)を放出させたことが記載されている。
Lejkowski, M. L. et al., "The first catalytic synthesis of an acrylate from CO2 and an alkene-A rational approach", Chem. Eur. J. 18, 14017−14025 (2012)
S. Manzini et al., "Enhanced Activity and Recyclability of Palladium Complexes in the Catalytic Synthesis of Sodium Acrylate from Carbon Dioxide and Ethylene", ChemCatChem 2016, 8, 1-7
非特許文献1によれば、CO2およびエチレンからアクリル酸塩等のα,β−不飽和カルボン酸塩を触媒的に合成することができる。
しかしながら、まず、工程2において、ニッケル−ラクトン錯体を形成する際にCO2を50bar(約50気圧)まで加圧して反応させている。これは、ニッケル−ラクトン錯体の原料となるエチレン−ニッケル錯体に対して、極めて過剰な量のCO2を使用していることとなり効率的ではない。そして、過剰量のCO2はその後、エチレン置換により排出させていることから、この点においても効率的ではない。さらに過剰にくわえているナトリウムtert−ブトキシドは、続いて再度の工程1で加えるCO2と反応し、対応する塩基とCO2の付加体(不純物)が生成してしまうため、この点においても効率的ではない。また回分式のオートクレーブを使用しているため、複数回の工程1、工程2のサイクルののち、生成物の回収工程が別途必要になる。
非特許文献2によれば、回分式の反応容器にCO2(40気圧)、エチレン(10気圧)および、ナトリウムtert−ブトキシドを同時に導入することで、工程1の操作と工程2の操作とを別途行うことなく、CO2およびエチレンからアクリル酸塩等のα,β−不飽和カルボン酸塩を触媒的に合成することができる。
しかしながら、反応後に、過剰のCO2と過剰の塩基による副反応生成物が生成してしまうこと(ここで、通常、投入した塩基量の50モル%以上が副反応で消費される。)、過剰に加えたエチレン、CO2が未反応のまま反応器に残ってしまうこと(触媒量に対して2000〜10000当量のエチレン、CO2を導入するが、そのうち反応に消費されるのは最大で10%質量程度である。)から、効率的ではない。さらに、反応後、さらにアクリル酸を合成するためには消費されなかった原料、生成物ならびに副生成物から、触媒を分離する必要があるという観点からも、効率的ではない。
上記の通り、従来の方法はいずれもバッチ式の製造方法であり、かつ、製造効率が悪いという問題があった。
そこで、本発明は、α,β−不飽和カルボン酸塩を効率よく連続的に製造する手段を提供することを目的とする。
しかしながら、まず、工程2において、ニッケル−ラクトン錯体を形成する際にCO2を50bar(約50気圧)まで加圧して反応させている。これは、ニッケル−ラクトン錯体の原料となるエチレン−ニッケル錯体に対して、極めて過剰な量のCO2を使用していることとなり効率的ではない。そして、過剰量のCO2はその後、エチレン置換により排出させていることから、この点においても効率的ではない。さらに過剰にくわえているナトリウムtert−ブトキシドは、続いて再度の工程1で加えるCO2と反応し、対応する塩基とCO2の付加体(不純物)が生成してしまうため、この点においても効率的ではない。また回分式のオートクレーブを使用しているため、複数回の工程1、工程2のサイクルののち、生成物の回収工程が別途必要になる。
非特許文献2によれば、回分式の反応容器にCO2(40気圧)、エチレン(10気圧)および、ナトリウムtert−ブトキシドを同時に導入することで、工程1の操作と工程2の操作とを別途行うことなく、CO2およびエチレンからアクリル酸塩等のα,β−不飽和カルボン酸塩を触媒的に合成することができる。
しかしながら、反応後に、過剰のCO2と過剰の塩基による副反応生成物が生成してしまうこと(ここで、通常、投入した塩基量の50モル%以上が副反応で消費される。)、過剰に加えたエチレン、CO2が未反応のまま反応器に残ってしまうこと(触媒量に対して2000〜10000当量のエチレン、CO2を導入するが、そのうち反応に消費されるのは最大で10%質量程度である。)から、効率的ではない。さらに、反応後、さらにアクリル酸を合成するためには消費されなかった原料、生成物ならびに副生成物から、触媒を分離する必要があるという観点からも、効率的ではない。
上記の通り、従来の方法はいずれもバッチ式の製造方法であり、かつ、製造効率が悪いという問題があった。
そこで、本発明は、α,β−不飽和カルボン酸塩を効率よく連続的に製造する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った。その結果、金属ラクトン化合物を得る工程(工程(1))と、金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程(工程(2))とを上流と下流に分離するとともに、工程(2)に到達するまでに添加するCO2の使用量を所定の範囲とすることで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を備える。
[1]α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法であって、
遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、アルケンと、二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、下記式(1):
[1]α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法であって、
遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、アルケンと、二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、下記式(1):
Mは、遷移金属であり、
Lは、それぞれ独立して、単座配位子であるか、またはLは共働して二座配位子を形成し、R11、R12、R21、R22はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数が1〜8のアルキル基である。]
で表される金属ラクトン化合物を得る工程(1)と、
前記第1の反応器から連続的に抜き出された前記金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程(2)と、
を含み、 前記工程(1)における前記遷移金属錯体供給量(mmol/分)に対する二酸化炭素の供給量(mmol/分)の比(A)が1以下である、α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。
[2]前記金属ラクトン化合物が下記式(2):
Mは、遷移金属であり、
Xは、それぞれ独立して、窒素原子、またはリン原子であり、
R1は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素芳香環基、または窒素含有基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であり、
この際、2つのR1は互いに結合して環構造を形成していてもよく、
同一のX原子に結合するR1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成していてもよく、
R11、R12、R21、R22は上記と同様である。]
で表される、[1]に記載の製造方法;
[3]前記金属ラクトン化合物が下記式(3):
Mは、遷移金属であり、
Xは、それぞれ独立して、窒素原子、またはリン原子であり、
R2、およびR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であり、
A1は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
この際、同一のX原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成していてもよく、R11、R12、R21、R22は上記と同様である。]
で表される、[2]に記載の製造方法;
[4]前記Xの少なくとも1つが窒素原子であり、
この際、前記窒素原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって複素芳香環が形成される、[3]に記載の製造方法;
[5]前記Xの少なくとも1つがリン原子であり、
この際、前記リン原子に結合するR2およびR3の少なくとも一つが、炭素数3以上の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、または炭素数3以上の複素芳香環基である、[3]または[4]に記載の製造方法;
[6]前記金属ラクトン化合物が下記式(4)〜(6):
Mは、遷移金属であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であり、
A1は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
A2は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
A3は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
R4は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であり、
R11、R12、R21、R22は上記と同様である。]
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[3]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法;
[7]前記工程(1)の反応を、10気圧以下の圧力で行う、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法;
本発明によれば、α,β−不飽和カルボン酸塩を効率よく連続的に製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法は、遷移金属錯体と、アルケンと、二酸化炭素(CO2)と、を第1の反応器に連続的に供給して反応させることにより、下記式(1)で表される金属ラクトン化合物を得る工程(1)と、前記第1の反応器から連続的に抜き出された前記金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程(2)と、を含む。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法は、遷移金属錯体と、アルケンと、二酸化炭素(CO2)と、を第1の反応器に連続的に供給して反応させることにより、下記式(1)で表される金属ラクトン化合物を得る工程(1)と、前記第1の反応器から連続的に抜き出された前記金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程(2)と、を含む。
[工程(1)]
工程(1)は、遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、アルケンと、二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、上記式(1)で表される金属ラクトン化合物を得る工程である。
(遷移金属錯体)
遷移金属錯体は、通常、遷移金属と配位子とを含む。
前記遷移金属としては、特に制限されないが、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の周期律表の6族に属する元素;レニウム(Re)等の7族に属する元素;鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)等の8族に属する元素;コバルト(Co)、ロジウム(Rh)等の9族に属する元素;ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の10族に属する元素等が挙げられる。これらのうち、遷移金属は、ニッケル、モリブデン、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、レニウム、タングステンであることが好ましく、ニッケル、モリブデン、パラジウム、白金、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウムであることがより好ましく、ニッケル、パラジウムであることがさらに好ましい。なお、上記遷移金属は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
工程(1)は、遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、アルケンと、二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、上記式(1)で表される金属ラクトン化合物を得る工程である。
(遷移金属錯体)
遷移金属錯体は、通常、遷移金属と配位子とを含む。
前記遷移金属としては、特に制限されないが、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の周期律表の6族に属する元素;レニウム(Re)等の7族に属する元素;鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)等の8族に属する元素;コバルト(Co)、ロジウム(Rh)等の9族に属する元素;ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の10族に属する元素等が挙げられる。これらのうち、遷移金属は、ニッケル、モリブデン、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、レニウム、タングステンであることが好ましく、ニッケル、モリブデン、パラジウム、白金、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウムであることがより好ましく、ニッケル、パラジウムであることがさらに好ましい。なお、上記遷移金属は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
配位子としては、単座または2座、3座等の多座のいずれであってもよいが、CO2およびこれと反応させる化合物のための配位部位を金属上に残すように適切な配位子を選択することが望ましい。例えば、前記活性金属が、ニッケルの場合、2座の配位子を用いることが好ましく、コバルトの場合、3座の配位子を用いることが好ましい。
配位子は、遷移金属に配位する原子または原子団として、リン原子、窒素原子、酸素原子、およびカルベン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子または原子団を少なくとも1つ含んでいてもよい。配位子は、例えばホスフィン、ホスファイト、アミン、およびN−複素環カルベンから選択することができる。前記配位子において、遷移金属に配位する少なくとも1つ原子または原子団は、リン原子、アミンおよびカルベン基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、リン原子およびアミンのいずれか一方または両方であることがより好ましい。
配位子が遷移金属に配位する少なくとも1つのリン原子を含む場合、少なくとも1つの基が第二級または第三級炭素原子を介してリン原子に結合していることが好ましい。より好ましくは、第二級または第三級炭素原子を介して少なくとも2つの基がリン原子に結合している。第二級または第三級炭素原子を介してリン原子に結合している適切な基は、例えば、アダマンチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、sec−ブチル、イソプロピル、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニルである。これらのうち電子供与性が高い基が望ましく、具体的には、tert−ブチル、シクロヘキシルが好ましい。
配位子が遷移金属に配位する少なくとも1つのN−複素環カルベンを含む場合、好ましくは少なくとも1つの基が第二または第三級炭素原子を介してカルベン基の少なくとも1つのα−窒素原子に結合している。第三級炭素原子を介して窒素原子に結合している適切な基は、例えば、アダマンチル、tert−ブチル、イソプロピル、フェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルであり、アダマンチル、tert−ブチル、2,6−ジイソプロピルフェニルであることが好ましい。
本発明で使用できる少なくとも1つのリン原子を含む配位子の具体例として、単座配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)等のトリシクロアルキルホスフィン;トリフェニルホスフィン、トリ(4−フルオロメチルフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン;トリ−2−フラニルホスフィン等のトリヘテロアリールホスフィン;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスホラン配位子等が挙げられる。
2座配位子としては、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(dppm)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(dpppe)、1,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1、2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1、2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(シクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(2S,3S)−(−)−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、(S,S)−1、2−ビス[(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン((S,S)−DIPAMP)、(R,R)−(−)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(QuinoxP*)、(R,R)−1,2−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)ベンゼン(BenzP*)、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、トリス(2−ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィン、(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン等が挙げられる。
3座配位子としては、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン等が挙げられる。
4座配位子としては、トリス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン等が挙げられる。
なかでも、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1、2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、BenzP*が好ましい。
2座配位子としては、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(dppm)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(dpppe)、1,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1、2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1、2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(シクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(2S,3S)−(−)−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、(S,S)−1、2−ビス[(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン((S,S)−DIPAMP)、(R,R)−(−)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(QuinoxP*)、(R,R)−1,2−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)ベンゼン(BenzP*)、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、トリス(2−ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィン、(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン等が挙げられる。
3座配位子としては、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン等が挙げられる。
4座配位子としては、トリス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン等が挙げられる。
なかでも、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1、2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、BenzP*が好ましい。
また、配位子としては、上記配位子の他、ハロゲン化物、アミン、アミド、酸化物、リン化物、カルボキシラート、アセチルアセトナート、アリールスルホナート、アルキルスルホナート、水素化物、一酸化炭素、アルケン(エチレン、プロペン、ブタン等)、ジエン(1,3−ブタジエン、1.6−ヘキサジエン等)、シクロアルケン(シクロヘキセン等)、シクロアルカジエン(1,5−シクロオクタジエン(COD)等)、ニトリル、芳香族、複素環式芳香族、エーテル、三フッ化リン、ホスホール、ホスファベンゼン、並びに単座、2座、および多座ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスホラミダイト、およびホスファイト配位子から選択される少なくとも1つのさらなる配位子も有していてもよい。
上述の配位子は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上述の配位子は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
一実施形態において、遷移金属錯体の具体例としては、下記式(7)で表されるものを挙げることができる。
Xは、それぞれ独立して、窒素原子、またはリン原子である。
Yは、一酸化炭素、炭素数2〜20のアルケン、炭素数4〜20のジエン、炭素数3〜20のシクロアルケン、または炭素数4〜20のシクロアルカジエンである。
前記炭素数2〜20のアルケンとしては、特に制限されないが、エチレン、プロピレン、イソブテン、1,3−ブタジエン、ピペリレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、3−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。
前記炭素数4〜20のジエンとしては、特に制限されないが、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
前記炭素数3〜20のシクロアルケンとしては、特に制限されないが、シクロプロぺン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロペンテン、エチルシクロペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
前記炭素数4〜20のシクロアルカジエンとしては、1,5−シクロオクタジエン(COD)等が挙げられる。
上述のうち、Yは、一酸化炭素、炭素数2〜20のアルケン、炭素数4〜20のシクロアルカジエンであることが好ましく、一酸化炭素、炭素数2〜10のアルケン、炭素数4〜10のシクロアルカジエンであることがより好ましく、一酸化炭素、エチレン、1,5−シクロオクタジエン(COD)であることがさらに好ましく、エチレン、1,5−シクロオクタジエン(COD)であることが特に好ましい。
R1は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素芳香環基、または窒素含有基である。また、R2およびR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基である。この際、2つのR1は互いに結合して環構造を形成していてもよく、同一のX原子に結合するR1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成していてもよい。
前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基等が挙げられる。
前記炭素数2〜20のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、sec−ブチル基、tertert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、n−へプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、2−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルヘプチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
前記炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、特に制限されないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
この際、前記脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、アリール基(フェニル基等)、ヘテロアリール基(ピリジニル基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボン酸誘導体基(メチルオキシカルボニル基等のカルボン酸エステル基等)、スルホン酸誘導体基(スルホン酸エステル基、スルホンアミド基等)等が挙げられる。なお、前記E1、E2、E3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基である。これらの置換基は単独で有していても、2種以上組み合わせて有していてもよい。
前記芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30のアリール基等が挙げられる。前記炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル、ビフェニル基等が挙げられる。
前記複素芳香環基としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数3〜30のヘテロアリール基等が挙げられる。前記炭素数1〜30のヘテロアリール基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、チアナフテニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、チノリル基、キノキサリル基、ジベンゾチオフェニル基、アクリジル基、フェナントロリル基等が挙げられる。
この際、前記芳香族炭化水素基、前記複素芳香環基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、特に制限されないが、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。
前記窒素含有基は、前記複素芳香環基とは異なるものであり、その例としては、NE1E2基、NE1E2E3+基が挙げられる。この際、E1、E2、E3は、上述の通りである。NE1E2基、NE1E2E3+基の具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
なお、「R1が互いに結合して環構造を形成」とは、2つのR1が互いに結合して、結果的に2価の基を形成し、2つのXおよびMとともに環構造を形成することを意味する。また、「同一のX原子に結合するR1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成」とは、典型的には、同一のX原子に結合するR1、R2、およびR3によって二重結合を含む環構造を形成することを意味する。例えば、R1およびR2がXとともに6員環構造を形成するとともに、R3の結合手が6員環の二重結合を形成する場合等が挙げられる。
このうち、R1は互いに結合して環構造を形成することが好ましく、3員環構造、4員環構造、5員環構造、または6員環構造を形成することがより好ましく、5員環構造、または6員環構造を形成することがさらに好ましい。R1が互いに結合して環構造を形成することで、二座配位子となり錯体が化学的に安定となり、また、環構造により金属−二座配位子間のコンホメーションが制限され、金属ラクトン化合物が生成した際にラクトン環構造を歪ませて工程(2)におけるラクトン環の開裂が進行しやすくなることから好ましい。
また、R2、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または複素芳香環基であることが好ましく、炭素数6〜20のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であることがより好ましく、炭素数3〜10のアルキル基、または炭素数6〜20のシクロアルキル基であることがさらに好ましい。R2、R3が炭素数3〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であると、立体障害が大きく、かつ、電子供与性を有することで、Yにおける錯体反応が生じやすくなることから好ましい。
一実施形態において、好ましい遷移金属錯体は下記式(8)で表される。
M、X、Yは、上記式(7)と同様である。
また、R2、R3は、上記式(7)と同様である。
A1は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基である。この際、同一のX原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成していてもよい。
前記二価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン等が挙げられる。
炭素数3〜20のシクロアルキレン基としては、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、メチルシクロへキシレン等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロぺニレン基、ブテニレン基が挙げられる。
上述の二価の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、上述の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。なお、二価の脂肪族炭化水素基は置換基を単独で有していても、2種以上組み合わせて有していてもよい。
前記二価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30のアリーレンから誘導される二価の基が挙げられる。当該炭素数6〜30のアリーレン基としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニルから誘導される二価の基が挙げられる。
前記二価の複素環式芳香族化合物基としては、炭素数1〜30のヘテロアリーレンから誘導される二価の基が挙げられる。当該炭素数1〜30のヘテロアリーレン基としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、イソキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾフラン、インドール、チアナフテン、ベンズイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、チノリン、キノキサリン、ジベンゾチオフェン、アクリジン、フェナントロリンから誘導される二価の基が挙げられる。
上述の二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、上述の芳香族炭化水素基、複素芳香環基と同様のものが挙げられる。なお、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基は、それぞれ置換基を単独で有していても、2種以上組み合わせて有していてもよい。
前記窒素含有基としては、−NE4−が挙げられる。この際、前記E4は、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数1〜30のヘテロアリール基である。
なお、「同一のX原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成」とは、典型的には、同一のX原子に結合するA1、R2、およびR3によって二重結合を含む環構造を形成することを意味する。
上記式(7)において、Xの少なくとも1つが窒素原子であり、この際、前記窒素原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって複素芳香環が形成されるものを含むことが好ましい。なお、前記複素芳香環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環等挙げられる。これらのうち、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環であることが好ましく、ピリジン環であることがより好ましい。この際、前記複素芳香環は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。これらの置換基は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。式(7)が有する複素芳香環は一定の立体障害を有し、かつ、窒素原子等のヘテロ原子に基づく高い電子供与性を有するため、Yにおける錯体反応が生じやすくなることから好ましい。
また、上記式(7)において、Xの少なくとも1つがリン原子であり、この際、前記リン原子に結合するR2およびR3の少なくとも一つが、炭素数3以上の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、または炭素数3以上の複素芳香環基であるものを含むことが好ましい。
なお、前記炭素数3以上の脂肪族炭化水素基としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、へプチル基、2−メチルヘキシル基等の炭素数3〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基等が挙げられる。この際、前記炭素数3以上の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボン酸誘導体基、スルホン酸誘導体基等が挙げられる。これらの置換基は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、炭素数6以上の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル、ビフェニル基等の炭素数6〜30のヘテロアリール基等が挙げられる。
さらに、炭素数3以上の複素芳香環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、チアナフテニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、チノリル基、キノキサリル基、ジベンゾチオフェニル基、アクリジル基、フェナントロリル基等の炭素数1〜30のヘテロアリール基が挙げられる。
この際、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、複素芳香環基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。これらの置換基は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上述のうち、上記式(7)において、Xの少なくとも1つがリン原子である場合、前記リン原子に結合するR2およびR3の少なくとも一つは、炭素数4〜8のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜7のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基がさらに好ましく、炭素数4〜8のシクロアルキル基であることが特に好ましい。
一実施形態において、より好ましい遷移金属錯体は下記式(9)〜(11)で表される。
すなわち、式(9)は式(7)において2つのXがリン原子(P)である構造である。また、式(10)は式(7)において一方のXがリン原子であり、他方のXが窒素原子であり、かつ、窒素原子に結合する、R1、R2、およびR3が一体となってピリジン環を形成した構造である。さらに、式(11)は式(7)において2つのXが窒素原子であり、かつ、窒素原子に結合するR1、R2、およびR3が一体となってピリジン環を形成した構造である。
M、X、Yは、上記式(7)と同様である。
また、A1は、上記式(8)と同様である。
A2は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、窒素含有基である。なお、通常、「A1の炭素原子数−1」の炭素原子数を有しうる。
A3は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、窒素含有基である。なお、通常、「A1の炭素原子数−2」の炭素原子数を有しうる。
R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数1〜30のヘテロアリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボン酸誘導体基、スルホン酸誘導体基等が挙げられる。これらのうち、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基であることが好ましく、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基であることがより好ましい。
上述のうち、遷移金属錯体は、式(10)で表されるものを含むことが好ましく、式(10)において、R2およびR3がそれぞれ独立してtert−ブチル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基であるものを含むことがより好ましく、式(10)において、R2およびR3が炭素数5〜8のシクロアルキル基であるものを含むことがさらに好ましい。
上述の遷移金属錯体は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
M、X、Yは、上記式(7)と同様である。
また、A1は、上記式(8)と同様である。
A2は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、窒素含有基である。なお、通常、「A1の炭素原子数−1」の炭素原子数を有しうる。
A3は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、窒素含有基である。なお、通常、「A1の炭素原子数−2」の炭素原子数を有しうる。
R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数1〜30のヘテロアリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、NE1E2基、NE1E2E3+基、カルボン酸誘導体基、スルホン酸誘導体基等が挙げられる。これらのうち、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基であることが好ましく、水素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基であることがより好ましい。
上述のうち、遷移金属錯体は、式(10)で表されるものを含むことが好ましく、式(10)において、R2およびR3がそれぞれ独立してtert−ブチル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基であるものを含むことがより好ましく、式(10)において、R2およびR3が炭素数5〜8のシクロアルキル基であるものを含むことがさらに好ましい。
上述の遷移金属錯体は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(アルケン)
アルケンとしては、特に制限されないが、エチレン、プロピレン、イソブテン、1,3−ブタジエン、ピペリレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、スチレン等が挙げられる。これらのうち、エチレン、プロピレン、1,3−ジエン、スチレンであることが好ましく、エチレンであることがより好ましい。
なお、これらのアルケンは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、アルケンの性状は、その種類にもよっても異なるが、気体状であっても液体であってもよい。
なお、使用するアルケンの種類によって、通常、得られるα,β−不飽和カルボン酸塩の種類が異なる。例えば、エチレンを用いると通常アクリル酸塩が得られる。また、プロピレンを用いると通常2−ブテン酸塩が得られる。さらに、1−ブテンを用いると通常2−エチルプロペン酸塩が得られる。
アルケンとしては、特に制限されないが、エチレン、プロピレン、イソブテン、1,3−ブタジエン、ピペリレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、スチレン等が挙げられる。これらのうち、エチレン、プロピレン、1,3−ジエン、スチレンであることが好ましく、エチレンであることがより好ましい。
なお、これらのアルケンは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、アルケンの性状は、その種類にもよっても異なるが、気体状であっても液体であってもよい。
なお、使用するアルケンの種類によって、通常、得られるα,β−不飽和カルボン酸塩の種類が異なる。例えば、エチレンを用いると通常アクリル酸塩が得られる。また、プロピレンを用いると通常2−ブテン酸塩が得られる。さらに、1−ブテンを用いると通常2−エチルプロペン酸塩が得られる。
(二酸化炭素(CO2))
CO2は、気体状、液体、または超臨界状態で使用できる。工業規模で利用できる、CO2を含むガス混合物を使用することも可能であるが、それらが一酸化炭素を実質的に含まないことが好ましい。なお、「一酸化炭素を実質的に含まない」とは、ガス混合物100体積%に対して、COの含有量が100ppm(0.01体積%)以下であることを意味する。
CO2は、気体状、液体、または超臨界状態で使用できる。工業規模で利用できる、CO2を含むガス混合物を使用することも可能であるが、それらが一酸化炭素を実質的に含まないことが好ましい。なお、「一酸化炭素を実質的に含まない」とは、ガス混合物100体積%に対して、COの含有量が100ppm(0.01体積%)以下であることを意味する。
(不活性ガス)
工程(1)の反応は、不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
当該不活性ガスとしては、特に制限されないが、窒素ガス、希ガス(ヘリウムガス、アルゴンガス、クリプトンガス等)等が挙げられる。これらの不活性ガスは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
不活性ガスは、通常、CO2が気体である場合に、CO2とともに添加される。また、アルケンが気体である場合には、アルケンとともに添加されることもある。
また、不活性ガスを使用する場合、その使用量については特に制限は無いが、例えば、反応系内における反応阻害剤であるO2の濃度が1000ppmとなるような量で使用することが望ましい。
工程(1)の反応は、不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
当該不活性ガスとしては、特に制限されないが、窒素ガス、希ガス(ヘリウムガス、アルゴンガス、クリプトンガス等)等が挙げられる。これらの不活性ガスは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
不活性ガスは、通常、CO2が気体である場合に、CO2とともに添加される。また、アルケンが気体である場合には、アルケンとともに添加されることもある。
また、不活性ガスを使用する場合、その使用量については特に制限は無いが、例えば、反応系内における反応阻害剤であるO2の濃度が1000ppmとなるような量で使用することが望ましい。
(溶媒)
工程(1)の反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。好ましい一実施形態において、遷移金属錯体を含む溶媒中にアルケンおよびCO2を導入して、遷移金属錯体と接触させることにより反応を行うことが好ましい。
溶媒としては、特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのうち、THF、トルエンを用いることが好ましい。なお、これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
工程(1)の反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。好ましい一実施形態において、遷移金属錯体を含む溶媒中にアルケンおよびCO2を導入して、遷移金属錯体と接触させることにより反応を行うことが好ましい。
溶媒としては、特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのうち、THF、トルエンを用いることが好ましい。なお、これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(塩基)
工程(1)には、CO2と反応してカルボン酸ハーフエステルを形成する後述の塩基を含まないことが好ましい。
しかしながら、後述するように工程(2)で再生された遷移金属錯体を工程(1)に返送する場合には、塩基が混在する可能性がある。このような場合には、工程(1)の反応系において、塩基の含有量は、二酸化炭素1モルに対して、0.05モル以下とすることが好ましく、0.02モル以下とすることがより好ましい。
工程(1)には、CO2と反応してカルボン酸ハーフエステルを形成する後述の塩基を含まないことが好ましい。
しかしながら、後述するように工程(2)で再生された遷移金属錯体を工程(1)に返送する場合には、塩基が混在する可能性がある。このような場合には、工程(1)の反応系において、塩基の含有量は、二酸化炭素1モルに対して、0.05モル以下とすることが好ましく、0.02モル以下とすることがより好ましい。
(反応)
工程(1)の反応は、前記遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、連続的に行う。
前記第1の反応器としては、管型反応器(plug flow reactor、略称:PFR)、及び連続槽型反応器(continuous stirred tank reactor、略称:CSTR)における上流側の反応槽などを用いることができる。
以下、図1に参照して、前記第1の反応器としてPFRを用いて工程(1)の反応を行う例について説明する。
図1は、前記第1の反応器11としてPFRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム1を示した模式図である。
前記システム1の運転開始時に、遷移金属錯体を含む溶液を、供給タンク20から配管21を介して前記第1の反応器11(PFR)に供給する。遷移金属錯体を含む溶液が、システム1の系内に満たされ、循環するようになったら、供給タンク20からの供給は停止して定常運転に移行する。定常運転時には、供給管22を介してアルケンを、供給管23を介してCO2を前記反応器11に供給する。前記溶液に用いる溶媒は上記したものを使用することができる。溶液中における遷移金属錯体の濃度については特に制限はないが、反応を効率的に行う観点から、0.1mmol/L〜50mmol/Lであることが好ましく、0.2mmol〜20mmolであることがより好ましく、0.3mmol〜10mmolであることがさらに好ましい。
ここで、定常運転時における前記遷移金属錯体を含む溶液の空間速度(SV)は、前記第1の反応器11(PFR)内において金属ラクトン化合物が形成されるのに十分な時間を確保できる限り特に制限は無い。例えば、反応をより効率的に進める観点から、遷移金属錯体を含む溶液の空間速度(SV)として、0.1〜50hr−1とすることが好ましく、0.2〜20hr−1とすることがより好ましく、0.5〜10hr−1とすることがさらに好ましい。前記供給速度は、定量ポンプ等の公知のポンプを用いて適宜調整することができる。
工程(1)の反応は、前記遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、連続的に行う。
前記第1の反応器としては、管型反応器(plug flow reactor、略称:PFR)、及び連続槽型反応器(continuous stirred tank reactor、略称:CSTR)における上流側の反応槽などを用いることができる。
以下、図1に参照して、前記第1の反応器としてPFRを用いて工程(1)の反応を行う例について説明する。
図1は、前記第1の反応器11としてPFRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム1を示した模式図である。
前記システム1の運転開始時に、遷移金属錯体を含む溶液を、供給タンク20から配管21を介して前記第1の反応器11(PFR)に供給する。遷移金属錯体を含む溶液が、システム1の系内に満たされ、循環するようになったら、供給タンク20からの供給は停止して定常運転に移行する。定常運転時には、供給管22を介してアルケンを、供給管23を介してCO2を前記反応器11に供給する。前記溶液に用いる溶媒は上記したものを使用することができる。溶液中における遷移金属錯体の濃度については特に制限はないが、反応を効率的に行う観点から、0.1mmol/L〜50mmol/Lであることが好ましく、0.2mmol〜20mmolであることがより好ましく、0.3mmol〜10mmolであることがさらに好ましい。
ここで、定常運転時における前記遷移金属錯体を含む溶液の空間速度(SV)は、前記第1の反応器11(PFR)内において金属ラクトン化合物が形成されるのに十分な時間を確保できる限り特に制限は無い。例えば、反応をより効率的に進める観点から、遷移金属錯体を含む溶液の空間速度(SV)として、0.1〜50hr−1とすることが好ましく、0.2〜20hr−1とすることがより好ましく、0.5〜10hr−1とすることがさらに好ましい。前記供給速度は、定量ポンプ等の公知のポンプを用いて適宜調整することができる。
尚、ここでいう空間速度(SV)は、以下の式(I)で求められる値である。
空間速度(SV)[hr−1] = 遷移金属錯体を含む溶液の流量[Lhr−1]/第1の反応器の容積[L] …(I)
空間速度(SV)[hr−1] = 遷移金属錯体を含む溶液の流量[Lhr−1]/第1の反応器の容積[L] …(I)
CO2の供給量(流速)は、遷移金属錯体の供給量(流速)以下になるように設定することが必要である。具体的には、CO2の流速の前記遷移金属錯体の流速に対する比(A)(CO2の流速(mmol/分)/遷移金属錯体の流速(mmol/分))は1以下であり、0.1〜1以下にすることが好ましく、0.1〜0.95以下にすることがより好ましい。
従来技術、例えば上述の非特許文献1では、ニッケル−ラクトンの開裂に用いられるアルコキシドがCO2と不可逆的に反応して極めて安定なカルボン酸ハーフエステルを形成することから、触媒サイクルをCO2リッチ領域とCO2プア領域の2つに分割することでカルボン酸ハーフエステルの形成を抑制している。しかしながら、CO2プア領域では、依然としてCO2が残存しているため、アルコキシドとCO2との反応によるカルボン酸ハーフエステルの形成が生じてしまう。そのため、アルコキシドがカルボン酸ハーフエステルの形成に消費されることになる。
これに対し、上記の比(A)が1以下であれば、CO2の使用量は、遷移金属錯体1モルに対して、1モル以下である。すなわち、工程(1)において、遷移金属錯体1モルとCO21モルとが反応するため、CO2は工程(1)において全部またはほとんど全部が消費される。このため、後述する工程(2)では、CO2が残存しないか、またはほとんど残存しないため、工程(2)において、カルボン酸ハーフエステルの形成を防止または抑制することができる。
従来技術、例えば上述の非特許文献1では、ニッケル−ラクトンの開裂に用いられるアルコキシドがCO2と不可逆的に反応して極めて安定なカルボン酸ハーフエステルを形成することから、触媒サイクルをCO2リッチ領域とCO2プア領域の2つに分割することでカルボン酸ハーフエステルの形成を抑制している。しかしながら、CO2プア領域では、依然としてCO2が残存しているため、アルコキシドとCO2との反応によるカルボン酸ハーフエステルの形成が生じてしまう。そのため、アルコキシドがカルボン酸ハーフエステルの形成に消費されることになる。
これに対し、上記の比(A)が1以下であれば、CO2の使用量は、遷移金属錯体1モルに対して、1モル以下である。すなわち、工程(1)において、遷移金属錯体1モルとCO21モルとが反応するため、CO2は工程(1)において全部またはほとんど全部が消費される。このため、後述する工程(2)では、CO2が残存しないか、またはほとんど残存しないため、工程(2)において、カルボン酸ハーフエステルの形成を防止または抑制することができる。
アルケンの供給量(流速)は、遷移金属錯体の供給量(流速)以上となるように設定することが望ましい。具体的には、アルケンの流速の遷移金属錯体の流速に対する比(B)(アルケンの流速(mmol/分)/遷移金属錯体の流速(mmol/分))を、1〜50にすることが好ましく、1.2〜20にすることがより好ましく、1.5〜15にすることがさらに好ましく、2〜10にすることが特に好ましい。上記の比(B)が1以上であると、遷移金属錯体とアルケンとの反応を効率的に進めることができることから好ましい。なお、上記の比(B)が1超であると(遷移金属錯体1モルに対して過剰量であると)、工程(2)において効率的に反応が生じうることから好ましい。具体的には、アルケンが過剰量存在していても、アルケンは瞬時に前記遷移金属錯体と反応し、後述する金属ラクトン化合物を形成し、また、工程(1)の反応で残存したアルケンは、後述する工程(2)において生成するα,β−不飽和カルボン酸塩の錯体と配位子交換反応を生じさせる。その結果、α,β−不飽和カルボン酸塩が得られるとともに、アルケンが配位した遷移金属錯体が再生し連続反応が可能となりうる。一方、上記の比(B)が50以下であると、反応圧力を下げることができることから好ましい。 また、系内に存在する遷移金属錯体の総量(mol)に対するアルケンの総量(mol)は、1〜100以下が好ましく、2〜50以下がさらに好ましく、4〜20以下が特に好ましい。上記を達成するために、アルケンの供給量を適時変更してもよい。より具体的には、アルケンを遷移金属錯体に対して過剰に供給し続けると、系内における未反応のアルケンの総量が増えてしまうため、系内に存在する遷移金属錯体の総量(mol)に対するアルケンの総量(mol)が、上記の範囲内となるようにアルケンの供給量を適時制御してもよい。
また、α,β−不飽和カルボン酸塩製造システムとしてCSTRを採用した場合においても、前記PFRを採用した場合と実質的に同様にして、工程(1)の反応を行うことができる。
図2に、CSTRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム2の模式図を示す。
α,β−不飽和カルボン酸塩製造システム2においては、工程(1)の反応は、CSTRの上流側の反応槽13において行われる。この点以外は、前記PFRを採用した場合と実質的に同様の条件を採用することができるが、反応槽13内における液の平均滞留時間が金属ラクトン化合物を形成する反応に必要が時間以上となるよう設定することが望ましい。
図2に、CSTRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム2の模式図を示す。
α,β−不飽和カルボン酸塩製造システム2においては、工程(1)の反応は、CSTRの上流側の反応槽13において行われる。この点以外は、前記PFRを採用した場合と実質的に同様の条件を採用することができるが、反応槽13内における液の平均滞留時間が金属ラクトン化合物を形成する反応に必要が時間以上となるよう設定することが望ましい。
工程(1)の反応温度は、50〜250℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましい。
工程(1)の反応圧力は、通常、絶対圧で50気圧以下であることが好ましく、10気圧以下であることがより好ましく、2〜10気圧であることがさらに好ましく、3〜10気圧であることが特に好ましい。
工程(1)の反応圧力は、通常、絶対圧で50気圧以下であることが好ましく、10気圧以下であることがより好ましく、2〜10気圧であることがさらに好ましく、3〜10気圧であることが特に好ましい。
(金属ラクトン化合物)
工程(1)の反応により得られる金属ラクトン化合物は、下記式(1)で表される。
工程(1)の反応により得られる金属ラクトン化合物は、下記式(1)で表される。
R11、R12、R21、R22はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数が1〜8のアルキル基である。炭素数が1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、・・・・等が例として挙げられる。R11、R12、R21、R22の少なくとも1つがアルキルである場合、R11、R12、R21、R22の合計の炭素数は1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。
一実施形態において、金属ラクトン化合物は、下記(2)で表されるものであることが好ましい。
上述のM、X、R1、R2、R3、R11、R12、R21、R22は、上述と同様である。
一実施形態において、金属ラクトン化合物は、下記式(3)で表されるものであることがより好ましい。
M、X、R2、R3、A1、R11、R12、R21、R22は上述と同様である。
上記式(3)において、Xの少なくとも1つが窒素原子であり、この際、前記窒素原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって複素芳香環が形成されることが好ましい。この際、前記複素芳香環は上記式(7)において記載したものと同様のものが挙げられる。
また、上記式(3)において、Xの少なくとも1つがリン原子であり、この際、前記リン原子に結合するR2およびR3の少なくとも一つが、炭素数3以上の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、炭素数3以上の複素芳香環基であるものを含むことが好ましい。この際、前記炭素数3以上の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、炭素数3以上の複素芳香環基は上記式(7)において記載したものと同様のものが挙げられる。
一実施形態において、金属ラクトン化合物は、下記式(4)〜(6)からなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
M、R2、R3、A1、A2、A3、R4、R11、R12、R21、R22は、上述と同様である。
上述のうち、金属ラクトン化合物は、式(5)で表されるものであること子が好ましい。
上述の金属ラクトン化合物は単独で生成しても、2種以上が混合して生成していてもよい。
[工程(2)]
工程(2)は、前記第1の反応器から連続的に抜き出された金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程である。
(金属ラクトン化合物)
金属ラクトン化合物は、上述した通りであるからここでは説明を省略する。
図1及び図2に示すシステムのいずれにおいても、第1の反応器11または13から連続的に抜き出された金属ラクトン化合物を含む反応液が、配管24を介して第2の反応器12に供給される。
第2の反応器としても公知の反応容器を採用することができる。例えば、図1に示す第1の反応器11としてPFRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム1において第2の反応器12は、いわゆるバッファータンクであってよい。図2に示すCSTRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム2においては、第2の反応器12はCSTRの下流側の反応槽である。
工程(2)は、前記第1の反応器から連続的に抜き出された金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程である。
(金属ラクトン化合物)
金属ラクトン化合物は、上述した通りであるからここでは説明を省略する。
図1及び図2に示すシステムのいずれにおいても、第1の反応器11または13から連続的に抜き出された金属ラクトン化合物を含む反応液が、配管24を介して第2の反応器12に供給される。
第2の反応器としても公知の反応容器を採用することができる。例えば、図1に示す第1の反応器11としてPFRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム1において第2の反応器12は、いわゆるバッファータンクであってよい。図2に示すCSTRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム2においては、第2の反応器12はCSTRの下流側の反応槽である。
(塩基)
塩基は、金属ラクトン化合物のβ-水素脱離反応、その後の還元的脱水素反応を進行させることができるものであれば特に制限されないが、ナトリウムtert−ブトキシド(t−BuONa)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)、ヨウ化リチウム(LiI)、アンモニア(NH3)、フェノキシド(PhONa)等が挙げられる。これらの塩基は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、ヨウ化リチウム(LiI)およびアンモニア(NH3)を組み合わせて用いることが好ましい。
塩基の供給量(流速)は、金属ラクトン化合物の供給量(流速)に対する比(C)(塩基の流速(mmol/分)/金属ラクトン化合物の流速(mmol/分))が、0.1〜1となるようにすることが好ましい。また、上記比(C)は、0.3〜1であることがより好ましく、0.5〜1であることがさらに好ましい。
塩基は、金属ラクトン化合物のβ-水素脱離反応、その後の還元的脱水素反応を進行させることができるものであれば特に制限されないが、ナトリウムtert−ブトキシド(t−BuONa)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)、ヨウ化リチウム(LiI)、アンモニア(NH3)、フェノキシド(PhONa)等が挙げられる。これらの塩基は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、ヨウ化リチウム(LiI)およびアンモニア(NH3)を組み合わせて用いることが好ましい。
塩基の供給量(流速)は、金属ラクトン化合物の供給量(流速)に対する比(C)(塩基の流速(mmol/分)/金属ラクトン化合物の流速(mmol/分))が、0.1〜1となるようにすることが好ましい。また、上記比(C)は、0.3〜1であることがより好ましく、0.5〜1であることがさらに好ましい。
(ルイス酸)
工程(2)では、ルイス酸を第2の反応器12に供給してもよい。ルイス酸を使用することで工程(2)の反応速度を加速および/または反応条件を緩和(低温化)できる。
ルイス酸としては、特に制限されないが、LiI、NaI、AlCl3、Al(OEt)2Cl、ZnO、SiO2、Al2O3等が挙げられる。これらのうち、LiI、NaI、AlCl3を用いることが好ましく、LiI、NaIを用いることがより好ましい。なお、上述のルイス酸は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
ルイス酸の使用量は、反応系内に存在する金属ラクトン化合物の総量に対する比(D)(ルイス酸の系内での総量(mmol)/金属ラクトン化合物の総量(mmol))が、0.2〜20となるようにすることが好ましい。また、上記比(D)は、0.5〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。上記の比(D)が0.2以上であると、ラクトン環の開裂が効率的に進行し、α,β−不飽和カルボン酸の生成効率が高まることから好ましい。上記の比(D)が20以下であると、ルイス酸の使用量を抑制することができ、経済的である。
工程(2)では、ルイス酸を第2の反応器12に供給してもよい。ルイス酸を使用することで工程(2)の反応速度を加速および/または反応条件を緩和(低温化)できる。
ルイス酸としては、特に制限されないが、LiI、NaI、AlCl3、Al(OEt)2Cl、ZnO、SiO2、Al2O3等が挙げられる。これらのうち、LiI、NaI、AlCl3を用いることが好ましく、LiI、NaIを用いることがより好ましい。なお、上述のルイス酸は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
ルイス酸の使用量は、反応系内に存在する金属ラクトン化合物の総量に対する比(D)(ルイス酸の系内での総量(mmol)/金属ラクトン化合物の総量(mmol))が、0.2〜20となるようにすることが好ましい。また、上記比(D)は、0.5〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。上記の比(D)が0.2以上であると、ラクトン環の開裂が効率的に進行し、α,β−不飽和カルボン酸の生成効率が高まることから好ましい。上記の比(D)が20以下であると、ルイス酸の使用量を抑制することができ、経済的である。
(アルケン)
工程(2)はアルケンの存在下で行うことが好ましい。工程(2)においてアルケンが存在すると、後述するように、α,β−不飽和カルボン酸塩26が得られるとともに、遷移金属錯体が再生することから好ましい。
アルケンの具体例としては、上述したものが挙げられる。
アルケンは、工程(1)において残存したものであってもよいし、工程(2)において新たに導入されたものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。一実施形態において、プロセスの簡便性から、アルケンは、工程(1)において残存したものであることが好ましい。
工程(2)におけるアルケンの供給量(流速)は、金属ラクトン化合物の供給量(流速)に対する比(F)(アルケンの流速(mmol/分)/金属ラクトン化合物の流速(mmol/分))が、0.1〜50となるようにすることが好ましい。また、上記比(F)は、0.5〜20であることがより好ましく、1.0〜15であることがさらに好ましく、1.5〜10であることが特に好ましい。
また系内に存在する遷移金属錯体の総量(mol)に対するアルケンの総量(mol)は、1〜100以下が好ましく、2〜50以下がさらに好ましく、4〜20以下が特に好ましい。上記を達成するために、アルケンの供給量を適時変更してもよい。より具体的には、アルケンを遷移金属錯体に対して過剰に供給し続けると、系内における未反応のアルケンの総量が増えてしまうため、系内に存在する遷移金属錯体の総量(mol)に対するアルケンの総量(mol)が、上記の範囲内となるようにアルケンの供給量を適時制御してもよい。
工程(2)はアルケンの存在下で行うことが好ましい。工程(2)においてアルケンが存在すると、後述するように、α,β−不飽和カルボン酸塩26が得られるとともに、遷移金属錯体が再生することから好ましい。
アルケンの具体例としては、上述したものが挙げられる。
アルケンは、工程(1)において残存したものであってもよいし、工程(2)において新たに導入されたものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。一実施形態において、プロセスの簡便性から、アルケンは、工程(1)において残存したものであることが好ましい。
工程(2)におけるアルケンの供給量(流速)は、金属ラクトン化合物の供給量(流速)に対する比(F)(アルケンの流速(mmol/分)/金属ラクトン化合物の流速(mmol/分))が、0.1〜50となるようにすることが好ましい。また、上記比(F)は、0.5〜20であることがより好ましく、1.0〜15であることがさらに好ましく、1.5〜10であることが特に好ましい。
また系内に存在する遷移金属錯体の総量(mol)に対するアルケンの総量(mol)は、1〜100以下が好ましく、2〜50以下がさらに好ましく、4〜20以下が特に好ましい。上記を達成するために、アルケンの供給量を適時変更してもよい。より具体的には、アルケンを遷移金属錯体に対して過剰に供給し続けると、系内における未反応のアルケンの総量が増えてしまうため、系内に存在する遷移金属錯体の総量(mol)に対するアルケンの総量(mol)が、上記の範囲内となるようにアルケンの供給量を適時制御してもよい。
(作用)
工程(2)では金属ラクトン化合物に塩基を作用させることで、金属ラクトン化合物のラクトン環が開裂され、α,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体が得られる。より詳細には、まず金属ラクトン化合物と塩基とが反応し、β−水素脱離により金属ラクトン化合物のラクトン環が開裂され、続く還元的脱水素化によりα,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体が得られる。
そして、α,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体は、任意の配位子(例えば、アルケン等)と配位子交換反応を行うことにより、α,β−不飽和カルボン酸塩を得ることができる。より詳細には、前記α,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体と、任意の配位子とが、配位子交換反応を行うことにより、α,β−不飽和カルボン酸塩が得られるとともに、任意の配位子が配位した遷移金属錯体が得られる。なお、最終的に得られた任意の配位子が配位した遷移金属錯体は、配管27を介して第1の反応器11の上流の配管21や供給タンク20に返送され、そのままCO2と反応して金属ラクトン化合物を得ることができる。なお、上述したように任意の配位子はアルケンであることが好ましい。
工程(2)の反応温度は、20〜250℃であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましい。
また、工程(2)の反応圧力は、絶対圧で50気圧以下であることが好ましく、10気圧以下であることがより好ましく、2〜10気圧であることがさらに好ましく、3〜10気圧であることが特に好ましい。
工程(2)では金属ラクトン化合物に塩基を作用させることで、金属ラクトン化合物のラクトン環が開裂され、α,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体が得られる。より詳細には、まず金属ラクトン化合物と塩基とが反応し、β−水素脱離により金属ラクトン化合物のラクトン環が開裂され、続く還元的脱水素化によりα,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体が得られる。
そして、α,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体は、任意の配位子(例えば、アルケン等)と配位子交換反応を行うことにより、α,β−不飽和カルボン酸塩を得ることができる。より詳細には、前記α,β−不飽和カルボン酸塩が配位した遷移金属錯体と、任意の配位子とが、配位子交換反応を行うことにより、α,β−不飽和カルボン酸塩が得られるとともに、任意の配位子が配位した遷移金属錯体が得られる。なお、最終的に得られた任意の配位子が配位した遷移金属錯体は、配管27を介して第1の反応器11の上流の配管21や供給タンク20に返送され、そのままCO2と反応して金属ラクトン化合物を得ることができる。なお、上述したように任意の配位子はアルケンであることが好ましい。
工程(2)の反応温度は、20〜250℃であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましい。
また、工程(2)の反応圧力は、絶対圧で50気圧以下であることが好ましく、10気圧以下であることがより好ましく、2〜10気圧であることがさらに好ましく、3〜10気圧であることが特に好ましい。
以上の通り、本発明の方法においては、上流側において工程(1)を、下流側において工程(2)を連続的に行うことにより、目的とするα,β−不飽和カルボン酸塩を効率よく連続的に製造することができる。ここで生成したα,β−不飽和カルボン酸塩は、溶媒に不溶のため、反応とともに自動的に析出する(固液分離する)。第2の反応器12にはフィルターが設けられており(図示しない)、再生した遷移金属錯体はフィルターを通して、工程(1)に返送される。
また、従来の方法では、過剰に存在するCO2と塩基が優先的に反応することによって、カルボン酸ハーフエステルが生成してしまうとなる結果、連続的な反応を行うことができなかった。これに対し、上記形態によれば、上記の副反応を防ぐことができるため、連続的な反応を行うことができる。
また、従来の方法では、過剰に存在するCO2と塩基が優先的に反応することによって、カルボン酸ハーフエステルが生成してしまうとなる結果、連続的な反応を行うことができなかった。これに対し、上記形態によれば、上記の副反応を防ぐことができるため、連続的な反応を行うことができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
(1)MAP配位子の合成
2−(メチルアミノ)ピリジン(0.459g、4.16mmol)をトルエン15mLに溶解し、得られた溶液を−35℃に冷却した。冷却した溶液にn−ブチルリチウム(1.6M、2.75mL、4.37mmol)を徐々に滴下した。滴下後、室温にて3時間撹拌した。−35℃に再度、冷却後、シクロヘキシルホスフィン(0.967g、4.16mmol)を滴下し、80℃にて8時間撹拌した。その後、トルエンを真空中にて留去し、ペンタンに溶解後、Celite上にて、溶液をろ過した。真空中にてペンタンを留去し、目的物である下式(5)で表される(ジヘキシルホスフィノ)−2−メチルアミノピリジン(MAP)(870mg、69%)を得た。
(1)MAP配位子の合成
2−(メチルアミノ)ピリジン(0.459g、4.16mmol)をトルエン15mLに溶解し、得られた溶液を−35℃に冷却した。冷却した溶液にn−ブチルリチウム(1.6M、2.75mL、4.37mmol)を徐々に滴下した。滴下後、室温にて3時間撹拌した。−35℃に再度、冷却後、シクロヘキシルホスフィン(0.967g、4.16mmol)を滴下し、80℃にて8時間撹拌した。その後、トルエンを真空中にて留去し、ペンタンに溶解後、Celite上にて、溶液をろ過した。真空中にてペンタンを留去し、目的物である下式(5)で表される(ジヘキシルホスフィノ)−2−メチルアミノピリジン(MAP)(870mg、69%)を得た。
(2)遷移金属錯体である(MAP)Ni(COD)金属錯体の合成
(ジヘキシルホスフィノ)−2−メチルアミノピリジン(MAP)(646mg、2.12mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を、ニッケルビス1,5−シクロオクタジエン(Ni(COD)2)(584mg、2.12mmol)のTHF溶液に徐々に滴下した。室温にて3時間撹拌後、THFを真空中にて留去した。これにより、下式で表される遷移金属錯体((MAP)Ni(COD))を得た。
(ジヘキシルホスフィノ)−2−メチルアミノピリジン(MAP)(646mg、2.12mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を、ニッケルビス1,5−シクロオクタジエン(Ni(COD)2)(584mg、2.12mmol)のTHF溶液に徐々に滴下した。室温にて3時間撹拌後、THFを真空中にて留去した。これにより、下式で表される遷移金属錯体((MAP)Ni(COD))を得た。
[実施例1]
図1に示す、第1の反応器11としてPFRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム1を用いて、α,β−不飽和カルボン酸塩の製造を行った。
本実施例で用いたシステム1は、エチレン、CO2ガスが、ガス流量制御装置によって、反応中の圧力変動によらず一定量(mL/分)を安定して供給することができるよう構成されている。
窒素雰囲気化にて製造例1で得られた遷移金属錯体である(MAP)Ni(COD)(1mmol、471mg)を、THF(200mL)に溶解させた。これをメータリングポンプ(定量)に設置した。また窒素雰囲気化においてナトリウムtert−ブトキシド(tert−BuONa)(1.9g、20mmol)をTHF(20mL)に溶解したものを、メータリングポンプ(定量)に設置した。
図1に示す、第1の反応器11としてPFRを採用したα,β−不飽和カルボン酸塩製造システム1を用いて、α,β−不飽和カルボン酸塩の製造を行った。
本実施例で用いたシステム1は、エチレン、CO2ガスが、ガス流量制御装置によって、反応中の圧力変動によらず一定量(mL/分)を安定して供給することができるよう構成されている。
窒素雰囲気化にて製造例1で得られた遷移金属錯体である(MAP)Ni(COD)(1mmol、471mg)を、THF(200mL)に溶解させた。これをメータリングポンプ(定量)に設置した。また窒素雰囲気化においてナトリウムtert−ブトキシド(tert−BuONa)(1.9g、20mmol)をTHF(20mL)に溶解したものを、メータリングポンプ(定量)に設置した。
(工程(1))
前記遷移金属錯体のTHF溶液を、メータリングポンプ(定量)を用いて系内に導入した(10mL/分)(遷移金属錯体の流速:0.05mmol/分)。本溶液が、上流の管型反応器(PFR)11を通り、下流のバッファータンク12に導入され、それが、上流に戻ったことを確認したのち、メータリングポンプからの本溶液の供給を止め、系内での循環に切り替えた。ここで、前記溶液のSVは6であった。その後、系内に、ガス流量制御装置を用いて遷移金属錯体1モルに対して4モルのエチレンを導入した。その後、0.045mmol/分の速度で定量供給した。引き続いて、二酸化炭素(0.045mmol/分=1.1mL/分)を導入した。二酸化炭素を導入したのち、反応溶液はPFR11(容量100mL=反応時間10分、80℃に加熱)を通り、下流のバッファータンク12に流れた。
前記遷移金属錯体のTHF溶液を、メータリングポンプ(定量)を用いて系内に導入した(10mL/分)(遷移金属錯体の流速:0.05mmol/分)。本溶液が、上流の管型反応器(PFR)11を通り、下流のバッファータンク12に導入され、それが、上流に戻ったことを確認したのち、メータリングポンプからの本溶液の供給を止め、系内での循環に切り替えた。ここで、前記溶液のSVは6であった。その後、系内に、ガス流量制御装置を用いて遷移金属錯体1モルに対して4モルのエチレンを導入した。その後、0.045mmol/分の速度で定量供給した。引き続いて、二酸化炭素(0.045mmol/分=1.1mL/分)を導入した。二酸化炭素を導入したのち、反応溶液はPFR11(容量100mL=反応時間10分、80℃に加熱)を通り、下流のバッファータンク12に流れた。
(工程(2))
メータリングポンプ(定量)を用いて、ナトリウムtert−ブトキシド((1.9g、20mmol)をTHF(20mL)に溶解させたもの)をバッファータンク12内に導入した(0.045mmol/分=0.045mL/分)。その後、1時間、系内を循環させた。これにより、アクリル酸塩を製造した。
メータリングポンプ(定量)を用いて、ナトリウムtert−ブトキシド((1.9g、20mmol)をTHF(20mL)に溶解させたもの)をバッファータンク12内に導入した(0.045mmol/分=0.045mL/分)。その後、1時間、系内を循環させた。これにより、アクリル酸塩を製造した。
(CO2転化率の測定)
バッファータンク12内の反応溶液に重水(D2O)20mL、ソルビン酸(2,4−ヘキサジエン酸)(50mg)、水酸化ナトリウム(ソルビン酸は重水に溶けないので、ナトリウム塩にするために添加)(100mg)を加え、室温にて10分撹拌した。その後、ジエチルエーテル50mLを加え、エーテル層とD2O層に分離した。D2O層の1H−NMRを測定することによって、生成したアクリル酸ナトリウム量を算出した。より具体的には、標準物質としてのソルビン酸のβ位のプロトンを基準として、1H−NMRからアクリル酸ナトリウムのβ位のプロトンとの積分比を求め、アクリル酸ナトリウムの生成量(CO2転化率=得られたアクリル酸ナトリウムの物質量/導入したCO2の物質量)を算出した結果、CO2転化率は78%であった。
この結果を、以下の基準に準拠して評価した。
◎ :CO2転化率が80%以上
〇 :CO2転化率が70%以上80%未満
△ :CO2転化率が20%以上70%未満
× :CO2転化率が20%未満
バッファータンク12内の反応溶液に重水(D2O)20mL、ソルビン酸(2,4−ヘキサジエン酸)(50mg)、水酸化ナトリウム(ソルビン酸は重水に溶けないので、ナトリウム塩にするために添加)(100mg)を加え、室温にて10分撹拌した。その後、ジエチルエーテル50mLを加え、エーテル層とD2O層に分離した。D2O層の1H−NMRを測定することによって、生成したアクリル酸ナトリウム量を算出した。より具体的には、標準物質としてのソルビン酸のβ位のプロトンを基準として、1H−NMRからアクリル酸ナトリウムのβ位のプロトンとの積分比を求め、アクリル酸ナトリウムの生成量(CO2転化率=得られたアクリル酸ナトリウムの物質量/導入したCO2の物質量)を算出した結果、CO2転化率は78%であった。
この結果を、以下の基準に準拠して評価した。
◎ :CO2転化率が80%以上
〇 :CO2転化率が70%以上80%未満
△ :CO2転化率が20%以上70%未満
× :CO2転化率が20%未満
(カルボン酸ハーフエステル生成の有無)
NMRによりカルボン酸ハーフエステルの生成の有無を評価した。その結果、カルボン酸ハーフエステルは検知されなかった。
反応条件及び結果を、表1に示す。
NMRによりカルボン酸ハーフエステルの生成の有無を評価した。その結果、カルボン酸ハーフエステルは検知されなかった。
反応条件及び結果を、表1に示す。
[実施例2]
前記遷移金属錯体1モルに対して4モルのエチレンを導入した。その後、0.03mmol/分の速度で定量供給した。引き続いて、二酸化炭素の流量を0.03mmol/分に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル酸塩を製造した。結果、CO2転化率は83%であった。また、カルボン酸ハーフエステルの生成は確認されなかった。
反応条件及び結果を、表1に示す。
前記遷移金属錯体1モルに対して4モルのエチレンを導入した。その後、0.03mmol/分の速度で定量供給した。引き続いて、二酸化炭素の流量を0.03mmol/分に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル酸塩を製造した。結果、CO2転化率は83%であった。また、カルボン酸ハーフエステルの生成は確認されなかった。
反応条件及び結果を、表1に示す。
[比較例1]
(工程(1))
前記遷移金属錯体のTHF溶液を、メータリングポンプ(定量)を用いて系内に導入した(10mL/分)(遷移金属錯体の流速:0.05mmol/分)。本溶液が、上流の管型反応器(PFR)11を通り、下流のバッファータンク12に導入され、それが、上流に戻ったことを確認したのち、メータリングポンプからの本溶液の供給を止め、系内での循環に切り替えた。ここで、前記溶液のSVは6であった。その後、系内に、ガス流量制御装置を用いて遷移金属錯体1モルに対して4モルのエチレンを導入した。さらに、ナトリウムtert−ブトキシド((1.9g、20mmol)をTHF(20mL)に溶解させたもの)をその後、0.045mmol/分の速度で定量供給した(10分間)。引き続いて、二酸化炭素(0.045mmol/分=1.1mL/分)を導入した。二酸化炭素を導入したのち、反応溶液はPFR11(容量100mL=反応時間10分、80℃に加熱)を通り、下流のバッファータンク12に流れた(下流では、塩基の添加はしていない)。その後、1時間、系内を循環させた。これにより、アクリル酸塩を製造した。
CO2転化率およびカルボン酸ハーフエステル含有率を実施例1と同様の方法で測定したところ、CO2転化率は3%であり、カルボン酸ハーフエステルの生成が確認された。
反応条件及び結果を、表1に示す。
(工程(1))
前記遷移金属錯体のTHF溶液を、メータリングポンプ(定量)を用いて系内に導入した(10mL/分)(遷移金属錯体の流速:0.05mmol/分)。本溶液が、上流の管型反応器(PFR)11を通り、下流のバッファータンク12に導入され、それが、上流に戻ったことを確認したのち、メータリングポンプからの本溶液の供給を止め、系内での循環に切り替えた。ここで、前記溶液のSVは6であった。その後、系内に、ガス流量制御装置を用いて遷移金属錯体1モルに対して4モルのエチレンを導入した。さらに、ナトリウムtert−ブトキシド((1.9g、20mmol)をTHF(20mL)に溶解させたもの)をその後、0.045mmol/分の速度で定量供給した(10分間)。引き続いて、二酸化炭素(0.045mmol/分=1.1mL/分)を導入した。二酸化炭素を導入したのち、反応溶液はPFR11(容量100mL=反応時間10分、80℃に加熱)を通り、下流のバッファータンク12に流れた(下流では、塩基の添加はしていない)。その後、1時間、系内を循環させた。これにより、アクリル酸塩を製造した。
CO2転化率およびカルボン酸ハーフエステル含有率を実施例1と同様の方法で測定したところ、CO2転化率は3%であり、カルボン酸ハーフエステルの生成が確認された。
反応条件及び結果を、表1に示す。
1、2 α,β−不飽和カルボン酸塩製造システム
11、13 第1の反応器
12 第2の反応器
21、22、23、24、25,27 配管
26 α,β−不飽和カルボン酸塩
11、13 第1の反応器
12 第2の反応器
21、22、23、24、25,27 配管
26 α,β−不飽和カルボン酸塩
Claims (7)
- α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法であって、
遷移金属錯体を第1の反応器に連続的に流通させると共に、アルケンと、二酸化炭素と、を前記第1の反応器に連続的に供給して、前記遷移金属錯体と、前記アルケンと、前記二酸化炭素と、を反応させることにより、下記式(1):
Mは、遷移金属であり、
Lは、それぞれ独立して、単座配位子であるか、またはLは共働して二座配位子を形成し、
R11、R12、R21、R22はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数が1〜8のアルキル基である。]
で表される金属ラクトン化合物を得る工程(1)と、
前記第1の反応器から連続的に抜き出された前記金属ラクトン化合物と、塩基と、を前記第1の反応器の下流に設けられた第2の反応器に連続的に供給して、前記金属ラクトン化合物に塩基を作用させる工程(2)と、
を含み、
前記工程(1)における前記遷移金属錯体の供給量(mmol/分)に対する二酸化炭素の供給量(mmol/分)の比(A)が1以下である、α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。 - 前記金属ラクトン化合物が下記式(2):
Mは、遷移金属であり、
Xは、それぞれ独立して、窒素原子、またはリン原子であり、
R1は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素芳香環基、窒素含有基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素芳香環基であり、
この際、2つのR1は互いに結合して環構造を形成していてもよく、
同一のX原子に結合するR1、R2、およびR3が一体となって環構造を形成していてもよく、
R11、R12、R21、R22は上記と同様である。]
で表される、請求項1に記載のα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。 - 前記Xの少なくとも1つが窒素原子であり、
この際、前記窒素原子に結合するA1、R2、およびR3が一体となって複素芳香環が形成される、請求項3に記載のα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。 - 前記Xの少なくとも1つがリン原子であり、
この際、前記リン原子に結合するR2およびR3の少なくとも一つが、炭素数3以上の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、または炭素数3以上の複素芳香環基である、請求項3または4に記載のα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。 - 前記金属ラクトン化合物が下記式(4)〜(6):
Mは、遷移金属であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であり、
A1は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
A2は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
A3は、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素芳香環基、または窒素含有基であり、
R4は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素芳香環基であり、
R11、R12、R21、R22は上記と同様である。]
からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3〜5のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。 - 前記工程(1)の反応を、10気圧以下の圧力で行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法。
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JP2019169778A JP2021046370A (ja) | 2019-09-18 | 2019-09-18 | α,β−不飽和カルボン酸塩の連続的製造方法 |
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