JP2021045711A - ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体 - Google Patents

ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体 Download PDF

Info

Publication number
JP2021045711A
JP2021045711A JP2019169777A JP2019169777A JP2021045711A JP 2021045711 A JP2021045711 A JP 2021045711A JP 2019169777 A JP2019169777 A JP 2019169777A JP 2019169777 A JP2019169777 A JP 2019169777A JP 2021045711 A JP2021045711 A JP 2021045711A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zeolite membrane
type zeolite
olefin
membrane composite
fau
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019169777A
Other languages
English (en)
Inventor
松方 正彦
Masahiko Matsukata
正彦 松方
求 酒井
Motomu Sakai
求 酒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Waseda University
Original Assignee
Waseda University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Waseda University filed Critical Waseda University
Priority to JP2019169777A priority Critical patent/JP2021045711A/ja
Publication of JP2021045711A publication Critical patent/JP2021045711A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Silicates, Zeolites, And Molecular Sieves (AREA)
  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)

Abstract

【課題】オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離する操作に用いることが可能であり、高い分離性能を有するゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体を提供すること。【解決手段】本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、多孔質支持体上にFAU型ゼオライトを成膜し、イオン交換によりかかるFAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換してゼオライト膜複合体を製造するにあたり、イオン交換温度を比較的低い温度としているので、FAU型ゼオライトへの負荷を抑え、イオン凝集を防ぐことで分離性能に優れたゼオライト膜複合体を製造することができる。また、本発明に係るゼオライト膜複合体は、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するに際して、混合流体のオレフィン濃度が低い場合におけるオレフィンの分離性能に優れるものとなる。【選択図】図1

Description

本発明は、ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体に関する。さらに詳しくは、多孔質支持体上にFAUゼオライトを成膜した、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離することが可能なゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体に関する。
一般に、有機物を含有する気体混合物または液体混合物を分離、濃縮(以下、「分離等」とする場合がある。)して回収する手段として、膜分離法や膜濃縮法が用いられている。このうち、膜分離法は、ガス分離の途中での相変化をほとんど伴わず、圧力差を駆動エネルギーとして、膜を透過するガスの速度差によって分離する手法である。膜分離法は、他のガス分離・精製法に比べて取り扱いも容易で設備規模も比較的小さいため低コスト・省エネルギーで目的とするガスの分離や濃縮を行うことができる。
膜分離法によるガス分離の方法としては、1970年代から高分子膜を用いた方法が提案されている。しかし、高分子膜は加工性に優れる特徴をもつ一方、熱や化学物質、圧力等の影響により劣化して、性能が低下してしまうという問題があった。加えて、分離の際の選択性や透過速度についても課題があった。
近年、これらの問題を解決すべく、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性等が良好な種々の無機材料の分離膜が検討されており、特に、ゼオライト膜が注目されている。かかるゼオライトは、サブナノメートルの規則的な細孔を有しているため、いわゆる分子ふるいとしてのはたらきを備え、選択的に特定の分子を透過できるため、高い分離性能を示すことが期待されている。
具体的な混合ガスの膜分離の例としては、火力発電所や石油化学工業などから排出されるガスの分離で二酸化炭素と窒素、二酸化炭素とメタン、水素と炭化水素、水素と酸素、水素と二酸化炭素、窒素と酸素、パラフィンとオレフィンの分離等がある。用いるガス分離用ゼオライト膜としては、A型膜、FAU膜、MFI膜、SAPO−34膜、DDR膜等のゼオライト膜が知られている。
ここで、ゼオライト膜をフィルターとして利用するには、ゼオライト膜単体では機械的強度等に問題があるため、セラミック焼結材等からなる多孔質支持体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト膜複合体(多孔質支持体−ゼオライト膜複合体)が用いられるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照。)。また、前記したゼオライト膜のうち、例えば、FAU型ゼオライト膜は、オレフィン/パラフィン混合流体からのオレフィンの分離回収について使用された例について報告され(例えば、非特許文献1を参照。)、また、ゼオライト膜を組み込んだCO分離プロセス等も検討されている。例えば、FAU型ゼオライト膜がパラフィンとオレフィンの混合物からのオレフィンの分離回収において高い透過分離性能を示すことが報告されており、ゼオライト膜を組み込んだCO分離プロセス等も検討されている。
特開2004−82008号公報
Ioannis G.Giannakopoulos, Vladim iros Nikolakis,"Separation of Propylene/ Propane Mixtures Using Faujasite−Type Ze olite Membranes",Ind.Eng.Chem.Res.(2005) Vol.44,p226−230
しかしながら、これまでに提供された従来のゼオライト膜複合体は、オレフィン/パラフィン混合流体からのオレフィンの選択的分離について、分離性能が十分満足できるものではないため、改善が求められていた。
本発明は、前記に鑑みてなされたものであって、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離する操作に用いることが可能であり、高い分離性能を有するゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体を提供することにある。
前記の課題を解決するために、本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、
多孔質支持体上にFAU型ゼオライトを成膜し、イオン交換により前記FAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換しAg−FAU型ゼオライトとした、ゼオライト膜複合体の製造方法であって、
前記イオン交換の温度が273〜310Kで行われることを特徴とする。
本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、前記した本発明において、前記Ag−FAU型ゼオライトがAg−X型ゼオライトまたはAg−Y型ゼオライトであることを特徴とする。
本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、前記した本発明において、前記FAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンがNaイオンであることを特徴とする。
本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、前記した本発明において、前記多孔質支持体にFAU型ゼオライトを成膜することが、前記多孔質支持体へジルコニア種結晶を担持させ、水熱合成することによりなされることを特徴とする。
本発明に係るゼオライト膜複合体は、
多孔質支持体と、当該多孔質支持体上に形成されたAg−FAU型ゼオライト膜を有し、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するゼオライト膜複合体であって、
前記オレフィン/パラフィン混合流体のオレフィンのモル分率を10%以下とした場合における、分離温度が313Kでのオレフィン/パラフィンの分離係数が20以上であることを特徴とする。
本発明に係るゼオライト膜複合体は、前記した本発明において、前記Ag−FAU型ゼオライト膜がAg−X型ゼオライト膜またはAg−Y型ゼオライト膜であることを特徴とする。
本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、多孔質支持体上にFAU型ゼオライトを成膜し、イオン交換によりかかるFAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換してゼオライト膜複合体を製造するにあたり、イオン交換の温度(イオン交換温度:カチオン交換温度と同意。)を比較的低い温度(273〜310K)としているので、FAU型ゼオライトへの負荷を抑え、イオン凝集を防ぐことで分離性能に優れたゼオライト膜複合体を製造することができる。
また、本発明に係るゼオライト膜複合体は、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するに際して、混合流体のオレフィン濃度が低い(オレフィンのモル分率が10%以下)場合におけるオレフィンの分離性能に優れるものとなる。
透過分離試験で用いた装置の概略図である。
以下、本発明の一態様について説明する。本発明における「ゼオライト膜複合体」とは、多孔質支持体とゼオライト膜の複合体、具体的には、多孔質支持体と、かかる多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜とを有する複合体を意味する。かかるゼオライト膜は、好ましくは、多孔質体の表面にゼオライトが膜状に結晶化して形成されるものである。
なお、本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法で得られるAg−FAU型ゼオライト膜複合体(以下、単に、「本発明で得られるゼオライト膜複合体」や「ゼオライト膜複合体」とする場合もある。)は、パーベーパレーション法(PV法)やベーパーパーミエーション法(VP法)による混合流体(混合ガス)の分離に有効に使用することができ、特に、オレフィン/パラフィン混合流体の分離に最適である。オレフィン/パラフィン混合流体の分離操作については、特には限定されず、従来公知の分離操作を用いて実施すればよい。また、分離の際の分離温度(膜温度)は、273〜423Kとすればよい。
なお、本発明で得られたゼオライト膜複合体が分離の対象とするオレフィン/パラフィン混合流体(混合ガス)の具体例としては、エチレン/メタン、エチレン/エタン、エチレン/プロパン、エチレン/ブタン、プロピレン/メタン、プロピレン/エタン、プロピレン/プロパン、プロピレン/ブタン、ブチレン/メタン、ブチレン/エタン、ブチレン/プロパン、ブチレン/ブタン等が挙げられるが、特にこれらの組み合わせには限定されない。なお、混合流体としては2成分に限定されず、例えば、3成分以上であっても構わない。
本発明に係るゼオライト膜複合体の製造方法(本発明に係る製造方法)は、(A)多孔質支持体上へFAU型ゼオライトの成膜を行い、(B)イオン交換によりFAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換することにより、多孔質支持体上にAg−FAU型ゼオライト膜が形成された、多孔質支持体−ゼオライト膜の複合体を得るものである。
ここで、FAU(フォージャサイト:Faujasite)型ゼオライトとしては、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等が挙げられ、本発明におけるFAU型ゼオライトもこれらを含む。X型ゼオライトとY型ゼオライトは、シリカアルミナ比(Si/Al比(モル比)とする。)の違いにより区別される。本発明において、X型ゼオライトのSi/Al比(モル比)は、概ね1.0〜1.5、Y型ゼオライトのSi/Al比(モル比)は、概ね1.5を超えて3.0以下のものとすることができる。
(A)多孔質支持体上へのFAU型ゼオライトの成膜:
本発明において使用される多孔質支持体としては、その表面等に製膜されるFAU型ゼオライトを膜状に結晶化可能な化学安定性を有することが好ましく、例えば、ポリスルフォンや酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、フッ化ビニリデン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等のガス透過性の多孔質高分子や、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレス等の金属焼結体やメッシュ状の成形体、ガラス、カーボン成形体等の無機多孔質が挙げられる。
多孔質支持体としては、この中でもセラミックス焼結体や金属焼結体、ガラス、カーボン成形体等からなる無機多孔質支持体が好ましい。無機多孔質支持体は、基本成分あるいはその大部分が無機の非金属物質から構成されている固体材料であるセラミックスを焼結したもの(セラミックス焼結体)が好ましい。
セラミックス焼結体としては、α−アルミナ、γ−アルミナ等のアルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素等を含むセラミックス焼結体が挙げられる。これらは単独の焼結体であってもよく、2種以上を組み合わせて混合、焼結したものであってもよい。これらセラミックス焼結体は、その表面の一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することがある。これにより、多孔質支持体とゼオライト膜との密着性が高くなる。
セラミックス焼結体としては、この中でも、耐熱性、機械的強度、耐薬品性、支持体作成の容易さ、入手容易性の点から、α−アルミナを使用することが好ましい。また、セラミックス焼結体以外としては、金属焼結体であるステンレス等を使用することが好ましい。
多孔質支持体の形状は、オレフィン/パラフィン混合流体を確実に分離できるものであれば特に制限されず、例えば、平板状、管状(多孔質管)のもの、または円筒状、円柱状、角柱状の貫通孔が多数存在するハニカム状の部材やモノリス等が挙げられる。
これらの例としては、シリカ(SiO)/アルミナ(Al)のモル比が2〜750を有するセラミックスの微粒子を、混合・焼成して成形したセラミック焼結体からなる多孔質管や、多孔質α−アルミナからなる多孔質管(多孔質α−アルミナ管状支持体)、ステンレス鋼等の金属を成形してなる金属製の多孔質管等が挙げられる。
本発明においては、多孔質支持体の表面や表層部内(多孔質支持体上と同意であり、他では、単に「表面」とする場合もある。)にX型ゼオライトやY型ゼオライトといったFAU型ゼオライトから構成されるゼオライト膜が形成されるが、かかるFAU型ゼオライトは膜状に結晶化させることが好ましい。なお、多孔質支持体上におけるゼオライト膜が形成される位置は、特に制限はなく、例えば、多孔質管等の管状の多孔質支持体を用いる場合、ゼオライト膜は外表面に形成しても、内表面に形成してもよく、その構成によっては両面に形成してもよい。加えて、多孔質支持体の表面に積層させてもよいし、多孔質支持体の細孔内を埋めるように結晶化させて形成させても問題はない。この場合にあっては、結晶化させたゼオライト膜の内部に亀裂や連続した微細孔が形成されないことが重要となり、分離性能を高めるためには、緻密なゼオライト膜(いわゆる緻密膜)を形成させることが望ましい。ここで、用いられる多孔質支持体の表面において、多孔質支持体上に形成されるゼオライト膜を結晶化させる作用を有することが好ましく、例えば、多孔質支持体の細孔径(平均細孔径)の大きさ(サイズ)等を下記のようにすることが好ましい。
多孔質支持体が有する平均細孔径の大きさ(サイズ)は特に制限はないが、前記したような、多孔質支持体の表面にゼオライトを結晶化するためには、多孔質支持体表面の細孔径(平均細孔径)の下限を、概ね0.02μm以上とすることが好ましく、0.05μm以上とすることがさらに好ましく0.1μm以上とすることが特に好ましい。また、多孔質支持体表面の細孔径(平均細孔径)の上限は、概ね20μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることがさらに好ましく、5μm以下とすることが特に好ましい。平均細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる場合があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になったり、緻密なゼオライト膜が形成されにくくなる場合がある。
また、多孔質支持体の気孔率は特に制限がないが、概ね、20%〜60%であることが好ましい。気孔率は、気体や液体を分離する際の透過流量を左右するが、気孔率が20%より小さいと透過物の拡散を阻害する場合があり、気孔率が60%を超えると多孔質支持体の強度が低下する場合がある。
本発明では、かかる多孔質支持体の表面にFAU型ゼオライトを成膜する。本発明で得られるゼオライト膜複合体は、多孔質支持体の表面にFAU型ゼオライトが膜状に固着しているものである。例えば、ゼオライト結晶粒子を種結晶として多孔質支持体の表面に層状に担持させ(1次成長)、これを水熱合成反応によって2次成長させる方法により、多孔質支持体の表面にFAU型ゼオライトを膜状に結晶化させたものを用いることが好ましい。
多孔質支持体上にFAU型ゼオライトを成膜する場合、多孔質支持体上にゼオライト種結晶(以下、単に「種結晶」とする場合もある。)を担持させた後、ゼオライト膜が水熱合成により形成されて、成膜することが好ましい。一般的に、多孔質支持体にゼオライト種結晶を担持させるためには、ゼオライト種結晶の粉末を溶剤に分散させた分散液(種結晶スラリー等。)を多孔質支持体上に塗布することが好ましいが、その他、多孔質支持体の製造時に原料の一部としてゼオライト種結晶粉末を混入させることで、多孔質支持体にゼオライト種結晶を担持させるようにしてもよい。
塗布の方法としては、ゼオライト種結晶を含む分散液(種結晶スラリー等。)を多孔質支持体に単純に滴下するだけでもよいが、ゼオライト種結晶を含む分散液に多孔質支持体を浸漬(ディップコーティング)するようにしてもよい。また、スピンコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング等による塗布、刷毛等による塗布、濾過など汎用されている方法を用いることができる。多孔質支持体上の種結晶の付着量を簡便に調整でき、また、再現性も良好であるという点から、ゼオライト種結晶を含む分散液を調製し、かかる水溶性分散液に多孔質支持体を浸漬する方法が好ましい。なお、分散液の塗布後は、乾燥することが好ましい。乾燥温度は、273〜823Kとすることが好ましく、乾燥は一度でもよいが、繰り返し行うようにしてもよい。
ゼオライト種結晶は、市販のものを用いてもよく、また、原料から製造してもよい。ゼオライト種結晶として市販のものを用いる場合には、かかる市販のゼオライト種結晶を所望の大きさに従来公知の粉砕機で粉砕した後、水に分散させ、分散液を調製するようにすることが好ましい。市販品としては、例えば、USY(Ultra− Stable Y)ゼオライト粉末(Si/Al=7、東ソーHSZ−360HUA)等を用いることができる。
原料から製造する場合には、例えば、シリカ原料としてケイ酸ナトリウム、シリカゲル、シリカゾルまたはシリカ粉末、アルミナ原料としてアルミン酸ナトリウムまたは水酸化アルミニウム等を原料として、従来公知の方法で製造し、必要により所望の大きさに粉砕機で粉砕した後、水に分散させ、分散液を調製するようにすることが好ましい。分散液のpHは3.0〜9.0とすることが好ましい。
調製されたゼオライト種結晶を含む分散液は、前記した方法で多孔質支持体に適宜付着等させて担持させるようにすればよいが、かかる分散液は、スラリー、ゾル、溶液等、いずれの状態としてもよく、採用する塗布方法に応じて適宜調整することができ、前記したように、水溶性分散液に多孔質支持体を浸漬する方法を採用する場合には、容易に付着、担持できるという点からスラリー状である(種結晶スラリーを用いる。)ことが好ましい。
ゼオライト種結晶を担持させた多孔質支持体を用いて、水熱合成反応により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成するにあたっては、水熱合成反応は、公知の方法を適宜用いることができる。
水熱合成反応の原料はアルミナ源及びシリカ源と、必要に応じてアルカリ金属源及び/またはアルカリ土類金属源であり、これらを水と混合することにより、水熱合成溶液(水性溶液、水性ゲル、水性スラリー等。)とする。
水熱合成溶液のアルミナ源としては、例えば、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩のほか、アルミナ粉末、コロイダルアルミナ等が挙げられる。
シリカ源としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩のほか、シリカ粉末、ケイ酸、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド等が挙げられる。
アルカリ金属源、アルカリ土類金属源としては、例えば、酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。
シリカ源とアルミナ源のモル比(成分モル組成比のこと。他も同様。)(例えば、SiO/Al)、水とアルカリ金属源(及び/またはアルカリ土類金属源)(例えば、HO/NaO)のモル比、及びアルカリ金属源(及び/またはアルカリ土類金属源)とシリカ源のモル比(例えば、NaO/SiO)は、目的とするゼオライトの組成によって適宜決定すればよいが、例えば、下記の範囲のモル比を目安とすることができるが、かかる範囲には限定されない。
シリカ源とアルミナ源のモル比:SiO/Al=0.5〜100
水とアルカリ金属源(及び/またはアルカリ土類金属源)のモル比:HO/NaO=30〜70
アルカリ金属源(及び/またはアルカリ土類金属源)とシリカ源のモル比:NaO/SiO=0.5〜10
水熱合成反応は、例えば、前記の原料を含有し、モル比を適宜前記した範囲に調整して水に混合した水熱合成溶液に、種結晶を表面に付着、担持させた多孔質支持体を浸漬させて、加熱状態で保持するようにすればよい。
水熱合成反応における加熱温度は、例えば、313〜473Kが好ましく、343〜423Kがより好ましい。加熱温度が低過ぎるとゼオライトの合成反応が十分に起こらず、高すぎるとゼオライトの合成反応の制御が困難となり均一なゼオライト膜が得られない。
加熱時間は加熱温度に応じて適宜変更し得るが、一般に1時間〜100時間とすることが好ましく、3時間〜10時間とすることが好ましい。水熱合成反応については、例えば、特許第3754520号公報等の記載を参考にしてもよい。水熱合成反応が実施された後は、蒸留水等に浸漬させ、その後、273〜473Kにて減圧乾燥処理することが好ましい。
かかる水熱合成反応により、ゼオライトが多孔質支持体の表面に固着した状態で結晶化されてゼオライト膜が形成される。かかる水熱合成反応によれば、種々の組成を有するゼオライト膜を製造できる。
なお、不均一な生成物を含むことを避けるべく、水熱合成溶液の調製は、従来公知の緊密共沈法による合成ゲル溶液を水熱合成溶液として用いるようにしてもよい。かかる緊密共沈法の原理は、沈殿生成反応における2種類の源溶液のすべてを瞬間的(約1秒程度)に混合して過飽和溶液化する第1工程と、続いてその溶液から急速にPFHS(Precipitation From Homogeneous Solution:均一溶液からの沈殿析出)を起こさせる第2工程とを経時的に分離して進行させるものである。
得られる緊密共沈物は、ミクロ的によく混ざり合った均質物で非晶質であることが多い。具体的な操作方法は、溶液層Aと溶液層Bと溶液層Cといった3種の溶液層を用意し、ミキサー内に溶液層Aと溶液層Bと溶液層Cを比重の差を利用して積み重ねて3層を形成させた後、一挙に過飽和溶液化して、その後共沈物を得るものである。本発明にあってはかかる方法を用いるようにしてもよい。
なお、FAU型ゼオライトにおけるX型ゼオライトとY型ゼオライトは、前記したようにシリカアルミナ比により区別されるが、シリカ源とアルカリ源等の合成ゲルの組成、水熱合成の時間や温度等の諸条件等を適宜調整して、シリカアルミナ比を調整することが好ましい。
(B)カチオン交換(イオン交換):
Ag−X型ゼオライトやAg−Y型ゼオライト等のAg−FAU型ゼオライトは、成膜されたFAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンを、Agイオンにイオン交換することにより得られる。成膜されたFAU型ゼオライトとしては、ナトリウム型、アンモニウム型、プロトン型等の種々の構成のX型ゼオライトやY型ゼオライトのカチオンを、Agイオン(銀イオン)にイオン交換して調整することができる。これらのうち、本発明にあっては、FAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンがNaイオン(ナトリウムイオン)である、ナトリウム型X型ゼオライト(Na−X型ゼオライト)やナトリウム型Y型ゼオライト(Na−Y型ゼオライト)等のナトリウム型FAU型ゼオライト(Na−FAU型ゼオライト)を使用することが好ましい。
イオン交換のための銀は通常カチオンとして水に溶解した形態で準備される。このようなカチオン性の銀を含む水溶液の具体例としては、硝酸銀や過塩素酸銀等の水溶液、銀のアンミン錯イオン水溶液等を挙げることができるが、硝酸銀水溶液が最も好ましく使用される。銀イオンを含む水溶液の濃度は銀の濃度として、一般に0.001〜10Mの範囲とすることが好ましく、0.01〜1.0Mの範囲とすることが特に好ましい。
イオン交換の方法としては、特に制限はないが、通常は前記したカチオン性の銀を含む水溶液に、前記したナトリウム型、アンモニウム型、プロトン型等の種々の構成のFAU型ゼオライト(X型ゼオライトやY型ゼオライト等。)を浸漬することにより実施される。
本発明にあっては、前記したカチオン性の銀を含む水溶液の温度であるイオン交換の温度(イオン交換温度:カチオン交換温度と同意。)は、273〜310Kとする。FAU型ゼオライト膜は耐水性が低いが、イオン交換の温度をかかる温度で実施することにより、イオン交換におけるFAU型ゼオライトへの熱的負荷を抑え、かつイオンの凝集を防ぐことで分離性能に優れたゼオライト膜複合体を製造することができる。イオン交換温度は、273〜303Kとすることが好ましく、273〜293Kとすることが特に好ましい。
一方、イオン交換温度が273Kより低いと、温度が低すぎて、イオン交換の速度が遅く、イオン交換が十分になされない場合がある。イオン交換温度が310Kより高いと、ゼオライト膜に熱的負荷がかかり、ゼオライト膜の低い耐水性と相俟って、ゼオライト膜が溶解し、ゼオライト膜の緻密性が損なわれて、分離性能に悪影響を与える場合がある。
イオン交換のための時間(イオン交換時間)は、通常5分以上とし、30分〜24時間とすることが好ましい。また、イオン交換は、撹拌しながら実施することが好ましい。
イオン交換後は水洗等により、イオン交換に用いた水溶液を十分に取り除くことが好ましい。また、イオン交換は1回でもよいが、繰り返し実施するようにしても問題はない。なお、イオン交換を繰り返し実施する場合の回数は、一般に、10回以下が好ましく、5回以下とすることが特に好ましい。
なお、形成されたFAU型ゼオライト膜(以下、単に「ゼオライト膜」とする場合もある。)を構成する成分としては、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等のFAU型ゼオライトであり、FAU型ゼオライトは、アルミノ珪酸塩は、SiとAlの酸化物を主成分とするものである。一方、それ以外にシリカ、アルミナ等の無機バインダー、ポリマー等の有機物、あるいはFAU型ゼオライト表面を修飾するシリル化剤等の所定の元素等を必要に応じ含んでいてもよい。
ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよいが、実質的には、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等のFAU型ゼオライト等のみで構成されるゼオライト膜であることが好ましい。
成膜されたゼオライト膜の厚さは特に限定されないが、厚さの下限は0.1μm以上であることが好ましく、0.6μm以上であることがさらに好ましく、1.0μm以上であることが特に好ましい。また、厚さの上限は100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。ゼオライト膜の膜厚が大きすぎると透過量が低下する傾向があり、小さすぎると選択性が低下したり、膜強度が低下する場合がある。
本発明において、FAU型ゼオライトのSi/Al比(モル比)は概ね1.0以上とされ(1.0〜3.0の範囲であることが好ましい。)、X型ゼオライトは1.0〜1.5、Y型ゼオライトは1.5を超えて3.0以下として判断できる。また、ゼオライトの構造の違いはXRD測定におけるピークパターンから決定し、具体的には、XRD測定における回折角からSi/Al比を決定することができる。
本発明にあって、FAU型ゼオライト中のAg量は、26質量%以上であることが好ましく、26〜66質量%であることがより好ましい。26質量%より小さい場合にはオレフィンの分離性能が十分でない場合があり、66質量%より多い場合には銀の添加量に対応した性能が発揮されない場合があり、また、コスト高となる。
また、FAU型ゼオライトにおけるAg/Al比(モル比)は、0.5以上であることが好ましく、0.5〜2.0の範囲であることが特に好ましい。
本発明のゼオライト膜複合体の形状は特に限定されず、前記した多孔質支持体の形状に委ねられ、例えば、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されず、例えば、管状の場合は、一般に、長さ2〜200cm、内径0.05〜2.0cm、厚さ0.5〜4.0mmとすることが好ましい。
(C)発明の効果:
以上説明した本発明の製造方法によれば、多孔質支持体上にFAU型ゼオライトを成膜し、イオン交換によりかかるFAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換してゼオライト膜複合体を製造するにあたり、イオン交換の温度(イオン交換温度:カチオン交換温度と同意。)を比較的低い温度(273〜310K)としているので、FAU型ゼオライトへの負荷を抑え、イオン凝集を防ぎ、分離性能に優れたゼオライト膜複合体を製造することができる。
本発明の製造方法で得られたゼオライト膜複合体(Ag−X型ゼオライト膜複合体、Ag−Y型ゼオライト膜複合体等のFAU型ゼオライト膜複合体。)は、プロピレン/プロパン等のオレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するに際して、オレフィンを選択的に分離する分離性能に優れ、分離温度(膜温度)を353Kとした場合で、混合流体のオレフィンとパラフィンの濃度が等しい(モル分率(%)がオレフィン/パラフィン=50/50)場合における分離係数を20以上とすることができ、FAU型ゼオライトがX型ゼオライト(Ag−X型ゼオライト膜複合体)の場合は、30以上とすることができる。
なお、オレフィン/パラフィンの分離係数(他では単に「分離係数」として示すこともある。)とは、供給ガス中のオレフィン濃度S[mol(モル)%](モル分率(%)と同意。以下、mol(モル)%について同じ。)とパラフィン濃度S[mol%]との比に対する透過ガス中のオレフィン濃度P[mol%]とパラフィンの濃度P[mol%]との比であり、下記式(I)で表されるものである。分離係数が大きいほど、オレフィンの選択的な分離性能が高いと考えられる。
分離係数=(P/P)/(S/S) …… (I)
また、本発明の製造方法で得られるゼオライト膜複合体は、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するに際して、混合流体のオレフィン濃度が低い(オレフィンのモル分率が10%以下)場合におけるオレフィンの選択的分離に特に有用である。
例えば、本発明の製造方法で得られるゼオライト膜複合体は、多孔質支持体と、かかる多孔質支持体上に形成されたAg−FAU型ゼオライト膜を有する、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するAg−FAU型ゼオライト膜複合体であり、オレフィン/パラフィン混合流体のオレフィンのモル分率を10%以下とした場合における、分離温度(膜温度。以下同じ。)が313Kでのオレフィン/パラフィンの分離係数が20以上である。かかる分離係数は、23以上であることが好ましい。
FAU型ゼオライトとしては、Ag−X型ゼオライト(Ag−X型ゼオライト膜複合体となる。)、Ag−Y型ゼオライト(Ag−Y型ゼオライト膜複合体となる。)等が挙げられる。Ag−X型ゼオライト(Ag−X型ゼオライト膜複合体)とする場合は、オレフィン/パラフィン混合流体のオレフィンのモル分率が1%以下とした場合における、分離温度が313Kでのオレフィン/パラフィンの分離係数が90以上であることが好ましい。
なお、ゼオライト膜複合体の分離係数の上限は、混合流体のオレフィンとパラフィンの濃度が等しい(モル分率(%)がオレフィン/パラフィン=50/50)場合や、混合流体のオレフィン濃度が低い(オレフィンのモル分率が10%以下。以下、特記ない限り同じ。)場合において、分離温度(膜温度)を273〜423Kとした場合に、概ね300を超えないもの(300未満)と考えられるが、分離の条件等によって左右される場合もあり、本発明はこれには限定されない。
本発明で得られたゼオライト膜複合体を用いた場合の、混合流体のオレフィンとパラフィンの濃度が等しい場合や、混合流体のオレフィン濃度が低い場合のプロピレン等のオレフィンの透過度の一例を挙げると、下記のようになる。
例えば、Ag−X型ゼオライト膜複合体については、概ね1.0×10−7[mol・m−2・s−1・Pa−1]以上(分離温度 353K)、1.0×10−8[mol・m−2・s−1・Pa−1]以上(分離温度 313K)となることが好ましい。また、Ag−Y型ゼオライト膜複合体の場合は、概ね1.0×10−7[mol・m−2・s−1・Pa−1]以上(分離温度 353K)、1.0×10−9[mol・m−2・s−1・Pa−1]以上(分離温度 313K)となることが好ましい。なお、これらも分離の条件等によって左右される場合もあり、本発明はこれには限定されない。
混合流体においてモル分率と分圧は関連すると考えられる。例えば、オレフィン/パラフィン混合流体のオレフィンのモル分率を「A」%、パラフィンのモル分率を「B」%として、混合流体の全体圧力を100kPaとした場合、オレフィンの分圧は「A」kPa、パラフィンの分圧は「B」kPaと考えてよい。以上より、本発明によるゼオライト膜複合体は、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するに際して、混合流体のオレフィン分圧が低い(混合流体の全体圧力を100kPaとした場合のオレフィンの分圧が10kPa%以下(これはオレフィンのモル分率が10%以下と同視できる。))場合におけるオレフィンの選択的分離に特に有用であると考えることもできる。
ゼオライト膜複合体を用いた、オレフィン/パラフィン混合流体の分離について説明すると、ゼオライト膜複合体を構成するFAU型ゼオライト膜は、分子ふるいとして作用する。つまりFAU型ゼオライト膜は、FAU型ゼオライトの細孔径よりも小さい特定の分子のみを選択的に透過させ、細孔径よりも大きい分子は透過させない。
加えて、FAU型ゼオライト膜に含まれるAgカチオンは、細孔よりも小さい特定の分子のうちオレフィンのみを選択的に吸着する。このように、FAU型ゼオライト膜は、分子の大きさに応じた分子ふるいの機能と、分子の組成に応じた化学吸着能と、を兼ね備えているものと考えられる。
混合流体(混合ガス)がオレフィン/パラフィンの混合流体である場合、オレフィンがFAU型ゼオライト膜の内部に吸着されやすい。したがって、オレフィンのみが選択的にFAU型ゼオライト膜の内部に取り込まれてかかる膜を透過する。一方、パラフィンはオレフィンに比べてFAU型ゼオライト膜を透過しにくい。
加えて、分離操作においては、FAU型ゼオライト膜の細孔内壁におけるオレフィン分子の吸着と脱着とが、パラフィン分子よりも優先的にかつ連続的に進行され、また、FAU型ゼオライトの細孔内壁へ吸着されたオレフィン分子が、パラフィン分子の吸着及び透過を阻害することとなる。以上より、FAU型ゼオライト膜では、オレフィンが選択的に透過し、オレフィンの分離性能が優れたものとなる。
本発明の製造方法で得られるゼオライト膜複合体(のFAU型ゼオライト膜)は、オレフィンが低い濃度にあっては、混合流体とゼオライト膜が接触する際に、混合流体中のオレフィン分子(例えば、プロピレン分子等。)がゼオライト膜に吸着されたAgイオンと直接相互作用する一方、パラフィン分子(例えば、プロパン分子等。)の透過阻害が生じ、ゼオライト膜はオレフィン選択性を示すことになる。よって、分離係数も20以上を維持することができ、混合流体のオレフィン濃度が低い(オレフィンのモル分率が10%以下)場合におけるオレフィンの分離に特に有用となる。
(D)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
例えば、前記した実施形態では、FAU型ゼオライトが水熱合成により得られることとして、水熱合成について所定の方法を例示して説明したが、水熱合成の方法については例示した以外の方法を用いてもよく、また、FAU型ゼオライトを得る手段として水熱合成以外の任意の方法を用いるようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
以下、本発明を実施例等に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
Ag−X型ゼオライト膜複合体の調製(1):
以下、(A)多孔質支持体上へのFAU型ゼオライトの成膜((a)種結晶スラリーの調製→(b)多孔質支持体上への種結晶の担持→(c)水熱合成溶液の調製→(d)水熱合成)、(B)カチオン交換(イオン交換によりFAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換する。)の手順により、多孔質支持体−ゼオライト膜の複合体としてAg−X型ゼオライト膜複合体を調製した。
(A)多孔質支持体上へのFAU型ゼオライトの成膜:
Na−X型膜複合体は、種結晶を用いた二次成長法によって多孔質α−アルミナ管状支持体上に製膜した。多孔質支持体(以下、単に「支持体」とする場合もある。)としては、NORITAKE製NS−1(外径 10mm, 内径 7mm、平均細孔径 150nm(0.15μm)(気孔率 40%、全長 3cm)を使用した。また、種結晶の担持方法としては、公知のディップコーティング(Dip Coating)法を用いた。以下、成膜までの手順を示す。
(a)種結晶スラリーの調製:
種結晶として市販のUSY(Ultra− Stable Y)ゼオライト粉末を用いた。まず、USY粉末8g(Si/Al=7、東ソーHSZ−360HUA)を蒸留水20g、ジルコニアボール(YTZボール、ZrO2;95%、直径 1mm及び2mmを1/1に混合)とともに100mL容のPP容器に入れ、ボールミルによって24時間粉砕して、種結晶スラリーを得た。
かかる種結晶スラリーに超音波処理を行い、遠心分離機(HITACHI製 himacCR20G)を用いて4000rpmで10分間の遠心分離を行うことにより、上澄み液と沈殿物に分離させ上澄み液を回収した。この上澄み液に蒸留水及び水酸化ナトリウム水溶液を加え濃度及びpHを調整し、濃度が2.5g・L−1、pH=8.0のUSY種結晶スラリーを得た。
(b)多孔質支持体上への種結晶の担持:
多孔質支持体上への種結晶の担持は、種結晶スラリーを用いたディップコーティング法により行った。まず、多孔質α−アルミナ管状支持体をテフロン(登録商標)棒(太さ 6mm)にシールテープで固定し、(a)で濃度が2.5g・L−1、pH=8.0に調整したUSY種結晶スラリー中に1分間浸漬させて、液面の降下速度を3cm・s−1として種結晶スラリーを抜いた。
その後、293Kで20分間、次いで343Kで2時間、その後、再び293Kで40分間乾燥させた。その後、同様にディップコーティングをもう一度行い、293Kで20分間、343Kで5時間乾燥させることで、多孔質支持体上に種結晶を担持した。
(c)水熱合成溶液の調製:
水熱合成溶液を下記のようにして調製した。組成はKumakiriらによる報告を参考にし、モル比で、NaO/SiO/Al/HO=80/9/1/5000とした。まず、蒸留水にNaOH(>96.0%、和光純薬工業(株)製)及びAl(OH)(>95%、和光純薬工業(株)製)を溶解し、これをAl源溶液とした。また、蒸留水にケイ酸ナトリウム(SiO;28〜30%、NaO;9〜10%、ともにキング化学(株)製)を溶解して、これをSi源溶液とした。
かかるAl源溶液とSi源溶液ともに撹拌しながら343Kで1時間保持した後に混合し、343Kのまま5分間攪拌して、水熱合成溶液を得た。
(d)水熱合成:
種結晶を担持した支持体を、(c)で得られた343Kの水熱合成溶液中に浸漬させた。その後,容器ごと343Kのオーブンに入れ、24時間水熱処理をすることによって、多孔質支持体上にNa−X型ゼオライトを成膜したNa−X型ゼオライト膜複合体を得た。得られたNa−X型ゼオライト膜複合体は、蒸留水に1時間浸漬させる操作を3回繰り返すことにより洗浄して、343Kにて減圧乾燥処理した。
(B)カチオン交換(イオン交換):
(A)で得られたNa−X型ゼオライト膜複合体について、液相イオン交換法にてAgイオン(Agイオン)を担持させるカチオン交換(イオン交換)を行った。(A)で得られたNa−X型ゼオライト膜複合体を0.01Mの硝酸銀水溶液を用いて、硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kとして減圧下で1時間浸漬させてイオン交換することによって銀カチオン交換X型ゼオライト膜を得た。その後、蒸留水に浸漬させ、攪拌条件下で1時間洗浄した後に、室温で減圧乾燥することにより、多孔質支持体と、かかる多孔質支持体上に形成されたAg−X型ゼオライト膜を有するAg−X型ゼオライト膜複合体を得た。
得られたAg−X型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.1のAg−X型ゼオライトから構成され、Ag−X型ゼオライト中のAgの割合は約33質量%、Ag/Al比(モル比)は約1.0であった。また、ゼオライト膜の膜厚は2〜5μmであった。膜厚は、他の実施例、比較例(Y型のものも含む。)も同様である。
なお、下記の実施例、比較例も含め、ゼオライト中のAg量はイオン交換前後の重量変化から算出した。また、ゼオライトの構造(X型かY型か)はXRD測定におけるピークパターンから決定(XRD測定における回折角からSi/Al比を決定)した。
した。
[実施例2]
Ag−X型ゼオライト膜複合体の調製(2):
実施例1において、(B)カチオン交換における硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kから293Kとした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、実施例2のAg−X型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−X型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.1のAg−X型ゼオライトから構成され、Ag−X型ゼオライト中のAgの割合は約27質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.74であった。
[実施例3]
Ag−X型ゼオライト膜複合体の調製(3):
実施例1において、(B)カチオン交換における硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kから303Kとした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、実施例3のAg−X型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−X型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.1のAg−X型ゼオライトから構成され、Ag−X型ゼオライト中のAgの割合は約27質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.72であった。
[比較例1]
Ag−X型ゼオライト膜複合体の調製(4):
実施例1において、(B)カチオン交換における硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kから313Kとした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、比較例1のAg−X型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−X型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.1のAg−X型ゼオライトから構成され、Ag−X型ゼオライト中のAgの割合は約27質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.73であった。
[比較例2]
Ag−X型ゼオライト膜複合体の調製(5):
実施例1において、(B)カチオン交換における硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kから333Kとした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、比較例2のAg−X型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−X型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.1のAg−X型ゼオライトから構成され、Ag−X型ゼオライト中のAgの割合は約21質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.62であった。
[比較例3]
Ag−X型ゼオライト膜複合体の調製(6):
実施例1において、(B)カチオン交換における硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kから343Kとした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、比較例3のAg−X型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−X型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.1のAg−X型ゼオライトから構成され、Ag−X型ゼオライト中のAgの割合は約16質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.51であった。
[実施例4]
Ag−Y型ゼオライト膜複合体の調製(1):
(A)多孔質支持体上へのFAU型ゼオライトの成膜:
Na−Y型ゼオライト膜は、前記したNa−X型ゼオライト膜と同様に、種結晶を用いた二次成長法によって多孔質α−アルミナ管状支持体上に製膜した。
また、多孔質支持体も、実施例1のNa−X型ジルコニア膜と同じNORITAKE製NS−1(外径 10mm、内径 7mm、平均細孔径 150nm(0.15μm)、気孔率 40%、全長 3cm)を使用し、種結晶の担持方法も、実施例1と同様に、公知のディップコーティング(Dip Coating)法を用いた。以下、成膜までの手順を示す。
(a)種結晶スラリーの調製:
実施例1のX型ジルコニア膜と同様、市販のUSYゼオライト粉末を用いた。用いたUSY粉末の重量、粉砕や遠心分離条件は、スラリーの濃度及びpHが異なる以外は、実施例1のX型ジルコニア膜の製造と同様に実施した。遠心分離後の上澄み液に蒸留水及び塩酸を加え濃度及びpHを調整し、濃度が5.0g・L−1、pH=5.0のUSY種結晶スラリーを得た。
(b)多孔質支持体上への種結晶の担持:
多孔質支持体上への種結晶の担持は、実施例1等のX型ゼオライト膜と同様に、種結晶スラリーを用いたディップコーティング法により行った。まず、多孔質アルミナ管状支持体をテフロン(登録商標)棒(太さ 6mm)にシールテープで固定し、(a)で濃度を5.0g・L−1、pH=5.0に調整したUSY種結晶スラリー中に1分間浸漬させて、液面の降下速度3cm・s−1で種結晶スラリーを抜いた。
その後、293Kで20分間、次いで343Kで2時間、その後、再び293Kで40分間乾燥させた。その後、同様にディップコーティングをもう一度行い、293Kで20分間、343Kで5時間乾燥させることで多孔質支持体上に種結晶を担持した。
(c)水熱合成溶液(緊密共沈法による合成ゲル溶液)の調製:
緊密共沈法により合成ゲル溶液を調製した。合成ゲルの組成はKitaらによる報告を参考にし、モル比でNaO/SiO/Al/HO=22/25/1/990とした。まず、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO;28〜30%、NaO;9〜10%、キシダ化学)を所定の量PP容器に量り取った(これを溶液Aとした。)。次に、蒸留水に水酸化ナトリウム(>99.5%、関東化学(株)製)を溶解させ、攪拌した(これを溶液Bとした。)。そして、蒸留水に水酸化ナトリウムを溶解した後,その溶液にさらにアルミン酸ナトリウムNaAlO(NaO;31〜35%、Al;34〜39%、関東化学(株)製)を溶解し、攪拌した(これを溶液Cとした。)。
これらの3つの溶液(溶液A、溶液B及び溶液C)をそれぞれの溶液が混ざらないように、溶液Aが入ったPP容器内にゆっくりと溶液B及び溶液Cの順で、3層になるように仕込み、ウルトラ撹拌機(ASONE製 HSIANGTAI)を用いて、回転数を2000rpmとして5分間撹拌を行った。撹拌混合後,エージングを293K、撹拌条件下(350rpm)で4時間行い、水熱合成溶液を得た。
(d)水熱合成:
種結晶を担持した支持体を、50mL容のPP容器中の293Kの水熱合成溶液中に浸漬させた。その後、PP容器ごと373Kのオーブンに入れ,15rpmで4時間回転させながら水熱処理をすることによって、支持体上にNa−Y型ゼオライトを成膜した。得られたNa−Y型ゼオライト膜は、蒸留水に1時間浸漬させる操作を3回繰り返すことにより洗浄し、室温にて減圧乾燥した。
(B)カチオン交換(イオン交換):
カチオン交換Y型ゼオライト膜の調製における銀カチオン交換については、実施例1(B)に載せたX型ゼオライト膜のカチオン交換と同様の方法(硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度) 273K)で行い、多孔質支持体と、かかる多孔質支持体上に形成されたAg−Y型ゼオライト膜を有するAg−Y型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−Yゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.6のAg−Y型ゼオライトから構成され、Ag−Y型ゼオライト中のAgの割合は約26質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.80であった。
[比較例4]
Ag−Y型ゼオライト膜複合体の調製(2):
実施例4において、(B)カチオン交換における硝酸銀水溶液の温度(イオン交換温度)を273Kから343Kとした以外は、実施例4と同様な方法を用いて、比較例4のAg−Y型ゼオライト膜複合体を得た。得られたAg−Y型ゼオライト膜複合体は、Si/Al比が1.6のAg−Y型ゼオライトから構成され、Ag−Y型ゼオライト中のAgの割合は約25質量%、Ag/Al比(モル比)は約0.77であった。
[試験例1]
透過分離試験(1):
実施例1ないし実施例3、比較例1ないし比較例3で得られたAg−X型ゼオライト膜複合体の炭化水素の透過性能を調べるため、原料となるオレフィン/パラフィン混合ガスとしてプロピレン/プロパン混合ガスを用い、図1に概略が開示される装置を用いて、ベーパーパーミエーションによる透過分離試験を行った。
なお、混合ガスのプロピレンとプロパンの濃度比は、1/1(プロピレンのモル分率(%)/プロパンのモル分率(%)=50/50(1/1))とした(圧力比も、1/1の等圧(プロピレン分圧/プロパン分圧=50kPa/50kPa(混合ガス全体で100kPa)となる。)。また、膜温度(分離温度)は353Kで行った。
図1は、透過分離試験で用いた装置の概略図である。試験の概略を説明すると、図1には図示しないマスフローコントローラーによりプロピレンガス(オレフィンガス)とプロパンガス(パラフィンガス)の供給量が調整された混合流体を、ヒーターにより加熱され、大気圧に保持した分離セル内に供給した。
図1に示すかかる分離セルは、円筒型のゼオライト膜複合体の外側表面に分離する混合流体を供給し、内側表面から透過ガスを得る構造を採用している。供給する混合ガスの総供給量は200mL/分に固定した。また、透過側にはキャリアガスとしてヘリウムガスを200mL/分の速度で流すようにした。
多孔質支持体−ゼオライト膜複合体のゼオライト膜を透過したガスを含む回収ガスを分取し、ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography:GC)(GC−FID)にて測定を行ない、ゼオライト膜を透過した透過ガスの透過度[mol・m−2・s−1・Pa−1]及び分離係数[−]を下記の式により算出し、評価した。結果を表1に示す。
なお、測定前に393Kで1時間前処理した。また、内標準物質としてAr/CHを用いCHの流量が約1mL/分となるように調整し透過成分に加えた。
(透過度と分離係数の算出)
CH由来のArea値との比から、各炭化水素の流束(Flux)、透過度(Permeance)及び分離係数(Separation factor)を以下の式から算出した。なお、表1及び表2の透過度は、プロピレンの透過度(プロピレン透過度)を示す。
(流速(Flux)を求める式)
流速(Flux)=(P・V)/(R・T・A) …… (X)
(透過度(Permeance)を求める式)
透過度=(Flux)/ΔP …… (Y)
式(X)中、流速(Flux)[mol・m−2・s−1]を求めるためのP[Pa]は測定圧力(Pressure Of Measurement)、V[m・s−1]は透過ガス流れ(Permeated Gas Flow)、R[J・mol−1・K−1]はガス定数(Gas constant)、T[K]は温度(Temperature)、A[m]は膜表面積(Membrane Area)、をそれぞれ示す。
また、式(Y)中、透過度[mol・m−2・s−1・Pa−1]を求めるためのΔP[Pa]は圧力差(Pressure Difference)、を示す。
分離係数(オレフィン/パラフィンの分離係数であり、本試験ではプロピレン/プロパンの分離係数)とは、供給ガス中のプロピレン(オレフィン)濃度S[mol(モル)%]とパラフィン(プロパン)濃度S[mol%]との比に対する透過ガス中のプロピレン(オレフィン)濃度P[mol%]とパラフィン(プロパン)の濃度P[mol%]との比であり、下記式(I)で表されるものである。
分離係数=(P/P)/(S/S) …… (I)
(評価結果:Ag−X型ゼオライト膜複合体)
Figure 2021045711
表1に示すように、イオン交換(カチオン交換)温度が273〜310Kの範囲内で製造された、実施例1ないし実施例3のAg−X型ゼオライト膜複合体は、分離係数が高く(30以上)であり、プロピレン/プロパンの混合流体のプロピレンの選択分離について良好な特性を示し、プロピレン/プロパン(オレフィン/パラフィン)混合流体におけるプロピレンの分離に有用であると考えられる。一方、イオン交換温度が310Kより高い条件で製造された比較例1ないし比較例3のAg−X型ゼオライト膜複合体は、実施例1ないし実施例3より分離係数が小さく、分離性能に劣るものと考えられる。
[試験例2]
透過分離試験(2):
実施例4及び比較例4で得られたAg−Y型ゼオライト膜複合体の炭化水素の透過性能を調べるため、原料となるオレフィン/パラフィン混合ガスとしてプロピレン/プロパン混合ガスを用い、試験例1と同様な方法を用いて、ベーパーパーミエーションによる透過分離試験を行った。混合ガスの濃度比(分圧)、膜温度(分離温度)についても、試験例1と同様にして行った。結果を表2に示す。
(評価結果:Ag−Y型ゼオライト膜複合体)
Figure 2021045711
表2に示すように、イオン交換温度が273〜310Kの範囲内で製造された実施例4のAg−Y型ゼオライト膜複合体は、分離係数が高く(20以上)プロピレン/プロパンの混合流体のプロピレンの選択分離について良好な特性を示し、プロピレン/プロパン(オレフィン/パラフィン)混合流体におけるプロピレンの分離に有用であると考えられる。一方、イオン交換温度が310Kより高い条件で製造された比較例4のAg−Y型ゼオライト膜複合体は、実施例4より分離係数が小さく、分離性能に劣るものと考えられる。
[試験例3]
透過分離試験(3)(プロピレン濃度を変化させた場合におけるプロピレン/プロパン分離性能の確認):
実施例1、実施例2及び比較例3で得られたX型ゼオライト膜複合体を用いてプロピレン/プロパンガスにおけるプロピレン濃度(モル分率:%)を表3に示すように変化させ、その他の条件等は試験例1と同様な方法を用いて、ベーパーパーミエーションによる透過分離試験を行った。なお、膜温度(分離温度)は313Kとして行った。試験例1と同様な方法で、透過度及び分離係数を算出した。結果を表3に示す。なお、混合ガス全体は100kPaであり、プロピレン/プロパン混合流体のプロピレンのモル分率を「A」%、プロパンのモル分率を「B」(=100−「A」)%とした場合、プロピレンの分圧は「A」kPa、プロパンの分圧は「B」kPaと考えてよい。
(評価結果:Ag−X型ゼオライト膜複合体)
Figure 2021045711
表3に示すように、実施例1及び実施例2のAg−X型ゼオライト膜複合体は、プロピレンが低濃度(モル分率が10%以下)の範囲のプロピレンの分離において、分離係数を20以上とすることができ(かつ、モル分率が1%以下の範囲の分離において、分離係数が90以上となる。)、原料中のプロピレン濃度が低い(プロピレン分圧が低い)場合において高いプロピレン透過選択性を示すことが確認できた。従って、本発明のAg−X型ゼオライト膜複合体は、プロピレン濃度が低い場合におけるプロピレン/プロパン(オレフィン/パラフィン)混合流体のプロピレン(オレフィン)の分離に有用であると考えられる。一方、比較例3のAg−X型ゼオライト膜複合体は、プロピレンが低濃度(モル分率が10%以下)の範囲の分離において、実施例1及び実施例2より分離係数が小さく、分離性能に劣るものと考えられる。
[試験例4]
透過分離試験(4)(プロピレン濃度を変化させた場合におけるプロピレン/プロパン分離性能の確認):
実施例4で得られたAg−Y型ゼオライト膜複合体を用いてプロピレン/プロパンガスにおけるプロピレン濃度(モル分率:%)を表4に示すように変化させ、その他の条件等は試験例1と同様な方法を用いて、ベーパーパーミエーションによる透過分離試験を行った。なお、膜温度は313Kとして行った。試験例1と同様な方法で、透過度及び分離係数を算出した。結果を表4に示す。
(評価結果:Ag−Y型ゼオライト膜複合体)
Figure 2021045711
表4に示すように、実施例4のAg−Y型ゼオライト膜複合体は、プロピレンが低濃度(モル分率が10%以下)の範囲のプロピレンの分離において、分離係数を20以上とすることができ、原料中のプロピレン濃度が低い(プロピレン分圧が低い)場合において高いプロピレン透過選択性を示すことが確認できた。従って、本発明のAg−Y型ゼオライト膜複合体は、プロピレン濃度が低い場合におけるプロピレン/プロパン(オレフィン/パラフィン)混合流体のプロピレン(オレフィン)の分離に有用であると考えられる。
本発明は、例えば、オレフィン/パラフィン混合流体を選択的に分離するゼオライト膜複合体を提供する手段として有利に利用することができ、産業上の利用可能性は高い。

Claims (6)

  1. 多孔質支持体上にFAU型ゼオライトを成膜し、イオン交換により前記FAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンをAgイオンにイオン交換しAg−FAU型ゼオライトとした、ゼオライト膜複合体の製造方法であって、
    前記イオン交換の温度が273〜310Kで行われることを特徴とするゼオライト膜複合体の製造方法。
  2. 前記Ag−FAU型ゼオライトがAg−X型ゼオライトまたはAg−Y型ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
  3. 前記FAU型ゼオライト中のイオン交換可能なカチオンがNaイオンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
  4. 前記多孔質支持体にFAU型ゼオライトを成膜することが、前記多孔質支持体へジルコニア種結晶を担持させ、水熱合成することによりなされることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のゼオライト膜複合体の製造方法。
  5. 多孔質支持体と、当該多孔質支持体上に形成されたAg−FAU型ゼオライト膜を有し、オレフィン/パラフィン混合流体からオレフィンを選択的に分離するゼオライト膜複合体であって、
    前記オレフィン/パラフィン混合流体のオレフィンのモル分率を10%以下とした場合における、分離温度が313Kでのオレフィン/パラフィンの分離係数が20以上であることを特徴とするゼオライト膜複合体。
  6. 前記Ag−FAU型ゼオライト膜がAg−X型ゼオライト膜またはAg−Y型ゼオライト膜であることを特徴とする請求項5に記載のゼオライト膜複合体。
JP2019169777A 2019-09-18 2019-09-18 ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体 Pending JP2021045711A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019169777A JP2021045711A (ja) 2019-09-18 2019-09-18 ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019169777A JP2021045711A (ja) 2019-09-18 2019-09-18 ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021045711A true JP2021045711A (ja) 2021-03-25

Family

ID=74877200

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019169777A Pending JP2021045711A (ja) 2019-09-18 2019-09-18 ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021045711A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115321556A (zh) * 2022-08-25 2022-11-11 陕西延长石油(集团)有限责任公司 一种mfi型片状分子筛及其制备方法
CN116410087A (zh) * 2023-04-14 2023-07-11 泰兴金江化学工业有限公司 一种丙烯酸丁酯生产废水处理工艺

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20140141963A1 (en) * 2011-06-27 2014-05-22 Susan Jones Zeolites and composites incorporating zeolites
JP2015174081A (ja) * 2014-03-18 2015-10-05 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 オレフィンの分離方法およびゼオライト膜複合体
WO2015151854A1 (ja) * 2014-04-01 2015-10-08 日本碍子株式会社 ゼオライト、分離膜構造体及びゼオライトの製造方法
JP2017213488A (ja) * 2016-05-30 2017-12-07 東ソー株式会社 オレフィン高純度化用ゼオライト膜

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20140141963A1 (en) * 2011-06-27 2014-05-22 Susan Jones Zeolites and composites incorporating zeolites
JP2015174081A (ja) * 2014-03-18 2015-10-05 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 オレフィンの分離方法およびゼオライト膜複合体
WO2015151854A1 (ja) * 2014-04-01 2015-10-08 日本碍子株式会社 ゼオライト、分離膜構造体及びゼオライトの製造方法
JP2017213488A (ja) * 2016-05-30 2017-12-07 東ソー株式会社 オレフィン高純度化用ゼオライト膜

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115321556A (zh) * 2022-08-25 2022-11-11 陕西延长石油(集团)有限责任公司 一种mfi型片状分子筛及其制备方法
CN116410087A (zh) * 2023-04-14 2023-07-11 泰兴金江化学工业有限公司 一种丙烯酸丁酯生产废水处理工艺

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2013356504B2 (en) Gas separation method using DDR type zeolites with stabilized adsorption activity
JP7163951B2 (ja) ゼオライト膜複合体
Feng et al. Recent progress in zeolite/zeotype membranes
Tavolaro et al. Zeolite membranes
AU700321B2 (en) Molecular sieves and processes for their manufacture
Vercauteren et al. Porous ceramic membranes: preparation, transport properties and applications
US6582495B2 (en) Process for preparing supported zeolitic membranes by temperature-controlled crystallisation
JP6389625B2 (ja) オレフィンの分離方法およびゼオライト膜複合体
Takata et al. Gas permeation properties of MFI zeolite membranes prepared by the secondary growth of colloidal silicalite and application to the methylation of toluene
JP2000507909A (ja) モレキュラーシーブフィルムの調製方法
Algieri et al. A novel seeding procedure for preparing tubular NaY zeolite membranes
ZA200108336B (en) Crystalline molecular sieve layers and processes for their manufacture.
JP6211481B2 (ja) ノルマルパラフィンまたはパラキシレンの分離方法およびゼオライト膜複合体
JP6479044B2 (ja) 直鎖状共役ジエンの分離方法
JP2021045711A (ja) ゼオライト膜複合体の製造方法及びゼオライト膜複合体
Asadollahi et al. Permeation of single gases through TEG liquid membranes modified by Na-Y nano-zeolite particles
Hyun et al. Synthesis of ZSM-5 zeolite composite membranes for CO2 separation
Jansen et al. Progress in zeolitic membranes
JP6455923B2 (ja) パラキシレンの製造方法
US20090318282A1 (en) Zeolite-Like Membranes from Nano-Zeolitic Particles
JP2017213488A (ja) オレフィン高純度化用ゼオライト膜
Wang et al. Zeolite thin films and membranes: from fundamental to applications
JP2017018848A (ja) ゼオライト膜を用いたエチレンアミンの脱水濃縮方法
Zhu et al. Functional zeolitic framework membranes for water treatment and desalination
JP7358827B2 (ja) ゼオライト膜複合体の再生方法

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20191011

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20191030

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20191030

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220520

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230202

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230403

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230718