JP2021044896A - 微小機械 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブラウン運動を利用して動作する微小機械を提供する。【解決手段】本発明のある実施形態に係る微小機械1は、磁石10と、コイル20とを備える。磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化する。ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、コイル20に電圧が発生する。ブラウン運動を利用して磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、磁石10はコイル20に相対的に接近したり離れたりし、電磁誘導によりコイル20に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。【選択図】図1
Description
本発明は、ブラウン運動を利用する微小機械に関する。
環境から得られる微弱なエネルギーを集めて利用するエネルギーハーベスティング技術がある。エネルギーハーベスティング技術では、例えば、環境中の振動、熱および電磁波などの様々な形態のエネルギーを電力に変換する。
非特許文献1には、分子の熱運動から利用可能なエネルギーを得る装置(ブラウン・ラチェット:Brownian ratchet)が提案されている。ブラウン・ラチェットは、ファインマンのラチェット(Feynman’s ratchet)、ファインマンのサーマルラチェット(Feynman’s thermal ratchet)などとも称される。
非特許文献2には、ブラウン運動により回転するナノスケールの粒子を監視し、マクスウェルの悪魔と呼ばれる物理現象を実現する方法を提案している。
ファインマン物理学 II 光・熱・波動 岩波書店 1986年発行
Nature Physics volume6, pages988-992 (2010) "Experimental demonstration of information−to−energy conversion and validation of the generalized Jarzynski equality" 2010年11月14日公開
ブラウン・ラチェットモデルでは、微小な羽根車にラチェット機構が接続されている。羽根車の回転軸には、錘が付いた紐が取り付けられている。羽根車の周囲には気体または液体の流体が存在する。その流体中の多数の分子が羽根車にランダムに衝突し、羽根車を揺動させる。熱運動する分子が物体にランダムに衝突することによりその物体に発生する運動は、ブラウン運動と呼ばれる。ブラウン運動により羽根車が回転する方向はランダムに変化する。ラチェット機構は、分子が衝突する羽根車を概ね一方向に回転させるために、羽根車に接続されている。ブラウン・ラチェットモデルは、羽根車を一方向に回転させ、紐が回転軸に巻かれることにより、錘を持ち上げようとする機構である。すなわち、ブラウン・ラチェットモデルは、ブラウン運動を利用して錘に対して仕事を行おうとする機構である。
しかし、非特許文献1の中で、著者であるリチャード・フィリップス・ファインマンは、上記のようなブラウン・ラチェットモデルは物理学的には実現できないと考察している。具体的には、ラチェット機構の歯止め(爪)自体もブラウン運動により揺動し、歯止めが歯車から離れるため、羽根車の回転を一方向に制限することはできないとファインマンは考察している。ラチェット機構が機能せず、羽根車の回転方向がランダムに変化してしまうと、錘を継続的に上昇させることはできない。
非特許文献2では、ランダムに回転するナノスケールの粒子を監視し、粒子に印加する電場を制御することで、粒子の回転を一方向に偏らせている。非特許文献2に示す方法では、ナノスケールの粒子の運動をカメラ等で監視する必要があり、この監視によりエントロピーが増大するという課題があった。
本発明は、ブラウン運動を利用する微小機械を提供する。
本発明の実施形態に係る微小機械は、磁石と、コイルとを備え、前記磁石と前記コイルとの間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、前記ブラウン運動による前記相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、前記コイルに電圧が発生する。
ブラウン運動を利用して磁石とコイルとの間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、磁石とコイルとの間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、磁石はコイルに相対的に接近したり離れたりし、電磁誘導によりコイルに電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記磁石は、前記ブラウン運動により前記コイルに対して移動してもよい。
ブラウン運動により磁石がランダムに移動する過程で、磁石はコイルに接近したり離れたりし、電磁誘導によりコイルに電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記微小機械は、前記コイルに接続された負荷をさらに備え、前記電磁誘導により前記コイルに流れる電流が前記負荷に供給されてもよい。
これにより、ブラウン運動により発生した電力を負荷で利用することができる。
ある実施形態において、前記電流が供給された前記負荷は、熱を発生させてもよい。
これにより、ブラウン運動から特定のエリアに熱を発生させることができる。
ある実施形態において、前記磁石および前記コイルは、第1エリアに位置し、前記負荷は、第1エリアとは異なる第2エリアに位置し、前記負荷が熱を発生させることで、前記第2エリアの温度は前記第1エリアの温度よりも高くなってもよい。
ブラウン運動から第2エリアに熱を発生させることができる。例えば、第1エリアおよび第2エリアの温度が均一であったとしても、そこから第1エリアと第2エリアとの間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてマクスウェルの悪魔(Maxwell’s demon)と呼ばれている現象を実現できる。
ある実施形態において、前記第1エリアと前記第2エリアとの間には壁が設けられていてもよい。
第1エリアと第2エリアとの間の熱の移動を壁が抑制することにより、第1エリアと第2エリアとの間の温度差を大きくすることができる。すなわち、エントロピーをより大きく減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれている現象を実現できる。
ある実施形態において、前記微小機械は、熱電素子をさらに備え、前記熱電素子には前記負荷が発生させた熱が供給されてもよい。
前記熱電素子に熱を供給することで、熱電素子に電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記微小機械は、複数の前記磁石と、複数の前記コイルと、複数の前記負荷と、複数の第1エリアと、前記複数の第1エリアとは異なる第2エリアとを備え、前記複数の磁石は、前記複数の第1エリアのうちの互いに異なる第1エリアに位置し、前記複数のコイルは、前記複数の第1エリアのうちの互いに異なる第1エリアに位置し、前記複数の負荷は、前記第2エリアに位置し、前記複数の負荷のうちの電流が流れた前記負荷は熱を発生させてもよい。
ブラウン運動から第2エリアに熱を発生させることができる。例えば、第1エリアおよび第2エリアの温度が均一であったとしても、そこから第1エリアと第2エリアとの間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれている現象を実現できる。
ある実施形態において、複数の前記コイルを備え、前記磁石と前記複数のコイルとの間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、前記ブラウン運動による前記相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、前記複数のコイルの少なくとも一つに電圧が発生してもよい。
磁石1個に対して複数のコイルを配置することで、磁石がいずれかのコイルに接近する機会を増やすことができる。これにより、ブラウン運動による発電の機会を増やすことができる。
ある実施形態において、前記微小機械は、前記複数のコイルに接続された複数の負荷をさらに備え、前記電磁誘導により少なくとも一つの前記コイルに流れる電流が、前記少なくとも一つのコイルに接続された少なくとも一つの前記負荷に供給されてもよい。
ブラウン運動により発生した電力を負荷で利用することができる。
ある実施形態において、前記磁石および前記複数のコイルは、第1エリアに位置し、前記複数の負荷は、前記第1エリアとは異なる第2エリアに位置し、前記複数の負荷のうちの電流が流れた前記負荷は熱を発生させてもよい。
ブラウン運動から第2エリアに熱を発生させることができる。例えば、第1エリアおよび第2エリアの温度が均一であったとしても、そこから第1エリアと第2エリアとの間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれている現象を実現できる。
ある実施形態において、前記微小機械は、熱電素子をさらに備え、前記熱電素子には複数の前記負荷が発生させた熱が供給されてもよい。
熱電素子に熱を供給することで、電力を発生させることができる。複数の負荷が発生させた熱が熱電素子に供給されることで、より大きい電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記磁石と前記コイルの少なくとも一方は、コーティング膜で被覆されていてもよい。
磁石がコイルに吸着することを抑制できる。あるいは、コイルが磁石に吸着することを抑制できる。
ある実施形態において、前記磁石と前記コイルの少なくとも一方は、分散剤で被覆されていてもよい。
磁石がコイルに吸着することを抑制できる。あるいは、コイルが磁石に吸着することを抑制できる。
ある実施形態において、前記磁石と前記コイルの少なくとも一方は、界面活性剤で被覆されていてもよい。
磁石がコイルに吸着することを抑制できる。あるいは、コイルが磁石に吸着することを抑制できる。
ある実施形態において、前記微小機械は、前記磁石に設けられた回転軸をさらに備え、前記磁石は、ブラウン運動により回転してもよい。
ブラウン運動により磁石が回転することで、磁石とコイルとの間の相対的な位置関係を変化させることができる。回転は、1回転以上の回転、1回転未満の回転の両方の意味を含む。回転は、揺動も含む。例えば、ブラウン運動により磁石が回転することで、磁石のN極およびS極のうちのコイルに対向する極性が変化する。コイルに対向する磁石の極性が変化することで、電磁誘導によりコイルに電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記微小機械は、回転可能な回転部材をさらに備え、前記磁石は、前記回転部材に設けられ、前記磁石は、ブラウン運動により前記回転部材とともに回転してもよい。
ブラウン運動により回転部材とともに磁石が回転することで、磁石とコイルとの間の相対的な位置関係を変化させることができる。例えば、ブラウン運動により回転部材とともに磁石が回転することで、磁石のN極およびS極のうちのコイルに対向する極性が変化する。コイルに対向する磁石の極性が変化することで、電磁誘導によりコイルに電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
本発明の実施形態に係る微小機械は、エレクトレットと、第1電極と、前記エレクトレットに接続された第2電極とを備え、前記エレクトレットと前記第1電極との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、前記ブラウン運動による前記相対的な位置関係の変化に応じて電力が発生する。
ブラウン運動を利用してエレクトレットと第1電極との間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、エレクトレットと第1電極との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、エレクトレットは第1電極に相対的に接近したり離れたりし、静電誘導により発電することができる。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記エレクトレットは、前記ブラウン運動により前記第1電極に対して移動してもよい。
ブラウン運動によりエレクトレットがランダムに移動する過程で、エレクトレットは第1電極に接近したり離れたりし、静電誘導により第1電極と第2電極との間に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、前記微小機械は、前記第1電極および前記第2電極に接続された負荷をさらに備え、静電誘導により発生した電流が前記負荷を流れてもよい。
ブラウン運動により発生した電力を負荷で利用することができる。
ある実施形態において、前記エレクトレットは、回転軸に対して非対称に設けられていてもよい。
ブラウン運動によりエレクトレットが回転することで、エレクトレットと第1電極との間の距離を変化させることができる。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
本発明のある実施形態に係る微小機械は、磁石と、コイルとを備える。磁石とコイルとの間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、コイルに電圧が発生する。
本発明のある実施形態によれば、ブラウン運動を利用して磁石とコイルとの間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、磁石とコイルとの間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、磁石はコイルに相対的に接近したり離れたりし、電磁誘導によりコイルに電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
本発明のある実施形態に係る微小機械は、エレクトレットと、第1電極と、エレクトレットに接続された第2電極とを備える。エレクトレットと第1電極との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じて電力が発生する。
本発明のある実施形態によれば、ブラウン運動を利用してエレクトレットと電極との間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、エレクトレットと電極との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、エレクトレットは電極に相対的に接近したり離れたりし、静電誘導により発電することができる。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る微小機械を説明する。同様の構成要素には同様の参照符号を付し、詳細な説明の繰り返しは省略する。また、以下に説明する実施形態は例であり、本発明を限定するものではない。
実施形態の説明において例示する微小機械の各部材の材料は一例であり、本発明の実施形態はそれらに限定されない。
実施形態を分かりやすく説明するために、図中のx方向を左右方向、y方向を奥行き方向、z軸方向を上下方向として、各部材の形状および部材同士の位置関係などを説明する場合がある。但し、これは、実施形態を分かりやすく説明するためにそれらの方向を用いるのであって、微小機械の動作時の向きを限定するものではない。
また、実施形態を分かりやすく説明するために、図面において、微小機械の内部および各種構成要素の内部を透かして示している場合がある。
本発明の実施形態に係る装置を、本明細書中では微小機械(Micromachine)と呼ぶが、この表現は装置のサイズを限定するものではない。実施形態に係る微小機械には、ナノマシン(Nanomachine)および分子マシン(Molecular Machine)も含まれる。実施形態に係る微小機械は、ブラウン運動による所望の物体の移動が得られる大きさに設定される。実施形態に係る微小機械は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)または分子マシンと呼ぶこともできる。
本発明の実施形態に係る微小機械は、微細加工技術を用いて製造される。実施形態に係る微小機械は、例えば、マイクロマシン、ナノマシンおよび分子マシンの製造方法を用いて製造される。分子マシンの製造方法は合成方法とも称される。実施形態に係る微小機械は、例えば、半導体製造技術を用いて製造することができる。実施形態に係る微小機械は、例えば、フォトリソグラフィを用いて製造することができる。実施形態に係る微小機械は、例えば、光リソグラフィ、X線リソグラフィおよび極端紫外線リソグラフィ(Extreme ultraviolet lithography)などのリソグラフィ技術を用いて製造することができる。実施形態に係る微小機械は、任意の微細加工技術を組み合わせて製造され得る。
図1は、本発明の実施形態に係る微小機械1を示す斜視図である。特徴を分かり易く説明するために、図1では、微小機械1の内部を透かして示している。図2は、微小機械1の内部を示す図である。
微小機械1は、第1の部屋51と第2の部屋52とを備える。本明細書において、第1の部屋51を第1エリア、第2の部屋52は第2エリアとそれぞれ称する場合がある。微小機械1は、壁53および54を備える。壁53で囲まれたエリアが第1の部屋51である。壁54で囲まれたエリアが第2の部屋52である。第1の部屋51と第2の部屋52との間には、第1の部屋51と第2の部屋52とを隔てる隔壁60が設けられている。第1の部屋51下部の底部分も壁53の一部であり得る。第2の部屋52上部の天井部分も壁54の一部であり得る。隔壁60は壁53の一部であってもよい。隔壁60は壁54の一部であってもよい。壁53、54および隔壁60の材料は任意である。壁53、54および隔壁60は、その材料として例えばシリコンを含む。壁53、54および隔壁60は、その材料として例えばガラスを含む。壁53、54および隔壁60の材料として、化合物半導体、不純物半導体などの半導体材料が用いられてもよい。壁53、54および隔壁60の材料として、例えば熱伝導性が比較的小さい材料が用いられ得る。
第1の部屋51の内部には、複数の流体の分子2が入っている。第2の部屋52の内部にも分子2が入っていてもよいが、入っていなくてもよい。分子2としては、ブラウン運動を発生させることが可能な任意の分子を用いることができる。分子2は、単原子分子であってもよい。本明細書において、流体は、媒体とも称することができる。流体は、例えば、気体、液体、気体と液体の混合物のいずれかである。流体は、例えば、希ガス、窒素ガスなどの気体である。流体は、例えば、水、油、アルコールなどの液体である。流体は、例えば、有機溶媒および無機溶媒などの液体である。ここで挙げた流体および流体の分子は一例であり、本発明の実施形態はこれらに限定されない。分子2は、第1の部屋51に内蔵されていてもよいし、微小機械1の周囲の環境から第1の部屋51に供給されてもよい。
第1の部屋51の天井部(例えば隔壁60の下部)には、リンカー4を用いて回転部材3が取り付けられている。回転部材3は、リンカー4を用いて第1の部屋51の天井部にピン止めされ得る。回転部材3の下部には磁石10が取り付けられている。例えば、磁石10は、回転部材3に回転可能に付着している。磁石10は、例えば永久磁石である。
回転部材3およびリンカー4の材料は任意である。回転部材3は、例えば合成樹脂の粒子である。回転部材3は、例えばポリスチレンの粒子である。回転部材3の形状は任意である。例えば、回転部材3は、直径100nm〜1000nmの球形状を有するが、本実施形態はそれに限定されない。リンカー4は、例えば蛋白質を含む。リンカー4は、例えばアビジン(avidin)を含む。リンカー4の形状は任意である。例えば、リンカー4は、紐形状を有するが、本実施形態はそれに限定されない。
非特許文献1には、2個連なったポリスチレン粒子を蛋白質のリンカーを用いてガラス基板の天井に1点でピン止めすることが記載されている。非特許文献1が開示するポリスチレン粒子の直径は約300nmである。非特許文献1には、2個連なったポリスチレン粒子のうちの下側のポリスチレン粒子が、ブラウン運動によりランダムに回転することが記載されている。
本実施形態では、回転部材3の下部に磁石10が取り付けられている。非特許文献1のランダムに回転するポリスチレン粒子と同様に、本実施形態の磁石10は、ブラウン運動によりランダムに回転する。回転部材3自身は、回転してもよいし、回転しなくてもよい。回転部材3は、磁石10の回転軸になりうる。
特開2012−145567号公報には、日本の東京大学の研究者らが開発したサブミクロンサイズの永久磁石が開示されている。その永久磁石はイプシロン型酸化鉄系化合物を含む。特開2012−145567号公報には、太さ約10〜100nm、長さ約100〜2000nmのロッド状の永久磁石を製造する方法が開示されている。この製造方法で製造された永久磁石の保磁力は、例えば約20kOeと大きい。本実施形態では、例えば、特開2012−145567号公報に開示の方法で製造された永久磁石を磁石10として用いることができる。本明細書では、特開2012−145567号公報を参考のために援用する。
なお、特開2012−145567号公報の製造方法は、サブミクロンサイズの永久磁石の製造方法の一例として挙げているのであり、本実施形態の磁石10はこの製造方法で製造された磁石に限定されない。その他の方法で製造された永久磁石を磁石10として用いてもよい。また、磁石10の組成も、特開2012−145567号公報に開示の組成と異なっていてもよい。
磁石10のサイズは、例えば、太さ約10〜100nm、長さ約100〜1000nmであるが、それに限定されない。磁石10はそれよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。磁石10は、微小機械1において所望のブラウン運動が得られるサイズに設定される。
第1の部屋51のサイズは、磁石10のランダムな運動が得られる大きさであればよい。例えば、幅、奥行き、高さのそれぞれの長さは、0.5μmから10μmであるが、これに限定されない。第1の部屋51は、微小機械1において所望のブラウン運動が得られるサイズに設定される。
流体の分子2は、熱運動として、第1の部屋51内をランダムに動き回っている。動き回る複数の分子2は、磁石10にランダムに衝突する。本明細書において、衝突とは、物体同士が接触することに限定されず、物体同士が実質的に接触したとみなされる距離まで接近することも含まれる。例えば、衝突には、ある物体が他の物体に運動エネルギーを提供する程度に接近することも含まれる。ここで言う“物体”には1個の分子および1個の原子も含まれる。
複数の分子2がランダムに衝突した磁石10は、ランダムに運動する。熱運動する分子が物体にランダムに衝突することによりその物体に発生する運動は、ブラウン運動と呼ばれる。回転部材3に取り付けられている磁石10は、ブラウン運動によりランダムに回転する。
本明細書において、回転は、1回転以上の回転、1回転未満の回転の両方の意味を含む。回転には、揺動も含まれる。回転には、振り子の運動のような揺動も含まれる。
第1の部屋51には、コイル20が設けられている。この例では、コイル20は、隔壁60に設けられた台25に設けられている。コイル20の配置位置は任意である。例えば、コイル20は、壁53に設けられていてもよい。
コイル20は、例えば、空芯コイルである。図1に示す例では、コイル20は、ソレノイドコイルである。コイル20は渦巻き状の平面コイルなどの他の種類のコイルであってもよい。コイル20の形状は、電磁誘導によって電圧を発生させることができる任意の形状でよい。コイル20は、導電性材料を含む。導電性材料は、例えば金属材料である。金属材料は例えば、銅、アルミ、金、銀などであるが、これに限定されない。コイル20の材料として、任意の導電性材料を用いることができる。導電性材料は、例えば、炭素であってもよい。コイルのサイズは、磁石10のブラウン運動により電磁誘導が発生するサイズであればよい。例えば、コイルの直径は、0.1μmから10μmであるが、これに限定されない。コイル20は、例えば、カーボンナノコイルであってもよい。
コイル20の端部には、電極23および24を介して、配線41および42が電気的に接続されている。配線41および42には負荷30が電気的に接続されている。負荷30は、第2の部屋52の内部に位置している。負荷30は、例えば抵抗器であるが、それに限定されない。負荷30は、例えば、コイル20の材料よりも電気抵抗値が大きい材料を含む。負荷30は、例えば、コイル形状など、電気抵抗値が大きくなりやすい形状を有していてもよい。配線41および42が隔壁60を貫通することで、第1の部屋51内のコイル20と、第2の部屋52内の負荷30とが電気的に接続されている。第2の部屋52のサイズは、負荷30を配置できる大きさであればよい。第2の部屋52のサイズは任意であり、第1の部屋51と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図3は、ブラウン運動により、第1の部屋51内でランダムに回転する磁石10を示す図である。磁石10は矢印17として示すように、ランダムに回転する。図2に示す磁石10に対して、図3に示す磁石10では、N極およびS極の向きが反転するように回転している。
磁石10のブラウン運動により、磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、コイル20には電圧が発生する。
ブラウン運動により、磁石10が、ランダムに回転方向を変化させながら回転することで、磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係を変化させることができる。本明細書において、相対的な位置関係の変化とは、一方の部材から見て、他方の部材が回転することも含む。例えば、相対的な位置関係の変化とは、磁石10のN極およびS極のうちのコイル20に対向する極性が変化することも含む。
例えば、磁石10が回転することで、磁石10のN極およびS極のうちのコイル20に対向する極性が変化する。コイル20に対向する磁石10の極性が変化することで、電磁誘導によりコイル20に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
本実施形態では、コイル20には、負荷30が接続されている。電磁誘導によりコイル20に流れる電流は、負荷30に供給される。このように、ブラウン運動により発生した電力を負荷30で利用することができる。
例えば、電流が供給された負荷30は、熱を発生させる。これにより、ブラウン運動から特定のエリア(第2の部屋52)に熱を発生させることができる。
負荷30が熱を発生させることで、第2の部屋52の温度は第1の部屋51の温度よりも高くなる。例えば、第1の部屋51および第2の部屋52の温度が均一であったとしても、そこから第1の部屋51と第2の部屋52との間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。元々温度が均一な二つの部屋に対して、物理学上の仕事をすることなしに、それら二つの部屋の間で温度差を発生させる現象は、物理学においてマクスウェルの悪魔(Maxwell's Demon)と呼ばれる。本実施形態では、マクスウェルの悪魔と呼ばれる現象を実現できる。本実施形態では、磁石10のランダムな動きにより生じた電磁誘導現象を利用して、電力を発生させる。分子の運動および各部品の運動を監視する必要はない。情報を記録する必要がなく、情報をリセットする必要もないため、エントロピーは増大しない。
本実施形態では、第1の部屋51と第2の部屋52との間には隔壁60が設けられている。第1の部屋51と第2の部屋52との間の熱の移動を隔壁60が抑制することにより、第1の部屋51と第2の部屋52との間の温度差を大きくすることができる。すなわち、エントロピーをより大きく減少させることができる。
なお、発生させた電力を微小機械1の外部へ出力し、その電力を外部装置で活用してもよい。
配線41および42の断面積は、第1の部屋51では大きく、第2の部屋52では小さくてもよい。第1の部屋51内では、電気伝導性を高めるために配線41および42の断面積を大きくする。一方、第2の部屋52内では、熱伝導性を小さくするために配線41および42の断面積を小さくする。これにより、負荷30で発生した熱が第1の部屋51の方へ伝導することが抑制できる。また、負荷30にはヒートシンクが設けられていてもよい。負荷30で発生した熱がヒートシンクの方へ伝導することにより、負荷30で発生した熱が第1の部屋51の方へ伝導することが抑制できる。
磁石10の表面は、コーティング膜で被覆されていてもよい。コイル20、壁53、隔壁60の表面は、コーティング膜で被覆されていてもよい。コーティング膜により、磁石10が、コイル20、壁53および隔壁60に吸着することを抑制することができる。
それぞれに部材において、コーティング膜は互いに同じ材料を含んでいてもよいし、互いに異なる材料を含んでいてもよい。コーティング膜は、例えば分散剤を含む。コーティング膜は、例えば界面活性剤を含む。例えば、磁性流体では、粒子の表面を界面活性剤で覆うことにより、凝集を防止している。磁性流体と同様に、微小機械1の構成要素の少なくとも一部をコーティング膜で覆うことにより、磁石10が他の部材に吸着することを抑制できる。
コーティング膜の材料としては、吸着、凝集を抑制できる任意の材料を用いることができる。コーティング膜の材料として、分散剤、界面活性剤以外の材料が用いられてもよい。
磁石10の形状は任意である。磁石10の形状は、例えば、図1に示したような棒形状であってもよい。また、例えば、磁石10は円盤形状であってもよい。
微小機械1は第1の部屋51を複数個備えていてもよい。図4は、第1の部屋51を複数個備える微小機械1を示す図である。
複数の第1の部屋51のそれぞれの内部には、回転部材3、リンカー4、磁石10、コイル20および流体の分子2が入っている。磁石10同士が互いに引き寄せられない程度に、部屋同士の距離は開けられ得る。
ここで、“磁石10同士が互いに引き寄せられない”について説明する。磁石10同士の間には磁力により互いに引き合う力(引力)が大なり小なり発生するものの、ブラウン運動により磁石10を移動させる力の方がその引力よりも大きい場合は、磁石10同士は離れることができる。例えば、部屋の壁を隔てて二つの磁石10同士が最接近した状態で発生する引力よりも、ブラウン運動により磁石10を移動させる力の方が大きい場合は、磁石10同士は離れることができる。例えば、このような状態は、“磁石10同士が互いに引き寄せられない”に該当する。
複数の磁石10は、複数の第1の部屋51のうちの互いに異なる部屋に位置している。複数のコイル20は、複数の第1の部屋51のうちの互いに異なる部屋に位置している。複数の負荷30は、第2の部屋52に位置している。複数のコイル20のそれぞれは、配線41および42を介して、負荷30に電気的に接続されている。
例えば、複数の負荷30のうちの電流が流れた負荷30は熱を発生させる。ブラウン運動から第2の部屋52に熱を発生させることができる。例えば、第1の部屋51および第2の部屋52の温度が均一であったとしても、そこから第1の部屋51と第2の部屋52との間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell's Demonと呼ばれる現象を実現できる。
次に、熱電素子を備える微小機械1を説明する。図5は、熱電素子33を備える微小機械1を示す図である。
熱電素子33は、例えばゼーベック素子である。熱電素子33は、配線43および44を介して負荷31に接続されている。熱電素子33は、その少なくとも一部が第2の部屋52に位置するように配置される。熱電素子33には複数の負荷30が発生させた熱が供給される。熱電素子33に熱を供給することで、熱電素子33に電力を発生させることができる。熱が供給された熱電素子33には電圧が発生し、負荷31に電流が供給される。複数の負荷30が発生させた熱が熱電素子33に供給されることで、より大きい電力を発生させ得る。
なお、図1に示す微小機械1に熱電素子33が設けられてもよい。この形態においても、負荷30が発生させた熱が熱電素子33に供給される。熱電素子33に熱を供給することで、熱電素子33に電力を発生させることができる。
次に、1個の磁石10に対してコイル20を複数個備える微小機械1の例を説明する。図6は、1個の磁石10に対してコイル20を複数個備える微小機械1を示す図である。図6に示す例では、第1の部屋51に複数のコイル20が設けられている。第2の部屋52には、複数の負荷30が位置している。複数のコイル20のそれぞれは、配線41および42を介して、負荷30に電気的に接続されている。
磁石10と複数のコイル20との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化する。ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、複数のコイル20の少なくとも一つに電圧が発生する。1個の磁石10に対して複数のコイル20を配置することで、電磁誘導を発生させる機会を増やすことができる。これにより、ブラウン運動による発電の機会を増やすことができる。
電磁誘導により少なくとも一つのコイル20に流れる電流が、少なくとも一つの負荷30に供給される。これにより、ブラウン運動により発生した電力を負荷30で利用することができる。
上述の例では、磁石10は回転部材3に取り付けられていた。磁石10がリンカー4に直接取り付けられた場合でも磁石10が回転可能な場合は、回転部材3は省略されてもよい。図7は、磁石10がリンカー4に直接取り付けられた微小機械1を示している。磁石10を支持する方法は任意であり、ブラウン運動により磁石10が回転することが可能であればよい。
次に、エレクトレットを用いて発電する微小機械1を説明する。図8は、エレクトレット80を備えた微小機械1を示す図である。図2に示す微小機械1と比較して、図8に示す微小機械1では、磁石10およびコイル20の代わりに、エレクトレット80および電極81を備える。
図8に示す微小機械1では、第1の部屋51内において、回転部材3にエレクトレット80が取り付けられている。例えば、二個の回転部材3が互いに相対回転可能に取り付けられており、下方の回転部材3の一部としてエレクトレット80が設けられている。本実施形態では、回転部材3およびリンカー4は導電性を有する。例えば、回転部材3およびリンカー4が導電性材料を含んでいてもよい。例えば、回転部材3およびリンカー4の表面に導電性材料の膜が形成されていてもよい。
図8に示す微小機械1では、コイル20の代わりに電極81が設けられている。電極81およびエレクトレット80は、配線41および43を介して負荷30に電気的に接続されている。
図8に示す例では、エレクトレット80は、上側の回転部材3を回転軸として回転可能である。図9は、ブラウン運動により回転するエレクトレット80を示す図である。
エレクトレット80は、回転軸となる上側の回転部材3に対して非対称に設けられている。ブラウン運動によりエレクトレット80を有する下側の回転部材3が回転することで、エレクトレット80と電極81との間の距離を変化させることができる。エレクトレット80と電極81との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化する。ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じて電力を発生させることができる。この例では、エレクトレット80は、ブラウン運動により電極81に対して移動する。図8に示すエレクトレット80に対して、図9に示すエレクトレット80は、電極81とは反対の側を向いている。
ブラウン運動により、エレクトレット80と電極81との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、エレクトレット80は電極81に相対的に接近したり離れたりし、静電誘導により第1電極81と第2電極3、4との間に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。本実施形態では、マクスウェルの悪魔と呼ばれる現象を実現できる。本実施形態では、エレクトレット80のランダムな動きにより生じた静電誘導現象を利用して、電力を発生させる。分子の運動および各部品の運動を監視する必要はない。情報を記録する必要がなく、情報をリセットする必要もないため、エントロピーは増大しない。
第1電極81と第2電極3、4は、配線41および42を介して負荷30に電気的に接続されている。図20に示す例では、回転部材3およびリンカー4は導電性を有している。静電誘導により発生した電流が負荷30を流れる。ブラウン運動により発生した電力を負荷30で利用することができる。
なお、電極81の配置位置は任意であり、例えば、エレクトレット80の下方に配置されていてもよい。
また、エレクトレット80が固定され、電極81が回転してもよい。図10は、エレクトレット80と電極81とが入れ替わった微小機械1を示している。図8に示す微小機械1と比較して、図10に示す微小機械1では、エレクトレット80と電極81とが入れ替わっている。下側の回転部材3に電極81が設けられている。図10に示す例では、下側の回転部材3のうちの電極81以外の部分は絶縁体であり得る。
また、磁石10が固定され、コイル20がブラウン運動により回転してもよい。図11は、ブラウン運動によりコイル20が回転する微小機械1を示す図である。図11に示す例では、回転部材3にコイル20が設けられている。コイル20の両端部には電極23および24がスライド可能に接触している。電極23および24は、例えば図12に示すように、扇型形状を有する。ブラウン運動により、コイル20はランダムに回転する。磁石10とコイル20との相対的な位置関係の変化により、コイル20に電圧が発生する。発生した電圧は、電極23および24、配線41および42を介して負荷30に供給される。
コイル20は、電極23および24にスライド可能に接触する。電極23および24が扇型形状を有することにより、スライドするコイル20が電極23および24が接触する機会を増やすことができる。これにより、発生した電圧を効率良く負荷30に供給することができる。
また、コイル20がリンカー4に直接取り付けられた場合でもコイル20が回転可能な場合は、回転部材3は省略されてもよい。図13は、コイル20がリンカー4に直接取り付けられた微小機械1を示している。コイル20を支持する方法は任意であり、ブラウン運動によりコイル20が回転することが可能であればよい。
また、外部からコイル20に磁場が供給されてもよい。図14は外部から磁場が供給される微小機械1を示す図である。図14に示す例では、第1の部屋51の磁石10は省略されている。代わりに、外部から磁場Hが供給される。例えば、大型の永久磁石から微小機械1に磁場Hが供給される。磁場Hの供給源として任意の磁石を用いることができ、大きな磁場を微小機械1に供給することができる。例えば、ネオジム磁石などの任意の永久磁石から微小機械1に磁場Hを供給することができる。大きな磁場をコイル20に印加できることにより、電磁誘導の効率を高めることができる。
次に、グラフェンを備える微小機械1を説明する。図15は、本実施形態に係るグラフェンシート101を示す図である。図15に示す例では、二枚のグラフェンシートが重なっている。
Nature volume556, pages43-50 (05 April 2018)に掲載された論文“Unconventional superconductivity in magic−angle graphene superlattices”には、二枚のグラフェンが重なった状態における物性が記載されている。この論文には、二枚のグラフェンシートを重ね合うときの角度を変化させると、物性が変化することが記載されている。例えば、二枚のグラフェンシートを所定の角度ずらすことで、絶縁性を示すことが出記載されている。所定の角度は例えば1.1度であるがこれに限定されない。本実施形態では、絶縁性を示す角度で二枚のグラフェンシートを重ね合わせる。絶縁性のグラフェンシート101を正または負の電荷に帯電させる。
図16は、そのような電荷を帯電させた絶縁性のグラフェンシート101を備える微小機械1を示す図である。本実施形態では、帯電させた絶縁性のグラフェンシート101をエレクトレット80の代わりに用いて、静電発電を行う。
図16に示す例では、第1の部屋51内において、グラフェンシート101の両端は、台25に固定されている。電極23はグラフェンシート101の下方に配置され、電極24はグラフェンシート101の情報に配置されている。
PHYSICAL REVIEW LETTERS PRL 117, 126801 (2016)に掲載された論文“Anomalous Dynamical Behavior of Freestanding Graphene Membranes”には、グラフェンシートが周期的に揺らいでいることが記載されている。この論文の内容と同様に、本実施形態のグラフェンシート101は、周期的に上下に振動する。図16および図17に矢印117として示すように、グラフェンシート101は上下に振動する。図16に示す状態では、グラフェンシート101は電極24に接近し、静電発電により電極24に電荷が誘導される。図17に示す状態では、グラフェンシート101は電極23に接近し、静電発電により電極23に電荷が誘導される。このように、グラフェンシート101を用いて静電発電を行うことができる。
なお、上述した実施形態において、磁石10およびコイル20の両方が回転してもよい。また、エレクトレット80および電極81の両方が回転してもよい。また、配線41および42を長くし、コイル20と負荷30との間の距離を長くしてもよい。コイル20から出力された電流が負荷30に供給可能な範囲で、配線41および42を長くしてもよい。
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
本発明の実施形態に係る微小機械1は、磁石10と、コイル20とを備える。磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、コイル20に電圧が発生する。
ブラウン運動を利用して磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、磁石10はコイル20に相対的に接近したり離れたりし、電磁誘導によりコイル20に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、磁石10は、ブラウン運動によりコイル20に対して移動してもよい。ブラウン運動により磁石10がランダムに移動する過程で、磁石10はコイル20に接近したり離れたりし、電磁誘導によりコイル20に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、微小機械1は、コイル20に接続された負荷30をさらに備え、電磁誘導によりコイル20に流れる電流が負荷30に供給されてもよい。ブラウン運動により発生した電力を負荷30で利用することができる。
ある実施形態において、電流が供給された負荷30は、熱を発生させてもよい。ブラウン運動から特定のエリアに熱を発生させることができる。
ある実施形態において、磁石10およびコイル20は、第1エリア51に位置し、負荷30は、第1エリア51とは異なる第2エリア52に位置し、負荷30が熱を発生させることで、第2エリア52の温度は第1エリア51の温度よりも高くなってもよい。
ブラウン運動から第2エリア52に熱を発生させることができる。例えば、第1エリア51および第2エリア52の温度が均一であったとしても、そこから第1エリア51と第2エリア52との間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれる現象を実現できる。
ある実施形態において、第1エリア51と第2エリア52との間には隔壁60が設けられていてもよい。第1エリア51と第2エリア52との間の熱の移動を隔壁60が抑制することにより、第1エリア51と第2エリア52との間の温度差を大きくすることができる。すなわち、エントロピーをより大きく減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれる現象を実現できる。
ある実施形態において、微小機械1は、熱電素子33をさらに備え、熱電素子33には負荷30が発生させた熱が供給されてもよい。熱電素子33に熱を供給することで、熱電素子33に電力を発生させることができる。
ある実施形態において、微小機械1は、複数の磁石10と、複数のコイル20と、複数の負荷30と、複数の第1エリア51と、複数の第1エリア51とは異なる第2エリア52と、を備える。複数の磁石10は、複数の第1エリア51のうちの互いに異なる第1エリア51に位置し、複数のコイル20は、複数の第1エリア51のうちの互いに異なる第1エリア51に位置し、複数の負荷30は、第2エリア52に位置し、複数の負荷30のうちの電流が流れた負荷30は熱を発生させてもよい。
ブラウン運動から第2エリア52に熱を発生させることができる。例えば、第1エリア51および第2エリア52の温度が均一であったとしても、そこから第1エリア51と第2エリア52との間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれる現象を実現できる。
ある実施形態において、複数のコイル20を備え、磁石10と複数のコイル20との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、複数のコイル20の少なくとも一つに電圧が発生してもよい。
1個の磁石10に対して複数のコイル20を配置することで、磁石10とコイル20との相対運動を増やすことができる。これにより、ブラウン運動による発電の機会を増やすことができる。
ある実施形態において、微小機械1は、複数のコイル20に接続された複数の負荷30をさらに備え、電磁誘導により少なくとも一つのコイル20に流れる電流が、少なくとも一つのコイル20に接続された少なくとも一つの負荷30に供給されてもよい。ブラウン運動により発生した電力を負荷30で利用することができる。
ある実施形態において、磁石10および複数のコイル20は、第1エリア51に位置し、複数の負荷30は、第1エリア51とは異なる第2エリア52に位置し、複数の負荷30のうちの電流が流れた負荷30は熱を発生させてもよい。
ブラウン運動から第2エリア52に熱を発生させることができる。例えば、第1エリア51および第2エリア52の温度が均一であったとしても、そこから第1エリア51と第2エリア52との間で温度差を発生させることができる。すなわち、エントロピーを減少させることができる。これにより、物理学においてMaxwell’s demonと呼ばれる現象を実現できる。
ある実施形態において、微小機械1は、熱電素子33をさらに備え、熱電素子33には複数の負荷30が発生させた熱が供給されてもよい。熱電素子33に熱を供給することで、電力を発生させることができる。複数の負荷30が発生させた熱が熱電素子33に供給されることで、より大きい電力を発生させることができる。
ある実施形態において、磁石10とコイル20の少なくとも一方は、コーティング膜で被覆されていてもよい。磁石10がコイル20に吸着することを抑制できる。あるいは、コイル20が磁石10に吸着することを抑制できる。
ある実施形態において、磁石10とコイル20の少なくとも一方は、分散剤で被覆されていてもよい。磁石10がコイル20に吸着することを抑制できる。あるいは、コイル20が磁石10に吸着することを抑制できる。
ある実施形態において、磁石10とコイル20の少なくとも一方は、界面活性剤で被覆されていてもよい。磁石10がコイル20に吸着することを抑制できる。あるいは、コイル20が磁石10に吸着することを抑制できる。
ある実施形態において、微小機械1は、磁石10に設けられた回転軸3をさらに備え、磁石10は、ブラウン運動により回転してもよい。ブラウン運動により磁石10が回転することで、磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係を変化させることができる。回転は、1回転以上の回転、1回転未満の回転の両方の意味を含む。回転は、揺動も含む。例えば、ブラウン運動により磁石10が回転することで、磁石10のN極およびS極のうちのコイル20に対向する極性が変化する。コイル20に対向する磁石10の極性が変化することで、電磁誘導によりコイル20に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、微小機械1は、回転可能な回転部材3をさらに備え、磁石10は、回転部材3に設けられ、磁石10は、ブラウン運動により回転部材3とともに回転してもよい。
ブラウン運動により回転部材3とともに磁石10が回転することで、磁石10とコイル20との間の相対的な位置関係を変化させることができる。例えば、ブラウン運動により回転部材3とともに磁石10が回転することで、磁石10のN極およびS極のうちのコイル20に対向する極性が変化する。コイル20に対向する磁石10の極性が変化することで、電磁誘導によりコイル20に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
本発明の実施形態に係る微小機械1は、エレクトレット80と、第1電極81と、エレクトレット80に接続された第2電極3、4とを備える。エレクトレット80と第1電極81との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、ブラウン運動による相対的な位置関係の変化に応じて電力が発生する。
ブラウン運動を利用してエレクトレット80と第1電極81との間の相対的な位置関係を変化させる。ブラウン運動により、エレクトレット80と第1電極81との間の相対的な位置関係はランダムに変化する。位置関係がランダムに変化する過程で、エレクトレット80は第1電極81に相対的に接近したり離れたりし、静電誘導により発電することができる。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、エレクトレット80は、ブラウン運動により第1電極81に対して移動してもよい。ブラウン運動によりエレクトレット80がランダムに移動する過程で、エレクトレット80は第1電極81に接近したり離れたりし、静電誘導により第1電極81と第2電極3、4との間に電圧が発生する。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
ある実施形態において、微小機械1は、第1電極81および第2電極3、4に接続された負荷30をさらに備え、静電誘導により発生した電流が負荷30を流れてもよい。ブラウン運動により発生した電力を負荷30で利用することができる。
ある実施形態において、エレクトレット80は、回転軸3に対して非対称に設けられていてもよい。ブラウン運動によりエレクトレット80が回転することで、エレクトレット80と第1電極81との間の距離を変化させることができる。これにより、ブラウン運動から電力を発生させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述した各種実施形態を適宜組み合わせた形態も本発明に含まれる。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。
本発明は、例えば、熱エネルギーおよび電気エネルギーなどのエネルギーを発生させる技術分野において特に有用である。
1:微小機械(マイクロマシン)
2:流体の分子
3:回転部材(回転軸)
4:リンカー
10:磁石
17:矢印(回転、揺動)
20:コイル
23、24:電極端子
25:台
30、31:負荷(抵抗器)
33:熱電素子(ゼーベック素子、熱電変換素子)
41、42、43、44:配線
51、52:部屋(空間)
53、54:壁
60:隔壁(パーティション、仕切り、基板)
80:エレクトレット
81:第1電極
101:グラフェンシート
117:矢印(振動)
2:流体の分子
3:回転部材(回転軸)
4:リンカー
10:磁石
17:矢印(回転、揺動)
20:コイル
23、24:電極端子
25:台
30、31:負荷(抵抗器)
33:熱電素子(ゼーベック素子、熱電変換素子)
41、42、43、44:配線
51、52:部屋(空間)
53、54:壁
60:隔壁(パーティション、仕切り、基板)
80:エレクトレット
81:第1電極
101:グラフェンシート
117:矢印(振動)
Claims (21)
- 磁石と、
コイルと、
を備え、
前記磁石と前記コイルとの間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、
前記ブラウン運動による前記相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、前記コイルに電圧が発生する、微小機械。 - 前記磁石は、前記ブラウン運動により前記コイルに対して移動する、請求項1に記載の微小機械。
- 前記コイルに接続された負荷をさらに備え、
前記電磁誘導により前記コイルに流れる電流が前記負荷に供給される、請求項1または2に記載の微小機械。 - 前記電流が供給された前記負荷は、熱を発生させる、請求項3に記載の微小機械。
- 前記磁石および前記コイルは、第1エリアに位置し、
前記負荷は、第1エリアとは異なる第2エリアに位置し、
前記負荷が熱を発生させることで、前記第2エリアの温度は前記第1エリアの温度よりも高くなる、請求項4に記載の微小機械。 - 前記第1エリアと前記第2エリアとの間には壁が設けられている、請求項5に記載の微小機械。
- 熱電素子をさらに備え、
前記熱電素子には前記負荷が発生させた熱が供給される、請求項4から6のいずれかに記載の微小機械。 - 複数の前記磁石と、
複数の前記コイルと、
複数の前記負荷と、
複数の第1エリアと、
前記複数の第1エリアとは異なる第2エリアと、
を備え、
前記複数の磁石は、前記複数の第1エリアのうちの互いに異なる第1エリアに位置し、
前記複数のコイルは、前記複数の第1エリアのうちの互いに異なる第1エリアに位置し、
前記複数の負荷は、前記第2エリアに位置し、
前記複数の負荷のうちの電流が流れた前記負荷は熱を発生させる、請求項3または4に記載の微小機械。 - 複数の前記コイルを備え、
前記磁石と前記複数のコイルとの間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、
前記ブラウン運動による前記相対的な位置関係の変化に応じた電磁誘導により、前記複数のコイルの少なくとも一つに電圧が発生する、請求項1から6のいずれかに記載の微小機械。 - 前記複数のコイルに接続された複数の負荷をさらに備え、
前記電磁誘導により少なくとも一つの前記コイルに流れる電流が、前記少なくとも一つのコイルに接続された少なくとも一つの前記負荷に供給される、請求項9に記載の微小機械。 - 前記磁石および前記複数のコイルは、第1エリアに位置し、
前記複数の負荷は、前記第1エリアとは異なる第2エリアに位置し、
前記複数の負荷のうちの電流が流れた前記負荷は熱を発生させる、請求項10に記載の微小機械。 - 熱電素子をさらに備え、
前記熱電素子には複数の前記負荷が発生させた熱が供給される、請求項8、10および11のいずれかに記載の微小機械。 - 前記磁石と前記コイルの少なくとも一方は、コーティング膜で被覆されている、請求項1から12のいずれかに記載の微小機械。
- 前記磁石と前記コイルの少なくとも一方は、分散剤で被覆されている、請求項1から13のいずれかに記載の微小機械。
- 前記磁石と前記コイルの少なくとも一方は、界面活性剤で被覆されている、請求項1から14のいずれかに記載の微小機械。
- 前記磁石に設けられた回転軸をさらに備え、
前記磁石は、ブラウン運動により回転する、請求項1から15のいずれかに記載の微小機械。 - 回転可能な回転部材をさらに備え、
前記磁石は、前記回転部材に設けられ、
前記磁石は、ブラウン運動により前記回転部材とともに回転する、請求項1から15のいずれかに記載の微小機械。 - エレクトレットと、
第1電極と、
前記エレクトレットに接続された第2電極と、
を備え、
前記エレクトレットと前記第1電極との間の相対的な位置関係はブラウン運動により変化し、
前記ブラウン運動による前記相対的な位置関係の変化に応じて電力が発生する、微小機械。 - 前記エレクトレットは、前記ブラウン運動により前記第1電極に対して移動する、請求項18に記載の微小機械。
- 前記第1電極および前記第2電極に接続された負荷をさらに備え、
静電誘導により発生した電流が前記負荷を流れる、請求項18または19に記載の微小機械。 - 前記エレクトレットは、回転軸に対して非対称に設けられている、請求項18から20のいずれかに記載の微小機械。
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