JP2021043043A - 界面活性剤の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】界面活性剤を評価する方法を提供する。【解決手段】第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤の評価方法は、界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する測定工程と、測定工程における測定結果を用いて、界面張力γを、第1の項と、第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、近似式算出工程と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、界面活性剤の評価方法に関する。
界面活性剤(乳化剤)が用いられているエマルション(乳化物)の特性を評価するための方法が知られている。例えば特許文献1には、乳化物を加熱し、遠心して水相及び油相に分離した上で、分離された油相に含まれるタンパク質の濃度を測定することによって、測定されたタンパク質の濃度に基づいて乳化物の乳化安定性を評価することが開示されている。
特許第4865268号
しかしながら特許文献1では、乳化物の乳化安定性を評価するまでに必要な作業が煩雑であり、より簡便にエマルションの作成に用いられる界面活性剤の特性を評価することができる評価方法が求められていた。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、界面活性剤の評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤の評価方法であって、前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する測定工程と、前記測定工程における測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、近似式算出工程と、を備える、界面活性剤の評価方法である。
Figure 2021043043
(式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。また、式(1)及び(2)において、eは自然対数の底を、tは経過時間を表す。)
本発明による評価方法において、前記近似式算出工程は、界面張力γを以下の式(3)で表す近似式を算出する工程を含み、前記近似式算出工程において得られる式(3)のA、a、B及びbの値の少なくとも1以上に基づいて、界面活性剤の特性を評価する、評価工程をさらに備えてもよい。
Figure 2021043043
本発明による評価方法において、前記評価工程は、第1基準時間tが以下の式(4)を満たす場合に、前記第1基準時間tの値以上の値を有する代表値計算始点時間t、及び前記代表値計算始点時間tの値より大きい値を有する代表値計算終点時間tを用いて、以下の式(5)に基づいて、界面張力γの代表値γを算出する、代表値算出工程を含んでもよい。
Figure 2021043043
(式(4)においてmは定数である。)
本発明による評価方法において、前記代表値算出工程において、前記代表値計算始点時間tを第1基準時間tとしてもよい。
本発明による評価方法において、前記代表値算出工程において、前記代表値計算終点時間tの値を、以下の式(6)で表される第2基準時間tの値以下としてもよい。
Figure 2021043043
(式(6)においてnは定数である。)
本発明による評価方法において、前記代表値算出工程において、前記代表値計算終点時間tを第2基準時間tとしてもよい。
本発明による評価方法において、前記式(6)の定数nを0.03としてもよい。
本発明による評価方法において、前記式(4)の定数mを0.1としてもよい。
本発明による評価方法において、前記界面活性剤は、5×103以上の分子量を有してもよい。
本発明は、第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を評価する装置であって、前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する測定機構と、前記測定機構の測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、近似式算出機構と、を備える、装置である。
Figure 2021043043
(式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
本発明は、第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を評価するためにコンピュータを近似式算出機構として機能させるためのプログラムであって、前記近似式算出機構は、前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γの、異なる経過時間tごとの測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、プログラムである。
Figure 2021043043
(式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
本発明は、第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を評価するためにコンピュータを近似式算出機構として機能させるためのプログラムを記録した不揮発性メモリであって、前記近似式算出機構は、前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γの、異なる経過時間tごとの測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、不揮発性メモリである。
Figure 2021043043
(式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
本発明によれば、界面活性剤の評価方法を提供することができる。
一実施形態に係る装置を示すブロック図である。 ペンダントドロップ法によって界面張力γを測定する方法を示す図である。 第1材料の第2材料に対する界面張力γの測定結果の一例を示す図である。 近似式の算出結果の一例を示す図である。 界面張力γの計算値の一例とともに、第1の項の値、第2の項の値、及び第1の項を第2の項で割った値の一例を示す図である。 実施例1の界面活性剤C4を用いた場合における、界面張力γの実測値と計算値とを示す図である。 実施例1の界面活性剤C4を用いた場合における、界面張力γの計算値の一例とともに、第1の項の値、第2の項の値、及び第1の項を第2の項で割った値を示す図である。 実施例2の界面活性剤D2を用いた場合における、界面張力γの実測値と計算値とを示す図である。 実施例1の界面活性剤C1〜C6を用いた場合における、界面張力γの代表値γ及び油滴径d50を示す図である。 実施例1における界面張力γの代表値γと油滴径d50との関係を示す図である。 実施例2における界面張力γの代表値γと油滴径d50との関係を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る、第1材料と第2材料とを分散させる界面活性剤の評価方法に用いられる装置について説明する。図1は、界面活性剤を評価する方法に用いられる装置10を示すブロック図である。装置10は、界面張力測定機構11、近似式算出機構121及び評価機構122を備える。図1に示す例において、装置10は、界面張力測定機構11と、近似式算出機構121及び評価機構122として機能するコンピュータ12とを備える。この場合、コンピュータを近似式算出機構121及び評価機構122として機能させるためのプログラムを、コンピュータ12に実行させることによって、コンピュータ12を近似式算出機構121及び評価機構122として機能させることができる。このとき、プログラムは、コンピュータ12にあらかじめインストールされていてもよい。若しくは、記憶媒体、例えばプログラムを記録した不揮発性メモリを用いてプログラムがコンピュータ12にインストールされてもよい。若しくは、ネットワークを介して配布されたプログラムがコンピュータ12にインストールされてもよい。
界面張力測定機構11は、評価の対象とする界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する。図1の(t,γ)は、異なる経過時間tごとに界面張力γが測定されていることを表している。界面張力測定機構11は、例えば第1材料の第2材料に対する界面張力γを測定可能な界面張力計である。近似式算出機構121は、界面張力測定機構11の測定結果を用いて、界面張力γを表す近似式を算出する。図1に示す例において、評価機構122は、代表値算出機構122aを有する。代表値算出機構122aは、近似式算出機構121によって算出された近似式を用いて、界面張力γの代表値γを算出する。代表値算出機構122aが算出した代表値γを、界面活性剤の特性を表す指標として用いることができる。
以下、界面活性剤の評価方法の具体例について説明する。本実施の形態に係る界面活性剤の評価方法は、界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する測定工程と、測定工程における測定結果を用いて、界面張力γを表す近似式を算出する、近似式算出工程と、を備える。また、本実施の形態に係る界面活性剤の評価方法は、上述の工程に加えて、評価の対象とする界面活性剤と、第1材料と、第2材料とを準備する準備工程と、近似式算出工程において算出された近似式を用いて界面活性剤の特性を評価する評価工程と、をさらに備える。本実施の形態に係る評価方法は、近似式算出工程において算出された近似式を用いて界面張力γの代表値γを算出する代表値算出工程を含む。
(準備工程)
まず、評価の対象とする界面活性剤と、第2材料と、界面活性剤によって第2材料に分散される第1材料とを準備する、準備工程を行う。
評価の対象とする界面活性剤は、特に限定されず、低分子系の界面活性剤、高分子系の界面活性剤のいずれも、評価することができる。高分子系の界面活性剤を評価の対象とする場合、界面活性剤は、例えば、加工デンプン、タンパク質、タンパク質複合体である。
第1材料及び第2材料が流体であり、第1材料及び第2材料のうち少なくともいずれか1つが液体であり、且つ、評価の対象とする界面活性剤によって第1材料が第2材料に分散されるのであれば、第1材料及び第2材料は特に限定されない。例えば、第2材料が油である場合、第1材料は、界面活性剤によって第2材料に分散される水であり、また例えば第2材料が水である場合、第1材料は油であり、またさらに例えば、第2材料が空気である場合、第1材料は何らかの溶質を含有する水である。第1材料または第2材料が液体である場合、その粘度は、例えば100Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下である。第1材料または第2材料の粘度が上記のとおりである場合、第2材料に対する第1材料の界面張力に、第1材料または第2材料の粘度が及ぼす影響を、低減することができる。これによって、後述する測定工程において第1材料の第2材料に対する界面張力を測定する際に、より界面活性剤の特性を反映した測定結果を得ることができる。
(測定工程)
準備工程の後、装置10の界面張力測定機構11を用いて、界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを異なる経過時間tごとに測定する、測定工程を行う。本実施の形態においては、第1材料と界面活性剤とを混合した混合液を作成し、第2材料に対する界面活性剤及び第1材料を含む混合液の界面張力γを測定する。
界面張力γを測定する方法は、第2材料に対する第1材料の界面張力γを測定可能であれば、特に限定されない。界面張力γを測定する方法は、第1材料と第2材料との界面の作成方法と、作成した界面の解析方法に分けられる。界面の作成方法としては、例えば、ペンダントドロップ法、ライジングドロップ法、プレート法、またはリング法が挙げられる。また、界面の解析方法としては、例えば、ds/de法、ヤングーラプラス法が挙げられる。本実施の形態においては、一例として、界面張力γの測定において、ペンダントドロップ法を用いて界面を作成し、ヤングーラプラス法にて解析する例について説明する。図2は、ペンダントドロップ法を用いて第2材料22に対する第1材料を含む混合液21の界面張力γを測定する様子を示す図である。図3は、測定工程において、異なる経過時間tごとに界面張力γを測定した結果の一例を示す図である。なお、本実施の形態において、経過時間tとは、特に断りがない限り、後述するように第2材料22の中に混合液21の液滴を作成した時点を起点とした経過時間を意味する。本実施の形態においては、まず、第2材料22の中に、混合液21の液滴を作成可能なシリンジ111を配置する。次に、図2に示すように、シリンジ111を用いて、第2材料22の中に混合液21の液滴を作成する。そして、作成した液滴の形状を画像解析することによって、界面張力γを測定することができる。また、図2に示すように第2材料22の中に混合液21の液滴を作成した場合、液滴が作成されてから経過した時間による界面張力γの変化に応じて、混合液21の液滴の形状は変化する。したがって、異なる経過時間tごとに液滴の形状を画像解析することによって、図3に示すように、異なる経過時間tごとに、界面張力γを測定することができる。界面張力γを測定する際の混合液21及び第2材料22の温度は、空調の効いた部屋の室温程度であればよく、例えば23℃である。以下、測定工程において測定された界面張力γの値を、界面張力γの実測値とも称する。
(近似式算出工程)
測定工程の後、装置10の近似式算出機構121を用いて、界面張力γを表す近似式を算出する、近似式算出工程を行う。本実施の形態に係る発明の発明者等の研究の結果、界面活性剤を用いた場合における界面張力γは、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を少なくとも含む複数の項の和で表す式によって適切に近似されることが見出されている。したがって、近似式算出工程においては、測定工程における測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する。
Figure 2021043043
ここで、式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数である。また、本実施の形態において、A、a及びBは、いずれも0以上の実数であり、bは実数である。界面張力γを、上記の式(1)の項と式(2)の項とを含む複数の項の和で表される式に近似する理由について説明する。図2に示すように第2材料22の中に混合液21の液滴を作成した場合、界面張力γは、液滴が作成されてから経過した時間に応じて、低下していく。界面張力γは、図3に示すように、初期に急激に低下し、後期にゆるやかに低下する。初期の急激な低下は、主に、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動に応じて生じると考えることができる。また、後期のゆるやかな低下は、主に、界面における、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じて生じると考えることができる。分子の吸着運動に応じて生じる低下、及び界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じて生じる低下のいずれも指数関数的に生じると仮定することによって、界面張力γを、上記の式(1)の項と式(2)の項とを含む複数の項の和で表すことができる。本実施の形態においては、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動に応じた界面張力γの変化を第1の項に対応させ、界面における、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じた界面張力γの変化を第2の項に対応させることを考える。この場合、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動に応じた、界面張力γの初期の急激な低下を第1の項で表し、界面における、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じた後期のゆるやかな低下を第2の項で表すことを考えると、aはb以上である。
本実施の形態では、近似式算出工程において、以下の式(3)に示す近似式を算出する。以下の式(3)に示す近似式は、界面張力γを、上記の式(1)と式(2)との和で表す。以下、近似式算出工程において算出される近似式に基づく界面張力γの値を、界面張力γの計算値とも称する。
Figure 2021043043
近似式の算出は、例えば、界面張力γの測定結果を、最小二乗法を用いて式(3)に近似し、式(3)のA、a、B及びbの値を決定することによって行う。最小二乗法を用いた界面張力γの測定結果の式(3)への近似は、例えば以下のように行う。まず、測定工程において界面張力γを測定した経過時間tごとに、測定工程によって得た実測値と、式(3)によって得られる計算値との差を二乗した値を考える。次に、測定工程において界面張力γを測定した経過時間tごとに求められる上記の値の総和を考える。この総和が最小となるようなA、a、B及びbの値を、ソルバー(例えばMicrosoft(登録商標)Excel(登録商標)2010のアドイン機能)などのプログラムを用いて決定する。図4は、図3に示す界面張力γの実測値の例に、近似式算出工程において得られた近似式の例を重ねて表示した図である。
近似式算出工程において算出される近似式の一例について、図5を参照してさらに詳細に説明する。図5は、近似式算出工程において算出された近似式に基づく計算値の例を、符号Iが付された実線で示すとともに、本実施の形態における第1の項の値、第2の項の値、及び第1の項を第2の項で割った値の一例を示す図である。図5において、符号IIが付された破線は、式(1)で表される第1の項の値の、経過時間tごとの大きさを示す線である。また、符号IIIが付された一点鎖線は、式(2)で表される第2の項の値の、経過時間tごとの大きさを示す線である。また、符号IVが付された二点鎖線は、第1の項を第2の項で割った値の、経過時間tごとの大きさを示す線である。図5の縦軸は、符号Iに関しては界面張力γの計算値の大きさを示し、符号II又は符号IIIに関しては界面張力γの計算値の大きさのうち第1の項又は第2の項が占める大きさを示し、符号IVに関しては第1の項を第2の項で割った値の大きさを示す。図5に示す例では、算出された近似式においてaがbよりも大きい例を示している。このため、図5に示すように、第1の項の値は第2の項の値よりも初期に急激に低下する。図5に示す例では、算出された近似式においてAがBよりも小さい例を示している。このため、経過時間tが0のとき、第1の項の値は第2の項の値よりも小さい。図示はしないが、AはBよりも大きくてもよい。
(評価工程)
近似式算出工程の後に、近似式算出工程において得られる式(3)のA、a、B及びbの値の少なくとも1以上に基づいて、評価機構122を用いて界面活性剤の特性を評価する、評価工程を行う。本実施の形態において、評価工程は、評価機構122の代表値算出機構122aを用いて、近似式算出工程において得られる式(3)のA、a、B及びbの値に基づいて界面張力γの代表値γを算出する、代表値算出工程を含む。代表値算出工程においては、第1基準時間tが以下の式(4)を満たす場合に、第1基準時間tの値以上の値を有する代表値計算始点時間t、及び代表値計算始点時間tの値より大きい値を有する代表値計算終点時間tを用いて、以下の式(5)に基づいて、界面張力γの代表値γを算出する。換言すれば、代表値計算始点時間tから代表値計算終点時間tまでの範囲における界面張力γの平均値を、代表値γとして算出する。
Figure 2021043043
ここで、式(4)においてmは定数である。式(4)において規定されているとおり、第1基準時間tは、A・e−atの値がB・e−btの値のm倍となる経過時間である。図5に示すように、第1基準時間tよりも前では、第1の項の値は第2の項の値のm倍よりも大きくなっている。そして、第1基準時間tよりも後では、第1の項の値は第2の項の値のm倍よりも小さくなっている。式(4)の定数mの値は、例えば0.1である。第1基準時間tよりも後の、第1の項の値が第2の項の値の0.1倍よりも小さくなっている範囲は、界面張力γの変化に対する第1の項の影響が、特に小さくなっている範囲であるといえる。特にmを0.1とすることの効果について、mを0.1よりも小さくする場合との比較によって説明する。代表値算出工程においては、第1基準時間tの値以上の値を有する代表値計算始点時間tの経過後の範囲における界面張力γの計算値の平均値を、代表値γとして算出する。また、界面張力γの計算値は、界面張力γの実測値を測定した測定時間の間において、特に精度よく界面張力γの実測値に対応すると考えられる。このため、界面張力γの代表値γを算出するに際しては、液滴を作成して界面張力γの測定を終了するまでの、界面張力γの実測値の測定時間は、第1基準時間t以上の長さを有することが好ましい。ここで、mを0.1とする場合には、mを0.1よりも小さくする場合と比較して、第1基準時間tは短くなると考えられる。このため、mを0.1とする場合には、界面張力γの測定時間を短く抑える場合においても、界面張力γの測定時間の長さを、第1基準時間t以上の長さとすることが容易となる。
式(5)に基づいて界面張力γの代表値γを算出することによって、界面張力γの変化に対する第1の項の影響が大きい範囲を除いた範囲の界面張力γの計算値から、代表値γを算出することができる。これによって、界面張力γが安定した範囲の界面張力γの計算値を用いて、代表値γを算出することができる。このため、異なる複数の界面活性剤について、界面活性剤を用いた場合における界面張力γの代表値γを算出するに際し、代表値γを算出する条件の差を小さくすることができる。
特に、上述のとおりに、第1の項が、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動に応じた界面張力γの変化に対応し、第2の項が、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じた界面張力γの変化に対応すると解釈した場合における、第1基準時間tを定める意義について説明する。この場合、第1基準時間tよりも後の範囲は、界面張力γが、特に分子自身の構造の変化に依存して変化している範囲に相当するといえる。したがって、第1基準時間tの値以上の値を有する代表値計算始点時間t、及び代表値計算始点時間tの値より大きい値を有する代表値計算終点時間tを用いて、式(5)に基づいて界面張力γの代表値γを算出することによって、界面張力γが、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に主に依存して変化している範囲の界面張力γの計算値から、代表値γを算出することができる。このため、異なる複数の界面活性剤について、界面活性剤を用いた場合における界面張力γの代表値γを算出するに際し、界面張力γが界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に依存して変化している範囲における界面張力γの測定値を用いるように、代表値γを算出する条件を揃えることができる。
また、本実施の形態において、代表値計算終点時間tの値は、以下の式(6)で表される第2基準時間tの値以下である。
Figure 2021043043
ここで、式(6)においてnは定数である。式(6)において規定されているとおり、第2基準時間tは、mN/mの単位で表した界面張力γを、秒(s)の単位で表した経過時間tの関数として表したグラフの傾きの絶対値が、n[mN/(m・s)]となる経過時間である。図5に示すように、界面張力γを経過時間tの関数として表したグラフの傾きの絶対値は、経過時間tが長くなるほど小さくなる。したがって、グラフの傾きの絶対値は、第2基準時間tよりも前においてはn[mN/(m・s)]よりも大きく、第2基準時間tよりも後においてはn[mN/(m・s)]よりも小さい。式(6)の定数nの値は、例えば0.03である。上述のように第2基準時間tを定め、代表値計算終点時間tの値を第2基準時間tの値以下として、式(5)に基づいて界面張力γの代表値γを算出することによって、異なる複数の界面活性剤について、界面活性剤を用いた場合における界面張力γの代表値γを算出するに際し、代表値γを算出する条件の差を小さくすることができる。特に、nを0.03とすることの効果について、nを0.03よりも小さくする場合との比較によって説明する。代表値算出工程においては、第2基準時間tの値以下の値を有する代表値計算終点時間tの経過前の範囲における界面張力γの計算値の平均値を、代表値γとして算出する。また、界面張力γの計算値は、界面張力γの実測値を測定した測定時間の間において、特に精度よく界面張力γの実測値に対応すると考えられる。このため、界面張力γの代表値γを算出するに際しては、液滴を作成して界面張力γの測定を終了するまでの、界面張力γの実測値の測定時間は、第2基準時間t以上の長さを有することが好ましい。ここで、nを0.03とする場合には、nを0.03よりも小さくする場合と比較して、第2基準時間tは短くなると考えられる。このため、nを0.03とする場合には、界面張力γの測定時間を短く抑える場合においても、界面張力γの測定時間の長さを、第2基準時間t以上の長さとすることが容易となる。
代表値算出工程においては、代表値計算始点時間tを第1基準時間tとしてもよい。また、代表値算出工程においては、代表値計算終点時間tを第2基準時間tとしてもよい。
特に、上述のとおりに、第1の項が、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動に応じた界面張力γの変化に対応し、第2の項が、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じた界面張力γの変化に対応すると解釈した場合における、第2基準時間teを定める意義について説明する。この場合、第2基準時間teよりも後の範囲は、界面張力γが、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動によっても、界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化によっても、ほとんど変化していない範囲に相当するといえる。上述のように第2基準時間tを定め、代表値計算終点時間tの値を第2基準時間tの値以下として、式(5)に基づいて界面張力γの代表値γを算出することによって、界面張力γが、特に界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に依存して変化している範囲の界面張力γの計算値から、代表値γを算出することができる。このため、異なる複数の界面活性剤について、界面活性剤を用いた場合における界面張力γの代表値γを算出するに際し、代表値γを算出する条件を揃えることができる。
なお、界面活性剤として低分子系の界面活性剤を用いた場合には、界面張力γの低下が初期に急激となり、後期にゆるやかとなる傾向が顕著になるのに対し、高分子系の界面活性剤を用いた場合には、界面張力γの低下が、低分子系の界面活性剤を用いた場合と比べれば、全体的にゆるやかに生じる。これは、高分子系の界面活性剤を用いた場合のほうが、低分子系の界面活性剤を用いた場合よりも、界面活性剤に含まれる分子の吸着運動が沈静化するのに、より長い時間を要するために、界面張力γの初期の低下が、よりゆるやかに生じるためであると考えられる。高分子系の界面活性剤を用いた場合のように、界面張力γの低下が全体的にゆるやかに生じる場合、異なる界面活性剤について界面張力γの値を比較する際に、経過時間tのどの時点における界面張力γを比較すればよいのかが、特にわかりにくくなってしまう。本実施の形態に係る評価方法によれば、上述のように界面張力γの低下が全体的にゆるやかに生じる場合であっても、異なる界面活性剤に対して、同じ基準にて第1基準時間t及び第2基準時間tを定め、界面張力γの代表値γを算出することができる。したがって、本実施の形態に係る評価方法は、特に高分子系の界面活性剤を評価する場合に有用である。本実施の形態に係る評価方法が特に有用である高分子系の界面活性剤の分子量は、例えば5×103以上である。ここで、界面活性剤が5×103以上の分子量を有するとは、例えば、界面活性剤を電気泳動にかけた場合に、確認されるバンドの分子量が5×103以上であることを意味する。
代表値γの値を、第1材料を第2材料に分散させるのに用いた界面活性剤の特性を示す指標とすることができる。例えば、代表値γの値が大きければ、界面活性剤の分散作用は弱く、代表値γの値が小さければ、界面活性剤の分散作用は強いと考えることができる。
なお、評価工程においては、式(3)で表される近似式の算出に際して得られるA、a、B及びbの値、その他算出された近似式に基づいて得られる界面張力γの代表値γ以外の情報を、界面張力γの代表値γとともに、又は界面張力γの代表値γに代えて、界面活性剤の特性を評価する指標として用いてもよい。
本実施の形態に係る界面活性剤の評価方法によってもたらされる作用効果について、比較例と比較することによって説明する。まず、界面活性剤の評価方法の比較例として、界面活性剤を用いる予定の分散質及び分散媒に界面活性剤を用いてエマルションを作成し、作成したエマルションを放置して、一定の期間内に分散質と分散媒との分離が生ずるか否かを観察する方法について考える。
比較例の評価方法の場合、界面活性剤を評価するため、分散質と分散媒との分離が生ずるか否かを判断しており、そのため、エマルションを作成した上で長期間放置するなど、要する時間が長くなってしまう。
これに対して、本実施の形態に係る評価方法では、第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを測定し、測定結果から、界面張力γを表す近似式、及び界面張力γの代表値γを算出し、これに基づいて界面活性剤を評価する。このため、エマルションを作成した上で長期間放置して観察する必要はない。したがって、短時間で界面活性剤を評価することができる。
また、比較例の評価方法においては、界面活性剤を、実際に界面活性剤を用いる予定の分散質及び分散媒に用いて、分散質と分散媒との分離が生ずるか否かを基準に界面活性剤を評価する。この場合、分散質と分散媒との分離が生ずるか否かの結果は、界面活性剤の特性のほか、分散質及び分散媒の材料によっても変わり得る。このため、同じ界面活性剤を異なる分散質及び分散媒に用いる場合には、異なる分散質及び分散媒ごとに評価を行う必要が生じる。
これに対して、本実施の形態に係る評価方法では、第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを測定し、測定結果から、界面張力γを表す近似式、及び界面張力γの代表値γを算出し、代表値γが界面活性剤の特性を表すと考えて、代表値γに基づいて界面活性剤を評価する。このため、分散質及び分散媒との関係に依存しない評価基準にて、界面活性剤の特性を評価することができる。したがって、界面活性剤の評価を、異なる複数の分散質及び分散媒ごとに行う必要がない。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、評価の対象とする界面活性剤と、第1材料と、第2材料とを準備した。界面活性剤として10%加塩卵黄(10質量%の食塩が加えられている卵黄)と10%加塩卵白(10質量%の食塩が加えられている卵白)との混合物、第1材料として10%食塩水(10質量%の食塩が加えられている水)、第2材料として大豆油を準備した。界面活性剤としては、具体的には、10%加塩卵黄と10%加塩卵白との混合物全体に対する10%加塩卵白の含量、さらに具体的には混合物全体に対する10%加塩卵白の質量比を変えた6つの混合物について、それぞれ同じ温度条件にて加熱殺菌したものを準備した。以下、上記の6つの界面活性剤を「界面活性剤C1〜C6」とも称する。実施例1の界面活性剤は、卵黄を含むために、高分子、例えば5×103以上の分子量を有する分子を、含有していると考えられる。
次に、界面活性剤C1〜C6のそれぞれについて、界面活性剤を用いた場合における第1材料の第2材料に対する界面張力γを測定した。具体的には、第1材料として準備した10%食塩水と、界面活性剤として準備した10%加塩卵黄と10%加塩卵白との混合物を、10%食塩水と混合物との質量比が99.9:0.1となるように混合した混合液を作成し、第2材料である大豆油の、混合液に対する界面張力γを測定した。界面張力γの測定は、23℃に調整された室内にて、10%食塩水と混合物との混合液及び大豆油の温度も室温である23℃となっている状態で行った。界面張力γの測定においては、界面張力測定機構11として、ペンダントドロップ式表面・界面張力計(KRUSS社製、製品名「DSA−25S」)を用いて、図2に示すように第1材料と界面活性剤の混合液21の液滴を作成して、界面張力γの測定を開始してから180秒間、0.5秒間隔での測定を行った。界面張力γの測定条件の詳細は、以下のとおりである。
シリンジの径(界面張力γの測定開始時における、図2に示す寸法W1):1.059mm
シリンジ111によって生成する液滴のサイズ(界面張力γの測定開始時における、図2に示す寸法W2):17.5 μL
液滴の生成速さ(第1材料と界面活性剤の混合液21のシリンジからの吐出流量):20 μL/s
図6に、界面活性剤C4を用いた場合における、界面張力γの経過時間tごとの測定結果(界面張力γの実測値)を、菱形白抜きのプロットで示す。
次に、界面活性剤C1〜C6のそれぞれについて、界面張力γの測定結果を用いて、界面張力γを以下の式(3)で表す近似式を算出した。近似式の算出は、Microsoft(登録商標)Excel(登録商標)のソルバー機能を用いて、最小二乗法によってA、a、B及びbの値を決定することによって行った。A、a、B及びbの値を決定する操作は、具体的には以下のとおりである。まず、A、a、B及びbの初期値をいずれも1として、ソルバー機能を用いてA、a、B及びbの値を算出した。次に、算出されたA、a、B及びbの値を初期値として、ソルバー機能を用いてA、a、B及びbの値を算出する操作を、4回繰り返した。近似式(3)のA、a、B及びbの値を、以上の操作によって最終的に算出された値に決定した。図6に、界面活性剤C4を用いた場合における、算出した近似式から得られる界面張力γの計算値を、界面張力γの実測値と同じ間隔にて、円形白抜きのプロットで示す。また、図7に、界面活性剤C4を用いた場合における、算出した近似式から得られる界面張力γの計算値を円形白抜きのプロットで、式(3)の右辺のうち、以下の式(1)で表される第1の項の値を菱形白抜きのプロットで、以下の式(2)で表される第2の項の値を正方形白抜きのプロットで、第1の項を第2の項で割った値を三角形白抜きのプロットで、それぞれ界面張力γの実測値と同じ間隔にて示す。
Figure 2021043043
次に、界面活性剤C1〜C6のそれぞれについて、算出した近似式を用いて、以下の式(5)に基づいて、界面張力γの代表値γを算出した。ここで、式(5)の代表値計算始点時間tは、以下の式(4)で表される第1基準時間tとした。また、式(5)の代表値計算終点時間tは、以下の式(6)で表される第2基準時間tとした。また、式(4)の定数mは0.1とした。また、式(6)の定数nは0.03とした。
Figure 2021043043
(実施例2)
評価の対象とする界面活性剤として、混合物全体に対する卵白の含量を、混合物全体に対する卵白の質量比において一定である5つの混合物であって、それぞれ異なる温度条件にて加熱殺菌した混合物を準備した以外は、実施例1と同様の方法で、界面活性剤の評価を行った。以下、上記の5つの界面活性剤を「界面活性剤D1〜D5」とも称する。図8に、界面活性剤D2を用いた場合における、界面張力γの経過時間tごとの測定結果(界面張力γの実測値)を、菱形白抜きのプロットで示す。また、界面活性剤D2を用いた場合における、算出した近似式から得られる界面張力γの計算値を、界面張力γの実測値と同じ間隔にて、円形白抜きのプロットで示す。
(実施例1,2における近似式の妥当性の評価)
界面張力γを、上述の式(3)で表される式に近似することの妥当性について検討するため、実施例1において界面活性剤C4を用いた場合、及び実施例2において界面活性剤D2を用いた場合における、算出された近似式の決定係数R2を、それぞれ算出した。この結果、実施例1において界面活性剤C4を用いた場合における決定係数R2が0.94以上、実施例2において界面活性剤D2を用いた場合における決定係数R2が0.97以上となった。このことから、界面活性剤を用いた場合における界面張力γの実測値は、式(3)から求められる計算値によく対応することがわかった。
(実施例1,2における界面活性剤の特性を表す指標としての界面張力の代表値の評価)
界面張力γの代表値γが、界面活性剤の特性を表す指標として有用か否かを検討するために、実施例1において界面活性剤C1〜C6を用いた場合における界面活性剤γの代表値γと、実際に第2材料である大豆油を分散質、第1材料である10%食塩水を分散媒として、界面活性剤C1〜C6を用いてエマルションを作成した場合における、大豆油の油滴径との対比を行った。エマルションにおける大豆油の油滴径は、以下の方法によって求めた。まず、大豆油と、10%食塩水と、界面活性剤とを、質量比において7:1.5:1.5の比にて混合し、エマルションを作成した。次に、作成したエマルションについて、粒度分布計(マイクロトラック・ベル社製、製品名「MT3000II」)を用いて、エマルションに単色光を照射して散乱光の強度を読み取り、エマルションにおける大豆油の粒度分布に換算し、大豆油の油滴径d50を求めた。
図9に、界面活性剤C1〜C6を用いた場合における界面張力γの代表値γを菱形白抜きのプロットで示し、界面活性剤C1〜C6を用いた場合におけるエマルションの油滴径d50の大きさを円形白抜きのプロットで示す。図9において、横軸は、界面活性剤C1〜C6における卵白の含量、具体的には混合物全体に対する卵白の質量比の、大小を表す。
図9を参照すると、界面活性剤を用いたときの代表値γが大きい場合には界面活性剤を用いたときの油滴径d50も大きくなり、代表値γが小さい場合には油滴径d50も小さくなった。このことから、実際にエマルションを作成して油滴径を測定しなくても、界面活性剤を用いたときの代表値γの大小を比較することによって、界面活性剤を用いたときの油滴径の大小を予測し得ることがわかった。
代表値γと油滴径との対応の確認のために、図10として、横軸に、界面活性剤C1〜C6を用いたときの代表値γの大小、縦軸に、界面活性剤C1〜C6を用いたときの油滴径d50の大小を示すグラフを示す。図10における一つのプロットは、それぞれ界面活性剤C1〜C6に対応する。また、図10に示す代表値γと油滴径d50との関係を、最小二乗法を用いて一次関数に回帰する、線形回帰分析を行った。図10に、界面活性剤C1〜C6を用いたときの代表値γと油滴径d50との関係に関する線形回帰分析の結果得られた一次関数の一部を示す線分L1を示す。この線形回帰分析の結果、得られた一次関数の決定係数R2は、0.89以上となった。このことから、界面活性剤C1〜C6を用いた場合における代表値γと油滴径d50との関係は、一次関数によくあてはまることがわかった。
また、界面活性剤C1〜C6を用いてエマルションを作成し、作成したエマルションの大豆油の油滴径を測定する方法と同様の方法によって、界面活性剤D1〜D5を用いてエマルションを作成し、作成したエマルションの大豆油の油滴径を測定した。そして、実施例2において界面活性剤D1〜D5を用いた場合における界面活性剤γの代表値γと、界面活性剤D1〜D5を用いて作成したエマルションの大豆油の油滴径とを比較した。図11として、横軸に、界面活性剤D1〜D5を用いたときの代表値γの大小、縦軸に、界面活性剤D1〜D5を用いたときの油滴径d50の大小を示すグラフを示す。図11における一つのプロットは、それぞれ界面活性剤D1〜D5に対応する。図11から、界面活性剤D1〜D5を用いた場合における代表値γと油滴径d50との関係も、界面活性剤C1〜C6を用いた場合と同様に、界面活性剤を用いたときの代表値γが大きい場合には界面活性剤を用いたときの油滴径d50も大きくなり、代表値γが小さい場合には油滴径d50も小さくなる関係にあることがわかった。
また、図11に示す代表値γと油滴径d50との関係を、最小二乗法を用いて一次関数に回帰する、線形回帰分析を行った。図11に、界面活性剤D1〜D5を用いたときの代表値γと油滴径d50との関係に関する線形回帰分析の結果得られた一次関数の一部を示す線分L2を示す。この線形回帰分析の結果、得られた一次関数の決定係数R2は、0.85以上となった。このことから、界面活性剤D1〜D5を用いた場合における代表値γと油滴径d50との関係も、界面活性剤C1〜C6を用いた場合と同様に、一次関数によくあてはまることがわかった。
(実施例3)
評価の対象とする界面活性剤として、5×103未満の分子量のラウリル硫酸ナトリウム(以下、SDSとも称する)(分子量約288)の水溶液であって、SDSの質量%濃度を0.001%から1%まで段階的に変えた複数の水溶液、およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(以下、Tween20とも称する)(分子量約1228)の水溶液であって、Tween20の質量%濃度を0.00001%から0.1%まで段階的に変えた複数の水溶液を準備した点、及び第1材料として超純水を準備した点以外は、実施例1と同様の方法によって、界面張力γを式(3)で表す近似式にて算出した。この近似式の算出の結果、界面活性剤としてSDS又はTween20の水溶液を用いた場合においても、界面張力γを式(3)で表される式に近似できることが確認された。また、算出された近似式の決定係数R2を、それぞれ算出した。この結果、特にSDS水溶液であれば質量%濃度が0.1%以上のとき、Tween20であれば質量%濃度が0.001%以上のとき、得られた近似式の決定係数R2が0.93以上となり、界面張力γの実測値が、式(3)から求められる計算値によく対応することがわかった。
また、実施例3の場合、特に近似式の決定係数R2が0.93以上となった条件においても、界面活性剤であるSDS水溶液中のSDSの濃度、又はTween20水溶液中のTween20の濃度によっては、近似式のbの値が0に近い値(例えば、0.005未満の値)となる場合があることがわかった。この場合、界面張力γの実測値は、式(3)にb=0を代入して単純化することによって導かれる、以下の式(7)によく対応しているといえる。
Figure 2021043043
実施例3において、界面張力γの実測値が、式(3)を単純化した式(7)によく対応している場合が見出された理由について検討する。上述のとおり、式(3)は、分子の吸着運動に応じた界面張力γの変化、及び界面活性剤に含まれる分子自身の構造の変化に応じた界面張力γの変化のいずれも指数関数的に生じるとの仮定のもと、界面張力γを、式(1)の項と式(2)の項との和で表すことによって導かれた式である。ここで、実施例3において用いられている界面活性剤に含まれるSDS及びTween20は、いずれも、小さな分子量を有する低分子である。実施例3のように、界面活性剤に含まれる分子が低分子である場合、低分子は分子自身の構造の変化に乏しいために、分子自身の構造の変化に応じた界面張力γの変化の量が小さくなると考えられる。このため、実施例3のように界面活性剤が低分子を含む場合、界面張力γを表す近似式は、分子の吸着運動に対応する項を有していれば、分子自身の構造の変化に対応する項を有していなくとも、界面張力γの実測値によく対応する場合が生じ得ると考えられる。このために、実施例3においては、界面張力γの実測値が、指数関数で表される項を一つのみ含む式(7)に、よく対応する場合が見出されたと考えられる。
上述のとおり、実施例3のように界面活性剤が低分子を含む場合には、上述の理由から、界面張力γの実測値が、式(3)を単純化した式(7)によく対応する場合が見出された。これに対し、例えば実施例1のように、界面活性剤が高分子を含むと考えられる場合には、高分子は分子自身の構造の変化に富むために、式(3)のように、分子の吸着運動を表す項を有するとともに、分子自身の構造の変化を表す項を有する式に近似しなければ、界面張力γをよく近似できないと考えられる。実際に、実施例1において界面活性剤C4を用いた場合には、界面張力γは、図7に示すように、それぞれ指数関数で表される式(1)の項と式(2)の項との和に近似され、界面張力γの式(7)への対応は見出されなかった。以上より、実施例の評価方法は、特に、実施例1のように高分子を含むと考えられる界面活性剤の評価に有用であることが確認された。
10 装置
11 界面張力測定機構
111 シリンジ
12 コンピュータ
121 近似式算出機構
122 評価機構
122a 代表値算出機構
21 混合液
22 第2材料

Claims (12)

  1. 第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤の評価方法であって、
    前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する測定工程と、
    前記測定工程における測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、近似式算出工程と、を備える、界面活性剤の評価方法。
    Figure 2021043043
    (式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
  2. 前記近似式算出工程は、界面張力γを以下の式(3)で表す近似式を算出する工程を含み、
    前記近似式算出工程において得られる式(3)のA、a、B及びbの値の少なくとも1以上に基づいて、界面活性剤の特性を評価する、評価工程をさらに備える、請求項1に記載の界面活性剤の評価方法。
    Figure 2021043043
  3. 前記評価工程は、第1基準時間tが以下の式(4)を満たす場合に、前記第1基準時間tの値以上の値を有する代表値計算始点時間t、及び前記代表値計算始点時間tの値より大きい値を有する代表値計算終点時間tを用いて、以下の式(5)に基づいて、界面張力γの代表値γを算出する、代表値算出工程を含む、請求項2に記載の界面活性剤の評価方法。
    Figure 2021043043
    (式(4)においてmは定数である。)
  4. 前記代表値算出工程において、前記代表値計算始点時間tを第1基準時間tとする、請求項3に記載の界面活性剤の評価方法。
  5. 前記代表値算出工程において、前記代表値計算終点時間tの値を、以下の式(6)で表される第2基準時間tの値以下とする、請求項3または4に記載の界面活性剤の評価方法。
    Figure 2021043043
    (式(6)においてnは定数である。)
  6. 前記代表値算出工程において、前記代表値計算終点時間tを第2基準時間tとする、請求項5に記載の界面活性剤の評価方法。
  7. 前記代表値算出工程において、前記式(6)の定数nを0.03とする、請求項5または6に記載の界面活性剤の評価方法。
  8. 前記代表値算出工程において、前記式(4)の定数mを0.1とする、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の界面活性剤の評価方法。
  9. 前記界面活性剤は、5×103以上の分子量を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の界面活性剤の評価方法。
  10. 第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を評価する装置であって、
    前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γを、異なる経過時間tごとに測定する測定機構と、
    前記測定機構の測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、近似式算出機構と、を備える、装置。
    Figure 2021043043
    (式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
  11. 第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を評価するためにコンピュータを近似式算出機構として機能させるためのプログラムであって、
    前記近似式算出機構は、前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γの、異なる経過時間tごとの測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、プログラム。
    Figure 2021043043
    (式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
  12. 第1材料を第2材料に分散させる界面活性剤を評価するためにコンピュータを近似式算出機構として機能させるためのプログラムを記録した不揮発性メモリであって、
    前記近似式算出機構は、前記界面活性剤を用いた場合における前記第1材料の前記第2材料に対する界面張力γの、異なる経過時間tごとの測定結果を用いて、界面張力γを、以下の式(1)で表される第1の項と、以下の式(2)で表される第2の項と、を含む複数の項の和で表す近似式を算出する、不揮発性メモリ。
    Figure 2021043043
    (式(1)においてA及びaは定数であり、式(2)においてB及びbは定数であり、a≧bである。)
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