JP2021031399A - 口腔用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジンジパイン活性抑制手法を提供すること。【解決手段】(i)ヒノキチオール、(ii)銅クロロフィリン金属塩、あるいは(iii)ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩からなる、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤。【選択図】なし

Description

本開示は、口腔用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
Porphyromonas gingivalis(P.g菌)は歯周炎の発症・進行において最重要視されている歯周病源菌である。
P.g菌の産生する代表的な病原性因子として、ジンジパインが知られている。ジンジパインはプロテアーゼの1種で、ペプチド切断部位特異性の異なるArg−ジンジパイン(Rgp)とLys−ジンジパイン(Kgp)とが存在する。Rgpはポリペプチドのアルギニン残基のC末端側を切断するプロテアーゼであり、Kgpはポリペプチドのリジン残基のC末端側を切断するプロテアーゼである。これらは相互に作用しながら歯肉上皮細胞間の結合の破壊性や上皮細胞そのものに対する傷害及び/又は増殖阻害、ひいては上皮バリアの破壊及び修復阻害を引き起こす。また、ジンジパインは、貪食細胞による貪食及び細胞内で消化を抑制する効果、並びに、補体系の破壊や上皮細胞内への侵入を助ける効果等も有するとされており、これによってP.g菌の免疫系からの回避にも関与している。さらに、最近では、ジンジパインによる免疫系の抑制効果が、口腔内細菌叢のDysbiosisにつながることが報告されており、これらジンジパインの作用は、歯周病の進行と難治化につながっている。
国際公開第2016/104524号
以上のような事情のため、ジンジパイン活性を抑制することが重要である。
本発明者らは、ヒノキチオール及び/又は銅クロロフィリン金属塩を用いることで効率よくジンジパイン活性を抑制し得る可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(i)ヒノキチオール、
(ii)銅クロロフィリン金属塩、あるいは
(iii)ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩
からなる、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤。
項2.
歯周病菌産出プロテアーゼが、アルギニン残基のC末端側を切断するプロテアーゼ及びリジン残基のC末端側を切断するプロテアーゼからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載のプロテアーゼ抑制剤。
項3.
歯周病菌が、Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載のプロテアーゼ抑制剤。
項4.
項1〜3のいずれかに記載のプロテアーゼ抑制剤を含む、口腔用組成物。
項5.
ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩を含む、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用口腔用組成物。
項6.
30ppm以上の濃度でヒノキチオールが含まれる、項4又は5に記載の口腔用組成物。
項7.
30ppm以上の濃度で銅クロロフィリン金属塩が含まれる、項4〜6のいずれかに記載の口腔用組成物。
項8.
歯周病菌が、Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種であり、
歯周病菌産出プロテアーゼが、アルギニン残基のC末端側を切断するプロテアーゼ及びリジン残基のC末端側を切断するプロテアーゼからなる群より選択される少なくとも1種であり、
30ppm以上の濃度でヒノキチオールが含まれ、30ppm以上の濃度で銅クロロフィリン金属塩が含まれる、
項5に記載の口腔用組成物。
項9.
Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種を口腔内に保有する人のための、項4〜8のいずれかに記載の口腔用組成物。
項10.
項1〜3のいずれかに記載のプロテアーゼ抑制剤を配合することを含む、口腔用組成物の製造方法。
項11.
ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩を配合することを含む、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用口腔用組成物の製造方法。
歯周病菌産出プロテアーゼを効率よく抑制できる歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤が提供される。当該プロテアーゼ抑制剤は、P.g菌が産出するプロテアーゼであるジンジパインのみならず、その他の歯周病菌であるTreponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)が産出するプロテアーゼをも効率よく抑制することができる。当該プロテアーゼ抑制剤は、例えば口腔用組成物に配合して、歯周病の予防及び/又は治療(特に歯周病進行抑制)のために好ましく用いることができる。また、上記プロテアーゼ抑制剤を含む、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用口腔用組成物も、本開示により提供される。
各種殺菌・抗炎症成分によりジンジパイン活性抑制が可能か検討した結果を示す。 各種殺菌・抗炎症成分によりジンジパイン活性抑制が可能か検討した結果を示す。 銅クロロフィリンナトリウムにより、P.g菌の各株が産出するジンジパイン活性の抑制が可能か検討した結果を示す。 ヒノキチオールにより、P.g菌の各株が産出するジンジパイン活性の抑制が可能か検討した結果を示す。 銅クロロフィリンナトリウム又はヒノキチオールにより、T.d菌又はT.f菌が産出するArg特異的ペプチダーゼ活性の抑制が可能か検討した結果を示す。 銅クロロフィリンナトリウム及びヒノキチオールを組み合わせて用いた際の、ジンジパイン活性抑制効果を検討した結果を示す。 銅クロロフィリンナトリウム及びイソプロピルメチルフェノールを組み合わせて用いた際の、ジンジパイン活性抑制効果を検討した結果を示す。 銅クロロフィリンナトリウム及び塩酸クロロヘキシジンを組み合わせて用いた際の、ジンジパイン活性抑制効果を検討した結果を示す。 銅クロロフィリンナトリウム及び塩化セチルピリジニウムを組み合わせて用いた際の、ジンジパイン活性抑制効果を検討した結果を示す。
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤や、当該プロテアーゼ抑制剤を含む口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
本開示に包含される歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤は、ヒノキチオール及び/又は銅クロロフィリン金属塩からなる。言い換えれば、当該歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤は、(i)ヒノキチオールからなるか、(ii)銅クロロフィリン金属塩からなるか、あるいは(iii)ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩からなる。銅クロロフィリン金属塩としては、銅クロロフィリンアルカリ金属塩が好ましく、中でも銅クロロフィリンナトリウムまたは銅クロロフィリンカリウムが好ましい。なお、当該歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤を、本開示のプロテアーゼ抑制剤ということがある。
本開示のプロテアーゼ抑制剤に包含される、上記(i)〜(iii)の成分若しくは成分の組み合わせのうち、中でも(iii)ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩の組み合わせが好ましい。ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩は、それぞれ単独でも優れた歯周病菌プロテアーゼ抑制効果を奏するところ、これらを組み合わせてもちいることで、さらに優れた歯周病菌プロテアーゼ抑制効果を奏するからである。口腔内に適用することが可能であり、且つ、歯周病菌プロテアーゼ抑制効果を奏する成分を見出すことは容易ではなく、歯周病菌プロテアーゼ抑制効果がさらに向上する成分の組み合わせを見いだすことはより一層困難であることからも、(iii)ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩の組み合わせは特に優れているといえる。
本開示のプロテアーゼ抑制剤は、歯周病菌産出プロテアーゼを抑制する。特に抑制効果を好ましく発揮できる歯周病菌産出プロテアーゼとしては、例えば、歯周病菌が産出するプロテアーゼであって、アルギニン残基のC末端側を切断するプロテアーゼであるか、又はリジン残基のC末端側を切断するプロテアーゼを挙げることができる。
また、プロテアーゼを産出する歯周病菌としては、Porphyromonas gingivalis(P.g菌)の他、例えば、Treponema denticola(T.d菌)及びTannerella forsythia(T.f菌)を上げることができる。
本開示のプロテアーゼ抑制剤が特に好ましく抑制できる歯周病菌産出プロテアーゼとしては、具体的には例えば、ジンジパイン(Lys−ジンジパイン(Kgp)及びArg−ジンジパイン(Rgp))の他、T.d菌が産出するArg特異的ペプチダーゼ、及びT.f菌が産出するArg特異的ペプチダーゼ等が挙げられる。なお、T.d菌やT.f菌が産出するArg特異的ペプチダーゼも、ジンジパインと同様の作用を示す病原性因子として知られており、ポリペプチドのアルギニン残基のC末端側を切断する。
本開示は、本開示のプロテアーゼ抑制剤を含む口腔用組成物も包含する。当該口腔用組成物は、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用として好ましく用いることができる。
当該口腔用組成物の中でも、例えば、ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩を含む歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用口腔用組成物が、特に好ましい。上記の通り、ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩の組みあわせが特に優れたプロテアーゼ抑制効果を奏するからである。
口腔用組成物に含まれるヒノキチオール量は、例えば0.003質量%以上が好ましい。上限は特に制限はされないが、例えば0.2質量%が例示できる。量範囲は、例えば0.003〜0.2質量%程度が好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、又は0.19質量%であってもよい。例えば、0.004〜0.15質量%又は0.005〜0.1質量%程度であってもよい。
口腔用組成物に含まれる銅クロロフィリン金属塩量は、例えば0.003質量%以上が好ましい。上限は特に制限はされないが、例えば0.2質量%が例示できる。量範囲は、例えば0.003〜0.2質量%程度が好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、又は0.19質量%であってもよい。例えば、0.004〜0.15質量%又は0.005〜0.1質量%程度であってもよい。
当該口腔用組成物は、Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種を口腔内に保有する人のために特に好ましく用いることができる。
当該口腔用組成物は、固形組成物、液体組成物でありえる。当該口腔用組成物は、例えば医薬品、医薬部外品として用いることができる。また、形態は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤であることが好ましい。
当該口腔用組成物は、上記効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8〜10、アルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N−ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1〜5質量%である。
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d−カンフル、d−ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001〜1.5質量%配合することができる。
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、組成物全量に対して例えば0.01〜1質量%配合することができる。
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4〜8、好ましくは5〜7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01〜2重量%であってよい。
なお、効果を損なわない範囲において、当該口腔用組成物には、さらに、薬効成分として、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。
また、当該口腔用組成物は、公知の方法または公知の方法から容易に想到する方法により調製することができる。例えば、ヒノキチオール及び/又は銅クロロフィリン金属塩並びに必要に応じてその他の成分を適宜混合することによって調製することができる。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。なお、以下各種検討成分の量については濃度(ppm又はμg/mL)で示すことがあるが、用いた液の1mlあたりの質量は1gより若干大きいものの、およそ1ml≒1gと考えることができ、これにより質量%に換算できる。また、1000ppm=0.1質量%と換算できる。
ジンジパイン活性抑制成分の探索
各種殺菌・抗炎症成分が奏するジンジパイン活性抑制効果を検討した。検討する成分としては、銅クロロフィリンナトリウム、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩酸クロロヘキシジン(CHX)、グリチルリチン酸ジカリウム(GK2)、βグリチルレチン酸、トラネキサム酸、アラントイン、アミノカプロン酸、ビタミンB6(VB6)、及びビタミンEアセテート(VEA;酢酸dl−α−トコフェロールともいう)を用いた。
P.g菌(P.gingivalis W83)をGAM培地にて培養し、吸光度(O.D(600))=1.0に調整した。当該菌液を10000rpmで遠心分離し、上清を回収した。回収した上清中にジンジパインが含まれる。10%DMSOにより各種検討成分を各濃度に調整した溶液200μLを、前記上清20μLと混合し、3分間放置した。3分後、PBSで100倍希釈したジンジパインの基質(Z−Phe−Arg−MCA;株式会社ペプチド研究所)と混合し、遮光して37℃1時間静置した。Z−Phe−Arg−MCAはBenzyloxycarbonyl-L-phenylalanyl-L-arginine 4-methylcoumaryl-7-amide (Hydrochloride Form)であり、Arg−ジンジパイン(Rgp)活性により切断されて蛍光を発する試薬である。1時間後、蛍光プレートリーダー(Gemini XPS)にて蛍光強度(励起光:380nm、放出光:440nm)を測定した。検討成分濃度が0μg/mLでの蛍光強度を100%になるように換算し、各濃度の検討成分を処理した際のジンジパイン活性を算出した。なお、各濃度について検討はn=3で行い、算出する値は平均値とした。算出された値が小さいほど、ジンジパイン活性が抑制されたことを示す。結果を図1a及び図1bに示す。
検討に供した各種成分のうち、ヒノキチオール及び銅クロロフィリンナトリウムのみがジンジパイン活性抑制効果を奏することが分かった。
ヒノキチオール及び銅クロロフィリンナトリウムのジンジパイン活性抑制効果検討
P.g菌の株として、W83に加え、OMZ314、W50、ATCC 33277、及び381を用い、さらにジンジパインの基質としてZ−Phe−Arg−MCAのみならずZ−His−Glu−Lys−MCA(株式会社ペプチド研究所)をも用いて、上記と同様にして、ヒノキチオール及び銅クロロフィリンナトリウムのジンジパイン活性抑制効果を検討した。なお、Z−His−Glu−Lys−MCAはBenzyloxycarbonyl-L-Histidyl-L-Glutamyl-L-Lysine 4-methylcoumaryl-7-amide (Hydrochloride Form)であり、Lys−ジンジパイン(Kgp)活性により切断されて蛍光を発する試薬である。
銅クロロフィリンナトリウムを用いた結果を図2aに、ヒノキチオールを用いた結果を図2bに、それぞれ示す。なおこれらの図において、横軸は銅クロロフィリンナトリウム又はヒノキチオールの濃度(ppm)を示す。
ヒノキチオール及び銅クロロフィリンナトリウムの、T.d菌及びT.f菌が産出するArg特異的ペプチダーゼ活性抑制効果検討
P.g菌をGAM培地にて培養する代わりに、T.d菌(ATCC 35405)をModified NOS mediumにて培養するか、あるいは、T.f菌(ATCC 43037)をN−アセチルムラミン酸0.001%添加したGAM培地にて培養して、上記と同様にして菌培養液の上清を得た。当該上清を用いて、上記と同様にして(ただし、反応時間を37℃1時間から37℃一晩へ変更)、ヒノキチオール及び銅クロロフィリンナトリウムの、T.d菌及びT.f菌が産出するArg特異的ペプチダーゼ活性抑制効果を検討した。結果を図3に示す。なお当該図において、横軸は銅クロロフィリンナトリウム又はヒノキチオールの濃度(ppm)を示す。
殺菌成分の組み合わせによるジンジパイン活性抑制効果検討
各種殺菌成分を組み合わせて用いた場合の、P.g菌が産出するジンジパインの活性抑制効果を検討した。具体的には、銅クロロフィリンナトリウムと、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩酸クロロヘキシジン(CHX)、又は塩化セチルピリジニウム(CPC)とを組み合わせて用いた場合の当該効果を、上記と同様にして検討した。銅クロロフィリンナトリウムとヒノキチオールとを組み合わせた場合の結果を図4aに、銅クロロフィリンナトリウムとIPMPとを組み合わせた場合の結果を図4bに、銅クロロフィリンナトリウムと塩酸CHXとを組み合わせた場合の結果を図4cに、銅クロロフィリンナトリウムとCPCとを組み合わせた場合の結果を図4dに、それぞれ示す。なお、これらの図において、縦軸はジンジパイン(Rgp)活性(%)を示す。また、各殺菌成分の濃度は質量%で示す。また、「銅クロ」は銅クロロフィリンナトリウムのことを示す。
ヒノキチオール以外の検討殺菌成分は、銅クロロフィリンナトリウムと組み合わせて用いても、銅クロロフィリンナトリウムを単独で用いた場合と同等のジンジパイン活性抑制効果しか示さないか、むしろ銅クロロフィリンナトリウムを単独で用いた場合よりもジンジパイン活性抑制効果が低下した。一方で、銅クロロフィリンナトリウムとヒノキチオールとを組み合わせて用いた場合には、特に優れたジンジパイン活性抑制効果が得られた。

Claims (11)

  1. (i)ヒノキチオール、
    (ii)銅クロロフィリン金属塩、あるいは
    (iii)ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩
    からなる、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制剤。
  2. 歯周病菌産出プロテアーゼが、アルギニン残基のC末端側を切断するプロテアーゼ及びリジン残基のC末端側を切断するプロテアーゼからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のプロテアーゼ抑制剤。
  3. 歯周病菌が、Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のプロテアーゼ抑制剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のプロテアーゼ抑制剤を含む、口腔用組成物。
  5. ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩を含む、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用口腔用組成物。
  6. 30ppm以上の濃度でヒノキチオールが含まれる、請求項4又は5に記載の口腔用組成物。
  7. 30ppm以上の濃度で銅クロロフィリン金属塩が含まれる、請求項4〜6のいずれかに記載の口腔用組成物。
  8. 歯周病菌が、Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    歯周病菌産出プロテアーゼが、アルギニン残基のC末端側を切断するプロテアーゼ及びリジン残基のC末端側を切断するプロテアーゼからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    30ppm以上の濃度でヒノキチオールが含まれ、30ppm以上の濃度で銅クロロフィリン金属塩が含まれる、
    請求項5に記載の口腔用組成物。
  9. Porphyromonas gingivalis(P.g菌)、Treponema denticola(T.d菌)、及びTannerella forsythia(T.f菌)からなる群より選択される少なくとも1種を口腔内に保有する人のための、請求項4〜8のいずれかに記載の口腔用組成物。
  10. 請求項1〜3のいずれかに記載のプロテアーゼ抑制剤を配合することを含む、口腔用組成物の製造方法。
  11. ヒノキチオール及び銅クロロフィリン金属塩を配合することを含む、歯周病菌産出プロテアーゼ抑制用口腔用組成物の製造方法。
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