JP2021029156A - バイオロジカルインジケータ及びバイオロジカルインジケータの製造方法 - Google Patents

バイオロジカルインジケータ及びバイオロジカルインジケータの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】室内における微生物の殺菌効果を正確に評価することができるバイオロジカルインジケータ及びその簡易な製造方法を提供する。【解決手段】硬質基材と、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、少なくとも表面の一部に付着した芽胞を含む芽胞含有層と、を有するバイオロジカルインジケータ及びバイオロジカルインジケータの製造方法。【選択図】なし

Description

本開示は、バイオロジカルインジケータ及びバイオロジカルインジケータの製造方法に関する。
注射剤、点眼剤等の無菌製剤の製造設備においては、製造エリア内は可能な限り微生物が存在しない環境とする必要がある。また、医薬品の開発で使われる実験動物の飼育施設、病原菌を扱う施設などの高度安全実験室においても、施設の使用目的に応じて、室内を許容される範囲まで微生物が存在しない環境とする必要がある。
殺菌処理には、種々の薬剤又は殺菌性の気体などが使用されてきた。例えば、従来、殺菌処理の一例としてホルムアルデヒドを使用した殺菌処理が行われていた。近年では、過酸化水素、過酢酸、オゾン、二酸化塩素などが用いられている。殺菌処理に使用される既述の如き殺菌性の薬剤又は殺菌性の気体を、殺菌を必要とする閉鎖された室内などの領域に、液体の状態で噴霧したり、ガス化して供給したり、気体の状態で供給したりすることで、室内の空気中の微生物を殺菌する。さらに、上記処理により、室内の壁面、床面などに用いられる建材、内装材、及び室内に配置されて用いられる実験台などの什器の表面に存在する微生物を殺菌することで、室内を、求められる殺菌された環境としている。
室内の隅々まで殺菌性の薬剤等が到達して、室内に存在する微生物が死滅したかどうか判断するために、バイオロジカルインジケータが市販されている。市販されているバイオロジカルインジケータは、例えば、金属片、ろ紙などの担持体表面に、殺菌されにくい微生物である芽胞菌の芽胞を塗布してなる態様をとる。市販のバイオロジカルインジケータの使用方法としては、バイオロジカルインジケータを殺菌処理の対象となる室内の各所に設置し、その後、殺菌性の薬剤等で室内を殺菌処理した後、バイオロジカルインジケータを回収する。その後、回収したバイオロジカルインジケータを芽胞が生息しうる液体培地に浸して、すべての芽胞が死滅したかどうかを判定する方法、担持体から芽胞を回収して希釈液を調製し、寒天培地に接種して菌数測定し、芽胞がどの程度死滅したかを判定する方法、などにより、殺菌効果を評価する使用方法が挙げられる。
芽胞の懸濁液をバイオロジカルインジケータの硬質基材の表面に塗って乾燥させると、分散媒である液の減少にともない芽胞が寄り集まり、重なり合って塊の状態で硬質基材表面に固定されることがある。芽胞が塊の状態になると、重なり合った内部の芽胞にまでは殺菌用の薬剤又は気体が行き亘らず、その結果、薬剤又は気体によって死滅しない芽胞が残存することがある。その場合、バイオロジカルインジケータを回収し、芽胞の生育の有無を確認するため培養すると、生き残った芽胞が増殖して、殺菌処理が失敗という評価になる。
しかし、例えば、無菌製剤製造室、動物飼育室等の室内空間における殺菌処理は、まず室内を清掃して汚れを除去してから行うため、室内においては、細菌細胞が塊を形成した状態で存在することはないとされる。そのため、既述の如き芽胞の塊が生じたバイオロジカルインジケータにより室内空間の殺菌が確実にできたか否かを判定する場合、塊の内部に存在する芽胞まで死滅させることが困難であり、過剰の薬剤又は気体の投入、より長時間の薬剤又は気体への曝露等が必要という判定となり、正確な判定とは言い難い。このことは、例えば、「プラズマ滅菌・殺菌19 ガスプラズマ滅菌の再現性のある無菌性保証達成に於けるBI作成ならびに使用の注意点」(著者;新谷英晴、作道章一、防菌防黴、39巻3号、p167〜173、2011年)等にも記載され、問題となっている。
このため、硬質基板表面に微生物を均一に、重なり合うことなく付着させたバイオロジカルインジケータの製造方法として、菌懸濁液を微細液滴サイズでパルス的に噴射して担体に菌を付着させる生物指標作製方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2007−175012号公報
特許文献1に記載の方法によれば、所定濃度の菌液を調製して貯留する菌液タンクと、担体に、微細液滴をパルス状に噴射する液滴パルス噴射装置とが必要であり、また、菌液が担体以外の領域に拡散しないようにする必要があり、生物指標の作製には大がかりな装置が必要であるという問題がある。
本発明の一実施形態の課題は、室内における微生物の殺菌効果を正確に評価することができるバイオロジカルインジケータを提供することである。
本発明の別の実施形態の課題は、室内における微生物の殺菌効果を正確に評価することができるバイオロジカルインジケータの簡易な製造方法を提供することである。
前記課題を解決する手段は、以下の実施形態を含む。
<1> 硬質基材と、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、少なくとも表面の一部に付着した芽胞を含む芽胞含有層と、を有するバイオロジカルインジケータ。
前記した特定の化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物が表面の少なくとも一部に付着した芽胞を含むことで、芽胞の凝集が抑制され、硬質基材の表面に芽胞が重なり合うことなく均一に付着した芽胞含有層が形成される。このため、芽胞含有層には、芽胞の重なり合いに起因する死滅し難い芽胞が含まれにくくなり、このような芽胞含有層を有するバイオロジカルインジケータによれば、殺菌効果の確認がより正確に行える。
<2> 前記硬質基材は、金属板、樹脂板、及び化粧ケイ酸カルシウム板からなる群より選ばれる基材である<1>に記載のバイオロジカルインジケータ。
硬質基材が、金属板、樹脂板、及び化粧ケイ酸カルシウム板からなる群より選ばれる、液非吸収性であり、且つ、表面平滑な基材であることで、硬質基材の表面に芽胞が均一に付着しやすい。このため、より正確な殺菌効果の評価を容易に行うことができる。
<3> 硬質基材表面に、芽胞の懸濁液と、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む凝集液と、を付与して、基材表面に前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物とを含む層を形成する工程と、前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物から分散媒及び溶媒の少なくともいずれかを除去して芽胞含有層を形成する工程と、を有するバイオロジカルインジケータの製造方法。
芽胞の懸濁液と凝集液とを順次又は同時に硬質基材に付与して、硬質基材表面に前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物とを含む層を形成することで、芽胞の表面の少なくとも一部に凝集剤が付着する。表面の少なくとも一部に凝集剤が付着した芽胞は、分散された懸濁液中で速やかに沈降して、硬質基材表面に、上下に重ならずに均一に付着する。硬質基材表面に付着した芽胞は、その後の乾燥により分散媒、溶媒等が除去される過程においても、液の動きに追従して移動し、凝集することが抑制され、硬質基材表面に芽胞が均一に付着した状態の芽胞含有層が形成される。
本発明の一実施形態によれば、室内における微生物の殺菌効果を正確に評価することができるバイオロジカルインジケータを提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、室内における微生物の殺菌効果を正確に評価することができるバイオロジカルインジケータの簡易な製造方法を提供することができる。
本開示のバイオロジカルインジケータの一例を示す概略部分断面図である。 実施例1のバイオロジカルインジケータ表面の電子顕微鏡写真である。 比較例1のバイオロジカルインジケータ表面の電子顕微鏡写真である。
本開示において「〜」を用いて記載した数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
図面及び明細書において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
本開示において、殺菌処理の対象となる「室内」の語は、必ずしも区画された部屋の内部のみを意味せず、実験設備のなどの閉鎖空間等も包含する意味で用いられ、殺菌処理の対象となる「領域」と置き換えることができる。
以下、本開示のバイオロジカルインジケータ、及びバイオロジカルインジケータの製造方法について、例を挙げて詳細に説明する。なお、本開示は、以下の記載に限定されず、主旨を損なわない限り、種々の変型例にて実施することができる。
<バイオロジカルインジケータ>
本開示のバイオロジカルインジケータは、硬質基材と、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、少なくとも表面の一部に付着した芽胞を含む芽胞含有層と、を有する。
図1は、本開示のバイオロジカルインジケータの一例を示す概略断面図である。図1に示すバイオロジカルインジケータ10は、硬質基材12と、前記硬質基材12の表面に、芽胞14を含む芽胞含有層とを有する。芽胞14は、その表面の少なくとも一部に、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、特定凝集剤と称することがある)が付着している。
芽胞の表面の少なくとも一部に特定凝集剤が存在した芽胞は、硬質基材の表面に付着し、固定される。このため、硬質基材上に、安定な芽胞含有層を有することになる。
図1に示す一実施形態では、バイオロジカルインジケータ10は、硬質基材12と、芽胞14を含む芽胞含有層のみを有する。
バイオロジカルインジケータは、使用目的に応じて、その他の任意の層を有していてもよい。
任意の層としては、例えば、バイオロジカルインジケータを、殺菌処理を行う室内の任意の箇所に固定することができる接着層、接着層の接着面を保護する接着層保護シート、芽胞含有層を保護するための、殺菌に使用する薬剤又は殺菌性の気体は透過することができ、芽胞が透過し得ない表面保護シート、等が挙げられる。
バイオロジカルインジケータが接着層を備えることで、室内の壁面などの所望の垂直面等にも、容易にバイオロジカルインジケータを固定できる。固定方法としては、バイオロジカルインジケータの接着層から接着層保護シートを剥離して、露出した接着層を任意の面に接触させ、押圧してバイオロジカルインジケータを、任意の面に固定する方法が挙げられる。
バイオロジカルインジケータを所望の位置に固定して用いる場合の固定手段は、既述の接着層に限定されず、種々の公知の固定化方法を目的に応じて適用することができる。
室内の床面、実験台などの平面に配置する場合には、特にバイオロジカルインジケータを平面上に固定化せず、そのまま配置して用いてもよい。
硬質基材と、表面の少なくとも一部に特定凝集剤が付着した芽胞を含む芽胞含有層とを有し、接着層などを有さないバイオロジカルインジケータは、バイオロジカルインジケータを気体透過性の不織布等からなる包装袋に封入し、包装袋に内包されたバイオロジカルインジケータをそのまま任意の箇所に配置して用いることができる。
包装袋に用いる気体透過性の不織布などの保護シートとしては、芽胞が透過せず、殺菌に用いるガス、霧状の薬剤などが透過できる素材が選択される。殺菌に用いる薬剤などが透過できる素材の包装袋であれば、包装袋に内包した状態で任意の場所に配置することができる。
(硬質基材)
硬質基材としては、特に制限はない。芽胞の重なり合いによる塊が生じ難いという観点からは、表面が平滑な硬質基材が好ましい。ここで、表面が平滑とは、目視による観察で、凹凸、溝などが確認されない程度の平滑性であればよい。
硬質基材の素材は、殺菌処理に用いる薬剤又は気体に対する耐性を備えれば特に制限はなく、対象となる殺菌処理薬剤又は気体に対する耐性を考慮し、適宜選択すればよい。
硬質基材の素材としては、金属板、樹脂板、及び化粧ケイ酸カルシウム板からなる群より選ばれる基材が挙げられる。なかでも、耐久性及び加工の容易性の観点から、金属板が好ましい。
また、硬質基材として、殺菌処理を行う室内に用いられている建材と同じ基材を用いることができる。但し、例えば、オゾンによる殺菌効果は、疎水性素材の方が親水性素材より高いことが知られており、殺菌処理に使用する薬剤又は気体との関連も考慮して硬質基材の素材を選択することが好ましい。
硬質基材に用い得る金属板を構成する金属材料としては、鉄、ステンレス鋼、銅、金、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。金属材料としては、加工の容易性の観点からは、ニッケル等が好ましい。また、入手容易性の観点からは、ステンレス、及びアルミニウムが好ましく挙げられる。
また、表面に塗装を施した金属板を用いてもよい。
樹脂板を構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂、及びメラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられ、耐久性及び寸法安定性の観点から、熱硬化性樹脂が好ましい。
表面平滑性の観点からは、硬質基材として化粧ケイ酸カルシウム板が好ましく挙げられる。さらに、無機材料からなる硬質基材としては、石膏ボードなどが挙げられ、表面を平滑化処理した化粧石膏ボード等も用いることができる。
硬質基材としては、より、実用に即した基材として、無菌製剤製造室、実験室などの室内で使用が想定される建材としての塗床材(任意の床材表面に塗床材を塗布し乾燥させて平滑な層を形成した床材)、任意の基材表面に、タイルなどの継ぎ目を充填するシール材の層を形成した積層体なども、目的に応じて硬質基材として使用することができる。
硬質基材は、例えば、金属板などをそのまま用いてもよいが、表面加工した基材を用いてもよい。
ケイ酸カルシウム板、石膏ボードなどの板は、表面に微細な空隙がある場合があり、空隙に芽胞が入り込むことにより、その上にも芽胞が付着して芽胞の塊が生成され易い。このため、例えば、表面に塗装を施すこと、表面を樹脂フィルムで被覆すること、などの手段により表面を平滑に加工した化粧ケイ酸カルシウム板、化粧石膏ボード等を用いることが好ましい。
その他の硬質基材においても、目的に応じて、塗装、樹脂フィルムによる被覆などの表面加工を施した基材を用いてもよい。
表面加工の方法、表面加工に用いる材料等は、目的とする平滑度、殺菌処理に用いる薬剤又は気体に対する耐性等を考慮して選択すればよい。
なお、硬質基材のサイズは、使用目的に応じて適宜選択できる。
(芽胞)
バイオロジカルインジケータに含まれる芽胞としては、殺菌されにくい微生物である芽胞菌の芽胞を用いている。
芽胞とは、一部の細菌が形づくる、耐久性の高い細胞構造であり、通常は、胞子膜、皮層、及び芯部からなり、胞子膜の外側に外皮を持つ芽胞も存在する。芽胞を形成する細菌を有芽胞菌と称することがある。
有芽胞菌としては、例えば、アンフィバシラス属、バシラス属、クロストリジウム属等の細菌が挙げられる。有芽胞菌が栄養、温度などの環境が悪い状態に置かれた場合、細菌細胞の内部に芽胞が形成される。芽胞は高い耐久性を有し、環境が悪化して有芽胞菌が死滅する雰囲気においても、所謂休眠状態で生存することが可能である。
休眠状態で生存する芽胞は、再度、有芽胞菌の増殖に適した環境に置かれると、芽胞が発芽して、通常の増殖能を有する菌体が生成される。芽胞は、通常の細菌類と比較して、アルコール、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤でも不活性化は困難であり、高温にも強く、100℃の熱水中でも完全には死滅しない。このため、殺菌効果の検証には有効である。
本開示のバイオロジカルインジケータに用い得る芽胞には特に制限はない。例えば、Geobacillus stearothermophilus ATCC12980もしくはATCC7953、Bacillus atrophaeus ATCC9372等が挙げられる。
(特定凝集剤)
本開示のバイオロジカルインジケータは、芽胞含有層を有する。芽胞含有層に含まれる芽胞は、その表面の少なくとも一部に特定凝集剤が付着している。
凝集剤としては、一般に、排水処理などにおいて固形分を凝集、沈殿させるために用いられる凝集剤が知られている。公知の凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、ポリ鉄等の無機系凝集剤、ポリアクリルアミド系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアクリル酸エステル系等の有機系高分子凝集剤等が挙げられる。
本開示における特定凝集剤は、上記の凝集剤のなかでも、芽胞の沈殿効果が高く、殺菌処理に用いる薬剤などの機能に影響を与え難いという観点から、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を選択している。
有機系高分子凝集剤を用いる場合、含有量が多くなると芽胞の表面を有機高分子凝集剤が被覆してしまい、芽胞の殺菌性に影響を与えることがある。
特定凝集剤としては、凝集力が高く、殺菌処理に用いられる種々の薬剤又は気体の殺菌効果に影響を与え難いという観点からは、硫酸アルミニウム又はポリ塩化アルミニウムが好ましく、ポリ塩化アルミニウムがより好ましい。
例えば、殺菌処理手段として、過酸化水素を使用する場合、凝集剤としてポリ鉄、有機系凝集剤等を用いると、凝集剤に含まれる鉄イオン、又は、有機物等に起因して過酸化水素の分解が促進され、過酸化水素が消費されて殺菌性に影響を与えることがある。
特定凝集剤は、芽胞の表面の少なくとも一部に付着することで、芽胞を芽胞懸濁液から速やかに沈殿させて硬質基材の表面に付着させる。
芽胞に付着している特定凝集剤は、1種のみであってもよく、2種以上を併用してもよい。
本開示のバイオロジカルインジケータによれば、芽胞が、表面に付着する特定凝集剤の機能により、硬質基材の表面に、芽胞が重なり合った塊を形成することなく、均一に付着するため、正確に殺菌処理効果を評価することができる。
なお、芽胞表面の少なくとも一部に特定凝集剤が存在していることは、以下の方法により確認することができる。
例えば、バイオロジカルインジケータが凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを含む場合には、バイオロジカルインジケータの表面(芽胞が存在する側の面)を、走査型電子顕微鏡、電子吸光分析などの手段を用いて解析し、アルミニウムが検出されることにより、バイオロジカルインジケータの表面に特定凝集剤としてのポリ塩化アルミニウムが存在することを推定することができる。
(バイオロジカルインジケータの製造方法)
本開示のバイオロジカルインジケータの製造方法には特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。なかでも、以下に示す本開示のバイオロジカルインジケータの製造方法により製造されることが好ましい。
本開示のバイオロジカルインジケータの製造方法は、硬質基材表面に、芽胞の懸濁液と、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む凝集液と、を付与して、基材表面に前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物とを含む層を形成する工程(工程I)と、前記芽胞の懸濁液と、前記凝集液との混合物から分散媒及び溶媒の少なくともいずれかを除去して芽胞含有層を形成する工程(工程II)と、を有する。
(工程I)
まず、硬質基材を準備する。硬質基材には特に制限はなく、表面平滑な基材を、目的に応じて選択して使用することができる。
なかでも、耐久性、平滑性の観点から、金属板に、樹脂板、化粧ケイ酸カルシウム板からなる群より選択される基材が好ましい。
硬質基材の材料などは既述のバイオロジカルインジケータにおける硬質基材の項で述べた物と同様であり、好ましい例も同様である。
板状の硬質基材に、必要に応じて表面処理を行い、所定のサイズに切断して作成してもよい。また、樹脂板の場合には、平板状の金型内に、樹脂材料を流し込み、硬化させて形成してもよい。
金属板としては、ステンレス板、ニッケル板等を用いることができる。
工程Iでは、芽胞の懸濁液と、特定凝集剤の少なくとも1種を含む凝集液とを、硬質基材の表面に付与する。芽胞の懸濁液と凝集液とは、硬質基材の表面に順次付与してもよく、同時に付与してもよい。
(芽胞の懸濁液)
芽胞は懸濁液として硬質基材に付与される。懸濁液の調製に用いられる芽胞は、既述のバイオロジカルインジケータの項にて述べたのと同様である。
芽胞の懸濁液は、芽胞を適切な分散媒、例えば、水、アルコール水溶液等に分散させることで、適宜調製することができる。分散媒に用い得るアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
また、芽胞の懸濁液は市販品を用いてもよい。入手容易性の観点からは、例えば、「Geobacillus stearothermophilus ATCC7953」の芽胞懸濁液が挙げられる。市販品である前記芽胞懸濁液は、40体積%のエタノール水溶液1mL(ミリリットル)当たりに、1×10個の芽胞を含む懸濁液である。使用に際しては、必要に応じて、前記芽胞の懸濁液を希釈又は濃縮して、単位体積あたりに所望の量の芽胞を含有する懸濁液を調整して用いてもよい。
(凝集液)
凝集液は、既述の特定凝集剤を、分散媒としての水、水とエタノールとの混合液(エタノール水溶液)等の分散媒に分散させて調製することができる。
凝集液における凝集剤の含有量は、芽胞分散液における芽胞の含有量、芽胞の分散液に対する凝集液の使用比率等により適宜調製すればよい。
凝集液における特定凝集剤の含有量としては、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを用いた場合、分散媒とポリ塩化アルミニウムとを含む分散液(凝集液)1リットル当たりのポリ塩化アルミニウムの含有量として0.1g〜0.5g(0.1g/L(リットル)〜0.5g/L)の範囲であることが好ましく、0.15g〜0.25g(0.15g/L(リットル)〜0.25g/L)の範囲であることが好ましい。
凝集液における特定凝集剤の含有量が上記範囲であることで、特定凝集剤が芽胞に付着して沈降させる効果が速やかに得られ、且つ、特定凝集剤が多すぎる場合に生じる殺菌効果への影響が抑制される。
芽胞の懸濁液と凝集液との混合比率を考慮した例を挙げれば、例えば、ポリ塩化アルミニウムを含む凝集液1μLと芽胞の懸濁液(芽胞を40体積%のエタノール水溶液0.1mL当たり、2×10個含む)5μLとを混合する場合、凝集液におけるポリ塩化アルミニウムの含有量は、上述の範囲とすることが好ましい。また、例えば、凝集液と芽胞の懸濁液とを等量混合する場合には、芽胞の懸濁液5μLに対して、ポリ塩化アルミニウムを凝集液1リットル当たり0.01g〜0.1gの範囲で含む凝集液を5μL用いることが好ましく、0.02g〜0.06gの範囲で含む凝集液を5μL用いることがより好ましくい。
(硬質基材への芽胞の懸濁液と凝集液との付与)
硬質基材への芽胞の懸濁液と凝集液との付与は、公知の塗布法、滴下法などを適宜用いることができる。
硬質基材の表面に付与した芽胞の懸濁液と凝集液とは混合されて、芽胞の懸濁液と凝集液との混合物とを含む層が形成される。
なお、芽胞の懸濁液と凝集液とを硬質基材の表面に付与することで、芽胞の懸濁液と凝集液とはある程度混合されるが、硬質基材の表面に付与した芽胞の懸濁液と凝集液とをさらに混合する工程を行うことにより、芽胞の表面の少なくとも一部に特定凝集剤が付着しやすくなり、特定凝集剤が付着した芽胞は沈殿し、個々に硬質基材の表面に付着して固定化される。即ち、芽胞の表面の少なくとも一部に特定凝集剤が存在することで、芽胞は、速やかに沈降して、硬質基材の表面に付着し、固定される。
混合方法には特に制限はなく、硬質基材に付着した芽胞の懸濁液と凝集的とをヘラで混合する方法、芽胞の懸濁液と凝集液が付与された硬質基材に振動を与えて混合する方法、超音波を照射する方法など、公知の混合方法を適用することができる。
芽胞の懸濁液と凝集液とを混合することで、芽胞に特定凝集剤がより速やかに付着し、固定化される。
なお、芽胞の懸濁液と凝集液とを、硬質基材の表面に付与する前に、予め混合することもできる。この態様も、工程Iに含まれる。硬質基材表面に付与する前に、芽胞の懸濁液と凝集液とを予め混合する場合には、混合物中で芽胞の凝集が生じることがある。このため、混合液を調製する態様をとる際には、芽胞の懸濁液と凝集液とを混合し、その後、速やかに硬質基材に付与することが好ましい。即ち、芽胞の懸濁液と凝集液との混合液は、調整直後に、硬質基材の表面に混合物を付与することが好ましい。
芽胞の懸濁液と凝集液とを予め混合する場合の混合方法としては、滅菌済みのチューブ、例えば、エッペンドルフ チューブ(エッペンドルフ社製)に、まず芽胞の懸濁液を注入し、その後、凝集液を注入してチューブを震盪させて液を十分に混合し、その後、速やかに硬質基材に付与する方法が挙げられる。
混合液を調製した後、経時させると、混合液中で既に芽胞の凝集体が形成されてしまい、硬質基材の表面への均一な付着が困難となり、好ましくない。
(工程II)
工程IIは、前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物とを含む層から分散媒及び溶媒の少なくともいずれかを除去して芽胞含有層を形成する工程である。
通常は、分散媒及び溶媒の減少に伴い、液の動きに従って芽胞が移動して塊が形成される。しかし、本開示の製造方法によれば、特定凝集剤が付着した芽胞が、硬質基材の表面に均一に既に固定化されているため、液の動きに影響を受けて芽胞が移動することが抑制され、液量が少なくなった場合も、硬質基材表面に芽胞が均一に付着した状態の芽胞含有層が形成され、本開示のバイオロジカルインジケータを得ることができる。
硬質基材の表面に芽胞が存在することは、バイオロジカルインジケータの表面を走査型電子顕微鏡で観察することで確認することができる。一般的には、倍率1,000倍から10,000倍の範囲で観察することができる。この観察により、芽胞が重なり合って形成された塊の有無も確認することができる。
製造されたバイオロジカルインジケータは、芽胞不透過性の包装材料で包装してもよい。バイオロジカルインジケータを芽胞が透過しない包装材料で密閉して包装することで、バイオロジカルインジケータの保存性、及び搬送性がより良好となる。
このようにして、本開示のバイオロジカルインジケータを簡易な方法にて製造することができる。製造されたバイオロジカルインジケータは、硬質基材の表面に均一に芽胞が存在しているため、室内の殺菌効果を正確に評価することができる。
本開示のバイオロジカルインジケータの製造方法によれば、硬質基材の表面に芽胞が重なり合った塊の生成が抑制された、正確な殺菌処理の評価を行いうるバイオロジカルインジケータを、大がかりな装置などを必要とせず、簡易に、効率よく製造することができる。
なお、バイオロジカルインジケータは、殺菌処理後における他の細菌の混入などを防止する目的で、殺菌処理後に、細菌は透過させず、気体、例えば、過酸化水素蒸気、オゾンなどの気体を透過しうる不織布の包装袋に収納する。包装袋は、通気性が悪いとバイオロジカルインジケータへの薬剤の到達に支障が出る可能性があるため、通気性の高い高密度ポリエチレン製不織布等が使用される。通気性の高い高密度ポリエチレン製不織布の市販品の例としては、タイベック(デュポン社製)などが挙げられる。
本開示のバイオロジカルインジケータは公知の方法にて、殺菌処理効果の評価に使用される。以下、本開示のバイオロジカルインジケータを、殺菌処理効果の評価方法に適用した例を挙げて説明する。
即ち、バイオロジカルインジケータを、殺菌効果を評価する室内に配置し、室内を殺菌処理した後、殺菌処理した室内からバイオロジカルインジケータを回収し、回収したバイオロジカルインジケータに残存する生菌の有無を評価することで、殺菌処理の効果を評価することができる。
室内の殺菌処理としては、ホルムアルデヒド、過酢酸、過酸化水素、二酸化塩素、オゾンを用いた方法、及びこれらの薬剤を組み合わせた方法、例えば、過酸化水素とオゾンの混合物を用いた方法等が挙げられる。
殺菌処理した室内から前記バイオロジカルインジケータを回収し、回収したバイオロジカルインジケータに残存する生菌の有無を評価する方法も、公知の方法が適用できる。
評価方法としては、休眠状態であった芽胞が再度発芽する環境に、バイオロジカルインジケータを配置して、芽胞由来の細菌の増殖を試み、細菌の増殖の有無により殺菌効果を評価する方法が挙げられる。
具体的には、芽胞が発芽して増殖しやすい環境として、液体培地を調製し、殺菌処理後に室内から回収したバイオロジカルインジケータを浸漬し、2日間〜1週間程度培養する。
芽胞が死滅していない、即ち、室内が十分に殺菌されていない場合には、増殖した細菌に起因して液体培地に濁りが生じる。また、芽胞が完全に死滅した場合には、液体培地には濁りが生じない。この条件にて培養し、濁りの発生の有無により殺菌処理効果を検証することができる。
液体培地としては、公知のものを適宜使用することができる。例えば、芽胞として既述のGeobacillus stearothermophilus ATCC7953を用いた場合には、液体培地としては、ソイビーンカゼインダイジェスト(Soybean−Casein Digest:SCD)培地を用いることができる。また、SCD培地に、殺菌に用いた薬剤、防腐剤などを不活化する効果のある物質としてのレシチン、Tween80(polyoxyethlene sorbitan monooleate:非イオン界面活性剤)を添加したSCDLP培地(Soybean−Casein Digest Broth with Lecithin & Polysorbate 80)が好適である。
培養温度は、用いる芽胞により適宜選択される。例えば、芽胞としてGeobacillus stearothermophilus ATCC12980を用いた場合には、培養温度は55℃程度が好適であり、芽胞としてBacillus atrophaeus ATCC9372を用いた場合には、培養温度は30℃〜37℃が一般的である。
本開示のバイオロジカルインジケータによる評価方法を行なって、殺菌処理効果が十分に得られていないとの結果を得た場合、殺菌処理の条件を変更、例えば、薬剤又は気体を変更したり、処理時間を長くしたりする等の殺菌条件の変更を行い、再度、同様の評価を行うことで、確実な殺菌処理効果が得られる殺菌処理条件を検討することもでき、その応用範囲は広い。
以下、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、以下に記載の実施態様の一例に過ぎず、本開示の主旨を逸脱しない限り、種々の変型例を実施することができる。
〔実施例1〕
硬質基材として、乾熱滅菌済のステンレス板(幅10mm、長さ10mm、厚さ0.5mm)を準備した。
芽胞は、市販の芽胞Geobacillus stearothermophilus ATCC7953の芽胞懸濁液(芽胞が40体積%のエタノール水溶液0.1mL当たり、2×10個)を10倍に濃縮したものを用意し、芽胞の懸濁液とした。
特定凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム溶液 PAC250A(商品名:多木化学製、10質量体積%)を、40体積%エタノール水溶液で500倍に希釈して、0.2g/Lの濃度に調整し、凝集液とした。
滅菌済みの、1.5mL容のエッペンドルフ チューブ(エッペンドルフ社製)を準備し、上記で得た凝集液1μLを、チューブの底に入れ、その後、芽胞の懸濁液5μLを添加し、よく混合して、混合直後に、準備した硬質基材である乾熱滅菌済のステンレス板に載せて、空気清浄度の高い環境である生物学的安全キャビネットの中で、室温(25℃)にて、1時間から2時間程度、乾燥させ、実施例1のバイオロジカルインジケータを得た。使用にあたっては、評価対象となる殺菌処理を行った後に、硬質基材表面に雑菌が付着して評価結果に影響が出ないようにするため、市販のバイオロジカルインジケータと同様に、通気性の高い高密度ポリエチレン製不織布(細菌を透過させず、気体を透過する不織布:タイベック(登録商標)、デュポン社)製の袋に収納した。
得られた実施例1のバイオロジカルインジケータを走査型電子顕微鏡で観察するため、金属蒸着を行い、その後、走査型電子顕微鏡で観察した。実施例1のバイオロジカルインジケータ表面の電子顕微鏡写真を図2に示す。図2に明らかなように、芽胞の塊はほとんど生じておらず、硬質基材の表面に、互いに重なり合うことなく、芽胞が存在していることがわかる。
〔比較例1〕
実施例1で用いた凝集剤としてのポリ塩化アルミニウムを添加せず、実施例1で用いた芽胞の懸濁液のみを用いた以外は実施例1と同様にして、硬質基材であるステンレス板の表面に芽胞の懸濁液を付与し、同様の条件で乾燥させて、比較例1のバイオロジカルインジケータを得た。
得られた比較例1のバイオロジカルインジケータを走査型電子顕微鏡で観察するため、金属蒸着を行い、その後、走査型電子顕微鏡で観察した。比較例1のバイオロジカルインジケータ表面の電子顕微鏡写真を図3に示す。図3に明らかなように、液の蒸発に伴い、芽胞が互いに引き寄せられて、芽胞が重なり合った塊が多く存在していることがわかる。
〔実施例2〕
<殺菌処理効果の評価>
実施例1のバイオロジカルインジケータを用いて殺菌処理効果の評価を行った。
殺菌処理効果の評価対象として、容積約0.2mのアクリル製の小型チャンバーを、実験室内のヒュームフードに準備した。チャンバー内には、過酸化水素水を加熱した金属板の上に滴下して過酸化水素の蒸気を発生させる装置を組み立て、空気中の過酸化水素濃度を測定するセンサ(ポリトロン7000、ドレーゲル社製)、チャンバー内の温度や湿度を測定する過酸化水素ガス対応の温湿度計(testo6681、テストー社製)を設置した。
準備されたチャンバー内の4つの隅部に各2個、中央の位置に2個、合計10個の不織布の袋に入ったバイオロジカルインジケータを固定化して配置した。その後、過酸化水素蒸気(空気中の濃度100ppm)によるチャンバー内の殺菌処理を行った。
チャンバーのふたを閉じて密封し、チャンバー内で過酸化水素の蒸気を発生させ、空気中の濃度が100ppmを維持するように過酸化水素水の加熱金属板への滴下量を調整した。チャンバー内の湿度が70%を超えることがあれば、チャンバー内の空気を粒子状シリカゲルの詰めたガラス瓶に通して空気中の水分を除去することで、湿度を下げた。
チャンバー内の空気中過酸化水素濃度を100ppmに維持して4時間放置後、チャンバー内の空気を粒子状シリカゲルの詰めたガラス瓶に通して過酸化水素を吸着、分解させて、濃度低下を促した。約2時間かけて10ppm以下になってから、ヒュームフードの排気を開始するとともに、チャンバーのふたを開けて残りの過酸化水素蒸気を除去し、殺菌処理を終了した。
殺菌処理後のチャンバー内から、不織布の袋に入ったバイオロジカルインジケータを回収し、雑菌が存在しない清浄な環境で不織布の袋からバイオロジカルインジケータを取り出し、培養液(SCD培地、日水製薬製)に入れて培養温度を約55℃として、1週間浸漬した。
その結果、実施例1のバイオロジカルインジケータでは、チャンバー内に設置した10個のバイオロジカルインジケータのいずれの培養液にも濁りが生じることはなく、芽胞が完全に死滅し、チャンバー内の無菌化が達成されていることが確認された。
対照例として、殺菌処理を行わなかった実施例1のバイオロジカルインジケータを用いて、培養温度を約55℃とした培養液(SCD培地、日水製薬製)中に浸漬したところ、24時間で培養液に濁りが生じた。
対照例との対比より、実施例1のバイオロジカルインジケータは、殺菌処理効果の評価に有用であることが期待できる。
10 バイオロジカルインジケータ(インジケータ)
12 硬質基材
14 芽胞

Claims (3)

  1. 硬質基材と、
    硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、少なくとも表面の一部に付着した芽胞を含む芽胞含有層と、
    を有するバイオロジカルインジケータ。
  2. 前記硬質基材は、金属板、樹脂板、及び化粧ケイ酸カルシウム板からなる群より選ばれる基材である請求項1に記載のバイオロジカルインジケータ。
  3. 硬質基材表面に、芽胞の懸濁液と、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む凝集液と、を付与して、基材表面に前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物とを含む層を形成する工程と、
    前記芽胞の懸濁液と前記凝集液との混合物から分散媒及び溶媒の少なくともいずれかを除去して芽胞含有層を形成する工程と、
    を有するバイオロジカルインジケータの製造方法。
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