JP2021028581A - 熱伝導性の推定装置、熱伝導性の推定方法、及び熱伝導性の推定プログラム - Google Patents
熱伝導性の推定装置、熱伝導性の推定方法、及び熱伝導性の推定プログラム Download PDFInfo
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Abstract
Description
開示の熱伝導性の推定装置は、
2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する熱伝導性の推定装置であって、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定する相関算出部と、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する推定部と、
を有する。
2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する熱伝導性の推定方法であって、
コンピュータが、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定し、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する。
前記コンピュータに、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定させ、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する処理を実行させる。
開示の熱伝導性の推定方法によれば、少ない計算機資源及び計算時間で、化合物構造体の熱伝導性を推定することができる。
開示の熱伝導性の推定プログラムによれば、少ない計算機資源及び計算時間で、化合物構造体の熱伝導性を推定することができる。
本件の熱伝導性の推定装置は、2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する装置である。
本件の熱伝導性の推定方法は、2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する方法である。
本件の熱伝導性の推定プログラムは、2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定するプログラムである。
本件の熱伝導性の推定装置は、例えば、本件の熱伝導性の推定方法を行う。
本件の熱伝導性の推定方法は、例えば、本件の熱伝導性の推定プログラムにより行われる。
熱伝導性と関係する指標として、基準振動解析によるフォノン計算で求められるParticipation Ratio値(以下、Pλ値と呼ぶ)が挙げられる〔例えば、A. Bodapati et al., Phys. Rev. B 74, 245207 (2006)参照〕。Pλ値は、あるフォノン振動モードλの空間的な局在性を表す指標であり、下記数式(1)により定義される。
一般にPλ値が小さいモード(つまり、より局在化したモード)は熱伝導率低減に寄与する。特に、低周波数領域でPλ値が小さいモードがより多く存在する場合、熱伝導率がより低くなる傾向にあると考えられる。基準振動解析により求められるモードは3N個存在し、これらのモードが全体として熱伝導率の値と大まかな相関があることが推測される。しかし、相関の程度は明らかではない。
相関算出部は、計算値と目的変数との相関を特定する。
相関は、例えば、直線回帰の最小二乗法により特定することができ、例えば、以下の一次関数と、相関係数とにより表される。
y=ax+b
yは、熱伝導率の計算値である。
xは、Pα,λ値の平均値、及び積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数である。
a、bは、係数である。
相関係数(ρ)は、正の分散を持つ確率変数X,Yが与えられたとき、共分散をσXY,標準偏差をσX,σYとおくとき、ρ=σXY/σX・σYで算出される。
相関の大きさは、相関係数により判断できる。
計算値は、化合物構造体における2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値である。
なお、熱伝導率は、実測をしてもよいが、試料の作製等の手間を加味すると、シミュレーションにより算出することが好ましい。
本発明において、「化合物構造体」とは、化合物が特定の構造を構成してなる構造体を意味する。
化合物構造体の構造は、2種類以上の元素のそれぞれの元素からなる薄膜を積層した積層構造である。
化合物半導体としては、例えば、IV族化合物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、I−III−IV族化合物半導体などが挙げられる。
IV族化合物半導体としては、例えば、SiC、SiGe、CSiGeなどが挙げられる。
III−V族化合物半導体としては、例えば、GaAs、AlP、AlAs、InP、InAs、GaSb、AlSb、GaInP、GaInAs、AlGaAsSb、GaInAsP、GaInPAsなどが挙げられる。
II−VI族化合物半導体としては、例えば、CdTe、CdSなどが挙げられる。
I−III−IV族化合物半導体としては、例えば、CuInSe2、Cu(Ga,In)Se2などが挙げられる。
目的変数は、Pα,λ値の平均値、及び積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である。
Pα,λ値の平均値は、目的変数を算出する際の説明変数である。
積層構造の構造的特徴は、目的変数を算出する際の説明変数である。
Pα,λ値は、Pλ値から熱伝導方向(α)及び振動数領域を限定して特定される。
Pα,λ値の平均値は、複数の化合物構造体のそれぞれについて特定される。
平均値は、例えば、算術平均値である。
Pλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値を用いることで、Pλ値を用いるよりも特定される計算値と目的変数との相関が高くなる。
Pλ値の熱伝導方向の限定に関しては、直交座標(x,y,z)において、x,y,zそれぞれの熱伝導方向に限定したPx,λ値,Py,λ値,Pz,λ値を特定することができる。
Pλ値のz方向成分のPz,λ値は、以下の数式(2)で算出される。
なお、Px,λ+Py,λ+Pz,λ=1である。
相関算出部において特定される相関がより高くなる点で、熱伝導方向を積層構造の積層方向に限定して特定されるPα,λ値が好ましい。
例えば、図1に、Ge層とSi層とが交互にz方向に積層されたユニットセルを示す。なお、ユニットセルにおいて、z方向の層数は24であり、1層に含まれる元素の数は72である。即ち、ユニットセルには、24×72=1728個の元素が配されている。ユニットセルにおいて、Ge層では、Geがz方向に5つ積み上がっている。Si層では、Siがz方向に7つ積み上がっている。以下、このようなユニットセルを、z方向に積み上がっている1層の元素の数を用いて(Ge,Si=5,7)と記載する。
後述する図2に示すように、Pλ値には分布があり、Pλ値を、分布に応じた適当な振動数領域に限定することで、相関算出部において特定される相関が高くなる場合が多い。
即ち、Pλ値から振動数領域を限定して特定される値を用いることで、Pλ値を用いるよりも相関算出部において特定される相関が高くなる場合が多い。
限定する振動数領域としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
Pλ値は、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標である。
Pλ値は、化合物構造体についての基準振動解析により算出された値である。
基準振動解析により求められるモードは3N個存在する。
Pλ値は、通常、振動数毎に特定の値をとる。
積層構造の構造的特徴は、目的変数を算出する際の説明変数である。
熱伝導率は、化合物構造体中の元素の配置に影響されると考えられることから、積層構造の構造的特徴は、熱伝導率への寄与が大きいと考えられる。そのため、積層構造の構造的特徴を、目的変数に対する説明変数とすることで、熱伝導率の計算値と目的変数との相関を高めることができる。
(1)積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内に配列する積層方向の元素の数(以下、「1周期元素数」と称することがある)
(2)積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内の各層の積層方向の原子の数の各元素毎のばらつきから得られる偏差(以下、「1周期ばらつき」と称することがある)
ここで、偏差は、例えば、積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内の各層の積層方向の原子の数の各元素毎の標準偏差の平均値により算出される。
図3Aは、1周期元素数が4の場合のユニットセルの一例である。図3Aのユニットセルは、(Ge,Si=1,3)で表され、積層方向(縦方向)の配列に関し、Ge元素が1つ、Si元素が3つの合計4つで1周期を構成している。
図3Bは、1周期元素数が6の場合のユニットセルの一例である。図3Bのユニットセルは、(Ge,Si=5,1)で表され、積層方向(縦方向)の配列に関し、Ge元素が5つ、Si元素が1つの合計6つで1周期を構成している。
図3Cは、1周期元素数が24の場合のユニットセルの一例である。図3Cのユニットセルは、(Si,Ge,Si,Ge,Si,Ge,Si=3,4,3,1,5,6,2)で表され、積層方向(縦方向)の配列に関し、元素の数が合計24つで1周期を構成している。
図4Aは、1周期元素数が24の例であり、ユニットセルは、(Si,Ge,Si,Ge,Si,Ge=4,4,5,1,2,8)で表される。ここで、ユニットセルは繰り返し構造の1単位であり、上端のGe層と下端のGe層とはつながっているため、それらは積層方向にGe元素が8つ並んだ1つの層としてカウントする。
図4Aのユニットセルにおいて、積層方向の1層あたりのSi数の標準偏差は、1.25となり、積層方向の1層あたりのGe数の標準偏差は、2.87となる。そしてこれらの標準偏差の算術平均値は2.06となる。即ち、図4Aのユニットセルの「1周期ばらつき」は、2.06である。
図4Bのユニットセルにおいて、積層方向の1層あたりのSi数の標準偏差は、0.48となり、積層方向の1層あたりのGe数の標準偏差は、0.48となる。そしてこれらの標準偏差の算術平均値は0.48となる。即ち、図4Bのユニットセルの「1周期ばらつき」は、0.48である。
目的変数である関数は、Pα,λ値の平均値、及び積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である。
関数は、Pα,λ値の平均値、及び積層構造の構造的特徴を説明変数とする。関数は、目的変数と熱伝導率の計算値との相関が高くなるかぎり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
関数は、例えば、Pα,λ値の平均値と、積層構造の構造的特徴を説明変数として含む項との積で与えられる。
説明変数は、例えば、三角関数で表してもよいし、指数関数で表してもよい。
関数の一例を以下に示す。
関数の一例は、例えば、以下の数式(3)である。
Lは、1周期元素数を表す。
sは、1周期ばらつきを表す。
a,b,c,d,eは、パラメータを表す。パタメータは、目的関数と熱伝導率の計算値との相関が高くなるように適宜設定すればよい。
なお、振動数領域の限定、熱伝導方向の限定、関数における1周期元素数の用い方、関数における1周期ばらつきの用い方、並びに関数におけるパラーメータの用い方及びその数の変更は、適当なプログラムを作成することで、過度な試行錯誤を要さずに行うことができる。
推定部は、推定対象の化合物構造体について目的変数を特定し、特定した目的変数を相関に当てはめて、推定対象の化合物構造体の熱伝導性を推定する。
例えば、推定部では、相関における線形回帰モデルに、推定対象の化合物構造体について特定した目的関数を当てはめて、推定対象の化合物構造体の熱伝導率を特定する。
y=ax+b
yは、熱伝導率の計算値である。
xは、Pα,λ値の平均値、及び積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数である。
a、bは、係数である。
線形回帰モデルは、例えば、最小二乗法により算出することができる。
まず、熱伝導性を推定する対象の化合物構造体について、含有する2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の化合物構造体を作成する(S1)。
化合物構造体は、積層構造を有する。
化合物構造体は、例えば、ユニットセルを設定し、ユニットセルに2種類以上の元素を所定の比率で配置することにより作成する。ユニットセル内の元素の数は、例えば、直交座標(x,y,z)において、(12,6,24)=1728とする。
ユニットセルには、例えば、周期境界条件を設定する。
この際、ユニットセル内の元素の配置は任意であるため、構造的な歪みが大きい場合がある。その際には、ユニットセルに対して構造緩和計算を行う。
次に、説明変数である積層構造の構造的特徴の導出を行う(S3)。例えば、前述の1周期元素数及び1周期ばらつきのそれぞれを一つの説明変数とする。
次に、複数の化合物構造体のそれぞれについて、熱伝導率の計算を行う(S4)。熱伝導率の計算は、例えば、分子動力学法により行う。
なお、工程S2、工程S3、及び工程S4の順番は特に限定されない。
次に、Pα,λ値の平均値及び構造的特徴を説明変数に用いて目的変数の算出を行う(S5)。目的変数の算出は、振動数領域の限定、熱伝導方向の限定、関数における1周期元素数の用い方、関数における1周期ばらつきの用い方、並びに関数におけるパラーメータの用い方及びその数を適宜変更させながら、特定される関数である目的変数と熱伝導率の計算値との相関がより高くなるように、行う。
次に、熱伝導率の計算値と目的変数との相関の特定を行う(S6)。相関の特定は、例えば、直線回帰の最小二乗法により行い、以下の一次関数と、相関係数とを算出する。
y=ax+b
yは、熱伝導率の計算値である。
xは、Pα,λ値の平均値、及び積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数である。
a、bは、係数である。
目的変数は、Pα,λ値の平均値、1周期元素数、及び1周期ばらつきをそれぞれ1つの説明変数とする関数である
目的変数を当てはめる相関は、例えば、前述の一次関数である。
以上により、推定対象の化合物構造体の熱伝導性の推定が完了する。
さらに、本件で開示する熱伝導性の推定プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本件で開示する熱伝導性の推定プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本件で開示する熱伝導性の推定プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本件で開示する熱伝導性の推定プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
本件で開示する記録媒体は、本件で開示する熱伝導性の推定プログラムを記録してなる。
記録媒体は、コンピュータが読み取り可能である。
本件で開示する記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどが挙げられる。
また、本件で開示する記録媒体は、本件で開示する化学物質探索プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
記録媒体は、一過性であってもよいし、非一過性であってもよい。
熱伝導性の推定装置10においては、例えば、制御部11、メモリ12、記憶部13、表示部14、入力部15、出力部16、及びI/Oインターフェース部17がシステムバス18を介して接続されている。
制御部11としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
本件で開示する熱伝導性の推定装置における相関算出部、及び推定部は、例えば、制御部11により実現することができる。
また、本件で開示する熱伝導性の推定プログラムは、例えば、記憶部13に格納され、メモリ12のRAM(主メモリ)にロードされ、制御部11により実行される。
入力部15は、各種データの入力装置であり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウス等)などである。
出力部16は、各種データの出力装置であり、例えば、プリンタなどである。
I/Oインターフェース部17は、各種の外部装置を接続するためのインターフェースである。I/Oインターフェース部17は、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、MOディスク(Magneto−Optical disk)、USBメモリ〔USB(Universal Serial Bus) flash drive〕などのデータの入出力を可能にする。
図7に示す熱伝導性の推定装置は、熱伝導性の推定装置をクラウド型にした場合の例であり、制御部11が、記憶部13などとは独立している。図7に示す例においては、ネットワークインターフェース部19、20を介して、記憶部13などを格納するコンピュータ30と、制御部11を格納するコンピュータ40とが接続される。
ネットワークインターフェース部19、20は、インターネットを利用して、通信を行うハードウェアである。
図8に示す熱伝導性の推定装置は、熱伝導性の推定装置をクラウド型にした場合の例であり、記憶部13が、制御部11などとは独立している。図8に示す例においては、ネットワークインターフェース部19、20を介して、制御部11等を格納するコンピュータ30と、記憶部13を格納するコンピュータ40とが接続される。
図9に示す熱伝導性の推定装置1は、相関算出部2及び推定部3を有する。
Si結晶及びGe結晶の2種類の材料からなるSiGe積層構造について、Si及びGeの比率を変えて得られる熱伝導率と、開示の技術によって得られる目的変数との相関を特定した。
まず、図10に示す(Ge,Si,Ge,Si,Ge,Si,Ge,Si,Ge,Si,Ge,Si)=(2,1,1,1,2,2,5,3,1,1,3,2)のユニットセルを作成し、数式(1)に従って、振動数0THz〜16THzの範囲でPλ値を得た。
なお、表1−1のユニットセル1が、図10のユニットセルに対応する。ユニットセル2〜96は、図10のユニットセルにおいて、1層あたりの積層方向におけるSiの数、及び1層あたりの積層方向におけるGeの数を、表1−1〜表1−10に記載のとおりに変更したユニットセルを表す。
なお、ユニットセル1〜96の各々において、全原子数(N)=1,728であり、Pλ値の個数は3N=5,184個である。
次に、ユニットセル1〜96に示す構造について、分子動力学計算プログラムLAMMPSを用いて熱伝導率を算出した。
ユニットセル1〜96について、ユニットセルの構造的特徴である1周期元素数(L)、及び1周期ばらつき(s)を算出した。
更に、ユニットセル1〜96のPλ値、1周期元素数(L)、及び1周期ばらつき(s)を用い、振動数領域の限定、熱伝導方向の限定、関数における1周期元素数(L)の用い方、関数における1周期ばらつき(s)の用い方、並びに関数におけるパラーメータの用い方及びその数を適宜変更させながら、得られた関数(目的変数)が、特定した熱伝導率の計算値との相関が高くなるように、振動数領域の限定、熱伝導方向の限定、関数における1周期元素数(L)の用い方、関数における1周期ばらつき(s)の用い方、並びに関数におけるパラーメータの用い方及びその数を決定した。
その結果、振動数領域(f)を、5.3≦f≦7.9THzとした。
熱伝導方向を、積層構造の積層方向とした。
そして、目的変数(D)である関数を、以下の数式(3)とした。
Lは、1周期元素数を表す。
sは、1周期ばらつきを表す。
a,b,c,d,及びeは、以下の通りである。
a=−1,b=1,c=7,d=−1,e=3
なお、上記目的変数(D)を算出するに当たり、パラメータa,b,c,d,及びeは、以下の範囲及び間隔で変動させた。
ユニットセル1〜96について、それぞれ得られた目的変数(D)と熱伝導率とを図にプロットし、更に最小二乗法により線形回帰モデルを得た。それを、図11に示した。
図11においては、相関係数R2が0.8606であり、目的変数(D)と熱伝導率の計算値との間に強い相関があることが確認できた。
振動数領域の限定、及び熱伝導方向の限定は、実施例1と同じ条件とし、1周期元素数(L)、1周期ばらつき(s)、及びその他のパラーメータを用いない以外は、実施例1と同様にして、目的変数(D)と、熱伝導率の計算値との相関を特定した。結果を図12に示した。図12においては、相関係数R2が0.5596であった。
なお、比較例1の目的変数(D)は、以下の通りである。
(付記1)
2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する熱伝導性の推定装置であって、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定する相関算出部と、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する推定部と、
を有することを特徴とする熱伝導性の推定装置。
(付記2)
前記積層構造の前記構造的特徴が、下記構造的特徴(1)及び(2)であり、前記構造的特徴(1)及び(2)のそれぞれを説明変数とする付記1に記載の熱伝導性の推定装置。
(1)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内に配列する前記積層方向の元素の数
(2)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内の各層の前記積層方向の原子の数の各元素毎のばらつきから得られる偏差
(付記3)
前記熱伝導方向が、前記積層構造における積層方向である付記1又は2に記載の熱伝導性の推定装置。
(付記4)
前記目的変数が、前記Pα,λ値の平均値と、前記積層構造の前記構造的特徴を前記説明変数として含む項との積である付記1から3のいずれかに記載の熱伝導性の推定装置。
(付記5)
前記化合物構造体が、化合物半導体である付記1から4のいずれかに記載の熱伝導性の推定方法。
(付記6)
2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する熱伝導性の推定方法であって、
コンピュータが、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定し、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する、
ことを特徴とする熱伝導性の推定方法。
(付記7)
前記積層構造の前記構造的特徴が、下記構造的特徴(1)及び(2)であり、前記構造的特徴(1)及び(2)のそれぞれを説明変数とする付記6に記載の熱伝導性の推定方法。
(1)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内に配列する前記積層方向の元素の数
(2)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内の各層の前記積層方向の原子の数の各元素毎のばらつきから得られる偏差
(付記8)
前記熱伝導方向が、前記積層構造における積層方向である付記6又は7に記載の熱伝導性の推定方法。
(付記9)
前記目的変数が、前記Pα,λ値の平均値と、前記積層構造の前記構造的特徴を前記説明変数として含む項との積である付記6から8のいずれかに記載の熱伝導性の推定方法。
(付記10)
前記化合物構造体が、化合物半導体である付記6から9のいずれかに記載の熱伝導性の推定方法。
(付記11)
コンピュータに、2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定させる熱伝導性の推定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定させ、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する処理を実行させる、
ことを特徴とする熱伝導性の推定プログラム。
(付記12)
前記積層構造の前記構造的特徴が、下記構造的特徴(1)及び(2)であり、前記構造的特徴(1)及び(2)のそれぞれを前記説明変数とする付記11に記載の熱伝導性の推定プログラム。
(1)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内に配列する前記積層方向の元素の数
(2)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内の各層の前記積層方向の原子の数の各元素毎のばらつきから得られる偏差
(付記13)
前記熱伝導方向が、前記積層構造における積層方向である付記11又は12に記載の熱伝導性の推定プログラム。
(付記14)
前記目的変数が、前記Pα,λ値の平均値と、前記積層構造の前記構造的特徴を前記説明変数として含む項との積である付記11から13のいずれかに記載の熱伝導性の推定プログラム。
(付記15)
前記化合物構造体が、化合物半導体である付記11から14のいずれかに記載の熱伝導性の推定プログラム。
2 相関算出部
3 推定部
10 熱伝導性の推定装置
11 制御部
12 メモリ
13 記憶部
14 表示部
15 入力部
16 出力部
17 I/Oインターフェース部
18 システムバス
19 ネットワークインターフェース部
20 ネットワークインターフェース部
30 コンピュータ
40 コンピュータ
Claims (7)
- 2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する熱伝導性の推定装置であって、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定する相関算出部と、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する推定部と、
を有することを特徴とする熱伝導性の推定装置。 - 前記積層構造の前記構造的特徴が、下記構造的特徴(1)及び(2)であり、前記構造的特徴(1)及び(2)のそれぞれを前記説明変数とする請求項1に記載の熱伝導性の推定装置。
(1)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内に配列する前記積層方向の元素の数
(2)前記積層構造の積層方向の元素の配列の1周期内の各層の前記積層方向の原子の数の各元素毎のばらつきから得られる偏差 - 前記熱伝導方向の限定が、前記積層構造における積層方向への限定である請求項1又は2に記載の熱伝導性の推定装置。
- 前記目的変数が、前記Pα,λ値の平均値と、前記積層構造の前記構造的特徴を前記説明変数として含む項との積である請求項1から3のいずれかに記載の熱伝導性の推定装置。
- 前記化合物構造体が、化合物半導体である請求項1から4のいずれかに記載の熱伝導性の推定装置。
- 2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定する熱伝導性の推定方法であって、
コンピュータが、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定し、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する、
ことを特徴とする熱伝導性の推定方法。 - コンピュータに、2種類以上の元素を含み積層構造である化合物構造体の熱伝導性を推定させる熱伝導性の推定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記化合物構造体における前記2種類以上の元素の比率が互いに異なる複数の前記化合物構造体のそれぞれの熱伝導率の計算値と、フォノン振動モードの空間的な局在性を表す指標であるPλ値であって複数の前記化合物構造体のそれぞれについての基準振動解析により算出されたPλ値から熱伝導方向及び振動数領域を限定して特定されるPα,λ値の平均値、及び複数の前記化合物構造体のそれぞれの前記積層構造の構造的特徴を説明変数とする関数である目的変数と、を用いて、前記計算値と前記目的変数との相関を特定させ、
推定対象の前記化合物構造体について前記目的変数を特定し、特定された前記目的変数を前記相関に当てはめて、推定対象の前記化合物構造体の熱伝導性を推定する処理を実行させる、
ことを特徴とする熱伝導性の推定プログラム。
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〇高橋 憲彦、劉 宇、金田 千穂子 〇NORIHIKO TAKAHASHI, YU LIU, CHIOKO KANETA: "[10p−70A−5]マテリアルズ・インフォマティクスを適用した低熱伝導率Si/Ge積層構造の探索", 2019年 第66回応用物理学会春季学術講演会[講演予稿集] EXTENDED ABSTRACTS OF THE 66TH JSAP SP, JPN6023001587, ISSN: 0004970460 * |
〇高橋 憲彦、金田 千穂子 〇NORIHIKO TAKAHASHI, CHIOKO KANETA: "[14p−B12−14]低熱伝導率SiGe構造の探索〜フォノンモード解析〜 [14p-B12-14]Design of Si", 2016年 第77回応用物理学会秋季学術講演会[講演予稿集] EXTENDED ABSTRACTS OF THE 77TH JSAP AU, JPN6023001586, ISSN: 0004970461 * |
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