JP2021025455A - 風車のブレードのピッチ角の制御が可能な風力発電機、制御方法、および制御プログラム - Google Patents

風車のブレードのピッチ角の制御が可能な風力発電機、制御方法、および制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】風車の空力弾性モデルによりシミュレートしたピッチ角に基づいて制御を行い長寿命化が可能な風力発電機を提供する。【解決手段】風力発電機は、上記風車における第1の風速を測定する第1の測定手段16と、上記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に上記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定手段18と、上記第1の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーション部25と、上記第2の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記所定の時間後に第2の風速の風による上記ブレードの第2のピッチ角を算出する第2のシミュレーション部26と、上記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する演算部28と、上記指令ピッチ角により上記ブレードのピッチ角を制御する制御部29とを備える。【選択図】図3

Description

本発明は、風力発電機に関し、特に風力発電機に流入する風の現在および将来の風速に基づいて空力弾性モデルに基づく演算によりフィードフォワード制御によるブレードのピッチ角の制御技術に関する。
近年、地球温暖化の影響と推察される気候変動が拡大し、強力な台風による水害に加え、ゲリラ豪雨、竜巻等の被害も増加している。竜巻が発生する程ではないが、暴風や突風の発生も増加している。
風力発電機では、風速の変動に対して、一般的にブレードのピッチ角を制御してロータ回転数の変動を抑制している。この制御では、ロータ回転数誤差をエラー信号に用いるPIDフィードバック制御が用いられている。この制御では、風速の変動が大きい場合、例えば突風(ガスト)が発生した場合、風車が突風を受けてからピッチ角制御を行うので、その時間差により、ブレードのフラップ方向曲げ、回転軸へのスラストおよび主軸のねじりモーメントに過大な変動が表れる。これらの変動は、ブレード、主軸およびベアリング等の風力発電機の主要コンポーネントに過大な疲労荷重をもたらし、結果的に寿命が大幅に低減してしまう。
風力発電装置の前方の計測位置で計測した将来の風速と現在の風速とから現在から将来の風速を予測してその風速に基づいてピッチ角により運転制御を行う風力発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2013−177885号公報
しかしながら、特許文献1では、風荷重が風力発電装置に与える影響が無くなるようにフィードフォワード制御器によってピッチ角指令が決定されているが、その伝達関数は具体的に開示されていない。
本発明は、風車における風速と将来流入する風の予測した風速とに基づいて風車の空力弾性モデルによりシミュレートしたピッチ角に基づいて制御を行って長寿命化が可能な風力発電機を提供する。
本発明の一態様によれば、風車のブレードのピッチ角の制御が可能な風力発電機であって、上記風車における第1の風速を測定する第1の風速測定手段と、上記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に上記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定手段と、上記第1の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーション部と、上記第2の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記所定の時間後に上記第2の風速の風による上記ブレードの第2のピッチ角をシミュレートする第2のシミュレーション部と、上記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する演算部と、上記指令ピッチ角により上記ブレードのピッチ角を制御する制御部と、を備える、上記風力発電機が提供される。
上記態様によれば、上記風車における第1の風速と所定の時間後に上記風車に到達する風の予測した第2の風速のそれぞれに基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて第1のピッチ角および第2のピッチ角をシミュレートし、この第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出してピッチ角制御を行う。第1のピッチ角および第2のピッチ角の両方とも、上記風車の空力弾性モデルを用いたシミュレーションにより算出されているので、指令ピッチ角の妥当性が高く、風力発電機の制御性を向上できる。さらに、第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出して制御することで、ピッチ角のフィードフォワード制御が可能となる。これにより、風速変動時のブレードの曲げ荷重が低減されるのでブレードの疲労損傷を低減でき、これと共に空力スラストが低減されることでロータ軸の支持機構への荷重が低減され、風力発電機の長寿命化を図ることができる。また、ロータ回転数の変化を抑制でき、発電出力を安定化できる。
本発明の他の態様によれば、風力発電機における風車のブレードのピッチ角の制御方法であって、上記風車における第1の風速を測定する第1の風速測定ステップと、上記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に上記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定ステップと、上記第1の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーションステップと、上記第2の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記第2の風速の風による上記ブレードの第2のピッチ角をシミュレートする第2のシミュレートステップと、上記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する第3の演算ステップと、上記指令ピッチ角により上記ブレードのピッチ角を制御する制御ステップと、を含む、上記制御方法が提供される。
上記他の態様によれば、第1の風速と所定の時間後に上記風車に到達する風の予測した第2の風速のそれぞれに基づいて、並行して、風車の空力弾性モデルに基づくオイラー角による座標系で表した連立運動方程式を用いて第1のピッチ角および第2のピッチ角をシミュレートし、シミュレートした第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出してピッチ角制御を行う。第1のピッチ角および第2のピッチ角の両方とも、上記風車の空力弾性モデルを用いたシミュレーションにより算出されているので、指令ピッチ角の妥当性が高く、風力発電機の制御性を向上できる。さらに、第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出して制御することで、ピッチ角のフィードフォワード制御が可能となる。これにより、風速変動時のブレードの曲げ荷重が低減されるのでブレードの疲労損傷を低減でき、これと共に空力スラストが低減されることでロータ軸の支持機構への荷重が低減され、風力発電機の長寿命化を図ることができる。また、ロータ回転数の変化を抑制でき、発電出力を安定化できる。
本発明のその他の態様によれば、風力発電機における風車のブレードのピッチ角の制御プログラムであって、コンピュータに、上記風車における第1の風速を測定する第1の風速測定ステップと、上記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に上記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定ステップと、上記第1の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーションステップと、上記第2の風速に基づいて、上記風車の空力弾性モデルを用いて上記第2の風速の風による上記ブレードの第2のピッチ角をシミュレートする第2のシミュレーションステップと、上記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する演算ステップと、上記指令ピッチ角により上記ブレードのピッチ角を制御する制御ステップと、を実行させるための上記制御プログラムが提供される。
本発明の一実施形態に係る風力発電機の概略図である。 ピッチ角駆動部の基本構成図である。 本発明の一実施形態に係る風力発電機の概略構成を示すブロック図である。 風車の4つの自由度をオイラー角による座標系で表した図である 仮想現在ピッチ角シミュレーション器の概略構成を示すブロック図である。 予測ピッチ角シミュレーション器の概略構成を示すブロック図である。 演算制御部のハードウェア構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る風力発電機のピッチ制御方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る風力発電機のピッチ制御の計算例を示す図である。 図9に示した計算例と、比較例とを示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。なお、図面間において共通する要素については同じ符号を付し、その要素の詳細な説明の繰り返しを省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る風力発電機の概略図である。図1を参照するに、風力発電機10は、タワー11、ナセル12、ロータ13およびブレード14を有する。風力発電機10のブレード14は3枚に限定されず、2枚でもよく、4枚以上でもよい。風力発電機10は、タワー11が地上に設置されてもよく、海上に浮上するように設置されてもよく、海底に設置されてもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲では、タワー11、ナセル12、ロータ13およびブレード14からなる構造体を風車と称することもある。
風力発電機10は、一例としてアップウインドの水平軸型風車として説明する。ブレード14の基部およびロータ13には、ブレード14のピッチ角を変えるためのピッチ角駆動部15が設けられている。
図2は、ピッチ角駆動部の基本構成図である。図2を参照するに、ピッチ角駆動部15は、ロータ軸13aの軸芯に設けられた空隙部にロッド15aが配置され、ロータ軸後端部に配置されたアクチュエータ(不図示)によりロッド15aがロータ軸方向に駆動され、この動きをリンク機構部15bでブレード14のピッチベアリング(インナー側)14aに伝えピッチ角βの制御動作を行う。風力発電機10は、風況が変化した際、特に、ガスト(突風)が発生した際のブレードのピッチ角制御に特徴がある。
図3は、本発明の一実施形態に係る風力発電機の概略構成を示すブロック図である。ブロック図には、ピッチ角制御に関係する要素を示しており、他は図示および説明を省略する。
図3を図1および図2と合わせて参照するに、風力発電機10は、風向風速計16と、ライダー18と、ロータ回転数計測器22と、演算制御部23と、ピッチ角駆動部15とを有する。演算制御部23は、現在ピッチ角シミュレーション器25と、予測ピッチ角シミュレーション器26と、指令ピッチ角演算器28と、制御器29とを有する。
風向風速計16は、ナセル12上に設けられ、特に限定されないが、例えば風杯風速計、風車型風速計または超音波式風速計を用いることができる。風向風速計16は、風力発電機10に到来した風の現在の風速(「サイト風速us」と称する。)を測定し、演算制御部23にサイト風速usを送る。
ライダー(lidar)18は、ナセル12上に設けられ、例えばドップラーライダーを用いることができる。ライダー18は、ナセル12の視線方向前方の風向風速分布をレーザの反射光のドップラー効果を用いて測定する。すなわち、ライダー18は、前方の所定の距離毎に風速および風向を測定し、その風速風向分布から所定時間後の風力発電機10に到来する風の風速(以下、予測風速uFと称する。)を予測する。ライダー18は、
演算制御部23に予測風速uFを送る。
所定時間は、サイト風速usが周期的に変動している場合は、その周期をTwsとすると、所定時間は、0.01Tws以上で0.5Tws以下に設定することが、風による空力スラストを効果的に低減できる点で好ましく、0.2Tws以上で0.3Tws以下に設定することがさらに好ましい。空力スラストは、各ブレード14に働く曲げ加重のロータ軸方向の成分を合成して得られる軸力である。例えば、周期Twsが36秒の場合、所定時間は18秒以下に設定することが好ましく、7秒〜11秒に設定することがさらに好ましい。
所定時間は、制御器29が風向風速計16からサイト風速usを受信して変動周期を算出してその変動周期に応じて設定できるようにしてもよい。また、ライダー18が風速の風速風向分布から予測風速uFの変動周期を予測して制御器29に変動周期を送って、制御器29においてその変動周期に応じて所定時間を設定できるようにしてもよく、制御器29がライダー18から予測風速uFを受信して変動周期を予測してその変動周期に応じて設定できるようにしてもよい。また、ライダー18が突風を計測した場合、ライダー18が制御器29に突風の到達時間を送って、制御器29において突風の到達時間に応じて所定時間を可変で設定できるようにしてもよい。
現在ピッチ角シミュレーション器25は、風向風速計16から受信したサイト風速usに基づいたピッチ角を後述する手法で算出し、仮想現在ピッチ角βSとして指令ピッチ角演算器28に出力する。
予測ピッチ角シミュレーション器26は、ライダー18から受信した予測風速uFに基づいたピッチ角を後述する手法で算出し、予測ピッチ角βFとして指令ピッチ角演算器28に出力する。
指令ピッチ角演算器28は、現在ピッチ角シミュレーション器25から受信した仮想現在ピッチ角βSと、予測ピッチ角シミュレーション器26から受信した予測ピッチ角βFとから指令ピッチ角βCを算出し、制御器29に出力する。指令ピッチ角演算器28は、仮想現在ピッチ角βSから予測ピッチ角βFへの変化を先取りしてその変化分の一部を低減するように指令ピッチ角βCを算出する。例えば、サイト風速usが増加している場合であって、予測風速uFがサイト風速usよりも大きいときは予測ピッチ角βFは、仮想現在ピッチ角βSよりも大きくなるが、指令ピッチ角演算器28は、仮想現在ピッチ角βSよりも大きく予測ピッチ角βFよりも小さい指令ピッチ角βCを算出して出力する。指令ピッチ角演算器28は、例えば、指令ピッチ角βCを仮想現在ピッチ角βSと予測ピッチ角βFとの平均値(すなわち、βC=(βS+βF)/2)として算出してもよく、仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βFのそれぞれに異なる重みをつけて平均する加重平均値として算出してもよい。
制御器29は、指令ピッチ角演算器28から指令ピッチ角βCを受信してピッチ角駆動部15に指令ピッチ角βCを出力する。なお、制御器29は、この指令ピッチ角βCを送る直前に送信済みの指令ピッチ角βcpとの偏差分ΔβC(=βC−βcp)を出力してもよい。さらに、偏差分ΔβCが予め設定したΔβRよりも小さい場合はピッチ角駆動部15に偏差分ΔβCを出力しないようにすることが好ましい。偏差分ΔβCが設定したΔβRよりも小さい場合は偏差分ΔβCを駆動する効果が高くなく、かつピッチ角駆動部15の動作を抑制してピッチ角駆動部15の耐久性に及ぼす悪影響を回避できる。
制御器29にロータ回転数計測器22から実ロータ回転数が入力されるようにしてもよい。制御器29は、実ロータ回転数が設定した回転数よりも低い場合は、指令ピッチ角βCをピッチ角駆動部15に出力しないようにしてもよい。
ピッチ角駆動部15は、制御器29から入力された指令ピッチ角βCまたは偏差分ΔβCを駆動してブレード14のピッチ角を変更して、予測風速uFと予測した到来する風に適応する。
ロータ回転数計測器22は、ナセル12内のロータ軸13aの回転数(「実ロータ回転数」とも称する。)を計測し、現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26に送られ、制御器29においても用いられる。
次に現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26についてより具体的に説明する。現在ピッチ角シミュレーション器25は、風向風速計16により計測したサイト風速usに基いて仮想現在ピッチ角βSを算出するリアルタイムシミュレータである。予測ピッチ角シミュレーション器26は、ライダー18により計測した予測風速uFに基いて予測ピッチ角βFを算出するリアルタイムシミュレータである。両方のリアルタイムシミュレータは同様のアルゴリズムを用いている。リアルタイムシミュレータは、風車の空力弾性モデルにより、風車の多関節に応じた4つの自由度に対応するオイラー角の座標系を用いて慣性領域についての連立基礎方程式を作成し、ブレード空力特性領域並びにタワーおよびブレード曲振動領域おける外力の併入を行ったものである。
風車の基本特性に最も影響するブレードの挙動は、風車の多関節系として4つの自由度に基づいて表すことができる。この4つの自由度に対応させたオイラー角による座標系を用いて、ラグランジェの方法により風車の運動解析を行って連立運動方程式を作成し、その解を演算により算出する。これにより、通常行われている直交座標系を用いた方法よりも冗長性がなく、数値演算の負荷が大幅に軽減されリアルタイムのシミュレーションが可能となる。
図4は、風車の4つの自由度をオイラー角による座標系で表した図である。図4を図1と合わせて参照するに、βはピッチ角であり、ブレード14の翼断面のほぼ空力中心線上に設けられた軸回りに翼型の風向に対する迎角を調整する角である。ψはアジマス角であり、ロータ回転軸まわりに回転するロータ13としてのブレード14の角である。θはチルト角であり、基準点回りに回頭するロータ回転軸の傾き角(垂直状態をゼロ、下向き正とする。)である。φはヨー角であり、ナセル12の方位変化に対応する角であり、ロータ回転軸の垂直軸回りの角である。図4中のuは風速、aは基準点からロータ回転中心までの距離、bはロータ回転中心からブレード重心までの距離を表わす。ブレードの質量をm、ロータ回転軸まわりの慣性モーメントをI、ピッチ軸まわりの慣性モーメントをJ、ブレード重心はピッチ軸上にあると仮定する。
風車の慣性領域についての連立基礎方程式を説明する。ヨー(φ)系は、下記式(1)で表される。
Figure 2021025455
チルト(θ)系は、下記式(2)で表される。
Figure 2021025455
アジマス(ψ)系は、下記式(3)で表される。
Figure 2021025455
ピッチ(β)系は、下記式(4)で表される。
Figure 2021025455
上記式(1)〜(4)において、gは重力加速度、係数Kijのうち、K11、K24、K37、K4aは、それぞれ、ヨー(φ)系、チルト(θ)系、アジマス(ψ)系、ピッチ(β)系の主慣性モーメント、K*8は遠心力による成分の係数、K*3、K*6、K*9、K*b、K*c、K*dはカップリングした角速度の係数である。より具体的には、ピッチ(β)系の係数は、K41はJcosψsinθと表され、ヨー角加速度に伴う連成項でブレード位置が垂直の時に最大となる。K43はJcosψcosθと表され、ヨー角速度とチルト角速度の連成に伴うジャイロモーメントである。K44は−Jsinψと表され、チルト角加速度に伴う連成項でブレード位置が水平の時に最大となる。K46は−Jcosψと表され、チルト角速度とアジマス角速度の連成に伴うジャイロモーメントである。K49は−Jsinψsinθと表されヨー角速度とアジマス角速度の連成に伴うジャイロモーメントである。K4aはJと表され主慣性モーメントである。
図5は、現在ピッチ角シミュレーション器の機能構成を示すブロック図である。図5を参照するに、現在ピッチ角シミュレーション器25は、ロータトルク演算器30と、ロータ回転数演算器31と、ピッチ角演算器32とを有する。
ロータトルク演算器30は、風向風速計16が計測したサイト風速usと、ロータ回転数演算器31が算出したロータ回転数
Figure 2021025455
と、ピッチ角演算器32が算出済みの仮想現在ピッチ角βSとが入力され、定式化された空力トルク係数CqからロータトルクQASを算出してロータ回転数演算器31に出力する。
ロータトルクQASは、下記式(5)のように表される。
Figure 2021025455
ここで、ρは空気の密度、usは計測したサイト風速、πは円周率、rはロータ半径である。なお、サイト風速usをタワー11の曲げによる風向方向のタワー振動の速度を用いて補正してもよい。
空力トルク係数Cqはブレード空力特性領域において、実際の二枚翼ブレードの翼素運動量理論モデル(BEM)による解析結果により回帰式として得たものであり、下記式(6)のように表される。
Figure 2021025455
ここで、βSはピッチ角演算器32が算出済みの仮想現在ピッチ角βSであり、λは周速比であり、下記式(7)で表される。
Figure 2021025455
ここで、
Figure 2021025455
は、ロータ回転数演算器31が算出したロータ回転数である。
ロータ回転数演算器31は、ロータトルク演算器30が算出したロータトルクQASが入力され、ロータ回転数および位相を連立基礎方程式におけるアジマス(ψ)系の上記式(3)の積分により算出し、ロータ軸13aの捩り剛性および減衰率を考慮して発電電圧および電流を算出し、発電機の出力調整を行ってロータ回転数
Figure 2021025455
を算出してピッチ角演算器32およびロータトルク演算器30に出力する。
ピッチ角演算器32は、ロータ回転数演算器31から算出したロータ回転数と、ロータ回転数計測器22が計測した実ロータ回転数とが入力され、連立基礎方程式におけるピッチ(β)系の式(4)の積分において、空力トリムモーメントおよびピッチ角制御モータトルクをダランベールの定理によって反映した演算により仮想現在ピッチ角βSを算出して図2に示した指令ピッチ角演算器28に出力する。ピッチ角演算器32では、設定したロータ回転数と実ロータ回転数との差をエラー信号とするPID制御によりピッチ角制御モータのトルク係数Qβを算出して、これにより実ロータ回転数が設定したロータ回転数に対して回転数過大の場合は仮想現在ピッチ角βSが増加するように、回転数不足の場合は仮想現在ピッチ角βSが減少するようにする。このようにして、現在ピッチ角シミュレーション器25は、風向風速計16が計測したサイト風速usに基づいて仮想現在ピッチ角βSを算出する。
図6は、予測ピッチ角シミュレーション器の機能構成を示すブロック図である。図6を図5と合わせて参照するに、予測ピッチ角シミュレーション器26は、ロータトルク演算器33と、ロータ回転数演算器34と、ピッチ角演算器35とを有する。ロータトルク演算器33、ロータ回転数演算器34およびピッチ角演算器35は、それぞれ図5に示した、ロータトルク演算器30と、ロータ回転数演算器31と、ピッチ角演算器32と同様の演算を行うので同様な事項については詳細な説明を省略する。
ロータトルク演算器33は、ライダー18が計測した予測風速uFと、ロータ回転数演算器34が算出したロータ回転数
Figure 2021025455
と、ピッチ角演算器35が算出済みの予測ピッチ角βFとが入力され、図5に示したロータトルク演算器30と同様にしてロータトルクQAFを算出してロータ回転数演算器34に出力する。
ロータ回転数演算器34は、ロータトルク演算器33が算出したロータトルクQAFが入力され、図5に示したロータ回転数演算器31と同様にしてロータ回転数
Figure 2021025455
を算出してピッチ角演算器35およびロータトルク演算器33に出力する。
ピッチ角演算器35は、ロータ回転数演算器34から算出したロータ回転数と、ロータ回転数計測器22が計測した実ロータ回転数とが入力され、図5に示したピッチ角演算器32と同様にして予測ピッチ角βFを算出して図3に示した指令ピッチ角演算器28に出力する。
このように、現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26は、それぞれ、風向風速計16により計測したサイト風速us、ライダー18により予測した予測風速uFに基づいて、仮想現在ピッチ角βS、予測ピッチ角βFを算出する。現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26は、ハードウェアの性能に依存するが、従来よりも負荷が大幅に小さく、それぞれ、サイト風速us、予測風速uFが入力されると、短時間で、離散化による数値演算手法を用いた場合、例えば1ミリセカンド以下で仮想現在ピッチ角βS、予測ピッチ角βFを算出できる。
図7は、図3に示した演算制御部のハードウェア構成を示す図である。図7を参照するに、演算制御部23は、CPU40〜42と、メモリ43と、送受信インタフェースと、これらを接続するバス46を有する。演算制御部23は、さらに、ディスプレイ等の表示部48、マウスやキーボード等のユーザインタフェース49を有してもよい。
CPU(プロセッサ)40〜42は、公知のMPU(マイクロプロセッサ)を適宜選択できる。CPU40は図3の現在ピッチ角シミュレーション器25の仮想現在ピッチ角βSをシミュレートする演算を実行し、CPU41は図3の予測ピッチ角シミュレーション器26の予測ピッチ角を算出する演算を実行する。CPU40とCPU41とが並列してシミュレートすることにより、リアルタイムのシミュレーションが可能となる。CPU42は、図3の指令ピッチ角演算器28および制御器29の演算および制御を行う。後述する一実施形態に係る風力発電機のピッチ角制御方法の各ステップのうち、上記のシミュレーションおよび演算以外のステップをCPU42で実行してもよく、他のCPUで実行してもよい。CPU40〜42の演算過程および演算結果はメモリ43に記憶することができる。なお、3個のCPU40〜42を用いる代わりに、より多くのCPUを用いてもよく、あるいはコア数が3個以上のCPUを1つ以上用いてもよい。
メモリ43は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリーメモリ)であり、独立したチップでもよく、CPU40〜42に含まれるメモリでもよい。メモリ43は、現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26の演算プログラムを記憶してもよく、指令ピッチ角演算器28および制御器29の演算プログラムおよび制御プログラムを記憶してもよい。風力発電機10において後述する一実施形態に係る風力発電機のピッチ角制御方法の各ステップを実行するプログラムをメモリ43に記憶してもよい。
送受信インタフェース44は、演算制御部23と、風向風速計16、ライダー18、ロータ回転数計測器22、ナセル内の各種制御器および計測器、例えばピッチ角駆動部15と接続するためのインタフェース回路である。表示部48は、特に限定されず、公知のディスプレイを用いることができる。表示部48は、風速、各種の演算結果および指令ピッチ角等を表示できる。
ユーザインタフェース49は、ユーザの操作用のデバイスのためのインタフェースで、入力用のキーボード(不図示)や操作用のマウス(不図示)等が接続される。
本実施形態の風力発電機10によれば、サイト風速usと予測風速uFのそれぞれに基づいて、仮想現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26のそれぞれが、風車の空力弾性モデルに基づくオイラー角による座標系で表した連立運動方程式を用いて仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βFをシミュレートする。指令ピッチ角演算器28が仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βFに基づいて指令ピッチ角βCを算出する。仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βFの両方とも、風車の空力弾性モデルを用いたシミュレーションにより算出されているので、指令ピッチ角βCの妥当性が高く、風力発電機10の制御性を向上できる。
また、所定の時間後の予測した予測風速uFに基づいてシミュレートした予測ピッチ角βFとサイト風速usに基づいてシミュレートした仮想現在ピッチ角βSとに基づいて指令ピッチ角を算出して制御することで、ピッチ角のフィードフォワード制御が可能となる。これにより、風速変動時のブレード14の曲げ荷重が低減されるのでブレード14の疲労損傷を低減でき、これと共に空力スラストが低減されることでロータ軸13aの支持機構への荷重が低減され、風力発電機10の長寿命化を図ることができる。また、ロータ回転数の変化を抑制でき、発電出力を安定化できる。
また、指令ピッチ角演算器28が仮想現在ピッチ角βSから予測ピッチ角βFへの変化を抑制するように指令ピッチ角βCを算出してピッチ角制御を行う。これにより、風速増加時では、仮想現在ピッチ角βSよりも大きくかつ予測ピッチ角βFよりも小さい指令ピッチ角βCが算出・指令されるので、ブレード14の曲げ加重が抑制され、空力スラストの減少によってタワー11の曲げ加重が低減され、ロータ回転数の急激な増加を抑制して発電出力を安定化できる。また、風速が増加直後に急激に減少する場合は、仮想現在ピッチ角βSよりも小さくかつ予測ピッチ角βFよりも大きい指令ピッチ角βCが算出・指令されるので、ロータ回転数の低下を抑制あるいはロータ回転数を増加して発電出力を安定化できる。また、余分なピッチ角の制御が抑制され、ピッチ角制御のための電力が削減される。
図8は、本発明の一実施形態に係る風力発電機のピッチ角制御方法のフローチャートである。図8を参照しつつ、適宜図3、5および6を参照してピッチ角制御方法を説明する。
S101では、風向風速計16がナセル12に流入した現在の風速を計測し、サイト風速usとして現在ピッチ角シミュレーション器25に出力する。
S111では、ライダー18がナセル12前方の風向と風速を計測し、所定の時間後に流入する風の風速を予想して予測風速uFとして予測ピッチ角シミュレーション器26に出力する。
次いで、現在ピッチ角シミュレーション器25はS102〜S106の各ステップを、予測ピッチ角シミュレーション器26はS112〜S116の各ステップを並行して実行する。
[仮想現在ピッチ角βSの算出]
S102では、現在ピッチ角シミュレーション器25においてロータトルク演算器30は、風向風速計16が計測したサイト風速usと、ロータ回転数演算器31が算出したロータ回転数
Figure 2021025455
と、ピッチ角演算器32が算出済みの仮想現在ピッチ角βSとが入力され、定式化された空力トルク係数Cq(上記式(6))からロータトルクQAS(上記式(5))を算出してロータ回転数演算器31に出力する。なお、空力トルク係数Cqおよび算出済みの仮想現在ピッチ角βSは初期値をそれぞれ0、0ラジアン(rad)としてもよい。
次いで、S103では、ロータ回転数演算器31は、ロータトルク演算器30が算出したロータトルクQASが入力され、ロータ回転数および位相を連立基礎方程式におけるアジマス(ψ)系の上記式(3)の積分により算出し、ロータ軸13aの捩り剛性および減衰率を考慮して発電電圧および電流を算出し、発電機の出力調整を行ってロータ回転数
Figure 2021025455
を算出してロータトルク演算器30に出力する。
次いで、S104では、ロータ回転数演算器31は、算出したロータ回転数を予め設定した設定ロータ回転数
Figure 2021025455
と比較する。算出したロータ回転数が設定ロータ回転数よりも大きい場合(Yes)はピッチ角演算器32に算出したロータ回転数を出力し、S105に進む。算出したロータ回転数が設定ロータ回転数以下の場合(No)はS101に戻る。設定ロータ回転数は、風力発電機10の発電開始から定格運転に至る過程において、通常の風況ではロータ回転数を増加させるためにピッチ角を0ラジアンに固定する。
次いで、S105では、ピッチ角演算器32は、ロータ回転数演算器31から算出したロータ回転数と、ロータ回転数計測器22が計測した実ロータ回転数とが入力され、連立基礎方程式におけるピッチ(β)系の式(4)の積分において、空力トリムモーメントおよびピッチ角制御モータトルクをダランベールの定理によって反映した演算により仮想現在ピッチ角βSを算出する。ピッチ角演算器32では、設定したロータ回転数と実ロータ回転数との差をエラー信号とするPID制御によりピッチ角制御モータのトルク係数Qβを算出して、これにより実ロータ回転数が設定したロータ回転数よりも高い場合は仮想現在ピッチ角βSが増加するように、回転数不足の場合は仮想現在ピッチ角βSが減少するようにする。ピッチ角演算器32は、算出した仮想現在ピッチ角βSを指令ピッチ角演算器28に出力する。
[予測ピッチ角βFの算出]
S112では、予測ピッチ角シミュレーション器26においてロータトルク演算器33は、ライダー18が予測した予測風速uFと、ロータ回転数演算器34が算出したロータ回転数
Figure 2021025455
と、ピッチ角演算器32が算出済みの予測ピッチ角βFとが入力され、定式化された空力トルク係数Cq(上記式(6))からロータトルクQAF(上記式(5))を算出してロータ回転数演算器34に出力する。なお、空力トルク係数Cqおよび算出済みの仮想現在ピッチ角βFは初期値をそれぞれ0、0ラジアンとしてもよい。
次いで、S113では、ロータ回転数演算器34が、ロータトルク演算器30が算出したロータトルクQAFが入力され、ロータ回転数および位相を連立基礎方程式におけるアジマス(ψ)系の上記式(3)の積分により算出し、ロータ軸13aの捩り剛性および減衰率を考慮して発電電圧および電流を算出し、発電機の出力調整を行ってロータ回転数
Figure 2021025455
を算出してピッチ角演算器35およびロータトルク演算器33に出力する。
次いで、S114では、ロータ回転数演算器34は、算出したロータ回転数がS104と同様のロータ回転数
Figure 2021025455
と比較する。算出したロータ回転数が設定ロータ回転数よりも大きい場合(Yes)はピッチ角演算器35に算出したロータ回転数を出力し、S115に進む。算出したロータ回転数が設定ロータ回転数以下の場合(No)は、S111に戻る。
次いで、S115では、ピッチ角演算器35は、ロータ回転数演算器34から算出したロータ回転数と、ロータ回転数計測器22が計測した実ロータ回転数とが入力され、連立基礎方程式におけるピッチ(β)系の式(4)の積分において、空力トリムモーメントおよびピッチ角制御モータトルクをダランベールの定理によって反映した演算により予測ピッチ角βFを算出する。ピッチ角演算器35は、算出した予測ピッチ角βFを指令ピッチ角演算器28に出力する。
[指令ピッチ角の算出]
次いで、S120では、指令ピッチ角演算器28は、仮想現在ピッチ角βSと予測ピッチ角βFとにより、指令ピッチ角βCを算出する。指令ピッチ角演算器28は、仮想現在ピッチ角βSから予測ピッチ角βFへの変化を先取りしてその変化分の一部を低減するように指令ピッチ角βCを算出する。指令ピッチ角演算器28は、例えば、指令ピッチ角βCを仮想現在ピッチ角βSと予測ピッチ角βFとの平均値(すなわち、βC=(βS+βF)/2)として算出してもよく、仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βF。のそれぞれに異なる重みをつけて平均する加重平均値として算出してもよい。
次いで、S121では、指令ピッチ角演算器28は、指令ピッチ角βCを制御器29を介してピッチ角駆動部15に出力する。次いで、S101およびS111に戻る。なお、図示していないが、制御器29は、実ロータ回転数が設定した回転数よりも低い場合は、指令ピッチ角βCをピッチ角駆動部15に出力しないようにしてもよい。
本実施形態の風力発電機のピッチ角制御方法によれば、サイト風速usと予測風速uFのそれぞれに基づいて、現在ピッチ角シミュレーション器25および予測ピッチ角シミュレーション器26のそれぞれが、S102〜S106と並行して、風車の空力弾性モデルに基づくオイラー角による座標系で表した連立運動方程式を用いてシミュレートした仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βFにより、指令ピッチ角演算器28が仮想現在ピッチ角βSから予測ピッチ角βFへの変化を先取りしてその変化分の一部を低減するように指令ピッチ角βCを算出してピッチ角制御を行う。これにより、風速増加時では、仮想現在ピッチ角βSよりも大きくかつ予測ピッチ角βFよりも小さい指令ピッチ角βCが算出・指令されるので、空力スラストが抑制され、ブレード14およびタワー11の曲げ加重が低減され、ロータ回転数の急激な増加を抑制して発電出力を安定化できる。また、風速が増加直後に急激に減少する場合は、仮想現在ピッチ角βSよりも小さくかつ予測ピッチ角βFよりも大きい指令ピッチ角βCが算出・指令されるので、ロータ回転数の低下を抑制あるいはロータ回転数を増加して発電出力を安定化できる。また、余分なピッチ角の制御が抑制され、ピッチ角制御のための電力が削減される。また、仮想現在ピッチ角βSおよび予測ピッチ角βFの演算が同様の手法で算出されるので、互いの整合性が高く、確実な制御が可能となる。
[計算例]
3枚翼の風力発電機について、風力発電機に到来する風の風速を仮定して、計算例として、本実施形態に係る風力発電機のピッチ角制御を行い、空力スラストおよび発電出力を求めた。風力発電機の代表的なパラメータは以下の通りである。
ロータ半径(r):16.5m、ブレード重量(m):1350kg、ブレード慣性モーメント(I):4000kgm2、ブレード慣性モーメント(ピッチ軸まわり)(J):1500kgm2、ロータ重量(mhub):4000kg、ロータ中心とヨー軸との距離(a):1.6m、回転中心とブレード重心との距離(b):5.5m、タワー高さ(H):18m、ナセル慣性モーメント(IN):50000kgm2、ハブ慣性モーメント(Ihub):1200kgm2、定格発電出力:300kW。
図9は、本発明の一実施形態に係る風力発電機のピッチ角制御の計算例を示す図であり、(a)は仮定したサイト風速、(b)は予測風速、(c)指令ピッチ角、(d)はロータ回転数、(e)は発電出力を示す。
図9(a)を参照するに、ナセル12上に設けられた風向風速計16が計測したサイト風速usを示している。風力発電機に流入する風は突風(ガスト)発生時を想定して、風速が0秒において最小値の7m/sから18秒において最大値の17m/sまで増加し、36秒において最小値の7m/sまで減少するとし、この繰り返しを36秒の周期で周期的に変化すると仮定した。
図9(b)を参照するに、ライダー18は、前方の風向数速を計測し6秒後に風車に流入する風速を予測風速uFとして予測していたと仮定する。
図9(c)を図9(a)および(b)を合わせて参照するに、例えば0秒から36秒の時間期間の風力発電機の動作を比較すると、0秒から18秒まで、予測風速uFおよびサイト風速usの増加に対応するように指令ピッチ角βCが0ラジアンから増加している。そして、サイト風速usが最大値になる前の16秒において予測風速uFの減少に対応するように指令ピッチ角βCが減少し始めている。これは、指令ピッチ角βCがサイト風速usに基づいて現在ピッチ角シミュレーション器25が算出した仮想現在ピッチ角βSと、図9(b)に示す予測風速uFに基づいて予測ピッチ角シミュレーション器26が算出した予測ピッチ角βFとに基づいて指令ピッチ角演算器28により決定されているからである。これにより、余分なピッチ角の制御を抑制することができる。
図9(d)を参照するに、0秒からサイト風速および予測風速uFの増加に対して、ロータ回転数はほぼ一定に保たれていることが分かる。これは、指令ピッチ角βCを増加してブレードの揚力の増加が抑制されているからである。20秒からは指令ピッチ角βCを低減してサイト風速および予測風速uFの減少に拘わらずロータ回転数が増加していることが分かる。
図9(e)に示すように、サイト風速が増加時に発電出力の減少が抑制され、風速変動時の発電出力の損失が抑制されていることが分かる。さらに、発電出力の定格発電出力である300kWに近づいていることが分かる。
図10は、図9に示した計算例と、比較例とを示す図である。比較例として、サイト風速に基づいてピッチ角制御をフィードバック制御で行った例を示している。計算例は黒線で、比較例はグレー線で示す。なお、風速については図9(a)および(b)と同様である。図10(a)〜(c)を参照しつつ説明する。
サイト風速の増加時では、図9(a)に示した例えば0秒から18秒において、図10(a)に示すように、計算例の指令ピッチ角は、比較例の指令ピッチ角よりも先行して増加しており、計算例の指令ピッチ角の最大値は、比較例の指令ピッチ角の最大値よりも低減されている。これにより、図10(b)に示すように、計算例の空力スラストが比較例の空力スラストに対して大幅に低減されている。また、図10(c)に示すように、計算例の発電出力は比較例の発電出力よりも急激な増加が抑制されていることが分かる。
サイト風速の最大値から減少への移行時では、図9(a)に示した例えば18秒から36秒において、図10(a)に示すように計算例の指令ピッチ角は、比較例の指令ピッチ角よりも先行して減少しており、計算例の指令ピッチ角は、この期間においても比較例の指令ピッチ角よりもほぼ小さい。図10(c)に示すように、計算例の発電出力は比較例の発電出力よりも増加して定格運転出力である300kWに近づいてことが分かる。
以上のことから、計算例では、比較例よりも、ピッチ角の操作量を低減してそのための電力が削減され、空力スラストの最大値が低減されており、風力発電機の主要コンポーネントの荷重変化が抑制される。また、発電出力が定格発電出力からの乖離が低減されている。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施形態に係る風力発電機10のピッチ角制御方法を風力発電機10において実行するプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD−ROM等の記憶媒体に書き込んで配布してもよい。
10 風力発電機
11 タワー
12 ナセル
13 ロータ
14 ブレード
15 ピッチ角駆動部
16 風向風速計
18 ライダー
22 ロータ回転数計測器
23 演算制御部
25 現在ピッチ角シミュレーション器
26 予測ピッチ角シミュレーション器
28 指令ピッチ角演算器
29 制御器
30,33 ロータトルク演算器
31,34 ロータ回転数演算器
32,35 ピッチ角演算器
40〜42 CPU
43 メモリ
44 送受信インタフェース

Claims (10)

  1. 風車のブレードのピッチ角の制御が可能な風力発電機であって、
    前記風車における第1の風速を測定する第1の風速測定手段と、
    前記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に前記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定手段と、
    前記第1の風速に基づいて、風車の空力弾性モデルを用いて前記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーション部と、
    前記第2の風速に基づいて、前記風車の空力弾性モデルを用いて前記所定の時間後に該第2の風速の風による前記ブレードの第2のピッチ角をシミュレートする第2のシミュレーション部と、
    前記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する演算部と、
    前記指令ピッチ角により前記ブレードのピッチ角を制御する制御部と、
    を備える、前記風力発電機。
  2. 前記風車の空力弾性モデルは、前記第1および第2のピッチ角を、慣性領域の計算にオイラー角による座標系を導入した運動方程式を含む、請求項1記載の風力発電機。
  3. 前記所定の時間は、前記第1の風速または第2の風速が周期的に変動する場合は、その変動周期の0.01倍以上0.5倍以下に設定される、請求項1または2記載の風力発電機。
  4. 前記制御部は、前記第1の風速の変動周期を算出して、該変動周期に応じて前記所定の時間を設定する、請求項3記載の風力発電機。
  5. 前記第2の風速測定手段または前記制御部は、前記第2の風速の変動周期を予測し、
    前記制御部は、前記変動周期に応じて前記所定の時間を設定する、請求項3記載の風力発電機。
  6. 前記演算部において、前記第1のピッチ角から前記第2のピッチ角への変化分の一部を低減するように前記指令ピッチ角を算出する、請求項1〜5のうちいずれか一項記載の風力発電機。
  7. 前記演算部において、前記指令ピッチ角が前記第1のピッチ角と前記第2のピッチ角との平均値である、請求項1〜5のうちいずれか一項記載の風力発電機。
  8. 前記制御部は、前記ブレードのピッチ角のフィードフォワード制御を行う、請求項1〜7のうちいずれか一項記載の風力発電機。
  9. 風力発電機における風車のブレードのピッチ角の制御方法であって、
    前記風車における第1の風速を測定する第1の風速測定ステップと、
    前記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に前記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定ステップと、
    前記第1の風速に基づいて、前記風車の空力弾性モデルを用いて前記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーションステップと、
    前記第2の風速に基づいて、前記風車の空力弾性モデルを用いて前記所定の時間後に該第2の風速の風による前記ブレードの第2のピッチ角をシミュレートする第2のシミュレートステップと、
    前記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する演算ステップと、
    前記指令ピッチ角により前記ブレードのピッチ角を制御する制御ステップと、
    を含む、前記制御方法。
  10. 風力発電機における風車のブレードのピッチ角の制御プログラムであって、
    コンピュータに、
    前記風車における第1の風速を測定する第1の風速測定ステップと、
    前記風車の上流の風向および風速を測定して、所定の時間後に前記風車に到達する風の第2の風速を予測する第2の風速測定ステップと、
    前記第1の風速に基づいて、前記風車の空力弾性モデルを用いて前記ブレードの第1のピッチ角をシミュレートする第1のシミュレーションステップと、
    前記第2の風速に基づいて、前記風車の空力弾性モデルを用いて前記所定の時間後に該第2の風速の風による前記ブレードの第2のピッチ角をシミュレートする第2のシミュレーションステップと、
    前記第1のピッチ角および第2のピッチ角に基づいて指令ピッチ角を算出する演算ステップと、
    前記指令ピッチ角により前記ブレードのピッチ角を制御する制御ステップと、
    を実行させるための前記制御プログラム。
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