JP2021025130A - 基材上に金属膜が形成された複合体の製造方法および複合体 - Google Patents

基材上に金属膜が形成された複合体の製造方法および複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】剥離耐性に優れた金属膜を基材上に簡便に形成する方法、及び該金属膜を表面に有する複合体を提供する。【解決手段】基材上に金属膜が形成された複合体を製造するための方法は、Cdよりイオン化傾向が小さい金属成分とキレート剤とを含む金属キレート錯体溶液を前記基材に塗布する工程、および、前記基材の前記金属キレート錯体溶液を塗布した部分を熱処理する工程を含むことを特徴とする。好ましくは、前記金属キレート錯体溶液が更に界面活性剤を含み、前記基材がセメント硬化体であり、前記金属成分がCuまたはNiである。【選択図】図1

Description

本発明は、剥離耐性に優れた金属膜を基材上に簡便に形成する方法、および剥離耐性に優れた金属膜が基材上に形成された複合体に関するものである。
基材上に金属膜を形成する技術は、様々な技術分野で利用されてきた。例えば回路基板は、基板上に銅箔を接着剤で貼り付け、銅箔をエッチングして回路を形成することにより製造されている。しかし、例えば基板または銅箔と接着剤との親和性が低い場合には、接着剤を用いる方法では金属膜が剥離するおそれがある。
接着剤を使わずに基材上に金属膜を形成する技術としては、スパッタリングがある。スパッタリングは、真空中でArガス等の不活性ガスを導入し、成膜材料からなるターゲットにマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させ、不活性ガス原子をイオン化し、高速でターゲットの表面に衝突させてターゲットを構成する成膜材料の粒子を激しく弾き出し、基材の表面に付着させて金属膜を形成する技術である。しかしスパッタリングは、実施コストが高いことに加えて、真空中で行う必要があることから大きな構造物への適用やin situでの実施は難しい。
例えば港湾施設や海上の空港施設などを構成するコンクリートは、海水などに対する防食のため、表面をチタン膜で被覆し、内部の鉄筋に防食電流を供給することが行われている(特許文献1等)。しかし施設を構成する巨大なコンクリートの表面をスパッタリングにより金属で被覆することは実質的に不可能であるといえる。よって、コンクリート建材などを金属で被覆するには、一般的に、溶射法が用いられている(特許文献2等)。
また、下水中には硫化水素、硫黄、チオ硫酸イオンなどを酸化して硫酸を産生するチオバチルス属細菌が存在する場合があり、コンクリート製の下水管などを腐食させる原因となる。そこで、抗菌性金属イオンを担持した無機粉末を含有する耐蝕性ヒューム管が提案されている(特許文献3)。しかし、単に抗菌性金属イオンを原料セメントに練り込むのみでは抗菌性が十分に発揮されないおそれがあるし、抗菌性金属イオンの割合を高めれば強度が低下するおそれがある。よって、下水管などにおいても、表面を抗菌性金属で被覆することが望ましい。
特開平4−314880号公報 特開平1−119576号公報 特開平9−60768号公報
上述した様に、特にコンクリート建材などを金属で被覆するには、一般的に溶射法が用いられている。しかしコンクリート建材などは多孔質であり、溶射金属は細孔内に侵入し難い。よって、溶射法で形成された金属膜のコンクリート建材などに対する剥離耐性は低いといわざるを得ない。
そこで本発明は、剥離耐性に優れた金属膜を基材上に簡便に形成する方法と、本発明で製造され、剥離耐性の高い金属膜を表面に有する複合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、金属キレート錯体溶液を基材に塗布して熱処理すれば、当然に金属酸化物膜が形成されると予想していたが、意外にも形成された膜は金属光沢を有し、膜を分析したところほぼ金属で形成されていることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
[1] 基材上に金属膜が形成された複合体の製造方法であって、
Cdよりイオン化傾向が小さい金属成分とキレート剤とを含む金属キレート錯体溶液を前記基材に塗布する工程、および、
前記基材の前記金属キレート錯体溶液を塗布した部分を熱処理する工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 前記金属キレート錯体溶液が更に界面活性剤を含む上記[1]に記載の方法。
[3] 前記基材がセメント硬化体である上記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 金属成分がCuまたはNiである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記キレート剤がアミノカルボン酸系キレート剤である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記アミノカルボン酸系キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、およびニトリロ三酢酸から選ばれる少なくとも1種である上記[5]に記載の方法。
[7] 基材と金属膜層を含み、
前記基材がセメント硬化体であり、
前記金属膜層を構成する金属成分のイオン化傾向がCdよりも小さく、
前記基材と前記金属膜層の界面よりも前記基材側に前記金属成分が存在することを特徴とする複合体。
本発明方法によれば、基材表面に金属膜を簡便に形成することが可能であり、コンクリート建材など巨大な基材も処理でき、in situでの処理も可能である。また、本発明方法では、溶射法のように溶融金属ではなく、金属キレート錯体溶液を用いるため、多孔質基材の細孔内に金属を充填することも可能であることから、多孔質の基材の表面にも剥離耐性に優れた金属膜を形成することができる。よって本発明に係る複合体は、耐食性に優れる建材などとして、産業上非常に優れている。
各基材上にCu−キレート錯体溶液を塗布し、水素炎で加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 表面にCu膜が形成されたモルタル基材の断面を走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で観察した拡大写真である。 単結晶Si基材上にPd−キレート錯体溶液を塗布し、水素炎で加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 各基材上にCu−キレート錯体溶液を塗布し、アセチレン炎で加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 アルミニウム合金基材上にAl−キレート錯体溶液を塗布し、水素炎で加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 SUS基材上にTi−キレート錯体溶液を塗布し、水素炎で加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 アルミニウム合金基材上にFe−キレート錯体溶液を塗布し、水素炎で加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 アルミニウム合金基材上にCu−キレート錯体溶液を塗布し、ガスバーナーで加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。 アルミニウム合金基材上にCu−キレート錯体溶液を塗布し、レーザーで加熱して得られた金属膜のXRD分析結果である。
本発明は、基材上に金属膜が形成された複合体の製造方法に関するものである。本発明に係る複合体の製造方法は、Cdよりイオン化傾向が小さい金属成分とキレート剤とを含む金属キレート錯体溶液を基材に塗布する工程、および、前記基材の前記金属キレート錯体溶液を塗布した部分を熱処理する工程を含む。以下、本発明方法を工程毎に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
1.塗布工程
本工程では、Cdよりイオン化傾向が小さい金属成分とキレート剤とを含む金属キレート錯体溶液を基材に塗布する。
イオン化傾向は、主に水溶液中で元素からイオンへのなり易さを表す相対的な指標であり、イオン化傾向が小さいほど標準電極電位E゜の値は大きくなる。CdのE°は−0.4025Vであり、本発明では、E°の値がこれよりも高い金属成分を用いる。Cdよりイオン化傾向が小さい金属成分としては、例えば、イオン化傾向の大きいものから、Co、Ni、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu、Hg、Ag、Pd、Ir、Pt、Auが挙げられる。なお、CoのE°は−0.277Vである。
基材表面に形成された金属膜は、電極として利用できる。例えばセメント硬化体の表面に金属膜を形成し、電圧を印加すれば、金属膜は耐食性コーティングとして作用する。更に、金属元素は、その有用性から選択することができる。例えば、NiやCuは抗菌作用を示し、コスト面からCuがより好ましい。金属元素は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
キレート剤は、金属成分とキレートを形成してその溶解度を改善できるものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン二酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンジ(o−ヒドロキシフェニル)酢酸、イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミン二こはく酸、1,3−ジアミノプロパン二こはく酸、グルタミン酸−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸等のアミノカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、2−ホスホノ−1,2,4−ブタントリカルボン、ホスホノヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエチルジメチレンホスホン酸等のホスホン酸系キレート剤;グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸系キレート剤等を用いることができる。
キレート剤は水溶性であることが好ましい。キレート剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、後段の熱処理工程で容易に熱分解され易い点から、アミノカルボン酸系キレート剤を用いることが好ましい。好ましいアミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、およびニトリロ三酢酸が挙げられ、エチレンジアミン四酢酸がより好ましい。これらのキレート剤は、低価格であり入手が容易であるとともに、これらキレート剤から形成される金属キレート錯体溶液は、金属成分を安定して溶解し、澄明な金属キレート錯体溶液を容易に調製することができる。
金属キレート錯体溶液の溶媒としては、コストや取扱性の観点から、水や、水混和性有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。水混和性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。金属キレート錯体溶液の溶媒は少なくとも水を含むことが好ましく、例えば溶媒中の水の濃度が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上または95質量%以上がより更に好ましい。溶媒としては、低環境負荷の観点から実質的に水のみを用いることが特に好ましく、従って、金属キレート錯体溶液は金属キレート錯体水溶液であることが好ましい。
金属キレート錯体溶液中の金属成分の含有量は、キレート剤により十分に溶解するよう調整することが好ましい。例えば、0.1質量%以上、15質量%以下とすることができ、10質量%以下が好ましい。金属キレート錯体溶液中のキレート剤の含有量は、金属成分に対してキレート配位する理論量以上となることが好ましく、金属成分の金属イオン量1モルに対して1.0倍モル以上、1.5倍モル以下含まれるようにすることが好ましい。金属キレート錯体溶液中の金属キレート錯体の濃度は、例えば1質量%以上、60質量%以下とすることができ、10質量%以上、40質量%以下が好ましい。
金属キレート錯体溶液は、金属元素とキレート剤の他に添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、界面活性剤や粘度調整剤が挙げられる。
界面活性剤により金属キレート錯体溶液の表面張力が低下し、例えば基材が多孔質なものである場合に金属キレート錯体溶液が界面活性剤を含むと、細孔内にもより容易に金属キレート錯体溶液が浸入でき、結果として細孔内にも金属が存在し、基材に対する金属膜層の剥離耐性が高まる。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を特に制限なく用いることができるが、セメント硬化体などの多孔質基材に対する親和性から、非イオン界面活性剤が好ましい。非イオン界面活性剤は、特に制限されないが、例えばアセチレン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール型非イオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
粘度調整剤は、主に金属キレート錯体溶液の粘度を高めて液だれを抑制するためのものであり、例えば、多糖類、ポリエチレングリコールやアクリルポリマー等のポリマー、アマイド等が挙げられる。
金属キレート錯体溶液は、少なくとも金属元素を含む金属化合物とキレート剤を溶媒に溶解することにより調製することができる。或いは、金属元素のキレート錯体を溶媒に溶解することにより、金属キレート錯体溶液を調製してもよい。
金属元素を含む金属化合物としては、酸化物、水酸化物、塩化物塩や臭化物塩などのハロゲン化物塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩などを用いることができる。これらの中でも、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硝酸塩を使用することが好ましい。これらの金属化合物を用いて金属キレート錯体溶液を調製することにより、塗布工程と熱処理工程によって形成された金属膜中に不要な元素が混入することを抑えることができる。
金属キレート錯体溶液を調製する際に用いるキレート剤としては、上記に説明したキレート剤の遊離酸タイプやその塩を使用することができる。キレート剤の塩としては、アンモニウム塩またはアミン塩を用いることが好ましい。このようなキレート剤を用いれば、熱処理工程でアンモニウムイオンやアミン成分が容易に分解されて、金属膜中に不要な元素が混入することを抑えることができる。
キレート剤の価数とキレートされる金属イオンの価数とが等しくない場合は、金属キレート錯体が電気的に中性となるようカチオンまたはアニオンを添加してもよい。カチオンとしては、アンモニウムイオンや、第四級アンモニウムカチオンが挙げられる。アニオンとしては、硝酸イオンや、塩化物イオンや臭化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられるが、金属膜に残留し難いことから硝酸イオンが好ましい。
金属キレート錯体溶液を調製する際の温度は、溶媒の融点以上沸点以下であれば特に限定されないが、20℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、また80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。キレート剤や金属キレート錯体が完全に溶解しない場合には、アンモニアやアミン等を加えて完全溶解させることが好ましい。
金属キレート錯体を金属キレート錯体溶液の原料として用いる場合は、上記のように調製した金属キレート錯体溶液から金属キレート錯体を固体として析出させ、これを金属キレート錯体溶液の原料として用いればよい。金属キレート錯体の析出は、金属キレート錯体溶液への貧溶媒の添加、金属キレート錯体溶液の加熱、濃縮、冷却などにより行えばよく、必要に応じて、濾別、乾燥、洗浄、再結晶などの処理を更に施してもよい。
金属キレート錯体溶液を塗布する基材は、後段の熱処理工程で加熱されても変質や変形しない程度に十分な熱耐性を有するものであれば特に限定されず、主に無機物から構成されることが好ましい。そのような観点から、基材としては、セメント硬化体、鉱物、セラミック、金属が好ましく用いられる。基材は、構造物などの不動産であってもよく、土管や建材などであってもよい。不動産の基材としては、例えば、トンネル、地下街、港湾などの構造物の壁や天井、ビル等の建築物の壁や天井、道路、橋梁、崖などが挙げられる。
セメントは、主に酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、および酸化鉄(III)(Fe23)を主成分とするものであり、セメントのうちポルトランドセメントは、ケイ酸三カルシウム(エーライト,3CaO・SiO2)、ケイ酸二カルシウム(ビーライト,2CaO・SiO2)、カルシウムアルミネート(アルミネート,3CaO・Al23)、カルシウムアルミノフェライト(フェライト,4CaO・Al23・Fe23)、および硫酸カルシウム(石膏,CaSO3・2H2O)を含む。セメントは、酸化カルシウムが水酸化カルシウムになったり、その他の成分が水和物になることによる化学反応により硬化する。セメントには、ポルトランドセメントの他、ポルトランドセメントに加えて高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカ質混合材を混合した混合セメントがある。モルタルは、細骨材である砂とセメントと水とを練り混ぜて硬化させたものであり、コンクリートは、砂、砂利、水などをセメントで凝固させた硬化物である。セメントは上記の通り水和反応により硬化し、反応に関与しない水分は揮発するため、一般的なセメント硬化体は多孔質である。
セメント硬化体は、上記の通り水和により硬化したものであることから、水、特に海水により劣化する傾向があり、また、水酸化カルシウムを含むことから酸により劣化する傾向がある。しかし本発明方法によれば、セメント硬化体基材の一部または全部の表面を金属膜で被覆できることから、セメント硬化体の耐性を高めることができる。
鉱物としては、大理石などの石灰石、硅石、大谷石などが挙げられる。セラミックとしては、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、シリカなどの金属酸化物;ハイドロキシアパタイト等の金属水酸化物;炭化ケイ素などの金属炭化物;窒化ケイ素などの金属窒化物が挙げられる。基材を構成する金属としては、金属膜を形成する金属以外の金属が挙げられる。例えば、鉄;炭素鋼、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、マンガンモリブデン鋼などの鉄合金;ジュラルミン等のアルミ合金;ハステロイやモネル等のニッケル合金などが挙げられる。
金属キレート錯体溶液の基材への塗布方法は特に限定されず、例えば塗料による塗装のように刷毛やローラーを用いた塗布や、スプレー塗布などを採用することができる。また、基材の大きさによっては、ディップ法やスピンコート法による塗布も可能である。
金属キレート錯体溶液は基材の表面の全部に塗布してもよく、一部のみに塗布してもよい。また、2種以上の金属キレート錯体溶液を用いそれぞれ異なる部分に塗布することにより、塗布部分の意匠性を高めてもよい。更に、金属膜の所望の膜厚によっては、金属キレート錯体溶液の塗布と乾燥を複数回繰り返したり、粘度の高い金属キレート錯体溶液を厚く塗ること等により、金属キレート錯体の塗膜厚さを厚くすることも可能である。
金属キレート錯体溶液を基材表面に塗布した後の乾燥条件は、主に金属錯体キレート溶液の溶媒に応じて適宜調整すればよい。例えば、40℃以上、80℃以下程度で5分間以上、1時間以下加熱してもよい。或いは、塗膜が乾燥するまで、常温で放置してもよい。
2.熱処理工程
本工程では、基材の金属キレート錯体溶液を塗布した部分を熱処理することにより、金属膜を形成する。より詳しくは、金属キレート錯体溶液の塗布部分を加熱することにより、キレート剤や界面活性剤などの有機成分を熱分解して除去し、且つ、おそらく本発明ではイオン化傾向が比較的低い金属成分を用いるため、金属酸化物ではなく金属の膜が形成される。
本工程の温度は、有機成分が熱分解される範囲で調整する。例えば、1000℃以上、3500℃以下とすることができる。当該温度としては、1200℃以上が好ましく、1300℃以上がより好ましい。加熱には、例えば燃焼性ガスを燃焼させて得られる炎を用いることができる。燃焼性ガスとしては、特に制限はなく、例えば水素、アセチレン、プロパン、ブタン等を用いることができる。なお、本発明者らは、当初、金属膜の形成には還元性を有する水素炎での加熱が必要であると考えていたが、本発明方法によれば、アセチレン炎やブタン炎でも金属膜を形成することが可能である。また、熱処理時間も適宜調整すべきであり、例えば、金属膜の形成が認められれば、金属酸化物への酸化を防ぐために加熱処理を停止すべきである。金属膜の形成は、金属イオンからの変色や、金属特有の光沢の発現などにより確認することができる。
熱処理は、火炎ではなくレーザーを用いて行ってもよい。レーザーとは、指向性(直進性)、単色性および可干渉性を有する光であり、レーザーを対象物に照射することにより対象物の表面温度を急激に高めることができ、加工が可能になる。本発明においては、金属キレート錯体溶液を塗布した部分にレーザー光を照射し、表面温度を上記範囲に調節することにより、反応を進行させる。使用するレーザーは、金属膜を形成できる範囲で適宜選択すればよいが、例えば、レーザー加工に汎用されるYAGレーザーやCO2レーザーを用いることができる。
レーザーの照射条件は、金属キレート錯体溶液を塗布した部分に金属膜が形成される範囲で調節すればよい。例えば、照射レーザーのエネルギーが高いほど熱処理時間は短縮できるが、形成された金属膜が損傷するほど高エネルギーのレーザーを用いることは好ましくない。具体的には、例えば、1.06μmや10.6μmといった比較的長波長で、0.01msec以上、1msec以下程度の比較的低エネルギーのレーザーを用い、パルス数を1pps以上、100pps以下程度にすることが好ましい。また、レーザーの照射時間は、塗布面が金属光沢を帯びるまでとすればよい。
基材は、炎中または炎がのびる先に設置することが好ましい。炎を形成するバーナーから基材までの距離は、例えば30mm以上、300mm以下の範囲で調整すればよい。熱処理工程は、基材および/またはバーナーを10mm/秒以上、200mm/秒以下の相対速度(互いに対する相対速度)で移動させながら基材を炎で炙ることが好ましく、これにより基材の破損や劣化を防ぎつつ、基材表面に金属膜を好適に形成しやすくなる。このように基材および/またはバーナーを移動させる場合、基材を炎で炙る処理は1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。後者の場合、例えば基材および/またはバーナーを往復移動させながら、基材を炎で炙ることが簡便である。レーザーを用いる場合には、例えば、塗布面に付与されるエネルギー量や照射面積が適切なものとなるよう、レーザー加工機の集光系と塗布面との距離を調整することが好ましい。
上記のようにして、基材上に金属膜が形成された複合体を得ることができる。本発明の製造方法によれば、金属キレート錯体溶液を基材に塗布し、炎やレーザーを当てて熱処理することにより、基材上に金属膜を簡便に形成することができる。即ち、本発明に係る複合体とは、基材と金属膜層を含み、基材の少なくとも一部が金属膜層により被覆されているものをいう。このように形成された金属膜は、薄い膜状に形成することができるため、金属の塗布や形成にかかるコストを低減することが可能となる。金属膜の厚さとしては、特に制限されないが、例えば0.5μm以上、100μm以下とすることができる。また、本発明の製造方法によれば、土木構造物や建築物など容易に動かせない基材であっても、in situで基材上に簡単に金属膜を形成することができる。
上述したように、セメント硬化体は水和反応などの化学反応により硬化したものであり、また、強度向上のため比較的粒径の大きい砂や砂利を含むため、一般的には多孔質である。セメント硬化体としては、セメント自体の硬化体の他、セメントと砂との混合物の硬化体であるモルタルや、更に比較的粒子径の大きい砂利を含む混合物の硬化体であるコンクリートが挙げられる。これらはいずれも多孔質である。それに対して、例えば溶融金属を用いる溶射法ではセメント硬化体の細孔内へ金属を充填することができず、形成された金属膜の剥離耐性は劣っているといえるが、本発明方法では液体である金属キレート錯体溶液を用いるため、細孔内へも金属キレート錯体溶液を侵入させることができ、結果として剥離耐性に優れた金属膜を形成することができる。界面活性剤を含み、表面張力が低減された金属キレート錯体溶液であれば、より小さな細孔へも溶液の浸入はより容易である。
具体的には、基材がセメント硬化体である本発明に係る複合体は、基材と金属膜の界面よりも基材側に金属成分が存在することから、金属膜の剥離耐性は高い。基材と金属膜の界面とは、例えば、複合体を金属膜の平面方向と垂直の方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡などで1000倍以上、10000倍以下程度に拡大観察し、100μmの基準長さにおける平均線をいう。ここでの平均線は、粗さ曲線のためのろ波うねり曲線を最小二乗法により直線におきかえた線をいう(JIS B 0601−1994)。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1: Cu被膜の形成
(1)金属キレート溶液の調製
容量100mLのビーカーにエチレンジアミン四酢酸(30.1g)を入れ、更に蒸留水を加えて総量を80gとした。更に25%アンモニア水(14.0g)、および酸化銅(8.2g)を加え、加熱還流しつつ5時間撹拌を続けることにより完全に溶解させた。得られた溶液に蒸留水を加えて希釈し、EDTA・Cu・(NH42の濃度を40質量%に調整した。更に非イオン界面活性剤(「オルフィン(R)EXP.4300」日信化学工業社製)をその濃度が0.1質量%になるよう添加した。
(2)Cu被膜の形成
表1に示す基材上に、上記EDTA・Cu・(NH42水溶液を滴下した後に65℃で20分間乾燥する操作を繰り返し、塗膜を形成した。ブラスト処理は、研磨剤としてアルミナ粒子(「ホワイトアランダム#60」不二製作所社製,粒径:212〜250μm)を用いて行った。
スプレーガン(「6P−II」Sulzer Metco社製)を用い、水素を32.5L/min、酸素を43.0L/minの速度で供給し、18cmの距離からスプレーガンを50mm/sの速度で移動させながら基材正面を一回走査して塗膜を加熱した。その結果、基材表面の色はCu2+イオン特有の青色から、赤褐色に変化した。
得られた被膜をX線回折法で分析した。結果を図1に示す。図1に示されるXRD結果をICDD粉末回折データベースと照合したところ、Cu立方晶のピーク(00−004−0836)が明確に認められたことから、全ての基材上にCu膜が形成されていることが明らかとなった。
また、表面にCu膜が形成されたモルタル基材の断面を走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で観察した拡大写真を図2に示す。図2に示された拡大写真の通り、表面に凹凸のあるモルタル基材の表面に、その凹凸に沿ってCu膜が密着していることが分かる。
実施例2: Pd被膜の形成
(1)金属キレート溶液の調製
エチレンジアミン四酢酸パラジウム二塩化物に蒸留水を加えて溶解し、15質量%EDTA・Pd・Cl2水溶液を得た。
(2)Pd被膜の形成
3cm×3cmの単結晶Si基板上に、合計で0.4gの上記EDTA・Pd・Cl2水溶液を滴下した後に65℃で20分間乾燥する操作を繰り返し、塗膜を形成し、実施例1(2)と同様の条件で塗膜を加熱した。被膜のXRD分析結果を図3に示す。
図3に示すXRD分析結果をICDD粉末回折データベースと照合したところ、Pd立方晶のピーク(00−087−0641および00−005−0681)が明確に認められたことから、基材上にPd膜が形成されていることが明らかとなった。
実施例3: Cu被膜の形成
スプレーガンに供給する水素をアセチレンガスに変更した以外は実施例1と同様にして、基材上に被膜を形成した。基材表面のXRD分析結果を図4に示す。
図4に示される結果の通り、スプレーガンに供給する燃焼性ガスを水素からアセチレンガスに変更しても、基材上にCu被膜を形成することができた。
本発明者らは、実施例1において基材上に酸化銅被膜ではなくCu被膜を形成できた理由として、燃焼性ガスとして使用した水素による還元作用が影響しているのではと考えていたが、アセチレンガスを使用してもCu被膜を形成できたことは驚くべき結果であった。
実施例4: Ni被膜の形成
(1)金属キレート溶液の調製
容量100mLのビーカーにエチレンジアミン四酢酸(22.9g)を入れ、更に蒸留水を加えて総量を80gとした。更に25%アンモニア水(10.7g)、およびニッケル(5.9g)を加え、加熱還流しつつ5時間撹拌を続けることにより完全に溶解させた。得られた溶液に蒸留水を加えて希釈し、EDTA・Ni・(NH42の濃度を30質量%に調整した。
(2)Ni被膜の形成
50mm×50mm×10mmのアルミニウム合金(A5052)基材に、上記EDTA・Ni・(NH42水溶液(0.5g)を噴霧した後に65℃で20分間乾燥する操作を4回繰り返し、塗膜を形成した。
次いで、スプレーガンと基材との距離を130mmまたは180mmとし、走査回数を3回とした以外は実施例1(2)と同様にして、塗膜を加熱した。被膜のXRD分析結果を図5に示す。
図5に示すXRD分析結果をICDD粉末回折データベースと照合したところ、Ni結晶に相当するピークは認められなかった。しかし、被膜を剥離して得られた粉末をXRDで分析したところ、Ni立方晶に相当するピーク(00−004−0850)が認められた。被膜でNi結晶に相当するピークが認められなかったのは、XRD測定時に基材が僅かに傾いてしまいピークが全体的にシフトしてしまったことが考えられる。
また、XRD分析結果でNiO立方晶に相当するピーク(01−089−7130および01−073−1519)が認められたが、Ni立方晶のピークに比べればその強度は小さいため、不動態皮膜に由来するものであると考えられた。
比較例1
ブラスト処理したSUS基板上に、30質量%EDTA・Ti・NH4水溶液を滴下しては大気中、65℃で20分間乾燥する処理を2回繰り返し、塗膜を形成した。使用した30質量%EDTA・Ti・NH4水溶液の総量は約1gであった。
スプレーガン(「6P−II」Sulzer Metco社製)を用い、水素を32.5L/min、酸素を43.0L/minの速度で供給し、18cmまたは13cmの距離からスプレーガンを50mm/sの速度で移動させながら基材正面を二回走査して塗膜を加熱した。被膜のXRD分析結果を図6に示す。
図6に示される結果の通り、XRD分析結果ではSUS基板に由来するFe(ICDD:01−071−4649)とFeOxの他、認められたピークはルチル型TiO2(ICDD:01−077−0442)のもののみであり、Tiピーク(ICDD:00−044−1294)は認められなかった。Tiのイオン化傾向は比較的高いため、加熱処理により酸化チタンまで酸化されてしまったと考えられる。
比較例2
ブラスト処理した5cm×5cm×1cmのアルミ合金(A5052)基板を、電気炉を使って100℃で予熱した後、30質量%Fe・EDTA水溶液をスプレー塗布しては65℃または100℃で乾燥する処理を3回繰り返した。スプレー塗布の回数は、それぞれ6回、4回、2回とした。
スプレーガン(「6P−II」Sulzer Metco社製)を用い、水素を32.5L/min、酸素を43.0L/minの流量で供給し、18cmまたは13cmの距離からスプレーガンを50mm/sの速度で移動させながら、基材正面を縦横それぞれ一回ずつ走査して塗膜を加熱した。被膜をXRD分析したところ、アルミ合金基板とαFe(ICDD:03−065−4899)が重なっており、Feのピークの有無を特定できなかったため、塗膜を剥離して得られた粉末をXRD分析に付した。結果を図7に示す。
図7に示される結果の通り、αFe(ICDD:03−065−4899)のピークが僅かに認められるものの、高強度のピークはFe34立方晶(ICDD:01−086−1352)、Fe23三斜晶(ICDD:01−072−0469)、およびFeO立方晶(ICDD:01−089−0686)のものであった。このように、Feであっても得られた被膜は主に酸化鉄で構成されており、Fe膜を形成することはできなかった。
実施例5: Cu被膜の形成 − ガスバーナーの使用
(1)金属キレート溶液の調製
容量100mLのビーカーにエチレンジアミン四酢酸(30.1g)を入れ、更に蒸留水を加えて総量を80gとした。更に25%アンモニア水(14.0g)、および酸化銅(8.2g)を加え、加熱還流しつつ5時間撹拌を続けることにより完全に溶解させた。得られた溶液に蒸留水を加えて希釈し、EDTA・Cu・(NH42の濃度を40質量%に調整した。更に非イオン界面活性剤(「オルフィン(R)EXP.4300」日信化学工業社製)をその濃度が0.1質量%になるよう添加した。
(2)Cu被膜の形成
上記EDTA・Cu・(NH42水溶液を多結晶アルミナ基板(50mm×50mm×1mm)に0.5g滴下した後に65℃で20分間乾燥することにより、塗膜を形成した。市販ガスバーナー(「カセットガス トーチバーナー」岩谷産業社製,燃料:ブタンガス,炎温度:1,300℃)を用いて、手動で1分30秒、塗膜上、炎を上下左右に走査した。その結果、基材表面の色はCu2+イオン特有の青色から、赤褐色に変化した。
得られた被膜をX線回折法で分析した。結果を図8に示す。図8に示されるXRD結果をICDD粉末回折データベースと照合したところ、Cu立方晶のピーク(00−004−0836)が明確に認められたことから、全ての基材上にCu膜が形成されていることが明らかとなった。また、酸化物であるCuO(00−048−1548)やCu2O(00−005−0667)のピークも明確に認められたことから、生成した銅の一部が酸化していると考えられる。
実施例6: Cu被膜の形成 − レーザーの使用
(1)金属キレート溶液の調製
容量100mLのビーカーにエチレンジアミン四酢酸(30.1g)を入れ、更に蒸留水を加えて総量を80gとした。更に25%アンモニア水(14.0g)、および酸化銅(8.2g)を加え、加熱還流しつつ5時間撹拌を続けることにより完全に溶解させた。得られた溶液に蒸留水を加えて希釈し、EDTA・Cu・(NH42の濃度を40質量%に調整した。更に非イオン界面活性剤(「オルフィン(R)EXP.4300」日信化学工業社製)を、その濃度が0.1質量%になるよう添加した。
(2)Cu被膜の形成
上記EDTA・Cu・(NH42水溶液を多結晶アルミナ基板(2.5cm×5.0cm×0.25cm)に0.25g滴下した後に65℃で20分間乾燥することにより、塗膜を形成した。ペン型YAGレーザー加工機(「PSL−P30レーザー加工機」日本ウェルディング社製,発振波長:1.06μm)を用いて、パルス幅:0.3msec、1秒間あたりパルス数:20ppsの条件下、手動で10分、塗膜上、レーザーを上下左右に直線的に走査した。その結果、基材表面の色はCu2+イオン特有の青色から、赤褐色に変化した。
得られた被膜をX線回折法で分析した。結果を図9に示す。図9に示されるXRD結果をICDD粉末回折データベースと照合したところ、Cu立方晶のピーク(00−004−0836)が明確に認められたことから、基材上にCu膜が形成されていることが明らかとなった。
本発明方法によれば、トンネル、地下街、港湾など、水分や海水による劣化が懸念されるコンクリート建材や、水分に加えて微生物が生産する酸による劣化が懸念される下水管などとして利用可能な耐食性や抗菌性に優れた金属被覆複合体を簡便に製造することができる。

Claims (7)

  1. 基材上に金属膜が形成された複合体の製造方法であって、
    Cdよりイオン化傾向が小さい金属成分とキレート剤とを含む金属キレート錯体溶液を前記基材に塗布する工程、および、
    前記基材の前記金属キレート錯体溶液を塗布した部分を熱処理する工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記金属キレート錯体溶液が更に界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記基材がセメント硬化体である請求項1または2に記載の方法。
  4. 金属成分がCuまたはNiである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記キレート剤がアミノカルボン酸系キレート剤である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記アミノカルボン酸系キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、およびニトリロ三酢酸から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の方法。
  7. 基材と金属膜層を含み、
    前記基材がセメント硬化体であり、
    前記金属膜層を構成する金属成分のイオン化傾向がCdよりも小さく、
    前記基材と前記金属膜層の界面よりも前記基材側に前記金属成分が存在することを特徴とする複合体。
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