JP2021022477A - アンジュレータ装置 - Google Patents

アンジュレータ装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2021022477A
JP2021022477A JP2019137947A JP2019137947A JP2021022477A JP 2021022477 A JP2021022477 A JP 2021022477A JP 2019137947 A JP2019137947 A JP 2019137947A JP 2019137947 A JP2019137947 A JP 2019137947A JP 2021022477 A JP2021022477 A JP 2021022477A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnet
undulator
magnet row
axis
electron beam
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019137947A
Other languages
English (en)
Inventor
良太 金城
Ryota Kaneshiro
良太 金城
隆次 田中
Takatsugu Tanaka
隆次 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority to JP2019137947A priority Critical patent/JP2021022477A/ja
Publication of JP2021022477A publication Critical patent/JP2021022477A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Lasers (AREA)
  • Particle Accelerators (AREA)

Abstract

【課題】位相駆動を必要とすることなく円偏光の回転方向の切り替えを実現する。【解決手段】アンジュレータ装置は、互いに対向するように第1所定方向(Y軸方向)に並んで且つギャップ空間を挟んで平行に配置される第1及び第2磁石列ブロック(10、20)より成るアンジュレータ磁石群(1)を備え、第1所定方向及び電子ビーム進行方向の夫々に直交する第2所定方向(X軸方向)においてアンジュレータ磁石群と電子ビーム軌道との位置関係(対象位置関係)を変更可能とする。アンジュレータ磁石群は、対象位置関係が第1位置関係であるときに第1円偏光の放射光を電子ビームに発生させるための第1磁場を形成する第1磁石配列構造(11、12、24、25)と、対象位置関係が第2位置関係であるときに第2円偏光の放射光を電子ビームに発生させるための第2磁場を形成する第2磁石配列構造(11、13、24、26)と、を有する。【選択図】図11

Description

本発明は、アンジュレータ装置に関する。
放射光施設で電子ビームから放射光を取り出すために使用されるアンジュレータ装置は、互いに対向するように平行に配置された1対の磁石列を有して周期的な磁場を形成し、1対の磁石列の間を通る光速に近い速度の電子を蛇行運動させることで強力な放射光を発生させる。永久磁石又は電磁石を用いて周期磁場を形成することができるが、特にX線領域の波長の短い放射光を得るためには、磁場の周期を数センチメートル程度或いはそれよりも短くする必要があるため、電磁石では充分な強度の磁場を形成することができない。このため、殆どのアンジュレータ装置で永久磁石が採用されている。
図21に、従来のアンジュレータ装置で使用されているアンジュレータ磁石列の例を示す。図21のアンジュレータ磁石列901は、第1磁石列910及び第2磁石列920を有する。磁石列910及び920の夫々は1周期λに4個の磁石930を含み、各磁石列に含まれる磁石930の磁化方向(磁石930内の矢印で磁化方向を表す)が磁石列910及び920を含む面内で90°ずつ変化している(特許文献1及び非特許文献1)。このようなアンジュレータ磁石列901はHalbach型磁石列などと呼ばれる。磁石列910及び920間を通る光速に近い電子は、磁石列910及び920によって形成される周期磁場の作用により蛇行運動をして、下記式にて示される波長λの光を放出する。
λ(λ,B,E)=130λ[1+(93.37λB)/2]/E
上記式において、λはナノメートルで表した放射光の波長(基本波長と呼ばれる)、λはメートルで表した磁石列の周期長、Bはテスラで表した磁場振幅、Eはギガ電子ボルトで表した入射電子のエネルギである。
放射光施設において電子のエネルギは固定されており、周期長はアンジュレータ装置の設計時に決まるため、放射光施設の運転中に特定の波長を選択するためには磁場振幅の調整が必要となる。磁場振幅は、ギャップと呼ばれる磁石列910及び920間の間隔を変化させることで、或る程度の範囲で容易に調整可能である。但し、数百個〜千個の強力な磁石が設置された磁石列間の吸引力は数トンにもなり、この吸引力に耐えながらギャップを数マイクロメートルの精度で調整する必要がある。このため、アンジュレータ装置では非常に剛性の高い構造材料や駆動機構が全体にわたって用いられ、その全体重量は、通常、10トンを超える。また、負荷を分散させるために部品点数が多くなり、複雑な構造や高い加工及び組み立て精度が要求される。
特開2012−160408号公報
K. Halbach, "Permanent Magnet Unjulators", J. Physique, C1 (1983) 211
アンジュレータ装置では螺旋磁場が形成されるよう磁石列を組むことで円偏光の放射光を得ることができる。この種のアンジュレータ装置の内、APPLE−II型とも称されるタイプの磁石列を用いて、円偏光の回転方向の切り替えを実現するものもある。APPLE−IIのアンジュレータ装置では複数の磁石列が用いられ、複数の磁石列の位置関係をずらす位相駆動によって円偏光の回転方向の切り替えを実現する。しかしながら、APPLE−II型のアンジュレータ装置では、位相駆動を必要としないアンジュレータ装置と比べて、複雑な機械構造や高い剛性が必要となり、また真空封止化が難しい(これについては後に詳説される)。
このように、円偏光の回転方向を切り替え可能なアンジュレータ装置(換言すれば、第1円偏光と第1円偏光とは回転方向が逆の第2円偏光とを選択的に発生させることが可能なアンジュレータ装置)には、改善の余地がある。
本発明は、円偏光の回転方向を切り替え可能なアンジュレータ装置において構成の簡素化及び真空封止の容易化等に寄与するアンジュレータ装置を提供することを目的とする。
本発明に係るアンジュレータ装置は、互いに対向するように第1所定方向に並んで且つギャップ空間を挟んで平行に配置される第1磁石列ブロック及び第2磁石列ブロックより成るアンジュレータ磁石群を備え、前記ギャップ空間内を所定の電子ビーム進行方向に沿って進む電子ビームを蛇行させることにより放射光を発生させるアンジュレータ装置において、前記第1所定方向及び前記電子ビーム進行方向の夫々に直交する第2所定方向において、前記アンジュレータ磁石群と前記電子ビームが通る電子ビーム軌道との位置関係である対象位置関係を変更可能に構成され、前記アンジュレータ磁石群は、前記対象位置関係が所定の第1位置関係であるときに第1円偏光の放射光を前記電子ビームに発生させるための第1磁場を形成する第1磁石配列構造と、前記対象位置関係が前記第1位置関係と異なる所定の第2位置関係であるときに前記第1円偏光とは回転方向が逆の第2円偏光の放射光を前記電子ビームに発生させるための第2磁場を形成する第2磁石配列構造と、を有する構成(第1の構成)である。
上記第1の構成に係るアンジュレータ装置において、前記第1磁石列ブロックは、第1磁石列と、前記第2所定方向において前記第1磁石列を挟んで配置される第2磁石列及び前記第3磁石列と、を有し、前記第2磁石列ブロックは、第4磁石列と、前記第2所定方向において前記第4磁石列を挟んで配置される第5磁石列及び前記第6磁石列と、を有し、前記第4磁石列、前記第5磁石列、前記第6磁石列は、前記ギャップ空間を挟んで、夫々、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第3磁石列に対向配置され、前記第1磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第4磁石列及び前記第5磁石列により構成され、前記第2磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第3磁石列、前記第4磁石列及び前記第6磁石列により構成され、前記対象位置関係が前記第1位置関係であるとき、前記ギャップ空間の内、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第4磁石列及び前記第5磁石列により囲まれ且つ前記第1磁場が形成された空間内を前記電子ビーム進行方向に沿って前記電子ビームが進行することで前記第1円偏光の放射光が発生し、前記対象位置関係が前記第2位置関係であるとき、前記ギャップ空間の内、前記第1磁石列、前記第3磁石列、前記第4磁石列及び前記第6磁石列により囲まれ且つ前記第2磁場が形成された空間内を前記電子ビーム進行方向に沿って前記電子ビームが進行することで前記第2円偏光の放射光が発生する構成(第2の構成)であっても良い。
上記第2の構成に係るアンジュレータ装置において、前記第1磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第4磁石列及び前記第5磁石列により囲まれた空間の中心軸の内、前記電子ビーム進行方向に平行な中心軸を第1螺旋軸とする第1螺旋磁場を前記第1磁場として生成し、前記第2磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第3磁石列、前記第4磁石列及び前記第6磁石列により囲まれた空間の中心軸の内、前記電子ビーム進行方向に平行な中心軸を第2螺旋軸とする第2螺旋磁場を前記第2磁場として生成し、前記第1螺旋磁場と前記第2螺旋磁場とが互いに逆回りの螺旋磁場となるよう前記第1磁石列〜前記第6磁石列の各磁石が配列される構成(第3の構成)であっても良い。
上記第1〜第3の構成の何れかに係るアンジュレータ装置において、前記対象位置関係を、前記第1位置関係及び前記第2位置関係を含む複数の位置関係の何れかに切り替え可能な切り替え部を更に備える構成(第4の構成)であっても良い。
上記第4の構成に係るアンジュレータ装置において、前記切り替え部は、前記アンジュレータ磁石群を前記第2所定方向に沿って移動させることで前記対象位置関係を前記複数の位置関係の何れかに切り替え可能とする構成(第5の構成)であっても良い。
上記第1〜第5の構成の何れかに係るアンジュレータ装置において、前記第1磁石列ブロックと前記第2磁石列ブロックとの間隔が可変となるように前記アンジュレータ磁石群を保持する保持部を更に備える構成(第6の構成)であっても良い。
上記第1〜第6の構成の何れかに係るアンジュレータ装置において、外部空間に対して内部の気圧が低く保たれたチャンバ内に前記アンジュレータ磁石群が配置される構成(第7の構成)であっても良い。
本発明によれば、円偏光の回転方向を切り替え可能なアンジュレータ装置において構成の簡素化及び真空封止の容易化等に寄与するアンジュレータ装置を提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態に係るアンジュレータ磁石群の概略的な外観斜視図である。 本発明の第1実施形態に係るアンジュレータ磁石群の概略的な側面図である。 本発明の第1実施形態に係るアンジュレータ磁石群の概略的な分解斜視図である。 本発明の第1実施形態に係るアンジュレータ磁石群の概略的な分解斜視図である。 本発明の第1実施形態に係り、アンジュレータ磁石群に用いられる1つの磁石の形状を説明するための図である。 磁石の磁化方向の角度を説明するための図である。 本発明の第1実施形態に係り、アンジュレータ磁石群を構成する各磁石の磁化方向を示す図である。 本発明の第1実施形態に係り、アンジュレータ磁石群と仮想平面との関係を示す図である。 直線偏光モード、右円偏光モード、左円偏光モードにおける参考アンジュレータ磁石群の磁石配列を示す図である。 直線偏光モード、右円偏光モード、左円偏光モードでの参考アンジュレータ磁石群において、磁石列に加わる力を説明するための図である。 本発明の第1実施形態に係るアンジュレータ磁石群の磁石配列を説明するための図である。 右円偏光モード、左円偏光モードでの参考アンジュレータ磁石群において、磁石列に加わる力を説明するための図である。 本発明の第2実施形態に係る第1及び第2磁石列ブロックの磁石配列を示す図である(基準位相状態)。 本発明の第2実施形態に係る第1及び第2磁石列ブロックの磁石配列を示す図である(非基準位相状態)。 本発明の第2実施形態に係り、磁石列に加わる力に関するシミュレーション結果を示す図である。 本発明の第3実施形態に係るアンジュレータ装置の側面図である。 本発明の第3実施形態に係るアンジュレータ装置の正面図である。 本発明の第3実施形態に係り、電子ビーム通路部の概略構成図である。 本発明の第4実施形態に係り、アンジュレータ磁石群と、アンジュレータ磁石群の前後に配置された軌道調整用電磁石との関係を、電子ビーム軌道と共に示す図である。 本発明の第5実施形態に係る放射光施設の平面図である。 従来のアンジュレータ磁石列の構成図である。
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“10”によって参照される第1磁石列ブロックは(図1参照)、第1磁石列ブロック10と表記されることもあるし、磁石列ブロック10と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1に本発明の第1実施形態に係るアンジュレータ磁石群1の概略的な外観斜視図を示す。本実施形態に係るアンジュレータ装置はアンジュレータ磁石群1を備える(ここではアンジュレータ装置の全体構成を図示せず)。図2はアンジュレータ磁石群1の側面図である。アンジュレータ磁石群1は、互いに対向するように間隔をあけて平行に配置された第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20を有する。図3はアンジュレータ磁石群1の分解斜視図である。図3では、アンジュレータ磁石群1の構成の理解を容易にするために、磁石列ブロック10及び20の並び方向において、磁石列ブロック10及び20を互いに大きく離して示している。
第1磁石列ブロック10は磁石列11、12及び13から成り、第2磁石列ブロック20は磁石列24、25及び26から成る。磁石列11、12及び13並びに磁石列24、25及び26の夫々は、直線上に配列された複数の磁石30にて形成される。磁石30は、ネオジム磁石等の永久磁石である。各磁石列において複数の磁石30は一定のピッチで配列される。尚、図1〜図3を含む、複数の磁石30から成る磁石列、磁石列ブロック又はアンジュレータ磁石群を示す図においては、図面の煩雑化防止のため、多数図示される磁石30の内、一部の磁石30に対してのみ符号“30”を図示している。
ここでは、説明の具体化のため、互いに直交する3つの所定軸であるX軸、Y軸及びZ軸を定義する。Z軸は各磁石列における磁石30の配列方向に平行である。磁石列11〜13及び24〜26間において磁石30の配列方向は互いに同じである。Y軸は第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20を結ぶ方向に平行である。即ち、Y軸に沿って、第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20が並べられている。尚、X軸及びY軸に平行な面をXY面と呼ぶことがあり、Y軸及びZ軸に平行な面をYZ面と呼ぶことがあり、Z軸及びX軸に平行な面をZX面と呼ぶことがある。
磁石列12及び13はX軸方向において磁石列11を挟み込んで配置され、磁石列25及び26はX軸方向において磁石列24を挟み込んで配置される。X軸、Y軸及びZ軸上の位置は夫々に極性を持つ。ここでは、磁石列11から見てX軸の負側に磁石列12が隣接して配置され、磁石列11から見てX軸の正側に磁石列13が隣接して配置されているものとする。磁石列24から見てX軸の負側に磁石列25が隣接して配置され、磁石列24から見てX軸の正側に磁石列26が隣接して配置されているものとする。第2磁石列ブロック20から見てY軸の正側に第1磁石列ブロック10が配置される。
図4は、図3を基準にアンジュレータ磁石群1を更に分解して図示した、アンジュレータ磁石群1の分解斜視図である。複数の磁石30をZ軸方向に並べて結合される磁石列11と、他の複数の磁石30をZ軸方向に並べて結合される磁石列12と、更に他の複数の磁石30をZ軸方向に並べて結合される磁石列13とを用意し、磁石列11から見てX軸の負側に磁石列12を配置し且つ磁石列11から見てX軸の正側に磁石列13を配置した上で、磁石列11〜13をそれらの境界面で互いに接合することにより第1磁石列ブロック10が形成される。第2磁石列ブロック20についても同様である。即ち、複数の磁石30をZ軸方向に並べて結合される磁石列24と、他の複数の磁石30をZ軸方向に並べて結合される磁石列25と、更に他の複数の磁石30をZ軸方向に並べて結合される磁石列26とを用意し、磁石列24から見てX軸の負側に磁石列25を配置し且つ磁石列24から見てX軸の正側に磁石列26を配置した上で、磁石列24〜26をそれらの境界面で互いに接合することにより第2磁石列ブロック20が形成される。
図2に示す如く、Y軸方向における第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20間の隙間をギャップと称し、第1磁石列ブロック10と第2磁石列ブロック20との間に挟まれた直方体形状の空間をギャップ空間と称する。また、ギャップの長さ(より具体的にはY軸方向に沿ったギャップの長さ)をギャップ長と称する。磁石列24、25及び26は、ギャップ空間を挟んで、夫々、磁石列11、12及び13に対向配置されている。即ち、磁石列11及び24はY軸方向に沿ってギャップ空間を挟んで並び、磁石列12及び25はY軸方向に沿ってギャップ空間を挟んで並び、磁石列13及び26はY軸方向に沿ってギャップ空間を挟んで並ぶ。
後にも説明されるが、ギャップ空間内をZ軸方向に平行にZ軸の負側から正側に向けて電子ビームが進行する。即ちZ軸は電子ビーム進行方向(電子ビームが進行する方向)に平行である。アンジュレータ磁石群1によりギャップ空間内に所定の磁場が形成され、当該磁場によりギャップ空間内を進む電子ビームが蛇行することで電子ビームから放射光が得られる。
図5に各磁石列を構成する1つの磁石30を示す。磁石30は直方体形状を有し、磁石30のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向における長さを、夫々、MLx、MLy、MLzにて表す。ここでは、
磁石列11を構成する全磁石30は全て同じ形状及び大きさを有し、
磁石列12を構成する全磁石30は全て同じ形状及び大きさを有し、
磁石列13を構成する全磁石30は全て同じ形状及び大きさを有し、
磁石列24を構成する全磁石30は全て同じ形状及び大きさを有し、
磁石列25を構成する全磁石30は全て同じ形状及び大きさを有し、
磁石列26を構成する全磁石30は全て同じ形状及び大きさを有しているものとする。
また、磁石30のZ軸方向の長さMLzは、磁石列11、12、13、24、25及び26の全てにおいて互いに共通であるとし、ここでは4.5mm(ミリメートル)であるとする。更に、磁石30のY軸方向の長さMLyは、磁石列11、12、13、24、25及び26の全てにおいて互いに共通であるとし、ここでは18mmであるとする。磁石30のX軸方向の長さMLxには長さMLxsと長さMLxlとがあり、ここでは、磁石列12、13、25及び26を構成する各磁石30の長さMLxは長さMLxsであって、且つ、磁石列11及び24を構成する各磁石30の長さMLxは長さMLxlであるとする。長さMLxlは長さMLxsよりも大きく、ここでは、長さMLxsは16mmであって且つ長さMLxlは28mmであるとする。但し、“MLxs>MLxl”又は“MLxs=MLxl”となる変形も可能ではある。
或る注目磁石列において注目磁石列を構成する全磁石30は直線上に配列され、注目磁石列を構成する全磁石30の中心同士を結ぶ線はZ軸に平行な一本の直線となる。ここで、注目磁石列とは磁石列11〜13及び24〜26の何れかを指し、注目磁石列についての説明は磁石列11〜13及び24〜26の夫々に対し共通に適用される。
磁石30を含む任意の磁石について、当該磁石のS極からN極に向かう方向を磁化方向(磁化の向き)と呼ぶ。図1等から明らかではないが、注目磁石列を構成する複数の磁石30の磁化方向は、注目磁石列を含むYZ面内において、Z軸に平行な方向に沿って(即ち複数の磁石30の配列方向に沿って)周期的に変化する。注目磁石列において、磁石30の配列周期、即ち磁石30の磁化方向の変化の周期(周期長)をλにて表す。周期λは磁石列11〜13及び24〜26間で共通であり、数10mm程度に設定することができるが、ここでは例として、周期λは18mmであるとする。
図6(a)〜(c)を参照して、磁石30の磁化方向について説明を加える。図6(a)に示す如く、Y軸に平行なベクトルであってY軸の原点及び負側からY軸の正側に向かうベクトルを基準ベクトルと称し、基準ベクトルと磁化方向を示すベクトルとの成す角度を、磁化方向の角度と呼ぶ。磁化方向の角度は0°以上360°未満となる。従って、或る磁化方向がY軸に平行であって且つY軸の負側から正側に向かう向きと一致するとき、その磁化方向の角度は0°であり、且つ、或る磁化方向がY軸に平行であって且つY軸の正側から負側に向かう向きと一致するとき、その磁化方向の角度は180°である。
ここでは、基準ベクトルを起点とし、図6(a)の紙面の時計周り方向に磁化方向の角度を定めるものとする。つまり、図6(b)及び(c)に示す如く、或る磁化方向がZ軸に平行であって且つZ軸の負側から正側に向かう向きと一致するとき、その磁化方向の角度は90°であり、或る磁化方向がZ軸に平行であって且つZ軸の正側から負側に向かう向きと一致するとき、その磁化方向の角度は270°であるものとする。以下では、角度φを磁化方向の角度として持つ磁石30を、φの磁石30と表現する。
また、1周期λの中に存在する磁石30の個数Mは、磁石列11〜13及び24〜26の夫々において“4”であるとする。そうすると、磁石列11〜13及び24〜26の夫々において、磁石30の磁化方向はYZ面内でZ軸に平行な方向に沿って90°(=360°/M)ずつ変化する。
[アンジュレータ磁石群1における各磁石の磁化方向]
図7にアンジュレータ磁石群1における各磁石列の磁化方向を示す。尚、図7では、各磁石の磁化方向が図面上で理解しやすくなるよう、便宜上、第1磁石列ブロック10と第2磁石列ブロック20とを互いに離して示している。また、図7及び後述の幾つかの図面では、アンジュレータ磁石群1を構成する全磁石30の一部のみが抽出して示されている。
磁石列11、12及び13の夫々では、Z軸の正側から負側に向けて、270°の磁石30、180°の磁石30、90°の磁石30、0°の磁石30が、この順番で周期的に並んでいるのに対し、磁石列24、25及び26の夫々では、Z軸の正側から負側に向けて、0°の磁石30、90°の磁石30、180°の磁石30及び270°の磁石30が、この順番で周期的に並ぶ。即ち、Z軸の方向に沿った磁石30の磁化方向の変化の向きは、磁石列11、12及び13と磁石列24、25及び26との間で互いに逆になっている。
尚、0°、90°、180°、270°の磁石30は、夫々、第1、第2、第3、第4種類の磁石30であると考えることができる。このとき、磁石列11〜13及び24〜26の夫々は、Y軸及びZ軸との関係において、夫々が第1〜第4種類の何れかに分類される複数の磁石30を有している、と言える。上述の説明から明らかなように、第1種類の磁石30の磁化方向は、Y軸に平行であって且つY軸の負側から正側に向かう向きであり、第2種類の磁石30の磁化方向は、Z軸に平行であって且つZ軸の負側から正側に向かう向きであり、第3種類の磁石30の磁化方向は、Y軸に平行であって且つY軸の正側から負側に向かう向きであり、第4種類の磁石30の磁化方向は、Z軸に平行であって且つZ軸の正側から負側に向かう向きである。
今、図8(a)及び(b)に示す如く、Z軸に直交する所定の仮想平面PLを想定する。磁石列12を構成する複数の磁石30の1つである磁石30REF_12の中心を仮想平面PLが通るものとし、磁石30REF_12は第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)であるとする。このとき(図7を併せて参照)、
磁石列11を構成する複数の磁石30の内、第4種類の磁石30(即ち270°の磁石30)に属する磁石30REF_11が仮想平面PL上に位置し、
磁石列13を構成する複数の磁石30の内、第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)に属する磁石30REF_13が仮想平面PL上に位置し、
磁石列24を構成する複数の磁石30の内、第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)に属する磁石30REF_24が仮想平面PL上に位置し、
磁石列25を構成する複数の磁石30の内、第2種類の磁石30(即ち90°の磁石30)に属する磁石30REF_25が仮想平面PL上に位置し、
磁石列26を構成する複数の磁石30の内、第2種類の磁石30(即ち90°の磁石30)に属する磁石30REF_26が仮想平面PL上に位置する。
より具体的には、磁石30REF_12の中心を仮想平面PLが通るとき、磁石30REF_13の中心、磁石30REF_25の中心、及び、磁石30REF_26の中心が仮想平面PL上に位置する。磁石30REF_12の中心を仮想平面PLが通るとき、磁石30REF_11の中心及び磁石30REF_24の中心は仮想平面PLから若干ずれていても良いが、第1実施形態では、磁石30REF_12の中心を仮想平面PLが通るとき、磁石30REF_11の中心及び磁石30REF_24の中心も仮想平面PL上に位置するものとする。
[参考アンジュレータ磁石群]
本実施形態のアンジュレータ磁石群1が形成する磁場の特性の理解を助けるべく、ここで、参考アンジュレータ磁石群50を説明する。図9(a)〜(c)の夫々には、参考アンジュレータ磁石群50における各磁石の磁化方向を示されている。参考アンジュレータ磁石群50は、APPLE−II型とも称されるタイプのアンジュレータ磁石列であり、磁石列51〜54から成る。磁石列51〜54の夫々は図7の磁石列12と同じ構造を有する。参考アンジュレータ磁石群50を有する参考アンジュレータ装置は、磁石列51及び52と磁石列53及び54との間のギャップ長を調整するギャップ駆動機構を備え、これとは別に直線偏光モード、右円偏光モード及び左円偏光モードの何れかの動作モードで選択的に動作することができる。
図9(a)は、直線偏光モードにおける磁石列51〜54の位置関係が示されている。直線偏光モードでは、磁石列51の配置位置からX軸の正側にX軸方向における磁石30の長さMLx(上述のMLxsに相当)だけ磁石列51を平行移動した位置に磁石列52が配置され、磁石列51の配置位置からギャップ長だけY軸の負側に磁石列51を平行移動した位置に磁石列53が配置され、磁石列52の配置位置からギャップ長だけY軸の負側に磁石列52を平行移動した位置に磁石列54が配置される。
直線偏光モードでは、Z軸に直交する上述の仮想平面PLが、磁石列51を構成する複数の磁石30の内の第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)の中心を通るとき、
磁石列52を構成する複数の磁石30の1つであって且つ第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)に属する磁石30の中心が仮想平面PL上に位置し、
磁石列53を構成する複数の磁石30の1つであって且つ第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)に属する磁石30の中心が仮想平面PL上に位置し、
磁石列54を構成する複数の磁石30の1つであって且つ第1種類の磁石30(即ち0°の磁石30)に属する磁石30の中心が仮想平面PL上に位置する。
参考アンジュレータ磁石群50において、直線偏光モードにて磁石列51〜54により形成される磁場をアンジュレータ磁場BREF3と称する。アンジュレータ磁場BREF3は、直線偏光モードにて磁石列51〜54により形成される磁場の内、電子ビーム軸上における、電子ビーム軸に垂直な成分の磁場を指す。参考アンジュレータ磁石群50における電子ビーム軸とは、磁石列51〜54間を通過する電子ビームの軌道の中心軸であり、Z軸に平行であって且つ磁石列51〜54間の中間を通る。これは動作モードに依らない。つまり、参考アンジュレータ装置では、何れの動作モードにおいても、電子ビームは、Z軸の負側から正側に向けてZ軸に平行に磁石列51〜54間の中間を通る。尚、参考アンジュレータにおいて、電子ビーム軌道(電子ビームの軌道)は磁石列51〜54にて形成される磁場による蛇行成分を含むが、電子ビーム軌道の中心軸である電子ビーム軸は、そのような蛇行成分を含まない直線軸である。
直線偏光モードにて形成されるアンジュレータ磁場BREF3の向き及び大きさはZ軸方向に沿って周期的に変化するが、アンジュレータ磁場BREF3はX軸成分を有さない。故に、参考アンジュレータ磁石群50の直線偏光モードでは、アンジュレータ磁場BREF3によりX軸方向に電子ビームが蛇行し、これによって直線偏光の放射光が電子ビームから発生する。X軸が水平方向に平行であると考えたならば直線偏光モードにて水平偏光の放射光が得られる。
参考アンジュレータ装置では、直線偏光モードにおける磁石列51〜54の位置関係を基準とし、磁石列52及び53の位置を固定したままで磁石列51及び54をZ軸に沿って同じ向きに同じ量だけ移動させる位相駆動が可能となっている。位相駆動として、磁石列52及び53の位置を固定したままで磁石列51及び54をZ軸の負側に周期λの1/4だけ移動させる第1位相駆動と、磁石列52及び53の位置を固定したままで磁石列51及び54をZ軸の正側に周期λの1/4だけ移動させる第2位相駆動と、がある。参考アンジュレータ装置では、第1位相駆動を行うことで右円偏光モードにて動作し、第2位相駆動を行うことで左円偏光モードにて動作する。
図9(b)は、右円偏光モードにおける磁石列51〜54の位置関係(即ち、直線偏光モードにおける磁石列51〜54の位置関係を基準として第1位相駆動を行った後の磁石列51〜54の位置関係)が示されている。
参考アンジュレータ磁石群50において、右円偏光モードにて磁石列51〜54により形成される磁場をアンジュレータ磁場BREF1と称する。アンジュレータ磁場BREF1は、右円偏光モードにて磁石列51〜54により形成される磁場の内、電子ビーム軸上における、電子ビーム軸に垂直な成分の磁場を指す。
アンジュレータ磁場BREF1のX軸成分及びY軸成分はZ軸方向に沿って周期的に変化する。より具体的には、Z軸の正側から負側に向かう向きにアンジュレータ磁場BREF1を観測したとき、アンジュレータ磁場BREF1は、Z軸の負側から正側に向かうにつれてアンジュレータ磁場BREF1による磁場ベクトルが右回転する螺旋磁場(螺旋振動磁場)となる。故に、参考アンジュレータ磁石群50の右円偏光モードでは、アンジュレータ磁場BREF1によりX軸方向及びY軸方向に電子ビームが蛇行し、これによって右円偏光の放射光が電子ビームから発生する。
図9(c)は、左円偏光モードにおける磁石列51〜54の位置関係(即ち、直線偏光モードにおける磁石列51〜54の位置関係を基準として第2位相駆動を行った後の磁石列51〜54の位置関係)が示されている。
参考アンジュレータ磁石群50において、左円偏光モードにて磁石列51〜54により形成される磁場をアンジュレータ磁場BREF2と称する。アンジュレータ磁場BREF2は、左円偏光モードにて磁石列51〜54により形成される磁場の内、電子ビーム軸上における、電子ビーム軸に垂直な成分の磁場を指す。
アンジュレータ磁場BREF2のX軸成分及びY軸成分は、アンジュレータ磁場BREF1と同様、Z軸方向に沿って周期的に変化する。但し、その変化の態様は、アンジュレータ磁場BREF1及びBREF2間で異なる。より具体的には、Z軸の正側から負側に向かう向きにアンジュレータ磁場BREF2を観測したとき、アンジュレータ磁場BREF2は、Z軸の負側から正側に向かうにつれてアンジュレータ磁場BREF2による磁場ベクトルが左回転する螺旋磁場(螺旋振動磁場)となる。故に、参考アンジュレータ磁石群50の左円偏光モードでは、アンジュレータ磁場BREF2によりX軸方向及びY軸方向に電子ビームが蛇行し、これによって左円偏光の放射光が電子ビームから発生する。
このように、参考アンジュレータ装置によれば、位相駆動を利用して、直線偏光、右円偏光及び左円偏光の放射光を選択的に得ることができる。但し、位相駆動を伴う参考アンジュレータ装置では、磁石列にかかるトンオーダーの力の向きが位相により変化する。例えば磁石列52に注目した場合、直線偏光モードでは、図10(a)に示す如く、磁石列52に対し、Y軸の負側向きの力(磁石列54による吸引力)とX軸の正側向きの力(磁石列51による反発力)が加わる。これに対し、右偏光モードでは、図10(b)に示す如く、磁石列52に対しZ軸の正側向きのせん断力が加わる(このとき、磁石列51には逆向きのせん断力が加わる)。左偏光モードでは、図10(c)に示す如く、磁石列52に対しZ軸の負側向きのせん断力が加わる(このとき、磁石列51には逆向きのせん断力が加わる)。
このため、ギャップ駆動機構と位相駆動機構の双方を備える参考アンジュレータ装置では、位相駆動機構を持たない一般的なアンジュレータ装置に比べ、複雑な機械構造と高い剛性が必要とされ、それらを支持する架台も大型になるという問題がある。
一方、アンジュレータ装置においては真空封止化が大きなメリットをもたらす。真空封止化とは、アンジュレータ装置を構成するアンジュレータ磁石群を、電子ビームが走行する真空チャンバの中に入れることを指す。真空封止化により、真空封止化を行わない場合と比べてアンジュレータ磁石群を電子ビームに近づけることが可能となり、これによって、より周期長の短い磁石列で強力な磁場を得ることができるため、多くの放射光施設で採用が進んでいる。
但し、真空封止化の実現にあたっては、ベローズシャフトと呼ばれる部品で真空チャンバ内の磁石列と大気中の駆動部とを接続する必要があり、図10(a)に示したような反発力や図10(b)及び(b)に示したようなせん断力は、大きなモーメント負荷として更なる問題となる。これらの理由から、上述の参考アンジュレータ装置のような円偏光の切り替え可能なアンジュレータ装置において真空封止化は容易ではなく、実用化された例は殆ど無い。
[参考アンジュレータ磁石群とアンジュレータ磁石群1との関係]
図11に、参考アンジュレータ磁石群との関係において、本実施形態に係るアンジュレータ磁石群1の構造を示す。アンジュレータ磁石群1は、参考アンジュレータ装置の右円偏光モードにおいて参考アンジュレータ磁石群50により形成される磁気回路と、参考アンジュレータ装置の左円偏光モードにおいて参考アンジュレータ磁石群50により形成される磁気回路と、を結合及び合成させた構成を有する。即ち、アンジュレータ磁石群1の磁石列12及び25は夫々右円偏光モードにおける磁石列51、53に対応し、アンジュレータ磁石群1の磁石列13及び26は夫々左円偏光モードにおける磁石列52、54に対応する。更に、アンジュレータ磁石群1の磁石列11は、右円偏光モードにおける磁石列52と左円偏光モードにおける磁石列51とをX軸方向において結合及び合成したものに相当し、アンジュレータ磁石群1の磁石列24は、右円偏光モードにおける磁石列54と左円偏光モードにおける磁石列53とをX軸方向において結合及び合成したものに相当する。
そして、アンジュレータ磁石群1を備えた本実施形態に係るアンジュレータ装置では、X軸方向においてアンジュレータ磁石群1と電子ビーム軌道との位置関係を変更可能に構成されており、その位置関係の変更を通じて偏光の切り替えを実現する。これにより、上述の位相駆動は不要となり、固定位相で偏光の切り替えが可能となるため、上述の位相駆動機構に関わる問題や磁石列に加わる力の問題が消失又は大幅に低減する。
以下、変更の対象となる、X軸方向におけるアンジュレータ磁石群1と電子ビーム軌道との位置関係を、対象位置関係と称する。対象位置関係は、X軸方向におけるアンジュレータ磁石群1と電子ビーム軌道との相対的な位置関係である。対象位置関係の変更は、アンジュレータ磁石群1及び電子ビーム軌道の内の少なくとも一方の、X軸方向への移動で実現される。尚、対象位置関係としてのX軸方向におけるアンジュレータ磁石群1と電子ビーム軌道との位置関係は、換言すればX軸方向におけるアンジュレータ磁石群1と電子ビーム軸との位置関係である。アンジュレータ磁石群1を備えた本実施形態に係るアンジュレータ装置において、電子ビーム軌道(電子ビームの軌道)はアンジュレータ磁石群1にて形成される磁場による蛇行成分を含むが、電子ビーム軌道の中心軸である電子ビーム軸は、そのような蛇行成分を含まない直線軸である。以下の説明における電子ビーム、電子ビーム軌道及び電子ビーム軸とは、特に記述なき限り、参考アンジュレータ装置ではなく、アンジュレータ磁石群1を備えたアンジュレータ装置についての電子ビーム、電子ビーム軌道及び電子ビーム軸を指すものとする。
対象位置関係を変更する方法として、電子ビーム軸(電子ビーム軌道)の位置を固定したままでアンジュレータ磁石群1の全体をX軸方向に移動させる第1変更方法、又は、アンジュレータ磁石群1の位置を固定したままアンジュレータ装置の前後に設置した軌道調整用電磁石を用いて電子ビーム軸(電子ビーム軌道)をX軸方向に平行移動させる第2変更方法を利用できる。この内、対象位置関係の変更に対し放射光の出射位置が変化しない第1変更方法が特に有益である。第1変更方法に関し、X軸方向におけるアンジュレータ磁石群1の移動量は高々数10mmであって、且つ、アンジュレータ磁石群1の全体を一体的に動かすため、磁気力による抵抗が存在せず簡易な駆動機構で実現可能である。
このように、アンジュレータ磁石群1を用いれば位相駆動が不要であり、ギャップ駆動機構のみ設ければ良いことになる。このため、位相駆動機構を持たない一般的なアンジュレータ装置と同様の構造で真空封止化が容易に可能となり、短周期の円偏光切り替え型アンジュレータ装置を実現可能となる。
また、アンジュレータ磁石群1を用いれば磁石列に働く力が参考アンジュレータ磁石群50を用いる場合よりも大幅に小さくなるため(これについては後にも説明する)、ギャップ駆動機構の小型化及び機械剛性の必要量の緩和も見込まれる。結果、アンジュレータ装置の製造及び設置に関わるコスト及び工期の大幅な削減が可能となる。
図11において、矢印付き直線CC1、CC2及びCC3は、電子ビーム軸の候補である3つの候補軸を表している。
本実施形態に係るアンジュレータ装置では、対象位置関係の変更及び設定を通じて、候補軸CC1〜CC3を含む複数の候補軸の中の1つを選択的に電子ビーム軸に設定することができる。換言すれば、本実施形態に係るアンジュレータ装置は、対象位置関係を所定の第1〜第3位置関係を含む複数の位置関係の何れかに切り替え可能な切り替え部(図11にて不図示)を備え、対象位置関係が所定の第1位置関係であるときには電子ビーム軸が候補軸CC1に設定され、対象位置関係が所定の第2位置関係であるときには電子ビーム軸が候補軸CC2に設定され、対象位置関係が所定の第3位置関係であるときには電子ビーム軸が候補軸CC3に設定される。切り替え部は、対象位置関係を4以上の位置関係の何れかに切り替え可能であって良いし、対象位置関係を第1及び第2位置関係の何れかにのみ切り替え可能であっても良いが、ここでは、第1〜第3位置関係に注目する。
また、第1実施形態における以下の説明では、説明の具体化のため、第1変更方法が採用されることを想定する。第1変更方法が採用される場合、上記切り替え部は、電子ビーム軸(電子ビーム軌道)の位置を固定したままでアンジュレータ磁石群1の全体をX軸方向に沿って移動させ、これによって対象位置関係を少なくとも第1及び第2位置関係を含む複数の位置関係の何れかに切り替えることになる。
対象位置関係が所定の第3位置関係とされることはアンジュレータ磁石群1が所定の基準位置に配置されることを意味し、このとき、電子ビーム軸は候補軸CC3と一致する。候補軸CC3は、Z軸に平行な直線軸であって且つギャップ空間内の中心を通る軸である。故に、候補軸CC3は磁石列11と磁石列24との間に挟まれた空間の中心を通り、候補軸CC3と磁石列12との最短距離、候補軸CC3と磁石列13との最短距離、候補軸CC3と磁石列25との最短距離、及び、候補軸CC3と磁石列26との最短距離は互いに等しい。
電子ビーム軸が候補軸CC3と一致しているときに電子ビームに作用する磁場をアンジュレータ磁場Bと称する。アンジュレータ磁場Bは、アンジュレータ磁石群1により形成される磁場の内、候補軸CC3上における、候補軸CC3に垂直な成分の磁場を指す。アンジュレータ磁場Bの向き及び大きさはZ軸方向に沿って周期的に変化するが、アンジュレータ磁場BはX軸成分を有さない。アンジュレータ磁石群1が形成する磁気回路は、候補軸CC3から見てX軸方向では対称性を有するからである(図7参照)。故に、対象位置関係が所定の第3位置関係とされることで電子ビーム軸が候補軸CC3と一致しているとき、アンジュレータ磁場BによりX軸方向に電子ビームが蛇行し、これによって直線偏光の放射光が電子ビームから発生する。X軸が水平方向に平行であると考えたならば直線偏光の放射光として水平偏光の放射光が得られる。
対象位置関係が所定の第1位置関係とされるとき、電子ビーム軸は候補軸CC1と一致する。アンジュレータ磁石群1が所定の基準位置に配置されている状態を基準に、アンジュレータ磁石群1の全体をX軸の正側から負側に向かう向きに距離“MLxl/2”だけ平行移動させることで対象位置関係が所定の第1位置関係となる。距離“MLxl/2”は、図5を参照して上述した事項から理解されるように、磁石列11及び24を構成する各磁石30のX軸方向における長さMLxlの半分(ここでは14mm)を指す。
候補軸CC1は、Z軸に平行な直線軸であって、且つ、ギャップ空間の内、磁石列11、12、24及び25により囲まれた空間内を通る軸である。より詳細には、磁石列11及び12間の境界面と磁石列24及び25間の境界面と候補軸CC1とは、YZ面に平行な共通の平面上に位置し、候補軸CC1と磁石列11又は12との距離は、候補軸CC1と磁石列24又は25との距離と一致する。見方を変えて表現すると、候補軸CC1と磁石列11との最短距離、候補軸CC1と磁石列12との最短距離、候補軸CC1と磁石列25との最短距離、及び、候補軸CC1と磁石列24との最短距離は互いに等しい。
電子ビーム軸が候補軸CC1と一致しているときに電子ビームに作用する磁場をアンジュレータ磁場Bと称する。アンジュレータ磁場Bは、アンジュレータ磁石群1により形成される磁場の内、候補軸CC1上における、候補軸CC1に垂直な成分の磁場を指す。アンジュレータ磁場Bは、参考アンジュレータ装置の右円偏光モードにて形成されるアンジュレータ磁場BREF1と同じ特性を有し、アンジュレータ磁場BのX軸成分及びY軸成分はZ軸方向に沿って周期的に変化する。より具体的には、Z軸の正側から負側に向かう向きにアンジュレータ磁場Bを観測したとき、アンジュレータ磁場Bは、Z軸の負側から正側に向かうにつれてアンジュレータ磁場Bによる磁場ベクトルが右回転する螺旋磁場(螺旋振動磁場)となる。故に、対象位置関係が所定の第1位置関係とされることで電子ビーム軸が候補軸CC1と一致しているとき、アンジュレータ磁場BによりX軸方向及びY軸方向に電子ビームが蛇行し、これによって右円偏光の放射光が電子ビームから発生する。Z軸の正側から負側に向かう向きに右円偏光を観測したとき、Z軸の負側から正側に向かうにつれて右円偏光の電場ベクトルは右回転する。右回転は時計回りの回転と一致する。
尚、電子ビーム軸が候補軸CC1と一致しているとき、磁石列13及び26により形成される磁場も、幾分、電子ビームに影響しうる。但し、磁場の電子ビームへの影響は距離の逆二乗則に従うので、本実施形態で想定される数値例の程度に各磁石30の大きさを設定すれば、磁石列13及び26の影響は十分に小さい。それらの影響を更に軽減したい場合には、必要に応じ、磁石列11及び24を構成する各磁石30のX軸方向における長さMLxlを増大すれば良い。
対象位置関係が所定の第2位置関係とされるとき、電子ビーム軸は候補軸CC2と一致する。アンジュレータ磁石群1が所定の基準位置に配置されている状態を基準に、アンジュレータ磁石群1の全体をX軸の負側から正側に向かう向きに距離“MLxl/2”だけ平行移動させることで対象位置関係が所定の第2位置関係となる。
候補軸CC2は、Z軸に平行な直線軸であって、且つ、ギャップ空間の内、磁石列11、13、24及び26により囲まれた空間内を通る軸である。より詳細には、磁石列11及び13間の境界面と磁石列24及び26間の境界面と候補軸CC2とは、YZ面に平行な共通の平面上に位置し、候補軸CC2と磁石列11又は13との距離は、候補軸CC2と磁石列24又は26との距離と一致する。見方を変えて表現すると、候補軸CC2と磁石列11との最短距離、候補軸CC2と磁石列13との最短距離、候補軸CC2と磁石列24との最短距離、及び、候補軸CC2と磁石列26との最短距離は互いに等しい。
電子ビーム軸が候補軸CC2と一致しているときに電子ビームに作用する磁場をアンジュレータ磁場Bと称する。アンジュレータ磁場Bは、アンジュレータ磁石群1により形成される磁場の内、候補軸CC2上における、候補軸CC2に垂直な成分の磁場を指す。アンジュレータ磁場Bは、参考アンジュレータ装置の左円偏光モードにて形成されるアンジュレータ磁場BREF2と同じ特性を有し、アンジュレータ磁場Bと同様、アンジュレータ磁場BのX軸成分及びY軸成分はZ軸方向に沿って周期的に変化する。但し、その変化の態様は、アンジュレータ磁場B及びB間で異なる。より具体的には、Z軸の正側から負側に向かう向きにアンジュレータ磁場Bを観測したとき、アンジュレータ磁場Bは、Z軸の負側から正側に向かうにつれてアンジュレータ磁場Bによる磁場ベクトルが左回転する螺旋磁場(螺旋振動磁場)となる。故に、対象位置関係が所定の第2位置関係とされることで電子ビーム軸が候補軸CC2と一致しているとき、アンジュレータ磁場BによりX軸方向及びY軸方向に電子ビームが蛇行し、これによって左円偏光の放射光が電子ビームから発生する。Z軸の正側から負側に向かう向きに左円偏光を観測したとき、Z軸の負側から正側に向かうにつれて左円偏光の電場ベクトルは左回転する。左回転は反時計回りの回転と一致する。
尚、電子ビーム軸が候補軸CC2と一致しているとき、磁石列12及び25により形成される磁場も、幾分、電子ビームに影響しうる。但し、磁場の電子ビームへの影響は距離の逆二乗則に従うので、本実施形態で想定される数値例の程度に各磁石30の大きさを設定すれば、磁石列12及び25の影響は十分に小さい。それらの影響を更に軽減したい場合には、必要に応じ、磁石列11及び24を構成する各磁石30のX軸方向における長さMLxlを増大すれば良い。
このように、本実施形態に係るアンジュレータ装置は、互いに対向するように第1所定方向(Y軸の方向に対応)に並んで且つギャップ空間を挟んで平行に配置される第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20より成るアンジュレータ磁石群1を備え、ギャップ空間内を所定の電子ビーム進行方向(Z軸の方向に対応)に沿って進む電子ビームを蛇行させることにより放射光を発生させるアンジュレータ装置であって、第1所定方向及び電子ビーム進行方向の夫々に直交する第2所定方向(X軸の方向に対応)において、アンジュレータ磁石群1と電子ビームが通る電子ビーム軌道との位置関係である対象位置関係を変更可能に構成されている。そして、アンジュレータ磁石群1は、第1磁石配列構造と第2磁石配列構造とを有する。第1磁石配列構造は、対象位置関係が所定の第1位置関係であるときに第1円偏光(ここでは右円偏光に対応)の放射光を電子ビームに発生させるための第1磁場(アンジュレータ磁場B)を形成する。第2磁石配列構造は、対象位置関係が第1位置関係と異なる所定の第2位置関係であるときに第1円偏光とは回転方向が逆の第2円偏光(ここでは左円偏光に対応)の放射光を電子ビームに発生させるための第2磁場(アンジュレータ磁場B)を形成する。
第1磁石配列構造は磁石列11、12、24及び25により構成され、第2磁石配列構造は磁石列11、13、24及び26により構成される。換言すれば、第1磁石配列構造は磁石列11、12、24及び25により構成される第1磁気回路に相当し、第2磁石配列構造は磁石列11、13、24及び26により構成される第2磁気回路に相当する。
アンジュレータ磁石群1を備えた本実施形態に係るアンジュレータ装置において、対象位置関係が所定の第1位置関係であるとき、ギャップ空間の内、磁石列11、12、24及び25により囲まれ且つ第1磁場(アンジュレータ磁場B)が形成された空間内を電子ビーム進行方向(Z軸)に沿って電子ビームが進行し、これによって第1円偏光の放射光が発生する(より詳細には上記の候補軸CC1を電子ビーム軸にして電子ビームが進行することで第1円偏光の放射光が発生する)。
アンジュレータ磁石群1を備えた本実施形態に係るアンジュレータ装置において、対象位置関係が所定の第2位置関係であるとき、ギャップ空間の内、磁石列11、13、24及び26により囲まれ且つ第2磁場(アンジュレータ磁場B)が形成された空間内を電子ビーム進行方向(Z軸)に沿って電子ビームが進行し、これによって第2円偏光の放射光が発生する(より詳細には上記の候補軸CC2を電子ビーム軸にして電子ビームが進行することで第2円偏光の放射光が発生する)。
本実施形態において、右円偏光が第1円偏光に対応し左円偏光が第2円偏光に対応している。但し、本発明において、第1円偏光及び第2円偏光の内、どちらが右円偏光であるか、どちらが左円偏光であるかは任意である。
第1磁石配列構造は、磁石列11、12、24及び25により囲まれた直方体形状の空間の中心軸の内、電子ビーム進行方向に平行な中心軸を第1螺旋軸とする第1螺旋磁場を上記第1磁場(アンジュレータ磁場B)として生成し、第2磁石配列構造は、磁石列11、13、24及び26により囲まれた直方体形状の空間の中心軸の内、電子ビーム進行方向に平行な中心軸を第2螺旋軸とする第2螺旋磁場(アンジュレータ磁場B)を上記第2磁場として生成する。この際、第1螺旋磁場と第2螺旋磁場とが互いに逆回りの螺旋磁場となるよう磁石列11〜13及び24〜26の各磁石30が配列される。
本実施形態においては、候補軸CC1、CC2が夫々第1、第2螺旋軸に対応し、且つ、アンジュレータ磁場B、Bが夫々第1、第2螺旋磁場に対応する。本発明において、或る観測点から螺旋磁場を観測したときの第1、第2螺旋磁場の回転方向は、それらの回転方向が互いに逆向きである限り、任意である。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3〜第6実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2〜第6実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2〜第6実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3〜第6実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1〜第6実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
今、便宜上、図12に示す如く、右円偏光モードにおける参考アンジュレータ装置の磁石列51〜54を夫々磁石列51a〜54aと称すると共に、左円偏光モードにおける参考アンジュレータ装置の磁石列51〜54を夫々磁石列51b〜54bと称する(図11等も適宜参照)。これらの磁石列の内、例えば磁石列51a、52a、51b及び52bに注目すると、磁石列51a及び52bにはZ軸の正側から負側に向かう向きのせん断力が加わり、磁石列52a及び51bにはZ軸の負側から正側に向かう向きのせん断力が加わる。これら4つのせん断力の大きさが等しければ、それらは釣り合って互いに打ち消し合うことになり、磁石列51a、52a、51b及び52bから成る磁石列ブロック全体に加わるZ軸方向のせん断力はゼロとなる。磁石列53a、54a、53b及び54bから成る磁石列ブロックについても同様である。
但し、磁石列52aと磁石列51bとを結合して1つの磁石列を形成すると共に磁石列54aと磁石列53bとを結合して1つの磁石列を形成した場合、磁石列52aであった部分と磁石列53aであった部分との間に加わる磁気力と、磁石列54aであった部分と磁石列51bであった部分との間に加わる磁気力とが影響して、せん断力に関する上記のつり合いが幾分崩れることになる。
つまり(図7、図8(a)及び(b)参照)、磁石30REF_11の中心、磁石30REF_12の中心、磁石30REF_13の中心、磁石30REF_24の中心、磁石30REF_25の中心、及び、磁石30REF_26の中心が、全て、XY面に平行な仮想平面PL上に位置するようにアンジュレータ磁石群1を構成した場合(第1実施形態では主として当該構成が想定されている)、第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20に或る程度のZ軸方向のせん断力が加わることになる。この場合であっても、第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20に加わるせん断力は、参考アンジュレータ装置の右円偏光モード又は左円偏光モードと比べて相当に小さいが、当該せん断力を更に低減すべく、以下のせん断力改善方法を利用しても良い。
今、磁石30REF_11の中心、磁石30REF_12の中心、磁石30REF_13の中心、磁石30REF_24の中心、磁石30REF_25の中心、及び、磁石30REF_26の中心が、全て、XY面に平行な仮想平面PL上に位置する状態を、基準位相状態と称する。図13に、基準位相状態における磁石列11〜13及び24〜26の位置関係を示す。
電子ビームの進む向き(即ちZ軸の負側から正側に向かう向き)を磁石列における位相の進みの向きであると考えた場合、基準位相状態では、第1磁石列ブロック10において磁石列11の磁石配列が磁石列12及び13の各磁石配列に対し90°の位相(1周期λの1/4)だけ進んでおり、第2磁石列ブロック20において磁石列24の磁石配列は磁石列25及び26の各磁石配列に対し90°の位相(1周期λの1/4)だけ遅れている、と考えることができる。
せん断力改善方法を適用する場合、基準位相状態から見て磁石列11の磁石配列を磁石列12及び13の各磁石配列に対し(90°+Δθ)の位相だけ進ませ、磁石列24の磁石配列を磁石列25及び26の各磁石配列に対し(90°+Δθ)の位相だけ遅らせる。図14に、せん断力改善方法が適用された非基準位相状態における磁石列11〜13及び24〜26の位置関係を示す(図14では位相の進み/遅れを幾分誇張して示している)。Δθは、90°よりも十分に小さな正の角度量であり、通常は10°以下である。360°分の位相は1周期λ分の距離に相当するので、Δθは距離“λ×Δθ/360”に相当する。
故に、せん断力改善方法の適用後の磁石列11〜13では、基準位相状態から見て、磁石列11が磁石列12及び13に対しZ軸の負側から正側に向かう向きに距離“λ×Δθ/360”だけシフトされる。せん断力改善方法の適用後の磁石列24〜26では、基準位相状態から見て、磁石列24が磁石列25及び26に対しZ軸の正側から負側に向かう向きに距離“λ×Δθ/360”だけシフトされる。Δθの値を適切に設定することでせん断を最小化することが可能である。
図15に、磁石列に加わる力に関するシミュレーション結果(計算結果)を示す。図15のグラフにおいて、横軸はギャップ長に対応し、縦軸は磁石列に加わる力に対応する。当該シミュレーションでは、参考アンジュレータ磁石群50のZ軸方向における全長及びアンジュレータ磁石群1のZ軸方向における全長が共に4.5mであって、且つ、参考アンジュレータ磁石群50及びアンジュレータ磁石群1の周期長λが共に18mmであると仮定した。また、参考アンジュレータ磁石群50及びアンジュレータ磁石群1の夫々において、ギャップ長の可変範囲を2〜20mmとし、磁石30を形成する永久磁石の残留磁束密度及び比透磁率は夫々1.2T(テスラ)及び1.06であると仮定した。
これらの仮定の下、参考アンジュレータ磁石群50については、参考アンジュレータ磁石群50を右円偏光モードから左偏光モードまで位相駆動した場合における磁石列51又は52にかかる力の絶対値の最大値のX軸成分|Fx’|、X軸成分|Fy’|及びZ軸成分|Fz’|を計算し、アンジュレータ磁石群1については、“Δθ=4°”に固定した上で、第1磁石列ブロック10にかかる力の絶対値のY軸成分|Fy|及びZ軸成分|Fz|を計算した。
図15において、折れ線611、612、613は、夫々、計算された|Fx’|、|Fy’|、|Fz’|のギャップ長依存性を示しており、折れ線622、623は、夫々、計算された|Fy|、|Fz|のギャップ長依存性を示している。アンジュレータ磁石群1においては、ギャップ長によらず第1磁石列ブロック10に対しX軸方向の力は加わらないため、その力に関するグラフの図示は省略している。参考アンジュレータ磁石群50に比べてアンジュレータ磁石群1では、磁石列にかかる力が大幅に小さいことが分かる。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。図16は、第3実施形態に係るアンジュレータ装置100の側面図である。アンジュレータ装置100は、第1又は第2実施形態に係るアンジュレータ装置の内、上述の第1変更方法が適用されたアンジュレータ装置である。ここでは、X軸方向が水平方向に、Y軸方向が鉛直方向に対応しているものとし、Y軸の負側から正側に向かう向きが上向きであるとする。そうすると、第1磁石列ブロック10は第2磁石列ブロック20の上方に配置されることになる。
アンジュレータ装置100は、アンジュレータ本体部180と、リニアガイドブロックレール190と、を備える。
アンジュレータ本体部180は、磁石列ブロック10及び20から成るアンジュレータ磁石群1と、磁石列ブロック10を一体化して保持する磁石列ビーム110と、磁石列ブロック20を一体化して保持する磁石列ビーム120と、アンジュレータ磁石群1並びに磁石列ビーム110及び120を内包する空間を真空状態に保つ真空チャンバ130と、真空チャンバ130の上方に配置され且つ磁石列ブロック10及び磁石列ビーム110を上方から支える高剛性ビーム140Uと、真空チャンバ130の下方に配置され且つ磁石列ブロック20及び磁石列ビーム120を下方から支える高剛性ビーム140Lと、真空チャンバ130の真空状態を保ちながらシャフト151Uを用いて高剛性ビーム140Uと磁石列ビーム110を連結する真空導入連結部150Uと、真空チャンバ130の真空状態を保ちながらシャフト151Lを用いて高剛性ビーム140Lと磁石列ビーム120を連結する真空導入連結部150Lと、高剛性ビーム140U及び140Lに結合される駆動機構であって、ボールねじを利用して高剛性ビーム140U及び140Lを上下方向に移動させることが可能なボールねじ式駆動機構160と、ボールねじ式駆動機構160が取り付けられる概略L字状の断面形状を有した架台170と、を備える。
図17は、アンジュレータ装置100の正面図である。図17では、図示の便宜上、真空チャンバ130の図示を省略している。また、図17では、真空導入連結部150U及び150Lの構成要素の内、高剛性ビーム140Uと磁石列ビーム110を物理的に結合する複数のシャフト151U及び高剛性ビーム140Lと磁石列ビーム120を物理的に結合する複数のシャフト151Lのみが示されている。
リニアガイドブロックレール190の上方にアンジュレータ本体部180が配置される。リニアガイドブロックレール190は、X軸方向に沿ってアンジュレータ本体部180の全体の平行移動を可能とするレール機構である。
尚、真空チャンバ130における真空状態とは、真空に近い状態を指し、少なくとも大気圧よりも気圧が低い状態を指すものであって良い。ここにおける大気圧は、真空チャンバ130の外部空間の気圧を指す。つまり、図16のアンジュレータ装置100では、外部空間に対して内部の気圧(真空チャンバ130内の気圧)が低く保たれた真空チャンバ130内にアンジュレータ磁石群1が配置され、真空チャンバ130内であって且つアンジュレータ磁石群1のギャップ空間内を電子ビームが通る。
ボールねじ式駆動機構160は、図示されない駆動制御部からの第1制御信号に従い、高剛性ビーム140U及び140Lの双方を個別にY軸方向(ここでは上下方向)に移動させることで、或いは、高剛性ビーム140U及び140Lの一方にY軸方向に移動させることで、磁石列ブロック10及び20間のギャップ長を可変させることができる。より具体的には例えば、ボールねじ式駆動機構160は、第1制御信号に基づき、高剛性ビーム140UをY軸方向の負側から正側に向けて(ここでは上向きに)且つ高剛性ビーム140LをY軸方向の正側から負側に向けて(ここでは下向きに)互いに同じ量だけ移動させることで磁石列ブロック10及び20間のギャップ長を増大させることができ、高剛性ビーム140UをY軸方向の正側から負側に向けて(ここでは下向きに)且つ高剛性ビーム140LをY軸方向の負側から正側に向けて(ここでは上向きに)互いに同じ量だけ移動させることで磁石列ブロック10及び20間のギャップ長を減少させることができる。
このため、アンジュレータ装置100は、第1磁石列ブロック10及び第2磁石列ブロック20間の間隔(即ちギャップ長)が可変となるようにアンジュレータ磁石群1を保持する保持部を備えていると言える。保持部は、磁石列ビーム110及び120、高剛性ビーム140U及び140L、真空導入連結部150U及び150L、ボールねじ式駆動機構160並びに架台170を含むと考えて良い。
また、リニアガイドブロックレール190は、図示されない駆動制御部からの第2制御信号に従い、X軸方向に沿ってアンジュレータ本体部180の全体を平行移動させる。アンジュレータ磁石群1の位置は高剛性ビーム140U及び140L等を介し架台170に対して固定されている。このため、アンジュレータ磁石群1及び架台170を含むアンジュレータ本体部180の全体をX軸方向に沿って平行移動させることで上述の対象位置関係を任意に調整可能であり、対象位置関係を少なくとも第1及び第2位置関係を含む複数の位置関係の何れかに切り替えることができる。この切り替えを通じて、電子ビームから得られる放射光の偏光状態については上述した通りである。図16及び図17の構成では、リニアガイドブロックレール190が上記切り替え部として機能する。上記駆動制御部も切り替え部の構成要素に含まれると考えても良い。
真空チャンバ130は図示されないチャンバ支持部により支持されているが、アンジュレータ本体部180をX軸方向に沿って移動させたときに、真空チャンバ130の位置が固定されていても構わない。但し、この場合には、ベローズにて構成される真空導入連結部150U及び150Lが、上記移動に伴うアンジュレータ磁石群1及び真空チャンバ130間の相対位置変化を吸収することになり、真空導入連結部150U及び150Lに大きなモーメント負荷が加わる。そのようなモーメント負荷に耐えられるよう真空導入連結部150U及び150Lを構成しておくことも可能ではあるが、それは構造の複雑化及び大型化等を招きうる。故に、以下のようにした方が好ましい。
即ち、アンジュレータ本体部180をX軸方向に沿って移動させるとき、アンジュレータ磁石群1と真空チャンバ130との相対位置関係が変化しないよう、アンジュレータ本体部180と同じ向きに同じ量だけ真空チャンバ130も移動させると良い。つまり、アンジュレータ磁石群1をX軸方向に沿って移動させることで上述の対象位置関係を所望の位置関係に設定する際、アンジュレータ磁石群1と真空チャンバ130を同じ向きに同じ量だけ移動させると良い。これにより、上記モーメント負荷に耐えられるように真空導入連結部150U及び150Lを構成する必要がなくなる。
図18に、電子ビームが通過する経路を真空状態に保つ電子ビーム通路部200を示す。電子ビーム通路部200はZ軸方向に沿って伸びる中空の真空ダクトであり、真空チャンバ130は電子ビーム通路部200の一部である。電子ビーム通路部200は、真空チャンバ130に加え、真空チャンバ130から見てZ軸の負側に設置された真空ダクト210と、真空チャンバ130から見てZ軸の正側に設置された真空ダクト220と、真空チャンバ130及び真空ダクト210間に配置されて真空チャンバ130及び真空ダクト210の各内部空間を真空状態に保ちながら真空チャンバ130及び真空ダクト210間を結合するベローズ211と、真空チャンバ130及び真空ダクト220間に配置されて真空チャンバ130及び真空ダクト220の各内部空間を真空状態に保ちながら真空チャンバ130及び真空ダクト220間を結合するベローズ221と、を備える。
電子ビームは、真空ダクト210からベローズ211、真空チャンバ130及びベローズ221を経由して真空ダクト220を通って進行する。真空ダクト210及び220は大地に対して固定されている。アンジュレータ磁石群1と共に真空チャンバ130がX軸方向に沿って移動される際には、ベローズ211及び221が、その移動に伴う真空チャンバ130と真空ダクト210及び220とのずれを吸収する。
尚、本発明において、アンジュレータ磁石群1をX軸方向に移動させる方法(即ち上記第1変更方法の実現方法)は上述したものに限定されない。例えば、X軸方向において高剛性ビーム140U及び140Lを同じ向きに且つ同じ量だけ移動させる機構をアンジュレータ装置100に設けておき、その機構を利用して、アンジュレータ磁石群1のX軸方向の移動を実現しても良い。この場合にも、アンジュレータ磁石群1と真空チャンバ130を同じ向きに同じ量だけ移動させることが好ましい。
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では上記第2変更方法について説明を加える。第2変更方法では、対象位置関係を変更するために、上述したように、アンジュレータ磁石群1の位置を固定したままアンジュレータ装置の前後に設置した軌道調整用電磁石を用いて電子ビーム軸(電子ビーム軌道)をX軸方向に平行移動させる。
図19に第2変更方法を実現するための構成の概略を示す。図19において、310は、アンジュレータ磁石群1から見てZ軸の負側に設置された軌道調整用電磁石を表し、320は、アンジュレータ磁石群1から見てZ軸の正側に設置された軌道調整用電磁石を表す。軌道調整用電磁石310及び320は磁場を発生させることで電子ビームの軌道を曲げる電磁石であり、夫々に2つのステアリング電磁石から成る。但し、軌道調整用電磁石310及び320の夫々を3以上のステアリング電磁石にて構成しておいても良い。
図示されない軌道調整制御部から軌道調整用電磁石310及び320に対して軌道指示信号が供給され、軌道調整用電磁石310及び320は軌道指示信号に基づき電子ビームの軌道を調整する。軌道指示信号は、無調整指示、第1調整指示及び第2調整指示の何れかを表す。軌道指示信号が第1調整指示又は第2調整指示を表す場合に限り、電子ビームは、軌道調整用電磁石310による磁場の影響を受けた後、アンジュレータ磁石群1のギャップ空間を通り、その後、軌道調整用電磁石320による磁場の影響を受ける。軌道指示信号が無調整指示を表す場合には、軌道調整用電磁石310及び320は磁場を発生させない。
即ち、軌道指示信号が無調整指示を表している場合、軌道調整用電磁石310は、Z軸の負側からアンジュレータ磁石群1のギャップ空間に対して入射する電子ビームの軌道を修正しない。このとき、アンジュレータ磁石群1における電子ビーム軸は上述の候補軸CC3(図11参照)と一致し、軌道調整用電磁石320は、アンジュレータ磁石群1のギャップ空間を通過した電子ビームの軌道を修正しない。
軌道指示信号が第1調整指示を表している場合、アンジュレータ磁石群1における電子ビーム軸が上述の候補軸CC1(図11参照)と一致するよう、軌道調整用電磁石310はZ軸の負側からアンジュレータ磁石群1のギャップ空間に対して入射する電子ビームの軌道を修正する。軌道調整用電磁石320は、軌道指示信号が第1調整指示を表している場合、軌道調整用電磁石320を経由した後の電子ビームの軌道が、軌道指示信号が無調整指示を表している場合と同じとなるように、アンジュレータ磁石群1のギャップ空間を通過した電子ビームの軌道を修正する。
軌道指示信号が第2調整指示を表している場合、アンジュレータ磁石群1における電子ビーム軸が上述の候補軸CC2(図11参照)と一致するよう、軌道調整用電磁石310はZ軸の負側からアンジュレータ磁石群1のギャップ空間に対して入射する電子ビームの軌道を修正する。軌道調整用電磁石320は、軌道指示信号が第2調整指示を表している場合、軌道調整用電磁石320を経由した後の電子ビームの軌道が、軌道指示信号が無調整指示を表している場合と同じとなるように、アンジュレータ磁石群1のギャップ空間を通過した電子ビームの軌道を修正する。
第4実施形態では軌道調整用電磁石310が上述の切り替え部を構成する、と考えることができる。切り替え部は軌道調整制御部(不図示)又は軌道調整用電磁石320を更に含んでいると考えても良い。軌道調整用電磁石310及び320は、アンジュレータ装置の構成要素に含まれないと考えることも可能であるし、アンジュレータ装置の構成要素に含まれると考えることも可能である。軌道調整制御部、軌道調整用電磁石310及び320とアンジュレータ装置とでアンジュレータシステムが構成されると考えても良い。放射光施設に元々備えられている軌道調整用電磁石を、軌道調整用電磁石310又は320として機能させても良い。
<<第5実施形態>>
本発明の第5実施形態を説明する。図20に、放射光施設400の平面図を模式的に示す。放射光施設400は、電子銃401、線形加速器402、シンクロトロン403、蓄積リング404、及び、1以上のビームライン405を有する。蓄積リング404における各ビームライン405の基部付近にアンジュレータ装置410が配置される。アンジュレータ装置410は、上述の任意の実施形態に示されたアンジュレータ装置(例えば図16のアンジュレータ装置100)である。
電子銃401から発射された電子eは、線形加速器402により1GeV(ギガエレクトロンボルト)程度のエネルギの速度にまで加速された後、シンクロトロン403により高周波を用いて8GeV程度のエネルギの速度にまで更に加速され、光速に近い速度を有した状態で蓄積リング404に入る。
電子eは、そのエネルギを維持したまま蓄積リング404内を高速で回り、蓄積リング404内に配置されているアンジュレータ磁石群410の形成磁場により蛇行せしめられて、放射光Rを放出する。放射光Rはビームライン405に入り、ビームライン405内で種々な研究及び実用的用途に利用される。
蓄積リング404内を回る電子ビームに対してアンジュレータ装置410を適用する構成を示したが、直線的に電子ビームを進行させるX線自由電子レーザ施設に対してアンジュレータ装置410を適用することもできる。
<<第6実施形態>>
本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態では、第1〜第5実施形態に対して適用可能な変形技術、応用技術等を説明する。
図16の構成では、磁石列ブロック10及び20が上下方向に並んでいると考えたが、磁石列ブロック10及び20は上下方向以外の方向(例えば左右方向)に並んでいても良い。即ち、Y軸方向が、上下方向であるのか、左右方向であるのか、それ以外の方向であるのかは任意である。
1周期λの中に存在する磁石30の個数Mが“4”であることを前提としてアンジュレータ磁石群1の構成を詳説したが、Mの値は“4”以外でも良く、例えば“M=2”又は“M=8”とすることも可能である。“M=2”の場合、アンジュレータ磁石群1を構成する各磁石列において、磁石30の磁化方向はYZ面内でZ軸に平行な方向に沿って180°(=360°/M)ずつ変化することになる。“M=8”の場合、アンジュレータ磁石群1を構成する各磁石列において、磁石30の磁化方向はYZ面内でZ軸に平行な方向に沿って45°(=360°/M)ずつ変化することになる。
本発明は、真空封止化がなされないアンジュレータ装置に対しても適用可能である。即ち、磁石列ブロック10及び20間に真空チャンバを挟み込み、真空チャンバの内部空間に電子ビームを通すことで、アンジュレータ磁石群1のギャップ空間内に電子ビームを通すようにしても良い。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
1 アンジュレータ磁石群
10 第1磁石列ブロック
20 第2磁石列ブロック
11〜13、24〜26 磁石列(第1〜第6磁石列)
30 磁石
100 アンジュレータ装置

Claims (7)

  1. 互いに対向するように第1所定方向に並んで且つギャップ空間を挟んで平行に配置される第1磁石列ブロック及び第2磁石列ブロックより成るアンジュレータ磁石群を備え、前記ギャップ空間内を所定の電子ビーム進行方向に沿って進む電子ビームを蛇行させることにより放射光を発生させるアンジュレータ装置において、
    前記第1所定方向及び前記電子ビーム進行方向の夫々に直交する第2所定方向において、前記アンジュレータ磁石群と前記電子ビームが通る電子ビーム軌道との位置関係である対象位置関係を変更可能に構成され、
    前記アンジュレータ磁石群は、前記対象位置関係が所定の第1位置関係であるときに第1円偏光の放射光を前記電子ビームに発生させるための第1磁場を形成する第1磁石配列構造と、前記対象位置関係が前記第1位置関係と異なる所定の第2位置関係であるときに前記第1円偏光とは回転方向が逆の第2円偏光の放射光を前記電子ビームに発生させるための第2磁場を形成する第2磁石配列構造と、を有する
    ことを特徴とするアンジュレータ装置。
  2. 前記第1磁石列ブロックは、第1磁石列と、前記第2所定方向において前記第1磁石列を挟んで配置される第2磁石列及び前記第3磁石列と、を有し、
    前記第2磁石列ブロックは、第4磁石列と、前記第2所定方向において前記第4磁石列を挟んで配置される第5磁石列及び前記第6磁石列と、を有し、
    前記第4磁石列、前記第5磁石列、前記第6磁石列は、前記ギャップ空間を挟んで、夫々、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第3磁石列に対向配置され、
    前記第1磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第4磁石列及び前記第5磁石列により構成され、前記第2磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第3磁石列、前記第4磁石列及び前記第6磁石列により構成され、
    前記対象位置関係が前記第1位置関係であるとき、前記ギャップ空間の内、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第4磁石列及び前記第5磁石列により囲まれ且つ前記第1磁場が形成された空間内を前記電子ビーム進行方向に沿って前記電子ビームが進行することで前記第1円偏光の放射光が発生し、
    前記対象位置関係が前記第2位置関係であるとき、前記ギャップ空間の内、前記第1磁石列、前記第3磁石列、前記第4磁石列及び前記第6磁石列により囲まれ且つ前記第2磁場が形成された空間内を前記電子ビーム進行方向に沿って前記電子ビームが進行することで前記第2円偏光の放射光が発生する
    ことを特徴とする請求項1に記載のアンジュレータ装置。
  3. 前記第1磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第2磁石列、前記第4磁石列及び前記第5磁石列により囲まれた空間の中心軸の内、前記電子ビーム進行方向に平行な中心軸を第1螺旋軸とする第1螺旋磁場を前記第1磁場として生成し、
    前記第2磁石配列構造は、前記第1磁石列、前記第3磁石列、前記第4磁石列及び前記第6磁石列により囲まれた空間の中心軸の内、前記電子ビーム進行方向に平行な中心軸を第2螺旋軸とする第2螺旋磁場を前記第2磁場として生成し、
    前記第1螺旋磁場と前記第2螺旋磁場とが互いに逆回りの螺旋磁場となるよう前記第1磁石列〜前記第6磁石列の各磁石が配列される
    ことを特徴とする請求項2に記載のアンジュレータ装置。
  4. 前記対象位置関係を、前記第1位置関係及び前記第2位置関係を含む複数の位置関係の何れかに切り替え可能な切り替え部を更に備える
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアンジュレータ装置。
  5. 前記切り替え部は、前記アンジュレータ磁石群を前記第2所定方向に沿って移動させることで前記対象位置関係を前記複数の位置関係の何れかに切り替え可能とする
    ことを特徴とする請求項4に記載のアンジュレータ装置。
  6. 前記第1磁石列ブロックと前記第2磁石列ブロックとの間隔が可変となるように前記アンジュレータ磁石群を保持する保持部を更に備える
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のアンジュレータ装置。
  7. 外部空間に対して内部の気圧が低く保たれたチャンバ内に前記アンジュレータ磁石群が配置される
    ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のアンジュレータ装置。
JP2019137947A 2019-07-26 2019-07-26 アンジュレータ装置 Pending JP2021022477A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019137947A JP2021022477A (ja) 2019-07-26 2019-07-26 アンジュレータ装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019137947A JP2021022477A (ja) 2019-07-26 2019-07-26 アンジュレータ装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021022477A true JP2021022477A (ja) 2021-02-18

Family

ID=74574437

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019137947A Pending JP2021022477A (ja) 2019-07-26 2019-07-26 アンジュレータ装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021022477A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5383049A (en) Elliptically polarizing adjustable phase insertion device
Schmidt et al. APPLE X undulator for the SwissFEL soft X-ray beamline Athos
US10524346B2 (en) Device for tuning SCRF cavity
US10321552B2 (en) Undulator magnet array and undulator
US6003230A (en) Magnetic positioner having a single moving part
US20130207760A1 (en) Multipole magnet
US9502166B2 (en) Variable-cycle permanent-magnet undulator
CN109039004A (zh) 一种基于Halbach阵列的磁悬浮装置
JP2021022477A (ja) アンジュレータ装置
JP5140103B2 (ja) リニアモータ対、移動ステージ、及び電子顕微鏡
JP2015032609A (ja) 駆動装置、荷電粒子線照射装置、及びデバイスの製造方法
JP4821356B2 (ja) 磁界制御方法および磁界発生装置
JP3037520B2 (ja) リング,リングの四極電磁石およびその制御装置
US20150357896A1 (en) Linear motor
Modena The ZEPTO dipole: zero power tuneable optics for CLIC
JP6832711B2 (ja) 超伝導電磁石装置及び超伝導電磁石装置における磁場補正方法
JP2012191817A (ja) 電磁アクチュエータ
US20240064887A1 (en) Force Neutral Adjustable Phase Undulator
US20220208427A1 (en) A multipole magnet
CN114499095B (zh) 一种用于航天器主动隔振平台的电磁作动器
JP2010065300A (ja) パラレルリンク機構およびパラレルリンク機構を備えた真空成膜装置
Li et al. Study of the radial tunable PCM focusing system
Reva et al. Testing of Magnetic Elements of the Electron Cooling System for the NICA Collider
JP2014155360A (ja) リニアモータ及びそれを備えた可動ステージ並びに電子顕微鏡
CN115789089A (zh) 一种洛伦兹力磁悬浮万向稳定平台