JP2021020879A - p63スプライシングバリアントの分解剤およびその用途 - Google Patents

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拓水 伊藤
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知子 朝妻
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ゲリーニ ルイ―ザ
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雄輝 山口
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Abstract

【課題】 医療において有用となる新たな薬剤を提供する。ミオパチーの治療に使用可能な新たな薬剤を提供する。【解決手段】 本発明のp63スプライシングバリアントの分解剤は、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とを含むことを特徴とする。本発明の分解剤は、p63スプライシングバリアントが原因となる疾患の治療に有用である。【選択図】図1

Description

本発明は、p63スプライシングバリアントの分解剤およびその用途、サリドマイド関連疾患用の医薬組成物およびその用途に関する。
医療の分野においては、未だ、様々な疾患に対して、優れた有効性の医薬品の不足が問題視されている。
そこで、本発明は、医療において有用となる新たな薬剤の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のp63スプライシングバリアントの分解剤は、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とを含むことを特徴とする。
本発明のp63スプライシングバリアントの分解方法は、p63スプライシングバリアントに、前記本発明のp63スプライシングバリアントの分解剤を接触させる接触工程を含むことを特徴とする。
本発明のp63スプライシングバリアント関連疾患に対する医薬組成物は、前記本発明のp63スプライシングバリアントの分解剤を含むことを特徴とする。
本発明のp63スプライシングバリアント関連疾患の治療方法は、前記本発明の医薬組成物を投与する工程を含むことを特徴とする。
本発明の幹細胞の分化制御剤は、前記本発明のp63スプライシングバリアントの分解剤を含むことを特徴とする。
本発明の幹細胞の分化制御方法は、前記本発明の幹細胞の分化制御剤を投与する工程を含むことを特徴とする。
本発明のp63スプライシングバリアントの分解抑制物質のスクリーニング方法は、候補物質と、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体と、p63スプライシングバリアントとを共存させ、前記p63スプライシングバリアントの分解の抑制を検出する工程、および、前記p63スプライシングバリアントの分解を抑制した候補物質を、分解抑制物質として選択する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、p63スプライシングバリアントを分解できることから、例えば、p63スプライシングバリアントが原因となる疾患の治療に有用である。
本発明によれば、CRBNタンパク質とサリドマイドとが形成する複合体による前記p63スプライシングバリアントの分解を抑制する物質をスクリーニングができる。また、本発明によれば、前記p63スプライシングバリアントが分解されることが原因となるサリドマイド関連疾患を治療できる。
図1は、実施例1の結果であり、サリドマイドとCRL4CRBNとの結合により、前記p63スプライシングバリアントが分解されることを確認したブロッティングの図である。 図2は、実施例2の結果であり、前記p63スプライシングバリアントの分解が、CRL4CRBNに依存するユビキチン化およびプロテアソーム分解に起因するかを確認したブロッティングの図である。 図3は、実施例3の結果であり、前記p63スプライシングバリアント(ΔNp63)の分解が、サリドマイドによる四肢の催奇形性に関与しているかを確認した写真とグラフである。 図4は、実施例4の結果であり、前記p63スプライシングバリアント(TAp63α)の分解が、サリドマイドによる耳小胞(耳)の催奇形性に関与しているかを確認した写真とグラフである。
本願は、p63スプライシングバリアントの分解の利用に関する発明と、p63スプライシングバリアントの補充または分解抑制に関する発明とを含む。
<本発明1>
本発明1は、前述のようにp63スプライシングバリアントの分解に関する発明である。本発明者らは、サリドマイドが原因となる疾患(以下、サリドマイド関連疾患という)のメカニズムについて鋭意研究を行った。その結果、サリドマイドが原因となる四肢および耳等の催奇形性等の疾患は、四肢および耳等の形成に関与するp63スプライシングバリアントが、CRBNにサリドマイドが結合した複合体によって分解されることが原因であることを突き止めた。一方、前記p63スプライシングバリアントは、例えば、膵臓等の組織において、腫瘍の悪性化に関与することが知られている。そこで、本発明者らは、前述のようなサリドマイド関連疾患に対して解明したメカニズムに基づき、前記複合体を前記p63スプライシングバリアントに接触させることによって、前記p63スプライシングバリアントを分解し、腫瘍の悪性化を抑制できるとの知見を得て、本発明1を完成させるに至った。以下、本発明1について、それぞれ説明する。
(1)分解剤
本発明1の分解剤は、前述のように、p63スプライシングバリアントの分解剤であり、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とを含むことを特徴とする。前記CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、前記サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とは、共存させることで、互いに複合したCRBN複合体を形成する。本発明1の分解剤は、例えば、使用時において、前記CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、前記サリドマイドまたはサリドマイド類縁体との共存により、前記CRBN複合体を形成できればよく、使用前において、前記CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、前記サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とは、非共存の状態でも、共存の状態でもよい。以下、本発明1の分解剤の一例として、前記CRBN複合体をあげて説明するが、これには制限されない。
本発明1の分解剤の対象は、前述のように、前記p63スプライシングバリアントである。p63は、転写因子p53のファミリータンパク質である。前記p63スプライシングバリアントは、同じp63遺伝子について異なるスプライシングの上、発現された、配列が異なるタンパク質であり、アイソフォームともいう。前記p63スプライシングバリアントは、特に制限されず、例えば、下記表に示す、Variant 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13等があげられる。下記表に、前記各p63スプライシングバリアントは、例えば、そのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子配列が登録されているデータベースのアクセッション番号を合わせて示す。
前記CRBN複合体は、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とを含む複合体であればよい。以下、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片を「CRBN分子」といい、「サリドマイドまたはサリドマイド類縁体」を「サリドマイド分子」という。
前記CRBN分子は、前述のように、CRBNタンパク質、またはそのペプチド断片である。CRBNタンパク質とは、セレブロンともいう。
前記CRBNタンパク質は、例えば、ヒトのアミノ酸配列でもよいし、非ヒト動物のアミノ酸配列でもよいし、異なる種のキメラのアミノ酸配列でもよい。前記ペプチド断片は、特に制限されず、例えば、CRBNタンパク質における、サリドマイド分子が結合する領域があげられ、前記ペプチド断片は、例えば、前記領域のみからなる断片でもよいし、前記領域を含む断片でもよい。前記CRBNタンパク質のヒトのアミノ酸配列は、例えば、データベースにおいてアクセッションNo. NP_001166953およびNP_057386に登録されている(配列番号5)。本発明において、CRBNタンパク質は、例えば、部分配列のペプチドであってもよく、CRBNタンパク質の全長アミノ酸配列において、187番目から260番目の領域のペプチド、339番目から442番目の領域のペプチド等があげられる。
前記サリドマイド分子は、前述のように、サリドマイド、またはサリドマイド類縁体である。前記サリドマイド類縁体は、例えば、サリドマイドの機能を維持する範囲において、置換基を含んでもよい。前記サリドマイド類縁体としては、例えば、レナリドミド、ポマリドミド等があげられる。
前記CRBN複合体は、前記CRBN分子および前記サリドマイド分子からなる複合体でもよいし、前記CRBN分子および前記サリドマイド分子の他に、他の分子を含んでもよい。前記他の分子は、特に制限されず、例えば、DDB1、Cul4、およびRoc1等のタンパク質分子があげられ、いずれか1つを含んでもよし、2つ以上を含んでもよいし、4つ全てを含んでもよい。
前記CRBN分子と前記サリドマイド分子とは、例えば、互いを接触させることで、結合により、前記複合体を形成できる。前記複合体の形成は、例えば、前記CRBN分子と前記サリドマイド分子とを、pH7〜8の緩衝液中に共存させ、温度4℃〜37℃でインキュベートすることにより行える。
本発明1の分離剤は、例えば、使用前において、前記CRBN分子と前記サリドマイド分子とが、それぞれ分離した状態であり、使用時において、前記CRBN分子と前記サリドマイド分子とが接触して結合することにより、前記複合体を形成する形態でもよい。この形態においては、本発明1の分離剤は、例えば、前記CRBN分子に代えて、前記CRBN分子をコードする遺伝子を含んでもよい。この場合、例えば、前記遺伝子からCRBN分子が発現し、発現したCRBN分子と、前記サリドマイド分子とが結合して、前記複合体を形成してもよい。
本発明1の分解剤は、例えば、研究用試薬として使用することもでき、医薬組成物(医薬品)として使用することもできる。本発明の分解剤は、例えば、添加対象に対して、in vivoで使用してもよいし、in vitroで使用してもよい。
本発明1の分解剤は、例えば、生体に添加(投与ともいう)して使用できる。添加対象の生体は、特に制限されず、例えば、動物であり、前記動物は、例えば、ヒト、または、ヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ウマ、ネコ、ヤギ、サル、およびモルモット等の非ヒト哺乳動物、ゼブラフィッシュ等の魚類等があげられる。また、本発明1の分解剤の添加対象は、生体以外に、例えば、細胞、組織、器官等があげられ、それらの由来は、特に制限されず、前述のような動物である。前記細胞は、例えば、前記生体から採取した細胞、培養細胞等があげられる。
本発明1の分解剤の添加条件は、特に制限されず、例えば、添加対象の種類、添加目的等に応じて、適宜設定できる。また、本発明の分解剤において、前記CRBN複合体の含有量は、特に制限されず、例えば、前記添加条件に応じて適宜設定できる。
本発明1の分解剤を生体に投与する場合、すなわち、in vivoで使用する場合、その投与形態は、特に制限されない。前記投与形態は、例えば、経口投与でもよいし、非経口投与でもよい。前記非経口投与は、例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、腹腔内投与、および局所投与等があげられる。また、本発明1の分解剤の生体への投与量は、特に制限されず、例えば、生体の種類、症状、年齢、投与方法、投与目的等により適宜決定できる。
本発明1の分解剤の剤型は、特に制限されず、例えば、前記添加形態に応じて適宜決定できる。前記剤型は、例えば、液体状、および固体状があげられる。
本発明1の分解剤は、例えば、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。本発明1の分解剤を医薬組成物として使用する場合、前記添加剤は、薬学上許容される添加剤が好ましい。前記添加剤は、特に制限されず、例えば、基剤原料、賦形剤、着色剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、保存剤、および、香料等の矯味矯臭剤等があげられる。本発明において、前記添加剤の配合量は、前記CRBN複合体の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。
前記賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、およびソルビトール等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、αデンプン、およびデキストリン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン等の有機系賦形剤;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、およびメタ珪酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウム等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム等の硫酸塩等の無機系賦形剤があげられる。前記滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;タルク;ポリエチレングリコール;シリカ;硬化植物油等があげられる。前記矯味矯臭剤は、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、および桂皮末等の香料、甘味料、ならびに酸味料等があげられる。前記結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびマクロゴール等があげられる。前記崩壊剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムおよび架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾デンプン、ならびに化学修飾セルロース類等があげられる。前記安定化剤は、例えば、メチルパラベン、およびプロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、およびフェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、およびクレゾール等のフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸等があげられる。
(2)分解方法
本発明1の分解方法は、前述のように、p63スプライシングバリアントの分解方法であり、前記p63スプライシングバリアントに、前記本発明1のp63スプライシングバリアントの分解剤を接触させる接触工程を含むことを特徴とする。本発明1の分解方法は、前記本発明1の分解剤を使用することが特徴であって、特に示さない限り、前記本発明1の分解剤における記載を援用できる。
前記接触工程は、例えば、in vivoで行ってもよいし、in vitroで行ってもよい。また、本発明1の分解方法は、例えば、前記接触工程を動物に対して行うことができ、前記動物は、前述と同様である。
(3)医薬組成物
本発明1の医薬組成物は、前述のように、p63スプライシングバリアント関連疾患に対する医薬組成物であり、前記本発明1のp63スプライシングバリアントの分解剤を含むことを特徴とする。本発明1の医薬組成物は、前記本発明1の分解剤を使用することが特徴であって、特に示さない限り、前記本発明1の分解剤における記載を援用できる。
前記p63スプライシングバリアントは、前述のように、例えば、組織の悪性化に関与していることが知られている。前記本発明1の分解剤によれば、前記p63スプライシングバリアントを分解できるため、前記本発明1の分解剤を含む医薬組成物は、前記p63スプライシングバリアントが関与する疾患(p63スプライシングバリアント関連疾患)に対する医薬組成物として使用できる。
前記p63スプライシングバリアント関連疾患は、例えば、膵臓がん、皮膚がん(cutaneous carcinoma)、頭頸部扁平上皮がん等があげられる。
本発明1の医薬組成物は、例えば、前記p63スプライシングバリアント関連疾患の治療に使用できる。本発明において、「治療」は、例えば、疾患の症状の緩和、疾患の治癒、罹患の予防等の意味を含み、いずれか1つを目的として使用されてもよいし、2つ以上を目的として使用されてもよい。
(4)治療方法
本発明1の治療方法は、前述のように、p63スプライシングバリアント関連疾患の治療方法であり、前記本発明1の医薬組成物を投与する工程を含むことを特徴とする。本発明1の治療方法は、前記本発明1の分解剤を含む医薬組成物を使用することが特徴であって、特に示さない限り、前記本発明1の分解剤、分解方法、および医薬組成物における記載を援用できる。
前記投与工程は、例えば、投与対象が動物であり、前記動物は、前述と同様に、ヒト、または非ヒト動物である。
(5)幹細胞の分化制御剤および分化制御方法
本発明1の幹細胞の分化制御剤は、前述のように、前記本発明のp63スプライシングバリアントの分解剤を含むことを特徴とする。
本発明1の幹細胞の分化制御方法は、前述のように、前記本発明の幹細胞の分化制御剤を投与する工程を含むことを特徴とする。
p63は、神経幹細胞の維持に関与する因子sox3の制御に関与しており、p63が分解されると、神経幹細胞の維持ができなくなり、ニューロン等に分化することが知られている(Jose M. Santos-Pereira et al., Nature Communications, 2019, 10/3049)。前述のように、本発明は、前記CRBN複合体がp63スプライシングバリアントを分解できることを見出したことが特徴であるため、前記分解剤によれば、p63スプライシングバリアントを分解でき、結果的に、神経幹細胞の分化を抑制できるといえる。本発明において、幹細胞は、特に制限されず、例えば、神経幹細胞である。
(6)CRBN複合体の用途
本発明1のCRBN複合体は、p63スプライシングバリアント関連疾患の治療または幹細胞の分化制御に使用するための、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体との複合体である。前記CRBN複合体は、前述の通りであり、前記本発明1の分解剤、分解方法、医薬組成物、治療方法における記載を援用できる。
<本発明2>
本発明2は、前述のように、p63スプライシングバリアントの補充または分解抑制に関する発明である。本発明者らは、前述のように、サリドマイドが原因となる四肢および耳等の催奇形性等の疾患は、四肢および耳等の形成に関与するp63スプライシングバリアントが、CRBNにサリドマイドが結合した複合体によって分解されることが原因であることを突き止めた。この知見に基づき、例えば、CRBNとサリドマイドとの結合の抑制、または、前記p63スプライシングバリアントの分解の抑制を検出することで、サリドマイド関連疾患に対する有効候補物質をスクリーニングできること、また、分解される前記p63スプライシングバリアントを補充することで、前記p63スプライシングバリアントの機能を補い、サリドマイド関連疾患を治療できるとして、本発明2を完成させるに至った。なお、本発明2は、特に示さない限り、前記本発明1の記載を援用できる。
(1)スクリーニング方法
本発明2のスクリーニング方法は、前述のように、p63スプライシングバリアントの分解抑制物質のスクリーニング方法であり、候補物質と、前記CRBN分子(CRBNタンパク質またはそのペプチド断片)と、前記サリドマイド分子(サリドマイドまたはサリドマイド類縁体)と、前記p63スプライシングバリアントとを共存させ、前記p63スプライシングバリアントの分解の抑制を検出する工程、および、前記p63スプライシングバリアントの分解を抑制した候補物質を、分解抑制物質として選択する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明2のスクリーニング方法は、前述のように、サリドマイド関連疾患の有効候補物質のスクリーニング方法であり、前記本発明2の分解抑制物質のスクリーニング方法により、p63スプライシングバリアントの分解抑制物質を選択し、前記分解抑制物質を、サリドマイド関連疾患の有効候補物質として選択することを特徴とする。
前記検出工程は、例えば、液相の反応系を利用して行うことができる。前記液相の種類は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が使用できる。前記反応系への各成分の添加順序は、特に制限されない。
前記検出工程において、分解抑制の検出は、例えば、直接的な方法として、前記p63スプライシングバリアントの分解を検出してもよいし、間接的な方法として、前記CRBN分子と前記サリドマイド分子との結合の抑制を検出してもよい。前述のように、前記CRBN分子と前記サリドマイド分子とが結合した前記複合体によって、前記p63スプライシングバリアントが分解されるため、前記結合の抑制を検出することで、前記分解の抑制を間接的に検出できる。
前記直接的な方法により、前記p63スプライシングバリアントの分解を検出する場合、例えば、前記反応系に、前記CRBN分子および前記サリドマイド分子を、それぞれ別個に添加してもよいし、前記CRBN複合体として添加してもよい。前記反応系への前記候補物質の添加順序は、特に制限されず、前記CRBN分子および前記サリドマイド分子、もしくは前記CRBN複合体と、前記p63スプライシングバリアントとが接触するよりも前、または前記接触と同時であることが好ましい。
前記p63スプライシングバリアントの分解の検出は、例えば、前記候補物質未添加の反応系における結果と、前記候補物質添加の反応系における結果との比較により、分解の有無または程度を判断することができる。
前記間接的な方法により、前記CRBN分子と前記サリドマイド分子との結合の抑制を検出する場合、例えば、前記反応系に、前記CRBN分子および前記サリドマイド分子を、それぞれ別個に添加する。前記反応系への前記候補物質の添加順序は、特に制限されず、例えば、前記CRBN分子および前記サリドマイド分子のいずれか一方と同時、または両方と同時である。前記間接的な方法の場合、例えば、前記反応系への前記p63スプライシングバリアントの添加を省略してもよい。
前記CRBN分子と前記サリドマイド分子との結合の抑制は、例えば、前記候補物質未添加の反応系における結果と、前記候補物質添加の反応系における結果との比較により、結合の有無または程度を判断することができる。
(2)新規改変タンパク質
本発明2の新規改変タンパク質は、p63スプライシングバリアントの改変タンパク質であり、(X)のタンパク質または(Y)のタンパク質であることを特徴とする。
(X)下記(X1)、(X2)または(X3)のタンパク質
(X1)配列番号1または2のアミノ酸配列からなるタンパク質
(X2)前記(X1)のアミノ酸配列に対して同一性85%以上のアミノ酸配列からなり、前記(X1)のタンパク質の機能を有するタンパク質
(X3)前記(X1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記(X1)のタンパク質の機能を有するタンパク質
前記(X1)において、配列番号1は、ヒト野生型ΔNp63の506番目のアミノ酸残基GをAに改変したアミノ酸配列であり、配列番号2は、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)野生型ΔNp63の506番目のアミノ酸残基GをAに改変したアミノ酸配列である。下記配列において、下線部が、改変箇所である。
前記(X2)において、同一性は、例えば、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
前記(X3)において、「1または数個」は、例えば、1〜10個、1〜8個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
前記(X2)または前記(X3)のタンパク質としては、例えば、配列番号1または2のアミノ酸配列において、506番目のアミノ酸残基Aがアミノ酸残基G以外であるアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる。
(Y)下記(Y1)、(Y2)または(Y3)のタンパク質
(Y1)配列番号3または4のアミノ酸配列からなるタンパク質
(Y2)前記(Y1)のアミノ酸配列に対して同一性85%以上のアミノ酸配列からなり、前記(Y1)のタンパク質の機能を有するタンパク質
(Y3)前記(Y1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記(Y1)のタンパク質の機能を有するタンパク質
前記(Y1)において、配列番号3は、ヒト野生型TAp63の600番目のアミノ酸残基GをAに改変したアミノ酸配列であり、配列番号4は、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)野生型TAp63の599番目のアミノ酸残基GをAに改変したアミノ酸配列である。下記配列において、下線部が、改変箇所である。
前記(Y2)において、同一性は、例えば、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
前記(Y3)において、「1または数個」は、例えば、1〜10個、1〜8個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
前記(Y2)のタンパク質としては、例えば、配列番号3のアミノ酸配列において、600番目のアミノ酸残基Aがアミノ酸残基G以外であるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号4のアミノ酸配列において、599番目のアミノ酸残基Aがアミノ酸残基G以外であるアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる。
(3)医薬組成物
本発明2の医薬組成物は、前述のように、サリドマイド関連疾患用の医薬組成物であり、前記本発明2のp63スプライシングバリアントの改変タンパク質、または、前記改変タンパク質のコード遺伝子を含むことを特徴とする。前記p63スプライシングバリアントの改変タンパク質は、前述のとおりである。
前記改変タンパク質のコード遺伝子は、特に制限されず、前記改変タンパク質のアミノ酸配列をコドンに置き換えることで設計できる。前記コード遺伝子は、例えば、発現ベクターの形態でもよい。具体的に、本発明2の医薬組成物は、例えば、前記発現ベクターを含み、前記発現ベクターに前記コード遺伝子が発現可能に挿入されている。前記発現ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、前記医薬組成物を投与する対象に応じて、適宜設定できる。
本発明2の医薬組成物は、例えば、前記サリドマイド関連疾患の治療に使用できる。前記サリドマイド関連疾患は、特に制限されず、例えば、四肢の催奇形性、耳の催奇形性等があげられる。本発明において、「治療」は、例えば、疾患の症状の緩和、疾患の治癒、罹患の予防等の意味を含み、いずれか1つを目的として使用されてもよいし、2つ以上を目的として使用されてもよい。
(4)治療方法
本発明2の治療方法は、前述のように、サリドマイド関連疾患の治療方法であり、前記本発明2の医薬組成物を投与する工程を含むことを特徴とする。本発明2の治療方法は、前記本発明2の医薬組成物を使用することが特徴であって、特に示さない限り、前記本発明2の改変タンパク質、および医薬組成物における記載を援用できる。また、前記本発明1の治療方法における記載を援用できる。
前記投与工程は、例えば、投与対象が動物であり、前記動物は、前述と同様に、ヒト、または非ヒト動物である。
(5)改変タンパク質の用途
本発明2の改変タンパク質は、サリドマイド関連疾患の治療に使用するための、前記(X)または(Y)の改変タンパク質である。前記改変タンパク質は、前述の通りであり、前記本発明2の改変タンパク質、医薬組成物、治療方法における記載を援用できる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
[実施例1]
サリドマイドとCRL4CRBNとの結合により、前記p63スプライシングバリアントが分解されることを確認した。前記CRL4CRBNは、E3ユビキチンリガーゼ複合体CUL4−RBX1−DDB1−CRBNであり、これとサリドマイドとの結合体を、以下、サリドマイド−CRL4CRBNと示す。
(1) DMSO(サリドマイド未含有)、またはサリドマイド(100μmol/L サリドマイド含有DMSO)で、ヒトHaCat細胞を24時間インキュベート処理した。そして、イムノブロッティングにより、前記細胞におけるΔNp63αを検出した。また、コントロールとして、チューブリンも検出した。この結果を、図1(a)に示す。図に示すように、ΔNp63αは、サリドマイドの添加によって減少した。一方、サリドマイドの添加によっても、p63mRNA濃度は、減少しなかったことから(図示せず)、発現したΔNp63αが、サリドマイドの添加によって分解され減少したといえる。
(2) ヒトHaCat細胞(WT)、およびCRBNを発現しないヒトHaCat細胞(CRBN−/−)を、同様に24時間処理し、イムノブロッティングにより、ΔNp63、CRBNを検出した。また、コントロールとして、ビンキュリンも検出した。この結果を、図1(b)に示す。図に示すように、CRBNを発現しないヒトHaCat細胞(CRBN−/−)では、ΔNp63αの量は、ほとんど変化しなかった。このことから、サリドマイドとCRBNとの共存により、ΔNp63αが分解されたといえる。
(3) ヒト293T細胞において、Mycで標識化したTAp63αまたはΔNp63を、それぞれ異所的に過剰発現させ、且つ、同様に24時間処理した。そして、イムノブロッティングにより、ΔNp63αまたはTAp63αを検出した。この結果を、図1(c)および(d)に、それぞれ示す。図に示すように、ΔNp63αおよびTAp63αは、それぞれ、サリドマイドの添加によって減少した。
これらの結果から、ΔNp63αおよびTAp63αは、いずれも、サリドマイド−CRL4CRBNの下流因子であること、サリドマイドとCRBNとの共存により、分解することがわかった。
[実施例2]
前記p63スプライシングバリアントの分解が、CRL4CRBNに依存するユビキチン化およびプロテアソーム分解に起因するかを確認した。
(1) ヒトHaCat細胞を、実施例1と同様にして、DMSOまたはサリドマイドで24時間処理した。前記処理終了の6時間前には、10μmol/Lプロテアソーム阻害剤(MG132)または0.1μmol/Lネジル化阻害剤(MLN4924)を添加した。そして、イムノブロッティングにより、ΔNp63αの検出、コントロール(アクチンまたはGAPDH)の検出を行った。この結果を、図2(a)、(b)に示す。図に示すように、サリドマイド存在下における、ΔNp63αの減少は、各阻害剤の添加により抑制された。この結果から、ΔNp63αの分解は、ユビキチン化およびプロテアソーム分解に起因することが確認された。
(2) ヒトHaCat細胞に、翻訳停止のために、タンパク質合成阻害剤である50μg/mlシクロヘキシミド(CHX)をあわせて添加した以外は、実施例1と同様にして、DMSOまたはサリドマイドで48時間処理した。そして、イムノブロッティングにより、経時的なΔNp63αおよびコントロール(アクチン)の減少を確認した。この結果を、図2(c)に示す。図に示すように、CHXの添加により、DMSO添加の系においてもΔNp63αの減少が確認されたが、さらにサリドマイドを添加した系においては、ΔNp63αのさらなる減少が確認された。この結果から、サリドマイド処理が、p63をタンパク質レベルで減少させることが確認された。
(3) ヒト293T細胞において、Mycで標識化したヒトTAp63αまたはヒトΔNp63αと、HAで標識化したユビキチンとを、異所的に過剰発現させ、且つ、サリドマイドまたはDMSOとプロテアソーム阻害剤(MG132)とにより、6時間処理した。そして、抗HAビーズで免疫沈降(IP)を行い、ΔNp63αまたはTAp63αを検出した。この結果を、図2(d)に示す。図に示すように、ΔNp63αおよびTAp63αは、それぞれ、サリドマイド存在下でラダーなブロットを示したことから、分解されたことが確認できた。
(4) ヒト293T細胞において、Mycで標識化したヒトΔNp63αまたはヒトTAp63αと、FLAGで標識化したCRBNとを、それぞれ異所的に過剰発現させ、且つ、実施例1と同様に24時間処理した。そして、共免疫沈澱により、ΔNp63αまたはTAp63αと、CRBNとを検出した。この結果を、図2(e)に示す。図に示すように、ΔNp63αおよびTAp63αは、それぞれ、サリドマイドの非存在下では、CRBNとの結合は極めて弱いものであったが、サリドマイド存在下では、CRBNと安定した結合することが確認された。これらの結果から、p63スプライシングバリアントは、CRBNのサリドマイド依存型の基質であるといえる。
(5) ヒト野生型ΔNp63(WT)を発現するヒト293T細胞(WT)、およびヒトΔNp63改変体(hDNp63α G506A、配列番号1)を発現するヒト293T細胞(G506A)、ヒト野生型TAp63(WT)を発現するヒト293T細胞(WT)、およびヒトTAp63改変体(hTAp63 G600A、配列番号3)を発現するヒト293T細胞(G600A)について、前記実施例1と同様にして24時間処理を行い、イムノブロッティングにより、ΔNp63αまたは改変体(G506A)、TAp63または改変体(G600A)、およびコントロール(GAPDH)の検出を行った。この結果を、図2(f)に示す。図に示すように、ΔNp63αの改変体(G506A)は、ΔNp63(WT)と比較して、サリドマイド存在下での分解が抑制され、また、TAp63の改変体(G600A)は、TAp63(WT)と比較して、サリドマイド存在下での分解が抑制された。これらの結果から、前記p63スプライシングバリアントの改変体によれば、サリドマイドに起因する分解を抑制できることがわかった。
[実施例3]
前記p63スプライシングバリアント(ΔNp63)の分解が、サリドマイドによる四肢の催奇形性に関与しているかを確認した。
(1) ゼブラフィッシュにおいて、ゼブラフィッシュΔNp63α(zΔNp63α)は、胸びれの発生に必須であることが知られている。そこで、ゼブラフィッシュの受精卵に、EGFP(enhanced green fluorescent protein)mRNAまたはzΔNp63α−EGFPmRNAを導入し、サリドマイド非存在下(−)または400μmol/Lサリドマイド存在下、胚を発生させ、72時間後の外観を背面から確認した。この結果を、図3(a)に示す。図に示すように、EGFPmRNAを導入したゼブラフィッシュは、サリドマイド非存在下では、胸びれが発生しているが、サリドマイド存在下において、胸びれが発生しなかった。そして、zΔNp63αを過剰発現するゼブラフィッシュは、サリドマイド存在下であっても、サリドマイド非存在下と同様に、胸びれが発生した。つまり、サリドマイド存在下において、zΔNp63αは分解されるが、これを過剰発現させると、zΔNp63αが補充されるため、補充されたzΔNp63αの機能によって、胸びれが発生したといえる。
(2) zΔNp63α mRNAを導入していない受精卵(−)、野生型のzΔNp63α mRNA(WT)を導入した受精卵(WT)、変異型のzΔNp63α mRNA(drDNp63α1 G506A、配列番号2)を導入した受精卵(G506A)を使用し、それぞれ、前記(1)と同様にして、胚を発生させた。そして、サリドマイドによる胸びれ発生への影響を、図3(b)の評価基準にしたがって、影響なし(no effect)、軽度(mild)、重度(severe)のいずれであるかを評価した。これらの結果を、図3(c)に示す。図3(c)において、発生率(%)は、各群の全体(n数)に対する割合である。図3(c)に示すように、受精卵(−)からの胚は、サリドマイド存在下、半分以上の個体が、重度であったのに対して、zΔNp63α(WT)を過剰発現させた受精卵(WT)からの胚は、サリドマイド存在下、半分以上の個体が影響なしであり、残りも軽度であった。そして、さらに、変異型zΔNp63α(G506A)を過剰発現させた受精卵(G506A)からの胚は、サリドマイド存在下でも、大半の個体が影響なしであり、残りも軽度であり、この結果は、サリドマイド非存在下と同等であった。
(3) zΔNp63α mRNAを導入していない受精卵(−)、野生型のzΔNp63α mRNA(WT)を導入した受精卵(WT)を使用し、それぞれ、前記(1)と同様にして、胚を発生させた。そして、48時間後の外観を、背面と側面とから確認した。この結果を、図3(d)に示す。図において、上段は、背面の写真、中段は、側面の写真、下段は、中段で確認されるひれの拡大写真であり、矢頭は、ひれを示す。図に示すように、受精卵(−)からの胚は、サリドマイド存在下、ひれが欠損したのに対して、zΔNp63α(WT)を過剰発現させた受精卵(WT)からの胚は、サリドマイド存在下でも、サリドマイド非存在下と同様にひれの発生が確認できた。
[実施例4]
前記p63スプライシングバリアント(TAp63α)の分解が、サリドマイドによる耳小胞(耳)の催奇形性に関与しているかを確認した。
(1) ゼブラフィッシュにおいて、ゼブラフィッシュTAp63α(zTAp63α)は、耳小胞の発生に必須であることが知られている。そこで、zTAp63α mRNAを導入していない受精卵(−)、zTAp63α mRNAを導入した受精卵(zTAp63α)を使用し、それぞれ、前記実施例3(1)と同様にして、サリドマイド非存在下(−)または400μmol/Lサリドマイド存在下、胚を発生させ、72時間後の外観を確認した。この結果を、図4(a)に示す。図において、左の2列は、ゼブラフィッシュの側面の写真であり、右の2列は、耳小胞付近を拡大した写真である。また、耳小胞の直径を測定し、各群の平均値から相対値を求めた。これらの結果を、図4(b)に示す。前記相対値は、サリドマイド非存在下(−)で発生させた受精卵(−)からの胚における耳小胞の直径を1として算出し、平均±S.D(* p<0.001)とした。図4(a)、(b)に示すように、zTAp63αを過剰発現させていないゼブラフィッシュ(−)は、サリドマイド存在下では、耳小胞の大きさが、サリドマイド非存在下と比較して小さかった。これに対して、zTAp63αを過剰発現させたゼブラフィッシュ(zTAp63α)は、サリドマイド存在下であっても、サリドマイド非存在下と同様に耳小胞が発達した。つまり、サリドマイド存在下において、zTAp63αは分解されるが、これを過剰発現させると、zTAp63αが補充されるため、補充されたzTAp63αの機能によって、耳小胞が発達したといえる。
(2) さらに、感覚ニューロンおよび蝸牛殻の発生に必須とされている転写因子Atoh1の発現を確認した。前記(1)と同様にして発生させた48時間の胚について、in situハイブリダイゼーションを行った。この結果を、図4(c)に示す。図に示すように、zTAp63αを過剰発現させていないゼブラフィッシュ(−)は、サリドマイド存在下では、Atoh1の発現が消失した。これに対して、これに対して、zTAp63αを過剰発現させたゼブラフィッシュ(zTAp63α)は、サリドマイド存在下であっても、サリドマイド非存在下と同様にAtoh1が発現した。
(3) zTAp63α mRNAを導入していない受精卵(−)、野生型のzTAp63α mRNA(WT)を導入した受精卵(WT)、変異型のzTAp63α mRNA(drTAp63αG599A、配列番号4)を導入した受精卵(G599A)を使用し、それぞれ、前記(1)と同様にして、胚を発生させ、耳小胞の大きさについて相対値を算出した。これらの結果を、図4(d)に示す。図に示すように、受精卵(−)からの胚は、サリドマイド存在下では、耳小胞の大きさが、サリドマイド非存在下に対して半分以下となった。これに対して、zTAp63α(WT)を過剰発現させた受精卵(WT)からの胚は、サリドマイド存在下、サリドマイド非存在下での耳小胞の大きさと同等に発達した。そして、さらに、変異型zTAp63α(G599A)を過剰発現させた受精卵(G599A)からの胚は、サリドマイド存在下でも、サリドマイド非存在下と同等であり、且つ、受精卵(−)からの胚よりも、耳小胞は大きく発達した。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
本発明によれば、p63スプライシングバリアントを分解できることから、例えば、p63スプライシングバリアントが原因となる疾患の治療に有用である。
本発明によれば、CRBNタンパク質とサリドマイドとの複合体による前記p63スプライシングバリアントの分解を抑制する物質をスクリーニングができる。また、本発明によれば、前記p63スプライシングバリアントが分解されることが原因となるサリドマイド関連疾患を治療できる。

Claims (24)

  1. CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とを含むことを特徴とする、p63スプライシングバリアントの分解剤。
  2. 前記CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、前記サリドマイドまたはサリドマイド類縁体と複合体を形成している、請求項1記載の分解剤。
  3. 前記スプライシングバリアントが、Variant 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1または2に記載の分解剤。
  4. 前記CRBNが、ヒトCRBNである、請求項1から3のいずれか一項に記載の分解剤。
  5. p63スプライシングバリアントに、請求項1から4のいずれか一項に記載のp63スプライシングバリアントの分解剤を接触させる接触工程を含むことを特徴とする、p63スプライシングバリアントの分解方法。
  6. 前記接触工程を、in vivoまたはin vitroで行う、請求項5に記載の分解方法。
  7. 動物において、前記接触工程を行う、請求項5または6に記載の分解方法。
  8. 前記動物が、ヒト、または、非ヒト動物である、請求項7に記載の分解方法。
  9. 請求項1から4のいずれか一項に記載のp63スプライシングバリアントの分解剤を含むことを特徴とするp63スプライシングバリアント関連疾患に対する医薬組成物。
  10. 前記p63スプライシングバリアント関連疾患が、がんである、請求項9に記載の医薬組成物。
  11. 前記がんが、膵臓がん、皮膚がん、および頭頸部扁平上皮がんからなる群から選択された少なくとも一つである、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 請求項9から11のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与する工程を含むことを特徴とするp63スプライシングバリアント関連疾患の治療方法。
  13. 投与対象が、ヒト、または非ヒト動物である、請求項12に記載の治療方法。
  14. p63スプライシングバリアント関連疾患の治療に使用するための、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体との複合体。
  15. 請求項1から4のいずれか一項に記載のp63スプライシングバリアントの分解剤を含むことを特徴とする幹細胞の分化制御剤。
  16. 請求項15に記載の幹細胞の分化制御剤を投与する工程を含むことを特徴とする幹細胞の分化制御方法。
  17. 投与対象が、ヒト、または非ヒト動物である、請求項16に記載の分化制御方法。
  18. 幹細胞の分化制御に使用するための、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体との複合体。
  19. 候補物質と、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体と、p63スプライシングバリアントとを共存させ、前記p63スプライシングバリアントの分解の抑制を検出する工程、および、
    前記p63スプライシングバリアントの分解を抑制した候補物質を、分解抑制物質として選択する工程を含むことを特徴とする、p63スプライシングバリアントの分解抑制物質のスクリーニング方法。
  20. 前記スプライシングバリアントが、Variant 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項19に記載のスクリーニング方法。
  21. 前記検出工程において、CRBNタンパク質またはそのペプチド断片と、サリドマイドまたはサリドマイド類縁体とを、複合体として共存させる、請求項19または20に記載のスクリーニング方法。
  22. 前記CRBNが、ヒトCRBNである、請求項19から21のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  23. 請求項19から22のいずれか一項に記載のスクリーニング方法により、p63スプライシングバリアントの分解抑制物質を選択し、前記分解抑制物質を、サリドマイド関連疾患の有効候補物質として選択することを特徴とする、サリドマイド関連疾患の有効候補物質のスクリーニング方法。
  24. 請求項19から22のいずれか一項に記載のスクリーニング方法により、p63スプライシングバリアントの分解抑制物質を選択し、前記分解抑制物質を、幹細胞の分化制御の有効候補物質として選択することを特徴とする、幹細胞の分化制御の有効候補物質のスクリーニング方法。
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