JP2021020876A - がん療法用のt−PA含有ポリマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】より効果的な抗がん及びがんの転移抑制のための手段を提供する。【解決手段】下記式(I)で表されるブロック共重合体とポリアニオン性ポリマーとt−PAを含んでなるがん療法用組成物が開示される。【選択図】なし
Description
本発明は、組織プラスミノーゲンアクチベータ―(t−PA)を含有するレドックス活性型ポリマー組成物及びt−PAそれ自体のがん療法での使用又は用途に関し、より具体的にはt−PAとカチオン荷電性ポリマー化環状ニトロキシドラジカルとポリアニオン性ポリマーを含む組成物、特に、当該組成物に由来するナノ粒子、並びにt−PAそれ自体のがん療法での使用又は用途に関する。
がん性表現型に必須の持続的に高まる細胞内活性酸素種(ROS)は、生存、増殖及び転移過程で重要な役割を演ずることにより正のフィードバック様式でがんに影響を及ぼすことが知られている。それゆえ、ROSの消去は細胞生存シグナリング経路を抑制することから種々のがんの進行を緩和する可能性のある治療プログラムを提供する。本発明者らは、例えば、生体内ROSを消去することのできるレドックス活性を有する、高分子化環状ニトロキシドラジカルのセグメントとポリ(エチレングリコール)のセグメントを含むブロック共重合体又はそれらのナノ粒子を提供し(特許文献1、特許文献2、参照。)、また、当該共重合体とドキソルビシン等の抗がん剤との組み合わせ使用(特に、前者を投与した後に後者を投与する)は抗がん剤の活性を増強できることを開示した(非特許文献1)。
ところで、薬物キャリアーの低い腫瘍内分散性及び腫瘍への不十分な薬物送達性は、抗がん性ナノ医薬を成功裏に使用する上で意義深い挑戦事項である。腫瘍周辺の血管は、急速に分裂している細胞及び多量の細胞外マトリックス(ECM)によって奏される固体圧力(solid stress)の下で圧迫されている。これらの構成物及び構造は分子の移動を遅くし、かつ、充実性腫瘍の薬剤耐性の一因となる場合がある。一方、広範に使用されている血栓崩壊性薬物の組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)はECM構成物を崩壊させ、血管の性質を改善し、腫瘍組織への血液の供給を高めることが予想されることから、抗がん剤(例えば、パクリタキセル)内包ナノ粒子をt−PAと共投与することにより腫瘍への前記ナノ粒子の送達性を向上させることが提案されている(非特許文献2、非特許文献3)。
しかしながら、未だ、抗腫瘍及び転移抑制に有効な抗がん剤の開発に対するニーズは尽きることなく存在する。
Yoshitomi,et al.,Journal of controlled Release,Vo.172,No.1,pp.137−143(2013)(doi:10.1016/j.jconrel.2013.08.011
Zhang,et al.,Biomaterials 96(2016)64‐71
Kirtane et al.,Cancer Res:77(6)March 15,2017
本発明の目的はより効果的な抗がん及びがんの転移抑制のための手段を提供することにある。本発明者らは、前記特許文献1〜2、及び非特許文献1に記載されているようなレドックス活性型ブロック共重合体それ自体及び当該組成物と他の薬剤との組合せ使用等について研究し、かつ、それらの成果を公表してきた。このような研究の一端として、心臓発作の治療薬として承認されているt−PAを、それ固有の生物活性に悪影響を及ぼすことなくレドックス活性型ブロック共重合体に内包できる薬剤キャリアー系を開発し、公表した(T.Mei,A.Kim,L.B.Vong,A.Marushima,S.Puentes,Y.Matsumaru,A.Matsumura,Y.Nagasaki,Encapslation of tissue plasminogen activator in pH−sensitive selfassemble antioxidant nanopartaicles for ischmic stroke
treatment−Synerugistic effect of thrombolysis and antioxidant−,Biomaterials.215(2019)119209.doi:10.1016/j.biomaterials.2019.05.020.)。この論文は、ここに引用することによってその記載内容は本明細書の内容となる。
treatment−Synerugistic effect of thrombolysis and antioxidant−,Biomaterials.215(2019)119209.doi:10.1016/j.biomaterials.2019.05.020.)。この論文は、ここに引用することによってその記載内容は本明細書の内容となる。
驚くべきことに、このようなレドックス活性型ブロック共重合体とアニオン性ポリマーとt−PAとを含んでなる組成物又はこの組成物から水性媒体中で自己組織化されることにより形成されるナノ粒子を含むt−PA内包薬剤キャリアー系は、特に、ECMを崩壊させるとともに、腫瘍への血液灌流を改善して標的腫瘍組織へのレドックスナノ粒子のデリバリー及び免疫細胞浸透を向上させること等により、抗がん剤を共投与することなく抗がん作用を発揮することが確認された。
したがって、限定されるものではないが、本明細書により開示される主たる態様としては次のもが挙げられる。
態様1:有効成分として、下記式(I)で表されるブロック共重合体とポリアニオン性ポリマーと組織プラスミノーゲンアクチベータ―(t−PA)を含んでなるがん療法用組成物。
態様1:有効成分として、下記式(I)で表されるブロック共重合体とポリアニオン性ポリマーと組織プラスミノーゲンアクチベータ―(t−PA)を含んでなるがん療法用組成物。
上式中、各変動可能な基等の略号は次のとおり定義される。
Aは、非置換又は置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R’R"CH−基を表し、ここで、R’及びR"は独立してC1−C4アルコキシ又はR’とR"は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH2)3O−もしくは−O(CH2)4O−を表す。
L1は、直接結合又は二価の連結基を表す。
Xは、L2−R1であるか又は水素原子若しくはハロゲン原子若しくはヒドロキシル基であ
り、かつ、L2は−(CH2)p−NH−(CH2)p−であり、pは独立して、整数0又は1〜3であり、R1は、次式で表される環状ニトロキシドラジカル残基のいずれかであり、
Aは、非置換又は置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R’R"CH−基を表し、ここで、R’及びR"は独立してC1−C4アルコキシ又はR’とR"は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH2)3O−もしくは−O(CH2)4O−を表す。
L1は、直接結合又は二価の連結基を表す。
Xは、L2−R1であるか又は水素原子若しくはハロゲン原子若しくはヒドロキシル基であ
り、かつ、L2は−(CH2)p−NH−(CH2)p−であり、pは独立して、整数0又は1〜3であり、R1は、次式で表される環状ニトロキシドラジカル残基のいずれかであり、
(式中、R’はメチルである。)
L2−R1はnの付された反復単位の総数nの50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは100%を占める。
Zは、HまたはS(C=S)−Phであり、Phは1または2個のメチルまたはメトキシで置換されていてもよいフェニルである。
mは、5〜10,000、好ましくは、10〜500、より好ましくは20〜300の整数である。
nは、2〜500、好ましくは4〜200、より好ましくは6〜80の整数を表す。
ポリアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸から選ばれる。
態様2:ナノ粒子の形態にある、態様1のがん療法用組成物。
態様3:がん療法において、予防又は治療対処のがんが、脳腫瘍、頭頸部がん、唾液腺がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、乳がん、肝臓・胆のうがん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん、食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、腎臓がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんから選ばれる、態様1又は2のがん療法用組成物。
態様4:がん療法において、他のがん又は腫瘍治療剤が併用される、態様1〜3のいずれかに記載のがん療法用組成物。
態様5:t−PAを有効成分として含んでなるがん療法剤。
態様6:t−PAを有効成分とするがん療法剤
なお、本発明で用いるブロック共重合体の構造式中のL1等の方向性を持ち得る結合の方向性は、特記しない限り表示されているままの方向性を有する(以下、同じ。)。
L2−R1はnの付された反復単位の総数nの50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは100%を占める。
Zは、HまたはS(C=S)−Phであり、Phは1または2個のメチルまたはメトキシで置換されていてもよいフェニルである。
mは、5〜10,000、好ましくは、10〜500、より好ましくは20〜300の整数である。
nは、2〜500、好ましくは4〜200、より好ましくは6〜80の整数を表す。
ポリアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸から選ばれる。
態様2:ナノ粒子の形態にある、態様1のがん療法用組成物。
態様3:がん療法において、予防又は治療対処のがんが、脳腫瘍、頭頸部がん、唾液腺がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、乳がん、肝臓・胆のうがん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん、食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、腎臓がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんから選ばれる、態様1又は2のがん療法用組成物。
態様4:がん療法において、他のがん又は腫瘍治療剤が併用される、態様1〜3のいずれかに記載のがん療法用組成物。
態様5:t−PAを有効成分として含んでなるがん療法剤。
態様6:t−PAを有効成分とするがん療法剤
なお、本発明で用いるブロック共重合体の構造式中のL1等の方向性を持ち得る結合の方向性は、特記しない限り表示されているままの方向性を有する(以下、同じ。)。
本発明の組成物、副作用が弱いか殆ど無視でき、一方で、特有の作用機序による抗がん又は抗腫瘍作用及び効果を奏する。したがって、当該組成物は、それ単独で効果的な抗がん剤又は抗腫瘍剤として有用であり、また、他のがん又は悪性腫瘍療法手段と組合せて都合よく使用できる。
本明細書で開示されるがん療法用組成物又はそれから形成されるナノ粒子は、その抗がん作用について後述するモデル動物の実験例及び当該技術分野で周知の知見に照らすと、広範ながんの処理に有効であるものと理解できる。具体的には、理論に拘束されるものではないが、次の様な作用機序が有するものと思われる:レドックス活性型ブロック共重合体とアニオン性ポリマーとt−PAを含んでなる組成物又はその組成物から水性媒体中で自己組織化されることにより形成されるナノ粒子(例えばt−PA@iRNP)は、iRNPのコアにおいてt−PAが遮蔽されることによりt−PAの酵素活性が著しく遮蔽され一方で、その活性は、酸により開始されるイオンコンプレックスの崩壊を通じて酸性環境下で回復する。細胞外pHは正常な組織より腫瘍組織において低くなることが当該技術分野で周知である。それ故、腫瘍組織の酸性領域において、t−PA@iRNPは、強いプロトネーションに起因してポリカチオン間の電荷の斤力により崩壊する傾向にある。こうして、腫瘍組織領域では内包されたt−PAが迅速に放出され、ECMの崩壊を開始するとともに、より多くの環状ニトロキシドラジカルが腫瘍組織に浸透し、過剰なROSを消去して細胞生存シグナリング経路を廃棄すると共に、免疫細胞も腫瘍組織に浸透することを可能にするものと理解できる。さらに、ナノサイズの構築物たるt−PA@iRNPは健常細胞中への非特異的な取り込みが防止されるので、腫瘍組織領域に蓄積される傾向がある。
したがって、本明細書で開示される主題たる、がん療法用組成物又はそれから形成されるナノ粒子は、上記のような機序の関与する広範ながんの予防又は治療に利用できる。これらのがんとしては、限定されるものではないが、脳腫瘍、頭頸部がん、唾液腺がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、乳がん、肝臓・胆のうがん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん、食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、腎臓がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん
を挙げることができる。
を挙げることができる。
また、上記のような作用機序に悪影響を及ぼさない限り、それ自体公知の上記のがん又は悪性腫瘍の療法手段(治療薬物の使用に限定されない)と都合よく併用できる。
式(I)で表されるブロック共重合体はポリアニオン性ポリマーと共に自己組織化してナノ粒子を形成することができ、また、このような自己組織化に際してt−PAをナノ粒子に内包若しくは搭載若しくは装着若しくは充填若しくは固定化できる。本明細書において、内包(encapsulated)、搭載若しくは充填(loaded)、装着(installed)、固定化(immobilized)は夫々互換可能な用語として使用されている。再度、理論に拘束されるものでないが、前記組成物は、水性媒体中での自己組織化を介して、高い可溶性及び高い可動性を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)セグメントをシェルとし、t−PAを、主として、PMNTセグメントとポリアニオン性ポリマーとのポリイオンコンプレックス領域(コア)中に含有するコア−シェル型ナノ粒子を形成するものと理解できる。そのため、このようなナノ粒子は水性媒体中に均一に可溶化又は分散でき、血管内投与用等をはじめとする非経口用を本願する広範な剤型の製剤原薬として適する特性を有する。
本発明に関して記述された用語等は、特に言及しない限り、当該技術分野で常用されている意味又は内容を有するものとして使用されている。一般的に、本発明について以下の追加の説明をすることができる。
組織プラスミノーゲンアクチベータ―(t−PA)は、既に臨床上実用されているアルテプラーゼ(alteplase)をはじめとするt−PAであれば、天然物由来の調製物、遺伝子組み換えにより作製された、所謂、t−PA又はt−PA活性物質と称されているものを包含し、また、本発明の課題解決(又は目的を達成するために)に使用できるものであれば、これらの改変体をも包含する概念である。
式(I)で表されるブロック共重合体において、L1を定義する二価の連結基は、ポリ(エチレングリコール)(以下、PEGと略記する場合あり。)セグメントと側鎖としての環状ニトロキシドラジカルが結合したポリ(メチルスチレン)(以下、PMNTと略記する場合あり。)セグメントの機能が本発明の目的に沿うものであれば、限定されるものでない。しかし、二価の連結基は、一般的には、最大34個、好ましくは18個、より好ましくは最大10個の炭素、並びに任意に酸素及び窒素原子を含有する基を意味する。かような連結基として、具体的には次の基を挙げることができる:
で表される基から選ばれるか、又は−(CH2)cS−、−CO(CH2)cS−、−(CH2)cNH−、−(CH2)cCO−、−CO−、−OCOO−、−CONH−からなる群より選ばれ、ここで、それぞれ独立してbは2〜6の整数であり、cは1〜5の整数である、ことができる。このような共重合体は、上記の特許文献1又は特許文献2に記載の方法、また、必要により、これらの方法を改変した方法により製造できる。典型的な共重合体
の製造方法については後述する製造例に示ように実施するのが便宜である。
の製造方法については後述する製造例に示ように実施するのが便宜である。
ポリアニオン性ポリマーは、式(I)のブロック共重合体と一緒になって、水性媒体中でナノ粒子を形成でき、かつ、t−PA及びブロック共重合体のレドックス活性に悪影響を及ぼさないものであれば、限定されるものでないが、一般的に、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等を挙げることができる。これらの中、好ましく使用できるものは、ポリ(メタ)アクリル酸(ポリ(アクリル酸)若しくはポリ(メタクリル酸))であり、これらの数平均分子量(Mn)は500〜1000000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1000〜10000であることができる。これらは、市販のものをそのまま、又は必要に応じて精製して使用することができる。
前記の組成物における各成分の含有割合は、本発明の目的の沿った組成物を提供できるものであれば限定されないが、一般的には、式(I)の共重合体対ポリアニオン性ポリマーの配合割合は、形成されるt−PA内包ナノ粒子の水性媒体中での安定性を考慮すれば、式(I)のポリマーのカチオン荷電性基(−NH−)の総電荷対後者のポリアニオン性基(例えば、−COOH)の総電荷が、1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは1:1となるように選ばれる。こうして形成されるポリイオンコンプレックス(PIC)とt−PAとの配合割合は、t−PA内包ナノ粒子の水性媒体の分散溶液又は可溶化溶液中、室温(約20℃〜約25℃)〜37℃下で、t−PAが当該粒子から、少なくとも、1時間、実質的に溶離若しくは溶出しないことを基準に選ばれる。限定されるものでないが、アルテプラーゼについて例示すると、式(I)の共重合体に対し、重量基準で、一般に0.01mg/kg〜20mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kg、より好ましくは0.5mg/kg〜5mg/kgとなるように選ばれる。共重合体は5mg/kg〜500mg/kg、好ましくは10mg/kg〜100mg/kg、より好ましくは20mg/kg〜50mg/kgとなるように選ばれる。
こうして提供される組成物は、水性媒体中形成されるナノ粒子として存在することができる。本明細書にいう、水性媒体とは水(例えば、脱イオン水)、そのリン酸緩衝化溶液、必要により、エチルアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の水可溶性有機溶媒を含有する水等を挙げることができる。このようなナノ粒子の形成方法は、組成物の各成分を必要により、前記のような有機溶媒を用いて溶解し、所定の分子量(例えば、3.5kD〜50kD)カットオフ能を有する透析膜を介して水に対して透析することにより各成分が一体に自己組織化したナノ粒子を提供できる。ナノ粒子とは、水性媒体中の粒子の動的光散乱(DLS)測定により平均粒径がナノオーダー、一般的に、10nm〜500nm,好ましくは10nm〜200nm、より好ましくは15nm〜150nm、最も好ましくは15nm〜50nmにある粒子を意味する。
このようナノ粒子は、水性媒体中から遠心、又はその水溶液を凍結乾燥することにより固形物として提供できる。凍結乾燥品又は上記の透析物を、前述の水性媒体や、生理食塩水、必要により、マクロゴール、L−アルギニン、L−ヒスチジン等のアミノ酸、緩衝剤リン酸緩衝液等を製薬学的賦形剤と混合して血管内投与用製剤とすることができる。当該ナノ粒子は、t−PAを内包した状態で被験動物(患者を含む)に効果的に静脈若しくは動脈からの投与又は血管内投与療法(例えば、動注療法)に使用でき、当該ナノ粒子からのニトロオキシドラジカルがROSを消去することによりニューロンの障害を防止すると同時に、t−PAの半減期を延長し、抗腫瘍又は抗がん作用及び効果を奏する。
当該製剤は、前述した各種のがん又は腫瘍の予防又は治療に際し、所期の効果を発揮す
る様な用量で患者に投与されるが、このような用量は、必要があれば動物実験及び/又は臨床試験を行い、専門医により製剤中に含有されるt−PAの量や、投与方法等を考慮して決定することができる。
る様な用量で患者に投与されるが、このような用量は、必要があれば動物実験及び/又は臨床試験を行い、専門医により製剤中に含有されるt−PAの量や、投与方法等を考慮して決定することができる。
以下、記載を簡潔にするため、本発明で使用するブロック共重合体の典型的な製造例、ポリイオンコンプレックス(PIC)組成物の調製例、ナノ粒子の調製例、さらには、ナノ粒子の作用、効果を例証するための具体的な試験例を開示するが、本発明はこれらの例に限定されるものでない。
<製造例1> ブロック共重合体PEG−b−CTAの合成
5gのポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(MeO−PEG−OH,MW=5,000,Fluka,Germany)を減圧下で水及び水分がなくなるまで、110℃にて,2〜12時間撹拌した。安定化のため窒素雰囲気下、撹拌しながら65℃で1時間インキュベーションした。窒素流条件下で、脱水ポリマーにテトラヒドロフラン(THF)20mLをゆっくり加え、次いで、1.25mLのブチルリチウム(BuLi)を加えることによりポリマー末端ヒドロキシル基をリチウムオキシドへ転化した(MeO−PEG−OH:BuLi=1:2(モル比))。得られたMeO−PEG−OLi溶液に10倍過剰量のα、α−ジクロロ−p−キシリレン(DCPX,C8H8Cl2,1.7g)を加え、撹拌しながら65℃で、24時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を冷イソプロピルアルコール(IPA)へ投入し、DCPX及び他の不純物を除去するためにポリマーを沈殿させ、遠心分離にて回収した(149,000×g、3分間、−4℃)。冷IPAを用いる再沈殿を3度繰り返した。こうして精製されたポリマーMeO−PEG−OCH2PhCH2Clを室温(約25℃)で24〜48時間減圧下で乾燥させた(収量=4.9g,98%)。
5gのポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(MeO−PEG−OH,MW=5,000,Fluka,Germany)を減圧下で水及び水分がなくなるまで、110℃にて,2〜12時間撹拌した。安定化のため窒素雰囲気下、撹拌しながら65℃で1時間インキュベーションした。窒素流条件下で、脱水ポリマーにテトラヒドロフラン(THF)20mLをゆっくり加え、次いで、1.25mLのブチルリチウム(BuLi)を加えることによりポリマー末端ヒドロキシル基をリチウムオキシドへ転化した(MeO−PEG−OH:BuLi=1:2(モル比))。得られたMeO−PEG−OLi溶液に10倍過剰量のα、α−ジクロロ−p−キシリレン(DCPX,C8H8Cl2,1.7g)を加え、撹拌しながら65℃で、24時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を冷イソプロピルアルコール(IPA)へ投入し、DCPX及び他の不純物を除去するためにポリマーを沈殿させ、遠心分離にて回収した(149,000×g、3分間、−4℃)。冷IPAを用いる再沈殿を3度繰り返した。こうして精製されたポリマーMeO−PEG−OCH2PhCH2Clを室温(約25℃)で24〜48時間減圧下で乾燥させた(収量=4.9g,98%)。
氷冷水浴中の丸底フラスコ中で窒素雰囲気下、溶媒として5mLのTHF中で0.4mLの二硫化硫黄(CS2)と0.67mLの臭化フェニルマグネシウム(PhMgBr,3.0M)ジエチルエーテル溶液を混合することによりC6H5CS2MgBrを生成した。この溶液の色は数分中に黄色から暗赤色に変化した。次のステップで使用するためにこの溶液混合物を室温(約25℃)でさらに30分間撹拌した。別に、を窒素雰囲気下で純THF(20mL)に4gの乾燥ポリマーMeO−PEG−OCH2PhCH2Clを溶解させた。続いて、上記のC6H5CS2MgBrのTHF溶液を、直ちにポリマーMeO−PEG−OCH2PhCH2Cl溶液に加え、混合物を撹拌しながら40℃で72時間反応させた。72時間の反応後、混合物を冷IPAを用いて再沈殿させ、遠心した(149,000×g、3分間、−4℃)。未反応化合物を完全に除去するためこの操作を6度繰り返し、完全に精製されたポリマーMeO−PEG−OCH2PhCH2SC(=S)Ph(MeO−PEG−CTA)を得た。次いで、コポリマーを室温(約25℃)の減圧下で36時間乾燥した(収量=4g,100%)。
MeO−PEG−CTAの1H NMRスペクトルを図1に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)の結果を図2に示す。GPCは2mgのポリマーを0.5%のテトラエチルアンモニュウムを含むTHPの1mLに溶解して行った。
<製造例2> PEG−b−PCMSブロック共重合体の合成:
連鎖移動剤(MeO−PEG−CTA)とともにテローゲンとしてクロロメチルスチレン(CMS)のラジカルテロメリゼーションによりメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(クロロメチルスチレン)(MeO−PEG−b−PCMS)を合成した。
連鎖移動剤(MeO−PEG−CTA)とともにテローゲンとしてクロロメチルスチレン(CMS)のラジカルテロメリゼーションによりメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(クロロメチルスチレン)(MeO−PEG−b−PCMS)を合成した。
このMeO−PEG−b−PCMSのポリマー主鎖は親水性セグメントとしてのPEG
と疎水性セグメントしての反復単位22のPCMSから構成されていることが1H NMRデータから確認された。要約すると、MeO−PEG−b−CTA(36g)をフリーラジカル開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の240mg及びCMS56mLと混合して高純度トルエン(200mL)に溶解した。この混合物を窒素雰囲気下24時間70℃で撹拌した。反応後、得られたポリマーを、冷IPAを用いる3度の沈殿/遠心(−4℃、149,000×g,3分)により完全に精製した後、室温(約25℃)で減圧乾燥した(収量=4g,100%)。
と疎水性セグメントしての反復単位22のPCMSから構成されていることが1H NMRデータから確認された。要約すると、MeO−PEG−b−CTA(36g)をフリーラジカル開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の240mg及びCMS56mLと混合して高純度トルエン(200mL)に溶解した。この混合物を窒素雰囲気下24時間70℃で撹拌した。反応後、得られたポリマーを、冷IPAを用いる3度の沈殿/遠心(−4℃、149,000×g,3分)により完全に精製した後、室温(約25℃)で減圧乾燥した(収量=4g,100%)。
MeO−PEG−b−PCMSの1H NMRスペクトルを図3に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)の結果を図4に示す。
GPCは、ポリマー2mgを0.5%のTEA(テトラエチルアンモニウム)を含むテトラヒドロフラン(THF)1mLに溶解して行った。
<製造例3> PEG−b−PMNTブロック共重合体の合成:
MeO−PEG−b−PCMSブロック共重合体のベンジルクロライドと4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカル(NH2−TEMPO;東京化学工業株式会社)とのアミノ化反応を介して、MeO−PEG−b−PCMSのCMS基のクロロ原子をニトロキシドラジカルに転化した。要約すると、MeO−PEG−b−PCMS(4g)及びNH2−TEMPO(9g=5x eq.)を別々に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の50mLに撹拌しながら24時間室温で溶解させた。2つの溶液を混合し、24時間室温で反応させた。反応終了後、反応混合物からポリマーを、冷IPAを用いて沈殿させ、−4℃で3分間149,000×gの遠心を各度行い、完全に精製されたMeO−PEG−b−PMNTポリマーを得た。得られたポリマーを室温(約25℃)で24時間減圧乾燥した(収量=4g,100%)。
MeO−PEG−b−PCMSブロック共重合体のベンジルクロライドと4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカル(NH2−TEMPO;東京化学工業株式会社)とのアミノ化反応を介して、MeO−PEG−b−PCMSのCMS基のクロロ原子をニトロキシドラジカルに転化した。要約すると、MeO−PEG−b−PCMS(4g)及びNH2−TEMPO(9g=5x eq.)を別々に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の50mLに撹拌しながら24時間室温で溶解させた。2つの溶液を混合し、24時間室温で反応させた。反応終了後、反応混合物からポリマーを、冷IPAを用いて沈殿させ、−4℃で3分間149,000×gの遠心を各度行い、完全に精製されたMeO−PEG−b−PMNTポリマーを得た。得られたポリマーを室温(約25℃)で24時間減圧乾燥した(収量=4g,100%)。
4−アミノ−TEMPOを含まない対照MeO−PEG−b−nPMNTポリマーは、ジメチルスロホキシド(DMSO)中でのアミネーション反応を介してMeO−PEG−b−PCMSのクロロメチル基の2−ヒドロキシエチルアミノ部への転化によって得た。得られた、MeO−PEG−b−PMNTとMeO−PEG−b−nPMNTを、それぞれ、0.1M HCl溶液中でプロトン化して、12時間凍結乾燥した。得られた各ポリマーを1H NMR及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した。MeO−PEG−b−PMNTの1H NMRスペクトルを図5に示す。このポリマー2mgを0.5%のTEA(テトラエチルアンモニウム)を含むテトラヒドロフラン(THF)1mLに溶解したときの、ゲル透過クロマトグラフィーの結果を図6に示す。
<製造例4> t−PA@iRNPの作製:
tPA内包レドックス活性型ナノ粒子は、側鎖としてROS消去部分を保持するカチオン性ジブロック両親媒性共重合体(PEG−b−PMNT)、アニオン性ポリ(アクリル酸)(PAAc)、及びt−PA(田辺三菱製薬株式会社から入手,ab92637)から構成されるポリイオンコンプレックス(PIC)ミセルの形成を介して作製した。
tPA内包レドックス活性型ナノ粒子は、側鎖としてROS消去部分を保持するカチオン性ジブロック両親媒性共重合体(PEG−b−PMNT)、アニオン性ポリ(アクリル酸)(PAAc)、及びt−PA(田辺三菱製薬株式会社から入手,ab92637)から構成されるポリイオンコンプレックス(PIC)ミセルの形成を介して作製した。
簡潔には、PEG−b−PMNTとPAAc(分子量:5,000)を、それぞれ5mg/mLの濃度でリン酸緩衝(PB)溶液(50mM,pH6.2)に溶解した。t−PA内包ニトロオキシドラジカル含有RNPsは、3.5mLのPEG−b−PMNT溶液を、0.5mLのPAAc及び1mg(4mg/mL,0.25mL)のt−PAの混合物に1:1のモル比(r=PEG−PMNTのカチオン性アミン基のモルユニット:PAAcのアニオン性カルボキシル基のモルユニット)にて滴下することにより調製した。
t−PA@RNPはDMF溶液を30分間撹拌した後透析膜を介して水に対して透析す
ることによって自己組織化することにより形成された。
ることによって自己組織化することにより形成された。
・遊離RNP又はiRNP(t−PA不含)及びt−PA@iRNP(5mg/mL)の物理的性質:
平均粒径(nm)及びζ(ゼータ)電位は、動的光散乱(DLS)技法を用いて測定した。平均粒径及びζ(ゼータ)電位の測定結果を図7に示す。
平均粒径(nm)及びζ(ゼータ)電位は、動的光散乱(DLS)技法を用いて測定した。平均粒径及びζ(ゼータ)電位の測定結果を図7に示す。
<動物実験1> t−PA@iRNPのin vivo抗腫瘍効果の確認
基本となる試験方法は、図8に示される実験プロトコールに従って実施した。
基本となる試験方法は、図8に示される実験プロトコールに従って実施した。
マウス結腸癌細胞株C−26(RCB2657)は理研バイオリソース研究センター(理化学研究所 筑波、茨城県)から入手した。C−26細胞株は、使用に供する前は供給元により推奨されるように保持した。すべての実験は、筑波大学ガイドライン(実験プラン承認#18−452)に厳密にしたがって実施した。
5週齢の雄性BALB/cマウスを購入し、2−3日間の馴化飼育の後に実験に用いた。BALB/cマウスの右大腿にC−26細胞株の懸濁液(1×106cells/マウス(n=7))を皮下投与することで作製した異種移植マウス(C−26結腸癌モデルともいう。)を用いてt−PA@iRNPの抗腫瘍効果及びその他の特性を決定した。
簡潔には、腫瘍の体積が一定のサイズ(100mm3)に達したとき、マウスを無作為に次の6群に分けた。健常対照(健常)、腫瘍担持対照(生理食塩水)、t−PA(1mg/kg)、iRNP(TEMPO;18mg/kg)、t−PA@niRNP(t−PA;1mg/kg)及びt−PA@iRNP(t−PA;1mg/kg,TEMPO;18mg/kg)
t−PA@iRNPは、上記製造例4で作製されたナノ粒子を、t−PA@niRNPは、t−PA@iRNPにおいて、TEMPOが2−ヒドロキシエチルに転化されたナノ粒子を(上記製造例3参照。)、iRNPはt−PA不含ナノ粒子(RNP(TEMPO:18mg/kg))を、それぞれ用いる例であり、t−PAは遊離t−PA(1mg/kg)を用いる例であり、これらのサンプルは図8に示される実験プロトコールの投与スケジュールに従いマウスの尾静脈を介して2日毎に静注(i.v.)された。
t−PA@iRNPは、上記製造例4で作製されたナノ粒子を、t−PA@niRNPは、t−PA@iRNPにおいて、TEMPOが2−ヒドロキシエチルに転化されたナノ粒子を(上記製造例3参照。)、iRNPはt−PA不含ナノ粒子(RNP(TEMPO:18mg/kg))を、それぞれ用いる例であり、t−PAは遊離t−PA(1mg/kg)を用いる例であり、これらのサンプルは図8に示される実験プロトコールの投与スケジュールに従いマウスの尾静脈を介して2日毎に静注(i.v.)された。
上記実験をベースとする各種試験結果:
(1)動物の体重の変化
実験動物の体重はC−26細胞を接種した後2日毎に測定した。試験結果として試験中の動物の平均体重(n=5)(平均±SD)変化を図9に示す。いずれの群も体重減少が見られず、強い毒性がないことが示された。
(1)動物の体重の変化
実験動物の体重はC−26細胞を接種した後2日毎に測定した。試験結果として試験中の動物の平均体重(n=5)(平均±SD)変化を図9に示す。いずれの群も体重減少が見られず、強い毒性がないことが示された。
(2)腫瘍サイズの変化
上記試験にしたがい、生理食塩水、上記のt−PA、iRNP、t−PA@niRNP、t−PA@iRNPを、それぞれ腫瘍担持マウス(各n=5)に投与後2日毎に腫瘍サイズを17日間測定した。マウスを17日目に安楽死させ、組織/器官を採取し、−80℃で保存した後分析した。腫瘍サイズは、次の等式を用いて算出した。
上記試験にしたがい、生理食塩水、上記のt−PA、iRNP、t−PA@niRNP、t−PA@iRNPを、それぞれ腫瘍担持マウス(各n=5)に投与後2日毎に腫瘍サイズを17日間測定した。マウスを17日目に安楽死させ、組織/器官を採取し、−80℃で保存した後分析した。腫瘍サイズは、次の等式を用いて算出した。
腫瘍サイズ(cm3)=0.5×L×W2 (ここで、L及びWは、それぞれ、デジタルカリパスにより測定される腫瘍の長径及び短径である。)
結果を図10に示す。データは平均±SDとして表示されている。なお、図中、*及び#:*P<0.05、#P<0.001を意味する。
結果を図10に示す。データは平均±SDとして表示されている。なお、図中、*及び#:*P<0.05、#P<0.001を意味する。
iRNP処置はROS消去効果により腫瘍増殖が有意に抑制され、t−PA@iRNP
処置はiRNPのものに比べより高い抗腫瘍効果を示し、これはそのより長い血液循環中での半減期に起因する可能性がある(上記のT.Mei et al.参照。)。この延長されたt−PAの半減期は、t−PAが腫瘍細胞の移動及び増殖の足場を提供するフィブリン崩壊を促進し、腫瘍の増殖を抑制したものと理解できる。
処置はiRNPのものに比べより高い抗腫瘍効果を示し、これはそのより長い血液循環中での半減期に起因する可能性がある(上記のT.Mei et al.参照。)。この延長されたt−PAの半減期は、t−PAが腫瘍細胞の移動及び増殖の足場を提供するフィブリン崩壊を促進し、腫瘍の増殖を抑制したものと理解できる。
(3)腫瘍中のROSレベルの変化
腫瘍組織におけるiRNP及びt−PA@iRNPのROS消去効果を評価した。生理食塩水を用いた対照の結果を100%と、各サンプルt−PA、iRNP、t−PA@niRNP、t−PA@iRNを投与した系についてジヒドロエチジウムを用いるROS測定キットを用い腫瘍組織中のROSレベルを決定した。結果を図11に示す。データは平均±SDとして表示されている。なお、図中、*及び**:*P<0.05、**P<0.001(n=3)を意味する。腫瘍中のROSレベルは生理食塩水及びt−PA@niRNPに比べ、iRNP及びt−PA@iRNPにおいて有意に低下している。
腫瘍組織におけるiRNP及びt−PA@iRNPのROS消去効果を評価した。生理食塩水を用いた対照の結果を100%と、各サンプルt−PA、iRNP、t−PA@niRNP、t−PA@iRNを投与した系についてジヒドロエチジウムを用いるROS測定キットを用い腫瘍組織中のROSレベルを決定した。結果を図11に示す。データは平均±SDとして表示されている。なお、図中、*及び**:*P<0.05、**P<0.001(n=3)を意味する。腫瘍中のROSレベルは生理食塩水及びt−PA@niRNPに比べ、iRNP及びt−PA@iRNPにおいて有意に低下している。
(4)組織学的評価
マウスの組織/器官を採取し、採取後直ちに4%パラホルムアルデヒドにより1日間固定した。次いで、70%エタノール中で1日インキュベートしてパラフィン切片標本を作製した。5μm厚の切片標本をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色に供した。器官の組織学は共焦点顕微鏡を用いて評価した。染色された代表的な組織学的切片標本の図に代わる写真を図12に示す。上部の写真は4倍拡大したものであり、下部の写真は20倍拡大したものである。矢印は腫瘍中のフィブリンマトリックスを示す。腫瘍組織中には高レベルのフィブリンが見られるものの、t−PA、t−PA@niRNP及びt−PA@iRNP処理では腫瘍組織中のフィブリンが顕著に崩壊されていること判る。
マウスの組織/器官を採取し、採取後直ちに4%パラホルムアルデヒドにより1日間固定した。次いで、70%エタノール中で1日インキュベートしてパラフィン切片標本を作製した。5μm厚の切片標本をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色に供した。器官の組織学は共焦点顕微鏡を用いて評価した。染色された代表的な組織学的切片標本の図に代わる写真を図12に示す。上部の写真は4倍拡大したものであり、下部の写真は20倍拡大したものである。矢印は腫瘍中のフィブリンマトリックスを示す。腫瘍組織中には高レベルのフィブリンが見られるものの、t−PA、t−PA@niRNP及びt−PA@iRNP処理では腫瘍組織中のフィブリンが顕著に崩壊されていること判る。
(5)免疫蛍光染色
5.1 フィブリンの分布を評価するため、腫瘍パラフィン切片標本を脱パラフィン処理し、ウサギポリクローナルフィブリ(ノーゲン)抗体(abcam;ab342669;1:100)(一次抗体)で染色し、次いで、Alexa Fluor 488結合型ヤギ−ウサギIgG(Invitrogen;1:400)(二次抗体)で染色した。腫瘍切片標本中のフィブリ(ノーゲン)堆積を共焦点顕微鏡下で分析した。代表的な腫瘍組織中のフィブリンの免疫蛍光染色画像(写真)を図13に示す。フィブリン蛍光密度を、イメージJソフトウエア―を用いてフィブリンシグナルの平均グリーン値を測定した。結果を図14に示す。図中、*について:*P<0.05、**P<0.001(n=3)を意味し、データは平均±SDとして表示されている。定量化蛍光強度は腫瘍組織中に高レベルのフィブリンが観察される傾向が見られる。
5.1 フィブリンの分布を評価するため、腫瘍パラフィン切片標本を脱パラフィン処理し、ウサギポリクローナルフィブリ(ノーゲン)抗体(abcam;ab342669;1:100)(一次抗体)で染色し、次いで、Alexa Fluor 488結合型ヤギ−ウサギIgG(Invitrogen;1:400)(二次抗体)で染色した。腫瘍切片標本中のフィブリ(ノーゲン)堆積を共焦点顕微鏡下で分析した。代表的な腫瘍組織中のフィブリンの免疫蛍光染色画像(写真)を図13に示す。フィブリン蛍光密度を、イメージJソフトウエア―を用いてフィブリンシグナルの平均グリーン値を測定した。結果を図14に示す。図中、*について:*P<0.05、**P<0.001(n=3)を意味し、データは平均±SDとして表示されている。定量化蛍光強度は腫瘍組織中に高レベルのフィブリンが観察される傾向が見られる。
これらの結果からも、t−PA、t−PA@niRNP及びt−PA@iRNP処理では腫瘍組織中のフィブリンが顕著に崩壊されていること判る。
5.2 t−PA、iRNP及びt−PA@iRNPの抗腫瘍効果の機序を評価するため、NF−κB(ROS調節の転写因子)及び免疫細胞の浸透を、免疫蛍光試験によりそれぞれ決定した。
簡潔には、腫瘍パラフィン切片標本を脱パラフィン化し、それぞれ、NF−κB p65ウサギmAb(XP;D14E12;1:400)、ラット抗−マウスCD16/32抗体(553142;1:500)及びヤギ抗−マウスMMR/CD206抗体(AF2535;1:100)を用いて染色した。次いで、Alexa Fluor 488−結合型ヤギ抗−ウサギIgG(Invitrogen;1:400)、Alexa Fluor 488−結合型ヤギ抗−ラットIgG(Invitrogen;1:500)、及びAlexa Fluor 488−結合型ロバ抗−ヤギIgG(Invitrogen
;1:500)で、それぞれ染色した。共焦点顕微鏡下の染色画像(写真)を図15に示す。図中のスケールバーは10μmを表す。このような顕微鏡下で腫瘍切片標本中のNF−κBシグナル及び免疫細胞浸透の発現について分析した。
;1:500)で、それぞれ染色した。共焦点顕微鏡下の染色画像(写真)を図15に示す。図中のスケールバーは10μmを表す。このような顕微鏡下で腫瘍切片標本中のNF−κBシグナル及び免疫細胞浸透の発現について分析した。
NF−κBレベルは、イメージJソフトウエア―を用いてNF−κBシグナル緑の平均値を測定することにより決定した。結果を図16に示す。図中、***は***P<0.001を意味し、印の不存在は有意差がないことを意味する。データは平均±SDで表示されている。RNPs及びt−PA@iRNPの抗腫瘍効果の機序は、腫瘍中の腫瘍転写因子(NF−κB)により確認された。RNPs及びt−PA@iRNPは、C−26結腸癌(又は腫瘍)の増殖を生理食塩水対照よりも有意に強く抑制した。これは、おそらく,ROSのモジュレーションされるNF−κBのダウンレギュレーションによるのかも知れない。
5.3 D−ダイマー(フィブリン崩壊産物)のレベルを腫瘍微環境に対するELISAにより表示する。
結果を図17に示す。データは平均±S.E.M.で表示している。*印:**P<0.01,***P<0.001(n=5)t−PA群、t−PA@niRNP群及びt−PA@iRNP群で有意にD−ダイマー量が上昇しており、フィブリンが効果的に切断されていることが確認される。
5.4 マウスにおける薬剤の毒性
被験薬剤のマウスにおける毒性を評価するために、各種器官のH&E染色を行い、顕微鏡下でモニターした。結果を図18に示す。これらの図から、本試験にも用いた各薬剤は明確な毒性を示さないことが判る。
被験薬剤のマウスにおける毒性を評価するために、各種器官のH&E染色を行い、顕微鏡下でモニターした。結果を図18に示す。これらの図から、本試験にも用いた各薬剤は明確な毒性を示さないことが判る。
<動物実験2> t−PAの抗腫瘍効果の確認
基本となる試験方法は、図19に示される実験プロトコールに従って実施した。
基本となる試験方法は、図19に示される実験プロトコールに従って実施した。
t−PAそれ自体の各腫瘍進行ステージでの抗腫瘍効果評価するために本試験方法は、図19に示される実験スキームに従って実施した。簡潔には、t−PAそれ自体の各腫瘍進行ステージでの抗腫瘍効果評価するために、試験例1に記載したC−26結腸癌モデルの腫瘍サイズが30mm3に達したとき(初期ステージ)に、100mm3に達したとき(中期ステージ))に、
処置グループ1:対照(非処置)、
処置グループ2:初期ステージ、1mg/kg用量のt−PAの投与(E t−PA(1mg/kg)、
処置グル―プ3:中期ステージ、0.15mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(0.15mg/kg)、
処置グループ4:中期ステージ、0.5mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(0.5mg/kg)、
処置グループ5:中期ステージ、1mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(1mg/kg)、
処置グループ6:中期ステージ、2mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(2mg/kg)
が、それぞれ、動物の静脈内に行われた。
処置グループ1:対照(非処置)、
処置グループ2:初期ステージ、1mg/kg用量のt−PAの投与(E t−PA(1mg/kg)、
処置グル―プ3:中期ステージ、0.15mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(0.15mg/kg)、
処置グループ4:中期ステージ、0.5mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(0.5mg/kg)、
処置グループ5:中期ステージ、1mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(1mg/kg)、
処置グループ6:中期ステージ、2mg/kg用量のt−PAの投与(M t−PA(2mg/kg)
が、それぞれ、動物の静脈内に行われた。
(1)腫瘍の体積(又はサイズ)は、<試験例1>の(2)に従って決定した。これらの処置による効果(C−26結腸癌モデルへの各サンプルの投与による腫瘍増殖のプロファイル)を図20に示す。図中、データは平均±S.E.M.として表示する。各グループ
は1群5匹(n=5)である。*は、*P<0.05である。図20−Aは、用量1mg/kgのt−PAの投与は、初期及び中期ステージおける腫瘍の増殖を抑制することを示す。図20−Bは、腫瘍抑制のためのt−PAの処置は用量依存的な効果を示し、1mg/kg以上で有意に優れた抗腫瘍効果を示す。
は1群5匹(n=5)である。*は、*P<0.05である。図20−Aは、用量1mg/kgのt−PAの投与は、初期及び中期ステージおける腫瘍の増殖を抑制することを示す。図20−Bは、腫瘍抑制のためのt−PAの処置は用量依存的な効果を示し、1mg/kg以上で有意に優れた抗腫瘍効果を示す。
(2)C−26結腸癌モデルへサンプルの投与による体重変化のプロファイルを、図21に示す。データは平均±S.E.M.として表示する。各グループは1群5匹(n=5)である。図21−Aは、初期及び中期ステージにおける腫瘍の進行ステージにかかわりなく、t−PA処置は、モデル動物の体重変化の差異を無視できることを示す。
(3)t−PAは、腫瘍組織中への免疫細胞M1マクロファージ(CD16/32)の浸透を高める。図22−Aは、前述のCD16/32(緑)及びDAPI(青)染色による染色図である。図中のスケールバーは、10μmを表す。CD16/32レベルをイメージJソフトウエア―を用い緑の平均値を測定することにより決定した。結果を図22−Bに示す。各グループは、1群5匹(n=5)である。データは平均±S.E.M.として表示する。*印:*P<0.05を意味する。図から、t−PA処置は抗腫瘍効果のための免疫細胞(M1マクロファージ)の腫瘍組織への浸透を高めている。
Claims (6)
- 有効成分として、下記式(I)で表されるブロック共重合体とポリアニオン性ポリマーとt−PAを含んでなるがん療法用組成物。
Aは、非置換又は置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R’R"CH−基を表し、ここで、R’及びR"は独立してC1−C4アルコキシ又はR’とR"は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH2)3O−もしくは−O(CH2)4O−を表す。
L1は、直接結合又は二価の連結基を表す。
Xは、L2−R1であるか又は水素原子若しくはハロゲン原子若しくはヒドロキシル基であり、かつ、L2は−(CH2)p−NH−(CH2)p−であり、pは独立して、整数0又は1〜3であり、R1は、次式で表される環状ニトロキシドラジカル残基のいずれかであり、
L2−R1はnの付された反復単位の総数nの50%以を占める。
Zは、HまたはS(C=S)−Phであり、Phは1または2個のメチルまたはメトキシで置換されていてもよいフェニルである。
mは、5〜10,000の数である。
nは、2〜500数である。
ポリアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸から選ばれる。 - ナノ粒子の形態にある、請求項1に記載のがん療法用組成物。
- がん療法において、予防又は治療対処のがんは、脳腫瘍、頭頸部がん、唾液腺がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、乳がん、肝臓・胆のうがん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん、食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、腎臓がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんから選ばれる、請求項1又は2に記載のがん療法用組成物。
- がん療法において、他のがん又は腫瘍治療剤が併用される、請求項1〜3のいずれかに記載のがん療法用組成物。
- t−PAを有効成分として含んでなるがん療法剤。
- t−PAを有効成分とするがん療法剤
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Cited By (2)
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WO2022259848A1 (ja) * | 2021-06-07 | 2022-12-15 | 国立大学法人筑波大学 | 高分子化バルプロ酸及びその使用 |
WO2023145539A1 (ja) * | 2022-01-25 | 2023-08-03 | 国立大学法人筑波大学 | ポリ(疎水化システイン)セグメントをブロックとして含む共重合体及びその治療用途 |
-
2019
- 2019-07-29 JP JP2019139027A patent/JP2021020876A/ja active Pending
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WO2022259848A1 (ja) * | 2021-06-07 | 2022-12-15 | 国立大学法人筑波大学 | 高分子化バルプロ酸及びその使用 |
WO2023145539A1 (ja) * | 2022-01-25 | 2023-08-03 | 国立大学法人筑波大学 | ポリ(疎水化システイン)セグメントをブロックとして含む共重合体及びその治療用途 |
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