JP2021019545A - 成層圏医療装置、成層圏医療方法、サーバー装置、成層圏製薬システム、成層圏治療システム - Google Patents

成層圏医療装置、成層圏医療方法、サーバー装置、成層圏製薬システム、成層圏治療システム Download PDF

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Hikari Miyato
光 宮戸
孝広 落谷
Takahiro Ochitani
孝広 落谷
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Abstract

【課題】地上に比べて重力や大気の影響が低く抑えられた成層圏でオルガノイドを用いた医療試験を行うことを可能にする成層圏医療装置を提供する。【解決手段】成層圏医療装置1は、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体3に搭載される医療装置である。飛翔体は、例えば、飛行船、グライダー、気球、飛行機などで構成される。成層圏医療装置1は、成層圏での医療試験に使用され、地上基地局との間で無線通信可能に構成されている。成層圏医療装置1は、がん患者等のヒト由来のオルガノイドを培養する培養容器5と、所定の生化学的処理を実行するバイオリアクター7と、バイオリアクター7での反応をモニターするモニター部9と、バイオリアクター7での反応に関する情報を生成する情報生成部11と、生成された情報を地上基地局へ送信する通信部13と、上記各部を制御する制御部15などを有している。【選択図】図2

Description

本発明は、成層圏環境において、ヒトの生物体組成物であるヒト由来材料(細胞やオルガノイドなど)を用いた各種医療試験を遠隔操作で行うための、成層圏医療装置(上空の成層圏で使用する治験装置)、成層圏医療方法(上空の成層圏で実施する治験方法)に関するものである。
また本発明は、成層圏において上記成層圏医療装置を用いて得られた各種データを、創薬や治療などの目的で円滑に利用できるように一元管理するためのサーバー装置(データセンター)に関するものである。
また本発明は、成層圏において上記成層圏医療装置を用いて得られた各種データに基づいて、成層圏において製薬(医薬の製造)を行うための成層圏製薬システムに関するものである。
さらに本発明は、成層圏において上記成層圏医療装置を用いて得られた各種データに基づいて、成層圏においてヒトの治療を行うための成層圏治療システムに関するものである。
難病のガンについて、従来より、放射線治療が行われてきたが、かえって、これはガンの組織を増殖させることになるので、効果的なものではない。そこで、ガンのみならず、その他の病気のために、現在、細胞やオルガノイドといったヒト由来材料を用いた治療研究や再生医療が行われるようになっている。オルガノイドは、簡単に言うと、いろいろな臓器を模した模擬臓器ということができる。
上述した従来技術を背景に本願発明者が研究を重ねた結果、ガンをはじめとする病気の研究や治療のために、細胞やオルガノイドなどのヒト由来材料を用いた各種試験や再生医療は、大気や重力の影響を可能な限り抑制した環境下で行われるのが最適であることを見出した。ヒト由来材料を培養することによって、例えば、細胞の負荷を軽減し、効率の良い培養と新しいエクソソームの発見や生成、PDXモデルの新基盤の創出につながることになる。
また、同様に、細胞やオルガノイドなどのヒト由来材料を用いた各種試験に基づく創薬や、ヒトの治療も、大気や重力の影響を可能な限り抑制した環境下で行われるのが好ましい。
しかしながら、大気や重力の影響を可能な限り低く抑えた環境は、地上においては、これを継続的につくりだすことは困難である。このような、大気や重力の影響を可能な限り低く抑えた環境は、宇宙空間であれば実現できるが、コストが著しく高いといった問題がある。ところが、これは、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体のなかでならば、比較的低コストで実現できる。
そこで、上述した背景技術と課題に鑑み、本発明の目的は、地上に比べて大気や重力の影響が抑制された上空環境で(すなわち成層圏で)、細胞やオルガノイドなどのヒト由来材料を用いた医療試験(医療実験/治験)を行うことを可能にする、成層圏医療装置、成層圏医療方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、上記成層圏医療装置を用いて得られた各種データを、一元管理するためのサーバー装置(データセンター)を提供し、成層圏での製薬や治療に利用できるようにすることにある。
また、本発明の他の目的は、地上に比べて大気や重力の影響が抑制された上空環境で(すなわち成層圏で)製薬を行うことを可能にする成層圏製薬システムを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、地上に比べて大気や重力の影響が抑制された上空環境で(すなわち成層圏で)ヒトの治療を行うことを可能にする成層圏治療システムを提供することにある。
上記目的は、地上基地局との間で無線通信可能で、成層圏での医療試験(医療実験)に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される医療装置(医療実験装置)であって、
ヒト由来の血液、体液、細胞、オルガノイドなどのヒト由来材料を培養するための少なくとも一つの培養容器と、
前記ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、予め定めた所定の生化学的処理(生化学反応を伴う処理)を実行するためのバイオリアクターと、
前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、地上基地局へ送信するための通信部と、
を有する成層圏医療装置によって達成される。
なお、バイオリアクターで実行する生化学的処理の対象は、ヒト由来の材料(ヒト由来の生物体構成物/生物体組成物)である限り特に限定されるものではない。ヒト由来材料の具体例としては、ヒト由来の血液や体液、ヒト由来の細胞、ヒト由来のオルガノイドなどが挙げられる。
細胞の種類は、ヒト由来のものである限り特に限定されない。例えば、骨髄細胞、造血幹細胞、骨髄細胞、歯髄細胞(子どもの乳歯由来の歯髄細胞)などを、ヒト由来材料として利用することもできる。
オルガノイドは、例えば、組織の細胞、ES細胞またはiPS細胞から、自己複製能力および分化能力で、3次元的な培養で、自己組織化により形成することができる。
上記成層圏医療装置において、バイオリアクターにて生化学的処理を行うヒト由来材料の分泌物には、エクソソーム、マイクロRNAの少なくとも何れか一方が含まれる。
また、上記成層圏医療装置において、バイオリアクターは、地上基地局からの指令に基づいて、複数種類の生化学的処理のいずれか一を選択的に実行できるように構成されている。
また、上記成層圏医療装置において、ヒト由来材料は、がん患者(がん患者の患部)から採取したがん細胞を使って培養されたものである。
また、上記成層圏医療装置において、前記ヒト由来材料はオルガノイドであり、オルガノイドの種類ごとに培養容器が設けられている。
また、上記成層圏医療装置を搭載する前記飛翔体は、例えば、飛行船、グライダー、気球、飛行機などである。
また前述した目的は、
上記成層圏医療装置を具備する飛翔体を成層圏に投入し、この成層圏医療装置が成層圏にある状況で実行する方法であって、
ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、バイオリアクターにて、予め定めた所定の生化学的処理を実行するステップ(a)と、
バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、地上基地局へ送信するステップ(b)と、
を含む成層圏医療方法によって達成される。
上記成層圏医療方法は、
成層圏医療装置の通信部が、地上基地局から、バイオリアクターで実行すべき生化学的処理に関する指令を受信するステップを更に含んでいる。
そして、前記ステップ(a)において、地上基地局から受信した「バイオリアクターで実行すべき生化学反応に関する指令」に基づいて、バイオリアクターにて所定の生化学反応の処理を実行させる。
また前述した目的は、
情報を格納するための情報格納部と、インターネットにアクセス可能な通信部と、を具備するサーバー装置であって、
前記情報格納部において、
請求項1に記載の成層圏医療装置を利用して得られた、バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報である医療情報と、
ヒト由来材料の由来元のヒトの個人情報と、
を相互に紐付した状態で格納する、ことを特徴とするサーバー装置によって達成される。
また前述した目的は、
成層圏での製薬に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される製薬システムであって、
薬剤の生成に必要な創薬情報を得るための成層圏医療装置と、
前記成層圏医療装置で得られた医療情報に基づいて設計された医薬を製造するための成層圏製薬装置と、を有しており、
前記成層圏医療装置は、
ヒト由来材料を培養するための少なくとも一つの培養容器と、
前記ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクターと、
前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、成層圏医療装置へ送信するための制御部と、
を有しており、
前記成層圏製薬装置は、
薬剤の原料を貯留する原料貯留部と、
前記成層圏医療装置のバイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報に基づいて設計された医薬を、前記原料貯留部に貯留された原料を使って製造するための医薬製造部と、
を有している、
ことを特徴とする成層圏製薬システムによって達成される。
また前述した目的は、
成層圏におけるヒトの治療に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される治療システムであって、
患者の治療に必要な情報を得るための成層圏医療装置と、
前記患者に対する治療を実施するための成層圏治療設備と、
を有しており、
前記成層圏医療装置は、
前記患者由来のヒト由来材料を培養するための少なくとも一つの培養容器と、
前記ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクターと、
前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、成層圏医療装置へ送信するための制御部と、
を有しており、
前記成層圏治療設備は、
前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を踏まえて策定された治療計画に基づいて、ヒト由来材料を提供した前記患者を治療するための治療室を有している、
ことを特徴とする成層圏治療システムによって達成される。
本発明に係る成層圏医療装置は、該装置を制御する地上基地局(成層圏医療装置のコントロールセンター)との間で無線通信可能であって、成層圏環境での医療試験に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される装置である。このような試験装置を成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載することで、地上に比べて重力や大気の影響が抑制された状態を制限なく継続的につくりだすことができる。したがって、地上に比べて重力や大気の影響が低く抑えられた最適環境(成層圏環境)で、ヒト由来材料(ヒト由来の生物体構成物/生物体組成物)を用いた医療試験を行うことができる。すなわち、本発明は、患者等の人体を使わず、その代わりに、当該患者の人体に由来するヒト由来材料を用いる治験装置(成層圏治験装置)ということができる。
また、成層圏医療装置のバイオリアクターで実行された生化学反応の結果に関する情報は、電気信号に変換されて、無線通信によって地上基地局へ送信されるようになっている。したがって、地上にいながらにして、ヒト由来材料を用いた成層圏での医療試験の状況を、随時に、継続的に、また、リアルタイムで観察することができ、また、その試験結果を地上で詳細に解析・分析することができる。さらに、成層圏でのヒト由来材料を用いた医療試験の結果と、地上でのヒト由来材料を用いた医療試験の結果とを比較することで、地上での重力や大気の影響を詳細に検証することも可能になる。
また、本発明に係る成層圏医療装置には、ヒト由来材料の種類ごとに培養容器が設けられている。例えば、ヒト由来材料としてオルガノイドを用いる場合には、オルガノイドの種類ごとに培養容器が設けられている。オルガノイド(Organoid)とは、人為的に創出された器官に類似し、当該器官と同等の機能を備える組織体である。オルガノイドの種類には、例えば、脳オルガノイド、内耳オルガノイド、胸腺オルガノイド、精巣オルガノイド、肝臓オルガノイド、膵臓オルガノイド、腸オルガノイド、上皮オルガノイド、肺オルガノイド、腎臓オルガノイドなどがある。したがって、オルガノイドの種類ごとに培養容器を設けることで、実質的には、あらゆる臓器について臓器別に、成層圏環境下でバイオリアクターを用いた医療試験を行うことができる。その結果、生体を傷めることなく、臓器別に、薬の効果や副作用などを効果的に調べることが可能になる。
また、本発明に係る成層圏医療装置が具備するバイオリアクターは、地上基地局からの指令に基づいて、複数種類の生化学的処理のいずれか一を選択的に実行できるように構成されている。これにより、いちどの飛翔体の成層圏投入で、様々な試験を行うことが可能になる。
また、本発明に係る成層圏医療方法では、上記成層圏医療装置を具備する飛翔体を上空の成層圏に投入し、成層圏医療装置が成層圏にある状況で、ヒト由来材料を用いた医療試験を実行する。
具体的には、ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、バイオリアクターにて所定の生化学的処理を実行し、バイオリアクターでの生化学反応の結果に関する情報を生成し、その情報を地球上の地上基地局へ送信する。
このような方法によれば、地上に比べて重力や大気の影響が抑制された状態を制限なく継続的につくりだすことができる。したがって、地上に比べて重力や大気の影響が低く抑えられた最適環境(成層圏環境)で、ヒト由来材料を用いた医療試験を行うことができる。すなわち、本発明は、患者等の人体を使わず、その代わりに、当該患者の人体に由来するヒト由来材料を用いる治験方法(成層圏験方法)ということができる。
また、成層圏医療装置のバイオリアクターで実行された生化学反応の結果に関する情報は、電気信号に変換されて、無線通信によって地上基地局へ送信されるようになっている。したがって、地上にいながらにして、ヒト由来材料を用いた成層圏での医療試験の状況を、随時に、継続的に、また、リアルタイムで観察することができ、また、その試験結果を地上で詳細に解析・分析することができる。さらに、成層圏でのヒト由来材料を用いた医療試験の結果と、地上でのヒト由来材料を用いた医療試験の結果とを比較することで、地上における重力や大気の影響を詳細に検証することも可能になる。
また、本発明に係る成層圏医療方法では、ヒト由来材料は、例えば、がん患者から採取したがん細胞を使って培養されたものでもよい。これにより、当該患者に有効ながんの治療方法を見出すことが可能になる。また、例えば抗がん剤に対する様々な作用を調べることもできる。さらに、がんの増殖能、浸潤能、転移能、代謝能などを調べることも可能になり、その結果、がんの新しい治療方法を探ることも可能になる。
また、本発明に係る成層圏医療方法では、エクソソームやマイクロRNAといった、オルガノイドなどのヒト由来材料の分泌物を対象に、バイオリアクターにて生化学的処理を行うようになっている。エクソソームやマイクロRNAは、ヒト由来材料を構成する細胞の分身ともいえる。したがって、バイオリアクターでの処理にヒト由来材料の分泌物を利用することで、ヒト由来材料自体には一切触れる必要がないので、ヒト由来材料を傷めることなく様々な医療試験を行うことができる。すなわち、成層圏という環境下で、ヒト由来材料を用いた医療試験を非破壊的に(ヒト由来材料の細胞を一切破壊することなく)実施することができる。
また、本発明に係る成層圏医療方法では、バイオリアクターで実行すべき生化学反応に関する指令(リクエスト)を、成層圏医療装置が地上基地局から受信し、その指令に基づいて、成層圏医療装置のバイオリアクターにて所定の生化学反応の処理を実行させるようになっている。これにより、地上基地局からの遠隔操作に基づいて、様々な医療試験を行うことができる。
なお、成層圏医療装置を搭載する飛翔体は、飛行船に限らず、グライダー、気球、飛行機などに搭載することも可能である。これにより、成層圏医療装置が広く普及し、ヒト由来材料を活用した革新的治療を促進させることができる。
本発明で用いる各種装置やシステムを搭載し、成層圏を継続的に飛翔している飛翔体を示す概念図である。 本発明に係る成層圏医療装置の機能的構成を示すブロック図である。 本発明に係る成層圏医療装置における処理の一例を示すフローチャートである。 飛翔体と地上基地局とサーバー装置(データセンター)との間で情報の送受信を行うための構成を示すネットワーク図である。 本発明に係るサーバー装置(データセンター)の機能的構成を示すブロック図である。 本発明に係る成層圏製薬システムの機能的構成を示すブロック図である。 本発明に係る成層圏治療システムの機能的構成を示すブロック図である。
以下、添付図面に基づいて、本発明の具体的実施形態について説明する。
(成層圏医療装置)
本発明に係る成層圏医療装置1は、図1、図2に例示するように、成層圏を継続的に飛翔可能な飛行船等の飛翔体3に搭載される医療装置である。この成層圏医療装置1は、成層圏環境での医療試験に使用され、地上基地局との間で無線通信可能に構成されている。
なお、以下説明する実施形態では、成層圏医療装置1で使う「ヒト由来材料」の具体例として、ヒト由来のオルガノイドを例示する。
ただし、バイオリアクターで実行する生化学的処理の対象である「ヒト由来材料」は、オルガノイドに限定されるものではなく、ヒト由来の血液や体液、あるいは、ヒト由来の細胞を「ヒト由来材料」として用いることも可能である。例えば、ヒトの乳歯由来の歯髄細胞を、「ヒト由来材料」として用いることも可能である。
本実施形態において、成層圏医療装置1は、図2に概略的に示すとおり、
・ヒト由来のオルガノイドからなるヒト由来材料を培養する培養容器5と、
・所定の生化学的処理(生化学的な試験)を実行するバイオリアクター7と、
・バイオリアクター7での反応状況(変化等)をモニターするモニター部9と、
・バイオリアクター7での反応状況や反応結果の情報を生成する情報生成部11と、
・情報生成部11で生成された情報を地上基地局へ送信するための通信部13と、
・上記各部を制御するためのプロセッサからなる制御部15など
を有している。
培養容器5では、例えば、がん患者から採取したがん細胞に由来するオルガノイド(ヒト由来材料)を培養する。ヒト由来のオルガノイドの培養方法は一般的に知られているので、本実施形態ではその説明を省略する。
本実施形態では、一例として一つの培養容器を想定しているが、成層圏医療装置1には、複数の培養容器を設けることも可能である。この場合、オルガノイドの種類ごとに培養容器を設けてもよい。すなわち、臓器別にオルガノイドの培養容器を設けてもよい。例えば、培養容器を複数設けて、ヒトのあらゆる臓器のオルガノイドを各培養容器で培養することも可能である。
バイオリアクター7(bioreactor)は、地上基地局からの遠隔操作による指令に基づいて、予め用意された複数種類の生化学的処理(生化学反応を伴う処理)のいずれか一を選択的に実行する。バイオリアクター7は、例えば、一般的に知られたマイクロデバイスやマイクロフルイッドなどを応用したものや組み合わせたもので構成することができる。
このバイオリアクター7では、オルガノイド又はその培養液に含まれるオルガノイドの分泌物を対象に、予め定めた所定の生化学的処理(何らかの生化学的な反応を生じる処理)を実行する。好ましくは、オルガノイドの培養液に含まれる該オルガノイドの分泌物を対象に、所定の生化学的処理を実行することが望ましい。この場合、生化学的処理を行うオルガノイドの分泌物には、例えば、エクソソーム(exosome)やマイクロRNA(miRNA)などが含まれる。エクソソーム(exosome)やマイクロRNA(miRNA)の検出や解析などの方法は、一般的に知られているので、本実施形態ではその説明を省略する。
バイオリアクター7を用いて行う生化学的処理の具体例としては、例えば、がんの増殖能を調べるための処理、がんの浸潤能を調べるための処理、がんの転移能を調べるための処理、がんの代謝能を調べるための処理などが挙げられる。
情報生成部11は、モニター部9でのモニター結果に基づいて、バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報を生成する。すなわち、バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果をモニター部9から読み込んで、生化学反応の進行状況や反応結果に関するデータを、無線通信により送信可能な電気信号(情報)に変換する。
通信部13は、情報生成部11によって生成された、バイオリアクター7での生化学反応の結果に関する情報(電気信号)を、無線通信によって地上基地局へ送信する。
地上基地局(図示省略)は、成層圏医療装置1を遠隔で操作可能な、地上に設けられたコントロールセンターである。この地上基地局には、成層圏医療装置1の通信部13との間で情報の送受信を行うための通信部や、成層圏医療装置1から受信した各種情報を解析するための解析装置、成層圏医療装置1の各部を遠隔操作するための制御装置などが設けられている。
地上基地局で受信した情報は、バイオリアクターでの生化学反応の結果の解析・分析に用いられる。そして、この解析・分析の結果に基づいて、がん患者等の治療が行われる。
また、地上基地局で受信した情報は、患者の治療方法の策定に利用することができる。
また、地上基地局で受信した情報は、医薬の設計に用いることができる。
なお、飛翔体3が具備する成層圏医療装置1と、地上基地局との間での情報の送受信にあたっては、例えば短波的なKUバンドを用いることができる。
(飛翔体)
本実施形態では、成層圏医療装置を搭載する飛翔体3の代表例としては、飛行船が挙げられるが、飛翔体は成層圏を継続的に飛翔可能であれば特に限定されない。例えば、成層圏医療装置を搭載する飛翔体として、グライダー、気球、飛行機などを利用してもよい。すなわち、飛翔体は、ジェットエンジンやプロペラなどの推力を得るための手段を備えた飛行機でもよく、あるいは、自力で飛行可能なグライダーなどでもよい。
飛翔体3は、成層圏医療装置1に電力を供給するための、太陽光発電方式の発電部21を飛翔体に搭載してもよい。この場合には、発電部21は、ソーラーパネルを有している。ソーラーパネルは、発電効率を考慮して例えばモリブデンや金などを活用してもよい。
飛翔体3にソーラーパネルを設ける場合には、ソーラーパネルは格納式でもよく、あるいは、飛翔体の表面に露出したままでもよい。
前述した特徴を具備する成層圏医療装置1は、飛行船等の飛翔体3に搭載される。そして、この飛翔体3は、自己の推力によって成層圏まで送り込む。あるいは、推力のある飛行機などで牽引して飛翔体3を成層圏に送り込んでもよい。
成層圏医療装置1を搭載した飛翔体3は、成層圏で運用される。成層圏とは、上空20キロメートルから50キロメートルぐらいまでで空気は殆ど無く宇宙の入り口である。
通常、飛翔体が空気のあるところを飛行すれば空気抵抗を受けるが、飛翔体3の運用を想定している成層圏では、空気抵抗を殆ど受けることなく、また気圧が低いので少しのエンジン・動力等の推進力で容易に加速できる。
したがって、仮に、飛翔体の動力源としてソーラーパネルが必要な場合でも、ソーラーパネルの設置面積(設置枚数)を少なくすることが出来、かつ、長期で飛行することが可能となる。
また上述したとおり、成層圏では、空気抵抗を殆ど受けることなく、また気圧が低いので少しのエンジン・動力等の推進力で容易に加速できる。すなわち、成層圏では、空気抵抗を殆ど受けることなく高速での飛翔が可能となるため、地上に比べて低い重力状態を創出することができる。
また、飛行船、グライダー、飛行機などの飛翔体を複数成層圏に投入し、これらの複数の飛翔体を相互連結してもよい。これにより、連結された複数の飛翔体からなる大きな建造物を上空に設置することが出来、これを利用することで、医療実験だけではなくヒトの治療を行うことも可能となる。
なお、成層圏医療装置1を搭載した飛翔体3が運用される成層圏では、重力は無重力とは言えないが、地上より遥かに低い。また、成層圏は医療研究現場でクリーン度の目安となるクラス10万レベルである。
(成層圏医療装置における処理例/成層圏医療方法)
次に、図3のフローチャートに基づいて、上記構成の成層圏医療装置における処理例(成層圏医療方法)について説明する。
成層圏医療方法の実施にあたっては、はじめに、前述した特徴を具備する成層圏医療装置を搭載した飛翔体を、成層圏に投入する<図3のステップS11>。
そして、無重力または微小重力の状況が維持されるように、飛翔体療装置を搭載した飛翔体の姿勢制御を行う<S13>。
次に、成層圏医療装置のコントロールセンターである地上基地局が、成層圏医療装置の通信部へ向けて、バイオリアクターで実行すべき生化学的処理に関する指令(リクエスト)を送信する<S15>。この指令(リクエスト)には、例えば、バイオリアクターで実行すべき生化学的処理の種類や内容などが含まれている。
次に、成層圏医療装置が、地上基地局から受信した「バイオリアクターで実行すべき生化学反応に関する指令」に基づいて、バイオリアクターにて所定の生化学反応の処理を実行する。具体的には、オルガノイド又はその培養液に含まれるオルガノイドの分泌物を対象に、バイオリアクターにて所定の生化学的処理を実行する<S17>。
上記バイオリアクターを用いた処理を実行している間、バイオリアクターでの反応の進行状況や反応結果をモニター部で監視する<S19>。
次に、情報生成部にて、バイオリアクターでの生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報を生成する<S21>。すなわち、バイオリアクターでの生化学反応の進行状況や反応結果をモニター部から読み込んで、その結果に関するデータを、無線通信により送信可能な電気信号(情報)に変換する。
そして、上記ステップS21で生成された情報を地上基地局へ送信する<S23>。
地球上の地上基地局との間で通信を行う場合には、飛翔体3の通信部13を使い、短波的なKUバンドを用いる。飛翔体3から地上基地局への通信にあたっては、培養容器5やバイオリアクター7での実験経過、具体的には、写真、動画、幹細胞のデータなどを、モニター部9や情報生成部11で電子化し、通信部13がKUバンドを用い飛翔体3から地上基地局へ送信する。
上述した手順を経て成層圏医療装置から地上基地局へ送信された情報は、例えば、医薬の設計のために利用することができる。あるいは、治療方法の策定などのために利用することもできる。
地上で医薬の設計を行う場合には、成層圏医療装置から送信された「バイオリアクターでの生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報」に基づいて、医薬の設計を行う。この場合、医薬の設計には、例えば人工知能機能を用いることができる。すなわち、学習済み人工知能モデル(学習済みニューラルネットワーク)を使い、バイオリアクター7で得られた情報を入力データとし、また、製造する医薬の設計情報を出力データとすることで、医薬の設計を行うことができる。
(成層圏医療装置及びこれを用いた成層圏医療方法によって達成される優れた効果)
上述した成層圏医療装置及びこれを用いた成層圏医療によれば、地上に比べて重力や大気の影響が低く抑えられた最適環境(成層圏環境)で、オルガノイドを用いた医療試験を行うことができる。すなわち、本発明は、患者等の人体を使わず、その代わりに、当該患者の人体に由来するオルガノイドを用いる治験装置(成層圏治験装置)ということができる。
また、成層圏医療装置のバイオリアクターで実行された生化学反応の結果に関する情報は、電気信号に変換されて、無線通信によって地上基地局へ送信されるようになっている。したがって、地上にいながらにして、オルガノイドを用いた成層圏での医療試験の状況を、随時に、継続的に、また、リアルタイムで観察することができ、また、その試験結果を地上で詳細に解析・分析することができる。
(サーバー装置)
図4に示すように、地上基地局2が成層圏の飛翔体3(成層圏医療装置1)から受信した情報(バイオリアクターでの生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報である医療情報)は、インターネットを介して地上基地局2からサーバー装置8に送信され、当該サーバー装置8において検索・抽出可能な状態で記録・蓄積される。
以下、図5に基づいて、サーバー装置8の詳細について説明する。
医療情報等の各種情報のデータセンター(データバンク)として機能するサーバー装置8は、
・データベースとして機能する情報格納部81と、
・インターネットにアクセス可能な通信部83と、
・上記各部を制御するためのプロセッサ等からなる制御部85と、
を有している。
サーバー装置8の通信部83は、インターネットを介して地上基地局2との間で情報の送受信を行う。したがって、地上基地局2が成層圏の飛翔体3から受信した情報(バイオリアクターでの生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報である医療情報)は、インターネットを介してサーバー装置8が受信することができる。
データベースとして機能する情報格納部81は、
・個人情報と、
・医療情報と、
・創薬情報と
を相互に紐付した状態で記録・蓄積している。
したがって、情報格納部81では、個人情報、医療情報、創薬情報のいずれか一が分かれば、他を瞬時に抽出することができる。
個人情報とは、オルガノイド由来元の個人を特定するための情報である。この個人情報には、少なくとも個人の氏名が含まれ、その他、当該個人の住所、メールアドレス、ID(識別情報)などが含まれてもよい。
医療情報とは、オルガノイド(ヒト由来材料)を使って成層圏医療装置で得られた情報である。この医療情報は、ヒトの医薬を設計するのに必要な情報である。
すなわち、前記個人が提供したオルガノイド又はその培養液に含まれるオルガノイドの分泌物を対象に、飛翔体のバイオリアクターで実行した生化学的処理(生化学反応)の進行状況や反応結果に関する情報が、ここでいう「医療情報」に該当する。この医療情報を使って、ヒトの医薬を設計する。
例えば、前記「オルガノイド」が、がん患者から採取したがん細胞を使って培養されたものである場合には、当該がん患者専用の「医療情報」が生成されて、情報格納部81に記録される。
創薬情報とは、前記医療情報に基づいて設計された医薬に関する情報である。
すなわち、オルガノイドを提供した前記個人専用の医薬に関する情報である。
例えば、前記「オルガノイド」が、がん患者から採取したがん細胞を使って培養されたものである場合には、当該がん患者専用の「創薬情報」が生成されて、情報格納部に記録される。
なお、前記医療情報に基づく医薬の設計は、地上の設備を用いて行ってもよく、あるいは、飛翔体3の設備を用いて行ってもよい。
本実施形態では、オルガノイドを提供する個人ごとに医療情報が生成され、また、この医療情報ごとに創薬情報が生成される。
そして、下記の表1に例示するとおり、本実施形態では、個人情報と、医療情報と、創薬情報は、相互に紐付した状態で情報格納部81に記録・蓄積される。
このように、サーバー装置(データセンター)を使って、各個人の個人情報と医療情報と創薬情報を相互に紐付して一元管理することで、例えば、後述する成層圏製薬システムを使って、個人専用の医薬(成層圏医療装置1を使って得られた医療情報に基づいて設計された医薬)を成層圏で速やかに製造することが可能になる。
(成層圏製薬システム)
次に図6に基づいて、成層圏製薬システムについて説明する。
成層圏製薬システムは、成層圏での製薬に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載されるシステムである。
この成層圏製薬システムは、
・医薬の設計に必要な医療情報を得るための成層圏医療装置1と、
・成層圏医療装置1で得られた医療情報に基づいて設計された医薬を製造するための成層圏製薬装置4と、
を有している。
成層圏医療装置1は、
・オルガノイドを培養するための少なくとも一つの培養容器5、
・前記オルガノイド又はその培養液に含まれるオルガノイドの分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクター7、
・前記バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報を、成層圏製薬装置4へ送信するための制御部15、
などを有している。
なお、成層圏医療装置1の具体的構成は、前述した図2に示すものと同様である。
したがって、成層圏製薬システムが具備する成層圏医療装置1についての説明については、図2や図3に係る説明を援用する。
成層圏製薬装置4は、
・成層圏医療装置1からの情報に基づいて医薬の設計を行う医薬設計部40と、
・製薬原料を貯留する原料貯留部41と、
・原料貯留部41にある原料を医薬製造部45に送るための原料供給部43と、
・送られた原料を使って薬剤を生成するための医薬製造部45と、
・医薬製造部45で製造された薬剤を貯留するための薬剤貯留部47と、
・上記各部を制御するためのプロセッサ等からなる制御部49と、
を有している。
上記構成の成層圏製薬システムにおいて、バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報は、成層圏製薬装置4へ送信されるようになっている。
そして、成層圏製薬装置4の医薬設計部40において、バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報に基づいて、医薬の設計を行う。この医薬設計部40における医薬の設計には、例えば人工知能機能を用いることができる。すなわち、学習済み人工知能モデル(学習済みニューラルネットワーク)を使い、バイオリアクター7で得られた情報を入力データとし、また、製造する医薬の設計情報を出力データとすることで、医薬の設計を行うことができる。
なお、バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報に基づく医薬の設計は、地上で行ってもよい。
続いて、成層圏製薬装置4の医薬製造部45は、医薬設計部40で設計された医薬を、原料貯留部41に貯留された原料を使って製造する。前述した人工知能機能を用いる場合には、医薬設計部40において製造する医薬の設計情報が出力されるので、医薬製造部45は、医薬設計部40から出力された医薬設計情報に基づき、原料貯留部41に貯留された原料を使って製造する。
飛翔体3の成層圏製薬装置4で製造された医薬は、例えば、飛翔体3から分離可能な別の飛翔体(子機やドローンなど)を利用して、地上に送り届けてもよい。そのために、飛翔体3には、分離可能なデリバリー用の別の飛翔体(子機やドローンなど)を複数搭載してもよい。
上記特徴を備えた成層圏製薬システムによれば、成層圏にいながらにして製薬を行うことができる。すなわち、地上に比べて重力や大気の影響が抑制された環境下(成層圏)において、成層圏医療装置1での実験結果に基づく製薬を行うことができる。
(成層圏治療システム/成層圏治療施設)
次に図7に基づいて、成層圏治療システム(成層圏治療施設)について説明する。
成層圏治療システムは、成層圏におけるヒトの治療に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載されるシステムである。
この成層圏治療システムは、
・患者の治療に必要な情報を得るための成層圏医療装置1と、
・この患者に対する治療を成層圏で実施するための成層圏治療設備6を
有している。
成層圏医療装置1は、
前記患者由来のオルガノイドを培養するための少なくとも一つの培養容器5、
前記オルガノイド又はその培養液に含まれるオルガノイドの分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクター7、
前記バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報を、成層圏医療装置6へ送信するための制御部15、
などを有している。
なお、成層圏医療装置1の具体的構成は、前述した図2に示すものと同様である。
したがって、成層圏製薬システムが具備する成層圏医療装置1についての説明については、図2や図3に係る説明を援用する。
成層圏治療設備6は、オルガノイドを提供した患者を収容するための病室61のほか、この患者を治療するための治療室63を有している。また、図示を省略しているが、病室61や治療室63にいる患者の生命維持(酸素の供給など)を担う生命維持装置も有している。さらに、これらの病室61や治療室63を制御するための制御部65も有している。治療室63では、バイオリアクター7での生化学反応の進行状況や反応結果に関する情報を踏まえて策定された治療計画に基づいて、患者に対し個別具体的な治療が行われる。
上記特徴を備えた成層圏治療システム(成層圏治療施設)によれば、成層圏にいながらにしてヒトの治療を行うことができる。すなわち、地上に比べて重力や大気の影響が抑制された環境下(成層圏)において、成層圏医療装置1での実験結果に基づく治療をがん患者等に施すことが可能になる。
(むすび)
上述した実施形態では、成層圏医療装置1で使う「ヒト由来材料」の具体例として、ヒト由来のオルガノイドを例示したが、本発明で利用可能な「ヒト由来材料」は、オルガノイドに限定されない。
例えば、オルガノイドに代えて、ヒト由来の血液や体液、あるいは、ヒト由来の細胞を「ヒト由来材料」として用いることも可能である。後者の場合、細胞の種類は特に限定されず、例えば、骨髄細胞、造血幹細胞、骨髄細胞、歯髄細胞(子どもの乳歯由来の歯髄細胞)などを、ヒト由来材料として利用することもできる。
1 成層圏医療装置
2 地上基地局
3 飛翔体(例えば、飛行船、グライダー、気球、飛行機)
4 成層圏製薬システム
5 培養容器
6 成層圏治療設備(成層圏治療施設)
7 バイオリアクター
8 サーバー装置(データセンター/データバンク)
9 モニター部
11 情報生成部(信号生成部)
13 通信部
21 発電部
23 姿勢制御装置
40 医薬設計部
41 原料貯留部
43 原料供給部
45 医薬製造部
47 薬剤貯留部
49 制御部

Claims (10)

  1. 地上基地局との間で無線通信可能で、成層圏での医療試験に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される医療装置であって、
    ヒト由来材料を培養するための少なくとも一つの培養容器と、
    前記ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクターと、
    前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、地上基地局へ送信するための通信部と、
    を有する成層圏医療装置。
  2. 前記バイオリアクターにて生化学的処理を行うヒト由来材料の分泌物には、エクソソーム、マイクロRNAの少なくとも何れか一方が含まれる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の成層圏医療装置。
  3. 前記バイオリアクターは、複数種類の生化学的処理のいずれか一を選択的に実行できるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の成層圏医療装置。
  4. 前記ヒト由来材料は、がん患者から採取したがん細胞を使って培養されたものである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の成層圏医療装置。
  5. 前記ヒト由来材料はオルガノイドであって、
    オルガノイドの種類ごとに培養容器が設けられている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の成層圏医療装置。
  6. 請求項1に記載の成層圏医療装置を具備する飛翔体を成層圏に投入し、成層圏医療装置が成層圏にある状況で実行する方法であって、
    ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、バイオリアクターにて、予め定めた生化学的処理を実行するステップ(a)と、
    バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、地上基地局へ送信するステップ(b)と、
    を含むことを特徴とする成層圏医療方法。
  7. 成層圏医療装置の通信部が、地上基地局から、バイオリアクターで実行すべき生化学的処理に関する指令を受信するステップを更に含んでおり、
    前記ステップ(a)において、
    地上基地局から受信した、バイオリアクターで実行すべき生化学反応に関する指令に基づいて、バイオリアクターにて所定の生化学反応の処理を実行する、
    ことを特徴とする請求項6に記載の成層圏医療方法。
  8. 情報を格納するための情報格納部と、
    インターネットにアクセス可能な通信部と、
    を具備するサーバー装置であって、
    前記情報格納部において、
    請求項1に記載の成層圏医療装置を利用して得られた、バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報である医療情報と、
    ヒト由来材料の由来元のヒトの個人情報と、
    を相互に紐付した状態で格納する、ことを特徴とするサーバー装置。
  9. 成層圏での製薬に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される製薬システムであって、
    医薬の設計に必要な医療情報を得るための成層圏医療装置と、
    前記成層圏医療装置で得られた医療情報に基づいて設計された医薬を製造するための成層圏製薬装置と、を有しており、
    前記成層圏医療装置は、
    ヒト由来材料を培養するための少なくとも一つの培養容器と、
    前記ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクターと、
    前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、成層圏製薬装置へ送信するための制御部と、
    を有しており、
    前記成層圏製薬装置は、
    製薬原料を貯留する原料貯留部と、
    前記成層圏医療装置のバイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報に基づいて設計された医薬を、前記原料貯留部に貯留された原料を使って製造するための医薬製造部と、
    を有している、
    ことを特徴とする成層圏製薬システム。
  10. 成層圏におけるヒトの治療に使用され、成層圏を継続的に飛翔可能な飛翔体に搭載される治療システムであって、
    患者の治療に必要な情報を得るための成層圏医療装置と、
    前記患者に対する治療を実施するための成層圏治療設備と、
    を有しており、
    前記成層圏医療装置は、
    前記患者由来のヒト由来材料を培養するための少なくとも一つの培養容器と、
    前記ヒト由来材料又はその培養液に含まれるヒト由来材料の分泌物を対象に、予め定めた生化学的処理を実行するためのバイオリアクターと、
    前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を、成層圏医療装置へ送信するための制御部と、
    を有しており、
    前記成層圏治療設備は、
    前記バイオリアクターでの生化学反応の状況や結果に関する情報を踏まえて策定された治療計画に基づいて、ヒト由来材料を提供した前記患者を治療するための治療室を有している、
    ことを特徴とする成層圏治療システム。
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