JP2021018056A - 生体試料の状態評価装置、システム、方法、およびプログラム - Google Patents

生体試料の状態評価装置、システム、方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】生体試料の様々な状態を簡便かつ迅速に精度良く評価することができる生体試料の状態評価装置、生体試料の状態評価方法、生体試料の状態評価システム、および生体試料の状態評価プログラムの提供。【解決手段】生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価装置であって、前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得手段と、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価手段と、を有する生体試料の状態評価装置である。【選択図】図20

Description

本発明は、生体試料の状態評価装置、システム、方法、およびプログラムに関する。
生体試料の様々な状態を正確に把握するためには、生体試料に含まれる生体成分(生体成分以外も含む)の組成を正確、簡便かつ迅速に精度良く分析し、評価することが重要である。
例えば、生体試料が血液である場合、血液を採血すると同時に血液凝固カスケードが開始する。血液凝固を避けたい場合には抗凝固剤(クエン酸ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸など)を添加するが完全に凝固を防ぐことはできない。血液を検査に供する前に血液の凝固カスケードが進むか、あるいは実際に凝固塊(血餅)が形成されると、血小板数、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲン、血漿フィブリノゲン分解産物、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、凝固因子定量等の凝固系の検査結果、血球数の検査結果などに少なからず影響を与えてしまう。しかし、検査前の血液の凝固状態の評価は、検査技師による目視判断が行われている程度であり、事実上実施されていないに等しい状況である。
このように検査前の血液の凝固状態を正確に把握できていないと、検査装置の分析精度が向上しても、血液の凝固の影響を大きく受けてしまい、正確な検査結果が得られない、あるいは検査機器の流路が詰まってしまいそもそも検査結果を得られないなどの問題が生じる。そこで、検査前の血液の凝固状態を、医療現場において正確、簡便かつ迅速に精度良く評価する手段の提供が強く望まれている。
また、胎児の肺サーファクタントは、胎児の肺胞の伸展を維持する界面活性物質であり、胎児が母体から生まれた際に自発呼吸を行うための必須成分である。肺サーファクタントは、通常、妊娠28週〜32週に産生が開始されるが、胎児を早期に分娩する場合には、生後の呼吸障害の発生率にかかわるため、胎児の肺が成熟している程度を正確に把握するため、母体の羊水における肺サーファクタントの分析が試みられている。
肺サーファクタントの分析方法としては、母体の羊水のレチシンとスフィンゴミエリンの比(L/S比)を測定する方法がある。しかし、この方法は、薄層クロマトグラフィーによってレチシンとスフィンゴミエリンを分離することが必要であり時間がかかることから、医療現場ではほとんど利用されていない。また、妊娠日数やエコー画像からの胎児の体重および各部位のサイズ測定により胎児の肺サーファクタントの存在状態を予測することも試みられているが、正確な判断は困難である。
そこで、胎児を早期に分娩した際の対症療法として、胎児への肺サーファクタントの投与方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、肺サーファクタントの投与の要否を正確に判断するためにも、母体の羊水における肺サーファクタントの存在状態を、医療現場において正確、簡便かつ迅速に精度良く実現できる手段の提供が強く望まれている。
また、ある症状が生じた際に、それが感染あるいはアレルギーのいずれに起因するかの判別は、医師の経験や知識に依存することが多く、医師が誤った診断をしてしまう場合もある。また、乳幼児や意識のない者など自覚症状を伝えることができない患者における判断は極めて困難である。その結果、アレルギーに起因する症状に対して抗ヒスタミン薬などではなく、感染に起因する症状に対する処方である抗生剤が投与されるなど、誤った処置や本来すべき処置が遅れることによる症状の悪化に繋がることがある。
そこで、感染とアレルギーとを正確に判別するため、上下気道の粘膜上皮からの分泌物に含まれる成分を分析し、症状の原因が感染であるのかアレルギーであるのかの判断を医療現場において正確、簡便かつ迅速に精度良く分析できる手段の提供が強く望まれている。
以上説明したように、様々な理由によって、医療現場において生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価する手段については、未だ十分満足できるものが提供されていないのが現状である。
特許第6293732号公報
本発明は、生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価することができる生体試料の状態評価装置、生体試料の状態評価方法、生体試料の状態評価システム、および生体試料の状態評価プログラムを提供することを目的とする。
本発明の生体試料の状態評価装置は、生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価装置であって、前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得手段と、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価手段とを有する。
本発明の生体試料の状態評価装置においては、前記マススペクトル取得手段により生体試料のマススペクトルのデータを取得し、前記マススペクトルデータを状態評価手段により評価することにより、生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価することができる。
本発明の生体試料の状態評価方法は、生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価方法であって、前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得工程と、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価工程とを含む。
本発明の生体試料の状態評価方法においては、前記マススペクトル取得工程で生体試料のマススペクトルのデータを取得し、前記マススペクトルデータを状態評価工程で評価することにより、生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価することができる。
本発明の生体試料の状態評価システムは、生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価システムであって、前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得装置と、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価装置とを有する。
本発明の生体試料の状態評価システムにおいては、前記マススペクトル取得装置により生体試料のマススペクトルのデータを取得し、前記マススペクトルデータを状態評価装置により評価することにより、生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価することができる。
本発明の生体試料の状態評価プログラムは、生体試料のマススペクトルのデータを得て、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する処理をコンピュータに行わさせる。
本発明の生体試料の状態評価プログラムにおいては、生体試料のマススペクトルのデータを取得し、前記マススペクトルデータに基づき前記生体試料の状態を評価する処理をコンピュータに行わさせることにより、生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価することができる。
本発明によると、生体試料の様々な状態を正確、簡便かつ迅速に精度良く評価することができる生体試料の状態評価装置、生体試料の状態評価方法、生体試料の状態評価システム、および生体試料の状態評価プログラムを提供することができる。
図1Aは、第1の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。 図1Bは、第1の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の他の一例を示す概略図である。 図2Aは、第1の実施形態の変形例1に係る生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。 図2Bは、第1の実施形態の変形例1に係る生体試料の状態評価装置の他の一例を示す概略図である。 図3は、第1の実施形態の変形例1に係る生体試料の状態評価装置のサンプリング手段の一例を示す概略図である。 図4Aは、図3のサンプリング手段の先端部の一例を示す部分拡大図である。 図4Bは、図3のサンプリング手段の先端部の他の一例を示す部分拡大図である。 図4Cは、図3のサンプリング手段の先端部の他の一例を示す部分拡大図である。 図5は、第1の実施形態の変形例1に係る生体試料の状態評価装置の使用状態の一例を示す概略図である。 図6は、第1の実施形態の別の変形例1に係る生体試料の状態評価装置の他の一例を示す概略図である。 図7Aは、図6のA部分の部分拡大図である。 図7Bは、管状部材の一例を示す部分拡大図である。 図7Cは、管状部材の他の一例を示す部分拡大図である。 図8は、内視鏡の一例を示す概略図である。 図9は、図8の内視鏡の先端の一例を示す平面図である。 図10は、第1の実施形態の別の変形例1に係る生体試料の状態評価装置のサンプリング手段によるサンプリング状態の一例を示す図である。 図11は、第1の実施形態の別の変形例1に係る生体試料の状態評価装置のサンプリング手段の一例を示す写真である。 図12は、第1の実施形態の別の変形例1に係る生体試料の状態評価装置のサンプリング手段の先端部の一例を示す写真である。 図13は、第1の実施形態の別の変形例1に係る生体試料の状態評価装置において、ESI(electrospray ionization)法によるイオン化部材を用いた一例を示す写真である。 図14は、第1の実施形態の別の変形例1に係る生体試料の状態評価装置において、APCI(Atomospheric Pressure Chemical Ionization)法によるイオン化部材を用いた一例を示す写真である。 図15Aは、第2の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。 図15Bは、第1の管状部材の先端部の一例を示す拡大写真である。 図16は、第2の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の変形例1の使用状態を示す概略構成図の一例を示す写真である。 図17Aは、図16の第2の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の変形例1において、生体試料の採取を自動化して行う様子を示す概略図である。 図17Bは、図16の第2の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の変形例1において、生体試料の採取を自動化して行う様子を示す概略図である。 図17Cは、第2の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の変形例2の一例を示す概略図である。 図18は、第3の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。 図19Aは、第3の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の変形例1の一例を示す概略図である。 図19Bは、第3の実施形態に係る生体試料の状態評価装置の変形例2の一例を示す概略図である。 図20は、本発明の生体試料の状態評価装置の一例を示すブロック図である。 図21Aは、本発明の生体試料の状態評価装置の状態評価手段で用いるマススペクトルの情報に由来する情報について説明する概略図である。 図21Bは、本発明の生体試料の状態評価装置の状態評価手段で用いるマススペクトルの情報を学習した結果について説明する概略図である。 図22は、血液の凝固状態の有無によりマススペクトルにおける点線で囲んだ部分のピークおよびイオン強度が変化することを示すマススペクトル図である。 図23は、血液の凝固状態に伴うm/zが824.5のピークでのイオン強度の変化を示したグラフである。 図24は、図22のマススペクトルを拡大したマススペクトル図である。 図25は、マススペクトルの解析における機械学習により、血液が凝固するタイミングを予測することができることの一例を示す図である。
(生体試料の状態評価装置および生体試料の状態評価方法)
本発明の生体試料の状態評価装置は、マススペクトル取得手段と、状態評価手段とを有し、前処理手段を有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の生体試料の状態評価方法は、マススペクトル取得工程と、状態評価工程とを含み、前処理工程を含むことが好ましく、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の生体試料の状態評価方法は、本発明の生体試料の状態評価装置により好適に実施することができ、マススペクトル取得工程はマススペクトル取得手段により行うことができ、状態評価工程は状態評価手段により行うことができ、前処理工程は前処理手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
以下、本発明の生体試料の状態評価装置の説明を通じて本発明の生体試料の状態評価方法の詳細についても明らかにする。
本発明の生体試料の状態評価装置および生体試料の状態評価方法は、生体から採取した生体試料の様々な状態を正確に把握するため、生体試料に含まれる生体成分の組成を正確、簡便かつ迅速に精度良く分析し、評価する。
<<生体試料>>
「生体試料」とは、生体から採取されるあらゆる試料を意味し、液体および固体の少なくともいずれかであることが好ましい。前記固体にはゾル、ゲル状を含む。なお、液体の生体試料を「体液」と称することがある。
液体の生体試料としては、例えば、全血(凝固前)、血漿、血清、羊水、上下気道の粘膜上皮からの分泌物、唾液、滲出液、組織液、分泌液、母乳、汗、鼻汁、漿液、漏出液、嚢胞液、尿、脳脊髄液、涙、胃液、胆汁、膵液、粘液などが挙げられる。
固体の生体試料としては、生体に存在するあらゆる組織、細胞などが挙げられる。また、生体試料としては、これら液体や固体に限られるわけではなく、呼気を対象とすることも可能である。
<<生体試料の状態>>
「生体試料の状態」とは、生体試料に含まれる成分の組成の変化以外にも、生体の正常と異常の判別、生体の疾患(高血圧症、糖尿病、肺疾患、心疾患、肝疾患、消化器疾患、腎疾患、アレルギー疾患、感染症など)の判別、生体の疾患の予後、治療効果の確認、生体の健康状態の判別、血液の凝固状態の評価、胎児の肺の成熟状態、アレルギーと感染の判別などが幅広く含まれる。
<<生体成分(生体成分以外も含む)>>
「生体成分(生体成分以外も含む)」とは、生体に存在するあらゆる成分を意味し、例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質、糖質、電解質、その他の低分子代謝産物やその他外来の成分などが挙げられる。
<前処理工程および前処理手段>
本発明の生体試料の状態評価装置および生体試料の状態評価方法は、必要に応じて、生体試料の前処理を行うことが好ましい。前処理を行うことによりマススペクトル取得手段における分析感度や精度を向上させることができる。
生体試料が液体である場合には、前処理を行わないで直接そのまま分析することができる。これにより、簡便かつ迅速に分析でき、生体試料の分解や酸化などの変性を避けることができるので、生体試料に含まれる成分を正確かつ精度良く分析することができる。
なお、液体の生体試料においても、必要に応じて、希釈、除蛋白、脂質溶出、濃縮等の前処理を行ってもよい。
生体試料が固体である場合には、必要に応じて前処理を行って液状にすることが好ましい。なお、生体試料が固体であっても細胞や組織等の直接分析可能な場合には、前処理を省略することができる。
固体の生体試料を液体にする前処理としては、特に制限はなく、生体試料の性状などに応じて適宜選択することができ、例えば、固体の生体試料を溶媒中で磨り潰す、細切にして溶媒中で懸濁する、溶媒中とホモジナイズするなどが挙げられる。また、液状にした後に任意のフィルターでろ過する、遠心分離し上清を得るなどの処理を加えることもでき、さらに液体クロマトグラフィーなどの分離行程を加えることも可能である。
<マススペクトル取得工程およびマススペクトル取得手段>
マススペクトル取得工程は、生体試料のマススペクトルのデータを得る工程であり、質量分析を用いたマススペクトル取得手段により実施される。
マススペクトル取得手段により、取得された生体試料のマススペクトルデータは質量電荷比(m/z)およびイオン強度からなり、マススペクトルのm/zは分子種を、マススペクトルのイオン強度はその分子の存在量を反映している。
前記マススペクトル取得手段は、イオン化部と、分析部と、洗浄除去部とを有する。
前記マススペクトル取得工程は、イオン化工程と、分析工程と、洗浄除去工程とを含む。
<<イオン化工程およびイオン化部>>
イオン化工程は、生体から採取した生体試料をイオン化する工程であり、イオン化部により実施される。
イオン化法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ESI(electrospray ionization;エレクトロスプレーイオン化)法、MALDI(matrix−assisted laser desorption ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法、などが挙げられる。これらの中でも、ESI法に代表されるアンビエントイオン化法が好ましい。
アンビエントイオン化法は、通常環境下(例えば、常温、大気圧環境下)で生体試料を直接イオン化する手法である。
イオン化部としては、以下の3つの態様が挙げられる。
(1)針状部材、および電源を有する態様(以下、「探針エレクトロスプレーイオン化法」(Probe Electrospray Ionization:以下、「PESI」と略することもある)と称する)を用いたイオン化部、(2)第1の管状部材、第2の管状部材、電源、およびイオン誘導部材を有する態様(以下、「リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法」(Remote Sampling Electrospray Ionization)と称する)を用いたイオン化部、(3)線状部材、およびイオン化部材を有する態様(以下、「ライン式イオン化法」と称する)を用いたイオン化部がある。
(1)探針エレクトロスプレーイオン化(PESI)法を用いたイオン化部は、針状部材と、電源とを有し、必要に応じてその他の部材を有する。
PESI法を用いたイオン化部は、生体試料を針状部材で採取した後、直ちにイオン化が行われるため、リアルタイムな質量分析が可能である。
このようなPESI法を用いたイオン化手段としては、例えば、国際公開第2010/047399号パンフレット、特開2018−181600号公報等に開示されたものを用いることができる。
(2)リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化部は、第1の管状部材と、第2の管状部材と、ガス流発生部材と、電源と、イオン誘導部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
第1の管状部材は、一端を生体試料に接触させて、生体試料を採取するために使用する。また、他端を採取した生体試料に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために使用する。
第2の管状部材は、第1の管状部材を同心で挿入するために使用する。
ガス流発生部材は、第2の管状部材にガスを高速に流すために使用する。
電源は、第1の管状部材の他端と、エレクトロスプレーが生成される領域に配される他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、対向電極に電圧を印加するために使用する。
イオン誘導部材は、生成したイオンを分析部へ導くために使用する。
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化部の利点としては、多数のサンプルを連続的に測定できるという利点がある。生体試料を取得し、エレクトロスプレーによりイオンの噴霧を行う作業を一つの側だけで行うとすると、イオン化工程の間に、生体試料を取得する工程を入れ、これらの工程を繰り返し行うことになる。一方、一つの側から生体試料を取得し、直ちに他の側からエレクトロスプレーによりイオンの噴霧を行う場合には、イオンの噴霧で中断されることなく、連続して生体試料の取得を行うことができる。生体試料の取得に同期して、他の側ではイオンが噴霧され、瞬時に質量分析に供されるため、連続して、生体試料の測定が可能となる。これにより、より迅速な測定が可能となる。
(3)ライン式イオン化法を用いたイオン化部は、線状部材と、イオン化部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
線状部材は、限界希釈法を用いて調製した生体試料(以下、試料液と称する)を用い、試料液の液滴を搬送するために使用する。
イオン化部材は、線状部材に付着した液滴から生体試料に由来するイオンを生成させるために使用する。
線状部材に試料液の液滴を付着させるには、試料液供給素子を用い、試料液を液滴の単位で線状部材に滴下することにより行う。好ましくは、1液滴ずつ線状部材に滴下する。
試料液は、限界希釈法を用いて調製されていることが好ましい。これにより、1細胞/液滴の滴下を可能とし、1細胞ごとのプロファイル(ここでは、質量分析の結果)を取得することができる。
滴下された試料液の液滴は、駆動部材(例えば、ローラ)により線状部材を移動させることにより、イオン化部材まで搬送される。
イオン化部材により線状部材に付着した液滴はイオン化され、生成されたイオンは、直ちに質量分析に供される。
<<分析工程および分析部>>
分析工程は、イオン化工程により生成したイオンを質量分析する工程であり、分析部により実施される。
分析部としては、質量分析計が用いられる。質量分析計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(直交型)飛行時間型質量分析計、(リニア)イオントラップ型質量分析計、四重極型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、又はこれらの質量分析計を適宜組み合わせた質量分析計などが挙げられる。
質量分析計では、イオン化部でイオン化されたイオンを質量電荷比(m/z)の違いにより分離する。
<<洗浄除去工程および洗浄除去部>>
洗浄除去工程は、マススペクトル取得手段の分析部のイオン検出器孔およびマススペクトル取得手段の内部にイオン化されていないイオン以外の不要物質が侵入しないように除去する工程であり、洗浄除去部(クリーン化部ともいう)により実施される。
洗浄除去を行うことにより、生体試料の状態評価装置のメンテナンス周期を長くでき、良好なイオン検出能を長期に亘って維持することができ、分析精度を良好に維持することができる。
洗浄除去部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エアブロー、スプレー、フレキシブルチューブなどが挙げられる。
エアブロー又はスプレーをマススペクトル取得手段の直前に設けることで、イオン化されていないイオン以外の不要物質を除去することができる。
フレキシブルチューブをイオン輸送路として用いることで、イオン化されていないイオン以外の不要物質はチューブ内の壁に衝突して、除去される。
<状態評価工程および状態評価手段>
状態評価工程は、マススペクトルのデータに基づき生体試料の状態を評価する工程であり、状態評価手段により実施される。
前記状態評価手段は、生体試料のマススペクトルのデータを有するマススペクトルデータベースに照合をし、前記マススペクトルデータベースにおける前記マススペクトルのデータと、前記生体試料のマススペクトルのデータとを比較して前記生体試料の状態を評価することができる。
状態評価手段は、前記マススペクトル取得手段により取得したマススペクトルデータを使い、マススペクトルデータ全体の形状、あるいは生体試料に含まれる成分に特有のマーカーピークを見つけ、これらのピークを判定することにより、生体試料の状態を把握することができる。
例えば、マーカーピークとなる成分を含まない正常な生体試料が示すマススペクトルと、マーカーピークとなる成分を含む非正常な生体試料が示すマススペクトルとでは、マススペクトルが示す形状に違いがあることから、これらのマススペクトルが示す情報と、測定した結果のマススペクトルとを比較すれば、測定した生体試料の異常の有無を知ることができる。
前記状態評価手段は、前記マススペクトルデータベースに、前記生体試料のマススペクトルのデータが追加されると機械学習を行う。機械学習は、マススペクトルデータが追加される毎に行ってもよく、マススペクトルデータ10件毎などの所定のデータ数になった場合に行ってもよい。機械学習を行うことにより、評価精度が大幅に向上する。
機械学習としては、例えば、LDA(Linear discriminant analysis)(線形判別分析)、QDA(Quadratic discriminant analysis)(二次判別分析)、SVM(Support vector machine)(サポートベクターマシン)、ニューラルネットワーク、ディープラーニング(深層学習)などが挙げられる。
なお、機械学習以外にも、各種総計解析手法を用いることができる。
総計解析手法としては、例えば、有意差検定、次元縮約などが挙げられる。
有意差検定としては、例えば、Welch t−test(ウェルチのt検定)、WRST(Wilcoxon rank sum test)(ウィルコクソン順位和検定)、ANOVA(Analysis of variance)(分散分析)などが挙げられる。
次元縮約としては、例えば、PCA(Principal component analysis)(主成分分析)、PLS(Partial least squares)(部分的最小二乗法)、OPLS(Orthogonal Partial Least squares)(直交PLS)、KPLS(kernel partial least squares)(カーネルPLS)などが挙げられる。
前記状態評価手段は、生体試料の状態の評価を行うが、この評価には、生体試料の状態がどのように変化するのかを予測することも含まれる。
例えば、生体試料に含まれる成分の組成が所定の許容範囲を超えている、つまり健常者が示すマススペクトルデータの形状や特定のピークの強度とは異なり、疾患をかかえる非正常な生体試料のマススペクトルデータの形状や特定のピークの強度に近い測定結果がでた場合には、生体試料は、係る疾患に該当している可能性が高いと予測できる。
この場合、マススペクトルデータの形状やマーカーピークが示す情報により、疾患を抱えているか否かの2値の判定のみならず、それぞれの値の境界におけるきめ細かい判別を可能とする。具体的には、正常、異常、中間の3値はもとより、正常と中間との境界、あるいは中間と異常との境界という5値の判別も可能とする。くわえて、疾患を発症している可能性の確からしさ(確率)も予測することができる。
状態評価手段は、評価部、出力部、および記憶部を有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の部を有する。
<<評価部>>
評価部は、マススペクトル取得手段により得られたマススペクトルデータ、およびマススペクトルの情報を機械学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、生体試料の状態の評価および予測を行う部である。
評価部は、例えば、CPU、ROM、RAM、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、評価部の各種機能は、ROM等に記憶されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。ただし、評価部の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。また、評価部は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
<<出力部>>
出力部は、評価部の評価結果を出力する部であり、ディスプレイやスピーカーなどを用いることができる。ディスプレイとしては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが挙げられる。
<<記憶部>>
マススペクトル取得手段により得られたマススペクトルデータ、およびマススペクトルの情報を機械学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の記憶する部である。記憶部としては、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが挙げられる。また、補助記憶部としては、例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)ドライブなどが挙げられる。
<<その他の部>>
前記その他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、入力部、通信部などが挙げられる。
入力部としては、生体試料の状態評価装置に対する各種要求を受け付けることができれば、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。
通信部は、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
<その他の工程およびその他の手段>
その他の工程及び手段としては、例えば、記録工程(記録手段)、表示工程(表示手段)、メンテナンス工程(メンテナンス手段)などが挙げられる。
(生体試料の状態評価システム)
本発明の生体試料の状態評価システムは、マススペクトル取得装置と、状態評価装置とを有し、前処理装置を有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の装置を有する。
前記マススペクトル取得装置および前処理装置は、例えば、実験室の所定の場所に存在する質量分析計である。
前記状態評価装置は、前記マススペクトル取得装置および前処理装置と情報通信ネットワーク等で接続されたコンピュータである。
本発明の生体試料の状態評価システムは、マススペクトル取得装置および前処理装置とコンピュータである状態評価装置とがイントラネット接続されたクローズドな環境(会社内)で用いることができる。
本発明の生体試料の状態評価システムは、マススペクトル取得装置および前処理装置とコンピュータである状態評価装置とがインターネット接続(クラウドを含む)されたオープンな環境で用いることができる。
前記マススペクトル取得装置、前処理装置、状態評価装置、およびその他の装置は、本発明の生体試料の状態評価装置におけるマススペクトル取得手段、前処理手段、状態評価手段、およびその他の手段と同様であるため、その説明を省略する。
(生体試料の状態評価プログラム)
本発明の生体試料の状態評価プログラムは、生体試料のマススペクトルのデータを得て、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する処理をコンピュータに行わさせる。
本発明の生体試料の状態評価プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の生体試料の状態評価装置および本発明の生体試料の状態評価システムとして実現させることから、本発明の生体試料の状態評価プログラムにおける好適な態様は、例えば、本発明の生体試料の状態評価装置および本発明の生体試料の状態評価システムにおける好適な態様と同様にすることができる。
本発明の生体試料の状態評価プログラムは、使用するコンピュータシステムの構成およびオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
本発明の生体試料の状態評価プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記録媒体に記録しておいてもよいし、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどの記録媒体に記録しておいてもよい。
さらに、本発明の生体試料の状態評価プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本発明の生体試料の状態評価プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本発明の生体試料の状態評価プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本発明の生体試料の状態評価プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
本発明におけるコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の生体試料の状態評価プログラムを記録してなる。
本発明におけるコンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどが挙げられる。
また、本発明におけるコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の生体試料の状態評価プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
本発明の生体試料の状態評価装置、生体試料の状態評価方法、生体試料の状態評価システム、および生体試料の状態評価プログラムによれば、具体的には、以下に示すような生体試料の状態を評価し、予測することができる。
<生体試料が血液の場合>
生体試料が血液であり、血液凝固カスケードの開始および血液の凝固状態を評価する場合には、本発明の生体試料の状態評価装置におけるマススペクトル取得手段により、血液のマススペクトルデータを取得し、前記血液のマススペクトルデータに基づき、本発明の生体試料の状態評価装置における状態評価手段により、血液凝固カスケードの開始および血液の凝固状態を評価することができる。例えば、凝固塊(血餅)が形成されていないが既に血液凝固カスケードがオンになっていることや、後に起こる凝固のタイミングの予測、目視で判別できない大きさの凝固塊を検出することができる。その結果、血液を各種検査に供する前に血液の凝固状態を、正確、簡便かつ迅速に精度良く把握することができるため、検査装置に詰まりなどのトラブルを発生することを防止できる。また、血液の凝固が直接検査結果に影響する検査項目(例えば、血小板数、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲン、血漿フィブリノゲン分解産物、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、凝固因子定量、血球数の検査等)においては、凝固が生じている場合には、採血をやり直すことで正確な検査結果の取得が可能となる。また、血液のマススペクトルデータの全体を解析することにより、血中カリウム値が高いことがわかれば、検査前に赤血球の溶血が生じていることを把握することができる。なお、マススペクトル取得手段における質量分析で用いる血液量は5μL以下の微量でよいため、残りの血液を他の検査にそのまま使用することができる。
<生体試料が母体の羊水の場合>
生体試料が母体の羊水であり、胎児の肺のサーファクタント産生の有無を検査する場合には、本発明の生体試料の状態評価装置におけるマススペクトル取得手段により、母体の羊水のマススペクトルデータを取得し、前記母体の羊水のマススペクトルデータに基づき、本発明の生体試料の状態評価装置における状態評価手段により、母体の羊水中のサーファクタントであるレチシンとスフィンゴミエリンを直接検出し、胎児肺の成熟状態を評価することができる。一般的な肺サーファクタントの検出方法は薄層クロマトグラフィーであるが、この検査を実施している病院はほとんどなく、検出感度もpg〜ngオーダーであり、質量分析(<fg)のほうが高いため、より正確かつ迅速な評価が可能となる。また、検査のランニングコストも質量分析の方が安価である。さらに、本発明の生体試料の状態評価装置によれば、母体へのステロイド投与や、早産児、帝王切開児への人工肺サーファクタントの投与などの要否を判断できる。また、レチシンとスフィンゴミエリンの測定だけでなく、これらが産生された場合に特異的に発現量が変化する他の生体分子の組成から間接的に胎児の発生・発達段階を正確に判別することができる。さらに、特定の成分の発現量を比較することや、マススペクトルの解析において機械学習による判別を行うことにより、肺サーファクタントの量のみならず、その後に起こる肺サーファクタントの量の変化や、その変化が起こるタイミングを予測することができる。
<生体試料が上下気道の粘膜上皮からの分泌物の場合>
生体試料が上下気道の粘膜上皮からの分泌物(鼻汁、唾液、粘液、痰など)およびそこに含まれる内在性あるいは外来性成分であり、症状の原因が感染であるのか、あるいはアレルギーであるのかの判断を正確に行いたい場合には、本発明の生体試料の状態評価装置におけるマススペクトル取得手段により、上下気道の粘膜上皮からの分泌物のマススペクトルデータを取得し、上下気道の粘膜上皮からの分泌物のマススペクトルデータに基づき、本発明の生体試料の状態評価装置における状態評価手段により、症状の原因が感染とアレルギーのいずれであるのかを判別することができる。その結果、アレルギーと感染のどちらに対する治療を行った方が良いのかを判断することが可能となる。さらに、上下気道の粘膜上皮からの分泌物中の液性免疫および細胞性免疫に係る成分、炎症関連物質、細菌由来成分の発現量を比較することや、マススペクトルデータの解析において機械学習による判別を行うことにより、症状の原因が感染であるのかアレルギーであるのかの判断だけでなく、アレルギーである場合にはアレルギーが発症するタイミングなどを予測することができる。
ここで、本発明の生体試料の状態評価装置、生体試料の状態評価方法、および生体試料の状態評価システムの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
<第1の実施形態>
図1Aは、第1の実施形態としての探針エレクトロスプレーイオン化法(PESI法)を用いたイオン化部を有する生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。
図1Aの生体試料の状態評価装置110は、イオン化手段111と、分析手段112とを備える。
イオン化手段111は、針状部材1と、電源17と、パーソナルコンピュータ(PC)16と、イオン収集部材18とを有している。図1A中、15はリニアアクチュエータ、121は吸引装置を示す。また、図1A中、12は針状部材1が上下に移動する様子を、13は生体試料を、14はエレクトロスプレーによりイオンが生成されている様子を、19は生成されたイオンを示す。
この第1の実施形態では、針状部材1として、ステンレス鋼製の鍼灸針を用いている。
針状部材1は、リニアアクチュエータ15の作動によって、体液に対して上下動可能とされている。
針状部材1が下方の位置(下位端)に移動すると、体液に接触乃至刺入することで生体試料が針状部材1の先端に付着する。
針状部材1が上方の位置(上位端)に移動すると、電源17から高電圧が印加され、針状部材1の先端からエレクトロスプレーが発生する。
イオン収集部材18としては、内径1mm〜5mmのイオン収集・輸送チューブ(帯電を防止するために内面に平滑処理が施されたフレキシブルな樹脂製)を用いており、吸引装置121の作動により、エレクトロスプレーで発生したイオンを吸引する。
吸引されたイオンはイオン開口部120を経由して質量分析計122に運ばれる。
針状部材1の先端とイオン収集部材18としてのイオン収集・輸送チューブの開口部との間には電圧がかかっているので、発生したイオンはイオン収集・輸送チューブの開口部で吸引される。
図1A中122は、質量分析計であり、イオン化手段111により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第1の実施形態では、質量分析計として、四重極型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、および飛行時間型質量分析計のいずれかを用いている。
PESI法では、リニアアクチュエータ15と電源17とはコントローラー(不図示)により同期をとって制御しているが、サンプリングしていない時のみに電源から電圧をかける構成とすることにより、コントローラーの使用を省略することができる。これにより、装置の簡略化が図れると共に、感電を防止でき、安全性が向上する。
次に、イオン化の際の動作について説明する。
針状部材1の位置を下げると、針状部材1の先端は生体試料に接触乃至刺入する。針状部材1の位置を上げると、電圧が印加される。これにより、針状部材1の先端から、生体試料に由来したイオンが発生する。発生したイオンはイオン収集部材18としてのイオン収集・輸送チューブの開口部から直ちに吸引され、質量分析計122に運ばれる。
図1Bは、本発明の生体試料の状態評価装置おけるマススペクトル取得手段の他の一例を示す概略図である。この図1Bのマススペクトル取得手段は、針状部材1の先端にエアーを吹き付け、イオン化していない液滴を除去する洗浄除去部103を有する以外は、図1Aの生体試料の状態評価装置と同じ構成である。また、イオン収集部材18としてのイオン収集・輸送チューブにより、イオン化されていないイオン以外の不要物質はチューブの内壁に衝突することで除去される。洗浄除去部103を有することにより、イオン検出器孔および装置内部にイオン化されていないイオン以外の不要物質が侵入しないように除去できるので、生体試料の状態評価装置のメンテナンス周期を長くすることができ、また良好なイオン検出能を長期に亘って維持することができ、分析精度を維持することができる。なお、図1Bのマススペクトル取得手段では、洗浄除去部103としてエアブローを用いているが、スプレーを用いても構わない。
<第1の実施形態の変形例1>
図2は、第1の実施形態の変形例1の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第1の実施形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この図2Aの生体試料の状態評価装置100は、サンプリング手段101と、リアルタイム分析手段102とを備えている。なお、図2A中5はフレキシブルチューブ、6はステンレスチューブ、8は吸引装置である。
図2Bは、第1の実施形態の生体試料の状態評価装置の変形例の他の一例を示す概略図である。この図2Bの生体試料の状態評価装置は、リアルタイム分析手段102のイオン検出孔部分にエアーを吹き付け、イオン化していない液滴を除去する洗浄除去部103を有する以外は、図2Aの生体試料の状態評価装置と同じ構成である。また、フレキシブルチューブ5により、イオン化されていないイオン以外の不要物質はチューブの内壁に衝突することで除去される。洗浄除去部103を有することにより、イオン検出器孔および装置内部にイオン化されていないイオン以外の不要物質が侵入しないように除去できるので、生体試料の状態評価装置のメンテナンス周期を長くすることができ、また良好なイオン検出能を長期に亘って維持することができ、分析精度を維持することができる。なお、図2Bの生体試料の状態評価装置では、洗浄除去部103としてエアブローを用いているが、スプレーを用いても構わない。
サンプリング手段101は、図3に示すように、針状部材1と、イオン収集部材2と、溶媒付与部材3とを有している。図3中、12は外筒、4は駆動スイッチである。この第1の実施形態の変形例では、針状部材1として、ステンレス鋼製の鍼灸針を用いている。
針状部材1は、リニアアクチュエータ9の作動によって、対象物に対して上下動可能とされている。
針状部材1が最も上方の位置(上位端)に移動すると、電源10から高電圧が印加され、先端1aからエレクトロスプレーが発生する。
針状部材1が最も下方の位置(下位端)に移動すると、対象物に接触乃至刺入することで生体試料が針状部材の先端1aに付着する。
針状部材1は、溶媒付与部材3に対して外側寄りの位置に設けられているが、溶媒付与部材3に対して中央の位置に設けてもよく、内側よりの位置に設けても構わない。
イオン収集部材2としては、内径1mm〜5mmのイオン収集・輸送チューブ(帯電を防止するために内面に平滑処理が施されたフレキシブルな樹脂製)を用いており、吸引装置8の作動により、エレクトロスプレーで発生したイオンを吸引し、吸引されたイオンは質量分析計7に運ばれる。
針状部材の先端1aとイオン収集・輸送チューブの開口部2aとの間には電圧がかかっているので、発生したイオンはイオン収集・輸送チューブの開口部2aで吸引される。
図3中3は、溶媒付与部材としての溶媒供給管であり、少量(数μL/min〜数十μL/min)の溶媒13が常に針状部材1に供給されている。この第1の実施形態では、溶媒として50%エタノールを用いている。これにより、針状部材の先端1aに捕捉された生体試料の乾燥を防止できる。また、溶媒流量を増やすことにより、洗浄効果を付与することもできる。
図3中4は、駆動スイッチであり、この駆動スイッチ4を押すと、リニアアクチュエータ9が作動し、針状部材1が下がり、針状部材の先端1aが生体試料に接触乃至刺入する。駆動スイッチ4の押圧を解除すると、針状部材1が上位端に移動する。
図3中11は、生体試料の採取時に生体試料の表面と当接するガイド部材である。この第1の実施形態では、ガイド部材として、ステンレス鋼製のものを用いている。
ガイド部材11を設けることにより、図5に示すように、対象物14の表面から生体試料を直接サンプリングすることができ、操作性、安全性、および保護性が向上する。
図3中7は、質量分析計であり、サンプリング手段101により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第1の実施形態の変形例では、質量分析計として、四重極型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、又は飛行時間型質量分析計を用いている。
PESI法では、リニアアクチュエータ9と電源10とはコントローラー(不図示)により同期をとって制御しているが、サンプリングしていない時のみに電源から電圧をかける構成とすることにより、コントローラーの使用を省略することができる。これにより、装置の簡略化が図れると共に、感電を防止でき、安全性が向上する。
次に、図4Aから図4Cを用いて、サンプリングおよびイオン化の動作について説明する。
図4Aに示す状態で、駆動スイッチ4を押すと、図4Bに示すように針状部材1が下がり、針状部材1の先端1aが生体試料に接触乃至刺入する。駆動スイッチ4の押圧を解除すると、図4Cに示すように、針状部材1が元の位置に戻ると、電圧が印加され、イオンが発生する。発生したイオンはイオン収集部材2としてのイオン収集・輸送チューブの開口部2aから直ちに吸引され、質量分析計7に運ばれる。この際、イオン収集・輸送チューブの開口部2aが針状部材の先端1aと近接した位置となるので、生成したイオンの吸引を効率よく行うことができる。
第1の実施形態の生体試料の状態評価装置を用い、生体試料としてヒト肝臓のサンプリングおよびイオン化、さらに質量分析を行った結果、約1秒間後にマススペクトルを得ることができる。
ここで、図20は、本発明の生体試料の状態評価装置320の一例を示すブロック図である。
本発明の生体試料の状態評価装置320は、機能的に分けると、コンピュータシステムの中枢で、マススペクトルデータの作成、内標に基づくマススペクトル評価、ラベリング、さまざまな統計解析処理、検証処理等を実行する評価部321、質量分析部310で得られたマススペクトルデータを入力する入力部322、解析処理等の処理結果、途中経過等を出力するとともに、ユーザインターフェイスとして用いられる出力部323、および記憶部326から構成されている。
なお、質量分析部310は、本発明の生体試料の状態評価装置におけるマススペクトル取得手段に該当する。
入力部322は、キーボード、マウス等の通常の入力装置に加えて、USBメモリ、CD−ROM等に記憶されたデータを読込む媒体リーダ、有線、無線を問わず通信によりデータ(命令を含む)を受信する通信装置等を含む。
出力部323は、入力部322と表示画面の一部を共有してもよい。出力部323は、各種データ(マススペクトルを含む)のグラフ、その他のデータを見易い形態で表示するとともに、ユーザインターフェイスとして各種入力、設定画面を表示する表示部324、各種データや処理結果を印刷して出力するプリンタ325を有する。
記憶部326は、入力されたマススペクトルデータの一時格納、マススペクトルデータの蓄積、各種処理(マススペクトルの手動生成、マススペクトルの自動作成、データの編集、管理、マススペクトルの評価、統計解析処理、検証処理など)のプログラムの格納等に用いられるとともにワークエリアを提供する。記憶部326は、半導体メモリ、ハードディスク等により実現される。
評価部321は、コンピュータの本体部分であり、記憶部326に格納された各種プログラムにしたがって、入力部322を通して入力されたマススペクトルデータに対して各種処理を実行する。このとき、必要な情報(ユーザインターフェイス画面)を表示部324に表示したり、処理の途中のデータ、処理結果のデータを記憶部326に記憶する。
本発明の生体試料の状態評価装置における状態評価手段は、前記マススペクトル取得手段から出力されるスキャン生データに基づいて、適切なマススペクトルデータを取得する。適切なマススペクトルデータは複数となる場合もある。この適切なマススペクトルデータを使い、マススペクトルデータ全体の形状、あるいは図21Aに示すように、生体試料に含まれる成分に特有のマーカーピーク(例えば、図21A中、矢印で示すピーク)を見つけ、これらのピークを判定することにより、生体試料の状態を把握することができる。
例えば、成分(生体成分を含む)を含まない正常な生体試料が示すマススペクトルと、成分を含む非正常な生体試料が示すマススペクトルとでは、マススペクトルが示す形状に違いがあることから、これらのマススペクトルが示す情報と、測定した結果のマススペクトルとを比較すれば、測定した生体試料に含まれる成分の組成を知ることができる。
例えば、生体試料に含まれる成分の組成が所定の許容範囲を超えている、つまり健常者が示すマススペクトルの形状やマーカーピークとは異なり、疾患をかかえる非正常な生体試料のマススペクトルの形状やマーカーピークに近い測定結果がでた場合には、生体試料は、係る疾患に該当している可能性が高いと判断できる。
この場合、マススペクトルの形状やマーカーピークが示す情報に対する測定結果の近さの程度により、疾患を抱えているか否かの2値の判定のみならず、疾患を発症している可能性の確からしさ(確率)も判定することができる。
また、本発明の生体試料の状態評価装置における状態評価手段は、上述したマススペクトルの情報を用いるだけでなく、図21Bに示すように、マススペクトルの情報を機械学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報を用いて、生体試料の成分の組成の存在状態を把握することもできる。
図21Aで示すマススペクトルの情報と、図21Bで示す機械学習により得られたマススペクトルの解析結果の情報とを併用して、生体試料に含まれる成分の組成の存在状態を把握してもよい。
なお、上述したようなマススペクトルを作成、およびそのマススペクトルを学習により解析する方法の詳細については、例えば、特開2016−200435号公報、特開2018−181600号公報などに開示されている方法などを用いることができる。
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第2の実施形態において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この図6の生体試料の状態評価装置500は、サンプリング手段501、およびリアルタイム分析手段502を有する。図7Aは、図6の生体試料の状態評価装置における内視鏡521のA部分の拡大図である。
サンプリング手段501は、内視鏡521と、内視鏡の先端部521aに一の方向に移動可能に装着され、生体試料の表面に当接した状態で、移動させることにより生体試料を採取する線状部材522と、線状部材522に付着した生体試料からイオンを生成するイオン化部材626と、線状部材522を一の方向に移動させる駆動部材としての搬送ローラ624、巻取りローラ523とを有する。
リアルタイム分析手段502は、質量分析計525を有しており、サンプリング手段501により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第2の実施形態では、質量分析計として、四重極型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、又は飛行時間型質量分析計を用いている。
内視鏡521としては、人体のあらゆる腔所(消化管、腹腔、胸腔など)等の治療や検査を行う処置部に挿入されて、体内の観察、静止画や動画の撮影、生体組織の採取などの処置等を行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、図8に、本発明で用いられる内視鏡の一例を示す。この図8の内視鏡521は、CCDセンサを用いて検査部位の画像を撮像(撮影)して、検査部位の観察、動画や静止画の撮影を行う、いわゆる電子スコープ型の内視鏡である。この内視鏡521は、挿入部512、操作部514、ユニバーサルコード516、LGコネクタ518、およびビデオコネクタ520を有する。
挿入部512は、体腔内等の検査部位に挿入される、長尺な部位で、先端(挿入側の先端=操作部514と逆端)の先端部524と、アングル部526と、軟性部528とを有する。
操作部514は、内視鏡521の操作を行う部位である。操作部514には、鉗子孔527に連通する、鉗子等の処置具を挿入するための鉗子口532、鉗子孔527を介して先端部524からの吸引を行うための吸引ボタン534、送気送水孔574を介して先端部524から検査部位に送気や送水を行うための送気送水ボタン536等が配置されている。
操作部514には、アングル部526を左右方向に湾曲させるLRツマミ538、同上下方向に湾曲させるUDツマミ540、アングル部526を湾曲状態で保持するためのLRブレーキ542およびUDブレーキ546も設けられている。
LG(Light Guide)コネクタ518は、内視鏡を使用する施設における、送水手段、送気手段、吸引手段等と、内視鏡521とを接続するための部位であり、内視鏡521と施設の送水(給水)手段と接続するための送水コネクタ550、送気手段と接続するための通気コネクタ552等が配置される。LGコネクタ518には、照明光源と接続するためのLG棒554や、電子メスを使用する際にSコードを接続するS端子等が設けられている。
図9に、内視鏡の先端部の正面図を示す。内視鏡521の先端部524は、先端部本体560と、先端部本体560の先端を覆う略円筒状の先端キャップ562とから構成されている。
先端部本体560には、撮像ユニット568および照明レンズ570が組み込まれている。さらに、先端部本体560には、鉗子口532に連通する鉗子孔527、送気および送水を行うための送気送水孔574等が形成される。
線状部材522は、内視鏡521の鉗子口532から挿入し、鉗子孔527で生体試料を採取可能に装着される。
なお、線状部材522を有する第2の実施形態の生体試料の状態評価装置500は、内視鏡521から脱着可能である。
図10に示すように、線状部材522は、鉗子孔527のガイド531内を矢印方向に移動可能に設けられており、線状部材522が対象物532表面に当接した状態で、移動することにより、線状部材522に生体試料が付着するので、サンプリングが確実に行われる。サンプリング後の線状部材522は、イオン化部材626まで、移動し、イオン化される。この第2の実施形態では、線状部材522としては、綿糸を用いている。
駆動部材としての搬送ローラ624と巻取りローラ523による線状部材522の移動スピードは適宜調整することができる。例えば、生体試料の採取中やイオン化時は、線状部材の移動スピードを低下させ、生体試料の採取終了後は、移動スピードを上げることにより、サンプリングからイオン化までにかかる時間を短く調整することができる。
次に、図6および図7Aに示すように、線状部材522は、内視鏡521の鉗子口532から挿入され、駆動手段としての搬送ローラ624および巻取りローラ523を駆動させることにより、鉗子孔527で対象物の表面に当接した状態で、移動させることにより生体試料を採取する。その後、線状部材522は、折り返して移動し内視鏡521の鉗子口532から出て、イオン化部材626により、イオン化される。
特に膵管、胆管、血管、気管、気管支、食道などの生体に存在する細い管腔状の部位において、その内面の組織を採取することに特化した方法、あるいは装置そのものの構造として、図7Bに示す管状部材603を用いて説明する。
まず、細い管腔状の部位においての組織の採取は、図7Bに示す管状部材603の折曲げが極めて困難であるため、管状部材603の長軸に対して所定の角度(図7B中では90°=側面)を持った部分からの採取を可能とするために、線状部材522の露出部を先端以外に設定する。さらに、管状部材603を上記管内に導入するために、ガイドワイヤー601を利用可能とする。図7Cに示すように、組織採取のための線状部材522の露出部とは別の領域にさらなる開口部を設けて、そこから管状部材603の内部(ガイドワイヤー孔602)を経由してガイドワイヤー601を導出する構造とする。そして、あらかじめ管腔内にガイドワイヤー601の一端を挿入し、管状部材603のガイドワイヤー孔602に挿入していない側のガイドワイヤー他端を挿入する。次に、管状部材603を押し込むことで、管状部材603がガイドワイヤー601に沿って体内の管腔内へと誘導される。
イオン化部材626により生成したイオンは、質量分析計525により、リアルタイム分析される。イオン化後の線状部材522は巻取りローラ523に巻き取られる。この第2の実施形態では、イオン化部材626としては標的分子によってESI又はAPCIを切り替えて用いている。
図11は、サンプリング手段の一例を示す写真であり、線状部材は矢印方向に移動しつつサンプリングを行う。
図12は、サンプリング手段の先端部の一例を示す写真であり、線状部材としては綿糸を用いている。
図13は、ESI法によるイオン化部材および質量分析計の一例を示す写真である。
図14は、APCI法によるイオン化部材および質量分析計の一例を示す写真である。
第2の実施形態の生体試料の状態評価装置を用い、対象物としてヒト口腔粘膜、および生きたマウスの肝臓のサンプリングおよびイオン化、さらに質量分析を行った結果、数十秒間以内にマススペクトルを得ることができる。
<第2の実施形態の変形例1>
図15Aは、第2の実施形態の変形例1の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第2の実施形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この図15Aのリモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する生体試料の状態評価装置200は、イオン化手段201と、分析手段202とを備えている。
イオン化手段201は、第1の管状部材21と、第2の管状部材22と、ガス流発生部材25と、電源20と、イオン誘導部材28とを有している。図15A中、18は生体試料、19は生成された正イオン、23は管状部材の保持部材、24はエレクトロスプレーによりイオンが生成される第1の管状部材21の他端、26は対向電極、27は絶縁部材、29は質量分析計を示す。
また、図15Aの第1の管状部材21の一端側の拡大写真を図15Bに示す。
第1の管状部材21としてステンレス鋼を用いる。
管状部材の保持部材23と対向電極26とは、絶縁部材27により絶縁されている。この第2の実施形態では、絶縁部材27として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いる。
第1の管状部材21は、生体試料に対して上下動可能である。
第1の管状部材21は、第2の管状部材22内に同心で挿入されている。
第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガス流発生部材(ここでは、エアーコンプレッサーを用いる)により高速の空気流が発生している。
この第2の実施形態の変形例1では、第1の管状部材21の外径は0.2mm、第2の管状部材22の内径は0.5mmとする。第1の管状部材21と第2の管状部材22の隙間は、0.15mmであり、この隙間を空気が高速で流れている。
第1の管状部材21を下方の位置(下位端)に移動すると、第1の管状部材21の一端が生体試料に接触することで生体試料は第1の管状部材21内に注入される。
第2の管状部材22内の高速の空気流によって生成されるベンチュリ効果により、生体試料の吸引がスムーズに行われ、第1の管状部材21の一端から採取された生体試料は、第1の管状部材の他端24へと移動する。
第1の管状部材21の他端24と、エレクトロスプレーが生成される領域に他端24と対向する位置に配される対向電極26との間で電位差が生じるように、対向電極に電源30から電圧が印加される。この第2の実施形態では、第1の管状部材21をグランド電位とし、対向電極26に−3kVの電圧を印加する。それにより、第1の管状部材21の他端24からエレクトロスプレーが発生する。
生成されたイオンは、空気流の流れに乗って、イオン誘導部材28を経由して質量分析計29へ供給される。ここで、この第2の実施形態では、イオン誘導部材28として、内径3mmの可撓性ポリマーチューブを用いる。
第1の管状部材21を上方の位置(上位端)に移動すると、生体試料の採取は中止する。
質量分析計29では、イオン化手段201により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第2の実施形態では、質量分析計として、四重極型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、および飛行時間型質量分析計のいずれかを用いている。
また、リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いた生体試料の状態評価装置を用いれば、複数のサンプルに対し、イオン化工程を自動化することもできる。
例えば、図16に示すように、3軸電動自動サンプリング装置を構築することができる。
サンプルステージは、水平(x−y)軸の2つのリニアアクチュエータによって駆動させる。サンプリングプローブである第1の管状部材の位置は、垂直(z)軸の別のリニアアクチュエータによって制御させる。
サンプルステージには、複数の生体試料が配された96ウェルのサンプルプレートが載っている。
図17Aで示すように、第1の管状部材を下方の位置に移動させ、生体試料に接触させると、ほぼ直ちに質量分析計による質量分析結果が得られる。
次に、図17Bで示すように、第1の管状部材を上方の位置に移動させ生体試料から離す。96ウェルのサンプルプレートの位置を変更する。
また、図17Aで示すように、第1の管状部材を下方の位置に移動させ、次の生体試料に接触させ、その生体試料の質量分析結果を得る。
この繰り返し工程をコンピュータで制御することにより、連続サンプリングの自動化が可能な生体試料の状態評価装置を構築することができる。
<第2の実施形態の変形例2>
図17Cは、第2の実施形態の変形例2の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第2の実施形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図17Cの生体試料の状態評価装置は、分析手段202の質量分析計29のイオン検出孔部分にエアーを吹き付け、イオン化していない液滴を除去する洗浄除去部103を有する以外は、図17Aの生体試料の状態評価装置と同じ構成である。また、フレキシブルチューブからなるイオン誘導部材28により、イオン化されていないイオン以外の不要物質はチューブの内壁に衝突することで除去される。洗浄除去部103を有することにより、イオン検出器孔および装置内部にイオン化されていないイオン以外の不要物質が侵入しないので、生体試料の状態評価装置のメンテナンス周期を長くすることができ、また良好なイオン検出能を長期に亘って維持することができ、分析精度を維持することができる。なお、図17Cの生体試料の状態評価装置では、洗浄除去部103としてエアブローを用いているが、スプレーを用いても構わない。
<第3の実施形態>
図18は、第3の実施形態の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第3の実施形態において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この図18のライン式イオン化法を用いたイオン化部を有する生体試料の状態評価装置300は、イオン化手段301と、分析手段302とを備えている。
イオン化手段301は、試料液供給素子31と、生体試料としての試料液(体液)の液滴32と、線状部材33と、駆動部材34と、イオン化部材35と、を備えている。
分析手段302は、質量分析計36を備えている。
線状部材33は、試料液の液滴32を搬送する。
線状部材に試料液の液滴を付着させるには、試料液供給素子31を用い、1液滴ずつ線状部材に滴下することにより行う。この第3の実施形態においては、試料液供給素子として、ピエゾ端子を使用する。
駆動部材34である駆動ローラにより線状部材33を移動させ、試料液の液滴は、イオン化部材35まで搬送される。
イオン化部材35を用いて、線状部材に付着した液滴32をイオン化させる。この第3の実施形態においては、イオン化部材35としては、標的分子によってESIあるいはAPCIを切り替えて用いている。
イオン化部材35により生成された試料液に由来するイオンは、直ちに質量分析に供される。
質量分析計36では、イオン化手段301により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第3の実施形態では、質量分析計として、四重極型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、および飛行時間型質量分析計のいずれかを用いている。
<第3の実施形態の変形例1>
図19Aは、第3の実施形態の変形例1の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第3の実施形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この図19Aの生体試料の状態評価装置の変形例1では、試料液供給素子による生体試料の液滴の線状部材への付着からイオン化までの時間を利用して、生体試料を前処理する前処理部材37を有する以外は、図18の生体試料の状態評価装置と同様である。前処理としては、例えば、除タンパク、塩除去の処理などが挙げられる。
<第3の実施形態の変形例2>
図19Bは、第3の実施形態の変形例2の生体試料の状態評価装置の一例を示す概略図である。なお、第3の実施形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図19Bの生体試料の状態評価装置の変形例2では、さらに、生体試料を前処理する前処理部材38、洗浄除去部材43、加熱部材42、化学処理部材41を設け、質量分析計36のイオン検出孔部分にエアーを吹き付け、イオン化していない液滴を除去する洗浄除去部103を有する以外は、図19Bの生体試料の状態評価装置と同じ構成である。洗浄除去部103を有することにより、イオン検出器孔および装置内部にイオン化されていないイオン以外の不要物質が侵入しないので、生体試料の状態評価装置のメンテナンス周期を長くすることができ、また良好なイオン検出能を長期に亘って維持することができ、分析精度を維持することができる。なお、図19Bの生体試料の状態評価装置では、洗浄除去部103としてエアブローを用いているが、スプレーを用いても構わない。
(実験例)
本発明の生体試料の状態評価装置および生体試料の状態評価方法を用いて、実際に、血液の凝固状態を評価した実験について、以下説明する。
図22は、血液の凝固によりイオン強度が変化するマススペクトルデータの一例を示すチャートである。なお、図22における血液は、同一の被験者のものであり、同一のタイミングで採血したものである。
図22に示す3つのマススペクトルデータは、上から順に、採血後の血液のマススペクトル(採血後0分)、採血してから37℃の環境下で2分間放置した血液のマススペクトル(37℃で2分間後)、および採血してから37℃の環境下で4分間放置した血液のマススペクトル(37℃で4分間後)である。
採血0分の血液、および37℃で2分間後の血液は凝固しておらず、37℃で4分間後の血液は凝固していた。この3つのマススペクトルにおいて、血液の凝固が進むにつれてイオン強度が変化するピーク群を点線の囲み線Aで示す。このピーク群のうち、m/z=824.5のピークに注目し、放置した時間と、イオン強度の関係を図23に示した。図23の結果から、採血後の血液の放置時間が長くなるにつれてm/z=824.5のピークのイオン強度が高くなる傾向があることがわかった。
このことから、m/zが824.5のピークのイオン強度が、採血後から1.4倍以上増加したとき、血液は凝固状態であると評価でき、血液のマススペクトルデータにおいて、m/z=824.5のピークのイオン強度を、血液凝固マーカーとして利用できることがわかった。
したがって、検査前の血液のマススペクトルデータを求め、m/z=824.5のピークのイオン強度が採血後から1.4倍以上増加したときには、血液が凝固していると判定することができ、その血液は検査を行わず、再度採血を行うことで、正確な検査が行える。
図24は、図22のマススペクトルデータを拡大したマススペクトル図である。図24で示すように、図22の点線の囲み線Aだけでなく、マススペクトルデータの全体を見て解析を行うことにより、血液の凝固マーカー以外の成分のピークに基づき、様々な生体試料の状態の評価および予測を行うことができる。
図25は、血液のマススペクトルデータの解析における機械学習により、血液が凝固するタイミングを予測できることの一例を示す説明図である。
(1)例えば、複数の被験者からの血液の質量分析結果を予め取得し、それらのマススペクトルデータを分析することで、血液の凝固状態を判定する指標を用意する。ここで、指標としては、図22のA部分で示したようなマススペクトルの特有のマーカーピーク、マススペクトルの全体のピーク形状、健常者のプロファイルの分布と非健常者のプロファイルの分布とを区別する基準などが挙げられる。そして、事前に用意した指標と、生体試料の測定結果とを比較することにより、生体試料の血液の凝固状態を判定することができる。
(2)健常者が示すマススペクトルが示すデータと、非健常者のマススペクトルデータとでは、差異があることから、上記(2)のように事前に指標となるデータを保有する場合でなくても、健常者が示すマススペクトルデータと違う測定結果が得られた場合には、何らかの疾患に該当する可能性があると疑うことができる。
(3)データベースに記憶されている事前に用意されたデータは、新しい測定結果が得られれば、逐次データを更新することができる。蓄積データを増やし、指標となる情報を更新することで、より正確な判定が行えるデータベースを構築することができる。
(4)また、被験者自身の測定結果を蓄積していき、被験者の測定データをその被験者の過去のデータと比較するようにしてもよい。それにより、被験者における生体試料の状態の経過観察が行え、ひいては被験者の疾患の早期発見、最適な治療法の選択につなげることができる。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価装置であって、
前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得手段と、
前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価手段と
を有することを特徴とする生体試料の状態評価装置である。
<2> 前記状態評価手段が、生体試料のマススペクトルのデータを有するマススペクトルデータベースに照合をし、前記マススペクトルデータベースにおける前記マススペクトルのデータと、前記生体試料のマススペクトルのデータとを比較して前記生体試料の状態を評価する、前記<1>に記載の生体試料の状態評価装置である。
<3> 前記状態評価手段が、前記マススペクトルデータベースに、前記生体試料のマススペクトルのデータが追加されると機械学習を行う、前記<2>に記載の生体試料の状態評価装置である。
<4> 前記状態評価手段が、前記生体試料の状態がどのように変化するのかを予測する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置である。
<5> 前記生体試料が、液体および固体の少なくともいずれかである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置である。
<6> 前記生体試料が、体液である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置である。
<7> 前記体液が、血液、羊水、および上下気道の粘膜上皮からの分泌物の少なくともいずれかである、前記<6>に記載の生体試料の状態評価装置である。
<8> 前記マススペクトル取得手段が、装置内にイオン以外の不要物質の侵入を制限するクリーン化部を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置である。
<9> 前記クリーン化部がエアブロー、スプレー、およびフレキシブルチューブの少なくともいずれかを有する前記<8>に記載の生体試料の状態評価装置である。
<10> 前記マススペクトル取得手段は、
管状部材と、
前記管状部材をリードするガイドワイヤーと、
前記管状部材の中を通過する線状部材と、
を更に有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置である。
<11> 前記線状部材が前記管状部材の外周よりさらに外側を通る前記<10>に記載の生体試料の状態評価装置である。
<12> 前記生体試料が血液であって、
前記状態評価手段が、前記血液のマススペクトルのデータにおいて、m/zが824.5のイオン強度が、採血後から1.4倍以上増加したとき、前記血液は凝固状態であると評価する、前記<1>から<11>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置である。
<13> 生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価システムであって、
前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得装置と、
前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価装置と
を有することを特徴とする生体試料の状態評価システムである。
<14> 前記状態評価装置が、生体試料のマススペクトルのデータを有するマススペクトルデータベースに照合をし、前記マススペクトルデータベースにおける前記マススペクトルのデータと、前記生体試料のマススペクトルのデータとを比較して前記生体試料の状態を評価する、前記<13>に記載の生体試料の状態評価システムである。
<15> 前記状態評価装置が、前記マススペクトルデータベースに、前記生体試料のマススペクトルのデータが追加されると機械学習を行う、前記<14>に記載の生体試料の状態評価システムである。
<16> 前記状態評価装置が、前記生体試料の状態がどのように変化するのかを予測する、前記<13>から<15>のいずれかに記載の生体試料の状態評価システムである。
<17> 前記生体試料が、液体および固体の少なくともいずれかである、前記<13>から<16>のいずれかに記載の生体試料の状態評価システムである。
<18> 前記生体試料が、体液である、前記<13>から<17>のいずれかに記載の生体試料の状態評価システムである。
<19> 前記体液が、血液、羊水、および上下気道の粘膜上皮からの分泌物の少なくともいずれかである、前記<18>に記載の生体試料の状態評価システムである。
<20> 前記生体試料が血液であって、
前記状態評価装置が、前記血液のマススペクトルのデータにおいて、m/zが824.5のイオン強度が、採血後から1.4倍以上増加したとき、前記血液は凝固状態であると評価する、前記<13>から<19>のいずれかに記載の生体試料の状態評価システムである。
<21> 生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価方法であって、
前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得工程と、
前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価工程と
を含むことを特徴とする生体試料の状態評価方法である。
<22> 前記状態評価工程において、生体試料のマススペクトルのデータを有するマススペクトルデータベースに照合をし、前記マススペクトルデータベースにおける前記マススペクトルのデータと、前記生体試料のマススペクトルのデータとを比較して前記生体試料の状態を評価する、前記<21>に記載の生体試料の状態評価方法である。
<23> 前記状態評価工程において、前記マススペクトルデータベースに、前記生体試料のマススペクトルのデータが追加されると機械学習を行う、前記<22>に記載の生体試料の状態評価方法である。
<24> 前記状態評価工程において、前記生体試料の状態がどのように変化するのかを予測する、前記<21>から<23>のいずれかに記載の生体試料の状態評価方法である。
<25> 前記生体試料が、液体および固体の少なくともいずれかである、前記<21>から<24>のいずれかに記載の生体試料の状態評価方法である。
<26> 前記生体試料が、体液である、前記<21>から<25>のいずれかに記載の生体試料の状態評価方法である。
<27> 前記体液が、血液、羊水、および上下気道の粘膜上皮からの分泌物の少なくともいずれかである、前記<26>に記載の生体試料の状態評価方法である。
<28> 前記生体試料が血液であって、
前記状態評価手段が、前記血液のマススペクトルのデータにおいて、m/zが824.5のイオン強度が、採血後から1.4倍以上増加したとき、前記血液は凝固状態であると評価する、前記<21>から<27>のいずれかに記載の生体試料の状態評価方法である。
<29> 生体試料のマススペクトルのデータを得て、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する処理をコンピュータに行わさせることを特徴とする生体試料の状態評価プログラムである。
<30> 前記状態を評価する処理が、生体試料のマススペクトルのデータを有するマススペクトルデータベースに照合をし、前記マススペクトルデータベースにおける前記マススペクトルのデータと、前記生体試料のマススペクトルのデータとを比較して前記生体試料の状態を評価する、前記<29>に記載の生体試料の状態評価プログラムである。
<31> 前記状態を評価する処理が、前記マススペクトルデータベースに、前記生体試料のマススペクトルのデータが追加されると機械学習を行う、前記<30>に記載の生体試料の状態評価プログラムである。
<32> 前記状態評価工程において、前記生体試料の状態がどのように変化するのかを予測する、前記<29>から<31>のいずれかに記載の生体試料の状態評価プログラムである。
<33> 前記生体試料が、液体および固体の少なくともいずれかである、前記<29>から<32>のいずれかに記載の生体試料の状態評価プログラムである。
<34> 前記生体試料が、体液である、前記<29>から<33>のいずれかに記載の生体試料の状態評価プログラムである。
<35> 前記体液が、血液、羊水、および上下気道の粘膜上皮からの分泌物の少なくともいずれかである、前記<34>に記載の生体試料の状態評価プログラムである。
<36> 前記生体試料が血液であって、
前記状態評価手段が、前記血液のマススペクトルのデータにおいて、m/zが824.5のイオン強度が、採血後から1.4倍以上増加したとき、前記血液は凝固状態であると評価する、前記<29>から<35>のいずれかに記載の生体試料の状態評価プログラムである。
前記<1>から<12>のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置、前記<13>から<20>のいずれかに記載の生体試料の状態評価システム、前記<21>から<28>のいずれかに記載の生体試料の状態評価方法、および前記<29>から<36>のいずれかに記載の生体試料の状態評価プログラムによると、従来における前述の諸問題を解決し、前述の本発明の目的を達成することができる。
1 針状部材
17 電源
18 イオン収集部材
21 第1の管状部材
22 第2の管状部材
25 ガス流発生部材
28 イオン誘導部材
29 質量分析計
33 線状部材
35 イオン化部材
36 質量分析計
100 生体試料の状態評価装置
200 生体試料の状態評価装置
300 生体試料の状態評価装置
301 イオン化手段
302 分析手段
310 質量分析部
320 生体試料の状態評価装置
321 評価部
322 入力部
323 出力部
324 表示部
325 プリンタ
326 記憶部

Claims (15)

  1. 生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価装置であって、
    前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得手段と、
    前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価手段と
    を有することを特徴とする生体試料の状態評価装置。
  2. 前記状態評価手段が、生体試料のマススペクトルのデータを有するマススペクトルデータベースに照合をし、前記マススペクトルデータベースにおける前記マススペクトルのデータと、前記生体試料のマススペクトルのデータとを比較して前記生体試料の状態を評価する、請求項1に記載の生体試料の状態評価装置。
  3. 前記状態評価手段が、前記マススペクトルデータベースに、前記生体試料のマススペクトルのデータが追加されると機械学習を行う、請求項2に記載の生体試料の状態評価装置。
  4. 前記状態評価手段が、前記生体試料の状態がどのように変化するのかを予測する、請求項1から3のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置。
  5. 前記生体試料が、液体および固体の少なくともいずれかである、請求項1から4のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置。
  6. 前記生体試料が、体液である、請求項1から5のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置。
  7. 前記体液が、血液、羊水、および上下気道の粘膜上皮からの分泌物の少なくともいずれかである、請求項6に記載の生体試料の状態評価装置。
  8. 前記マススペクトル取得手段が、装置内にイオン以外の不要物質の侵入を制限するクリーン化部を有する請求項1から7のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置。
  9. 前記クリーン化部がエアブロー、スプレー、およびフレキシブルチューブの少なくともいずれかを有する請求項8に記載の生体試料の状態評価装置。
  10. 前記マススペクトル取得手段は、
    管状部材と、
    前記管状部材をリードするガイドワイヤーと、
    前記管状部材の中を通過する線状部材と、
    をさらに有する請求項1から9のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置。
  11. 前記線状部材が前記管状部材の外周よりさらに外側を通る請求項10に記載の生体試料の状態評価装置。
  12. 前記生体試料が血液であって、
    前記状態評価手段が、前記血液のマススペクトルのデータにおいて、m/zが824.5のイオン強度が、採血後から1.4倍以上増加したとき、前記血液は凝固状態であると評価する、請求項1から11のいずれかに記載の生体試料の状態評価装置。
  13. 生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価システムであって、
    前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得装置と、
    前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価装置と
    を有することを特徴とする生体試料の状態評価システム。
  14. 生体試料の状態を評価する生体試料の状態評価方法であって、
    前記生体試料のマススペクトルのデータを得るマススペクトル取得工程と、
    前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する状態評価工程と
    を含むことを特徴とする生体試料の状態評価方法。
  15. 生体試料のマススペクトルのデータを得て、前記マススペクトルのデータに基づき前記生体試料の状態を評価する処理をコンピュータに行わさせることを特徴とする生体試料の状態評価プログラム。
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