JP7025621B2 - 質量分析装置及び質量分析方法、並びに解析装置及び解析方法 - Google Patents

質量分析装置及び質量分析方法、並びに解析装置及び解析方法 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 平成28年10月15日、http://www.mssj.jp/society/branch/bms/bms_international2016.html 平成28年10月15日、International BMS シンポジウム2016発表資料
本発明は、質量分析装置及び質量分析方法、並びに解析装置及び解析方法に関する。
近年、対象物から採取した検体を前処理なしで直接イオン化し、生成したイオンを分析してマススペクトルを取得する質量分析装置において、迅速性及びリアルタイム性がより強く要求されている。例えば、生きた動物のリアルタイム代謝解析、術中の迅速な診断、蓄積データとの比較による統計的なアプローチなどから、単純な良し悪しの2値判定ではなく、悪性度、組織型等の複雑な判定を、今までにない時間軸で実現できる質量分析装置及び解析装置の提供が求められている。
また、質量分析装置から出力されるマススペクトルデータによって表される各ピークは、既存のマススペクトルデータベースと比較され、これに基づいてサンプルとの同定が行われている。しかし、一つのサンプルを質量分析している過程においてもマススペクトルは刻々変化するので、どの時点又はどの時間帯のマススペクトルデータが好適か、適切な質量電荷比(m/z)の範囲はどの辺かを判断して、利用目的に合致した代表マススペクトルのデータを生成することが必要となる。このような機能を、従来の多くの質量分析装置は保有していないし、代表スペクトルをユーザが見える形で描画することもできない。更に、大量のマススペクトルデータを管理、編集する機能を有していないという問題がある。
前述の問題点を解決するため、本願出願人は、先に、質量分析装置から出力されるスキャン生データに基づいて、適切な代表マススペクトルを自動的に作成するマススペクトル解析システムについて提案している(例えば、特許文献1参照)。
また、本願出願人は、先に、対象物を載置する試料台と、電圧が印加される金属製プローブと、このプローブを長手方向に振動させる振動手段とを備えた探針エレクトロスプレーイオン化(Probe Electrospray Ionization;以下、「PESI」と称することもある)装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
特開2016-200435号公報 特許第4862167号公報
しかしながら、前述の特許文献1の提案によりマススペクトル解析の改善、改良が行われたとしても、質量分析装置におけるサンプリング、イオン化、及び質量分析を迅速かつ正確に実施する必要がある。
また、前述の特許文献2の提案では、その図1に示すように、PESI装置のイオン化部の試料台に載る範囲に対象物の大きさが制限されてしまうという問題がある。
本発明は、現場において前処理なしで、リアルタイムに、安全かつ正確に、サンプリング、イオン化、及び質量分析を行うことができる質量分析装置及び質量分析方法、並びにこれらを用いたマススペクトルの解析装置及び解析方法を提供する。
前述の課題を解決するための手段としての本発明の質量分析装置は、対象物から検体を採取し、直ちに、採取した検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、サンプリング手段により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、を有する。
また、本発明の解析装置は、対象物から検体を採取し、直ちに、採取した検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、サンプリング手段により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、リアルタイム分析手段で得られたマススペクトルを解析する解析手段と、を有する。
本発明によると、現場において前処理なしで、リアルタイムに、安全かつ正確に、サンプリング、イオン化、及び質量分析を行うことができる質量分析装置及び質量分析方法、並びにこれらを用いたマススペクトルの解析装置及び解析方法を提供することができる。
図1は、第1の実施形態に係る質量分析装置の一例を示す概略図である。 図2は、第1の実施形態に係る質量分析装置のサンプリング手段の一例を示す概略図である。 図3Aは、図2のサンプリング手段の先端部分の一例を示す部分拡大図である。 図3Bは、図2のサンプリング手段の先端部分の他の一例を示す部分拡大図である。 図3Cは、図2のサンプリング手段の先端部分の他の一例を示す部分拡大図である。 図4は、第1の実施形態に係る質量分析装置の使用状態の一例を示す概略図である。 図5は、第2の実施形態に係る質量分析装置の他の一例を示す概略図である。 図6は、図5のA部分の部分拡大図である。 図7は、内視鏡の一例を示す概略図である。 図8は、図7の内視鏡の先端の一例を示す平面図である。 図9は、第2の実施形態に係る質量分析装置のサンプリング手段によるサンプリング状態の一例を示す図である。 図10は、第2の実施形態に係る質量分析装置のサンプリング手段の一例を示す写真である。 図11は、第2の実施形態に係る質量分析装置のサンプリング手段の先端部分の一例を示す写真である。 図12は、第2の実施形態に係る質量分析装置において、ESI(electrospray ionization)法によるイオン化部材を用いた一例を示す写真である。 図13は、第2の実施形態に係る質量分析装置において、APCI(Atomospheric Pressure Chemical Ionization)法によるイオン化部材を用いた一例を示す写真である。 図14は、本発明の解析装置の一例を示すブロック図である。 図15は、データ構造の一例を示すブロック図である。 図16は、本発明の解析装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。 図17は、本発明の解析装置における処理を流れの他の一例を示すフローチャートである。 図18は、測定データ(テキスト形式)の一例を示す図である。 図19は、図18に示すデータをマススペクトルの形で表現した一例を示す図である。 図20は、クロマトグラムの一例を示す図である。 図21は、図20のクロマトグラムの指定された時間帯におけるデータにより作成される代表マススペクトルの一例を示す図である。 図22は、代表マススペクトルの自動(半自動)作成における入力画面(条件設定画面)の一例を示す図である。 図23は、代表マススペクトルの自動(半自動)作成において表示されるクロマトグラムと代表マススペクトルの一例を示す図である。 図24は、作成した代表マススペクトルの登録における入力画面の一例を示す図である。 図25が、作成した代表マススペクトルのラベリングにおけるラベル入力画面をの一例を示す図である。 図26は、統計解析を行うマススペクトルデータの出力のための設定画面の一例を示す図である。 図27は、内標決定における設定画面の一例を示す図である。 図28は、内標の決定と、決定した内標によるマススペクトル評価の処理のための入出力画面の一例を示す図である。 図29は、統計解析処理の設定画面(入力画面)の一例を示す図である。 図30は、検定法によるマーカー探索によって出力されるファイルの一例を示す図である。 図31は、縮約法によって2主成分に縮約された結果(スコアプロット)の一例を示す図である。 図32は、検証法の結果を示す正誤表の一例を示す図である。 図33は、統計解析、検証の結果をまとめて示す出力画面の一例を示す図である。
(質量分析装置及び質量分析方法)
本発明の質量分析装置は、サンプリング手段と、リアルタイム分析手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の質量分析方法は、サンプリング工程と、リアルタイム分析工程と、含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の質量分析方法は、本発明の質量分析装置により好適に実施することができ、サンプリング工程はサンプリング手段により行うことができ、リアルタイム分析工程はリアルタイム分析手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
<サンプリング手段及びサンプリング工程>
サンプリング工程は、対象物から検体を採取し、直ちに、採取した検体中の成分をイオン化する工程であり、サンプリング手段により実施される。
「直ちに」とは、サンプリングからイオン化までを短時間で行うことを意味し、具体的には、10秒間以下が好ましく、5秒間以下がより好ましく、3秒間以下が更に好ましい。これにより、リアルタイム分析を実現することができる。
「リアルタイム分析」とは、サンプリングから質量分析までを短時間で行うことを意味し、具体的には、10分間以下が好ましく、5分間以下がより好ましく、3分間以下が更に好ましく、1分間以下が特に好ましい。これにより、後述する解析手段と組み合わせて、その場で検体をそのままで(in situ)、迅速かつ高精度なマススペクトル解析を実現することができる。
従来、術中の生検検体のサンプリングから質量分析には、術中迅速診断を用いても最低限30分間~1時間程度かかり、リアルタイム分析は実現できていなかった。
したがって、本発明の質量分析装置及び質量分析方法によれば、サンプリング手段及びリアルタイム手段を備えることにより、現場において前処理なしで、リアルタイムに、安全かつ正確に、サンプリング、イオン化、及び質量分析を実現できるものである。
また、本発明の質量分析装置は、別の態様として、採取した検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、サンプリング手段により生成するイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、を備え、サンプリング手段とリアルタイム分析手段とは所定の距離を離して配置され、距離は検体を採取する対象物に応じて変更可能である。
この別の態様の質量分析装置によれば、今までのPESI装置では実現できなかった、自由度の高いサンプリング及びイオン化を実現することができる。具体的には、オンサイトで術中の患者の臓器から直接検体を採取でき、これまでのPESI装置におけるサンプリング及びイオン化のために必要であった、検体を採取するための臓器から対象物を分離(=前処理)する時間と手間とが不要となる。加えて、質量分析計から離れてサンプリング手段及びイオン化部材を可動化し、自由度を向上させることにより、検体の存在場所にフレキシブルに対応が可能となる。更にこのことは、これまでの前処理によりPESI装置のイオン化部材の試料台(特許文献2(特許第4862167号公報)の図1の参照符号15)に載る範囲という対象物の大きさの制限を、まったく不要とするものである。つまり、直ちに採取した検体をイオン化し、検体を採取する対象物に極めてフレキシブルに対応することが可能となる。
<<対象物>>
対象物としては、サンプリングが可能な固体、液体であれば特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生体試料、飲食品、化粧品、医薬品、細菌、真菌、細胞株などが挙げられる。
生体試料とは、被検体から採取された生体由来成分を含むものであって、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肝癌、胃癌、膵癌、食道癌、肺癌、腎癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、大腸癌、脳腫瘍等の患者から採取した生検試料;組織、臓器、リンパ節、細胞、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液、唾液などが挙げられる。
なお、対象となる疾患についても特に制限はなく、疾患でなくてもよい。
前述の被検体としては、あらゆる動植物が挙げられる。
前述の対象物としては、前述の生体試料に含まれるものであってよく、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、核酸(例えば、DNA、RNA、ポリヌクレオチド等)、タンパク質(例えば、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸、糖質、脂質、又はその他のあらゆる低分子代謝物などが挙げられ、具体的には、腫瘍マーカー、炎症マーカー、シグナル伝達物質などが挙げられる。
腫瘍マーカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)などが挙げられる。
炎症マーカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C反応性タンパク質(CRP)などが挙げられる。
飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば
、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイ
スシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまい
の皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナッ
ク菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サ
ケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカ
ガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;リンゴ、みかん、柿、イチゴ、桃、梨、ぶどう、メロン、さくらんぼ等の果物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;医薬部外品などが挙げられる。
化粧品としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンスなどが挙げられる。
医薬品としては、特に制限はなく、各種剤形から適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;軟膏などが挙げられる。
サンプリング手段としては、(1)針状部材、及びイオン収集部材を有する態様(以下、探針エレクトロスプレーイオン化(以下、「PESI」と称することもある)部、(2)内視鏡、線状部材、及びイオン化部材を有する態様(以下、「MS内視鏡型」と称することもある)がある。
<<探針エレクトロスプレーイオン化部>>
探針エレクトロスプレーイオン化(PESI)部は、針状部材と、イオン収集部材と、を有し、溶媒付与部材及びガイド部材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
PESI部では、検体採取後イオン化が直ちに行われ、リアルタイム分析が可能である。
このようなPESI部としては、例えば、国際公開第2010/047399号パンフレット等に開示されたものを用いることができる。
PESI部では、針状部材を移動させて、針状部材の先端を対象物に接触乃至刺入させ、針状部材の先端に対象物の一部を捕捉する。元の対象物表面上で針状部材の先端に捕捉される検体の量は針状部材の先端の曲率半径ないし、有効面積に依存する。
針状部材の先端をごく細い形状としておけば、元の試料表面上でごく微小の範囲の検体が針状部材の先端に捕捉され、その量は非常に微量である。例えば、対象物が生体試料である場合、数個程度の細胞が針状部材の先端に捕捉されるようにすることができる。
先端に検体が付着した針状部材に高電圧が印加されると、針状部材の先端の検体に強い電場が作用し、エレクトロスプレー法により検体分子が離脱しながらイオン化する。
「PESI」部の利点としては、(1)大気圧下で測定が可能である、(2)試料が非常に微量で十分である(数ピコリットル)、(3)低侵襲性である、(3)対象物の前処理が不要である、(4)塩や界面活性剤の影響を受けにくい、(5)リアルタイム分析が可能である、などが挙げられる。
-針状部材-
針状部材は、対象物に先端を接触乃至刺入させて検体を採取(捕捉)する部材である。
針状部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
針状部材の形状としては、エレクトロスプレー現象を生じることができる先端形状とすることができる。
針状部材の構造としては、中実構造、単層構造、複数層構造などが挙げられる。
針状部材の大きさとしては、対象物の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
材質として、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられ、更にこれらの表面加工として、電界研磨、酸処理、化学処理により親水性あるいは疎水性を調整してもよい。
針状部材としては、具体的には、ステンレス鋼製の鍼灸針を加工したものなどを用いることができる。
-イオン収集部材-
イオン収集部材は、針状部材の先端近傍に設けられ、針状部材に付着した検体から生成したイオンを収集する部材である。
イオン収集部材としては、例えば、イオン収集・輸送チューブを用いることができる。イオン収集・輸送チューブの内径は1mm~5mmであることが好ましい。
イオン収集・輸送チューブの先端の開口部は、針状部材の移動を邪魔しない大きさ、形状に形成することができ、先端の開口部がラッパ状に広がった形状であることがイオンの収集効率の点から好ましい。
イオン収集部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、対象物に応じて適宜選択することができる。
-ガイド部材-
ガイド部材は、探針エレクトロスプレーイオン化部の先端部に設けられ、検体の採取時に対象物の表面と当接する部材である。
探針エレクトロスプレーイオン化部の先端部にガイド部材を設けることにより、サンプリング時の操作性、安全性、保護性が向上すると共に、生成したイオンの吸引効率を高めることができる。
ガイド部材の形状、構造、大きさ、材質等については、対象物に応じて適宜選択することができる。
ガイド部材の形状及び大きさとしては、対象物の表面に当接可能な形状及び大きさとすることが好ましい。
ガイド部材の材質としては、例えば、金属、シリコーン、絶縁樹脂、導電性樹脂、ゴムなどが挙げられる。
-溶媒付与部材-
溶媒付与部材は、針状部材に溶媒を付与する部材である。これにより、針状部材の先端に捕捉された検体は溶媒に溶解し又は湿潤化するので、検体の乾燥を防止しながら脱離及びイオン化を促進することができる。
溶媒の針状部材への付与は、例えば、スプレイ法、溶媒供給管による少量の溶媒の供給などで行うことが好ましい。
針状部材の前回の測定のシグナル(コンタミ)が消えるまで溶媒で洗浄することにより、検出精度の向上を図ることができる。
溶媒としては、例えば、生理食塩水、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール、酢酸、トリフロ酢酸、アセトニトリルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
-その他の部材-
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高電圧発生部材、制御部材などが挙げられる。
高電圧発生部材は、針状部材の先端に試料が付着された状態で針状部材に高電圧を印加する部材である。
制御部材としては、各部材の動きを制御できる部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
<<MS内視鏡型>>
MS内視鏡は、内視鏡と、線状部材と、イオン化部材と、を有し、駆動部材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
MS内視鏡型では、検体採取と、イオン化部材との位置が離れているが、検体採取からイオン化までにかかる時間は数秒間であり、リアルタイム分析を実現できる。
-内視鏡-
内視鏡としては、生体内に挿入されて臓器の診断及び検査に用いられるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、国際公開第2014/007056号パンフレット、特開2013-52118号公報などを参照することができる。
-線状部材-
線状部材は、内視鏡の鉗子口から鉗子孔までの鉗子路に装着されることが好ましい。線状部材は、鉗子路に装着可能な大きさであるため、鉗子等の処置具と兼用することができ、線状部材で対象物のサンプリングを行った後、線状部材を取り外して、鉗子やクリップと交換して内視鏡として用いることができる。
線状部材は、サンプリング必要量に応じて、表面粗さを調節することが好ましい。同一の素材においても表面加工を施し、滑らかさや粗さを調節することで対応が可能である。
線状部材の材質、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、対象物に応じて適宜選択することができる。
線状部材の材質としては、金属線材、天然繊維、化学繊維などが挙げられる。
金属線材としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ピアノ線、コバルト系合金線材、擬弾性を示す合金線材(超弾性合金を含む)、スチール線、真鍮線、銅線、アルミニウム線などが挙げられる。
天然繊維としては、例えば、綿(コットン)、麻、マニラ麻、やし、いぐさ等の植物繊維、毛(ウール)、絹(シルク)ダウン、フェザー等の動物繊維などが挙げられ、これらを紡績した天然繊維糸が用いられる。
化学繊維としては、レーヨン、キュプラ、カゼイン繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリオレフィン系、ポリエーテルエステル系、ポリウレタン系等の合成繊維などが挙げられ、これらを紡糸した化学繊維糸が用いられる。
-イオン化部材-
イオン化部材は、イオン化法により、線状部材に付着した検体からイオンを生成する部材である。
イオン化法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、APCI(Atomospheric Pressure Chemical Ionization)法、EI(electron ionization;電子イオン化)法、CI(chemical ionization;化学イオン化)法、DEI(desorption electron ionization;脱離電子イオン化)法、DCI(desorption chemical ionization;脱離化学イオン化)法、FAB(fast atom bombardment;高速原子衝撃)法、FRIT-FAB(FRIT-fast atom bombardment;フリット高速原子衝撃)法、ESI(electrospray ionization;エレクトロスプレーイオン化)法、MALDI(matrix-assisted laser desorption ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法などが挙げられる。これらの中でも、APCI法、ESI法が特に好ましい。
-駆動部材-
駆動部材は、線状部材を一定方向に移動させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ローラと巻取りローラの組み合わせなどが挙げられる。
駆動部材による線状部材の移動スピードの調整は適宜行うことができ、例えば、線状部材による検体採取中は、採取スイッチをONにし、線状部材の移動スピードを低下させ、検体の採取終了後は、採取スイッチをOFFとすることで、線状部材の移動スピードを上げることにより、サンプリングからイオン化までにかかる時間を短く調整することができる(タイムラグを少なくすることができる)。
また、サンプリングからイオン化までの時間を利用して、検体を前処理することができる。前処理としては、例えば、除タンパク、塩除去などが挙げられる。
-その他の部材-
その他の部材としては、特に制限はなく、対象物に応じて適宜選択することができ、例えば、制御部材などが挙げられる。
制御部材としては、各部材の動きを制御できる部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
<リアルタイム分析手段及びリアルタイム分析工程>
リアルタイム分析工程は、サンプリング工程により生成したイオンを質量分析する工程であり、リアルタイム分析手段により実施される。
質量分析に用いる質量分析計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(直交型)飛行時間質量分析計、(リニア)イオントラップ装置、四重極質量分析装置、フーリエ変換質量分析装置などが挙げられる。
質量分析においては、イオン化されたサンプル(試料)を質量電荷比(m/z)の違いにより分離する。したがって質量分析装置からは質量電荷比を横軸にとり、縦軸にイオン強度をとったマススペクトルを表すことのできる基礎となるデータが生データとして出力される。
ここで、本発明の質量分析装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の質量分析装置の一例を示す概略図である。この図1の質量分析装置100は、サンプリング手段101と、リアルタイム分析手段102とを備えている。なお、図1中5はフレキシブルチューブ、6はステンレスチューブ、8は吸引装置である。
サンプリング手段101は、図2に示すように、針状部材1と、イオン収集部材2と、溶媒付与部材3とを有している。図2中、12は外筒、4は駆動スイッチである。この第1の実施形態では、針状部材1として、ステンレス鋼製の鍼灸針を用いている。
針状部材1は、リニアアクチュエータ9の作動によって、対象物に対して上下動可能とされている。
針状部材1が最も上方の位置(上位端)に移動すると、電源10から高電圧が印加され、先端1aからエレクトロスプレーが発生する。
針状部材1が最も下方の位置(下位端)に移動すると、対象物に接触乃至刺入することで検体が針状部材の先端1aに付着する。
針状部材1は、溶媒付与部材3に対して外側寄りの位置に設けられているが、溶媒付与部材3に対して中央の位置に設けてもよく、内側よりの位置に設けても構わない。
イオン収集部材2としては、内径1mm~5mmのイオン収集・輸送チューブ(帯電を防止するために内面に平滑処理が施されたフレキシブルな樹脂製)を用いており、吸引装置8の作動により、エレクトロスプレーで発生したイオンを吸引し、吸引されたイオンは質量分析計7に運ばれる。
針状部材の先端1aとイオン収集・輸送チューブの開口部2aとの間には電圧がかかっているので、発生したイオンはイオン収集・輸送チューブの開口部2aで吸引される。
図2中3は、溶媒付与部材としての溶媒供給管であり、少量(数μL/min~数十μL/min)の溶媒13が常に針状部材1に供給されている。この第1の実施形態では、溶媒として50%エタノールを用いている。これにより、針状部材の先端1aに捕捉された検体の乾燥を防止できる。また、溶媒流量を増やすことにより、洗浄効果を付与することもできる。
図2中4は、駆動スイッチであり、この駆動スイッチ4を押すと、リニアアクチュエータ9が作動し、針状部材1が下がり、針状部材の先端1aが対象物に接触乃至刺入する。駆動スイッチ4の押圧を解除すると、針状部材1が上位端に移動する。
図2中11は、検体の採取時に対象物の表面と当接するガイド部材である。この第1の実施形態では、ガイド部材として、ステンレス鋼製のものを用いている。
ガイド部材11を設けることにより、図4に示すように、対象物14の表面から検体を直接サンプリングすることができ、操作性、安全性、及び保護性が向上する。
図1中7は、質量分析計であり、サンプリング手段101により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第1の実施形態では、質量分析計として、四重極質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ質量分析計、又は飛行時間型質量分析計を用いている。
PESIでは、リニアアクチュエータ9と電源10とはコントローラー(不図示)により同期をとって制御しているが、サンプリングしていない時のみに電源から電圧をかける構成とすることにより、コントローラーの使用を省略することができる。これにより、装置の簡略化が図れると共に、感電を防止でき、安全性が向上する。
次に、図3Aから図3Cを用いて、サンプリング及びイオン化の動作について説明する。
図3Aに示す状態で、駆動スイッチ4を押すと、図3Bに示すように針状部材1が下がり、針状部材1の先端1aが対象物に接触乃至刺入する。駆動スイッチ4の押圧を解除すると、図3Cに示すように、針状部材1が元の位置に戻ると、電圧が印加され、イオンが発生する。発生したイオンはイオン収集部材2としてのイオン収集・輸送チューブの開口部2aから直ちに吸引され、質量分析計7に運ばれる。この際、イオン収集・輸送チューブの開口部2aが針状部材の先端1aと近接した位置となるので、生成したイオンの吸引を効率よく行うことができる。
第1の実施形態の質量分析装置を用い、対象物としてヒト肝臓のサンプリング及びイオン化、更に質量分析を行った結果、約1秒間後にマススペクトルを得ることができる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態の質量分析装置の一例を示す概略図である。図6は、図5の質量分析装置における内視鏡21のA部分の拡大図である。
この図5の質量分析装置200は、サンプリング手段201、及びリアルタイム分析手段202を有する。
サンプリング手段201は、内視鏡21と、内視鏡の先端部21aに一の方向に移動可能に装着され、対象物の表面に当接した状態で、移動させることにより検体を採取する線状部材22と、線状部材22に付着した検体からイオンを生成するイオン化部材26と、線状部材22を一の方向に移動させる駆動部材としての搬送ローラ24、巻取りローラ23とを有する。
リアルタイム分析手段202は、質量分析計25を有しており、サンプリング手段201により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第2の実施形態では、質量分析計として、四重極質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ質量分析計、又は飛行時間型質量分析計を用いている。
内視鏡21としては、人体に存在する腔所(消化管、耳鼻咽喉など)等の治療や検査を行う処置部に挿入されて、体内の観察、静止画や動画の撮影、生体組織の採取などの処置等を行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、図7に、本発明で用いられる内視鏡の一例を示す。この図7の内視鏡21は、CCDセンサを用いて検査部位の画像を撮像(撮影)して、検査部位の観察、動画や静止画の撮影を行う、いわゆる電子スコープ型の内視鏡である。この内視鏡21は、挿入部512、操作部514、ユニバーサルコード516、LGコネクタ518、及びビデオコネクタ520を有する。
挿入部512は、体腔内等の検査部位に挿入される、長尺な部位で、先端(挿入側の先端=操作部514と逆端)の先端部524と、アングル部526と、軟性部528とを有する。
操作部514は、内視鏡21の操作を行う部位である。操作部514には、鉗子孔27に連通する、鉗子等の処置具を挿入するための鉗子口532、鉗子孔27を介して先端部524からの吸引を行うための吸引ボタン534、送気送水孔574を介して先端部524から検査部位に送気や送水を行うための送気送水ボタン536等が配置されている。
操作部514には、アングル部526を左右方向に湾曲させるLRツマミ538、同上下方向に湾曲させるUDツマミ540、アングル部526を湾曲状態で保持するためのLRブレーキ542及びUDブレーキ546も設けられている。
LG(Light Guide)コネクタ518は、内視鏡を使用する施設における、送水手段、送気手段、吸引手段等と、内視鏡21とを接続するための部位であり、内視鏡21と施設の送水(給水)手段と接続するための送水コネクタ550、送気手段と接続するための通気コネクタ552等が配置される。LGコネクタ518には、照明光源と接続するためのLG棒554や、電子メスを使用する際にSコードを接続するS端子等が設けられている。
図8に、内視鏡の先端部の正面図を示す。内視鏡21の先端部524は、先端部本体560と、先端部本体560の先端を覆う略円筒状の先端キャップ562とから構成されている。
先端部本体560には、撮像ユニット568及び照明レンズ570が組み込まれている。更に、先端部本体560には、鉗子口532に連通する鉗子孔27、送気及び送水を行うための送気送水孔574等が形成される。
線状部材22は、内視鏡21の鉗子口532から挿入し、鉗子孔27で検体を採取可能に装着される。
なお、線状部材22を有する第2の実施形態の質量分析装置200は、内視鏡21から脱着可能である。
図9に示すように、線状部材22は、鉗子孔27のガイド31内を矢印方向に移動可能に設けられており、線状部材22が対象物32表面に当接した状態で、移動することにより、線状部材22に検体が付着するので、サンプリングが確実に行われる。サンプリング後の線状部材22は、イオン化部材26まで、移動し、イオン化される。この第2の実施形態では、線状部材22としては、綿糸を用いている。
駆動部材としての搬送ローラ24と巻取りローラ23による線状部材22の移動スピードは適宜調整することができる。例えば、検体採取中やイオン化時は、線状部材の移動スピードを低下させ、検体の採取終了後は、移動スピードを上げることにより、サンプリングからイオン化までにかかる時間を短く調整することができる。
次に、図5及び図6に示すように、線状部材22は、内視鏡21の鉗子口532から挿入され、駆動手段としての搬送ローラ24及び巻取りローラ23を駆動させることにより、鉗子孔27で対象物の表面に当接した状態で、移動させることにより検体を採取する。その後、線状部材22は、折り返して移動し内視鏡21の鉗子口532から出て、イオン化部材26により、イオン化される。イオン化部材26により生成したイオンは、質量分析計25により、リアルタイム分析される。イオン化後の線状部材22は巻取りローラ23に巻き取られる。この第2の実施形態では、イオン化部材26としては標的分子によってESIあるいはAPCIを切り替えて用いている。
図10は、サンプリング手段の一例を示す写真であり、線状部材は矢印方向に移動しつつサンプリングを行う。
図11は、サンプリング手段の先端部分の一例を示す写真であり、線状部材としては綿糸を用いている。
図12は、ESI法によるイオン化部材及び質量分析計の一例を示す写真である。
図13は、APCI法によるイオン化部材及び質量分析計の一例を示す写真である。
第2の実施形態の質量分析装置を用い、対象物としてヒト口腔粘膜及び、生きたマウスの肝臓のサンプリング及びイオン化、更に質量分析を行った結果、数十秒間以内にマススペクトルを得ることができる。
(解析装置及び解析方法)
本発明の解析装置は、サンプリング手段と、リアルタイム分析手段と、解析手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の解析方法は、サンプリング工程と、リアルタイム分析工程と、解析工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の解析方法は、本発明の解析装置により好適に実施することができ、サンプリング工程はサンプリング手段により行うことができ、リアルタイム分析工程はリアルタイム分析手段により行うことができ、解析工程は解析手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
本発明の解析装置及び解析方法における前述のサンプリング手段及び前述のサンプリング工程、並びに前述のリアルタイム分析手段及び前述のリアルタイム分析工程は、本発明の質量分析装置及び質量分析方法における前述のサンプリング手段及び前述のサンプリング工程、並びに前述のリアルタイム分析手段及び前述のリアルタイム分析工程と同様であるため、その説明を省略する。
本発明の解析装置及び解析方法によると、現場で低侵襲的に検体を採取でき、リアルタイムで質量分析及びデータ解析が行えるので、例えば、生きた動物のリアルタイム代謝解析、術中の迅速な診断、蓄積データとの比較による統計的なアプローチなどから、単純な良し悪しの2値判定ではなく、悪性度、組織型等の複雑な判定をリアルタイムで実現することができる。
<解析工程及び解析手段>
解析工程は、リアルタイム分析工程で得られたマススペクトルを解析する工程であり、解析手段により実施される。
解析工程は、測定データ入力処理と、最良時間帯検出処理と、代表マススペクトル作成処理と、を含み、更に必要に応じてその他の処理を含む。
解析手段は、測定データ入力部と、最良時間帯検出部と、代表マススペクトル作成部と、を有し、更に必要に応じてその他の部を有する。
<測定データ入力処理及び測定データ入力部>
測定データ入力処理は、質量電荷比、イオン強度及び測定時間の三次元測定データを入力する処理であり、測定データ入力部により実施される。
三次元測定データとは、質量分析部(本発明の質量分析装置)により得られる一般にスキャンデータといわれるものであり、所定時間(スキャニングインターバル)ごとに質量電荷比とイオン強度との関係を示すデータ(スペクトルとして表現可能なデータ)が得られる。したがって、上記測定時間はスキャン回数で表現され得る。
三次元測定データは、一般的には、時間軸(スキャン回数軸)上でイオン強度総和を表すデータ(クロマトグラム)に変換される。このクロマトグラムには、イオン強度を測定データ中の全質量電荷比にわたって積算した全イオン強度(TIC)、質量電荷比の特定の範囲にわたってイオン強度を積算した隔合イオン強度(MIC)、特定の質量電荷比のイオン強度を示す単一ピークイオン強度(EIC)などがある。MICにおける質量電荷比の特定の範囲、EICにおける特定のピークはユーザが指定するようにしてもよいし、最大値を示す範囲又はピークを自動的に決定してもよい。これらの範囲や特定のピークを変化させて試行錯誤してもよい。
<最良時間帯検出処理及び最良時間帯検出部>
最良時間帯検出処理は、入力測定データの指定された質量電荷比に関し、イオン強度の総和が最大となる時間帯を算出する処理であり、最良時間帯検出部により実施される。
<代表マススペクトル作成処理及び代表マススペクトル作成部>
代表マススペクトル作成処理は、検出された最良時間帯の入力測定データのイオン強度に基づいて代表マススペクトルを作成する処理であり、代表マススペクトル作成部により実施される。
最良時間帯検出処理及び最良時間帯検出部並びに代表マススペクトル作成処理及び代表マススペクトル作成部により、最も安定し、サンプルの特徴を最もよく表していると考えられる時間帯の測定データに基づいて、代表マススペクトル(一般には、質量電荷比を横軸にとり、縦軸に、上記時間帯におけるイオン強度の和(又は平均値)がとられる)が作成されるので、その後の適切な解析が担保される。
代表マススペクトルを作成する過程で算出される上記TIC、MIC、EIC(クロマトグラム)やこれらから得られる代表スペクトルを表示装置に表示すると、ユーザはこれをみながら、上記の質量電荷比の範囲(MICの場合)、特定のピーク(EICの場合)、上記の時間帯、その他のパラメータを適宜変更することができる。
解析装置は、入力された測定データの中から、最良時間帯を検出するための対象となるデータ範囲を定める条件を設定する条件設定部を更に有することが好ましい。
また、解析装置は、検出された最良時間帯及び作成された代表マススペクトルを表示するマススペクトル表示部を更に有することが好ましい。
更に、解析装置は、作成された代表マススペクトルにラベル情報を付加して記憶するマススペクトル蓄積部を更に有することが好ましい。
質量分析部(本発明の質量分析装置)から出力される測定データには、日付と識別符号(ID)程度が付加されているにすぎない。そこで、作成した代表スペクトルに、ユーザが理解可能、理解容易なより豊富なラベル情報を付加して記憶しておくと、後におけるマススペクトルの管理、編集(グルーピングなど)、読出しを容易に行うことができるようになる。ラベル情報はユーザが理解できるものであれば何でもよいが、ユーザの組織、計画、行為に関する情報、サンプルに関する情報、サンプルを提供した人、物、場所、日時、時間、質量分析部における測定条件、測定環境等に関する情報などが含まれる。
解析装置は、作成した(又は既に記憶されている)マススペクトルの評価機能を持つ。この評価機能は、上述した代表マススペクトルの自動(半自動)作成機能を持つ解析装置に備えるようにしてもよいし、代表スペクトル自動(半自動)作成機能を持たない解析装置に備えるようにしてもよい。
マススペクトルの評価のためには、評価の対象となるマススペクトル群(1つのマススペクトルも含む)に加えて、評価の基準となる内標を作成するためのマススペクトル群が存在することが前提である。これらのマススペクトルを記憶しているマススペクトル蓄積部が存在する。評価の対象となるマススペクトルは、内標作成のためのマススペクトル群の記憶部とは別の記憶部(例えば、コンピュータのワークエリア)に記憶されていてもよい。これらの記憶装置をすべて含めてマススペクトル蓄積部という。
解析装置は、多数の作成されたマススペクトルを蓄積しているマススペクトル蓄積部、マススペクトル蓄積部に蓄積されているマススペクトルから内標作成のための特定の第1群のマススペクトルを指定する第1の指定部、指定された第1群のマススペクトルに基づいてイオン強度が高くかつ変動の少ない(イオン強度が所定値より高く(又は以上)、かつその変動が所定範囲以内の)1又は複数のピークを選定する内標候補作成部、マススペクトル蓄積部に蓄積されているマススペクトルから評価対象とすべき第2群のマススペクトル(1つのマススペクトルも含む)を指定する第2の指定部、及び内標候補作成部によって作成された内標候補のうちの1又は複数のピークを内標として第2群内の各マススペクトルの良否を判定する良否判定部を備えているものである。
第1群のマススペクトルは、ユーザによって、又は解析装置によって良好なものと判定されたマススペクトルの集まりであることが好ましい。特定の1又は複数のピークが内標として定められると、第2群のマススペクトルの対応するピークが内標を基準として、イオン強度が所定値以上でかつその変動が許容範囲内にあればそのマススペクトルは良好なものと判定される。それ以外のものは不良である。良好と判定されたマススペクトルは、管理、編集や後述する統計解析の対象として用いることができる。不良と判定されたものは再度、上述した代表マススペクトルの作成に戻って再作成が行なわれることが好ましい。
次に、統計解析機能について述べる。上述した代表マススペクトルとマススペクトル評価機能の両方を備えている解析装置、いずれか一方の機能を備えている解析装置、いずれの機能も備えていない解析装置のどれに対しても、以下に述べる統計解析機能を設けることができる。
統計解析には、その主なものとして、有意差検定、次元縮約、機械学習及び検証がある。そして、有意差検定にも具体的には多くの種類のものがあり、同様に次元縮約、機械学習、検証のそれぞれにも多くの種類のものが既に開発されている。
まず、有意差検定機能を備えている解析装置は、多数のマススペクトルのデータを記憶するマススペクトル蓄積部、複数種類の有意差検定法を選択可能に表示するとともに選択された有意差検定法についての所望の有意水準を入力可能な統計解析法入力部、マススペクトル蓄積部に蓄積されているマススペクトルから、選択された有意差検定法を適用すべきデータセット(特定の複数のマススペクトルの集まり)を指定するデータセット指定手段、及び統計解析法入力部に表示される複数種類の有意差検定法を実行するプログラムルーチンを有し、選択された有意差検定法を指定されたデータセットに対して実行する統計解析実行部を備え、この統計解析実行部は、群間で有意差があると判断されたピークを選出するものである。
次に、機械学習機能をもつ解析装置は、複数種類の機械学習法を選択可能に表示する統計解析法入力部、統計解析法入力部に表示される機械学習法を実行するプログラムルーチンを有し、選択された機械学習法を、所定のデータセットに対して、実行する統計解析実行部を備えるものである。
機械学習法は、複数種類の機械学習法を選択可能に表示するとともに、選択された機械学習法の入力を受付け、表示される機械学習法を実行するプログラムルーチンのうち、選択された機械学習法に関するプログラムルーチンを、所定のデータセットに対して、実行するものである。
このようにして、ユーザは、複数の機械学習法の中から所望の1つを選んで、学習を実行させることができる。ユーザは、複数の学習法を選んで、その結果を比較することができる。この比較には後述する検証法を用いることができる。
機械学習の対象となる上記所定のデータセットには、幾種類のものがある。
その一つ目は、多数のマススペクトルデータを記憶するマススペクトル蓄積部から、選択すべき学習法を適用すべきデータセットを指定して選択するものである。
その二つ目は、上述した有意差検定法により有意差ありと判定されたピークに学習法を適用するものである。
その三つ目は、マススペクトル蓄積部から選択したデータセット又は有意差検定により有意差ありと判定されたデータを、所定の次元縮約法により縮約して、縮約されたスコアのデータに対して学習法を適用するものである。
縮約法もまた、複数種類の縮約法を表示してその中から一つ又は複数個をユーザに選択させることができる。特に、縮約法と機械学習は関連するので、複数種類の縮約法と複数種類の学習法を表示し、ユーザによって選択されたものを、表示画面上で紐付けて明示するとよい。
少なくとも一つの交差検証法を選択可能に表示し、選択された機械学習法の学習結果を、選択された交差検証法により検証するようにするとよい。
交差検証法も複数種類表示してユーザに選択させるとよい。
有意差検定法、機械学習法、縮約法、交差検証法を複数種類ずつ選択可能に表示し、ユーザによってこれらの組合せを選択させて、各組合せごとに検証法によって検証してどの組合せが最適かを判断することもできる。コンピュータにすべての(又はデフォルトで選んで)組合せを実行させてどの組合せが最良であるかを検証法により検証させることもできる。その結果は表示される。このようにして、ユーザの主観によらずに客観的な組合せを選ぶこともできるし、判別可能なピークの提示等も可能となる。
ここで、図14は、本発明の解析装置の一例を示すブロック図である。この図14の解析装置は、以下に説明するようにプログラムされたコンピュータシステムによって実現される。
解析装置320は、機能的に分けると、コンピュータシステムの中枢で、代表マススペクトルの作成、内標に基づくマススペクトル評価、ラベリング、さまざまな統計解析処理、検証処理等を実行する処理部321、質量分析部310で得られたマススペクトルデータを入力する入力部322、解析処理等の処理結果、途中経過等を出力するとともに、ユーザインターフェイスとして用いられる出力部323、及び記憶部326から構成されている。なお、質量分析部310は、本発明の質量分析装置に該当する。
入力部322は、キーボード、マウス等の通常の入力装置に加えて、USBメモリ、CD-ROM等に記憶されたデータを読込む媒体リーダ、有線、無線を問わず通信によりデータ(命令を含む)を受信する通信装置等を含む。
出力部323は、入力部322と一部を共通にする。出力部323は、各種データ(マススペクトルを含む)のグラフ、その他のデータを見易い形態で表示するとともに、ユーザインターフェイスとして各種入力、設定画面を表示する表示部324、各種データや処理結果を印刷して出力するプリンタ325を有し、更に明示的な図示は省略されているが、各種データ等を記憶媒体に書込む媒体ライタ、通信(送信)により出力する通信装置(入力部322の通信装置と兼用してもよい)を有する。
記憶部326は、入力されたマス(質量)スペクトルデータの一時格納、代表マススペクトルデータの蓄積(図15に示すデータベース)、各種処理(図16、図17に示され、後述する代表マススペクトルの手動生成、代表マススペクトルの自動作成、データの編集、管理、マススペクトルの評価、統計解析処理、検証処理等)のプログラムの格納等に用いられるとともにワークエリアを提供する。記憶部326は、半導体メモリ、ハードディスク等により実現される。
処理部321は、コンピュータの本体部分であり、記憶部326に格納された各種プログラムにしたがって、入力部322を通して入力されたマススペクトルデータに対して図16、図17に示す処理を実行する。このとき、必要な情報(ユーザインターフェイス画面)を表示部324に表示したり、処理の途中のデータ、処理結果のデータを記憶部326に記憶する。
図15は、質量分析部310から得られる測定データから始まり、記憶部326に作成されるデータベースまでを示すデータ構造図である。
図16及び図17は、記憶部326に格納されたプログラムにしたがって、処理部321が実行する処理の手順を表すフローチャートである。これらの図面は、以下の説明の中で逐次参照される。
処理部321は、これらのフローチャートで表される機能を実現する手段を有する。
なお、解析装置320は、スキャン機能をもつ多くの種類の質量分析部310から得られる測定データに適用することができる。
図18は、質量分析部310から出力されるテキスト形式の生データ(テキストデータ)の一例を示している。これは一つのサンプルについて、スキャン法により、一定時間間隔で(一例として0.05秒から0.5秒間隔で)、低質量側から高質量側にスキャニングを繰返すことにより得られたものである。各スキャニングにより得られたイオン強度(任意目盛、以下同じ)データが、質量電荷比(m/z)の値(一例として700~800の範囲のみ示されている)に対応して、スキャン1、2、3、4等の列に数値として並べられている。これは、質量電荷比(m/z)、イオン強度及び測定時間(スキャニング順を表すデータ)の3次元データ(テキストファイル)である。
図19は、図18に示すデータを、スキャンごとにマススペクトルの形で表現したものである。横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸はイオン強度を示し、奥行方向(矢印で示す)は、時間又はスキャン回数を表している。
解析装置320の入力部322は、質量分析部310からこのような生データを取得する(図16のS11)(測定データ入力部)。質量分析部310からデータを送信し、入力部322がこれを受信してもよいし、質量分析部310においてデータをUSBメモリのような記憶媒体に格納し、入力部322がこれを読取ってもよい。
図20は、上述の生データを用いたTIC、MIC、又はEIC(次に説明する)のクロマトグラムを示している。横軸は時間(スキャン回数)、縦軸はイオン強度である。縦軸のイオン強度はTIC、MIC、EICによって異なる値をとるが、図20は、EICのものと理解されたい(イオン強度は任意目盛であるから、その値そのものに大きな意味はないので、TIC、MIC、及びEICのいずれのものと考えても支障はない)。クロマトグラムは、イオン強度の総和(次に述べるように、何らかの形でまとめられた、又は抽出された)を経時的に(時間軸に沿って、即ちスキャンの順序に並べて)描画したものである。
TICは、合計又は全イオン強度(又は電流)(Total Ion Current)の略称であり、取得したマススペクトルに含まれるすべてのピークの(データが表す)(すべての質量電荷比に対応する)イオン強度の合計を意味する。
TICCは、TICのクロマトグラム(Chromatogram)(TICを経時的に描画したもの)を表す。
MICは、加算(又は融合)イオン強度(又は電流)(Merged Ion Current)の略称であり、特定の質量電荷比(以下、単にm/zという)範囲におけるピークの(データが表す)(m/zに対応する)イオン強度の合計を意味する。MICCはMICのクロマトグラムを表す。
EICは、単一(又は抽出)ピークイオン強度(又は電流)(Extracted Ion Current)の略称であり、特定の(m/zに対応する)ピークのイオン強度を表す。EICCはEICのクロマトグラムである。
解析装置320の表示部324には、代表マススペクトルの作成に関してモード選択画面(図示を省略)が表示され、ユーザはこのモード選択画面にしたがって、手動モードか、自動モードを選択する。手動モードが選択されたときには処理部321は、次に述べる代表マススペクトルの手動生成処理(図16のS12)を実行する。
手動生成処理では、ユーザによってTIC、MIC、及びEICのいずれかが選択される。TICの場合には、取得した全m/z範囲の生データが用いられるが、MICの場合にはユーザによって使用するm/zの範囲が指定され、EICの場合には特定のピークが指定される。このようにしてユーザによって指定されたTIC、MIC又はEICの(図20に示すような)クロマトグラムが、処理部321によって作成され、表示部324に表示される。
ユーザは、このクロマトグラム上において、最も良く分析結果を表しているであろうと考えられる時間範囲を、カーソル等の入力装置(入力部322に含まれる)を用いて入力する。時間範囲は、例えば、下限PLと上限PHを指定することにより定まる。時間範囲が定まると、処理部321は、その時間範囲内において各スキャンのマススペクトルの同じm/z値をもつピークごとに加算して(又は平均値をとり)、代表マススペクトルを作成し、表示部324に表示する。作成された代表マススペクトルの一例が図21に示されている。代表マススペクトルデータは質量電荷比(m/z)とイオン強度の2変数からなるテキストデータであり、記憶部326のデータベースに格納される。
代表マススペクトル作成に関するモード選択画面において、ユーザが自動を選択すると、図22に示すような、条件設定画面が表示部324に表示される(図16のS131)(条件設定部)。この画面を用いてユーザは所望の条件を設定することができる。
条件設定画面において、対象ファイルはS11で質量分析部310から取得した生データ(測定データ)を格納しているファイルであり、質量分析部310によって割り当てられたファイル名がボックス内に表示される。
TIC閾値、MIC閾値、及びEIC閾値は、それぞれTICC、MICC、EICCにおいて雑音等を除去するための閾値であり(図22参照)、閾値を超える値をもつデータのみが以下の演算で用いられる。ユーザは、TIC、MIC、及びEICのうちで演算に使用したいものにチェックを入れて選択し(図22に示すように、すべてにチェックを入れてもよい)、選択したものについて閾値を入力する。閾値の入力がなければデフォルト値(規定値)が用いられる。
MICは、特定のm/z範囲におけるイオン強度の合計であるから、MICが選択された場合には、m/zの範囲の入力が要求される。また、EICは特定のピークのイオン強度を表すものであるから、EICが選択された場合には、特定のピークのm/z値(指定スペクトル)の入力が必要である。
以上の入力(即ち、条件設定)が終了し、ユーザが「実行」ボタンを押すと(クリックすると、以下同じ)、TIC、MIC、及びEICのうち選択された(チェックを入れることにより指定された)ものに関するクロマトグラムについて、下記式(1)を求める演算が処理部321によって実行される。
Figure 0007025621000001
前述の式(1)はS(t)のうちの最大のものを求めることを意味し、S(t)はTICの場合、下記式(2)で与えられる。
Figure 0007025621000002
MIC、及びEICの場合には、TICに代えてMIC、EICを使えばよい。
τはTICの横軸、即ち、時間を表す。前述の式(2)はτがtからt+Δtまでの時間幅においてTICの総和を求めることを意味し、前述の式(1)によってこのクロマトグラムの総和が最大となるt(又はt+Δt)が示す時間(時刻又はサンプル時点)又は時間帯が求められる。Δtは前もって設定しておいてもよいし(例えば、数秒~数十秒程度)、条件設定画面(図22参照)においてユーザに入力させてもよい。
前述の式(1)及び(2)の演算によって、クロマトグラムにおけるイオン強度の総和が最も高い時間帯が求められる(図16のS132)(最良時間帯検出部)。イオン強度の総和が最も高いということは、マススペクトルが最も安定し、かつサンプルの特徴を最もよく表していると考えられる。
前述の式(1)、(2)を満たすt~t+Δtの時間帯のイオン強度データを用いて代表マススペクトルが、TIC、MIC、及びEICのうち選択されたものについて作成される(図16のS133)(代表マススペクトル作成部)。そして、図23に示す画面が表示される。
図23に示す画面において、TIC、MIC、及びEICのそれぞれについて(これらのすべてについて選択されたものとする)、そのクロマトグラムが左側に表示され、各クロマトグラムにおいて、前述の式(1)、(2)を満足する時間帯が破線の縦に長い直方形で示されている。図23の画面の右側には、それぞれ、前述の式(1)、(2)を満足する時間帯のイオン強度データの質量電荷比m/zごとの総和(又は平均値)によって作成された代表マススペクトルが示されている(マススペクトル表示部)。なお、図23においては、代表マススペクトルが単に代表スペクトル又はスペクトルと表記されている。またマススペクトルが単にスペクトルと表記されている。
これらの代表マススペクトルのうちいずれか一つが質量分析されたサンプルを最も良く表すものとして記憶部326に格納される。この代表マススペクトルは質量電荷比、イオン強度の2変数からなるテキストデータである。図23において、ユーザは、各クロマトグラムの左側のボックスに、記憶部326に格納する一つを「採用するスペクトル」として選択すべきことが求められる。図23では、ユーザはMICにチェックを入れて選択している。なお、後述する代表マススペクトルの再作成等のためにバイナリ形式のデータも保存される。チェックボタンについては後述する。
代表マススペクトルの作成をやり直す場合には、図22に示す条件設定に戻って、閾値やm/z範囲、指定スペクトル、要すれば時間帯Δtの値を再入力することになる。
上述のようにして、処理部321において作成された一つのサンプルについての代表マススペクトルは記憶部326のデータベースに登録される。この際、データの管理、編集を簡便に行うことができるようにするために、測定条件情報や検体情報についてのラベルを付与する。このラベルはデータの集まりがヒエラルキー構造(階層構造)をもつように作成されることが好ましい。この実施例では、最も上位のラベルはプロジェクト名である。
そこで、表示部324の表示画面には、図24に示すようなプロジェクト名の選択画面が表示される。ユーザはプルダウン方式で表示されるプロジェクト名の中からいずれかを選択して入力する。ここではプロジェクト名として「ヒトがん検体」が選択されたものとする。そして、ユーザは「登録」ボタンを押す(クリックする)。
すると、図25に示すように、ラベル情報を入力する画面が表示部324に表示される。プロジェクト名は既に入力されたものである。ラベル情報としては、ユーザにとって分りやすく、検体の由来、属性、特性等を端的に表すものが好ましい。この実施例では、ラベルには、ファイル名、検体を提供した人の性別及び年齢、並びに検体の疾患名、ステージ(進行程度)及び組織型が用いられている。プロジェクト名を、当然、ラベル情報に含ませてもよい。また、測定条件情報を加えてもよい。そして、これらの内容が図24に図示のように入力され、「蓄積」ボタンが押されると、この代表マススペクトルデータは入力されたラベル情報を伴ってデータベースに格納される(図16のS141)(マススペクトル蓄積部)。
ここで、図25を参照して、データ構造について説明する。
質量分析部310における測定(質量分析)により得られる一つのサンプルについての測定データd1は、質量分析部310によって生データのフォーマットが異なるので、テキスト形式のデータd2として質量分析部310から解析装置320に与えられる。このマススペクトルデータには、質量分析部310、又はユーザが付与したID(識別符号)が付けられている。
解析装置320では、上述した代表マススペクトルの手動生成、自動生成の処理(図16の、S12、S13)において、マススペクトルを表示するために、上記テキストデータはバイナリ形式のデータd3に変換される。代表マススペクトルデータ(テキスト形式)d4が得られると、ラベル情報等が入力され、代表マススペクトルデータに質量分析部310が付与したIDに代えて、又は加えてラベル情報が付加される(図16のS141)。そして、リレーショナルデータベース(RDB)構築用テキストファイルへのデータ変換が行われて、プロジェクトごとにデータベースに蓄積される。このデータベースを特に図15に符号327で示す。
このようにしてマススペクトルデータベース327に蓄積された代表マススペクトルデータは、さまざまな目的のために使用(利用)される。そのうちの一つが後述する統計解析処理であり、もう一つが次に説明する内標検索処理である。これらの各処理のために、蓄積されたマススペクトルデータ中から、データのあるグループ(データセット)が選択される。これが図15に符号328で示す選択されたマススペクトルデータセットのフォルダである。
一例として、統計解析を行うために、既にマススペクトルデータベース327に蓄積されているマススペクトルデータの中から特定のグループに属するものを選択するための表示画面の例が図25に示されている。プロジェクト名(ヒトがん検体)と、グループを定めるラベル情報の範囲、即ち、性別(指定無し)、年齢(50~80)、疾患(肝がん)、ステージ(1~3)、組織型(原発HCC)がユーザによって入力される。そして「選択」ボタンを押すと、マススペクトルデータベース327が検索され、上記のプロジェクト名とラベル範囲を満足するマススペクトルデータが抽出される(図16のS142)。抽出されたデータのラベル情報が図26の下段に示すように一覧表の形で表示される。
「エクスポート」ボタンを押せば、エクスポートされる(図16のS143)。即ち、抽出されたマススペクトルデータはデータベースから記憶部326の所定の記憶場所に転送され、統計解析処理が使用できる状態となる(マススペクトルデータベース328の作成)(データセット指定部)。
このように、すべての代表マススペクトルデータにラベル情報を付加しておくことにより、ユーザが理解できる用語、概念(ラベル)を用いてデータのグルーピング、検索、抽出(選択)等が容易となる。
先に説明した代表マススペクトルの作成処理(図16の、S12、S13)において(特に、自動作成処理(図16のS13)において)作成されたマススペクトルがすべて品質(クオリティ)の高いものとは限らない。作成した、又は既にマススペクトルデータベース327に蓄積されたマススペクトルの品質が次のようにして評価される。この評価処理はメニュー画面(図示を省略)において指定することにより実行されるが、図23の表示画面において「チェック」ボタンを押してもこの評価処理に進むことができる。
まず、評価のための指標(これを内標と呼ぶ)が決定(検索、選定)される。次に、この内標を用いて、特定のマススペクトルの良否が判定(弁別)(個別スペクトル判定)されるか、又は特定のグループ内のマススペクトルの良否が判定(弁別)(フォルダ内スペクトル一括判定)される。
内標の決定は蓄積された既存の多数のマススペクトルデータを用いて行われる。内標の決定に用いられるマススペクトルデータは、過去に行われたマススペクトルの評価において良好マススペクトルと判定された群、又はユーザが目視で良好マススペクトルと判定されたものの集まりを用いることが好ましい。
まず、図27に示す表示画面において、内標の決定に用いる多数のマススペクトルデータが指定され、かつ条件が設定される。ここでは、選択されたマススペクトルデータセットフォルダ(図15の符号328)の一つが対象フォルダとして指定される(第1の指定手段)。ラベル情報を入力して対象フォルダ等を特定することもできる。また、条件として、検出強度の下限値と変動係数の上限値が入力される。マススペクトルは特定のm/z値に対応して多数のピークを有する。内標はこれらのピークのうちの安定して現われる(変動の少ない)一つ又は複数を選択することにより定められる。即ち、内標は特定の安定したピークである。検出強度下限値は、内標として採用するピークのイオン強度(平均強度)の下限値を定めるものである。即ち、この下限値よりも平均強度の高い値をもつピークが内標の候補となりうる。変動係数は、特定のm/z値に対応するピークの値(イオン強度)の集合が正規分布にしたがうとして、分散を平均値で除した値である。入力された変動係数上限値を下廻る変動係数をもつピークが内標の候補となりうる。これらの2つの条件は、AND条件である。
対象ファイルが特定され、検出強度下限と変動係数上限の条件が入力され、「実行」ボタンが押されると、対象フォルダ内の全マススペクトルについて、各m/z値に対応するピークの値の集合に関してその変動係数と平均イオン強度とが算出され、得られた結果のうち上記条件を満たすものが、内標候補として、図28の上半部に示されるように、変動係数の小さい順に並べて表示される(内標候補作成部)。表示されるのは、順位、変動係数、m/z、平均イオン強度である。ユーザはこの内標候補の中から、マススペクトル評価に用いる内標としてふさわしいものを選択し、対応するボックスにチェックを入れる。図28の例ではm/zが208のピークの内標として選択されている。ユーザによって選択されない場合には、変動係数の最も小さいピークが内標として自動選定される(図16のS151)。
この内標を用いたマススペクトルの評価は次の考え方による。即ち、内標は上述のようにマススペクトルにおいて安定して現われるピークであるから、評価の対象となるマススペクトルにおいても、対応するピーク(m/z値が同じピーク)は、同程度のイオン強度をもつことが期待できる。そこで、一例として、内標であるピークの平均イオン強度を中心として上下に許容範囲を設定し、評価対象のマススペクトルの対応ピークのイオン強度がこの許容範囲内にあれば良好マススペクトルと判定し、許容範囲外であれば不良マススペクトルと判定する。
図28の画面の下半分において、評価の対象となるマススペクトルデータファイルが含まれるフォルダがユーザによって入力される。上述したラベル情報によって評価の対象となるマススペクトルデータを指定してもよい(以上、「フォルダ内スペクトル一括判定)。また、図16のS13の代表マススペクトル自動作成処理で作成した1つのマススペクトルデータの良否を判定してもよい(個別スペクトル判定)(以上、第2の指定部)。この個別スペクトル判定は、代表的には図23において、「すぐにマススペクトルのチェックを行う場合にはこちらを押して下さい」という文の次にある「チェック」ボタンが押されたときに行われるものである。
「実行」ボタンが押されると、上記内標を基準として、対応するピークのイオン強度が内標の平均イオン強度の上下の許容範囲内にあるかどうかが判断され、許容範囲内にあれば良好マススペクトル、許容範囲外の場合には不良マススペクトルと判断される(図16のS152)(良否判定手段)。図28の画面の最下段では、判定された良好スペクトルと不良スペクトルのファイル名が列挙されている。
内標を決定するために用いる基礎マススペクトルデータ群(図27で指定された対象フォルダ)と、良否判定の対象のマススペクトルデータとは同種の検体についての質量分析から得られたものである。同種の検体とは、肝がんのように同じ疾病の細胞、特定の動物又はヒトの肝臓のように同じ臓器、同じ部位の細胞、同種の生体の一部等、同じm/z値のピークが出現することが期待される(異なるm/z値のピークが含まれていてもよい)ものである。内標として決定されたピークを用いたときに、良好スペクトルと判定されるものが不良スペクトルと判定されるものに比べて少ない場合には、内標が正しくない場合もありうるので、内標の決定処理をやり直したり(基礎マススペクトルデータを変えるなど)、順位が2番目以降の変動係数をもつピーク(m/z値)を内標とするなど、試行すればよい。複数の内標(ピーク)を決定した場合には、各内標を基準とした良否判定結果のAND論理又はOR論理により最終判定結果を得るようにすることができる。
個別スペクトル判定において、作成したマススペクトルが不良と判定されたときには、代表スペクトルの自動作成(図16のS13)に戻り、図22の画面において閾値を変更したり(閾値による条件を緩和する)、図23の画面においてMICではなく、TIC又はEICを選択したりすることにより代表マススペクトルの作成のやり直し(再作成)を行うことができる。
さまざまな総計解析手法があるが、ここでは4つに大きく分類し、各分類ごとにそこに含まれるいくつかの代表的な手法を説明する。
1)有意差検定
・Welch t-test(ウェルチのt検定)
「2つの母集団の平均が等しい」という帰無仮説のもと、等分散を仮定しない両側検定を行うものである。
・WRST(Wilcoxon rank sum test)(ウィルコクソン順位和検定)
「両標本が同一母集団から抽出された」という帰無仮説に基づいてノンパラメトリックな検定を行うものである。
・ANOVA(Analysis of variance)(分散分析)
「全ての群の母平均に差が無い」という帰無仮説に基づいて多群のパラメトリック検定を行うものである。
有意差検定は、解析装置では、マススペクトルのピーク(m/z値)ごとに検定を行い、マススペクトル群(グループ)の間で有意な差があるピークの探索に有用であり、マーカー探索や分子メカニズム解明に利用できる。群間で有意差があるとされたピーク(m/z)を選出し、対応するデータを後述する機械学習で利用できる。
2)次元縮約
次元縮約は多くの変数を少数の変数(スコア)に縮約するものである。
・PCA(Principal component analysis)(主成分分析)
教師無し次元縮約法である。
・PLS(Partial least squares)(部分的最小二乗法)
教師あり次元縮約法である。
・OPLS(Orthogonal Partial Least squares)(直交PLS)
PLSの改良版で、説明変数の直交成分を分離して解析する。
・KPLS(kernel partial least squares)(カーネルPLS)
カーネル法を用いてPLSを非線形拡張するので、分離性能が向上する。
解析装置では、マススペクトルに含まれる多くのピーク(変数)を2、3の少ないスコア(主成分)に縮約できるのでスコア間の相関が判別できるとともに、その結果を機械学習に利用できる。スコアの数はユーザが指定できる。
3)機械学習法
・LDA(Linear discriminant analysis)(線形判別分析)
直線、超平面による判別関数を構成。
・QDA(Quadratic discriminant analysis)(二次判別分析)
曲線、超曲面による判別関数を構成。
・SVM(Support vector machine)(サポートベクターマシン)
マージンを最大化する識別面を特徴空間に構成する非線形識別法。
・LR(Logistic regression)(ロジスティック回帰)
事後確率の対数尤度比が線形式で表されると仮定する回帰モデル。
・RF(Random forest)(ランダムフォレスト)
決定木を弱学習器とする集団学習アルゴリズム。
解析装置では、これらの学習法で作成された判別関数を用いて未知のマススペクトルの診断をすることができる。したがって、診断や治療方針の決定に利用できる。
4)検証法
機械学習法の診断精度を検証するものである。この検証結果により、最も適した機械学習法を自動的に選定することも可能となる。
・k-fold CV(k-fold cross validation)(k-分割交差検証)
標本群をk個に分割して、そのうちの一つをテストサンプル、残りを訓練サンプルとする検証法。
・LOOCV(Leave one out cross validation)(Leave-one-out交差検証)
標本群から1つのサンプルだけを抜き出してテストサンプルとし、残りを訓練サンプルとする検証法。
解析装置320の記憶部326には、上述した有意差検定法に含まれるすべての個別の検証法(Welch t-test、WRST、ANOVAなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)、次元縮約法に含まれるすべての個別の縮約法(PCA、PLS、OPLS、KPLSなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)、機械学習法に含まれるすべての個別の学習法(LDA、QDA、SVM、LR、RFなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)及び検証法に含まれるすべての個別の検証法(k-fold CV、LOOCVなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)が格納されており、処理部321はこれらのプログラムにしたがって、各統計解析法、検証法を個別に、又は同時に実行することができる。
即ち、図29に示すように、表示部324の表示画面には、上述したすべての統計解析法、検証法が表示され、ユーザは、これらの表示された解析法及び検証法のいずれか1つ以上を選択することができる。すべての解析法及び検証法を選択することもできる。また、検証法中の1つ以上と、縮約法中の1つ以上と、学習法の1つ以上と、検証法の1つ以上とを組合せて選択することもできるし、その組合せの中から1つ以上を除くこともできる。即ち、任意の組合せの選択が可能となる(図17のS21)(統計解析法入力部)。そして、処理部321は選択された解析法、検証法を個別に、もしくは並行して、又は組合せにしたがって順を追って実行することができる(図17の、S30、S40、S50、S60)(統計解析実行部)。これらの処理の結果(統計解析の結果得られる各種の数値情報、図15の符号329)は、表示部324の画面上に表示して、プリンタ325でプリントして、又はデータの形で通信回線を介して、もしくは記憶媒体に出力して提示される(図17の、S31、S41、S52、S61)。
選択された検定法の実行の結果、選定されたピークに対応するデータは、選択された縮約法に渡されてその処理(縮約)対象データとして用いるか、又は選択された学習法に渡されてその処理(学習)対象データとして用いることもできる(図17のS32)。同様に、選択された縮約法で処理されて出力されるスコアデータは、選択された学習法に渡されてその処理(学習)対象データとして用いることもできる(図17のS42)。特に、選択された縮約法と選択された学習法の組合せは、表示画面上にそれらを結ぶ線として表示される(図29参照)。選択された検証法は選択された学習法の診断精度を検証する(図17の、S50、S60)。選択された学習法で決定された判別関数により未知データの診断処理も可能で(図17のS51)、その診断結果は提示される(図17のS52)。選択された解析法、検証法は、「実行」ボタンの押下(クリック)に応答して実行される(図28参照)。
このように、多くの種類の統計解析法、検証法を実行するプログラムのルーチンが備えられているので、ユーザはこれらの汎用的なものから高度なものまでのプログラムルーチンのうちの所望のもの(1又は複数)を実行することができる。未だ備えられていない統計解析法や検証法のプログラムルーチンを追加してインストールすることもできる(拡散性が高い)。検定法、縮約法、及び学習法の中から適切な組合せ(検定法を除いた組合せでもよい)を設定して、対象であるマススペクトル群について試行することができ、そのマススペクトル群の解析のために最適な組合せを選ぶことができる。このとき、検証法を用いて、設定した組合せが適切であったかどうかを判定することができる。
次に示す具体例のように、複数の統計解析法の組合せを用いて、対象であるマススペクトル群について、意味のある変化、例えば、疾患で特異的に変化する分子(マーカー)を手動又は自動(半自動を含む)で抽出することができる。図29に示す画面(ユーザインターフェイス)は、操作するのに簡便であり、かつ分りやすく、作業時間の短縮を図ることができる。
図29に示すように、検定法としてANOVAが、縮約法としてPCAが、学習法としてLDAが、そして検証法としてLOOCVが選択された場合の具体例について以下に説明する。
解析に使用するデータセット(「使用するデータセットを含むフォルダを選択」と表示されたボックス)のフォルダには、3群(グループ)のウサギ血漿のマススペクトルデータが入っている(図16の、S142、S143)(データセット指定部)。3群のウサギとは次の通りである。
正常なウサギ10匹(コントロールとして位置づける):C0と略記する
食物を通してコレステロール負荷を加えたウサギ10匹:C16と略記する
遺伝的にコレステロール代謝に異常を有するウサギ10匹:Wと略記する
したがって、これら30匹のウサギ血漿の30のマススペクトルデータが統計解析の対象となる。
m/z範囲はマススペクトルにおいて解析に使用するm/z値の範囲を定めるもので、ここでは10.0~1000.0の範囲が指定されている。
Binサイズはm/z値のとりうる間隔(幅)を示し、ここでは1が設定されている。したがって、10.0、11.0、12.0、‥‥、999.0、1000.0のように1ずつ変化するm/z値に対応するイオン強度をもつマススペクトルを対象データとしている。データセット中のマススペクトルデータのBinサイズが1でない場合には、平均値又は加算値をとる(Binサイズが小さい場合)、又は補間をとる(Binサイズが大きい場合)などによりBinサイズが1となるように加工される。
統計解析法として、上述したようにANOVA、PCA、及びLDAが選択され、検証法としてLOOCVが選択される。PCAによる縮約結果を学習法LDAで用いるので、これらの文字のブロックが線で結ばれている。有意水準、多重検定補正、変動係数範囲及び平均強度範囲は検定法ANOVAに関するもので、これについては、次のマーカー探索の項で説明する。縮約法PCAで縮約の結果出力されるスコアの数は2と設定されている。以上の設定ののち(図17のS21)、実行ボタンが押されると、設定された統計解析、検証が実行される。
統計解析ルーチン、検証ルーチンの実行に先だってデータの加工が行われる(図17のS22)。マススペクトルデータベース328(図15参照)から読出されたデータセットのマススペクトルデータについて、設定されたm/z範囲になり、かつ設定されたBinサイズを持つように加工が行われる。また、30のマススペクトルについて、C0、C16、Wの各グループごとにイオン強度の正規化(ノースライズ)が行われる。即ち、各スペクトルの平均強度が算出され、各ピークの値がこの平均強度で除されることにより正規化が行われる。
マーカー探索の目的は、3つのグループの識別に有用なマーカー物質を、m/z=10~1000の中から見つけることである。
マーカー探索は以下の条件(i)、(ii)、(iii)を満たすような物質(m/z)を絞り込む(探索する)ことにより行われる。
(i)グループ間で強度(イオン強度)が大きく異なるm/zを選出する。これは、次に詳述する検定法ANOVAにより達成される。
(ii)強度が十分に大きいm/zを選出する。平均強度は図29の画面で設定されているように、1.0~inf.(無限)である。1.0は平均値で正規化しているので平均値を意味する。この条件(ii)は、いずれかのグループで、強度が1を上廻るピークに対応するm/zを選出することである。
(iii)各グループ内での強度のばらつきが十分に小さいm/zを選出する。ばらつきは図29の画面で設定された変動係数範囲(0.0~0.3)で定められる。変動係数は、各ピークの強度を1としたときの分散の値で定められる(ピークの強度によって分散の値が変ってしまうので、正規化している)。この条件(iii)は各グループで上記の分散が0.3未満となるようなピークに対応するm/zを選出することである。
上記条件(i)を満たすm/zを選出するANOVA法について説明する。
ANOVA法は各グループの平均強度が等しいという帰無仮説のもとで(各グループの平均強度をμ1、μ2、μ3とするとμ1=μ2=μ3)、ピーク毎の(m/z値ごとの)P値を算出する。P値は帰無仮説が成立つ確率を示す。P値が大きいほど、グループ間で同じm/z値について強度の差が小さい(帰無仮説が正しい)。
P値の有意水準は0.05に設定されている(図29の画面)。上のようにして算出されたP値がこの有意水準0.05より小さいm/zを、グループ間で強度が異なるm/z(ピーク)として選出する。なお、図29で多重検定補正がBF(Bonferroni)法というのは、検定をN回繰返す場合(N>2)、Bonferroni法に基づいてP値の有意水準を0.05/Nとすることを意味する。
上記の条件(i)、(ii)、(iii)を満足するものとして選出されたm/z値(ピーク)と、それに対応するP値(-logで表されている)、変動係数(CV_C0、CV_C16、CV_WはそれぞれグループC0、C16、Wを示す)及び平均強度(M_C0、M_C16、M_WはそれぞれグループC0、C16、Wを示す)が出力ファイルとして、図30に示されている。
マーカー探索で上記(i)、(ii)、(iii)の条件を満たすm/zが上記のように(図30参照)選出されたが、変数(m/z)の数が多いので、次元縮約法により、変数の数を減らす。次元縮約法により情報量を削減することで、学習/診断の精度が向上することがあるからである。
次元縮約法については主成分分析(PCA)が設定されており、スコアの数は2である(図29参照)。
30のマススペクトルデータ中の全てのピークのイオン強度をPCAにより2つの主成分(第1、第2主成分)に縮約した結果が図31に示されている。図30に示す選出されたm/zのすべてのピークのイオン強度を縮約してもよい。
PC1、PC2は、それぞれ第1、第2主成分である。jw-0W、JW-16W、WHHCがそれぞれグループC0、C16、Wに対応する。これらのグループはこれらの主成分PC1、PC2で分離(判別)可能性が高いことがわかる。
上記条件(i)、(ii)、(iii)を満たすものとして図30に示すように選定されたm/zを用いた次元縮約以外に、元の3グループのデータのすべて(すべてのm/z)を用いて次元縮約を行うこともできる。
教師データを用いて機械学習を行い、この学習結果(判別関数)に基づいて、未知のスペクトルが属するグループを高精度に推定することを目的とするものである。最も好ましくは、上述した統計的検定、次元縮約法、機械学習法を組み合わせて、より高精度な判別器を構成することができる。
一例として、図31に示す縮約法により得られた結果に基づいて、第1、第2主成分を説明変数として、目的変数(グループ)を推定する判別器(PCA-LDA)を構成することができる。この場合、検定した(ANOVA)の結果(図28)を用いて縮約を行ったものに基づいて学習を行っても、元の3グループのマススペクトルデータを用いて縮約を行ったものに基づいて学習を行ってもどちらでもよい。
未知のスペクトルが属するグループを推定する方法をまとめると、次の4種類がある。
1)機械学習:全m/zを説明変数として教師データの学習を行う(目的変数はグループ名)。
2)統計的検定→機械学習:検定において識別に重要であるとみなされたm/zを説明変数として、教師データの学習を行う。
3)次元縮約法→機械学習:全m/zの情報をより少ない変数(主成分やPLSスコア)に縮約し、それらを説明変数として教師データの学習を行う。
4)統計的検定→次元縮約法→機械学習:検定において識別に重要であるとみなされたm/zをより少ない変数(スコア)に縮約し、それらを説明変数として教師データの学習を行う。
図29に示す画面には、検証法として、Leave-one-out交差検証(LOOCV)が設定されている。これは「全サンプルから一つのサンプルを検証用に取り出して残りのサンプルで学習を行い、検証用のサンプルが属するグループを正しく推定できるか」という過程を全サンプル数繰り返し、機械学習による推定の正答率を出力する。
上述の判別器(PCA-LDA)による推定の正答率をLOOCVにより検証した結果(正誤表)が、図32に示されている。[1]が正答、[0]が誤答を示しており、正答率は27/30=90%であった。検証結果は、上記以外に、ROC曲線、AUC等の成績データで出力することもできる。
縮約法と学習法の組合せを変え、場合によっては更に検定法との組合せを変えて、それぞれの学習結果に基づく推定の精度を検証法(検証法を変えてもよい)に求め、組合せごとの推定精度の結果に基づいて、より高精度にデータの学習/診断が行えるような判別法(検定法、縮約法、学習法の組合せ)を自動的に(又はユーザが組合せを選択する半自動で)選出することも可能である。
図33は、図30、図31、及び図32に示す統計解析、検証の結果を一つの表示画面にまとめて示すものである。このような画面を表示することにより、ユーザは一連の解析、検証の結果を網羅的に見ることができる。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 対象物から検体を採取し、直ちに、採取した前記検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、
を有することを特徴とする質量分析装置である。
<2> 採取した検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により生成するイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、を備え、
前記サンプリング手段と前記リアルタイム分析手段とは所定の距離を離して配置され、
前記距離は検体を採取する対象物に応じて変更可能であること
を特徴とする質量分析装置である。
<3> 前記サンプリング手段が、
前記対象物に先端を接触乃至刺入させて検体を採取する針状部材と、
前記針状部材の先端近傍に設けられ、前記針状部材に付着した検体から生成したイオンを収集するイオン収集部材と、
を有する前記<1>又は<2>に記載の質量分析装置である。
<4> 検体の採取時に前記対象物の表面と当接するガイド部材を更に有する前記<3>に記載の質量分析装置である。
<5> 前記針状部材に溶媒を付与する溶媒付与部材を更に有する前記<3>から<4>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<6> 前記サンプリング手段が、
生体内に挿入されて臓器の診断及び検査に用いられる内視鏡と、
前記内視鏡の先端部に一の方向に移動可能に装着され、前記対象物の表面に当接した状態で、移動させることにより検体を採取する線状部材と、
前記線状部材に付着した検体からイオンを生成するイオン化部材と、
を有する前記<1>又は<2>に記載の質量分析装置である。
<7> 前記線状部材が、前記内視鏡の鉗子路に装着されている前記<6>に記載の質量分析装置である。
<8> 対象物から検体を採取し、直ちに、採取した前記検体中の成分をイオン化するサンプリング工程と、
前記サンプリング工程により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析工程と、
を含むことを特徴とする質量分析方法である。
<9> 対象物から検体を採取し、直ちに、採取した前記検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、
前記リアルタイム分析手段で得られたマススペクトルを解析する解析手段と、
を有することを特徴とする解析装置である。
<10> 前記解析手段が、
質量電荷比、イオン強度及び測定時間の三次元測定データを入力する測定データ入力部と、
入力測定データの指定された質量電荷比に関し、イオン強度の総和が最大となる時間帯を算出する最良時間帯検出部と、
検出された最良時間帯の入力測定データのイオン強度に基づいて代表マススペクトルを作成する代表マススペクトル作成部と、
を備える前記<9>に記載の解析装置である。
<11> 対象物から検体を採取し、直ちに、採取した前記検体中の成分をイオン化するサンプリング工程と、
前記サンプリング工程により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析工程と、
前記リアルタイム分析工程で得られたマススペクトルを解析する解析工程と、
を含むことを特徴とする解析方法である。
<12> 前記解析工程が、
質量電荷比、イオン強度及び測定時間の三次元測定データを入力する測定データ入力処理と、
入力測定データの指定された質量電荷比に関し、イオン強度の総和が最大となる時間帯を算出する最良時間帯検出処理と、
検出された最良時間帯の入力測定データのイオン強度に基づいて代表マススペクトルを作成する代表マススペクトル作成処理と、
を含む前記<11>に記載の解析方法である。
前述の<1>から<7>のいずれかに記載の質量分析装置、前述の<8>に記載の質量分析方法、前述の<9>から<10>のいずれかに記載の解析装置、及び前述の<11>から<12>のいずれかに記載の解析方法によると、従来における前述の諸問題を解決し、前述の本発明の目的を達成することができる。
1 針状部材
2 イオン収集部材
3 溶媒付与部材
4 駆動スイッチ
5 フレキシブルチューブ
6 ステンレスチューブ
7 質量分析計
8 吸引装置
9 リニアアクチュエータ
10 電源
21 内視鏡
22 線状部材
23 巻取りローラ
24 搬送ローラ
25 質量分析計
26 イオン化部材
27 鉗子孔
32 対象物
100 質量分析装置
101 サンプリング手段
102 リアルタイム分析手段
200 質量分析装置
201 サンプリング手段
202 リアルタイム分析手段
310 質量分析部
320 解析装置
321 処理部
322 入力部
323 出力部
324 表示部
325 プリンタ
326 記憶部

Claims (10)

  1. 対象物から検体を採取し、10秒間以下で、採取した前記検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
    前記サンプリング手段により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、
    を有し、
    前記サンプリング手段が、
    前記対象物に対して上下動可能であり、最も下方の位置に移動させて前記対象物に対し先端を接触乃至刺入させて前記検体を採取する針状部材と、
    最も上方の位置に前記針状部材を移動させた状態で電圧を印加し、前記針状部材に付着した前記検体から生成したイオンを収集するイオン収集部材と、
    を有することを特徴とする質量分析装置。
  2. 採取した検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
    前記サンプリング手段により生成するイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、を備え、
    前記サンプリング手段が、
    生体内に挿入されて臓器の診断及び検査に用いられる内視鏡と、
    前記内視鏡の先端部に一の方向に移動可能に装着され、対象物の表面に当接した状態で、移動させることにより検体を採取する線状部材と、
    前記内視鏡外に搬出された前記線状部材に付着した前記検体からイオンを生成するイオン化部材と、
    を有し、
    前記サンプリング手段と前記リアルタイム分析手段とは所定の距離を離して配置され、
    前記距離は前記検体を採取する前記対象物に応じて変更可能であること
    を特徴とする質量分析装置。
  3. 前記針状部材が最も上方の位置に移動した際に、前記イオン収集部材の開口部が前記針状部材の先端よりも突出した位置となる請求項1に記載の質量分析装置。
  4. 前記検体の採取時に前記対象物の表面と当接するガイド部材を更に有する請求項1及び3のいずれかに記載の質量分析装置。
  5. 前記針状部材に溶媒を付与する溶媒付与部材を更に有する請求項1、3から4のいずれかに記載の質量分析装置。
  6. 前記線状部材を一の方向に移動させる駆動部材としての搬送ローラと、巻取りローラとを有する請求項2に記載の質量分析装置。
  7. 前記線状部材が、前記内視鏡の鉗子路に装着されている請求項2及び6のいずれかに記載の質量分析装置。
  8. 対象物から検体を採取し、10秒間以下で、採取した前記検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
    前記サンプリング手段により生成したイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、
    前記リアルタイム分析手段で得られたマススペクトルを解析する解析手段と、
    を有し、
    前記サンプリング手段が、
    前記対象物に対して上下動可能であり、最も下方の位置に移動させて前記対象物に対し先端を接触乃至刺入させて前記検体を採取する針状部材と、
    最も上方の位置に前記針状部材を移動させた状態で電圧を印加し、前記針状部材に付着した前記検体から生成したイオンを収集するイオン収集部材と、
    を有することを特徴とする解析装置。
  9. 採取した検体中の成分をイオン化するサンプリング手段と、
    前記サンプリング手段により生成するイオンを質量分析するリアルタイム分析手段と、 前記リアルタイム分析手段で得られたマススペクトルを解析する解析手段と、
    を有し、
    前記サンプリング手段が、
    生体内に挿入されて臓器の診断及び検査に用いられる内視鏡と、
    前記内視鏡の先端部に一の方向に移動可能に装着され、対象物の表面に当接した状態で、移動させることにより検体を採取する線状部材と、
    前記内視鏡外に搬出された前記線状部材に付着した前記検体からイオンを生成するイオン化部材と、
    を有し、
    前記サンプリング手段と前記リアルタイム分析手段とは所定の距離を離して配置され、
    前記距離は前記検体を採取する前記対象物に応じて変更可能であることを特徴とする解析装置。
  10. 前記解析手段が、
    質量電荷比、イオン強度及び測定時間の三次元測定データを入力する測定データ入力部と、
    入力測定データの指定された質量電荷比に関し、イオン強度の総和が最大となる時間帯を算出する最良時間帯検出部と、
    検出された最良時間帯の入力測定データのイオン強度に基づいて代表マススペクトルを作成する代表マススペクトル作成部と、
    を有する請求項8から9のいずれかに記載の解析装置。
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