概要
図面を全体として参照すると、様々な例示的実施形態によるモデル予測的メンテナンス(MPM)システム及びその構成要素が示されている。MPMシステムは、ビルディング機器に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス戦略は、最適化期間(例えば、30週、52週、10年、30年など)の継続期間にわたるビルディング機器の購入、メンテナンス及び動作に関連する総コストを最適化する決定事項の組である。これらの決定事項は、例えば、機器の購入の決定、機器のメンテナンスの決定及び機器の動作の決定を含むことができる。MPMシステムは、モデル予測制御技法を使用して、これらの決定事項の関数として総コストを表す目的関数を定式化することができる。決定事項は、決定変数として目的関数に含めることができる。MPMシステムは、様々な最適化技法のいずれかを使用して目的関数を最適化(例えば、最小化)して、各決定変数に関する最適値を識別することができる。
MPMシステムによって最適化することができる目的関数の一例は、次式で示される。
ここで、C
op,iは、最適化期間の時間ステップiにおいてビルディング機器が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、ドル/kWh)であり、P
op,iは、時間ステップiにおけるビルディング機器の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、C
main,iは、時間ステップiにおいてビルディング機器に対して実施されるメンテナンスのコストであり、B
main,iは、メンテナンスが実施されるか否かを示すバイナリ変数であり、C
cap,iは、時間ステップiにおいてビルディング機器の新たなデバイスを購入する資本コストであり、B
cap,iは、新たなデバイスが購入されるか否かを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施されるホライズン又は最適化期間の継続時間である。
目的関数Jの第1項は、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器の動作コストを表す。いくつかの実施形態では、単位エネルギーあたりのコストCop,iは、エネルギー価格データとして公益企業から受信される。コストCop,iは、時刻、曜日(例えば、平日か週末か)、現在の季節(例えば、夏か冬か)又は他の時間ベースの因子に依存する時変コストであり得る。例えば、コストCop,iは、ピークエネルギー消費期間中にはより高く、オフピーク又は部分ピークエネルギー消費期間中にはより低いことがある。
いくつかの実施形態では、電力消費量Pop,iは、ビルディングの加熱又は冷却負荷に基づく。加熱又は冷却負荷は、ビルディング占有、時刻、曜日、現在の季節又は加熱若しくは冷却負荷に影響を与え得る他の因子に応じて、MPMシステムによって予測することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステムは、気象サービスからの天気予報を使用して加熱又は冷却負荷を予測する。電力消費量Pop,iは、ビルディング機器の効率ηiにも依存する。例えば、高い効率で動作するビルディング機器は、低い効率で動作するビルディング機器に比べて、同じ加熱又は冷却負荷を満たすために消費する電力Pop,iが少ないことがある。
有利には、MPMシステムは、メンテナンス決定Bmain,i及び機器購入決定Bcap,iの関数として、各時間ステップiにおけるビルディング機器の効率ηiをモデル化することができる。例えば、特定のデバイスに関する効率ηiは、デバイスが購入されたときに初期値η0で始まることがあり、時間と共に低下し、連続する各時間ステップiと共に効率ηiが低下することがある。デバイスに対するメンテナンスを実施することで、メンテナンスが実施された直後に効率ηiをより高い値にリセットすることができる。同様に、新たなデバイスを購入して既存のデバイスと交換することで、新たなデバイスが購入された直後に効率ηiをより高い値にリセットすることができる。リセット後、効率ηiは、メンテナンスが実施されるか又は新たなデバイスが購入される次の時点まで、時間と共に低下し続けることがある。
メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、動作中の電力消費量Pop,iが比較的低くなり、したがって、メンテナンスが実施された後又は新たなデバイスが購入された後に各時間ステップiにおける動作コストがより低くなることがある。言い換えると、メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第1項によって表される動作コストを低減することができる。しかし、メンテナンスの実施により、目的関数Jの第2項が増加することがあり、新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第3項が増加することがある。目的関数Jは、これらの各コストを捕捉し、MPMシステムによって最適化して、最適化期間の継続期間にわたるメンテナンス及び機器購入決定の最適な組(すなわちバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値)を決定することができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、ビルディング機器からのフィードバックとして受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の効率及び/又は信頼性を推定する。効率は、ビルディング機器での加熱又は冷却負荷とビルディング機器の電力消費量との関係を示すことがある。MPMシステムは、効率を使用して、Pop,iの対応する値を計算することができる。信頼性は、ビルディング機器がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、ビルディング機器が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量及び/又はビルディング機器が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成及び提供する。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、ビルディング機器の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、ビルディング機器の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
有利には、MPMシステムによって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング機器の実際の動作条件及び実際の性能に基づく予測的な推奨である。MPMシステムによって実施される最適化は、メンテナンスを実施するコスト及び新たな機器を購入するコストを、そのようなメンテナンス又は購入の決定により生じる動作コストの低減に対して重み付けして、総複合コストJを最小化する最適なメンテナンス戦略を決定する。このようにして、MPMシステムによって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、各グループのビルディング機器に特有のものとなり、特定のグループのビルディング機器に関する最適なコストJを実現することができる。機器に特有の推奨は、いくつかのグループの接続された機器610及び/又はいくつかの動作条件に関しては最適でないことがある機器製造業者によって提供される一般的な予防的メンテナンスの推奨(例えば、毎年の機器の整備)に比べ、全体的なコストJを低くすることができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステムは、目的関数Jの最適化に対して様々な予算制約を課す。予算制約は、最適化中に決定された決定事項が、存在する任意の経済的制限又は他の制限を遵守することを保証することができる。特に、MPMシステムは、ハード予算制約、ソフト予算制約及び/又はそれらの何らかの組合せを目的関数Jに課すことがある。ハード予算制約は、遵守しなければならない制約を表すことがある。例えば、ハード予算制約は、最適化期間にわたるメンテナンス/交換のための最大許容予算であり得、すべてのメンテナンス/交換の合計コストが最大許容予算を超過することはできない。ハード予算制約と異なり、ソフト予算制約は、超過され得るか又は遵守されなくてもよいが、追加のペナルティが課せられる。例えば、ソフト予算制約が予算の上限を示している場合、メンテナンス/交換の合計コストは、上限を超え得るが、(例えば、超過量のパーセンテージとして)追加のペナルティコストが生じる。ソフト予算制約は、ソフト予算制約を遵守する決定変数を決定するために最適化を奨励することができるが、最適な解がソフト予算制約を遵守しない場合には柔軟性を与える。
いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、予算制約を上回る又は下回る場合の両方に適用される。最適化期間にわたるメンテナンス/交換の合計コストが予算制約にできるだけ近いことは、価値があり得る。例えば、会計期間中にビルディングに関する予算の特定の額(例えば、ドル)がメンテナンス/交換に割り振られている場合、割り振られていたが、費やされなかったいかなる額も予算の異なる部分に移され、メンテナンス/交換の観点から未使用の額を実質的になくすことができる。したがって、目的関数Jの最適化中にペナルティコストを課して、最適化期間中に費やされる合計額ができるだけ予算制約に近づくようにする決定変数の値を決定することができる。具体的には、予算制約と推定される合計コストとの間の差の大きさが増加するにつれて、最適化中に追加されるペナルティコストも増加する。
いくつかの実施形態では、目的関数Jは、ビルディング機器の故障に関連するリスクコストを組み込む。ビルディング機器のビルディングデバイスが故障した場合、ビルディングデバイスのメンテナンス/交換コストを超えるコストが生じることがある。特に、ビルディング機器の故障は、ビルディング機器のメンテナンス/交換に関連するコストと、未対処の負荷又は失われた生産量などの様々な機会コストに関連するコストとの両方を生じる。リスクコストを目的関数Jに組み込むために、機器の故障が最適化期間中の全体的なコストにどのように影響を及ぼし得るかを考慮に入れるリスクコスト項を含むように目的関数Jを拡張することができる。リスクコスト項を含む目的関数Jは、以下の式で示される。
ここで、C
fail,iは、最適化期間の時間ステップiにおけるビルディング機器の故障のコストであり、P
fail,i(δ
i)は、時間ステップiにおけるビルディングデバイスの劣化状態δ
iに基づく、時間ステップiにおけるビルディング機器のビルディングデバイスの故障の確率である。特に、リスクコスト項
は、各ビルディングデバイスの故障の確率を考慮に入れることにより、最適化期間にわたるメンテナンス/交換の全体的なコストに影響を及ぼす。一般に、ビルディングデバイスの故障の確率が上昇するにつれて、リスクコスト項が目的関数Jに影響を及ぼす量が増加する。
リスクコスト項に基づいて、目的関数Jの最適化は、リスクコスト項が目的関数Jに含まれていない場合と異なる時点において、特定のビルディングデバイスがメンテナンスを実施され且つ/又は交換されるべきであると決定することがある。特に、リスクコスト項により、最適化プロセスは、特定のビルディングデバイスの故障確率を低く保つためにメンテナンス/交換を頻繁に実施すべき特定のビルディングデバイスを識別することが可能になり得る。例えば、可変冷媒流量(VRF)システムの特定の屋内ユニット(IDU)は、その特定のIDUが故障した場合に居住者の安全性のためにビルディングのスペースを一時的に閉鎖する必要があるとき、故障に関連する大きい機会コストを伴うことがある。高い機会コストにより、最適化は、その特定のIDUのメンテナンス/交換を、故障に関連するコストが最小である他のビルディングデバイスよりも優先することがある。
いくつかの実施形態では、目的関数Jは、メンテナンス/交換に関連する雑費を考慮に入れるために雑費項を組み込む。雑費は、動作コスト項、メンテナンスコスト項及び/又は資本コスト項において計上されない様々な出費を表すことができる。いくつかの実施形態では、雑費は、ビルディング機器の信頼性に影響を及ぼすが、ビルディング機器の効率に影響を及ぼさない。例えば、雑費には、HVACシステムの通気孔のねじを新しいねじに交換することが含まれ得る。上記の雑費を考慮に入れることは、最適化期間にわたる合計コストを正確に決定するのに有用であり得る。また、リスクコスト項が目的関数Jに組み込まれる場合、目的関数Jに雑費項を追加することが有用であり得る。リスクコスト項が組み込まれる場合、雑費項は、ビルディング機器の信頼性を高めるために実施することができる雑多なメンテナンス活動を提供し、それにより上記ビルディング機器の故障確率を低減することができる。さらに、予算制約が最適化に課せられる場合、予算制約が確実に遵守されるように雑費を考慮に入れることが重要であり得る。
最適化中、目的関数Jは、追加の因子として雑費を考慮に入れることができる。例えば、目的関数Jは、以下の形式を有することがある。
ここで、Cost
misc,iは、時間ステップiに関する雑多な活動のコストであり、B
misc,iは、時間ステップiにおいて雑多な活動が行われるか否かを示すバイナリ変数である。いくつかの実施形態では、雑費は、目的関数Jの他の項(例えば、メンテナンスコスト項、資本コスト項、リスクコスト項など)に計上される。C
misc,iの値を決定するために、雑費は、雑費のユーザ入力、雑費を示す請求書の追跡、最適化期間の時間ステップに関して予想される何らかの平均雑費の推定などによって収集することができる。MPMシステムのこれら及び他の特徴を以下で詳細に述べる。
ビルディングHVACシステム及びビルディング管理システム
ここで、図1〜図5を参照すると、いくつかの実施形態による、本開示のシステム及び方法を実施することができるいくつかのビルディング管理システム(BMS)及びHVACシステムが示されている。簡単な概要として、図1は、HVACシステム100を備えたビルディング10を示す。図2は、ビルディング10にサービス提供するために使用することができるウォーターサイドシステム200のブロック図である。図3は、ビルディング10にサービス提供するために使用することができるエアサイドシステム300のブロック図である。図4は、ビルディング10を監視及び制御するために使用することができるBMSのブロック図である。図5は、ビルディング10を監視及び制御するために使用することができる別のBMSのブロック図である。
ビルディング及びHVACシステム
特に図1を参照すると、ビルディング10の斜視図が示されている。ビルディング10は、BMSによってサービス提供される。BMSは、一般に、ビルディング又はビルディングエリアの内部又は周辺の機器を制御、監視及び管理するように構成されたデバイスのシステムである。BMSは、例えば、HVACシステム、セキュリティシステム、照明システム、火災警報システム、ビルディングの機能若しくはデバイスを管理することが可能な任意の他のシステム又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
ビルディング10にサービス提供するBMSは、HVACシステム100を含む。HVACシステム100は、ビルディング10のための暖房、冷房、換気又は他のサービスを提供するように構成された複数のHVACデバイス(例えば、加熱器、冷却器、エアハンドリングユニット、ポンプ、ファン、熱エネルギー貯蔵装置など)を含み得る。例えば、HVACシステム100は、ウォーターサイドシステム120及びエアサイドシステム130を含むものとして示されている。ウォーターサイドシステム120は、加熱又は冷却された流体をエアサイドシステム130のエアハンドリングユニットに提供し得る。エアサイドシステム130は、加熱又は冷却された流体を使用して、ビルディング10に提供される気流を加熱又は冷却し得る。HVACシステム100で使用され得る例示的なウォーターサイドシステム及びエアサイドシステムについては、図2〜3を参照してより詳細に述べる。
HVACシステム100は、冷却器102、ボイラ104及び屋上エアハンドリングユニット(AHU)106を含むものとして示されている。ウォーターサイドシステム120は、ボイラ104及び冷却器102を使用して、作動流体(例えば、水やグリコールなど)を加熱又は冷却することができ、作動流体をAHU106に循環させ得る。様々な実施形態において、ウォーターサイドシステム120のHVACデバイスは、(図1に示されるように)ビルディング10内若しくは周囲に位置するか、又は中央プラント(例えば、冷却器プラント、蒸気プラント、熱プラントなど)など場外の位置に位置し得る。作動流体は、ビルディング10に暖房が必要とされているか冷房が必要とされているかに応じて、ボイラ104で加熱されるか、又は冷却器102で冷却され得る。ボイラ104は、例えば、可燃性材料(例えば、天然ガス)を燃焼することにより、又は電気加熱要素を使用することにより、循環される流体に熱を加え得る。冷却器102は、循環される流体を、熱交換器(例えば、蒸発器)内の別の流体(例えば、冷媒)との熱交換関係にして、循環される流体から熱を吸収し得る。冷却器102及び/又はボイラ104からの作動流体は、配管108を通してAHU106に輸送され得る。
AHU106は、(例えば、冷却コイル及び/又は加熱コイルの1つ又は複数のステージを通って)AHU106を通過する気流と作動流体を熱交換関係にすることができる。気流は、例えば、外気、ビルディング10内からの還気又はそれら両方の組合せであり得る。AHU106は、気流と作動流体との間で熱を伝達して、気流を加熱又は冷却し得る。例えば、AHU106は、1つ又は複数のファン又は送風機を含み得、ファン又は送風機は、作動流体を含む熱交換器の上に又は熱交換器を通して空気を流すように構成される。次いで、作動流体は、配管110を通って冷却器102又はボイラ104に戻り得る。
エアサイドシステム130は、AHU106によって供給される気流(すなわち給気流)を、給気ダクト112を通してビルディング10に送給し、還気を、ビルディング10から還気ダクト114を通してAHU106に提供し得る。いくつかの実施形態では、エアサイドシステム130は、複数の可変空気体積(VAV)ユニット116を含む。例えば、エアサイドシステム130は、ビルディング10の各フロア又は区域に別個のVAVユニット116を含むものとして示されている。VAVユニット116は、ビルディング10の個々の区域に提供される給気流の量を制御するように動作させることができるダンパ又は他の流量制御要素を含み得る。他の実施形態では、エアサイドシステム130は、中間VAVユニット116又は他の流量制御要素を使用せずに、(例えば、供給ダクト112を通して)ビルディング10の1つ又は複数の区域に給気流を送給する。AHU106は、給気流の属性を測定するように構成された様々なセンサ(例えば、温度センサや圧力センサなど)を含み得る。AHU106は、AHU106内及び/又はビルディング区域内に位置するセンサからの入力を受信することができ、AHU106を通る給気流の流量、温度又は他の属性を調節して、ビルディング区域に関する設定値条件を実現し得る。
ウォーターサイドシステム
次に、図2を参照すると、いくつかの実施形態によるウォーターサイドシステム200のブロック図が示されている。様々な実施形態において、ウォーターサイドシステム200は、HVACシステム100内のウォーターサイドシステム120を補助するか若しくはそれに置き代わり得るか、又はHVACシステム100とは別個に実装され得る。HVACシステム100に実装されるとき、ウォーターサイドシステム200は、HVACシステム100内のHVACデバイスのサブセット(例えば、ボイラ104、冷却器102、ポンプ、弁など)を含み得、加熱又は冷却された流体をAHU106に供給するように動作し得る。ウォーターサイドシステム200のHVACデバイスは、ビルディング10内に(例えば、ウォーターサイドシステム120の構成要素として)位置しても、中央プラントなど場外の位置に位置し得る。
図2で、ウォーターサイドシステム200は、複数のサブプラント202〜212を有する中央プラントとして示されている。サブプラント202〜212は、加熱器サブプラント202、熱回収冷却器サブプラント204、冷却器サブプラント206、冷却塔サブプラント208、高温熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント210及び冷熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント212を含むものとして示されている。サブプラント202〜212は、公益事業からの資源(例えば、水、天然ガス、電気など)を消費して、ビルディング又はキャンパスの熱エネルギー負荷(例えば、温水、冷水、暖房、冷房など)を提供する。例えば、加熱器サブプラント202は、加熱器サブプラント202とビルディング10との間で温水を循環させる温水ループ214内の水を加熱するように構成され得る。冷却器サブプラント206は、冷却器サブプラント206とビルディング10との間で冷水を循環させる冷水ループ216内の水を冷却するように構成され得る。熱回収冷却器サブプラント204は、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達して、温水のための追加加熱及び冷水のための追加冷却を可能にするように構成され得る。凝縮器水ループ218が、冷却器サブプラント206内の冷水から熱を吸収し、吸収された熱を冷却塔サブプラント208内に排除するか、又は吸収された熱を温水ループ214に伝達し得る。高温TESサブプラント210及び低温TESサブプラント212は、その後の使用のために、それぞれ高熱及び低熱エネルギーを貯蔵し得る。
温水ループ214及び冷水ループ216は、ビルディング10の屋上に位置するエアハンドラ(例えば、AHU106)に又はビルディング10の個々のフロア若しくは区域(例えば、VAVユニット116)に、加熱及び/又は冷却された水を送給し得る。エアハンドラは、水が流れる熱交換器(例えば、加熱コイル又は冷却コイル)に空気を押し通して、空気を加熱又は冷却する。加熱又は冷却された空気は、ビルディング10の個々の区域に送給されて、ビルディング10の熱エネルギー負荷を提供し得る。次いで、水はサブプラント202〜212に戻り、さらなる加熱又は冷却を受ける。
サブプラント202〜212は、ビルディングへの循環のための水を加熱及び冷却するものとして図示されて述べられているが、熱エネルギー負荷を供給するために水の代わりに又は水に加えて、任意の他のタイプの作動流体(例えば、グリコールやCO2など)が使用され得ることを理解されたい。他の実施形態では、サブプラント202〜212は、中間伝熱流体を必要とせずに、ビルディング又はキャンパスに加熱及び/又は冷却を直接提供し得る。ウォーターサイドシステム200に対するこれら及び他の変形形態も本開示の教示の範囲内にある。
サブプラント202〜212は、サブプラントの機能を実現しやすくするように構成された様々な機器をそれぞれ含み得る。例えば、加熱器サブプラント202は、温水ループ214内の温水に熱を加えるように構成された複数の加熱要素220(例えば、ボイラや電気加熱器など)を含むものとして示されている。また、加熱器サブプラント202は、いくつかのポンプ222及び224を含むものとして示されており、これらのポンプ222及び224は、温水ループ214内で温水を循環させ、個々の加熱要素220を通る温水の流量を制御するように構成される。冷却器サブプラント206は、冷水ループ216内の冷水から熱を除去するように構成された複数の冷却器232を含むものとして示されている。また、冷却器サブプラント206は、いくつかのポンプ234及び236を含むものとして示されており、ポンプ234及び236は、冷水ループ216内で冷水を循環させ、個々の冷却器232を通る冷水の流量を制御するように構成される。
熱回収冷却器サブプラント204は、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達するように構成された複数の熱回収熱交換器226(例えば、冷蔵回路)を含むものとして示されている。また、熱回収冷却器サブプラント204は、いくつかのポンプ228及び230を含むものとして示されており、ポンプ228及び230は、熱回収熱交換器226を通して温水及び/又は冷水を循環させ、個々の熱回収熱交換器226を通る水の流量を制御するように構成される。冷却塔サブプラント208は、凝縮器水ループ218内の凝縮器水から熱を除去するように構成された複数の冷却塔238を含むものとして示されている。また、冷却塔サブプラント208は、いくつかのポンプ240を含むものとして示されており、ポンプ240は、凝縮器水ループ218内で凝縮器水を循環させ、個々の冷却塔238を通る凝縮器水の流量を制御するように構成される。
高温TESサブプラント210は、後の使用のために温水を貯蔵するように構成された高温TESタンク242を含むものとして示されている。また、高温TESサブプラント210は、1つ又は複数のポンプ又は弁を含み得、これらのポンプ又は弁は、高温TESタンク242の内外への温水の流量を制御するように構成される。低温TESサブプラント212は、後の使用のために冷水を貯蔵するように構成された低温TESタンク244を含むものとして示されている。また、低温TESサブプラント212は、1つ又は複数のポンプ又は弁を含むこともあり、これらのポンプ又は弁は、低温TESタンク244の内外への冷水の流量を制御するように構成される。
いくつかの実施形態では、ウォーターサイドシステム200内のポンプ(例えば、ポンプ222、224、228、230、234、236及び/又は240)又はウォーターサイドシステム200内のパイプラインの1つ又は複数が、それらに関連付けられた隔離弁を含む。隔離弁は、ウォーターサイドシステム200内の流体の流れを制御するために、ポンプと一体化されても、ポンプの上流又は下流に位置決めされ得る。様々な実施形態において、ウォーターサイドシステム200は、ウォーターサイドシステム200の特定の構成と、ウォーターサイドシステム200によって提供される負荷のタイプとに基づいて、より多数、より少数又は異なるタイプのデバイス及び/又はサブプラントを含むこともある。
エアサイドシステム
次に、図3を参照すると、いくつかの実施形態によるエアサイドシステム300のブロック図が示されている。様々な実施形態において、エアサイドシステム300は、HVACシステム100内のエアサイドシステム130を補助するか若しくはそれに置き代わり得るか、又はHVACシステム100とは別個に実装され得る。HVACシステム100に実装されるとき、エアサイドシステム300は、HVACシステム100内のHVACデバイスのサブセット(例えば、AHU106、VAVユニット116、ダクト112〜114、ファン、ダンパなど)を含み得、ビルディング10内又は周辺に位置し得る。エアサイドシステム300は、ウォーターサイドシステム200によって提供される加熱又は冷却された流体を使用して、ビルディング10に提供される気流を加熱又は冷却するように動作し得る。
図3に、エアサイドシステム300が、エコノマイザ型エアハンドリングユニット(AHU)302を含むものとして示されている。エコノマイザ型AHUは、加熱又は冷却のためにエアハンドリングユニットによって使用される外気及び還気の量を変える。例えば、AHU302は、ビルディング区域306から還気ダクト308を通して還気304を受け取り得、給気ダクト312を通してビルディング区域306に給気310を送給し得る。いくつかの実施形態では、AHU302は、ビルディング10の屋根に位置する屋上ユニット(例えば、図1に示されるAHU106)又は還気304と外気314との両方を受け取るように他の場所に位置決めされた屋上ユニットである。AHU302は、混ざり合って給気310を生成する外気314と還気304との量を制御するために、排気ダンパ316、混合ダンパ318及び外気ダンパ320を動作させるように構成され得る。混合ダンパ318を通過しない還気304は、AHU302から排気ダンパ316を通して排気322として排出され得る。
各ダンパ316〜320は、アクチュエータによって動作することができる。例えば、排気ダンパ316はアクチュエータ324によって動作することができ、混合ダンパ318はアクチュエータ326によって動作することができ、外気ダンパ320はアクチュエータ328によって動作することができる。アクチュエータ324〜328は、通信リンク332を介してAHU制御装置330と通信し得る。アクチュエータ324〜328は、AHU制御装置330から制御信号を受信することができ、AHU制御装置330にフィードバック信号を提供し得る。フィードバック信号は、例えば、現在のアクチュエータ又はダンパ位置の標示、アクチュエータによって及ぼされるトルク又は力の量、診断情報(例えば、アクチュエータ324〜328によって実施された診断テストの結果)、ステータス情報、試運転情報、構成設定、較正データ及び/又はアクチュエータ324〜328によって収集、記憶若しくは使用され得る他のタイプの情報若しくはデータを含み得る。AHU制御装置330は、1つ又は複数の制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例積分(PI)制御アルゴリズム、比例積分微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用してアクチュエータ324〜328を制御するように構成されたエコノマイザ制御装置であり得る。
引き続き図3を参照すると、AHU302は、給気ダクト312内に位置決めされた冷却コイル334、加熱コイル336及びファン338を含むものとして示されている。ファン338は、給気310を冷却コイル334及び/又は加熱コイル336に通し、さらに給気310をビルディング区域306に提供するように構成され得る。AHU制御装置330は、通信リンク340を介してファン338と通信して、給気310の流量を制御し得る。いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、ファン338の速度を調整することにより、給気310に加えられる加熱又は冷却の量を制御する。
冷却コイル334は、冷却された流体を、配管342を通してウォーターサイドシステム200から(例えば、冷水ループ216から)受け取ることができ、また、冷却された流体を、配管344を通してウォーターサイドシステム200に戻すことができる。冷却コイル334を通る冷却流体の流量を制御するために、配管342又は配管344に沿って弁346が位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、冷却コイル334は、給気310に加えられる冷却量を調整するために、(例えば、AHU制御装置330やBMS制御装置366などによって)独立して作動及び作動停止され得る複数ステージの冷却コイルを含む。
加熱コイル336は、加熱された流体を、配管348を通してウォーターサイドシステム200から(例えば、温水ループ214から)受け取ることができ、また、加熱された流体を、配管350を通してウォーターサイドシステム200に戻すことができる。加熱コイル336を通る加熱流体の流量を制御するために、配管348又は配管350に沿って弁352が位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、加熱コイル336は、給気310に加えられる加熱量を調整するために、(例えば、AHU制御装置330やBMS制御装置366などによって)独立して作動及び作動停止され得る複数ステージの加熱コイルを含む。
弁346及び352は、アクチュエータによって制御され得る。例えば、弁346はアクチュエータ354によってそれぞれ制御され得、弁352は、アクチュエータ356によって制御され得る。アクチュエータ354〜356は、通信リンク358〜360を介してAHU制御装置330と通信し得る。アクチュエータ354〜356は、AHU制御装置330から制御信号を受信することができ、制御装置330にフィードバック信号を提供し得る。いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、給気ダクト312内(例えば、冷却コイル334及び/又は加熱コイル336の下流)に位置決めされた温度センサ362から給気温度の測定値を受信する。また、AHU制御装置330は、ビルディング区域306内に位置する温度センサ364からビルディング区域306の温度の測定値を受信することもある。
いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、アクチュエータ354〜356によって弁346及び352を操作して、(例えば、給気310の設定値温度を実現するため又は設定値温度範囲内で給気310の温度を維持するために)給気310に提供される加熱又は冷却の量を調整する。弁346及び352の位置は、冷却コイル334又は加熱コイル336によって給気310に提供される加熱又は冷却の量に影響を及ぼし、所望の給気温度を実現するために消費されるエネルギーの量と相関し得る。AHU330は、コイル334〜336を作動若しくは作動停止させること、ファン338の速度を調節すること又はそれら両方の組合せにより、給気310及び/又はビルディング区域306の温度を制御し得る。
引き続き図3を参照すると、エアサイドシステム300は、ビルディング管理システム(BMS)制御装置366及びクライアントデバイス368を含むものとして示されている。BMS制御装置366は、システムレベル制御装置としての役割を果たす1つ又は複数のコンピュータシステム(例えば、サーバ、監視制御装置、サブシステム制御装置など)、アプリケーション若しくはデータサーバ、ヘッドノード又はエアサイドシステム300のためのマスタ制御装置、ウォーターサイドシステム200、HVACシステム100及び/又はビルディング10にサービス提供する他の制御可能なシステムを含み得る。BMS制御装置366は、複数の下流のビルディングシステム又はサブシステム(例えば、HVACシステム100、セキュリティシステム、照明システム、ウォーターサイドシステム200など)と、同様の又は異なるプロトコル(例えば、LON(登録商標)やBACnet(登録商標)など)に従って通信リンク370を介して通信し得る。様々な実施形態において、AHU制御装置330とBMS制御装置366は、(図3に示されるように)別々であるか又は一体化され得る。一体化された実装では、AHU制御装置330は、BMS制御装置366のプロセッサによって実行されるように構成されたソフトウェアモジュールであり得る。
いくつかの実施形態では、AHU制御装置330は、BMS制御装置366から情報(例えば、コマンド、設定値、動作境界など)を受信し、BMS制御装置366に情報(例えば、温度測定値、弁又はアクチュエータ位置、動作ステータス、診断など)を提供する。例えば、AHU制御装置330は、温度センサ362〜364からの温度測定値、機器のオン/オフ状態、機器の動作能力及び/又は任意の他の情報をBMS制御装置366に提供することができ、これらの情報をBMS制御装置366が使用して、ビルディング区域306内の変動する状態又は条件を監視又は制御することができる。
クライアントデバイス368は、HVACシステム100、そのサブシステム及び/又はデバイスを制御、閲覧又は他の方法でそれらと対話するための1つ又は複数の人間−機械インターフェース又はクライアントインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース、報告インターフェース、テキストベースのコンピュータインターフェース、クライアントフェーシングウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバなど)を含み得る。クライアントデバイス368は、コンピュータワークステーション、クライアント端末、遠隔若しくはローカルインターフェース又は任意の他のタイプのユーザインターフェースデバイスであり得る。クライアントデバイス368は、固定端末でもモバイルデバイスであり得る。例えば、クライアントデバイス368は、デスクトップコンピュータ、ユーザインターフェースを備えるコンピュータサーバ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、PDA又は任意の他のタイプのモバイルデバイス若しくは非モバイルデバイスであり得る。クライアントデバイス368は、通信リンク372を介してBMS制御装置366及び/又はAHU制御装置330と通信し得る。
ビルディング管理システム
次に、図4を参照すると、いくつかの実施形態によるビルディング管理システム(BMS)400のブロック図が示されている。BMS400は、様々なビルディング機能を自動的に監視及び制御するためにビルディング10に実装され得る。BMS400は、BMS制御装置366及び複数のビルディングサブシステム428を含むものとして示されている。ビルディングサブシステム428は、ビルディング電気サブシステム434、情報通信技術(ICT)サブシステム436、セキュリティサブシステム438、HVACサブシステム440、照明サブシステム442、エレベータ/エスカレータサブシステム432及び火災安全サブシステム430を含むものとして示されている。様々な実施形態において、ビルディングサブシステム428は、より少数の、追加の又は代替のサブシステムを含むことができる。例えば、追加又は代替として、ビルディングサブシステム428は、冷蔵サブシステム、広告若しくは標識サブシステム、調理サブシステム、販売サブシステム、プリンタ若しくはコピーサービスサブシステム又はビルディング10を監視若しくは制御するために制御可能な機器及び/又はセンサを使用する任意の他のタイプのビルディングサブシステムを含み得る。いくつかの実施形態では、ビルディングサブシステム428は、図2〜3を参照して述べたように、ウォーターサイドシステム200及び/又はエアサイドシステム300を含む。
各ビルディングサブシステム428は、その個々の機能及び制御活動を完遂するための多数のデバイス、制御装置及び接続を含み得る。HVACサブシステム440は、図1〜3を参照して述べたようなHVACシステム100と同じ構成要素の多くを含み得る。例えば、HVACサブシステム440は、冷却器、ボイラ、多数のエアハンドリングユニット、エコノマイザ、フィールド制御装置、監視制御装置、アクチュエータ、温度センサ及びビルディング10内の温度、湿度、気流又は他の可変条件を制御するための他のデバイスを含み得る。照明サブシステム442は、多数の照明器具、安定器、照明センサ、調光器又はビルディング空間に提供される光の量を制御可能に調節するように構成された他のデバイスを含み得る。セキュリティサブシステム438は、人感センサ、ビデオ監視カメラ、デジタルビデオレコーダ、ビデオ処理サーバ、侵入検出デバイス、アクセス制御デバイス及びサーバ又は他のセキュリティ関連デバイスを含み得る。
引き続き図4を参照すると、BMS制御装置366は、通信インターフェース407及びBMSインターフェース409を含むものとして示されている。インターフェース407は、BMS制御装置366と外部アプリケーション(例えば、監視及び報告アプリケーション422、企業管理アプリケーション426、遠隔システム及びアプリケーション444、クライアントデバイス448に常駐するアプリケーションなど)との間の通信を容易にして、BMS制御装置366及び/又はサブシステム428に対するユーザ制御、監視及び調節を可能にし得る。また、インターフェース407は、BMS制御装置366とクライアントデバイス448との間の通信を容易にし得る。BMSインターフェース409は、BMS制御装置366とビルディングサブシステム428(例えば、HVAC、照明セキュリティ、エレベータ、配電、ビジネスなど)との間の通信を容易にし得る。
インターフェース407、409は、ビルディングサブシステム428又は他の外部システム若しくはデバイスとのデータ通信を行うための有線若しくは無線通信インターフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、有線端末など)であり得るか又はそれを含み得る。様々な実施形態において、インターフェース407、409を介する通信は、直接的なもの(例えば、ローカル有線又は無線通信)でも、通信ネットワーク446(例えば、WAN、インターネット、セルラネットワークなど)を介するものであり得る。例えば、インターフェース407、409は、Ethernet(登録商標)ベースの通信リンク又はネットワークを介してデータを送受信するためのEthernetカード及びポートを含むことができる。別の例では、インターフェース407、409は、無線通信ネットワークを介して通信するためのWi−Fi送受信機を含むことができる。別の例では、インターフェース407、409の一方又は両方は、セルラ又は携帯電話通信送受信機を含み得る。一実施形態では、通信インターフェース407は電力線通信インターフェースであり、BMSインターフェース409はEthernetインターフェースである。他の実施形態では、通信インターフェース407とBMSインターフェース409がいずれもEthernetインターフェースであるか、又は同一のEthernetインターフェースである。
引き続き図4を参照すると、BMS制御装置366は、プロセッサ406及びメモリ408を含む処理回路404を含むものとして示されている。処理回路404は、処理回路404及びその様々な構成要素がインターフェース407、409を介してデータを送受信できるように、BMSインターフェース409及び/又は通信インターフェース407に通信可能に接続され得る。プロセッサ406は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1群の処理コンポーネント又は他の適切な電子処理コンポーネントとして実装することができる。
メモリ408(例えば、メモリ、メモリユニット、記憶デバイスなど)は、本出願で述べる様々なプロセス、層及びモジュールを完遂又は容易化するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ又は複数のデバイス(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置など)を含み得る。メモリ408は、揮発性メモリ若しくは不揮発性メモリであり得るか又はそれを含み得る。メモリ408は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント又は本出願で述べる様々な活動及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含み得る。いくつかの実施形態によれば、メモリ408は、処理回路404を介してプロセッサ406に通信可能に接続され、(例えば、処理回路404及び/又はプロセッサ406によって)本明細書で述べる1つ又は複数のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含む。
いくつかの実施形態では、BMS制御装置366は、単一のコンピュータ(例えば、1つのサーバや1つのハウジングなど)内に実装される。様々な他の実施形態では、BMS制御装置366は、(例えば、分散された場所に存在することができる)複数のサーバ又はコンピュータにわたって分散されることもある。さらに、図4は、BMS制御装置366の外部に存在するものとしてアプリケーション422及び426を示しているが、いくつかの実施形態では、アプリケーション422及び426は、BMS制御装置366内(例えば、メモリ408内)でホストされることもある。
引き続き図4を参照すると、メモリ408は、企業統合層410、自動測定及び検証(AM&V)層412、要求応答(DR)層414、故障検出及び診断(FDD)層416、統合制御層418並びにビルディングサブシステム統合層420を含むものとして示されている。層410〜420は、ビルディングサブシステム428及び他のデータ源から入力を受信し、入力に基づいてビルディングサブシステム428のための最適な制御アクションを決定し、最適な制御アクションに基づいて制御信号を生成し、生成された制御信号をビルディングサブシステム428に提供するように構成され得る。以下の段落では、BMS400での各層410〜420によって実施される全般的な機能のいくつかを述べる。
企業統合層410は、様々な企業レベルのアプリケーションをサポートするための情報及びサービスをクライアント又はローカルアプリケーションに提供するように構成され得る。例えば、企業管理アプリケーション426は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)又は多数の企業レベルのビジネスアプリケーション(例えば、会計システムやユーザ識別システムなど)にサブシステムスパニング制御を提供するように構成され得る。企業管理アプリケーション426は、追加又は代替として、BMS制御装置366を構成するための構成GUIを提供するように構成されることもある。さらに他の実施形態では、企業管理アプリケーション426は、層410〜420と協働して、インターフェース407及び/又はBMSインターフェース409で受信された入力に基づいてビルディングパフォーマンス(例えば、効率、エネルギー使用量、快適性又は安全性)を最適化することができる。
ビルディングサブシステム統合層420は、BMS制御装置366とビルディングサブシステム428との間の通信を管理するように構成され得る。例えば、ビルディングサブシステム統合層420は、ビルディングサブシステム428からセンサデータ及び入力信号を受信し、ビルディングサブシステム428に出力データ及び制御信号を提供し得る。ビルディングサブシステム統合層420は、ビルディングサブシステム428間の通信を管理するように構成されることもある。ビルディングサブシステム統合層420は、複数のマルチベンダ/マルチプロトコルシステムにわたって通信(例えば、センサデータ、入力信号、出力信号など)を変換する。
要求応答層414は、ビルディング10の要求が満たされたことに応答して、資源使用量(例えば、電気使用量、天然ガス使用量、水使用量など)及び/又はそのような資源使用量の金銭的コストを最適化するように構成され得る。最適化は、時間帯別の価格、削減信号、エネルギー利用可能性又は公益事業者、分散型エネルギー生成システム424、エネルギー貯蔵装置427(例えば、高温TES242や低温TES244など)若しくは他の提供源から受信される他のデータに基づき得る。要求応答層414は、BMS制御装置366の他の層(例えば、ビルディングサブシステム統合層420や統合制御層418など)からの入力を受信することもある。他の層から受信される入力は、温度、二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、空気質センサ出力、人感センサ出力、部屋スケジュールなどの環境入力又はセンサ入力を含み得る。また、入力は、公益事業からの電気使用量(例えば、単位kWhで表される)、熱負荷測定値、価格情報、予測価格、平滑化価格、削減信号などの入力を含むこともある。
いくつかの実施形態によれば、要求応答層414は、受信したデータ及び信号に応答するための制御論理を含む。これらの応答は、統合制御層418内の制御アルゴリズムと通信すること、制御戦略を変更すること、設定値を変更すること又は制御下でビルディング機器若しくはサブシステムを作動/作動停止することを含むことができる。また、要求応答層414は、貯蔵されているエネルギーを利用すべきときを決定するように構成された制御論理を含むこともある。例えば、要求応答層414は、ピーク使用時間の開始直前にエネルギー貯蔵装置427からのエネルギーの使用を開始することを決定し得る。
いくつかの実施形態では、要求応答層414は、要求(例えば、価格、削減信号、要求レベルなど)を表す1つ又は複数の入力に基づいて又は要求に基づいて、エネルギーコストを最小にする(例えば、自動的に設定値を変更する)制御アクションを能動的に開始するように構成された制御モジュールを含む。いくつかの実施形態では、要求応答層414は、機器モデルを使用して、最適な制御アクションの組を決定する。機器モデルは、例えば、様々な組のビルディング機器によって実施される入力、出力及び/又は機能を記述する熱力学モデルを含むことができる。機器モデルは、ビルディング機器の集合体(例えば、サブプラント、冷却器アレイなど)又は個々のデバイス(例えば、個々の冷却器、ヒータ、ポンプなど)を表すことがある。
さらに、要求応答層414は、1つ又は複数の要求応答ポリシー定義(例えば、データベースやXMLファイルなど)を含むか又はそれを利用し得る。ポリシー定義は、(例えば、グラフィカルユーザインターフェースを介して)ユーザによって編集又は調節することができ、それにより、要求入力に応答して開始される制御アクションは、ユーザの用途に合わせて、所望の快適性レベルに合わせて、特定のビルディング機器に合わせて又は他の事項に基づいて調整され得る。例えば、要求応答ポリシー定義は、特定の要求入力に応答してどの機器がオン又はオフにされ得るか、システム又は機器をどの程度長くオフにすべきか、どの設定値を変更できるか、許容できる設定値調節範囲はどの程度か、通常通り予定された設定値に戻るまでに高い要求設定値をどの程度長く保つか、能力の限界にどの程度近付くか、どの機器モードを利用するか、エネルギー貯蔵デバイス(例えば、熱貯蔵タンクやバッテリバンクなど)の内外へのエネルギー伝達速度(例えば、最高速度、アラーム速度、他の速度限度情報など)及び(例えば、燃料電池や電動発電機セットなどを介して)現場でのエネルギー発生を送出するときを指定することができる。
統合制御層418は、ビルディングサブシステム統合層420及び/又は要求応答層414のデータ入力又は出力を使用して制御決定を行うように構成され得る。ビルディングサブシステム統合層420によって実現されるサブシステムの統合により、統合制御層418は、サブシステム428の制御活動を統合することができ、それにより、サブシステム428が単一の統合型スーパーシステムとして挙動する。いくつかの実施形態では、統合制御層418は、複数のビルディングサブシステムからの入力及び出力を使用する制御論理を含み、個々のサブシステムが単独で提供することができる快適性及びエネルギー節約よりも大きい快適性及びエネルギー節約を提供する。例えば、統合制御層418は、第1のサブシステムからの入力を使用して、第2のサブシステムに関するエネルギー節約制御決定を行うように構成され得る。これらの決定の結果は、ビルディングサブシステム統合層420に通信し返すことができる。
統合制御層418は、論理的に要求応答層414の下位にあるものとして示されている。統合制御層418は、ビルディングサブシステム428及びそれらそれぞれの制御ループを要求応答層414と共同で制御できるようにすることにより、要求応答層414の有効性を高めるように構成され得る。この構成は、有利には、従来のシステムに比べて、破壊的な要求応答挙動を減少し得る。例えば、統合制御層418は、冷却される水の温度の設定値(又は温度に直接若しくは間接的に影響を及ぼす別の成分)に対する要求応答に基づく上方修正が、ファンエネルギー(又は空間を冷却するために使用される他のエネルギー)の増加をもたらさないことを保証するように構成され得る。そのようなファンエネルギーの増加は、ビルディング総エネルギー使用量を、冷却器で保存されているエネルギーよりも大きくしてしまう。
統合制御層418は、要求応答層414にフィードバックを提供するように構成され得、それにより、要求応答層414は、要求された部分的送電停止が行われている間であっても制約(例えば、温度や照明レベルなど)が適切に維持されていることをチェックする。制約には、安全性、機器動作限界及びパフォーマンス、快適性、火災コード、電気コード、エネルギーコードなどに関係する設定値又は検知境界が含まれることもある。また、統合制御層418は、論理的に、故障検出及び診断層416並びに自動測定及び検証層412の下位にある。統合制御層418は、複数のビルディングサブシステムからの出力に基づいて、計算された入力(例えば、集約)をこれらのより高いレベルの層に提供するように構成され得る。
自動測定及び検証(AM&V)層412は、(例えば、AM&V層412、統合制御層418、ビルディングサブシステム統合層420、FDD層416又は他の層によって集約されたデータを使用して)統合制御層418又は要求応答層414によって指令された制御戦略が適切に機能していることを検証するように構成され得る。AM&V層412によって行われる計算は、個々のBMSデバイス又はサブシステムに関するビルディングシステムエネルギーモデル及び/又は機器モデルに基づき得る。例えば、AM&V層412は、モデルに基づいて予測された出力をビルディングサブシステム428からの実際の出力と比較して、モデルの精度を決定し得る。
故障検出及び診断(FDD)層416は、ビルディングサブシステム428及びビルディングサブシステムデバイス(すなわちビルディング機器)に関する継続的な故障検出機能を提供し、要求応答層414及び統合制御層418によって使用されるアルゴリズムを制御するように構成され得る。FDD層416は、統合制御層418から、直接的に1つ若しくは複数のビルディングサブシステム若しくはデバイスから又は別のデータ源からデータ入力を受信し得る。FDD層416は、検出された故障を自動的に診断して応答し得る。検出又は診断された故障に対する応答は、ユーザ、メンテナンススケジューリングシステム又は故障を修理する若しくは故障に対処することを試みるように構成された制御アルゴリズムに警報メッセージを提供することを含み得る。
FDD層416は、ビルディングサブシステム統合層420で利用可能な詳細なサブシステム入力を使用して、故障している構成要素又は故障の原因(例えば、緩いダンパ連係)の具体的な識別を出力するように構成され得る。他の例示的実施形態では、FDD層416は、「故障」イベントを統合制御層418に提供するように構成され、統合制御層418は、受信された故障イベントに応答して制御戦略及びポリシーを実行する。いくつかの実施形態によれば、FDD層416(又は統合制御エンジン若しくはビジネスルールエンジンによって実行されるポリシー)は、システムをシャットダウンするか、又は故障しているデバイス若しくはシステムの周囲での制御活動を指示して、エネルギー浪費を減少させ、機器寿命を延ばすか、又は適切な制御応答を保証し得る。
FDD層416は、様々な異なるシステムデータストア(又はライブデータに関するデータポイント)を記憶するか又はそこにアクセスするように構成され得る。FDD層416は、データストアのうち、あるコンテンツを、機器レベル(例えば、特定の冷却器、特定のAHU、特定の端末ユニットなど)での故障を識別するために使用し、他のコンテンツを、構成要素又はサブシステムレベルでの故障を識別するために使用し得る。例えば、ビルディングサブシステム428は、BMS400及びその様々な構成要素のパフォーマンスを示す時間的(すなわち時系列)データを生成し得る。ビルディングサブシステム428によって生成されるデータは、測定値又は計算値を含むことがあり、それらの測定値又は計算値は、統計的特性を示し、対応するシステム又はプロセス(例えば、温度制御プロセスや流量制御プロセスなど)がその設定値からの誤差に対してどのように挙動しているかに関する情報を提供する。これらのプロセスは、FDD層416によって検査することができ、システムのパフォーマンスが低下し始めたときを明らかにし、より深刻になる前に故障を修理するようにユーザに警報する。
次に、図5を参照すると、いくつかの実施形態による、別のビルディング管理システム(BMS)500のブロック図が示されている。BMS500を使用して、HVACシステム100、ウォーターサイドシステム200、エアサイドシステム300、ビルディングサブシステム428のデバイス並びに他のタイプのBMSデバイス(例えば、照明機器、セキュリティ機器など)及び/又はHVAC機器を監視及び制御することができる。
BMS500は、自動機器発見及び機器モデル分配を容易にするシステムアーキテクチャを提供する。機器発見は、複数の異なる通信バス(例えば、システムバス554、ゾーンバス556〜560及び564、センサ/アクチュエータバス566など)にわたって及び複数の異なる通信プロトコルにわたって、BMS500の複数のレベルで行うことができる。いくつかの実施形態では、機器発見は、アクティブノードテーブルを使用して達成され、アクティブノードテーブルは、各通信バスに接続されたデバイスに関するステータス情報を提供する。例えば、新たなノードに関する対応するアクティブノードテーブルを監視することにより、新たなデバイスについて各通信バスを監視することができる。新たなデバイスが検出されると、BMS500は、ユーザ対話なしで、新たなデバイスとの対話(例えば、制御信号の送信、デバイスからのデータの使用)を開始することができる。
BMS500でのいくつかのデバイスは、機器モデルを使用してネットワークにそれら自体の存在を知らせる。機器モデルは、他のシステムとの統合のために使用される機器オブジェクト属性、ビュー定義、スケジュール、トレンド及び関連のBACnet値オブジェクト(例えば、アナログ値、バイナリ値、マルチステート値など)を定義する。BMS500でのいくつかのデバイスは、それら独自の機器モデルを記憶している。BMS500での他のデバイスは、機器モデルが外部に(例えば、他のデバイス内に)記憶されている。例えば、ゾーンコーディネータ508が、バイパスダンパ528に関する機器モデルを記憶することができる。いくつかの実施形態において、ゾーンコーディネータ508は、バイパスダンパ528又はゾーンバス558上の他のデバイスに関する機器モデルを自動的に作成する。他のゾーンコーディネータも、それらのゾーンバスに接続されたデバイスに関する機器モデルを作成することができる。デバイスに関する機器モデルは、ゾーンバス上のデバイスによって提示されるデータポイントのタイプ、デバイスタイプ及び/又は他のデバイス属性に基づいて自動的に作成することができる。自動の機器発見及び機器モデル分配のいくつかの例を以下でより詳細に論じる。
図5をさらに参照すると、BMS500は、システムマネージャ502と、いくつかのゾーンコーディネータ506、508、510及び518と、いくつかのゾーンコントローラ524、530、532、536、548及び550とを含むものとして示されている。システムマネージャ502は、BMS500内のデータポイントを監視し、監視される変数を様々な監視及び/又は制御アプリケーションに報告することができる。システムマネージャ502は、データ通信リンク574(例えば、BACnet(登録商標)IP、イーサネット(登録商標)、有線又は無線通信など)を介してクライアントデバイス504(例えば、ユーザデバイス、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モバイルデバイスなど)と通信することができる。システムマネージャ502は、データ通信リンク574を介してクライアントデバイス504へのユーザインターフェースを提供することができる。ユーザインターフェースは、ユーザがクライアントデバイス504を介してBMS500を監視及び/又は制御できるようにし得る。
いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506〜510及び518と接続される。システムマネージャ502は、マスタ・スレーブトークンパッシング(MSTP)プロトコル又は任意の他の通信プロトコルを使用して、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506〜510及び518と通信するように構成することができる。また、システムバス554は、システムマネージャ502を、定容積(CV)ルーフトップユニット(RTU)512、入出力モジュール(IOM)514、サーモスタットコントローラ516(例えば、TEC5000系列のサーモスタットコントローラ)及びネットワーク自動化エンジン(NAE)又はサードパーティのコントローラ520など他のデバイスと接続することもできる。RTU512は、システムマネージャ502と直接通信するように構成することができ、システムバス554に直接接続することができる。他のRTUは、中間デバイスを介してシステムマネージャ502と通信することができる。例えば、有線入力562は、サードパーティのRTU542をサーモスタットコントローラ516に接続することができ、サーモスタットコントローラ516は、システムバス554に接続する。
システムマネージャ502は、機器モデルを含む任意のデバイスのためのユーザインターフェースを提供することができる。ゾーンコーディネータ506〜510及び518並びにサーモスタットコントローラ516などのデバイスは、システムバス554を介してそれらの機器モデルをシステムマネージャ502に提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、機器モデルを含まない接続されたデバイス(例えば、IOM514、サードパーティのコントローラ520など)に関して、機器モデルを自動的に作成する。例えば、システムマネージャ502は、デバイスツリーリクエストに応答する任意のデバイスに関する機器モデルを作成することができる。システムマネージャ502によって作成された機器モデルは、システムマネージャ502に記憶することができる。次いで、システムマネージャ502は、システムマネージャ502によって作成された機器モデルを使用して、自機の機器モデルを含まないデバイスのためのユーザインターフェースを提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介して接続された各タイプの機器に関するビュー定義を記憶し、記憶されているビュー定義を使用してその機器のためのユーザインターフェースを生成する。
各ゾーンコーディネータ506〜510及び518は、ゾーンバス556、558、560及び564を介してゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550の1つ又は複数と接続することができる。ゾーンコーディネータ506〜510及び518は、MSTPプロトコル又は任意の他の通信プロトコルを使用して、ゾーンバス556〜560及び564を介してゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550と通信することができる。また、ゾーンバス556〜560及び564は、ゾーンコーディネータ506〜510及び518を、可変風量(VAV)RTU522及び540、切替えバイパス(COBP)RTU526及び552、バイパスダンパ528及び546並びにPEAKコントローラ534及び544など他のタイプのデバイスと接続することもできる。
ゾーンコーディネータ506〜510及び518は、様々なゾーニングシステムを監視及び命令するように構成することができる。いくつかの実施形態では、各ゾーンコーディネータ506〜510及び518は、別個のゾーニングシステムを監視及び命令し、別個のゾーンバスを介してゾーニングシステムに接続される。例えば、ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU522及びゾーンコントローラ524に接続することができる。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU526、バイパスダンパ528、COBPゾーンコントローラ530及びVAVゾーンコントローラ532に接続することができる。ゾーンコーディネータ510は、ゾーンバス560を介してPEAKコントローラ534及びVAVゾーンコントローラ536に接続することができる。ゾーンコーディネータ518は、ゾーンバス564を介して、PEAKコントローラ544、バイパスダンパ546、COBPゾーンコントローラ548及びVAVゾーンコントローラ550に接続することができる。
ゾーンコーディネータ506〜510及び518の単一のモデルは、複数の異なるタイプのゾーニングシステム(例えば、VAVゾーニングシステム、COBPゾーニングシステムなど)を取り扱うように構成することができる。各ゾーニングシステムは、RTU、1つ又は複数のゾーンコントローラ及び/又はバイパスダンパを含むことができる。例えば、ゾーンコーディネータ506及び510は、それぞれVAV RTU522及び540に接続されたVerasys VAVエンジン(VVE)として示されている。ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU522に直接接続され、ゾーンコーディネータ510は、PEAKコントローラ534に提供された有線入力568を介してサードパーティのVAV RTU540に接続される。ゾーンコーディネータ508及び518は、それぞれCOBP RTU526及び552に接続されたVerasys COBPエンジン(VCE)として示されている。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU526に直接接続され、ゾーンコーディネータ518は、PEAKコントローラ544に提供された有線入力570を介してサードパーティのCOBP RTU552に接続される。
ゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550は、センサ/アクチュエータ(SA)バスを介して個々のBMSデバイス(例えば、センサ、アクチュエータなど)と通信することができる。例えば、VAVゾーンコントローラ536は、SAバス566を介して、ネットワーク化されたセンサ538に接続されて示されている。ゾーンコントローラ536は、MSTPプロトコル又は任意の他の通信プロトコルを使用して、ネットワーク化されたセンサ538と通信することができる。図5にはSAバス566が1つのみ示されているが、各ゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550を異なるSAバスに接続できることを理解されたい。各SAバスは、ゾーンコントローラを様々なセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、光センサ、人感センサなど)、アクチュエータ(例えば、ダンパアクチュエータ、バルブアクチュエータなど)及び/又は他のタイプの制御可能な機器(例えば、冷却器、ヒータ、ファン、ポンプなど)と接続することができる。
各ゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550は、異なるビルディング区域を監視及び制御するように構成することができる。ゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550は、それらのSAバスを介して提供される入力及び出力を使用して、様々なビルディング区域を監視及び制御することができる。例えば、ゾーンコントローラ536は、温度制御アルゴリズムでのフィードバックとして、ネットワーク化されたセンサ538からSAバス566を介して受信された温度入力(例えば、ビルディング区域の測定された温度)を使用することができる。ゾーンコントローラ524、530〜532、536及び548〜550は、様々なタイプの制御アルゴリズム(例えば、状態ベースのアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例積分(PI)制御アルゴリズム、比例積分微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用して、ビルディング10内又は周囲の可変状態又は状況(例えば、温度、湿度、気流、照明など)を制御することができる。
モデル予測的メンテナンスシステム
次に、図6を参照すると、例示的実施形態によるビルディングシステム600のブロック図が示されている。システム600は、図4〜5を参照して述べたBMS400及びBMS500と同じ構成要素の多くを含むことができる。例えば、システム600は、ビルディング10、ネットワーク446及びクライアントデバイス448を含むものとして示されている。ビルディング10は、接続された機器610を含むものとして示されており、機器610は、ビルディング10を監視及び/又は制御するために使用される任意のタイプの機器を含むことができる。接続された機器610は、接続された冷却器612、接続されたAHU614、接続されたボイラ616、接続されたバッテリ618又はビルディングシステム内の任意の他のタイプの機器(例えば、ヒータ、エコノマイザ、バルブ、アクチュエータ、ダンパ、冷却塔、ファン、ポンプなど)若しくはビルディング管理システム内の任意の他のタイプの機器(例えば、照明機器、セキュリティ機器、冷凍機器など)を含むことができる。接続された機器610は、図1〜5を参照して述べたHVACシステム100、ウォーターサイドシステム200、エアサイドシステム300、BMS400及び/又はBMS500の機器のいずれを含むこともできる。
接続された機器610には、接続された機器610の様々な状態(例えば、電力消費量、オン/オフ状態、動作効率など)を監視するためのセンサを装備することができる。例えば、冷却器612は、冷凍回路内の様々な位置での冷却水温度、凝縮水温度及び冷媒特性(例えば、冷媒圧力、冷媒温度など)などの冷却器変数を監視するように構成されたセンサを含むことができる。冷却器612の1つとして使用することができる冷却器700の一例が図7に示されている。冷却器700は、凝縮器702、膨張弁704、蒸発器706、圧縮機708及び制御パネル710を有する冷凍回路を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、冷却器700は、冷凍回路に沿った様々な位置での監視される変数の組を測定するセンサを含む。同様に、AHU614には、給気温度及び湿度、外気温度及び湿度、還気温度及び湿度、冷却された流体の温度、加熱された流体の温度、ダンパ位置などのAHU変数を監視するためのセンサを装備することができる。一般に、接続された機器610は、接続された機器610の性能を特徴付ける変数を監視及び報告することができる。監視された各変数は、ポイントID及びポイント値を含むデータポイントとしてビルディング管理システム606に転送することができる。
監視される変数は、接続された機器610及び/又はその構成要素の性能を示す任意の測定された値又は計算された値を含むことができる。例えば、監視される変数は、1つ又は複数の測定又は計算された温度(例えば、冷媒温度、冷水供給温度、温水供給温度、給気温度、ゾーン温度など)、圧力(例えば、蒸発器圧力、凝縮器圧力、供給空気圧力など)、流量(例えば、冷水流量、温水流量、冷媒流量、供給空気流量など)、バルブ位置、資源消費(例えば、電力消費量、水消費量、電気消費量など)、制御設定点、モデルパラメータ(例えば、回帰モデル係数)又は対応するシステム、デバイス若しくはプロセスがどのように動作しているかに関する情報を提供する任意の他の時系列値を含むことができる。監視される変数は、接続された機器610及び/又はその様々な構成要素から受信することができる。例えば、監視される変数は、1つ又は複数のコントローラ(例えば、BMSコントローラ、サブシステムコントローラ、HVACコントローラ、サブプラントコントローラ、AHUコントローラ、デバイスコントローラなど)、BMSデバイス(例えば、冷却器、冷却塔、ポンプ、加熱素子など)又はBMSデバイスの集合体から受信することができる。
接続された機器610は、機器ステータス情報を報告することもできる。機器ステータス情報は、例えば、機器の動作ステータス、動作モード(例えば、低負荷、中負荷、高負荷など)、機器が正常な状態で稼働しているか異常な状態で稼働しているかの標示、機器が稼働している時間、安全障害コード又は接続された機器610の現在のステータスを示す任意の他の情報を含むことができる。いくつかの実施形態において、接続された機器610の各デバイスは、制御パネル(例えば、図7に示される制御パネル710)を含む。制御パネル710は、接続された機器610から監視される変数及び機器ステータス情報を収集し、収集されたデータをBMS606に提供するように構成することができる。例えば、制御パネル710は、センサデータ(又はセンサデータから導出された値)を所定の閾値と比較することができる。センサデータ又は計算された値が安全閾値を超える場合、制御パネル710は、デバイスをシャットダウンすることができる。制御パネル710は、安全シャットダウンが起きたときにデータポイントを生成することができる。データポイントは、シャットダウンをトリガした理由又は状態を示す安全障害コードを含むことができる。
接続された機器610は、監視される変数及び機器ステータス情報をBMS606に提供することができる。BMS606は、ビルディングコントローラ(例えば、BMSコントローラ366)、システムマネージャ(例えば、システムマネージャ503)、ネットワーク自動化エンジン(例えば、NAE520)又は接続された機器610と通信するように構成されたビルディング10の任意の他のシステム若しくはデバイスを含むことができる。BMS606は、図4〜5を参照して述べたBMS400又はBMS500の構成要素のいくつか又はすべてを含むことがある。いくつかの実施形態では、監視される変数及び機器ステータス情報は、データポイントとしてBMS606に提供される。各データポイントは、ポイントID及びポイント値を含むことができる。ポイントIDは、データポイントのタイプ又はデータポイントによって測定される変数(例えば、凝縮器圧力、冷媒温度、電力消費量など)を識別することができる。監視される変数は、名前又は英数字コード(例えば、Chilled_Water_Temp、7694など)によって識別することができる。ポイント値は、データポイントの現在の値を示す英数字値を含むことができる。
BMS606は、監視される変数及び機器ステータス情報をモデル予測的メンテナンスシステム602にブロードキャストすることができる。いくつかの実施形態では、モデル予測的メンテナンスシステム602は、BMS606の構成要素である。例えば、モデル予測的メンテナンスシステム602は、Johnson Controls Inc.が販売しているMETASYS(登録商標)ブランドのビルディング自動化システムの一部として実装することができる。他の実施形態では、モデル予測的メンテナンスシステム602は、ネットワーク446を介して1つ又は複数のビルディング管理システムからのデータを受信及び処理するように構成された遠隔コンピューティングシステム又はクラウドベースのコンピューティングシステムの構成要素であり得る。例えば、モデル予測的メンテナンスシステム602は、Johnson Controls Inc.が販売しているPANOPTIX(登録商標)ブランドのビルディング効率プラットフォームの一部として実装することができる。他の実施形態では、モデル予測的メンテナンスシステム602は、サブシステムレベルコントローラ(例えば、HVACコントローラ)、サブプラントコントローラ、デバイスコントローラ(例えば、AHUコントローラ330、冷却器コントローラなど)、フィールドコントローラ、コンピュータワークステーション、クライアントデバイス又は接続された機器610から監視される変数を受信して処理する任意の他のシステム若しくはデバイスの構成要素であり得る。
モデル予測的メンテナンス(MPM)システム602は、監視される変数及び/又は機器ステータス情報を使用して、接続された機器610の現在の動作条件を識別することができる。MPMシステム602によって現在の動作条件を検査して、接続された機器610の性能が低下し始めるときを明らかにし、且つ/又は障害が発生するときを予測することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610から収集された情報を使用して、接続された機器610の信頼性を推定する。例えば、MPMシステム602は、接続された機器610の現在の動作条件と、接続された機器610が設置されてから及び/又はメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量とに基づいて、発生する可能性があり得る様々なタイプの故障の尤度を推定することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、各故障が発生すると予測されるまでの時間量を推定し、各故障に関連する経済的コスト(例えば、メンテナンスコスト、増加される動作コスト、交換コストなど)を識別する。MPMシステム602は、信頼性情報及び潜在的な故障の尤度を使用して、メンテナンスが必要とされるときを予測し、所定の期間にわたってそのようなメンテナンスを実施するコストを推定することができる。
MPMシステム602は、接続された機器610に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス戦略は、最適化期間(例えば、30週、52週、10年、30年など)の継続期間にわたる接続された機器610の購入、メンテナンス及び動作に関連する総コストを最適化する決定事項の組である。これらの決定事項は、例えば、機器の購入の決定、機器のメンテナンスの決定及び機器の動作の決定を含むことができる。MPMシステム602は、モデル予測制御技法を使用して、これらの決定事項の関数として総コストを表す目的関数を定式化することができる。決定事項は、決定変数として目的関数に含めることができる。MPMシステム602は、様々な最適化技法のいずれかを使用して目的関数を最適化(例えば、最小化)して、各決定変数に関する最適値を識別することができる。
MPMシステム602によって最適化することができる目的関数の一例は、次式で示される。
ここで、C
op,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、ドル/kWh)であり、P
op,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、C
main,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、B
main,iは、メンテナンスが実施されるか否かを示すバイナリ変数であり、C
cap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、B
cap,iは、新たなデバイスが購入されるか否かを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施されるホライズン又は最適化期間の継続時間である。
目的関数Jの第1項は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の動作コストを表す。いくつかの実施形態では、単位エネルギーあたりのコストCop,iは、エネルギー価格データとして公益企業608から受信される。コストCop,iは、時刻、曜日(例えば、平日か週末か)、現在の季節(例えば、夏か冬か)又は他の時間ベースの因子に依存する時変コストであり得る。例えば、コストCop,iは、ピークエネルギー消費期間中にはより高く、オフピーク又は部分ピークエネルギー消費期間中にはより低いことがある。
いくつかの実施形態では、電力消費量P
op,iは、ビルディング10の加熱又は冷却負荷に基づく。加熱又は冷却負荷は、ビルディング占有、時刻、曜日、現在の季節又は加熱若しくは冷却負荷に影響を与え得る他の因子に応じて、MPMシステム602によって予測することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、気象サービス604からの天気予報を使用して加熱又は冷却負荷を予測する。電力消費量P
op,iは、接続された機器610の効率η
iにも依存する。例えば、高い効率で動作する接続された機器610は、低い効率で動作する接続された機器610に比べて、同じ加熱又は冷却負荷を満たすために消費する電力P
op,iが少ないことがある。一般に、接続された機器610の特定のデバイスの電力消費量P
op,iは、次式を使用してモデル化することができる。
ここで、Load
iは、時間ステップiにおけるデバイスに対する加熱又は冷却負荷(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)であり、P
ideal,iは、対応する負荷点Load
iでのデバイスに関する機器性能曲線の値(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)であり、η
iは、時間ステップiにおけるデバイスの動作効率である(例えば、0≦η
i≦1)。関数f(Load
i)は、性能曲線によって表されるデバイス又はデバイスのセットの機器性能曲線によって定義することができる。
いくつかの実施形態では、機器性能曲線は、理想的な動作条件下でのデバイスに関する製造業者仕様に基づいている。例えば、機器性能曲線は、接続された機器610の各デバイスに関する電力消費量と加熱/冷却負荷との関係を定義することがある。しかし、デバイスの実際の性能は、実際の動作条件に応じて異なることがある。MPMシステム602は、接続された機器610によって提供される機器性能情報を分析して、接続された機器610の各デバイスに関する動作効率ηiを決定することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610からの機器性能情報を使用して、接続された機器610の各デバイスに関する実際の動作効率ηiを決定する。MPMシステム602は、動作効率ηiを目的関数Jへの入力として使用すること及び/又は対応するPop,i値を計算することができる。
有利には、MPMシステム602は、各時間ステップiにおける接続された機器610の効率ηiを、メンテナンス決定Bmain,i及び機器購入決定Bcap,iの関数としてモデル化することができる。例えば、特定のデバイスに関する効率ηiは、デバイスが購入されたときに初期値η0で始まることがあり、時間と共に低下し、連続する各時間ステップiと共に効率ηiが低下することがある。デバイスに対するメンテナンスを実施することで、メンテナンスが実施された直後に効率ηiをより高い値にリセットすることができる。同様に、新たなデバイスを購入して既存のデバイスと交換することで、新たなデバイスが購入された直後に効率ηiをより高い値にリセットすることができる。リセット後、効率ηiは、メンテナンスが実施されるか又は新たなデバイスが購入される次の時点まで、時間と共に低下し続けることがある。
メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、動作中の電力消費量Pop,iが比較的低くなり、したがって、メンテナンスが実施された後又は新たなデバイスが購入された後に各時間ステップiにおける動作コストがより低くなることがある。言い換えると、メンテナンスの実施又は新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第1項によって表される動作コストを低減することができる。しかし、メンテナンスの実施により、目的関数Jの第2項が増加することがあり、新たなデバイスの購入により、目的関数Jの第3項が増加することがある。目的関数Jは、これらの各コストを捕捉し、MPMシステム602によって最適化して、最適化期間の継続期間にわたるメンテナンス及び機器購入決定の最適な組(すなわちバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値)を決定することができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610からの機器性能情報を使用して、接続された機器610の信頼性を推定する。信頼性は、接続された機器610がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、接続された機器610が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量に基づく。
MPMシステム602は、複数のビルディングに分散された接続された機器610の複数のデバイスから動作データを受信することがあり、動作データのセット(例えば、動作条件、障害標示、故障時間など)を使用して、各タイプの機器に関する信頼性モデルを生成することができる。MPMシステム602が信頼性モデルを使用して、接続された機器610の任意の所与のデバイスの信頼性を、その現在の動作条件及び/又は他の外的要因(例えば、メンテナンスが最後に実施されてからの時間、地理的位置、水質など)に応じて推定することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、接続された機器610の各デバイスの推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいてデバイスがメンテナンス及び/又は交換を必要とする確率を決定する。MPMシステム602は、これらの確率を使用して、最適化期間の継続期間にわたるメンテナンス及び機器購入決定の最適な組(すなわちバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値)を決定することができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成及び提供する。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、接続された機器610の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、接続された機器610の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
有利には、MPMシステム602によって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、接続された機器610の実際の動作条件及び実際の性能に基づく予測的な推奨である。MPMシステム602によって実施される最適化は、メンテナンスを実施するコスト及び新たな機器を購入するコストを、そのようなメンテナンス又は購入の決定により生じる動作コストの低減に対して重み付けして、総複合コストJを最小化する最適なメンテナンス戦略を決定する。このようにして、MPMシステム602によって生成される機器購入及びメンテナンスの推奨は、各グループの接続された機器610に特有のものとなり、特定のグループの接続された機器610に関する最適なコストJを実現することができる。機器に特有の推奨は、いくつかのグループの接続された機器610及び/又はいくつかの動作条件に関しては最適でないことがある機器製造業者によって提供される一般的な予防的メンテナンスの推奨(例えば、毎年の機器の整備)に比べ、全体的なコストJを低くすることができる。
いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング10(例えば、BMS606)及び/又はクライアントデバイス448に提供される。操作者又はビルディングの所有者は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、メンテナンスの実施及び新たなデバイスの購入のコスト及び利益を評価することができる。いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨が整備士620に提供される。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、整備の実施又は機器の交換のために顧客に連絡すべきときを決定することができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、データ分析及び視覚化プラットフォームを含む。MPMシステム602は、整備士620、クライアントデバイス448及び他のシステム又はデバイスがアクセスすることができるウェブインターフェースを提供することがある。ウェブインターフェースを使用して、機器性能情報にアクセスし、最適化の結果を閲覧し、メンテナンスが必要な機器を識別し、さもなければMPMシステム602と対話することができる。整備士620は、ウェブインターフェースにアクセスして、MPMシステム602によってメンテナンスが推奨される機器のリストを閲覧することができる。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、接続された機器610を早期に修理又は交換し、目的関数Jによって予測される最適なコストを実現することができる。MPMシステム602のこれら及び他の特徴は、以下でより詳細に述べる。
次に、図8を参照すると、例示的実施形態に従って、MPMシステム602をより詳細に例示するブロック図が示されている。MPMシステム602は、最適化結果をビルディング管理システム(BMS)606に提供するものとして示されている。BMS606は、図4〜5を参照して述べたBMS400及び/又はBMS500の特徴のいくつか又はすべてを含むことがある。BMS606に提供される最適化結果は、最適化期間内の時間ステップiごとに目的関数Jの決定変数の最適値を含むことがある。いくつかの実施形態では、最適化結果は、接続された機器610のデバイスごとの機器購入及びメンテナンスの推奨を含む。
BMS606は、接続された機器610の動作及び性能を監視するように構成されることがある。BMS606は、接続された機器610から監視される変数を受信することができる。監視される変数は、接続された機器610及び/又はその構成要素の性能を示す任意の測定された値又は計算された値を含むことができる。例えば、監視される変数は、1つ又は複数の測定又は計算された温度、圧力、流量、バルブ位置、資源消費(例えば、電力消費量、水消費量、電気消費量など)、制御設定点、モデルパラメータ(例えば、機器モデル係数)又は対応するシステム、デバイス若しくはプロセスがどのように動作しているかに関する情報を提供する任意の他の変数を含むことができる。
いくつかの実施形態では、監視される変数が、接続された機器610の各デバイスの動作効率ηiを示すか、又は監視される変数を使用して動作効率ηiを計算することができる。例えば、冷却器によって出力される冷却された水の温度及び流量を使用して、冷却器によってサービス提供される冷却負荷(例えば、トン単位での冷却負荷)を計算することができる。冷却負荷を冷却器の電力消費量と組み合わせて使用して、動作効率ηi(例えば、消費される電気1kWあたりのトン単位での冷却負荷)を計算することができる。BMS606は、接続された機器610の各デバイスの動作効率ηiを計算する際に使用するために、監視される変数をMPMシステム602に報告することができる。
いくつかの実施形態では、BMS606は、接続された機器610の稼働時間を監視する。稼働時間は、接続された機器610の各デバイスがアクティブである所与の期間内の時間を示し得る。例えば、冷却器に関する稼働時間は、冷却器が1日に約8時間アクティブであることを示すことがある。稼働時間を、アクティブ時の冷却器の平均電力消費量と組み合わせて使用して、各時間ステップiにおける接続された機器610の総電力消費量Pop,iを推定することができる。
いくつかの実施形態では、BMS606は、接続された機器610によって報告される機器故障及び障害標示を監視する。BMS606は、各故障又は障害が発生する時間及び障害又は故障が発生した際の接続された機器610の動作条件を記録することができる。BMS606及び/又はMPMシステム602が、接続された機器610から収集された動作データを使用して、接続された機器610のデバイスごとの信頼性モデルを作成することができる。BMS606は、監視される変数、機器稼働時間、動作条件並びに機器故障及び障害標示を機器性能情報としてMPMシステム602に提供することができる。
BMS606は、制御されているビルディング又はビルディング区域内部の状態を監視するように構成することができる。例えば、BMS606は、ビルディング全体にわたって分散された様々なセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、気流センサ、電圧センサなど)からの入力を受信することがあり、ビルディングの状態をMPMシステム602に報告することがある。ビルディングの状態は、例えば、ビルディング又はビルディングのゾーンの温度、ビルディングの電力消費量(例えば、電気負荷)、ビルディング内部の制御されている状態に影響を与えるように構成された1つ又は複数のアクチュエータの状態又は制御されているビルディングに関係する他のタイプの情報を含むことがある。BMS606は、接続された機器610を動作させて、ビルディング内部の監視されている状態に影響を与え、ビルディングの熱エネルギー負荷を提供することができる。
BMS606は、接続された機器610に制御信号を提供し、接続された機器610に関するオン/オフ状態、充電/放電速度及び/又は設定点を指定することができる。BMS606は、制御信号に従って(例えば、アクチュエータ、継電器などを介して)機器を制御して、接続された機器610の様々なビルディング区域及び/又はデバイスに関する設定点を実現することができる。様々な実施形態において、BMS606は、MPMシステム602と組み合わされ得るか、又は別個のビルディング管理システムの一部であり得る。例示的実施形態によれば、BMS606は、Johnson Controls,Inc.が販売しているMETASYS(登録商標)ブランドのビルディング管理システムである。
MPMシステム602は、BMS606から受信された情報を使用して、接続された機器610の性能を監視することができる。MPMシステム602は、(例えば、気象サービス604からの天気予報を使用して)最適化期間内の複数の時間ステップに関してビルディングの熱エネルギー負荷(例えば、加熱負荷、冷却負荷など)を予測するように構成されることがある。MPMシステム602は、公益企業608から受信された価格データを使用して、電気又は他の資源(例えば、水、天然ガスなど)のコストを予測することもある。MPMシステム602は、最適化プロセスに対する制約(例えば、負荷制約、決定変数制約など)を受ける最適化期間の継続期間にわたって、接続された機器610の動作、メンテナンス及び購入の経済的価値を最適化する最適化結果を生成することができる。MPMシステム602によって実施される最適化プロセスを以下でより詳細に述べる。
例示的実施形態によれば、MPMシステム602は、単一のコンピュータ(例えば、1つのサーバ、1つのハウジングなど)の内部に統合することができる。様々な他の例示的実施形態では、MPMシステム602を複数のサーバ又はコンピュータ(例えば、分散された場所に存在し得る)にわたって分散させることができる。別の例示的実施形態では、MPMシステム602は、複数のビルディングシステムを管理するスマートビルディングマネージャと統合し、且つ/又はBMS606と組み合わせることができる。
MPMシステム602は、通信インターフェース804及び処理回路806を含むものとして示されている。通信インターフェース804は、様々なシステム、デバイス又はネットワークとのデータ通信を行うための有線又は無線インターフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、有線端末など)を含むことがある。例えば、通信インターフェース804は、イーサネットベースの通信ネットワークを介してデータを送受信するためのイーサネットカード及びポート及び/又は無線通信ネットワークを介して通信するためのWiFi送受信機を含むことがある。通信インターフェース804は、ローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワーク(例えば、インターネット、ビルディングWANなど)を介して通信するように構成されることがあり、様々な通信プロトコル(例えば、BACnet、IP、LONなど)を使用し得る。
通信インターフェース804は、MPMシステム602と様々な外部システム又はデバイス(例えば、BMS606、接続された機器610、公益企業510など)との間の電子データ通信を容易にするように構成されたネットワークインターフェースであり得る。例えば、MPMシステム602は、BMS606から、制御されているビルディングの1つ又は複数の測定された状態(例えば、温度、湿度、電気負荷など)及び接続された機器610に関する機器性能情報(例えば、稼働時間、電力消費量、動作効率など)を示す情報を受信することがある。通信インターフェース804は、BMS606及び/又は接続された機器610から入力を受信することができ、BMS606及び/又は他の外部システム若しくはデバイスに最適化結果を提供することができる。最適化結果により、BMS606は、接続された機器610に関する設定点をアクティブ化、非アクティブ化又は調整して、最適化結果で指定された決定変数の最適値を実現することができる。
引き続き図8を参照すると、処理回路806は、プロセッサ808及びメモリ810を含むものとして示されている。プロセッサ808は、汎用若しくは特定用途向けプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理構成要素のグループ又は他の適切な処理構成要素であり得る。プロセッサ808は、メモリ810に記憶されたか又は他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワークストレージ、リモートサーバなど)から受信されたコンピュータコード又は命令を実行するように構成され得る。
メモリ810は、本開示で述べる様々なプロセスを完遂及び/又は容易化するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ又は複数のデバイス(例えば、メモリユニット、メモリデバイス、記憶デバイスなど)を含み得る。メモリ810は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ記憶装置、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光学メモリ又はソフトウェアオブジェクト及び/又はコンピュータ命令を記憶するための任意の他の適切なメモリを含み得る。メモリ810は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント又は本開示で述べる様々な活動及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含み得る。メモリ810は、処理回路806を介してプロセッサ808に通信可能に接続され得、本明細書で述べる1つ又は複数のプロセスを(例えば、プロセッサ808によって)実行するためのコンピュータコードを含み得る。
MPMシステム602は、機器性能モニタ824を含むものとして示されている。機器性能モニタ824は、BMS606及び/又は接続された機器610から機器性能情報を受信することができる。機器性能情報は、監視される変数のサンプル(例えば、測定された温度、測定された圧力、測定された流量、電力消費量など)、現在の動作条件(例えば、加熱又は冷却負荷、現在の動作条件など)、障害標示又は接続された機器610の性能を特徴付ける他のタイプの情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、機器性能モニタ824は、機器性能情報を使用して、接続された機器610の各デバイスの現在の効率ηi及び信頼性を計算する。機器性能モニタ824は、目的関数Jの最適化に使用するために、効率ηi及び信頼性値をモデル予測オプティマイザ830に提供することができる。
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602は、負荷/料金予測器822を含むものとして示されている。負荷/料金予測器822は、最適化期間の時間ステップiごとに、ビルディング又は構内のエネルギー負荷(Loadi)(例えば、加熱負荷、冷却負荷、電気負荷など)を予測するように構成されることがある。負荷/料金予測器822は、気象サービス604から天気予報を受信するものとして示されている。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、天気予報に応じてエネルギー負荷Loadiを予測する。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、BMS606からのフィードバックを使用して、負荷Loadiを予測する。BMS606からのフィードバックは、様々なタイプの感覚入力(例えば、温度、流量、湿度、エンタルピーなど)又は制御されているビルディングに関係する他のデータ(例えば、HVACシステム、照明制御システム、セキュリティシステム、給水システムなどからの入力)を含むことがある。
いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、測定された電気負荷及び/又は以前に測定された負荷データをBMS606から(例えば、機器性能モニタ824を介して)受信する。負荷/料金予測器822は、所与の天気予報
、日付け(日)、時刻(t)及び以前に測定された負荷データ(Y
i−1)に応じて負荷Load
iを予測することがある。そのような関係は、次式で表される。
いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、履歴負荷データから訓練された決定論的+確率モデルを使用して負荷Loadiを予測する。負荷/料金予測器822は、様々な予測法の任意のものを使用して負荷Loadiを予測することができる(例えば、決定論的部分に関しては線形回帰及び確率的部分に関してはARモデル)。負荷/料金予測器822は、ビルディング又は構内に関する1つ又は複数の異なるタイプの負荷を予測することがある。例えば、負荷/料金予測器822は、最適化期間内の時間ステップiごとに、温水負荷LoadHot,i、冷水負荷LoadCold,i及び電気負荷LoadElec,iを予測することがある。予測される負荷値Loadiは、これらのタイプの負荷のいくつか又はすべてを含むことができる。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器822は、米国特許出願第14/717,593号に記載されている技法を使用して負荷/料金予測を行う。
負荷/料金予測器822は、公益企業608から公共料金を受信するものとして示されている。公共料金は、最適化期間内の各時間ステップiにおいて公益企業608によって提供される資源(例えば、電気、天然ガス、水など)の単位あたりのコスト又は価格を示すことがある。いくつかの実施形態では、公共料金は時変料金である。例えば、電気の価格は、特定の時間帯又は曜日(例えば、高需要の期間中)にはより高く、他の時間帯又は曜日(例えば、低需要の期間中)にはより低くなることがある。公共料金は、様々な期間と、各期間中の資源の1単位あたりのコストとを定義することがある。公共料金は、公益企業608から受信された実際の料金又は負荷/料金予測器822によって推定された予測公共料金であり得る。
いくつかの実施形態では、公共料金は、公益企業608によって提供される1つ又は複数の資源に関する需要料金を含む。需要料金は、需要料金期間中の特定の資源の最大使用量(例えば、最大エネルギー消費)に基づいて、公益企業608によって課される個別のコストを定義することがある。公共料金は、様々な需要料金期間と、各需要料金期間に関連付けられた1つ又は複数の需要料金とを定義することがある。いくつかの場合、需要料金期間は、互いに及び/又は予測窓と部分的又は完全に重なることがある。モデル予測オプティマイザ830は、高レベルオプティマイザ832によって実施される高レベル最適化プロセスにおける需要料金を考慮に入れるように構成されることがある。公益企業608は、時変(例えば、1時間ごと)の価格、最大サービスレベル(例えば、物理的インフラストラクチャによって又は契約によって許可される最大消費レート)及び電気の場合、需要料金又は特定の期間内の消費量のピークレートに関する料金によって定義されることがある。負荷/料金予測器822は、予測される負荷Loadi及び公共料金をメモリ810に記憶することができ、且つ/又は予測された負荷Loadi及び公共料金をモデル予測オプティマイザ830に提供することができる。
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602は、モデル予測オプティマイザ830を含むものとして示されている。モデル予測オプティマイザ830は、マルチレベル最適化プロセスを実施して、接続された機器610の購入、メンテナンス及び動作に関連付けられた総コストを最適化するように構成することができる。いくつかの実施形態では、モデル予測オプティマイザ830は、高レベルオプティマイザ832及び低レベルオプティマイザ834を含む。高レベルオプティマイザ832は、接続された機器610のセット全体(例えば、ビルディング内部のすべてのデバイス)又は接続された機器610のサブセット(例えば、単一のデバイス、サブプラント又はビルディングサブシステムのすべてのデバイスなど)に関して目的関数Jを最適化して、目的関数Jでの各決定変数(例えば、Pop,i、Bmain,i及びBcap,i)に関する最適値を決定することができる。高レベルオプティマイザ832によって実施される最適化を、図9を参照してより詳細に述べる。
いくつかの実施形態では、低レベルオプティマイザ834は、高レベルオプティマイザ832から最適化結果を受信する。最適化結果は、最適化期間内の各時間ステップiにおける接続された機器の各デバイス又はデバイスのセットに関する最適な電力消費量値Pop,i及び/又は負荷値Loadiを含むことがある。低レベルオプティマイザ834は、高レベルオプティマイザ832によって決定された負荷値で各デバイス又はデバイスのセットを最適に稼働する方法を決定することがある。例えば、低レベルオプティマイザ834は、接続された機器610の電力消費量を最適化(例えば、最小化)して対応する負荷値Loadiを満たすために、接続された機器610の様々なデバイスに関するオン/オフ状態及び/又は動作設定点を決定することがある。
低レベルオプティマイザ834は、接続された機器610の各デバイス又はデバイスのセットに関する機器性能曲線を生成するように構成されることがある。各性能曲線は、接続された機器610の特定のデバイス又はデバイスのセットによる資源消費量(例えば、kW単位で測定される電気使用量、L/sで測定される水使用量など)を、デバイス又はデバイスのセットに対する負荷の関数として示すことがある。いくつかの実施形態において、低レベルオプティマイザ834は、負荷点(例えば、Loadiの様々な値)及び気象条件の様々な組合せで低レベル最適化プロセスを実施して複数のデータポイントを生成することによって性能曲線を生成する。低レベル最適化を使用して、対応する加熱又は冷却負荷を満たすために必要とされる最小の資源消費量を決定することができる。低レベルオプティマイザ834によって実施することができる低レベル最適化プロセスの例は、2015年2月27日出願の「Low Level Central Plant Optimization」という名称の米国特許出願第14/634,615号に詳細に述べられており、その特許出願の開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。低レベルオプティマイザ834は、データポイントに曲線を当てはめて、性能曲線を生成することがある。
いくつかの実施形態では、低レベルオプティマイザ834は、接続された機器610の個々のデバイスの効率曲線を組み合わせることにより、接続された機器610のセット(例えば、冷却器サブプラント、ヒータサブプラントなど)に関する機器性能曲線を生成する。デバイス効率曲線は、負荷の関数としてデバイスによる資源消費量を示すことがある。デバイス効率曲線は、デバイス製造業者によって提供されることがあるか、又は実験データを使用して生成されることもある。いくつかの実施形態において、デバイス効率曲線は、デバイス製造業者によって提供され、実験データを使用して更新された初期効率曲線に基づく。デバイス効率曲線は、機器モデル818に記憶され得る。いくつかのデバイスでは、デバイス効率曲線は、資源消費が負荷のU字関数であることを示すことがある。したがって、複数のデバイス効率曲線が組み合わされて複数のデバイスに関する性能曲線になるとき、得られる性能曲線は波状の曲線になり得る。これらの波は、単一のデバイスが負荷を上げることによって引き起こされ、その後、サブプラント負荷を満たすための別のデバイスの起動がより効率的になる。低レベルオプティマイザ834は、高レベル最適化プロセスで使用するために機器性能曲線を高レベルオプティマイザ832に提供することがある。
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602が、機器コントローラ828を含むものとして示されている。機器コントローラ828は、接続された機器610を制御して、ビルディング10での可変状態又は状況(例えば、温度、湿度など)に影響を与えるように構成することができる。いくつかの実施形態では、機器コントローラ828は、モデル予測オプティマイザ830によって実施された最適化の結果に基づいて、接続された機器610を制御する。いくつかの実施形態では、機器コントローラ828は、接続された機器610に通信インターフェース804及び/又はBMS606を介して提供することができる制御信号を生成する。制御信号は、目的関数Jでの決定変数の最適値に基づくことがある。例えば、機器コントローラ828は、接続された機器610に、最適化期間内の時間ステップiごとの最適な電力消費量値Pop,iを実現させる制御信号を生成することがある。
モデル予測オプティマイザ830、機器コントローラ828又はMPMシステム602の他のモジュールからのデータ及び処理結果は、監視及び報告アプリケーション826によってアクセス(又は監視及び報告アプリケーション826にプッシュ)されることがある。監視及び報告アプリケーション826は、ユーザ(例えば、システムエンジニア)が閲覧及びナビゲートすることができるリアルタイム「システムヘルス」ダッシュボードを生成するように構成されることがある。例えば、監視及び報告アプリケーション826は、GUIのユーザに重要業績評価指標(KPI)又は他の情報を表示するためのいくつかのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)要素(例えば、ウィジェット、ダッシュボードコントロール、ウィンドウなど)を有するウェブベースの監視アプリケーションを含むことがある。さらに、GUI要素は、(実際の又はモデル化された)異なるビルディングや異なる構内などでのビルディング管理システムにわたる相対的なエネルギー使用量及び強度を要約することができる。他のGUI要素又はレポートは、利用可能なデータに基づいて生成されて示されることがあり、ユーザが、1つ又は複数のエネルギー貯蔵システムにわたる性能を1つの画面から評価できるようにする。ユーザインターフェース又はレポート(又は元のデータエンジン)は、ビルディング、ビルディングのタイプ、機器のタイプなどによって動作条件を集計及び分類するように構成されることがある。GUI要素は、ビルディングシステムのデバイスに関する動作パラメータ及び電力消費量をユーザが視覚的に分析できるようにするチャート又はヒストグラムを含むことがある。
引き続き図8を参照すると、MPMシステム602は、監視及び報告アプリケーション826をサポートするために、1つ又は複数のGUIサーバ、ウェブサービス812又はGUIエンジン814を含むことがある。様々な実施形態において、アプリケーション826、ウェブサービス812及びGUIエンジン814は、MPMシステム602の外部の別個の構成要素として(例えば、スマートビルディングマネージャの一部として)提供され得る。MPMシステム602は、関連データの詳細な履歴データベース(例えば、リレーショナルデータベース、XMLデータベースなど)を維持するように構成されることがあり、詳細なデータベースに維持されているデータに対して継続的に、頻繁に又は低頻度でクエリ、集約、変換、検索又は他の処理を行うコンピュータコードモジュールを含む。MPMシステム602は、任意のそのような処理の結果を、例えば外部監視及び報告アプリケーションによるさらなるクエリ、計算若しくはアクセスのために、他のデータベース、テーブル、XMLファイル又は他のデータ構造に提供するように構成されることがある。
MPMシステム602は、構成ツール816を含むものとして示されている。構成ツール816により、MPMシステム602がBMS606及び/又は接続された機器610での変化する条件にどのように応答するかをユーザが(例えば、グラフィカルユーザインターフェースを介して、プロンプト方式の「ウィザード」を介してなど)定義できるようにし得る。例示的実施形態では、構成ツール816により、接続された機器610の複数のデバイス、複数のビルディングシステム及び複数のエンタープライズ制御アプリケーション(例えば、作業指示管理システムアプリケーション、エンティティ資源プランニングアプリケーションなど)に及び得る条件応答シナリオをユーザが構築して記憶することができるようにする。例えば、構成ツール816は、様々な条件論理を使用して(例えば、サブシステムからの、イベント履歴からの)データを組み合わせる機能をユーザに提供することができる。様々な例示的実施形態では、条件論理は、条件間の単純な論理演算子(例えば、AND、OR、XORなど)から、擬似コード構造又は複雑なプログラミング言語関数(より複雑な対話、条件文、ループなどを可能にする)まで含むことができる。構成ツール816は、そのような条件論理を構築するためのユーザインターフェースを提示することができる。ユーザインターフェースは、ユーザがグラフィックでポリシー及び応答を定義できるようにすることがある。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースは、ユーザが、予め記憶又は予め構成されたポリシーを選択し、そのポリシーを適合させるか、又はそのユーザのシステムと共に使用できるようにし得る。
高レベルオプティマイザ
次に、図9を参照すると、例示的実施形態に従って、高レベルオプティマイザ832をより詳細に示すブロック図が示されている。高レベルオプティマイザ832は、接続された機器610に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス戦略は、最適化期間(例えば、30週、52週、10年、30年など)の継続期間にわたる接続された機器610の購入、メンテナンス及び動作に関連する総コストを最適化する決定事項の組である。これらの決定事項は、例えば、機器の購入の決定、機器のメンテナンスの決定及び機器の動作の決定を含むことができる。
高レベルオプティマイザ832は、動作コスト予測器910、メンテナンスコスト予測器920、資本コスト予測器930、目的関数生成器935及び目的関数オプティマイザ940を含むものとして示されている。コスト予測器910、920及び930は、モデル予測制御技法を使用して、いくつかの決定変数(例えば、メンテナンス決定、機器購入決定など)及び入力パラメータ(例えば、エネルギーコスト、デバイス効率、デバイス信頼性)の関数として総コストを表す目的関数を定式化することができる。動作コスト予測器910は、目的関数での動作コスト項を定式化するように構成することができる。同様に、メンテナンスコスト予測器920は、目的関数でのメンテナンスコスト項を定式化するように構成することができ、資本コスト予測器930は、目的関数での資本コスト項を定式化するように構成することができる。目的関数オプティマイザ940は、様々な最適化技法のいずれかを使用して目的関数を最適化(例えば、最小化)して、各決定変数に関する最適値を識別することができる。
高レベルオプティマイザ832によって生成することができる目的関数の一例は、次式で示される。
ここで、C
op,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、ドル/kWh)であり、P
op,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、C
main,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、B
main,iは、メンテナンスが実施されるか否かを示すバイナリ変数であり、C
cap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、B
cap,iは、新たなデバイスが購入されるか否かを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施されるホライズン又は最適化期間の継続時間である。
動作コスト予測器
動作コスト予測器910は、目的関数Jでの第1項を定式化するように構成することができる。目的関数Jの第1項は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の動作コストを表し、3つの変数又はパラメータ(すなわちCop,i、Pop,i及びΔt)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、単位エネルギーあたりのコストCop,iは、エネルギーコストモジュール915によって決定される。エネルギーコストモジュール915は、エネルギー価格データとして、公益企業608からエネルギー価格のセットを受信することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー価格は、時刻、曜日(例えば、平日か週末か)、現在の季節(例えば、夏か冬か)又は他の時間ベースの因子に依存する時変コストであり得る。例えば、電気のコストは、ピークエネルギー消費期間中にはより高く、オフピーク又は部分ピークエネルギー消費期間中にはより低いことがある。
エネルギーコストモジュール915は、エネルギーコストを使用して、最適化期間内の時間ステップiごとにCop,iの値を定義することができる。いくつかの実施形態において、エネルギーコストモジュール915は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関するコスト要素を含むアレイCopとしてエネルギーコストを記憶する。例えば、エネルギーコストモジュール915は、以下のアレイを生成することができる。
Cop=[Cop,1 Cop,2 … Cop,h]
ここで、アレイCopは、1×hのサイズを有し、アレイCopの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関するエネルギーコスト値Cop,iを含む。
さらに図9を参照すると、動作コスト予測器910は、理想性能計算機912を含むものとして示されている。理想性能計算機912は、負荷/料金予測器822から負荷予測Loadiを受信することがあり、低レベルオプティマイザ834から性能曲線を受信することがある。上で論じたように、性能曲線は、接続された機器610のデバイス又はデバイスのセットの理想的な電力消費量Pidealを、デバイス又はデバイスのセットに対する加熱又は冷却負荷の関数として定義することがある。例えば、接続された機器610の1つ又は複数のデバイスの性能曲線は、次式によって定義することができる。
Pideal,i=f(Loadi)
ここで、Pideal,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の理想的な電力消費量(例えば、kW)であり、Loadiは、時間ステップにおける接続された機器610に対する負荷(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)である。理想的な電力消費量Pideal,iは、接続された機器610の1つ又は複数のデバイスが完璧な効率で動作すると仮定したそれらの電力消費量を表すことがある。
理想性能計算機912は、接続された機器610のデバイス又はデバイスのセットに関する性能曲線を使用して、Pideal,iの値を識別することができ、この値は、最適化期間の各時間ステップにおけるデバイス又はデバイスのセットに関する負荷点Loadiに対応する。いくつかの実施形態では、理想性能計算機912は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関する要素を含むアレイPidealとして、理想的な負荷値を記憶する。例えば、理想性能計算機912は、以下のアレイを生成することができる。
Pideal=[Pideal,1 Pideal,2 … Pideal,h]T
ここで、アレイPidealは、h×1のサイズを有し、アレイPidealの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関する理想的な電力消費量値Pideal,iを含む。
引き続き図9を参照すると、動作コスト予測器910が、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913を含むものとして示されている。効率アップデータ911は、実際の動作条件下での接続された機器610の効率ηを決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、効率η
iは、次式で示されるように、接続された機器の理想的な電力消費量P
idealと、接続された機器610の実際の電力消費量P
actualとの比を表す。
ここで、P
idealは、接続された機器610に関する性能曲線によって定義される接続された機器610の理想的な電力消費量であり、P
actualは、接続された機器610の実際の電力消費量である。いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、接続された機器610から収集された機器性能情報を使用して、実際の電力消費量値P
actualを識別する。効率アップデータ911は、実際の電力消費量P
actualを理想的な電力消費量P
idealと組み合わせて使用して、効率ηを計算することができる。
効率アップデータ911は、接続された機器610の現在の動作効率を反映するために効率ηを定期的に更新するように構成することができる。例えば、効率アップデータ911は、接続された機器610の効率ηを、1日に1回、1週間に1回、1年に1回又は時間と共に効率ηの変化を捕捉するのに適切であり得る任意の他の間隔で計算することができる。効率ηの各値は、効率ηが計算される時点でのPideal及びPactualの対応する値に基づき得る。いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、高レベル最適化プロセスが実施されるたびに(すなわち目的関数Jが最適化されるたびに)効率ηを更新する。効率アップデータ911によって計算された効率値は、初期効率値η0としてメモリ810に記憶されることがあり、ここで、下付き数字0は、最適化期間の開始時又は開始前(例えば、時間ステップ0で)の効率ηの値を表す。
いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、接続された機器610に対するメンテナンスの実施又は接続された機器610の1つ若しくは複数のデバイスを交換若しくは補完するための新たな機器の購入により生じる接続された機器610の効率ηの上昇を考慮に入れるために、最適化期間中の1つ又は複数の時間ステップに関する効率ηiを更新する。効率ηiが更新される時間ステップiは、メンテナンスが実施されることになるか、又は機器が交換されることになる予測時間ステップに対応することがある。接続された機器610に対してメンテナンスが実施されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bmain,iの値によって定義することができる。同様に、機器が交換されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bcap,iの値によって定義することができる。
効率アップデータ911は、その時間ステップにおいてメンテナンスが実施されること及び/又はその時間ステップにおいて新たな機器が購入されることをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが示す場合(すなわちBmain,i=1及び/又はBcap,i=1)、所与の時間ステップiに関する効率ηiをリセットするように構成することができる。例えば、Bmain,i=1の場合、効率アップデータ911は、ηiの値をηmainにリセットするように構成することができ、ここで、ηmainは、時間ステップiにおいて実施されるメンテナンスにより得られると期待される効率値である。同様に、Bcap,i=1の場合、効率アップデータ911は、ηiの値をηcapにリセットするように構成することができ、ここで、ηcapは、時間ステップiにおいて実施される接続された機器610の1つ又は複数のデバイスを補完又は交換するために新たなデバイスを購入することにより得られると期待される効率値である。効率アップデータ911は、1つ又は複数の時間ステップに関して効率ηiを動的にリセットすることができ、(例えば、最適化の各反復によって)バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に基づいて最適化が実施される。
効率デグレーダ913は、最適化期間の各時間ステップiにおける接続された機器610の効率ηiを予測するように構成することができる。最適化期間の開始時の初期効率η0は、接続された機器610の性能が低下するにつれて、時間と共に低下することがある。例えば、冷却器の効率は、冷却水管が汚れて冷却器の熱伝達率が低下した結果、時間と共に低下することがある。同様に、バッテリの物理的又は化学的構成要素の劣化により、バッテリの効率は、時間と共に低下することがある。効率デグレーダ913は、そのような低下を、最適化期間の継続時間にわたって効率ηiを段階的に低下させることによって考慮に入れるように構成することができる。
いくつかの実施形態では、初期効率値η0は、各最適化期間の開始時に更新される。しかし、効率ηは、最適化期間中に低下することがあり、初期効率値η0は、最適化期間の継続期間にわたって次第に不正確になる。最適化期間中の効率低下を考慮に入れるために、効率デグレーダ913は、連続する各時間ステップにおいて効率ηを所定量だけ低下させることができる。例えば、効率デグレーダ913は、各時間ステップi=1...hでの効率を以下のように定義することができる。
ηi=ηi−1−Δη
ここで、ηiは、時間ステップiにおける効率であり、ηi−1は、時間ステップi−1での効率であり、Δηは、連続する時間ステップ間での効率の低下である。いくつかの実施形態では、ηiのこの定義は、Bmain,i=0及びBcap,i=0である各時間ステップに適用される。しかし、Bmain,i=1又はBcap,i=1である場合、ηiの値は、前述したようにηmain又はηcapにリセットされ得る。
いくつかの実施形態では、Δηの値は、効率アップデータ911によって計算された効率値の時系列に基づいている。例えば、効率デグレーダ913は、効率アップデータ911によって計算された初期効率値η
0の時系列を記録することがあり、ここで、各初期効率値η
0は、特定の時点における接続された機器610の経験的に計算された効率を表す。効率デグレーダ913は、初期効率値η
0の時系列を検査して、効率が低下する率を決定することができる。例えば、時点t
1での初期効率η
0がη
0,1であり、時点t
2での初期効率がη
0,2である場合、効率デグレーダ913は、効率低下率を以下のように計算することができる。
ここで、
は、効率低下率である。効率デグレーダ913は、
に、各時間ステップの継続時間Δtを乗算して、Δηの値を計算することができる(すなわち、
)。
いくつかの実施形態では、効率デグレーダ913は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関する要素を含むアレイηに、最適化期間の継続期間にわたる効率値を記憶する。例えば、効率デグレーダ913は、以下のアレイを生成することができる。
η=[η1 η2 … ηh]
ここで、アレイηは、h×1のサイズを有し、アレイηの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関する効率値ηiを含む。アレイηの各要素iは、前の要素の値とΔηの値とに基づいて計算されることがある(例えば、Bmain,i=0及びBcap,i=0の場合)か、又はηmain又はηcapに動的にリセットされることがある(例えば、Bmain,i=1又はBcap,i=1の場合)。
効率アップデータ911及び効率デグレーダ913によって実施される効率更新及びリセット動作を特徴付ける論理は、次式で要約することができる。
Bmain,i=1の場合 → ηi=ηmain
Bcap,i=1の場合 → ηi=ηcap
Bmain,i=0及びBcap,i=0の場合 → ηi=ηi−1−Δη
これは、目的関数オプティマイザ940によって実施される高レベル最適化に対する制約として適用することができる。
有利には、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913は、各時間ステップiにおける接続された機器610の効率ηiを、メンテナンス決定Bmain,i及び機器購入決定Bcap,iの関数としてモデル化することができる。例えば、特定のデバイスに関する効率ηiは、最適化期間の開始時に初期値η0で始まることがあり、時間と共に低下し、連続する各時間ステップiと共に効率ηiが低下することがある。デバイスに対するメンテナンスを実施することで、メンテナンスが実施された直後に効率ηiをより高い値にリセットすることができる。同様に、新たなデバイスを購入して既存のデバイスと交換することで、新たなデバイスが購入された直後に効率ηiをより高い値にリセットすることができる。リセット後、効率ηiは、メンテナンスが実施されるか又は新たなデバイスが購入される次の時点まで、時間と共に低下し続けることがある。
引き続き図9を参照すると、動作コスト予測器910は、電力消費量推定器914及び動作コスト計算機916を含むものとして示されている。電力消費量推定器914は、最適化期間の各時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量P
op,iを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、電力消費量推定器914は、理想性能計算機912によって計算された理想電力消費量P
ideal,iと、効率デグレーダ913及び/又は効率アップデータ911によって決定された効率η
iとの関数として、電力消費量P
op,iを推定する。例えば、電力消費量推定器914は、次式を使用して電力消費量P
op,iを計算することができる。
ここで、P
ideal,iは、対応する負荷点Load
iでのデバイスに関する機器性能曲線に基づいて理想性能計算機912によって計算された電力消費量であり、η
iは、時間ステップiにおけるデバイスの動作効率である。
いくつかの実施形態では、電力消費量推定器914は、最適化期間内のh個の時間ステップそれぞれに関する要素を含むアレイPopとして電力消費量値を記憶する。例えば、電力消費量推定器914は、以下のアレイを生成することができる。
Pop=[Pop,1 Pop,2 … Pop,h]T
ここで、アレイPopは、h×1のサイズを有し、アレイPopの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関する理想的な電力消費量値Pop,iを含む。
動作コスト計算機916は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の動作コストを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、動作コスト計算機916は、次式を使用して各時間ステップi中の動作コストを計算する。
Cost
op,i=C
op,iP
op,iΔt
ここで、P
op,iは、電力消費量推定器914によって決定される時間ステップiにおける予測電力消費量であり、C
op,iは、エネルギーコストモジュール915によって決定される時間ステップiにおける単位エネルギーあたりのコストであり、Δtは、各時間ステップの継続期間である。動作コスト計算機916は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたる動作コストを合計することができる。
ここで、Cost
opは、目的関数Jの動作コスト項である。
他の実施形態では、動作コスト計算機916は、次式で示されるように、コストアレイCopに電力消費量アレイPop及び各時間ステップの継続時間Δtを乗算することにより、動作コストCostopを推定する。
Costop=CopPopΔt
Costop=[Cop,1 Cop,2 … Cop,h][Pop,1 Pop,2 … Pop,h]TΔt
メンテナンスコスト予測器
メンテナンスコスト予測器920は、目的関数Jでの第2項を定式化するように構成することができる。目的関数Jでの第2項は、最適化期間の継続期間にわたる、接続された機器610に対するメンテナンスを実施するコストを表し、2つの変数又はパラメータ(すなわちCmain,i及びBmain,i)を含むものとして示されている。メンテナンスコスト予測器920は、メンテナンス推定器922、信頼性推定器924、メンテナンスコスト計算機926及びメンテナンスコストモジュール928を含むものとして示されている。
信頼性推定器924は、接続された機器610から受信された機器性能情報に基づいて、接続された機器610の信頼性を推定するように構成することができる。信頼性は、接続された機器610がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、接続された機器610が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量及び/又は接続された機器610が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。
いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、機器性能情報を使用して、接続された機器610の現在の動作条件を識別する。信頼性推定器924によって現在の動作条件を検査して、接続された機器610の性能が低下し始めるときを明らかにし、及び/又は障害が発生するときを予測することができる。いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、接続された機器610で潜在的に発生し得る様々なタイプの故障の尤度を推定する。各故障の尤度は、接続された機器610の現在の動作条件、接続された機器610が設置されてから経過した時間量及び/又はメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量に基づくことがある。いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、2016年6月21日出願の「Building Management System With Predictive Diagnostics」という名称の米国特許出願第15/188,824号に記載のシステム及び方法を使用して、動作条件を識別し、様々な故障の尤度を予測する。上記特許出願の開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
いくつかの実施形態では、信頼性推定器924は、複数のビルディングにわたって分散された接続された機器610の複数のデバイスから動作データを受信する。動作データは、例えば、現在の動作条件、障害標示、故障時間又は接続された機器610の動作及び性能を特徴付ける他のデータを含むことができる。信頼性推定器924は、動作データのセットを使用して、各タイプの機器に関する信頼性モデルを作成することができる。信頼性推定器924が信頼性モデルを使用して、接続された機器610の任意の所与のデバイスの信頼性を、その現在の動作条件及び/又は他の外的要因(例えば、メンテナンスが最後に実施されてからの時間、設置又は購入からの時間、地理的位置、水質など)に応じて推定することができる。
信頼性推定器924が使用することができる信頼性モデルの一例は、次式で示される。
Reliabilityi=f(OpCondi,Δtmain,i,Δtcap,i)
ここで、Reliabilityiは、時間ステップiにおける接続された機器610の信頼性であり、OpCondiは、時間ステップiにおける動作条件であり、Δtmain,iは、メンテナンスが最後に行われた時点と時間ステップiとの間で経過した時間量であり、Δtcap,iは、接続された機器610が購入又は設置された時点と時間ステップiとの間で経過した時間量である。信頼性推定器924は、接続された機器610からフィードバックとして受信された機器性能情報に基づいて現在の動作条件OpCondiを識別するように構成することができる。より過酷な条件下(例えば、高負荷、極端な温度など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。
信頼性推定器924は、バイナリ決定変数Bmain,iの値に基づいて、接続された機器610に対してメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量Δtmain,iを決定することがある。各時間ステップiに関して、信頼性推定器924は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi−1、i−2、...、1)におけるBmainの対応する値を検査することができる。信頼性推定器924は、メンテナンスが最後に実施された時点(すなわちBmain,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことにより、Δtmain,iの値を計算することができる。メンテナンスが最後に実施されてからの時間量Δtmain,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、メンテナンスが最後に実施されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
同様に、信頼性推定器924は、バイナリ決定変数Bcap,iの値に基づいて、接続された機器610が購入又は設置されてから経過した時間量Δtcap,iを決定することがある。各時間ステップiに関して、信頼性推定器924は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi−1、i−2、...、1)におけるBcapの対応する値を検査することができる。信頼性推定器924は、接続された機器610が購入又は設置された時点(すなわちBcap,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことにより、Δtcap,iの値を計算することができる。接続された機器610が購入又は設置されてからの時間量Δtcap,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、接続された機器610が購入又は設置されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
信頼性推定器924は、その時間ステップにおいてメンテナンスが実施されること及び/又はその時間ステップにおいて新たな機器が購入されることをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが示す場合(すなわちBmain,i=1及び/又はBcap,i=1)、所与の時間ステップiに関する信頼性をリセットするように構成することができる。例えば、Bmain,i=1の場合、信頼性推定器924は、Reliabilityiの値をReliabilitymainにリセットするように構成することができ、ここで、Reliabilitymainは、時間ステップiにおいて実施されるメンテナンスにより得られると期待される信頼性値である。同様に、Bcap,i=1の場合、信頼性推定器924は、Reliabilityiの値をReliabilitycapにリセットするように構成することができ、ここで、Reliabilitycapは、時間ステップiにおいて実施される接続された機器610の1つ又は複数のデバイスを補完又は交換するために新たなデバイスを購入することにより得られると期待される信頼性値である。信頼性推定器924は、1つ又は複数の時間ステップに関して信頼性を動的にリセットすることができ、(例えば、最適化の各反復によって)バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に基づいて最適化が実施される。
メンテナンス推定器922は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいて接続された機器610がメンテナンス及び/又は交換を必要とする確率を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922は、接続された機器610が所与の時間ステップにおいてメンテナンスを必要とする確率を臨界値と比較するように構成される。メンテナンス推定器922は、時間ステップiにおいて接続された機器610がメンテナンスを必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bmain,i=1の値を設定するように構成することができる。同様に、メンテナンス推定器922は、接続された機器610が所与の時間ステップにおいて交換を必要とする確率を臨界値と比較するように構成することができる。メンテナンス推定器922は、時間ステップiにおいて接続された機器610が交換を必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定するように構成することができる。
いくつかの実施形態では、接続された機器610の信頼性とバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値とに相互関係がある。言い換えると、接続された機器610の信頼性は、最適化で選択されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に影響を与えることができ、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値は、接続された機器610の信頼性に影響を与えることができる。有利には、目的関数オプティマイザ940によって実施される最適化は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iと接続された機器610の信頼性との相互関係を考慮に入れながら、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの最適値を識別することができる。
いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922は、バイナリメンテナンス決定変数の行列B
mainを生成する。行列B
mainは、最適化期間の各時間ステップにおいて実施することができる様々なメンテナンス活動それぞれに関するバイナリ決定変数を含むことがある。例えば、メンテナンス推定器922は、以下の行列を生成することができる。
ここで、行列B
mainは、サイズがm×hであり、行列B
mainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップにおける特定のメンテナンス活動に関するバイナリ決定変数を含む。例えば、バイナリ決定変数B
main,j,iの値は、第jのメンテナンス活動が最適化期間の第iの時間ステップ中に実施されるか否かを示す。
引き続き図9を参照すると、メンテナンスコスト予測器920は、メンテナンスコストモジュール928及びメンテナンスコスト計算機926を含むものとして示されている。メンテナンスコストモジュール928は、接続された機器610の様々なタイプのメンテナンスの実施に関連するコストCmain,iを決定するように構成することができる。メンテナンスコストモジュール928は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)からメンテナンスコストのセットを受信することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコストは、様々なタイプのメンテナンスを実施する経済的コスト(例えば、ドル)を定義する。各タイプのメンテナンス活動は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、冷却器圧縮機内のオイルを交換するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、比較的小さいことがあり、冷却器を完全に分解してすべての冷却水管を洗浄するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、かなり大きいことがある。
メンテナンスコストモジュール928は、メンテナンスコストを使用して、目的関数JでのCmain,iの値を定義することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコストモジュール928は、実施することができるメンテナンス活動それぞれに関するコスト要素を含むアレイCmainとしてメンテナンスコストを記憶する。例えば、メンテナンスコストモジュール928は、以下のアレイを生成することができる。
Cmain=[Cmain,1 Cmain,2 … Cmain,m]
ここで、アレイCmainは、サイズが1×mであり、アレイCmainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1...mに関するメンテナンスコスト値Cmain,jを含む。
いくつかのメンテナンス活動は、他よりもコストがかかることがある。しかし、異なるタイプのメンテナンス活動が、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性に対する異なるレベルの改良をもたらすことがある。例えば、冷却器内のオイルの単なる交換は、効率ηのわずかな改良及び/又は信頼性のわずかな改良をもたらすことがあり、冷却器の完全な分解及びすべての冷却水管の洗浄は、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性のかなり大きい改良をもたらすことがある。したがって、複数の異なるレベルのメンテナンス後の効率(すなわちηmain)及びメンテナンス後の信頼性(すなわちReliabilitymain)が存在し得る。ηmain及びReliabilitymainの各レベルは、異なるタイプのメンテナンス活動に対応することがある。
いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922は、異なるレベルのηmain及びReliabilitymainそれぞれを、対応するアレイに記憶する。例えば、パラメータηmainは、m個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を有するアレイηmainとして定義することができる。同様に、パラメータReliabilitymainは、m個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を有するアレイReliabilitymainとして定義することができる。これらのアレイの例は、次式で示される。
ηmain=[ηmain,1 ηmain,2 … ηmain,m]
Reliabilitymain=[Reliabilitymain,1 Reliabilitymain,2 … Reliabilitymain,m]
ここで、アレイηmainは、サイズが1×mであり、アレイηmainの各要素は、特定のメンテナンス活動に関するメンテナンス後の効率値ηmain,jを含む。同様に、アレイReliabilitymainは、サイズが1×mであり、アレイReliabilitymainの各要素は、特定のメンテナンス活動に関するメンテナンス後の信頼性値Reliabilitymain,jを含む。
いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別し、Bmain,j,i=1の場合、効率ηを、対応するメンテナンス後の効率レベルηmain,jにリセットする。同様に、信頼性推定器924は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別することができ、Bmain,j,i=1の場合、信頼性を、対応するメンテナンス後の信頼性レベルReliabilitymain,jにリセットすることができる。
メンテナンスコスト計算機926は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610のメンテナンスコストを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコスト計算機926は、次式を使用して各時間ステップi中のメンテナンスコストを計算する。
Cost
main,i=C
main,iB
main,i
ここで、C
main,iは、時間ステップiにおいて実施することができるm個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を含むメンテナンスコストのアレイであり、B
main,iは、m個のメンテナンス活動それぞれが時間ステップiにおいて実施されるか否かを示すバイナリ決定変数のアレイである。メンテナンスコスト計算機926は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたってメンテナンスコストを合計することができる。
ここで、Cost
mainは、目的関数Jのメンテナンスコスト項である。
他の実施形態では、メンテナンスコスト計算機926は、次式に示されるように、メンテナンスコストアレイC
mainにバイナリ決定変数の行列B
mainを乗算することによってメンテナンスコストCost
mainを推定する。
資本コスト予測器
資本コスト予測器930は、目的関数Jでの第3項を定式化するように構成することができる。目的関数Jでの第3項は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の新しいデバイスを購入するコストを表し、2つの変数又はパラメータ(すなわちCcap,i及びBcap,i)を含むものとして示されている。資本コスト予測器930は、購入推定器932、信頼性推定器934、資本コスト計算機936及び資本コストモジュール938を含むものとして示されている。
信頼性推定器934は、メンテナンスコスト予測器920を参照して述べたように、信頼性推定器924の特徴のいくつか又はすべてを含むことができる。例えば、信頼性推定器934は、接続された機器610から受信された機器性能情報に基づいて、接続された機器610の信頼性を推定するように構成することができる。信頼性は、接続された機器610がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、接続された機器610が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量及び/又は接続された機器610が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。信頼性推定器934は、前述したように、信頼性推定器924の特徴及び/又は機能のいくつか又はすべてを含むことができる。
購入推定器932は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいて接続された機器610の新たなデバイスが購入される確率を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、購入推定器932は、所与の時間ステップにおいて接続された機器610の新たなデバイスが購入される確率を臨界値と比較するように構成される。購入推定器932は、時間ステップiにおいて接続された機器610が購入される確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定するように構成することができる。
いくつかの実施形態では、購入推定器932は、バイナリ資本決定変数の行列B
capを生成する。行列B
capは、最適化期間の各時間ステップにおいて行うことができる様々な資本購入それぞれに関するバイナリ決定変数を含むことができる。例えば、購入推定器932は、以下の行列を生成することができる。
ここで、行列B
capは、サイズがp×hであり、行列B
capの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップにおける特定の資本購入に関するバイナリ決定変数を含む。例えば、バイナリ決定変数B
cap,k,iの値は、最適化期間の第iの時間ステップ中に第kの資本購入が行われるか否かを示す。
引き続き図9を参照すると、資本コスト予測器930は、資本コストモジュール938及び資本コスト計算機936を含むものとして示されている。資本コストモジュール938は、様々な資本購入(すなわち接続された機器610の1つ又は複数の新たなデバイスの購入)に関連するコストCcap,iを決定するように構成することができる。資本コストモジュール938は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)から資本コストのセットを受信することができる。いくつかの実施形態では、資本コストは、様々な資本購入を行う経済的コスト(例えば、ドル)を定義する。各タイプの資本購入は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、新たな温度センサの購入にかかる経済的コストは比較的小さいことがあり、新たな冷却器の購入にかかる経済的コストはかなり大きいことがある。
資本コストモジュール938は、購入コストを使用して、目的関数JでのCcap,iの値を定義することができる。いくつかの実施形態では、資本コストモジュール938は、行うことができる資本購入それぞれに関するコスト要素を含むアレイCcapとして資本コストを記憶する。例えば、資本コストモジュール938は、以下のアレイを生成することができる。
Ccap=[Ccap,1 Ccap,2 … Ccap,p]
ここで、アレイCcapは、サイズが1×pであり、アレイCcapの各要素は、特定の資本購入k=1...pに関するコスト値Ccap,kを含む。
いくつかの資本購入は、他のものよりも高価であり得る。しかし、異なるタイプの資本購入が、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性に対する異なるレベルの改良をもたらすことがある。例えば、既存のセンサの交換のために新たなセンサを購入することで、効率ηがわずかに向上し、且つ/又は信頼性がわずかに向上することがあり、新たな冷却器及び制御システムを購入することで、接続された機器610の効率η及び/又は信頼性がかなり大きく向上することがある。したがって、複数の異なるレベルの購入後の効率(すなわちηcap)及び購入後の信頼性(すなわちReliabilitycap)があり得る。ηcap及びReliabilitycapの各レベルは、異なるタイプの資本購入に対応することがある。
いくつかの実施形態では、購入推定器932は、異なるレベルのηcap及びReliabilitycapそれぞれを、対応するアレイに記憶する。例えば、パラメータηcapは、行うことができるp個の異なるタイプの資本購入それぞれに関する要素を有するアレイηcapとして定義することができる。同様に、パラメータReliabilitycapは、行うことができるp個の異なるタイプの資本購入それぞれに関する要素を有するアレイReliabilitycapとして定義することができる。これらのアレイの例は、次式で示される。
ηcap=[ηcap,1 ηcap,2 … ηcap,p]
Reliabilitycap=[Reliabilitycap,1 Reliabilitycap,2 … Reliabilitycap,p]
ここで、アレイηcapは、サイズが1×pであり、アレイηcapの各要素は、特定の資本購入kに関する購入後効率値ηcap,kを含む。同様に、アレイReliabilitycapは、サイズが1×pであり、アレイReliabilitycapの各要素は、特定の資本購入kに関する購入後信頼性値Reliabilitycap,kを含む。
いくつかの実施形態では、効率アップデータ911は、各バイナリ決定変数Bmain,k,iに関連する資本購入を識別し、Bcap,k,i=1の場合、効率ηを、対応する購入後効率レベルηcap,kにリセットする。同様に、信頼性推定器924は、各バイナリ決定変数Bcap,k,iに関連する資本購入を識別することができ、Bmain,k,i=1の場合、信頼性を、対応する購入後信頼性レベルReliabilitycap,kにリセットすることができる。
資本コスト計算機936は、最適化期間の継続期間にわたる接続された機器610の資本コストを推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、資本コスト計算機936は、次式を使用して各時間ステップi中の資本コストを計算する。
Cost
cap,i=C
cap,iB
cap,i
ここで、C
cap,iは、時間ステップiにおいて行うことができるp個の異なる資本購入それぞれに関する要素を含む資本購入コストのアレイであり、B
cap,iは、p個の資本購入それぞれが時間ステップiにおいて行われるか否かを示すバイナリ決定変数のアレイである。資本コスト計算機936は、以下のように、最適化期間中の継続期間にわたって資本コストを合計することができる。
ここで、Cost
capは、目的関数Jの資本コスト項である。
他の実施形態では、資本コスト計算機936は、次式に示されるように、資本コストアレイC
capにバイナリ決定変数の行列B
capを乗算することによって資本コストCost
capを推定する。
目的関数オプティマイザ
引き続き図9を参照すると、高レベルオプティマイザ832は、目的関数生成器935及び目的関数オプティマイザ940を含むものとして示されている。目的関数生成器935は、コスト予測器910、920及び930によって定式化された動作コスト項、メンテナンスコスト項及び資本コスト項を合計することによって目的関数Jを生成するように構成することができる。目的関数生成器935によって生成することができる目的関数の一例は、次式で示される。
ここで、C
op,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、ドル/kWh)であり、P
op,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、C
main,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、B
main,iは、メンテナンスが実施されるか否かを示すバイナリ変数であり、C
cap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、B
cap,iは、新たなデバイスが購入されるか否かを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施されるホライズン又は最適化期間の継続時間である。
目的関数生成器935によって生成することができる目的関数の別の例は、次式で示される。
ここで、アレイC
opは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関するエネルギーコスト値C
op,iを含み、アレイP
opは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関する電力消費量値P
op,iを含み、アレイC
mainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1...mに関するメンテナンスコスト値C
main,jを含み、行列B
mainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hにおける特定のメンテナンス活動j=1...mに関するバイナリ決定変数を含み、アレイC
capの各要素は、特定の資本購入k=1...pに関する資本コスト値C
cap,kを含み、行列B
capの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hにおける特定の資本購入k=1...pに関するバイナリ決定変数を含む。
目的関数生成器935は、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータに制約を課すように構成することができる。制約は、動作コスト予測器910、メンテナンスコスト予測器920及び資本コスト予測器930を参照して述べた式又は関係のいずれを含むこともできる。例えば、目的関数生成器935は、接続された機器610の1つ又は複数のデバイスに関する電力消費量値Pop,iを、理想電力消費量Pideal,i及び効率ηiの関数として定義する制約を課すことができる(例えば、Pop,i=Pideal,i/ηi)。目的関数生成器935は、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913を参照して述べたのと同様に、効率ηiをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの関数として定義する制約を課すことができる。目的関数生成器935は、メンテナンス推定器922及び購入推定器932を参照して述べたのと同様に、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを0又は1のいずれかの値に制約し、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを、接続された機器610の信頼性Reliabilityiの関数として定義する制約を課すことができる。目的関数生成器935は、信頼性推定器924及び934を参照して述べたのと同様に、接続された機器610の信頼性Reliabilityiを機器性能情報(例えば、動作条件、稼働時間など)の関数として定義する制約を課すことができる。
目的関数オプティマイザ940は、目的関数Jを最適化して、最適化期間の継続時間にわたるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの最適値を決定することができる。目的関数オプティマイザ940は、様々な最適化技法の任意のものを使用して、目的関数Jを定式化及び最適化することができる。例えば、目的関数オプティマイザ940は、整数計画法、混合整数線形計画法、確率的最適化、凸最適化、動的計画法又は任意の他の最適化技法を使用して、目的関数Jを定式化し、制約を定義し、最適化を実施することができる。これら及び他の最適化技法は当技術分野で知られており、本明細書で詳細には述べない。
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、混合整数確率的最適化を使用して目的関数Jを最適化する。混合整数確率的最適化では、目的関数Jでの変数のいくつかを、ランダム変数又は確率変数の関数として定義することができる。例えば、決定変数Bmain,i及びBcap,iは、接続された機器610の信頼性に基づいた確率値を有するバイナリ変数として定義することができる。低い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値1を有する確率を高めることがあり(例えば、Bmain,i=1及びBcap,i=1)、高い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値0を有する確率を高めることがある(例えば、Bmain,i=0及びBcap,i=0)。いくつかの実施形態では、メンテナンス推定器922及び購入推定器932は、混合整数確率的技法を使用して、接続された機器610の信頼性の確率関数としてバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値を定義する。
上で論じたように、目的関数Jは、最適化期間の継続期間にわたって接続された機器610の1つ又は複数のデバイスを動作、メンテナンス及び購入する予測コストを表すこともある。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、これらのコストを特定の時点(例えば、現時点)に投影し、特定の時点での接続された機器610の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値(NPV)を決定するように構成される。例えば、目的関数オプティマイザ940は、次式を使用して、目的関数Jでの各コストを現時点に投影することができる。
ここで、rは利率であり、Cost
iは、最適化期間の時間ステップi中にかかったコストであり、NPV
costは、最適化期間の継続期間にわたってかかった総コストの正味現在価値(すなわち現在のコスト)である。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、正味現在価値NPV
costを最適化して、特定の時点における接続された機器610の1つ又は複数のデバイスのNPVを決定する。
上で論じたように、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータは、接続された機器610からの閉ループフィードバックに基づいて動的に更新することができる。例えば、接続された機器610から受信された機器性能情報を使用して、接続された機器610の信頼性及び/又は効率を更新することができる。目的関数オプティマイザ940は、目的関数Jを定期的に(例えば、1日に1回、1週間に1回、1か月に1回など)最適化して、接続された機器610からの閉ループフィードバックに基づいて予測コスト及び/又は正味現在価値NPVcostを動的に更新するように構成することができる。
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、最適化結果を生成する。最適化結果は、最適化期間内の時間ステップiごとに目的関数Jの決定変数の最適値を含むことがある。最適化結果は、接続された機器610の各デバイスに関する動作決定、機器メンテナンス決定及び/又は機器購入決定を含む。いくつかの実施形態では、最適化結果は、最適化期間の継続期間にわたって接続された機器610を動作、メンテナンス及び購入する経済的価値を最適化する。いくつかの実施形態では、最適化結果は、特定の時点における接続された機器610の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値を最適化する。最適化結果により、BMS606は、接続された機器610に関する設定点をアクティブ化、非アクティブ化又は調整して、最適化結果で指定された決定変数の最適値を実現することができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、最適化結果を使用して、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成する。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、接続された機器610の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、接続された機器610の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング10(例えば、BMS606)及び/又はクライアントデバイス448に提供される。操作者又はビルディングの所有者は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、メンテナンスの実施及び新たなデバイスの購入のコスト及び利益を評価することができる。いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨が整備士620に提供される。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、整備の実施又は機器の交換のために顧客に連絡すべきときを決定することができる。
モデル予測的メンテナンスプロセス
次に、図10を参照すると、例示的実施形態に従って、モデル予測的メンテナンスプロセス1000のフローチャートが示されている。プロセス1000は、ビルディングシステム600の1つ又は複数の構成要素によって実施することができる。いくつかの実施形態において、プロセス1000は、図6〜9を参照して述べたようにMPMシステム602によって実施される。
プロセス1000は、ビルディングの可変状態又は状況に影響を与えるためにビルディング機器を動作させること(ステップ1002)及びビルディング機器からのフィードバックとして機器性能情報を受信すること(ステップ1004)を含むものとして示されている。ビルディング機器は、ビルディングを監視及び/又は制御するために使用することができる機器のタイプを含むことができる(例えば、接続された機器610)。例えば、ビルディング機器は、冷却器、AHU、ボイラ、バッテリ、ヒータ、エコノマイザ、バルブ、アクチュエータ、ダンパ、冷却塔、ファン、ポンプ、照明機器、セキュリティ機器、冷凍機器又はビルディングシステム若しくはビルディング管理システム内の任意の他のタイプの機器を含むことができる。ビルディング機器は、図1〜5を参照して述べたHVACシステム100、ウォーターサイドシステム200、エアサイドシステム300、BMS400及び/又はBMS500の機器のいずれを含むこともできる。機器性能情報は、監視される変数のサンプル(例えば、測定された温度、測定された圧力、測定された流量、電力消費量など)、現在の動作条件(例えば、加熱又は冷却負荷、現在の動作条件など)、障害標示又はビルディング機器の性能を特徴付ける他のタイプの情報を含むことができる。
プロセス1000は、機器性能情報に応じてビルディング機器の効率及び信頼性を推定すること(ステップ1006)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、図9を参照して述べた効率アップデータ911及び信頼性推定器924、926によって実施される。ステップ1006は、機器性能情報を使用して、実際の動作条件下でのビルディング機器の効率ηを決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、効率η
iは、次式で示されるように、ビルディング機器の理想的な電力消費量P
idealと、ビルディング機器の実際の電力消費量P
actualとの比を表す。
ここで、P
idealは、ビルディング機器に関する性能曲線によって定義されるビルディング機器の理想的な電力消費量であり、P
actualは、ビルディング機器の実際の電力消費量である。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、ステップ1002で収集された機器性能情報を使用して、実際の電力消費量値P
actualを識別することを含む。ステップ1006は、実際の電力消費量P
actualを理想的な電力消費量P
idealと組み合わせて使用して効率ηを計算することを含むことができる。
ステップ1006は、効率ηを定期的に更新して、ビルディング機器の現在の動作効率を反映することを含むことができる。例えば、ステップ1006は、ビルディング機器の効率ηを、1日に1回、1週間に1回、1年に1回又は時間と共に効率ηの変化を捕捉するのに適切であり得る任意の他の間隔で計算することを含むことができる。効率ηの各値は、効率ηが計算される時点でのPideal及びPactualの対応する値に基づき得る。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、高レベル最適化プロセスが実施されるたびに(すなわち目的関数Jが最適化されるたびに)効率ηを更新することを含む。ステップ1006で計算された効率値は、初期効率値η0としてメモリ810に記憶されることがあり、ここで、下付き数字0は、最適化期間の開始時又は開始前(例えば、時間ステップ0で)の効率ηの値を表す。
ステップ1006は、最適化期間の各時間ステップiにおけるビルディング機器の効率ηiを予測することを含むことができる。最適化期間の開始時の初期効率η0は、ビルディング機器の性能が低下するにつれて、時間と共に低下することがある。例えば、冷却器の効率は、冷却水管が汚れて冷却器の熱伝達率が低下した結果、時間と共に低下することがある。同様に、バッテリの物理的又は化学的構成要素の劣化により、バッテリの効率は、時間と共に低下することがある。ステップ1006は、そのような低下を、最適化期間の継続時間にわたって効率ηiを増分的に低下させることによって考慮に入れることができる。
いくつかの実施形態では、初期効率値η0は、各最適化期間の開始時に更新される。しかし、効率ηは、最適化期間中に低下することがあり、初期効率値η0は、最適化期間の継続期間にわたって次第に不正確になる。最適化期間中の効率低下を考慮に入れるために、ステップ1006は、連続する各時間ステップにおいて効率ηを所定量だけ低下させることを含むことができる。例えば、ステップ1006は、各時間ステップi=1...hでの効率を以下のように定義することを含むことができる。
ηi=ηi−1−Δη
ここで、ηiは、時間ステップiにおける効率であり、ηi−1は、時間ステップi−1における効率であり、Δηは、連続する時間ステップ間の効率の低下である。いくつかの実施形態では、ηiのこの定義は、Bmain,i=0及びBcap,i=0である各時間ステップに適用される。しかし、Bmain,i=1又はBcap,i=1の場合、ステップ1018で、ηiの値をηmain又はηcapにリセットすることができる。
いくつかの実施形態では、Δηの値は、効率値の時系列に基づいている。例えば、ステップ1006は、初期効率値η
0の時系列を記録することを含むことがあり、各初期効率値η
0は、特定の時点におけるビルディング機器の経験的に計算された効率を表す。ステップ1006は、初期効率値η
0の時系列を検査して、効率が低下する率を決定することを含むことができる。例えば、時刻t
1での初期効率η
0がη
0,1であり、時刻t
2での初期効率がη
0,2である場合、効率低下率は、以下のように計算することができる。
ここで、
は、効率低下率である。ステップ1006は、
に各時間ステップの継続時間Δtを乗算して、Δηの値を計算することを含むことができる(すなわち、
)。
ステップ1006は、ステップ1004で受信された機器性能情報に基づいてビルディング機器の信頼性を推定することを含むことができる。信頼性は、ビルディング機器がその現在の動作条件下で障害なく動作し続ける尤度の統計的尺度であり得る。より過酷な条件下(例えば、高負荷、高温など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。いくつかの実施形態では、信頼性は、ビルディング機器が最後にメンテナンスを受けてから経過した時間量及び/又はビルディング機器が購入若しくは設置されてから経過した時間量に基づく。
いくつかの実施形態では、ステップ1006は、機器性能情報を使用して、ビルディング機器の現在の動作条件を識別することを含む。現在の動作条件を検査して、ビルディング機器の性能が低下し始めるときを明らかにし、且つ/又は障害が発生するときを予測することができる。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、ビルディング機器で潜在的に発生し得る様々なタイプの故障の尤度を推定することを含む。各故障の尤度は、ビルディング機器の現在の動作条件、ビルディング機器が設置されてから経過した時間量及び/又はメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量に基づくことがある。いくつかの実施形態では、ステップ1006は、2016年6月21日出願の「Building Management System With Predictive Diagnostics」という名称の(特許文献3)に記載のシステム及び方法を使用して、動作条件を識別し、様々な故障の尤度を予測することを含む。上記特許出願の開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
いくつかの実施形態では、ステップ1006は、複数のビルディングにわたって分散されたビルディング機器から動作データを受信することを含む。動作データは、例えば、現在の動作条件、障害標示、故障時間又はビルディング機器の動作及び性能を特徴付ける他のデータを含むことができる。ステップ1006は、動作データのセットを使用して、各タイプの機器の信頼性モデルを作成することを含むことができる。ステップ1006で信頼性モデルを使用して、ビルディング機器の任意の所与のデバイスの信頼性を、その現在の動作条件及び/又は他の外的要因(例えば、メンテナンスが最後に実施されてからの時間、設置又は購入からの時間、地理的位置、水質など)に応じて推定することができる。
ステップ1006で使用することができる信頼性モデルの一例は、次式で示される。
Reliabilityi=f(OpCondi,Δtmain,i,Δtcap,i)
ここで、Reliabilityiは、時間ステップiにおけるビルディング機器の信頼性であり、OpCondiは、時間ステップiにおける動作条件であり、Δtmain,iは、メンテナンスが最後に行われた時点と時間ステップiとの間で経過した時間量であり、Δtcap,iは、ビルディング機器が購入又は設置された時点と時間ステップiとの間で経過した時間量である。ステップ1006は、ビルディング機器からフィードバックとして受信された機器性能情報に基づいて現在の動作条件OpCondiを識別することを含むことができる。より過酷な条件下(例えば、高負荷、極端な温度など)での動作は、信頼性をより低くすることがあり、より過酷でない条件下(例えば、低負荷、中程度の温度など)での動作は、信頼性をより高くすることがある。
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、推定された効率の関数として最適化期間にわたるビルディング機器のエネルギー消費を予測すること(ステップ1008)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ1008は、図9を参照して述べたように理想性能計算機912及び/又は電力消費量推定器によって実施される。ステップ1008は、負荷/料金予測器822から負荷予測Loadiを受信し、低レベルオプティマイザ834から性能曲線を受信することを含むことができる。上で論じたように、性能曲線は、ビルディング機器の理想的な電力消費量Pidealを、デバイス又はデバイスのセットに対する加熱又は冷却負荷の関数として定義することができる。例えば、ビルディング機器に関する性能曲線は、次式によって定義することができる。
Pideal,i=f(Loadi)
ここで、Pideal,iは、時間ステップiにおけるビルディング機器の理想的な電力消費量(例えば、kW)であり、Loadiは、時間ステップiにおけるビルディング機器に対する負荷(例えば、トン単位での冷却負荷、kW単位での加熱負荷など)である。理想的な電力消費量Pideal,iは、ビルディング機器が完璧な効率で動作すると仮定したそれらの電力消費量を表すことがある。ステップ1008は、ビルディング機器に関する性能曲線を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器に関する負荷点Loadiに対応するPideal,iの値を識別することを含むことができる。
いくつかの実施形態では、ステップ1008は、理想的な電力消費量P
ideal,i及びビルディング機器の効率η
iの関数として電力消費量P
op,iを推定することを含む。例えば、ステップ1008は、次式を使用して電力消費量P
op,iを計算することを含むことができる。
ここで、P
ideal,iは、対応する負荷点Load
iでのビルディング機器に関する機器性能曲線に基づく電力消費量であり、η
iは、時間ステップiにおけるビルディング機器の動作効率である。
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、予測されたエネルギー消費量の関数として、最適化期間にわたってビルディング機器を動作させるコストCost
opを定義すること(ステップ1010)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態において、ステップ1010は、図9を参照して述べたように動作コスト計算機916によって実施される。ステップ1010は、次式を使用して各時間ステップi中の動作コストを計算することを含むことができる。
Cost
op,i=C
op,iP
op,iΔt
ここで、P
op,iは、ステップ1008で決定される時間ステップiにおける予測電力消費量であり、C
op,iは、時間ステップiにおける単位エネルギーあたりのコストであり、Δtは、各時間ステップの継続期間である。ステップ1010は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたって動作コストを合計することを含むことができる。
ここで、Cost
opは、目的関数Jの動作コスト項である。
他の実施形態では、ステップ1010は、次式で示されるように、コストアレイCopに電力消費量アレイPop及び各時間ステップの継続時間Δtを乗算することにより、動作コストCostopを計算することを含むことができる。
Costop=CopPopΔt
Costop=[Cop,1 Cop,2 … Cop,h][Pop,1 Pop,2 … Pop,h]TΔt
ここで、アレイCopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関するエネルギーコスト値Cop,iを含み、アレイPopは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関する電力消費量値Pop,iを含む。
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、推定された信頼性の関数として、最適化期間にわたってビルディング機器に対してメンテナンスを実施するコストを定義すること(ステップ1012)を含むものとして示されている。ステップ1012は、図9を参照して述べたようにメンテナンスコスト予測器920によって実施することができる。ステップ1012は、最適化期間の継続時間にわたるビルディング機器の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいてビルディング機器がメンテナンス及び/又は交換を必要とする確率を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップ1012は、ビルディング機器が所定の時間ステップにおいてメンテナンスを必要とする確率を臨界値と比較することを含む。ステップ1012は、時間ステップiにおいてビルディング機器がメンテナンスを必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bmain,i=1の値を設定することを含むことができる。同様に、ステップ1012は、所与の時間ステップにおいてビルディング機器が交換を必要とする確率を臨界値と比較することを含むことができる。ステップ1012は、時間ステップiにおいてビルディング機器が交換を必要とする確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定することを含むことができる。
ステップ1012は、ビルディング機器に対する様々なタイプのメンテナンスの実施に関連するコストCmain,iを決定することを含むことができる。ステップ1012は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)からメンテナンスコストのセットを受信することを含むことができる。いくつかの実施形態では、メンテナンスコストは、様々なタイプのメンテナンスを実施する経済的コスト(例えば、ドル)を定義する。各タイプのメンテナンス活動は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、冷却器圧縮機内のオイルを交換するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、比較的小さいことがあり、冷却器を完全に分解してすべての冷却水管を洗浄するメンテナンス活動にかかる経済的コストは、かなり大きいことがある。ステップ1012は、メンテナンスコストを使用して目的関数JでのCmain,iの値を定義することを含むことができる。
ステップ1012は、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器のメンテナンスコストを推定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップ1012は、次式を使用して各時間ステップi中のメンテナンスコストを計算することを含む。
Cost
main,i=C
main,iB
main,i
ここで、C
main,iは、時間ステップiにおいて実施することができるm個の異なるタイプのメンテナンス活動それぞれに関する要素を含むメンテナンスコストのアレイであり、B
main,iは、m個のメンテナンス活動それぞれが時間ステップiにおいて実施されるか否かを示すバイナリ決定変数のアレイである。ステップ1012は、以下のように、最適化期間の継続期間にわたってメンテナンスコストを合計することを含むことができる。
ここで、Cost
mainは、目的関数Jのメンテナンスコスト項である。
他の実施形態では、ステップ1012は、次式に示されるように、メンテナンスコストアレイC
mainにバイナリ決定変数の行列B
mainを乗算することによってメンテナンスコストCost
mainを推定することを含む。
ここで、アレイC
mainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1...mに関するメンテナンスコスト値C
main,jを含み、行列B
mainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hにおける特定のメンテナンス活動j=1...mに関するバイナリ決定変数を含む。
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、推定された信頼性の関数として、最適化期間にわたってビルディング機器を購入又は交換するコストCostcapを定義すること(ステップ1014)を含むものとして示されている。ステップ1014は、図9を参照して述べたように資本コスト予測器930によって実施することができる。いくつかの実施形態では、ステップ1014は、最適化期間の継続時間にわたるビルディング機器の推定された信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおいてビルディング機器の新たなデバイスが購入される確率を決定することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ1014は、所与の時間ステップにおいてビルディング機器の新たなデバイスが購入される確率を臨界値と比較することを含む。ステップ1014は、時間ステップiにおいてビルディング機器が購入される確率が臨界値を超えるという決定に応答して、Bcap,i=1の値を設定することを含むことができる。
ステップ1014は、様々な資本購入(すなわちビルディング機器の1つ又は複数の新たなデバイスを購入すること)に関連するコストCcap,iを決定することを含むことができる。ステップ1014は、外部システム又はデバイス(例えば、データベース、ユーザデバイスなど)から資本コストのセットを受信することを含むことができる。いくつかの実施形態では、資本コストは、様々な資本購入を行う経済的コスト(例えば、ドル)を定義する。各タイプの資本購入は、それに関連する異なる経済的コストを有することがある。例えば、新たな温度センサの購入にかかる経済的コストは比較的小さいことがあり、新たな冷却器の購入にかかる経済的コストはかなり大きいことがある。ステップ1014は、購入コストを使用して、目的関数JでのCcap,iの値を定義することを含むことができる。
いくつかの資本購入は、他のものよりも高価であり得る。しかし、異なるタイプの資本購入は、効率η及び/又はビルディング機器の信頼性に対して異なるレベルでの向上をもたらすことがある。例えば、既存のセンサの交換のために新たなセンサを購入することで、効率ηがわずかに向上し、且つ/又は信頼性がわずかに向上することがあり、新たな冷却器及び制御システムを購入することで、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性がかなり大きく向上することがある。したがって、複数の異なるレベルの購入後の効率(すなわちηcap)及び購入後の信頼性(すなわちReliabilitycap)があり得る。ηcap及びReliabilitycapの各レベルは、異なるタイプの資本購入に対応することがある。
ステップ1014は、最適化期間の継続期間にわたるビルディング機器の資本コストを推定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップ1014は、次式を使用して各時間ステップi中の資本コストを計算することを含む。
Cost
cap,i=C
cap,iB
cap,i
ここで、C
cap,iは、時間ステップiにおいて行うことができるp個の異なる資本購入それぞれに関する要素を含む資本購入コストのアレイであり、B
cap,iは、p個の資本購入それぞれが時間ステップiにおいて行われるか否かを示すバイナリ決定変数のアレイである。ステップ1014は、以下のように、最適化期間中の継続期間にわたって資本コストを合計することを含むことができる。
ここで、Cost
capは、目的関数Jの資本コスト項である。
他の実施形態では、ステップ1014は、次式に示されるように、資本コストアレイC
capにバイナリ決定変数の行列B
capを乗算することによって資本コストCost
capを推定することを含む。
ここで、アレイC
capの各要素は、特定の資本購入k=1...pに関する資本コスト値C
cap,kを含み、行列B
capの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hにおける特定の資本購入k=1...pに関するバイナリ決定変数を含む。
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、コストCost
op、Cost
main及びCost
capを含む目的関数を最適化して、ビルディング機器に関する最適なメンテナンス戦略を決定すること(ステップ1016)を含むものとして示されている。ステップ1016は、ステップ1010〜1014で定式化された動作コスト項、メンテナンスコスト項及び資本コスト項を合計することによって目的関数Jを生成することを含むことができる。ステップ1016で生成することができる目的関数の一例は、次式で示される。
ここで、C
op,iは、最適化期間の時間ステップiにおいて接続された機器610が消費する単位エネルギーあたりのコスト(例えば、ドル/kWh)であり、P
op,iは、時間ステップiにおける接続された機器610の電力消費量(例えば、kW)であり、Δtは、各時間ステップiの継続時間であり、C
main,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610に対して実施されるメンテナンスのコストであり、B
main,iは、メンテナンスが実施されるか否かを示すバイナリ変数であり、C
cap,iは、時間ステップiにおいて接続された機器610の新たなデバイスを購入する資本コストであり、B
cap,iは、新たなデバイスが購入されるか否かを示すバイナリ変数であり、hは、最適化が実施されるホライズン又は最適化期間の継続時間である。
ステップ1016で生成することができる目的関数の別の例は、次式で示される。
ここで、アレイC
opは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関するエネルギーコスト値C
op,iを含み、アレイP
opは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hに関する電力消費量値P
op,iを含み、アレイC
mainの各要素は、特定のメンテナンス活動j=1...mに関するメンテナンスコスト値C
main,jを含み、行列B
mainの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hにおける特定のメンテナンス活動j=1...mに関するバイナリ決定変数を含み、アレイC
capの各要素は、特定の資本購入k=1...pに関する資本コスト値C
cap,kを含み、行列B
capの各要素は、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hにおける特定の資本購入k=1...pに関するバイナリ決定変数を含む。
ステップ1016は、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータに制約を課すことを含むことができる。制約は、動作コスト予測器910、メンテナンスコスト予測器920及び資本コスト予測器930を参照して述べた式又は関係のいずれを含むこともできる。例えば、ステップ1016は、ビルディング機器の1つ又は複数のデバイスに関する電力消費量値Pop,iを、理想電力消費量Pideal,i及び効率ηiの関数として定義する制約を課すことを含むことができる(例えば、Pop,i=Pideal,i/ηi)。ステップ1016は、効率アップデータ911及び効率デグレーダ913を参照して述べたのと同様に、効率ηiをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの関数として定義する制約を課すことを含むことができる。ステップ1016は、メンテナンス推定器922及び購入推定器932を参照して述べたのと同様に、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを0又は1のいずれかの値に制約し、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iを、接続された機器610の信頼性Reliabilityiの関数として定義する制約を課すことを含むことができる。ステップ1016は、信頼性推定器924及び934を参照して述べたのと同様に、接続された機器610の信頼性Reliabilityiを機器性能情報(例えば、動作条件、稼働時間など)の関数として定義する制約を課すことを含むことができる。
ステップ1016は、目的関数Jを最適化して、最適化期間の継続時間にわたるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの最適値を決定することを含むことができる。ステップ1016は、様々な最適化技法の任意のものを使用して目的関数Jを定式化及び最適化することを含むことができる。例えば、ステップ1016は、整数計画法、混合整数線形計画法、確率的最適化、凸最適化、動的計画法又は任意の他の最適化技法を使用して、目的関数Jを定式化し、制約を定義し、最適化を実施することを含むことができる。これら及び他の最適化技法は当技術分野で知られており、本明細書で詳細には述べない。
いくつかの実施形態では、ステップ1016は、混合整数確率的最適化を使用して目的関数Jを最適化することを含む。混合整数確率的最適化では、目的関数Jでの変数のいくつかを、ランダム変数又は確率変数の関数として定義することができる。例えば、決定変数Bmain,i及びBcap,iは、ビルディング機器の信頼性に基づいた確率値を有するバイナリ変数として定義することができる。低い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値1を有する確率を高めることがあり(例えば、Bmain,i=1及びBcap,i=1)、高い信頼性値は、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが値0を有する確率を高めることがある(例えば、Bmain,i=0及びBcap,i=0)。いくつかの実施形態では、ステップ1016は、混合整数確率的技法を使用して、バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値をビルディング機器の信頼性の確率関数として定義することを含む。
上で論じたように、目的関数Jは、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器の1つ又は複数のデバイスを動作、メンテナンス及び購入する予測コストを表すこともある。いくつかの実施形態では、ステップ1016は、これらのコストを特定の時点(例えば、現時点)に投影し、特定の時点でのビルディング機器の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値(NPV)を決定することを含む。例えば、ステップ1016は、次式を使用して、目的関数Jでの各コストを現時点に投影することを含むことができる。
ここで、rは利率であり、Cost
iは、最適化期間の時間ステップi中にかかったコストであり、NPV
costは、最適化期間の継続期間にわたってかかった総コストの正味現在価値(すなわち現在のコスト)である。いくつかの実施形態では、ステップ1016は、正味現在価値NPV
costを最適化して、特定の時点でのビルディング機器のNPVを決定することを含む。
上で論じたように、目的関数Jでの1つ又は複数の変数又はパラメータは、ビルディング機器からの閉ループフィードバックに基づいて動的に更新することができる。例えば、ビルディング機器から受信された機器性能情報を使用して、ビルディング機器の信頼性及び/又は効率を更新することができる。ステップ1016は、目的関数Jを定期的に(例えば、1日に1回、1週間に1回、1か月に1回など)最適化して、ビルディング機器からの閉ループフィードバックに基づいて予測コスト及び/又は正味現在価値NPVcostを動的に更新することを含むことができる。
いくつかの実施形態では、ステップ1016は、最適化結果を生成することを含む。最適化結果は、最適化期間内の時間ステップiごとに目的関数Jの決定変数の最適値を含むことがある。最適化結果は、ビルディング機器の各デバイスに関する動作決定、機器メンテナンス決定及び/又は機器購入決定を含む。いくつかの実施形態では、最適化結果は、最適化期間の継続期間にわたってビルディング機器を動作、メンテナンス及び購入する経済的価値を最適化する。いくつかの実施形態では、最適化結果は、特定の時点におけるビルディング機器の1つ又は複数のデバイスの正味現在価値を最適化する。最適化結果により、BMS606は、ビルディング機器に関する設定点をアクティブ化、非アクティブ化又は調整して、最適化結果で指定された決定変数の最適値を実現することができる。
いくつかの実施形態では、プロセス1000は、最適化結果を使用して、機器購入及びメンテナンスの推奨を生成することを含む。機器購入及びメンテナンスの推奨は、目的関数Jを最適化することによって決定されるバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iに関する最適値に基づくことがある。例えば、ビルディング機器の特定のデバイスに関するBmain,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいてそのデバイスに対してメンテナンスが実施されるべきであることを示すことがあり、Bmain,25=0の値は、その時間ステップにおいてメンテナンスを実施すべきでないことを示すことがある。同様に、Bcap,25=1の値は、最適化期間の第25の時間ステップにおいて、ビルディング機器の新たなデバイスを購入すべきであることを示すことがあり、Bcap,25=0の値は、その時間ステップにおいて新たなデバイスを購入すべきでないことを示すことがある。
いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨は、ビルディング10(例えば、BMS606)及び/又はクライアントデバイス448に提供される。操作者又はビルディングの所有者は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、メンテナンスの実施及び新たなデバイスの購入のコスト及び利益を評価することができる。いくつかの実施形態では、機器購入及びメンテナンスの推奨が整備士620に提供される。整備士620は、機器購入及びメンテナンスの推奨を使用して、整備の実施又は機器の交換のために顧客に連絡すべきときを決定することができる。
引き続き図10を参照すると、プロセス1000は、最適なメンテナンス戦略に基づいてビルディング機器の効率及び信頼性を更新すること(ステップ1018)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ1018は、ビルディング機器に対するメンテナンスの実施又はビルディング機器の1つ若しくは複数のデバイスを交換若しくは補完するための新たな機器の購入により生じるビルディング機器の効率ηの上昇を考慮に入れるために、最適化期間中の1つ又は複数の時間ステップに関する効率ηiを更新することを含む。効率ηiが更新される時間ステップiは、メンテナンスが実施されることになるか、又は機器が交換されることになる予測時間ステップに対応することがある。ビルディング機器に対してメンテナンスが実施されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bmain,iの値によって定義することができる。同様に、ビルディング機器が交換されることになる予測時間ステップは、目的関数Jでのバイナリ決定変数Bcap,iの値によって定義することができる。
ステップ1018は、その時間ステップにおいてメンテナンスが実施されること及び/又はその時間ステップにおいて新たな機器が購入されることをバイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iが示す場合(すなわちBmain,i=1及び/又はBcap,i=1)、所与の時間ステップiに関する効率ηiをリセットすることを含むことができる。例えば、Bmain,i=1の場合、ステップ1018は、ηiの値をηmainにリセットすることを含むことができ、ここで、ηmainは、時間ステップiにおいて実施されるメンテナンスにより得られると期待される効率値である。同様に、Bcap,i=1の場合、ステップ1018は、ηiの値をηcapにリセットすることを含むことができ、ここで、ηcapは、時間ステップiにおいて実施されるビルディング機器の1つ又は複数のデバイスを補完又は交換するために新たなデバイスを購入することにより得られると期待される効率値である。ステップ1018は、1つ又は複数の時間ステップに関して効率ηiをリセットすることを含むことができ、(例えば、最適化の各反復によって)バイナリ決定変数Bmain,i及びBcap,iの値に基づいて最適化が実施される。
ステップ1018は、バイナリ決定変数Bmain,iの値に基づいて、ビルディング機器に対してメンテナンスが最後に実施されてから経過した時間量Δtmain,iを決定することを含むことがある。各時間ステップiに関して、ステップ1018は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi−1、i−2、...、1)におけるBmainの対応する値を検査することができる。ステップ1018は、メンテナンスが最後に実施された時点(すなわちBmain,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことにより、Δtmain,iの値を計算することを含むことができる。メンテナンスが最後に実施されてからの時間量Δtmain,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、メンテナンスが最後に実施されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
同様に、ステップ1018は、バイナリ決定変数Bcap,iの値に基づいて、ビルディング機器が購入又は設置されてから経過した時間量Δtcap,iを決定することを含むことがある。各時間ステップiに関して、ステップ1018は、時間ステップi及び前の各時間ステップ(例えば、時間ステップi−1、i−2、...、1)におけるBcapの対応する値を検査することができる。ステップ1018は、ビルディング機器が購入又は設置された時点(すなわちBcap,i=1である直近の時点)を、時間ステップiに関連する時点から引くことにより、Δtcap,iの値を計算することを含むことができる。ビルディング機器が購入又は設置されてからの時間量Δtcap,iが長いと、信頼性がより低くなることがあり、ビルディング機器が購入又は設置されてからの時間量が短いと、信頼性がより高くなることがある。
いくつかのメンテナンス活動は、他よりもコストがかかることがある。しかし、異なるタイプのメンテナンス活動が、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性に対する異なるレベルの改良をもたらすことがある。例えば、冷却器内のオイルの単なる交換は、効率ηのわずかな改良及び/又は信頼性のわずかな改良をもたらすことがあり、冷却器の完全な分解及びすべての冷却水管の洗浄は、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性のかなり大きい改良をもたらすことがある。したがって、複数の異なるレベルのメンテナンス後の効率(すなわちηmain)及びメンテナンス後の信頼性(すなわちReliabilitymain)が存在し得る。ηmain及びReliabilitymainの各レベルは、異なるタイプのメンテナンス活動に対応することがある。
いくつかの実施形態では、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別することを含み、Bmain,j,i=1の場合、効率ηを、対応するメンテナンス後の効率レベルηmain,jにリセットする。同様に、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bmain,j,iに関連するメンテナンス活動を識別することを含むことができ、Bmain,j,i=1の場合、信頼性を、対応するメンテナンス後の信頼性レベルReliabilitymain,jにリセットすることができる。
いくつかの資本購入は、他のものよりも高価であり得る。しかし、異なるタイプの資本購入は、効率η及び/又はビルディング機器の信頼性に対して異なるレベルでの向上をもたらすことがある。例えば、既存のセンサの交換のために新たなセンサを購入することで、効率ηがわずかに向上し、且つ/又は信頼性がわずかに向上することがあり、新たな冷却器及び制御システムを購入することで、ビルディング機器の効率η及び/又は信頼性がかなり大きく向上することがある。したがって、複数の異なるレベルの購入後の効率(すなわちηcap)及び購入後の信頼性(すなわちReliabilitycap)があり得る。ηcap及びReliabilitycapの各レベルは、異なるタイプの資本購入に対応することがある。
いくつかの実施形態では、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bmain,k,iに関連する資本購入を識別し、Bcap,k,i=1の場合、効率ηを、対応する購入後効率レベルηcap,kにリセットすることを含む。同様に、ステップ1018は、各バイナリ決定変数Bcap,k,iに関連する資本購入を識別することを含むことがあり、Bmain,k,i=1の場合、信頼性を、対応する購入後信頼性レベルReliabilitycap,kにリセットすることができる。
予算制約及び故障リスクを伴うモデル予測的メンテナンス
概要
全体として図11〜22を参照すると、いくつかの実施形態による、予算制約、リスクコスト及び/又は雑費を考慮に入れるモデル予測的メンテナンス(MPM)システムに関するシステム及び方法が示されている。いくつかの実施形態では、図11〜22を参照して以下でより詳細に述べるシステム及び方法のいずれかは、図6〜10を参照して上でより詳細に述べたMPMシステム602に組み込まれる。例えば、図8〜9を参照して上でより詳細に述べたモデル予測的メンテナンスシステム602の高レベルオプティマイザ832は、本明細書で以下に述べるシステム及び方法(例えば、ハード予算制約)のいずれかを含むことができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、1つ又は複数の予算制約を生成し、1つ又は複数の予算制約を受ける目的関数Jを最適化して、1つ又は複数の最適化制約を遵守しながらコストを最小化する決定変数の最適値を決定するように構成される。いくつかの実施形態では、図11〜23Bを参照して述べるメンテナンス活動に関連する任意の記載は、資本購入活動と同様及び/又は同一に適用することができる。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、図11〜23Bを参照して以下に述べるメンテナンス活動を説明するために、MPM602が述べられるのと同様及び/又は同一に予算制約下で資本購入活動を説明することができる。図10を参照して上でより詳細に述べた資本購入は、ビルディング管理システム(BMS)における1つ又は複数の構成要素の交換(例えば、可変冷媒流量(VRF)システムの屋外凝縮ユニットの交換、BMSでの換気ユニットの交換)を含むことができる。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、ビルディング機器に関連するリスクコストを組み込む。リスクコストは、ビルディング機器の故障に関連するコストを定義することができる。ビルディング機器の故障は、ある閾値を超えたビルディング機器の劣化状態、ビルディング機器の作動不能などに基づいて決定することができる。ビルディング機器が故障した場合、複数のコストが生じる可能性がある。いくつかの実施形態では、ビルディング機器の故障により、ビルディング機器を補修するための様々な修理(例えば、メンテナンス及び/又は交換)コストが生じる。故障によりさらなる複雑な問題が生じることがあるため、ビルディング機器が故障した後、故障前に修理が実施される場合に比べて修理コストが高くなる可能性がある。例えば、電気デバイスでの配線が故障すると、電気デバイスの他の構成要素が配線の故障により電気的損傷を受けることがある。いくつかの実施形態では、ビルディング機器の故障により、様々な機会コストが生じる。機会コストには、一般的な修理コスト以外の、ビルディング機器の故障により生じる様々なコストが含まれることがある。例えば、冬にビルディングのスペースでヒータが故障した場合、そのスペースは、居住者が使用できないほど冷えることがある。したがって、居住者の移転に関連するコスト、スペースの閉鎖によるビジネスチャンスの喪失などが機会コストの形態で生じ得る。いくつかの実施形態では、ユーザは、ビルディング機器の故障に関連する機会コストを定義する。いくつかの実施形態では、機会コストは、ビルディング機器が関連のビルディングにどのように影響を及ぼすかに関する知識に基づいて、MPMシステム602によって推定される。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、雑費を組み込む。雑費は、ビルディング機器の信頼性に影響を及ぼすが、ビルディング機器の効率に影響を及ぼさないことがある雑多な活動(例えば、メンテナンス及び/又は交換活動)から生じ得る。いくつかの実施形態では、雑費は、MPMシステム602によって解が与えられるコスト関数(例えば、目的関数J)にメンテナンスコストと共に組み込まれる。いくつかの実施形態では、雑費は、コスト関数でのメンテナンスコストとは別である。雑費の例として、雑多な活動は、錆びによる配管の亀裂の可能性を低減するための換気システムの配管の交換を含むことがある。配管を交換しても換気システムの効率に影響を及ぼさないことがあるが、新しい配管に亀裂が生じにくくなり得るため、換気システムの信頼性を高めることができる。いくつかの実施形態では、雑多な活動がビルディング機器の故障の可能性を低減し、それによりリスクコスト項を減少させることができるため、リスクコスト項が組み込まれている場合、雑多な活動を組み込むことが有益である。
最適な複合コスト曲線
ここで、図11を参照すると、いくつかの実施形態による、メンテナンス支出の関数として複合コストを示すグラフ1100が示されている。いくつかの実施形態では、複合コストは、目的関数Jに関連する3つのコスト、すなわち図10を参照して上述したメンテナンスコスト、資本コスト及び動作コストを含むことができる。いくつかの実施形態では、メンテナンス支出の増加により、複合コストを低減することができる。例えば、VRFシステムの屋外凝縮ユニットが通常動作に関して大量の電力を使用していることがある。屋外凝縮ユニットに対するメンテナンスを実施することにより、メンテナンスコストが生じることがあるが、動作コストに関して節約される額(例えば、電力消費に関連するコスト)を大幅に削減することができる。いくつかの実施形態では、ハード予算制約は、メンテナンス予算期間にわたる最大許容メンテナンス支出を示す最大メンテナンス予算1104である。ハード予算制約は、目的関数Jにおいてペナルティコストとして実装することができるソフト予算制約(図12を参照してより詳細に述べる)とは区別される。
グラフ1100は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス支出(X軸)に対する最適な複合コスト(Y軸)を例示する曲線1102を含むものとして示されている。曲線1102は、様々なメンテナンス支出を仮定して、最適な複合コストがどのように変動し得るかを例示する。ビルディング管理システム(BMS)では、機器をある効率レベルで動作させ続けるために、機器に対してメンテナンスを実施する必要があり得る。機器のメンテナンスは、請負業者の手数料、交換部品に関するコスト又は機器がメンテナンスのために一時的にオフラインになることにより生じるコストなど、追加コストを生じることがある。しかし、機器のメンテナンスは、機器の動作効率を高め、例えば電気消費又は燃料消費などの動作コストを削減することができる。
最適点1108が曲線1102上に示されている。最適点1108は、合計の複合コストを最小化するメンテナンス支出の額を示す。最適点1108の左側の曲線1102の区間は、メンテナンスに十分な額が費やされておらず、複合の出費が最適よりも高い場合を表す。最適点1108の右側の曲線1102の区間は、最適な額よりも多くメンテナンスに費やされている場合を表す。
グラフ1100は、いくつかの実施形態によれば、予算限度点1106として示される曲線1102上の最大メンテナンス予算点も含むものとして示されている。予算限度点1106は、いくつかの実施形態によれば、最大メンテナンス予算1104と曲線1102との交点によって定義される。いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1104は、メンテナンス予算期間にわたってメンテナンスに費やすことができる最大額である。例えば、ビルディングは、10,000ドルのメンテナンス予算を有することがある。10,000ドルのメンテナンス予算は、メンテナンス予算期間にわたってより多くの額をメンテナンスに費やすことによって合計の複合コストを下げることができたとしても、メンテナンス予算期間にわたって10,000ドル以下をメンテナンスに費やすべきであることを示す。いくつかの実施形態では、予算限度点1106は、最大メンテナンス予算1104により、最適点1108よりも低いメンテナンス支出になり得る。これは、最適な複合コストを実現するためにメンテナンスに十分な額が費やされていないことを示すことがある。他の実施形態では、最大メンテナンス予算1104が最適メンテナンス支出1112以上である場合、最適点1108を実現することができる。最大メンテナンス予算1104が最適なメンテナンス支出1112の右側にあることは、メンテナンス予算により、複合コストに関して費やされる額をビルディングが完全に最適化(すなわち最小化)することができることを示すことがある。
グラフ1100は、コスト差1110も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、コスト差1110は、最大メンテナンス予算1104が最適メンテナンス支出1112未満であるときに(最適な複合コスト値を超えて)生じる追加コストを表す。例えば、予算限度点1106のX値(すなわちメンテナンス支出値)が最適点1108のX値以上である場合、コスト差1110は、0になることがあり、複合コストを完全に最適化するためにメンテナンス支出に十分な額を費やすことができることを示す。別の例として、最大メンテナンス予算1104が最適メンテナンス支出1112未満である場合、コスト差1110は、0よりも大きくなることがあり、複合コストを完全に最適化するためにメンテナンスに十分な額を費やすことができないことを示す。いくつかの実施形態では、コスト差1110は、より低い複合コストを生じるためにユーザがメンテナンス予算を増加することによってお金を節約できるというユーザへの指標としての役割を果たす。
いくつかの実施形態では、資本支出は、複合コストに対して、メンテナンス支出と同様及び/又は同一の結果を有することがある。いくつかの実施形態では、予算制約をメンテナンス支出と共に資本支出に適用することができる。予算制約が資本支出に適用される場合、目的関数Jは、予算制約を遵守しながら合計コストを最小化するように最適化することができる。
ここで、図12を参照すると、いくつかの実施形態による、ソフト予算制約を受けた状態での目的関数Jの最適化に起因するメンテナンス支出の増加による複合コストの最適化を示すグラフ1200が示されている。いくつかの実施形態では、複合コストは、目的関数Jに関連する3つのコスト、すなわち図10を参照して上で述べたメンテナンスコスト、資本コスト及び動作コストを含むことができる。図12において、ソフト予算制約は、複合コストに含まれていない。いくつかの実施形態によれば、ソフト予算制約が複合コストに含まれる場合、グラフ1200は、グラフ1100と非常に異なる可能性がある。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約は、図19Aを参照して以下でより詳細に述べるように、ペナルティコストであり得る。いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、メンテナンスに費やされる合計額が目標メンテナンスコスト1216から逸脱することを可能にするように生じる追加コストである。いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、目標メンテナンスコスト1216とメンテナンスに費やされた合計額との間の差に基づく。いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、無駄な予算を最小限に抑えるために、目標メンテナンスコスト1216に近い額をメンテナンスに費やすことを奨励する。いくつかの実施形態では、企業は、毎年のメンテナンス予算を割り振るためのフレームワークを実践することができる。いくつかの実施形態では、企業は、「それを使用するか又はそれを失うか」のポリシーを実践して、翌年のためのメンテナンス予算を前年の未使用額分だけ減らすことがある。例えば、目標メンテナンスコスト1216は、メンテナンス予算期間に関して決定されることがある。メンテナンス予算期間中に費やされなかった目標メンテナンスコスト1216の額は、その後、メンテナンス以外の別の予算に割り振ることができ、メンテナンスの観点から目標メンテナンスコスト1216の未使用部分をなくす。したがって、ペナルティコストは、目標メンテナンスコスト1216の未使用部分を最小限に抑えるように目的関数Jの最適化を奨励することができる。
グラフ1200は、グラフ1100に示されているのと同じ項目の多くを含むものとして示されている。図12に示される項目のいくつか又はすべては、図11での同じ参照番号を有する項目と同様及び/又は同一であり得る。図12は、不感帯1214も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、不感帯1214は、ペナルティコストを生じることなくメンテナンスに費やすことができる目標メンテナンスコスト1216よりも上及び/又は下の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、目標メンテナンスコスト1216に正確に等しい額を費やすことが非常に難しいことがあるため、不感帯1214は、メンテナンスに費やされる額を決定するときにある程度の柔軟性を与えられるように実装することができる。例えば、目標メンテナンスコスト1216をわずかに超えると、通常、非常に高いペナルティコストが生じることがあるため、目的関数オプティマイザ940は、すべてのメンテナンス支出の合計コストが目標メンテナンスコスト1216を超える目的関数Jの解を決定しない。しかし、不感帯1214の右側境界により、ペナルティコストを生じることなく目的関数オプティマイザ940が目標メンテナンスコスト1216をわずかに超えることが可能になり得る。同様に、目標メンテナンスコスト1216をわずかに下回ると、通常、比較的小さいペナルティコストが生じることがあるが、目的関数オプティマイザ940が不感帯1214の左側境界よりも大きい目的関数Jの解を決定することができる場合、不感帯1214の左側境界は、比較的小さいペナルティコストをなくすことがある。ペナルティコストについては、いくつかの実施形態に従って図19Aを参照して以下でより詳細に述べる。
予算制約を伴うモデル予測的メンテナンス
ここで、図13を参照すると、いくつかの実施形態による、ユーザインターフェース836に接続された(図6〜9を参照して上でより詳細に述べた)モデル予測的メンテナンス(MPM)システム602を例示するブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース836は、メンテナンス予算及び/又はメンテナンス予算に関連するメンテナンス予算期間を高レベルオプティマイザ832に通信することができる。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、メンテナンス予算及び/又はメンテナンス予算期間を使用して、メンテナンス予算制約及び/又はペナルティコストを決定することができる。
ユーザインターフェース836は、いくつかの実施形態によれば、ユーザからメンテナンス予算及び/又はメンテナンス予算期間を受信し、MPMシステム602と通信するように構成された任意のインターフェースであり得る。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース836は、ユーザから資本予算及び/又は資本購入期間を受信し、それをMPMシステム602に通信するように構成することができる。例えば、ユーザインターフェース836は、モバイルデバイスアプリケーション、ビルディングでのコマンドライン端末、ウェブサイトアプリケーション、ディスプレイデバイス、タッチスクリーン、サーモスタットなどとして実装することができる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース836は、直接接続(例えば、ローカル有線又は無線通信)を介して、通信インターフェース804を介して又は通信ネットワーク446(例えば、WAN、インターネット、セルラネットワークなど)を介して高レベルオプティマイザ832と通信するように構成される。
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース836は、1つ又は複数のメンテナンス予算及び/又はメンテナンス予算期間を高レベルオプティマイザ832に通信するように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース836は、資本予算及び/又は資本購入期間を高レベルオプティマイザ832に通信するように構成される。メンテナンス予算は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算期間及び/又は最適化期間にわたってメンテナンスに費やすことができる最大額を示すことがある。同様に、資本予算は、いくつかの実施形態によれば、資本購入期間及び/又は最適化期間にわたって資本購入に費やすことができる最大額を示すことがある。いくつかの実施形態では、予算(すなわちメンテナンス予算及び/又は資本予算)及び/又は期間(すなわちメンテナンス予算期間及び/又は資本購入期間)の受信に応答して、高レベルオプティマイザ832は、目的関数Jに含めることができる制約を決定することができる。
例えば、目的関数Jは、対称的な制約又は非対称的な制約のいずれかとして実装されたソフト予算制約を含むことがある。いくつかの実施形態では、対称的なソフト制約に関して、補助変数δは、修理(例えば、メンテナンス、交換など)活動に費やされた額と、修理活動に費やす目標額(例えば、予算)との間の差の大きさ以上であるものとして制約される。コスト関数(例えば、目的関数J)では、δにペナルティレートを乗算してコスト関数に追加することができる。例えば、混合整数線形計画法(MILP)の実装では、対称的なソフト制約は、以下の形式を有することができる。
|C
act−Bud
act|≦δ
ここで、C
actは、修理活動(例えば、メンテナンス、交換など)に費やされた合計額であり、Bud
actは、修理活動に費やす予算であり、δは、修理活動に関するペナルティコストを決定するためのレートを乗算される補助変数である。いくつかの実施形態では、対称的なソフト制約は、複数の修理活動に関して決定される。δが0に近づくとき、目的関数Jに課される追加のペナルティコストが減少することがある。目的関数Jでは、対称的なソフト制約による追加のペナルティコストを以下のように含むことができる。
ここで、rは、目的関数Jに対する対称的なソフト予算制約の影響を低減/増加するように調整することができるペナルティレートである。したがって、rが増加するにつれて、目的関数オプティマイザ940は、全体的なコストを最適化(例えば、低減)するためにδの値を減少することを試みることができる。
いくつかの実施形態では、ソフト制約は、非対称的なソフト制約として実装される。非対称的なソフト制約は、合計コストが目標予算を下回る場合と合計コストが目標予算を上回る場合とで異なるペナルティレートを有することを可能にすることができる。例えば、目的関数Jが非対称的なソフト制約を受けて最適化される場合、修理活動に関するペナルティコストpを目的関数Jに追加することができ、ここで、pは、以下の制約を受ける。
p≧r
over(C
act−Bud
act)
p≧−r
under(C
act−Bud
act)
ここで、C
actは、修理活動(例えば、メンテナンス、交換など)からの合計コストであり、Bud
actは、修理活動に関する予算であり、r
overは、予算を上回るコストに関するペナルティレートであり、r
underは、予算を下回るコストに関するペナルティレートである。目的関数Jには、非対称的なソフト制約による追加のペナルティコストを以下のように含むことができる。
ここで、pは、上記の制約を受ける。ソフト制約については、図19Aを参照して以下でより詳細に述べる。
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、これらの制約を使用して、最適化期間にわたって目的関数Jを最適化する。例えば、ユーザは、次のメンテナンス予算期間にわたってメンテナンスに費やすことができるのが10,000ドル以下であることを示すメンテナンス予算を高レベルオプティマイザ832に通信することができる。メンテナンス予算の受信に応答して、高レベルオプティマイザ832は、目的関数Jに制約を生成し、次のメンテナンス予算期間にわたってメンテナンスに10,000ドル以下を割り振ることができるようにする。したがって、目的関数オプティマイザ940は、最適化期間中のすべてのメンテナンスに関する合計メンテナンス支出が10,000ドル以下になるように目的関数Jの最適解を決定することができる。別の例として、ユーザは、ユーザインターフェース836を介して高レベルオプティマイザ832に第1のメンテナンス予算期間を通信することができ、第1のメンテナンス予算期間が生じる時間間隔を示す。例えば、メンテナンス予算期間は、開始時(例えば、月、日、年)及び終了時(例えば、月、日、年)を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス予算期間は、最適化期間内に完全に入ることがある。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス予算期間は、部分的にのみ最適化期間内に入ることがある。第1のメンテナンス予算期間の受信に応答して、高レベルオプティマイザ832は、最適化問題に追加の制約を生成することができる。追加の制約は、合計メンテナンス及び/又は資本コストを目標予算(例えば、期間に関する最大メンテナンス及び交換予算)未満にすべきであることを示すことができる。いくつかの実施形態によれば、これにより、第1のメンテナンス予算を超えないように異なる決定変数を設定することができる。
ここで、図14Aを参照すると、いくつかの実施形態による高レベルオプティマイザ832をさらに例示するブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、目的関数Jに関する制約を決定し、制約に基づいて目的関数Jを最適化するように構成することができる。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、予算制約を生成し、予算制約を目的関数生成器935及び/又は目的関数オプティマイザ940に提供するように構成された予算マネージャ942を含む。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、ペナルティコスト項を生成し、ペナルティコスト項を目的関数生成器935に提供するように構成されたペナルティコストマネージャ944を含む。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、予算マネージャ942及びペナルティコストマネージャ944の少なくとも一方を使用して、それぞれ目的関数生成器935及び/又は目的関数オプティマイザ940のための予算制約及びペナルティコスト項を生成する。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832の特定の構成要素は、単一の構成要素の一部である。しかし、説明を簡単にするために、図14Aでは各構成要素が個別に示されている。
いくつかの実施形態では、予算マネージャ942は、受信された最大予算及び/又は受信された予算期間に基づいて、目的関数生成器935及び/又は目的関数オプティマイザ940に予算制約を提供する。いくつかの実施形態では、最大予算は、対応する予算期間に関する最大メンテナンス予算及び/又は最大資本購入予算であり得る。同様に、予算期間は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算期間及び/又は資本購入期間であり得る。いくつかの実施形態では、予算制約は、予算期間を最大予算に関連付けることができる(すなわち予算期間に関する最大予算がある)。いくつかの実施形態では、予算制約は、ハード予算制約としての役割を果たすことがあり、目的関数オプティマイザ940は、メンテナンス及び/又は資本購入に費やされる額(例えば、ドル)が各予算期間に関する最大予算以下になるように、目的関数生成器935によって生成される目的関数Jを最適化する。
いくつかの実施形態では、予算マネージャ942に通信される最大予算及び/又は予算期間は、前の予算期間に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、図6を参照して述べたMPMシステム602は、前の予算期間からの結果を使用して、今後の予算期間を計画するように構成することができる。例えば、前の予算期間が過剰に高い最大予算を有していた場合、MPMシステム602は、今後の予算期間のための最大予算を下げることがある。同様に、MPMシステム602は、いくつかの実施形態によれば、将来の予測に基づいて、今後の予算期間のための最大予算を推定することが可能であり得る。将来の予測は、機器の劣化モデル、ビルディングの今後の改修、将来の予算制限などに基づくことがある。例えば、各構成要素の劣化モデルに基づいて、MPMシステム602の多くの構成要素の劣化状態が同じ予算期間中に臨界レベルに達すると推定される場合、MPMシステム602は、その予算期間に対して高い最大予算が必要とされ得ることを推定することがある。いくつかの実施形態では、ビルディング機器の設置中、ビルディング機器の劣化モデルが提供される。いくつかの実施形態では、ビルディング機器の劣化モデルは、経時的なビルディング機器の測定された性能変数に基づいてMPMシステム602によって生成される。
いくつかの実施形態では、メンテナンスコスト予測器920及び/又は資本コスト予測器930は、メンテナンスコスト項又は資本コスト項を提供して、第jの予算期間に関する合計活動支出Cost
act,jと、最適化期間に関する合計活動支出Cost
actとを決定することができる。一般に、第jの予算期間に関する合計活動支出は、以下の式によって計算することができる。
ここで、Cost
act,jは、第jの予算期間に関する合計活動支出(例えば、メンテナンスコスト項及び/又は資本コスト項)であり、C
act,iは、それぞれ時間ステップiで実施することができる様々なメンテナンス又は交換活動のコストを表すメンテナンス又は交換コスト(例えば、C
main,i又はC
cap,i)のアレイであり、B
act,iは、異なるタイプの活動(例えば、B
main,i又はP
cap,i)のそれぞれが時間ステップiで実施されるか否かを示すバイナリ決定変数のアレイであり、hは、最適化が実施されるホライズン又は最適化期間(例えば、最適化期間での時間ステップiの総数)の継続期間であり、Mask
j,iは、時間ステップiが第jの予算期間中に生じるか否かを示すバイナリ変数(例えば、0又は1)である。
さらに、最適化期間に関する合計活動支出は、以下の式によって計算することができる。
ここで、Cost
actは、最適化期間に関する合計活動支出である。いくつかの実施形態では、Mask
j,iは、時間ステップiが予算期間(例えば、メンテナンス予算期間又は資本コスト予算期間)中に生じるか否かを示すことができる。例えば、Mask
j,i=0は、第jの予算期間中に現在の時間ステップiが生じないことを示すことがあり、したがって時間ステップiでCost
act,jについて支出が生じることはない。一般に、Mask
j,iは、以下の形式を有する行列Maskの要素であり得る。
ここで、hは、最適化期間での最後の時間ステップ(すなわちi=h)であり、nは、最適化期間中の予算期間の総数(すなわちメンテナンス予算期間の総数及び/又は資本コスト予算期間の総数)であり、Mask
j,iは、時間ステップiが第jの予算期間中に生じるか否かを示すバイナリ決定変数である。
例えば、最適化期間中に2つの予算期間及び合計3つの時間ステップがある実施形態では、Maskは以下の形式を有することがある。
ここで、Mask
1,1は、時間ステップ1が予算期間1中に生じるか否かを示すバイナリ変数であり、Mask
2,1は、時間ステップ1が予算期間2中に生じるか否かを示すバイナリ変数であるなどである。さらに、上記の例のMaskは、以下のように示すこともできる。
ここで、Mask
1,1=0は、時間ステップi=1が予算期間j=1中に生じないことを示し、Mask
1,2=0は、時間ステップi=2が予算期間j=1中に生じないことを示し、Mask
1,3=1は、時間ステップi=3が予算期間j=1中に生じることを示し、Mask
2,1=1、Mask
2,2=1及びMask
2,3=0は、時間ステップi=1〜i=2にわたって予算期間j=2が生じることを示す。いくつかの実施形態では、図15及び図16を参照して以下で述べるグラフ1500及びグラフ1600は、それぞれ第jのメンテナンス予算期間に関する合計活動支出及び/又は最適化期間に関する合計活動支出をどのように使用することができるかをさらに詳述することができる。
いくつかの実施形態では、目的関数生成器935は、最適化期間中に複数の予算期間が生じる場合に関する目的コスト関数を生成することができる。例えば、目的関数生成器935は、以下のような目的関数を生成することができる。
いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、最適化期間にわたる各予算期間のための最大予算を含む最大予算ベクトルBud
maxを定義することができる。一般に、Bud
maxは、以下の形式を有することができる。
ここで、nは、最適化期間中に生じる予算期間の数(例えば、メンテナンス予算期間の数)であり、Bud
max,jは、第jの予算期間に関する最大予算を示す。いくつかの実施形態では、予算マネージャ942は、目的関数Jに関する制約を生成することができる。
ここで、C
act,iは、時間ステップiで実施することができる可能なメンテナンス/交換活動のそれぞれに関する要素を有するコストのアレイであり、B
act,iは、可能なメンテナンス/交換活動のそれぞれが時間ステップiで実施されるか否かを示すバイナリ決定変数の列ベクトルであり、Mask
iは、列ベクトル(すなわち時間ステップiに対応するMask行列の列)であり、各予算期間jに関する要素を有し、Mask
iベクトルの各要素が、時間ステップiが対応する予算期間j内にあるか否かを示し、Bud
maxは、Bud
maxの各要素が対応する予算期間jに関するメンテナンス/交換活動予算を定義するように各予算期間jに関する要素を有する列ベクトルである。例えば、Bud
max,1=100である場合、目的関数オプティマイザ940は、j=1の予算期間が100(例えば、100ドル)を超える累積メンテナンス/交換支出を有さないように目的関数Jを最適化(例えば、最小化)する。
いくつかの実施形態では、Budmaxの値は、各予算期間及びビルディング機器の劣化に関するすべての出費(例えば、動作、メンテナンス、交換、従業員の給与など)を含む利用可能な最大予算に基づいて決定される。ビルディング機器が劣化するにつれて、最大利用可能予算のより多くがビルディング機器のメンテナンス及び交換に割り振られることが必要とされ得る。例えば、ビルディング機器のすべてのビルディングデバイスの劣化状態が低い場合、いくつかのビルディングデバイスの劣化状態が大きい場合よりもBudmaxの値が小さいことがある。換言すると、ビルディング機器の劣化状態に基づいて、各予算期間のためのメンテナンス/交換に関する予算を各予算期間に関する最大利用可能予算から割り振ることができる。いくつかの実施形態では、図17及び図18を参照して以下で述べるグラフ1700及びグラフ1800は、それぞれ最大予算ベクトルBudmaxの利用をさらに例示する。
いくつかの実施形態では、予算マネージャ942は、目的関数Jに関する制約を最適化問題の追加の状態として生成する。その状態は、例えば、予算の残額及び/又はメンテナンス/交換に既に費やされた額であり得る。状態を最適化期間全体にわたって追跡して、目的関数Jの最適化を制約して、特定のパラメータ範囲内に状態を保つことができる。例えば、状態が予算の残額を含む場合、状態の値は、最適化期間の開始時のメンテナンス/交換予算と等しくなることがあり、実施される各メンテナンス/交換ごとに減少することがある。最適化を実施し、状態がハード制約を示している場合、最適化は、状態の値を0以上に維持する解を決定することを必要とされることがある。最適化を実施し、状態がソフト制約を示している場合、最適化は、状態の値を0未満に低下させることがあるが、追加のペナルティコストが生じる可能性がある。有利には、状態として予算制約を実装することで、動的プログラミングフレームワークを使用して最適化問題を解決することが可能になり得る。
ここで、図14A及び18を参照すると、予算期間の一部のみが最適化期間中に生じる場合、高レベルオプティマイザ832は、部分的にのみ最適化期間中に生じる予算期間に割り振られるメンテナンス及び交換予算を調整すべきである。図18のグラフ1800は、いずれも部分的に最適化期間1802中に生じる第1のメンテナンス予算期間1804及び第3のメンテナンス予算期間1816を示す。予算期間が部分的にのみ最適化期間中に生じる場合、予算マネージャ942は、その最適化期間のための利用可能な予算を、過去及び/又は将来の最適化期間を妨害しないように決定することを必要とされ得る。
例えば、図18に示されるように、第1のメンテナンス予算期間1804は、i=1での最適化期間1802の開始前に始まるものとして示されている。第1のメンテナンス予算期間1804は、部分的にのみ最適化期間1802内で生じるため、予算マネージャ942は、最大予算ベクトルBudmaxの第1のメンテナンス予算期間1804のための最大予算であるBudmax,1を第1のメンテナンス予算期間1804のために利用可能な資産残額に設定することができる。特に、図18のグラフ1800に示されるように、第1のメンテナンス予算期間1804は、最適化期間1802の開始前に(例えば、i=1の前の3つの時間ステップで)支出を含む。予算マネージャ942は、Budmax,1の値を第1のメンテナンス予算期間1804の資産残額に設定することにより、最適化期間1802前に生じた支出(例えば、メンテナンス支出又は資本コスト支出)を考慮に入れることができる。図18に示されるように、第1のメンテナンス予算期間1804は、Budmax,1から差し引くことができる単一の出費を含む。例えば、Budmax,1に1,000ドルが割り振られているが、最適化期間1802が始まる前に200ドルが費やされた場合、予算マネージャ942は、最適化期間1802にBudmax,1=800ドルを設定することができる。
いくつかの実施形態では、予算期間の一部のみが最適化期間中に生じる場合、予算マネージャ942は、低減された予算値を決定する。一般に、低減された予算値は、以下の式によってモデル化することができる。
Budreduced=P×Budmax
ここで、Budreducedは、低減された予算であり、Budmaxは、最適化期間にわたって部分的に生じる予算期間(例えば、第1のメンテナンス予算期間1804)のための最大予算であり、Pは、最適化期間中に生じる予算期間の一部を示す正規化された値(すなわち0≦P≦1)である。例えば、予算期間が最適化期間内で完全に生じる場合(例えば、図18に示されるように、第2のメンテナンス予算期間1806が最適化期間1802内で完全に生じる場合)、Pの値は、1となることがあり、Budreduced=Budmaxである。予算期間が部分的にのみ最適化期間中に生じる(例えば、第1のメンテナンス予算期間1804及び第3のメンテナンス予算期間1816が部分的に最適化期間1802内で生じる)場合、Pは、最適化期間中に生じる予算期間の量(例えば、1/2、1/3、1/4など)を示すことがある。例えば、予算期間の50%が最適化期間中に生じる場合、P=0.5である。いくつかの実施形態では、低減された予算は、最適化期間中に始まるが、最適化期間の終了後に終了する予算期間に関して計算される(例えば、第3のメンテナンス予算期間1816は、最適化期間1802中に始まるが、最適化期間1802の終了後に終了する)。
第nの予算期間が部分的に最適化期間内で生じる(例えば、図18に示されるように、第3のメンテナンス予算期間1816が部分的に最適化期間1802内で生じる)場合、予算マネージャ942は、いくつかの実施形態によれば、第nの予算を以下のように決定する。
Budreduced,n=P×Budmax,n
予算マネージャ942は、最大予算ベクトルBudmaxの第nの値をBudreduced,nとして更新し、更新された最大予算ベクトルBudmaxを目的関数生成器935及び/又は目的関数オプティマイザ940に制約として提供することができる。
再び図14を参照すると、ペナルティコストマネージャ944は、目的関数生成器935にペナルティコスト項を提供することができる。いくつかの実施形態では、ペナルティコスト項は、目的関数オプティマイザ940によって計算された、予算期間に関する最大予算と推定支出(例えば、推定されるメンテナンス支出又は推定される資本購入支出)との間の差に基づくペナルティコストを定義する。いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、目的関数Jを最適化するときに目的関数オプティマイザ940によって考慮される追加コストである。いくつかの実施形態では、修正された目的関数J
modは、目的関数Jの解とペナルティコストとの両方を含む。一般に、J
modは、以下の式によってモデル化することができる。
ここで、Jは、目的関数Jであり、w
jは、p
k,jの値を増加又は減少する重みであり、p
k,jは、第jの予算期間にわたって生じたペナルティコストである。いくつかの実施形態では、w
jは、値1を有し、追加の重みがp
k,jに起因しないことを示すことができる。いくつかの実施形態では、w
jは、p
k,jの効果を増加させる(目的関数オプティマイザ940に、予算期間に関する最大予算と推定支出とが実質的に等しくなるようにする解を実現させる)ように調整すること又はp
k,jの効果を低減するように減少することができる正規化された値である。いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、区分的関数によってモデル化することができる。一般に、ペナルティコストをモデル化する区分的関数は、以下の形式を有することができる。
ここで、pkは、ペナルティコストであり、Aは、Bud
max,j−Cost
est,j<0に関する勾配であり、Bは、Bud
max,j−Cost
est,j>0に関する勾配であり、Bud
max,jは、予算期間jにわたる最大予算(例えば、最大予算ベクトルBud
maxの第jの値)であり、Cost
est,jは、予算期間jにわたる推定支出である。いくつかの実施形態では、A及び/又はBを増加又は減少させて、より大きい重みをペナルティコストに加えることができる。例えば、Bud
max,j−Cost
est,j<0であるとき、Aを増加させることにより、p
k,jの値が増加することがある。いくつかの実施形態では、A及び/又はBの増加は、p
k,jが実質的にゼロに等しくなるように、Bud
max,jとCost
est,jとの間の差を低下させる目的関数Jの解を決定することを奨励することができる。いくつかの実施形態では、A及びBは、図19Aを参照して以下でさらに詳細に述べる。いくつかの実施形態では、第jの予算期間に関するCost
est,jは、以下の式によってモデル化することができる。
Cost
est,j=Cost
main,j+Cost
cap,j、又は
Cost
est,j=Cost
cap,j、又は
Cost
est,j=Cost
main,j
ここで、Cost
main,jは、第jの予算期間に関するメンテナンスコスト項であり、Cost
cap,jは、第jの予算期間に関する目的関数Jの資本コスト項である。いくつかの実施形態では、p
k,jを計算するとき、Aは、Bよりも大きくなることがあり、これは、推定支出が最大予算を超える場合、より高いペナルティコストが生じ得ることを示すことができる。A及びBの値に基づいて、目的関数オプティマイザ940は、例えば、A及びBの値に対して生じるペナルティコストを最小化する決定変数の最適値を決定することができる。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940が、メンテナンス活動と資本購入との両方を含むことができる最適なメンテナンススケジュールを決定するとき、目的関数オプティマイザ940は、最大予算と推定支出との間の差を最小化してペナルティコストを低減するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ペナルティコストの値は、最大予算と推定支出との間の差に関連し、最大予算と推定支出との間の差の増加は、ペナルティコストのより高い値に対応する(例えば、結果としてもたらす)。いくつかの実施形態では、推定支出が最大予算を下回るときではなく、推定支出が最大予算を上回るとき、ペナルティコストがより高い割合で増加することがある。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、ペナルティコストを最小化するように、最大予算と推定支出との間の差を減少するように機能することができる。
いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、支出の差を予算期間にわたる最大予算と推定支出との間の差として定義することができる。一般に、支出の差は、次の式を使用してモデル化することができる。
Jgap,j=Budmax,j−Costest,j
ここで、Jgap,jは、第jの予算期間に関する支出の差であり、Budmax,jは、第jの予算期間の最大予算であり、Costest,jは、予算期間jにわたる推定支出である。いくつかの実施形態では、支出の差を目的関数オプティマイザ940が使用して、ハード予算制約が遵守されるか否かを推定することができる。いくつかの実施形態では、Jgap,jは、正であり得、累積支出の最終値が予算期間に関する最大予算よりも小さいと推定されることを示す。いくつかの実施形態では、Jgap,jは、0に等しいことがあり得、第jの予算期間にわたって正確に最大予算がコストに累積されると推定されることを示す。いくつかの実施形態では、Jgap,jは、負であり得、最大予算よりも大きい額が予算期間にわたってコストに累積されると推定されることを示す。いくつかの実施形態では、ハード予算制約により、目的関数Jを解くことができなくなることがある。いくつかの実施形態では、目的関数Jを解くことができない場合、目的関数オプティマイザ940は、エラーを返すことができる。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940によって支出の差を使用して、予算期間に関するペナルティコストを決定することができる。一般に、支出の差が大きいほど、ペナルティコストも大きくなり得る。ペナルティコストについては、図19Aを参照して以下でより詳細に述べる。
故障リスクを伴うモデル予測的メンテナンス
ここで、図14Bを参照すると、いくつかの実施形態による高レベルオプティマイザ832をさらに例示するブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、ビルディング機器の故障リスクを目的関数Jに組み込み、故障リスクに基づいて目的関数Jを最適化する。いくつかの実施形態では、図14Bに示されるような高レベルオプティマイザ832は、図14Aを参照して上述したように予算マネージャ942及び/又はペナルティコストマネージャ944を組み込む。いくつかの実施形態では、図14Bに示されるような高レベルオプティマイザ832は、別個の使用ケースを示し、目的関数生成器935によって生成される目的関数がリスクコスト項を組み込み、且つ予算制約/ペナルティコスト項を組み込むことも組み込まないこともある。
いくつかの実施形態では、高レベルオプティマイザ832は、リスクコスト項を生成し、リスクコスト項を目的関数生成器935に提供するための故障リスク予測器946を含む。ビルディング機器は、時間と共に劣化するため、ビルディング機器が故障する確率は、高まることがある。具体的には、ビルディング機器のメンテナンス/交換が実施されない場合、ビルディング機器が将来の時間ステップで故障し得る確率は、ビルディング機器が現在の時間ステップで故障し得る確率以上であり得る。ビルディング機器の故障は、BMS606が、未対処の負荷又は失われた生産量などの様々な機会コストと共に、ビルディング機器のメンテナンス及び/又は交換に関連するコストを生じることを必要とすることがある。例えば、VRFシステムの屋内ユニット(IDU)が故障し、故障により部屋の居住者に安全上の問題が発生した場合、IDUのメンテナンス/交換の実施に関連するコストと、部屋の閉鎖(例えば、居住者のための新たな部屋の賃借、部屋での会議のキャンセル、生産の損失など)に関連するコストとが生じることがある。
故障リスク予測器946によって生成されるリスクコスト項は、最適化期間の時間ステップに関する追跡されるビルディング機器の故障の確率を、追跡されるビルディング機器の故障のコストと共に組み込むことができる。上述したように、追跡されるビルディング機器は、劣化状態及び/又は他の性能情報が観察される任意のビルディング機器を含むことができる。
故障リスク予測器946によって提供されるリスクコスト項に基づいて、目的関数生成器935は、予測器910〜930によって提供されるコスト項と共にリスクコスト項を組み込む目的関数(例えば、目的関数J)を生成することができる。例えば、目的関数生成器935によって生成される目的関数は、以下の形式を有することができる。
ここで、C
op,k(δ
k)は、劣化状態δ
kに依存する動作コストであり、C
main,kは、最適化期間の時間ステップkでのメンテナンスのコストであり、C
replace,kは、時間ステップkでの交換のコストであり、m
kは、時間ステップkにおいていずれのメンテナンスアクションが行われるかを表すバイナリベクトルであり、P
fail,k(δ
k)は、劣化状態δ
kに依存する追跡されるビルディング機器の各構成要素(例えば、BMS606の各追跡される構成要素)に関する故障確率のベクトルであり、C
fail,kは、追跡されるビルディング機器の故障のコストであり、hは、最適化期間の時間ステップの総数である。上記の目的関数では、上付きのTは、関連する行列の転置行列を示す。C
fail,kの値は、追跡されるビルディング機器を修理/交換するためのコスト及び/又は追跡されるビルディング機器の故障に関連する任意の機会コストを含むことができる。メンテナンスベクトルの第1のブロックは、メンテナンスオプションを含み、メンテナンスベクトルの第2のブロックは、交換オプションを含むことを理解すべきである。第1のブロックと第2のブロックとは、メンテナンスと新たなビルディング機器への交換との両方がどのように考慮されるかを示すために分けられている。いくつかの実施形態では、それぞれメンテナンス及び交換オプションを示す第1及び第2のブロックは、単一のブロックに組み合わされる。さらに、C
fail,k TP
fail,k(δ
k)が目的関数のリスクコスト項を示していることを理解すべきである。
いくつかの実施形態では、リスクコスト項を組み込む目的関数生成器935によって生成された目的関数は、以下の形式を有する。
ここで、C
fail,iは、最適化期間の時間ステップiでのビルディング機器の故障のコストであり、P
fail,i(δ
i)は、時間ステップiでの劣化の状態δ
iに基づく時間ステップiでの故障の確率であり、すべての他の変数は、上述したものである。
リスクコスト項を含む目的関数に基づいて、目的関数オプティマイザ940は、全体的なコストが最適化(例えば、最小化)されるように決定変数の最適値を決定することができる。リスクコスト項により、リスクコスト項が目的関数に含まれなかった場合よりも早い/遅い時間ステップで特定のメンテナンス及び/又は交換が行われることがある。特に、リスクコスト項は、コストが最適化されるように、ビルディング機器の任意のビルディングデバイスに関する故障の確率が十分に低く保たれるように目的関数オプティマイザ940によって管理することができる。いくつかの実施形態では、リスクコスト項は、ビルディングデバイスが故障しやすい臨界レベルにビルディングデバイスの劣化状態が達しないように、リスクコスト項が目的関数に含まれなかった場合よりも頻繁にビルディング機器のビルディングデバイスがメンテナンス/交換を実施されることを目的関数オプティマイザ940が保証することを必要とすることがある。
いくつかの実施形態では、δiの値がランダムに分散された閾値を超える場合、ビルディング機器の故障が生じたとみなされる。いくつかの実施形態では、ビルディング機器の各ビルディングデバイスに関する故障の閾値は、特定のビルディングデバイスに応じて異なる。例えば、設置時の信頼性と比較した信頼性のパーセンテージとして劣化が測定される場合、特定のIDUは、設置時の信頼性の30%を下回る場合に故障したとみなされることがある一方、HVACシステムのファンは、設置時の信頼性の20%を下回る場合に故障したとみなされることがある。いくつかの実施形態では、ビルディング機器の各ビルディングデバイスに関する故障の閾値は、同じである。例えば、設置時の信頼性のパーセンテージに基づいて劣化が測定される場合、任意のビルディングデバイスが設置時の信頼性の15%を下回る場合、そのビルディングデバイスが故障したとみなされることがある。いくつかの実施形態では、例えば、ビルディング機器が始動できない場合やビルディング機器が居住者にとって危険な出力(例えば、煙、有害ガス)を生成している場合など、ビルディング機器の故障が生じたとみなされる。したがって、リスクコスト項を含む目的関数を最適化する場合、目的関数オプティマイザ940は、ビルディングデバイスが故障する確率を減少させる決定変数の値を決定することができる。
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、ビルディング機器のいくつかのビルディングデバイスが高い故障確率(例えば、50%超、60%超など)を有して、他のビルディングデバイスのメンテナンス/交換を優先できるようにする。例えば、コストを最適化するために、目的関数オプティマイザ940は、高い故障確率を有するファンがより早い時間ステップで換気シャフトのメンテナンス/交換を実施されるようにする決定変数の値を決定することができる。一時的にファンが高い故障確率を有するようにする決定は、換気シャフトが故障した場合と比較して、コストに対する(例えば、追加のメンテナンス及び/又は機会コストによる)影響がより小さいことがある。したがって、全体的なコストをさらに最適化(例えば、削減)するために、換気シャフトのメンテナンス/交換をファンのメンテナンス/交換よりも優先することができる。故障確率の分布により目的関数オプティマイザ940によって成される決定は、図19B及び19Cを参照して以下でより詳細に示す。
いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940によって実施される最適化は、リスク回避値によって制約される。リスク回避値は、ユーザ及び/又はシステムによって設定することができ、特定のビルディングデバイスに関する最大許容故障確率を示す。例えば、ユーザは、故障コストが500ドルを超えるビルディングデバイスに関して、リスク回避値を45%に設定することができる。リスク回避値により、最適化は、500ドルを超える推定故障コストを有する任意のビルディングデバイスが最適化期間を通して45%未満の故障確率を有するように、最適なメンテナンス及び交換スケジュールを決定することができる。実質的に、リスク回避値は、特定のビルディングデバイスの故障確率が特定の値未満に保たれることをビルディング機器のメンテナンス及び/又は交換に関連する決定変数が保証するように、最適化に対して制約を課すことができる。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940が、特定のビルディングデバイスの故障確率をリスク回避値未満に維持する解を決定することができない場合、特定のビルディングデバイスの故障確率がリスク回避値を超える可能性があることを示すアラートがユーザに提供される。
いくつかの実施形態では、将来の任意の週における故障確率は、週の初めから週の終わりまで密度関数を積分することによって見出される。故障確率に故障コストを乗算して、コスト関数(例えば、目的関数J)に加えることができる。いくつかの実施形態では、故障コストは、固定変数ではなく、ランダム変数である。いくつかの実施形態では、故障確率は、デバイス(例えば、モバイルデバイス、コンピュータなど)に表示される。例えば、故障確率の累積分布関数(CDF)を、故障確率を示す勾配としてデバイスに示すことができる。勾配は、例えば、緑から黄色、さらに赤に遷移することがあり、緑は、故障確率が低いことを示し、黄色は、故障が近づいている可能性が高いことを示し、赤は、近い将来に故障が発生する可能性が高いことを示す。
図14Bの高レベルオプティマイザ832は、雑費予測器948も含むものとして示されている。雑費予測器948は、目的関数生成器935に提供するための雑費項を生成することができる。雑費項は、メンテナンス活動、交換活動及び/又は雑費をもたらす他の活動を含むことができる。いくつかの実施形態では、雑費予測器948によって考慮に入れられる修理は、ビルディング機器の信頼性に影響を与えるが、効率の変化をもたらさない。雑多な修理活動(例えば、雑多な出費を生じるメンテナンス/交換活動)がビルディング機器の効率に影響を与えない場合、雑多な修理活動は、最適化期間にわたって動作コストに影響を及ぼさないことがある。例えば、雑多な修理活動は、VRFシステムの屋外ユニット(ODU)の重要な構成要素を安定させるために、ビルディングのオペレータがODUのねじを交換することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ODUのねじを交換することは、ODUの信頼性に影響を及ぼす(すなわち重要な構成要素の安定性を高めることによって)が、ODUの効率に影響を与えない。したがって、ねじの交換は、ODUの信頼性を向上させることができるが、ODUの動作により生じる動作コストに直接的にいかなる影響も及ぼさないことがある。
いくつかの実施形態では、雑費項により、ユーザは他の雑多な出費を目的関数Jと共に組み込んで、最適化期間にわたる合計コストのより正確な決定を提供することができる。例えば、ユーザは、雑費項により、従業員の給与コストを目的関数Jに組み込むことができる。給与コストは、メンテナンス/交換費と同じ予算から出ることがあり、ユーザは、ユーザが入力した他の雑多な出費に従って目的関数オプティマイザ940が最適解を決定することを望むことがある。いくつかの実施形態では、ユーザは、必須のものとして、特定の雑多な出費にフラグを立てることができ、目的関数オプティマイザ940によって実施される最適化が、フラグを立てられた雑多な出費の発生を回避することができないようにする。ユーザが目的関数Jに雑多な出費を追加できるようにすることにより、ユーザは、最適化期間にわたる合計コストをより正確に把握することができる。
いくつかの実施形態では、雑費予測器948によって生成された雑費項を含む目的関数Jは、以下によって示すことができる。
ここで、C
misc,iは、時間ステップiでの雑多なメンテナンス出費であり、B
misc,iは、時間ステップiで雑多な出費が生じるか否かを示すバイナリ変数である。
目的関数生成器935によって生成することができる目的関数の別の例は、以下の式で示される。
ここで、アレイC
miscは、最適化期間の特定の雑多な出費l=1...sに関する雑費値C
misc,iを含み、アレイB
miscは、最適化期間の特定の時間ステップi=1...hでの特定の雑多な出費l=1...sに関するバイナリ決定変数を含む。
いくつかの実施形態では、ユーザは、ビルディング機器の信頼性を向上させるために目的関数Jの最適化中に考慮すべき雑多な出費を定義する。いくつかの実施形態では、リスクコスト項は、雑費項と併せて目的関数オプティマイザ940によって考慮される。雑費項は、ビルディング機器の信頼性を高めるために目的関数オプティマイザ940に追加のオプションを提供することがあるため、目的関数オプティマイザ940は、ビルディング機器の故障確率を低減するためにより多くのオプションを有することがある。例えば、ユーザは、配管の亀裂を防止するために、換気システムの配管にシーラントを塗布する雑多な修理活動を定義することがある。シーラントは、配管の効率を高めないことがあるが、亀裂により配管が破損しにくくなり得るため、信頼性を高めることができる。いくつかの実施形態では、ユーザとシステムとの両方は、雑費項に含めるために雑多な修理活動を雑費予測器948に与える。各追加の雑多な修理活動は、ビルディング機器の信頼性を高めるために代替オプションを提供することができる。それぞれの雑多な修理活動の信頼性向上に応じて、特定の雑多な修理活動は、ビルディング機器の信頼性と効率との両方に影響を及ぼすことがあるビルディング機器の通常のメンテナンス及び/又は完全な交換の実施よりも安価になり得る。したがって、雑多な修理活動により、目的関数オプティマイザ940は、リスクコスト項の値を低減することによって目的関数Jをさらに最適化することができる。
故障リスク予測器946によって生成されるリスクコスト項と、雑費予測器948によって生成される雑多なコスト項との両方が目的関数Jに組み込まれる場合、目的関数生成器935によって生成される目的関数Jの一例は、次の式によって示される。
上記の目的関数に基づいて、目的関数オプティマイザ940は、全体的なコストが最適化(例えば、最小化)されるように決定変数の値を決定することができる。各ビルディングデバイスの故障コストに応じて、目的関数オプティマイザ940は、上記ビルディングデバイスの故障確率を低く保つために、高い故障コストを有するビルディングデバイスに対して追加のメンテナンス、交換及び/又は雑多な修理活動を実施すべきであると判断することがある。
いくつかの実施形態では、目的関数Jは、雑費項、故障コスト項及び予算制約のいくつか及び/又はすべてを含む。目的関数Jが雑費項、故障コスト項及び予算制約のすべてを含む場合、目的関数オプティマイザ940は、最適化における任意の予算制約に制約されながら、目的関数Jの各項により、全体コストを最適化(例えば、最小化)する最適解を決定することができる。
最適化期間にわたる予算期間の最適化
次に、図15を参照すると、いくつかの実施形態による、ハード予算制約下での最適化期間にわたる累積メンテナンス支出を例示するグラフ1500が示されている。いくつかの実施形態では、ハード予算制約下での最適化期間にわたる資本購入は、本明細書で述べるメンテナンス支出と同様及び/又は同一に例示することができる。いくつかの実施形態では、ハード予算制約は、メンテナンス予算期間にわたってメンテナンスに費やすことができる最大額(例えば、ドル)を示す最大メンテナンス予算である。グラフ1500では、最適化期間1506が示され、最適化期間1506は、メンテナンス予算期間と同じ期間である。図15では、最適化期間1506とメンテナンス予算期間とは、同じであり得、目的関数Jが複数のメンテナンス予算期間を含む必要がなく、それにより目的関数Jに課される制約の量を低減する。
グラフ1500は、いくつかの実施形態によれば、最大メンテナンス予算1504も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1504は、最適化期間1506にわたってメンテナンスに費やすことができる最大許容額であり得る。いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1504は、図13を参照して上でより詳細に述べたユーザインターフェース836を介してモデル予測的メンテナンスシステム602に通信することができる。いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1504は、変数Budmaxとして表すことができ、Budmaxは、最適化期間1506にわたってメンテナンスに費やすことが許される最大額に等しいことがある。
引き続き図15を参照すると、グラフ1500は、目的関数オプティマイザ940によって最適化期間1506にわたってメンテナンス支出がどのように決定され得るかを示している。いくつかの実施形態によれば、時間ステップ6までメンテナンス支出が生じない。いくつかの実施形態によれば、グラフ1500の時間ステップ6では、第1のメンテナンス支出1508が示されている。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス支出1508のコストは、Costmain,1として表すことができる。一般に、メンテナンス支出は、Bmain,i=1として時間ステップiで生じるものとして示すことができる。いくつかの実施形態では、Bmain,iは、メンテナンス活動に関して図14Aを参照して述べたBact,iであり得る。例えば、いくつかの実施形態によれば、第1のメンテナンス支出1508は、Bmain,6=1として時間ステップ6で生じるものとして示されている。同様に、時間ステップiでメンテナンスが生じない場合、Bmain,i=0になる。いくつかの実施形態では、図14を参照して述べた高レベルオプティマイザ832からの、時間ステップ6でメンテナンスが実施されるべきであるという判断により、第1のメンテナンス支出1508が生じることがある。第1のメンテナンス支出1508が実施された後、累積メンテナンス支出Costmainは、Costmain=Costmain,1として記述することができる。
グラフ1500は、いくつかの実施形態によれば、時間間隔1502も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、Costmain=Costmain,1は、時間間隔1502の継続期間全体にわたる累積メンテナンス支出を定義することができる。時間ステップ16では、第2のメンテナンス支出1510が実施されるものとして示されており、したがって、第2のメンテナンス支出1510のコストは、Costmain,2として表すことができる。第1のメンテナンス支出1508と同様に、メンテナンスは、Bmain,16=1として時間ステップ16で生じるものとして示されている。いくつかの実施形態では、第2のメンテナンス支出1510は、累積メンテナンス支出CostmainをCostmain=Costmain,1+Costmain,2に増加させることができる。最後に、時間ステップ21では、第3のメンテナンス支出1512が生じるものとして示され、したがって、第3のメンテナンス支出1512のコストは、Costmain,3として表すことができる。第1のメンテナンス支出1508と同様に、いくつかの実施形態によれば、Bmain,21=1として時間ステップ21でメンテナンスが生じるものとして示されている。いくつかの実施形態では、第3のメンテナンス支出1512は、累積メンテナンス支出CostmainをCostmain=Costmain,1+Costmain,2+Costmain,3に増加することができる。いくつかの実施形態では、最適化期間1506は、時間ステップi=1から時間ステップi=hまで示される。最適化期間1506中、目的関数オプティマイザ940は、いくつかの実施形態によれば、最適なメンテナンス累積コストがCostmain=Costmain,1+Costmain,2+Costmain,3であること並びに上述したように時間ステップ6、16及び21でメンテナンスが生じることを示す最適なメンテナンス及び交換スケジュールを決定することができる。いくつかの実施形態では、最適なメンテナンス及び交換スケジュールの決定は、最適化期間1506に関する目的関数Jが最適化されることを示すことがある。
グラフ1500は、メンテナンス支出の差1514も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、メンテナンス支出の差は、最大メンテナンス予算1504と、最適化期間1506にわたるすべてのメンテナンス支出の合計コストによって決定される累積メンテナンス支出Costmainの最終値との間の差として定義される。いくつかの実施形態では、メンテナンス支出の差1514は、変数Jgapとして表すことができる。一般に、メンテナンス支出の差1514は、図14Aを参照して上述した目的関数オプティマイザ940によって計算されたメンテナンス支出の差と同様及び/又は同一に計算することができる。いくつかの実施形態では、Jgap<0である(すなわち累積メンテナンス支出の最終値が最大メンテナンス予算1504よりも大きい)場合、目的関数オプティマイザは、ハード予算制約が超過されたため、目的関数Jの新たな解を決定しなければならない。
ここで、図16を参照すると、例示的な実施形態による、ソフト予算制約下での最適化期間にわたる累積メンテナンス支出を例示するグラフ1600が示されている。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約下での最適化期間にわたる資本購入は、本明細書で述べたメンテナンス支出と同様及び/又は同一に例示することができる。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約は、ペナルティコストであり得、ペナルティコストは、図14Aを参照して計算されたペナルティコストと同様及び/又は同一に最大メンテナンス予算1604と推定メンテナンス支出との間の差に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、グラフ1600のいくつか及び/又はすべては、図15を参照して述べたグラフ1500と同様及び/又は同一であり得る。
グラフ1600は、いくつかの実施形態によれば、最大メンテナンス予算1604を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1604は、図15を参照して述べた最大メンテナンス予算1504と同様及び/又は同一であり得る。グラフ1600は、いくつかの実施形態によれば、最適化期間1606も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、最適化期間1606は、図15を参照して述べた最適化期間1506と同様及び/又は同一である。グラフ1600は、いくつかの実施形態によれば、第1のメンテナンス支出1608、第2のメンテナンス支出1610及び第3のメンテナンス支出1612も含むものとして示される。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス支出1608、第2のメンテナンス支出1610及び第3のメンテナンス支出1612は、それぞれ図15を参照して上述した第1のメンテナンス支出1508、第2のメンテナンス支出1510及び第3のメンテナンス支出1512と同様及び/又は同一である。グラフ1600は、いくつかの実施形態によれば、時間間隔1602も含むものとして示され、時間間隔1602は、図15を参照して述べた時間間隔1502と同様及び/又は同一であり得る。
いくつかの実施形態では、グラフ1600は、ハード予算制約ではなくソフト予算制約が使用されるため、図15を参照して述べたグラフ1500と異なる。いくつかの実施形態では、グラフ1600は、時間ステップ25で生じる第4のメンテナンス支出1614を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、第4のメンテナンス支出1614は、メンテナンス支出の差1616を最小化するための追加のメンテナンス支出であり得る。いくつかの実施形態では、メンテナンス支出の差1616は、図15を参照して述べたメンテナンス支出の差1514と同様及び/又は同一に計算することができる(すなわち最大メンテナンス予算1604から、最適化期間1606にわたる各メンテナンス支出の合計を減算する)。いくつかの実施形態では、第4のメンテナンス支出1614は、ソフト予算制約によるメンテナンス支出の差1616を最小化するために実施されることがある。いくつかの実施形態では、メンテナンス支出の差1616が増加するにつれて、ソフト予算制約によって定義されるペナルティコストが増加する。ペナルティコストマネージャ944によって提供されるペナルティコスト項に基づいてペナルティコストを計算することができる。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、ペナルティコストを最小化するために目的関数Jを最適化することができる(すなわちメンテナンス支出の差1616を減少させることによって)。いくつかの実施形態では、ペナルティコストは、メンテナンス支出の差1616の倍数であり得る。例えば、最適化期間1606にわたるすべてのメンテナンス支出が最大メンテナンス予算1604を超えた場合、3倍のペナルティがあり得る。例えば、最大メンテナンス予算1604が100ドルだけ超えた場合、300ドルの追加のペナルティコストが生じることがある。ソフト予算制約に基づいて、目的関数オプティマイザ940は、いくつかの実施形態によれば、追加のメンテナンス支出を追加してメンテナンス支出の差1616を最小化してペナルティコストを下げることにより、目的関数Jを最適化することができる。例えば、時間ステップ25での第4のメンテナンス支出1614は、ソフト予算制約なしでは通常実施されなかった可能性がある。しかし、目的関数Jを最適化するために、目的関数オプティマイザ940は、第4のメンテナンス支出1614により生じた追加のコストが、ペナルティコストを減少させることによって目的関数Jを最小化することを決定することができる。
いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1604のほとんど及び/又はすべてが費やされることを奨励するためにソフト予算制約が実装されることがある。例えば、メンテナンス予算は、最適化期間1606にわたってメンテナンスに15,000ドルを割り振ることがある。したがって、最適化期間1606後に最大メンテナンス予算1604から費やされていない額は、メンテナンスの観点から実質的に失われる。したがって、いくつかの実施形態によれば、ユーザが最大メンテナンス予算1604を使い果たすことを望む場合、ペナルティコスト項は、費やされる最大メンテナンス予算1604の最大額に対応する目的関数Jの最適解の決定を容易にすることができる。図19Aを参照して述べるグラフ1900は、目的関数Jにソフト予算制約をどのように課すことができるかをさらに示している。
ここで、図17を参照すると、いくつかの実施形態による、複数のメンテナンス予算期間にまたがる最適化期間に関する累積メンテナンスコストを例示するグラフ1700が示されている。いくつかの実施形態では、複数の資本購入期間にまたがる最適化期間に関する累積資本購入コストは、グラフ1700での累積メンテナンスコストと同様及び/又は同一に例示することができる。いくつかの実施形態では、最適化期間1702は、ビルディング管理システム(BMS)に関する個々のメンテナンス予算期間よりも長いことがある。複数のメンテナンス予算期間が最適化期間1702内に入るとき、目的関数生成器935によって生成される目的関数Jは、いくつかの実施形態によれば、各メンテナンス予算期間に関する累積メンテナンス支出がそのメンテナンス予算期間に関する最大メンテナンス予算を超えないように目的関数Jを最適化(例えば、最小化)するように、目的関数オプティマイザ940によって最適化される必要があり得る。
グラフ1700は、いくつかの実施形態によれば、時間ステップ1から時間ステップ15までの第1のメンテナンス予算期間1704と、時間ステップ18から時間ステップ32までの第2のメンテナンス予算期間1706とを含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス予算期間1704は、第1の最大メンテナンス予算1708を有する。いくつかの実施形態では、第2のメンテナンス予算期間1706は、第2の最大メンテナンス予算1710を有する。いくつかの実施形態では、第1の最大メンテナンス予算1708は、第2の最大メンテナンス予算1710よりも大きいか又は小さい。いくつかの実施形態では、第1の最大メンテナンス予算1708は、第2の最大メンテナンス予算1710に等しい。
第1のメンテナンス予算期間1704は、いくつかの実施形態によれば、第1のシリーズ1716を含む。いくつかの実施形態では、第1のシリーズ1716は、第1のメンテナンス予算期間1704にわたる一連のメンテナンス支出を表す。第1のシリーズ1716は、いくつかの実施形態によれば、時間ステップ4で生じる第1のメンテナンス支出及び時間ステップ10で生じる第2のメンテナンス支出を示す。同様に、第2のメンテナンス予算期間1706は、いくつかの実施形態によれば、第2のシリーズ1718を含む。いくつかの実施形態では、第2のシリーズ1718は、第2のメンテナンス予算期間1706にわたる一連のメンテナンス支出を表す。第2のシリーズ1718は、いくつかの実施形態による、時間ステップ19、23及び28で生じる3つのメンテナンス支出を示す。いくつかの実施形態では、合計メンテナンス支出は、図14Aを参照して上述したCostact,jを計算するための式により、目的関数オプティマイザ940によって第1のメンテナンス予算期間1704及び/又は第2のメンテナンス予算期間1706のいずれかに関して計算することができる。
いくつかの実施形態では、Costmain,1は、第1のメンテナンス予算期間1704に関する第1の合計メンテナンス支出1712を示す。いくつかの実施形態では、第1の合計メンテナンス支出1712は、第1のメンテナンス支出の差1714が非ゼロであることを示す第1の最大メンテナンス予算1708と異なることがある。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス支出の差1714は、図14Aを参照して述べたメンテナンス支出の差と同様及び/又は同一に計算することができる。いくつかの実施形態では、図16を参照して述べたソフト予算制約と同様及び/又は同一のソフト予算制約が適用される場合、第1のメンテナンス支出の差1714がどの程度大きいかに基づいて、ペナルティコストが生じることがある。
いくつかの実施形態では、Costmain,2は、第2の合計メンテナンス支出1720を示す。いくつかの実施形態では、第2の合計メンテナンス支出1720は、第2の最大メンテナンス予算1710に等しいことがある。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約が適用され、第2の合計メンテナンス支出1720が第2の最大メンテナンス予算1710に等しい場合、ペナルティコストが生じないことがある。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約が適用され、第2の合計メンテナンス支出1720が第2の最大メンテナンス予算1710に等しくない場合、ペナルティコストが生じることがある。
引き続き図17を参照すると、目的関数Jは、第1のメンテナンス予算期間1704と第2のメンテナンス予算期間1706との両方の予算制約を遵守しながら最適化期間1702の全継続期間にわたって最適化するように、目的関数オプティマイザ940によって最適化される必要があり得る。例えば、その後、グラフ1700に関する最大予算ベクトルBud
maxは、以下の形式での2×1ベクトルになり得る。
ここで、Bud
max1は、第1の最大メンテナンス予算1708を定義することができ、Bud
max2は、第2の最大メンテナンス予算1710を定義することができる。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、目的関数Jの最適値を決定するときに最大予算ベクトルBud
maxを利用することができる。いくつかの実施形態では、目的関数Jの最適値を決定するとき、目的関数オプティマイザ940は、図14Aを参照して上で定義された最大予算制約を遵守する。いくつかの実施形態では、最大予算制約を遵守することにより、目的関数Jは、最適化期間1702内の任意のメンテナンス予算期間に関する最大メンテナンス予算を超えることなく最適化することができる。
いくつかの実施形態では、任意のメンテナンス予算期間中に生じない最適化期間1702中の時間ステップ(例えば、グラフ1700の時間ステップ14〜17及び31〜h)があり得る。いくつかの実施形態では、目的関数Jは、任意のメンテナンス予算期間中に生じない各時間ステップに関するハード予算制約を有することがあり、ハード予算制約は、上記時間ステップ中にはメンテナンスについてコストが生じないことがあることを示すことができる。ハード予算制約に基づいて、メンテナンス予算期間中に生じない各時間ステップに関して、目的関数オプティマイザ940は、Mask
j,i=0を設定して、メンテナンス予算期間j中に時間ステップiが発生しないことを示すことができる。いくつかの実施形態では、Maskの列のすべての値は、0であり得、列に関連付けられた時間ステップが任意のメンテナンス予算期間中に生じないことを示す。例えば、Maskの値は、以下の値を有することがある。
ここで、第3の列は、すべて0である。いくつかの実施形態では、第3の列がすべて0であることは、時間ステップ3中にメンテナンス予算期間1又はメンテナンス予算期間2のいずれも生じないことを示すことができる。
ここで、図18を参照すると、いくつかの実施形態による、部分的に最適化期間1802外で生じるメンテナンス予算期間を伴う最適化期間1802にわたる累積メンテナンスコストを例示するグラフ1800が示されている。いくつかの実施形態では、部分的に最適化期間外で生じる資本購入期間を伴う最適化期間にわたる累積資本購入コストは、グラフ1800が累積メンテナンスコストに関するものであるときと同様及び/又は同一に示すことができる。グラフ1800では、いくつかの実施形態によれば、第1のメンテナンス予算期間1804は、最適化期間1802が始まる前に始まるものとして示されている。さらに、第2のメンテナンス予算期間1806は、いくつかの実施形態によれば、最適化期間1802中に生じるものとして示され、第3のメンテナンス予算期間1816は、最適化期間1802中に始まり、最適化期間1802の終了後に継続するものとして示されている。
第1のメンテナンス予算期間1804は、いくつかの実施形態によれば、第1の一連のメンテナンス支出1810を含むものとして示されている。グラフ1800に示されているように、いくつかの実施形態によれば、最適化期間1802の開始(すなわち時間ステップ1)前に第1のメンテナンス支出が成された。いくつかの実施形態では、図14Aを参照して述べた予算マネージャ942は、第1のメンテナンス予算期間1804に関するハード予算制約を受信することがある。第1のメンテナンス予算期間1804に関するハード予算制約は、第1のメンテナンス予算期間1804が生じる期間を表す第1の時間スパンと、第1のメンテナンス予算期間1804中にメンテナンスに費やすことができる最大額を表す第1の最大メンテナンス予算1808と、最適化期間1802の開始前(すなわち時間ステップ1前)に第1のメンテナンス予算期間1804中にメンテナンスにどの程度の額が費やされているかを表す初期支出とを含むことができる。初期支出及び他のハード予算制約に基づいて、図14Aを参照して述べる目的関数オプティマイザ940は、いくつかの実施形態によれば、第1の最大メンテナンス予算1808を超えない目的関数Jに関する最適解を決定するように、目的関数生成器935によって生成される目的関数Jを最適化(すなわち最小化)することができる。いくつかの実施形態では、目的関数Jの最適化を簡略化するために、初期支出によって第1の最大メンテナンス予算1808を低減することができる。いくつかの実施形態では、最大メンテナンス予算1808は、ペナルティコストに関連付けられたソフト予算制約であり得、その場合、目的関数オプティマイザ940は、最適化期間1802全体にわたる累積コストを下げるために、最大メンテナンス予算1808を超えてペナルティコストを生じる可能性がある。
グラフ1800は、いくつかの実施形態によれば、第2の一連のメンテナンス支出1814及び第2の最大メンテナンス予算1812も含むように示される第2のメンテナンス予算期間1806を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、第2のメンテナンス予算期間1806は、図17を参照して述べた第2のメンテナンス予算期間1706と同様及び/又は同一に目的関数オプティマイザ940によって最適化されることがある。
グラフ1800は、いくつかの実施形態によれば、第3のメンテナンス予算期間1816も含むものとして示され、第3のメンテナンス予算期間1816は、第3の最大メンテナンス予算1820及び第3の組のメンテナンス支出1818を含むものとして示されている。第3のメンテナンス予算期間1816は、いくつかの実施形態によれば、最適化期間1802中に始まるが、最適化期間1802の終了後に継続するものとして示されている。いくつかの実施形態では、目的関数Jの最適化は、最適化期間1802中に生じる第3のメンテナンス予算期間1816の時間ステップのみが考慮されるように、第3のメンテナンス予算期間1816を、短縮されたメンテナンス予算期間として扱うように構成することができる。短縮されたメンテナンス予算期間中、最適化期間1802の終了前に第3の最大メンテナンス予算1820の一部及び/又はすべてを使用するように決定変数を最適化することができる。いくつかの他の実施形態では、目的関数Jの最適化は、最適化期間1802の終了後に生じる第3のメンテナンス予算期間1816中の時間ステップを考慮して、次の最適化期間を過度に複雑にしないように構成することができる。いくつかの実施形態では、目的関数Jは、最適化期間1802中に第3の最大メンテナンス予算1820の一部を使用するように制約されることがある。例えば、第3の最大メンテナンス予算1820は、第3のメンテナンス予算期間1816中に10,000ドルであり得るが、第3のメンテナンス予算期間1816中に生じる時間ステップの4分の1のみが最適化期間1802中に生じることがある。このとき、目的関数Jは、第3のメンテナンス予算期間1816と最適化期間1802とが重なるように、時間ステップ中に使用することができる第3の最大メンテナンス予算1820の所定のパーセンテージのみに制約されることもある。これにより、第3の最大メンテナンス予算1820の残額を次の最適化期間中に使用することが可能になり得る。いくつかの実施形態では、メンテナンス予算期間が最適化期間1802の一部分中に生じるとき、メンテナンス予算期間に関する最大メンテナンス予算の利用可能な額は、最適化期間1802中に生じるメンテナンス予算期間の量に直接比例する(例えば、メンテナンス予算期間の50%が最適化期間1802中に生じる場合、メンテナンス予算期間に関する最大メンテナンス予算の50%が利用可能である)。
次に、図19Aを参照すると、いくつかの実施形態による、メンテナンス予算と推定メンテナンス支出との間の差に基づく関数としてペナルティコストを例示するグラフ1900が示されている。いくつかの実施形態では、資本購入に関するペナルティコストは、グラフ1900がメンテナンスコストに関するものである場合と同様及び/又は同一に例示することができる。グラフ1900は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算が推定メンテナンス支出よりも大きくなるように正の部分1904を含むものとして示されている。グラフ1900は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算が推定メンテナンス支出よりも小さくなるように負の部分1902も含むものとして示されている。さらに、グラフ1900は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算が推定メンテナンス支出に等しくなるように平衡点1914も含むものとして示されている。グラフ1900は、いくつかの実施形態によれば、勾配1910及び勾配1912も含むものとして示される。いくつかの実施形態では、勾配1910は、図14を参照して述べたように、pk,jを計算する区分的関数におけるBudmax,j−Costest,j<0(すなわちA)に関する勾配を表すことがある。いくつかの実施形態では、勾配1912は、図14Aを参照して述べたように、pk,jを計算する区分的関数におけるBudmax,j−Costest,j>0(すなわちB)に関する勾配を表すことがある。いくつかの実施形態では、グラフ1900に示されるBudmax,j及びCostest,jは、図14を参照して述べたBudmax,j及びCostest,jと同様及び/又は同一であり得る。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、平衡点1914として示されるBudmax,jがCostest,jと等しくなる決定変数の値を決定することが可能であり得、その場合、ペナルティコストは生じ得ない。いくつかの実施形態では、ペナルティコストが減少されるにつれて、図14Aを参照して述べた修正された目的関数Jmodも減少される。
いくつかの実施形態では、グラフ1900は、メンテナンス予算期間における単一のタイプのメンテナンスに関するものであり得る。いくつかの実施形態では、メンテナンス予算期間に関する全体的なメンテナンス予算は、特定のメンテナンスプロジェクトに関するより小さいメンテナンス予算に分解することができる。例えば、メンテナンス予算期間にわたる全体的なメンテナンス予算が20,000ドルであることがあり、暖房、換気及び空気調和(HVAC)メンテナンスに5,000ドルを割り振ることができ、窓のメンテナンスに5,000ドルを割り振ることができ、他のメンテナンスに10,000ドルを割り振ることができる。上記の例では、メンテナンス予算期間中の特定のメンテナンスプロジェクトに関するメンテナンス予算を上回るか又は下回る特定のメンテナンスプロジェクトの推定メンテナンス支出に関して、各タイプのメンテナンスは、異なるペナルティコストを生じることがある(すなわち各タイプのメンテナンスに関してAとBの値が異なることがある)。次いで、目的関数オプティマイザ940は、各タイプのメンテナンスに関して生じるすべてのペナルティコストの全体的な値によって制約される目的関数Jを最適化する決定変数の値を決定することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンス予算期間にわたる全体的なメンテナンス予算は、全体的なメンテナンス予算を超えないようにハード予算制約を有することがあるが、全体的なメンテナンス予算を超えない限り、メンテナンスの各タイプに関するメンテナンスを超えることができる。この場合、目的関数オプティマイザ940は、それらの決定に基づいて目的関数Jがさらに最適化され得る場合、特定のメンテナンスプロジェクトに関するメンテナンス予算を超える決定変数を決定することができる。
勾配1910が勾配1912と異なる場合、グラフ1900は、最大予算を超える支出に関連するペナルティコストが最大予算未満の支出と異なるペナルティを課されるように、非対称の予算制約を表すことがある。しかし、勾配1910が勾配1912と同じである場合、グラフ1900は、最大予算を超える支出が最大予算未満の支出と同じペナルティを課されるような対称的な予算制約を表すことができる。
ここで、図19Bを参照すると、いくつかの実施形態による、ビルディング機器の劣化に基づくビルディング機器の故障確率分布を例示するグラフ1920が示されている。グラフ1920は、分布1922を含むものとして示されている。分布1922は、ビルディング機器のビルディングデバイスの故障確率を示すことができる。分布1922に基づいて、最適化期間中の様々な時点に関して、ビルディングデバイスの故障確率を決定することができる。例えば、分布1922は、ビルディングデバイスの故障確率が、時点T2と比較して時点T1においてより小さい値であることを示すことができる。同様に、時点Tnでは、ビルディングデバイスの故障確率は、時点T1及びT2におけるよりも大きいものとして示されている。分布1922は、標準分布に従うように示されているが、ビルディングデバイスの劣化が故障確率にどのように影響を及ぼすかに応じて、任意の確率分布であり得ることを理解されたい。
グラフ1920は、閾値1924として示される閾値X及び複数の臨界点1926〜1936も含むものとして示されている。グラフ1920は、経時的なビルディングデバイスの特定の特性の劣化指標値を示す複数のシリーズ1938〜1948も含むものとして示されている。各臨界点1926〜1936において、シリーズ1938〜1948の1つが、臨界点1926〜1936の関連する点に等しいものとして示されている。例えば、シリーズ1938は、時点T1で臨界点1926に等しいものとして示されている。グラフ1920に示されているように、閾値1924を超えるシリーズは、ビルディングデバイスの何らかの側面/構成要素などが何らかの臨界値を超えていることを示すことができる。例えば、ビルディングデバイスがファンであり、シリーズ1940が上記ファンの回転数を示す場合、閾値1924は、ファンが問題なく動作すると推定される回転数(例えば、ファンを製造した企業によって指定される)であり得る。いくつかの実施形態では、シリーズ1938〜1948は、それぞれ一意の閾値1924を有する。例えば、ビルディングデバイスがファンである場合、シリーズ1938がファンの回転数を示すとき、シリーズ1938に関する閾値1924は、回転数であり得る一方、シリーズ1942に関する閾値1924は、設置してからファンが動作されている時間量であり得る。
シリーズ1938〜1948のそれぞれが閾値1924に近づき且つ/又は閾値1924を超えると、分布1922によって示されるように、デバイスの故障確率が上昇することがある。臨界値1926〜1936でシリーズ1938〜1948のより多くが閾値1924を超えるにつれて、分布1922によって示される故障確率が上昇するものとして示されている。例えば、分布1922によって示される故障確率は、シリーズ1938及びシリーズ1940が時点T1及びT2で閾値1924を超えた後でさえ低い(例えば、30%未満)ものとして示されている。しかし、シリーズ1948が時点Tnで閾値1924を超えるときまで、ビルディングデバイスの故障確率は、大きい(例えば、90%超)ものとして示されている。リスクコスト項が目的関数Jに含まれている場合、目的関数オプティマイザ940は、分布1922を利用して、ビルディング機器の故障確率が期間にわたってどのように変化するかを推定し、目的関数Jの最適化の結果に対するリスクコスト項の影響を決定することができる。目的関数オプティマイザ940は、分布1922を推定故障コストと組み合わせて利用して、最適化期間にわたる様々な時間ステップでのリスクコスト項の値を決定することができる。
ここで、図19Cを参照すると、いくつかの実施形態による、ビルディング機器の劣化を低減するために実施されたメンテナンスに基づいて合計コストがどのように影響を及ぼされるかを例示するグラフ1950である。グラフ1950は、メンテナンス活動を含むが、任意のタイプの修理活動(例えば、交換、メンテナンスなど)が同様の効果を有し得ることを理解すべきである。グラフ1950は、シリーズ1952とシリーズ1954とを含むものとして示されている。シリーズ1952及びシリーズ1954は、ある期間にわたる様々なビルディングデバイスの劣化指標値を例示することができる。例えば、シリーズ1952は、その期間にわたるヒータの劣化指標値を例示することができ、シリーズ1954は、期間にわたるIDUの劣化指標値を例示することができる。いくつかの実施形態では、シリーズ1952及びシリーズ1954は、単一のビルディングデバイスの異なる構成要素の劣化指標値を示す。例えば、シリーズ1952は、ODUの凝縮器コイルの劣化指標値を示すことができ、シリーズ1954は、ODUのファンの劣化指標値を示すことができる。
シリーズ1952及びシリーズ1954の値が増加するにつれて、関連の構成要素の効率の低下により、動作コストが増加することがある。例えば、シリーズ1952がAHUの劣化指標値を例示する場合、AHUの加熱/冷却コイル、AHUのファンなどの効率低下により、AHUの動作に関連する動作コストが増加することがある。
メンテナンス/交換が実施されない場合、シリーズ1952及びシリーズ1954は、故障閾値を超えるまで増加し続けることがあり、シリーズ1952及びシリーズ1954に関連する構成要素が故障しているとみなされる。構成要素の故障は、例えば、構成要素をアクティブにする/オンにすることができない、構成要素が最適なエネルギー消費量よりも多い特定量のエネルギーを消費する、構成要素の信頼性が何らかの閾値を下回っているなど、様々な状態によって測定することができる。シリーズ1952及びシリーズ1954の値を減少させるために、ビルディング機器に対するメンテナンスを実施して、ビルディング機器の効率を向上させることができる。グラフ1950に示されているように、メンテナンスは、メンテナンス時点1956〜1962で行われるものとして示されている。特に、シリーズ1952に関連する構成要素は、メンテナンス時点1956、メンテナンス時点1960及びメンテナンス時点1962にメンテナンスを受けるものとして示されており、シリーズ1954に関連する構成要素は、メンテナンス時点1958にメンテナンスを受けるものとして示されている。上述したように、メンテナンス時点1956〜1962に実施される活動は、簡略化のためにメンテナンス活動として示されているが、任意のメンテナンス活動、交換活動及び/又はビルディング機器の効率及び/又は信頼性を高めることができる任意の他の活動を含むことができる。
メンテナンス時点1956〜1962のそれぞれでメンテナンスコストが生じるものとして示されている。上述のように、シリーズ1952及びシリーズ1954の値が増加するにつれて、シリーズ1952及びシリーズ1954に関連する構成要素を動作させる動作コストも増加する。動作コストを低減するために、メンテナンスを実施して構成要素の効率を高め、それにより動作コストを低減することができる。しかし、メンテナンスを実施すると、メンテナンスコストが生じることがある。したがって、目的関数オプティマイザ940は、メンテナンスコストが動作コストの低減よりも大きくならないように、メンテナンスを実施するときを決定する必要があり得る。いくつかの実施形態では、リスクコスト項が目的関数Jに組み込まれる場合、メンテナンスを実施してリスクコスト項の影響を低減すると、メンテナンスのコストが動作コストの低減よりも大きい場合でも目的関数Jをさらに最適化することができる。
図19Cは、信頼性勾配1964及び信頼性勾配1966も含むものとして示されている。信頼性勾配1964は、修理(例えば、メンテナンス、交換など)が実施されない場合、ビルディング機器の信頼性が時間と共にどのように変化するかを示すことができる。特に、時間の経過と共に、信頼性勾配1964は、暗くなるように示されており、これは、ビルディング機器の信頼性が劣化していることを示す。ビルディング機器に対して実施される各修理活動は、ビルディング機器の信頼性を向上させ、それによってビルディング機器の故障確率を低減することができる。例えば、電気機器の配線の修理は、電気接続が安定していることを保証することによって電気機器の信頼性を高めることができる。いくつかの実施形態では、修理が行われない場合、ビルディング機器の信頼性が向上することがあり得ず、ビルディング機器が故障するまで劣化し続ける。
信頼性勾配1966は、最適な修理スケジュールが実施された場合、信頼性が時間と共にどのように変化するかを例示することができる。最適な修理スケジュールは、メンテナンス活動、交換活動及び/又はビルディング機器の信頼性を高めることができる他の活動を含むことができる。最適な修理スケジュールは、ビルディング機器の信頼性が維持されることを保証するために修理を実施するのに最適な時点を示すことができる。信頼性勾配1966で示されるように、修理が行われない信頼性勾配1964と比較して、ビルディング機器の信頼性は、時間にわたって維持される。
最適な修理スケジュールは、いずれの修理を実施すべきか及びいつその修理を行うべきかを決定するために、コスト関数(例えば、目的関数J)の最適化によって決定することができる。各修理が何らかの関連コスト(例えば、メンテナンスコスト)を有するため、最適化は、最適な修理時間を決定してコストを最適化(例えば、低減)し、且つビルディング機器の信頼性が維持されることを保証することを必要とされることがある。リスクコスト項がコスト関数に組み込まれる場合、リスクコスト項は、高レベルの信頼性を維持するためにビルディング機器に対していずれの修理がいつ実施されるかに影響を及ぼすことがあり、それによりコスト関数に対するリスクコスト項の影響を軽減する。
モデル予測的メンテナンスプロセス
ここで、図20を参照すると、いくつかの実施形態による、ハード予算制約を受ける図13を参照して述べたモデル予測的メンテナンス(MPM)システム602を動作させるためのプロセス2000のフローチャートが示されている。いくつかの実施形態では、プロセス2000は、メンテナンスコストについて示したのと同様及び/又は同一に資本購入にも適用することができる。いくつかの実施形態では、プロセス2000は、ビルディングシステム600の構成要素によって実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス2000は、図6〜9を参照して上でより詳細に述べたように、MPMシステム602によって実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス2000は、図10を参照して述べたプロセス1000と同様及び/又は同一であり得る。
プロセス2000は、いくつかの実施形態によれば、MPMシステム602を介して、メンテナンス予算と、各メンテナンス予算に関するメンテナンス予算期間とを受信すること(ステップ2002)を含む。いくつかの実施形態では、メンテナンス予算期間は、メンテナンス予算期間が生じる時間間隔であり得る。メンテナンス予算期間が生じる時間間隔は、いくつかの実施形態によれば、最適なメンテナンス戦略の最適化期間中で完全に生じるか、部分的に生じるか又は全く生じないことがある。いくつかの実施形態では、メンテナンス予算期間に関するメンテナンス予算は、メンテナンス予算期間中にメンテナンスに費やされる額がメンテナンス予算を超えてはならないことを示すハード予算制約であり得る。例えば、メンテナンス予算が10,000ドルである場合、メンテナンス予算期間にわたってメンテナンスに費やすことができるのは、10,000ドル以下である。いくつかの実施形態では、図14Aを参照して述べた予算マネージャ942は、ステップ2002を実施するように構成することができる。
プロセス2000は、いくつかの実施形態によれば、ビルディングでの可変の状態又は条件に影響を及ぼすようにビルディング機器を動作させること(ステップ2004)も含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ2004〜ステップ2016は、図10を参照して述べたステップ1002〜ステップ1014と同様及び/又は同一であり得る。
プロセス2000は、いくつかの実施形態によれば、受信されたメンテナンス予算及びメンテナンス予算期間に基づいて最大予算制約を定義すること(ステップ2018)を含む。いくつかの実施形態では、最大予算制約は、最適化期間にわたってメンテナンスに費やすことができる最大額(例えば、ドル)とすることができる。いくつかの実施形態では、第1のメンテナンス予算期間及び/又は最後のメンテナンス予算期間は、最適化期間の一部分中に生じる。第1のメンテナンス予算期間が最適化期間の一部分中で生じた場合、残りの予算(すなわち前の最適化期間で費やされなかった額)は、いくつかの実施形態によれば、第1のメンテナンス予算期間に関する最大予算制約として使用することができる。最後のメンテナンス予算期間が最適化期間の一部分中に生じた場合、いくつかの実施形態によれば、図14Aを参照して上で述べたBudreducedに関する式を予算マネージャ942によって使用して、最後のメンテナンス予算期間に関する最大予算制約を生成することができる。いくつかの実施形態では、予算マネージャ942は、ステップ2018を実施するように構成することができる。
プロセス2000は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算期間に関する最大予算制約及び/又は最大メンテナンス予算を受ける目的関数Jが最適化されること(ステップ2020)を含む。いくつかの実施形態では、ステップ2020は、図10を参照して述べたステップ1016と同様及び/又は同一であり得る。いくつかの実施形態では、目的関数Jの最適化中、最大予算制約は、特定のメンテナンス/交換活動によって生じるコストにより、最適化期間に関する合計メンテナンス支出が最大予算制約を超える場合、それらのメンテナンス/交換活動が実施されるのを妨げることがある。いくつかの実施形態では、最大予算制約は、最適化期間が単一のメンテナンス予算期間と同じ期間である場合(すなわちステップ2018でn=1)にのみ、ステップ2020で使用することができる。いくつかの実施形態では、最適化期間が単一のメンテナンス予算期間と同じ期間ではないとき(例えば、単一のメンテナンス予算期間が最適化期間の一部分中にのみ生じ、最適化期間中に生じる2つ以上のメンテナンス予算期間があるなど)、最大予算制約は、ステップ2020で使用されないことがあり、代わりに、目的関数Jは、ステップ2002で受信された各メンテナンス予算期間に関する各メンテナンス予算に従って制約することができる。このようにして、目的関数Jは、各メンテナンス予算期間に関するメンテナンス予算を超えないように最適化することができる。最適化問題がどのように解かれるかに応じて、予算制約は、最適化期間にわたって追跡される状態(例えば、残りの予算)、目的関数Jへの追加の項などとして実装することができる。いずれにせよ、ステップ2020は、最適なメンテナンス戦略が、ステップ2018で定義された任意の予算制約に準拠していることを保証することができる。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、ステップ2020を実施するように構成することができる。
プロセス2000は、例示的な実施形態によれば、MPMシステム602が最適なメンテナンス戦略に基づいてビルディング機器の効率及び信頼性を更新すること(ステップ2022)を含む。いくつかの実施形態では、ステップ2022は、図18を参照して述べたステップ1018と同様及び/又は同一であり得る。ステップ2022の完了後、プロセス2000は、ステップ2010に戻ることができる。
ここで、図21を参照すると、例示的な実施形態による、ソフト予算制約を受ける図13を参照して述べたMPMシステム602によって実施されるプロセス2100のフローチャートが示されている。いくつかの実施形態では、プロセス2100は、メンテナンスコストについて示したのと同様及び/又は同一に資本購入にも適用することができる。いくつかの実施形態では、プロセス2100は、ビルディングシステム600の構成要素によって実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス2100は、図6〜9を参照して述べたように、MPMシステム602によって実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス2100は、図20を参照して述べたプロセス2000と同様及び/又は同一であり得る。さらに、ステップ2102〜ステップ2116は、いくつかの実施形態によれば、図20を参照して述べたステップ2002〜ステップ2016と同様及び/又は同一であり得る。
プロセス2100は、いくつかの実施形態によれば、メンテナンス予算期間中の最大メンテナンス予算と合計メンテナンスコストとの間の差に基づいて、各メンテナンス予算期間に関するペナルティコスト項を定義すること(ステップ2118)を含む。いくつかの実施形態では、ペナルティコスト項は、ステップ2102で受信された各メンテナンス予算期間に関して、さらに定義することができる。各ペナルティコスト項は、目的関数Jの最適化を制約し、メンテナンス予算期間中のメンテナンス予算と合計メンテナンスコストとの間の差が増加するにつれて、メンテナンス予算期間に関連するペナルティコストが増加し得る。いくつかの実施形態では、ペナルティコストマネージャ944は、ステップ2118を実施するように構成することができる。
プロセス2100は、いくつかの実施形態によれば、ステップ2118で定義された各ペナルティコスト項に従って目的関数Jが最適化されること(ステップ2120)を含む。いくつかの実施形態では、目的関数Jが各ペナルティコストを遵守しながら最適化されるように、最適なメンテナンス戦略を生成することができる。いくつかの実施形態では、メンテナンス予算期間の一部及び/又はすべては、いくらかのペナルティコストを生じる(すなわちメンテナンス予算期間に関してpk,j≠0)ことがあるが、生じるペナルティコストは、それでも目的関数Jが最適化されるように十分に小さいことがある。いくつかの実施形態では、目的関数オプティマイザ940は、ステップ2120を実施するように構成することができる。
プロセス2100は、例示的な実施形態によれば、MPMシステム602が最適なメンテナンス戦略に基づいてビルディング機器の効率及び信頼性を更新すること(ステップ2122)を含む。いくつかの実施形態では、ステップ2122は、図20を参照して述べたステップ2022と同様及び/又は同一であり得る。ステップ2122の完了後、プロセス2100は、ステップ2110に進むことができる。
ここで、図22を参照すると、いくつかの実施形態による、ビルディング機器の故障リスクを受ける、図13を参照して述べたMPMシステム602を動作させるためのプロセス2200が示されている。ビルディング機器の故障リスクをMPMに組み込むことにより、コスト関数(例えば、目的関数J)は、ビルディング機器の故障により生じ得るコストを最適化(例えば、低減)することができる。故障リスクを組み込むことで、ビルディング機器のメンテナンス/交換に関する決定により、コストを最適化しながら、ビルディング機器の予期しない故障の可能性を低減することを保証することができる。ビルディング機器の予期しない故障は、ビルディング機器のメンテナンス/交換を実施してビルディング機器を動作状態に戻すなどの追加コスト及びまた例えば未対処の負荷又は失われた生産量などの機会コストをもたらすことがある。いくつかの実施形態では、プロセス2200の一部及び/又はすべてのステップは、MPMシステム602によって実施される。
プロセス2200は、いくつかの実施形態によれば、ビルディングでの可変の状態又は条件に影響を及ぼすようにビルディング機器を動作させること(ステップ2202)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ2202〜2214は、図10を参照して述べたプロセス1000のステップ1002〜1014と同様及び/又は同一である。いくつかの実施形態では、ステップ2202〜2214は、MPMシステム602によって実施される。
プロセス2200は、いくつかの実施形態によれば、推定信頼性の関数として、最適化期間にわたるビルディング機器の故障リスクに関連するコストCostriskを定義すること(ステップ2216)を含むものとして示されている。Costriskは、最適化期間の各時間ステップiに関するすべてのリスクコストCrisk,iの合計によって定義することができる。いくつかの実施形態では、ステップ2216は、最適化期間にわたるビルディング機器の推定信頼性を使用して、最適化期間の各時間ステップにおけるビルディング機器のデバイスの故障確率を決定することを含む。デバイスの故障確率に基づいて、最適化にわたる合計コストに対する故障の影響を推定することができる。合計コストに対する故障の影響を推定するために、機器故障に関連するコストを決定することができる。特に、ビルディングデバイスのメンテナンス/交換を実施するためのコスト及び/又はビルディングデバイスの故障に関連する機会コストを決定することができる。機会コストは、ビルディングデバイスの故障により生じるメンテナンス/交換コスト以外の任意のコストを含むことができる。例えば、HVACシステムのヒータが故障した場合、ヒータが位置されているスペースを(例えば、居住者の安全のために)一時的に閉鎖する必要があり得る。スペースの閉鎖により、居住者による他のスペースの賃借、貴重な会議のキャンセルなどに関連するコストが発生する可能性があり、それらすべては、最適化期間にわたるビルディングシステムの合計コストに影響を及ぼす可能性がある追加のコスト及び/又は機会の損失につながる。
ステップ2216は、時間ステップiでの様々なリスクコスト(例えば、メンテナンス/交換コストと機会コストとの合計)に関連するコストCrisk,iを決定することを含むことができる。ステップ2204及び2206でそれぞれ決定/推定されたビルディング機器の機器性能情報及び/又は推定効率及び信頼性に基づいて劣化の状態を推定することができる。推定される劣化状態が増すにつれて、ビルディングデバイスの故障確率も上昇し得る。
すべてのビルディングデバイスの劣化状態を推定するために、ステップ2216は、例えば、各ビルディングデバイスの現在の推定信頼性と、各ビルディングデバイスが最初に設置されたときに基づく最適な信頼性とを比較することを含むことができる。Crisk,iの値を決定するために、ステップ2216は、各時間ステップiで各ビルディングデバイスに関連する故障コストを推定することも含むことができる。いくつかの実施形態では、ビルディングデバイスの故障コストは、ユーザによって推定される。いくつかの実施形態では、ビルディングデバイスの故障コストは、例えば、ビルディングデバイスの場所、ビルディングデバイスがスペースの状況にどのように影響を及ぼすかなど、様々な情報に基づいてシステム(例えば、MPMシステム602)によって推定される。
時間ステップiに関する各ビルディングデバイスの故障確率及び故障コストに基づいて、C
risk,iは、以下の式によって決定することができる。
C
risk,i=C
fail,i TP
fail,i(δ
i)
ここで、P
fail,i(δ
i)は、劣化状態δ
iでの、追跡されるビルディング機器の各ビルディングデバイスに関する故障確率のベクトルであり、C
fail,iは、各ビルディングデバイスの故障のコストを定義する行列である。さらに、Cost
risk(すなわち最適化期間にわたる合計リスクコスト)の値は、以下の式によって決定することができる。
ここで、hは、最適化期間での時間ステップの総数である。いくつかの実施形態では、ステップ2216は、故障リスク予測器946によって実施される。
プロセス2200は、いくつかの実施形態によれば、ビルディング機器の信頼性を向上させる雑多な修理に関連するコストcostmiscを定義すること(ステップ2218)を含むものとして示されている。雑多な修理は、ビルディング機器の信頼性を向上させるために追加の修理オプションを提供する。いくつかの実施形態では、雑多な修理は、ビルディング機器の信頼性を向上させるが、ビルディング機器の効率を改善しない。雑多な修理は、ステップ2220で以下に述べる最適化中に特に有用であり、目的関数に対するCostriskの影響を軽減することができる。ビルディング機器の信頼性が低下するにつれてCostriskが増加するため、信頼性を向上させるための雑多な修理は、Costmain及びCostcapによって定義されるメンテナンス及び交換活動に対する有利な代替策を提供することができる。いくつかの実施形態では、Costmiscに関連する雑多な修理がCostmain及び/又はCostcapと共に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ステップ2218は、雑費予測器948によって実施される。
プロセス2200は、いくつかの実施形態によれば、コストCostop、Costmain、Costcap、Costrisk及びCostmiscを含む目的関数を最適化して、ビルディング機器のための最適なメンテナンス戦略を決定すること(ステップ2220)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ2220は、図10を参照して述べたプロセス1000のステップ1016と同様及び/又は同一である。最適なメンテナンス戦略は、ビルディング機器に関するメンテナンス及び/又は交換を含むことができることを理解すべきである。Costriskを目的関数に組み込むことにより、故障確率が低く保たれることを保証するために、ビルディング機器の特定のビルディングデバイスのメンテナンス/交換を優先させることができる。目的関数の結果を最適化(例えば、減少)するために、故障に関連する高い機会コストを伴うビルディングデバイスは、高い機会コストを伴うビルディングデバイスの故障確率が低く保たれる(例えば、1%、5%など)ことを保証するために、追加及び/又はより頻繁なメンテナンス/交換を受けるように目的関数によって決定することができる。
Costmiscが目的関数に含まれており、且つ/又は雑多な修理がCostmain及び/若しくはCostcapに含まれている場合、目的関数の最適化は、目的関数に対するCostriskの影響を低減するために特定の雑多な修理を実施すべきであると判断することがある。それぞれの雑多な修理は、関連のビルディングデバイスの推定信頼性を向上させ、それにより関連のビルディングデバイスに関するCostriskの影響を低減することができる。有利には、雑多な修理は、メンテナンス及び/又は交換活動よりも安価であり得、したがってCostriskを低減するためのより安価な代替策を提供することができる。ステップ2220では、最適化は、Costmisc、Costmain及び/又はCostcapによって定義される各修復活動を考慮に入れて、最適化期間にわたってコストを最小化する最適なメンテナンス及び交換スケジュールを決定することができる。
いくつかの実施形態では、最適化は、リスク回避値によって制約される。リスク回避値は、ユーザ及び/又はシステムによって設定することができ、特定のビルディングデバイスに関する最大許容故障確率を示す。例えば、ユーザは、故障コストが1,000ドル以上のビルディングデバイスに関して、リスク回避値を20%に設定することができる。リスク回避値により、最適化は、1,000ドル以上の推定故障コストを有する任意のビルディングデバイスが最適化期間を通して20%未満の故障確率を有するように、最適なメンテナンス及び交換スケジュールを決定することができる。実質的に、リスク回避値は、特定のビルディングデバイスの故障確率が特定の値未満に保たれることをビルディング機器のメンテナンス及び/又は交換に関連する決定変数が保証するように、最適化に対して制約を課すことができる。いくつかの実施形態では、ステップ2220は、目的関数オプティマイザ940によって実施される。
プロセス2200は、いくつかの実施形態によれば、最適なメンテナンス戦略に基づいてビルディング機器の効率及び信頼性を更新すること(ステップ2222)を含むものとして示されている。いくつかの実施形態では、ステップ2222は、図10を参照して述べたプロセス1000のステップ1018と同様及び/又は同一である。いくつかの実施形態では、ステップ2222は、MPMシステム602によって実施される。
可変冷媒流量システムのモデル予測的メンテナンス
ここで、図23A〜23Bを参照すると、いくつかの実施形態によれば、可変冷媒流量(VRF)システム2300が示されている。VRFシステム2300は、複数の屋外VRFユニット2302及び複数の屋内VRFユニット2304を含むものとして示されている。屋外VRFユニット2302は、ビルディングの外に位置させることができ、冷媒を加熱又は冷却するように動作することができる。屋外VRFユニット2302は、電気を消費して、冷媒を液相、気相及び/又は過熱気相間で変換することができる。屋内VRFユニット2304は、ビルディング内の様々なビルディングゾーン全体にわたって分散させることができ、加熱又は冷却された冷媒を屋外VRFユニット2302から受け取ることができる。各屋内VRFユニット2304は、屋内VRFユニットが位置されている特定のビルディングゾーンに関する温度制御を提供することができる。
VRFシステムの主な利点は、いくつかの屋内VRFユニット2304が冷却モードで動作することができ、他の屋内VRFユニット2304が加熱モードで動作できることである。例えば、屋外VRFユニット2302及び屋内VRFユニット2304は、加熱モード、冷却モード又はオフモードでそれぞれ動作することができる。各ビルディングゾーンは、個別に制御することができ、異なる温度設定値を有することができる。いくつかの実施形態では、各ビルディングは、ビルディングの外(例えば、屋上)に位置された最大3つの屋外VRFユニット2302と、ビルディング全体にわたって(例えば、様々なビルディングゾーン内に)分散された最大128個の屋内VRFユニット2304とを有する。
VRFシステム2300には多くの異なる構成が存在する。いくつかの実施形態では、VRFシステム2300は、各屋外VRFユニット2302が単一の冷媒戻りライン及び単一の冷媒出口ラインに接続する2パイプシステムである。2パイプシステムでは、加熱又は冷却された冷媒の1つのみを、単一の冷媒出口ラインを通して提供することができるため、すべての屋外VRFユニット2302が同じモードで動作する。他の実施形態では、VRFシステム2300は、各屋外VRFユニット2302が冷媒戻りライン、高温冷媒出口ライン及び低温冷媒出口ラインに接続する3パイプシステムである。3パイプシステムでは、2つの冷媒出口ラインを通して加熱及び冷却の両方を同時に提供することができる。
いくつかの実施形態では、VRFシステム2300は、図6〜9を参照して述べたモデル予測的メンテナンス(MPM)システム602と統合され得る。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、VRFシステム2300及びシステム内の任意の/すべての構成要素に関する最適なメンテナンス戦略を決定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、以下と同様及び/又は同一のVRFシステム2300及びその任意の/すべての構成要素に関する最適な購入/交換戦略を決定するように構成され得る。
いくつかの実施形態では、MPMシステム602は、各構成要素の現在の劣化状態及び使用推定(例えば、負荷予測及び性能曲線)について、VRFシステム2300の構成要素の一部及び/又はすべてを監視するように構成され得る。例えば、MPMシステム602は、各屋内VRFユニット2304及び各屋外VRFユニット2302を監視することができる。各VRFユニットは、様々な要因(例えば、VRFユニットが設置されたとき、VRFユニットが使用される頻度、VRFユニットが実行される電力の平均レベルなど)により、異なる現在の劣化状態を有し得る。現在の劣化状態及び使用推定に基づいて、MPMシステム602は、動作コスト、メンテナンスコスト及び/又は資本コストを予測することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、これらの予測は、図10を参照して述べたプロセス1000と同様及び/又は同一のプロセスによって行われる。
いくつかの実施形態では、上記の様々なコストが予測された後、最適化期間に関して目的関数Jが生成され得る。目的関数Jが生成された後、MPMシステム602は、目的関数Jを最適化(すなわち最小化)するように構成することができる。いくつかの実施形態では、この最適化は、VRFシステム2300の各構成要素について決定変数の最適値を決定することができる。例えば、1つの決定変数は、ビルディングゾーンが適切に冷却されていないことに応答して、屋内VRFユニット2304が最適化期間中の特定の時間ステップにおいてメンテナンスを実施される必要があり得ることを示すことがある。別の決定変数は、屋外VRFユニット2302が設置されたときよりもさらに50%多くの電力を消費しているという決定に応答して、最適化期間中の特定の時間ステップにおいて屋外VRFユニット2302を交換する必要があり得る(すなわち資本コストが生じる)ことを示すことがある。
いくつかの実施形態では、VRFシステム2300のメンテナンスを管理するMPMシステム602は、VRFシステム2300に関する最適なメンテナンス戦略を決定するときに予算制約を実施するように構成され得る。予算制約は、様々な実施形態によれば、ハード予算制約、ソフト予算制約又はハード予算制約とソフト予算制約との何らかの組合せを含むことがある。いくつかの実施形態では、ハード予算制約は、最適化期間中のある期間(例えば、予算期間)に関するメンテナンス支出が超過されないようにする最大メンテナンス予算であり得る。いくつかの実施形態では、ハード予算制約は、図14Aを参照して述べたハード予算制約と同様及び/又は同一であり得る。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約は、メンテナンス予算と最適化期間中のある期間に関してメンテナンスに費やされた実際の額との間の差について、目的関数Jの最適化中に追加することができるペナルティコストを含むことがある。いくつかの実施形態では、ソフト予算制約は、図14Aを参照して述べたソフト予算制約と同様及び/又は同一であり得る。いくつかの実施形態では、VRFシステム2300に関する最適なメンテナンス戦略を決定する一方、ハード予算制約及び/又はソフト予算制約は、目的関数Jを最適化しながら制約内に収まるように決定変数の値を変えることができる。
例示的実施形態の構成
様々な例示的実施形態に示したようなシステム及び方法の構成及び配置は、例示的なものにすぎない。本開示ではいくつかの実施形態のみを詳細に述べているが、多くの変更形態が可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び広さ、パラメータの値、取付け配置、材料の使用、色、向きなど)。例えば、要素の位置が逆にされ得るか、又は他の方法で変更され得、個々の要素の性質若しくは数又は位置が変化又は変更され得る。したがって、そのような変更形態は、すべて本開示の範囲内に含まれることが意図される。任意のプロセス又は方法ステップの順序又は並びは、代替実施形態に従って変更されるか又は並べ替えられ得る。本開示の範囲から逸脱することなく、例示的実施形態の設計、動作条件及び配置に対する他の置換形態、修正形態、変更形態及び省略形態がなされ得る。
本開示は、様々な動作を達成するための方法、システム及び任意の機械可読媒体でのプログラム製品を企図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して実装されるか、この目的若しくは別の目的で組み込まれた適切なシステムのための専用コンピュータプロセッサによって実装されるか、又は有線システムによって実装され得る。本開示の範囲内の実施形態は、機械実行可能命令又はデータ構造を担持又は記憶するための機械可読媒体を備えるプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、汎用若しくは専用コンピュータ又はプロセッサを備える他の機械によってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体であり得る。一例として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM若しくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶デバイス又は任意の他の媒体を含むことができ、そのような媒体は、機械実行可能命令又はデータ構造の形態での所望のプログラムコードを担持又は記憶するために使用することができ、さらに汎用若しくは専用コンピュータ又はプロセッサを備える他の機械によってアクセスすることができる。上記の媒体の組合せも機械可読媒体の範囲に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ又は専用処理機械に特定の機能若しくは機能群を実施させる命令及びデータを含む。
図面は、方法ステップの特定の順序を示しているが、ステップの順序は、図示されるものと異なり得る。また、2つ以上のステップが並行して又は一部並行して実施され得る。そのような変形形態は、選択されるソフトウェア及びハードウェアシステム並びに設計者の選択に依存する。そのような変形形態は、すべて本開示の範囲内にある。同様に、ソフトウェア実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ及び決定ステップを達成するために規則ベースの論理及び他の論理を備えた標準的なプログラミング技法によって達成することができる。